以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
(高炉内で進行している反応の概略)
まず、図1を参照しながら、本発明の実施形態で着目する高炉について、簡単に説明する。図1は、本発明の実施形態で着目する高炉について説明するための説明図である。
図1に示したように、高炉は、円筒の徳利形状を有する竪型炉の一種であり、炉の頭頂部(炉頂部)から供給される原料と、炉の下方に設けられた羽口から供給される熱風により生成される還元性ガスとが反応する反応装置として機能する。
炉頂部から供給される原料としては、主に、鉄鉱石や焼結鉱等の鉄酸化物、コークス、石灰石等がある。鉄鉱石は、高炉における反応で生成される銑鉄の鉄源となるものであり、コークスは、鉄鉱石の還元剤及び原料を溶解するための熱源として機能するだけでなく、高炉内の通気性を保持する役割を有している。また、石灰石は、鉄鉱石の脈石成分と反応して低溶融点を持ち流動性のよいスラグを生成するために添加される媒溶剤として機能する。
高炉の内部では、図1に示したように、鉄鉱石(及び石灰石)からなる層と、コークスからなる層とが交互に積層されている。これらの原料は、図1に示したような積層状態を維持しつつ、炉の下方へと移動していく。
また、図1に示した羽口からは、熱風及びコークスの補完還元剤として機能する微粉炭が供給される。羽口近傍のレースウェイと呼ばれる領域において、供給された熱風により微粉炭やコークスが燃焼によりガス化して、一酸化炭素や水素等からなる高温の還元性ガスが生成される。この高温の還元性ガスは、炉内を移動する上昇気流となって炉頂部へと吹き昇っていく。この還元性ガスにより炉内の鉄鉱石は還元されていき(間接還元)、更に、還元性ガスが有する熱によって固体から液体へと変化する。液体となった鉄分は、コークス層内を滴下しながらコークスの炭素によって更に還元され(直接還元)、炭素を5%程度含む溶銑となる。
図1に示した融着帯では、半溶融状態にある鉄分の間に固体コークスがスリット状に存在している部分であり、主にこの融着帯において、上述のような鉄分の相変化が生じている。
このように、高炉という反応装置では、固体、液体、気体が共存して反応が進行している。安定的な操業を行うためには、高炉内で進行している還元反応を予測することが重要である。以下で説明する本発明の実施形態では、高炉内の状況を把握する際の指標として、「生鉱落ち」という現象が発生したか否か、及び、「微粉炭膨張」という現象が発生したか否か、という少なくとも2つの指標に着目する。
「生鉱落ち」とは、未溶融の鉱石が落下する現象であり、このような現象が発生するということは、高炉内の熱量が不足していることを意味する。そのため、生鉱落ちが発生した場合には、コークス量を増加するなどといった、炉内の熱量を増加させるための処置が必要となる。
「微粉炭膨張」とは、羽口を撮像した撮像画像において、通常ノズル先端の画像1/3程度を占めている未燃焼微粉炭の像が急拡大する現象である。このような現象の発生は、レースウェイの形状が好ましい形状から変化していることを示唆するものであるため、レースウェイの形状を良好な状態にするための処置が必要となる。
(本発明の基盤を成す技術的事項について)
まず、本発明に係る実施形態について説明するに先立ち、本実施形態を実現する上で基盤を成す技術的事項について述べる。なお、本実施形態は、以下に記載する基盤技術に関する関連発明の上に改良を加えることにより、より顕著な効果を得ることができるように構成されたものである。従って、その改良に係る技術こそが本実施形態の特徴を成す部分である。つまり、本実施形態は、ここで述べる技術的事項の基礎概念を踏襲するが、その本質はむしろ改良部分に集約されており、その構成が明確に相違すると共に、その効果において関連発明とは一線を画するものであることに注意されたい。
<高炉羽口状態観察装置について>
まず、図2を参照しながら、本発明の基盤技術に係る高炉羽口状態観察装置10について、詳細に説明する。
本発明の基盤技術に係る高炉羽口状態観察装置10は、図2に示したように、撮像装置100及び演算処理装置200を備える。
[撮像装置について]
撮像装置100は、羽口の熱放射輝度の分布状況を撮像して、熱放射輝度画像を生成する装置である。撮像装置100は、レンズ等の各種光学素子と、CCD(Charge Coupled Device)、又は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子と、を有している。ここで、本基盤技術に係る撮像装置100は、静止画像を生成可能なものであってもよく、動画像を生成可能なものであってもよい。また、本基盤技術に係る撮像装置100は、モノクロ画像を撮像可能なものであってもよいし、カラー画像を撮像可能なものであってもよい。なお、カラー画像を撮像可能な撮像装置を利用する場合には、1チャンネルの輝度画像を生成すればよい。すなわち、輝度画像の生成手段としては、RGB成分のうちR,G,Bのいずれかの成分だけを利用しても良いし、RGB色空間からYCbCr色空間への変換を行い、Y成分のみを利用しても良い。
撮像装置100は、後述する演算処理装置200により制御されており、所定のフレームレート毎に、演算処理装置200から撮像のためのトリガ信号が出力される。撮像装置100は、演算処理装置200から出力されたトリガ信号に応じて、羽口からの熱放射を撮像し、生成した熱放射輝度画像を演算処理装置200に出力する。
図3は、本基盤技術に係る撮像装置100の設置状態を説明するための説明図であり、図4は、本基盤技術に係る熱放射輝度画像の例を示した説明図である。高炉は、耐熱レンガによって覆われているが、図3に示したように、羽口近傍には、PCランスによって微粉炭が供給されるとともに、1200℃程度の熱風が供給されている。羽口から約1mの範囲にはレースウェイが形成されており、このレースウェイでは、微粉炭やコークス等の燃焼により、2000℃以上の高温となっている。
本基盤技術に係る撮像装置100は、羽口の状態を観察するための観察窓に設置されており、羽口近傍のレースウェイからの熱放射を撮像して熱放射輝度画像とする。羽口は、通常、円形状であるが、撮像装置100は、羽口を斜め上から見下ろすように撮像するため、撮像される熱放射輝度画像の羽口形状は、図4左上に示したように、略楕円形状となる。
撮像装置100は、高炉の操業状態が良好と判断されている際に、予め撮像視野やピント等が調整されており、適切な撮像処理が行われるようになっている。高炉羽口の状態が良好である場合には、図4右上に示したように、視野の中にPCランスの先端部が写りこむとともに、PCランスの先端から供給される微粉炭が、視野の1/3程を占有することとなる。また、PCランス及び微粉炭以外の領域は、レースウェイの温度に起因する熱放射が写りこむこととなる。
生鉱落ちが発生した際には、図4左下に模式的に示したように落下した鉱石が写りこむこととなるため、視野全体が一時的に暗くなって、熱放射輝度が低下する。また、微粉炭膨張が発生した場合には、図4右下に模式的に示したように、微粉炭の占める領域が視野の右下から左上に向かって急激に膨張し、その後図4右上に示したような状態へと回復するという、特徴的なパターンが観測される。
以上、図4を参照しながら、本基盤技術に係る熱放射輝度画像の例について、具体的に説明した。
[演算処理装置の全体構成について]
続いて、再び図2に戻って、本基盤技術に係る演算処理装置200の全体構成について説明する。
本基盤技術に係る演算処理装置200は、撮像装置100により撮像された複数の熱放射輝度画像に対して画像処理を実施して、後述する明部分布情報を生成する。また、演算処理装置200は、生成した明部分布情報に基づいて、羽口の状態(すなわち、生鉱落ちや微粉炭膨張の発生)を判断することも可能である。
この演算処理装置200は、図2に示したように、撮像制御部201と、画像処理部203と、表示制御部205と、記憶部207と、を主に備える。
撮像制御部201は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、通信装置等により実現される。撮像制御部201は、本基盤技術に係る撮像装置100による羽口の撮像制御を実施する。より詳細には、撮像制御部201は、羽口の熱放射輝度画像の撮像を開始する場合に、撮像装置100に対して撮像を開始させるための制御信号を送出する。
画像処理部203は、例えば、CPU、ROM、RAM、通信装置等により実現される。画像処理部203は、撮像装置100から取得した熱放射輝度画像の撮像データに対して、以下で説明するような画像処理を行い、後述する明部分布情報を生成する。また、画像処理部203は、生成した明部分布情報に基づいて、生鉱落ちや微粉炭膨張等が発生したか否かを判断する。画像処理部203は、生成した明部分布情報や、生鉱落ちや微粉炭膨張等の判断結果に関する情報を、表示制御部205に伝送する。
なお、この画像処理部203については、以下で改めて詳細に説明する。
表示制御部205は、例えば、CPU、ROM、RAM、出力装置等により実現される。表示制御部205は、画像処理部203から伝送された、明部分布情報や、生鉱落ち/微粉炭膨張の判断結果を、演算処理装置200が備えるディスプレイ等の出力装置や演算処理装置200の外部に設けられた出力装置等に表示する際の表示制御を行う。これにより、高炉羽口状態観察装置10の利用者は、明部分布情報や高炉羽口の状態に関する情報を、その場で把握することが可能となる。
記憶部207は、演算処理装置200が備える記憶装置の一例である。記憶部207には、本基盤技術に係る演算処理装置200が、何らかの処理を行う際に保存する必要が生じた様々なパラメータや処理の途中経過等、または、各種のデータベースやプログラム等が、適宜記録される。この記憶部207は、撮像制御部201、画像処理部203、表示制御部205等が、自由に読み書きを行うことが可能である。
[画像処理部について]
続いて、図5〜図14を参照しながら、本基盤技術に係る演算処理装置200が備える画像処理部203について、詳細に説明する。
図5は、本基盤技術に係る演算処理装置が有する画像処理部の構成を示したブロック図である。図6は、本基盤技術に係る画像変換部について説明するための説明図である。図7は、本基盤技術に係る二値化画像について説明するための説明図である。図8〜図10は、本基盤技術に係る明部分布情報について説明するための説明図である。図11は、本基盤技術に係る特徴量算出部について説明するための説明図である。図12は、本基盤技術に係る軌跡情報について説明するための説明図である。図13は、本基盤技術に係る軌跡情報の例について説明するための説明図である。図14は、本基盤技術に係る高炉羽口状態の判断方法について説明するための説明図である。
本基盤技術に係る画像処理部203は、図5に示したように、画像変換部211と、二値化画像生成部213と、明部分布情報生成部215と、特徴量算出部217と、軌跡情報生成部219と、状態判断部221と、を主に備える。
画像変換部211は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。画像変換部211は、撮像装置100が生成した熱放射輝度画像に対して幾何学変換を実施して正規化画像を生成するとともに、当該正規化画像に対して極座標変換を実施する。
また、画像変換部211は、高炉羽口状態観察装置10が観察する羽口の形状について楕円近似を行っていない場合には、熱放射輝度画像に写っている羽口の形状に合わせて楕円近似処理を実施する。なお、この楕円近似処理は、少なくとも一度行われれば良く、熱放射輝度画像が撮像される毎に実施しなくともよい。
以下では、画像変換部211が楕円近似処理を実施した後に、幾何学変換処理及び極座標変換処理を行う場合について説明する。
図4に例示したように、本基盤技術に係る熱放射輝度画像に写っている羽口の輪郭形状は、略楕円形状となっている。そこで、画像変換部211は、羽口の輪郭形状を、以下の式101で表されるような楕円で近似し、楕円の中心位置(重心位置)と、長軸及び短軸の長さと、を算出する。ここで、下記式101において、座標(xC,yC)は、楕円の中心座標を表し、パラメータaは、長軸の1/2の長さを表し、パラメータbは、短軸の1/2の長さを表す。
なお、熱放射輝度画像に写っている羽口の楕円形状の輪郭を得るためには、設備の補修等で高炉に送風する熱風を止める、いわゆる休風時の画像を用いればよい。休風時の画像は、図4に示したように、視野内には微粉炭は存在せず、PCランスのみが写り込んだものとなっている。そこで、休風時の画像からPCランスを除いた部分の輪郭を考慮し、この輪郭に当てはまるような楕円を、コンピュータで実行される画像処理アプリケーション等を利用して描いた上で、描いた楕円に関するパラメータ(xC,yC,a,b)を画像上で測定すればよい。
楕円近似処理が終了した場合、又は、既に楕円近似処理が実施されている場合には、画像変換部211は、楕円近似後の熱放射輝度画像に対して幾何学変換処理を実施して、羽口の輪郭である楕円形状を真円に正規化する。より詳細には、画像変換部211は、図6に示したように、長軸に対応するx軸を(b/a)倍に縮小して、半径b、中心((b/a)×xC,yC)の正規化円とし、正規化画像を生成する。
ここで、楕円形状を円に正規化する際の幾何学変換は、公知のものを使用することが可能であり、例えば、アフィン変換を利用すればよい。
続いて、画像変換部211は、図6に示したように、生成した正規化画像に対して極座標変換を実施する。正規化円の中心位置が算出されることで、正規化画像を構成する各画素の位置を極座標(r,θ)で表すことができる。画像変換部211は、算出した中心位置を基準とし、動径rの範囲及び偏角θの範囲を、それぞれ0≦r≦b、0°≦θ<360°として、極座標変換を実施する。極座標変換を行うことによって、正規化画像は、図6に示したような帯状の画像となる。
ここで、図6に示したような帯状画像において、動径方向rに対して平行な辺の長さは、正規化円の半径に対応しており、偏角方向θに対して平行な辺の長さは、正規化円の円周に対応している。また、偏角方向θに対して平行な辺のうち、一方は、正規化円の中心に対応しており、もう一方は、正規化円の外周に対応している。
画像変換部211は、極座標変換により生成した帯状画像に対応するデータを、二値化画像生成部213に出力する。
二値化画像生成部213は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。二値化画像生成部213は、極座標変換後の正規化画像である帯状画像を二値化して、二値化画像を生成する。より詳細には、二値化画像生成部213は、帯状画像を構成する各画素の画素値(輝度値)と、二値化閾値との大小比較を行うことで帯状画像を二値化し、二値化画像を生成する。
ここで、二値化画像生成部213が二値化処理の際に利用する二値化閾値は、固定の閾値ではなく、熱放射輝度画像(ひいては、二値化画像)に含まれる最高輝度に応じて変動する閾値とする。熱放射輝度画像において、ある程度以上の輝度値を有しており、かつ、輝度の分布が一様である場合には、羽口近傍の温度(レースウェイ温度)の高低によらず、高炉羽口の状態は良好であると判断できるからである。具体的には、二値化画像生成部213は、二値化閾値として、(a)予め設定された輝度閾値と、(b)最高輝度値に予め設定された係数を乗じたもの、のうち、何れか大きい値となるものを、二値化閾値として使用する。輝度閾値や係数は、高炉に固有の特性や操業状況等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、明らかに通常操業では燃焼部分としてあり得ない低い温度に対応する低い輝度値を輝度閾値として設定する。このように二値化閾値を設定することで、通常操業時では最高輝度、すなわちレースウェイ温度の変動について正規化した二値画像が得られるとともに、生鉱落ちによる視野閉塞等といった異常状態を、二値画像がすべて0という条件で検知することができる。
二値化画像生成部213は、このような二値化閾値を利用して帯状画像を二値化することで、例えば図7に示したような二値化画像を生成する。二値化画像において、二値化閾値以上の輝度値を有していた画素は、画素値が1である部分(以降、明部とも称する。)となり、二値化閾値未満の輝度値を有していた画素は、画素値が0である部分(以降、暗部とも称する。)となる。
二値化画像生成部213は、生成した二値化画像に対応するデータを、後述する明部分布情報生成部215に出力する。
明部分布情報生成部215は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。明部分布情報生成部215は、生成された二値化画像を利用して、当該二値化画像に存在する明部の正規化円の径方向での分布を示す明部分布情報を生成する。
より詳細には、明部分布情報生成部215は、二値化画像におけるそれぞれの径方向位置rについて、同一の径方向位置を有し、かつ、相異なる偏角位置を有する複数の画素に対応する画素値を積算して、得られた積算値を該当する径方向位置における明部分布情報の要素値とする。このような画素値の積算処理は、二値化画像を図7に示した破線矢印の方向に投影することに対応している。また、明部分布情報生成部215が利用する画像は二値化された画像であるため、画素値の積算結果は、着目している径方向位置において明部に対応する画素の個数を表していることとなる。このような処理を、動径方向rの各位置(0≦r≦b)に対して実施することで、明部分布情報生成部215は、図8に示したような明部分布情報を生成することができる。なお、明部分布情報の要素値としては投影値(Σθ)に限定されず、動径方向rの関数である重みW(r)を乗じたW(r)Σθを、明部分布情報の要素値としても良い。重みW(r)としては、例えばW(r)=rとすれば、径方向位置に比例した重みを掛けた分布情報となる。
図4に示したように、微粉炭膨張時には画像の外周部のみに明部が残るが、生鉱落ちの場合には画像の外周部及び内周部が暗くなるという特徴があり、各動径位置rにおける投影値(Σθ)に違いがみられる。
明部分布情報を構成する各要素を動径位置毎にプロットすると、図8に示したようなグラフ図を生成することができるが、このようなグラフ図は、それぞれの動径位置において、明部に対応する画素が何個存在したかを表すグラフとなる。従って、偏角方向θについて例えば1°刻みで極座標変換が行われている場合には、生成される明部分布情報は、半径rの位置において二値化閾値以上の輝度値を有する明部が何度分存在したかを表す情報となる。
明部分布情報生成部215は、このような明部分布情報の生成処理を、撮像された熱放射輝度画像毎に実施する。また、明部分布情報生成部215は、生成した各時刻tにおける明部分布情報を時刻順に配列させることで、明部分布情報の時系列推移を示した時系列推移情報を生成することができる。具体的には、明部分布情報生成部215は、ある時刻tにおける熱放射輝度画像に対応する二値化画像を取得すると、取得した二値化画像に基づいて明部分布情報を生成し、生成した明部分布情報を記憶部207等に設けられたメモリ領域に順次格納していくことで、上記のような時系列推移情報を生成することができる。
本基盤技術に係る演算処理装置200は、このようにして生成された時系列推移情報を、図9に示したような3次元グラフとして表してもよいし、図10に示したように、投影値の大きさに応じて色の濃淡が変化するような2次元グラフ(濃淡図)として表してもよい。
ここで、図10に示した濃淡図では、投影値の大きさが大きいほど白く表示される。また、図10には、高炉羽口の状態が、(a)良好、(b)やや良好、(c)生鉱落ち、(d)微粉炭膨張、の各状態における濃淡図をあわせて示している。
図10(a)に示した良好状態では、羽口の外周に近づくほど明部の割合が多くなっており、かつ、時間が経過した場合であっても帯状画像に占める明部の割合が一様になっている。また、図10(b)に示したやや良好の状態では、明部の割合は少ないものの、時間が経過した場合であっても帯状画像に占める明部の割合は一様になっている。
また、図10(c)は、60秒〜80秒において生鉱落ちが発生した場合の時系列推移情報である。図10(c)から明らかなように、生鉱落ちが発生した時点では、半径方向のほぼ全域が暗くなっている。一方、図10(d)は、10秒〜30秒において微粉炭膨張が発生した場合の時系列推移情報である。図10(d)から明らかなように、微粉炭膨張が発生すると、暗部が羽口の周囲に向かって増加し、その後、明部が羽口の中心すなわち動径方向の小さい位置に向かって増加していくような、特定の挙動を示している。
明部分布情報生成部215は、以上説明したような方法で明部分布情報や、時系列推移情報を生成すると、生成したこれらの情報を、後述する特徴量算出部217に出力する。また、明部分布情報生成部215は、生成したこれらの情報を表示制御部205に出力して、表示画面に表示させてもよい。
なお、以上の説明では、生成される熱放射輝度画像毎に以上説明したような処理が実施される場合について説明したが、熱放射輝度画像、又は、当該熱放射輝度画像に基づいて生成される情報の少なくとも何れかを、所定の時定数で平滑化して用いてもよい。すなわち、熱放射輝度画像や二値化画像や帯状画像等を、予め設定された時定数を持つ指数平滑化や移動平均により平滑化して利用してもよく、平滑化されていない画像を用いて生成される明部分布情報や時系列推移情報を、予め設定された時定数を持つ指数平滑化や移動平均により平滑化してもよい。この平滑化の時定数は、観察すべき現象の継続時間の1/10程度に設定すればよい。例えば、微粉炭膨張は10秒程度継続する現象であるため、時定数を1秒程度とする。
特徴量算出部217は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。特徴量算出部217は、明部分布情報生成部215により生成された明部分布情報を利用して、ある時刻における明部分布情報を特徴づける特徴量を算出する。
より詳細には、特徴量算出部217は、各時間の明部分布情報について、所定の径方向範囲に含まれる要素の個数を特徴づける要素数特徴量と、要素の最大値を与える径方向位置を示した径方向位置特徴量と、を少なくとも算出する。具体的には、特徴量算出部217は、図11に例示したように、要素数特徴量として指定範囲内での明部分布情報の要素値の平均値mを算出するとともに、径方向位置特徴量として、明部分布情報の要素値が最大となる半径である最高画素半径nを算出する。ここで、図11における指定範囲は、図10の濃淡図において濃淡が変化している範囲を選べばよい。
ここで、明部分布情報の要素値の平均値mは、明部分布情報にどれくらい明部が含まれているか(換言すれば、どれくらい暗部が含まれているか)を示す特徴量であり、最高画素半径nは、明部が二値化画像の動径方向のどの部分に多く残っているのかを示す特徴量である。
なお、以下では、明部分布情報の要素値として、着目している径方向位置において明部に対応する画素の個数を用い、要素数特徴量として、指定範囲内での明部平均画素数mを算出する場合を例にとって説明を行うが、明部平均画素数mの代わりに指定範囲内での最大画素数や画素数の中間値や最頻値等を算出しても良いし、明部平均画素数mに加えて最大画素数や画素数の中間値や最頻値等を算出しても良い。
特徴量算出部217は、各時間の明部分布情報について明部平均画素数m及び最高画素半径nを算出すると、算出したこれらの特徴量を、軌跡情報生成部219に出力する。
軌跡情報生成部219は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。軌跡情報生成部219は、特徴量算出部217により算出された特徴量を利用して、当該特徴量を用いて規定される特徴量座標系を設定する。その後、軌跡情報生成部219は、複数の異なる時刻における明部分布情報に対応する特徴量の組み合わせで特定される特徴量座標系での点の、時間推移に伴う軌跡を示した軌跡情報を生成する。
図12には、軌跡情報生成部219によって生成される軌跡情報の一例を示している。特徴量算出部217によって算出される特徴量の組み合わせ(m,n)は、明部が二値化画像のどのあたりに存在しているかを示すものであり、ある時刻における羽口近傍の状態を表す代表点であると言える。従って、点(m,n)の時間推移を軌跡として表すことで、羽口近傍の状態変化を容易に把握することが可能となる。
図13は、高炉羽口の状態が、(a)良好、(b)やや良好、(c)生鉱落ち、(d)微粉炭膨張、の各状態における軌跡情報をあわせて示している。高炉羽口の状態が良好である場合には、図13(a)に示したように、(m,n)で表される点の軌跡は、m−n平面の右上に集中しており、高炉羽口の状態がやや良好である場合には、図13(b)に示したように、(m,n)で表される点の軌跡は、m−n平面の中央部分からやや左下の領域にかけて集中している。一方で、生鉱落ちが発生した場合には、図13(c)に示したように、(m,n)で表される点の軌跡は、m−n平面のほぼ中央部分から原点付近まで推移しており、微粉炭膨張が発生した場合には、図13(d)に示したように、(m,n)で表される点の軌跡は、m−n平面中を水平方向に移動している。
このように、算出された特徴量に基づいて軌跡情報を生成すると、生鉱落ちや微粉炭膨張が発生した場合には、これらの現象に特徴的な軌跡が描かれることがわかる。
軌跡情報生成部219は、以上説明したような軌跡情報を生成すると、生成した軌跡情報を、後述する状態判断部221に出力する。また、軌跡情報生成部219は、生成した軌跡情報を表示制御部205に出力して、表示画面に表示させてもよい。
状態判断部221は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。状態判断部221は、軌跡情報生成部219が生成した軌跡情報に基づいて、高炉羽口の状態を判断する。より詳細には、状態判断部221は、軌跡が存在する領域に着目することで、高炉羽口において、生鉱落ちや微粉炭膨張が発生したか否かを判断する。
図13に例示したように、高炉羽口の状態が良好な場合と、生鉱落ちや微粉炭膨張が発生した場合とでは、軌跡情報の推移に大きな違いが存在する。そこで、状態判断部221は、図14に例示したように、特徴量座標系(m−n平面)を複数の領域に区分し、それぞれの領域に羽口の状態を表すラベルを予め付与しておき、状態を表す点がどの領域に存在するかに基づいて、羽口の状態を判断する。
図14に示した例では、m−n平面が4個の領域に区分されており、時刻tにおいて、右上の領域に点(m,n)が存在していた場合を図示している。この場合には、状態判断部221は、時刻tにおける点(m、n)が、「良好」とラベルづけされた領域にあることから、燃焼状態は良好であると羽口の状態を判断することとなる。
なお、図14のような領域の分類は、図13に示したような過去の操業状態における点(m,n)の軌跡を分類することで行えばよく、点(m,n)の軌跡を分類する方法については、公知のあらゆる方法を用いることが可能である。
状態判断部221は、以上説明したような方法で高炉羽口の状態を判断すると、判断結果を示す情報を、表示制御部205に出力する。これにより、高炉羽口状態観察装置10のユーザは、高炉羽口の状態に関する判断結果を、その場で把握することが可能となる。
なお、図14では、m−n平面を4個の領域に区分する場合について図示しているが、区分する領域の個数は図14に示した例に限定されるわけではなく、4個未満であってもよく、4個以上であってもよい。
また、以上の説明では、m−n平面を人が予め分割しラベルを付与することで高炉羽口の状態を判別する場合について説明したが、高炉羽口の状態を判断する方法は上記例に限定されるわけではない。例えば、過去の特徴量m、n及び当該画像データに基づく検定員による官能検査結果を教師データとした学習処理により、ニューラルネットやサポートベクターマシン(SVM)等の判別器を生成し、かかる判別器を特徴量m−n空間での状態判断に利用してもよい。
以上、本基盤技術に係る演算処理装置200が有する画像処理部203の構成について、詳細に説明した。
以上、本基盤技術に係る演算処理装置200の機能の一例を示した。上記の各構成要素は、汎用的な部材や回路を用いて構成されていてもよいし、各構成要素の機能に特化したハードウェアにより構成されていてもよい。また、各構成要素の機能を、CPU等が全て行ってもよい。従って、本基盤技術を実施する時々の技術レベルに応じて、適宜、利用する構成を変更することが可能である。
なお、上述のような本基盤技術に係る演算処理装置の各機能を実現するためのコンピュータプログラムを作製し、パーソナルコンピュータ等に実装することが可能である。また、このようなコンピュータプログラムが格納された、コンピュータで読み取り可能な記録媒体も提供することができる。記録媒体は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリなどである。また、上記のコンピュータプログラムは、記録媒体を用いずに、例えばネットワークを介して配信してもよい。
このように、本基盤技術に係る高炉羽口状態観察装置10では、生鉱落ち及び微粉炭膨張という2つの状態のそれぞれを、互いに独立して定量的に判断することが可能となる。生鉱落ち及び微粉炭膨張が発生した状態では、高炉羽口の状態が良好である場合に比べて、特徴的な明部分布情報や軌跡情報が観測されるため、これらの現象の発生を、官能検査に頼らずに容易に判断することが可能となる。また、本基盤技術に係る高炉羽口状態観察装置10では、処理に利用する特徴量の個数が二つであるため、m−n平面上の軌跡により容易に可視化することが可能である。
<高炉羽口状態観察方法について>
続いて、図15を参照しながら、本基盤技術に係る高炉羽口状態観察方法の流れの一例を簡単に説明する。図15は、本基盤技術に係る高炉羽口状態観察方法の流れの一例を示した流れ図である。
本基盤技術に係る高炉羽口状態観察装置10の撮像装置100は、演算処理装置200における撮像制御部201の制御のもとで羽口を撮像して、熱放射輝度画像を生成し(ステップS101)、生成した熱放射輝度画像を演算処理装置200に出力する。
高炉羽口状態観察装置10の演算処理装置200が備える画像処理部203は、撮像装置100から出力された熱放射輝度画像を取得すると、取得した熱放射輝度画像のデータを画像変換部211に伝送する。画像変換部211は、取得した熱放射輝度画像に対して楕円近似処理を実施したうえで、更に幾何学変換を実施して、正規化画像を生成する(ステップS103)。引き続き、画像変換部211は、生成した正規化画像に対して極座標変換を実施して(ステップS105)、極座標変換後の正規化画像(帯状画像)を二値化画像生成部213に出力する。
二値化画像生成部213は、極座標変換後の正規化画像(すなわち、帯状画像)を二値化閾値に基づいて二値化して二値化画像を生成し(ステップS107)、生成した二値化画像を明部分布情報生成部215に出力する。
明部分布情報生成部215は、二値化画像生成部213から出力された二値化画像に基づいて明部分布情報を生成し(ステップS109)、生成した明部分布情報を特徴量算出部217へと出力する。
特徴量算出部217は、明部分布情報生成部215から出力された明部分布情報を参照して、要素数特徴量及び径方向位置特徴量(例えば、明部平均画素数m及び最高画素半径n)を算出する(ステップS111)。その後、特徴量算出部217は、算出したこれら特徴量を、軌跡情報生成部219に出力する。
軌跡情報生成部219は、特徴量算出部217により算出された特徴量に基づいて、特徴量座標系に算出された特徴量の組み合わせで規定される点を対応づけ、時間推移に応じた特徴量の変化を示した軌跡情報を生成する(ステップS113)。その後、軌跡情報生成部219は、生成した軌跡情報を、状態判断部221に出力する。
状態判断部221は、軌跡情報生成部219により生成された軌跡情報の時間推移に基づいて、高炉羽口の状態を判断する(ステップS115)。
以上、図15を参照しながら、本基盤技術に係る高炉羽口状態観察方法の流れについて、簡単に説明した。
(第1の実施形態)
上記基盤技術で説明したような高炉羽口状態観察方法により、高炉の羽口状態をより簡便に観察することが可能となるが、一般的な高炉において羽口は多数設けられており、多数の羽口を観察しなければならない状況下においては、羽口状態を定量的に取り扱うとともに、羽口状態を判断するための判断ルールを構築することが望まれる。そこで、以下で説明する本発明の第1の実施形態では、上記基盤技術に示した方法で算出した特徴量を利用して羽口状態を表す指標を定量化する方法について、詳細に説明する。また、以下の本発明の第1の実施形態では、定量化した指標を用いて、羽口状態を判断するための判断ルールを構築する方法についても説明する。
<高炉羽口状態観察装置について>
本実施形態に係る高炉羽口状態観察装置は、高炉羽口に設けられた撮像装置により撮像された複数の熱放射輝度画像を利用し、上記基盤技術に示した方法により算出された特徴量に基づいて、羽口状態を表す指標を定量化する装置である。従って、撮像装置により熱放射輝度画像を撮像してから特徴量を算出するまでの処理については、上記基盤技術に係る高炉羽口状態観察装置と同様であり、特徴量に基づき羽口状態を表す指標を定量化する処理が、上記基盤技術に係る高炉羽口状態観察装置では実施されていない処理となる。
本実施形態に係る高炉羽口状態観察装置10は、図2に示した基盤技術に係る高炉羽口状態観察装置10と同様に、羽口の熱放射輝度の分布状況を撮像して、熱放射輝度画像を生成する撮像装置100と、撮像装置100により撮像された熱放射輝度画像に対して画像処理を実施する演算処理装置200と、を備える。
ここで、本実施形態に係る高炉羽口状態観察装置10の撮像装置100は、図3及び図4を参照しながら説明した基盤技術に係る撮像装置100と同様の構成を有し同様の効果を奏するものであるため詳細な説明は省略するが、羽口の状態を観察するための観察窓に設置されており、羽口近傍のレースウェイからの熱放射を撮像して熱放射輝度画像とする。この際、撮像装置100は、演算処理装置200による制御のもとで、所定のフレームレート毎に羽口からの熱放射を撮像し、生成した熱放射輝度画像を演算処理装置200に出力する。
本実施形態に係る高炉羽口状態観察装置10の演算処理装置200は、撮像装置100により撮像された複数の熱放射輝度画像に対して画像処理を実施して、上記基盤技術で説明した明部分布情報を特徴づける2種類の特徴量を算出する。かかる2種類の特徴量とは、上記基盤技術で説明した要素数特徴量及び径方向位置特徴量である。その後、演算処理装置200は、算出した2種類の特徴量を利用して、羽口状態を特徴づける指標を算出する。また、本実施形態に係る演算処理装置200は、算出した指標に基づいて、羽口の状態(すなわち、生鉱落ちや微粉炭膨張の発生)を判断することも可能である。
この演算処理装置200は、図2に示した基盤技術に係る演算処理装置200と同様に、撮像制御部201と、画像処理部203と、表示制御部205と、記憶部207と、を主に備える。
撮像制御部201は、上記基盤技術と同様に、例えば、CPU、ROM、RAM、通信装置等により実現され、撮像装置100による羽口の撮像制御を実施する。より詳細には、撮像制御部201は、羽口の熱放射輝度画像の撮像を開始する場合に、撮像装置100に対して撮像を開始させるための制御信号を送出する。
画像処理部203は、例えば、CPU、ROM、RAM、通信装置等により実現される。画像処理部203は、撮像装置100から取得した熱放射輝度画像の撮像データに対して、以下で説明するような画像処理を行い、後述する羽口状態を特徴づける指標を算出する。また、画像処理部203は、生成した指標に基づいて、生鉱落ちや微粉炭膨張等が発生したか否かを判断する。画像処理部203は、算出した羽口状態を特徴づける指標や、生鉱落ちや微粉炭膨張等の判断結果に関する情報を、表示制御部205に伝送する。
なお、この画像処理部203については、以下で改めて詳細に説明する。
表示制御部205は、上記基盤技術と同様に、例えば、CPU、ROM、RAM、出力装置等により実現され、画像処理部203から伝送された羽口状態を特徴づける指標や、生鉱落ち/微粉炭膨張の判断結果を、演算処理装置200が備えるディスプレイ等の出力装置や演算処理装置200の外部に設けられた出力装置等に表示する際の表示制御を行う。これにより、高炉羽口状態観察装置10の利用者は、羽口状態を特徴づける指標や高炉羽口の状態に関する情報を、その場で把握することが可能となる。
記憶部207は、上記基盤技術と同様に、演算処理装置200が備える記憶装置の一例である。記憶部207には、本実施形態に係る演算処理装置200が、何らかの処理を行う際に保存する必要が生じた様々なパラメータや処理の途中経過等、または、各種のデータベースやプログラム等が、適宜記録される。この記憶部207は、撮像制御部201、画像処理部203、表示制御部205等が、自由に読み書きを行うことが可能である。
[画像処理部について]
続いて、図16〜図19Bを参照しながら、本実施形態に係る演算処理装置200が備える画像処理部203について、詳細に説明する。
図16は、本実施形態に係る画像処理部の構成について示したブロック図である。図17A〜図19Bは、本実施形態に係る指標算出部について説明するための説明図である。
先だって言及したように、本実施形態に係る演算処理装置200は、上記基盤技術に示した方法により算出された2種類の特徴量を更に利用して、羽口状態を特徴づける指標を算出する装置である。従って、2種類の特徴量を算出するまでの処理は、上記基盤技術に示した演算処理装置200の画像処理部203で実施される処理と同様である。すなわち、本実施形態に係る画像処理部203の上記基盤技術に係る画像処理部203との相違点は、算出された特徴量を用いて指標を算出する処理と、算出された指標を用いて高炉羽口の状態を判断する処理と、を実施する点にある。
この画像処理部203は、図16に示したように、画像変換部211と、二値化画像生成部213と、明部分布情報生成部215と、特徴量算出部217と、指標算出部251と、状態判断部253と、を主に備える。
画像変換部211は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。画像変換部211は、撮像装置100が生成した熱放射輝度画像に対して幾何学変換を実施して正規化画像を生成するとともに、当該正規化画像に対して極座標変換を実施する。
また、画像変換部211は、高炉羽口状態観察装置10が観察する羽口の形状について楕円近似を行っていない場合には、熱放射輝度画像に写っている羽口の形状に合わせて楕円近似処理を実施する。なお、この楕円近似処理は、少なくとも一度行われれば良く、熱放射輝度画像が撮像される毎に実施しなくともよい。
ここで、本実施形態に係る画像変換部211で実施される詳細な処理は、図6を参照しながら説明した基盤技術に係る画像変換部211での処理と同様であるため、以下では詳細な説明は省略する。
二値化画像生成部213は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。二値化画像生成部213は、極座標変換後の正規化画像である帯状画像を二値化して、二値化画像を生成する。より詳細には、二値化画像生成部213は、帯状画像を構成する各画素の画素値(輝度値)と、二値化閾値との大小比較を行うことで帯状画像を二値化し、二値化画像を生成する。
ここで、本実施形態に係る二値化画像生成部213で実施される詳細な処理は、図7を参照しながら説明した基盤技術に係る二値化画像生成部213での処理と同様であるため、以下では詳細な説明は省略する。
なお、上記基盤技術と同様に、本実施形態に係る二値化画像生成部213が二値化処理の際に利用する二値化閾値は、固定の閾値ではなく、熱放射輝度画像(ひいては、二値化画像)に含まれる最高輝度に応じて変動する閾値とする。具体的には、二値化画像生成部213は、二値化閾値として、(a)予め設定された輝度閾値と、(b)最高輝度値に予め設定された係数を乗じたもの、のうち、何れか大きい値となるものを、二値化閾値として使用する。このように二値化閾値を設定することで、通常操業時では最高輝度、すなわちレースウェイ温度の変動について正規化した二値画像が得られるとともに、生鉱落ちによる視野閉塞等といった異常状態を、二値画像がすべて0という条件で検知することができる。
明部分布情報生成部215は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。明部分布情報生成部215は、生成された二値化画像を利用して、当該二値化画像に存在する明部の正規化円の径方向での分布を示す明部分布情報を生成する。より詳細には、明部分布情報生成部215は、二値化画像におけるそれぞれの径方向位置rについて、同一の径方向位置を有し、かつ、相異なる偏角位置を有する複数の画素に対応する画素値を積算して、得られた積算値を該当する径方向位置における明部分布情報の要素とする。
ここで、本実施形態に係る明部分布情報生成部215で実施される詳細な処理は、図8〜図10を参照しながら説明した基盤技術に係る明部分布情報生成部215での処理と同様であるため、以下では詳細な説明は省略する。
なお、上記基盤技術と同様に、熱放射輝度画像、又は、当該熱放射輝度画像に基づいて生成される情報の少なくとも何れかを、所定の時定数で平滑化して用いてもよい。すなわち、熱放射輝度画像や二値化画像や帯状画像等を、予め設定された時定数を持つ指数平滑化や移動平均により平滑化して利用してもよく、平滑化されていない画像を用いて生成される明部分布情報や時系列推移情報を、予め設定された時定数を持つ指数平滑化や移動平均により平滑化してもよい。
特徴量算出部217は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。特徴量算出部217は、明部分布情報生成部215により生成された各時間の明部分布情報について、所定の径方向範囲に含まれる要素の個数を特徴づける要素数特徴量と、要素の最大値を与える径方向位置を示した径方向位置特徴量と、を少なくとも算出する。具体的には、特徴量算出部217は、上記基盤技術において図11に例示したように、要素数特徴量として指定範囲内での明部平均画素数mを算出するとともに、径方向位置特徴量として、投影値が最大となる半径である最高画素半径nを算出する。これら2種類の特徴量の算出方法については、上記基盤技術と同様であるため、詳細な説明は省略する。特徴量算出部217は、各時間の明部分布情報について明部平均画素数m及び最高画素半径nを算出すると、算出したこれらの特徴量を、指標算出部251に出力する。
指標算出部251は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。特徴量算出部217により算出される要素数特徴量(例えば明部平均画素数m)と、径方向位置特徴量(例えば最高画素半径n)とは、熱放射輝度画像についての特徴量データとして取り扱うことができる。そこで、指標算出部251は、特徴量算出部217により算出された要素数特徴量及び径方向位置特徴量を利用し、これら要素数特徴量及び径方向位置特徴量から規定される二次元の特徴量座標系を設定する。その上で、指標算出部251は、この特徴量座標系において、複数の熱放射輝度画像についての特徴量データの集合が略三角形状に分布するとみなし、この略三角形状とみなした特徴量データの分布に基づいて、羽口内の状態を特徴づける指標を算出する。
以下では、この指標算出部251により実施される指標の算出処理について、図17A〜図17Gを参照しながら詳細に説明する。
図17Aは、ある羽口に設置された撮像装置100により撮像された同一の羽口に関する多数の熱放射輝度画像を、先に説明した方法に則して画像処理し、得られた多数の明部平均画素数m及び最高画素半径nを、散布図として示したものである。図17Aにおいて、明部平均画素数mと最高画素半径nとの組み合わせとして表される特徴量データの一つ一つは、ある時刻における羽口の状態に対応している。なお、図17Aに示した例は、約6時間分の撮像データに基づくものであり、データ点数は約20000点である。
図17Aからも明らかなように、本発明者らは、明部平均画素数m及び最高画素半径nという2つの特徴量で規定される特徴量座標系において特徴量データの分布が略三角形状となることに注目し、以下で説明するような指標の算出方法に想到した。
より詳細には、指標算出部251は、図17Aに示したような特徴量データの集合が、径方向位置特徴量(すなわち、最高画素半径n)に対応する座標軸を第1辺とする略三角形状に分布するとみなした上で、以下のような処理段階を経て2種類の指標を算出する。
まず、指標算出部251は、図17Aに示したような特徴量データの集合の分布に基づいて、径方向位置特徴量に対応する座標軸(すなわち、最高画素半径nの座標軸)の座標値の大きい側に位置する略三角形状の第2辺に対応する直線と、最高画素半径nの座標軸の座標値の小さい側に位置する略三角形状の第3辺に対応する直線と、をそれぞれ決定する。以下では、説明の便宜上、座標軸の座標値が減少する方向を「座標軸の上流側」とも称することとし、座標軸の座標値が増加する方向を「座標軸の下流側」とも称することとする。
これら2種類の直線を決定する方法について、図17B〜図17Eを参照しながら具体的に説明する。
初めに、指標算出部251は、図17Bに示したように、明部平均画素数mに関して、0からmの最大値までの間を所定の分割数で等間隔に分割するとともに、最高画素半径nに関して、0からnの最大値までの間を所定の分割数で等間隔に分割する。これにより、図17Bに示したように、座標平面が複数の升目に区分されることとなる。
ここで、図17Bでは、0〜mの最大値、及び、0〜nの最大値が、それぞれ分割数11で分割された場合について図示しているが、本実施形態における分割数が図示した例に限定されるわけではない。また、座標平面を分割する際の分割数の決定方法については、特に限定されるものではなく、公知の方法を用いることが可能である。このような方法として、例えば、処理に利用するデータの個数Nに基づいて10×(log10(N)+1)で算出される値を参考にし、分割数を決定する方法がある。
次に、指標算出部251は、図17Bに示した各升目に含まれるデータの個数をカウントすることで、特徴量座標系におけるヒストグラムを生成し、所定の閾値以上のデータが含まれる升目を特定する。これにより、図17Cに示したようなヒストグラム情報が生成されることとなる。この際、升目に含まれるデータ数に関する閾値は、特に限定されるものではなく、算出される指標に求める精度や演算処理に用いることが可能な演算コスト等を統合的に判断して、適宜決定すればよい。
続いて、指標算出部251は、最高画素半径nの座標軸に対して平行に存在している複数の升目のグループに対して、所定の閾値以上のデータ個数を有する升目を、最高画素半径nの値の小さい側と、最高画素半径nの値の大きい側のそれぞれから探索していく。このような探索を明部平均画素数mの座標軸に沿って順に行っていくことで、図17Dに示したように、最高画素半径nに関して最も下流側に位置する、閾値以上のデータ数が存在する升目(上側境界升)と、最高画素半径nに関して最も上流側に位置する、閾値以上のデータ数が存在する升目(下側境界升)と、を検出することができる。
このようにして検出された複数の上側境界升及び下側境界升のそれぞれには、明部平均画素数mと最高画素半径nとの組み合わせとして表される特徴量データが複数存在している。そこで、指標算出部251は、上側境界升に含まれているデータを利用し、これらの特徴量データの分布を最小二乗法により直線近似することで、図17Eに示したように、略三角形状の第2辺に対応する直線(以下、上側直線ともいう。)を決定する。また、指標算出部251は、下側境界升に含まれているデータを利用し、これらの特徴量データの分布を最小二乗法により直線近似することで、図17Eに示したように、略三角形状の第3辺に対応する直線(以下、下側直線ともいう。)を決定する。
上側直線及び下側直線は、略三角形状とみなした特徴量データの分布の境界を表す直線である。従って、この2つの直線はある一点で互いに交差して、三角形の一つの頂点を規定する。また、上側直線及び下側直線のそれぞれは、最高画素半径nの座標軸とそれぞれ交差して、三角形の残り二つの頂点を規定する。いま、説明の便宜上、上側直線と下側直線との交点を点Aとし、上側直線の最高画素半径nの座標軸での切片を点Bとし、下側直線の最高画素半径nの座標軸での切片を点Cとする。
このようにして規定される三角形ABCにおいて、上記基盤技術において図13で示した特徴量の挙動を照らし合わせてみた結果、本発明者らは、図17Fに示したように、直線ABが微粉炭膨張の状態の程度を表す直線であり、直線ACが生鉱落ちの状態の程度を表す直線であることに想到した。すなわち、微粉炭膨張という状態は、直線ABに沿って推移すると考えることができ、生鉱落ちという状態は、直線ACに沿って推移すると考えることができる。そこで、本発明者らは、この2つの直線に着目して算出された2つの特徴量を定量化し、微粉炭膨張の指標及び生鉱落ちの指標とすることとした。
この定量化処理では、まず、2つの直線の交点(図17Fにおける点A)を原点とし、直線ABに沿って要素数特徴量(明部平均画素数m)が減少する方向を、微粉炭膨張を表す軸の正方向とし、直線ACに沿って要素数特徴量(明部平均画素数m)が減少する方向を、生鉱落ちを表す軸の正方向とした指標座標系を設定する。その上で、かかる指標座標系において、明部平均画素数mと最高画素半径nとの組み合わせとして表される特徴量データを、微粉炭膨張指標と生鉱落ち指標との組み合わせとして定量化する。
具体的には、指標算出部251は、点Aの座標(m1,n1)、点Bの座標(0,n2)、点Cの座標(0,n3)をそれぞれ算出し、特徴量座標系(m,n)から、生鉱落ち指標p及び微粉炭膨張指標qからなる指標座標系(p,q)への座標変換の基準点とする。その後、指標算出部251は、図17Fに示したように、特徴量座標系における点Aが指標座標系(p,q)での原点となり、特徴量座標系における点Bが指標座標系(p,q)=(0,q0)=(0,100)となり、特徴量座標系における点Cが指標座標系(p,q)=(p0,0)=(100,0)となるように、座標変換式を算出する。
この座標変換式は、a〜fの6つの未知の係数を用いて、以下の式201のように表すことができる。下記式201に対して、上記3つの基準点の対応関係を代入することで、下記202〜式204の3つの連立方程式を得ることができる。従って、かかる3つの連立方程式を更に連立させて解くことにより、6つの未知係数a〜fを特定することができ、座標変換式として式205を得ることができる。
座標変換式である式205が得られると、指標算出部251は、図17Aに示したような散布図に含まれる全てのデータ点に対して式205による座標変換を実施して、生鉱落ち指標pと微粉炭膨張指標qとを算出する。これにより、図17Gに示したような、指標座標系におけるデータの散布図を得ることが可能となる。
このようにして算出された生鉱落ち指標p及び微粉炭膨張指標qは、その数値が大きいほど、対応する現象(生鉱落ちや微粉炭膨張)が発生している可能性が高いことを表している。
ここで、上記式205で表される座標変換式は、各羽口に設置された撮像装置100に固有の座標変換式である。そのため、例えば羽口Aに設置された撮像装置100からの熱放射輝度画像に基づく座標変換式は、同一の撮像装置100から得られた熱放射輝度画像に基づく特徴量に対しては適用可能であるが、羽口Aとは異なる羽口Bに設置された撮像装置100に基づく特徴量に対しては適用することはできない。しかしながら、それぞれの羽口に設置された撮像装置100に対して、過去の操業データ等を利用して座標変換式を予め準備しておくことで、撮像装置100により撮像された熱放射輝度画像に基づいて次々に算出される特徴量を、随時、生鉱落ち指標pと微粉炭膨張指標qへと変換することが可能となる。
以上、図17A〜図17Gを参照しながら、指標算出部251による指標算出処理について、詳細に説明した。
指標算出部251は、生鉱落ち指標p及び微粉炭膨張指数qを複数の異なる時刻についてそれぞれ算出し、それぞれの指標p,qを図18A及び図18Bのように時刻順に配列させて、指標の時系列推移を示した時系列推移情報を生成してもよい。図18Aは、算出した生鉱落ち指標pの時系列推移情報を可視化した状態を模式的に示したものであり、図18Bは、算出した微粉炭膨張指数qの時系列推移情報を可視化した状態を模式的に示したものである。このような時系列推移情報を生成して可視化することにより、高炉羽口状態観察装置10の利用者は、高炉羽口の状態をより容易に把握することが可能となる。
ここで、上記説明では、指標算出部251は、図17B〜図17Eに示したように、特徴量座標平面(m,n)を升目状に2次元で区分した上で、それぞれの升目に含まれるデータの個数のヒストグラムを特定し、所定の閾値以上のデータが存在する升目の分布に基づいて上側直線及び下側直線を決定していた。しかしながら、上側直線及び下側直線を決定する方法には、上記の方法以外にも、以下で説明するような方法がある。
すなわち、指標算出部251は、特徴量座標平面(m,n)を短冊状の領域として1次元で区分した上で、それぞれの短冊状の領域に含まれる特徴量データの径方向位置特徴量(最高画素半径n)の最大値及び最小値に基づいて、上側直線及び下側直線を決定することも可能である。以下、この短冊状に区分する方法について、図19A及び図19Bを参照しながら簡単に説明する。
この区分方法では、指標算出部251は、明部平均画素数mに関して、0からmの最大値までの間を所定の分割数で等間隔に分割する。これにより、図19Aに示したように、座標平面が複数の短冊状の領域に区分されることとなる。
ここで、図19Aでは、0〜mの最大値が分割数11で分割された場合について図示しているが、本実施形態における分割数が図示した例に限定されるわけではない。また、座標平面を分割する際の分割数の決定方法については、升目状に区分する場合と同様な方法を利用することが可能である。
続いて、指標算出部251は、図19Bに示したように、それぞれの短冊状の領域に含まれる各特徴量データについて、最高画素半径nの最大値及び最小値をそれぞれ探索する。図19Bでは、各短冊状の領域において、最高画素半径nの最大値を△で表し、最高画素半径nの最小値を□で表している。
このような探索を明部平均画素数mの座標軸に沿って順に行っていくことで、図19Bに示したように、最高画素半径nの最小値の分布と、最高画素半径nの最大値の分布を得ることができる。
次に、指標算出部251は、最高画素半径nの最大値の分布を利用し、これらの特徴量データの分布を最小二乗法により直線近似することで、図19Bに示したように、上側直線を決定することができる。また、指標算出部251は、最高画素半径nの最小値の分布を利用し、これらの特徴量データの分布を最小二乗法により直線近似することで、図19Bに示したように、下側直線を決定することができる。
上側直線及び下側直線を決定した以降の処理については、図17Fを参照しながら説明したものと同様の処理を実施すればよい。
このように、特徴量座標平面(m,n)を短冊状の領域として1次元で区分する方法では、上側直線及び下側直線を決定するに際して、升目状に2次元に区分する方法のようにデータの個数のヒストグラムを生成する必要がない。そのため、この短冊状に区分する方法を用いることによって、演算コストの削減を図ることが可能となる。しかしながら、この短冊状に区分する方法では、それぞれの短冊状の領域に含まれる最大値及び最小値そのものを利用して直線を決定するため、測定ノイズを拾ってしまう可能性がある。そのため、最終的に生成される座標変換式の精度や本処理に適用可能な演算コスト等を統合的に判断して、升目状に2次元に区分する方法と、短冊状の領域として1次元で区分する方法のどちらを採用するかを選択することが好ましい。
以上、図19A及び図19Bを参照しながら、上側直線及び下側直線を決定するための別の方法について、簡単に説明した。
指標算出部251は、以上説明したような方法により、生鉱落ち指標p及び微粉炭膨張指標qや、その時系列推移情報を算出すると、算出したこれらの情報を、後段の状態判断部253に出力する。
再び図16に戻って、本実施形態に係る画像処理部203が備える状態判断部253について説明する。
状態判断部253は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。状態判断部253は、指標算出部251が生成した生鉱落ち指標p及び微粉炭膨張指標qに基づいて、高炉羽口の状態を判断する。より詳細には、状態判断部253は、生鉱落ち指標p及び微粉炭膨張指標qと、所定の閾値との大小関係を判断することで、高炉羽口において、生鉱落ちや微粉炭膨張が発生したか否かを判断する。
具体的には、状態判断部253は、図18Aに模式的に示したように、生鉱落ち指標pが所定の閾値以上のときに、生鉱落ちが発生したと判断する。また、状態判断部253は、微粉炭膨張指標qが所定の閾値以上のときに、微粉炭膨張が発生したと判断する。
ここで、上記閾値については、過去の操業データを統計解析し、生鉱落ちが発生している際の生鉱落ち指標pの変動の様子や、微粉炭膨張が発生している際の微粉炭膨張指標qの変動の様子を把握することで、公知の方法により決定することが可能である。これにより、例えば指標p,q(0≦p,q≦100)が60以上となった場合に生鉱落ちや微粉炭膨張が発生したとする、等のように、閾値を一律かつ容易に定めることが可能となる。
また、上記のように閾値をある一定の値に固定するのではなく、それぞれの指標の時系列推移に則して動的に変化させてもよい。例えば、所定の時間分(6時間分等)の各指標p,qの時系列推移に基づいて平均値μと標準偏差σとを算出し、所定の設定値αにより閾値をμ+α×σと設定し、p、q≧μ+α×σとなった場合に、生鉱落ちや微粉炭膨張が発生したと判断してもよい。
このように、明部平均画素数mと最高画素半径nとを定量化し、生鉱落ち指標p及び微粉炭膨張指標qとすることで、状態判断ルールの設定を容易に行うことが可能となる。また、判断対象とするデータが以上のような方法により定量化されたため、多数の羽口における判断ルールを容易に設定したり管理したりすることが可能となる。
状態判断部253は、以上説明したような方法で高炉羽口の状態を判断すると、判断結果を示す情報を、表示制御部205に出力する。これにより、高炉羽口状態観察装置10のユーザは、高炉羽口の状態に関する判断結果を、その場で把握することが可能となる。
以上、本実施形態に係る演算処理装置200が有する画像処理部203の構成について、詳細に説明した。
以上、本実施形態に係る演算処理装置200の機能の一例を示した。上記の各構成要素は、汎用的な部材や回路を用いて構成されていてもよいし、各構成要素の機能に特化したハードウェアにより構成されていてもよい。また、各構成要素の機能を、CPU等が全て行ってもよい。従って、本実施形態を実施する時々の技術レベルに応じて、適宜、利用する構成を変更することが可能である。
なお、上述のような本実施形態に係る演算処理装置の各機能を実現するためのコンピュータプログラムを作製し、パーソナルコンピュータ等に実装することが可能である。また、このようなコンピュータプログラムが格納された、コンピュータで読み取り可能な記録媒体も提供することができる。記録媒体は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリなどである。また、上記のコンピュータプログラムは、記録媒体を用いずに、例えばネットワークを介して配信してもよい。
このように、本実施形態に係る高炉羽口状態観察装置10では、明部平均画素数mと最明部半径nから、生鉱落ちや微粉炭膨張を表す指標(p,q)を算出するため、状態判断ルールの設定が容易となる。また、特徴量データ(m,n)を蓄積し、指標データ(p,q)へ変換する処理を自動化することが可能となるため、公知の機械学習技術を利用して状態判断ルールの自動学習を実現することも可能となる。更に、判断対象とするデータが以上のような方法により定量化されたため、多数の羽口における判断ルールの設定や管理を、大幅に簡易化することが可能となる。
<高炉羽口状態観察方法について>
続いて、図20〜図22を参照しながら、本実施形態に係る高炉羽口状態観察方法の流れの一例を簡単に説明する。図20は、本実施形態に係る高炉羽口状態観察方法の流れの一例を示した流れ図である。図21及び図22は、本実施形態に係る指標算出方法の流れの一例を示した流れ図である。
本実施形態に係る高炉羽口状態観察装置10の撮像装置100は、演算処理装置200における撮像制御部201の制御のもとで羽口を撮像して、熱放射輝度画像を生成し(ステップS201)、生成した熱放射輝度画像を演算処理装置200に出力する。
高炉羽口状態観察装置10の演算処理装置200が備える画像処理部203は、撮像装置100から出力された熱放射輝度画像を取得すると、取得した熱放射輝度画像のデータを画像変換部211に伝送する。画像変換部211は、取得した熱放射輝度画像に対して楕円近似処理を実施したうえで、更に幾何学変換を実施して、正規化画像を生成する(ステップS203)。引き続き、画像変換部211は、生成した正規化画像に対して極座標変換を実施して(ステップS205)、極座標変換後の正規化画像(帯状画像)を二値化画像生成部213に出力する。
二値化画像生成部213は、極座標変換後の正規化画像(すなわち、帯状画像)を二値化閾値に基づいて二値化して二値化画像を生成し(ステップS207)、生成した二値化画像を明部分布情報生成部215に出力する。
明部分布情報生成部215は、二値化画像生成部213から出力された二値化画像に基づいて明部分布情報を生成し(ステップS209)、生成した明部分布情報を特徴量算出部217へと出力する。
特徴量算出部217は、明部分布情報生成部215から出力された明部分布情報を参照して、要素数特徴量及び径方向位置特徴量(すなわち、明部平均画素数m及び最高画素半径n)を算出する(ステップS211)。その後、特徴量算出部217は、算出したこれら特徴量を、指標算出部251に出力する。
指標算出部251は、特徴量算出部217により算出された特徴量(明部平均画素数m及び最高画素半径n)を利用して、羽口内の状態を特徴づける指標を算出する(ステップS213)。その後、指標算出部251は、算出した指標に関する情報を、状態判断部253に出力する。
状態判断部253は、指標算出部251により算出された羽口内の状態を特徴づける指標に基づいて、高炉羽口の状態を判断する(ステップS215)。
以上、図20を参照しながら、本実施形態に係る高炉羽口状態観察方法の流れについて、簡単に説明した。
[指標の算出処理について−1]
続いて、図21を参照しながら、指標算出部251により実施される指標の算出処理の流れの一例について、簡単に説明する。
指標算出部251は、まず明部平均画素数mと最高画素半径nとで規定される特徴量座標平面を、升目状に領域分割する(ステップS221)。その後、指標算出部251は、それぞれの升目に含まれるデータの個数のヒストグラムを生成する(ステップS223)。その上で、指標算出部251は、所定の閾値以上のデータ個数を有する升目を、最高画素半径nの値の小さい側と、最高画素半径nの値の大きい側のそれぞれから探索していき、境界に位置する升目を検出する(ステップS225)。
指標算出部251は、境界に位置する升目を検出すると、検出した升目に含まれるデータの分布を利用して、境界を表す2本の直線を決定する(ステップS227)。続いて、指標算出部251は、決定した2本の直線と、最高画素半径nの座標軸との位置関係に基づいて、特徴量の定量化に伴う3つの基準点の座標を算出する(ステップS229)。その後、指標算出部251は、得られた3つの基準点の座標から算出された座標変換式を利用して、生鉱落ち指標pと微粉炭膨張指標qとを算出する(ステップS231)。
以上、図21を参照しながら、指標算出部251で実施される指標の算出処理の流れの一例を説明した。
[指標の算出処理について−2]
続いて、図22を参照しながら、指標算出部251により実施される指標の算出処理の流れの別の一例について、簡単に説明する。
指標算出部251は、まず明部平均画素数mと最高画素半径nとで規定される特徴量座標平面を、短冊状の領域に領域分割する(ステップS241)。その後、指標算出部251は、それぞれの短冊状の領域での最高画素半径nの最大値及び最小値を特定する(ステップS243)。
指標算出部251は、それぞれの短冊状の領域において、最高画素半径nの最大値及び最小値を特定すると、特定した最大値の分布、及び、最小値の分布をそれぞれ利用して、境界を表す2本の直線を決定する(ステップS245)。続いて、指標算出部251は、決定した2本の直線と、最高画素半径nの座標軸との位置関係に基づいて、特徴量の定量化に伴う3つの基準点の座標を算出する(ステップS247)。その後、指標算出部251は、得られた3つの基準点の座標から算出された座標変換式を利用して、生鉱落ち指標pと微粉炭膨張指標qとを算出する(ステップS249)。
以上、図22を参照しながら、指標算出部251で実施される指標の算出処理の流れの別の一例を説明した。
(ハードウェア構成について)
次に、図23を参照しながら、本発明の実施形態に係る演算処理装置200のハードウェア構成について、詳細に説明する。図23は、本発明の実施形態に係る演算処理装置200のハードウェア構成を説明するためのブロック図である。
演算処理装置200は、主に、CPU901と、ROM903と、RAM905と、を備える。また、演算処理装置200は、更に、バス907と、入力装置909と、出力装置911と、ストレージ装置913と、ドライブ915と、接続ポート917と、通信装置919とを備える。
CPU901は、演算処理装置および制御装置として機能し、ROM903、RAM905、ストレージ装置913、またはリムーバブル記録媒体921に記録された各種プログラムに従って、演算処理装置200内の動作全般またはその一部を制御する。ROM903は、CPU901が使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する。RAM905は、CPU901が使用するプログラムや、プログラムの実行において適宜変化するパラメータ等を一次記憶する。これらはCPUバス等の内部バスにより構成されるバス907により相互に接続されている。
バス907は、ブリッジを介して、PCI(Peripheral Component Interconnect/Interface)バスなどの外部バスに接続されている。
入力装置909は、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル、ボタン、スイッチおよびレバーなどユーザが操作する操作手段である。また、入力装置909は、例えば、赤外線やその他の電波を利用したリモートコントロール手段(いわゆる、リモコン)であってもよいし、演算処理装置200の操作に対応したPDA等の外部接続機器923であってもよい。さらに、入力装置909は、例えば、上記の操作手段を用いてユーザにより入力された情報に基づいて入力信号を生成し、CPU901に出力する入力制御回路などから構成されている。演算処理装置200のユーザは、この入力装置909を操作することにより、演算処理装置200に対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりすることができる。
出力装置911は、取得した情報をユーザに対して視覚的または聴覚的に通知することが可能な装置で構成される。このような装置として、CRTディスプレイ装置、液晶ディスプレイ装置、プラズマディスプレイ装置、ELディスプレイ装置およびランプなどの表示装置や、スピーカおよびヘッドホンなどの音声出力装置や、プリンタ装置、携帯電話、ファクシミリなどがある。出力装置911は、例えば、演算処理装置200が行った各種処理により得られた結果を出力する。具体的には、表示装置は、演算処理装置200が行った各種処理により得られた結果を、テキストまたはイメージで表示する。他方、音声出力装置は、再生された音声データや音響データ等からなるオーディオ信号をアナログ信号に変換して出力する。
ストレージ装置913は、演算処理装置200の記憶部の一例として構成されたデータ格納用の装置である。ストレージ装置913は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)等の磁気記憶部デバイス、半導体記憶デバイス、光記憶デバイス、または光磁気記憶デバイス等により構成される。このストレージ装置913は、CPU901が実行するプログラムや各種データ、および外部から取得した各種のデータなどを格納する。
ドライブ915は、記録媒体用リーダライタであり、演算処理装置200に内蔵、あるいは外付けされる。ドライブ915は、装着されている磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、または半導体メモリ等のリムーバブル記録媒体921に記録されている情報を読み出して、RAM905に出力する。また、ドライブ915は、装着されている磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、または半導体メモリ等のリムーバブル記録媒体921に記録を書き込むことも可能である。リムーバブル記録媒体921は、例えば、CDメディア、DVDメディア、Blu−ray(登録商標)メディア等である。また、リムーバブル記録媒体921は、コンパクトフラッシュ(登録商標)(CompactFlash:CF)、フラッシュメモリ、または、SDメモリカード(Secure Digital memory card)等であってもよい。また、リムーバブル記録媒体921は、例えば、非接触型ICチップを搭載したICカード(Integrated Circuit card)または電子機器等であってもよい。
接続ポート917は、機器を演算処理装置200に直接接続するためのポートである。接続ポート917の一例として、USB(Universal Serial Bus)ポート、IEEE1394ポート、SCSI(Small Computer System Interface)ポート、RS−232Cポート等がある。この接続ポート917に外部接続機器923を接続することで、演算処理装置200は、外部接続機器923から直接各種のデータを取得したり、外部接続機器923に各種のデータを提供したりする。
通信装置919は、例えば、通信網925に接続するための通信デバイス等で構成された通信インターフェースである。通信装置919は、例えば、有線または無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)、またはWUSB(Wireless USB)用の通信カード等である。また、通信装置919は、光通信用のルータ、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)用のルータ、または、各種通信用のモデム等であってもよい。この通信装置919は、例えば、インターネットや他の通信機器との間で、例えばTCP/IP等の所定のプロトコルに則して信号等を送受信することができる。また、通信装置919に接続される通信網925は、有線または無線によって接続されたネットワーク等により構成され、例えば、インターネット、家庭内LAN、赤外線通信、ラジオ波通信または衛星通信等であってもよい。
以上、本発明の実施形態に係る演算処理装置200の機能を実現可能なハードウェア構成の一例を示した。上記の各構成要素は、汎用的な部材を用いて構成されていてもよいし、各構成要素の機能に特化したハードウェアにより構成されていてもよい。従って、本実施形態を実施する時々の技術レベルに応じて、適宜、利用するハードウェア構成を変更することが可能である。
以下では、実施例を参照しながら、本発明の実施形態に係る高炉羽口状態観察装置及び高炉羽口状態観察方法について具体的に説明する。なお、以下に示す実施例はあくまでも一例であって、本発明の実施形態に係る高炉羽口状態観察装置及び高炉羽口状態観察方法が、以下に示した実施例に限定されるわけではない。
(実施例1)
本実施例では、幅480画素×高さ360画素の5種類の異なる熱放射輝度画像(動画像)を準備した。これら5種類の熱放射輝度画像は、生鉱落ちが発生した際のものであり、生鉱落ちの度合いがそれぞれ異なっているものである。本実施例では、これら5種類の熱放射輝度画像を官能検査の熟練者に実際に注視してもらい、良好状態(評価:5)から激しい生鉱落ち(評価:1)まで良好程度を判定してもらった。
同時に、上記5種類の熱放射輝度画像を利用して、上記基盤技術に基づき演算処理装置200による処理を実施し、それぞれの熱放射輝度画像について、生鉱落ちの程度を表す指標として明部平均画素数mを算出した。演算処理装置200における演算処理に際して、正規化円の半径は170画素とし、明部平均画素数mを算出する際の指定範囲は70≦r≦160とした。
熟練者による良好程度の判断結果と、算出された明部平均画素数mとの対応関係を、図24に示した。図24から明らかなように、本発明の基盤技術に係る高炉羽口状態観察装置10により算出された明部平均画素数mと、官能検査の熟練者による判断結果とは、1対1に対応している。この結果から、本発明の基盤技術に係る高炉羽口状態観察装置により算出される各種の情報や特徴量は、高炉羽口の状態を観察したり判断したりする際に、有用であることが明らかとなった。
(実施例2)
本実施例では、実際に撮像した熱放射輝度画像から算出された、約6時間分の特徴量(明部平均画素数m及び最高輝度半径n)を利用し、上記第1の実施形態で説明した方法に則して、生鉱落ち指標p及び微粉炭膨張指標qの算出を行った。準備した特徴量の個数は、N=20000点程であった。図25の左上に示したグラフ図が、本実施例で使用した(明部平均画素数m,最高画素半径n)のデータの集合である。
領域分割数を決定するために、データ点数N=20000を用いて10×(log10(20000)+1)の値を算出すると、値は53となった。そこで、区切りのよい数である50を分割数として選択し、図25左上に示した特徴量座標平面を、50×50の升目状に等間隔に分割した。その上で、ヒストグラムの個数閾値を1に設定して、先だって説明した方法に則して、上側境界升及び下側境界升を検出した。図25右上に示したグラフ図において、上側境界升に含まれるデータを△で示しており、下側境界升に含まれるデータを□で示している。
上側境界升に含まれるデータ、及び、下側境界升に含まれるデータを利用して最小二乗法を行い、図25右上のグラフ中に示した2本の直線(上側直線及び下側直線)を決定した。その後、図17Fに示したような3種類の基準点A,B,Cの座標を算出したところ、交点A(m1,n1)=(217.1,148.7)、点B(0,n2)=(0,130.6)、点C(0,n3)=(0,51.1)となった。これら3つの基準点の座標を利用し、式205に基づいて座標変換式を算出し(p0=q0=100とした。)、図25左上に示したデータを定量化した結果、図25下段に示した生鉱落ち指標p及び微粉炭膨張指標qを得ることができた。
また、図26には、生鉱落ち指標pの時系列推移に着目し、生鉱落ち指標pの時系列推移情報を可視化したグラフ図を示した。図26に示したグラフと、対応する熱放射輝度画像の観察とから、生鉱落ち指標pが60以上となった時点で、顕著な生鉱落ちが発生していることがわかった。従って、判断用閾値pth=60とすることで、生鉱落ちが発生しているか否かを容易に判断することが可能となった。
なお、図26に示した6時間分の生鉱落ち指標pの時系列推移の平均値μ及び標準偏差σを算出し、設定値α=3としたところ、この場合においても、pth=μ+α×σ≒60となった。
また、図25に示したデータと同じデータを利用し、特徴量座標平面を短冊状に等間隔に分割した場合についても、生鉱落ち指標p及び微粉炭膨張指標qを算出した。得られた結果を、図27に示した。本例においても、分割数は50とした。
図27右上に示したグラフ図では、それぞれの短冊状の領域において、最高画素半径nの最大値に該当するデータを△で示しており、最小値に該当するデータを□で示している。これらのデータの分布から最小二乗法により2本の直線(上側直線及び下側直線)を決定した。本例において、交点A(m1,n1)=(231.2,155.5)、点B(0,n2)=(0,126.1)、点C(0,n3)=(0,48.6)となった。これら3つの基準点の座標を利用し、式205に基づいて座標変換式を算出し(p0=q0=100とした。)、図27左上に示したデータを定量化した結果、図27下段に示した生鉱落ち指標p及び微粉炭膨張指標qを得ることができた。
また、図28には、生鉱落ち指標pの時系列推移に着目し、生鉱落ち指標pの時系列推移情報を可視化したグラフ図を示した。図28に示したグラフと、対応する熱放射輝度画像の観察とから、生鉱落ち指標pが60以上となった時点で、顕著な生鉱落ちが発生していることがわかった。従って、本例においても、判断用閾値pth=60とすることで、生鉱落ちが発生しているか否かを容易に判断することが可能となった。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。