JP6129260B2 - 通電装置、電動機制御装置、通電方法 - Google Patents

通電装置、電動機制御装置、通電方法 Download PDF

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Description

この発明は、例えば電動機への通電制御を行う電動機制御装置、等からなる負荷に通電制御を行う通電装置、およびその通電方法に関する。
近年、自動車の燃費規制が進んでおり、自動車機能の一部または全部を電動化した電動化車両が増加している。この電動化車両においては、電動機の出力を駆動力の一部または全部としている。しかしながら一般的に電動機や、電動機制御装置、具体的にはインバータ装置には温度制約があり、出力可能な駆動力が制限される。即ち、ある通電時間を想定した場合、出力可能なトルク等の大きさの上限は温度で制約される。また、あるトルクを想定した場合、その出力可能な最大時間は温度で制約される。
下記特許文献1には、現在出力しているトルクの出力可能な残り時間を算出すること等により、温度制約を考慮しながら、ドライバーが違和感なく運転操作を行える車両制御を可能にした電動車両の制御装置が開示されている。
特開2003−134609号公報
しかし、上記特許文献1では、出力可能時間の算出に必要な温度上昇特性について、冷却条件や雰囲気温度といった周囲状態についての考慮がされていない。例えば、自動車に電動機と電動機制御装置を搭載する場合、自動車の運転速度によって、走行風の風速が変化するため、自動車に搭載された電動機や電動機制御装置の冷却条件が変化する。この場合、電動機や電動機制御装置の温度上昇特性は冷却条件によって変化する。この冷却条件による温度上昇特性の変化を考慮しなければ、例えばトルクの出力可能時間の算出値にずれが生じ、適切な車両制御を行うことができない。
この発明は、接続された負荷に対して通電制御を行う通電装置であって、通電信号により通電を行う通電素子を含む通電器と、前記通電信号を生成する通電信号生成器と、温度検出部の信号から前記通電装置および前記負荷の少なくとも1つの部位の温度を求める温度算出器と、前記少なくとも1つの部位についての、前記温度、許容温度、通電時の温度上昇特性に基づき、前記通電装置の通電時間に対する、前記通電装置または前記負荷の実現可能な状態量である実現可能量および前記通電装置または前記負荷の前記状態量に対する実現可能時間、の少なくとも一方を推定算出する実現可能量算出器を備え、前記実現可能量算出器において、前記通電装置および前記負荷に関する少なくとも1つの前記部位についての、前記通電時の温度上昇特性は、前記通電信号のオン時間、オフ時間の少なくとも1つと、前記部位の周囲状態を含めて算出する、通電装置等にある。
さらに上記特許文献1では、考慮している温度が電動機についてのみであるため、電動機よりも電動機制御装置内のMOSFET等の通電素子の温度上昇によって、出力可能時間が制約される場合には、特許文献1の技術は適用できない。
この発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、負荷やこの負荷への通電制御を行う通電装置の周囲状態、通電量、通電時間等に基づき、温度制約下で適切に制御を実施する、例えば電動機制御装置等からなる通電装置およびその通電方法を得ることを目的とする。
この発明は、接続された負荷に対して通電制御を行う通電装置であって、温度検出部の信号から前記通電装置および前記負荷の少なくとも1つの部位の温度を求める温度算出器と、前記少なくとも1つの部位についての、前記温度、許容温度、通電時の温度上昇特性に基づき、前記通電装置の通電時間に対する、前記通電装置または前記負荷の実現可能な状態量である実現可能量および前記通電装置または前記負荷の前記状態量に対する実現可能時間、の少なくとも一方を推定算出する実現可能量算出器を備え、前記実現可能量算出器において、前記通電装置および前記負荷に関する少なくとも1つの前記部位についての、前記通電時の温度上昇特性は、前記部位の周囲状態を含めて算出する、通電装置等にある。
この発明では、負荷やこの負荷への通電制御を行う通電装置の周囲状態、通電量、通電時間等に基づき、温度制約下で適切に制御を実施できる。
この発明の実施の形態1に係る電動機制御装置とその負荷の電動機を示す図である。 図1の通電器の概略構成を示す図である。 この発明の実施の形態1に係る電動機制御装置でのPWM動作を説明するための図である。 この発明の実施の形態1に係る電動機制御装置における温度上昇特性の一例の模式図である。 この発明の実施の形態1に係る電動機制御装置の実現可能量算出器の実現可能時間を算出する部分の概略構成を示す図である。 この発明の実施の形態1に係る電動機制御装置の実現可能量算出器の実現可能量を算出する部分の概略構成を示す図である。 この発明の実施の形態1に係る電動機制御装置の構成の具体的一例を示す図である。
この発明では、冷却条件や雰囲気温度といった周囲状態の変化、また電動機のみならず通電装置の部位の温度上昇特性も含めた温度制約の範囲内で、例えば現時点で出力している電流が残りどれだけの時間出力可能か、または与えられた通電時間に対して出力可能なトルクはいくらか、を考慮して適切に通電を行うことにより、例えば自動車に適用した場合には、温度制約の範囲内で自動車の車両制御をより適切に行うことができる。
この発明では、通電装置の部位、または通電装置に接続された負荷の部位の温度上昇特性を適切に算出することができるので、所望の通電時間に対する例えばトルクからなる実現可能量や、例えば電流、トルクからなる所定の状態量に対する実現可能時間を適切に算出することができる。
以下、この発明による通電装置等を、電動機制御装置を例に挙げて各実施の形態に従って図面を用いて説明する。なお、各実施の形態において、同一もしくは相当部分は同一符号で示し、重複する説明は省略する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る電動機制御装置とその負荷の電動機を示す図である。図2は図1の通電器の概略構成を示す図である。図3はこの発明の実施の形態1に係る電動機制御装置でのPWM動作を説明するための図である。
図1において、通電装置である電動機制御装置1は負荷である電動機2を制御する。電動機2は3相の同期電動機であり、電機子巻線を有する固定子21、界磁を有する回転子22を備えている。ここで電機子巻線21の結線は3相Y結線であるとする。また、回転子22の界磁の方式としては永久磁石を用いた永久磁石界磁方式、巻線界磁方式、さらに永久磁石と巻線の併用方式が主として挙げられるが、ここでは永久磁石界磁方式を使用することとする。回転子22の界磁の方式として巻線界磁式や、永久磁石と巻線の併用方式を使用する場合には、電動機制御装置1の負荷となる巻線として、電動機2の回転子22側の界磁巻線も含まれる。また、電動機2が誘導電動機の場合には1次巻線、2次巻線の双方が電動機制御装置1の負荷となり得る。なお以下では説明の便宜上、電動機制御装置1の直接的な負荷となる巻線を電機子巻線21として説明する。
また、電動機制御装置1は、トルク指令生成器11、温度算出器12、電流算出器13、電流指令生成器14、回転子位置算出器15、電圧指令生成器16と、実現可能量算出器17と、通電信号生成器18、通電器19とを有する。通電器19には通電素子が含まれる。
電動機制御装置1の通電信号生成器18および通電器19以外の部分は例えば図7に示すようなプロセッサ100で構成することが可能である。プロセッサ100は例えば、CPU102と、メモリ103と、外部とのインタフェース、データのA/D変換等を行う入出力インタフェース101とで構成され、必要に応じてさらにデータ、プログラム等の入出力、表示を行うヒューマンインタフェース104を備える。メモリ103には図1においてブロックで示された各処理機能のためのプログラムが処理で使用されるデータと共に格納されており、CPU102により各プログラムが実行される。
トルク指令生成器11は、実現可能量算出器17から出力される、実現可能量FM、実現可能時間FTに基づいて電動機2の出力するトルクを定めるトルク指令TCを生成する。詳細については後述する。
温度算出器12は、電動機制御装置1、電動機2の部位のうち少なくとも1つの部位の温度Tを選択してその値を出力する。複数の部位の温度を算出する場合は、その中で最も温度の高い部位の温度を出力することもできるが、ここでは図2に示す通電器19に含まれる全ての通電素子192a−197a、電動機2の全相分の電機子巻線21の温度を出力することとする。
また、後述する実現可能量算出器17において、実現可能量FM、実現可能時間FTを算出する際には、温度を算出する部位の周囲の状態を示す周囲状態の情報が必要となる。この周囲状態としては、雰囲気温度、冷却条件の少なくともいずれか一方を使用する。周囲状態の情報として、雰囲気温度を使用する場合は、雰囲気温度または雰囲気温度と相関のとれる少なくとも1つの部位の温度も合わせて算出して出力する。雰囲気温度と相関のとれる部位は、例えば事前に通電中の各部位の温度を測定しておくことで把握することが可能である。実際に雰囲気温度を求めるために使用される部位での雰囲気温度との相関関係は、例えばプロセッサ100のメモリ103に格納させておいて使用する。温度を算出する方法としては、例えば通電素子192a−197aに関しては検温ダイオードの使用による検出、電機子巻線21に関してはサーミスタの使用による検出が挙げられる。上述の通電素子192a−197aのための検温ダイオード、電機子巻線21のためのサーミスタ、雰囲気温度または雰囲気温度と相関のとれる部位のための温度センサを、代表して温度検出部TDとして示す。温度算出器12では温度検出部TDからの信号をA/D変換した信号を処理する。
周囲状態の情報として冷却条件を使用する場合については、後述する。
電流算出器13は、電機子巻線21の各相に流れる交流の電流、例えば3相交流の電流、からdq軸上の電流CUdqを算出して出力する。3相交流の電流を得る方法としては、例えば変流器CT等の電流センサを用いて電流を検出する方法が挙げられる。3相交流の電流からdq軸上の電流を得るには、一般的な3相−dq変換を用いる。変流器CT等の電流センサを代表して電流検出部CDとして示す。電流算出器13は電流検出部CDからの信号をA/D変換した信号を処理する。
電流指令生成器14は、トルク指令生成器11から出力されるトルク指令TCに基づき、電動機2の電機子巻線21に流れる電流を定める電流指令CCdqを生成する。ここでの電流指令CCdqは、回転子22の磁極位置の方向にd軸、これに直交する向きにq軸を定義した場合の、dq軸上の値であるとする。
回転子位置算出器15は、回転子22の回転子位置RPすなわち磁極位置を算出して出力する。回転子位置RPを算出する方法としては、例えばレゾルバ等を用いて回転子位置を検出する方法が挙げられる。レゾルバ等を代表して回転子位置検出部RPDとして示す。回転子位置算出器15は回転子位置検出部RPDからの信号をA/D変換した信号を処理する。
電圧指令生成器16は、電流算出器13から出力されるdq軸上の電流CUdq、電流指令生成器14から出力されるdq軸上の電流指令CCdq、回転子位置算出器15から出力される回転子22の回転子位置RPに基づいて、3相交流の電圧指令VCを生成する。この手順について説明する。まず、3相交流の電圧指令VCを生成する前に、dq軸上の電圧指令VCdqを生成する。その方法としては、例えば電流指令CCdqと電流CUdqの偏差に基づくPI制御を用いる方法が挙げられる。続いて回転子位置RPとdq軸上の電圧指令VCdqから3相交流の電圧指令VCを生成して出力する。回転子位置RPとdq軸上の電圧指令VCdqから3相交流の電圧指令VCを生成する際には、一般的なdq−3相変換を用いる。
実現可能量算出器17は、通電時間ELTに対応する状態量を示す実現可能量FMと、温度Tと状態量に対応する実現可能時間FTを算出して出力する。
ここで、
実現可能量FMに対応する状態量はトルク、
実現可能時間FTに対応する状態量は電流算出器13から出力される電流CUdq、
であるとする。
風速を計測するものとして風速検出部WSDを示す。実現可能量算出器17は風速検出部WSDからの信号をA/D変換した信号を処理する。
実現可能量算出器17の詳細な機能については後述する。
通電信号生成器18は、図2に示す通電器19の通電素子192a−197aに与える通電信号ELSを生成して出力する。この手順について説明する。まず、電圧指令VC、通電器19の電源電圧である直流電圧Vdcの値からDuty指令を生成して出力する。Duty指令は、電圧指令VCを直流電圧の値Vdcで除したものに0.5を加算して、値の範囲を0〜1に規格化したものである。なお、以下でDuty指令の値を百分率で表す場合もある。次に、このDuty指令からパルス幅変調(PWM)信号である通電信号ELSを生成する。
Duty指令から通電信号ELSを生成する手順について説明する。Duty指令と、値の範囲が0〜1である三角波である搬送波の比較によりPWM信号である通電信号ELSを生成して出力する。図3はこのときのPWM動作を示す図である。代表的にU相の場合についてのみ示しているが、他の相の場合についても同様である。図3において、Carrは搬送波、DutyUはU相のDuty指令、UH、ULはそれぞれU相上アーム、U相下アームの通電信号(ELS)である。通電信号UH、ULのオン、オフが切り替わる際には、上下アーム短絡防止のため、両方をオフにするデッドタイムを設ける。図3においてキャリア周期はTc、デッドタイムはTdで示されている。
通電器19は、通電信号ELSに基づいて交流電圧を出力して電機子巻線21に通電する。図2には通電器19が電機子巻線21とともに示されている。通電器19は、U、V、W相ごとに、直列に接続された上アームと下アームを有している。ここで上アームとは、図2の192、194,196であり、それぞれU相上アーム、V相上アーム、W相上アームと呼ぶ。また下アームとは、図2の193,195、197であり、それぞれU相下アーム、V相下アーム、W相下アームと呼ぶ。また、各アーム192−197は通電素子192a−197aと還流ダイオード192b−197bが逆並列に接続された構成となっている。なお、以降で、あるアームの通電素子がオンになることを単に「アームがオンになる」、オフになることを単に「アームがオフになる」というように表現することもある。なお、図2において、直流電源191の両端の、仮想中性点基準の電位を+Vdc/2、−Vdc/2というように記載している。直流電源191両端の直流電圧である電圧の値はVdcである。
実現可能量算出器17の詳細な機能について説明する。前述の通り、実現可能量算出器17は、
通電時間に対応する状態量を示す実現可能量FMを算出する機能と、
温度と状態量に対応する実現可能時間FTを算出して出力する機能と、
がある。
一般的に、通電時間が長ければ長いほど、通電電流が大きければ大きいほど、通電素子192a−197aや電機子巻線21の温度の上昇量は大きくなる。通電素子や電機子巻線には許容温度があり、許容温度を超えた場合は、通電素子や電機子巻線が損傷してしまう。
従って、通電時間が決められた場合は、その通電時間内で流せる電流の範囲が制限される。そして、その制限された電流の範囲に応じて、出力可能なトルクも制限されるため、出力できるトルク指令の値、すなわち実現可能量FMも制限する必要がある。
また、電流が決められた場合、その電流を流せる時間の上限が決められる。従って、残りどの程度の時間、現在流れている電流を流すことが可能であるのかを示す実現可能時間FTを算出し、この実現可能時間によって通電時間を制限する必要がある。
ここで、電流、通電時間に応じて、通電素子192a−197aや電機子巻線21の温度がどのように上昇するのかを示す温度上昇特性が必要となる。温度上昇特性は、通電素子や電機子巻線の周囲の温度すなわち雰囲気温度、冷却条件によって変化する。なお、雰囲気温度として使用する温度は必ずしも周囲の空気中の温度でなくてもよく、周囲の空気中の温度と相関がとれる値であれば、通電装置である電動機制御装置1や電動機2の他の部位の温度であってもよい。
温度上昇特性を表す方法としては、数式を用いる方法と、ルックアップテーブルを用いる方法とがあるが、ここでは数式を用いる場合について例示的に説明する。なおこれらの数式、ルックアップテーブルはメモリ103に格納しておく。以下同様。
数式で想定する温度上昇特性の一例のグラフを図4に示す。ここで、
Ta:雰囲気温度、
T0:その時点すなわち制御開始時点での温度、
Tmax(=T1):該当部位の許容温度、
Ts:ある通電量、ここでは電機子巻線21に流れる電流、のときの飽和温度、
t0:温度T0のときの時刻、
t1:温度Tmax(Tmax=T1)のときの時刻
である。
通電時間ΔtはΔt=t1−t0として算出できる。
なお、このグラフは一定の大きさの電流で通電し続けたときを想定したものであるが、温度Taの時点から温度T0となる時刻t0までの温度上昇の過程は、時刻t0以降の温度上昇特性に影響を与えない。つまり、時刻t0以前の通電量と時刻t0以降の通電量が異なり、実際の温度上昇の過程が、図4の想定する一定の通電量による温度上昇の過程と異なっていても、時刻t0以降の温度上昇特性の算出は可能である。ただし、時刻t0以前の温度上昇の過程は影響しないが、T0とTaの差は、時刻t0以降の温度上昇の過程に影響する。
図4のグラフを数式で表すと下記式(1)の通りとなる。ただし、図4のグラフは式(1)でT0≧Taとした場合である。T0<Taとなる場合の算出方法については後述する。式(1)中、
τ1:時定数、
τ2:補正時定数、
である。補正時定数τ2が1のとき、式(1)の温度上昇特性は時定数τ1の1次遅れの特性となる。なお、τ1、τ2は、電動機制御装置1や電動機2の構造、対象となる部位の熱伝達特性、冷却条件によって決まる値であり、Tsは、電動機制御装置1や電動機2の構造、対象となる部位の熱伝達特性、冷却条件、通電量により決まる値である。式(1)を用いて実現可能時間FTや実現可能量FMを算出するためには、τ1、τ2、Tsの特性を把握しておく必要があるが、その方法としては例えば事前に温度特性測定で算出しておくことが挙げられる。この測定により、冷却条件からτ1、τ2を、通電量や冷却条件からTsを算出できるようにしておけばよい。
これらのτ1、τ2の、電動機制御装置1や電動機2の構造、対象となる部位の熱伝達特性、冷却条件に対する温度特性、Tsの、電動機制御装置1や電動機2の構造、対象となる部位の熱伝達特性、冷却条件、通電量に対する温度特性、はメモリに格納しておく。
冷却条件を表す値としては、冷却方式が空冷の場合であれば空冷時の風速、水冷の場合は流量を使用すること等が挙げられるが、ここでは空冷を行い、その風速を使用することとする。
従って水冷の場合は、図1の風速検出部WSDが冷却器の冷却液の流量計を示す流量検出部CMDとなる。
τ1、τ2については、風速を引数としてそれぞれτ1、τ2を算出するルックアップテーブルを用意しておき、時々刻々の風速に応じてτ1、τ2を算出できるようにしておく。
Figure 0006129260
式(1)を用いて実現可能時間FTを算出する場合について説明する。図5は実現可能量算出器17のうち、実現可能時間を算出する部分の構成を示す図である。
τ1・τ2算出器171は、風速WSを引数としてτ1、τ2を算出するルックアップテーブルに基づき、τ1、τ2を算出して出力する。
第1のTs算出器172は、電流算出器13が出力する電流CUdqと風速を引数としてTsを算出するルックアップテーブルに基づき、Tsを算出して出力する。
Δtout算出器173は、τ1、τ2、Ts、Ta、T0、Tmaxから式(1)に基づいて実現可能時間Δtout(=FT)を算出して出力する。具体的には、式(1)でT1=Tmaxとし、τ1、τ2、Ts、Ta、T0を各々代入して式(1)をΔtについて解き、このときのΔtをΔtoutとして出力する。
次に、通電時間が与えられたときの出力可能なトルクの大きさの上限、つまり実現可能量を算出する場合について説明する。図6は実現可能量算出器17のうち、実現可能量FMを算出する部分の構成を示す図である。
τ1・τ2算出器171については、図5と同じものであるため説明を省略する。
第2のTs算出器174は、τ1、τ2、Ta、T0、Tmax、Δtから式(1)に基づいてTsを算出して出力する。具体的には、式(1)でT1=Tmaxとし、τ1、τ2、Ta、T0、Δtを各々代入して式(1)をTsについて解く。
許容電流算出器175は、Tsと風速WSから、出力可能な許容電流を算出するルックアップテーブルに基づき、許容電流を算出して出力する。前述の通り、Tsは通電量と冷却条件で決まる値であり、ここでは通電量は電流、冷却条件は風速としているため、Tsは電流と風速によって決まる。風速は既知であるから、このTsから許容電流ALCを算出することができる。
許容トルク算出器176は、許容電流算出器175から出力される許容電流ALCから許容トルクALTを算出するルックアップテーブルに基づき、許容トルクを算出して出力する。この許容トルクALTは出力可能なトルクの大きさの上限であり、ここでの実現可能量FMに相当する。
なお、T0<Taの場合、式(1)のグラフは図4のグラフを上下逆にしたような形となり、T0、T1、Ta、Tsの大小関係も反転する。この場合、通電すればTsまで温度が下がるということとなり、実際の現象と合わない特性となる。そのため、T0<Taの場合には、式(1)からそのまま実現可能量FM、実現可能時間FTを算出することができない。T0<Taとなる場合としては、例えばある部位が局所的に冷却され、雰囲気温度Taを下回ってしまう場合等が考えられる。このような場合には、例えば、T0=Taとして式(1)を用いて計算することが考えられる。この場合、実際のT0よりも高い温度のTaをT0として用いて算出するため、推定算出する実現可能量FMや実現可能時間FTが、実際に実現可能な状態量、通電時間を上回ることはない。
なお、電動機制御装置1と電動機2を自動車に搭載する場合、その搭載する場所によっては空冷の風速と自動車の走行風との間に相関関係が生じる場合がある。この相関関係を利用し、冷却条件を決める値として、風速の代わりに自動車の走行速度を使用することもできる。また、自動車の動力部が電動機2によって駆動される場合、自動車の走行速度と電動機2の回転速度に相関関係があることを利用し、冷却条件を決める値として、風速の代わりに電動機2の回転速度を使用することもできる。自動車の走行速度の検出には例えばホイールエンコーダを使用する、電動機2の回転速度の検出には例えばレゾルバを使用することが挙げられる。
なお、複数の部位の温度を用いる場合は、それぞれの部位について実現可能量FMや実現可能時間FTを算出し、その中で最も小さいものを選択して出力する。なお、複数の部位の温度上昇特性が同一であれば、複数の部位の温度のうち最も高い温度に対して実現可能量FMや実現可能時間FTを算出して出力することもできる。
また、複数の部位の温度に基づいて、複数の実現可能量および複数の実現可能時間の少なくとも一方を推定算出し、1つずつ選択して出力するようにしてもよい。
また、算出した複数の実現可能量の大きさの最も小さいものおよび複数の実現可能時間の大きさの最も小さいものの少なくとも一方を出力するようにしてもよい。
算出された実現可能量FM、実現可能時間FTはトルク指令生成器11に出力される。トルク指令生成器11において、トルク指令TCに基づくトルク制御を行う場合、トルク指令TCの値は実現可能量FMの範囲内で定め、そのトルク指令TCの値は実現可能時間FTを超えて出力しないこととし、実現可能時間FTが0になった場合は、トルク指令TCの大きさを下げる、またはトルク指令TCを0にする。このようにすることによって、通電素子192a−197aや電機子巻線21の温度保護を実現できる。
これまで、状態量については、実現可能量FMに対応する状態量をトルク、実現可能時間FTに対応する状態量を電流として説明してきた。しかし、実現可能量FMや実現可能時間FTに対応する状態量としては電流、電圧、電力、トルク、回転速度、機械パワーいずれの値でもよく、必ずしも実測値でなくともよく、指令値等でもよい。なお、電力は電流と電圧の積、機械パワーはトルクと回転速度の積である。また、実現可能量FMに対応する状態量と、実現可能時間FTに対応する状態量の組み合わせは任意であり、それぞれ自由に選択できる。その場合、各々の状態量に対する温度上昇特性を把握しておく必要がある。実現可能時間FTを算出する際には、各々の状態量と、風速を引数としてTsを算出するルックアップテーブルに基づき、Tsを算出して出力し、上述したようにΔtout算出器173で、τ1、τ2、Ts、Ta、T0、Tmaxから式(1)に基づいて実現可能時間Δtout(=FT)を算出して出力する。実現可能量を算出する際には、飽和温度Tsと風速WSから、出力可能な許容状態量を算出するルックアップテーブルに基づき、許容状態量を算出して出力する。なお、これらのルックアップテーブルは、必ずしも実現可能時間FTや実現可能量FMに直接対応する状態量でなくともよい。つまり、引数として別の状態量を使用するルックアップテーブルを構成しておき、ルックアップテーブルに用いる状態量と、実現可能時間FTや実現可能量FMに直接対応する状態量とを、ルックアップテーブルや数式を介して対応付けることで、実現可能時間FTや実現可能量FMを算出してもよい。
また、通電素子192a−197aや電機子巻線21の温度上昇特性は、電流の大きさが同一でも通電信号の状態によって変化し得る。例えば、同じPWMによる通電信号であっても、搬送波周波数が高くなれば、スイッチング周波数も高くなり、その結果、通電素子192a−197aの損失が増大して温度上昇の程度が大きくなる。またDuty指令が変化して、通電信号のオン時間やオフ時間が変化すると、それに応じて温度上昇の程度が変化することが挙げられる。このような場合には、通電信号のスイッチング周波数、オン時間、オフ時間、またはこれらの少なくとも1つも加味して温度上昇特性を算出する。
通電信号のスイッチング周波数や、オン時間、オフ時間を加味した温度上昇特性については、飽和温度Tsの値を通電信号のスイッチング周波数、オン時間、オフ時間にも応じて変化させることで対応できる。飽和温度Tsと、通電信号のスイッチング周波数、オン時間、オフ時間の関係は、例えば事前にデータを測定しておき、測定したデータに基づき、スイッチング周波数、オン時間、オフ時間を引数として飽和温度Tsを出力するルックアップテーブルを用意することで、算出することができる。
以上のように、上記実施の形態に係る電動機制御装置によれば、適切な温度上昇特性に基づいて、通電時間に対する例えば電動機2のトルクである実現可能量、例えば電機子巻線21の電流である現在の状態量に対する実現可能時間を算出することができるため、通電素子192a−197aや電動機2の電機子巻線21を許容温度超過による損傷から守ることが可能であり、温度制約下で最大性能を発揮することが可能となる。
なお、本実施の形態では、回転子22の界磁の方式を永久磁石界磁方式としていたが、界磁巻線を使用する巻線界磁方式や界磁巻線を併用する方式であってもよい。その場合、通電信号生成器18では界磁巻線に通電するための通電信号を生成して出力し、通電器19はその通電信号に基づいて界磁巻線に通電する構成とする。また、界磁巻線についても、電機子巻線21の場合と同様に、温度上昇特性を把握すれば、温度に応じた実現可能量や実現可能時間を算出することができる。
また、本実施の形態では、電動機2の電機子巻線21の結線を3相Y結線としていたが、相数、結線方式はこれに限定されない。電動機の種類に関しても、同期電動機に限定されず、誘導電動機等、他の電動機であってもよい。
また、本実施の形態では、電動機2の回転子位置を参照していたが、回転子位置を参照せず、交流位相を内部で生成して通電する方式であってもよい。
また、本実施の形態では、電圧指令に基づいてDuty指令を生成していたが、電流算出器13の電流の値に基づいてDuty指令を直接生成する構成であってもよい。
また、本実施の形態では、電圧指令をPI制御に基づいて生成していたが、電圧指令の生成方法はこれに限定されない。電圧指令をP制御またはI制御に基づいて生成してもよい。また、電流をフィードバックせずに、電流指令からルックアップテーブル等によって電圧指令を生成しても良い。
また、本実施の形態では、3相‐dq変換、dq‐3相変換を用いて制御していたが、交流を直接制御してもよい。
また、本実施の形態では、τ1、τ2、Ts、許容電流ALC、許容トルクALTをルックアップテーブルによって算出していたが、これらの値について数式で表すことができる場合には数式によって算出してもよい。また、温度上昇特性の数式の形に制限はなく、必ずしも数式を用いて算出する必要もなく、ルックアップテーブル等によって算出してもよい。
以上、この発明を電動機制御装置を例に挙げた上記実施の形態1に関して説明したが、この発明はこれらの実施の形態のみに限られるものではなく、接続された負荷に対して通電を行う通電装置に対して適用が可能であり、この発明の範囲内においては他に種々の実施の形態の実現が可能である。
1 電動機制御装置(通電装置)、2 電動機(負荷)、11 トルク指令生成器、
12 温度算出器、13 電流算出器、14 電流指令生成器、
15 回転子位置算出器、16 電圧指令生成器、17 実現可能量算出器、
18 通電信号生成器、19 通電器、21 電機子巻線(固定子)、22 回転子、
100 プロセッサ、101 入出力インタフェース、102 CPU、
103 メモリ、104 ヒューマンインタフェース、171 τ1・τ2算出器、
172 第1のTs算出器、173 Δtout算出器、174 第2のTs算出器、
175 許容電流算出器、176 許容トルク算出器、191 直流電源、
192 −197 アーム、192a−197a 通電素子、
192b−197b 還流ダイオード、CD 電流検出部、CMD 流量検出部、
RPD 回転子位置検出部、TD 温度検出部、WSD 風速検出部。

Claims (11)

  1. 接続された負荷に対して通電制御を行う通電装置であって、
    通電信号により通電を行う通電素子を含む通電器と、
    前記通電信号を生成する通電信号生成器と、
    温度検出部の信号から前記通電装置および前記負荷の少なくとも1つの部位の温度を求める温度算出器と、
    前記少なくとも1つの部位についての、前記温度、許容温度、通電時の温度上昇特性に基づき、前記通電装置の通電時間に対する、前記通電装置または前記負荷の実現可能な状態量である実現可能量および前記通電装置または前記負荷の前記状態量に対する実現可能時間、の少なくとも一方を推定算出する実現可能量算出器を備え、
    前記実現可能量算出器において、前記通電装置および前記負荷に関する少なくとも1つの前記部位についての、前記通電時の温度上昇特性は、前記通電信号のオン時間、オフ時間の少なくとも1つと、前記部位の周囲状態を含めて算出する、通電装置。
  2. 前記通電時の温度上昇特性は、前記通電信号のオン時間、オフ時間の少なくとも1つと、前記部位の周囲状態に加えて、前記通電信号のスイッチング周波数を含めて算出する、請求項1に記載の通電装置。
  3. 前記周囲状態は、雰囲気温度、または、対象となる前記部位以外の少なくとも1つの部位の温度を含む、請求項1または2に記載の通電装置。
  4. 前記周囲状態は、前記通電装置の冷却条件および前記通電装置に接続された前記負荷の前記冷却条件のうちの少なくとも一方を含む、請求項1から3までのいずれか1項に記載の通電装置。
  5. 前記状態量は、電流、電圧、電力の少なくとも1つを含む、請求項1から4までのいずれか1項に記載の通電装置。
  6. 前記温度算出器は、複数の前記部位の前記温度を算出し、
    前記実現可能量算出器は、複数の前記部位の温度上昇特性が同一であれば、その中で最も高い前記温度に基づいて、前記実現可能量および前記実現可能時間の少なくとも一方を推定算出する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の通電装置。
  7. 前記温度算出器は、複数の前記部位の前記温度を算出し、
    前記実現可能量算出器は、複数の前記部位の前記温度に基づいて、複数の前記実現可能量および複数の前記実現可能時間の少なくとも一方を推定算出し、1つずつ選択して出力する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の通電装置。
  8. 前記実現可能量算出器は、算出した複数の前記実現可能量の大きさの最も小さいものおよび複数の前記実現可能時間の大きさの最も小さいものの少なくとも一方を出力する、請求項7に記載の通電装置。
  9. 前記負荷が電動機の巻線であり、請求項1から8までのいずれか1項に記載の通電装置によって前記電動機の前記巻線に通電して前記電動機を制御する電動機制御装置。
  10. 前記状態量が、前記電動機のトルク、回転速度、機械パワーの少なくとも1つを含む、請求項9に記載の電動機制御装置。
  11. 通電信号により通電を行う通電素子を含む通電器と、
    前記通電信号を生成する通電信号生成器を備え、
    接続された負荷に対して通電制御を行う通電装置の通電方法であって、
    前記通電装置および前記負荷の少なくとも1つの部位の温度を求め、
    前記少なくとも1つの部位についての、前記温度、許容温度、通電時の温度上昇特性に基づき、前記通電装置の通電時間に対する、前記通電装置または前記負荷の実現可能な状態量である実現可能量および前記通電装置または前記負荷の前記状態量に対する実現可能時間、の少なくとも一方を推定算出し、
    前記通電装置および前記負荷に関する少なくとも1つの前記部位についての、前記通電時の温度上昇特性は、前記通電信号のオン時間、オフ時間の少なくとも1つと、前記部位の周囲状態を含めて算出する、通電装置の通電方法。
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