JP6135160B2 - インジェクション成形体 - Google Patents

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Description

本発明は、酸素バリア性能及び酸素吸収性能を有するインジェクション成形体、並びに該インジェクション成形体を加工して得られる容器に関する。
インジェクション成形(射出成形)は、複雑な形状を有する成形体を作製でき、生産性も高いため、機械部品、自動車部品、電気・電子部品、食品・医薬用容器等に広く普及している。近年、包装容器としては、軽量で透明且つ易成形性等の利点を有するため、各種プラスチック容器が使用されている。代表的なプラスチック容器としては、例えば、飲料等の容器については、蓋を十分に締めることができるように口栓にネジ形状が形成されたインジェクション成形体が多用されている。
インジェクション成形体に用いられる材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエステル、ポリスチレン等の汎用性樹脂が挙げられる。特に、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステルを主体とするプラスチック容器(ボトルなど)を用いたインジェクション成形体がお茶、果汁飲料、炭酸飲料等の飲料に広く利用されている。しかし、熱可塑性樹脂を主体としたインジェクション成形体は包装材として優れているが、ガラス瓶や金属製容器と異なり、外部から酸素が透過してしまう性質があり、それに充填され密閉された内容物の保存性に問題が残っている。このような汎用性樹脂からなるインジェクション成形体にガスバリア性を付与するために、高いガスバリア性を有する熱可塑性樹脂をインジェクション成形体の主体となるポリエステル等の汎用性樹脂に溶融混合したインジェクション成形体や、ガスバリア層を中間層として有する多層インジェクション成形体が実用化されている。
一方、キシリレンジアミンと脂肪族ジカルボン酸との重縮合反応から得られるポリアミド、例えばメタキシリレンジアミンとアジピン酸とから得られるポリアミド(以下ナイロンMXD6という)は、高強度、高弾性率、並びに酸素、炭酸ガス、臭気及びフレーバー等のガス状物質に対する低い透過性を示すことから、包装材料分野におけるガスバリア材料として広く利用されている。
しかしながら、ナイロンMXD6を他の汎用性樹脂と溶融混合する場合や、ガスバリア層として用いた場合では、わずかの酸素透過性を有するので、完全に酸素を遮断することができないだけでなく、成形体内の充填後の内容物の上部に存在するヘッドスペースの気体中の残存酸素を除去することは不可能である。このため、ビール等の酸素に敏感な内容物の劣化は阻止できない。
熱可塑性樹脂を用いたインジェクション成形体にガスバリア性を付与する手段としては他に、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、アルミ箔、カーボンコート、無機酸化物蒸着等のガスバリア層を構成材料として積層する方法が行われているが、ナイロンMXD6を用いた場合と同様に、成形体内の充填後の内容物の上部に存在するヘッドスペースの気体中の残存酸素を除去することは不可能である。
近年、ナイロンMXD6に少量の遷移金属化合物を添加、混合して、ナイロンMXD6に酸素吸収機能を付与し、これを容器や包装材料を構成する酸素バリア材料として利用することで、容器外部から透過してくる酸素をナイロンMXD6が吸収すると共に容器内部に残存する酸素をもナイロンMXD6が吸収することにより、従来の酸素バリア性熱可塑性樹脂を利用した容器以上に内容物の保存性を高める方法が実用化されつつある(例えば特許文献1及び2を参照)。
一方、容器内の酸素を除去するため、酸素吸収剤の使用は古くから行われている。例えば、特許文献3及び4には、鉄粉等の酸素吸収剤を樹脂中に分散させた酸素吸収多層体が記載されている。特許文献5には、ポリブタジエン等のエチレン性不飽和化合物及びコバルト等の遷移金属触媒を含む酸素掃除去層と、ポリアミド等の酸素遮断層とを有する製品が記載されている。
鉄粉等の酸素吸収剤を樹脂中に分散させた酸素吸収多層体は、鉄粉等の酸素吸収剤により樹脂が着色して不透明であるため、透明性が要求される包装の分野には使用できないという用途上の制約がある。
一方、コバルト等の遷移金属を含有する樹脂組成物は、透明性が必要な包装容器にも適用可能である利点を有するが、遷移金属触媒によって樹脂組成物が着色されるため好ましくない。また、これらの樹脂組成物では、遷移金属触媒によって、酸素を吸収することで樹脂が酸化される。具体的には、ナイロンMXD6では、遷移金属原子によるポリアミド樹脂のアリーレン基に隣接するメチレン鎖から水素原子の引き抜きに起因するラジカルの発生、前記ラジカルに酸素分子が付加することによるパーオキシラジカルの発生、パーオキシラジカルによる水素原子の引き抜き等の各反応により起こるものと考えられている。このような機構による酸素吸収により樹脂が酸化されるため、分解物が発生して容器内容物に好ましくない臭気が発生したり、樹脂の酸化劣化により容器の色調や強度等が損なわれる。また、ガスバリア層として使用した場合は、経時による層間剥離を招く問題がある。
この問題に対し、本発明者らは、金属を含有せずとも十分な酸素吸収性能を発現し、かつ不快な臭気が発生せず、極めて良好な透明性を有するポリアミド樹脂の開発に成功した(特許文献6)。また、本発明者らは、当該ポリアミド樹脂の透明性を悪化させることなく更なる酸素吸収性能を高めたポリアミド樹脂組成物の開発にも成功した(特許文献7)。
特開2003−341747号公報 特許第2991437号公報 特開平2−72851号公報 特開平4−90848号公報 特開平5−115776号公報 国際公開第2011/081099号 国際公開第2012/090797号
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、特許文献6に記載の酸素吸収性ポリアミド樹脂又は特許文献7に記載の酸素吸収性ポリアミド樹脂組成物を用いて成形したインジェクション成形体は、酸素吸収後にインジェクション成形体の黄色度が増加したり黒ずみが生じたりして、インジェクション成形体としての商品的価値を低下させる問題があることを見出した。
本発明が解決しようとする課題は、酸素バリア性能を発現するとともに、遷移金属を含有せずに酸素吸収性能を発現することができ、異臭や風味変化の原因となるような物質の発生が無く、内容物の保存性に優れ、かつ、酸素吸収が進行するにつれての強度低下及び黄色化や黒ずみが極めて小さいインジェクション成形体を提供することにある。
本発明は、以下のインジェクション成形体及び容器を提供する。
<1>ポリアミド(A)及びポリエステル(B)を含有する樹脂組成物からなるインジェクション成形体であって、
該ポリアミド(A)が、
下記一般式(I−1)で表される芳香族ジアミン単位、下記一般式(I−2)で表される脂環族ジアミン単位、及び下記一般式(I−3)で表される直鎖脂肪族ジアミン単位からなる群から選ばれる少なくとも1つのジアミン単位を合計で50モル%以上含むジアミン単位25〜50モル%と、
下記一般式(II−1)で表される直鎖脂肪族ジカルボン酸単位及び/又は下記一般式(II−2)で表される芳香族ジカルボン酸単位を合計で50モル%以上含むジカルボン酸単位25〜50モル%と、
下記一般式(III)で表される構成単位0.1〜50モル%と
を含有し、かつ、リン原子濃度換算で250〜500ppmのリン原子含有化合物を含有し、
前記ポリエステル(B)において、走査型蛍光X線分析によるアンチモン含有量が、アンチモン原子濃度換算で100〜300ppmであり、
前記ポリアミド(A)/前記ポリエステル(B)の質量比が3/97〜20/80である、インジェクション成形体。
Figure 0006135160
[前記一般式(I−3)中、mは2〜18の整数を表す。前記一般式(II−1)中、nは2〜18の整数を表す。前記一般式(II−2)中、Arはアリーレン基を表す。前記一般式(III)中、Rは置換もしくは無置換のアルキル基又は置換もしくは無置換のアリール基を表す。]
<2>上記インジェクション成形体を加工して得られる容器。
本発明のインジェクション成形体は、酸素バリア性能を発現するとともに、遷移金属を含有せずに酸素吸収性能を発現することができ、かつ、酸素吸収が進行するにつれての強度低下、黄色化及び黒ずみが極めて小さい。
<<インジェクション成形体>>
本発明のインジェクション成形体は、ポリアミド(A)及びポリエステル(B)を含有する樹脂組成物からなる。
1.樹脂組成物
本発明に用いられる樹脂組成物は、後述する特定のポリアミド(以後「ポリアミド(A)」と呼ぶこともある)を含有することで酸素吸収性能及び酸素バリア性能を発揮することができる。樹脂組成物に含有されるポリアミド(A)は1種であってもよいし、2種以上の組合せであってもよい。
また、本発明に用いられる樹脂組成物は、ポリエステル(B)を含有することで、成形性及び強度に優れる。樹脂組成物に含有されるポリエステル(B)は、1種であってもよいし、2種以上の組合せであってもよい。
本発明に用いられる樹脂組成物中におけるポリアミド(A)/ポリエステル(B)の質量比は、3/97〜20/80であり、酸素吸収性能及び酸素バリア性能と黄色度とのバランスの観点からは、好ましくは5/95〜15/85、より好ましくは5/95〜12/88、更に好ましくは7/93〜10/90である。
本発明に用いられる樹脂組成物は、ポリアミド(A)及びポリエステル(B)に加えて、所望する性能等に応じて、後述する添加剤を含んでいてもよいが、樹脂組成物中のポリアミド(A)及びポリエステル(B)の合計の含有量は、成形加工性や酸素吸収性能、酸素バリア性能の観点から90質量%〜100質量%であることが好ましく、95質量%〜100質量%であることがより好ましい。
1−1.ポリアミド(A)
<ポリアミド(A)の構成>
本発明において、ポリアミド(A)は、下記一般式(I−1)で表される芳香族ジアミン単位、下記一般式(I−2)で表される脂環族ジアミン単位、及び下記一般式(I−3)で表される直鎖脂肪族ジアミン単位からなる群から選ばれる少なくとも1つのジアミン単位を合計で50モル%以上含むジアミン単位25〜50モル%と、下記一般式(II−1)で表される直鎖脂肪族ジカルボン酸単位及び/又は下記一般式(II−2)で表される芳香族ジカルボン酸単位を合計で50モル%以上含むジカルボン酸単位25〜50モル%と、3級水素含有カルボン酸単位(好ましくは下記一般式(III)で表される構成単位)0.1〜50モル%とを含有する。
Figure 0006135160
[前記一般式(I−3)中、mは2〜18の整数を表す。前記一般式(II−1)中、nは2〜18の整数を表す。前記一般式(II−2)中、Arはアリーレン基を表す。前記一般式(III)中、Rは置換もしくは無置換のアルキル基又は置換もしくは無置換のアリール基を表す。]
ただし、前記ジアミン単位、前記ジカルボン酸単位、前記3級水素含有カルボン酸単位の合計は100モル%を超えないものとする。ポリアミド(A)は、本発明の効果を損なわない範囲で、前記以外の構成単位を更に含んでいてもよい。
ポリアミド(A)において、3級水素含有カルボン酸単位の含有量は0.1〜50モル%である。3級水素含有カルボン酸単位の含有量が0.1モル%未満では十分な酸素吸収性能を発現しない。一方、3級水素含有カルボン酸単位の含有量が50モル%を超えると、3級水素含有量が多すぎるため、ポリアミド(A)のガスバリア性や機械物性等の物性が低下し、特に3級水素含有カルボン酸がアミノ酸である場合は、ペプチド結合が連続するため耐熱性が十分でなくなるだけでなく、アミノ酸の2量体からなる環状物ができ、重合を阻害する。3級水素含有カルボン酸単位の含有量は、酸素吸収性能やポリアミド(A)の性状の観点から、好ましくは0.2モル%以上、より好ましくは1モル%以上であり、また、好ましくは40モル%以下であり、より好ましくは30モル%以下である。
ポリアミド(A)において、ジアミン単位の含有量は25〜50モル%であり、酸素吸収性能やポリマー性状の観点から、好ましくは30〜50モル%である。同様に、ポリアミド(A)において、ジカルボン酸単位の含有量は25〜50モル%であり、好ましくは30〜50モル%である。
ジアミン単位とジカルボン酸単位との含有量の割合は、重合反応の観点から、ほぼ同量であることが好ましく、ジカルボン酸単位の含有量がジアミン単位の含有量の±2モル%であることがより好ましい。ジカルボン酸単位の含有量がジアミン単位の含有量の±2モル%の範囲を超えると、ポリアミド(A)の重合度が上がりにくくなるため重合度を上げるのに多くの時間を要し、熱劣化が生じやすくなる。
[ジアミン単位]
ポリアミド(A)中のジアミン単位は、前記一般式(I−1)で表される芳香族ジアミン単位、前記一般式(I−2)で表される脂環族ジアミン単位、及び前記一般式(I−3)で表される直鎖脂肪族ジアミン単位からなる群から選ばれる少なくとも1つのジアミン単位を、ジアミン単位中に合計で50モル%以上含み、当該含有量は、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上であり、また、好ましくは100モル%以下である。
前記一般式(I−1)で表される芳香族ジアミン単位を構成しうる化合物としては、オルトキシリレンジアミン、メタキシリレンジアミン、及びパラキシリレンジアミンが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
前記式(I−2)で表される脂環族ジアミン単位を構成しうる化合物としては、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等のビス(アミノメチル)シクロヘキサン類が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
ビス(アミノメチル)シクロヘキサン類は、構造異性体を持つが、cis体比率を高くすることで、結晶性が高く、良好な成形性を得られる。一方、cis体比率を低くすれば、結晶性が低い、透明なものが得られる。したがって、結晶性を高くしたい場合は、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン類におけるcis体含有比率を70モル%以上とすることが好ましく、より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上とする。一方、結晶性を低くしたい場合は、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン類におけるcis体含有比率を50モル%以下とすることが好ましく、より好ましくは40モル%以下、更に好ましくは30モル%以下とする。
前記一般式(I−3)中、mは2〜18の整数を表し、好ましくは3〜16、より好ましくは4〜14、更に好ましくは6〜12である。
前記一般式(I−3)で表される直鎖脂肪族ジアミン単位を構成しうる化合物としては、エチレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン等の脂肪族ジアミンを例示できるが、これらに限定されるものではない。これらの中でも、ヘキサメチレンジアミンが好ましい。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
ポリアミド(A)中のジアミン単位としては、ポリアミド(A)に優れたガスバリア性を付与することに加え、透明性や色調の向上や、汎用的な熱可塑性樹脂の成形性を容易にする観点からは、前記一般式(I−1)で表される芳香族ジアミン単位及び/又は前記一般式(I−2)で表される脂環族ジアミン単位を含むことが好ましく、ポリアミド(A)に適度な結晶性を付与する観点からは、前記一般式(I−3)で表される直鎖脂肪族ジアミン単位を含むことが好ましい。特に、酸素吸収性能やポリアミド(A)の性状の観点からは、前記一般式(I−1)で表される芳香族ジアミン単位を含むことが好ましい。
ポリアミド(A)中のジアミン単位は、ポリアミド(A)に優れたガスバリア性を発現させることに加え、汎用的な熱可塑性樹脂の成形性を容易にする観点から、メタキシリレンジアミン単位を50モル%以上含むことが好ましく、当該含有量は、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上であり、また、好ましくは100モル%以下である。
前記一般式(I−1)〜(I−3)のいずれかで表されるジアミン単位以外のジアミン単位を構成しうる化合物としては、パラフェニレンジアミン等の芳香族ジアミン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン等の脂環族ジアミン、N−メチルエチレンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン等の脂肪族ジアミン、ハンツマン社製のジェファーミンやエラスタミン(いずれも商品名)に代表されるエーテル結合を有するポリエーテル系ジアミン等を例示できるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
[ジカルボン酸単位]
ポリアミド(A)中のジカルボン酸単位は、重合時の反応性、並びにポリアミド(A)の結晶性及び成形性の観点から、前記一般式(II−1)で表される直鎖脂肪族ジカルボン酸単位及び/又は前記一般式(II−2)で表される芳香族ジカルボン酸単位を、ジカルボン酸単位に合計で50モル%以上含み、当該含有量は、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上であり、また、好ましくは100モル%以下である。
前記一般式(II−1)で表される直鎖脂肪族ジカルボン酸単位は、ポリアミド(A)に適度なガラス転移温度や結晶性を付与することに加え、包装材料や包装容器として必要な柔軟性を付与できる点で好ましい。
前記一般式(II−1)中、nは2〜18の整数を表し、好ましくは3〜16、より好ましくは4〜12、更に好ましくは4〜8である。
前記一般式(II−1)で表される直鎖脂肪族ジカルボン酸単位を構成しうる化合物としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸等を例示できるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
前記一般式(II−1)で表される直鎖脂肪族ジカルボン酸単位の種類は用途に応じて適宜決定される。ポリアミド(A)中の直鎖脂肪族ジカルボン酸単位は、ポリアミド(A)に優れたガスバリア性を付与することに加え、包装材料や包装容器の加熱殺菌後の耐熱性を保持する観点から、アジピン酸単位、セバシン酸単位、及び1,12−ドデカンジカルボン酸単位からなる群から選ばれる少なくとも1つを、直鎖脂肪族ジカルボン酸単位中に合計で50モル%以上含むことが好ましく、当該含有量は、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上であり、また、好ましくは100モル%以下である。
ポリアミド(A)中の直鎖脂肪族ジカルボン酸単位は、ポリアミド(A)のガスバリア性及び適切なガラス転移温度や融点等の熱的性質の観点からは、アジピン酸単位を直鎖脂肪族ジカルボン酸単位中に50モル%以上含むことが好ましい。また、ポリアミド(A)中の直鎖脂肪族ジカルボン酸単位は、ポリアミド(A)に適度なガスバリア性及び成形加工適性を付与する観点からは、セバシン酸単位を直鎖脂肪族ジカルボン酸単位中に50モル%以上含むことが好ましく、ポリアミド(A)が低吸水性、耐候性、耐熱性を要求される用途に用いられる場合は、1,12−ドデカンジカルボン酸単位を直鎖脂肪族ジカルボン酸単位中に50モル%以上含むことが好ましい。
前記一般式(II−2)で表される芳香族ジカルボン酸単位は、ポリアミド(A)に更なるガスバリア性を付与することに加え、包装材料や包装容器の成形加工性を容易にすることができる点で好ましい。
前記一般式(II−2)中、Arはアリーレン基を表す。前記アリーレン基は、好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜15のアリーレン基であり、例えば、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられる。
前記一般式(II−2)で表される芳香族ジカルボン酸単位を構成しうる化合物としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等を例示できるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
前記一般式(II−2)で表される芳香族ジカルボン酸単位の種類は用途に応じて適宜決定される。ポリアミド(A)中の芳香族ジカルボン酸単位は、イソフタル酸単位、テレフタル酸単位、及び2,6−ナフタレンジカルボン酸単位からなる群から選ばれる少なくとも1つを、芳香族ジカルボン酸単位中に合計で50モル%以上含むことが好ましく、当該含有量は、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上であり、また、好ましくは100モル%以下である。また、これらの中でもイソフタル酸及び/又はテレフタル酸を芳香族ジカルボン酸単位中に含むことが好ましい。イソフタル酸単位とテレフタル酸単位との含有比(イソフタル酸単位/テレフタル酸単位)は、特に制限はなく、用途に応じて適宜決定される。例えば、適度なガラス転移温度や結晶性を下げる観点からは、両単位の合計を100としたとき、モル比で好ましくは0/100〜100/0、より好ましくは0/100〜60/40、更に好ましくは0/100〜40/60、更に好ましくは0/100〜30/70である。
ポリアミド(A)中のジカルボン酸単位において、前記直鎖脂肪族ジカルボン酸単位と前記芳香族ジカルボン酸単位との含有比(直鎖脂肪族ジカルボン酸単位/芳香族ジカルボン酸単位)は、特に制限はなく、用途に応じて適宜決定される。例えば、ポリアミド(A)のガラス転移温度を上げて、ポリアミド(A)の結晶性を低下させることを目的とした場合、直鎖脂肪族ジカルボン酸単位/芳香族ジカルボン酸単位は、両単位の合計を100としたとき、モル比で好ましくは0/100〜60/40、より好ましくは0/100〜40/60、更に好ましくは0/100〜30/70である。また、ポリアミド(A)のガラス転移温度を下げてポリアミド(A)に柔軟性を付与することを目的とした場合、直鎖脂肪族ジカルボン酸単位/芳香族ジカルボン酸単位は、両単位の合計を100としたとき、モル比で好ましくは40/60〜100/0、より好ましくは60/40〜100/0、更に好ましくは70/30〜100/0である。
前記一般式(II−1)又は(II−2)で表されるジカルボン酸単位以外のジカルボン酸単位を構成しうる化合物としては、シュウ酸、マロン酸、フマル酸、マレイン酸、1,3−ベンゼン二酢酸、1,4−ベンゼン二酢酸等のジカルボン酸を例示できるが、これらに限定されるものではない。
[3級水素含有カルボン酸単位]
本発明において、ポリアミド(A)における3級水素含有カルボン酸単位は、ポリアミド(A)の重合の観点から、アミノ基及びカルボキシル基を少なくとも1つずつ有するか、又はカルボキシル基を2つ以上有する。具体例としては、下記一般式(III)、(IV)又は(V)のいずれかで表される構成単位が挙げられる。
Figure 0006135160
[前記一般式(III)〜(V)中、R、R1及びR2はそれぞれ置換基を表し、A1〜A3はそれぞれ単結合又は2価の連結基を表す。ただし、前記一般式(IV)においてA1及びA2がともに単結合である場合を除く。]
本発明において、ポリアミド(A)は、3級水素含有カルボン酸単位を含む。このような3級水素含有カルボン酸単位を共重合成分として含有することで、ポリアミド(A)は、遷移金属を含有せずとも優れた酸素吸収性能を発揮することができる。
本発明において、3級水素含有カルボン酸単位を有するポリアミド(A)が良好な酸素吸収性能を示す機構についてはまだ明らかにされていないが以下のように推定される。3級水素含有カルボン酸単位を構成しうる化合物は、同一炭素原子上に電子求引性基と電子供与性基とが結合しているため、その炭素原子上に存在する不対電子がエネルギー的に安定化されるキャプトデーティブ(Captodative)効果と呼ばれる現象によって非常に安定なラジカルが生成すると考えられる。すなわち、カルボキシル基は電子求引性基であり、それに隣接する3級水素が結合している炭素が電子不足(δ+)になるため、当該3級水素も電子不足(δ+)となり、プロトンとして解離してラジカルを形成する。ここに酸素及び水が存在したときに、酸素がこのラジカルと反応することで、酸素吸収性能を示すと考えられる。また、高湿度かつ高温の環境であるほど、反応性は高いことが判明している。
前記一般式(III)〜(V)中、R、R1及びR2はそれぞれ置換基を表す。本発明におけるR、R1及びR2で表される置換基としては、例えば、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基(1〜15個、好ましくは1〜6個の炭素原子を有する直鎖、分岐又は環状アルキル基、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基)、アルケニル基(2〜10個、好ましくは2〜6個の炭素原子を有する直鎖、分岐又は環状アルケニル基、例えば、ビニル基、アリル基)、アルキニル基(2〜10個、好ましくは2〜6個の炭素原子を有するアルキニル基、例えば、エチニル基、プロパルギル基)、アリール基(6〜16個、好ましくは6〜10個の炭素原子を有するアリール基、例えば、フェニル基、ナフチル基)、複素環基(5員環又は6員環の芳香族又は非芳香族の複素環化合物から1個の水素原子を取り除くことによって得られる、1〜12個、好ましくは2〜6個の炭素原子を有する一価の基、例えば1−ピラゾリル基、1−イミダゾリル基、2−フリル基)、シアノ基、水酸基、ニトロ基、アルコキシ基(1〜10個、好ましくは1〜6個の炭素原子を有する直鎖、分岐又は環状アルコキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基)、アリールオキシ基(6〜12個、好ましくは6〜8個の炭素原子を有するアリールオキシ基、例えば、フェノキシ基)、アシル基(ホルミル基、2〜10個、好ましくは2〜6個の炭素原子を有するアルキルカルボニル基、或いは7〜12個、好ましくは7〜9個の炭素原子を有するアリールカルボニル基、例えば、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基)、アミノ基(アミノ基、1〜10個、好ましくは1〜6個の炭素原子を有するアルキルアミノ基、6〜12個、好ましくは6〜8個の炭素原子を有するアニリノ基、或いは1〜12個、好ましくは2〜6個の炭素原子を有する複素環アミノ基、例えば、アミノ基、メチルアミノ基、アニリノ基)、メルカプト基、アルキルチオ基(1〜10個、好ましくは1〜6個の炭素原子を有するアルキルチオ基、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基)、アリールチオ基(6〜12個、好ましくは6〜8個の炭素原子を有するアリールチオ基、例えば、フェニルチオ基)、複素環チオ基(2〜10個、好ましくは2〜6個の炭素原子を有する複素環チオ基、例えば2−ベンゾチアゾリルチオ基)、イミド基(2〜10個、好ましくは4〜8個の炭素原子を有するイミド基、例えば、N−スクシンイミド基、N−フタルイミド基)等が挙げられる。
これらの官能基の中で水素原子を有するものは更に上記の基で置換されていてもよく、例えば、水酸基で置換されたアルキル基(例えば、ヒドロキシエチル基)、アルコキシ基で置換されたアルキル基(例えば、メトキシエチル基)、アリール基で置換されたアルキル基(例えば、ベンジル基)、アルキル基で置換されたアリール基(例えば、p−トリル基)、アルキル基で置換されたアリールオキシ基(例えば、2−メチルフェノキシ基)等を挙げられるが、これらに限定されるものではない。
なお、官能基が更に置換されている場合、上述した炭素数には、更なる置換基の炭素数は含まれないものとする。例えば、ベンジル基は、フェニル基で置換された炭素数1のアルキル基と見なし、フェニル基で置換された炭素数7のアルキル基とは見なさない。以降の炭素数に記載についても、特に断りが無い限り、同様に解するものとする。
前記一般式(IV)及び(V)中、A1〜A3はそれぞれ単結合又は2価の連結基を表す。ただし、前記一般式(IV)においてA1及びA2がともに単結合である場合を除く。2価の連結基としては、例えば、直鎖、分岐もしくは環状のアルキレン基(炭素数1〜12、好ましくは炭素数1〜4のアルキレン基、例えばメチレン基、エチレン基)、アラルキレン基(炭素数7〜30、好ましくは炭素数7〜13のアラルキレン基、例えばベンジリデン基)、アリーレン基(炭素数6〜30、好ましくは炭素数6〜15のアリーレン基、例えば、フェニレン基)等が挙げられる。これらは更に置換基を有していてもよく、当該置換基としては、R、R1及びR2で表される置換基として上記に例示した官能基が挙げられる。例えば、アルキル基で置換されたアリーレン基(例えば、キシリレン基)等を挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明において、ポリアミド(A)は、前記一般式(III)、(IV)又は(V)のいずれかで表される構成単位の少なくとも1種を含むことが好ましい。これらの中でも、原料の入手性や酸素吸収性向上の観点から、α炭素(カルボキシル基に隣接する炭素原子)に3級水素を有するカルボン酸単位がより好ましく、前記一般式(III)で表される構成単位が特に好ましい。
前記一般式(III)中におけるRについては上述した通りであるが、その中でも置換もしくは無置換のアルキル基及び置換もしくは無置換のアリール基がより好ましく、置換もしくは無置換の炭素数1〜6のアルキル基及び置換もしくは無置換の炭素数6〜10のアリール基が更に好ましく、置換もしくは無置換の炭素数1〜4のアルキル基及び置換もしくは無置換のフェニル基が特に好ましい。
好ましいRの具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、メルカプトメチル基、メチルスルファニルエチル基、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基、4−ヒドロキシベンジル基等を例示できるが、これらに限定されるものではない。これらの中でも、メチル基、エチル基、イソプロピル基、2−メチルプロピル基、及びベンジル基がより好ましい。
前記一般式(III)で表される構成単位を構成しうる化合物としては、アラニン、2−アミノ酪酸、バリン、ノルバリン、ロイシン、ノルロイシン、tert−ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、2−フェニルグリシン、フェニルアラニン、チロシン、ヒスチジン、トリプトファン、プロリン等のα−アミノ酸を例示できるが、これらに限定されるものではない。
また、前記一般式(IV)で表される構成単位を構成しうる化合物としては、3−アミノ酪酸等のβ−アミノ酸を例示でき、前記一般式(V)で表される構成単位を構成しうる化合物としては、メチルマロン酸、メチルコハク酸、リンゴ酸、酒石酸等のジカルボン酸を例示できるが、これらに限定されるものではない。
これらはD体、L体、ラセミ体のいずれであってもよく、アロ体であってもよい。また、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、原料の入手性や酸素吸収性向上等の観点から、α炭素に3級水素を有するα−アミノ酸が特に好ましい。また、α−アミノ酸の中でも、供給しやすさ、安価な価格、重合しやすさ、ポリマーの黄色度(YI)の低さといった点から、アラニンが最も好ましい。アラニンは、分子量が比較的低く、ポリアミド(A)1g当たりの共重合率が高いため、ポリアミド(A)1g当たりの酸素吸収性能は良好である。
また、前記3級水素含有カルボン酸単位を構成しうる化合物の純度は、重合速度の遅延等の重合に及ぼす影響やポリマーの黄色度等の品質面への影響の観点から、95%以上であることが好ましく、より好ましくは98.5%以上、更に好ましくは99%以上である。また、不純物として含まれる硫酸イオンやアンモニウムイオンは、500ppm以下が好ましく、より好ましくは200ppm以下、更に好ましくは50ppm以下である。
[ω−アミノカルボン酸単位]
本発明において、ポリアミド(A)は、ポリアミド(A)に柔軟性等が必要な場合には、前記ジアミン単位、前記ジカルボン酸単位及び前記3級水素含有カルボン酸単位に加えて、下記一般式(X)で表されるω−アミノカルボン酸単位を更に含有してもよい。
Figure 0006135160
[前記一般式(X)中、pは2〜18の整数を表す。]
前記ω−アミノカルボン酸単位の含有量は、ポリアミド(A)の全構成単位中、好ましくは0.1〜49.9モル%、より好ましくは3〜40モル%、更に好ましくは5〜35モル%である。ただし、前記のジアミン単位、ジカルボン酸単位、3級水素含有カルボン酸単位、及びω−アミノカルボン酸単位の合計は100モル%を超えないものとする。
前記一般式(X)中、pは2〜18の整数を表し、好ましくは3〜16、より好ましくは4〜14、更に好ましくは5〜12である。
前記一般式(X)で表されるω−アミノカルボン酸単位を構成しうる化合物としては、炭素数5〜19のω−アミノカルボン酸や炭素数5〜19のラクタムが挙げられる。炭素数5〜19のω−アミノカルボン酸としては、6−アミノヘキサン酸及び12−アミノドデカン酸等が挙げられ、炭素数5〜19のラクタムとしては、ε−カプロラクタム及びラウロラクタムを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
前記ω−アミノカルボン酸単位は、6−アミノヘキサン酸単位及び/又は12−アミノドデカン酸単位を、ω−アミノカルボン酸単位中に合計で50モル%以上含むことが好ましく、当該含有量は、より好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上であり、また、好ましくは100モル%以下である。
[ポリアミド(A)の重合度]
ポリアミド(A)の重合度については、相対粘度が使われる。ポリアミド(A)の相対粘度は、成形性、酸素吸収性能、酸素バリア性能及び黄色度の観点から、好ましくは1.6〜4.2であり、より好ましくは1.7〜2.4、更に好ましくは1.7〜2.2である。
なお、ここでいう相対粘度は、ポリアミド(A)1gを96%硫酸100mLに溶解し、キャノンフェンスケ型粘度計にて25℃で測定した落下時間(t)と、同様に測定した96%硫酸そのものの落下時間(t0)の比であり、次式で示される。
相対粘度=t/t0
[末端アミノ基濃度]
ポリアミド(A)の酸素吸収速度、及び酸素吸収によるポリアミド(A)の酸化劣化は、ポリアミド(A)の末端アミノ基濃度を変えることで制御することが可能である。本発明では、酸素吸収速度と酸化劣化のバランスの観点から、ポリアミド(A)の末端アミノ基濃度は5〜150μeq/gの範囲が好ましく、より好ましくは10〜100μeq/g、更に好ましくは15〜80μeq/gである。
<ポリアミド(A)の製造方法>
ポリアミド(A)は、前記ジアミン単位を構成しうるジアミン成分と、前記ジカルボン酸単位を構成しうるジカルボン酸成分と、前記3級水素含有カルボン酸単位を構成しうる3級水素含有カルボン酸成分と、必要により前記ω−アミノカルボン酸単位を構成しうるω−アミノカルボン酸成分とを重縮合させることで製造することができ、重縮合条件等を調整することで重合度を制御することができる。重縮合時に分子量調整剤として少量のモノアミンやモノカルボン酸を加えてもよい。また、重縮合反応を抑制して所望の重合度とするために、ポリアミド(A)を構成するジアミン成分とカルボン酸成分との比率(モル比)を1からずらして調整してもよい。
ポリアミド(A)の重縮合方法としては、反応押出法、加圧塩法、常圧滴下法、加圧滴下法等が挙げられるが、これらに限定されない。また、反応温度は出来る限り低い方が、ポリアミド(A)の黄色化やゲル化を抑制でき、安定した性状のポリアミド(A)が得られる。
[反応押出法]
反応押出法では、ジアミン成分及びジカルボン酸成分からなるポリアミド(ポリアミド(A)の前駆体に相当するポリアミド)又はジアミン成分、ジカルボン酸成分及びω−アミノカルボン酸成分からなるポリアミド(ポリアミド(A)の前駆体に相当するポリアミド)と、3級水素含有カルボン酸成分とを押出機で溶融混練して反応させる方法である。3級水素含有カルボン酸成分をアミド交換反応により、ポリアミドの骨格中に組み込む方法であり、十分に反応させるためには、反応押出に適したスクリューを用い、L/Dの大きい2軸押出機を用いるのが好ましい。少量の3級水素含有カルボン酸単位を含むポリアミド(A)を製造する場合に、簡便な方法であり好適である。
[加圧塩法]
加圧塩法では、ナイロン塩を原料として加圧下にて溶融重縮合を行う方法である。具体的には、ジアミン成分と、ジカルボン酸成分と、3級水素含有カルボン酸成分と、必要に応じてω−アミノカルボン酸成分とからなるナイロン塩水溶液を調製した後、該水溶液を濃縮し、次いで加圧下にて昇温し、縮合水を除去しながら重縮合させる。缶内を徐々に常圧に戻しながら、ポリアミド(A)の融点+10℃程度まで昇温し、保持した後、更に、−0.02MPaGまで徐々に減圧しつつ、そのままの温度で保持し、重縮合を継続する。一定の撹拌トルクに達したら、缶内を窒素で0.3MPaG程度に加圧してポリアミド(A)を回収する。
加圧塩法は、揮発性成分をモノマーとして使用する場合に有用であり、3級水素含有カルボン酸成分の共重合率が高い場合には好ましい重縮合方法である。特に、3級水素含有カルボン酸単位をポリアミド(A)の全構成単位中に15モル%以上含むポリアミド(A)を製造する場合に、好適である。加圧塩法を用いることで、3級水素含有カルボン酸成分の蒸散を防ぎ、更には、3級水素含有カルボン酸成分同士の重縮合を抑制でき、重縮合反応をスムーズに進めることが可能であるため、性状に優れたポリアミド(A)が得られる。
[常圧滴下法]
常圧滴下法では、常圧下にて、ジカルボン酸成分と、3級水素含有カルボン酸成分と、必要に応じてω−アミノカルボン酸成分とを加熱溶融した混合物に、ジアミン成分を連続的に滴下し、縮合水を除去しながら重縮合させる。なお、生成するポリアミド(A)の融点よりも反応温度が下回らないように、反応系を昇温しながら重縮合反応を行う。
常圧滴下法は、前記加圧塩法と比較すると、塩を溶解するための水を使用しないため、バッチ当たりの収量が大きく、また、原料成分の気化・凝縮を必要としないため、反応速度の低下が少なく、工程時間を短縮できる。
[加圧滴下法]
加圧滴下法では、まず、重縮合缶にジカルボン酸成分と、3級水素含有カルボン酸成分と、必要に応じてω−アミノカルボン酸成分とを仕込み、各成分を撹拌して溶融混合し混合物を調製する。次いで、缶内を好ましくは0.3〜0.4MPaG程度に加圧しながら混合物にジアミン成分を連続的に滴下し、縮合水を除去しながら重縮合させる。この際、生成するポリアミド(A)の融点よりも反応温度が下回らないように、反応系を昇温しながら重縮合反応を行う。設定モル比に達したらジアミン成分の滴下を終了し、缶内を徐々に常圧に戻しながら、ポリアミド(A)の融点+10℃程度まで昇温し、保持した後、更に、−0.02MPaGまで徐々に減圧しつつ、そのままの温度で保持し、重縮合を継続する。一定の撹拌トルクに達したら、缶内を窒素で0.3MPaG程度に加圧してポリアミド(A)を回収する。
加圧滴下法は、加圧塩法と同様に、揮発性成分をモノマーとして使用する場合に有用であり、3級水素含有カルボン酸成分の共重合率が高い場合には好ましい重縮合方法である。特に、3級水素含有カルボン酸単位をポリアミド(A)の全構成単位中に15モル%以上含むポリアミド(A)を製造する場合に、好適である。加圧滴下法を用いることで3級水素含有カルボン酸成分の蒸散を防ぎ、更には、3級水素含有カルボン酸成分同士の重縮合を抑制でき、重縮合反応をスムーズに進めることが可能であるため、性状に優れたポリアミド(A)が得られる。更に、加圧滴下法は、加圧塩法に比べて、塩を溶解するための水を使用しないため、バッチ当たりの収量が大きく、常圧滴下法と同様に反応時間を短くできることから、ゲル化等を抑制し、黄色度が低いポリアミド(A)を得ることができる。
[重合度を高める工程]
上記重縮合方法で製造されたポリアミド(A)は、そのまま使用することもできるが、更に重合度を高めるための工程を経てもよい。更に重合度を高める工程としては、押出機内での反応押出や固相重合等が挙げられる。固相重合で用いられる加熱装置としては、連続式の加熱乾燥装置やタンブルドライヤー、コニカルドライヤー、ロータリードライヤー等と称される回転ドラム式の加熱装置およびナウタミキサーと称される内部に回転翼を備えた円錐型の加熱装置が好適に使用できるが、これらに限定されることなく公知の方法、装置を使用することができる。特にポリアミド(A)の固相重合を行う場合は、上述の装置の中で回転ドラム式の加熱装置が、系内を密閉化でき、着色の原因となる酸素を除去した状態で重縮合を進めやすいことから好ましく用いられる。
[リン原子含有化合物、アルカリ金属化合物]
ポリアミド(A)の重縮合においては、アミド化反応を促進する観点から、リン原子含有化合物を添加することが好ましい。
本発明に用いられるポリアミド(A)はリン原子含有化合物を含有する。ポリアミド(A)中のリン原子含有化合物の含有量は、酸素吸収後のポリアミドの黄色化を低減させる観点から、リン原子濃度換算で250〜500ppmであり、好ましくは280〜480ppm、更に好ましくは300〜450ppm、より更に好ましくは320〜450ppmである。当該範囲内であれば、重合中にポリアミド(A)がポリエステル(B)中の残存アンチモン系触媒との反応により、ポリアミド(A)の酸素吸収による黄色化が抑制される。一方、500ppmを超えると、ポリアミド(A)がゲル化しやすくなる傾向があり、また、リン原子含有化合物に起因すると考えられるフィッシュアイの成形品中への混入のおそれがあるので好ましくない。さらに、PETブレンドボトルに成形した際、500ppmを超えると、初期の酸素吸収速度が低下するとともに、ボトルの色調としての黒ずみが強くなり、商品性が低下するため、好ましくない。
ポリアミド(A)に含まれるリン原子含有化合物の含有量は、濃硫酸で湿式分解後、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析により、波長213.618nmによって測定される。
リン原子含有化合物としては、ジメチルホスフィン酸、フェニルメチルホスフィン酸等のホスフィン酸化合物;次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸リチウム、次亜リン酸マグネシウム、次亜リン酸カルシウム、次亜リン酸エチル等のジ亜リン酸化合物;ホスホン酸、ホスホン酸ナトリウム、ホスホン酸カリウム、ホスホン酸リチウム、ホスホン酸マグネシウム、ホスホン酸カルシウム、フェニルホスホン酸、エチルホスホン酸、フェニルホスホン酸ナトリウム、フェニルホスホン酸カリウム、フェニルホスホン酸リチウム、フェニルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸ナトリウム、エチルホスホン酸カリウム等のホスホン酸化合物;亜ホスホン酸、亜ホスホン酸ナトリウム、亜ホスホン酸リチウム、亜ホスホン酸カリウム、亜ホスホン酸マグネシウム、亜ホスホン酸カルシウム、フェニル亜ホスホン酸、フェニル亜ホスホン酸ナトリウム、フェニル亜ホスホン酸カリウム、フェニル亜ホスホン酸リチウム、フェニル亜ホスホン酸エチル等の亜ホスホン酸化合物;亜リン酸、亜リン酸水素ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸リチウム、亜リン酸カリウム、亜リン酸マグネシウム、亜リン酸カルシウム、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル、ピロ亜リン酸等の亜リン酸化合物等が挙げられる。
これらの中でも特に次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸リチウム等の次亜リン酸金属塩が、アミド化反応を促進する効果が高くかつ着色防止効果にも優れるため好ましく用いられ、特に次亜リン酸ナトリウムが好ましい。なお、本発明で使用できるリン原子含有化合物はこれらの化合物に限定されない。
リン原子含有化合物の添加量は、酸素吸収後のポリアミドの黄色化を低減させる観点から、ポリアミド(A)中のリン原子含有化合物の含有量が上記範囲となるように設定される。
また、ポリアミド(A)の重縮合系内には、リン原子含有化合物と併用してアルカリ金属化合物を添加することが好ましい。重縮合中のポリアミド(A)の着色を防止するためには十分な量のリン原子含有化合物を存在させる必要があるが、場合によってはポリアミド(A)のゲル化を招くおそれがあるため、アミド化反応速度を調整するためにもアルカリ金属化合物を共存させることが好ましい。
アルカリ金属化合物としては、アルカリ金属水酸化物やアルカリ金属酢酸塩、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属アルコキシド等が好ましい。本発明で用いることのできるアルカリ金属化合物の具体例としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸ルビジウム、酢酸セシウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムプロポキシド、ナトリウムブトキシド、カリウムメトキシド、リチウムメトキシド、炭酸ナトリウム等が挙げられるが、これらの化合物に限定されることなく用いることができる。なお、リン原子含有化合物とアルカリ金属化合物の比率(モル比)は、重合速度制御の観点や、黄色度を低減する観点から、リン原子含有化合物/アルカリ金属化合物=1.0/0.05〜1.0/1.5の範囲が好ましく、より好ましくは、1.0/0.1〜1.0/1.2、更に好ましくは、1.0/0.2〜1.0/1.1である。
1−2.ポリエステル(B)
本発明において、ポリエステル(B)とは、ジカルボン酸を含む多価カルボン酸およびこれらのエステル形成性誘導体から選ばれる一種又は二種以上とグリコールを含む多価アルコールから選ばれる一種又は二種以上とからなるもの、又はヒドロキシカルボン酸およびこれらのエステル形成性誘導体からなるもの、又は環状エステルからなるものをいう。
ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、3−シクロブタンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2,5−ノルボルナンジカルボン酸、ダイマー酸等に例示される飽和脂肪族ジカルボン酸又はこれらのエステル形成性誘導体、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸等に例示される不飽和脂肪族ジカルボン酸又はこれらのエステル形成性誘導体、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルスルホンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルエーテルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−p,p’−ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸等に例示される芳香族ジカルボン酸又はこれらのエステル形成性誘導体、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、2−ナトリウムスルホテレフタル酸、5−リチウムスルホイソフタル酸、2−リチウムスルホテレフタル酸、5−カリウムスルホイソフタル酸、2−カリウムスルホテレフタル酸等に例示される金属スルホネート基含有芳香族ジカルボン酸又はそれらの低級アルキルエステル誘導体等が挙げられる。
中でも、金属スルホネート基含有芳香族ジカルボン酸は、ポリアミド(A)との相溶性に優れ、ポリアミド(A)をポリエステル中に微細に分散させ、インジェクション成形体の透明性を向上させることができる。金属スルホネート基の含有量は、ポリエステルの特性を損なうことなく相溶性を高める観点から、ジカルボン酸構成単位の0.01〜5モル%であることが好ましく、より好ましくは0.03〜2モル%、更に好ましくは0.06〜1モル%である。
上記のジカルボン酸のなかでも、特に、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸の使用が、得られるポリエステルの物理特性等の点で好ましく、必要に応じて他のジカルボン酸を共重合してもよい。
これらジカルボン酸以外の多価カルボン酸として、エタントリカルボン酸、プロパントリカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、およびこれらのエステル形成性誘導体等が挙げられる。
グリコールとしてはエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジエタノール、1,10−デカメチレングリコール、1,12−ドデカンジオール、ポリエチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等に例示される脂肪族グリコール、ヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビスフェノール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン、1,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、ビスフェノールA、ビスフェノールC、2,5−ナフタレンジオール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、これらのグリコールにエチレンオキシドが付加されたグリコール等に例示される芳香族グリコールが挙げられる。
上記のグリコールのなかでも、特に、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールを主成分として使用することが好適である。
また、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール残基を含むポリエステルをポリアミド(A)と混合した樹脂組成物からなるインジェクション成形体は透明性に優れている。
これらグリコール以外の多価アルコールとして、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセロール、ヘキサントリオール等が挙げられる。ヒドロキシカルボン酸としては、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、ヒドロキシ酢酸、3−ヒドロキシ酪酸、p−ヒドロキシ安息香酸、p−(2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸、4−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸、又はこれらのエステル形成性誘導体等が挙げられる。
環状エステルとしては、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、β−メチル−β−プロピオラクトン、δ−バレロラクトン、グリコリド、ラクチド等が挙げられる。
多価カルボン酸、ヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体としては、これらのアルキルエステル、酸クロライド、酸無水物等が例示される。
本発明で用いられるポリエステル(B)としては、主たる酸成分がテレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体もしくはナフタレンジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体であり、主たるグリコール成分がアルキレングリコールであるポリエステルが好ましい。
主たる酸成分がテレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体であるポリエステルとは、全酸成分に対してテレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体を合計して70モル%以上含有するポリエステルであることが好ましく、より好ましくは80モル%以上含有するポリエステルであり、さらに好ましくは90モル%以上含有するポリエステルである。主たる酸成分がナフタレンジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体であるポリエステルも同様に、ナフタレンジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体を合計して70モル%以上含有するポリエステルであることが好ましく、より好ましくは80モル%以上含有するポリエステルであり、さらに好ましくは90モル%以上含有するポリエステルである。
本発明で用いられるナフタレンジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体としては、上述のジカルボン酸類に例示した1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、またはこれらのエステル形成性誘導体が好ましい。
主たるグリコール成分がアルキレングリコールであるポリエステルとは、全グリコール成分に対してアルキレングリコールを合計して70モル%以上含有するポリエステルであることが好ましく、より好ましくは80モル%以上含有するポリエステルであり、さらに好ましくは90モル%以上含有するポリエステルである。ここで言うアルキレングリコールは、分子鎖中に置換基や脂環構造を含んでいてもよい。
上記テレフタル酸/エチレングリコール以外の共重合成分は、イソフタル酸、スルホイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオールおよび2−メチル−1,3−プロパンジオールからなる群より選ばれる少なくとも1種以上であることが、透明性と成形性を両立する上で好ましく、特にイソフタル酸、スルホイソフタル酸、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールからなる群より選ばれる少なくとも1種以上であることがより好ましい。
本発明に用いられるポリエステル(B)の好ましい一例は、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートから構成されるポリエステルであり、より好ましくはエチレンテレフタレート単位を70モル%以上含む線状ポリエステルであり、さらに好ましくはエチレンテレフタレート単位を80モル%以上含む線状ポリエステルであり、特に好ましいのはエチレンテレフタレート単位を90モル%以上含む線状ポリエステルである。
また本発明に用いられるポリエステル(B)の好ましい他の一例は、主たる繰り返し単位がエチレン−2,6−ナフタレートから構成されるポリエステルであり、より好ましくはエチレン−2,6−ナフタレート単位を70モル%以上含む線状ポリエステルであり、さらに好ましくはエチレン−2,6−ナフタレート単位を80モル%以上含む線状ポリエステルであり、特に好ましいのは、エチレン−2,6−ナフタレート単位を90モル%以上含む線状ポリエステルである。
また本発明に用いられるポリエステル(B)の好ましいその他の例としては、プロピレンテレフタレート単位を70モル%以上含む線状ポリエステル、プロピレンナフタレート単位を70モル%以上含む線状ポリエステル、1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート単位を70モル%以上含む線状ポリエステル、ブチレンナフタレート単位を70モル%以上含む線状ポリエステル、またはブチレンテレフタレート単位を70モル%以上含む線状ポリエステルである。
特にポリエステル(B)全体の組成として、テレフタル酸/イソフタル酸//エチレングリコールの組合せ、テレフタル酸//エチレングリコール/1,4−シクロヘキサンジメタノールの組合せ、テレフタル酸//エチレングリコール/ネオペンチルグリコールの組合せ、テレフタル酸/スルホイソフタル酸//エチレングリコールの組み合わせ、テレフタル酸/イソフタル酸/スルホイソフタル酸//エチレングリコールの組み合わせは、透明性と成形性とを両立する上で好ましい。なお、当然ではあるが、エステル化(エステル交換)反応、重縮合反応中に、エチレングリコールの二量化により生じるジエチレングリコールを少量(5モル%以下)含んでもよいことは言うまでもない。
また本発明に用いられるポリエステル(B)の好ましいその他の例としては、グリコール酸やグリコール酸メチルの重縮合もしくは、グリコリドの開環重縮合にて得られるポリグリコール酸が挙げられる。このポリグリコール酸には、ラクチド等の他成分を共重合しても構わない。
本発明に用いられるポリエステル(B)はアンチモン化合物を含有する。ポリエステル(B)中のアンチモン化合物の含有量は、アンチモン原子濃度換算で100〜300ppmであり、好ましくは150〜250ppm、より好ましくは150〜200ppmである。当該範囲内であれば、ポリエステルの重合速度への影響、物性、加工性、色調等への影響はなく、ポリアミド(A)と溶融混合して成形されるインジェクション成形体が酸素吸収しても黄色化を抑制することが可能である。
ポリエステル(B)に含まれるアンチモン化合物の含有量は、走査型蛍光X線分析によって測定される。
[ポリエステルの製造]
本発明で用いられるポリエステルを製造する際に使用する重縮合触媒は、重合反応の任意の段階で反応系に添加することができる。例えばエステル化反応もしくはエステル交換反応の開始前および反応途中の任意の段階もしくは重縮合反応の開始直前あるいは反応途中に反応系へ添加することができる。
本発明で用いられるポリエステルを製造する際に使用する重縮合触媒の添加方法は、粉末状ないしはニート状での添加であってもよいし、エチレングリコール等の溶媒のスラリー状もしくは溶液状での添加であってもよく、特に限定されない。また、他の成分と予め混合した混合物あるいは錯体として添加してもよいし、これらを別々に添加してもよい。
本発明で用いられるポリエステルを製造する際に使用する重縮合触媒は、アンチモン化合物であることが好ましい。アンチモン化合物としては、好適な化合物として三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酢酸アンチモン、アンチモングリコキサイドなどが挙げられ、特に三酸化アンチモンが好ましい。
アンチモン化合物の添加量は、酸素吸収後のポリアミドの黄色化を低減させる観点から、ポリエステル(B)に含まれるアンチモン化合物の含有量が上記範囲となるように設定される。
また、アンチモン化合物以外に、ゲルマニウム化合物、コバルト化合物、チタン化合物、スズ化合物、アルミニウム化合物などの他の重縮合触媒を、これらの成分の添加が前述のようなポリエステルの特性、加工性、色調等製品に問題を生じない添加量の範囲内において共存させて用いてもよい。特にゲルマニウム化合物を併用することで、結晶化速度や耐熱性を適度に制御することが可能である。また、コバルト化合物を併用することで、本発明のポリアミド(A)の酸素吸収性能を向上させることも可能である。
ゲルマニウム化合物としては、二酸化ゲルマニウム、四塩化ゲルマニウムなどが挙げられ、特に二酸化ゲルマニウムが好ましい。また、チタン化合物、スズ化合物などの他の重合触媒としては、テトラ−n−プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトライソブチルチタネート、テトラ−tert−ブチルチタネート、テトラシクロヘキシルチタネート、テトラフェニルチタネート、テトラベンジルチタネートなどが挙げられ、特にテトラブチルチタネートの使用が好ましい。またスズ化合物としては、ジブチルスズオキサイド、メチルフェニルスズオキサイド、テトラエチルスズ、ヘキサエチルジスズオキサイド、トリエチルスズハイドロオキサイド、モノブチルヒドロキシスズオキサイド、トリイソブチルスズアセテート、ジフェニルスズジラウレート、モノブチルスズトリクロライド、ジブチルスズサルファイド、ジブチルヒドロキシスズオキサイド、メチルスタンノン酸、エチルスタンノン酸などが挙げられ、特にモノブチルヒドロキシスズオキサイドの使用が好ましい。
1−3.その他の樹脂
本発明に用いられる樹脂組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲で、樹脂組成物に付与したい性能等に応じて、ポリアミド(A)及びポリエステル(B)以外の樹脂を含有してもよい。その他の樹脂としては特に限定されないが、例えば熱可塑性樹脂を用いることができ、具体的にはポリオレフィン、ポリアミド(A)以外のポリアミド、エチレン−ビニルアルコール共重合体及び植物由来樹脂を挙げることができる。
例えば、耐衝撃性、耐ピンホール性、柔軟性を付与する観点からは、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンやそれらの各種変性物、ポリオレフィン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、スチレン−ブタジエン共重合樹脂やその水素添加処理物、ポリエステル系エラストマー等に代表される各種熱可塑性エラストマー、N−MXD6、ナイロン6,66,12、ナイロン12等の各種ポリアミド等が挙げられる。また、酸素吸収性能をさらに付与する観点からは、ポリブタジエンや変性ポリブタジエン等の炭素−炭素不飽和二重結合含有樹脂が挙げられる。また、酸素吸収効果を効果的に発揮する観点からは、ポリアミド(A)以外のポリアミド及びエチレン−ビニルアルコール共重合体のような酸素バリア性の高い樹脂が挙げられる。
ポリアミド(A)と、ポリエステル(B)と、その他の樹脂との混合は、従来公知の方法を用いることができ、乾式混合や溶融混合が例示される。ポリアミド(A)とポリエステル(B)と、その他の樹脂とを溶融混合し、所望のペレット、成形体を製造する場合、押出機等を用いて溶融ブレンドすることができる。押出機は単軸押出機、2軸押出機などの公知の押出機を用いることができるが、これらに限定されない。
1−4.添加剤
本発明において、樹脂組成物には、前述したポリアミド(A)及びポリエステル(B)以外に、必要に応じて更に添加剤を含有してもよい。添加剤としては、白化防止剤、層状珪酸塩、顔料、染料、酸素吸収剤、ゲル化防止・フィッシュアイ低減剤、酸化防止剤、滑剤、艶消剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、着色防止剤、結晶化核剤等が挙げられる。添加剤は1種であってもよいし、2種以上の組合せであってもよい。樹脂組成物中における添加剤の含有量は、添加剤の種類にもよるが、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
[金属化合物(C)]
樹脂組成物の酸素吸収性能を更に高めるために、本発明の効果を損なわない範囲で金属化合物(C)を添加してもよい。金属化合物(C)は、酸化反応促進剤として作用し、ポリアミド(A)が有する酸素吸収性能を促進することで、樹脂組成物の酸素吸収性能を高めることができる。
本発明で使用されうる金属化合物(C)は、元素周期律表の第VIII族の遷移金属、マンガン、銅及び亜鉛から選択された一種以上の金属原子を含むことが好ましい。酸素吸収性成形物中において、これらの金属原子を含む化合物が熱可塑性樹脂の酸化反応の触媒作用が高く、好ましい。より好ましくはコバルト、ロジウム、鉄及び/又は銅を含む金属化合物が用いられる。
ただし、ポリアミド(A)にポリアミドMXD6やポリアミドMXD6Iを併用する場合、コバルトとの触媒作用が高いため、マスターバッチなどで事前に溶融混合する場合、ポリアミド(A)がマスターバッチの段階で酸化分解する。コバルトはポリアミド(A)の酸素吸収向上能力は非常に高いが、マスターバッチとしての酸素吸収性能が安定しない場合がある。マスターバッチとしての安定した性能を得るためには、マンガンや鉄などが好ましい。
本発明で用いられる金属化合物(C)は、上述の金属を含む低価数の無機酸塩、有機酸塩又は錯塩の形で使用される。無機酸塩としては、塩化物や臭化物等のハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩等が挙げられる。一方、有機酸塩としては、カルボン酸塩、スルホン酸塩、ホスホン酸塩等が挙げられる。また、β−ジケトンまたはβ−ケト酸エステル等との遷移金属錯体も利用することができる。特に本発明では酸素吸収機能が良好に発現することから、上記金属原子を含むカルボン酸塩、炭酸塩、アセチルアセトネート錯体、酸化物およびハロゲン化物から選ばれる一種以上を使用することが好ましく、ステアリン酸塩、酢酸塩、炭酸塩およびアセチルアセトネート錯体から選ばれる一種以上を使用することがより好ましい。
本発明で用いられる金属化合物(C)は、ポリアミド(A)と溶融混合しやすいように粉末状のものが用いられる。その粒径は、好ましくは0.5mm以下、より好ましくは0.1mm以下である。金属化合物の粒径が0.5mm以下であれば、熱可塑性樹脂と混合した際に全体に均一に金属化合物を分散させることができる。
また、樹脂組成物中、金属化合物(C)とポリアミド(A)との合計量に対する金属化合物(C)の含有量は、金属原子濃度として好ましくは10〜5000ppm、より好ましくは50〜4000ppmである。金属原子濃度が当該範囲内であれば、樹脂組成物の製造時において金属化合物(C)全量をポリアミド(A)に溶融混合でき、また、樹脂組成物を利用して得られる成形品の酸素吸収能力が十分である。
また、マスターバッチを作成する場合、ポリアミド(A)とマスターバッチとの合計量に対する金属化合物(C)の含有量は、好ましくは10〜5000ppm、より好ましくは50〜1000ppmである。金属原子濃度が当該範囲内であれば、樹脂組成物を利用して得られる成形品の酸素吸収能力が十分であり、また、成形時の溶融粘度低下等が生じない。
また、ポリアミド(A)とマスターバッチの混合比(質量比)は、マスターバッチの濃度にもよるが、ポリアミド(A)そのものの酸素バリア性と酸素吸収能力を勘案すると、ポリアミド(A):マスターバッチ=99:1〜70:30の範囲が好ましい。
マスターバッチを作成する場合、ポリアミド(A)と金属化合物(C)との混合は従来公知の押出機を用いて溶融混練する方法を用いることができる。また、ポリアミド(A)とは別の供給装置を用いて押出機内に金属化合物(C)を添加することもできる。
なおその他添加剤等を添加する場合も、上述と同様の方法で添加することができる。
2.インジェクション成形体及びその製造方法
本発明のインジェクション成形体の製造方法については特に限定されず、通常の射出成形法により製造することができる。例えば、射出機を備えた成形機及び射出用金型を用いて、樹脂組成物を射出シリンダーから金型ホットランナーを通して、キャビティー内に射出して、射出用金型の形状に対応したインジェクション成形体を製造することができる。
得られた成形体の口頸部に耐熱性を与えるため、この段階で口頸部を熱処理により結晶化させてもよい。結晶化度は好ましくは30〜50%、より好ましくは35〜45%である。なお、結晶化は、後述する二次加工を施した後に実施してもよい。
本発明のインジェクション成形体の厚みは、酸素吸収性能及び酸素バリア性能を高めつつ、インジェクション成形体に要求される柔軟性等の諸物性を確保するという観点から、3〜5000μmの範囲内に設定することが好ましく、更に好ましくは10〜4500mmの範囲内である。
本発明のインジェクション成形体自体が容器である場合、容器外からわずかに侵入する酸素のほか、容器内の酸素を吸収して、保存する内容物品の酸素による変質を防止することができる。
本発明のインジェクション成形体の形状は特に限定されず、金型に応じて任意の形状とすることができる。本発明のインジェクション成形体が酸素バリア性能及び酸素吸収性能を発現することができることを考慮すると、本発明のインジェクション成形体は、カップ状容器(インジェクションカップ)やボトル状容器等の保存容器であることが好ましい。また、PETボトルのような後述するようなブロー成形等の二次加工のために、本発明のインジェクション成形体は、試験管状のプリフォーム(パリソン)であることも好ましい。
<<インジェクション成形体を加工して得られる容器>>
本発明のインジェクション成形体を二次加工して得られる容器は、容器外からわずかに侵入する酸素のほか、容器内の酸素を吸収して、保存する内容物品の酸素による変質を防止することができる。
二次加工としてはブロー成形や延伸ブロー成形等が挙げられ、二次加工して得られる容器としてはボトルが挙げられる。
インジェクションブロー成形では、まず本発明のインジェクション成形体として試験管状のプリフォーム(パリソン)を成形し、次いで加熱したプリフォームの口部を治具で固定し、該プリフォームを最終形状金型に嵌め、口部から空気を吹込み、プリフォームを膨らませて金型に密着させ、冷却固化させることでボトル状に成形することができる。
また、インジェクションストレッチブロー成形では、加熱したプリフォームの口部を治具で固定し、該プリフォームを最終形状金型に嵌め、口部から延伸ロッドで延伸しながら空気を吹込み、プリフォームをブロー延伸させて金型に密着させ、冷却固化させることでボトル状に成形することができる。
なお、インジェクションストレッチブロー成形法としては、大別してホットパリソン方式とコールドパリソン方式とがある。前者はプリフォームを完全に冷却することなく、軟化状態でブロー成形する。一方、後者のコールドパリソン方式では、プリフォームを最終形状の寸法よりかなり小さく、樹脂が非晶質である過冷却有底プリフォームとして形成し、このプリフォームをその延伸温度に予備加熱した後に、最終形状金型中で軸方向に引張延伸するとともに周方向にブロー延伸する方式であり、大量生産に向いている。いずれの方法においても、このプリフォームをガラス転移点(Tg)以上の延伸温度に加熱後、熱処理(ヒートセット)温度に加熱された最終形状金型内においてストレッチブロー成形法によって、延伸ロッドにより縦方向に延伸すると共にブローエアによって横方向に延伸する。最終ブロー成形体の延伸倍率は、縦方向で1.2〜6倍、横方向で1.2〜4.5倍が好ましい。
上述した最終形状金型を、樹脂の結晶化が促進される温度、例えば120〜230℃、好ましくは130〜210℃に加熱してブロー時に、成形体の器壁の外側を金型内面に所定時間接触させて熱処理を行う。所定時間の熱処理後、ブロー用流体を内部冷却用流体に切換えて内部を冷却する。熱処理時間は、ブロー成形体の厚みや温度によって相違するが、一般に1.5〜30秒、特に2〜20秒である。一方冷却時間も熱処理温度や冷却用流体の種類により異なるが、一般に0.1〜30秒、特に0.2〜20秒である。この熱処理により成形体各部は結晶化される。
冷却用流体としては、常温の空気、冷却された各種気体、例えば−40℃〜+10℃の窒素、空気、炭酸ガス等の他に、化学的に不活性な液化ガス、例えば液化窒素ガス、液化炭酸ガス、液化トリクロロフルオロメタンガス、液化ジクロロジフルオロメタンガス、他の液化脂肪族炭化水素ガス等が使用できる。この冷却用流体には、水等の気化熱の大きい液体ミストを共存させることもできる。上述した冷却用流体を使用することにより、著しく大きい冷却温度を得ることができる。また、ストレッチブロー成形に際して2個の金型を使用し、第1の金型では所定の温度及び時間の範囲内で熱処理した後、ブロー成形体を冷却用の第2の金型へ移し、再度ブローすると同時にブロー成形体を冷却してもよい。金型から取出したブロー成形体は、放冷により、又は冷風を吹付けることにより冷却する。
他のブロー成形体の製造方法としては、前記プリフォームを、一次ストレッチブロー金型を用いて最終ブロー成形体よりも大きい寸法の一次ブロー成形体とし、次いでこの一次ブロー成形体を加熱収縮させた後、二次金型を用いてストレッチブロー成形を行って最終ブロー成形体とする二段ブロー成形を採用してもよい。このブロー成形体の製造方法によれば、ブロー成形体の底部が十分に延伸薄肉化され、熱間充填、加熱滅菌時の底部の変形、耐衝撃性に優れたブロー成形体を得ることができる。
本発明のインジェクション成形体及びそれを二次加工して得られる容器には、無機物又は無機酸化物の蒸着膜や、アモルファスカーボン膜をコーティングしてもよい。
無機物又は無機酸化物としては、アルミニウムやアルミナ、酸化珪素等が挙げられる。無機物又は無機酸化物の蒸着膜は、本発明のインジェクション成形体及びそれを二次加工して得られる容器から、アセトアルデヒドやホルムアルデヒド等の溶出物を遮蔽できる。蒸着膜の形成方法は特に限定されず、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法や、PECVD等の化学蒸着法等が挙げられる。蒸着膜の厚みは、ガスバリア性、遮光性及び耐屈曲性等の観点から、好ましくは5〜500nm、より好ましくは5〜200nmである。
アモルファスカーボン膜はダイヤモンド状炭素膜で、iカーボン膜または水素化アモルファスカーボン膜とも呼ばれる硬質炭素膜である。膜の形成法としては、排気により中空成形体の内部を真空にし、そこへ炭素源ガスを供給し、プラズマ発生用エネルギーを供給することにより、その炭素源ガスをプラズマ化させる方法が例示され、これにより、容器内面にアモルファスカーボン膜を形成させることができる。アモルファスカーボン膜は酸素や二酸化炭素のような低分子無機ガスの透過度を著しく減少させることができるだけでなく、臭いを有する各種の低分子有機化合物の収着を抑制することができる。アモルファスカーボン膜の厚みは、低分子有機化合物の収着抑制効果、ガスバリア性の向上効果、プラスチックとの密着性、耐久性および透明性等の観点から、50〜5000nmが好ましい。
本発明のインジェクション成形体及びそれを二次加工して得られる容器は、酸素吸収性能及び酸素バリア性能に優れ、かつ内容物の風味保持性に優れるため、種々の物品の包装に適している。
被保存物としては、牛乳、乳製品、ジュース、コーヒー、茶類、アルコール飲料等の飲料;ソース、醤油、ドレッシング等の液体調味料、スープ、シチュー、カレー、乳幼児用調理食品、介護調理食品等の調理食品;ジャム、マヨネーズ等のペースト状食品;ツナ、魚貝等の水産製品;チーズ、バター等の乳加工品;肉、サラミ、ソーセージ、ハム等の畜肉加工品;にんじん、じゃがいも等の野菜類;卵;麺類;調理前の米類、調理された炊飯米、米粥等の加工米製品;粉末調味料、粉末コーヒー、乳幼児用粉末ミルク、粉末ダイエット食品、乾燥野菜、せんべい等の乾燥食品;農薬、殺虫剤等の化学品;医薬品、化粧品;ペットフード;シャンプー、リンス、洗剤等の雑貨品;等の種々の物品を挙げることができる。特に、酸素存在下で劣化を起こしやすい内容品、例えば、飲料ではビール、ワイン、フルーツジュース、炭酸ソフトドリンク等、食品では果物、ナッツ、野菜、肉製品、幼児食品、コーヒー、ジャム、マヨネーズ、ケチャップ、食用油、ドレッシング、ソース類、佃煮類、乳製品類等、その他では医薬品、化粧品等の包装材に好適である。
また、これらの被保存物の充填前後に、被保存物に適した形で、本発明のインジェクション成形体及びそれを二次加工して得られる容器や被保存物の殺菌を施すことができる。殺菌方法としては、100℃以下での熱水処理、100℃以上の加圧熱水処理、130℃以上の超高温加熱処理等の加熱殺菌、紫外線、マイクロ波、ガンマ線等の電磁波殺菌、エチレンオキサイド等のガス処理、過酸化水素や次亜塩素酸等の薬剤殺菌等が挙げられる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、以下の実施例において、共重合体を構成する単位に関して、
メタキシリレンジアミンに由来する単位を「MXDA」、
アジピン酸に由来する単位を「AA」、
イソフタル酸に由来する単位を「IPA」、
L−アラニンに由来する単位を「L−Ala」、
また、ポリメタキシリレンアジパミドを「N−MXD6」という。
製造例で得られたポリアミドのα−アミノ酸含有率、リン原子濃度、相対粘度、末端アミノ基濃度、ガラス転移温度及び融点は以下の方法で測定した。また、製造例で得られたポリアミドからフィルムを作製し、その酸素吸収量を以下の方法で測定した。
(1)α−アミノ酸含有率
1H−NMR(400MHz,日本電子(株)製、商品名:JNM−AL400、測定モード:NON(1H))を用いて、ポリアミドのα−アミノ酸含有率の定量を実施した。具体的には、溶媒としてギ酸−dを用いてポリアミドの5質量%の溶液を調製し、1H−NMR測定を実施した。
(2)リン原子濃度
ポリアミド中のリン原子濃度の測定は、ポリアミドを濃硫酸で湿式分解後、走査型蛍光X線装置((株)リガク製、商品名:ZSX primus)を用い、波長213.618nmにて定量した。
(3)相対粘度
ポリアミド1gを精秤し、96%硫酸100mlに20〜30℃で撹拌溶解した。完全に溶解した後、速やかにキャノンフェンスケ型粘度計に溶液5mlを取り、25℃の恒温漕中で10分間放置後、落下時間(t)を測定した。また、96%硫酸そのものの落下時間(t0)も同様に測定した。t及びt0から次式により相対粘度を算出した。
相対粘度=t/t0
(4)末端アミノ基濃度〔NH2
ポリアミドを精秤し、フェノール/エタノール=4/1容量溶液に20〜30℃で撹拌溶解させ、完全に溶解した後、撹拌しつつ、メタノール5mlで容器内壁を洗い流し、0.01mol/L塩酸水溶液で中和滴定して末端アミノ基濃度〔NH2〕を求めた。
(5)ガラス転移温度及び融点
示差走査熱量計((株)島津製作所製、商品名:DSC−60)を用い、昇温速度10℃/分で窒素気流下にDSC測定(示差走査熱量測定)を行い、ガラス転移温度(Tg)及び融点(Tm)を求めた。
(6)酸素吸収量
Tダイを設置した30mmφ二軸押出機((株)プラスチック工学研究所製)を用い、(ポリアミドの融点+20℃)のシリンダー・Tダイ温度にて、ポリアミドから厚さ約100μmの無延伸単層フィルムを成形した。
製造した無延伸単層フィルムから切り出した10cm×10cmの試験片2枚を、アルミ箔積層フィルムからなる25cm×18cmの3方シール袋に、水10mlを含ませた綿と共に仕込み、袋内空気量が400mlとなるようにして密封した。袋内の湿度は100%RH(相対湿度)とした。40℃下で7日保存後、14日保存後、28日保存後のそれぞれに袋内の酸素濃度を酸素濃度計(東レエンジニアリング(株)製、商品名:LC−700F)で測定し、この酸素濃度から酸素吸収量を計算した。
製造例1(ポリアミド1の製造)
撹拌機、分縮器、全縮器、圧力調整器、温度計、滴下槽及びポンプ、アスピレーター、窒素導入管、底排弁、ストランドダイを備えた内容積50Lの耐圧反応容器に、精秤したアジピン酸(旭化成ケミカルズ(株)製)13000g(88.96mol)、L−アラニン(Sinogel amino acid co.ltd)880.56g(9.88mol)、次亜リン酸ナトリウム22.3g(0.21mol)、酢酸ナトリウム13.8g(0.17mol)を入れ、十分に窒素置換した後、反応容器内を密閉し、容器内を0.4MPaに保ちながら撹拌下170℃まで昇温した。170℃に到達した後、反応容器内の溶融した原料へ滴下槽に貯めたメタキシリレンジアミン(三菱ガス化学(株)製)12082.2g(88.71mol)の滴下を開始し、容器内を0.4MPaに保ちながら生成する縮合水を系外へ除きながら反応槽内を連続的に240℃まで昇温した。メタキシリレンジアミンの滴下終了後、反応容器内を徐々に常圧に戻し、次いでアスピレーターを用いて反応槽内を80kPaに減圧して縮合水を除いた。減圧中に撹拌機の撹拌トルクを観察し、所定のトルクに達した時点で撹拌を止め、反応槽内を窒素で加圧し、底排弁を開け、ストランドダイからポリマーを抜き出してストランド化した後、冷却してペレタイザーによりペレット化した。次にこのペレットをステンレス製の回転ドラム式の加熱装置に仕込み、5rpmで回転させた。十分窒素置換し、さらに少量の窒素気流下にて反応系内を室温から140℃まで昇温した。反応系内温度が140℃に達した時点で1torr以下まで減圧を行い、更に系内温度を110分間で180℃まで昇温した。系内温度が180℃に達した時点から、同温度にて180分間、固相重合反応を継続した。反応終了後、減圧を終了し窒素気流下にて系内温度を下げ、60℃に達した時点でペレットを取り出すことにより、MXDA/AA/L−Ala共重合体(ポリアミド1)を得た。なお、各モノマーの仕込み組成比は、メタキシリレンジアミン:アジピン酸:L−アラニン=47.3:47.4:5.3(mol%)であった。また、リン原子濃度がリン濃度換算で300ppmであった。
製造例2(ポリアミド2の製造)
各モノマーの仕込み組成比を、メタキシリレンジアミン:アジピン酸:L−アラニン=44.4:44.5:11.1(mol%)としたこと以外は製造例1と同様にしてMXDA/AA/L−Ala共重合体(ポリアミド2)を得た。また、リン原子濃度がリン濃度換算で300ppmであった。
製造例3(ポリアミド3の製造)
各モノマーの仕込み組成比を、メタキシリレンジアミン:アジピン酸:L−アラニン=33.3:33.4:33.3(mol%)としたこと以外は製造例1と同様にしてMXDA/AA/L−Ala共重合体(ポリアミド3)を得た。また、リン原子濃度がリン濃度換算で300ppmであった。
製造例4(ポリアミド4の製造)
ジカルボン酸成分をイソフタル酸(エイ・ジイ・インタナショナル・ケミカル(株)製)とアジピン酸の混合物に変更し、各モノマーの仕込み組成比を、メタキシリレンジアミン:アジピン酸:イソフタル酸:L−アラニン=44.3:39.0:5.6:11.1(mol%)としたこと以外は製造例1と同様にしてMXDA/AA/IPA/L−Ala共重合体(ポリアミド4)を得た。また、リン原子濃度がリン濃度換算で300ppmであった。
製造例5(ポリアミド5の製造)
リン原子濃度がリン濃度換算で450ppmとなるように次亜リン酸ナトリウムを添加したこと以外は製造例1と同様にしてMXDA/AA/L−Ala共重合体(ポリアミド5)を得た。なお、各モノマーの仕込み組成比は、メタキシリレンジアミン:アジピン酸:L−アラニン=47.3:47.4:5.3(mol%)であった。また、リン原子濃度がリン濃度換算で450ppmであった。
製造例6(ポリアミド6の製造)
リン原子濃度がリン濃度換算で150ppmとなるように次亜リン酸ナトリウムを添加したこと以外は製造例1と同様にしてMXDA/AA/L−Ala共重合体(ポリアミド6)を得た。なお、各モノマーの仕込み組成比は、メタキシリレンジアミン:アジピン酸:L−アラニン=47.3:47.4:5.3(mol%)であった。また、リン原子濃度がリン濃度換算で150ppmであった。
製造例7(ポリアミド7の製造)
固相重合工程で固相重合をすることなく、150℃4時間の乾燥としたこと以外は、製造例1と同様にしてMXDA/AA/L−Ala共重合体(ポリアミド7)を得た。なお、各モノマーの仕込み組成比は、メタキシリレンジアミン:アジピン酸:L−アラニン=47.3:47.4:5.3(mol%)であった。また、リン原子濃度がリン濃度換算で300ppmであった。
製造例8(ポリアミド8の製造)
リン原子濃度がリン濃度換算で70ppmとなるように次亜リン酸ナトリウムを添加したこと以外は製造例1と同様にしてMXDA/AA/L−Ala共重合体(ポリアミド8)を得た。なお、各モノマーの仕込み組成比は、メタキシリレンジアミン:アジピン酸:L−アラニン=47.3:47.4:5.3(mol%)であった。また、リン原子濃度がリン濃度換算で70ppmであった。
製造例9(ポリアミド9の製造)
リン原子濃度がリン濃度換算で600ppmとなるように次亜リン酸ナトリウムを添加したこと以外は製造例1と同様にしてMXDA/AA/L−Ala共重合体(ポリアミド8)を得た。なお、各モノマーの仕込み組成比は、メタキシリレンジアミン:アジピン酸:L−アラニン=47.3:47.4:5.3(mol%)であった。また、リン原子濃度がリン濃度換算で600ppmであった。
表1に、ポリアミド1〜9の仕込みモノマー組成、並びに得られたポリアミドのα−アミノ酸含有率、リン原子濃度、相対粘度、末端アミノ基濃度、ガラス転移温度、融点及び酸素吸収量の測定結果を示す。
Figure 0006135160
以下の実施例において、ポリエステル(B)として、表2に示すポリエチレンテレフタレート(PET)を用いた。PET1〜3に関しては、下記方法により製造した。
PET製造例1
撹拌機付き30Lのエステル化反応槽に高純度テレフタル酸11629.9g(70モル)(水島アロマ(株)製)及びエチレングリコール4344.9g(70モル)(丸善石油化学(株)製)を仕込み、撹拌下、約270℃、約0.3MPaにて3時間エステル化反応を行い、オリゴマーを得た。このオリゴマーに三酸化アンチモン(日本精鉱(株)製、商品名:PATOX−C)の重合触媒を用い、ポリエステルに対して0.97g(0.0033モル)になるように加え、次いで、窒素雰囲気下、常圧にて250℃で10分間攪拌した。その後、60分間かけて280℃まで昇温しつつ反応系の圧力を徐々に下げて13.3Pa(0.1Torr)として、さらに280℃、13.3Paで極限粘度が約0.60dl/gになるまで重縮合反応を実施した。反応槽内を窒素で加圧し、底排弁を開け、ストランドダイからポリマーを抜き出してストランド化した後、冷却してペレタイザーによりペレット化した。続いて、得られた溶融重合ポリエステルを真空状態で180℃、1時間放置しレジンの結晶化を実施した。その後、80℃で8時間真空乾燥させ、80℃から220℃までを2時間かけ昇温し、0.5Torrの条件で極限粘度が約0.78dl/gになるまで固相重合を実施し、PET1を得た。
PET製造例2
三酸化アンチモン重合触媒を3.9g(0.0133モル)添加したこと及び0.5Torrの条件で極限粘度が約0.76dl/gになるまで固相重合を実施したこと以外はPET製造例1と同様にして、PET2を得た。
PET製造例3
三酸化アンチモン重合触媒を7.4g(0.025モル)添加したこと及び0.5Torrの条件で極限粘度が約0.81dl/gになるまで固相重合を実施したこと以外はPET製造例1と同様にして、PET3を得た。
表2に示したポリエステルの極限粘度、エチレングリコール及びテレフタル酸以外の成分の共重合率、熱的性質、金属量は以下の方法で測定した。
(1)極限粘度
ウベローデ粘度計を用いて、フェノール/テトラクロロエタン=6/4(質量比)の混合溶媒を使用し、測定温度30℃で測定した。
(2)共重合率
1H−NMR(400MHz,日本電子(株)製、商品名:JNM−AL400、測定モード:NON(1H))を用いて、ポリエステルのエチレングリコール及びテレフタル酸以外のジカルボン酸成分及びジオール成分の共重合率の定量を実施した。具体的には、溶媒としてトリフルオロ酢酸−dを用いてポリエステルの5質量%の溶液を調製し、1H−NMRによりジカルボン酸構成単位100モル%中の共重合率及びジオール構成単位100モル%中の共重合率をそれぞれ測定した。
(3)熱的性質
示差走査熱量計((株)島津製作所製、商品名:DSC−60)を用い、昇温速度10℃/分で窒素気流下にDSC測定(示差走査熱量測定)を行い、ポリエステルのガラス転移温度(Tg)、昇温結晶化ピーク(Tch)、降温結晶化ピーク(Tcc)及び融点(Tm)を求めた。
(4)ポリエステル中の金属量
走査型蛍光X線装置((株)リガク製、商品名:ZSX primus)を用い、ペレットでのポリエステル中の金属量(原子濃度換算値)を測定した。
Figure 0006135160
次に、実施例1〜13及び比較例1〜10において、上記ポリアミド1〜9及びポリエステル1〜8を用いてインジェクション成形体(パリソン)及びそれを加工したボトルを作製した。
実施例及び比較例で得られたボトルの酸素透過率、黄色度、強度、開封時のヘッドスペース臭気及びボトルの黒ずみについて、以下の方法で測定し、評価した。
(1)ボトルの酸素透過率(OTR)及び黄色度
23℃、成形体外部の相対湿度50%、内部の相対湿度100%の雰囲気下にてASTM D3985に準じて、成形後5日及び90日経過後のボトルの酸素透過率及び黄色度を測定した。
酸素透過率の測定は、酸素透過率測定装置(MOCON社製、商品名:OX−TRAN 2−61)を使用した。測定値が低いほど酸素バリア性が良好であることを示す。
黄色度の測定は、ボトルパネル部分を切り出し、色差−濁度測定器(日本電色工業(株)製、商品名:COH−400)を用いて測定した。測定値が低いほど良好であることを示す。
(2)ボトルの強度
ボトルに内容物として蒸留水350mlを充填して密封し、3ヶ月間25℃で保存後、内容物を除去し、ボトルに350Nの垂直荷重を負荷した。その後、圧力の負荷を無くしたときにボトルが元の形状に復元するかどうか測定した。
○:圧力の負荷を無くしたときにボトルが元の形状に復元した。
×:圧力の負荷を無くしてもボトルが変形したままだった。
(3)開封時のヘッドスペース臭気
ボトルに内容物として蒸留水350mlを充填して密封し、1ヶ月間25℃で保存後、開封時のヘッドスペース臭気の官能評価を行った。
○:異臭が全くない。
×:少しでも異臭がある。
(4)ボトルの黒ずみ
ボトルを目視により、ボトル胴部の黒ずみ具合を下記基準により評価した。
○:透明性を保持し、黒ずみが生じていない、又は光の当たり方によっては若干黒く見えることがある。
×:透明性がほとんどなく、どのような見方でも黒ずみがはっきり確認できる。
[パリソン及び2軸延伸ブロー成形ボトル]
実施例1
下記の条件により、ポリアミド(A)とポリエステル(B)とを混合した樹脂組成物を射出シリンダーから必要量射出してキャビティーを満たすことにより、インジェクション成形体(パリソン)(22.5g)を得た。なお、ポリエステル(B)としては、表2のポリエステル1を使用した。ポリアミド(A)としては、製造例1で製造したポリアミド1を使用した。ポリアミド(A)の混合割合は5質量%であった。
得られたパリソンを冷却後、二次加工として、パリソンを加熱し2軸延伸ブロー成形を行うことでボトルを製造した。
(パリソンの形状)
全長95mm、外径22mm、肉厚2.7mmとした。なお、パリソンの製造には、射出成形機(名機製作所(株)製、型式:M200、4個取り)を使用した。
(パリソンの成形条件)
射出シリンダー温度:280℃
金型内樹脂流路温度:280℃
金型冷却水温度:15℃
(二次加工して得られたボトルの形状)
全長160mm、外径60mm、内容積370ml、肉厚0.28mmとした。延伸倍率は縦1.9倍、横2.7倍とした。底部形状はシャンパンタイプである。胴部にディンプルを有する。なお、二次加工には、ブロー成形機((株)フロンティア製、型式:EFB1000ET)を使用した。
(二次加工条件)
インジェクション成形体の加熱温度:100℃
延伸ロッド用圧力:0.5MPa
一次ブロー圧力:0.5MPa
二次ブロー圧力:2.4MPa
一次ブロー遅延時間:0.32sec
一次ブロー時間:0.30sec
二次ブロー時間:2.0sec
ブロー排気時間:0.6sec
金型温度:30℃
実施例2〜13、比較例1〜10
ポリアミド(A)もしくはポリエステル(B)の種類、又はポリアミド(A)とポリエステル(B)との質量比((A)/(B))を、表3に示すように変更したこと以外はそれぞれ実施例1と同様にしてパリソン及びボトルを製造した。
Figure 0006135160
実施例1〜13のボトルはいずれも、酸素バリア性に優れ、経時的な酸素吸収による黄色度の変化、黒ずみ、機械強度低下が極めて小さい。また、経時的な酸素吸収によるヘッドスペースの臭気が少ない。
一方、適切でないリン濃度のポリアミド(A)や適切でないアンチモン量でないポリエステル(B)を用いたボトルは、黒ずみが生じる場合や、酸素バリア性が十分でない場合、経時的な酸素吸収による黄色化が進行する場合があり、商品性が低下した。
本発明のインジェクション成形体及びそれを加工して得られる容器は、包装材料として好適に用いることができる。

Claims (11)

  1. ポリアミド(A)及びポリエステル(B)を含有する樹脂組成物からなるインジェクション成形体であって、
    該ポリアミド(A)が、
    下記一般式(I−1)で表される芳香族ジアミン単位、下記一般式(I−2)で表される脂環族ジアミン単位、及び下記一般式(I−3)で表される直鎖脂肪族ジアミン単位からなる群から選ばれる少なくとも1つのジアミン単位を合計で50モル%以上含むジアミン単位25〜50モル%と、
    下記一般式(II−1)で表される直鎖脂肪族ジカルボン酸単位及び/又は下記一般式(II−2)で表される芳香族ジカルボン酸単位を合計で50モル%以上含むジカルボン酸単位25〜50モル%と、
    下記一般式(III)で表される構成単位0.1〜50モル%と
    を含有し、かつ、リン原子濃度換算で250〜500ppmのリン原子含有化合物を含有し、
    前記ポリエステル(B)において、走査型蛍光X線分析によるアンチモン含有量が、アンチモン原子濃度換算で100〜300ppmであり、
    前記ポリアミド(A)/前記ポリエステル(B)の質量比が3/97〜20/80である、インジェクション成形体。
    Figure 0006135160
    [前記一般式(I−3)中、mは2〜18の整数を表す。前記一般式(II−1)中、nは2〜18の整数を表す。前記一般式(II−2)中、Arはアリーレン基を表す。前記一般式(III)中、Rは置換もしくは無置換のアルキル基又は置換もしくは無置換のアリール基を表す。]
  2. 前記一般式(III)におけるRが、置換もしくは無置換の炭素数1〜6のアルキル基又は置換もしくは無置換の炭素数6〜10のアリール基である、請求項1に記載のインジェクション成形体。
  3. 前記ジアミン単位が、メタキシリレンジアミン単位を50モル%以上含む、請求項1又は2に記載のインジェクション成形体。
  4. 前記直鎖脂肪族ジカルボン酸単位が、アジピン酸単位、セバシン酸単位、及び1,12−ドデカンジカルボン酸単位からなる群から選ばれる少なくとも1つを合計で50モル%以上含む、請求項1〜3のいずれかに記載のインジェクション成形体。
  5. 前記芳香族ジカルボン酸単位が、イソフタル酸単位、テレフタル酸単位、及び2,6−ナフタレンジカルボン酸単位からなる群から選ばれる少なくとも1つを合計で50モル%以上含む、請求項1〜4のいずれかに記載のインジェクション成形体。
  6. 前記ポリアミド(A)が更に、下記一般式(X)で表されるω−アミノカルボン酸単位を、ポリアミド(A)の全構成単位中0.1〜49.9モル%含有する、請求項1〜5のいずれかに記載のインジェクション成形体。
    Figure 0006135160
    [前記一般式(X)中、pは2〜18の整数を表す。]
  7. 前記ω−アミノカルボン酸単位が、6−アミノヘキサン酸単位及び/又は12−アミノドデカン酸単位を合計で50モル%以上含む、請求項6に記載のインジェクション成形体。
  8. 前記ポリアミド(A)が、元素周期律表の第VIII族の遷移金属、マンガン、銅及び亜鉛から選択された一種以上の金属原子を含むカルボン酸塩、炭酸塩、アセチルアセトン錯体、酸化物及びハロゲン化物から選ばれる一種以上の金属化合物(C)を含有する、請求項1〜7のいずれかに記載のインジェクション成形体。
  9. 金属化合物(C)とポリアミド(A)との合計量に対する金属化合物(C)の含有量が、金属原子濃度として10〜5000ppmである、請求項8に記載のインジェクション成形体。
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載のインジェクション成形体を加工して得られる容器。
  11. 延伸ブロー成形により得られる請求項10に記載の容器。
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