JP6135160B2 - インジェクション成形体 - Google Patents
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Description
インジェクション成形体に用いられる材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエステル、ポリスチレン等の汎用性樹脂が挙げられる。特に、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステルを主体とするプラスチック容器(ボトルなど)を用いたインジェクション成形体がお茶、果汁飲料、炭酸飲料等の飲料に広く利用されている。しかし、熱可塑性樹脂を主体としたインジェクション成形体は包装材として優れているが、ガラス瓶や金属製容器と異なり、外部から酸素が透過してしまう性質があり、それに充填され密閉された内容物の保存性に問題が残っている。このような汎用性樹脂からなるインジェクション成形体にガスバリア性を付与するために、高いガスバリア性を有する熱可塑性樹脂をインジェクション成形体の主体となるポリエステル等の汎用性樹脂に溶融混合したインジェクション成形体や、ガスバリア層を中間層として有する多層インジェクション成形体が実用化されている。
しかしながら、ナイロンMXD6を他の汎用性樹脂と溶融混合する場合や、ガスバリア層として用いた場合では、わずかの酸素透過性を有するので、完全に酸素を遮断することができないだけでなく、成形体内の充填後の内容物の上部に存在するヘッドスペースの気体中の残存酸素を除去することは不可能である。このため、ビール等の酸素に敏感な内容物の劣化は阻止できない。
一方、コバルト等の遷移金属を含有する樹脂組成物は、透明性が必要な包装容器にも適用可能である利点を有するが、遷移金属触媒によって樹脂組成物が着色されるため好ましくない。また、これらの樹脂組成物では、遷移金属触媒によって、酸素を吸収することで樹脂が酸化される。具体的には、ナイロンMXD6では、遷移金属原子によるポリアミド樹脂のアリーレン基に隣接するメチレン鎖から水素原子の引き抜きに起因するラジカルの発生、前記ラジカルに酸素分子が付加することによるパーオキシラジカルの発生、パーオキシラジカルによる水素原子の引き抜き等の各反応により起こるものと考えられている。このような機構による酸素吸収により樹脂が酸化されるため、分解物が発生して容器内容物に好ましくない臭気が発生したり、樹脂の酸化劣化により容器の色調や強度等が損なわれる。また、ガスバリア層として使用した場合は、経時による層間剥離を招く問題がある。
<1>ポリアミド(A)及びポリエステル(B)を含有する樹脂組成物からなるインジェクション成形体であって、
該ポリアミド(A)が、
下記一般式(I−1)で表される芳香族ジアミン単位、下記一般式(I−2)で表される脂環族ジアミン単位、及び下記一般式(I−3)で表される直鎖脂肪族ジアミン単位からなる群から選ばれる少なくとも1つのジアミン単位を合計で50モル%以上含むジアミン単位25〜50モル%と、
下記一般式(II−1)で表される直鎖脂肪族ジカルボン酸単位及び/又は下記一般式(II−2)で表される芳香族ジカルボン酸単位を合計で50モル%以上含むジカルボン酸単位25〜50モル%と、
下記一般式(III)で表される構成単位0.1〜50モル%と
を含有し、かつ、リン原子濃度換算で250〜500ppmのリン原子含有化合物を含有し、
前記ポリエステル(B)において、走査型蛍光X線分析によるアンチモン含有量が、アンチモン原子濃度換算で100〜300ppmであり、
前記ポリアミド(A)/前記ポリエステル(B)の質量比が3/97〜20/80である、インジェクション成形体。
<2>上記インジェクション成形体を加工して得られる容器。
本発明のインジェクション成形体は、ポリアミド(A)及びポリエステル(B)を含有する樹脂組成物からなる。
本発明に用いられる樹脂組成物は、後述する特定のポリアミド(以後「ポリアミド(A)」と呼ぶこともある)を含有することで酸素吸収性能及び酸素バリア性能を発揮することができる。樹脂組成物に含有されるポリアミド(A)は1種であってもよいし、2種以上の組合せであってもよい。
また、本発明に用いられる樹脂組成物は、ポリエステル(B)を含有することで、成形性及び強度に優れる。樹脂組成物に含有されるポリエステル(B)は、1種であってもよいし、2種以上の組合せであってもよい。
<ポリアミド(A)の構成>
本発明において、ポリアミド(A)は、下記一般式(I−1)で表される芳香族ジアミン単位、下記一般式(I−2)で表される脂環族ジアミン単位、及び下記一般式(I−3)で表される直鎖脂肪族ジアミン単位からなる群から選ばれる少なくとも1つのジアミン単位を合計で50モル%以上含むジアミン単位25〜50モル%と、下記一般式(II−1)で表される直鎖脂肪族ジカルボン酸単位及び/又は下記一般式(II−2)で表される芳香族ジカルボン酸単位を合計で50モル%以上含むジカルボン酸単位25〜50モル%と、3級水素含有カルボン酸単位(好ましくは下記一般式(III)で表される構成単位)0.1〜50モル%とを含有する。
ただし、前記ジアミン単位、前記ジカルボン酸単位、前記3級水素含有カルボン酸単位の合計は100モル%を超えないものとする。ポリアミド(A)は、本発明の効果を損なわない範囲で、前記以外の構成単位を更に含んでいてもよい。
ジアミン単位とジカルボン酸単位との含有量の割合は、重合反応の観点から、ほぼ同量であることが好ましく、ジカルボン酸単位の含有量がジアミン単位の含有量の±2モル%であることがより好ましい。ジカルボン酸単位の含有量がジアミン単位の含有量の±2モル%の範囲を超えると、ポリアミド(A)の重合度が上がりにくくなるため重合度を上げるのに多くの時間を要し、熱劣化が生じやすくなる。
ポリアミド(A)中のジアミン単位は、前記一般式(I−1)で表される芳香族ジアミン単位、前記一般式(I−2)で表される脂環族ジアミン単位、及び前記一般式(I−3)で表される直鎖脂肪族ジアミン単位からなる群から選ばれる少なくとも1つのジアミン単位を、ジアミン単位中に合計で50モル%以上含み、当該含有量は、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上であり、また、好ましくは100モル%以下である。
ビス(アミノメチル)シクロヘキサン類は、構造異性体を持つが、cis体比率を高くすることで、結晶性が高く、良好な成形性を得られる。一方、cis体比率を低くすれば、結晶性が低い、透明なものが得られる。したがって、結晶性を高くしたい場合は、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン類におけるcis体含有比率を70モル%以上とすることが好ましく、より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上とする。一方、結晶性を低くしたい場合は、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン類におけるcis体含有比率を50モル%以下とすることが好ましく、より好ましくは40モル%以下、更に好ましくは30モル%以下とする。
前記一般式(I−3)で表される直鎖脂肪族ジアミン単位を構成しうる化合物としては、エチレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン等の脂肪族ジアミンを例示できるが、これらに限定されるものではない。これらの中でも、ヘキサメチレンジアミンが好ましい。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
ポリアミド(A)中のジカルボン酸単位は、重合時の反応性、並びにポリアミド(A)の結晶性及び成形性の観点から、前記一般式(II−1)で表される直鎖脂肪族ジカルボン酸単位及び/又は前記一般式(II−2)で表される芳香族ジカルボン酸単位を、ジカルボン酸単位に合計で50モル%以上含み、当該含有量は、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上であり、また、好ましくは100モル%以下である。
前記一般式(II−1)中、nは2〜18の整数を表し、好ましくは3〜16、より好ましくは4〜12、更に好ましくは4〜8である。
前記一般式(II−1)で表される直鎖脂肪族ジカルボン酸単位を構成しうる化合物としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸等を例示できるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
前記一般式(II−2)中、Arはアリーレン基を表す。前記アリーレン基は、好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜15のアリーレン基であり、例えば、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられる。
前記一般式(II−2)で表される芳香族ジカルボン酸単位を構成しうる化合物としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等を例示できるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明において、ポリアミド(A)における3級水素含有カルボン酸単位は、ポリアミド(A)の重合の観点から、アミノ基及びカルボキシル基を少なくとも1つずつ有するか、又はカルボキシル基を2つ以上有する。具体例としては、下記一般式(III)、(IV)又は(V)のいずれかで表される構成単位が挙げられる。
なお、官能基が更に置換されている場合、上述した炭素数には、更なる置換基の炭素数は含まれないものとする。例えば、ベンジル基は、フェニル基で置換された炭素数1のアルキル基と見なし、フェニル基で置換された炭素数7のアルキル基とは見なさない。以降の炭素数に記載についても、特に断りが無い限り、同様に解するものとする。
好ましいRの具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、メルカプトメチル基、メチルスルファニルエチル基、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基、4−ヒドロキシベンジル基等を例示できるが、これらに限定されるものではない。これらの中でも、メチル基、エチル基、イソプロピル基、2−メチルプロピル基、及びベンジル基がより好ましい。
また、前記一般式(IV)で表される構成単位を構成しうる化合物としては、3−アミノ酪酸等のβ−アミノ酸を例示でき、前記一般式(V)で表される構成単位を構成しうる化合物としては、メチルマロン酸、メチルコハク酸、リンゴ酸、酒石酸等のジカルボン酸を例示できるが、これらに限定されるものではない。
これらはD体、L体、ラセミ体のいずれであってもよく、アロ体であってもよい。また、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明において、ポリアミド(A)は、ポリアミド(A)に柔軟性等が必要な場合には、前記ジアミン単位、前記ジカルボン酸単位及び前記3級水素含有カルボン酸単位に加えて、下記一般式(X)で表されるω−アミノカルボン酸単位を更に含有してもよい。
前記ω−アミノカルボン酸単位の含有量は、ポリアミド(A)の全構成単位中、好ましくは0.1〜49.9モル%、より好ましくは3〜40モル%、更に好ましくは5〜35モル%である。ただし、前記のジアミン単位、ジカルボン酸単位、3級水素含有カルボン酸単位、及びω−アミノカルボン酸単位の合計は100モル%を超えないものとする。
前記一般式(X)中、pは2〜18の整数を表し、好ましくは3〜16、より好ましくは4〜14、更に好ましくは5〜12である。
ポリアミド(A)の重合度については、相対粘度が使われる。ポリアミド(A)の相対粘度は、成形性、酸素吸収性能、酸素バリア性能及び黄色度の観点から、好ましくは1.6〜4.2であり、より好ましくは1.7〜2.4、更に好ましくは1.7〜2.2である。
なお、ここでいう相対粘度は、ポリアミド(A)1gを96%硫酸100mLに溶解し、キャノンフェンスケ型粘度計にて25℃で測定した落下時間(t)と、同様に測定した96%硫酸そのものの落下時間(t0)の比であり、次式で示される。
相対粘度=t/t0
ポリアミド(A)の酸素吸収速度、及び酸素吸収によるポリアミド(A)の酸化劣化は、ポリアミド(A)の末端アミノ基濃度を変えることで制御することが可能である。本発明では、酸素吸収速度と酸化劣化のバランスの観点から、ポリアミド(A)の末端アミノ基濃度は5〜150μeq/gの範囲が好ましく、より好ましくは10〜100μeq/g、更に好ましくは15〜80μeq/gである。
ポリアミド(A)は、前記ジアミン単位を構成しうるジアミン成分と、前記ジカルボン酸単位を構成しうるジカルボン酸成分と、前記3級水素含有カルボン酸単位を構成しうる3級水素含有カルボン酸成分と、必要により前記ω−アミノカルボン酸単位を構成しうるω−アミノカルボン酸成分とを重縮合させることで製造することができ、重縮合条件等を調整することで重合度を制御することができる。重縮合時に分子量調整剤として少量のモノアミンやモノカルボン酸を加えてもよい。また、重縮合反応を抑制して所望の重合度とするために、ポリアミド(A)を構成するジアミン成分とカルボン酸成分との比率(モル比)を1からずらして調整してもよい。
反応押出法では、ジアミン成分及びジカルボン酸成分からなるポリアミド(ポリアミド(A)の前駆体に相当するポリアミド)又はジアミン成分、ジカルボン酸成分及びω−アミノカルボン酸成分からなるポリアミド(ポリアミド(A)の前駆体に相当するポリアミド)と、3級水素含有カルボン酸成分とを押出機で溶融混練して反応させる方法である。3級水素含有カルボン酸成分をアミド交換反応により、ポリアミドの骨格中に組み込む方法であり、十分に反応させるためには、反応押出に適したスクリューを用い、L/Dの大きい2軸押出機を用いるのが好ましい。少量の3級水素含有カルボン酸単位を含むポリアミド(A)を製造する場合に、簡便な方法であり好適である。
加圧塩法では、ナイロン塩を原料として加圧下にて溶融重縮合を行う方法である。具体的には、ジアミン成分と、ジカルボン酸成分と、3級水素含有カルボン酸成分と、必要に応じてω−アミノカルボン酸成分とからなるナイロン塩水溶液を調製した後、該水溶液を濃縮し、次いで加圧下にて昇温し、縮合水を除去しながら重縮合させる。缶内を徐々に常圧に戻しながら、ポリアミド(A)の融点+10℃程度まで昇温し、保持した後、更に、−0.02MPaGまで徐々に減圧しつつ、そのままの温度で保持し、重縮合を継続する。一定の撹拌トルクに達したら、缶内を窒素で0.3MPaG程度に加圧してポリアミド(A)を回収する。
加圧塩法は、揮発性成分をモノマーとして使用する場合に有用であり、3級水素含有カルボン酸成分の共重合率が高い場合には好ましい重縮合方法である。特に、3級水素含有カルボン酸単位をポリアミド(A)の全構成単位中に15モル%以上含むポリアミド(A)を製造する場合に、好適である。加圧塩法を用いることで、3級水素含有カルボン酸成分の蒸散を防ぎ、更には、3級水素含有カルボン酸成分同士の重縮合を抑制でき、重縮合反応をスムーズに進めることが可能であるため、性状に優れたポリアミド(A)が得られる。
常圧滴下法では、常圧下にて、ジカルボン酸成分と、3級水素含有カルボン酸成分と、必要に応じてω−アミノカルボン酸成分とを加熱溶融した混合物に、ジアミン成分を連続的に滴下し、縮合水を除去しながら重縮合させる。なお、生成するポリアミド(A)の融点よりも反応温度が下回らないように、反応系を昇温しながら重縮合反応を行う。
常圧滴下法は、前記加圧塩法と比較すると、塩を溶解するための水を使用しないため、バッチ当たりの収量が大きく、また、原料成分の気化・凝縮を必要としないため、反応速度の低下が少なく、工程時間を短縮できる。
加圧滴下法では、まず、重縮合缶にジカルボン酸成分と、3級水素含有カルボン酸成分と、必要に応じてω−アミノカルボン酸成分とを仕込み、各成分を撹拌して溶融混合し混合物を調製する。次いで、缶内を好ましくは0.3〜0.4MPaG程度に加圧しながら混合物にジアミン成分を連続的に滴下し、縮合水を除去しながら重縮合させる。この際、生成するポリアミド(A)の融点よりも反応温度が下回らないように、反応系を昇温しながら重縮合反応を行う。設定モル比に達したらジアミン成分の滴下を終了し、缶内を徐々に常圧に戻しながら、ポリアミド(A)の融点+10℃程度まで昇温し、保持した後、更に、−0.02MPaGまで徐々に減圧しつつ、そのままの温度で保持し、重縮合を継続する。一定の撹拌トルクに達したら、缶内を窒素で0.3MPaG程度に加圧してポリアミド(A)を回収する。
加圧滴下法は、加圧塩法と同様に、揮発性成分をモノマーとして使用する場合に有用であり、3級水素含有カルボン酸成分の共重合率が高い場合には好ましい重縮合方法である。特に、3級水素含有カルボン酸単位をポリアミド(A)の全構成単位中に15モル%以上含むポリアミド(A)を製造する場合に、好適である。加圧滴下法を用いることで3級水素含有カルボン酸成分の蒸散を防ぎ、更には、3級水素含有カルボン酸成分同士の重縮合を抑制でき、重縮合反応をスムーズに進めることが可能であるため、性状に優れたポリアミド(A)が得られる。更に、加圧滴下法は、加圧塩法に比べて、塩を溶解するための水を使用しないため、バッチ当たりの収量が大きく、常圧滴下法と同様に反応時間を短くできることから、ゲル化等を抑制し、黄色度が低いポリアミド(A)を得ることができる。
上記重縮合方法で製造されたポリアミド(A)は、そのまま使用することもできるが、更に重合度を高めるための工程を経てもよい。更に重合度を高める工程としては、押出機内での反応押出や固相重合等が挙げられる。固相重合で用いられる加熱装置としては、連続式の加熱乾燥装置やタンブルドライヤー、コニカルドライヤー、ロータリードライヤー等と称される回転ドラム式の加熱装置およびナウタミキサーと称される内部に回転翼を備えた円錐型の加熱装置が好適に使用できるが、これらに限定されることなく公知の方法、装置を使用することができる。特にポリアミド(A)の固相重合を行う場合は、上述の装置の中で回転ドラム式の加熱装置が、系内を密閉化でき、着色の原因となる酸素を除去した状態で重縮合を進めやすいことから好ましく用いられる。
ポリアミド(A)の重縮合においては、アミド化反応を促進する観点から、リン原子含有化合物を添加することが好ましい。
本発明に用いられるポリアミド(A)はリン原子含有化合物を含有する。ポリアミド(A)中のリン原子含有化合物の含有量は、酸素吸収後のポリアミドの黄色化を低減させる観点から、リン原子濃度換算で250〜500ppmであり、好ましくは280〜480ppm、更に好ましくは300〜450ppm、より更に好ましくは320〜450ppmである。当該範囲内であれば、重合中にポリアミド(A)がポリエステル(B)中の残存アンチモン系触媒との反応により、ポリアミド(A)の酸素吸収による黄色化が抑制される。一方、500ppmを超えると、ポリアミド(A)がゲル化しやすくなる傾向があり、また、リン原子含有化合物に起因すると考えられるフィッシュアイの成形品中への混入のおそれがあるので好ましくない。さらに、PETブレンドボトルに成形した際、500ppmを超えると、初期の酸素吸収速度が低下するとともに、ボトルの色調としての黒ずみが強くなり、商品性が低下するため、好ましくない。
ポリアミド(A)に含まれるリン原子含有化合物の含有量は、濃硫酸で湿式分解後、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析により、波長213.618nmによって測定される。
これらの中でも特に次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸リチウム等の次亜リン酸金属塩が、アミド化反応を促進する効果が高くかつ着色防止効果にも優れるため好ましく用いられ、特に次亜リン酸ナトリウムが好ましい。なお、本発明で使用できるリン原子含有化合物はこれらの化合物に限定されない。
リン原子含有化合物の添加量は、酸素吸収後のポリアミドの黄色化を低減させる観点から、ポリアミド(A)中のリン原子含有化合物の含有量が上記範囲となるように設定される。
アルカリ金属化合物としては、アルカリ金属水酸化物やアルカリ金属酢酸塩、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属アルコキシド等が好ましい。本発明で用いることのできるアルカリ金属化合物の具体例としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸ルビジウム、酢酸セシウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムプロポキシド、ナトリウムブトキシド、カリウムメトキシド、リチウムメトキシド、炭酸ナトリウム等が挙げられるが、これらの化合物に限定されることなく用いることができる。なお、リン原子含有化合物とアルカリ金属化合物の比率(モル比)は、重合速度制御の観点や、黄色度を低減する観点から、リン原子含有化合物/アルカリ金属化合物=1.0/0.05〜1.0/1.5の範囲が好ましく、より好ましくは、1.0/0.1〜1.0/1.2、更に好ましくは、1.0/0.2〜1.0/1.1である。
本発明において、ポリエステル(B)とは、ジカルボン酸を含む多価カルボン酸およびこれらのエステル形成性誘導体から選ばれる一種又は二種以上とグリコールを含む多価アルコールから選ばれる一種又は二種以上とからなるもの、又はヒドロキシカルボン酸およびこれらのエステル形成性誘導体からなるもの、又は環状エステルからなるものをいう。
また、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール残基を含むポリエステルをポリアミド(A)と混合した樹脂組成物からなるインジェクション成形体は透明性に優れている。
ポリエステル(B)に含まれるアンチモン化合物の含有量は、走査型蛍光X線分析によって測定される。
本発明で用いられるポリエステルを製造する際に使用する重縮合触媒は、重合反応の任意の段階で反応系に添加することができる。例えばエステル化反応もしくはエステル交換反応の開始前および反応途中の任意の段階もしくは重縮合反応の開始直前あるいは反応途中に反応系へ添加することができる。
アンチモン化合物の添加量は、酸素吸収後のポリアミドの黄色化を低減させる観点から、ポリエステル(B)に含まれるアンチモン化合物の含有量が上記範囲となるように設定される。
本発明に用いられる樹脂組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲で、樹脂組成物に付与したい性能等に応じて、ポリアミド(A)及びポリエステル(B)以外の樹脂を含有してもよい。その他の樹脂としては特に限定されないが、例えば熱可塑性樹脂を用いることができ、具体的にはポリオレフィン、ポリアミド(A)以外のポリアミド、エチレン−ビニルアルコール共重合体及び植物由来樹脂を挙げることができる。
例えば、耐衝撃性、耐ピンホール性、柔軟性を付与する観点からは、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンやそれらの各種変性物、ポリオレフィン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、スチレン−ブタジエン共重合樹脂やその水素添加処理物、ポリエステル系エラストマー等に代表される各種熱可塑性エラストマー、N−MXD6、ナイロン6,66,12、ナイロン12等の各種ポリアミド等が挙げられる。また、酸素吸収性能をさらに付与する観点からは、ポリブタジエンや変性ポリブタジエン等の炭素−炭素不飽和二重結合含有樹脂が挙げられる。また、酸素吸収効果を効果的に発揮する観点からは、ポリアミド(A)以外のポリアミド及びエチレン−ビニルアルコール共重合体のような酸素バリア性の高い樹脂が挙げられる。
本発明において、樹脂組成物には、前述したポリアミド(A)及びポリエステル(B)以外に、必要に応じて更に添加剤を含有してもよい。添加剤としては、白化防止剤、層状珪酸塩、顔料、染料、酸素吸収剤、ゲル化防止・フィッシュアイ低減剤、酸化防止剤、滑剤、艶消剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、着色防止剤、結晶化核剤等が挙げられる。添加剤は1種であってもよいし、2種以上の組合せであってもよい。樹脂組成物中における添加剤の含有量は、添加剤の種類にもよるが、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
樹脂組成物の酸素吸収性能を更に高めるために、本発明の効果を損なわない範囲で金属化合物(C)を添加してもよい。金属化合物(C)は、酸化反応促進剤として作用し、ポリアミド(A)が有する酸素吸収性能を促進することで、樹脂組成物の酸素吸収性能を高めることができる。
本発明で使用されうる金属化合物(C)は、元素周期律表の第VIII族の遷移金属、マンガン、銅及び亜鉛から選択された一種以上の金属原子を含むことが好ましい。酸素吸収性成形物中において、これらの金属原子を含む化合物が熱可塑性樹脂の酸化反応の触媒作用が高く、好ましい。より好ましくはコバルト、ロジウム、鉄及び/又は銅を含む金属化合物が用いられる。
ただし、ポリアミド(A)にポリアミドMXD6やポリアミドMXD6Iを併用する場合、コバルトとの触媒作用が高いため、マスターバッチなどで事前に溶融混合する場合、ポリアミド(A)がマスターバッチの段階で酸化分解する。コバルトはポリアミド(A)の酸素吸収向上能力は非常に高いが、マスターバッチとしての酸素吸収性能が安定しない場合がある。マスターバッチとしての安定した性能を得るためには、マンガンや鉄などが好ましい。
また、ポリアミド(A)とマスターバッチの混合比(質量比)は、マスターバッチの濃度にもよるが、ポリアミド(A)そのものの酸素バリア性と酸素吸収能力を勘案すると、ポリアミド(A):マスターバッチ=99:1〜70:30の範囲が好ましい。
なおその他添加剤等を添加する場合も、上述と同様の方法で添加することができる。
本発明のインジェクション成形体の製造方法については特に限定されず、通常の射出成形法により製造することができる。例えば、射出機を備えた成形機及び射出用金型を用いて、樹脂組成物を射出シリンダーから金型ホットランナーを通して、キャビティー内に射出して、射出用金型の形状に対応したインジェクション成形体を製造することができる。
得られた成形体の口頸部に耐熱性を与えるため、この段階で口頸部を熱処理により結晶化させてもよい。結晶化度は好ましくは30〜50%、より好ましくは35〜45%である。なお、結晶化は、後述する二次加工を施した後に実施してもよい。
本発明のインジェクション成形体の形状は特に限定されず、金型に応じて任意の形状とすることができる。本発明のインジェクション成形体が酸素バリア性能及び酸素吸収性能を発現することができることを考慮すると、本発明のインジェクション成形体は、カップ状容器(インジェクションカップ)やボトル状容器等の保存容器であることが好ましい。また、PETボトルのような後述するようなブロー成形等の二次加工のために、本発明のインジェクション成形体は、試験管状のプリフォーム(パリソン)であることも好ましい。
本発明のインジェクション成形体を二次加工して得られる容器は、容器外からわずかに侵入する酸素のほか、容器内の酸素を吸収して、保存する内容物品の酸素による変質を防止することができる。
二次加工としてはブロー成形や延伸ブロー成形等が挙げられ、二次加工して得られる容器としてはボトルが挙げられる。
また、インジェクションストレッチブロー成形では、加熱したプリフォームの口部を治具で固定し、該プリフォームを最終形状金型に嵌め、口部から延伸ロッドで延伸しながら空気を吹込み、プリフォームをブロー延伸させて金型に密着させ、冷却固化させることでボトル状に成形することができる。
なお、インジェクションストレッチブロー成形法としては、大別してホットパリソン方式とコールドパリソン方式とがある。前者はプリフォームを完全に冷却することなく、軟化状態でブロー成形する。一方、後者のコールドパリソン方式では、プリフォームを最終形状の寸法よりかなり小さく、樹脂が非晶質である過冷却有底プリフォームとして形成し、このプリフォームをその延伸温度に予備加熱した後に、最終形状金型中で軸方向に引張延伸するとともに周方向にブロー延伸する方式であり、大量生産に向いている。いずれの方法においても、このプリフォームをガラス転移点(Tg)以上の延伸温度に加熱後、熱処理(ヒートセット)温度に加熱された最終形状金型内においてストレッチブロー成形法によって、延伸ロッドにより縦方向に延伸すると共にブローエアによって横方向に延伸する。最終ブロー成形体の延伸倍率は、縦方向で1.2〜6倍、横方向で1.2〜4.5倍が好ましい。
無機物又は無機酸化物としては、アルミニウムやアルミナ、酸化珪素等が挙げられる。無機物又は無機酸化物の蒸着膜は、本発明のインジェクション成形体及びそれを二次加工して得られる容器から、アセトアルデヒドやホルムアルデヒド等の溶出物を遮蔽できる。蒸着膜の形成方法は特に限定されず、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法や、PECVD等の化学蒸着法等が挙げられる。蒸着膜の厚みは、ガスバリア性、遮光性及び耐屈曲性等の観点から、好ましくは5〜500nm、より好ましくは5〜200nmである。
アモルファスカーボン膜はダイヤモンド状炭素膜で、iカーボン膜または水素化アモルファスカーボン膜とも呼ばれる硬質炭素膜である。膜の形成法としては、排気により中空成形体の内部を真空にし、そこへ炭素源ガスを供給し、プラズマ発生用エネルギーを供給することにより、その炭素源ガスをプラズマ化させる方法が例示され、これにより、容器内面にアモルファスカーボン膜を形成させることができる。アモルファスカーボン膜は酸素や二酸化炭素のような低分子無機ガスの透過度を著しく減少させることができるだけでなく、臭いを有する各種の低分子有機化合物の収着を抑制することができる。アモルファスカーボン膜の厚みは、低分子有機化合物の収着抑制効果、ガスバリア性の向上効果、プラスチックとの密着性、耐久性および透明性等の観点から、50〜5000nmが好ましい。
被保存物としては、牛乳、乳製品、ジュース、コーヒー、茶類、アルコール飲料等の飲料;ソース、醤油、ドレッシング等の液体調味料、スープ、シチュー、カレー、乳幼児用調理食品、介護調理食品等の調理食品;ジャム、マヨネーズ等のペースト状食品;ツナ、魚貝等の水産製品;チーズ、バター等の乳加工品;肉、サラミ、ソーセージ、ハム等の畜肉加工品;にんじん、じゃがいも等の野菜類;卵;麺類;調理前の米類、調理された炊飯米、米粥等の加工米製品;粉末調味料、粉末コーヒー、乳幼児用粉末ミルク、粉末ダイエット食品、乾燥野菜、せんべい等の乾燥食品;農薬、殺虫剤等の化学品;医薬品、化粧品;ペットフード;シャンプー、リンス、洗剤等の雑貨品;等の種々の物品を挙げることができる。特に、酸素存在下で劣化を起こしやすい内容品、例えば、飲料ではビール、ワイン、フルーツジュース、炭酸ソフトドリンク等、食品では果物、ナッツ、野菜、肉製品、幼児食品、コーヒー、ジャム、マヨネーズ、ケチャップ、食用油、ドレッシング、ソース類、佃煮類、乳製品類等、その他では医薬品、化粧品等の包装材に好適である。
なお、以下の実施例において、共重合体を構成する単位に関して、
メタキシリレンジアミンに由来する単位を「MXDA」、
アジピン酸に由来する単位を「AA」、
イソフタル酸に由来する単位を「IPA」、
L−アラニンに由来する単位を「L−Ala」、
また、ポリメタキシリレンアジパミドを「N−MXD6」という。
1H−NMR(400MHz,日本電子(株)製、商品名:JNM−AL400、測定モード:NON(1H))を用いて、ポリアミドのα−アミノ酸含有率の定量を実施した。具体的には、溶媒としてギ酸−dを用いてポリアミドの5質量%の溶液を調製し、1H−NMR測定を実施した。
ポリアミド中のリン原子濃度の測定は、ポリアミドを濃硫酸で湿式分解後、走査型蛍光X線装置((株)リガク製、商品名:ZSX primus)を用い、波長213.618nmにて定量した。
ポリアミド1gを精秤し、96%硫酸100mlに20〜30℃で撹拌溶解した。完全に溶解した後、速やかにキャノンフェンスケ型粘度計に溶液5mlを取り、25℃の恒温漕中で10分間放置後、落下時間(t)を測定した。また、96%硫酸そのものの落下時間(t0)も同様に測定した。t及びt0から次式により相対粘度を算出した。
相対粘度=t/t0
ポリアミドを精秤し、フェノール/エタノール=4/1容量溶液に20〜30℃で撹拌溶解させ、完全に溶解した後、撹拌しつつ、メタノール5mlで容器内壁を洗い流し、0.01mol/L塩酸水溶液で中和滴定して末端アミノ基濃度〔NH2〕を求めた。
示差走査熱量計((株)島津製作所製、商品名:DSC−60)を用い、昇温速度10℃/分で窒素気流下にDSC測定(示差走査熱量測定)を行い、ガラス転移温度(Tg)及び融点(Tm)を求めた。
Tダイを設置した30mmφ二軸押出機((株)プラスチック工学研究所製)を用い、(ポリアミドの融点+20℃)のシリンダー・Tダイ温度にて、ポリアミドから厚さ約100μmの無延伸単層フィルムを成形した。
製造した無延伸単層フィルムから切り出した10cm×10cmの試験片2枚を、アルミ箔積層フィルムからなる25cm×18cmの3方シール袋に、水10mlを含ませた綿と共に仕込み、袋内空気量が400mlとなるようにして密封した。袋内の湿度は100%RH(相対湿度)とした。40℃下で7日保存後、14日保存後、28日保存後のそれぞれに袋内の酸素濃度を酸素濃度計(東レエンジニアリング(株)製、商品名:LC−700F)で測定し、この酸素濃度から酸素吸収量を計算した。
撹拌機、分縮器、全縮器、圧力調整器、温度計、滴下槽及びポンプ、アスピレーター、窒素導入管、底排弁、ストランドダイを備えた内容積50Lの耐圧反応容器に、精秤したアジピン酸(旭化成ケミカルズ(株)製)13000g(88.96mol)、L−アラニン(Sinogel amino acid co.ltd)880.56g(9.88mol)、次亜リン酸ナトリウム22.3g(0.21mol)、酢酸ナトリウム13.8g(0.17mol)を入れ、十分に窒素置換した後、反応容器内を密閉し、容器内を0.4MPaに保ちながら撹拌下170℃まで昇温した。170℃に到達した後、反応容器内の溶融した原料へ滴下槽に貯めたメタキシリレンジアミン(三菱ガス化学(株)製)12082.2g(88.71mol)の滴下を開始し、容器内を0.4MPaに保ちながら生成する縮合水を系外へ除きながら反応槽内を連続的に240℃まで昇温した。メタキシリレンジアミンの滴下終了後、反応容器内を徐々に常圧に戻し、次いでアスピレーターを用いて反応槽内を80kPaに減圧して縮合水を除いた。減圧中に撹拌機の撹拌トルクを観察し、所定のトルクに達した時点で撹拌を止め、反応槽内を窒素で加圧し、底排弁を開け、ストランドダイからポリマーを抜き出してストランド化した後、冷却してペレタイザーによりペレット化した。次にこのペレットをステンレス製の回転ドラム式の加熱装置に仕込み、5rpmで回転させた。十分窒素置換し、さらに少量の窒素気流下にて反応系内を室温から140℃まで昇温した。反応系内温度が140℃に達した時点で1torr以下まで減圧を行い、更に系内温度を110分間で180℃まで昇温した。系内温度が180℃に達した時点から、同温度にて180分間、固相重合反応を継続した。反応終了後、減圧を終了し窒素気流下にて系内温度を下げ、60℃に達した時点でペレットを取り出すことにより、MXDA/AA/L−Ala共重合体(ポリアミド1)を得た。なお、各モノマーの仕込み組成比は、メタキシリレンジアミン:アジピン酸:L−アラニン=47.3:47.4:5.3(mol%)であった。また、リン原子濃度がリン濃度換算で300ppmであった。
各モノマーの仕込み組成比を、メタキシリレンジアミン:アジピン酸:L−アラニン=44.4:44.5:11.1(mol%)としたこと以外は製造例1と同様にしてMXDA/AA/L−Ala共重合体(ポリアミド2)を得た。また、リン原子濃度がリン濃度換算で300ppmであった。
各モノマーの仕込み組成比を、メタキシリレンジアミン:アジピン酸:L−アラニン=33.3:33.4:33.3(mol%)としたこと以外は製造例1と同様にしてMXDA/AA/L−Ala共重合体(ポリアミド3)を得た。また、リン原子濃度がリン濃度換算で300ppmであった。
ジカルボン酸成分をイソフタル酸(エイ・ジイ・インタナショナル・ケミカル(株)製)とアジピン酸の混合物に変更し、各モノマーの仕込み組成比を、メタキシリレンジアミン:アジピン酸:イソフタル酸:L−アラニン=44.3:39.0:5.6:11.1(mol%)としたこと以外は製造例1と同様にしてMXDA/AA/IPA/L−Ala共重合体(ポリアミド4)を得た。また、リン原子濃度がリン濃度換算で300ppmであった。
リン原子濃度がリン濃度換算で450ppmとなるように次亜リン酸ナトリウムを添加したこと以外は製造例1と同様にしてMXDA/AA/L−Ala共重合体(ポリアミド5)を得た。なお、各モノマーの仕込み組成比は、メタキシリレンジアミン:アジピン酸:L−アラニン=47.3:47.4:5.3(mol%)であった。また、リン原子濃度がリン濃度換算で450ppmであった。
リン原子濃度がリン濃度換算で150ppmとなるように次亜リン酸ナトリウムを添加したこと以外は製造例1と同様にしてMXDA/AA/L−Ala共重合体(ポリアミド6)を得た。なお、各モノマーの仕込み組成比は、メタキシリレンジアミン:アジピン酸:L−アラニン=47.3:47.4:5.3(mol%)であった。また、リン原子濃度がリン濃度換算で150ppmであった。
固相重合工程で固相重合をすることなく、150℃4時間の乾燥としたこと以外は、製造例1と同様にしてMXDA/AA/L−Ala共重合体(ポリアミド7)を得た。なお、各モノマーの仕込み組成比は、メタキシリレンジアミン:アジピン酸:L−アラニン=47.3:47.4:5.3(mol%)であった。また、リン原子濃度がリン濃度換算で300ppmであった。
リン原子濃度がリン濃度換算で70ppmとなるように次亜リン酸ナトリウムを添加したこと以外は製造例1と同様にしてMXDA/AA/L−Ala共重合体(ポリアミド8)を得た。なお、各モノマーの仕込み組成比は、メタキシリレンジアミン:アジピン酸:L−アラニン=47.3:47.4:5.3(mol%)であった。また、リン原子濃度がリン濃度換算で70ppmであった。
リン原子濃度がリン濃度換算で600ppmとなるように次亜リン酸ナトリウムを添加したこと以外は製造例1と同様にしてMXDA/AA/L−Ala共重合体(ポリアミド8)を得た。なお、各モノマーの仕込み組成比は、メタキシリレンジアミン:アジピン酸:L−アラニン=47.3:47.4:5.3(mol%)であった。また、リン原子濃度がリン濃度換算で600ppmであった。
撹拌機付き30Lのエステル化反応槽に高純度テレフタル酸11629.9g(70モル)(水島アロマ(株)製)及びエチレングリコール4344.9g(70モル)(丸善石油化学(株)製)を仕込み、撹拌下、約270℃、約0.3MPaにて3時間エステル化反応を行い、オリゴマーを得た。このオリゴマーに三酸化アンチモン(日本精鉱(株)製、商品名:PATOX−C)の重合触媒を用い、ポリエステルに対して0.97g(0.0033モル)になるように加え、次いで、窒素雰囲気下、常圧にて250℃で10分間攪拌した。その後、60分間かけて280℃まで昇温しつつ反応系の圧力を徐々に下げて13.3Pa(0.1Torr)として、さらに280℃、13.3Paで極限粘度が約0.60dl/gになるまで重縮合反応を実施した。反応槽内を窒素で加圧し、底排弁を開け、ストランドダイからポリマーを抜き出してストランド化した後、冷却してペレタイザーによりペレット化した。続いて、得られた溶融重合ポリエステルを真空状態で180℃、1時間放置しレジンの結晶化を実施した。その後、80℃で8時間真空乾燥させ、80℃から220℃までを2時間かけ昇温し、0.5Torrの条件で極限粘度が約0.78dl/gになるまで固相重合を実施し、PET1を得た。
三酸化アンチモン重合触媒を3.9g(0.0133モル)添加したこと及び0.5Torrの条件で極限粘度が約0.76dl/gになるまで固相重合を実施したこと以外はPET製造例1と同様にして、PET2を得た。
三酸化アンチモン重合触媒を7.4g(0.025モル)添加したこと及び0.5Torrの条件で極限粘度が約0.81dl/gになるまで固相重合を実施したこと以外はPET製造例1と同様にして、PET3を得た。
ウベローデ粘度計を用いて、フェノール/テトラクロロエタン=6/4(質量比)の混合溶媒を使用し、測定温度30℃で測定した。
1H−NMR(400MHz,日本電子(株)製、商品名:JNM−AL400、測定モード:NON(1H))を用いて、ポリエステルのエチレングリコール及びテレフタル酸以外のジカルボン酸成分及びジオール成分の共重合率の定量を実施した。具体的には、溶媒としてトリフルオロ酢酸−dを用いてポリエステルの5質量%の溶液を調製し、1H−NMRによりジカルボン酸構成単位100モル%中の共重合率及びジオール構成単位100モル%中の共重合率をそれぞれ測定した。
示差走査熱量計((株)島津製作所製、商品名:DSC−60)を用い、昇温速度10℃/分で窒素気流下にDSC測定(示差走査熱量測定)を行い、ポリエステルのガラス転移温度(Tg)、昇温結晶化ピーク(Tch)、降温結晶化ピーク(Tcc)及び融点(Tm)を求めた。
走査型蛍光X線装置((株)リガク製、商品名:ZSX primus)を用い、ペレットでのポリエステル中の金属量(原子濃度換算値)を測定した。
実施例及び比較例で得られたボトルの酸素透過率、黄色度、強度、開封時のヘッドスペース臭気及びボトルの黒ずみについて、以下の方法で測定し、評価した。
23℃、成形体外部の相対湿度50%、内部の相対湿度100%の雰囲気下にてASTM D3985に準じて、成形後5日及び90日経過後のボトルの酸素透過率及び黄色度を測定した。
酸素透過率の測定は、酸素透過率測定装置(MOCON社製、商品名:OX−TRAN 2−61)を使用した。測定値が低いほど酸素バリア性が良好であることを示す。
黄色度の測定は、ボトルパネル部分を切り出し、色差−濁度測定器(日本電色工業(株)製、商品名:COH−400)を用いて測定した。測定値が低いほど良好であることを示す。
ボトルに内容物として蒸留水350mlを充填して密封し、3ヶ月間25℃で保存後、内容物を除去し、ボトルに350Nの垂直荷重を負荷した。その後、圧力の負荷を無くしたときにボトルが元の形状に復元するかどうか測定した。
○:圧力の負荷を無くしたときにボトルが元の形状に復元した。
×:圧力の負荷を無くしてもボトルが変形したままだった。
ボトルに内容物として蒸留水350mlを充填して密封し、1ヶ月間25℃で保存後、開封時のヘッドスペース臭気の官能評価を行った。
○:異臭が全くない。
×:少しでも異臭がある。
ボトルを目視により、ボトル胴部の黒ずみ具合を下記基準により評価した。
○:透明性を保持し、黒ずみが生じていない、又は光の当たり方によっては若干黒く見えることがある。
×:透明性がほとんどなく、どのような見方でも黒ずみがはっきり確認できる。
実施例1
下記の条件により、ポリアミド(A)とポリエステル(B)とを混合した樹脂組成物を射出シリンダーから必要量射出してキャビティーを満たすことにより、インジェクション成形体(パリソン)(22.5g)を得た。なお、ポリエステル(B)としては、表2のポリエステル1を使用した。ポリアミド(A)としては、製造例1で製造したポリアミド1を使用した。ポリアミド(A)の混合割合は5質量%であった。
得られたパリソンを冷却後、二次加工として、パリソンを加熱し2軸延伸ブロー成形を行うことでボトルを製造した。
全長95mm、外径22mm、肉厚2.7mmとした。なお、パリソンの製造には、射出成形機(名機製作所(株)製、型式:M200、4個取り)を使用した。
(パリソンの成形条件)
射出シリンダー温度:280℃
金型内樹脂流路温度:280℃
金型冷却水温度:15℃
全長160mm、外径60mm、内容積370ml、肉厚0.28mmとした。延伸倍率は縦1.9倍、横2.7倍とした。底部形状はシャンパンタイプである。胴部にディンプルを有する。なお、二次加工には、ブロー成形機((株)フロンティア製、型式:EFB1000ET)を使用した。
(二次加工条件)
インジェクション成形体の加熱温度:100℃
延伸ロッド用圧力:0.5MPa
一次ブロー圧力:0.5MPa
二次ブロー圧力:2.4MPa
一次ブロー遅延時間:0.32sec
一次ブロー時間:0.30sec
二次ブロー時間:2.0sec
ブロー排気時間:0.6sec
金型温度:30℃
ポリアミド(A)もしくはポリエステル(B)の種類、又はポリアミド(A)とポリエステル(B)との質量比((A)/(B))を、表3に示すように変更したこと以外はそれぞれ実施例1と同様にしてパリソン及びボトルを製造した。
一方、適切でないリン濃度のポリアミド(A)や適切でないアンチモン量でないポリエステル(B)を用いたボトルは、黒ずみが生じる場合や、酸素バリア性が十分でない場合、経時的な酸素吸収による黄色化が進行する場合があり、商品性が低下した。
Claims (11)
- ポリアミド(A)及びポリエステル(B)を含有する樹脂組成物からなるインジェクション成形体であって、
該ポリアミド(A)が、
下記一般式(I−1)で表される芳香族ジアミン単位、下記一般式(I−2)で表される脂環族ジアミン単位、及び下記一般式(I−3)で表される直鎖脂肪族ジアミン単位からなる群から選ばれる少なくとも1つのジアミン単位を合計で50モル%以上含むジアミン単位25〜50モル%と、
下記一般式(II−1)で表される直鎖脂肪族ジカルボン酸単位及び/又は下記一般式(II−2)で表される芳香族ジカルボン酸単位を合計で50モル%以上含むジカルボン酸単位25〜50モル%と、
下記一般式(III)で表される構成単位0.1〜50モル%と
を含有し、かつ、リン原子濃度換算で250〜500ppmのリン原子含有化合物を含有し、
前記ポリエステル(B)において、走査型蛍光X線分析によるアンチモン含有量が、アンチモン原子濃度換算で100〜300ppmであり、
前記ポリアミド(A)/前記ポリエステル(B)の質量比が3/97〜20/80である、インジェクション成形体。
- 前記一般式(III)におけるRが、置換もしくは無置換の炭素数1〜6のアルキル基又は置換もしくは無置換の炭素数6〜10のアリール基である、請求項1に記載のインジェクション成形体。
- 前記ジアミン単位が、メタキシリレンジアミン単位を50モル%以上含む、請求項1又は2に記載のインジェクション成形体。
- 前記直鎖脂肪族ジカルボン酸単位が、アジピン酸単位、セバシン酸単位、及び1,12−ドデカンジカルボン酸単位からなる群から選ばれる少なくとも1つを合計で50モル%以上含む、請求項1〜3のいずれかに記載のインジェクション成形体。
- 前記芳香族ジカルボン酸単位が、イソフタル酸単位、テレフタル酸単位、及び2,6−ナフタレンジカルボン酸単位からなる群から選ばれる少なくとも1つを合計で50モル%以上含む、請求項1〜4のいずれかに記載のインジェクション成形体。
- 前記ω−アミノカルボン酸単位が、6−アミノヘキサン酸単位及び/又は12−アミノドデカン酸単位を合計で50モル%以上含む、請求項6に記載のインジェクション成形体。
- 前記ポリアミド(A)が、元素周期律表の第VIII族の遷移金属、マンガン、銅及び亜鉛から選択された一種以上の金属原子を含むカルボン酸塩、炭酸塩、アセチルアセトン錯体、酸化物及びハロゲン化物から選ばれる一種以上の金属化合物(C)を含有する、請求項1〜7のいずれかに記載のインジェクション成形体。
- 金属化合物(C)とポリアミド(A)との合計量に対する金属化合物(C)の含有量が、金属原子濃度として10〜5000ppmである、請求項8に記載のインジェクション成形体。
- 請求項1〜9のいずれかに記載のインジェクション成形体を加工して得られる容器。
- 延伸ブロー成形により得られる請求項10に記載の容器。
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