JP6135424B2 - シール付転がり軸受ユニットの製造方法 - Google Patents
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Description
又、転がり軸受が定常状態で運転されていても、自動車が水溜りの中等を走行して車輪が水や泥水を巻き上げる事により、転がり軸受が水や泥水に曝される。この場合、温度の上昇している転がり軸受が急激に冷却されるため、転がり軸受内部の圧力が低下して、各シールリップと摺接面との間から転がり軸受内部に水や塵挨が吸引されるおそれがある。さらに、各シールリップの先端部が摺接面に強く押し付けられ、摩擦抵抗が増加して回転トルクが上昇すると共に、各シールリップの先端部に著しい摩耗をきたすことがある。この様にしてシールリップの先端部が摩耗してしまうと、転がり軸受の密封性が低下する。
そして、このシール付転がり軸受ユニットは、前記シールリングを前記静止側軌道輪に嵌合する際に、前記軸受内部空間と軸受外部とを連通して、軸受内部空間の空気を軸受外部に排気する排気溝が、前記静止側円筒部に設けられている。
本発明の製造方法では、前記排気溝を形成するため、前記静止側円筒部の加工時に該静止側円筒部を保持するコレットチャックの各保持部の稜部に、径方向に突出する爪部を設け、前記静止側円筒部を掴んだコレットチャックから該静止側円筒部を引き抜いて前記静止側円筒部に前記排気溝を形成する。
即ち、シールリングを軸受に圧入する際、静止側円筒部に設けられて軸方向に軸受内部空間と軸受外部とを連通する排気溝により、軸受内部空間の空気は外部空間に排気されるので、軸受内部空間の圧力上昇を抑制する事ができる。これにより、シーリップの損傷を防止して、密封装置の密封性を維持する事が可能となる。更に、排気溝は金属製である芯金の静止側円筒部のみに形成し、ガスケット部には設けていないので、ガスケット部によるシールリングの密封性を良好に保つ事ができる。
又、弾性材を芯金に加硫成形してガスケット部を形成する際、排気溝はガスケット部が加硫形成される部分には設けられていないので、弾性材が静止側円筒部の嵌合面にフラッシングを起こす虞がない。更に、溶融した弾性材が排気溝に流れて、排気溝を弾性材で塞いでしまう事もないので、排気溝を有するシールリングを安定して製造する事ができる。
この排気溝は、コレットチャックに保持された芯金を引き抜く事で成形されるので、低コストである。
同様に、回転側円筒部18aの内周面でハブ3の外周面と直接嵌合する部分には、軸方向に延びる排出溝30aが、周方向に亙って複数設けられている。この排気溝30aは、回転側円筒部18aの軸方向外端面に軸方向に開口し、エンコーダ25の近傍で、エンコーダ25に隣接して設けられた堰部31aまで延在して形成されている。
同様に、排気溝30aが形成されたスリンガ16aにエンコーダ25を加硫成形する際には、堰部31aを形成して、溶融したエンコーダ25がスリンガ16aの内径面へフラッシングしたり、排気溝30aを塞ぐ事を防止している。
さらに、組み合わせシールリング12aを圧入し続けて圧入が完了した状態となると、ガスケット部26が外輪2の内周面と弾性的に嵌合して、軸受内部空間10を密封する。一方、スリンガ16aに装着されたエンコーダ25の内周縁が、ハブ3の外周面に弾性的に当接して、軸受内部空間10を密封する。
更に、排気溝30,30aは、金属製である静止側円筒部23a及び回転側円筒部18aのみに形成し、ガスケット部26(エンコーダ25)には設けていないので、ガスケット部26によるシールリング17aの密封性を良好に保つ事ができる。
又、弾性材21を芯金20aに加硫成形してガスケット部26を形成する際、排気溝30とガスケット部26とは堰部31により分離されているので、溶融した弾性材21が静止側円筒部23aの嵌合面にフラッシングを起こしたり、排気溝30に流れて、排気溝30を弾性材21で塞いでしまう虞もない。従って、排気溝30を有するシールリング17aを安定して製造する事ができる。更に、排気溝30は、コレットチャック35に保持された芯金20aを引き抜く事で成形されるので、低コストである。
又、加硫金型により排気溝30を加工する事もできる。この場合、芯金20aを把持する加硫金型を超硬合金製とし、加硫金型の内径面に内径側に突出する凸部を設け、芯金20aを加硫金型に押し込む際に凸部により排気溝30を形成する事ができる。
又、本変形例の場合、排気溝30b,30cを形成する為に、弾性材21が加硫成形された芯金20b、或はエンコーダ25とスリンガ16bの成形体を、コレットチャック35で把持する工程を別途に設ける必要はない。例えば、弾性材21が加硫成形された芯金20bとエンコーダ25及びスリンガ16bの成形体とを組み合わせる組み合わせシールリング12bの組立機に於いて、芯金20b及びスリンガ16bを把持するチャック機構を利用する事も可能である。
2 外輪
3 ハブ
4 外輪軌道
5 内輪軌道
6 玉
7 保持器
8 静止側フランジ
9 回転側フランジ
10 軸受内部空間
11 シールリング
12,12a,12b 組み合わせシールリング
13 芯金
14 弾性材
15a、15b、15c シールリップ
16,16a,16b スリンガ
17、17a,17b シールリング
18,18a,18b 回転側円筒部
19 回転側円輪部
20、20a、20b 芯金
21 弾性材
22a、22b、22c シールリップ
23,23a,23b 静止側円筒部
24 静止側円輪部
25 エンコーダ
26 ガスケット部
30,30a,30b,30c 排気溝
31,31a 堰部
35 コレットチャック
36 爪部
37 段部
Claims (2)
- 互いに同心に配置された状態で相対回転する回転側軌道輪及び静止側軌道輪と、前記回転側軌道輪と前記静止側軌道輪との互いに対向する周面同士の間に存在する軸受内部空間に転動自在に設けられた複数個の転動体と、前記軸受内部空間の端部開口を塞ぐ、スリンガ及びシールリングから成る組み合わせシールリングとを備え、前記スリンガは、金属板を断面L字形で全体を円環状に構成し、前記回転側軌道輪の周面に嵌合固定される回転側円筒部を有しており、前記シールリングは、芯金と、この芯金に基端部を支持されたシールリップを有する弾性材とを備え、前記芯金は、金属板を断面L字形で全体を円環状に構成し、前記静止側軌道輪の周面に嵌合固定される静止側円筒部を有しており、前記弾性材は、前記静止側円筒部の軸受外部側の周面を被覆して前記静止側軌道輪の周面と嵌合するガスケット部を備えるシール付転がり軸受ユニットの製造方法であって、
前記静止側円筒部には、前記組み合わせシールリングを前記静止側軌道輪に嵌合する際に、前記軸受内部空間と軸受外部とを連通して前記軸受内部空間の空気を軸受外部に排気する排気溝が周方向の複数個所に設けられており、
前記排気溝を形成するため、前記静止側円筒部の加工時に該静止側円筒部を保持するコレットチャックの各保持部の稜部に、径方向に突出する爪部を設け、
前記静止側円筒部を掴んだ前記コレットチャックから該静止側円筒部を引き抜いて前記静止側円筒部に前記排気溝を形成する事を特徴とするシール付転がり軸受ユニットの製造方法。 - 請求項1記載のシール付転がり軸受ユニットの製造方法であって、
前記組み合わせシールリングを前記静止側軌道輪に嵌合する際に、前記軸受内部空間と軸受外部とを連通して前記軸受内部空間の空気を軸受外部に排気する排気溝が、さらに前記回転側円筒部の周方向の複数個所にも設けられており、
前記回転側円筒部の前記排気溝を形成するため、前記回転側円筒部の加工時に該回転側円筒部を保持するコレットチャックの各保持部の稜部に、径方向に突出する爪部を設け、
前記回転側円筒部を掴んだ前記コレットチャックから該回転側円筒部を引き抜いて前記回転側円筒部に前記排気溝を形成し、
前記組み合わせシールリングが前記軸受内部空間に嵌合された状態で前記スリンガに装着したエンコーダを、前記回転側軌道輪の周面に弾性的に当接させる事を特徴とするシール付転がり軸受ユニットの製造方法。
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