JP6132334B2 - 液体アクチュエータ - Google Patents

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Description

本発明は、内包する液体の形状を変化させることで所期の機能を実現する液体アクチュエータに関する。
半導体集積回路の形成過程で用いられる微細加工技術を利用して、シリコン等からなる基板上に微細構造をもった構造体を形成することが可能であり、今後その技術の発展が期待されている。そのような構造体は、MEMS(Micro Electro Mechanical System)と称されている。今までにMEMSとして様々なデバイスが提案されている。
この出願の発明者らは、特許文献1に示されるマイクロデバイス及びその製造方法を提案した。このマイクロデバイスは、表面に第1の電極を備えた基板上に、薄膜形成処理の際に蒸発せずに残る液体を載せ、その液体表面上にパラキシリレン系ポリマー(例えば商品名パリレン(登録商標))等の薄い保護膜を形成し、その保護膜の表面に第2の電極を形成した構造を有する。第1の電極と第2の電極との間に電圧を印加することにより発生する静電気力により保護膜の形状が変化することで、保護膜内の液体の形状が変化する。このような電圧制御による液体及び保護膜部分の形状制御により、デバイスの物理的特性を可変制御することができる。このマイクロデバイスは、可変焦点レンズ、マイクロプリズム、マイクロミラー等と言った様々な用途に応用可能である。
また、この出願の発明者らによる特許文献2の図18に示されるデバイスは、基板の両面にそれぞれ特許文献1のデバイスと同様の液体を内包する電極・保護膜構造を有し、基板に設けられた貫通孔を介して、内部の液体が基板の両面間で相互に流通可能となっている。このデバイスでは、基板の一方の面(「第1面」と呼ぶ)側の電極間にのみ電圧を印加することで、その第1面側の液体をほぼ全量他方の面(「第2面」と呼ぶ)側へと押し出し、第1面側の保護膜表面をほぼ平坦とすることができる。また、その逆に、第2面側の電極間にのみ電圧を印加することで第2面側の保護膜表面をほぼ平坦にすることもできる。
特許文献3の図1に示される液体レンズ装置は、透明な基板とこの基板の端部に立設する側壁とからなる一面が開放する筐体と、この筐体の開放面を閉塞して液密な空間を形成する透明なシートを備える。筐体の側壁の一部には、貫通孔が形成される。この貫通孔を液密に閉塞するように、側壁に袋体が固定される。筐体内の空間及び袋体内は、透明な液体で満たされている。透明シート及び基板の内面にはそれぞれ透明導電膜が貼着又は蒸着されている。シート及び基板の透明導電膜同士の間に電圧がかかると、両者の間に静電気が発生して互いに引き寄せ合う。これにより、弾性を有するシートが基板側に凹んで湾曲すると共に、この湾曲に応じて筐体内の空間の容積が減少し、可変レンズの焦点距離が短くなる。筐体内の空間から溢れた分の液体は袋体に流入する。電力供給を停止すると、シートと基板との間に掛かる静電力が無くなり、シートは、自らの弾性あるいはさらに袋体の弾性によって平面状に戻り、可変レンズの焦点距離が元にもどる。この復元の際、袋体内の液体が筐体内の空間に戻る。
特許第5030215号明細書 特開2008−310126号公報 特開2002−131513号公報
特許文献1に示されたマイクロデバイスでは、基板と保護膜と間に液体が封入された形となっており、液体の逃げ場がないので、液体及び保護膜の部分の形状の変形度合いには限度がある。例えば、保護膜表面を平坦に近い形状まで変形させることは困難である。
特許文献2に示されるデバイスは、基板の両面に電極・保護膜構造を設ける必要があるため、コストが高くなったり、制御が複雑になったりしがちである。
特許文献3に示される装置は、袋体を取り付けるという構造上、様々な観点で小型化がきわめて困難である。
本発明の目的は、簡素な構造でありながらも、保護膜の大変形が可能で、小型化しやすい液体アクチュエータを提供することである。
本発明に係る液体アクチュエータは、第1の電極を備えた基板と、前記基板の両側の表面のうちの第1面の上に膨出した液体からなる液体膨出部と、前記液体膨出部の液表面に形成されている保護膜と、前記保護膜の表面に形成されている第2の電極と、を備え、前記基板には、前記第1面上の前記液体膨出部に接する領域内に設けられた流路入口から前記基板内を通って延びる逃がし流路、が形成されており、前記第1の電極と前記第2の電極との間の印加電圧を制御して前記第2の電極を前記第1の電極側に引き寄せる静電気力を強め、前記保護膜を前記基板の前記第1面に近づけると、前記液体膨出部の液体の少なくとも一部が前記逃がし流路を通って逃がされることで前記保護膜と前記第1面との間の前記液体膨出部の体積が減少し、前記印加電圧の制御により前記第2の電極を前記第1の電極側に引き寄せる静電気力を弱めると、前記逃がし流路を通って逃がされた前記液体が前記液体の前記表面張力の寄与により前記保護膜と前記第1面との間へと戻ることで、前記保護膜と前記第1面との間の前記液体の体積が復元する、ことを特徴とする。

逃がし流路の断面(すなわち当該流路が延びる方向に対して直交する断面)の形状、寸法は、例えば、第1の電極と第2の電極とを引き寄せる静電気力が働かない状況で、当該流路内でその液体に働く表面張力が他の外力(例えば保護膜の圧力)に打ち勝つ、という条件を満たす範囲で、自由に選択可能である。第1の電極と第2の電極との間の印加電圧の制御により、第1の電極と第2の電極とを引き寄せる静電気力を作用させると、保護膜が第2の電極により基板側へと押圧され、その保護膜により液体膨出部に圧力がかかる。この圧力が、液体の表面張力に打ち勝つことで、液体が逃がし流路内に進入する。液体が逃がし流路に進入することで、基板と保護膜との間の液体膨出部の体積が減少する。この体積の減少により、基板と保護膜との間の距離が小さくなる場合もある。一方その静電気力が弱められると、液体の表面張力が保護膜の圧力に打ち勝ち、液体が表面張力によりその表面をできるだけ小さくするように振る舞うことで、逃がし流路に逃げていた液体が基板と保護膜との間に戻っていく。
基板内を通る逃がし流路の内面を、液体膨出部の液体に対する親和性の低い低親和性表面とすることで、液体の表面張力が有効に働き、第1の電極と第2の電極とを互いに引き寄せる静電気力を弱めたときの、基板・保護膜間への液体の復元力が増す。
ここで、低親和性表面は、その液体に対する親和性の低い膜を逃がし流路内面に形成することで実現してもよいし、基板自体の材質をその液体に対する親和性の低い材質とすることで実現してもよい。
ここで、逃がし流路の内面のうち、少なくとも、第2の電極を第1の電極に引き寄せる静電気力を0にしたときの逃がし流路内での液体の表面の位置から、静電気力を最大にしたときに液体の表面が到達する位置までの部分を前記低親和性表面としてもよい。このようにすれば、液体膨出部から最大限の液体が逃げ出したとしても、逃げ出した液体は逃がし流路内の低親和性表面と接するので、静電気力を弱めたときに表面張力が働きやすくなる。
基板の厚みが変わらなければ、1つの液体膨出部に対応して設ける逃がし流路の数を多くするほど、逃がし流路の総容積が大きくなる。例えば1つの液体膨出部に対して複数の逃がし流路を設けることで、基板が薄くても、液体膨出部内から逃がしたい液体を、それら複数の逃がし流路内に収容し、流路出口から外側に出ないようにすることができる。
ただし、これは一例に過ぎず、逃がした液体が逃がし流路の流路出口から部分的に膨出できるようにしてもよい。この場合、流路出口が設けられ基板の表面のうち、少なくとも、電極同士を引き寄せる静電気力を最大にしたときに逃がし流路を通って当該表面上に膨出した液体が接する範囲を、低親和性表面として形成しておくことで、液体膨出部から最大限の液体が逃げ出したとしても、逃げ出した液体は流路出口近傍の低親和性表面と接するので、静電気力を弱めたときに表面張力が働きやすくなる。
逃がし流路は、基板を第1面から第2面まで、基板に垂直に貫通する流路として形成してもよい。
流路出口が、液体膨出部の液体に対して不活性な気体で満たされた閉鎖空間に連通するように構成してもよい。この閉鎖空間を画定する覆いの少なくとも一部を弾性材料で形成してもよい。
本発明によれば、簡素な構造でありながらも、保護膜の大変形が可能で、小型化しやすい液体アクチュエータを実現することができる。
本発明の実施形態としての液体アクチュエータをアレイ配列したアクチュエータアレイの一例を説明するための図である。 液体アクチュエータの断面構造を模式的に示す図である。 電極間への印加電圧により液体膨出部の液体が逃がし流路を通って基板裏面まで膨出した状態を模式的に示す図である。 1つの液体膨出部に対して複数の逃がし流路を設けた構成の一例を示す図である。 1つの液体膨出部に対して複数の逃がし流路を設けた構成の別の例を示す図である。 液体アクチュエータの製造手順の一例を説明するための図である。 基板の裏面側を覆って閉鎖空間とした構造の例を示す図である。 基板の表面に平行に延びる逃がし流路を備えた液体アクチュエータの断面構造の一例を模式的に示す図である。
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。図面はあくまで説明を目的としたものであり、わかりやすくするために強調を施した部分も含まれる。したがって、図示した各要素の形状や寸法は、必ずしも実際のデバイスでの形状や寸法に対応したものとなっていない。以下では、同様の要素が異なる図面に現れる場合に、それら同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
(1)アクチュエータ構造の説明
(1−1)液体アクチュエータ2の基本構造、及びそのアレイ配列の例
図1に、実施形態の液体アクチュエータ2を縦横に行列状に配置したアクチュエータアレイ1を模式的に示す。
アクチュエータアレイ1は基板3を有しており、この基板3の一方の面(図示例の上面)に、複数の第1の電極4が、互いに平行に、等しい間隔で配列されている。基板3の材質はアクチュエータアレイ1の用途に応じて定めればよい。液体レンズのように光の透過性を必要とする用途であれば、基板3にはガラス等の透明材質を用いればよく、そうでなければ例えばシリコンのような一般的な材料を用いることができる。第1の電極4の材質も同様であり、透明性が必要とされるのであればITO(Indium Tin Oxide)等の透明な導電材料を用いればよく、そうでなければ金やクロム等といった一般的な電極材料を用いればよい。
第1の電極4は、長手方向(図1では左上から右下へと向かう方向)に延びている。第1の電極4には、その長手方向に沿って等間隔に、複数の円形の載置領域4aが形成されている。各載置領域4a上には、液体からなる液体膨出部6が形成される。液体膨出部6を構成する液体は、後述する保護膜10を形成する際の高真空のプロセスでも蒸発しにくいものであればよく、例えばシリコンオイルがその一例である。アクチュエータアレイ1が光を透過させる用途のものである場合は、透明な液体を用いる必要がある。そうでなければ液体は透明でなくてもよい。個々の載置領域4a上に、それぞれ一定量の液体を載せることで、その液体の表面張力により、基板3の表面から凸状に膨出した液体膨出部6が形成される。
基板3及び第1の電極4の表面のうち、円形の載置領域4aの外側の領域8(以下「非載置領域」と呼ぶ)は、疎水性膜9により覆われている。この明細書でいう「疎水性」とは、液体膨出部6を構成する液体に対する親和性が低い(より厳密には、第1の電極4の表面よりも低い)という意味である。液体としてシリコンオイル等の油性材料を用いる場合、「撥油性」と言い換えてもよい。疎水性膜9の材料としては、CYTOP(登録商標)等の非晶質透明フッ素樹脂を用いることができる。
このように載置領域4aの周囲が疎水性膜9で取り囲まれているので、製造時に載置領域4a上に所定量の液体を滴下した場合、液体は周囲の非載置領域には進入せずに載置領域4a内に留まり、表面張力により凸レンズ状に膨出した液体膨出部6を形成する。
液体膨出部6の上面は、保護膜10により覆われる。図1の例では、液体膨出部6だけでなく、非載置領域の疎水性膜9の表面も含む基板3全体が保護膜10により覆われている。保護膜10により、液体膨出部6は基板3上の所定の位置(すなわち、対応する載置領域4a上)に固定され、また使用時の環境から保護される。
保護膜10の材料としては、例えば、特許文献1のデバイスで用いたのと同様のポリパラキシリレン(商品名「パリレン(登録商標)」)を用いればよい。この場合、例えば高真空CVD(Chemical Vapor Deposition)法などの薄膜形成処理により、液体膨出部6及び疎水性膜9の表面上にパリレン(登録商標)を堆積させることで、保護膜10を形成することができる。パリレン(登録商標)を用いる場合、保護膜10の厚さは、例えば500〜1000nm(ナノメートル)程度である。
保護膜10の表面(上面)は、第2の電極12により覆われている。図示例では、複数の第2の電極12が、第1の電極4の長手方向と直交する方向に延びるよう形成されており、第2の電極12同士は互いに等しい間隔で隔てられている。個々の第2の電極12には、長手方向に沿って等間隔に、各液体膨出部6を覆うように、円形の可変領域12aが形成されている。可変領域12aは、第2の電極12の一部である。
第2の電極12の材質は、第1の電極4の場合と同様、液体アクチュエータの使用目的上、光を透過させる必要がある場合は十分な透明性のあるものとする。そうでなければ透明でないものを用いてもよい。また、第2の電極12の少なくとも可変領域12aは、後述する液体膨出部6の静電気力の変形に対応するのに十分な柔軟性(あるいは可撓性)を有している必要がある。例えば、十分に薄い(例えば厚さ5nm程度)の金の膜は、十分な透明性と柔軟性を有しているので、第2の電極12として用いることができる(ただし、これは一例に過ぎない)。
後で詳しく説明するが、第1の電極4と第2の電極12との間に電圧を印加してそれら両電極間に互いに引き寄せ合う静電気力を発生させることで、第2の電極12及び保護膜10、ひいては液体膨出部6を変形させることができる。
ここで、図示例では、第1の電極4と第2の電極12の延伸方向同士が互いに直行している。このため、第1の電極4と第2の電極12のペアのうち電圧を印加するペアを選択することで、選択されたペアを構成する第1の電極4と第2の電極12とが交差する位置の液体膨出部6を選択的に変形させることが可能となる。すなわち、この例では、変形させる液体膨出部6を個別に選択することができる。
さて、図1のデバイス構造では、基板3の載置領域4a内に、基板3を表(おもて)面から裏面へと貫通する逃がし流路16が形成されている。逃がし流路16のうち、載置領域4aに開いた開口を流路入口とよび、基板3の裏面に開いた開口を流路出口と呼ぶことにする。
逃がし流路16は、その断面の寸法が、液体膨出部6の液体が自然状態(例えば、液体膨出部6に対して電極間の静電気力による圧力が加わっていない状態)でその表面張力により逃がし流路16にほとんど入り込まない程度の寸法であればよく、断面形状は特に限定されない。使用する液体の表面張力が大きくなるほど、断面寸法の大きな逃がし流路16でも動作可能となる。逆に、液体の表面張力が小さくなるほど、逃がし流路16の断面寸法は小さくする必要がある。逃がし流路16の断面形状(すなわち流路が延びる方向に対して直交する断面の形状)は例えば円形や楕円形などであってもよいし、正方形等の多角形であってもよい。また、逃がし流路16を、断面が円形や方形の「孔」として構成する代わりに、液体膨出部6の液体が自然状態で入り込まない程度の幅の「溝」として構成してもよい。逃がし流路16の寸法は、液体膨出部6に用いる液体の種類に応じて定めればよい。
例えば、液体膨出部6の液体としてシリコーンオイル「HIVAC F-4」(信越化学工業株式会社製。表面張力34mN/m)を用い、逃がし流路16を断面が円形の孔とする場合、その孔の直径は50〜400μm程度である(ただしこれはあくまで一例に過ぎない)。
なお、逃がし流路16の内面に疎水性膜18を形成する例(詳しくは後述)では、逃がし流路16の断面の寸法及び形状は、その疎水性膜18の作用も考慮に入れて、自然状態では逃がし流路16内の疎水性膜18が形成されている部分に液体が進入しないように定めればよい。
ここで、図2を参照して、逃がし流路16、及びこれに関連するデバイス構造について更に詳しく説明する。図2は、個々の液体アクチュエータ2の断面を模式的に示している。図2に示す例は、第1の電極4上の載置領域4aの周囲のドーナツ状領域のみが疎水性膜9で覆われている点が図1の例と異なる(図1の例は載置領域4a以外の全域が覆われている)が、その他の点は図1の例と同様である。
図2の例では、基板3の裏面(下面)が疎水性膜18で覆われている。疎水性膜18は、液体膨出部6を構成する液体に対する親和性が第1の電極4及び基板3の表面(及び逃がし流路の16の内面)よりも低い材料を用いて形成する。1つの例では、この疎水性膜18には、基板3の上面側に形成される疎水性膜9と同じ材料を用いる。ただし、これは一例に過ぎず、このかわりに疎水性膜18と疎水性膜9とを異なる材質で形成してもよい。
図2の例では、疎水性膜18が基板3の裏面全体を覆っているが、これは必須のことではない。疎水性膜18は、基板3の裏面のうち、逃がし流路16の流路出口を取り囲み、かつ、逃がし流路16に接する一部の領域(例えばドーナツ状の領域)のみに形成してもよい。この場合、基板3の裏面上の流路出口周りの疎水性膜18の領域は、静電気力により基板裏面側に押し出し可能な最大限の量の液体が、その疎水性膜18の領域から外側へはみ出ないサイズに定めておけばよい。
図示例では、疎水性膜18は、一部が逃がし流路16内にも進入しており、逃がし流路16の内面のうち少なくとも基板3の裏面側に近い部分も疎水性膜18で覆われている。すなわち、疎水性膜18は、逃がし流路16の最下部(基板裏面の位置)からある高さまでの範囲の逃がし流路16内面の全周を覆っている。したがって、製造時に載置領域4aに滴下した液体は、逃がし流路16上部の流路入口から、疎水性膜18が形成されている高さのところまで進入したところで表面張力により止まる(言い換えれば、逃がし流路16の断面寸法がそのように定められている)。図2に示した、保護膜10を成膜後の自然状態での液体の逃がし流路16内での下面の高さも、おおむね逃がし流路16内の疎水性膜18の最高位置の高さである。なお、逃がし流路16内面の最下部から最上部(基板3の上面の位置)までの全面を疎水性膜18で覆い、自然状態では液体がほとんど逃がし流路16に入らないようにしてもよい。
別の例として、基板3上から逃がし流路16へと退避させる液体の最大量を、逃がし流路16内に完全に収容できるように構成することも考えられる。これには、例えば逃がし流路16を長いものとしたり、1つの載置領域4aに設ける逃がし流路16の数を多くしたりするなどして、1つの載置領域4aに設けられた逃がし流路16の容積の合計を、退避させる液体の最大量より大きくすればよい。この場合、逃がし流路16内面の疎水性膜18は、基板3の上面から見て、自然状態における液体の下面の深さから、液体膨出部6から逃がしたい最大量の液体が逃がし流路16内に進入した場合の進入深さまで形成されていれば足り、基板3の裏面側には形成されていなくてもよい。
図2は、自然状態、すなわち、電極4,12間に電圧を印加しておらず、保護膜10を押し下げる静電気力が発生していない状態を示している。
これに対し、液体アクチュエータ2の上面及び下面の電極4及び12の間に電源15から電圧を印加すると、両電極間に静電気力による引力を発生し、液体アクチュエータ2は図3に示す状態へと変形する。すなわち、電極4,12間に生じる静電気力により第2の電極12の可変領域12aが基板3上の第1の電極4に引き寄せられ、これにより保護膜10が基板3に近づく方向に押される。ここで、液体アクチュエータ2は逃がし流路16を備えているので、保護膜10が基板3へと押されるにつれて、液体膨出部6の液体が逃がし流路16へと押し出され、逃がし流路16内に深く進入する。図示例では、押し出された液体の一部が基板3裏面の流路出口から下側に膨出している。
押し出される速さが十分に緩やかであれば、押し出される液体は表面張力により基板3の上面側に残る液体と一体性を保ったまま、基板3の裏面側に膨出する。また、基板裏面側に膨出する液体6aの量が基板上面側に残る液体の量にくらべて十分少なければ、裏面側に出た液体6aは表面張力の作用により基板上面側の液体膨出部6と一体性を保つため、液体アクチュエータ2内の液体がなくなることもない。印加する電圧等を適切に制御することで、基板3の裏面側に出る液体の量を制限し、液体が失われないようにすることができる。
なお、静電気力により逃がし流路16へと退避させる液体の最大量が、逃がし流路16内に完全に収容できる構成の場合は、逃がし流路16の長さを十分にとれば、静電気力による液体への押圧が多少急激であっても、液体が逃がし流路16の流路出口から外側に吹き出さないようにすることができる。
このように、本実施形態では、両電極4,12間への電圧印加により保護膜10を基板3側へと押し下げることで液体膨出部6の液体を逃がし流路16(及び基板3の裏面)へと逃がし、基板3の上面側の液体膨出部6の体積を減らすことができる。これに応じて、基板3と保護膜10との間の距離も小さくなる。
図3の状態で、電源15からの電極4,12間への電圧の印加が停止され、静電気力による圧力がなくなると、逃がし流路16内に進入し基板3の裏面に出た液体が、液体の表面張力により、自然状態での位置まで戻る。疎水性膜18が設けられているので、液体の表面張力が支配的に作用し、電圧印加停止により弱まった保護膜10の圧力に抗して液体を自然状態まで戻す。これにより、基板3の上面側の液体膨出部6の体積が元に戻り、基板3に対する保護膜10の高さも元の状態(自然状態)に戻る。
以上では、電極4,12間への印加電圧をオン・オフの二段階で切り替えたが、このかわりに印加電圧を連続的に変化させ、基板3・保護膜10間の液体膨出部6の体積を連続的に変化させるようにしてもよい。この場合、例えば印加電圧を高くするなどして両電極4,12間の引き合う力を強めると、保護膜の圧力により液体が逃がし流路16を通って基板3の裏面の方向へと押し出される。逆に引き合う力を弱めると、液体の表面張力により液体が基板3の上面側に戻る方向に移動する。
(1−2)複数の逃がし流路を設けた例
図1及び図2の例のように1つの液体アクチュエータ2に対して逃がし流路16を1つ設ける構成では、基板3の上面側から逃がすことができる液体の量には限りがあり、液体膨出部6及び保護膜10の変形量を余り大きくすることはできない。変形量は、逃がし流路16の容積、すなわち逃がし流路16の断面積×長さ(この長さは、図示例では基板の厚みに等しい)に依存する。
これに対し、図4及び図5の例のように、1つの液体アクチュエータ2の載置領域4a内に複数の逃がし流路16を設けることで、逃がし流路16が1つしかない場合よりも変形量を増やすことができる。例えば、基板3の上面側の液体膨出部6内の液体の全量をそれら複数の逃がし流路16に逃がし、載置領域4a上の保護膜10をほぼ平面にまで変形させることも可能である。
図4の例は、円形の載置領域4aの中央部に5×5個の逃がし流路16を行列状に設けた例であり、図5の例は、円形の載置領域4aの周縁部近傍に、複数の逃がし流路16を円形に配設した例である。
ここで、複数の逃がし流路16の容積の合計が液体膨出部6の液体の体積以上であれば、液体膨出部6の液体全部をそれら逃がし流路16内に収容することができ、基板3の裏面側に液体がはみ出ることはない。基板3の裏面側に液体がはみ出ないことで、液体が失われる可能性を更に低減することができる。また、この実施形態では、基板3の裏面と、逃がし流路16内面のうち少なくとも基板3の裏面から連続する部分とが疎水性膜18で覆われているので、液体が基板3の裏面側へ出て行きにくい。
なお、図4及び図5では、煩雑さを避けるため、保護膜10と第2の電極12とを1つにまとめて図示している。
(2)製造プロセスの例
逃がし流路16を有する液体アクチュエータ2の製造プロセスの一例を、図6を参照して説明する。
(A)まず、シリコン等の材質からなる基板3の上面に第1の電極4の材料(例えば金及びクロム)をスパッタ法などにより成膜する。金やクロムを用いる場合、例えば100〜200nm程度の膜厚に成膜する。その後、その電極の膜のうち、逃がし流路16が形成される予定領域16a(図6の例は1つの液体アクチュエータ2に複数の逃がし流路16を設ける例である)、すなわち流路入口の部分を、エッチングなどによりパターニングする。これにより、逃がし流路16が形成される予定領域16aでは、電極膜が除かれ基板3が露出する。このプロセスにより、基板3上の各流路入口の場所に穴が開いた第1の電極4が形成されることになる。
なお、図示例では、右端の電極膜部分4pは、パターニングにより第1の電極4から切り離されている。この部分4pは、後で形成される第2の電極12に電気的に接続するためのパッドとなる。
この例において第1の電極4に用いられる金は、シリコンオイル等の液体に対する親和性が高いので、静電気力により逃がし流路16へと押し出された液体が静電気力の解除により基板3上面側に戻る際の戻りやすさを高めるのに寄与する。もっとも、金は一例に過ぎず、他の電極材料を用いてもよい。
(B)次に、第1の電極4が形成された基板3上に、疎水性膜9の材料(例えばCYTOP(登録商標))を塗布する。そして、疎水性膜9のうち不要な部分をエッチングなどにより取り除くことで、必要なパターンの疎水性膜9を形成する。図示例では、円形の載置領域4aを取り囲むドーナツ状の部分にのみ、疎水性膜9を残している。
(C)次に、疎水性膜9が形成された基板3の各流路出口の位置を、基板3の裏面側から例えば深掘りRIE(Reactive Ion Etching)法などでエッチングする。これにより、基板3を裏面からおもて面へと貫通する複数の逃がし流路16が形成される。なお、このステップ(C)と疎水性膜9の形成(B)の実行順序は逆にしてもよい。
(D)逃がし流路16が形成された後、基板3の裏面に疎水性材料(例えばCYTOP)の液体を塗布して疎水性膜18を形成する。この塗布処理では、例えば、基板3とは別の平板上に疎水性材料をスピンコート法などで薄く塗布し、その後、その平板の塗布面に対して基板3の裏面を接触させることで、疎水性材料層を基板3の裏面に付着させる。このとき、塗布された疎水性材料の一部が、毛細管現象により逃がし流路16の内面に進入する。これにより、逃がし流路16の内面のうち少なくとも基板3の裏面に近い部分も、疎水性膜18により覆われる。
(E)次に、基板3の表面の、疎水性膜9に囲まれた載置領域(図1の領域4a)にシリコンオイル等の液体を滴下した後、その液体を覆うよう、CVD(Chemical Vapor Deposition)法などの薄膜形成処理でパリレン(登録商標)の保護膜10を形成し、更にその保護膜10上に金などの材質からなる第2の電極12を成膜する。なお、煩雑さを避けるため、図6では保護膜10と第2の電極12とを1つにまとめて図示している。
以上、液体アクチュエータ2の製造プロセスの一例を説明したが、この製造プロセスのうち、逃がし流路16と基板裏面の疎水性膜18の形成処理以外のプロセスは、特許文献1に例示したものと同じでよい。
(3)作用効果
以上、実施形態の液体アクチュエータ2の構造と、その製造プロセスについて例示した。
以上に例示した液体アクチュエータ2は、静電気力により保護膜10を基板3側へと押圧して変形させる際、基板3の上面側の液体膨出部6の液体を、逃がし流路16の内部に、また場合によってはその逃がし流路16を通って基板3の裏面側へと逃がすことができる。したがって、液体膨出部が基板の上面と保護膜との間に完全に封じ込められている特許文献1のデバイスよりも、液体膨出部6の形状を大きく変形させることができる。基板3の上面側の構造や逃がし流路16の総容量等を適切に定めれば、保護膜10の上面が平面状、あるいは場合によっては凹面状になるまで、保護膜10を変形させることもできる。
別の観点から言えば、本実施形態では、液体を逃がすための逃がし流路16を設けたことで、基板3の上面側の液体膨出部6の体積、又は、基板3と保護膜10との距離、又はその両方を、特許文献1に示された完全封入型のデバイスよりも大きく変化させることができる。
また、この液体アクチュエータ2は、静電気力による押圧力を解除すると、液体の表面張力により、基板3の裏面及び逃がし流路16内の液体が基板3の上面側に戻るので、特許文献2のデバイスのように形状復元のための特別な駆動機構を必要としない。
また、特許文献2のデバイスでは、基板の第1面側の保護膜を平坦にしようとする場合、第1面側から押し出す液体により第2面側の保護膜を凸状に押し広げる必要がある。すなわち、第1面側の電極間に作用させる静電気力は、第2面の保護膜の弾性に打ち勝つ必要があり、大きな静電気力を必要とする。これに対し、本実施形態の構成では、保護膜の弾性力よりもはるかに小さい、液体の表面張力に打ち勝つ程度の静電気力が発生できれば、基板3の上面状の液体を、逃がし流路16を通して逃がすことができる。
また、筐体内の液体を筐体側壁に取り付けた袋体に逃がせるようにした特許文献3の構造は、袋体を取り付けるプロセスが含まれるため生産性が低い。これに対し、この液体アクチュエータ2は、MEMSの製造プロセスで製造可能であるため、生産性が高い。
また、特許文献3の構造は、袋体を側壁に取り付けるので、小型化しにくい。例えば、小型化するほど、袋体を側壁に取り付けるという作業が困難になる。これに対し、本実施形態の構造は、MEMSの製造プロセスで製造できるので、小型化、微細化が可能である。
また、特許文献3の構造は、袋体内に逃がした液体をその袋体の弾性を利用して筐体内に戻すものであり、逆に言えば液体を筐体外に逃がす際には、静電気力がその袋体の弾性に打ち勝つ必要がある。袋体を薄くしようにも限界があるので、デバイスを小型化すると、発生できる静電気力では袋体の弾性に打ち勝てなくなる場合が出てくる。したがって、ある程度以上小型化することは非常に困難である。さらには、逃がす液体の量を多くするほど袋体が大きくなり、袋体を復元しようとする弾性量が強くなるので、多くの液体を逃がそうとすればするほど、押圧のための静電気力を強くする必要がある。
これに対し、液体自体の表面張力を復元に利用する本実施形態の構造では、表面張力は基本的に寸法に依存しないので、袋体の弾性に起因するそのような問題は生じない。
また、本実施形態では、基板3の裏面に疎水性膜18を設けたので、静電気力による圧力により基板3の上面側から逃がし流路16を通って基板3の裏面側に膨出した液体の表面張力が有効に作用し、その圧力が解除された際に液体が基板3の上面側に戻りやすい。また、圧力により基板3の上面側から逃げる液体を、複数の逃がし流路16内に完全に収容する構成は、基板3の裏面の疎水性膜18は、逃がし流路16内に逃げ込んだ液体を基板3の裏面側に出て行きにくくするという作用も持つ。これらの作用により、液体アクチュエータ2を構成する液体が失われにくくすることができる。
(4)チャンバを設けた例
以上に説明した例では、基板3の裏面側は、開放空間(すなわち液体アクチュエータ2の設置環境)であった。
これに対し、図7に示す例では、基板3の裏面側を覆い30で覆うことで、基板3の裏面側を閉鎖されたチャンバ32としている。
この例では、チャンバ32を設けることにより、何らかの理由で液体が逃がし流路16から基板裏面側へと飛散した場合でも、液体アクチュエータ2の周囲の構造物にその液体が付着するのを防止できる。
基板3の裏面側が開放空間である例では、液体膨出部6の基板裏面側からの圧力は常に大気圧と同等である。したがって、保護膜10を押し下げるための静電気力は、大気圧に打ち勝てる程度のものでよい。
これに対し、基板3の裏面側を閉鎖空間であるチャンバ32とした例では、基板3の上面側から逃げ出した液体の体積だけチャンバ32の容積が圧縮されるため、液体の押し出し量が増えるほど基板裏面側からの液体への圧力が増大する。したがって、チャンバ32の容積は、印加可能な最大電圧で発生できる最大の静電気力による圧力が、設計上基板3の上面側から逃がしたい液体の最大量を基板3上面側から押し出したときのチャンバ32内の圧力以上となるように定める必要がある。
1つの例では、チャンバ32内に封入する気体は空気でよい。
また別の例として、チャンバ32内に、液体膨出部6の液体に対して不活性な気体(すなわち液体膨出部6の液体と反応しない、あるいは反応しにくい気体)を封入することで、液体の変性又は劣化を防止することもできる。不活性気体としては、例えば窒素を用いることができる。
また、チャンバ32の外周を画定する覆い30の一部又は全部を弾性材料(すなわち液体アクチュエータ2の静電気力による押圧力である程度弾性的に伸びることができる材料)で構成してもよい。この場合、逃がし流路16への液体の押し出しによるチャンバ32内の圧力増加が、覆い30が伸びることで緩和されるので、覆い30が実質上伸びない堅いものである場合よりもチャンバ32を小さく設計することができる。
チャンバ32を設ける構造では、静電気力による押圧を解除したときの液体の復元には、チャンバ32の内圧やチャンバ32の覆い30の弾性力も寄与するが、依然として液体自体の表面張力が復元力の大きな部分を占める。
(5)液体を逃がす構造の別の例
以上の例はいずれも、基板3の上面側の液体を逃がす構造として、基板3を表(おもて)面から裏面へと貫通する逃がし流路16を用いていた。
しかし、液体を逃がす構造は、基板3を表(おもて)面から裏面へと貫通する逃がし流路16に必ずしも限られない。
例えば、図8の例では、基板3の上面側に開けられた孔17が、基板3内を横方向(基板表面に平行な方向)に延びる逃がし流路40につながっている。図8に例示した基板3は、例えば、以下に例示する製造プロセスにより製造すればよい。
すなわち、この製造プロセスでは、上部基板と下部基板とを生成し、これら両者を接合することで、基板3を製造する。
ここで、上部基板は、図6を参照して説明したプロセスと同様のプロセスにより作成すればよい。これにより、厚み方向に貫通する孔17が1以上形成された上部基板ができあがる。
一方、下部基板には、逃がし流路40の底面及び側面を構成する溝をエッチング等により形成する。
このように作成された上部基板の下面と、下部基板の上面(溝が形成された側の面)とをそれぞれ洗浄した後、N2もしくはO2のプラズマを照射して表面を活性化する。そして、それら二枚の基板を圧着しながら200〜300度まで温度を上昇させる。これにより、それら両基板の表面間に共有結合が生じ、それら両基板が接合する。これにより、下部基板の溝の上側が上部基板の下面にて覆われ、基板3の横方向に延びる逃がし流路40が形成される。
1つの例では、この逃がし流路40は、基板3の外側の開放空間につながっている。別の例では、逃がし流路40は、基板3の外側に設けられた閉鎖されたチャンバに連通している。また、更に別の例として、基板3内に十分な容量のチャンバ(容量に対する要件は、チャンバ32と同様)を形成し、逃がし流路40をそのチャンバに連通させるようにしてもよい。また、逃がし流路40自体の容量が十分大きければ、チャンバを別途設けなくてもよい。
図8の例でも、逃がし流路40のうち、少なくとも液体膨出部6から押し出された液体が到達する深さ(基板3の上面から見た深さ)までの範囲は、その内面を疎水性膜18でコーティングしておくことが望ましい。また、押し出された液体が逃がし流路40から基板3の側面、又は基板3内のチャンバの内面、へと出る場合は、基板3の側面又はチャンバの内面のうち押し出された液体と接する可能性のある範囲を、疎水性膜18でコーティングしておくことが好適である。
(6)応用例
以上に説明した本実施形態の液体アクチュエータ2、及びこれを複数、アレイ状に配列したアクチュエータアレイ1は、様々な用途に応用することができる。
(6−1)可変ミラー
実施形態の液体アクチュエータ2の第2の電極12上に、対象とする波長範囲の光を反射する反射膜を形成する(あるいは第2の電極12自体を、反射性を持つものとする)ことで、液体アクチュエータ2の上面に反射面を形成する。これにより、電極4,12間の印加電圧の制御により、反射面を、例えば凸面状から平面状まで、あるいはその逆へと変化させることができる。印加電圧を連続可変することで、反射面の曲率を連続的に変化させることも考えられる。
(6−2)デジタルミラーデバイス(DMD)の一種としての利用
MEMSデバイスの一種として、多数の微小鏡面を平面上に配列し、各微小鏡面の傾斜方向を個別に制御することで、微小鏡面単位で光の反射を制御するDMDが知られている。図1に例示したアクチュエータアレイ1の個々の液体アクチュエータ2を上記(6−1)の可変ミラーとして構成することで、DMDに似た機能を持つデバイスを構成することができる。
(6−3)可変焦点液体レンズ
基板3、第1の電極4、液体膨出部6の液体、保護膜10及び第2の電極12を透明材料で構成することで、液体アクチュエータ2を可変焦点液体レンズとして機能させることができる。すなわち、電極4,12間への印加電圧の制御により、保護膜10及びその内部の液体膨出部6の形状(曲率)を可変することで、例えば液体レンズを凸レンズからレンズ作用のない平板(焦点距離無限遠)まで、あるいは凹レンズまで変化させることができ、焦点を可変できる。
また、図1のアクチュエータアレイ1を、このような可変焦点レンズのアレイとして用いることができる。
(6−4)その他
本実施形態の液体アクチュエータ2及びアクチュエータアレイ1は、以上に例示した用途だけでなく、特許文献1に例示した各種の用途など、他の用途にも広く応用可能である。
(7)バリエーション
以上に説明した実施形態では、基板3の裏面、逃がし流路16の内面、又はそれら両方に疎水性膜18を形成した。しかし、これは必須のことではない。基板3の材質及び表面性状により、基板裏面及び逃がし流路内面が十分な「疎水性」を持っていれば(すなわち基板3の載置領域4aの面よりも液体に対する親和性が低ければ)、その上に疎水性膜18を形成する必要はない。
また以上の実施形態では液体アクチュエータ2の載置領域4aを円形としたが、これも必須のことではない。載置領域4aの形状は、目的に応じて、円形以外の他の形状としてもよい。
また、図2等の例では、第1の電極4及び第2の電極12は液体膨出部6のほぼ全面を覆っていたが、液体膨出部6の一部分のみ(例えば周縁近傍の部分のみ)を覆うものであってもよい。
このほか、特許請求の範囲により規定される本発明の範囲内で、様々な変形、改良が可能である。
1 アクチュエータアレイ、2 液体アクチュエータ、3 基板、4 第1の電極、4a 載置領域、6 液体膨出部、9 疎水性膜、10 保護膜、12 第2の電極、12a 可変領域、15 電源、16 逃がし流路、18 疎水性膜、30 覆い、32 チャンバ、40 逃がし流路。

Claims (9)

  1. 第1の電極を備えた基板と、
    前記基板の両側の表面のうちの第1面の上に膨出した液体からなる液体膨出部と、
    前記液体膨出部の液表面に形成されている保護膜と、
    前記保護膜の表面に形成されている第2の電極と、を備え、
    前記基板には、前記第1面上の前記液体膨出部に接する領域内に設けられた流路入口から前記基板内を通って延びる逃がし流路、が形成されており、
    前記第1の電極と前記第2の電極との間の印加電圧を制御して前記第2の電極を前記第1の電極側に引き寄せる静電気力を強め、前記保護膜を前記基板の前記第1面に近づけると、前記液体膨出部の液体の少なくとも一部が前記逃がし流路を通って逃がされることで前記保護膜と前記第1面との間の前記液体膨出部の体積が減少し、前記印加電圧の制御により前記第2の電極を前記第1の電極側に引き寄せる静電気力を弱めると、前記逃がし流路を通って逃がされた前記液体が前記液体の表面張力の寄与により前記保護膜と前記第1面との間へと戻ることで、前記保護膜と前記第1面との間の前記液体の体積が復元する、
    ことを特徴とする液体アクチュエータ。
  2. 前記逃がし流路の内面の少なくとも一部が、前記液体に対する親和性の低い低親和性表面となっている、ことを特徴とする請求項1に記載の液体アクチュエータ。
  3. 前記逃がし流路の内面のうち、少なくとも、前記第2の電極を前記第1の電極に引き寄せる静電気力を0にしたときの前記逃がし流路内での前記液体膨出部の前記液体の表面の位置から、前記静電気力を最大にしたときに前記液体の表面が到達する位置までの部分が、前記低親和性表面となっている、ことを特徴とする請求項2に記載の液体アクチュエータ。
  4. 前記液体膨出部に対応して1以上の逃がし流路が設けられており、前記1以上の逃がし流路の容積の合計が、前記静電気力を最大にしたときに前記液体膨出部から前記1以上の逃がし流路内に逃がされる前記液体の総量以上である、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の液体アクチュエータ。
  5. 前記基板の表面のうちのいずれかの表面に前記逃がし流路の流路出口が設けられていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の液体アクチュエータ。
  6. 前記流路出口が設けられた前記基板の表面のうち、少なくとも、前記静電気力を最大にしたときに前記逃がし流路を通って当該表面上に膨出した前記液体が接する範囲が、前記液体に対する親和性の低い低親和性表面となっている、ことを特徴とする請求項5に記載の液体アクチュエータ。
  7. 前記流路出口は、前記基板の表面のうち、前記第1面と反対側の第2面に設けられており、
    前記逃がし流路は、前記第1面及び前記第2面に垂直な方向に前記流路入口から前記流路出口まで前記基板を貫通している、
    ことを特徴とする請求項5又は6に記載の液体アクチュエータ。
  8. 前記流路出口は閉鎖空間に連通しており、前記閉鎖空間内は前記液体に対して不活性な気体が満たされている、ことを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の液体アクチュエータ。
  9. 前記閉鎖空間を画定する覆いの少なくとも一部が弾性材料で形成されていることを特徴とする、請求項7に記載の液体アクチュエータ。
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