JP6132752B2 - 電力変換装置および電動車両 - Google Patents

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Description

本発明の実施形態は、電力変換装置および電動車両に関する。
電力変換装置は、例えば直流電源と負荷との間に接続されて直流電圧を交流電圧に変換して負荷へ交流電流を流す。電力変換装置は、直列に接続した一対のスイッチング素子を並列に接続した回路を有し、これらのスイッチング素子を切り替えて直流電圧を交流電圧へ変換している。
電力変換装置の交流電圧は、例えば、交流側の電流を検出して検出値が所望の指令値に一致するように制御される。この場合には、電力変換装置の交流側の電流を検出するための電流センサが必要となり、電力変換装置のコストが上昇したり、電力変換装置が大型化したりすることがあった。
特開平8−19263号公報 特許2712470号公報
本発明の実施形態は、コストアップや大型化を回避する電力変換装置および電動車両を提供することを目的とする。
実施形態によれば、直流電源と負荷との間に接続されたインバータの複数のスイッチング素子の接続を切り替えて前記直流電源からの直流電力を交流電力に変換することにより前記負荷を駆動する電力変換装置であって、前記直流電源側の直流電流値と、前記複数のスイッチング素子の駆動信号とから、前記負荷に供給されている負荷電流を検出する電流検出手段と、前記直流電源の電圧値と、前記スイッチング素子の駆動信号とから、前記負荷の電気的モデル式に基づいて前記負荷に供給されている負荷電流を推定する電流推定手段と、前記電流検出手段により負荷電流の検出が不能である期間における負荷電流を、電流推定手段において推定された負荷電流で補完する補完手段と、を備え、前記電流検出手段において検出した値を、前記電流推定手段における負荷の電気的モデル式の状態値として更新設定することを特徴とする電力変換装置が提供される。
図1は、実施形態の電力変換装置の一構成例を概略的に示す図である。 図2は、本実施形態の電力変換装置の制御演算回路の一構成例を概略的に示すブロック図である。 図3は、図2に示す相電流検出部の構成例を概略的に示すブロック図である。 図4は、相電流検出部の動作を説明するためのインバータの回路状態の一例を示す図である。 図5は、相電流検出部の動作を説明するためのインバータの回路状態の他の例を示す図である。 図6は、図2に示す負荷モデル電流推定部の構成例を概略的に示すブロック図である。 図7は、図2に示す3相電流推定部の構成例を概略的に示すブロック図である。 図8は、図2に示す3相電流推定部の構成の他の例を概略的に示すブロック図である。 図9は、相電流検出部の相電流取得不能期間の一例について説明するための図である。 図10は、図9に示す期間a〜c、a´〜c´について、U相、V相、W相の直流電流から相電流を取得可能である期間と、取得不能である期間とをまとめた図である。 図11は、本実施形態の電力変換装置の制御演算回路の他の構成例を概略的に示すブロック図である。 図12は、実施形態の電力変換装置の他の構成例を概略的に示す図である。
以下、実施形態の電力変換装置および電動車両について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態の電力変換装置および電動車両の一構成例を概略的に示す図である。
電動車両は、電力変換装置と、インバータINVと、直流電源BTと、直流電圧センサ30と、回転角センサ40と、負荷としての交流電動機Mと、車輪WLと、交流電動機Mの回転動力を車輪WLへ伝達する車軸100と、を有している。
本実施形態の電力変換装置は直流電源BTと交流電動機(負荷)Mとの間に接続され、直流電圧を交流電圧へ変換して負荷へ交流電流を供給する。
本実施形態の電力変換装置は、ゲート駆動回路10と、制御演算回路CTRと、を有している。
インバータINVは、平滑コンデンサCと、直流電流センサ20と、複数のスイッチング素子を備えている。
複数のスイッチング素子は、U相スイッチング回路と、V相スイッチング回路と、W相スイッチング回路とを含む。U相スイッチング回路と、V相スイッチング回路と、W相スイッチング回路とは、直流電源BTと並列に接続している。
U相スイッチング回路はスイッチング素子Suとスイッチング素子Sxとを有し、スイッチング素子Suとスイッチング素子Sxとは直列に接続している。スイッチング素子Suとスイッチング素子Sxとの直列接続点は負荷と接続している。
V相スイッチング回路はスイッチング素子Svとスイッチング素子Syとを有し、スイッチング素子Svとスイッチング素子Syとは直列に接続している。スイッチング素子Svとスイッチング素子Syとの直列接続点は負荷と接続している。
W相スイッチング回路はスイッチング素子Swとスイッチング素子Szとを有し、スイッチング素子Swとスイッチング素子Szとは直列に接続している。スイッチング素子Swとスイッチング素子Szとの直列接続点は負荷と接続している。
平滑コンデンサCは直流電源BTと並列接続され、直流電源BTの直流電圧を平滑化する。平滑コンデンサCは、静電容量に対応した電荷を蓄積する。
ゲート駆動回路10は、後述する制御演算回路CTRから受信したゲート信号を、複数のスイッチング素子のそれぞれへ送信する。
直流電流センサ20は、インバータINVの直流側の電流を検出する。直流電流センサ20で検出した電流値は制御演算回路CTRへ供給される。
直流電圧センサ30は、インバータINVの直流側の電圧、すなわち直流電源BTの電圧を検出する。直流電圧センサ30で検出した電圧値は制御演算回路CTRへ供給される。
電動機Mは、各相に流れる3相交流電流によって磁界が発生し、回転子との磁気的相互作用によりトルクを発生する。なお、ここでは負荷として3相交流電動機を採用した例について説明するが、負荷の種別は限定されるものではなく、単相交流負荷であってもよい。
回転角センサ40は、レゾルバやエンコーダ等のセンサであって、交流電流の位相が分かる値として、例えば電動機Mの回転子の回転角度を検出する。回転角センサ40で検出した回転角度は制御演算回路CTRへ供給される。
図11は、本実施形態の電力変換装置の制御演算回路の他の構成例を概略的に示すブロック図である。
なお、負荷として電動機Mを採用しない場合には、負荷に供給する交流電流指令の周波数で同期して回転する位相角指令を上位制御系から受信することで回転角センサ40に代えて用いることができる。
図12は、実施形態の電力変換装置の他の構成例を概略的に示す図である。
また、他の例としては、負荷の交流位相を検出する位相検出器42により負荷の交流位相を検出することで回転角センサ40に代えて用いてもよい。位相検出器42は、例えば負荷の線間電圧を検出し、線間電圧の位相を演算する等の構成を採用すればよい。
制御演算回路CTRは、負荷である電動機Mを制御するための演算を行い、電力変換装置の複数のスイッチング素子を駆動するゲート信号を出力する。
図2は、本実施形態の電力変換装置の制御演算回路CTRの一構成例を概略的に示すブロック図である。なお図2において、検出相電流と推定相電流と3相復元電流との通信ライン(太線矢印)は各相の信号を通信する3つの通信ラインであって、ゲート信号の通信ライン(ブロック矢印)は6ビットあるいは3ビットのビット列を並列に通信可能な通信ラインである。
制御演算回路CTRは、電流制御部52と、相電流検出部(電流検出手段)54と、負荷モデル電流推定部(電流推定手段)56と、3相電流取得部(補完手段)58と、遅延器59と、を有している。
電流制御部52は、負荷の電流応答値と上位制御部からの電流指令とが一致するように制御演算を行い、ゲート信号を出力する。具体的には、電流制御部52は、例えば、電動機の回転子の位相に基づいた回転座標系において、電流および電圧を直流量として、電流指令値と電流応答値との差分を比例積分(PI)制御などの制御により出力電圧指令を演算する。電流制御部52は、演算した出力電圧指令をキャリア(三角波)と比較してゲート信号を生成して出力する。電流制御部52は、6つのスイッチング素子のゲート信号を生成して出力する。
相電流検出部54は、直流電流センサ20で検出した直流電流値と、ゲート駆動回路10に入力されるゲート信号とから、後述する通電相選択信号と、ゲート信号によって決まる相の電流とを演算し、出力する。
負荷モデル電流推定部56は、負荷である電動機の電気的モデル式に基づいて、ゲート信号、回転角度、直流電圧、遅延器59から出力された1サンプル前の3相復元電流値を入力として負荷の状態量である相電流値を演算する。
3相電流取得部58は、相電流検出部54で取得した検出相電流値と、通電相選択信号と、負荷モデル電流推定部56で演算した推定相電流値とから、3相復元電流を演算して出力する。
遅延器59は、3相電流取得部58が出力した3相復元電流を受信して、1サンプルタイミング遅延させて負荷モデル電流推定部56へ出力する。
図3は、図2に示す相電流検出部54の構成例を概略的に示すブロック図である。
相電流検出部54は、単独通電相特定部542と、直流電流/特定相電流選択変換部544と、反転回路546と、を備えている。
単独通電相特定部542は、ゲート信号に基づいて、単独通電相およびその相の通電方向を特定して各々に対応した信号を出力する。単独通電相特定部542に入力されるゲート信号は並列に入力され、ゲート信号のそれぞれは例えば「0」または「1」の値を示す。
直流電流/特定相電流選択変換部544は、直流電流センサ20で検出した直流電流値およびその符号反転値と、単独通電相特定部542からの入力に基づいて、単独通電相の電流値を演算し、出力する。単独通電相以外の相の電流値は、前回値を出力する。
図4は、相電流検出部の動作を説明するためのインバータの回路状態の一例を示す図である。
この例では、スイッチング素子Su、Sy、Szが導通し、スイッチング素子Sx、Sv、Swが絶縁している。この時のゲート信号は「1,0,0,1,0,1」であって、対応するスイッチング素子が「Su、Sx、Sv、Sy、Sw、Sz」の順となるように、0又は1の値で表される。ゲート信号が1のときに対応するスイッチング素子が導通し、ゲート信号が0のときに対応するスイッチング素子が絶縁する。
単独通電相とは、直流側からインバータ側を閉回路と見たときに、直流電流源とインバータの相電流値とが一致する相である。この例ではU相が単独通電相である。換言すると、直流電流値をその相の電流値として直接置換できる相である。V相およびW相については、両相の電流の和が直流電流値となっているため、直流電流値からそれぞれの相電流値を特定することができず、単独通電相には該当しない。また、インバータINVへの入出力電流の符号について、直流側は入力方向を正、交流側は出力方向を正とする。
単独通電相特定部542は、単独通電相の上側と下側とのどちらのスイッチング素子が導通しているかを特定して、直流電流/特定相電流選択変換部544へ出力する。図4に示す例では、U相の上側のスイッチング素子のみを1とした通電相選択信号、例えば「1,0,0,0,0,0」という6ビットのビット列を直列あるいは並列に出力する。単独通電相特定部542が並列にビット列を出力する場合には、単独通電相特定部542と直流電流/特定相電流選択変換部544との間に6ビットのビット列を並列に送信可能な通信ラインが必要となる。
直流電流/特定相電流選択変換部544は、単独通電相特定部542の出力信号に基づいて、直流電流値をそのまま使用するか、反転回路546を介して符号が反転した直流電流値を使用するかを選択する。すなわち、直流電流/特定相電流選択変換部544は、単独通電相において上側のスイッチング素子が導通しているか、下側のスイッチング素子が導通しているかによって、直流電流値の符号を選択する。
例えば、図4に示した例の場合、U相の上側のスイッチング素子Suが導通しており、直流電流は正方向(閉回路の時計回り方向)であって、U相電流が正方向(電源から負荷へ流れる方向)であり、直流電流とU相電流との符号は共に正で一致している。
図5は、相電流検出部の動作を説明するためのインバータの回路状態の他の例を示す図である。
この例では、スイッチング素子Sx、Sv、Swが導通し、スイッチング素子Su、Sy、Szが絶縁している。この時のゲート信号は「0,1,1,0,1,0」である。この例においても、単独通電相はU相となる。単独通電相であるU相の下側のスイッチング素子Sxが導通しており、直流電流は負方向(閉回路の逆時計回り方向)であって、U相電流が正方向(電源から負荷へ流れる方向)であり、直流電流とU相電流との符号は異なっている。
したがって、直流電流/特定相電流選択変換部544は、単独通電相において上側のスイッチング素子が導通しているときには、直流電流の符号を反転しない値を用い、下側のスイッチング素子が導通しているときには、直流電流値の符号を反転した値を用いる。
直流電流/特定相電流選択変換部544は、上記のように選択した値を、U相検出電流、V相検出電流、或いは、W相検出電流として出力する。
図6は、図2に示す負荷モデル電流推定部56の構成例を概略的に示すブロック図である。
負荷モデル電流推定部56は、印加電圧演算部562と、3相/dq変換部564、568と、負荷電圧方程式演算部566と、dq/3相変換部560と、を備えている。
印加電圧演算部562は、ゲート信号と直流電圧とから、各相に印加される印加電圧値を計算する。なお、印加電圧値は、ゲート信号を[Gu,Gv,Gw](Gは0あるいは1であり、0は下側スイッチング素子が導通、1は上側スイッチング素子が導通していることを示す)としたとき、下記式(1)のように計算することができる。
上記式(1)において、0.5は、出力電圧のゼロ基準点を直流電圧の中点(1/2の点)とするための補正である。
なお、ゲート信号は、厳密には6個のスイッチング素子のゲート信号を全て含んだ信号としなくてもよい。例えば、各相の上側のスイッチがオンしているときを「1」とし、下側のスイッチがオンしているときを「0」とすると、例えば「1,0,0,1,0,1」は「1,0,0」の3ビットのビット列で表すことが可能である。
インバータINVでは同じ相の上側と下側とのスイッチング素子を同時にオンすることができないため、両スイッチング素子をオフしておくデッドタイム期間を設けるのが一般的であるからである。デッドタイムを無視する場合は、3ビットで表した上記ゲート信号を6ビットの場合と同様に採用可能である。デッドタイムを無視しない場合は、デッドタイム期間中であっても3ビットのゲート信号は0あるいは1のどちらかの状態となり、デッドタイムを表現することができない。しかし各相に電流が流れている場合、デッドタイム期間中の各相の交流出力端の電位はスイッチング素子Su〜Szと並列に設けられているダイオードDu〜Dzによって、直流側のプラス側電位とマイナス側電位とのいずれかとなっている。すなわち、デッドタイム期間中でも、相電流の方向を考慮することによってゲート信号を0と1とのどちらかに確定できるということであり、デッドタイムを無視しない場合には相電流によってゲート信号を復元可能である。
3相/dq変換部564は、回転角センサ40で検出した回転角度に基づいて、3相印加電圧をd軸印加電圧およびq軸印加電圧に変換する。ここで、回転角度は、負荷である電動機の電気角に換算した角度を用いる。一般的には、式(2)のような演算を行えばよい。
3相/dq変換部568も、上述の式(2)と同様の演算を行う。すなわち、回転角センサ40で検出した回転角度に基づいて、3相復元電流をd軸復元電流およびq軸復元電流に変換する。
負荷電圧方程式演算部566は、負荷の電気的モデル式に基づいて電流推定値を演算する。永久磁石同期電動機を負荷として用いる場合のモデル式を式(3)に示す。なお、下記式(3)に入力されるd軸電流ld1およびq軸電流lq1は前回(1サンプルタイミング前)の演算により得られた復元電流に基づく値であって、式(3)の演算によって得られるd軸電流ld2およびq軸電流lq2が新たに演算される値である。負荷電圧方程式演算部566は、内部で回転角度θrを回転速度ω(ω=dθr/dt)に変換して用いる。
ここで、R:電機子巻線抵抗,
Ld:d軸インダクタンス,
Lq:q軸インダクタンス,
Φ:永久磁石磁束,
ω:回転速度(ω=dθr/dt)
である。
負荷電圧方程式演算部566は、式(3)によって得られた微分値を積分して、d軸電流推定値およびq軸電流推定値を演算して出力する。
なお、上記式(3)を電動機とは異なる負荷にも適用可能に一般化すると下記式(3)´となる。
(n)=I(n−1)+(dI(n)/dt)×Δt
(n)=I(n−1)+(dI(n)/dt)×Δt ・・・(3)´
ここでI(n−1)およびI(n−1)は前回(1サンプルタイミング前)の演算により得られた復元電流に基づく値であり、I(n)およびI(n)は今回演算する復元電流となる。
dq/3相変換部560は、負荷電圧方程式演算部566からd軸電流推定値およびq軸電流推定値を受信して、式(2)の逆変換を演算することにより3相推定電流を演算する。
図7は、図2に示す3相電流取得部58の構成例を概略的に示すブロック図である。
3相電流取得部58は、U相通電相判定部581と、U相スイッチ582と、V相通電相判定部583と、V相スイッチ584と、W相通電相判定部585と、W相スイッチ586と、を備えている。
U相スイッチ582にはU相検出電流とU相推定電流とが入力され、U相スイッチ582は、U相通電相判定部581からの切替信号により、U相検出電流とU相推定電流との入力の一方をU相復元電流として出力する。
U相通電相判定部581は、通電相選択信号を受信し、U相が単独通電相であるときにU相検出電流がU相復元電流として出力されるようにU相スイッチ582を切り替える。U相が単独通電相でないときには、U相推定電流がU相復元電流として出力されるようU相スイッチ582を切り替える。
V相スイッチ584にはV相検出電流とV相推定電流とが入力され、V相スイッチ584は、V相通電相判定部583からの切替信号により、V相検出電流とV相推定電流との入力の一方をV相復元電流として出力する。
V相通電相判定部583は、通電相選択信号を受信し、V相が単独通電相であるときにV相検出電流がV相復元電流として出力されるようにV相スイッチ584を切り替える。V相が単独通電相でないときには、V相推定電流がV相復元電流として出力されるようV相スイッチ584を切り替える。
W相スイッチ586にはW相検出電流とW相推定電流とが入力され、W相スイッチ586は、W相通電相判定部585からの切替信号により、W相検出電流とW相推定電流との入力の一方をW相復元電流として出力する。
W相通電相判定部585は、通電相選択信号を受信し、W相が単独通電相であるときにW相検出電流がW相復元電流として出力されるようにW相スイッチ586を切り替える。W相が単独通電相でないときには、W相推定電流がW相復元電流として出力されるようW相スイッチ586を切り替える。
上記のように3相復元電流を選択すると、相電流検出部54による推定電流は、直流電流を直流電流センサ20で検出した値であるため、実際の電流値との誤差を少なくすることができる。
図8は、図2に示す3相電流取得部58の構成の他の例を概略的に示すブロック図である。
この例では、3相電流推定部58は、第2U相スイッチ587と、第2V相スイッチ589と、第2W相スイッチ580と、を更に備えている。
第2U相スイッチ587には、U相スイッチ582の出力値と、V相スイッチ584の出力の符号反転値とW相スイッチ586の出力の符号反転値との和と、が入力される。第2U相スイッチ587は、U相通電相判定部581の切替信号により、U相スイッチ582の出力値と、V相スイッチ584の出力の符号反転値とW相スイッチ586の出力の符号反転値との和とのいずれか一方をU相復元電流として出力する。
第2V相スイッチ589には、V相スイッチ584の出力値と、U相スイッチ582の出力の符号反転値とW相スイッチ586の出力の符号反転値との和と、が入力される。第2V相スイッチ589は、V相通電相判定部583の切替信号により、V相スイッチ584の出力値と、U相スイッチ582の出力の符号反転値とW相スイッチ586の出力の符号反転値との和とのいずれか一方をV相復元電流として出力する。
第2W相スイッチ580には、W相スイッチ586の出力値と、U相スイッチ582の出力の符号反転値とV相スイッチ584の出力の符号反転値との和と、が入力される。第2W相スイッチ580は、W相通電相判定部585の切替信号により、W相スイッチ586の出力値と、U相スイッチ582の出力の符号反転値とV相スイッチ584の出力の符号反転値との和とのいずれか一方をW相復元電流として出力する。
上記の演算は、下記式(4)に示すように各相電流の総和がゼロとなる3相平行負荷を用いた場合に採用可能である。
lu+lv+lw=0・・・(4)
例えば、負荷がN相(Nは3以上の整数)の交流負荷である場合には、上記式(4)は下記式(5)に書き換えることができる。
+l+l+…+l=0・・・(5)
この場合には、単独通電相以外のK相(1≦K≦N)の相電流は、相電流検出部54で演算した単独通電相の電流値の符号を反転した値と、単独通電相とK相以外のN−2相の負荷モデル電流推定部56で演算した相電流の符号を反転した値との和となる。
上記のように3相復元電流を演算すると、単独通電相については検出した電流値を使用し、単独通電相以外の相についても検出した電流値を用いた演算により復元電流を取得することができるため、例えば、負荷電圧方程式演算部566で用いたパラメータの誤差等に起因して復元電流の誤差を低減することができる。
図9は、相電流検出部の相電流取得不能期間の一例について説明するための図である。
図9では、横軸を時間軸として、キャリアと3相電圧指令Vu、Vv、Vwと、ゲート信号Gu、Gv、Gwとを示している。
キャリアは、インバータINVのスイッチング素子へのゲート信号を決定するための三角波PWM処理のための三角波キャリアである。
3相電圧指令Vu、Vv、Vwは、負荷を駆動するための3相電圧指令である。ここでは示している期間が非常に短いため一定値としているが、実際は負荷を駆動する交流波形である。
ゲート信号Gu、Gv、Gwは、三角波PWM処理の結果として得られるゲート信号である。簡略化のためにデッドタイム考慮しないものとすると、ゲート信号Gu、Gv、GwはそれぞれU相、V相、W相の上下スイッチング素子の駆動信号とみなすことができ、例えば、Hレベルのときに上側のスイッチング素子が導通し、Lレベルのときに下側のスイッチング素子が導通する。
上記のゲート信号Gu、Gv、GwによりインバータINVのスイッチング素子を制御するとき、例えば、期間aと期間a´とでは、図4に示すスイッチング素子の状態と同様となる。すなわち、ゲート信号は「1,0,0,1,0,1」である。なお、各相の電流方向については、ここでは考慮しないものとする。このとき、U相の相電流は直流電流から取得可能であるが、V相とW相の相電流は直流電流から取得不能である。すなわち、通電相選択信号は「1,0,0,0,0,0」となる。
同様に、期間bと期間b´とでは、ゲート信号は「1,0,1,0,0,1」であって、W相の相電流が直流電流から取得可能であり、U相とV相の相電流は直流電流から取得不能である。すなわち、通電相選択信号は「0,0,0,0,0,1」となる。
期間cと期間c´とでは、ゲート信号は「1,0,1,0,1,0」あるいは「0,1,0,1,0,1」であって、全ての相で上側あるいは下側のスイッチング素子が同時に導通状態であるため、いずれの相も直流電流から相電流を取得不能である。すなわち、通電相選択信号は「0,0,0,0,0,0」となる。
図10は、図9に示す期間a〜c、a´〜c´について、U相、V相、W相の直流電流から相電流を取得可能である期間と、取得不能である期間とをまとめた図である。図10では、「○」は直流電流から相電流を取得可能である期間であり、「×」は直流電流から相電流を取得不能である期間としている。
期間a〜c、a´〜c´のいずれも、直流電流から相電流を取得不能である相を含んでいる。本実施形態では、各相について、上記の取得可能期間においては相電流検出部54で検出された電流値を復元相電流に採用し、取得不能期間においては負荷モデル電流推定部56で演算した電流値を復元相電流に採用することにより、すべての期間において各相の復元相電流を取得することが可能である。
以上のように、本実施形態の電力変換装置によれば、直流電流センサと負荷モデルとから、負荷に供給される交流電流を取得することが可能である。その結果、取得した値を電流制御部において電流制御に用いることにより、交流側の電流センサを削減可能である。
すなわち、直流電圧を交流電圧に変換して負荷を駆動する電力変換装置では、交流側の電流を検知し、検知した交流電流が所望の指令値に一致するよう、交流電圧を制御するのが制御手法の一つである。この制御手法を採用する電力変換装置の場合、交流出力側の電流を検出する電流センサが必要となり、電力変換装置のコストアップや大型化を招いていた。
一方、電力変換装置の直流側の電流を検出する電流センサを備え、インバータのスイッチング素子のスイッチ状態に基づいて、検出した直流電流から交流電流を取得する手法が提案されている。しかしながら、インバータのスイッチング状態に応じて直流電流値から交流側の各相電流を取得する場合、どの相電流も直流電流値と一致しない期間、いわゆるゼロ電圧ベクトルモードの際には電流の取得が不可能であった。
また、検出した直流電流値から同時刻に取得可能な相電流はスイッチング状態から決まる特定の1相の電流であり、その他の相の電流は取得できないため、その他の相の電流は取得時刻をずらして異なるスイッチング状態を作り出すことにより取得するか、前回値などを使わざるを得なかった。前者の対応策は、交流電圧を作り出すために特殊なPWM法を採用せざるを得ず、システムの演算コストの増加や出力電圧の高調波成分の増加を招くことがあった。また後者の対応策は、同時刻における各相電流取得値に誤差が発生することがあった。
これに対し、本実施形態の電力変換装置によれば、上述のように、交流側の電流センサを必要とせず、電力変換装置のコストアップや大型化を回避することができる。また、本実施形態の電力変換装置によれば、システムの演算を複雑にすることなく同時刻における各相電流の復元値をより精度よく演算することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
BT…直流電源、M…交流電動機(負荷)、INV…インバータ、CTR…制御演算回路、C…平滑コンデンサ、Su〜Sz…スイッチング素子、θr…回転角度、ω…回転速度、10…ゲート駆動回路、20…直流電流センサ、30…直流電圧センサ、40…回転角センサ、52…電流制御部、54…相電流検出部、542…単独通電相特定部、544…特定相電流選択変換部、546…反転回路、56…負荷モデル電流推定部、560…dq/3相変換部、562…印加電圧演算部、564、564…3相/dq変換部、566…負荷電圧方程式演算部、568…3相/dq変換部、58…3相電流取得部、580…W相スイッチ、581…U相通電相判定部、582…U相スイッチ、583…V相通電相判定部、584…V相スイッチ、585…W相通電相判定部、586…第2W相スイッチ、587…第2U相スイッチ、589…第2V相スイッチ、59…遅延器。

Claims (3)

  1. 直流電源と負荷との間に接続されたインバータの複数のスイッチング素子の接続を切り替えて前記直流電源からの直流電力を交流電力に変換することにより前記負荷を駆動する電力変換装置であって、
    前記直流電源側の直流電流値と、前記複数のスイッチング素子の駆動信号とから、前記負荷に供給されている負荷電流を検出する電流検出手段と、
    前記直流電源の電圧値と、前記スイッチング素子の駆動信号とから、前記負荷の電気的モデル式に基づいて前記負荷に供給されている負荷電流の推定値を演算する電流推定手段と、
    前記直流電源側の直流電流値より負荷電流の検出が不能である期間における負荷電流を、電流推定手段において演算された負荷電流の推定値で補完する補完手段と、を備え
    前記電流検出手段において検出した値を、前記電流推定手段における前記負荷の電気的モデル式の状態値として更新設定することを特徴とする電力変換装置。
  2. 前記電流検出手段において検出した電流検出値と、前記電流推定手段において演算した電流推定値とを比較した結果に基づいて、前記電流推定手段における前記負荷の電気的モデルのパラメータを修正することを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
  3. 直流電源と負荷との間に接続されたインバータの複数のスイッチング素子の接続を切り替えて前記直流電源からの直流電力を交流電力に変換することにより前記負荷を駆動する電力変換装置であって、
    前記直流電源側の直流電流値と、前記複数のスイッチング素子の駆動信号とから、前記負荷に供給されている負荷電流を検出する電流検出手段と、
    前記直流電源の電圧値と、前記スイッチング素子の駆動信号とから、前記負荷の電気的モデル式に基づいて前記負荷に供給されている負荷電流の推定値を演算する電流推定手段と、
    前記直流電源側の直流電流値より負荷電流の検出が不能である期間における負荷電流を、電流推定手段において演算された負荷電流の推定値で補完する補完手段と、を備え
    前記電流検出手段において検出した電流検出値と、前記電流推定手段において演算した電流推定値とを比較した結果に基づいて、前記電流推定手段における前記負荷の電気的モデルのパラメータを修正することを特徴とする電力変換装置。
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