JP6123949B2 - Ruを含有する耐食チタン合金の製造方法 - Google Patents

Ruを含有する耐食チタン合金の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、Ruを含有する耐食チタン合金の製造方法に関し、特に、耐食性(耐隙間腐食性および耐酸性等)に優れ、疵等の損傷を起点とした腐食が進行しにくく経済性に優れたRuを含有する耐食チタン合金の製造方法に関する。
チタンは、軽くて強いという特性が活かされて、航空機分野等で積極的に活用されている。また、優れた耐食性を有することから、化学工業設備用材料、火力・原子力発電設備材料、さらには海水淡水化設備材料等の用途に広範囲に使用されるようになってきている。
しかし、チタンは優れた耐食性を有するとはいっても、高い耐食性を発現できる環境は、酸化性酸(硝酸)環境や、海水等の中性塩化物環境に限定されており、高温塩化物環境下での耐隙間腐食性や塩酸等の非酸化性酸液中における耐食性(以下、「耐食性」とも総称する。)が十分ではなかった。
耐食性を改善するために、Ti−0.15Pd合金(ASTM Gr.7)が開発された。このチタン合金は、含有するPdが水素過電圧を低下させ、自然電位を不働態域に維持することができるという現象を活用したものである。すなわち、腐食によりこの合金から溶出したPdが合金の表面に再び析出し、堆積することによって、この合金の水素過電圧が低下し、自然電位が不働態域に維持され、優れた耐食性を示す。
しかしながら、優れた耐食性を有するASTM Gr.7は、白金族であり非常に高価であるPdを含有するため、その使用分野は限定されていた。
この問題を解決するため、特許文献1に開示されるように、白金族元素の中で最も経済性に優れたRuを活用し、Ruの含有量を0.001〜0.15質量%とし、さらに希土類元素を複合添加することでASTM Gr.7と比較して少ない白金族量で、優れた耐隙間腐食性を有するチタン合金が提案されている。
このように、特許文献1によれば、白金族量を低減し経済性に優れた耐食チタン合金を実現できることになるが、商業ベースの大型鋳塊の安定製造を検討したところ以下の課題があることが判明した。
第一に、高融点の白金族元素を選択(特にRu,Ir,Os)し、VAR溶解法のように最高溶湯温度が2000℃強程度の溶製法で合金を製造しようとすると、比重の大きい白金族元素が完全溶解せずに沈降して偏析が生じる場合がある。
第二に、白金族の添加量を減らすと合金コストすなわち経済性の観点でメリットが出てくるが、鋳塊内での白金族の濃度が揺らぎ耐食性が悪化することから、より均質な白金族分布が求められる。例えばPd:0.15%狙いで濃度の揺らぎが0.01%の溶製法があったとすると、同じ溶製方法で製造した狙い組成Pd:0.01%合金では、白金族(Pd)含有量が0〜0.02%の範囲を有することが想定され、白金族元素をほとんど含有しない部位が存在する可能性がある。このため、より均質な溶解製造方法が必要である。
第三に、特許文献1に示されたような微量白金族と微量希土類元素を複合添加する耐食合金の量産規模溶製においては、白金族濃度の揺らぎや希土類元素濃度の揺らぎが小さくなる新たな方法が求められている。特に高融点のRu(2334℃)、Ir(2447℃)などの白金族元素を添加する場合に必要とされていた。
このような問題点を解決するために、特許文献2には、「スポンジチタンまたは粉末状チタンと少量添加元素の所要量とを配合した圧粉体(コンパクト)を作るとともに、その周囲に、主要製品の薄板を交互に巻き付けて円柱状の溶解素材を作成して、これをドリップ溶解すれば、少量合金元素の添加溶解歩留まりは、殆ど100%近くになり、また得られる鋳塊での成分分布も安定してほぼ均一となる」ことが明記されている。本解決法は有効であるものの、使用する薄板(例えばチタン、Wなど)は円柱状に加工することが可能な箔帯を適用する必要があり、箔帯が高価であるため経済性の観点で問題がある方法であった。
特許文献3には、金属溶解物を合金化する手段として、母合金粒子、バインダ(LDPE=低密度のポリエチレン)の成形体を原料に使う方法が開示されている。本方法では溶解時にバインダ有機物が溶け込むため、製品の炭素含有量がポリエチレンの構成元素であるCに起因して高くなる特徴がある。強度を求める用途に対しては有効な手段と考えられるが、炭素や酸素含有量を制限し加工性を求める用途に対しては、適用出来ない問題点を抱える。
特許文献4には、RuまたはIrを含有するチタン合金を溶融、鋳造する方法が開示されている。この方法は、高温が実現できる溶解法により、RuやIr単体よりも低融点のTiとRuまたはTiとIrの母合金を作製し、この母合金を原料として大量溶製が可能なVAR(真空アーク再溶解法)で均質な鋳塊を製造する方法である。この方法においては作製した母合金は硬く、粉砕が容易ではない。このため母合金を溶解目標組成に調整するために母合金を切断する作業が必要となり、この観点での生産性低下とコスト上昇の課題がある。
日本国特開2013−47369号公報 日本国特開昭63−177955号公報 日本国特表2008−537015号公報 米国特許第6409792号明細書
本発明は、従来技術の問題に鑑みてなされたものであり、特許文献1に開示されるように、白金族元素(最も経済性に優れたRu(85 USD/OZ INVESTMENTMINE 2013.5.24 6ヶ月平均)を含む)を活用し、Ruの含有量を0.001〜0.15質量%とし、さらに希土類元素を複合添加することでASTM Gr.7と比較して少ない白金族量で、優れた耐隙間腐食性を有する均質なチタン合金鋳塊を経済的に提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するため、TiにRuを添加して大型の鋳塊を作る場合に発生する課題について調査し、以下のように整理した。
(1)融点;Ruは安価で経済性に優れるが高融点(2334℃)である。チタン合金を多量溶解する一般的な方法であるVAR溶解では、溶湯温度の上限が2000℃強であるため、Ruが未溶融になる場合がある。また、鋳塊のRu偏析が大きくなる傾向がある。
(2)比重;Tiの4.51g/cc(融液比重4.11g/cc)に対して、Ruの12.45g/cc(融液比重10.65g/cc)では大きな差異があり、チタン融液中では、未溶解のRuは沈降する。また融液の状態でも不完全混交状態では沈降する。したがって溶解時に融液の底部であった部分にはRuが濃化偏析する傾向が認められる。
これらの問題を解決するために特許文献2〜特許文献4の技術の適用を検討したところ、特許文献2では、非常に高価な箔の活用が必須であり、経済性点で難がある。特許文献3の方法では製品鋳塊のC含有量が高くなり、強度は高くなるものの延性や加工性の確保が特許文献2や4の方法と比較して困難となった。
特許文献4の方法を適用した場合に均質な鋳塊が得られた事を確認出来たが、同文献に記載された母合金Ti−30wt%Ruは、同文献には“very brittle”と記載されてはいるものの、母合金として活用するためには、機械的な粉砕装置(ジョークラッシャー)をつかい、小塊状にする必要があった。このため粉砕のコストが経済性を落とすとともにクラッシャー装置の歯に由来すると考えられるFeコンタミ汚染が生じる問題があった。
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、母合金のコンタミ汚染を抑制し、工業生産規模で偏析が少なく均質な内質を有する、高融点白金族元素を含有する耐食チタン合金の製造方法を提供することを目的とする。
特に、経済性に優れ高融点白金族のRu元素を含有する耐食チタン合金の製造に適した溶解方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するためにTi−Ruの二元状態図を参照し、融点の低い組成域を調査した。図1にTi−Ruの二元状態図(Springer Materials Landolt−Bernstein DATABASE)を示す。Ru含有量が30wt%近傍に、純Tiの融点よりも約100℃近く低い融点となる領域が存在する。特許文献4においてはこの組成の母合金を作製し、粉砕後篩い分けを施した粒状母合金をスポンジチタンと混合し加圧することで圧密体を作り、この圧密体をプラズマ炉で溶融することで均質なTi−0.1Ru(ASTM Gr.26)耐食チタン合金鋳塊の鋳込みが可能になるとしている。
本発明者らが、特許文献4の方法を追試確認したところ、得られた母合金は硬質であり、文献に記載されている“Brittle“とは異なり、容易に粉砕できるものでは無く、粉砕器を使ってクラッシュする必要があることが判明した。クラッシュにかかるコストを低減すること、そしてクラッシュ工程で破砕歯などから出るコンタミ(Fe等)が混入して耐食性劣化を引き起こす事を避けるべく種々検討したところ、以下の(i)〜(iv)の知見を得た。
(i)上記の融点が低いTi−Ru母合金組成に希土類元素を添加することで、母合金が脆化し破砕しやすくなる。
(ii)破砕性を向上させるためにTi−Ru母合金組成に希土類元素を添加する場合の適正な添加量は、母合金中に含まれるRu含有量の1/6以上とする。希土類添加量をRu含有量の1/6以上とした理由は上述の破砕性を高めるためである。
(iii)希土類元素の上限は、本母合金を使用して得られる耐食チタン合金における希土類元素の合計含有量が0.10質量%以下になるように母合金の希土類元素の含有量を調整することが望ましい。この理由は得られた耐食チタン合金において希土類元素含有量が0.10質量%を超えると得られたチタン合金の耐食性が劣化する可能性があるためである。
(iv)質量%で、Ruを10〜40%含有するとともに希土類元素を2〜30%含有する溶解原料を2000℃以上の融液温度が実現出来る溶解法によって溶解合金化した母合金を作り、この母合金をRu源および希土類元素源の原料として工業的生産規模の大型炉でチタン合金鋳塊を製造すると、高融点Ru成分の偏析が小さく、母合金破砕時に混入してくるFe等の汚染が少ない耐食チタン合金製品が得られる。
本発明は、上述の知見に基づいて完成されたものであり、下記(1)〜(3)を要旨としている。
(1)Ruを含有する耐食チタン合金の製造方法において、含有量が10〜40質量%のRuと、含有量が2〜30質量%であるとともにRuの含有量の1/6以上の希土類元素とを含有し、かつ融点が2000℃以下の母合金を溶製して凝固し、凝固後の母合金を粉砕し、粉砕後の母合金とスポンジチタンとを混合して溶解炉で溶解し、前記母合金中の前記希土類元素の含有量は、前記耐食チタン合金中の希土類元素の含有量が合計で0.10質量%以下となる量に調整された量である、Ruを含有する耐食チタン合金の製造方法。
(3)前記耐食チタン合金は、Ru元素が0.01〜0.15質量%であり、希土類元素が合計で0.001質量%以上、残部がTiおよび不可避的不純物からなる合金組成を有する、上記(2)に記載のRuを含有する耐食チタン合金の製造方法。
(4)
前記母合金は、不純物元素であるFe含有量が0.30質量%以下である、上記(1)に記載のRuを含有する耐食チタン合金の製造方法。

本発明によれば、最も経済的な白金元素であるRuを含有した耐食チタン合金の工業規模の製造において、Ruの高融点(2334℃)に起因して発生するRuの偏析を軽減し均質な耐食チタン合金鋳塊を製造することができる。負偏析を軽減できることで低Ru含有量部位が発生しないため、本発明の製造方法で得られる鋳塊を用いて製造したチタン製品は耐食性を担保する元素の一つであるRuが均質に存在する。このため、低Ru含有量の特定部位から腐食が発生するような問題は生じない。また偏析が少ないことから負偏析発生部での耐食性を担保するために、負偏析発生を見越した狙い組成を高めた配合を行う必要がなくなり経済面でメリットが大きい製造方法である。
また特許文献4では予め溶製したTi−Ru系の母合金を使い、Ru偏析の少ない耐食チタン合金の製造方法が提案されているが、母合金が非常に硬質で粉砕が困難なためジョークラッシャーのような強破砕装置の活用が必須であり、破砕装置起因Fe等コンタミの混入問題があったが、本発明においては破砕が容易な母合金を提供することが出来るため、このようなFeコンタミ混入の懸念を払拭することができる。
図1は、Ti−Ruの二元状態図である。 図2は、VAR鋳塊底部から上部にかけてのRu含有量の変化を示すグラフである。 図3は、耐熱(沸騰)塩酸試験に使用した試験片を示す模式図であり、図3(a)は平面図、図3(b)は側面図である。
本発明は白金族元素であるRuを含有する耐食チタン合金の製造方法において、含有量が10〜40質量%のRuと、含有量が2〜30質量%であるとともにRuの含有量の1/6以上の希土類元素とを含有し、かつ融点が2000℃以下の母合金を溶製して凝固し、凝固後の母合金を粉砕し、粉砕後の母合金とスポンジチタンとを混合して溶解炉で溶解する、Ruを含有する耐食チタン合金の製造方法である。以下、本発明の内容について順に詳細に説明する。なお、以下で説明する「%」は、すべて「質量%」を表す。
1)含有量が10〜40質量%のRuと、含有量が2〜30質量%であるとともにRuの含有量の1/6以上の希土類元素とを含有し、かつ融点が2000℃以下の母合金
1−1)母合金中のRuの含有量
融点が2000℃以下である母合金を溶製するためには、母合金のRu含有量は10〜40%とする必要がある。図1によれば、本組成域における二元合金の融点は、2000℃以下のみならず、耐食チタン合金を製造する際に母合金以外に配合するスポンジチタン(純チタン)の融点(1668℃)と比較して低い。従ってRu含有量は10〜40%の範囲とする。下限を10%としたのは、これ未満だと後述の希土類元素を添加しても母合金に必要な易粉砕性を確保出来ないためである。上限を40%としたのは、40%超えでは急激に高融点化して母合金の均一性が損なわれ、粉砕時にコンタミが多量に発生するためである。好ましくは最も融点が低くなる30±5%の領域である。
1−2)母合金中の希土類元素の種類
希土類元素は母合金の粉砕性を高めるために必要な元素であり、母合金を溶解した際に合金中に分散して存在する。固化した母合金中では、希土類元素とRuとの化合物として存在し、この化合物が粉砕性を高める。また、耐食チタン合金が希土類元素を含有すると、高温、高濃度の塩化物水溶液環境で溶解しやすくなる。
希土類元素と分類される元素(原子番号57〜71=La〜Luおよび原子番号21,39=Sc,Y)のいずれにも効果が認められるが、経済性や資源の易入手性の観点で磁石材料や蛍光体などの用途外であるLaや各種希土類元素を分離精製する前の混合希土類金属(以下、「Mm」という。)を使用することが望ましい。Mmの場合は資源が特定の国に偏在せず埋蔵量が多いバストネサイト(La;30±10質量%,Ce;50±10質量%,残Nd,Pr,Sm等)鉱石に由来するものを使用することが望ましい。
1−3)母合金中の希土類元素の含有量
母合金の希土類元素含有量は、母合金を粉砕し易くするために2〜30%である必要がある。母合金の希土類元素含有量が2%未満であると、希土類元素とRuとの化合物の含有量が少なく母合金が粉砕し難くなる。この結果、母合金を粉砕する際にコンタミが多量に発生してしまう。一方、母合金の希土類元素含有量が30%を超えて含有しても母合金の粉砕能力の大幅な向上は見込めない。また、耐食チタン合金を製造するには粉砕後の母合金を用いるが、母合金が多量の希土類元素を含有する場合、粉砕性を高めるため、Ru含有量の増加に伴い多量の希土類元素も添加することになる。希土類元素を多く含有する母合金から製造された耐食チタン合金は多量の希土類元素を含有するため、製品鋳塊の段階で熱間加工性が不芳になり、耐食性も悪化することになる。
また、母合金中の希土類元素含有量はRu含有量の1/6以上とする必要がある。工業規模の大型鋳塊を製造する際には、スポンジチタンと母合金の小塊を押し固めた電極を使いVAR溶解を行う。この電極に使用する小塊状母合金は、粉砕によって得られるものであり、製品鋳塊に使用する母合金は粉砕性に優れている必要がある。希土類元素の添加により粉砕性が向上するが十分な効果を得るためには、母合金のRu含有量の1/6以上とする必要がある。
また、母合金中の希土類元素含有量は、最終製品である耐食チタン合金の希土類元素含有量が合計で0.10%以下となる量に調整された量であることが好ましい。例えば、Ru含有量が30%である母合金を用いて、Ru含有量が0.15%の耐食チタン合金を作製する場合、耐食チタン合金の希土類元素含有量を0.10%以下とするためには、Ruと希土類の含有量が同じ割合だけ減少すると仮定すると、母合金中の希土類元素含有量が(0.10以下/0.15)×30=20%以下となるように、母合金中の希土類元素含有量を調整することになる。なお、Ruと希土類元素の減少率は溶解法に応じて変化するものであり、また母合金中の含有量によっても変化することは言うまでもない。
前述したように希土類元素は粉砕性を高める効果があるが、多量に添加しすぎると、低融点の希土類化合物が耐食チタン合金中に生成するために製品鋳塊の段階で熱間加工性が不芳になる場合がある。また、希土類元素とチタンの化合物が析出して耐食性が不芳となる場合がある。このような問題を発生させないためには、最製品段階である耐食チタン合金の希土類元素含有量が合計で0.10%以下となるように母合金中の希土類元素の含有量を調整することが望ましい。具体的には、母合金中の希土類元素含有量をRu含有量の4/3以下とすることが望ましく、2/3以下とすることがより望ましい。
母合金中の残部はチタンおよび後述する不可避な不純物である。
1−4)母合金の融点:2000℃以下 工業的に多量に純チタンあるいはチタン合金を製造する際の溶解手段は、VAR溶解(真空アーク溶解法)、EB溶解(電子ビーム溶解法)などがあるが、安価かつ大量生産(10ton/インゴット以上)に適するのは、前者のVAR溶解法である。VAR溶解法においては最高溶湯温度が2000℃強程度であり高融点の原料が溶け残る問題がある。この様な問題を解決するためには、VAR溶解法の融液温度とされる2000℃以下の融点の母合金を使用する必要がある。
2)母合金母合金を溶製して凝固する。
このような合金組成および融点を有する母合金を製造するため、例えば市販のスポンジチタン、Ruチップ、Mmの原料等を準備する。各々の粒径は製造規模により異なるが、概ね、0.84mm〜12.7mm(大阪チタニウム製 S−95)、4mm角以下(フルヤ金属製 Ru不定形ショット)、10mm角〜30mm角(日下レアメタル研究所製 切断して使用)であることが望ましい。そして、前述の範囲に入るような量を各々秤量し、アーク溶解等により溶解して凝固することにより鋳塊である母合金を得る。母合金の大きさは、粉砕機に入る程度の大きさであればよく、約30mm角以下程度でよい。母合金の均質化を図るために、溶解を数回繰り返すことが望ましい。
3)凝固後の母合金を粉砕する。
耐食チタン合金の目標組成とするため、前述のように得られた母合金を、Ru源および希土類元素源として所定量秤量可能なように粉砕する。粉砕には例えば市販のジョーククラッシャーを用いることができる。ジョーククラッシャーに投入する母合金を効率よく粉砕するため、粉砕歯の回転数、粉砕時間、粉砕雰囲気、歯板材質などの粉砕条件を予め最適化しておくことが望ましい。粉砕後の母合金の粒径は、Ru源および希土類元素源として秤量可能な程度の大きさでよく、例えば2mm角〜4mm角程度であることが望ましい。
4)粉砕後の母合金とスポンジチタンとを混合して溶解炉で溶解する。
4−1)耐食チタン合金の製造方法
Ru源および希土類元素源である粉砕した母合金と、スポンジチタンとを所定量秤量して混合する。混合した原料をプレス機で圧縮成形して所定の形状のブリケットを成形する。その際、使用するスポンジチタンとしては、例えば母合金を作製する際に用いたものでよい。
その後、VAR溶解法では、円柱状のブリケットを成形後、溶接して消耗電極を作製し、炉底との間に大電流を流す事で発生するアークの熱により消耗電極自身を溶解させる。溶解した金属は2000℃強程度の温度となる。溶解した金属を銅ルツボに鋳込み、積層凝固させて鋳塊を製造する。均質化のためにるつぼ内の鋳塊の溶解を数回(本発明では2回実施)繰り返すことが好ましい。
4−2)本発明が、白金族元素がRuであるTi−Ru合金の溶解に適した製造方法となる理由
従来の耐食チタン合金の中で、白金族元素がRuの場合、すなわち、質量%で、Ru元素:0.01〜0.15%、希土類元素:0.001%〜0.10%、残部がTiおよび不可避な不純物からなる化学組成を有する耐食チタン合金を工業規模で製造する場合に、本製造方法が適する。特にRu含有量が少ない組成領域においては、負偏析が大きいと耐食性を担保するRu含有量の低い部分が発生し、腐食発生の起点となる可能性があるためである。
4−3)不可避的不純物元素
本発明の製造方法で製造した耐食チタン合金における不可避的不純物元素としては、原料、溶解電極および環境から侵入するFe,O,C,HおよびN等、およびスクラップ等を原料とする場合に混入するAl,Cr、Zr、Nb、Si、Sn、MnおよびCu等が挙げられる。また母合金を粉砕する際に粉砕歯から混入するFe等も挙げられる。これらの不純元素は、耐食性を低下させない範囲であれば混入しても問題ない。
具体的には、製品になった耐食チタン合金には、Fe:0.30%以下、O:0.140%以下、C:0.18%以下、H:0.015%以下、N:0.03%以下、Al:0.3%以下,Cr:0.2%以下、Mn:0.01%以下、Cu:0.1%以下、の少なくとも1種を含有する場合があり、合計で0.6%以下を含有する場合がある。
本発明の耐食チタン合金の製造方法の有効性を確認すべく、以下の試験を実施して、その結果を評価した。
実施例1では母合金の特性調査を行った。
1)母合金溶解
本発明製造方法に用いる母合金の特性を調査するために、表1に示す組成の母合金を調整した。
1−1)原料
原料として市販の工業用純スポンジチタンJIS1、フルヤ金属製Ruチップ99.95%以上純度、日下レアメタル研究所製Mm(La=31.1%,Ce=55.1%,Nd=9.2,Pr=4.2%,Sm=0.3% 残;重希土類およびFe)、和光純薬工業の試薬 金属ランタン削り状(純度>99.5%)を使用した。
1−2)母合金溶解
上記原料を表1に示す組成比に配合した約100gの原料を各々8P作成し、日本特殊機械製の水冷銅モールドに配置した原料を、非消耗電極アークを使い溶融しボタン型の鋳塊を得た。一度溶解が完了した鋳塊は、裏返しにして再溶解を行うことで均質化を図った。
1−3)粉砕効率
上記溶解により得られたボタン鋳塊を市販のジョークラッシャーを用いて一定時間の粉砕を行った。粉砕により回収できた金属塊量を投入した母合金量で除算することで回収率とした。
ジョークラッシャーは、(株)前川工業所製SC−0605型 ファインジョークラッシャーを活用し、以下の条件で粉砕を行った。
・出口間隙;10mm
・回転数;300回転/分
・粉砕時間;10分
・雰囲気;酸化発火を防止するため上部よりArガスをフロー
・歯板材質;高マンガン鋳鉄
粉砕効率を具体的には以下の式で算出した。
粉砕効率=被粉砕材重量(クラッシャー底部で回収できた重量)/投入ボタン鋳塊総重量×100[%]
1−4)融点測定
チタン合金は活性であるため、チタンと反応性を有さない容器を準備し、Ar雰囲気にしたDTA(示差熱分析)装置を活用して融点を測定した。
・使用装置;ブルカー社製 示差熱分析装置
・測定温度;〜1700℃
・雰囲気;Ar
・使用容器材質;イットリア
測定温度の上限が1700℃である。1700℃を超える融点の材料は1700℃超えと表記する。
1−5)Ru偏析度
母合金Ru成分に偏析があると、粉砕工程において部位ごとに粉砕性に差異が発生する。したがって、被粉砕母合金の粒度毎のRu含有量を分析し、分析含有量のバラツキ範囲を偏析度と定義した。
分析を行う粒度は、JIS試験篩いの
(1)3.5メッシュ篩い上
(2)30−3.5メッシュ
(3)200−30 メッシュ
(4)200メッシュ篩い下
の4粒度とした。(1)〜(4)の分析結果のうち、最も高いRu含有量−最も低いRu含有量=Ru偏析度と定義する。
1−6)Feコンタミ
本実施例で用いるジョークラッシャーは、被粉砕物を動歯と不動歯に咬み混ませて粉砕を行うため、被粉砕物が硬い材料である場合は歯が摩耗して歯の構成成分(Fe系)が混入する。
Ru偏析度調査の化学分析の際にFe含有量の化学分析を行い、(最もFe含有量が高い粒度範囲のFe含有量)−(最もFe含有量が低い粒度範囲のFe含有量)の差をFeコンタミ量と定義した。これは、粉砕工程によって混入するFe量をコンタミとして取り扱うためである。
従来例は、特許文献4に記載された実施例の追試とした。表1に試作母合金の組成および特性評価結果を示す。
1.従来例;実施例番号No.1
実施例番号No.1の融点は1580℃と2000℃以下でRu偏析は1質量%以下と小さかった。しかしながら粉砕に難があり、本実施例で定義した方法では50%以下と低い。また粉砕が困難なことから粉砕歯から入ると推測されるFeコンタミ混入量が多く、本実施例の定義では1質量%を超えるFeの混入が認められた。
2.希土類添加量範囲;実施例番号No.2
(希土類元素添加量)<(Ru含有量の1/6)では顕著な粉砕効率改善が認められず、本実施例で定義した方法では50%以下と低い。また粉砕が困難なことから粉砕歯から入ると推測されるFeコンタミ混入量が多く、本実施例の定義では1質量%を超えるFeの混入が認められた。従来例と比較して進歩性は認められない。
3.希土類元素含有量>30質量%;実施例番号No.6
希土類元素の含有量が30質量%を超えても、母合金の粉砕能力の大幅な向上は見込めない。また、希土類元素を多く含有する母合金から製造された耐食チタン合金は多量の希土類元素を含有するため、製品鋳塊の段階で熱間加工性が不芳になり、耐食性も悪化することになる。
4.Ru含有量<10質量%;実施例番号No.7
Ruの含有量が10質量%未満になると希土類元素を添加しても粉砕効率改善が認められない。このため粉砕効率が低くなるとともにFeコンタミ混入量が1質量%を超えてしまう。
5.Ru含有量>40質量%;実施例番号No.8
Ru含有量が40質量%を超えると融点が急激に上昇してしまうため本発明本来の目的である低融点の母合金提供を実現出来ない。
6.本発明範囲;実施例番号3−5,9−11
本発明範囲においては、融点が2000℃以下と低く本実施例で定義した粉砕効率が50%を超え、Ru偏析が小さく、粉砕に起因するFeコンタミ混入が少ない母合金が提供できる。
実施例1において、表1に記載の実施例番号1の母合金(特許文献4)と本発明範囲の実施例番号3,4,5,9,10,11を比較して小括する。粉砕器から混入してくるFeコンタミ量は、本発明範囲においては1mass%以下であるのに対し、実施例番号1では3.8%に達する。また、生産性に拘わる指標である粉砕効率は、10分間の粉砕で本発明範囲においては60%以上に対し、実施例番号1においては18%に過ぎず、本発明に優位性があると考えられる。
実施例2では本発明の製造方法と従来製造方法との比較を行った。
本発明の耐食チタン合金の製造方法と従来製造方法で得られる耐食チタン合金の耐食性を比較し、本発明の優位性の確認を行った。
比較する従来法は、通常のVAR溶解法、特許文献2に記載された製造方法、特許文献3に記載された製造方法、特許文献4に記載された方法である。
表2に、本発明に用いた原材料そして比較する従来製造方法を実施するのに用いた部材等を示す。
特許文献1に記載された耐食合金としてTi−0.03Ru−0.01Mm(質量%)を本発明方法および従来の製造方法で各2P試作しその偏析程度、耐食性を調査した。
2−1)実施例に使用する材料の試作方法
・一般的VAR溶解方法
表2に示すスポンジチタンを合金原料(Ru粉末、塊状Mm等)とともにプレス成形して約7kgのブリケットとし,3本準備した。これを溶接して消耗電極として溶解した。一回の溶解だけでは鋳塊の合金成分均質化が不十分なため,初回溶解の鋳塊を消耗電極として再度溶解する二重溶解とした。得られた21kgの鋳塊を実施例に供した。表3に溶解条件を示す。
・特許文献2の方法;
表2に示すスポンジチタンのうち0.5インチ〜200メッシュ(75μm)に分級したものと、Ru粉末のうち−45μm以下に分級したものとを鋳塊全体では目標組成となるように配合し、これを塊状Mmとともに圧縮成形して円柱状のコンパクトを得、その後純チタン箔(100μm厚)を巻き付けてVAR溶解用の溶接素材(約7kgの1次電極)とした。この溶接素材を溶接して消耗電極として溶解した。一回の溶解だけでは鋳塊の合金成分均質化が不十分なため,初回溶解の鋳塊を消耗電極として再度溶解する二重溶解とした。得られた21kgの鋳塊を実施例に供した。表3に溶解条件を示す。
・特許文献3の方法
表2に示すスポンジチタンのうち200メッシュ(75μm)以下に分級したものと、Ru粉末のうち−45μm以下に分級したものとを準備し、LDPE(低密度ポリエチレン)をバインダとして、重量比でTi;Ru;LDPE=6:3:1で十分に混合し、その後島津製作所製KBr錠剤成形機(φ13mm)を使い約1g/pのペレット成型体を作製した。
その後、このペレットを用いてスポンジチタンおよび塊状Mmとともに圧縮成形して円柱状のコンパクトを作製(配合組成Ti−0.03Ru−0.01Mm(質量%)となるように調整 7kg/p)した。
これを溶接して消耗電極として溶解した。一回の溶解だけでは鋳塊の合金成分均質化が不十分なため,初回溶解の鋳塊を消耗電極として再度溶解する二重溶解とした。得られた21kgの鋳塊を実施例に供した。表3に溶解条件を示す。
・特許文献4の方法
実施例1の実施例番号1の母合金(粉砕後)を使い、これをスポンジチタンおよび塊状Mmとともに圧縮成形して円柱状のコンパクトを得、VAR溶解用の溶接素材(約7kgの1次電極)とした。これを溶接して消耗電極として溶解した。一回の溶解だけでは鋳塊の合金成分均質化が不十分なため,初回溶解の鋳塊を消耗電極として再度溶解する二重溶解とした。得られた21kgの鋳塊を実施例に供した。表3に溶解条件を示す。
・本発明の方法
実施例1の実施例番号4(本発明1)、実施例番号9(本発明2)の母合金(粉砕後)を使い、これをスポンジチタンとともに圧縮成形して円柱状のコンパクトを得、VAR溶解用の溶接素材(約7kgの1次電極)とした。これを溶接して消耗電極として溶解した。一回の溶解だけでは鋳塊の合金成分均質化が不十分なため,初回溶解の鋳塊を消耗電極として再度溶解する二重溶解とした。得られた21kgの鋳塊を実施例に供した。表3に溶解条件を示す。
2−2)高融点Ru偏析調査
得られたVAR2次溶解2本のうち、1本について、縦に2分割して鋳塊中央部の底部から上部にかけてのRuの濃度を調査した。分析方法は、融合結合プラズマ質量分析法である。調査結果を図2に示す。
図2によれば、一般的なVAR材の場合、鋳塊底部のRu含有量が高くなる傾向が認められるとともに、内部においても含有量のバラツキが大となる。特許文献2の場合、底部のRu含有量が高くなる傾向が認められる。特許文献3の場合、底部のRu含有量が高くなる傾向および内部におけるRu含有量バラツキ大となる。特許文献4の場合、本発明と同様にRuの偏析は小さくなる。一方、本発明の場合、Ruの偏析は小さい。
2−3)試作材の成分
上記試作材の成分分析結果を表4に示す。
特許文献3の方法で得られた材料は、バインダ起因と考えられるCおよびOの増加が認められる。
特許文献4の方法で得られた材料は、粉砕器に起因すると考えられるFeコンタミが認められ、他の方法の約10倍のFe含有量となった。Feは耐食性を劣化させる元素とされている。このFeの影響は後述の耐食試験結果に認められる。
2−4)板材の試作
実施例の材料の耐食性を評価するために、以下の工程で4mm厚の板材を試作した。
工程1;熱間鍛造
素材=φ140mm×250mm長
890℃加熱;→56mm厚×140mm幅×530mm長
950℃加熱;→33mm厚×103mm幅×L(約1160mm)2ヒート
工程2;熱間圧延;
850℃加熱;→4mm厚×約110mm幅×L(1ヒート)
工程3;焼鈍;
750℃×30分 AC
一般的なVAR溶解法、特許文献2,特許文献4,本発明の4つの実施例は、割れ等の発生無く、4mm厚の厚板材の試作が可能であったが、特許文献3に示された材料は非常に硬質で、熱間鍛造の際に割れが生じ、板材を確保することが出来なかった。
特許文献3の材料はCおよびO含有量が高く熱間加工性が不芳で、実生産には適さない材料と考えられる。
2−5)耐食性
本発明のチタン合金製造方法で得られる材料の耐(沸騰)塩酸性を確認するため、以下の試験を実施して、その結果を評価した。
・耐熱(沸騰)塩酸性試験
図3は、耐熱(沸騰)塩酸性試験用試験片の模式図であり、図3(a)は平面図、図3(b)は側面図である。同図に示す、厚さ2mm、直径15mmのコイン状の試験片1を板材から切り出した。この試験片1は、表面を粒度600番のエメリー紙で研磨した。試験片1を下記条件で熱塩酸に浸漬した後、腐食により減少した質量から単位時間当たりの腐食量(腐食速度)を算出した。なお試験片1の採取位置はVAR2次鋳塊のTop.部、Mid.部、Bot.部に相等する3ヵ所から採取し、実施例試験に用いた。
耐熱(沸騰)塩酸性試験は、隙間腐食の隙間内環境を模擬した腐食試験であり、以下の条件で行った。沸騰試験容器には、蛇管冷却器を具備させて、熱蒸気を冷却して液体に戻すことで、溶液濃度に変化が生じないようにした。
溶液濃度および温度:3%の塩酸(沸騰状態)
溶液のpH:pH≒0(常温)
浸漬時間:96時間
・耐熱(沸騰)塩酸性試験結果
表5に鋳塊の3ヵ所から採取した試験片について耐熱(沸騰)塩酸性を調査した結果を示す。なお特許文献3の製造方法で鋳込んだ材料は熱間加工性が不芳で板材を得ることができなかったため、耐熱(沸騰)塩酸性は評価していない。
耐熱(沸騰)塩酸性試験では、白金族を含有する耐食チタン合金は時間の経過に伴って腐食速度が低下することから、溶液への浸漬を開始してから初期7時間の平均腐食速度と96時間の平均腐食速度の2つの指標を用いて評価した。
一般的なVAR溶解法では、鋳塊Bot.部の腐食速度がTop.部と比較して小さくBot.部の方が耐食性に優れる傾向が認められた。この結果は図3に示すようにBot.部のRu含有量が高いことに起因すると考えられる。
特許文献2の方法では、一般的なVAR溶解法と同様にBot.部の方が耐食性に優れる傾向が認められた。この結果は図3に示すようにBot.部のRu含有量が高いことに起因すると考えられる。
特許文献4の方法では、鋳塊Bot.部からTop.部にかけての腐食速度変化が小さく、白金族(Ru)が偏析していないことに起因すると考えられる。
本発明では、特許文献4の方法で得た材料と同様鋳塊Bot.部からTop.部にかけての腐食速度変化が小さく、白金族(Ru)が偏析していないことに起因すると考えられる。また特許文献4の方法で鋳造した材料と比較して腐食速度が小さく、本発明1は全部位で、初期7時間では<2.5mm/年、96時間では<0.2mm/年である。Fe含有量がさらに少ない本発明2は、初期7時間では<2mm/年、96時間では<0.1mm/年である。本発明では耐食性を悪化させるFeなどの不純物元素の混入が少なくかつ白金族Ruの偏析が小さいため、良好な耐食性を有するとともに部位の違いによる耐食性の変動が小さい材料が得られる。
以上の評価結果から実施例2の溶解製造方法について比較を表6にまとめる。
すべての項目で良好な特性を有するのは、特許文献4の方法と本発明である。ただ、本発明は特許文献4の方法と比較して、表1に示すように、製造工程から混入するFe不純物分が少ない。このため耐食性は、特許文献4の方法より優れたパフォーマンスを発揮する。したがって、本発明は、表6の評価項目において最も優れた結果を示すことがわかった。なお、表1に示すNo.9以外の本発明範囲である母合金を用いて上述と同じ評価を行っても、表6の本発明と同様の結果が得られることを確認した。
本発明の耐食チタン合金の製造方法によれば、経済性に優れるが高融点であるために均質化が困難とされてきた白金族元素Ruを含有するチタン合金を、本発明のTi−Ru−Mm母合金を使用することで、大量製造に適した工業的製造方法であるVAR溶製で容易に製造することが可能となる。母合金の融点は1700℃以下であるため白金族元素Ruの偏析程度が極めて小さい合金が得られる。そのため、本発明の耐食チタン合金の製造方法によれば、腐食性環境(特に高温、高濃度の塩化物環境)において使用される設備、機器類の性能や信頼性をより一層高めることが可能である。このようなチタン合金をより経済的な原料コストで得ることが可能である。このため耐食チタン合金の適用用途拡大に寄与するものと考えられる。

Claims (3)

  1. Ruを含有する耐食チタン合金の製造方法において、
    含有量が10〜40質量%のRuと、含有量が2〜30質量%であるとともにRuの含有量の1/6以上の希土類元素とを含有し、かつ融点が2000℃以下の母合金を溶製して凝固し、
    凝固後の母合金を粉砕し、
    粉砕後の母合金とスポンジチタンとを混合して溶解炉で溶解し、
    前記母合金中の前記希土類元素の含有量は、前記耐食チタン合金中の希土類元素の含有量が合計で0.10質量%以下となる量に調整された量である、Ruを含有する耐食チタン合金の製造方法。
  2. 前記耐食チタン合金は、Ru元素が0.01〜0.15質量%であり、希土類元素が合計で0.001質量%以上、残部がTiおよび不可避的不純物からなる合金組成を有する、請求項に記載のRuを含有する耐食チタン合金の製造方法。
  3. 前記母合金は、不純物元素であるFe含有量が0.30質量%以下である、請求項1に記載のRuを含有する耐食チタン合金の製造方法。
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