JP6125932B2 - アーク溶接用電源装置及びアーク溶接用電源装置の制御方法 - Google Patents

アーク溶接用電源装置及びアーク溶接用電源装置の制御方法 Download PDF

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Description

本発明は、消耗電極式のアーク溶接用電源装置及びその制御方法に関する。
消耗電極式のアーク溶接では、溶接ワイヤを放電電極としたその電極先端からアークを生じさせて被溶接物(母材)の溶接が行われるが、その際、溶接ワイヤはアークにより消耗するため、その消耗に応じて溶接ワイヤの送給を行いながら溶接が行われている。また、この消耗電極式のアーク溶接においては、溶接ワイヤの正逆送を含むその送給速度を周期的に繰り返す溶接法が知られている(例えば特許文献1参照)。
特許第4807474号公報
ところで、被溶接物の溶接品質の向上は常に検討事項の一つとなっているが、被溶接物の溶接品質の一層向上を図るために、より優れたアーク長制御を行うことの検討が本発明者らでなされている。
本発明の目的は、溶接品質の更なる向上を図ることができるアーク溶接用電源装置及びその制御方法を提供することにある。
上記課題を解決するアーク溶接用電源装置は、溶接ワイヤを放電電極としたその電極先端にてアークを生じさせて被溶接物のアーク溶接を行うべく、アーク溶接に適した出力電力に調整する出力制御部と、前記溶接ワイヤの正逆送を含むその送給速度を周期的に変化させる送給制御部とを備えたアーク溶接用電源装置であって、出力電圧の設定電圧に基づいて前記溶接ワイヤの送給速度の振幅設定を行う振幅設定部が備えられる。
この構成によれば、出力電圧の設定電圧に基づいて溶接ワイヤの送給速度の振幅設定が行われ、この振幅設定に基づく送給制御にてアーク長が直接的に調整される。これにより、アーク長制御がより適切に行われ、溶接品質の向上に寄与する。
また上記のアーク溶接用電源装置において、前記振幅設定部は、その時々の前記出力電圧に基づいて前記溶接ワイヤの送給速度の振幅を逐次調整することが好ましい。
この構成によれば、その時々の出力電圧に基づいて溶接ワイヤの送給速度の振幅が逐次調整されるため、アーク長が常に適正化され、溶接品質の一層の向上に寄与する。
また上記課題を解決するアーク溶接用電源装置の制御方法は、溶接ワイヤを放電電極としたその電極先端にてアークを生じさせて被溶接物のアーク溶接を行うべく、アーク溶接に適した出力電力に調整する出力制御と、前記溶接ワイヤの正逆送を含むその送給速度を周期的に変化させる送給制御とを実施するアーク溶接用電源装置の制御方法であって、出力電圧の設定電圧に基づいて前記溶接ワイヤの送給速度の振幅設定を行う。
この構成によれば、上記のアーク溶接用電源装置と同様に、アーク長制御がより適切に行われ、溶接品質の向上に寄与する。
また上記のアーク溶接用電源装置の制御方法において、その時々の前記出力電圧に基づいて前記溶接ワイヤの送給速度の振幅を逐次調整することが好ましい。
この構成によれば、上記のアーク溶接用電源装置と同様に、アーク長が常に適正化され、溶接品質の一層の向上に寄与する。
本発明のアーク溶接用電源装置及びその制御方法によれば、溶接品質の更なる向上を図ることができる。
実施形態におけるアーク溶接機(アーク溶接用電源装置)の構成図である。 実施形態の制御態様を説明するための波形図である。 実施形態の制御態様を説明するための波形図である。
以下、アーク溶接用電源装置及びその制御方法の一実施形態を説明する。
図1に示すように、アーク溶接機10としては、アーク溶接に適した出力電力を生成するアーク溶接用電源装置11と共に、アークを生じさせる放電電極としての溶接ワイヤ12への給電及びその保持を行う溶接トーチ13と、溶接ワイヤ12の送給を行う送給装置14と、溶接ワイヤ12が巻装されるワイヤスタンド15とを備えている。
溶接トーチ13は、電源装置11とパワーケーブル16を介して接続され、電源装置11から電力供給を受ける。溶接トーチ13は、溶接ワイヤ12への給電を行う給電チップ13aを備えている。給電チップ13aは、溶接ワイヤ12の送給動作を許容しつつ、電源装置11にて生成された出力電力を溶接ワイヤ12に供給すべく電気的に接触している。このような溶接トーチ13は、溶接ワイヤ12(給電チップ13a)側が被溶接物(母材)Mに対向するように配置されて使用される。
送給装置14は、駆動源としてモータ14aを備え、溶接ワイヤ12のワイヤスタンド15からの引き出し及び溶接トーチ13への送出をそのモータ14aの駆動により行っている。放電電極である溶接ワイヤ12はアークの発生に伴って消耗するため、送給装置14は溶接ワイヤ12の消耗を補うべく溶接ワイヤ12の送給を行っている。また、この溶接ワイヤ12の送給においては、単なる一方向・一定速度の送給態様ではなく、正送(前進)や逆送(後退)、更にはその時々の送給速度Vftをも変更して行われている。このような送給装置14(モータ14a)は、電源装置11内の制御回路20にて制御され、溶接ワイヤ12の送給動作における正送と逆送の切り替え(モータ14aの正逆転)や、溶接ワイヤ12の送給速度Vft(モータ14aの回転速度)等が制御される。
アーク溶接用電源装置11は、CPUを含んで構成される制御回路20を備えている。制御回路20は、アーク溶接のための出力電力を生成する出力制御部20a、短絡・アーク期間Ts,Taを検出する期間検出部20b、溶接ワイヤ12の送給動作を制御する送給制御部20c、及び溶接ワイヤ12の送給速度の周期的変化の振幅を設定する振幅設定部20d等を備え、これらにてアーク溶接を適切に行うための制御を行っている。
ここで、図2及び図3を参照すると、本実施形態のような消耗電極式のアーク溶接機10では、溶接ワイヤ12が被溶接物Mに接触する短絡期間Tsと、溶接ワイヤ12が被溶接物Mから離間してアークを生じさせるアーク期間Taとを交互に生じさせている。制御回路20は、短絡期間Tsとアーク期間Taとが適切に生じるように、出力制御部20aによる出力電力(出力電圧(アーク電圧)Vw、出力電流(溶接電流)Iw)の調整や、送給制御部20cによる溶接ワイヤ12の送給方向及び送給速度Vftの調整を行っている。
因みに、溶接ワイヤ12の送給速度Vftは、消耗分を考慮した正の一定速度Vfに正弦波状、台形波状(図示略)、三角波状(図示略)等の周波数成分Vaが重畳されて設定されている。送給速度Vftがゼロより大となる正の領域では、溶接ワイヤ12を前進させる正送であり、送給速度Vftがゼロより小となる負の領域では、溶接ワイヤ12を後退させる逆送である。
また、溶接ワイヤ12の逆送初期の時刻t1では、溶接ワイヤ12の先端位置hはゼロでありそこから次第に高くなる。つまり、時刻t1にて溶接ワイヤ12が被溶接物Mから離間し始め、アーク期間Taが始まることを意味する。溶接ワイヤ12が逆送から正送に切り替わる時刻t2では、溶接ワイヤ12の先端位置hは最大高さ直前となり、溶接ワイヤ12の送給速度Vftが速度Vf(周波数成分Vaがゼロ)となる時刻にて先端位置hが最大高さとなる。つまり、溶接ワイヤ12が被溶接物Mから最も離間する。以降は、溶接ワイヤ12の先端位置hは次第に低くなり、溶接ワイヤ12が被溶接物Mに近接していく。溶接ワイヤ12が正送ピークを若干過ぎた時刻t3では、溶接ワイヤ12の先端位置hは再びゼロとなり、溶接ワイヤ12が被溶接物Mに再接触する。つまり、アーク期間Taが終わって短絡期間Tsが始まることを意味する。そして、動作中は上記を繰り返す。
ところで、電源装置11には設定器(図示略)が備えられており、溶接作業者による設定器の操作に基づいて、被溶接物Mの材質や溶接部分の形状等に応じた出力電圧Vw、出力電流Iw等を含む各種パラメータの設定が行われ、各種設定値に基づいて出力制御部20aは出力制御を、送給制御部20cは送給制御を実施する。またこの送給制御に関し、振幅設定部20dは、溶接ワイヤ12の送給速度Vftの振幅(周波数成分Vaの振幅)を出力電圧Vwの設定電圧に基づいて設定している。本書における振幅の設定とは、周波数成分Vaの最大ピーク値と最小ピーク値との差分を設定すること、又はその差分は一定のままで周波数成分Vaの正負の波形形状(台形波等の場合はその台形の形状)を設定することを含む。
ここで、被溶接物Mのビード品質を一層向上させるための一つの手段としては、被溶接物Mの材質や溶接部分の形状等に即したアーク長制御の更なる適正化がある。しかしながら、溶接ワイヤ12の送給速度Vftを周期的に変化させる溶接においては、アーク長制御に係るアーク長の調整は、一般的に行われる出力電圧Vwの電圧調整のみで対応するには限度があった。そこで本実施形態では、制御回路20に振幅設定部20dが備えられ、出力電圧Vwの電圧調整に加えて、アーク長調整に直接的に作用し影響度の大きい溶接ワイヤ12の送給速度Vftの振幅調整が行われる。
具体的に、振幅設定部20dは、出力電圧Vwの設定電圧がVw1に設定された場合には、この設定電圧Vw1に応じて図2のように周波数成分Vaの振幅をVa1に設定して溶接ワイヤ12の送給速度Vftの振幅を小さくし、この振幅設定に基づく送給制御部20cの送給制御にてアーク長が短くされる。一方、出力電圧Vwの設定電圧がVw1よりも高いVw2に設定された場合、振幅設定部20dは、この設定電圧Vw2に応じて図3のように周波数成分Vaの振幅をVa1よりも大きいVa2に設定して溶接ワイヤ12の送給速度Vftの振幅を大きくし、この振幅設定に基づく送給制御部20cの送給制御にてアーク長が長くされる。出力電圧Vwは、時刻t2の最大値を比べても、図2の設定電圧Vw1の時よりもこの図3の設定電圧Vw2の方が高い電圧となる。これにより、被溶接物Mの材質や溶接部分の形状等に応じたアーク長調整が溶接ワイヤ12の送給速度Vftの振幅調整を含めて好適に行われ、ビード品質の向上が図られる。
因みに、本実施形態とは異なり設定電流に基づいて溶接ワイヤ12の送給速度Vftの振幅調整を行うことも考えられるが、電流とアーク長との関係性が電圧の場合よりも小さいため、本実施形態の制御態様の方が望ましい。
次に、本実施形態の特徴的な効果を記載する。
(1)出力電圧Vwの設定電圧(Vw1,Vw2)に基づいて、溶接ワイヤ12の送給速度Vftの振幅(周波数成分Vaの振幅(Va1,Va2))の設定が行われ、この振幅設定に基づく送給制御にてアーク長が直接的に調整される。これにより、アーク長制御がより適切に行われ、溶接品質の向上に寄与することができる。
(2)設定器により予め設定された設定電圧に基づいて溶接ワイヤ12の送給速度Vftの振幅設定が行われるため、この振幅設定に係る都度の演算が不要で制御回路20(CPU)内の演算負荷を軽減できる。
尚、上記実施形態は、以下のように変更してもよい。
・予め設定された設定電圧に基づいて溶接ワイヤ12の送給速度Vftの振幅設定を行うようにしたが、振幅設定部20dはその時々の出力電圧Vwに基づいて溶接ワイヤ12の送給速度Vftの振幅(周波数成分Vaの振幅)を逐次調整する構成であってもよい。この場合、例えば溶接周期(短絡・アーク周期)の1〜数周期分の出力電圧Vwの平均電圧を検出し、この平均電圧と設定電圧との差分に基づいて送給速度Vftの振幅を逐次変更してもよい。このようにすれば、アーク長が常に適正化され、溶接品質の一層の向上に寄与することができる。
・溶接ワイヤ12の送給速度Vftの振幅変更は設定電圧のみに基づいて行ってもよいが、設定電圧を含む複数パラメータに基づいて行うものであってもよい。
・設定電圧に基づいて溶接ワイヤ12の送給速度Vftの振幅変更のみを行ってもよいが、これと連動して別のパラメータの変更を行うものであってもよい。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想を以下に追記する。
(イ) 溶接ワイヤへの給電及びその保持を行う溶接トーチと、前記溶接ワイヤの送給を行いその送給動作が制御される送給装置と、請求項1又は2に記載のアーク溶接用電源装置とを備えたことを特徴とするアーク溶接機。
この構成によれば、アーク長制御がより適切に行われ、溶接品質の向上が可能なアーク溶接機として提供することができる。
11 アーク溶接用電源装置
12 溶接ワイヤ
20a 出力制御部
20c 送給制御部
20d 振幅設定部
M 被溶接物
Iw 出力電流(出力電力)
Vw 出力電圧(出力電力)
Vw1,Vw2 設定電圧
Vft 送給速度
Va 送給速度の周波数成分
Va1,Va2 振幅

Claims (4)

  1. 溶接ワイヤを放電電極としたその電極先端にてアークを生じさせて被溶接物のアーク溶接を行うべく、アーク溶接に適した出力電力に調整する出力制御部と、前記溶接ワイヤの正逆送を含むその送給速度を周期的に変化させる送給制御部とを備えたアーク溶接用電源装置であって、
    出力電圧の設定電圧に基づいて前記溶接ワイヤの送給速度の振幅設定を行う振幅設定部を備えたことを特徴とするアーク溶接用電源装置。
  2. 請求項1に記載のアーク溶接用電源装置において、
    前記振幅設定部は、その時々の前記出力電圧に基づいて前記溶接ワイヤの送給速度の振幅を逐次調整することを特徴とするアーク溶接用電源装置。
  3. 溶接ワイヤを放電電極としたその電極先端にてアークを生じさせて被溶接物のアーク溶接を行うべく、アーク溶接に適した出力電力に調整する出力制御と、前記溶接ワイヤの正逆送を含むその送給速度を周期的に変化させる送給制御とを実施するアーク溶接用電源装置の制御方法であって、
    出力電圧の設定電圧に基づいて前記溶接ワイヤの送給速度の振幅設定を行うようにしたことを特徴とするアーク溶接用電源装置の制御方法。
  4. 請求項3に記載のアーク溶接用電源装置の制御方法において、
    その時々の前記出力電圧に基づいて前記溶接ワイヤの送給速度の振幅を逐次調整するようにしたことを特徴とするアーク溶接用電源装置の制御方法。
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