JP6123838B2 - 電気音響変換器 - Google Patents
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Description
しかし、このようなリッフェル型スピーカは、両振動板の接合部が直線状となるため、振動板の接合部と円形のボイスコイルとが2点でのみ取り付けられる脆弱な構造であり、取り付け部の耐久性や振動伝達の確実性に難がある。
特許文献2に開示のスピーカでは、ボイスコイルの端部にV字状の裂目を形成し、この裂目に翼状振動板の折曲部を取り付けている。
この場合、振動体とボイスコイルとの間を連結する筒状部を設けたので、これらを周方向の全長にわたって強固に固定することができ、振動の伝達ロスが小さく、振動体と変換部との間で確実に振動を伝達することができ、耐久性も向上する。
貫通穴を閉塞するキャップ部材により、ボイスコイル内に粉塵等が入らないように保護することができる。この場合、キャップ部材の形状としては、中央部が盛り上がったドーム形状、円錐台形状等、求められる振動特性に応じて種々の形状のものを採用することができる。
振動体に貫通穴を設けることなく、筒状部を、振動体の裏面、すなわち振動体の谷部の深さ方向の側の面により閉塞することによっても、ボイスコイル内に粉塵等が入らないように保護することができる。
キャップ部材の表面にも、翼状部の縦割り筒状面及び谷部と同様に、一対の縦割り筒状面と谷部とが形成されているので、このキャップ部材の表面を含めた全面が縦割り筒状の表面となり、その全面から広い指向性で音を再生し(スピーカの場合)、あるいは収音する(マイクロホンの場合)ことができる。
この場合、キャップの縦割り筒状面は、振動体の縦割り筒状面と面一に連続していてもよいし、振動体の筒状面との間に隙間があってもよい。
図1〜図7は、本発明の第1実施形態のスピーカ(電気音響機器)100を示す。
1.全体構成
この実施形態のスピーカ100は、振動体1と、この振動体1を往復駆動するアクチュエータ(本発明の変換部)2と、これら振動体1及びアクチュエータ2を支持するための支持枠3と、振動体1を支持枠3に往復移動が可能に支持するエッジ部4とを備えている。
なお、図1及び図2において、エッジ部4が設けられている側を上、アクチュエータ2が設けられている側を下とするように上下方向を設定し、後述する振動体1の谷部の延在方向を縦方向、これと直交する方向を横方向とする。また、上方を向く面を表面、下方を向く面を裏面とし、さらに、図示したように、縦方向をx方向、横方向をy方向、上下方向をz方向と称する場合もあるものとする。
(1)振動体の構成
振動体1は、図4〜図7に拡大して示したように、翼状部11と、この翼状部11の谷部16(後述)の両端を閉塞する端板部12と、翼状部11の背部に固定された筒状部13と、エッジ部4との接続のためのリング板部14とを一体に形成した構成とされる。
翼状部11は、一対の縦割り筒状面15が並列に形成されるとともに、隣接する縦割り筒状面15の一方の側部どうしの間で谷部16を形成した表面形状とされている。この場合、縦割り筒状面15とは、筒状の面の一部を縦割りにして切り取った面のことであり、縦割り筒状面15の側部とは、縦割り筒状面15において筒状の面の湾曲する方向の側の部位のことである。
そして、一対の縦割り筒状面15は、図5から図7に示すように、その凸となる方向を同じ表面側に向けて並列に配置されるとともに、隣接する側部どうしが、縦割り筒状面15の周方向に沿う断面でU字状をなすようにわずかに間隔をあけて対向され、その下端縁が接合され、直線状に延在する接合部17が形成されている。
なお、この振動体1は、その材質が限定されるものではなく、スピーカの振動板として一般的に用いられる合成樹脂、紙、金属等の材料を用いることができ、例えば、ポリプロピレン、ポリエステル等の合成樹脂からなるフィルムを真空成形することにより、振動体1を一体成形し得て、比較的容易に成形することができる。
アクチュエータ2は、例えばボイスコイルモータが用いられ、振動体1背部の筒状部13に接合されたボイスコイル20と、支持枠3に固定された磁石機構21とにより構成される。
ボイスコイル20は、図1に示すように円筒状のボビン20aの回りにコイル20bが巻回されたものであり、図3に示すように、その上端部が翼状部11の背部の筒状部13の直管部18に嵌合して固定されている。
ボイスコイル20の外周部は、ダンパー22を介して支持枠3に支持されており、ボイスコイル20は支持枠3に対してボイスコイル20の軸方向に沿って往復移動自在である。ダンパー22は一般的なダイナミックスピーカに用いられる材料のものが適用される。
本発明において、振動体1を振動の方向(谷部16の深さ方向であるz方向)に振動可能に支持する支持部35は、この実施形態では、支持枠3とエッジ部4によって構成される。
また、支持枠3の環状フレーム部32に、磁石機構21のアウターヨーク24が取り付けられることにより、磁石機構21と支持枠3とが一体に固定される。
前述したように、縦割り筒状面15は、単一円弧面だけでなく、複数の曲率を連続させたもの、断面が放物線形状やスプライン曲線など曲率が一定ないし連続的に変化するもの、角筒状面としたもの、階段状に複数の段差部を有する形状としたものなどを採用することができるが、その先端どうしを結ぶ境界線Hを超えない形状の凸面とするのが好ましい。
なお、図1及び図2において符号33は、ボイスコイル20を外部に接続するための端子を示している。
このように構成されたスピーカ100は、振動体1に固定されたアクチュエータ2のボイスコイル20に音声信号に応じた駆動電流が流れると、その駆動電流によって生じる磁束変化と、磁気ギャップ26内の磁界とにより、ボイスコイル20に駆動電流に応じた駆動力が作用し、磁界と直交する方向(ボイスコイル20の軸方向、図6では矢印で示す上下方向であるz方向)にボイスコイル20を振動させる。これにより、このボイスコイル20に接続されている振動体1が、谷部16の深さ方向に沿って振動し、表面から再生音が放射される。
従って、リッフェル型スピーカに用いられている振動板と同様に中高音域で広い指向性を有している。
したがって、1本のスピーカユニットにより低音域から中高音域までの可聴帯域の全域で広い指向性で再生可能なフルレンジスピーカユニットを実現することができる。
しかも、本実施形態のスピーカには、アクチュエータ2として、通常のダイナミックスピーカに用いられているものを適用することができ、安価に製造することができる。
図8に示す第2実施形態のスピーカ200では、振動体1が翼状部11、端板部12、筒状部13、リング板部14を一体に形成した構成とされている点は、第1実施形態と同様であるが、翼状部11の接合部17において断面U字状をなしている部分に剛体からなる棒材51が谷部16の長さ方向にわたって挿入して固着されている。この棒材51は、帯状に形成されており、その幅方向を翼状部11の谷部16の深さ方向(z軸方向)に沿うように挿入され、谷部16の長さ方向(x軸方向)には、少なくとも筒状部13を跨る長さに設けられている。また、谷部16への挿入により、両縦割り筒状面15の相互間隔が広がらないように(谷部16が広がらないように)、薄肉に形成される。この棒材51の幅(z軸方向の寸法)は、翼状部11の接合部17に必要な剛性を得るために十分な必要最小限の寸法とされる。この棒材51が固定されていることにより、翼状部1の接合部17がより強固に補強され、アクチュエータ2と振動体1との間の振動の伝達がより確実になり、より安定した周波数特性が得られるようになる。
なお、好ましくは、帯状の棒材51は、筒状部13を跨って、谷部16の端から端まで全長に亘って、一つの棒材で構成されるとよい。
第1実施形態及び第2実施形態の振動体55では、翼状部56の谷部16及び筒状部13の上方は開放され凹んだ空間が形成されていたが、この第3実施形態の振動体55では、翼状部56の貫通穴19を閉塞するように、すなわち翼状部56の谷部16の底部(断面U字状部分)及び筒状部13の上端を閉塞するように閉塞板(本発明のキャップ部材)57が設けられている。この閉塞板57は、翼状部56の縦割り筒状面15を延長するように表面が谷折り状に形成され、縦割り筒状面15と面一に湾曲形成された縦割り筒状面58が対をなすように形成されている。つまり、翼状部56の縦割り筒状面15と閉塞板57の縦割り筒状面58とは周方向(湾曲方向)が同じで繋がるように形成されている。この場合、谷部16は、翼状部56の断面U字状となっている底部が塞がれ、谷折り状の閉塞板57の上面によって形成される。
この第4実施形態の振動体61では、筒状部13が設けられる部分に貫通穴19が設けられ、この筒状部13内に、通常のダイナミックスピーカに設けられるようなセンターキャップ(本発明のキャップ部材)62を固定して、筒状部13の内部空間を閉塞した構成である。この場合、センターキャップ62は、半球殻状に形成され、筒状部13内で上方に向けて凸となるように設けられる。また、センターキャップ62の下端部は、谷部16との間に隙間が生じないように、接合部17より下方に配置される。
この第5実施形態の振動体65では、第4実施形態と同様に、筒状部13内に、その内側空間を閉塞するセンターキャップ(本発明のキャップ部材)66が設けられているが、このセンターキャップ66の上端面が、翼状部11の縦割り筒状面15に沿う谷折り状の表面形状に形成されている。したがって、センターキャップ66の上端面に、縦割り筒状面15の周方向(湾曲方向)に沿う一対の縦割り筒状面67と、谷部16に平行な第2の谷部68とが、縦割り筒状面15,67どうし、谷部16,68どうしを繋げるように形成される。両縦割り筒状面15,67は必ずしも同一曲率でなくてもよいが、これらの周方向(湾曲方向)は上面視で同じ方向に配置される。
第5実施形態の振動体65では、筒状部13内に設けたセンターキャップ66の上端面を縦割り筒状面に沿う表面形状に形成したので、中央部が凹状に形成されるが、この第6実施形態の振動体71では、逆に中央部を突出させた山形形状のセンターキャップ(本発明のキャップ部材)72が筒状部13の内側空間を閉塞している。この場合、山形の頂部73は翼状部11の谷部16の延在方向に沿う直線状に形成され、この頂部73から両側方に、翼状部11の縦割り筒状面15とは逆の傾斜となる縦割り筒状面74が形成されている。これら翼状部11の縦割り筒状面15とセンターキャップ72の縦割り筒状面74とは周方向(湾曲方向)を上面視で同じ方向にして配置される。
この第6実施形態の振動体71においても、振動体としての縦割り筒状面の面積を増加させる効果がある。
なお、センターキャップ72の下端部は、谷部16との間に隙間が生じないように、接合部17より下方に配置される。
図9及び図10に示す第3実施形態では、振動体55に、翼状部56の筒状部13が設けられる部分に貫通穴19が設けられ、、貫通穴19を閉塞板57で閉塞することとしていたが、この第7実施形態の振動体81では、図17〜図19に示すように、翼状部86は、筒状部83が設けられる部分に貫通穴が設けられることなく、一対の縦割り筒状面85が並列に形成され、一対の縦割り筒状面85の一方の側部どうしの間に形成される谷部16が、その延伸する方向にわたって途切れることなく連続して設けられる。そして、この翼状部86の裏面(下面)に、すなわち、谷部16の深さ方向の側の面に筒状部83が設けられ、筒状部83の上端が翼状部86により閉塞されている。また、翼状部86は、一枚の合成樹脂フィルム等を谷折りした形状に形成され、この翼状部86の裏面から筒状部83が突出した形状とされる。そして、翼状部86と筒状部83とは、射出成形により一体に成形される。
また、振動体81は、その正面視において、翼状部86に貫通する部分が設けられていないことから、意匠性が格段に向上する。更に、筒状部83の上端が翼状部86によって閉塞されているので、ボイスコイル20の内部にダスト等が付着することも防止される。
例えば、上記実施形態ではいずれも振動体が正面視ほぼ円形としたが、翼状部の縦割り筒状面を長方形等の矩形状の湾曲板の表面により形成し、この湾曲板を一対並列に隣接させることにより縦割り筒状面の間に谷部を形成した振動体としてもよい。そして、その谷部に各実施形態と同様に筒状部を形成してボイスコイルの上端部と接合すればよい。この場合、筒状部を谷部の長さ方向に間隔をおいて複数形成して、それぞれボイスコイルを接合した構成としてもよい。
Claims (4)
- 一対の縦割り筒状面が並列に形成されるとともに、隣接する前記縦割り筒状面の一方の側部どうしの間で谷部を形成した翼状部及び該翼状部の前記谷部の両端を閉塞する端板部を備える振動体と、
該振動体の前記谷部の深さ方向に沿う振動と該振動に対応する電気信号との変換を行う円筒状のボイスコイルと磁石機構とを有する変換部と、
前記振動体を前記谷部の深さ方向に沿って振動可能に支持する支持部とを備え、
前記振動体の前記谷部が延伸する途中に、前記ボイスコイルとの間を連結する筒状部が前記谷部の深さ方向に設けられており、
前記振動体の外周が円形に形成され、その円形の中心に前記筒状部の中心軸が配置されていることを特徴とする電気音響変換器。 - 前記振動体は、前記筒状部が設けられる部分に貫通穴が設けられ、当該貫通穴を閉塞するキャップ部材が設けられていることを特徴とする請求項1記載の電気音響変換器。
- 前記振動体は、前記筒状部が設けられる部分に貫通穴が設けられることなく、当該振動体の裏面に前記筒状部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の電気音響変換器。
- 前記キャップ部材は、前記振動体の前記一対の縦割り筒状面と前記谷部とに繋がるように、一対の縦割り筒状面と谷部とが形成されていることを特徴とする請求項2記載の電気音響変換器。
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