JP6122386B2 - データ収集システムおよび質量分析方法 - Google Patents

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Description

本発明は、データ収集システムおよび質量スペクトロメータにおいてイオンを検出する方法およびそれに関連する改善に関する。このシステムおよび方法は、質量スペクトロメータ、好ましくは飛行時間型(TOF)質量スペクトロメータにとって有益であり、したがって本発明は、さらに、質量スペクトロメータおよびデータ収集システムおよびデータ収集方法を包含する質量分析の方法に関する。この発明は、ハイ・ダイナミック・レンジかつ高解像度の質量スペクトルの生成のために利用することができ、また、これらの質量スペクトルは、有機化合物、たとえば、医薬品有効成分、代謝産物、少量のペプチドおよび/またはタンパク質の特定および/または定量化のために利用することができる。
質量スペクトロメータは、イオンの質量対電荷比(m/z)に基づいてイオンを分離・分析するために広く使用されており、かつ、いろいろな種類の質量スペクトロメータが知られている。本発明は、飛行時間型(TOF)質量分析を念頭において意図され、説明のためにTOF質量分析に関して記述するが、本発明は、他の種類の質量分析にも適用できる。本出願においては、荷電粒子の例としてイオンに言及するが、文脈により要求されない限り、他の種類の荷電粒子は排除されない。
飛行時間型(TOF)質量スペクトロメータは、一定の飛行経路沿いのイオンの飛行時間に基づいてイオンの質量対電荷比(m/z)を測定する。これらのイオンは、イオンのショート・パケットの形態でパルス源から発射され、一定の飛行経路沿いに真空領域を経てイオン検出器に向けられる。イオンのパケットはイオンのグループを含むが、一般的に種々の質量対電荷比を含むこのグループは、少なくとも初期において、空間的に局在している。
一定の運動エネルギーをもってパルス源を去ったイオンは、その質量によって決まる時間後に検出器に到達する。質量の大きいイオンほど低速である。TOF質量スペクトロメータは、イオン検出器を必要とするが、それは、中でも、早い応答時間および高いダイナミック・レンジという特性、すなわち、小さいイオン流と大きいイオン流の両方を検出する能力を必要とし、また、検出器出力飽和などの問題を伴わずに、これら2つの間で迅速に切り換え得ることが望ましい。コストおよび運用に伴う問題を低減するために、かかる検出器は、あまり複雑であってはならない。
ダイナミック・レンジを達成する既存の方法は、たとえば英国特許第2457112 A号明細書において記述されているように、2つの異なるレベルに増幅される1つの検出器の出力を使用する。この増幅は、電子増倍装置内において、または前置増幅器ステージにおいて行われる。次に同一検出器からのこれらの2つの増幅出力を使用してハイ・ダイナミック・レンジ・スペクトルを作成する。TOF質量スペクトロメータにおける検出器ダイナミック・レンジの課題に対して提案されているその他の解決方法は、電子増倍器から放射される二次電子を集める相異なる表面積の2つの収集電極の使用(米国特許第4,691,160号明細書、米国特許第6,229,142号明細書、米国特許第6,756,587号明細書および米国特許第6,646,252号明細書)およびいわゆるアノード・フラクションを変更するアノードの近傍における電位または磁界の使用(米国特許第6,646,252号明細書および米国特許出願公開第2004/0227070 A号明細書)を含む。もう1つの解決方法は、入射粒子から生成される二次電子の検出のために2つ以上の別個の完全に独立している検出システムを使用することである(米国特許第7,265,346号明細書)。さらに別の解決方法は、最終電子検出器の利得を制御するフィードバックを与えるためにTOF分離領域中に配置される中間検出器の使用である(米国特許第6,674,068号明細書)。後者の検出に伴う問題は、それが検出器上の利得の急速な変更を必要とすること、および直線性を維持するために利得を追跡することも難しいということである。米国特許出願公開第2004/0149900A号明細書において提案されているさらに別の検出機構は、ビーム・スプリッタを利用してイオンのビームを別々の検出器により検出される2つの等しくない部分に分割する。すべてにおいて、これらの検出解決方法はその実現が複雑かつ高価になりかねず、および/またはそれらの感度および/またはそれらのダイナミック・レンジは希望値より低くなりかねない。
TOF質量スペクトロメータに伴うもう1つの問題は、それがデータを非常に高速で生成することである。検出器出力は、非常に短い時間間隔内に順次発生する非常に多くのイオン検出信号を含んでいるからである。たとえば、TOF質量スペクトル全体がたとえば1 GHz以上のデータ・サンプリング速度で数ミリセカンド以内に検出されることがある。さらに、所与のサンプルを分析するために、多数のスペクトル、たとえば100万個以上のスペクトルが必要となることがある。したがって、TOF質量スペクトロメータからのデータの収集および処理における改善、たとえば、処理対象データ量およびデータ処理の継続時間を低減する方法および効率の改善も望ましい。
国際公開第2008/08867号パンフレットは、イオン検出器の出力に数学的変換を施すマイクロプロセッサおよびフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)の使用について記述している。高速適用のために、スペクトルは、このように飛行中に少なくとも前処理される。数学的変換を使用してFPGAにおいて質量強度対を作成し、次にそれらをコンピュータに転送する方法が米国特許第6,870,156号明細書において記述されている。かかる方法は、1つの検出器を使用し、上述したように、それを2つのレベルに増幅して異なる利得の2つの信号を得た後、それに数学的変換を適用する。データの集まりを減らす1つの方法は、米国特許第5,995,989号明細書において記述されているが、それは、連続的に決定される背景雑音閾値の使用を含んでいる。それを使用してデータを濾過し、かつ、次の処理のために保持するべきデータを決定する。この方法における閾値の適用は、したがって連続計算を含んでいる。
種々の測定方法を組み合わせることによるイオン測定のための別の方法が米国特許第7,220,970号明細書において記述されている。この方法では、コレクタおよびSEMを使用し、イオンを選択的にコレクタまたはSEMに送り込む。米国特許第7,238,936号明細書において、非TOFスペクトロメータにおける検出器利得を調整する手段が記述されている。この場合、検出の中間ステージが次の検出ステージを機能停止させるために十分な時間がある。
したがって、質量分析、特にデータ収集システムおよび方法におけるイオンの検出を改善する必要が残っている。上記の背景を考慮して、本発明が行われた。
本発明の1つの態様に従って、質量スペクトロメータにおいてイオンを検出するデータ収集システムが提供され、このシステムは、
検出システムに到着したイオンに応答して別々のチャネルに2つ以上の検出信号を出力するための2つ以上の検出器を含むイオンを検出する検出システムと、
データ処理システムの別々のチャネル中の検出信号を受信・処理し、かつ、処理した検出信号を併合して質量スペクトルを構築するデータ処理システムと
を含み、別々のチャネル中の上記処理は、閾値を検出信号に適用することにより検出信号から雑音を除去することを含む。
本発明の別の態様に従って、質量スペクトロメータにおいてイオンを検出するためのデータ収集方法が提供され、このシステムは、
2つ以上の検出器を含む検出システムを使用してイオンを検出すること、および検出システムへのイオンの到着に応答して2つ以上の検出器から2つ以上の検出信号を別々のチャネルに出力することと、
データ処理システムの別々のチャネル中の検出信号を受信・処理することであて、別々のチャネル中の処理は、閾値を検出信号に適用することにより検出信号から雑音を除去することを含むことと、
処理された検出信号をデータ処理システムにおいて併合して質量スペクトルを構築することと
を含む。
本発明のデータ収集のシステムおよび方法は、TOF質量分析におけるハイ・ダイナミック・レンジ質量スペクトルの生成のために特に有益である。検出システムにより生成される2つ以上の検出信号に好ましくは相異なる利得を与え、それにより、別々のチャネルにおける処理後に、これらの信号をデータ処理システムにおいて併合してハイ・ダイナミック・レンジ・スペクトルを形成することができる。これまでに、たとえば104〜105のダイナミック・レンジが達成可能であることが見出されている。特にTOF質量分析において、この発明のシステムおよび方法を使用して収集されるスペクトルは、有機化合物、たとえば、医薬品有効成分、代謝産物、少量のペプチドおよび/またはタンパク質の特定および/または定量化、および/または種の遺伝子型または表現型等の特定のために利用することができる。
処理された信号を併合して質量スペクトルを形成する前に、別々の処理チャネル中の検出信号のそれぞれに関する処理を行うことにより、特に雑音閾値を適用することにより、処理された信号から質量スペクトルを構築する際の融通性が向上する。各個別検出信号に独立にデータ処理の各ステップが施され、それにより処理システムが質量スペクトルの構築のために検出システムの各出力からの検出信号を利用できるからである。少なくとも2つ以上の信号が、相異なる、すなわち、たとえば相異なる雑音レベルおよび相異なるベースラインを有する別々の検出器を起源としており、したがって固有の閾値関数を各信号チャネルに適用することが好ましい。さらに、この方法により個別に保たれた処理後の検出信号は、別々に、たとえばデータ・システム上に格納し、後に、たとえば質量スペクトルのさらなる構築のために使用することができる。したがって、本発明は、検出システムからのデータが改善され、かつ、より効率的な使用を可能にする。別々のチャネルにおける検出信号の並行処理の使用により、本発明により与えられる改善は、処理速度をいささかも犠牲にするものではない。
この質量スペクトロメータはどのような適切なタイプの質量スペクトロメータでもよいが、TOF質量スペクトロメータとすることが好ましい。本出願においては、TOF質量スペクトロメータという用語は、TOF質量分析器(単独質量分析器または1つ以上の他の質量分析器との組み合わせとしての)を含む質量スペクトロメータ、すなわち、単独TOF質量スペクトロメータまたはハイブリッドTOF質量スペクトロメータを意味する。
質量スペクトロメータは、イオンを生成するイオン源を含む。質量分析技術における既知の適切なイオン源を使用することができる。適切なイオン源の例は、限定することなく、エレクトロスプレー・イオン化(ESI)、レーザー脱離、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)または大気圧イオン化(API)を使用してイオンを生成するイオン源を含む。TOF質量分析における本発明の好ましい適用を踏まえて、このイオン源は、TOF質量スペクトロメータに適切なパルス状インジェクタを有するイオン源、たとえば、上述のタイプの1つ、すなわち、イオンのパケットを生成するパルス状イオン源とすることが好ましい。
このイオン源により生成されるイオン、たとえば、TOF質量分析において生成されるイオンのパケットは、質量分析器に転送され、イオンはそれにより質量対電荷比(m/z)に従って分離される。質量スペクトロメータは、したがって、イオン源からイオンを受け取る質量分析器も含んでいる。質量分析技術における既知の適切な質量分析器を使用することができる。適切な質量分析器の例は、限定することなく、TOF、4極または多極フィルタ、静電トラップ(EST)、電場、磁場、FT−ICR質量分析器を含む。ESTの例は、限定することなく、3Dイオン・トラップ、リニア・イオン・トラップ、OrbitrapTM質量分析器などの軌道周回イオン・トラップを含む。TOF質量分析における本発明の好ましい適用を踏まえて、質量分析器は、TOF質量分析器を含むことが好ましい。タンデム(MS2)および高次ステージ(MSn)質量分析のために2つ以上の質量分析器を使用することができ、また、質量スペクトロメータは、2種類以上の異なるタイプの質量分析器を含むハイブリッド質量スペクトロメータ、たとえば四重TOF質量スペクトロメータとすることができる。したがって、当然のことであるが、本発明は、タンデム質量スペクトロメータ(MS/MS)および多段質量処理を行う質量スペクトロメータ(MSn)を含む既知の構成の質量スペクトロメータに適用することができる。
衝突セルなどの付加構成部品を使用して、質量分析器による質量分析の前にイオン群を分断する能力を付与することができる。
質量分析器により質量対電荷比(m/z)に従って分離されたイオンは、検出のために検出システムに到着する。検出システムについて下記においてさらに詳しく説明する。
当然のことであるが、この技術において知られているように、たとえば、イオン・ガイド、イオン・レンズ、イオン・デフレクタ、イオン・アパーチャ等の1つ以上を使用して、イオン源の質量スペクトロメータ、質量分析器および検出システムの種々のステージならびにたとえば衝突セルなどの任意選択のステージをイオン光学構成部品により相互に接続することができる。
質量スペクトロメータは、この技術において知られている他の分析装置と結合することができる。たとえば、それは、クロマトグラフ・システム(たとえば、LC−MSまたはGC−MS)またはイオン移動度分光計(すなわちIMS−MS)等と結合できる。
本発明のシステムおよび方法は、ハイ・ダイナミック・レンジのイオン検出が要求される場合およびかかる検出が高速で要求される場合(たとえば、TOF質量スペクトロメータにおいて要求されるように)にも有益である。本発明は、TOF質量スペクトロメータ、好ましくは多重反射TOF質量スペクトロメータ、より好ましくは長飛行経路を有する多重反射TOF質量スペクトロメータにおけるイオンの検出に特に適している。本発明は、検出対象のピークのピーク幅(半値全幅またはFWHM)が約50 ns以下の幅であるときにTOF質量スペクトロメータにおいて使用することができるが、しかし、一部の例では、ピーク幅はこれより長い場合がある。たとえば、ピークのピーク幅は、約40 ns以下、約30 ns以下および約20 ns以下、一般的には0.5〜15 nsの範囲とすることができる。好ましくは、検出対象のピークのピーク幅は0.5 ns以上、たとえば1 ns以上、たとえば2 ns以上、たとえば3 ns以上、たとえば4ns以上、たとえば5 ns以上である。好ましくは、検出対象のピークのピーク幅は、一般的に12 ns以下、たとえば11 ns以下、たとえば10 ns以下である。ピーク幅は、次の範囲内とすることができる:たとえば1〜12 ns、たとえば1〜10 ns、たとえば2〜10 ns、たとえば3から10 ns、たとえば4〜10 ns、たとえば5〜10 ns。
この検出システムは、好ましくは、TOF質量スペクトロメータにおいてイオンを検出するための検出システムである。したがって高速検出器が望ましく、かつ、この技術において知られている。この検出システムは、少なくとも第1および第2検出器を含んでいる。これらは、それぞれ、この検出システムに到着するイオンに応答して別々のチャネルにおいて第1および第2検出信号を生成する。本発明のシステムは、したがって英国特許第2457112号明細書、国際公開第2008/08867号パンフレット、米国特許第7,501,621号明細書および米国特許出願公開第2009/090861 A号明細書において記述されている先行技術システム(それは、続いて単に2つの異なる利得で増幅される単一の検出信号を与える単一の検出器を使用する)と対照的に第1および第2独立検出器を含んでいる。
これらの2つ以上の検出器は、好ましくは、同一イオンから時間的に相互にずれている検出信号を生成する。したがって、同一イオンまたはそれから生成される電子などの二次粒子は、最初に第1検出器に到着して第1検出器から信号を生成し、時間遅延の後に第2検出器に到着して第2検出器から信号を生成するので、第2検出器からの信号は、したがって、第1検出器からの信号に対し時間的に遅れている。これは、同一イオンを第1と第2両方の検出器による検出のために利用することによりイオンの効率的な利用を可能にする。第2検出器は、したがって、好ましくは、第1検出器の下流に、より好ましくは第1検出器の背後に配置される。
第1および第2検出器は、同一タイプの検出器または、好ましくは、異なるタイプの検出器を含むことができる。第1および第2検出器は、好ましくは、それぞれ、低利得検出器および高利得検出器である。第1および第2検出器は、好ましくは、それぞれ独立に、荷電粒子検出器(たとえば、到着イオンまたは到着イオンから生成される二次電子の検出器)または光子検出器(たとえば、到着イオンから直接または間接に生成される光子の検出器)である。たとえば、第1および第2検出器のそれぞれが荷電粒子検出器を含むこと、または第1および第2検出器のそれぞれが光子検出器を含むこと、または第1および第2検出器の一方が荷電粒子検出器を含み、第1および第2検出器の他方が光子検出器を含むことが可能である。好ましくは、低利得検出器となり得る第1検出器は、荷電粒子検出器を含む。好ましくは、高低利得検出器となり得る第2検出器は、光子検出器を含む。この装置は、したがって、たとえば、光子検出器より一般的に低い利得の荷電粒子検出器の使用により、出力の飽和が起きる前に雑音はより多いが高率の到着粒子を検出することができる。したがって、ダイナミック・レンジが達成できる。適切なタイプの荷電粒子検出器は電子検出器、たとえば、以下を含む:二次電子増倍器(SEM)。このSEMは、検出アノードを有する離散ダイノードSEMまたは連続ダイノードSEMでよい。連続ダイノードSEMは、チャネル電子増倍器(CEM)またはより好ましくはマイクロチャネル・プレート(MCP)を含むことができる。適切なタイプの光子検出器は、たとえば、以下を含む:フォトダイオードまたはフォトダイオード・アレイ(好ましくはアバランシェ・フォトダイオード(APD)またはアバランシェ・フォトダイオード・アレイ)、光電子増倍管(PMT)、電荷結合素子、またはフォトトランジスタ。ソリッド・ステート光子検出器も好ましいが、より好ましい光子検出器はフォトダイオード(好ましくはアバランシェ・フォトダイオード(APD))、フォトダイオード・アレイ(好ましくはAPDアレイ)またはPMTである。この検出システムは、正帯電イオンまたは負帯電イオンの検出のために使用できる。
1つの好ましい構成の検出システムでは、この検出システムは、到着イオンの受け取りに応答して二次電子を生成するSEMを含み、かつ、SEMにより生成された二次電子に対して透明な検出アノードまたは電極を含む荷電粒子検出器が使用される。透明電極は、その中の電子の通過を把握する。たとえば、電子は、透明電極に結合された電荷または電流の計測器を使用して検出される。薄い導電層(たとえば金属)を含み得る透明電極は、したがって検出システムの第1低利得検出器を形成する。透明電極を通過する電子は、次に第2検出器からの信号を生成する。特に、透明電極を通過する電子はシンチレータに衝突し、シンチレータにより生成された光子が光子検出器により検出される。光子検出器は、したがって検出システムの第2の高利得検出器を形成する。かかる検出器は、本出願に参照により全面的に含まれている内容を有する英国特許第0918629.7号明細書および英国特許第0918630.5号明細書において記述されている。かかる検出システムは、電荷検出器により検出される二次電子も光子検出器により検出される光子を生成するために使用されるので、非常に高効率である。光子および光子検出器の使用は、二次電子生成のために使用される高電圧からの減結合も可能にする。これは、たとえば、検出システムのこの部分を加速電圧(および極性)から独立とする。
本出願において第1および第2検出器に言及しているが、これは、1つ以上の別検出器および別々のチャネルにおける1つ以上の別の検出信号の出力、たとえば、場合によっては有益たり得る第3の検出器および検出信号等の使用を排除しない。そのような場合には、かかる1つ以上の別の検出器がそれぞれ1つ以上の別の検出信号生成用であり、かつ、かかる信号がデータ処理システムの1つ以上の別のそれぞれのチャネルにおいて受信・処理されること、すなわち、各検出器がそれ自身のチャネルにおいてそれぞれの検出信号(それ自身のそれぞれの処理チャネルにおいて受信・処理される)を生成すること、および各それぞれの処理された検出信号を使用して質量スペクトルを構築することが好ましい。したがって、本出願における第1および第2検出信号、第1および第2検出器、第1および第2チャネル等に対する言及は、第3(およびそれ以降)検出信号、第3(およびそれ以降)検出器、第3(およびそれ以降)チャネル等を有する場合を含むが、しかし、検出システムは、好ましくは2つの検出器のみを含む。
本発明により使用される検出システムは、したがって、好ましくは、ハイ・ダイナミック・レンジを有する。それは、さらに、単純かつ堅牢かつ低コスト構成の構成部品により与えられ得る。この検出システムは、好ましくは単一粒子計数までの低率の到来イオンに応答する。すなわち、それは、高感度、たとえば、光子検出器などの高利得検出器の使用により与えられる高感度を有する。それは、地電位における光子検出による高利得および低雑音の長所を有する。この検出システムは、さらに、たとえば低雑音の光子検出器より一般的に低い利得の荷電粒子検出器などの低利得検出器の使用により、出力の飽和が起きる前に雑音はより多いが高率の到来粒子を検出することができる。たとえば第1および第2検出器からのデータを併合することにより、104〜105のダイナミック・レンジを達成することができる。すなわち、第1および第2検出信号を処理した後に、ハイ・ダイナミック・レンジのスペクトルを生成する。本発明は、したがって非常に小さいピークと非常に大きいピークの両方を検出するために種々の利得で多数のスペクトルを収集する必要性を回避することができる。
かかる構成のさらなる長所は、1つの検出器が実験実行中に動作を停止した場合に他の作動中の検出器から依然として少なくとも一部のデータが収集され得るということである。
このデータ処理システムは、これから詳細に説明する1つ以上の機能を遂行するように設計される。
このデータ・処理システムは、別々のチャネルにおける検出信号の前置増幅を含むことが好ましい。これらの信号は、この方法により、すなわち、同一または相異なる利得、好ましくは相異なる利得を適用して、独立に前置増幅され得る。これは、好ましくは検出システムの第1および第2検出器として相異なる種類の検出器の使用から生ずる利得の区別に加えて、検出信号間の利得のさらなる区別を可能にする。検出器間の固有の利得の差異に加えて、前置増幅器を使用してチャネル間の利得差異を適用することは、ADCの全範囲を使用することも可能にする。したがって、好ましくは、このデータ処理システムは、前置増幅器、好ましくは各検出信号を独立に前置増幅するための2つ以上のチャネルを有する前置増幅器を含む。これらの前置増幅された検出信号は、別々のチャネルの前置記増幅器からデータ処理システムのさらなる構成要素、好ましくはデジタイザに出力される。これらの検出信号は、その他の処理の前に増幅されることが好ましい。
好ましくは、このデータ処理は、データ処理システムにおける別々のチャネル中の検出信号のデジタル化を含む。これらの信号は、この方法により独立にデジタル化され得る。このシステムは、2つ(またはそれ以上)の別々の(独立した)デジタイザを含むことができる。すなわち、各チャネルについて1つ、または二重チャネル・デジタイザ(または多重チャネル・デジタイザ)を使用し、実際にコスト効率化することができる。本出願のために必要なデータ転送速度および精度を有する適切な二重チャネル・デジタイザを、たとえば、電気通信応用におけるI/Q検出のために使用する。これらの検出信号は、したがって、好ましくは、それぞれ、検出信号を独立にデジタル化するために2つ以上のチャネルを有するアナログ−デジタル・コンバータ(ADC)においてデジタル化される。したがって、好ましくは、このデータ処理システムは、デジタイザ(ADC)、好ましくは各検出信号を独立にデジタル化するために2つ以上のチャネルを有するデジタイザを含む。これらの検出信号は、好ましくは上述したように別々のチャネルにおいて前置増幅された後に、閾値の適用による雑音除去のステップを含むさらなる処理の前にそれらをデジタル化するために、好ましくはそれぞれにADCの別々のチャネルに入力される。これらのデジタル化された検出信号は、別々のチャネル中のADCからこのデータ処理システムのさらなる別の構成要素に出力される。
このデータ処理システムは、検出信号のそれぞれの個別処理のための(特に2つ(またはそれ以上)の処理チャネルにおける並行処理のための)2つ(またはそれ以上)の処理チャネルを有するシステムである。好ましくは、これらの検出信号の処理の大部分は、質量スペクトルを構築するために検出信号を併合する前に、このデータ処理システムの別々のチャネルにおいて行われる。したがって、これらの検出信号の処理は、このデータ処理システムの別々の、すなわち、独立の処理チャネルにおいて、好ましくは並行して(すなわち同時に)行われる。これらの検出信号は、したがって、これらの検出信号を併合することにより質量スペクトルを構築するまで、このデータ処理システム中において別々の状態に維持される。本出願における用語、処理された検出信号は、それらがこのデータ処理システムにより処理された後の検出信号を指す。これらの処理された検出信号は、次にこのデータ処理システムにより併合されて質量スペクトルを構築する。
上述した検出信号の前置増幅およびデジタル化の任意選択のステップ(それらは、好ましくはその他のデータ処理の前に行われる)のほかに、このデータ処理は、好ましくは次のステップの1つ以上を含む(これらのうち、ステップiii)が最も重要である):
i.)検出信号をデシメーションすること
ii.)雑音を除去するための閾値を計算すること
iii.)閾値を適用することにより検出信号から雑音を除去すること
iv.)雑音を除去した後に検出信号を圧縮すること
v.)検出信号中のピークを特徴付けること。
ステップを処理する順番は変更することができるが、上記のステップの順序は、これらのステップの好ましい順序を示す。この技術において知られている処理ステップなどのさらなる任意選択のデータ処理ステップは、検出信号を併合する前に別々のチャネルにおいてこのデータ処理システムにより遂行することができる。上述の選択された処理ステップに続くのは、処理された検出信号を併合して質量スペクトルを構築するステップである。
当然のことであるが、このデータ処理システムにより遂行される処理は、質量スペクトルの構築を単純化して促進するために、質量スペクトルを構築する前に検出信号のデータを低減する機能を果たす。この処理ステップについてこれからさらに詳しく説明する。
この処理は、好ましくは、検出信号のそれぞれの標本抽出率を低減するためにこのデータ処理システムの別々のチャネルにおいて行われる検出信号のデシメーションを含む。検出信号のそれぞれの標本抽出率は、たとえば、2または4、またはその他の倍率により低減することができる。デシメーション後の結果の検出信号の標本抽出率は、一般的に少なくとも250MHz、好ましくは250MHz〜1GHzの範囲、より好ましくは250MHz〜500MHzの範囲となり得る。好ましくは、デシメーションは、平均ピーク幅について、たとえば、3、5、7、9または11程度のピークあたりデータ・ポイントをもたらす。デシメーションは、デジタル化ステップの後に行われる。デシメーションは、その他の処理ステップと同様に、好ましくは検出信号のそれぞれの処理チャネルのそれぞれにおいて並行して行われる。このデータ処理システムは、好ましくは、デシメーションを行うデシメータまたはデシメーション・モジュールを含む。このデシメータまたはデシメーション・モジュールは、好ましくは、FPGA、GPUまたはCellなどの専用プロセッサ上またはその他の専用デシメーション・ハードウェア上で実現される。デシメーション・モジュールは、好ましくは、任意選択の前置増幅器およびADC後に、しかし閾値モジュールが雑音を除去する前に、検出信号を処理する。適切なデシメーション方法は、以下を含む:多数の連続ポイント(すなわち、デシメーション装置に対する入力値)を加え合わせて結果としてのポイント(すなわち、デシメーション装置の出力値)を形成すること(これは、1つの形式の平均である)、n番目ごとにのみ入力値を保持すること。一般的にデシメーションにおいては、ポイント数を低減する前にデジタル・フィルタ(一般的バンドパス・フィルタ)が信号に適用される。信号中の「スパイク」が当面の問題である場合、これは信頼できる解決方法となり得る(しかしながら、メジアン・フィルタなどのその他の解決方法もある)。
この処理は、閾値を検出信号に加えることにより検出信号から雑音を除去する処理を含む。このデータ処理システムは、好ましくは、雑音を除去する閾値を印加するための雑音閾値または雑音除去モジュールを含む。雑音閾値または雑音除去モジュールは、たとえばFPGA、GPUまたはCellなどの専用プロセッサ上で実現できるが、より好ましくは、デシメーションを行う場合にデシメーションを行うために使用された同一の専用プロセッサを使用する。この専用プロセッサは、好ましくは、飛行中の雑音を除去する閾値を適用するためのものである。
雑音除去のステップの結果として、検出信号中のピークのみが残る(すなわち、背景騒音から突出するピーク)。検出信号は、それぞれ、データ・ポイントの時間的シーケンス(すなわち、過渡信号)を含み、その各ポイントは強度値を有し、これらのポイントがデータの集まりを構成する。閾値は、検出信号から雑音を除く機能を果たす。すなわち、それは、閾値未満の強度値を有するポイントを除去する。除去されたポイントは、データ中においてゼロにより事実上置換される。したがって、それは、この閾値未満でない検出信号のポイントのみを検出信号の併合のために転送する。この方法によりデータの転送および格納のために必要な帯域幅が低減される。
このデータ処理システムにより適用される閾値は、閾値未満の強度値を有する検出信号のポイントを拒絶し、それにより1つ以上の閾値以上の強度値を有する検出信号のポイントのみを使用して質量スペクトルを構築する。この閾値は検出信号の雑音の尺度であり、それによりこの閾値を適用することが雑音フィルタとして働く。この閾値は、1つ以上の閾値を含むことができる。単一の閾値を検出信号のすべてのポイントについて使用することもできるが、しかし、好ましくは、特にTOF適用に関して、複数の閾値を使用する。たとえば、この場合、検出信号の各ポイントまたはポイントのグループをそれ自身の関連閾値を使用して濾過する。すなわち、それは、それに適用されるそれ自身の閾値を有する。したがって、検出信号中のポイントは時系列ポイントであるから、好ましくは、特にTOF適用に関して、閾値は、検出信号中において時間とともに変化する動的な閾値である。たとえば、それは、TOF適用における飛行時間である。
閾値を適用して別々の処理チャネルのそれぞれにおける雑音を除去する。すなわち、それは、検出信号に独立に、好ましくは並行して適用されるようにする。同一または別々の閾値を検出信号のそれぞれに加えることができるが、好ましくは、別々の閾値を検出信号のそれぞれに加える。閾値を第1おおよび第2検出信号に独立に加えることは、より正確な閾値の使用を可能とし、それにより各検出信号からのデータのよりよい使用を可能とする。たとえば、同一の閾値レベルを両方の信号に適用する場合に発生する有益なデータの喪失の確率が低くなり得る。少なくとも、2つの検出信号は相異なる雑音レベルおよび相異なるベースラインを持ち得る相異なる検出器に由来するのであるから、好ましくは、各チャネルのために固有の閾値機能が必要である。閾値適用は、相関ピーク収集も含み得る(すなわち、閾値が各チャネル中の信号に独立に適用されるが、しかし1つのチャネル中の信号にピーク(データ・ポイントのグループにより構成されるピーク)が発見された場合に、データ・ポイントの対応するグループが両方のチャネルにおいて保持される)。
検出信号のために別々の閾値が計算される場合、これらの閾値は並行してまたは順次計算することができるが、好ましくは並行して計算する。閾値は、閾値の適用される検出信号から飛行中に計算され得るか、または1つ以上の先行検出信号から、またはこれまでに構築された1つ以上の質量スペクトルから計算され得る。閾値が閾値の適用される検出信号から飛行中に計算される場合、閾値の計算は、好ましくは、このデータ処理システムの高速処理装置、たとえば、以下においてより詳しく説明されるFGPA,GPUまたはCellにより行う。換言すると、閾値モジュールは、好ましくは上述の高速処理装置上で実現される。閾値が1つ以上の先行検出信号から、またはこれまでに構築された1つ以上の質量スペクトルから計算される場合、閾値の計算は、好ましくは、以下においてより詳しく説明するこのデータ処理システムの計器コンピュータにおいて行われる。
閾値は、好ましくは、特にTOF適用の場合、たとえば種々の時間範囲を有する参照テーブル(LUT)に格納する。閾値は、したがって、単に検出信号をLUTに格納されている閾値と比較することにより適用される。検出信号をLUTに格納されている閾値と比較することは、計算的に単純な処置であり、雑音フィルタとして効果的であることが分かっている。好ましくは各検出信号について別々のLUTを計算して使用する。すなわち、好ましくは各処理チャネルについて別々のLUTを計算する。LUTは、好ましくは、少なくとも閾値が適用されている間、高速処理装置上に常駐する(特に当該高速処理装置上で計算される場合)。LUTは、別のプロセッサ、たとえばCPUコア、たとえば計器コンピュータのCPUコア上で計算し、かつ/または格納することができ(特にその別のプロセッサ上で計算される場合)、かつ、この高速プロセッサにアップロードしてこの高速プロセッサをして閾値を適用せしめることができる。この場合、LUTは、少なくとも当該閾値が適用されている間、この高速処理装置に常駐する。
所与の処理チャネルのために1つのLUTを計算し、そのチャネル中の複数の以降の検出信号を処理するために使用することができる。これは、処理効率の観点から好ましい。それぞれの新しい検出信号について新しいLUTを計算しないからである。別の方法として、特に1つの検出信号(スキャン)から他の信号毎に雑音レベルがかなり変化する場合、各検出信号について新しいLUTを計算して使用することができる。後者の場合、閾値を雑音除去のために適用する高速処理装置上でそれぞれの新しいLUTを計算することが特に好ましい。かかるLUTまたは閾値の飛行中計算は、データが閾値の計算中にキャッシュに格納されることを必要とする。もう1つの方法として、前の(最初の)スキャンからLUTの一般的形状を記憶し、かつ、最初のLUTの構築のために使用したものより少ない個数のポイントに基づいて決定される倍率によりLUT全体の大きさを決めることもできる。後者の方法は、LUTが更新されるまで1つ以上のLUT/スキャン全体をキャッシュに格納することを含むことができる。ある実施形態においては、LUTの動的変化を制限することにより、変動をスキャンする期待最大スキャンを超えないようにし、かつ、2つ(またはそれ以上)のチャネル間の閾値の相対的拡縮を調整することができる。
雑音除去のための閾値を通過する検出信号、すなわち、そのポイントは、好ましくは、たとえば、より効率的なその後の処理(たとえば、ピークの特徴付け)および/またはこのデータ処理システムの別の装置への転送(たとえば、雑音除去を行った高速専用処理装置からこの計器コンピュータの一部などの汎用コンピュータへの転送)のために、このデータ処理システムにより圧縮される。この圧縮ステップは、好ましくは検出信号のそれぞれについて、すなわち、別々のチャネルのそれぞれにおいて行われ、かつ、一般的に検出信号のより高速のさらなる処理および/または転送を可能とすることを目的とする。データの圧縮は、好ましくはデータのフレームへの圧縮を含む。閾値の適用において、それにより識別された雑音ポイントは、一般的にゼロにより置換される。閾値の適用によりデータ中に残されたゼロは、好ましくは圧縮データでは除去され、データの圧縮を可能にする。圧縮されたデータ中に残るデータの位置は、好ましくは、たとえばタイム・スタンプまたはその他の位置的値(たとえば信号中のデータの連続番号)により指示される。好ましくは、各フレームの幅に融通をもたせて、各フレームが最小サイズから最大サイズにわたるサイズを有し、かつ、最小サイズに達した場合にフレーム中にピークが存在しない限り各フレームが最小サイズからなるようにする。このようなピークが存在する場合には、そのフレームは、ピークが終了するまで、当該フレームが上記最大サイズを超えないことを条件として、上記最小サイズを超えて拡張される。これにより、最大サイズに達したときにピークが存在する場合に、このピークのポイントが次のフレームに続くようにする。このデータ圧縮のより詳しい説明および例示は、本出願の後段において行う。本出願において記述する方法によるデータの縮減およびこのデータ処理システム上の縮減データの圧縮は、このデータ処理システム内における高速転送、たとえばFPGA、GPUまたはCellなどの専用飛行中プロセッサから計器コンピュータへの転送およびその後の高速処理を容易にする。
本発明は、好ましくは、閾値の適用による雑音除去のステップに続いて検出信号中のピークの検出および特徴付に進む。雑音除去後にデータが圧縮された場合、データは、好ましくは、ピーク検出および/または特徴付けを行う前に、解凍される。この解凍は、好ましくはゼロのデータ中への再導入を含まないが、ピーク・データは好ましくはフレーム中から抽出される。ピーク検出は、閾値適用後に残ったデータ中の特定のピークを識別するために行われる。このピーク識別は、検出されたピークの特徴付けの前に行われるが、この特徴付けは、以下のステップの一方または好ましくは両方を含み得る:
a)当該ピークの1つ以上の品質係数を生成すること、および
b)たとえば、質量中心決定アルゴリズムを使用して、これらのピークの質量中心を決定すること。
品質係数は、ピークの決定された質量中心が現在または将来信頼できるか否か、さらなる措置、たとえば、別の(たとえば、より精緻な)ピーク検出および/または質量中心決定アルゴリズムを適用すること、または再度ピークを収集すること、すなわち新しい検出信号から収集することが必要であるか否か決定するために使用することができる。好ましくは、ピークの品質係数は、ピークの平滑度および/または形状の評価を含み、また、任意選択的にピークの平滑度および/または形状の期待またはモデル平滑度および/または形状との比較を含む。ピークの検出および特徴付けのさらなる詳細については、後述する。十分に高い品質係数で最終的に収集できないピーク(たとえば、任意選択の再収集後または高度ピーク検出方法の後においても)は、最終併合スペクトルから放棄されるか(たとえば、最終併合スペクトルを形成するために使用されない)または併合スペクトル中に残存するが任意選択的に低品質として標識を付されるかのいずれでもよい。
本発明は、好ましくは、2つ以上の検出信号を整列させた後にそれらを併合する。この整列は、別々のチャネル間の時間遅延を補正するためである。1つ以上の検出信号を時間軸上で一定のオフセットだけ移動する。このオフセットは、較正ステップにおいて決定されているであろう。
較正ステップは、好ましくは、検出信号のピークの時間座標をm/z比に変換するために行われる。この較正は、検出信号を併合して質量スペクトルを構築する前または後に行うことができる。換言すると、TOF適用の場合、本発明は、飛行時間をm/zに変換する検出信号および/または質量スペクトルの較正を含んでいる。較正方法はこの技術において既知であり、本発明において使用することができる。以下においてより詳しく述べるように内部較正および/または外部較正を使用できる。
処理された検出信号をこのデータ処理装置により併合して質量スペクトル、好ましくはハイ・ダイナミック・レンジ(HDR)の質量スペクトルを構築する。かかる質量スペクトルは、本出願においては、併合された質量スペクトルと称する。処理された検出信号は、好ましくは高利得信号および低利得信号を含む。たとえば、検出信号が少なくとも本質的に異なる利得を有する第1および第2検出器により生成されることおよび/または前置増幅器により与えられる異なる利得のためである。本出願の他の場所で述べたように、高利得検出信号は、好ましくは、光子検出器である検出器から由来し、かつ、低利得信号は、好ましくは、荷電粒子検出器である検出器から由来する。特に前述の検出器タイプからの高利得信号および低利得信号の使用は、HDRスペクトルの採集を可能にする。
高利得検出信号および低利得信号を併合して(ハイ・ダイナミック・レンジ)質量スペクトルを形成するステップは、好ましくは、高利得検出信号が飽和してない場合に高利得検出信号を使用して質量スペクトル中のデータ・ポイントの質量スペクトルを構築し、かつ、高利得検出信号が飽和している場合に低利得検出信号を使用して質量スペクトル中のデータ・ポイントの質量スペクトルを構築することを含む。低利得検出信号を使用して質量スペクトルを形成する場合の質量スペクトル中のデータ・ポイントに関して、低利得検出信号は、好ましくは高利得検出信号の低利特検出信号に対する相対的増幅度により拡大される。
併合ステップ中のデータ転送速度は、たとえば、検出信号の質量中心のみを使用して検出信号を併合することにより低減され得る。この場合、検出信号の質量中心強度対のみ併合され得る。
併合することは、十分に高い品質係数を有するピークのみを併合することを含み得る。低すぎる品質係数のピークについては、十分に高い品質係数が達成された後に任意選択的にそれらを併合して質量スペクトルを構築することとし、品質係数を改善するために高度の検出および/またはピークの再収集を施すこともできる。実際には、1つの検出信号のみ、十分に高い品質係数を有するピークを含む必要がある。したがって、好ましくは、所与のピークについて、そのピークの最高品質係数がそれ自身十分高いことを条件として、当該ピークの最高品質係数を有する信号のみを使用して併合スペクトルを得る。
各チャネルについて、2つ以上の、好ましくは多数の、そのチャネルにおいて処理された検出信号を合計してから、別々のチャネルからの検出信号を併合して最終質量スペクトルを形成することができる。検出信号の合計は、データ処理の任意の適切な時点において行うことができる。たとえば、検出信号の合計は、デシメーション後に、たとえば、本出願において記述された高速プロセッサ上において、雑音除去より前に行うことができる。すなわち、これにより、1つの雑音除去ステップが複数の検出信号の合計に対してなされるようにする。他の例では、処理ステップが各信号について行われた後に、しかし、各チャネルからの信号を併合して併合質量スペクトルを形成する前に、複数の処理された検出信号を合計することができる。
別の方法として、または追加として、2つ以上、好ましくは多数の併合された質量スペクトルを合計して最終質量スペクトルを形成することができる。
本出願における質量スペクトルに対する言及は、その範囲中に、たとえばTOF質量スペクトロメータの場合の時間領域、周波数領域などのm/z以外の領域を有するがm/zに関係づけられるその他のスペクトルに対する言及を含む。
要するに、このデータ処理システムによる処理は、好ましくは、以下の処理ステップを含み得る:
別々のチャネルにおける検出信号のデジタル化、
検出信号が処理されるデータ処理システムの各別々のチャネル中において検出信号に参照テーブル(LUT)を適用すること(ただし、LUTは、雑音レベルを表す閾値を定義する)
たとえば、FPGA、GPUまたはCellなどの高速専用プロセッサを使用してLUT中の閾値を適用することにより別々のチャネル中の検出信号から雑音を除去すること(この場合、閾値通過閾値以上の検出信号のポイントのみ転送される)
たとえば高速プロセッサを使用して閾値を通過した検出信号のポイントを圧縮し、かつ、圧縮したポイントを計器コンピュータに転送すること
検出信号のポイントを計器コンピュータ上で解凍し、かつ、検出信号中のピークを検出すること
検出されたピークの質量中心を計器コンピュータを使用して見出すこと
検出されたピークの1つ以上の品質係数を決定すること、任意選択のステップとしてこれらの品質係数を使用してさらなるどれかのデータ処理ステップまたはさらなるデータ収集ステップを行うか決定すること(すなわち、これらの品質係数をデータ依存決定のために使用する)、および
たとえば、較正中に決定された値を使用してこれらの検出信号を整列させる。これらの処理ステップに続くのは、処理された検出信号を併合して質量スペクトルを構築するステップである。
このデータ処理システムは、適切なデータ処理装置を含み得る少なくとも1つのデータ処置装置を含む。このデータ処理システムは、好ましくは、特に飛行中検出システムからの検出信号の高速処理のための、少なくとも1つの専用処理装置を含む。専用処理装置は、一般的に速度が重視されるステップのためにのみ必要であり、かつ/またはそのために使用される。そのようなステップは、データ圧縮ステップまでであり、それらを任意選択的に含んでよい。好ましくは、上記の少なくとも1つの専用プロセッサは、少なくともデシメーションおよび閾値を使用する雑音濾過を行うように設計される。それ以降のステップは、オフラインを含めて随時効果的に行うことができる(システムにおいてデータ依存収集決定のために情報が要求されない限り)。このデータ処理システムの専用処理装置は、特に、そこにおいて並行計算を行うための2つ以上のチャネルを有する高速処理装置である。この専用処理装置の主な特徴は、それが要求される計算ステップを必要な(デシメーションされた)データ転送速度で行うことが可能でなければならないことである。かかる高速専用処理装置の好ましい例は、以下を含む:デジタル受信シグナル・プロセッサ(DRSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA),デジタル・シグナル・プロセッサ(DSP)、グラフィックス・プロセッシング・ユニット(GPU)、セル広帯域エンジン・プロセッサ(Cell)等。好ましくは、このデータ処理システムは、FPGA、GPUおよびCellからなるグループから選択された専用処理装置を含む。このデータ処理システムは、たとえば、FPGA、GPUおよびCellのグループから選択された2つ以上の専用データ処理装置を含むことができ、かつ、これらの2つ以上の専用データ処理装置は同じ装置(たとえば、2つのFPGA)または異なる装置(たとえば、FPGAおよびGPU)とすることができる。しかし、このデータ処理システムにおいて2つ以上のかかる専用処理装置を使用することは、それほど好ましくない。これらの装置間のバス接続がデータのボトルネックとなる可能性があり、また、一般的に単一のかかる装置が必要なデータ処理を行うことができるからである。したがって、このデータ処理システムは、好ましくは、FPGA、GPUおよびCellのグループから選択された装置などの1つの専用データ処理装置を有する。上記の少なくとも1つの専用処理装置は、好ましくは飛行中処理または計算のために使用する。
上記の少なくとも1つの専用処理装置は、検出信号の一部の処理を行うこと(すなわち、処理ステップのすべてではなく一部)または場合によっては検出信号の処理のすべてを行うこともできる。上記の少なくとも1つの専用処理装置は、好ましくは、少なくとも閾値の適用により検出信号から雑音を除去するステップのために使用される。上述したように、専用処理装置は、一般的に、スピードが重視されるステップのためにのみ必要であり、かつ/または使用される。そのようなステップは、データ圧縮ステップまでのステップであり、任意選択的にそれらを含んでよい。これらのステップは、閾値の適用により検出信号から雑音を除去するステップを含む。上記の少なくとも1つの専用処理装置は、したがってさらに、好ましくは、本出願において記述される少なくとも次のデータ処理ステップのために使用される:
・検出信号のデシメーション
・閾値の適用による検出信号からの雑音の除去
・雑音を除去した後の検出信号の圧縮。
上記の少なくとも1つの専用処理装置は、以下のステップの1つ以上を含むその他のデータ処理ステップのためにも使用することができる:
・雑音を除去するための閾値を計算すること
・検出信号中のピークを特徴付けること(たとえば、雑音除去後)
・検出信号を併合して質量スペクトルを構築すること。
雑音除去のための閾値を計算するステップは、閾値を飛行中に計算する必要がある場合、たとえば、性能上の理由から閾値を定義する新しいLUTが各検出信号について必要である場合に、好ましくは専用処理装置上で行われる。その他の場合、閾値/LUTは、好ましくは、別の、好ましくは多目的コンピュータ、たとえば、マルチコア・プロセッサ、CPUまたは埋め込みPC上で計算され(これは、計器コンピュータのプロセッサでよい)、かつ、閾値を検出信号に適用するためにFPGA、GPUまたはCellなどの専用プロセッサにアップロードされる。
検出信号中のピークを特徴付けるステップおよび/または検出信号を併合して質量スペクトルを構築するステップも専用処理装置上で遂行できるが、しかし好ましくは、検出信号が専用プロセッサにより部分的に処理され、そこから転送された後に、汎用コンピュータ、たとえば、マルチコア・プロセッサ、CPUまたは埋め込みPC上で計算する(これは、計器コンピュータまたはその一部でよい)。
このデータ処理システムは、好ましくは、一般的に計器コンピュータと呼ばれるコンピュータを含む。計器コンピュータは、一般的に汎用コンピュータ、たとえば、マルチコア・プロセッサ、CPUまたは埋め込みPCを含む。計器コンピュータは、たとえばデータ処理を加速するためにGPUまたはCellなどの専用プロセッサを含んでもよい。計器コンピュータは、ピークの特徴付けおよび処理された検出信号の併合による質量スペクトルの構築など、閾値による雑音除去後のデータ処理ステップの一部を行い得る。
計器コンピュータは、この計器、すなわち質量スペクトロメータの1つ以上の運転パラメータ、たとえば、イオン分離ウィンドウの幅、イオン入射時間、衝突セルを使用する場合の衝突エネルギー、ならびに自己監視、たとえば検出器再較正などの機能を制御することができる。計器コンピュータは、好ましくは、データ依存決定を行ってその後のデータ収集すなわち検出信号の収集のための質量スペクトロメータの運転パラメータをデータ収集の評価、たとえば、質量スペクトル中のピーク品質の評価に基づいて変更する。計算されたピーク品質係数は、かかる評価のために使用できる。たとえば、データ処理システムにより評価された解像不十分なピークは、今後の収集においてよりよい品質ピークまたはスペクトル(たとえば、より高い解像度)を収集するために、計器コンピュータをして質量スペクトロメータの運転パラメータを変更せしめることができる。別の例では、計器コンピュータは、MS/MS収集を行う時期を決定するために、LC−MS実験においてクロマトグラフ・ピークのプロフィールを評価することができる。計器コンピュータにより行うことができるタイプのデータ依存決定のその他の例は、国際公開第2009/138207号パンフレットおよび国際公開第2008/025014号パンフレットにおいて開示されている。典型的なデータ依存決定は、検出された質量に基づいて以降の実験において特定の質量の分離および/またはフラグメンテーションを開始するか否か決定することである。
計器コンピュータを使用することにより、たとえば、1つ以上のデータ依存決定(たとえば、処理された検出信号および/または質量スペクトルにおけるピークの評価に基づく1つ以上のデータ依存決定)の結果として、検出システムの1つ以上の運転パラメータを制御することができる。たとえば、計器コンピュータは、検出システムの1つ以上の検出器の利得またはそれらから発生される検出信号を制御することができる。たとえば、検出器の運転パラメータが変更可能であるか、または検出信号の前置増幅の量が変更可能である。たとえば、検出器の利得またはその信号は、その検出器により生成される検出信号において飽和状態が検出された場合に、低減され得る。計器コンピュータを使用して、たとえば、フィードバック・プロセスによる利得制御を実現することができる。1つのかかる実施形態では、1つの実験試行においてこのデータ処理システムにより1つ以上の検出器から収集された検出信号を次の実験試行において利用して1つ以上の検出器の利得を制御することができる。
特に、検出信号の利得または検出器は、次の方法により制御することができる:
・先行検出信号または質量スペクトルを使用して強い(または弱い)ピーク、たとえば所定の閾値より上の(または下の)ピークが到着する時期を決定する。続いて以下の1つ以上の方法を使用できる:
a)強い(弱い)ピークが存在している(すなわち検出されている)間、検出器の利得を下方に(上方に)調整すること。強いピークの場合に利得を低減することは、特に光子検出器の場合に検出器の寿命を引き延ばすこともできる。
b)強い(または弱い)ピークが存在する(すなわち検出されている)間、好ましくは1つ以上の以下の方法により、検出システムに到着するイオンの個数または到着イオンから検出システムのSEMにおいて生成される二次電子の個数を調整すること:
i)到着イオンまたは生成される二次電子の集束を調整すること
ii)イオン源からの到着イオンの個数を調整すること
iii)SEMに関する利得を調整すること。
・LC−MS実験の場合、クロマトグラフ・ピークのプロフィールを監視することにより一定の質量のために必要な増幅器利得を決定すること、および決定した必要な増幅器利得に基づいて1つ以上の検出器に関する利得を調整すること。
処理された検出信号および/またはデータ処理システムにより構築された質量スペクトルおよび/またはそれらから導かれたデータ(たとえば定量化情報、特定された(かつ定量化されてもよい)分子(たとえば代謝産物またはペプチド/タンパク質)等など)は、データ・システム、すなわち、質量データ格納システムまたは記憶装置(たとえばハード・ディスク・ドライブ、テープ等または光ディスクなどの磁気記憶、これらは、当然のことであるが、大量のデータを格納することができる)に転送することができる。上記データ・システムにより保持される検出信号および/または質量スペクトルおよび/または派生データは、他のプログラムによりアクセスされ、たとえば、表示、スペクトル操作および/またはコンピュータ・プログラムによるさらなるスペクトル処理などのスペクトル出力を可能にする。
このシステムは、好ましくは、さらに、質量スペクトルおよび/または派生データを出力するために、たとえばビデオ表示装置(VDU)および/またはプリンタのような出力装置を含む。この方法は、好ましくは、さらにたとえばVDUおよび/またはプリンタを使用して質量スペクトルを出力するステップを含む。
当然のことであるが、このシステムは、任意選択により、雑音除去ステップを行わずにおよび必要に応じてデジタル化後の1つ以上のその他の処理ステップなしに運用しなければならないことがある。このような場合、雑音除去のための閾値、たとえばLUT中に保持される閾値は、たとえばゼロまたはその他の値、たとえば、ゼロ・オフセットにおける雑音のためにわずかに負の値に設定して、たとえば計器コンピュータ上においてすべての検出信号を処理するために、検出信号のすべてのデータ・ポイントを通過させることができる。システムのかかる運用はフル・プロファイル運用と呼ばれ、フル・プロファイル・スペクトルを収集するために使用される。この場合、検出システムからの検出信号のすべてのデジタル化ポイントが検出信号の併合を行うデータ処理装置たとえば計器コンピュータに転送される。より一般的には、このシステムは、縮減プロファイル運用で使用されて縮減プロファイル・スペクトルを収集する。この場合、閾値を利用する雑音除去が行われ、したがって縮減されたプロファイル・データが検出信号の併合を行うデータ処理装置に転送される。
本発明を完全に理解するために、これから添付図面を参照しつつ本発明の種々の非制限的例示について説明する。図面の内容は、次のとおりである:
図1は、本発明によるデータ収集システムの一部を形成する検出システムの実施形態を図式的に示す。 図1Aは、第1検出チャネルにおける差動信号検出の実施形態を図式的に示す。 図1Bは、第2検出チャネルにおける差動信号検出の実施形態を図式的に示す。 図2は、データ処理ステップの例を含む本発明の1つの実施形態の図式的表現を示す。 図3Aは、図2の閾値計算器90より行われるステップの好ましいシーケンスの図式的フロー・チャートを示す。 図3Bは、雑音閾値を決定するために使用される検出信号上のウィンドウおよび閾値の位置を示す。 図3Cは、検出信号の一部分および複数のウィンドウならびに雑音閾値を決定するために使用されるそれらの対応LUT入力を示す。 図4は、図2の雑音除去・圧縮モジュール80において行われるステップのシーケンスの図式的フロー・チャートを示す。 図5は、図2のピーク特徴付けモジュール100において行われる処理の図式的フロー・チャートを示す。 図6は、ピーク特徴付けの1つの方法を図式的に示す。 図6Aは、ピークおよび閾値より下への低下の回数によりピーク平滑度を決定するための閾値を示す。 図7は、図2のスペクトル構築モジュール110により行われるステップの図式的フロー・チャートを示す。 図7Aは、低利得検出器および高利得検出器の検出器応答を示す。 図8は、図7の高度ピーク検出ステージ116の処理の図式的フロー・チャートを示す。 データ・ポイントの集まりの図解例である。 図9は、図2の決定モジュール140により行われ得る決定の図式的フロー・チャートを示す。
図1を参照する。本発明による使用のための検出システムの1つの好ましい実施形態が図式的に示されている。検出システム1は、マイクロチャネル・プレート(MCP)2を含んでいる。それは、二次電子生成装置として働き、かつ、MCP 2に入射する到来イオン(この例では+荷電イオン)に応答して二次電子(e-)を生成する。イオンは、質量スペクトロメータの質量分析器における分離後に到着する。この例おけるMCPは、その通常の蛍光スクリーンをもたないHamamatsu F2222−21である。MCP 2は、真空環境7、たとえば、TOF質量スペクトロメータの真空環境に配置される。運用中に二次電子を放射するMCP 2の後側は、蛍光スクリーン4(モデルEl−Mul E36)の形態のシンチレータに面している。これは、電子による電子衝撃に応答して公称波長380nmの光子を放射する。本出願において、用語、構成部品の前部または前側は、到来イオンに近い側(すなわち、上流側)を意味し、構成部品の後部または後側は到来イオンから遠い側(すなわち、下流側)を意味する。蛍光スクリーン4は、その後側において蛍光物質を含む厚さ1〜2 mmのB270ガラスまたは石英ブロックの形態の基板6により支持されており、したがってMCP 2に対面している。石英基板6は、380 nmの光子に対して透明である。一方、蛍光スクリーン4は、MCP 2に面するその前側に、導電物質、この場合は金属の薄い電荷検出層8を備えている。MCP 2の後側と金属層8の前側の間の距離は、この実施形態では13.5 mmである。蛍光スクリーン4と金属層8を組み合わせた厚さは、約10μmである。電荷検出層8は、好ましくは、相当な電気伝導度を有するべきであるので、金属層が理想的である。それは、好ましくは、電子の蛍光スクリーンへの少なくともある程度の透過を許容するべきであり、かつ、それは、蛍光スクリーンにおいて生成された光子を理想的に反射するべきである。電荷検出層8のその他の特性は、それが蛍光スクリーン上に塗布可能であるべきことおよび真空中で蒸発しないこと(すなわち、真空適合であること)を含む。この実施形態では、金属電荷検出層8は、厚さ50nmのアルミニウム層である。これは、二次電子が通り抜けて蛍光体4に到達できるように透過性を有するために十分薄い。金属電荷検出層8は、蛍光体上の電荷蓄積を保護し、かつ、放散すること、および戻ってきた光子を光子検出器に向け直す働きをする。電荷検出層8は、本発明においては、電荷検出電極または電荷収集子としても機能し、したがって検出システムの第1検出器として働く。
基板6は、この例では、MCP 2、金属層8および蛍光体などの真空動作可能構成要素に配置される真空環境7と光子検出器12およびデータ処理システム20が以下において述べるように配置される大気環境9の間の隔離板として都合よく使用される。たとえば、基板6は、真空動作可能な構成要素が配置される真空チャンバ(示されていない)の壁10内に実装できる。
蛍光スクリーン4およびその基板6の下流に、光電子増倍管(PMT)12の形態の光子検出器が配置されている。これは、本実施形態では、Hamamatsu のモデル番号R9880U−110である。基板6の後側は、PMT 12の前側から5 mmの距離だけ離隔されている。PMT 12は、検出システムの第2検出器を形成する。当然のことであるが、PMT 12は、電荷検出電極8より本質的に高い利得、たとえば、この場合、3,000〜5,000倍の利得の検出器である。より一般的には、高い方の利得の検出器は、低い方の利得の検出器の利得より1,000〜100,000(105)高い利得を有する場合がある。これは、次のとおり導かれる。この例における蛍光体は、運動エネルギーに依存して1〜10の増幅率を有する。この例におけるPMTは、通常、106の利得で動作するが、しかしこの検出器の例では、1,000〜10,000の利得で動作する。換言すると、蛍光体の前の1つの電子がPMTの後の1,000〜100,000個の電子に変換される。他の実施形態では、高い方の利得の検出器は、低い方の利得の検出器の利得より、たとえば、1,000〜1,000,000または10,000,000倍まで、またはそれ以上の高い利得を有する場合がある。
それは、また、検出器8および12の飽和ベルがPMT検出器12(それは、一般的に検出器8の場合よりも検出システムに到着するイオンの低いレベルで飽和する)と異なる場合である。
動作時、この例ではプラスに荷電されている到着イオン(すなわち、この装置は、プラス・イオン検出モードにある)がMCP 2に入射される。しかし、当然のことであるが、種々の構成要素上で種々の電圧を使用することにより、この装置はマイナスに荷電されている到来イオンを検出するように設定することができる。TOF質量分析などの典型的な応用において、到着イオンは、時間の関数としてのイオン・ビームの形態で到着する。すなわち、イオンの流れは時間の関数として変化する。MCP 2の前(または入射)側に−5kVの負電圧のバイアスを加えて静電荷を有する到着イオンを加速する。MCP 2の後側に上記より低い−3.7kVの負電圧のバイアスを加えてMCPの前側と後側の電位差(PD)が1.3kVとなるようにする。MCP 2により生成される二次電子(e-)がMCPの後側から放射される。MCP 2は、約1000倍のイオンから電子への転換率を有する。すなわち、それにより各入射イオンは、平均して約1000個の二次電子を生成する。この例のような正イオン検出モードでは、金属検出層8が地電位に保たれるので、MCP 2と層8の間のPDは3.7kVである。金属検知層8を通過する二次電子により誘起された金属検知層8における電荷の変化が捕捉され、データ処理システム20の第1入力チャネル(Ch1)に送られる検出信号22を生成する。
本発明の構成は、MCP 2に入射した到来イオン・ビームのほぼすべてを利用して二次電子を生成することができる。これらの二次電子は、金属検知層8を貫通し、蛍光スクリーン4に衝突し、光子を生成するのに十分なエネルギーを有する。生成された光子は、下流に移動し、金属検知層8からの反射により助けられ、PMT 12により検出されることとなる。その結果として、二次電子が検出層8により検出され、また、それにより信号がデータ処理システム20のチャネルCh1に渡される。本発明の構成は、MCP 2からの二次電子のほとんどすべてを使用して蛍光体4から光子を生成することができる。その後、光子のほとんどすべてがPMT 12により検出され得る。PMT 12から出力された検出信号24は、データ処理システム20の第2チャネル(Ch2)の入力に供給される。
要約すると、データ処理システム20は、2チャネルの前置増幅器13、または2つの前置増幅器(それぞれ別の検出チャネル用の増幅器)を有し、検出信号22、24は、それぞれ、別々のチャネルCh1およびCh2の前置増幅器において前置増幅される。2チャネル前置増幅器13、または2つの前置増幅器の後に2チャネルのデジタイザ(ADC)14、または2つのADC(それぞれ別の検出チャネル用のADC)が続く。2つの前置増幅器または2つのADCを使用する場合、これらは、一般的に1つのPCBまたはさらに(ペアとして)1つのチップ(すなわち、2つの前置増幅器を含む1つの構成部品および/または2つのADCを含む1つの構成部品)に集積される。1つの好ましい設計は、2つの別々の前置増幅器(それらは一般的にやや異なる故)およびPCB上の1つの2チャネルADCを有することである。前置増幅器13は、検出器8および12のそれぞれとデジタイザ14の間で使用され、検出信号22、24の利得を調整してデジタイザ14の全範囲を利用できるようにする。前置増幅器は、1〜10の利得を有する。この例における前置増幅器利得は、高利得信号24と低利得信号22の両方について1に設定される。増幅された信号は、それが転送中に雑音により容易に劣化され得ないことを意味する。前置増幅器およびデジタイザが直接に接続されている実施形態では、これらの信号が増幅を必要としないことがあり得る。
この例におけるデジタイザ14は、2つのチャネルで作動されるGage Cobra 2GS/sデジタイザであり、Ch1およびCh2は1GS/sで動作する。Ch1およびCh2のそれぞれは、別々の検出器を標本抽出する。たとえば、Ch1は電荷検出器8を標本抽出し、Ch2はPMT光子検出器12を標本抽出する。したがって、Ch1は低利得検出チャネルを提供し、Ch2は高利得検出チャネルを提供する。
前置増幅器13およびデジタイザ14は、装置15として大まかに示されている2チャネルデータ処理装置15も含むデータ処理システム20の一部を形成する。データ処理装置15は、検出信号について雑音除去および検出信号を最終的に併合してハイ・ダイナミック・レンジの質量スペクトルを形成することなどのデータ処理ステップを行う。データ処理装置15は、質量スペクトロメータおよび/または検出システムの構成要素を制御することができる計器コンピュータを含む。図1において例示されているMCP 2およびPMT 12に加えられる電圧は、データ処理システム、すなわちその計器コンピュータにより適切なコントローラ(示されていない)経由で制御される。この方法により、検出器8および12上の利得は、独立に制御され得る。データ処理システム20およびそのデータ処理装置15について、以下において他の図を参照してさらに詳しく説明する。
装置15の計器コンピュータ15は、到来イオンの源、たとえば質量スペクトロメータのイオン源のコントローラに接続し(この接続は示されていない)、到来イオンの流れおよびイオンのエネルギーを制御できるようにしておいてもよい。当然のことであるが、装置15の計器コンピュータは、たとえば電圧制御を必要とするような構成要素を制御するために、質量スペクトロメータおよび/または検出システムの他の構成要素に動作可能なように接続しておいてもよい。
構築された質量スペクトルおよび/または選択された未処理、部分処理済みまたは処理済みの検出信号は、データ処理システム20から、たとえば、VDU画面17経由で出力して、収集されたおよび/または処理されたデータまたはスペクトルをグラフィック表示すること、および情報格納システム(たとえば、コンピュータ利用ファイルまたはデータベース)に一般的に出力することができる。
検出器から前置増幅器およびデジタイザへの検出信号転送の好ましい方法は、信号振幅倍増の利益を与える差動捕捉を含む。図1Aは、かかる差動捕捉の実施形態および第1検出信号を電荷収集/MCPステージにおいて実現し、かつ、ADCのチャネル1(Ch1)に転送できる方法を示す。金属検出層8に入射する各電子は、MCP 2の後側(すなわち下流)から放射している。したがって、検出層8およびMCP 2の後側のそれぞれからの信号は、差動検出にとって理想的に適する相補的対を形成する。したがって、検出層8およびMCP 2の後側のそれぞれからの信号は、図1Aに示すように差動増幅器に入力される。信号の不平衡は、図示されているコンデンサC1およびC2の適切な選択または信号経路中(たとえば点線内のどこか)のその他の構成要素(示されていない)により補償することができる。同様に、差動信号は、図1Bに示すように光電子増倍管(または任意のSEM)の最終ダイノードおよびアノードから捕捉することもできる。信号の平衡維持は、ここでも、たとえば、抵抗器R1およびR2により(他の考慮事項により禁止されない限り−供給電圧Uは別の点において注入することもできる)、コンデンサC1およびC2によりおよび/または信号経路のさらなる下流において行うことができる。分離のために誘導も使用することもできる。
次に本発明のデータ処理ステージの概要について図2を参照しつつ説明する。本発明の各データ処理ステージのさらなる詳細は、その後に図3〜9を参照して説明する。図2を参照する。データ処理システムのデータ処理ステップの例を含む本発明の1つの実施形態の図式的表現が示されている。到着イオンを検出するTOF検出システム30が示されている。このシステムは、2つの検出器32、34を含んでいる。検出システム30は、図1に示した検出システムと同じタイプの検出システムでもよく、または2つの検出器、たとえば、2つのMCP検出器または2つのPMT検出器を使用する他の適切な検出システムでもよい。検出器32、34は、少なくとも異なる飽和レベルおよび/または異なる利得を有することにおいて互いに異なることが好ましい。TOF質量分析器から検出システム30に到来する1つ以上のイオンに応答して、検出器32、34は、それぞれ、別々のチャネルCH1およびCH2にそれぞれ検出信号36、38を出力する。当然のことであるが、このシステムは、TOF質量分析器以外、たとえば別のタイプの質量分析器から到来するイオンを検出するためにも使用することができる。好ましくは、検出器32、34は相異なる利得を有し、生成される検出信号36、38が、この場合には必要ではないが、次の前置増幅器の前においてさえ異なる利得を有するようにする。これらの検出器は、相異なる感度の検出チャネルを可能にするように設けられる。これは、より感度の高い検出器の合計増幅チェーン(前置増幅器の前および後)が、より低い感度の検出器のチェーンに比し、到来イオンあたりより多くの検出「信号」(またはビット)をもたらすことを意味する。この場合の検出器34は、好ましくは、高利得検出器であり、検出器32は低利得検出器である。特に、これらは、それぞれ、図1に関連して図示し、説明した高利得および低利得検出器である。しかし、この検出システムにおける所与のイオン到着率の場合に、高利得検出器34は、低利得検出器32より前に飽和する。検出器の飽和は、その応答がもはや直線的でないことを意味する。
検出信号36、38は、別々のチャネルCH1およびCH2中の検出器32、34からデータ処理システム40に出力される。後者は、チャネルCH1およびCH2中において信号36、38を並行して独立に処理する2チャネル処理システムである。検出信号36、38は、当初、データ処理システムの2チャネル前置増幅器50のそれぞれの入力に出力され、したがって信号36、38は前置増幅のために別々のチャネルCH1およびCH2に残る。この前置増幅器は、したがって、この構成では検出器の近くに置かれ、かつ、次のADCの全範囲が利用できるように利得を調整する。信号36、38は、好ましくは、相異なる利得により前置増幅される。この例では、検出信号36は検出信号38に対して低利得であるが、しかし別の例では検出信号36は検出信号38に対して高利得とすることができる。各ADCチャネルの差動入力をより効率的な方法で利用する前置増幅器の後位に1つの出力極性が存在する。
増幅された検出信号36、38は、次に増幅器50から、それぞれの出力を経由して2チャネル・アナログ−デジタル・コンバータ(ADC)60のそれぞれの入力に別々に出力され、したがって信号36、38はデジタル化のために別々のチャネルCH1およびCH2に残る。ADC60は、2GS/sデジタイザであり、2つのチャネルCH1およびCH2は1GS/sで動作する。
デジタル化された検出信号36、38は、次にADC 60からそれぞれの出力を経由してデシメータ70のそれぞれの入力に別々に出力される。デシメータは、好ましくはFPGA(示されている)のようなプロセッサまたは本出願において記述されているその他の専用プロセッサ上で実現する。したがって、他の実施形態では、FPGAの代わりに、たとえばGPUまたはCellのような飛行中並行計算のための代替専用プロセッサを使用できる。デシメータ70は、必要に応じて、検出信号36、38の標本抽出率を一般的に1/2または1/4に低減する。
デシメーションの後、信号36、38は、引き続き別々に処理される。次のステージは、雑音除去・圧縮モジュール80により示されている雑音除去およびフレームへの圧縮である。雑音除去および圧縮は、好ましくはデシメータ70を実現するために使用される専用プロセッサ(たとえば、FPGA等)上で実現することが好ましいが、雑音消去および圧縮のための専用プロセッサとは別の専用デシメーション・ハードウェアを使用することもあるので、これに限る必要はない。雑音除去が行われた後にフレームへの圧縮が続く。各検出信号36、38に施される雑音除去は、それに対する閾値関数の適用を含む。この閾値関数は、参照テーブル(LUT)の形式である。雑音除去は、別々の閾値関数の検出信号36、38に対する適用を含む。したがって、チャネルCH1およびCH2のそれぞれに対して別々のLUTが用意される。雑音除去・圧縮モジュール80に対し、閾値計算器90により作成されたLUTが与えられる。閾値計算器90は、デシメータ70および雑音除去・圧縮モジュール80を実現するために使用されることが好ましいプロセッサと同一の専用プロセッサ上に実現することができる。これは、LUTを飛行中に作成する必要がある場合、特に毎回、すなわちそれぞれの新しい検出信号のために新しいLUTを作成する必要がある場合に、特にあてはまる。このような場合、各チャネルのための別々のLUTの作成のために、デシメーションされた検出信号36、38は、点線で示されている別々のチャネルCH1およびCH2経由で専用プロセッサ上の閾値計算器90に与えられる。その結果として作成されたLUTは、雑音除去のために別々のチャネルCH1およびCH2経由で専用プロセッサ上に常駐する。デシメータ70、雑音除去モジュール80および閾値計算器90の2つ以上を別々の専用プロセッサ(たとえば、別のFPGA、GPU、および/またはCell等)上で実現することは可能であるが、これは、技術的な見地から好ましくない。別々のプロセッサを接続するバスが帯域幅上の隘路となる可能性があるからである。好ましくは、閾値計算器90は、専用プロセッサではなく、一般的にたとえばマルチコア・プロセッサ、CPUまたは埋め込みPCなどの汎用コンピュータを含む計器コンピュータ(IC)上に実現する。IC上で作成されたLUT群、すなわち、各チャネルCH1およびCH2のための別々のLUTは、次に専用プロセッサ上にアップロードされて常駐し、雑音除去モジュール80によりアクセスされる。これは、特に、LUTが最初に計算され、次に複数の以降の検出信号について雑音除去に使用される場合に当てはまる。IC上で作成されるLUTは、検出信号または質量スペクトルから最初に計算される。閾値およびLUTの計算のステップおよび雑音除去および圧縮のステップについて、以下においてさらに詳しく説明する。
検出信号36、38からの雑音除去およびそれらのフレームへの圧縮の後、信号36、38は、引き続き別々のチャネルCH1およびCH2において処理される。雑音除去および圧縮に続いて、処理は、好ましくは、ピーク特徴付けモジュール100による別々のチャネルCH1およびCH2における検出信号36、38中のピークの特徴付けを含む。ピーク特徴付けモジュール100の動作は、一般的に2つのチャネルについて異なる。ピーク特徴付けは、好ましくは計器コンピュータ(IC)上で実現するが、しかし一部の実施形態では専用プロセッサ上で実現されることがある(その場合には、好ましくは、たとえばデシメーション、雑音除去、圧縮、および/または閾値計算の先行ステップについて使用したものと同一専用プロセッサ上)。ピーク特徴付けは、好ましくはピークの1つ以上の品質係数および質量中心の計算を含む。ピーク特徴付けについて以下においてさらに詳しく説明する。
ピーク特徴付けの後、その結果として処理された検出信号36、38のそれぞれは、好ましくは質量中心強度対として、別々のチャネルCH1およびCH2経由でスペクトル構築モジュール110に転送される。スペクトル構築モジュール110は、処理済み検出信号36、38の単一併合質量スペクトル(好ましくはハイ・ダイナミック・レンジの)への併合を行う。この方法により得た複数の併合質量スペクトルを合計して最終質量スペクトルを作成することができる。スペクトル構築モジュール110は、好ましくは計器コンピュータ(IC)上に実現するが、しかし一部の実施形態では専用プロセッサ上に実現することもあり得る(その場合には、好ましくは、たとえばデシメーション、雑音除去、圧縮、および/または閾値計算の先行ステップについて使用したものと同一専用プロセッサ上)。各チャネルCH1およびCH2中の複数の検出信号36、38を合計してから処理された検出信号36、38の併合を行うこともできる。かかる合計は、デシメーションと検出信号の併合の間の任意の処理ステージで行うことができる。かかる合計を行う場合、それは、好ましくは計器コンピュータ(IC)上に実現するが、しかし一部の実施形態では専用プロセッサ上に実現することもあり得る(その場合には、好ましくは、たとえばデシメーション、雑音除去、圧縮、および/または閾値計算の先行ステップについて使用したものと同一専用プロセッサ上)。スペクトル構築モジュール110および処理済み検出信号36、38の併合に関するステップのさらなる詳細について、以下において説明する。
併合された質量スペクトルは、たとえばICおよび/または他のコンピュータによる後のアクセスのために、ハードディスクまたはRAMなどのデータ・システム120に格納される。ICは、複数のデータ依存決定モジュール(たとえば、130、140)を含む。これらのモジュールは、処理された検出信号および/または併合された質量スペクトルの評価に基づく決定を下し、かつ、これらの決定に基づいて質量スペクトロメータの1つ以上のパラメータを計測器制御モジュール150経由で制御する。たとえば、データ依存決定モジュール130は、さらなる化学的情報の取得を可能にするパラメータを制御できる。この制御は、以下などを含む:指定ウィンドウ内のm/z値を有する一連のイオンをそれより広いm/zを有するイオンのグループから分離する質量分析器のイオン分離ウィンドウおよび幅の制御、質量分析器へのイオン入射時間の制御、および/または衝突セル(それが存在する)の衝突エネルギーおよび/またはフラグメンテーション方法の選択の制御(衝突セルにおいて2つ以上の選択が可能である場合、たとえば、CID、HCD、ETD、IRMPD)。データ依存決定モジュール140は、たとえば、次回検出信号の収集のためのパラメータ(たとえば、解像不良のピークを次のスペクトルにおいてより高い品質で収集することを可能にする)を制御することができる。モジュール140は、ピーク特徴付けモジュール100により導かれたピークに関する品質係数の評価を使用することができる。モジュール130、140は、たとえば検出信号中に飽和が検出された場合の検出器再較正などの自己監視機能も果たすことができる。モジュール130、140、150は、好ましくは計器コンピュータ(IC)上に実現する。
次に、データ処理ステップについてさらに詳しく説明する。
図3Aを参照する。図2の閾値計算器90により行われるステップの好ましいシーケンスの図式的フロー・チャートが示されている。閾値計算子90は、雑音閾値を自動的に決定する。各検出信号について別々の雑音閾値が計算され、したがって図2の各処理チャネルCH1およびCH2において別々の雑音閾値が計算される。この閾値は、次に図2に示す雑音除去(すなわちピーク検出)・圧縮モジュール80により使用される。このモジュールは、閾値より下のポイントを除去し、閾値より下でないポイントを保持する。後者は、次にピークとして認識され、続いてm/z値などにより標識される。この雑音閾値は、国際公開第2005/031791号パンフレットより開示されている方法により決定できる。TOFスペクトルのベースラインは必ずしも一定ではなく、これを考慮すると単一の閾値は一般的に十分ではない。雑音閾値は、好ましくは、検出信号について次の方法により決定される:
1.検出信号を重複ウィンドウの個数、nで除する(ここでnは少なくとも2であり、また、nは、したがって、一般的に参照テーブル(LUT)の入力の個数である)
2.ウィンドウの1つを現在のウィンドウとして選択する
3.現在のウィンドウについて現在のウィンドウ中のポイントの強度から検出信号の雑音に関する少なくとも1つの統計的パラメータを決定する
4.上記の少なくとも1つの統計的パラメータから現在のウィンドウの雑音閾値を決定する
5.他のウィンドウのそれぞれについてステップ2〜4を繰り返す。
ウィンドウの雑音閾値を検出信号の対応する間隔に割り当てる。たとえば、ウィンドウの雑音閾値をLUT中の入力項目(当該検出信号の間隔を受け持つ)に割り当て、かつ、当該検出信号のその間隔中のすべてのデータ・ポイントにその閾値を適用して、その閾値より下のポイントの除去を可能にする。これらの間隔は非重複であり、したがって検出信号の各データ・ポイントは単一の間隔にのみ属し、かつ、単一雑音閾値がそれに適用される。間隔の幅は、収集される検出信号(過渡信号)の長さまたは継続時間をLUTのサイズ(すなわち、LUTの入力項目の個数)で除した値である。
したがって、本発明のさらに別の態様において、TOF質量スペクトロメータにおけるイオン検出のための検出システムにより与えられる検出信号から雑音を除去する方法が提供されるが、その方法は、以下のステップを含む:
i.)検出システムに到来したイオンに応答して検出システムからその少なくとも1つの検出信号を生成すること
ii.)前記または各検出信号を重複ウィンドウの個数、nで除すこと、ただしnは少なくとも2である
iii.)前記または各検出信号のウィンドウの1つを現在のウィンドウとして選択すること
iv.)前記または各検出信号の現在のウィンドウについて現在のウィンドウ中のポイントの強度から検出信号の雑音に関する少なくとも1つの統計的パラメータを決定する
v.)前記の少なくとも1つの統計的パラメータから現在のウィンドウの雑音閾値を決定し、かつ、現在のウィンドウの雑音閾値を検出信号中の対応する間隔に割り当てる
vi.)前記または各検出信号の他のウィンドウのそれぞれについてステップiii.)〜v.)を繰り返す
vii.)検出信号の各間隔中のポイント(当該間隔の雑音閾値より下の強度を有する)を除去することにより前記または各検出信号から雑音を除去する。
雑音に関する前記の少なくとも1つの統計的パラメータの例は、ポイントの平均強度およびポイントの平均からの標準偏差であり、好ましくは両方である。各重複ウィンドウに関する閾値決定の例を以下に示す:
a)ウィンドウ中のすべてのポイントの平均強度を計算する(「avg1」)
b)ウィンドウ中のすべてのポイントの強度の標準偏差値を計算する(σ1
c)仮(すなわち、第1反復)雑音閾値、T1 = avg1+x*σ1を計算する、ただし、xは増倍値、一般的に2〜5、約3が好ましい。
d)この仮閾値、T1より下のポイントは雑音とみなされ、この仮閾値より上のポイントはピークとみなされる
e)これらの雑音ポイントの平均強度値(「avg2」)および標準偏差(σ2)を第2回反復において計算する、すなわち、ここでは、第1反復において検出されたピークを除外する。
f)上記a)〜c)と同様に、これらの第2反復avg2およびσ2の値から新しい(すなわち第2反復)雑音閾、T2を計算する、すなわち、T2 = avg2+x*σ2
g)ステップe)およびf)を繰り返すことにより1回以上のさらなる反復雑音閾値を計算してもよい
h)第2反復雑音閾値T2または任意選択的なそれ以降の反復閾値を使用して元の検出信号から雑音を除去し(すなわちピークを検出し)、それにより縮減プロフィール・データを提供する。すなわち、この第2または任意選択的なそれ以降の反復閾値より下の元の検出信号は雑音ポイントとみなして除去し、かつ、この第2または任意選択的なそれ以降の反復閾値より上の元の検出信号はピークと見なし、m/zにより標識を付し縮減プロフィール・データとしてその後の処理のために転送する。
i)雑音閾値(たとえばT2)および雑音平均(たとえば、avg2)および/またはσ(たとえばσ2)の値は、好ましくは、さらなる処理および分析のために縮減プロフィール・データとともに格納する。
各それぞれのウィンドウの閾値は互いに独立であり、かつ、上述したように並行してまたは順次計算できるが、並行計算が好ましい。
必要に応じて3回以上の反復を行って第3および/またはそれ以降の雑音閾値を得ることができる。しかし、実験の示すところでは、反復をさらに繰り返しても結果はそれほど変わらない。
この方法の拡張は、雑音閾値の決定が困難な場合に、ウィンドウ間のある程度の雑音変更(または同様な雑音測定、たとえば、先行データを使用して生成された雑音LUTとの比較による)のみを可能として高いピーク密度の領域を橋絡することを含み得る。
したがって雑音検出閾値はピーク高さから独立であり、かつ、フル・プロフィール・データ中において目分量で観察できる「雑音帯域」のみにより決定される。したがって、それは雑音帯域の直接尺度である。
この雑音閾値は、したがって、検出信号とともに時間的に、たとえば、TOF測定装置中の飛行時間とともに変動し得る動的な閾値である。すなわち、それは、一般的にウィンドウ(間隔)間で変化する。重複ウィンドウの使用は、より多くのウィンドウを使用すること、閾値決定のためにより多くのデータを使用することを可能とし、したがって雑音閾値のより正確な決定を可能とし、間隔間の不連続を低減する。各ウィンドウは、参照テーブル(LUT)中の入力項目を割り当てられ、かつ、各ウィンドウの閾値は当該ウィンドウのLUT入力項目に入力される。好ましいモードの動作では、フル検出信号が記録され、かつ、それからLUTが上述の方法により計算され、複数の、好ましくはすべての、以降の検出信号またはスペクトルから雑音を除去するために使用される。かかる実施形態におけるLUTの初期計算は、したがって、好ましくは計器コンピュータ、たとえば、汎用コンピュータ上で行われる。次にLUTは、専用プロセッサにアップロードされる。専用プロセッサは、このLUTを検出信号のポイントに適用することにより雑音除去を行う。しかし、この方法は、雑音がスキャン毎にかなり異なる場合には実現できないであろう。そのような場合には、各検出信号から飛行中にLUTを計算し、そのLUTの計算の元となった検出信号と比較することが好ましい。LUTの飛行中計算は、好ましくは専用プロセッサ上で行う。続いて、この方法は、間隔中の雑音除去(すなわち、逆に見るならばピークの検出)を含むことができる。それは、その間隔中のポイントのその間隔の雑音閾値との比較およびその閾値より下に属するポイントを除去すること、およびピークを検出するこのステップを1つ以上のさらなる間隔について繰り返すことによる。すなわち、所与の間隔中のポイントをその間隔のLUT入力項目に保持されている雑音閾値と比較する。
図3Aを参照する。フロー・チャートの形態により、LUTの雑音閾値の決定のステップのシーケンス、すなわち、図2の閾値計算器90において行われたステップのシーケンスが示されている。簡単にするために、ステップのシーケンスは、1つのチャネル、データ処理システムのCH1またはCH2について示されている。しかし、当然のことであるが、同じステップが他のチャネルについても独立に好ましくは並行して行われる。各検出信号は、最初に複数の重複ウィンドウに分割される。その各ウィンドウは、その隣接ウィンドウからわずかにずれている。これらの複数のウィンドウは、したがって所与の幅を有する移動ウィンドウとみなすことができる。次に各ウィンドウは、検出信号の非重複間隔に対応する。各ウィンドウは、この間隔に雑音除去のための閾値を与える。たとえば、合計継続時間2ミリセカンド(ms)の検出信号(過渡信号)および約1000入力項目(たとえば、1024入力項目)を有するLUTの場合、各間隔の幅は、約2マイクロセカンド(μs)である。これらのウィンドウは重複するので、それらは非重複間隔群より幅広く、かつ、各ウィンドウの幅は一般的に対応する間隔の幅プラス当該間隔の両側の重複であり、重複部分は一般的に間隔幅の10%〜50%であるが、これを上下することも可能である。図解として、数個の重複ウィンドウの位置およびLUT中の対応する間隔/入力項目を示す検出信号(過渡信号)の一部分を図3Cに示す。図3Cは、雑音を含む過渡信号200の10μs区間を示す。この例では、この過渡信号の合計長は1msであり、かつ、閾LUTは約1000個の入力項目を有するので、各入力項目は前記過渡信号の約1μs間隔により専用される。これは、LUTからの各閾値入力が前記過渡信号のそれ自身の1μs間隔に適用されることを意味する。多数のかかる1μs間隔が参照番号202および太線の水平棒線204により示されている(番号で示されているのは、これらの一部である)。各間隔204にLUT中の入力項目208が割り当てられる。この入力項目は、雑音除去のために計算された閾値を含んでいる。間隔間の閾値の不連続を低減するために、閾値計算のために実際に使用されるウィンドウは、重複ウィンドウを表す細い水平棒線204’(番号参照されているのはそれらの一部のみである)(この横線は、各間隔204に亘り、かつ、各間隔の両端から張り出している)の長さにより示されているように、当該間隔(および隣接ウィンドウしたがって互いに重複している)より広い。各重複ウィンドウは、したがって、それより狭い非重複間隔に関係している。必要に応じて、ウィンドウの遠隔部分の影響は低減することができる。それを行う1つの方法は、閾値計算に組み込む値をウィンドウ中心までの距離に応じて無視するかまたはその重みを低減することである。これは、距離に比例し/直線的に、またはたとえばガウス曲線のようなより複雑な関数を使用して実行することができる。それを行うもう1つの方法は、より遠い値が計算結果の閾値により少ない影響を及ぼすように閾値計算関数を変更することである(図3Bの説明参照)。これもまた、比例的/直線的に、またはより複雑な関数を使用して実行することができる。
閾値計算のための重複ウィンドウの1つを図3Bにさらに詳しく示した。再び、図3Aを参照する。最初に、ステップ91において、平均強度(avg1)および標準偏差(σ1)を現在選択されているウィンドウ中のすべてのポイントから計算する。次に、ステップ92において、仮閾、T1 = avg1 + X* σ1を計算する。ただし、xは一般的に2〜5である。avg1の位置および第1ウィンドウにおける仮閾値T1を図3Bに示す。次のステップ93において、第2平均強度(avg2)および標準偏差(σ2)を現在のウィンドウ中のすべてのポイント(「雑音ポイント」)(仮閾値T1より低い強度を有するポイント)を使用して計算する。最後に、ステップ94において、検出信号からピーク検出閾値、T2 = avg2 + x* σ2を計算する。avg2の位置およびピーク検出閾値T2を図3Bに示す。上述したように、各検出閾値T2、すなわち、各ウィンドウの閾値に、LUT中の入力項目を割り当て、それにより、それを検出信号の対応間隔中のポイントに適用することとする。次にすべての検出閾値T2を含むLUTを使用して間隔中の(LUT中の対応する閾値T2より低い強度を有する)ポイント(すなわち、雑音ポイント)を除去することにより当初の検出信号から雑音を除去する。雑音の除去後に検出信号に残存するポイントは、ピークに属すると考えられる。騒音除去ステップは、したがってピーク検出のステップと等価である。厳密に言えば、「雑音」ポイントは、このステージにおいて一般的には全面的には除去されないが、ゼロに設定されるので続いて圧縮プロセス中に除去され得る。この場合、以下でさらに詳しく説明するようにすべての圧縮フレームは、非ゼロ連続ポイントのみからなり、かつ、位置マーカーを有する。
これから雑音除去/ピーク検出のステップについて、図4を参照しつつさらに詳しく説明する。図4は、フロー・チャートの形式で図2の雑音除去・圧縮モジュール80において行われるステップのシーケンスを示している。すなわち、上述したように作成されたLUTにおける閾値を使用する雑音除去のステップである。図4を参照する。それぞれの別々のチャネルCH1およびCH2中に2つのそれぞれの検出信号36、38が示されている。これらの信号は、図2を参照して上述したデシメータから別々の入力経由で雑音除去・圧縮モジュール80に入力される。図3A−Cを参照して上で説明したように計算された雑音閾値LUT81(各チャネル用に1つずつ)は、モジュール80を実現する専用プロセッサ(たとえば、FPGA、GPU、Cellプロセッサ等)上に常駐している。次に各チャネル中の閾値検出器82は、当該チャネル用のLUTを検出信号に適用し、かつ、そのLUTにより定義される閾値より低いポイントを除去する(ゼロに設定する)。必要に応じて閾値検出装置82は、チャネルの少なくとも一方においてピークが検出された場合に両方のチャネルからのデータを保持するように、すなわち、両方のチャネルにおける同一ポイントが同時に閾値未満になった場合にのみデータ・ポイントを雑音として除去するように構成することもできる。閾値検出器82から現れるその結果の縮減プロフィール検出信号36、38は、続いて、検出信号のポイント値の効果的な転送のために、それぞれのフレーム構築ビルダ84によりフレームに圧縮される。フル・プロフィール・モードのデータ収集が要求される場合、LUTを閾値としてゼロに設定し、検出信号のすべてのポイントをフレームに圧縮し、その後の処理のために転送することができる。その後の処理も専用プロセッサ上で行われる場合(これはあまり好ましくない)、フレーム圧縮ステップは省略することができる。
フレーム・ビルダ84は、検出信号を数フレームに分割する。これらのフレームは、最も効果的な方法により基礎のバス・システムの帯域幅を使用するために最小限および最大限のサイズを有する。フレームは、雑音閾値(ピーク・ポイント)以上の最初のポイントから始まる。実際のフレーム・サイズは、ピーク・ポイントに依存する:たとえば、ただ1つのピーク・ポイントが閾値以上である場合、フレームは、以降のピーク・ポイントで満たされて最小限フレーム・サイズに達する。このフレームがその最小限サイズに達する前に、より広いピークが閾値以上のこの最初のピーク・ポイントに続く場合、このピークのすべてのポイントがこのフレームに加えられるので、このフレームが最小限サイズより大きくなることがあり得る。ピークが終わる前に、フレームがその最大限サイズに達した場合、このピークのポイントは次のフレームに続く。換言すると、フレームは、最小限サイズに達した場合にピークが存在しない限り、最小限サイズから構成される。ピークが存在する場合は、フレームはピークが終わるまで最小限サイズを超えて拡張される。ただし、フレームが最大限サイズを超えて拡大しないことを条件とし、最大限度サイズに達したときにピークが存在する場合には、このピークのポイントは次のフレームに継続する。特別な場合は、システムがフル・プロフィール・モードで動作するときである。フル・プロフィール・モードでは、LUT全体がゼロに設定され、したがってすべてのポイントが閾値以上となる。これは、すべてのフレームが、おそらく最終フレームを除いて、最大限度のサイズを有することを意味する。すなわち、ポイントは、最大限度サイズの隣接フレーム群中に圧縮される。
各フレームは、好ましくはフレーム・ヘッダおよび実際のポイント・データから構成される。フレーム・ヘッダは、好ましくは以下の情報を運ぶ:
−フレーム・デリミタの開始
−フォーマットのタイプの記述(圧縮またはフル・プロフィール、ポイントあたりのビット数、圧縮または非圧縮ポイント)
−タイム・スタンプ
−シーケンスId(収集されたスペクトルをカウントする)
−パケットId(スペクトル内のフレームをカウントする)
−パケット・サイズ(フレーム中のポイントの個数)
フレームは、たとえば、それが他の場所(たとえば、スペクトル・ヘッダ)に格納されない限り、閾値も含むことができる。ポイントあたり9つ以上のビット使用する場合、これらのポイントは圧縮される(たとえば、4つの10ビット・ポイントが5バイトに圧縮される)。好ましい動作モードは、上述したフレキシブル・フレーム幅である(すなわち、最小限および最大限フレーム・サイズを使用する)。固定フレーム幅を使用することも可能である。それは実現を簡単にするが、基礎のバス・システムの帯域幅を最も効率的に使用しない。したがって、作成される各フレームは1つまたは複数のピークを含み、かつ、最小限度および最大限度パケット長の結果として分割ピーク(すなわち、2つ以上のフレーム間に分割されたピーク)を含み得る。フレームは、たとえば、各チャネル上の専用プロセッサ付近のメモリ・バッファ中86中のRAM、順次アクセス・メモリまたはリング・バッファに、さらなる転送および処理のために格納される。
圧縮されたデータ・フレームは、好ましくは、高速プロセッサ(FPGA等)からたとえばマルチコア・プロセッサまたは埋め込みPCを含む計器コンピュータへダウンロードされる(たとえば、直接メモリ・アクセス(DMA)を使用することにより)。計器コンピュータは、次にピーク特徴付けの処理を行う。他の実施形態では、それほど好ましくないが、前記またはその他の高速プロセッサ(FGPA、GPU、Cell等)上でピーク特徴付け処理を行うこともできる。これらの処理を別々のプロセッサ上で行うことも可能であるが、同一プロセッサ(それは、好ましくは計器コンピュータ)上でこれらの処理を実現することが好ましい(たとえば、帯域幅の面から)。
次にピーク特徴付け処理について図5を参照しつつより詳しく説明する。この図は、図2のピーク特徴付けモジュール100内で行われる処理を示している。計器コンピュータ(IC)は、検出信号36、38の圧縮フレームをそれぞれのチャネルCH1およびCH2で受け取る。ICは、好ましくは、まず、各チャネルのピーク・ビルダ102を使用してこれらのフレームをピークに変換する。すなわち、それは、フレームからピークを読み取り、かつ、フレーム中に分割されたピークが見出された場合にその分割された構成要素からピークを再構築する。任意選択のステージにおいて、すなわち、任意選択のピーク加算器104において、いくつかの検出信号からのピークを合計する。たとえば、相異なる検出信号から同一TOF上のピーク(+/−公差)を蓄積して信号対雑音比を高める。この加算処理は、チャネルCH1およびCH2において並行して行うことができる。
両チャネルからのピークは、次にキュー105に送られる。このキューは、複数のデータ・ボックス106(図5において、そのうち番号付けられているのは2つのみ)から構成されている。この各ボックスは、1つのピークおよびそのピークから計算された中間特徴(後続ステップにおいてさらなる特徴を得る処理のために必要な)も含んでいる。しかし、各ボックスは特定のチャネルに関係づけられるので、各ピークはそれ自身のチャネルとの関係を維持する。ボックス106のそれぞれは、好ましく互いに並行して処理する。
ボックス106中のピークについて行われることが好ましい1つの処理ステージは、ピーク評価107である。ここでは、好ましくは以下の一部、より好ましくは以下のそれぞれを含む種々のピーク特徴または属性を計算する:ピーク位置、ピーク合計幅、ピーク半値全幅(FWHM)、ピーク面積、ピーク最高値、ピーク平滑度、オーバーフロー・フラグ。1つ以上の品質係数は、1つ以上の上述の特徴(またはそれらの任意の2つ以上の任意の組み合わせ)に基づくことができる。オーバーフロー・フラグは、ピークが最高ADC値を超えた場合にそのピークに割り当てられる。ピーク面積は、好ましくはベースベースラインから計算する。これらのピーク特徴は、好ましくは各ピークについて並行して計算し、かつ、各ピークは、好ましくは並行して処理する。したがって当然のことであるが、図5および6に準拠して、この並行処理は各チャネル(および互いに並行して処理される別々のチャネル)内で実行でき、かつ、チャネル内のかかる並行処理は、たとえば、そのチャネル中の同一検出信号の相異なる領域の並行処理または検出信号の同一領域に関する独立タスクを順次ではなく同時に行うことを含み得る。
ピーク特徴は独立に計算できるので、それらを計算する2つの方法がある:
1.データについて1つのパスを行い、かつ、すべての特徴を同時に計算するか、または
2.データについて数回のループを実行する。すなわち、それぞれ単一のピーク特徴を計算するいくつかのスレッドを使用する。
好ましい方法は、方法1である。第2の方法は、メモリ帯域幅制限の影響を被るからである。方法2を図6に図式的に示す。
ボックス106中のピークについて行われることが好ましいもう1つの処理ステージは、質量中心決定器108を使用するピークの質量中心の発見である。この技術において知られている種々の方法を使用して質量中心を見出すことができる。たとえば、以下において記述されている質量中心決定方法を使用することができる:「Precision enhancement of MALDI−TOF MS using high resolution peak detection and label−free alignment」, Tracy et al, Proteomics. 2008 April; 8(8): 1530-1538 (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2413415/で閲覧可能)、「How Histogramming and Counting Statistics Affect Peak Position Precision」, D. A. Gedcke, OretcTM Application Note AN58 (http://www.ortec−online.com/で閲覧可能)、米国特許第6373052号明細書および米国特許第6870156号明細書。
ボックス106中のピークについて行われることが好ましいもう1つの処理ステージは、品質評価器109を使用する品質評価である。主として、品質評価は、各ピークに関する1つ以上の品質係数の計算を含む。品質係数は、種々の方法で計算し得る。品質係数を計算する好ましい方法について、これから説明する。たとえば米国特許第7,202,473号明細書において記述されている方法などその他の方法も代わりにまたは追加して使用できる。
品質係数を計算する1つの好ましい簡単な方法は、ピークを種々の範疇に分類することであり、各範疇に関して異なる品質係数が割り当てられる。たとえばピークは次の範疇に分類することができる(品質係数の昇順):
1)非常に少ない個数のイオンからのピーク(<10個のイオン)
2)少ない個数のクラスター・イオンからのピーク(<500個のイオン)
3)少ない個数のイオンからのピーク(<500個のイオン)
4)非常に多い個数のイオンからのピーク(>2000個のイオン)
5)通常のピーク(500〜2000個のイオン)
「非常に少ない個数のイオンからのピーク」の質量精度はイオン統計の故に限られており、したがってこのピークには最も低い品質係数が与えられる。「少ない個数のクラスター・イオンからのピーク」は、期待ピーク面積にわたり平等に分布せず、質量ピーク包絡線内にピークのグループとして現れるピークを指す。「少ない個数のイオンからのピーク」は、平等な分布を有し、質量中心が確実に発見できるピークを指す。
品質係数を計算するもう1つの好ましい方法は、次のとおりである。どのピークに関する総合品質係数もいくつかの簡単な個々の品質係数から計算できる(個々の品質係数は、たとえば、次の係数であり得る:ピーク面積/イオンの個数、ピーク平滑度、ピーク幅等)。すべての個々の品質係数および総合品質係数は0.00〜1.00の範囲にあることが好ましい。ここで0.00〜0.25は低品質を意味し、0.25〜0.75は許容できる品質を意味し、0.75〜1.00は優れた品質を意味する。総合品質係数が低品質である場合、特に高優先順位でピークを再収集することが好ましい。総合品質係数がぎりぎり許容できる品質である場合、低優先順位で(すなわち、可能なら再試行する)ピークをやはり再収集することが好ましい。再収集の後にピークが依然として低品質である場合には、それは併合スペクトルへの包含から排除してよい。
総合品質係数は、好ましくは次の基準の1つ以上を使用することにより個々の品質係数から計算する:
・すべての個々の品質係数の平均(これは、最も推奨される運用方法である)
・すべての個々の品質係数のうちの最小値
・すべての個々の品質係数の積
・すべての個々の品質係数の和
上記の方法において、総合品質係数を計算するとき、種々の個々の品質係数に同一または異なる重みをあたえることができる。
上述の種々の品質係数の組み合わせを可能にするために、それらのそれぞれについて好ましくは同一の尺度を使用しなければならない。提案する尺度は、0.0〜1.0である。各チャネルおよび各ピーク特徴に固有の関数を決定しなければならないが、それは較正により行うことができる。
以下においてより詳しく説明する個々の品質係数を使用することが好ましい:
・ピーク面積(またはイオンの個数):
この品質係数では、検出されたイオンの個数を定義する手段としてピークの下の面積を使用する。
・ピーク平滑度
この品質係数では、ピークの平滑度(逆に表現すると凹凸性)の平均を使用することが好ましい。ピークの平滑度の平均を計算する方法はいくつか存在する。たとえば、以下を使用する:
・測定されるピークの周囲(すなわち円周)と同一面積を有する放物線の周囲の比
・測定されるピークの周囲と同一面積を有するガウス曲線の周囲の比(ピークがガウス曲線により似ている場合に推奨する)
・ピークの周囲とピークの面積の比
・ピーク最高値のx%の閾値より下への突出の個数とピークの幅の比
・ピーク最高値のx%の閾値より下への突出の個数とピークの面積の比
最後の2つの方法に関して、図6Aは、ピークおよびピーク平滑度を決定するためのFWHM位置における閾値(点線)を示している。ここに示されているピークは、閾値より下に3つの突出を有する。ピーク幅(または面積)に対比する突出の個数をピークの平滑度の尺度として使用することができる。一部の実施形態では、決定した平滑度を次に期待平滑度と比較することができる。
・ピーク最高値のx%におけるピーク幅
較正中、TOFおよびイオンの個数に依存してx%最高値におけるピークの幅を測定する。品質係数を決定するために、x%最高値におけるピークの幅を較正中に測定した幅と対比する:
・ピークのx%最高値における幅とTOFおよびイオンの個数による較正中に測定されたx%最高値における幅の比(推奨する運用モード)
・ピークのx%最高値における幅とTOFによる較正中に測定されたx%最高値における平均幅の比
この意味において特に有益な係数は、ピークのベース(ピーク最高値の0%)において計算された品質係数および半値(FWHM)(ピーク最高値の50%)において計算された品質係数である。
上記を考慮して、総合品質係数決定の例は、次の3つの個々の品質係数または副品質係数を含む:ピーク面積、ピーク幅(FWHM)およびピーク平滑度。次にこれらの3つの個々の品質係数からそれらを等しい重みにより平均することにより総合品質係数を計算する。しかし、他の実施形態では、異なる重みを使用することもできる。この例におけるピーク平滑度品質係数は、測定されたピークと同じ面積および幅を有するモデル・ピークの円周と測定されたピークの比である(モデル・ピークとして放物線を使用する)。特定の面積および幅を有する放物線の円周sは、次の関数により計算される:
ただし、
wは、ピークの幅であり、Aはピークの面積である。測定されるピークの円周、rは、ピタゴラスの定理を繰り返し適用することにより計算される。ピーク平滑度品質係数qsは、最後に、sとrの比として次式により計算される:
ピーク平滑度品質係数、qsは、直接使用される。それは、すでに[0.0 − 1.0]の範囲にあるからである。しかしながら、この値に較正を適用することは可能である。
例中の面積品質係数および幅品質係数のそれぞれについて、較正プロセス中に、イオンの個数、TOFおよび較正される変数(すなわち、面積または幅)を有する関数を決定する。次にこの関数を使用してそれぞれの測定される変数(測定されるピークの面積または幅)を[0.0 − 1.0]の値にマップする。較正により線型関数が決定されるが、シグモイド関数などの他の関数もこの目的のために使用し得る。
処理ステージ107、108および109は図5において順次行われるものとして示されたが、そのようにする必要はない。ボックス106中のピークについて処理ステージ107および108のそれぞれを並行して行うことが好ましい。しかし、ステージ107、108および109のいずれも順次行うことができる(ステージ109は107および108の結果に依存するので、それは、107および108の後に行わなければならない)。当然のことであるが、順次行う場合、処理ステージ107、108の順序は可変であり、これらのステージは任意の順序で行うことができる。図5に関連して示した順序は、1つの推奨実施形態にすぎない。
検出信号の処理に続いて、各チャネルからの処理済み信号を併合して単一のスペクトルを形成する。これらのステップについて図7を参照しつつさらに詳しく説明する。図7は、図2のスペクトル構築モジュール110により行われるステップを示す。行われるステップの計算の複雑性の故に、それは計器コンピュータ上で実現することが好ましい。しかし、一部の実施形態では、これらのステップを高速プロセッサ(FPGA等)上で行うことも可能である。
ピーク特徴付けモジュール100からの処理済み検出信号36、38をそれらのそれぞれのチャネルCH1およびCH2経由でモジュール110およびスペクトル整列モジュールに最初に入力する。このモジュールにおいて、検出信号を整列させ、TOFにとって特に重要な信号開始ポイントの時間的ずれを補償する。時間オフセットを一般的に検出信号/チャネルの一方に適用してそれらを整列させる。すなわち、一方の信号をオフセットにより時間軸上で移動させなければならない。この時間オフセットは、以下においてより詳しく説明するように一般的に較正ステップにより前もって、たとえば、検出信号/チャネルを整列させる内部較正器を使用して、決定される。当然のことであるが、別々のチャネル中に3つ以上の検出信号を有する実施形態では、その2つ以上の信号は、一般的に、時間オフセットをそれらに適用してこれらのチャネルのすべてを整列させることを必要とする(そして、これは、時間オフセットの適用されるべき各チャネルにとって別々の時間オフセットとなるであろう)。
検出信号が時間的に整列された後、これらを併合して単一のスペクトルを形成する。スペクトルは、これからより詳しく説明するハイ・ダイナミック・レンジ(HDR)の1つであることが好ましい。依然として別々のチャネルCH1およびCH2に存在する2つの整列された信号を併合モジュール114に入力し、ここで併合(HDR)スペクトルを生成する。このステップ中、データ転送速度をさらに低減するため、好ましくは検出信号のピークの質量中心のみを使用し(強度とともに)、それにより検出信号の質量中心強度対を併合する。HDRスペクトルの中の各ピークは、2つの処理済み検出信号36、38の一方または他方から由来している。HDRスペクトル中で使用されたピークに関する品質係数をさらにデータ依存決定モジュールおよび計器制御モジュール130、140、150において使用する。これらのモジュールは、図2において示されているが、以下においてより詳しく説明する。
併合されるスペクトルのために、モジュール114は、好ましくは高利得チャネルCH2、すなわち信号38を使用して併合HDRスペクトルのためにピークを与える。ただし、高利得検出信号38が飽和している場合を除く(たとえば、高利得検出信号38中のピークに関するオーバーフロー・フラグの存在から検出される)。高利得チャネルCH2においてピークの飽和が発生した場合、その代わりに低利得チャネルCH1および信号36からの対応するピークを併合HDRスペクトルのために使用する。低利得チャネルCH1および信号36から取り出されたHDRスペクトル中のピークの場合、これらのピークを所定の係数により増倍して、これらのピークの強度を高利得チャネルCH2および信号38の増幅レベルに合わせる(すなわち、低利得ピークを高利得チャネル対低利得チャネルの増幅度または利得比により増倍するのであるが、この増幅度は検出器と前置増幅器両方のからの利得の結果である)。これらの2つのチャネルCH1およびCH2の増幅係数は、高利得チャネルが飽和する場合に、較正に関連して以下においてより詳しく説明するように、低利得チャネルが高品質ピークを与えるように調整される。要するに、併合されたスペクトルは、高利得チャネルの非飽和ピークを含み、かつ、高利得チャネルにおいて飽和ピークが発生した場合には、併合されたスペクトルは、低利得チャネルの対応するピーク×(低利得チャネルに対比する高利得チャネルの利得を表す倍数)を含む。単一の併合されたHDRスペクトル115がモジュール114から出力される。別の方法として、別々のチャネルからの検出信号は、米国特許第7,220,970号明細書において記述されている方法または当業者により知られているその他の方法により組み合わせることもできる。前記の1つの変種では、好ましくはユーザーとの相互作用を必要とせずに、システムが常に飽和状態のない検出信号(線型応答)を選択して併合スペクトルを構築する。さらに別の変種、特に図7Aに示すように、好ましくはユーザーとの相互作用を必要とせずに、システムが常に飽和状態のない検出信号(線型応答)を選択して併合スペクトルを構築する別の変種では、システムは、低利得検出器(たとえば、「アナログ」検出器)および高利得検出器(たとえば、「計数」検出器)が「共通」または並行線型応答を有する範囲(たとえば、レベルLa1とLa2の間に示されている)を自動的に検知し、この範囲外では正しい(線型応答)検出器に切り換え、かつ、「共通」または「並行」範囲において相対利得を再較正する。
処理された検出信号および/またはHDRスペクトルは、好ましくは図2に示したシステム120のようなデータ・システム上に格納する。HDRスペクトルは、たとえばVDU画面のようなグラフィカル・インターフェース上またはたとえば紙のようなハードコピー媒体上などの有形形式により計器コンピュータから出力することもできる。
必要に応じて、解像度不良のピークの場合に、たとえば、併合ピークまたは低強度ピークについて、図7の高度ピーク検出モジュール116により図式的に示されているように高度ピーク検出を行う。高度ピーク検出処理は、ピークが両チャネルにおいて低い品質係数を有する場合にのみ行うのが好ましい。高度ピーク検出は、一般的にコンピュータ使用費用が相当高くつくからである。高度ピーク検出ステージ116の詳細プロセスは、図8に図式的に示されている。第1に、解像度の低い併合ピークの場合、ピークをピーク分割モジュール117により分割する。このとき、たとえば、移動平均(推奨)、二重ガウスまたは修正ウェーブレットの使用などの既知のピーク分割方法を使用する。高度ピーク検出および処理は、近傍のボックスから情報を収集しなければならないこともある。解像度の低いピークのプロフィール・ポイントをピーク分割117に供給して分割の実行を可能にする。併合されたピークが個々の分解されたピーク(分割ピーク)に分割された後、図5に示したものと同一のピーク特徴付けステップを分割ピークについて各ピーク等のボックス106’を使用して行う。次に分割ピークを併合スペクトルに転送する。ピークを分割する推奨方法の例をここで示す。
いわゆる二重ピークの場合、2つのピークが相互に接近してまたは重なり合って出現したとき、または広いピークが現れたとき(期待幅より広い)、2つ以上の極大値が存在するか否かアルゴリズムでチェックする。2つの場合に対処する:
1.)低い強度の面積を有するぎざぎざしたピーク。これは、相異なるピークに属するサンプルが1つのピークに併合されたことを示す。この場合、これらの種々のピークを検出しかつ、分割するアルゴリズムは、好ましくは以下を含む:
a.移動平均を計算すること(設定可能な幅により、すなわち多数のプロフィール・ポイントの幅)、すなわち、選択された幅の中のピークの多数のプロフィール・ポイントから平均強度を計算すること
b.移動平均が閾値の下からその閾値の上へ変化する場所のピークの始まりを検出すること、および移動平均が閾値の上から下へ変化する場所のピークの終わりを検出すること
c.移動平均の空間分解能はウィンドウ幅の増加につれて減少するのでLUTからのサンプル閾値を使用してステップbで決定したピーク限界を修正すること。修正の後、ピークの始まりは、閾値より上の最初の値であり、ピークの終わりは、閾値より上の最終値である。説明として、閾値を移動平均に適用することにより決定されたピーク限界は、最大限度に正確ではない。これは、移動平均を決定するために使用されたウィンドウ・サイズのためである。これらの限界は、サンプルが左側のピークの終わり上の閾値をよぎる場所の位置および2つの併合されたピークの右側のピークの始まりを見出すことにより修正される。
2.)ぎざぎざした重なり合うピーク。現在の時刻またはm/zに関する期待幅より広いピークの場合、このピークは2つの重なり合うピークから構成されていると仮定する。期待される幅について以下に記述する。この種のピークは、以下のアルゴリズムを使用して分割する:
a.2つの極大値およびこれらの極大値間の極小値を見出す。これらの極大値および極小値は、いくつかの方法で決定することができる。たとえば:
i.縮減幅で質量中心計算方法を使用して両方の極大値を見出すことおよびこれらの極大値間の極小ポイント値を探すことにより極小値の位置を決定すること、または
ii.縮減幅で質量中心計算方法を使用して両方の極大値を見出すことおよび両方の極大値間のポイントに質量中心計算方法を適用することにより極小値の位置を決定すること、または
iii.適切なウィンドウ幅で移動平均を使用して両方の極大値および中間の極小値を決定すること。
b.極小値の位置でピークを分割する。
もう1つの種類の実施形態では、ピークは、十分な品質係数の候補として決定されるか、またはピーク形状のモデル・ピークの形状との比較に基づかずに決定される。さらに別の実施形態では、ピークは、ピーク高さの検出信号データの局部背景騒音の高さとの比較に基づいて、およびピーク形状のモデル・ピークの形状との比較に基づいて、かかる候補とみなされることになっている。
さらに別の種類の実施形態では、ピーク、特に低い強度のピークがイオンによるものらしいか否かの決定は、データ中の検出閾値より上のポイントの強度および個数のイオン統計に基づく予測に基づいている。
雑音値は、すでに閾値化処理から利用でき、したがって、非常に簡単なピーク品質係数はS/T − Cとすることができる。(ここで S = 信号強度、 T = 閾値(参照テーブルから)、Cは定数)。
0と1の間の値が品質係数として望ましい場合、シグモイド関数、たとえば、ロジスティック関数(拡縮係数A)を使用して変換することができる:品質係数、QF: = 0.5*(1+tanh(A*(S/T−C)))、この場合、関数QFは、位置Cにおいて1/2を通過する。
0と1の間のピーク品質係数の推奨拡縮も好ましい。それは、確率から決定される品質係数の容易な統合を可能にするからである。(たとえば、Zhang et al. Bayesian Peptide Peak Detection for High Resolution TOF Mass Spectrometry, IEEE Transactions on Signal Processing, 58 (2010) 5883; DOI: 10.1109/TSP.2010.2065226の方法からの情報のように)。
ピークが複数のイオンのために存続候補として決定される可能性を有し、かつ、保持され、その他のピークが1つのイオンのためにそのように決定されず、かつ、ピーク形状のモデル・ピークの形状との比較に基づいて廃棄される実施形態では、モデル・ピークの形状は、ガウス、修正ガウス、ローレンツ、または質量スペクトル・ピークを表すその他の任意の形状でよい。かかるピーク形状は、手近のデータ、たとえば、平均測定ピーク形状から経験的にも決定できる。修正ガウス・ピーク形状は、片側または両側にテールを有するガウス・ピークでもよい。モデル・ピーク形状は、放物線ピーク形状などの基礎ピークから生成し、次にイオンの測定ピーク形状によりよく合致するように修正することができる。好ましいモデル・ピーク形状はガウス曲線である。モデル・ピーク形状の幅は所定または計算されたパラメータから設定できるが、より好ましくは測定データから計算する。モデル・ピーク形状の幅は、好ましくは質量の関数であり、より好ましくは質量の増加とともに増加する幅を有する線形関数である。モデル・ピーク形状の幅は、好ましくは、測定されたイオンから生成された測定データから決定され、したがって質量分析のために使用された計器に基づいて決定される。しかし、TOFピーク形状は、通常、正確にはガウス曲線ではないこと、および正確なピーク形状は、たとえば、強度および質量、さらには先行(すなわち、より低い質量、先行到着)ピークの強度に依存する可能性があることが分かっている。本件発明人は、高品質かつ高い信号対雑音比を有するデータによるピーク位置決定が不整合ピーク形状の使用により通常害されないこと、しかし、他方、ピークの検出および評価の方法が最も必要な場合に、簡単な関数、たとえば、ガウス曲線または三角を使用することにより雑音を有するデータがより確実に識別され、かつ、位置決めされることを見出した。しかし、たとえばピーク幅(それは、変数であり、かつ、ピークごとに個別である)を使用する追加自由度は、一般的に、幅のみが完全なスペクトル全体の関数である単純なモデルの場合に比して、位置決定の劣化をもたらす。モデル・ピーク形状は、好ましくはガウス曲線である。最初のモデル・ピークを形成するために利用できるその他の便利なピーク形状は、放物線および三角形である。ガウス曲線ピークの形状および分布の特性およびその和は非常によく知られており、ほとんどの種類のデータ分析にとって有益である。したがって、計算機使用時間に関する非常に制限的な要求または測定の精度に関する極めて明瞭な知識がある場合のみ、ガウス関数以外の使用が示唆される。
識別されたピークとモデル・ピーク形状間の一致は、好ましくは相関係数(CF)を使用して決定する。相関係数は、好ましくは、識別されたピークのそれぞれとモデル・ピーク形状間で決定する。この相関係数は、識別された各ピークの形状とモデル・ピーク形状間の一致を表す。好ましくは、この相関係数は、識別されたピークの強度およびこれらのピーク上の複数の点におけるモデル・ピーク形状の関数である。かかる関数の部類は、たとえば、http://en.wikipedia.org/wiki/Correlation_and_dependenceにおいて示されている標本相関係数を含む。したがって、1つの好ましい実施形態では、識別されたピークの形状とモデル・ピーク・形状間の一致は、標本相関係数を含む式を利用する。
好ましくは、相関係数(CF)を記述する関数は、次の形態である:
等式(1)
ただし:
n = 識別されたピーク上およびモデル・ピーク形状上のポイントの個数
IM = モデル・ピーク強度
ID = 識別されたピーク上の測定強度
この場合、識別されたピーク上のポイントの個数およびモデル・ピーク形状上のポイントの個数は、同じ(すなわち、n)として選択され、かつ、強度IMおよびIDは、それぞれ、モデル・ピーク形状およびこれらのポイントnのそれぞれにおいて識別・測定されたピークから導かれる。好ましくは、識別されたピーク上の測定されるデータ・ポイントの個数としてnを選択する。すなわち、識別されるピーク上の測定強度IDを測定データ・ポイントとし、内挿が不要になるようにする。
等式(1)の関数を使用し、範囲0と0.9との間に設定された相関係数を閾値として使用して背景騒音によると思われる識別されたピークと検出されたイオンによる識別されたピークを区別する。好ましくは、範囲0.6と0.8との間に設定された相関係数を使用する。より好ましくは範囲0.65と0.75との間に設定された相関係数を使用する。さらにより好ましくは0.7に設定する。相関係数の大きさが閾値未満である場合、識別されたピークは、検出されたイオンによるものではなく、背景騒音によるものとされる。
さらなる処理中に相関係数が使用されないときにも、正確なピークの位置および高さを得るためにデータをモデル・ピークに一致させるかかる手順を用いることは非常に有益であり、推奨される。
ピーク検出のもう1つの方法は、データがピークを表している可能性が高い場合に一定の時間ウィンドウ内における閾値より上のデータ・ポイントの期待個数を予測することである。続いて、測定されたデータを点検し、同様な時間ウィンドウ内で観測されたデータ・ポイントの個数が予測より相当少ない場合(たとえば、半分)、これらの時間ウィンドウ内のすべてのデータ・ポイントを廃棄してもよいが、好ましくはそれらの位置の信号を少なくとももう1回のスキャンにより確認した後に初めて廃棄する(たとえば、時間ウィンドウ中のポイントは、その時間ウィンドウ中のピークが他のスキャンにより確認された場合には廃棄されないが、他のスキャンもその時間ウィンドウ中でピークを示さなかった場合には廃棄される)。ピーク確認のための後続スキャンは、好ましくは時間的に接近して記録され(たとえば、クロマトグラム中で接近)かつ、類似の条件の下で収集される。
上述したモデル・ピーク形状は一般的に質量の関数であり、したがって個別のモデル・ピーク形状を、それが異なる質量で発生した場合に、それぞれの識別された極大値と比較する。この比較は、好ましくは、等式(1)で定義した相関係数を使用して行う。好ましくは0.6の閾値相関係数を使用して識別された極大値を濾過し、0.6以上の相関係数を有する極大値をイオンによるものと解する。
統計的に誘導される1つのアルゴリズムは、質量スペクトル・ピーク中の連続データ・ポイントの予測個数に基づいている。この個数は、次の値が既知になった後に計算することができる:
・ピークの幅
・サンプル・レート(時間単位あたりのデータ・ポイント)
・ピーク頂点のS/N
ピーク候補は、それがその質量記録中に期待(計算)連続ポイントの少なくとも70〜100%(または同程度)を有する場合のみ、受け入れられる。
イオンから由来していると思われるピークをイオンから由来していると思われないピークから区別する1つの方法は、検出閾値より上のデータ・ポイントの期待個数を特定し、それより少ないデータ・ポイントを有するデータを擬似ピークとして廃棄することである。期待値よりかなり多くのデータ・ポイントを有する記録は、一般的に背景騒音と考えられる。
擬似ピークのこの評価を行う最も簡単な方法は、単一データ・ポイントを廃棄することである。これらの単一ポイントは、通常、「スパイク」と呼ばれ、その除去は、平滑化が使用される場合、重要である。平滑化されたスパイクは、まさに正常なピークのように見えるからである。
これより高度の区別方法は、おそらく、好ましくは、ピークの高さおよび位置の決定のために一般的にいずれにせよ利用できるモデル・ピーク形状を使用する。便宜上、測定されたデータに適用されたモデル・ピークの高さを「観察強度」と名付け、測定されたデータに適用されたモデル・ピークの位置を「観察ピーク位置」と名付けることとする。図8Aを参照する。一揃いのデータの集まりから抽出されたピーク候補を含むフレームからのデータ・ポイントの集まりの図解例が示されている(高さが強度を表す垂直の棒として)。モデル・ピーク形状も示されている。次に、所与の検出限界(太い横線)について、この検出限界より上のデータ・ポイントの個数を計数し(ここでは:5)、次に観察高さおよび観察位置のモデル・ピークから期待されるこの検出限界より上のポイントの個数(ここでは:9)と比較する。連続データ・ポイントまたは一定の限界より上のデータ・ポイントの個数の期待個数は、明らかに、検出限界に対するピークの相対的高さに依存する。この例では、より低い検出限界(より低い水平線)は、より多くの連続データ・ポイント(9個の観察、11個の期待)を与え、また、ピーク高さと比べてより高い検出限界(より低い水平線)は、より少ないデータ・ポイント(2個の観察、5個の期待)を与える。ピークを廃棄する合理的な基準は、たとえば、検出限界より上のデータ・ポイントの期待個数の75%未満、または50%未満が実際に観察されることである。
非常に低い信号強度の場合に、イオン統計効果も考慮することが望ましい。検出およびイオン化のプロセスの統計的性質のために、観察されるイオンの数がランダムに変動するからである。このランダム変動は、よく研究されている。多くの場合、この変動は、たとえば、ポアソン統計に従う。その場合、たとえば、イオンの観察数の相対的変動は、イオンの個数の平方根である。所与の信号強度(すなわち、強度または高さ)の場合のイオンの個数は、計測装置製造業者により公表されるか、較正により決定されるか(たとえば、以下の文献参照:Makarov, A. & Denisov, E.: 「Dynamics of Ions of Intact Proteins in the Orbitrap Mass Analyzer」; Journal of the American Society for Mass Spectrometry, 2009, 20, 1486−1495)、データの集まり中の観察から生成されるか、または最初の原理、たとえば、イオン出現についてポアソン統計を仮定することから導かれる。次に、各データ・ポイントについて、期待最小限度および最大限度強度を求め、それらを使用してデータ・ポイントの期待個数がモデル・ピークからの直接決定に比べて減少しなければならない程度を調べることができる。たとえば、モデル・ピークから導かれた強度を100%と仮定し、3シグマの有意水準が期待される場合、そのデータ・ポイントの観察強度は、8個のイオンのときに0と200%の間、16個のイオンのときに24と175%の間、32個のイオンのときに50と150%の間等々に存在することとなる。したがって、たとえば、このピーク・プロフィール中の最も高い強度のポイントが32個のイオンに対応すると仮定した場合、5つのデータ・ポイントがそれらの平均強度の約±50%だけ変動することが期待される。したがって、モデル・ピークとの単純な比較から期待されるピークの50%未満が観察されたとしても、このピークは受け入れ可能とみなされ、廃棄されない。
上記の方法は、3つ以上の重複ピークが存在する場合にも適用できるが、しかし、それをアルゴリズムにより処理することは、より難しくなるであろう。その代わりに、スペクトロメータをより高い解像力に切り換えることが好ましい(すなわち、それは、スペクトロメータがかかる場合を検出できることを必要とする)。かかるピークが依然として期待ピーク幅より広い場合に結果のピークも分割し続ける上記アルゴリムの反復版を使用することも可能である。重要な代替案は、ピーク幅に合致する最小限度の個数の「モデル・ピーク」をデータに適用することである。
期待ピーク幅は、上述した種々のアルゴリズムにより使用され、好ましくは以下の方法により計算される。較正中、相異なる飛行時間をもたらす相異なるm/zの既知数のイオンを質量スペクトロメータに導入する。このプロセスを相異なる個数のイオン(すなわち、種々のピーク強度に対応する)について繰り返す。飛行時間を表すx軸、イオンの個数または面積を表すy軸およびFWHM(またはより一般的には、最大値のx%)における時間幅を表すz軸からなる3次元プロットを作成する。別案として、この情報を有する多次元配列を作成し、内挿値を求める。
併合スペクトル中のポイントの時間値、すなわち、TOFを好ましくはm/zに変換する。ただし、当然のことであるが、検出信号それ自体を、併合して併合スペクトルを形成する前に、m/zに変換することができる。m/zへの変換は、好ましくは、たとえばこれから説明する較正の方法を使用して行う。
外部較正は、精度を向上する内部較正とともに、飛行時間をm/zに変換することが好ましい。外部較正は、電位および温度の漂動、電子増倍管および主として検出システムの光電子増倍管の経時効果を調整するために定期間隔で行われる必要がある。外部較正器は、質量範囲全体に分布する数個のピークを与えるべきである。測定は、相異なる合計強度で数回繰り返すべきである。この計器を較正するために必要なピークの個数および相異なる強度の個数は、その直線性によって決まる。かかる一連の測定からいくつかの特性を導くことができる:
−較正器も種々の強度のピークを含む場合、これを使用して両チャネルの増幅係数を計算することができる。この情報を上述の両チャネルを組み合わせるために使用することができる。たとえば、増幅または利得係数g1およびg2を以下の関数から計算することができる。
g1 = Area(p1.ch1)/Int(p1) = Area(p2.ch1)/Int(p2)
g2 = Area(p1.ch2)/Int(p1) = Area(p2.ch2)/Int(p2)
ただし
Area(p):ピークpの面積/強度
Int(p):ピークpをもたらす物質の強度または存在量
g1:低利得チャネルの利得
g2:高利得チャネルの利得
p.ch1:低利得チャネル上のピーク
p.ch2:高利得チャネル上のピーク
p1:高利得チャネル上で飽和し、低利得チャネル上で飽和しないピーク
p2:高利得チャネル上で飽和しないピーク
g1/g2を決定するために、好ましくは、太字で印刷されている式を使用する。測定データが最も正確であるからである。いくつかの利用できる適切なピークがある場合、個々の利得係数を平均することができる。p1およびp2が同一の同位体パターンから由来する場合、たとえば、それぞれの物質の合計強度のみ既知であるならば、それらの強度(Int(p))は、それらの同位体比経由で計算することができる。実際の利得が一定でない(上記で仮定したように)こともあり得る。その代わりに、それは、イオンのm/zおよび個数に依存するであろう。したがって、利得の最善の記述は、2つのパラメータを受け取る関数を使用することであろう:利得(m/z、強度)。この関数は各チャネルについて異なり、かつ、較正器において見出されるピークから近似することができる。較正器がこの較正を行うために十分に高い品質のピークをもたらすことを保証しなければならない。
内部構成の前に行われる外部較正の後、TOFスペクトロメータの場合の計器は、一般的にすでに約5ppmの精度を有する。内部較正は、この精度を約1ppm、より望ましく0.1ppmに上げることができる。内部較正は、好ましくは既知の質量および強度のピークを注入することにより行う。この較正ピークのm/zは、それが検体と干渉しないように選択されるべきである。2つのピークが期待質量範囲(±外部較正の精度)内にある場合、その強度を追加基準として使用することができる。この強度は、近くに検体ピークが存在する場合においても、1桁分の大きさの範囲内に留まるべきである。一般的に、内部較正のために1つのピークのみ使用する。必要な場合、内部較正器は、2つ以上のピークとともに使用することができる。これらのピークは、一方のチャネルにのみ現れる必要がある(好ましくは高利得チャネル)。較正のために使用されるピークが高品質である限り、内部較正器の強度を使用して各チャネルの利得を較正することができる。
チャネル・オフセット、すなわち時間オフセットは、ケーブル長および高利得チャネル上で使用される光子増倍器の場合にもたらされる遅延の影響を受ける。チャネルを整列させるために使用されるチャネル・オフセットの較正のために、両チャネル上に現れる単一のピークの位置を確実に決定すること、または既知のオフセットの2つのピークを使用する必要がある。両チャネル上で使用される相異なる利得のために、第1の方法は難しいであろうから(高利得チャネルが飽和するか、または低利得チャネルに確実なピーク検出のために必要な個数のイオンが供給されない)、第2の方法を用いるべきである。同位体パターンを使用することができる。この場合、イオンの個数を調整することができ、それにより、モノアイソトピック・ピークを低利得チャネル上で確実に検出し、かつ、高利得チャネル上における飽和なしに最初の同位体ピークを検出することができる。別案として、チャネル・オフセットの較正も、外部較正の一環とすることもできる。その場合、外部較正の較正器は、ここで記述した要求条件を満たすように選択されるべきである。
較正は、この計器の自己監視、特に電子増倍器または光子増倍器の再較正、寿命および/または交換のために使用することもできる。たとえば、光子増倍器および/またはMCPの経時効果を外部較正の使用により調整できるが、それでもなお、特に光子増倍管は一定の時点において交換する必要がある(MCPは比較的低い利得で動作するので、それは、この計器の全寿命にわたり働くはずである)。この目的のために、外部較正は、定期間隔をおいて、または各チャネル上で特定の強度で検出されるべきピークがその強度でもって検出されないときのように、装置が異常を検出したときに行うべきである(たとえば、低利得チャネル上に現れるピークは、高利得チャネル上にも次の強度で現れるべきである:Area(p.ch2) = Area(p.ch1)*g2/g1、そうでないときはオーバーフロー。両検出信号が存在するときに、スペクトル中に閾値を超える多くのポイント/ピークが存在し得る。これらのポイントにおけるチャネル間の比を使用して実際の利得比を連続的に更新することができる。光子増倍器の老化が光子増倍器のみの増幅係数の増大により調整できない場合、それは、光子増倍器を交換する時期である。ユーザーによるこの計器の連続稼働を可能とするために、MCPの増幅度は、限定された時間の間だけ(MCPの老化を回避するために)増加することができ、それにより両方または低利得チャネルのみが使用可能データを出力する。この計器のダイナミック・レンジは、これらの不慮の状態の下では低減される。
このデータ収集システムは、データ依存決定も行うことができる。図2に示されているのは、アルゴリズムの複雑性のために計器コンピュータ上で実現することが好ましいデータ依存決定モジュール130および140である。これらのモジュールは、処理された検出信号中のデータおよび/または併合されたスペクトルの評価に基づいて、特に併合されたスペクトルに基づいて決定を下すことを可能にする。下すことができるこれらの決定のさらなる詳細について、これから図9を参照しつつ説明する。この図は、決定モジュール140により好ましくは下され得る決定の図式的フロー・チャートを示す。モジュール140によりピークが評価される。第1のステップにおいて、ピークが少ない個数のイオンによるものであるか否か決定され(少ない個数のイオンに関する閾値が予め決定されている)、かつ、少ない個数による場合にピークがスペクトロメータにより再収集され、そうでない場合には処理は次のステップ144に進む。次のステップ144においてピークがサブ・ピークに分割されるか否か調べ、サブ・ピークに分割される場合にはピークがスペクトロメータにより前回より高い解像度で再収集され、そうでない場合には処理は次のステップ146に進む(前述した質量中心決定器が所与の幅の中に2つ以上の質量中心を見出した場合には、重複ピークが発見されたと想定する)。次のステップ146において、質量中心が決定されたか否か決定され、質量中心が決定されていた場合にはピークがスペクトロメータにより前回より多いイオンで再収集され、かつ/またはより多くの検出信号またはスペクトルが追加され、そうでない場合には処理は次のステップ148に進む(前述した質量中心決定器が質量中心を検出しなかった場合、これは、不十分な個数のイオンが収集されたことを示す)。次のステップ148において、オーバーフロー・フラグ(それは両チャネルが飽和/過負荷されたことを示す)が併合スペクトル中のピークに付加されているか否か決定し、付加されている場合にはピークがスペクトロメータにより前回より少ないイオンで再収集され、そうでない場合にはプロセスは、そのピークのデータ依存決定を終了しても、あるいはもう1回以上のデータ依存決定実行ステップに進んでもよい。
請求項中を含めて、本出願で使用する場合、前後関係により別段の指示がなされる場合を除き、本出願における用語の単数形は複数形を含み、また、複数形は単数形を含むものとして解釈されるものとする。たとえば、前後関係により別段の指示がなされる場合を除き、請求項中を含めて、本出願で使用する場合、「1つ」のなどの単数の言及(たとえば、1つの光子等)は「1つ以上」を意味する(たとえば、1つ以上の光子検出器等)。
この明細書の詳細説明および請求項を通じて、用語「含む」、「含めて」、「有する」、「包含する」およびこれらの用語の変形、たとえば「含むこと」および「含んでいる」等は、「〜を含むが〜に限定されない」を意味し、他の要素を排除することを意図しない(かつ排除しない)。
当然のことであるが、本発明の前記実施形態の変形は、本発明の範囲内に依然として属しつつなされ得る。この明細書において開示された各特徴は、別段の言及がない限り、同一、等価または類似の目的を果たす代替特徴により置換され得る。したがって、別段の言及がない限り、開示された各特徴は、一般的な一連の等価または同様な特徴の一例にすぎない。
本出願において使用されたありとあらゆる例または例示的用語(「たとえば」、「など」、「例として」および同様な表現)の使用は、単に本発明のより分かりやすい説明を意図しているのみであり、別途請求しない限り、本発明の範囲の限定を指示しない。明細書中の表現は、非請求要素を本発明の実行にとって絶対に必要なものとして指示するものと解するべきではない。
この明細書において記述されているステップは、別段の指示がある場合または文脈により別段の解釈が要求される場合を除き、任意の順序または同時に行うことができる。
この明細書において開示された特徴のすべては、如何なる組み合わせにおいても組み合わせることができる。ただし、かかる特徴および/またはステップの少なくとも一部が相互に排他的である場合の組み合わせを除く。特に、本発明の推奨特徴は、本発明のすべての態様に適用でき、かつ、任意の組み合わせで使用することができる。同様に、非本質的な組み合わせにおいて記述された特徴は、別々に使用できる(組み合わせにおいてではなく)。

Claims (19)

  1. 質量スペクトロメータにおいてイオンを検出するためのデータ収集システムであって、
    検出器に到来したイオンに応答して別々のチャネルに2つ以上の検出信号を出力する2つの以上の検出器を含む、イオンを検出するための検出システムであって、前記検出信号はイオンが二次電子を生成することに応答して生成され、第1の検出器に到来し前記第1の検出器から第1の検出信号を生成する同じ二次電子がシンチレータに到来し光子を生成し、時間遅延後に前記光子が第2の検出器に到来し前記第2の検出器から第2の検出信号を生成し、前記信号が時間的に相互間でずらされる、前記検出システムと、
    データ処理システムの別々のチャネルにおいて前記検出信号を受信及び処理し、かつ、処理された前記検出信号を併合して質量スペクトルを構築するための前記データ処理システムと、を含み、
    別々のチャネルにおける前記処理は、別々のチャネル中においてアナログ−デジタル・コンバータ(ADC)で前記検出信号をデジタル化することと、前記検出信号に閾値を適用することにより、デジタル化された前記検出信号から雑音を除去することを含む、データ収集システム。
  2. 前記質量スペクトロメータがTOF質量スペクトロメータであり、前記質量スペクトルがハイ・ダイナミック・レンジ質量スペクトラムである、請求項1に記載のデータ収集システム。
  3. 前記第1の検出器は低利得検出器であり、前記第2の検出器は高利得検出器である、請求項1または2に記載のデータ収集システム。
  4. 前記検出器から前記検出信号を受信し、かつ、前記検出信号をデジタル化する前に別々のチャネル中の前記検出信号を前置増幅するための少なくとも1つの前置増幅器を含む、請求項1〜のいずれか一項に記載のデータ収集システム。
  5. 個別の閾値が前記検出信号のそれぞれに適用され、任意選択的に各閾値が参照テーブル(LUT)に格納されており、各検出信号のために別々のLUTが存在する、請求項1〜のいずれか一項に記載のデータ収集システム。
  6. 前記閾値が動的であり、かつ、前記検出信号において時間とともに変化する、請求項1〜のいずれか一項に記載のデータ収集システム。
  7. 前記個別チャネル中の前記処理が、相異なるプロセッサ間の別々の前記チャネルによる転送のために、雑音除去のための前記閾値を通過した前記検出信号のポイントのみをフレーム中に圧縮することを含む、請求項1〜のいずれか一項に記載のデータ収集システム。
  8. 各フレームの幅が可変であって、それにより、各フレームが最小サイズから最大サイズまでのサイズを有し、かつ、フレームが最小サイズに到達した場合にピークが存在しない限り各フレームは最小サイズから構成され、ピークが存在する場合には、そのフレームは、前記ピークが終了するまで、当該フレームが前記最大サイズを超えないことを条件として前記最小サイズを超えて拡張され、最大サイズに到達した場合にピークが存在するときには、前記ピークのポイントが次のフレームに続く、請求項に記載のデータ収集システム。
  9. 前記データ処理システムが、前記雑音の除去および前記閾値を通過した前記検出信号の前記ポイントの圧縮を行う別々の前記チャネル中における前記処理ステップを行うための専用プロセッサを含み、前記検出信号が並行して処理される、請求項に記載のデータ収集システム。
  10. 前記検出信号から雑音を除去した後の別々の前記チャネルにおける前記処理が、前記検出信号中のピークの検出および検出された前記ピークの特徴付けを含み、前記ピークの特徴付けが、
    a)前記ピークの1つ以上の品質係数を生成するステップと、
    b)質量中心決定アルゴリズムを使用して前記ピークの質量中心を決定するステップと、
    を含み、
    前記併合が、十分に高い1つ以上の品質係数を有するピークのみを併合することを含み、および/または、前記処理が、前記品質係数の1つ以上を使用してピークの決定された前記質量中心が信頼できるか否か、および別のピーク検出および/または質量中心決定アルゴリズムを適用することまたは前記ピークを再び収集することを含むさらなる処置が必要であるか否かを決定することを含む、請求項1〜のいずれか一項に記載のデータ収集システム。
  11. ピークの前記品質係数が、前記ピークの平滑度および/または形状を含み、かつ、任意選択的に前記処理が、前記ピークの前記平滑度および/または形状を、期待またはモデル平滑度および/または形状と比較することを含む、請求項10に記載のデータ収集システム。
  12. 前記処理が、前記検出信号を併合する前に、前記検出信号を整列させてそれらの間の時間遅延を補正することを含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載のデータ収集システム。
  13. 前記検出信号の1つが高利得検出信号であり、かつ、前記検出信号の1つが低利得検出信号であり、処理された前記検出信号の前記併合が、前記高利得検出信号と前記低利得検出信号を併合して、前記高利得検出信号が飽和していない場合に前記高利得検出信号を含み、かつ、前記高利得検出信号が飽和している場合に前記低利得検出信号を含むハイ・ダイナミック・レンジ質量スペクトルを構成することを含み、前記低利得検出信号が前記ハイ・ダイナミック・レンジ質量スペクトルにおいて使用される場合に、それが前記高利得検出信号の前記低利得検出信号に対する相対増幅度により拡大される、請求項1〜12のいずれか一項に記載のデータ収集システム。
  14. 前記検出信号の1つが高利得検出信号であり、かつ、前記検出信号の1つが低利得検出信号であり、処理された前記検出信号の前記併合が、前記高利得検出信号と前記低利得検出信号を併合して、ハイ・ダイナミック・レンジ質量スペクトルを形成することを含み、ユーザーとの相互作用を必要とせずに、前記データ収集システムが常に前記併合スペクトルのために線型応答の適切な前記検出信号を選択することが保証され、前記データ収集システムが前記低利得検出信号および前記高利得検出信号が同時に線型応答を示す並行範囲を自動的に検出し、かつ、前記並列範囲外において線型応答を示す適切な検出器に切り換え且つ前記並行範囲における相対利得を再較正する、請求項1〜13のいずれか一項に記載のシステム。
  15. 処理された前記検出信号の前記併合が、所与のピークについて当該ピークに関する最高品質係数を有する前記検出信号のみ併合することを含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載のデータ収集システム。
  16. 前記別々のチャネルにおける前記処理が、処理された前記検出信号を併合する前に、各チャネル中の複数の検出信号を加え合わせることを含む、請求項1〜15のいずれか一項に記載のデータ収集システム。
  17. 前記データ処理システムが、前記専用プロセッサから別々のチャネルの検出信号を受け取り、かつ、少なくとも別々のチャネルの前記検出信号のさらなる処理および処理された前記検出信号の前記併合を行う計器コンピュータを含む、請求項に記載のデータ収集システム。
  18. 前記計器コンピュータが、前記検出システムおよび/または質量スペクトロメータの1つ以上の動作パラメータを制御する1つ以上のデータ依存決定を行うためのものである、請求項17に記載のデータ収集システム。
  19. 質量スペクトロメータにおいてイオンを検出するためのデータ収集方法であって、
    検出システムを使用してイオンを検出するステップを含み、
    前記検出システムが、2つ以上の検出器を含み、前記検出システムに到来し二次電子を生成するイオンに応答して前記2つ以上の検出器から2つ以上の検出信号を別々のチャネルに出力し、第1の検出器に到来し前記第1の検出器から第1の検出信号を生成する同じ二次電子がシンチレータに到来し光子を生成し、時間遅延後に前記光子が第2の検出器に到来し前記第2の検出器から第2の検出信号を生成し、前記検出信号が相互に時間的にずらされ、
    データ処理システムの別々のチャネルにおいて前記検出信号を受信及び処理するステップを更に含み、別々のチャネルにおける前記処理が、別々のチャネル中においてアナログ−デジタル・コンバータ(ADC)で前記検出信号をデジタル化することと、閾値を前記検出信号に適用することにより、デジタル化された前記検出信号から雑音を除去するステップを含み、
    前記データ処理システム中の処理された前記検出信号を併合して質量スペクトルを構築するステップを更に含む、方法。
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