JP6119588B2 - H形鋼部材 - Google Patents

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本発明は主に構造物の床や屋根などの床版を支持する小梁や、鋼材の弾性範囲内で設計する梁に用いるH形鋼部材に関する。
従来からある圧延H形鋼や溶接組立H形鋼および溶接組立H形鋼に用いることができる鋼材としては、(1)〜(4)のようなものがある。
(1)小梁や弾性範囲内で設計する梁に使用する圧延H形鋼であって、以下のような構成を有するものが特許文献1に提案されている(特許文献1の請求項1参照)。
引張強さが400〜510N/mm2で、フランジ幅Bと梁高さHの比B/Hが0.77以下、フランジ幅厚比B/(2×t2)が11.1を超えて215/√F以下、Fの値が235以上で275以下を満足すことを特徴とする圧延H形鋼。
なお、t2はフランジ厚さ、Fは通常は設計基準強度(N/mm2)と同等の設計用降伏応力度である。
(2)従来から広く一般的に利用されている代表的な構造用圧延鋼材では、たとえば「JIS G 3101-2010一般構造用圧延鋼材」がある。その中で、降伏点の最も小さなものに、鋼板、鋼帯、平鋼及び棒鋼を対象としたSS330という種類があり、降伏点は、板厚が16mmを超えて40mm以下の範囲では195N/mm2以上、板厚16mm以下では205N/mm2以上である。
なお、圧延H形鋼としては、たとえば前述のJIS G 3101では、H形鋼を含む形鋼を対象に加えたSS400という種類があり、降伏点は、板厚16mmを超えて40mm以下では235N/mm2以上、板厚16mm以下では245N/mm2以上である。
(3)降伏点が235N/mm2よりも低い鋼材としては、降伏点が80〜120N/mm2のもの、140〜180N/mm2のもの、205〜245N/mm2のものがある(たとえば、「鋼構造設計便覧,p20,21,JFEスチール(株),2004.10」のJFE-LY100,LY160,LY225)。
(4)降伏点が235N/mm2未満の溶接組立鋼造部材では、熱間圧延したままの降伏強さが180〜250N/mm2で板厚が6〜28mmの鋼板を溶接組立し、その後、焼きなまし処理して降伏強さが50〜110N/mm2である溶接組立鋼構造部材があり、部材の代表的な断面形状としてH形のものがある(特許文献2参照)。
特許第4677059号 特許第3331429号
鋼構造設計便覧,p20,21,JFEスチール(株),2004.10
従来技術(2)のJIS G 3101-2010のSS330については、建築基準法上(平成12年12月26日建設省告示第2464号)、設計基準強度が定められていないなど、これまで建築物等の鋼構造物には使用されていない。つまり、本発明が対象としている構造物の床や屋根などの床版を支持する小梁に使用されていない。
また、従来技術(3),(4)は、地震時に構造物に作用する地震入力エネルギーを、降伏点の低い鋼材の塑性履歴変形により吸収し、構造物の免震・制震・制振部材(たとえば、従来技術(4)で示されているブレースなど)として利用される鋼材又は鋼構造部材であり、床や壁などの固定荷重及び積載荷重を支持するための部材またはその材料に用いるものではない。つまり、これらの従来技術(3),(4)は、本発明が対象としている構造物の床や屋根などの床版を支持する小梁に用いるものではない。
なお、従来技術(3)の鋼材は、降伏点低くするために炭素やその他の元素を極力低減して純鉄としたものや、降伏点の上下限値の範囲が40N/mm2以内(一方、JIS G 3101の鋼材降伏点は下限値のみを規定)であるなど、非常に厳格な管理が必要な鋼材であり、鋼材の製造コストが高いものである。
したがって、従来技術の中で本願発明が対象としている構造物の床や屋根などの床版を支持する小梁に用いることができるものとしては、従来技術(1)の圧延H形鋼や従来技術(2)のJIS G 3101のSS400やその他JIS規格の構造用鋼材となる。
そこで、以下、これら従来技術(1)が合理的なものであるかについて以下検討する。
小梁や弾性範囲で使用する梁などの設計では、主に曲げ耐力と梁のたわみ制限により、必要な鋼材の設計基準強度Fや断面性能(断面二次モーメントI及び断面係数Z)が決定される。
両端支持条件がピン支持で等分布荷重を受ける小梁のスパン(設計梁長さ)Lと許容設計荷重Wの関係を図8のグラフに示す。なお、図8のグラフは、スパンLをH形鋼の高さHで除して無次元化し、許容荷重W(N/m)はH3/Iを乗じて次元を変えた相当許容荷重としているほか、変形制限による許容荷重Wdと曲げ耐力で決まる許容荷重Wb(設計基準強度F=195N/mm2、215N/mm2、235N/mm2の場合)を併せて示したものである。
変形制限による許容荷重Wdは、日本建築学会の「鋼構造設計規準−許容応力度設計法−」に示されるたわみがスパンLの1/300以下の条件で求めたものであり、曲げ耐力による許容荷重Wbは、長期荷重に対する許容応力度を、前述の学会規準や建築基準法(建築基準法施行令90条)に示されるF/1.5として求めたものである。具体的なWd及びWbの算定式は以下のとおりである。
<変形制限による許容等分布荷重>
両端ピン支持で等分布荷重を受ける梁の最大たわみδmaxがL/300以下であることから下式(1)となる。
<曲げ耐力による許容等分布荷重>
最大曲げ応力度σmaxがF/1.5以下であることから、下式(2)となる。
図8のグラフより、L/Hが小さい範囲(F=235の場合、L/H<21)では曲げ耐力によって、L/Hが大きい範囲(F=235の場合、L/H≧21)では変形制限によって、許容荷重が決定されることが分かる。すなわち、比較的荷重の小さい建築物や鋼構造物で、小梁スパンLが小梁高さHに対して相対的に大きな場合、曲げ耐力ではなく変形制限により小梁の許容荷重が決まることになる。
従来技術(1)の圧延H形鋼や従来技術(2)のJIS G 3101のSS400やその他JIS規格の構造用鋼材については、前述したように降伏点すなわち設計基準強度Fが235N/mm2以上である。図8のグラフにおいてF=235N/mm2の曲げ耐力の許容荷重Wb線図を見ると、L/Hが大きい範囲(L/H≧21)では変形制限による許容荷重Wdの線図よりも上方に位置しており、このようなL/Hの範囲においては変形制限で許容荷重が決まることになる。このことは、設計基準強度Fが235N/mm2以上である従来技術(1)は、変形制限で許容荷重が決まるL/Hが大きな範囲では、必要以上の強度を有していることになる。
つまり、従来技術では、設計基準強度Fを235N/mm2以上としているため、このような部材をL/Hが大きい範囲(L/H≧21)で用いるとすると、必要以上の強度を有していることになり、しかも設計基準強度Fが235N/mm2以上の部材はコストも高いことから合理的でない用い方となる。
本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、構造物の床や屋根などの床版を支持する小梁や、鋼材の弾性範囲内で設計する梁に用いられるH形鋼部材であって、安価で適切な強度を有し、合理的な用い方のできるH形鋼部材を提供することを目的とする。
一般的な構造設計では、小梁の高さHとスパンLの比H/Lは1/20〜1/10として、スパンLに対して高さHが比較的高くなるように部材の断面を決定している。これは、H形鋼のフランジ断面積が同じであれば、H形鋼の高さHを大きくした方が断面二次モーメントや断面係数といった部材の断面性能が向上するからである。逆に言えば、H形鋼の高さHが小さな部材は高さが大きなものに比べて断面二次モーメントや断面係数といった部材の断面性能が低下し、スパン及び許容荷重が同じ場合、H形鋼の高さが大きな部材よりも小さな部材のほうが部材重量は大きくなる。このため、従来はH形鋼の高さがスパンに対し相対的に小さな部材はほとんど用いられることがなかった。
しかしながら、小梁の高さHとスパンLの比を1/20〜1/10とした場合、スパンが大きくなると小梁の高さが高くなり、建築物などで同じ天井高さを確保するためには、各階の階高を大きくする必要がある。その結果、多層構造物では建物全体が高くなり、高さ制限のある建設地では建物の階数を少なくせざるを得なくなる。また、同じ階数の建物であれば階高が大きくなることで建物の高さが高くなり、外壁面積が増加して、外装仕上げ等の工事費が増加することになる。このような問題は、比較的荷重が小さく、梁スパンが大きい構造物ではより顕著となる。
発明者は、必ずしもH形鋼部材の高さとスパンの比H/Lを1/20以上にしなくとも、安価なH形鋼部材を提供できるのであれば、ある程度の部材重量の増加による部材コストの上昇を補うことができるのではないかと考え、H形鋼部材の高さとスパンの比H/Lを1/20未満(図8のL/HではL/H>20)にすることを検討した。
しかしながら、上述したように従来のH形鋼部材は、設計基準強度Fが235N/mm2以上であり、L/H>20のような用い方をすると不合理なものとなる。
そこで、発明者は、L/H>20のような用い方をした場合において、合理的な用い方となるにはいかにすべきかを鋭意検討して本発明を完成したものであり、具体的には以下の構成からなるものである。
本発明に係るH形鋼部材は、上下フランジとウェブを有する二軸対称のH形断面を有し、部材両端がピン支持とみなされる接合条件で、かつ、等分布荷重が作用する鋼構造部材であって、
部材を構成する鋼材の厚さが40mm以下、鋼材の引張強さが300〜510N/mm2で、H形鋼の高さをH、部材のスパン(支点間距離)をL、部材のたわみ制限をスパンLの1/kとしたとき、LとHの比L/Hが下記の条件(I)を満たすとともに、設計基準強度F(N/mm2)が下記の条件(II)を満たすことを特徴とするものである。
L/H>6281/k :(I)
195≦F<235 かつ F≧1,476,000/{k×(L/H)} :(II)
本発明によれば、H形鋼部材の許容荷重を小さくすることなく、設計基準強度Fが235(N/mm2)以上である従来のH形鋼部材よりも、添加元素量を少なくして強度を低減した安価なFが235N/mm2未満の鋼材を用いることが可能となる。これにより、H形鋼の高さがスパンに対して相対的に小さな部材について、鋼材のコストダウンが実現でき、建物の階高を大きくすることなく天井高さを確保して建物全体のコストを抑える場合、従来よりも更に建物のコストを低減できる。
本発明の一実施の形態のH形鋼部材の断面図である。 本発明の一実施の形態のH形鋼部材の支持条件重と荷重条件の説明図である。 本発明のL/Hの下限値とkの関係を表したグラフである。 本発明のFの下限値とkの関係をL/Hの値に応じて表したグラフである。 本実施の形態の効果を示すものであり、k=300とした場合について、F値の低下による、従来技術に対する許容荷重の比率を表したグラフである。 本発明の一実施の形態のH形鋼部材の実際の適用例を示した図である。 本発明の実施例を説明する図であり、k=300とした場合のFの下限値とL/Hの関係並びに一実施例(H-440×300×11×18)における部材の許容荷重WaとスパンLの関係を表したグラフである。 本発明の解決しようとする課題を説明する図であり、k=300とした場合にF値に応じて許容荷重が変形制限で決まるか曲げ耐力で決まるかを説明するグラフである。
本発明の一実施の形態に係るH形鋼部材1は、図1に示すように、上フランジ2、下フランジ3、ウェブ4を有する二軸対称のH形断面を有する部材であり、図2に示すように、部材両端がピン支持とみなされる接合条件で、かつ、等分布荷重が作用する鋼構造部材である。
そして、部材を構成する鋼材の厚さt1、t2が40mm以下、鋼材の引張強さが300〜510N/mm2で、H形鋼の高さをH(図1参照)、部材のスパン(支点間距離)をL、部材のたわみ制限をスパンLの1/kとしたとき、LとHの比L/Hが下記の条件(I)を満たすとともに、設計基準強度F(N/mm2)が下記の条件(II)を満たすことを特徴とするものである。
L/H>6281/k :(I)
195≦F<235 かつ F≧1,476,000/{k×(L/H)} :(II)
鋼材の厚さt1、t2を40mm以下としたのは、床版を支持する小梁などに用いるH形鋼部材では、構造物の主要な柱や大梁と異なりフランジやウェブの厚さをあまり大きくする必要はなく、40mm以下の厚さで十分であるからである。また、鋼材の厚さが40mmを超えると同一の成分であっても、鋼材の製造工程上、降伏点強度が小さくなり、前述のJIS G3011のSS400の場合、厚さ40mm越えの降伏点の規定は215N/mm2となっている。これらのことを踏まえ、本発明では、鋼材の厚さは40mm以下とした。
また、鋼材の引張強さを300〜510N/mm2とした理由は次の通りである。一般にF値は鋼材の降伏点の規格下限値が採用され、降伏点の規格下限値を195から235N/mm2の範囲にした場合の鋼材では、引張強さは300〜510N/mm2の範囲とすることが望ましいからである。
本実施の形態において、L/Hを条件(I)で規定し、Fの値を条件(II)で規定した理由を以下に説明する。
<条件(I)の理由>
本発明でのH形鋼部材の許容荷重は、前記のように変形による制限と曲げ耐力の制限のいずれか小さいほうで決定される。
一般に変形制限は、前述のように部材のたわみをスパンLの1/300としているが、スパンLが大きくなると部材のたわみの絶対量が大きくなり、床版を支持する部材などでは、床版が振動しやすくなり振動障害が生じる恐れがある。
このため、部材のたわみ量をスパンLの1/300よりも厳しい変形制限に設定することが必要な場合がある。そこで、部材のたわみ量をスパンLの1/kと任意に設定できるようにした。この場合の変形制限による許容荷重Wd(k)は、前述の(1)式におけるたわみ制限L/300をL/kとすることで以下の(3)式のようになる。
この変形制限による許容荷重Wd(k)と曲げ耐力が等しくなるL/H(変形制限がL×1/300の場合、図8のグラフにおける変形制限の曲線と曲げ耐力の曲線の交点)は以下のように求めることが出来る。
上記の式を整理すると、Wd(k)=WbとなるL/Hは下式となる。
設計基準強度Fが、従来技術の最小値である235N/mm2の場合、(4)式にF=235N/mm2を代入することでL/Hは6281/kとなり、L/H>6281/kの範囲ではFが235N/mm2以上でも部材の許容荷重は(3)式の変形制限で決定することになる。
鋼材の設計基準強度Fは一般に鋼材の降伏点規格下限値を採り、F≧235(N/mm2)とするためには、一定以上の鋼材強度を確保する必要がある。
これに対し、設計基準強度Fが小さな鋼材は、強度が低くても良いことから、製造するにあたってシリコン(Si)やマンガン(Mn)などの添加元素の量を低減できるため、F≧235(N/mm2)の鋼材よりも安価なH形鋼部材を提供できる。
そこで、変形制限をスパンLの1/kとした場合、鋼材の強度が従来技術のようにF≧235(N/mm2)であっても変形制限で許容荷重が決まるため、Fの値を小さくしてH形鋼部材の鋼材コストを低減できるようなL/Hの範囲として、L/Hは6281/kを超える範囲とした。
<条件(II)の理由>
設計基準強度Fの範囲は、従来技術よりも鋼材コストを低減できるよう、設計基準強度の上限を235N/mm2未満とした。
もっとも、設計基準強度は小さければ小さいほどコスト低減できるわけではなく、鋼材の設計基準強度をある値よりもさらに小さくするには、炭素(C)量を低く抑える必要があり、鋼材製造時の製鋼工程において、精錬処理に手間がかかるなど、かえって製造コストが上昇することになる。このため、製造コストの低減に適した鋼材強度の範囲として、設計基準強度Fの下限を195N/mm2以上とした。
さらに、変形制限を部材のたわみ量がL×1/k以下とした場合、変形制限で決まるFの下限値は、前記の(4)式から以下の(5)式が導出される。
F=1,476,000/{k×(L/H)}・・・(5)
すなわち、F(N/mm2)が1,476,000/{k×(L/H)}未満では、許容荷重は曲げ耐力で決まり、変形制限による許容荷重よりも小さくなってしまう。
そこで、変形制限を部材のたわみ量がL×1/k以下とした場合、許容荷重が変形制限で決まるFの範囲として、下記に示す(6)式の条件を追加した。
F≧1,476,000/{k×(L/H)}・・・(6)
図3に条件(I)のkとL/Hの下限値の関係を、図4にkとL/H=13、17、21、25の場合のF(N/mm2)の下限値である1,476,000/{k×(L/H)}の関係をグラフで示した。
本実施の形態によれば、部材の変形制限に関するkの値に対して、本発明の有効な部材スパンLとH形鋼の高さHの比L/Hの下限値が図3のように明らかになるとともに、鋼材のコストを低減できる設計基準強度F(N/mm2)の範囲である195≦F<235において、図4のように必要なFの下限値が明らかとなる。
これにより、階高を小さくしたまま天井高さを確保して構造物の高さを低く抑える場合、鋼材に必要な設計基準強度が容易に判明できるため、製造コストの安いH形鋼部材の提供が可能になり、従来技術に比べて、外装仕上げの工事費を含めて構造物全体のコストを低減できるようになった。
上記の点を、変形制限がL×1/300すなわちk=300の場合について、具体的に説明する。
図5は、変形制限がL×1/300すなわちk=300の場合について、横軸をF値とし(反転表示)、縦軸は横軸のF値に対応した部材の許容荷重Wa(F)をF=235(N/mm2)の許容荷重Wa(F=235)で除した値としたグラフであり、F値の低下により、従来技術に対して許容荷重がどのような比率になるかを示している。
k=300では、本発明のL/Hの範囲は20.9(=6281/300)越えであり、L/H=21,23,25,27の場合をグラフ中に表示した。
図5より、各L/Hの許容荷重Wa(F)は、(5)式(F=476,000/{k×(L/H)})で求められるF(N/mm2)の下限値234、214、197、182まではF=235の許容荷重Wa(F=235)と等しく、F値がこれらの値未満になると許容荷重Wa(F)が低下することがわかる。
すなわち、L/H>20.9であれば、Fが235N/mm2未満でもF≧235N/mm2と同等の許容荷重となるFの下限値が存在し、その値は(5)式で決定される。
したがって、本発明によれば、H形鋼部材の許容荷重を小さくすることなく、設計基準強度Fが235(N/mm2)以上である従来のH形鋼部材よりも、添加元素量を少なくして強度を低減した安価なFが235N/mm2未満の鋼材を用いることが可能となる。これにより、H形鋼の高さがスパンに対して相対的に小さな部材について、鋼材のコストダウンが実現でき、建物の階高を大きくすることなく天井高さを確保して建物全体のコストを抑える場合、従来よりも更に建物のコストを低減できる。
なお、図1の部材断面は、半径寸法rのフィレット部を有する圧延H形鋼を示しているが、本発明のH形鋼部材は、圧延H形鋼以外の溶接組立のH形鋼であっても良い。
また、本発が対象とする鋼構造部材では、横座屈により部材の耐力が低下する恐れがあるため、図6に示すように、圧縮側の上フランジが床スラブ5などで拘束されていることが好ましい。
表1に「JIS G 3192 熱間圧延形鋼の形状,寸法,質量及びその許容差」に示されるH形鋼の標準断面寸法の一部である断面A〜Hを対象に、k=300,500、作用荷重W=20,25kN/mの各組合せに対し、本発明の条件(I)を満足するスパンLを有し、設計基準強度F(N/mm2)が230,215,195である部材について、本発明の適用の可否を示した。表中の「(I)L下限」は本発明の条件(I)によるLの下限値、「(II)F下限」は条件(II)によるFの下限値である。なお、k=500の場合については、F≧195の条件により全てのFの下限値が決定しているため、参考として(5)式によるFの下限値を併せて表示した。
表中には、F=230,215,195が本発明の適用範囲のF下限値を満足するか否かを「○」「×」で表し(「○」が満足、「×」が満足しない)、部材の許容荷重Wa(前記(2)式によるWb、(3)式によるWd(k)のうち小さい方の値)と、Waが作用荷重Wを上回るか否かを「OK」「NG」で表した(上回る場合を「OK」、そうでない場合を「NG」)。
k=300の場合は、W=20(kN/m)ではF=230、215の全ての部材(A-1〜H-1)、W=25(kN/m)ではF=230の全ての部材(A-2〜H-2)及びF=215のB-2,F-2の部材が本発明の適用範囲であると共に許容荷重Waが作用荷重Wを上回っている。
すなわち、適用範囲「○」、判定「OK」の両方を満足するこれらの部材が本発明のH形鋼部材の実施例に相当する。
k=500の場合は、W=20、25(kN/m)でF=230、215、195の全て部材(A-3〜H-3、A-4〜H-4)が適用範囲と判定の両方を満足しており、全てが本発明の実施例に相当する。
一方、k=300の場合で、W=20(kN/m)ではF=195の全ての部材(A-1〜H-1)、W=25(kN/m)ではF=215のB-2、F-2以外の部材(A-2,C-2〜E-2,G-2,H-2)及びF=195のC-2の部材では、本発明の適用範囲外であっても許容荷重Waは作用荷重Wを上回っている。
この点について、以下に説明する。
表1で適用範囲外の部材はいずれもF値が本発明の範囲よりも小さく、全て(2)式の曲げ耐力で許容荷重が決まっている。
一方、本発明の適用範囲にある部材は全て(3)式の変形制限により許容荷重が決まっている。図5に示したように、L/Hが本発明の条件(I)の範囲では、Fが本発明の条件(II)のL/Hにより定まる値よりも小さな部材の許容荷重Waは、Fが本発明の適用範囲にある部材の許容荷重Waよりも小さくなる。このように、本発明は従来のH形鋼部材よりも許容荷重を小さくすることなく、安価な鋼材を用いたH形鋼部材を提供するものであり、実際の設計に当たっては本発明のF下限値よりもF値が小さくても良い場合がある。しかし、許容荷重が設計荷重を上回るか否かは設計行為によるものであるから、このようなことは当然生じうることである。
上記の内容を、k=300、断面がH-440×300×11×18(記号C)の場合について、グラフ化して示したものが図7である。図7は、許容荷重Wa(左縦軸)及び本発明のF下限値(右縦軸)と、L/H並びにLの関係を示したものである。スパンLが11m(表1のC-1)では、本発明のF下限値は197N/mm2であるため、許容荷重WaはF(N/mm2)が230と215とでは等しくなるがF=195ではWaが僅かに小さくなっている。
また、スパンLが10m(表1のC-2)では、本発明のF下限値は216N/mm2であるため、やはりF=215のWaはF=230よりも僅かに小さい。ただし、F=230、215、195のいずれであっても、C-1、C-2の許容荷重Waは表1で設定した作用荷重Wの20kN/mまたは25kN/mを上回っている。すなわち、本発明の範囲外となるさらに小さなF値であるH形鋼部材であっても、設計は可能である。
また、異なる見方をすれば、F=230、215、195のいずれの部材であっても、作用荷重が20kN/m又は25kN/mの場合、この荷重が許容荷重となるスパンは11mまたは10mを超えている。このように、本発明の適用範囲外であっても設計上は十分な余裕を有する部材が存在することは当然のことである。
なお、表1のH形鋼断面はJIS G 3192の標準断面寸法の中から選んだものであるが、本発明はこれらJISの標準断面の圧延H形鋼部材に限るものではなく、JIS標準断面寸法以外の圧延H形鋼や溶接組立のH形鋼の部材であっても良い。
1 H形鋼部材
2 上フランジ
3 下フランジ
4 ウェブ
5 床スラブ

Claims (1)

  1. 上下フランジとウェブを有する二軸対称のH形断面を有し、部材両端がピン支持とみなされる接合条件で、かつ、等分布荷重が作用する鋼構造部材であって、
    部材を構成する鋼材の厚さが40mm以下、鋼材の引張強さが300〜510N/mm2で、H形鋼の高さをH、部材のスパン(支点間距離)をL、部材のたわみ制限をスパンLの1/k(300≦k≦500)としたとき、LとHの比L/Hが下記の条件(I)を満たすとともに、設計基準強度F(N/mm2)が下記の条件(II)を満たすことを特徴とするH形鋼部材。
    L/H>6281/k :(I)
    195≦F<235 かつ F≧1,476,000/{k×(L/H)} :(II)
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