JP6130921B2 - 冷凍サイクル装置 - Google Patents

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Description

本発明の実施形態は、冷媒の漏洩に対処した冷凍サイクル装置に関する。
圧縮機から吐出される冷媒を凝縮器、減圧器、蒸発器に通して圧縮機に戻す冷凍サイクルでは、冷媒が通る配管の接続部などから冷媒が漏洩することがある(例えば特開2008-164265号公報)。この冷媒の漏洩を、確実に検出できることが望まれる。
本実施形態の冷凍サイクル装置の目的は、冷媒の漏洩を確実かつ精度よく検出できることである。
本実施形態の冷凍サイクル装置は、冷凍サイクル、開度制御部、および漏洩検出部を備える。冷凍サイクルは、冷媒を吸込んで圧縮し吐出する圧縮機を含み、その圧縮機から吐出される冷媒を凝縮器、膨張弁、および蒸発器に通して同圧縮機に戻す。開度制御部は、前記蒸発器の過熱度が目標値となるように、前記膨張弁の開度を制御する。漏洩検出部は、前記冷凍サイクルから前記冷媒が漏洩していないことを前提とした場合に、前記冷凍サイクルの現運転時に前記膨張弁が至る筈の開度を前記冷凍サイクルの状態変化量に基づいて予測し、この予測した開度と前記膨張弁の実際の開度との比較により、前記冷凍サイクルにおける前記冷媒の漏洩を検出する。
一実施形態の構成を示すブロック図。 一実施形態のコントローラの制御を示すフローチャート。 一実施形態の膨張弁の開度を決める種々の要因を示す特性要因図。 一実施形態の膨張弁の予測開度と同膨張弁の実際の開度とのずれ量を、冷媒漏洩量をパラメータとして示す図。 一実施形態のコントローラの制御の変形例を示すフローチャート。
以下、一実施形態について図面を参照して説明する。一実施形態として、空気調和機に搭載される冷凍サイクル装置を例に説明する。
図1に示すように、圧縮機1の吐出口に四方弁2を介して室外熱交換器3が配管接続され、その室外熱交換器3に電動膨張弁4を介してパックドバルブ5が配管接続される。このパックドバルブ5に室内熱交換器6が配管接続され、その室内熱交換器6にパックドバルブ7が配管接続される。そして、パックドバルブ7に上記四方弁2およびアキュームレータ8を介して圧縮機1の吸込口が配管接続される。これら配管接続により、ヒートポンプ式冷凍サイクルが構成される。
電動膨張弁4は、入力される駆動パルスの数に応じて開度が連続的に変化するパルスモータバルブ(PMV)である。室外熱交換器3の近傍に室外ファン11が配置され、室内熱交換器6の近傍に室内ファン12が配置される。
圧縮機1は、吸込口から冷媒を吸込み、その吸込み冷媒を圧縮して吐出口から吐出する。冷房時は、矢印で示すように、圧縮機1から吐出された冷媒が、四方弁2、室外熱交換器3、電動膨張弁4、パックドバルブ5、室内熱交換器6、パックドバルブ7、四方弁2、アキュームレータ8を通って圧縮機1に吸込まれる。この冷媒の流れにより、室外熱交換器3が凝縮器として機能し、室内熱交換器6が蒸発器として機能する。暖房時は、四方弁2の流路が切換わることにより、圧縮機1から吐出された冷媒が、四方弁2、パックドバルブ7、室内熱交換器6、パックドバルブ5、電動膨張弁4、室外熱交換器3、四方弁2、アキュームレータ8を通って圧縮機1に吸込まれる。この冷媒の流れにより、室内熱交換器6が凝縮器として機能し、室外熱交換器3が蒸発器として機能する。
室外熱交換器3に、温度センサ21が取付けられる。室内熱交換器6の冷房時冷媒流入側となる位置に、温度センサ22が取付けられる。四方弁とアキュームレータ8との間の配管に、温度センサ23が取付けられる。
室外ユニットAは、圧縮機1、四方弁2、室外熱交換器3、電動膨張弁4、パックドバルブ5、室内熱交換器6、パックドバルブ7、アキュームレータ8、室外ファン11、温度センサ21、および温度センサ23を収容する。室内ユニットBは、室内熱交換器6、室内ファン12、および温度センサ22を収容する。
室外ユニットAおよび室内ユニットBに、コントローラ30が接続される。このコントローラ30に、リモートコントロール式の操作器31、手操作式のリセットスイッチ32、およびインバータ40が接続される。
操作器31は、当該冷凍サイクル装置が搭載される空気調和機の運転条件設定用である。リセットスイッチ32は、いわゆる自動復帰型の押釦スイッチであり、コントローラ30搭載用の制御回路基板などに配置される。インバータ40は、商用交流電源41の交流電圧を整流により直流電圧に変換し、その直流電圧をスイッチングにより所定周波数F(Hz)およびその所定周波数Fに応じたレベルの交流電圧に変換し出力する。このインバータ40の出力が、圧縮機1内のモータに駆動電力として供給される。
コントローラ30は、主要な機能として開度制御部51、漏洩検出部52、更新部53を有するとともに、データ記憶用の不揮発性のメモリ54を内蔵している。
開度制御部51は、蒸発器における冷媒の過熱度SHが目標値SHtに一定となるように、電動膨張弁4の開度を制御する(過熱度一定値制御)。蒸発器は、冷房時が室内熱交換器6であり、暖房時が室外熱交換器3である。過熱度SHは、冷房時が温度センサ22の検知温度T2と温度センサ23の検知温度T3との差(=T3−T2)であり、暖房時が温度センサ21の検知温度T1と温度センサ23の検知温度T3との差(=T3−T1)である。
漏洩検出部52は、ヒートポンプ式冷凍サイクルに冷媒の漏洩がない場合の電動膨張弁4の開度Qmを同ヒートポンプ式冷凍サイクルの状態変化量に基づいて予測し、この予測した開度Qmと電動膨張弁4の実際の開度Qaとの比較により、ヒートポンプ式冷凍サイクルにおける冷媒の漏洩を検出する。
具体的には、漏洩検出部52は、ヒートポンプ式冷凍サイクルの運転初期における電動膨張弁4の開度Qxをメモリ54に記憶するとともに、その運転初期におけるヒートポンプ式冷凍サイクルの状態量を初期状態量(初期運転状態量ともいう)としてメモリ54に記憶する。漏洩検出部52は、上記記憶した初期状態量とヒートポンプ式冷凍サイクルの現運転時の状態量(現状態量ともいう)との差を、状態変化量として検出する。漏洩検出部52は、ヒートポンプ式冷凍サイクルに冷媒の漏洩がない場合の電動膨張弁4の開度Qmを、上記検出した状態変化量に基づいて予測(推定ともいう)する。そして、漏洩検出部52は、ヒートポンプ式冷凍サイクルにおける冷媒の漏洩を、上記予測した開度Qmと電動膨張弁4の実際の開度Qaとの差に応じて、検出する。
上記予測した開度Qmのことを、以下、予測開度(または推定開度)Qmと称す。この予測開度Qmは、ヒートポンプ式冷凍サイクルに冷媒の漏洩がないことを前提とした場合に、ヒートポンプ式冷凍サイクルの現運転時に電動膨張弁4が至る筈の開度である。
上記初期状態量は、リセットスイッチ32が操作されてから設定時間(例えば10時間乃至50時間)txが経過した時点における運転周波数Fx,凝縮温度Tcx,蒸発温度Tex,過熱度SHxの少なくとも1つである。
運転周波数Fxは、圧縮機1の運転周波数(インバータ40の出力周波数)である。凝縮温度Tcxは、冷房時は室外熱交換器3に取付けられた温度センサ21の検知温度T1であり、暖房時は室内熱交換器6に取付けられた温度センサ22の検知温度T2である。蒸発温度Texは、冷房時は室内熱交換器6に取付けられた温度センサ22の検知温度T2であり、暖房時は室外熱交換器3に取付けられた温度センサ21の検知温度T1である。過熱度SHxは、冷房時は温度センサ22の検知温度T2と温度センサ23の検知温度T3との差(=T3−T2)であり、暖房時は温度センサ21の検知温度T1と温度センサ23の検知温度T3との差(=T3−T1)である。
ヒートポンプ式冷凍サイクルの現運転時の状態量は、ヒートポンプ式冷凍サイクルの現運転時における運転周波数Fa,凝縮温度Tca,蒸発温度Tea,過熱度SHaの少なくとも1つである。
例えば、漏洩検出部52は、初期状態量として運転周波数Fx,凝縮温度Tcx,蒸発温度Tex,過熱度SHxを記憶する場合、現運転時の状態量として運転周波数Fa,凝縮温度Tca,蒸発温度Tea,過熱度SHaを抽出する。例えば、漏洩検出部52は、初期状態量として運転周波数Fx,凝縮温度Tcx,蒸発温度Texを記憶する場合、現運転時の状態量として運転周波数Fa,凝縮温度Tca,蒸発温度Teaを抽出する。例えば、漏洩検出部52は、初期状態量として運転周波数Fx,凝縮温度Tcxを記憶する場合、現運転時の状態量として運転周波数Fa,凝縮温度Tcaを抽出する。例えば、漏洩検出部52は、初期状態量として運転周波数Fxを初期状態量として記憶する場合、現運転時の状態量として運転周波数Faを抽出する。
上記更新部53は、メモリ54内の初期状態量をリセットスイッチ32のオン操作に応じて更新する。
つぎに、コントローラ30が実行する制御を図2のフローチャートを参照しながら説明する。
コントローラ30は、初期状態フラグfが“0”であるかを判定する(ステップ101)。初期状態フラグfは、開度Qxおよび初期状態量の記憶が済んでいるか否かの指標である。コントローラ30は、ユーザや作業員によってリセットスイッチ32がオン操作された場合に、初期状態フラグfを“0”にリセットする。
初期状態フラグfが“0”の場合(ステップ101のYES)、コントローラ30は、開度Qxおよび初期状態量の記憶が済んでいないとの判断の下に、運転時間tを積算し(ステップ102)、その積算運転時間tが設定時間tx以上(t≧tx)であるかを判定する(ステップ103)。積算運転時間tは、コントローラ30内のメモリ54に逐次に更新記憶されるとともに、リセットスイッチ32のオン操作があった場合にコントローラ30によって零クリアされる。設定時間txは、運転初期であるところの10時間乃至50時間のいずれかの値であり、当該冷凍サイクル装置が設置される環境などに応じた適切な値が選定される。
積算運転時間tが設定時間tx未満の場合(ステップ103のNO)、コントローラ30は、ステップ101のフラグ判定に戻る。
積算運転時間tが設定時間txに達した場合(ステップ103のYES)、コントローラ30は、ヒートポンプ式冷凍サイクルが安定運転状態にあるかを判定する(ステップ104,105,106)。
すなわち、ステップ104において、コントローラ30は、ヒートポンプ式冷凍サイクルの現運転時の過熱度SHaと目標値SHtとの差ΔSHの絶対値(|ΔSH|)が、設定値ΔSHs未満(|ΔSH|<ΔSHs)であるかを判定する。設定値ΔSHsは、例えば2〜3Kである。ステップ105において、コントローラ30は、ヒートポンプ式冷凍サイクルの現運転時の過熱度SHaが設定値SHs以上(SHa≧SHs)であるかを判定する。設定値SHsは、例えば1〜2Kである。過熱度SHaが設定値SHs以上の場合、過熱度SHaは正の値である。ステップ106において、コントローラ30は、ヒートポンプ式冷凍サイクルの現運転時における圧縮機1の運転周波数Faが設定値Fs以上(Fa≧Fs)であるかを判定する。設定値Fsは、例えば30Hzである。
ステップ104,105,106の判定結果の少なくとも1つが否定の場合(ステップ104のNO、あるいはステップ105のNO、あるいはステップ106のNO)、コントローラ30は、ステップ101のフラグ判定に戻る。
ステップ104,105,106の判定結果が共に肯定の場合(ステップ104のYES、ステップ105のYES、ステップ106のYES)、コントローラ30は、ヒートポンプ式冷凍サイクルが安定運転状態に入ったとの判断の下に、その時点の電動膨張弁4の開度Qxをメモリ54に記憶(更新記憶)するとともに、その時点の運転周波数Fx,凝縮温度Tcx,蒸発温度Tex,過熱度SHxを初期状態量としてメモリ54に記憶(更新記憶)する(ステップ107)。
開度Qxおよび初期状態量の記憶に伴い、コントローラ30は、初期状態フラグfを“1”にセットし(ステップ108)、ステップ101のフラグ判定に戻る。
初期状態フラグfが“1”の場合(ステップ101のNO)、コントローラ30は、ヒートポンプ式冷凍サイクルが安定運転状態にあるかを判定する(ステップ109,110,111)。
すなわち、ステップ109において、コントローラ30は、ヒートポンプ式冷凍サイクルの現運転時の過熱度SHaと目標値SHtとの差ΔSHの絶対値(|ΔSH|)が、設定値ΔSHs未満(|ΔSH|<ΔSHs)であるかを判定する。設定値ΔSHsは、例えば2〜3Kである。ステップ110において、コントローラ30は、ヒートポンプ式冷凍サイクルの現運転時の過熱度SHaが設定値SHs以上(SHa≧SHs)であるかを判定する。設定値SHsは、例えば1〜2Kである。過熱度SHaが設定値SHs以上である場合、過熱度SHは正の値である。ステップ111において、コントローラ30は、ヒートポンプ式冷凍サイクルの現運転時における圧縮機1の運転周波数Faが設定値Fs以上(Fa≧Fs)であるかを判定する。設定値Fsは、例えば30Hzである。
ステップ109,110,111の判定結果の少なくとも1つが否定の場合(ステップ109のNO、あるいはステップ110のNO、あるいはステップ111のNO)、コントローラ30は、ステップ101のフラグ判定に戻る。
ステップ109,110,111の判定結果が共に肯定の場合(ステップ109のYES、ステップ110のYES、ステップ111のYES)、コントローラ30は、ヒートポンプ式冷凍サイクルが安定運転状態に入ったとの判断の下に、ヒートポンプ式冷凍サイクルの現運転時の状態量とメモリ54内の初期状態量との差を状態変化量として検出する(ステップ112)。
ヒートポンプ式冷凍サイクルの現運転時の状態量は、運転周波数Fa,凝縮温度Tca,蒸発温度Tea,過熱度SHaである。上記状態変化量は、運転周波数Fxと運転周波数Faとの差ΔFであり、かつ凝縮温度Tcxと凝縮温度Tcaとの差ΔTcであり、かつ蒸発温度Texと蒸発温度Teaとの差ΔTeであり、かつ過熱度SHxと過熱度SHaとの差ΔSHxaである。
続いて、コントローラ30は、冷媒の漏洩がない状態でヒートポンプ式冷凍サイクルが安定運転する場合の電動膨張弁4の開度Qmを、上記検出した状態変化量に基づいて予測する(ステップ113)。この予測について、以下、説明する。
まず、電動膨張弁4の開度Qを決める要因として、図3の特性要因図に示すように、“かわき度”“冷媒循環量”“蒸発温度Te”“凝縮温度Tc”がある。“かわき度”とは、冷媒が湿り飽和蒸気であるときの蒸気(乾き飽和蒸気)と飽和液との重量比のことである。
これらの要因から、電動膨張弁4の開度Qを表わす次の理論式が得られる。
Q=L・(ρ/ΔP)^0.5
Lは、冷媒循環量である。ρは、電動膨張弁4の冷媒入口側における冷媒密度である。ΔPは、電動膨張弁4の冷媒入口側における冷媒の圧力P1と、電動膨張弁4の冷媒出口側における冷媒の圧力P2との、差(=P1−P2)である。ΔPのことを、以下、冷媒圧力差という。
冷媒密度ρを除く冷媒循環量Lおよび冷媒圧力差ΔPは、運転周波数F,凝縮温度Tc,蒸発温度Te,過熱度SHを用いる演算により、求めることが可能である。そして、運転周波数F,凝縮温度Tc,蒸発温度Te,過熱度SHを用いて開度Qを補正することにより、冷媒密度ρを知ることができる。冷媒密度ρの変化量は、ヒートポンプ式冷凍サイクルにおける冷媒の変化量でもある。つまり、冷媒密度ρの変化量から、冷媒の漏洩の有無を判定することが可能である。
上記演算用のパラメータとして用いる運転周波数F,凝縮温度Tc,蒸発温度Te,過熱度SHは、冷媒の漏洩が生じて冷媒量が減少した場合(冷媒密度ρが減少)でも、その冷媒量の減少の影響をあまり受けない。
したがって、運転初期時にメモリ54に記憶した開度Qxを運転初期時から現運転時までの状態変化量ΔF,ΔTc,ΔTe,ΔSHxaで補正する下式の演算により、ヒートポンプ式冷凍サイクルに冷媒の漏洩がない場合の電動膨張弁4の開度Qmを予測(推定)することができる。この予測開度Qmは、ヒートポンプ式冷凍サイクルに冷媒の漏洩がないことを前提とした場合に、電動膨張弁4が現時点の運転において至る筈の本来の開度である。
Qm=a・ΔF+b・ΔTc+c・ΔTe+d・ΔSHxa+Qx
上記a,b,c,dは、予め実験により求めた定数である。上記“a・ΔF+b・ΔTc+c・ΔTe+d・ΔSHxa”は、初期開度Qxを記憶してから現運転時までの電動膨張弁4の開度変化量に相当する。
仮に、冷媒の漏洩が生じてヒートポンプ式冷凍サイクル中の冷媒量が減少した場合(冷媒密度ρが減少)、電動膨張弁4は、コントローラ30の過熱度一定値制御により、予測開度Qmよりも大きい開度に調節される。
コントローラ30は、電動膨張弁4の実際の開度Qaを逐次に認識しており、その開度Qaと上記予測した開度Qmとのずれ量ΔQ(=Qa−Qm)を求める(ステップ114)。そして、コントローラ30は、求めたずれ量ΔQが閾値ΔQs以上であるかを判定する(ステップ115)。閾値ΔQsは、駆動パルスの数として例えば100パルス分乃至200パルス分の開度であり、ヒートポンプ式冷凍サイクルを構成している機器の容量や配管長などに応じて適切な値が選定される。
ずれ量ΔQが閾値ΔQs以上の場合(ステップ115のYES)、コントローラ30は、ヒートポンプ式冷凍サイクルに冷媒の漏洩があると判定し、その旨を例えば操作器31の文字表示やアイコン画像表示により報知する(ステップ116)。この報知により、ユーザは、冷媒の漏洩が生じていることを認識し、保守・点検を依頼することができる。
さらに、コントローラ30は、上記報知に伴い、圧縮機1を停止して以後の運転を禁止する(ステップ117)。この運転禁止により、冷媒が漏洩したまま運転が継続することがなくなり、冷凍サイクル機器への悪影響を回避することができる。
なお、ずれ量ΔQを、冷媒漏洩量をパラメータとして実験により求め、それをプロットしたのが図4である。実線が正規冷媒量、破線がずれ量ΔQ(%)[=(Qa−Qm)/Qa_max]を示している。Qa_maxは電動膨張弁4の最大開度である。
Qa=Qmである場合、ずれ量ΔQは、0(%)である。電動膨張弁4の全開開度が500パルス分である場合、ずれ量ΔQ=10(%)は、50パルス分に相当する。
以上のように、冷媒の漏洩がない場合の電動膨張弁4の開度Qmをヒートポンプ式冷凍サイクルの状態変化量に基づいて予測し、この予測開度Qmと電動膨張弁4の実際の開度Qaとの比較によって冷媒の漏洩を検出することにより、ヒートポンプ式冷凍サイクルの配管長にかかわらず、また当該冷凍サイクル装置が搭載される空気調和機の仕様の相異などにかかわらず、ヒートポンプ式冷凍サイクルにおける冷媒の漏洩の有無を確実に捕らえることができる。
ヒートポンプ式冷凍サイクルの状態変化量として、冷媒の漏洩の影響をあまり受けない運転周波数F,凝縮温度Tc,蒸発温度Te,過熱度SHのそれぞれ変化量ΔF,ΔTc,ΔTe,ΔSHxaを用いるので、予測開度Qmを高い精度で求めることができる。結果として、漏洩検出用の閾値ΔQsを低く設定できる。漏洩検出用の閾値ΔQsを低く設定できるので、冷媒の漏洩量が少ない場合でも、その漏洩を的確に捕えることができる。
ヒートポンプ式冷凍サイクル中の冷媒を回収する冷媒回収運転を実行して当該冷凍サイクル装置を別の場所に移設した場合には、ユーザや作業員は、移設完了後にリセットスイッチ32をオン操作する。リセットスイッチ32がオン操作された場合、コントローラ30は、新たな運転が開始された後の開度Qxおよび初期状態量をメモリ54に更新記憶する。この更新により、移設後においても、冷媒の漏洩の有無を確実に捕らえることができる。
ヒートポンプ式冷凍サイクルが安定運転状態であることを条件として、開度Qxおよび初期状態量を記憶しかつ冷媒の漏洩を検出するので、漏洩の検出精度が向上する。
ヒートポンプ式冷凍サイクルが安定運転状態にあるかを判定する要素として、過熱度SHaと目標値SHtとの差の絶対値ΔSHが設定値ΔSHs未満”である場合、かつ過熱度SHaが設定値SHs以上(過熱度SHが正の値)である場合という、複数の条件を用いるので、圧縮機1に液冷媒が吸込まれるいわゆる液バックや電動膨張弁4の動作遅れがない状態で、冷媒の漏洩を検出できる。つまり、検出精度が向上する。
運転周波数Fが低い場合に室外熱交換器3に液冷媒が溜まり込むことがあるが、ヒートポンプ式冷凍サイクルが安定運転状態にあるかを判定する要素として、さらに、運転周波数Faが設定値Fs以上であるという条件を加えているので、液冷媒が室外熱交換器3に溜まり込まない状態で、冷媒の漏洩を検出できる。この点でも、検出精度が向上する。
[変形例]
上記実施形態では、ヒートポンプ式冷凍サイクルが安定運転状態にあるか否かの判定要素として、ステップ104,109の“|ΔSH|<ΔSHs”という条件を用いたが、それに代えて、図5に示すステップ104a,109aの条件を用いてもよい。
すなわち、コントローラ30は、運転初期時(f=0)、電動膨張弁4の開度Qaの単位時間当りの変化量ΔQaが設定値ΔQas未満の状態を一定時間ty以上継続した場合(ステップ104aのYES)、それを安定運転条件であることの1つの要素として判断する。また、コントローラ30は、開度Qxおよび初期状態量の記憶後(f=1)、電動膨張弁4の開度Qaの単位時間当りの変化量ΔQaが設定値ΔQas未満の状態を一定時間ty以上継続した場合(ステップ109aのYES)、それを安定運転条件であることの1つの要素として判断する。
上記設定値ΔQasは、駆動パルスの数として例えば3パルス乃至5パルス分の開度であり、冷凍サイクル機器の容量や配管長などに応じて適切な値が選定される。一定時間tyは、例えば3分乃至5分であり、これも冷凍サイクル機器の容量や配管長などに応じて適切な値が選定される。
上記実施形態では、ΔF,ΔTc,ΔTe,ΔSHxaの4つを状態変化量として用いたが、ΔF,ΔTcの2つを状態変化量として用いてもよい。あるいは、ΔF,ΔTc,ΔTe,ΔSHxaの少なくとも1つを状態変化量として用いてもよい。
上記実施形態では、開度Qxおよび初期状態量の記憶を更新する手段として手操作式のリセットスイッチ32を設けたが、同様の操作手段を操作器31に設けてもよい。また、リセットスイッチ32の操作に応じて開度Qxおよび初期状態量を更新することに加え、開度Qxおよび初期状態量を自動的に更新する構成としてもよい。すなわち、コントローラ30は、当該冷凍サイクル装置の移設のための上記冷媒回収運転を実行した場合、その実行後に、開度Qxおよび初期状態量の記憶を自動的に更新する。
上記実施形態では、空気調和機に搭載される冷凍サイクル装置について説明したが、給湯機等の他の機器に搭載される冷凍サイクル装置においても同様に実施可能である。
その他、上記実施形態および変形例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態および変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、書き換え、変更を行うことができる。これら実施形態や変形は、発明の範囲は要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
本発明の冷凍サイクル装置は、空気調和機への利用が可能である。

Claims (11)

  1. 冷媒を吸込んで圧縮し吐出する圧縮機を含み、その圧縮機から吐出される冷媒を凝縮器、膨張弁、および蒸発器に通して同圧縮機に戻す冷凍サイクルと、
    前記蒸発器の過熱度が目標値となるように、前記膨張弁の開度を制御する開度制御部と、
    前記冷凍サイクルから前記冷媒が漏洩していないことを前提とした場合に、前記冷凍サイクルの現運転時に前記膨張弁が至る筈の開度を前記冷凍サイクルの状態変化量に基づいて予測し、この予測した開度と前記膨張弁の実際の開度との比較により、前記冷凍サイクルにおける前記冷媒の漏洩を検出する漏洩検出部と、
    を備えることを特徴とする冷凍サイクル装置。
  2. 前記漏洩検出部は、
    前記冷凍サイクルの運転初期の状態量と同冷凍サイクルの現運転時の状態量との差を前記状態変化量として検出し、
    前記冷凍サイクルの運転初期における前記膨張弁の開度を前記検出した状態変化量で補正することにより、前記冷凍サイクルから前記冷媒が漏洩していないことを前提とした場合に、前記冷凍サイクルの現運転時に前記膨張弁が至る筈の開度を予測する、
    ことを特徴とする請求項1記載の冷凍サイクル装置。
  3. 前記漏洩検出部は、
    前記冷凍サイクルの運転初期における前記膨張弁の開度を記憶するとともに、同冷凍サイクルの運転初期の状態量を初期状態量として記憶し、
    前記記憶した初期状態量と前記冷凍サイクルの現運転時の状態量との差を前記状態変化量として検出し、
    前記記憶した開度を前記検出した状態変化量で補正することにより、前記冷凍サイクルから前記冷媒が漏洩していないことを前提とした場合に、前記冷凍サイクルの現運転時に前記膨張弁が至る筈の開度を予測する、
    ことを特徴とする請求項1記載の冷凍サイクル装置。
  4. 前記漏洩検出部は、
    前記冷凍サイクルの運転時間を積算し、
    前記積算した運転時間が設定時間に達した時点における前記膨張弁の開度を記憶するとともに、その時点における前記冷凍サイクルの状態量を初期状態量として記憶し、
    前記記憶した初期状態量と前記冷凍サイクルの現運転時の状態量との差を前記冷凍サイクルの状態変化量として検出し、
    前記記憶した開度を前記検出した状態変化量で補正することにより、前記冷凍サイクルから前記冷媒が漏洩していないことを前提とした場合に、前記冷凍サイクルの現運転時に前記膨張弁が至る筈の開度を予測する、
    ことを特徴とする請求項1記載の冷凍サイクル装置。
  5. 前記漏洩検出部は、
    前記冷凍サイクルの運転時間を積算し、
    前記積算した運転時間が設定時間に達した後、前記冷凍サイクルの運転が安定運転状態にあるかを判定し、
    前記判定の結果が肯定の場合に、その時点における前記膨張弁の開度を記憶するとともに、その時点における前記冷凍サイクルの状態量を初期状態量として記憶し、
    前記記憶した初期状態量と前記冷凍サイクルの現運転時の状態量との差を、前記冷凍サイクルの状態変化量として検出し、
    前記記憶した開度を前記検出した状態変化量で補正することにより、前記冷凍サイクルから前記冷媒が漏洩していないことを前提とした場合に、前記冷凍サイクルの現運転時に前記膨張弁が至る筈の開度を予測する、
    ことを特徴とする請求項1記載の冷凍サイクル装置。
  6. 前記漏洩検出部は、
    前記冷凍サイクルの現運転時の過熱度SHaと目標値SHtとの差ΔSHの絶対値(|ΔSH|)が、設定値ΔSHs未満(|ΔSH|<ΔSHs)である場合、
    かつ前記冷凍サイクルの現運転時の過熱度SHaが、設定値SHs以上(SHa≧SHs)である場合、
    かつ前記冷凍サイクルの現運転時における前記圧縮機の運転周波数Faが、設定値Fs以上(Fa≧Fs)である場合に、
    前記冷凍サイクルが安定運転状態にあると判定する、
    ことを特徴とする請求項5記載の冷凍サイクル装置。
  7. 前記漏洩検出部は、
    前記電動膨張弁の実際の開度Qaの単位時間当たりの変化量ΔQaが、設定値ΔQas未満の状態を一定時間ty以上継続した場合、
    かつ前記冷凍サイクルの現運転時の過熱度SHaが、設定値SHs以上(SHa≧SHs)である場合、
    かつ前記冷凍サイクルの現運転時における前記圧縮機の運転周波数Faが、設定値Fs以上(Fa≧Fs)である場合に、
    前記冷凍サイクルが安定運転状態にあると判定する、
    ことを特徴とする請求項5記載の冷凍サイクル装置。
  8. 前記初期状態量は、前記圧縮機の運転周波数Fxおよび前記冷凍サイクルの凝縮温度Tcx,蒸発温度Tex,過熱度SHxの少なくとも1つである、
    前記冷凍サイクルの現運転時の状態量は、前記圧縮機の運転周波数Faおよび同冷凍サイクルの現運転時における凝縮器温度Tca,蒸発器温度Tea,過熱度SHaの少なくとも1つである、
    前記状態変化量は、前記運転周波数Fxと運転周波数Faとの差ΔF、前記凝縮温度Tcxと前記凝縮温度Tcaとの差ΔTc、前記蒸発温度Texと前記蒸発温度Teとの差ΔTe、および前記過熱度SHxと前記過熱度SHaとの差ΔSHxaである、
    ことを特徴とする請求項3乃至請求項7のいずれか記載の冷凍サイクル装置。
  9. 前記記憶した開度および初期状態量を更新する更新部、
    をさらに備える、
    ことを特徴とする請求項3乃至請求項5のいずれか記載の冷凍サイクル装置。
  10. 手操作式のリセットスイッチ、
    をさらに備え、
    前記更新部は、前記記憶した開度および初期状態量を前記リセットスイッチの操作に応じて更新する、
    ことを特徴とする請求項9記載の冷凍サイクル装置。
  11. 前記更新部は、前記冷凍サイクル中の冷媒を回収する冷媒回収運転の実行後、前記記憶した開度および初期状態量を自動的に更新する、
    ことを特徴とする請求項9記載の冷凍サイクル装置。
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