(参考例)
図1および図2は、本参考例のMEMS装置2を示している。MEMS装置2は、支持フレーム4と、揺動板6と、ミラー8と、ねじり梁群10a,10bと、永久磁石12と、電磁石14a,14bを備えている。
支持フレーム4と、揺動板6と、ねじり梁群10a,10bは、単結晶シリコンからなるシリコンウェハを選択的にエッチングすることによって形成されている。支持フレーム4と、揺動板6と、ねじり梁群10a,10bは、継ぎ目無く一体的に形成されている。
支持フレーム4は、矩形の枠形状に形成されている。
揺動板6は、矩形の平板形状に形成されている。揺動板6は、支持フレーム4の内側に配置されている。揺動板6は、ねじり梁群10a,10bを介して、支持フレーム4に対して揺動軸C周りに揺動可能に支持されている。なお、本参考例では、揺動軸Cに沿う方向をX軸とし、揺動板6に直交する方向をZ軸とし、X軸およびZ軸に直交する方向をY軸としている。
ミラー8は、揺動板6の表面にAL等の金属を蒸着することによって形成されている。ミラー8は、MEMS装置2の上面側から入射する光を反射する。揺動板6が揺動軸C周りに揺動すると、ミラー8の反射角度が変化する。すなわち、MEMS装置2は、光偏向装置として動作することができる。
ねじり梁群10a,10bは、X軸方向の両側から(すなわち揺動軸Cに沿う方向の両側から)揺動板6を支持している。ねじり梁群10aは、揺動板6の揺動軸Cに沿った一方の端部(図1の左側の端部)を支持している。ねじり梁群10bは、揺動板6の揺動軸Cに沿った他方の端部(図1の右側の端部)を支持している。揺動板6が揺動する際には、ねじり梁群10a,10bがそれぞれねじれ変形する。
ねじり梁群10aは、5つのねじり梁16a,18a,20a,22a,24aを備えている。ねじり梁16a,18a,20a,22a,24aは、何れも矩形断面を有しており、直線状に伸びている。ねじり梁16a,18a,20a,22a,24aは、同一平面内(XY平面内)で、揺動軸Cに沿って、互いに平行に等間隔で配置されている。ねじり梁20aは、MEMS装置2を上方から平面視したときに、揺動軸Cと重なる位置に配置されている。ねじり梁18a,22aは、MEMS装置2を上方から平面視したときに、ねじり梁20aを挟んで対称な位置に配置されている。ねじり梁16a,24aは、MEMS装置2を上方から平面視したときに、ねじり梁18a,22aよりも外側で、ねじり梁20aを挟んで対称な位置に配置されている。
ねじり梁群10bは、5つのねじり梁16b,18b,20b,22b,24bを備えている。ねじり梁16b,18b,20b,22b,24bは、何れも矩形断面を有しており、直線状に伸びている。ねじり梁16b,18b,20b,22b,24bは、同一平面内(XY平面内)で、揺動軸Cに沿って、互いに平行に等間隔で配置されている。ねじり梁20bは、MEMS装置2を上方から平面視したときに、揺動軸Cと重なる位置に配置されている。ねじり梁18b,22bは、MEMS装置2を上方から平面視したときに、ねじり梁20bを挟んで対称な位置に配置されている。ねじり梁16b,24bは、MEMS装置2を上方から平面視したときに、ねじり梁18b,22bよりも外側で、ねじり梁20bを挟んで対称な位置に配置されている。
永久磁石12は、ネオジム磁石(Nd2Fe14B)や、サマリウムコバルト磁石(SmCo5(1−5系)、Sm2Co17(2−17系)等)や、フェライト磁石等からなる永久磁石である。永久磁石12は、揺動板6の裏面中央部に形成された窪みに固定されている。図1に示すように、MEMS装置2を上方から平面視したときに、永久磁石12は、揺動軸Cと重なる位置に配置されている。図2に示すように、永久磁石12は、極性の向きが揺動板6に直交する姿勢で、揺動板6に固定されている。本実施例では、永久磁石12のN極が揺動板6に近い側に配置され、S極が揺動板6から遠い側に配置されている。
電磁石14a,14bは、鉄心の周りにコイルを捲回して形成されている。電磁石14a,14bは、支持フレーム4の外側から、揺動板6の永久磁石12を挟みこむように配置されている。
例えば、電磁石14aがN極となり、電磁石14bがS極となるように、電磁石14a,14bに電流を流すと、揺動板6の永久磁石12には、電磁石14bから電磁石14aに向かう方向の磁場が作用する。これにより、永久磁石12には、S極を電磁石14aに近づけ、N極を電磁石14bに近づける方向のトルクが作用する。このトルクによって、揺動板6は、電磁石14a側の端部が上昇し、電磁石14b側の端部が下降する方向に揺動する。これにより、ミラー8の反射角度が変化する。
逆に、電磁石14aがS極となり、電磁石14bがN極となるように、電磁石14a,14bに電流を流すと、揺動板6の永久磁石12には、電磁石14aから電磁石14bに向かう方向の磁場が作用する。これにより、永久磁石12には、S極を電磁石14bに近づけ、N極を電磁石14aに近づける方向のトルクが作用する。このトルクによって、揺動板6は、電磁石14b側の端部が上昇し、電磁石14a側の端部が下降する方向に揺動する。これにより、ミラー8の反射角度が変化する。
電磁石14a,14bの駆動周波数を揺動板6の共振周波数に一致させると、小さな駆動電力で揺動板6を大きく動作させることができる。このような共振駆動において、揺動板6を高速で動作させるためには、電磁石14a,14bの駆動周波数を高くするとともに、それに合わせて揺動板6の共振周波数を高くする必要がある。また、MEMS装置2の耐久性を確保するためには、ねじり梁群10a,10bの強度を確保しておく必要がある。その上で、MEMS装置2における有効な反射面積の割合を向上するためには、ねじり梁群10a,10bの長さ、言い換えると揺動板6と支持フレーム4の間の間隔を可能な限り短くすることが好ましい。
本参考例のMEMS装置2では、一方のねじり梁群10aを5つのねじり梁16a,18a,20a,22a,24aで構成し、他方のねじり梁群10bを5つのねじり梁16b,18b,20b,22b,24bで構成することによって、必要とされる揺動板6の共振周波数とねじり梁群10a,10bの強度を確保しつつ、ねじり梁群10a,10bの長さを短くすることができる。以下では、ねじり梁群10a,10bにおけるねじり梁の本数と、ねじり梁群10a,10bの長さの関係について説明する。
図3に示すように、揺動板Pの一方の端部を単一のねじり梁BRで支持し、他方の端部を単一のねじり梁BLで支持する構成を考える。この場合、揺動板Pの共振周波数frは、次式で与えられる。
ここで、Kはねじり梁BR、BLの(片側のみの)ねじり剛性であり、Jは揺動板Pの慣性モーメントである。
ねじり梁BR,BLのねじり剛性Kは、次式で与えられる。
ここで、lはねじり梁BR,BLの長さであり、aはねじり梁BR,BLの断面の長辺の長さであり、bはねじり梁BR,BLの断面の短辺の長さであり、Gはねじり梁BR,BLの横弾性係数である。以下では、ねじり梁BR,BLの断面の高さtbが断面の幅wbよりも長いものとして説明する。すなわち、本説明の中では、tbがねじり梁BR,BLの断面の長辺の長さaであり、wbがねじり梁BR,BLの断面の短辺の長さbに相当する。
ここで、ρは揺動板Pの質量密度であり、Wは揺動板Pの幅であり、Lは揺動板Pの長さであり、Tは揺動板Pの厚みである。
揺動板6を共振駆動する場合、揺動板6の共振周波数frを所定の周波数に一致させる必要がある。
また、ねじり梁BR,BLの強度に関して、ねじり梁BR,BLに作用するせん断応力τは、次式で与えられる。
ここで、θは揺動板Pの最大傾き角である。
ねじり梁BR,BLの強度を確保するためには、ねじり梁BR,BLに作用するせん断応力τを、許容せん断応力τmax以下としなければならない。
従って、上記の数式(1)〜(4)の条件を満足した上で、数式(7)の条件を満たすlの最小値が、実現可能なねじり梁BR,BLの最小の長さとなる。
例えば、揺動板Pの共振周波数frを3kHzとし、揺動板Pの質量密度ρを2330kg/m3とし、揺動板Pの幅Wを5mmとし、揺動板Pの長さLを5mmとし、揺動板Pの厚みTを0.5mmとし、揺動板Pの最大傾き角θを15°とし、ねじり梁BR,BLの横弾性係数Gを64GPaとし、ねじり梁BR,BLの許容せん断応力τmaxを1GPaとし、ねじり梁BR,BLの断面の長辺の長さa(断面の高さtb)を0.5mmとする場合、ねじり梁BR,BLの長さが最小となるのはねじり梁BR,BLの断面の短辺の長さb(断面の幅wb)が0.142mmの時であり、その際のねじり梁BR,BLの長さは2.3mmである。従って、図3に示す、単一のねじり梁BR,BLによって揺動板Pを両側から支持する構成では、ねじり梁BR,BLの長さを2.3mmより短くすることはできない。
次に、図4に示すように、揺動板Pの一方の端部をn本のねじり梁からなるねじり梁群BRnで支持し、他方の端部をn本のねじり梁からなるねじり梁群BLnで支持する構成を考える。この場合、揺動板Pの共振周波数frは、次式で与えられる。
ここで、Kallはねじり梁群BRn、BLnの(片側のみの)ねじり剛性であり、Jは揺動板Pの慣性モーメントである。
ねじり梁群BRn,BLnのねじり剛性Kallは、次式で計算される。
ここで、lはねじり梁群BRn,BLnの長さであり、aはねじり梁群BRn,BLnの個々のねじり梁の断面の長辺の長さであり、bはねじり梁群BRn,BLnの個々のねじり梁の断面の短辺の長さであり、Gはねじり梁群BRn,BLnの横弾性係数である。以下では、ねじり梁群BRn,BLnの個々のねじり梁の断面の高さtbが断面の幅wbよりも長いものとして説明する。すなわち、本説明の中では、tbがねじり梁群BRn,BLnの個々のねじり梁の断面の長辺の長さaであり、wbがねじり梁群BRn,BLnの個々のねじり梁の断面の短辺の長さbに相当する。
揺動板Pの慣性モーメントJは、上記の数式(4)で与えられる。
揺動板6を共振駆動する場合、揺動板6の共振周波数frを所定の周波数に一致させる必要がある。
また、ねじり梁群BRn,BLnの強度に関して、ねじり梁群BRn,BLnの個々のねじり梁に作用するせん断応力τは、次式で与えられる。
ここで、θは揺動板Pの最大傾き角である。
ねじり梁群BRn,BLnの強度を確保するためには、ねじり梁群BRn,BLnの個々のねじり梁に作用するせん断応力τを、許容せん断応力τmax以下としなければならない。
従って、上記の数式(4),(8)〜(10)の条件を満足した上で、数式(13)の条件を満たすlの最小値が、実現可能なねじり梁群BRn,BLnの最小の長さとなる。
例えば、揺動板Pの共振周波数frを3kHzとし、揺動板Pの質量密度ρを2330kg/m3とし、揺動板Pの幅Wを5mmとし、揺動板Pの長さLを5mmとし、揺動板Pの厚みTを0.5mmとし、揺動板Pの最大傾き角θを15°とし、ねじり梁群BRn,BLnの横弾性係数Gを64GPaとし、ねじり梁群BRn,BLnの許容せん断応力τmaxを1GPaとし、ねじり梁群BRn,BLnのねじり梁の本数nを5とし、ねじり梁群BRn,BLnの個々のねじり梁の長辺の長さa(断面の高さtb)を0.5mmとする場合、ねじり梁群BRn,BLnの個々のねじり梁の断面の短辺の長さb(断面の幅wb)を0.06mmとすれば、ねじり梁群BRn,BLnの長さを1.0mmとすることができる。従って、図4に示すように、複数のねじり梁からなるねじり梁群BRn,BLnによって揺動板Pを両側から支持する構成とすることで、図3に示す構成に比べて、ねじり梁群BRn,BLnの長さを短くすることができる。
上記の計算例では、ねじり梁群BRn,BLnのねじり梁の本数nを5とする場合について説明したが、ねじり梁群BRn,BLnのねじり梁の本数nは、以下の関係を満たすものであればよい。
ねじり梁の本数nが上記の数式(14)の条件を満たしている場合には、必要とされる揺動板Pの共振周波数とねじり梁群BRn,BLnの強度を確保しつつ、ねじり梁群BRn,BLnの長さを短くすることができる。
本参考例では、永久磁石12と電磁石14a,14bの間に作用する磁力を用いて、揺動板6を揺動させている。このような構成とすることで、揺動板6に対する電流の供給が不要となり、支持フレーム4から揺動板6へのねじり梁群10a,10bを介した電気配線が不要となる。このような構成とすることで、ねじり梁群10a,10bのねじり梁16a,18a,20a,22a,24a、16b,18b,20b,22b,24bの断面を、より小さく形成することができる。その結果、ねじり梁群10a,10bを構成するねじり梁の本数を増やすことが可能となり、ねじり梁群10a,10bの長さをより短くすることができる。
本参考例では、ねじり梁群10a,10bを短くすることでMEMS装置2を小型化できるだけでなく、不要な振動に対して強いMEMS装置2を実現することができる。これについて、図3と図4を参照しながら、以下に説明する。
不要な振動モードとしては、揺動板Pの並進モードがあげられる。並進モードには、X方向、Y方向およびZ方向の3つがあげられる。X方向はねじり梁BR,BL(ねじり梁群BRn,BLn)の設置方向であるため、揺動板Pに移動自由度はなく、図3に示す場合も図4に示す場合も、X方向の並進は生じにくい。
Y方向の並進のしやすさは、揺動板PのY方向変位のばね定数の大きさに依存する。揺動板PのY方向変位のばね定数KYは、次式に示すように、ねじり梁の断面の高さtbの1乗、ねじり梁の本数nの1乗、およびねじり梁の断面の幅wbの3乗に比例し、かつ、ねじり梁の長さlbの3乗に反比例する。
上述の結果より、図3に示す単一のねじり梁の構成に比べて、図4に示す複数本のねじり梁の構成では、ねじり梁の形状は以下のように変化している。
ねじり梁の断面の幅wb:0.06/0.142=1/2.4倍
ねじり梁の断面の高さtb:0.5/0.5=1倍
ねじり梁の長さlb:1/2.3=1/2.3倍
ねじり梁の本数n:5/1=5倍
このため、図4に示す構成では、図3に示す構成に比べて、Y方向変位のばね定数KYを約4.4倍にすることができる。すなわち、図4に示す構成は、図3に示す構成に比べて、Y方向の並進をしにくい構造となっている。
Z方向の並進のしやすさは、揺動板PのZ方向変位のばね定数の大きさに依存する。揺動板PのZ方向変位のばね定数KZは、次式に示すように、ねじり梁の断面の幅wbの1乗、ねじり梁の本数nの1乗、およびねじり梁の断面の高さtbの3乗に比例し、かつ、ねじり梁の長さlbの3乗に反比例する。
このため、図4に示す構成では、図3に示す構成に比べて、Z方向変位のばね定数KZを約25倍にすることができる。すなわち、図4に示す構成は、図3に示す構成に比べて、Z方向の並進をしにくい構造となっている。
以上のように、本参考例では、ねじり梁群10a,10bを短くすることでMEMS装置2を小型化できるだけでなく、不要な振動に対して強いMEMS装置2を実現することができる。
(実施例1)
図5は本実施例のMEMS装置30を示している。MEMS装置30は、参考例のMEMS装置2とほぼ同様の構成を備えている。
MEMS装置30では、ねじり梁群32a、32bを介して、揺動板6が支持フレーム4に対して揺動軸C軸周りに揺動可能に支持されている。
ねじり梁群32aは、5つのねじり梁34a,36a,38a,40a,42aを備えている。ねじり梁群32bは、5つのねじり梁34b,36b,38b,40b,42bを備えている。ねじり梁34a,34b,36a,36b,38a,38b,40a,40b,42a,42bは、何れも矩形断面を有しており、同一平面内(XY平面内)に配置されている。ねじり梁38a,38bは、MEMS装置30を上方から平面視したときに、揺動軸Cと重なる位置に配置されている。ねじり梁36a,40aは、MEMS装置30を上方から平面視したときに、ねじり梁38aを挟んで対称な位置に配置されている。ねじり梁34a,42aは、MEMS装置30を上方から平面視したときに、ねじり梁36a,40aよりも外側で、ねじり梁38aを挟んで対称な位置に配置されている。ねじり梁36b,40bは、MEMS装置30を上方から平面視したときに、ねじり梁38bを挟んで対称な位置に配置されている。ねじり梁34b,42bは、MEMS装置30を上方から平面視したときに、ねじり梁36b,40bよりも外側で、ねじり梁38bを挟んで対称な位置に配置されている。
ねじり梁38a,38bは、直線状に形成されている。ねじり梁34a,34b,36a,36b,40a,40b,42a,42bは、揺動軸Cに沿った直線状に形成された中央部44a,44b,50a,50b,56a,56b,62a,62bと、中央部44a,44b,50a,50b,56a,56b,62a,62bの一方の端部から外側に屈曲して直線状に伸び、揺動板6に接続する応力緩和部48a,48b,54a,54b,60a,60b,66a,66bと、中央部44a,44b,50a,50b,56a,56b,62a,62bの他方の端部から外側に屈曲して直線状に伸び、支持フレーム4に接続する応力緩和部46a,46b,52a,52b,58a,58b,64a,64bを備えている。
本実施例のMEMS装置30では、ねじり梁群32a,32bの外側に配置された(すなわち、揺動軸Cから離れた位置に配置された)ねじり梁34a,34b,36a,36b,40a,40b,42a,42bに、応力緩和部46a,46b,48a,48b,52a,52b,54a,54b,58a,58b,60a,60b,64a,64b,66a,66bが形成されている。このような構成とすることによって、揺動板6が揺動したときに、揺動軸Cから離れた位置のねじり梁34a,34b,36a,36b,40a,40b,42a,42bに作用する引張応力を軽減することができる。これによって、ねじり梁34a,34b,36a,36b,40a,40b,42a,42bの強度を向上するとともに、ねじり梁群32a,32bのねじり剛性を一定に保つことができる。大きく駆動しても破断しない、信頼性の高いねじり梁群32a,32bを実現することができる。また、ねじり剛性が揺動板6の傾き角に依存しないため、共振周波数を傾き角に依らず一定にすることができる。従って、所望の共振周波数を維持しつつ、大きく動作可能なMEMS装置を実現することができる。
また、本実施例のMEMS装置30では、ねじり梁群32a,32bの中央に配置された(すなわち、揺動軸Cと重なるように配置された)ねじり梁38a,38bが、直線状に形成されている。このような構成とすることによって、揺動軸Cに沿う方向のねじり梁群32a,32bの引張剛性および圧縮剛性を確保することができる。揺動板6が支持フレーム4に対して揺動軸Cに沿う方向に並進運動することを抑制することができる。
(実施例2)
図6は本実施例のMEMS装置70を示している。MEMS装置70は、実施例1のMEMS装置30とほぼ同様の構成を備えている。
MEMS装置70では、ねじり梁群72a,72bを介して、揺動板6が支持フレーム4に対して揺動軸C軸周りに揺動可能に支持されている。
ねじり梁群72aは、5つのねじり梁74a,76a,78a,80a,82aを備えている。ねじり梁群72bは、5つのねじり梁74b,76b,78b,80b,82bを備えている。ねじり梁74a,74b,76a,76b,78a,78b,80a,80b,82a,82bは、何れも矩形断面を有しており、同一平面内(XY平面内)に配置されている。ねじり梁78a,78bは、MEMS装置70を上方から平面視したときに、揺動軸Cと重なる位置に配置されている。ねじり梁76a,80aは、MEMS装置70を上方から平面視したときに、ねじり梁78aを挟んで対称な位置に配置されている。ねじり梁74a,82aは、MEMS装置70を上方から平面視したときに、ねじり梁76a,80aよりも外側で、ねじり梁78aを挟んで対称な位置に配置されている。ねじり梁76b,80bは、MEMS装置70を上方から平面視したときに、ねじり梁78bを挟んで対称な位置に配置されている。ねじり梁74b,82bは、MEMS装置70を上方から平面視したときに、ねじり梁76b,80bよりも外側で、ねじり梁78bを挟んで対称な位置に配置されている。
ねじり梁78a,78bは、直線状に形成されている。ねじり梁74a,74b,76a,76b,80a,80b,82a,82bは、揺動軸Cに沿った直線状に形成された中央部84a,84b,94a,94b,104a,104b,114a,114bと、中央部84a,84b,94a,94b,104a,104b,114a,114bの一方の端部から外側に屈曲して直線状に伸びる応力緩和部92a,92b,102a,102b,112a,112b,122a,122bと、応力緩和部92a,92b,102a,102b,112a,112b,122a,122bの端部から内側に屈曲して直線状に伸び、揺動板6に接続する終端部90a,90b,100a,100b,110a,110b,120a,120bと、中央部84a,84b,94a,94b,104a,104b,114a,114bの他方の端部から外側に屈曲して直線状に伸びる応力緩和部88a,88b,98a,98b,108a,108b,118a,118bと、応力緩和部88a,88b,98a,98b,108a,108b,118a,118bの端部から内側に屈曲して直線状に伸び、支持フレーム4に接続する終端部86a,86b,96a,96b,106a,106b,116a,116bを備えている。
本実施例のMEMS装置70では、ねじり梁群72a,72bと揺動板6の接続部分に終端部90a,90b,100a,100b,110a,110b,120a,120bが形成されており、ねじり梁群72a,72bと支持フレーム4の接続部分に終端部86a,86b,96a,96b,106a,106b,116a,116bが形成されている。本実施例では、終端部90a,90b,100a,100b,110a,110b,120a,120bにおけるねじり梁74a,74b,76a,76b,78a,78b,80a,80b,82a,82bと揺動板6の接続角度と、終端部86a,86b,96a,96b,106a,106b,116a,116bにおけるねじり梁74a,74b,76a,76b,78a,78b,80a,80b,82a,82bと支持フレーム4の接続角度は、何れも実質的に同じ角度(例えば90°)である。このような構成とすることによって、ねじり梁群72a,72bの付け根近傍における開口の形状を均一化することができ、エッチング等の加工によってねじり梁群72a,72bを形成する際の、形状ばらつきの発生を抑制することができる。また、ねじり梁群72a,72bの付け根の形状が均一になるため、ねじり梁群72a,72bの付け根に作用する応力を均等にすることができる。このため、破断しにくい信頼性の高いねじり梁群72a,72bを実現することができる。
なお、ねじり梁群72a,72bの付け根に角Rを設けることで、さらに信頼性の高いねじり梁群72a,72bを実現可能である。また、個々のねじり梁74a,74b,76a,76b,78a,78b,80a,80b,82a,82bの応力緩和部の長さや、応力緩和部の角度を適切に調整しておくことで、隣り合ったねじり梁の終端部間の距離を広くとることができる。これによって、終端部に大きな角Rを設けることができる。ねじり梁群72a,72bの付け根に発生する応力をさらに分散させて、信頼性の高いMEMS装置を実現することができる。
(実施例3)
図7は本実施例のMEMS装置130を示している。MEMS装置130は、実施例2のMEMS装置70とほぼ同様の構成を備えている。
MEMS装置130では、ねじり梁群132a,132bを介して、揺動板6が支持フレーム4に対して揺動軸C軸周りに揺動可能に支持されている。
ねじり梁群132aは、5つのねじり梁134a,136a,138a,140a,142aを備えている。ねじり梁群132bは、5つのねじり梁134b,136b,138b,140b,142bを備えている。ねじり梁134a,134b,136a,136b,138a,138b,140a,140b,142a,142bは、何れも矩形断面を有しており、同一平面内(XY平面内)に配置されている。ねじり梁138a,138bは、MEMS装置130を上方から平面視したときに、揺動軸Cと重なる位置に配置されている。ねじり梁136a,140aは、MEMS装置130を上方から平面視したときに、ねじり梁138aを挟んで対称な位置に配置されている。ねじり梁136b,140bは、MEMS装置130を上方から平面視したときに、ねじり梁138bを挟んで対称な位置に配置されている。ねじり梁134a,142aは、MEMS装置130を上方から平面視したときに、ねじり梁136a,140aよりも外側で、ねじり梁138aを挟んで対称な位置に配置されている。ねじり梁134b,142bは、MEMS装置130を上方から平面視したときに、ねじり梁136b,140bよりも外側で、ねじり梁138bを挟んで対称な位置に配置されている。
ねじり梁138a,138bは、直線状に形成されている。ねじり梁134a,134b,136a,136b,140a,140b,142a,142bは、揺動軸Cに沿った直線状に形成された中央部144a,144b,154a,154b,164a,164b,174a,174bと、中央部144a,144b,154a,154b,164a,164b,174a,174bの一方の端部から外側に垂直に屈曲して直線状に伸びる応力緩和部152a,152b,162a,162b,172a,172b,182a,182bと、応力緩和部152a,152b,162a,162b,172a,172b,182a,182bの端部から内側に垂直に屈曲して直線状に伸び、揺動板6に接続する終端部150a,150b,160a,160b,170a,170b,180a,180bと、中央部144a,144b,154a,154b,164a,164b,174a,174bの他方の端部から外側に垂直に屈曲して直線状に伸びる応力緩和部148a,148b,158a,158b,168a,168b,178a,178bと、応力緩和部148a,148b,158a,158b,168a,168b,178a,178bの端部から内側に垂直に屈曲して直線状に伸び、支持フレーム4に接続する終端部146a,146b,156a,156b,166a,166b,176a,176bを備えている。
本実施例のように、応力緩和部を揺動軸Cに対して直交するように配置することで、応力緩和部の揺動軸Cに平行に伸びる(X軸方向の)成分を最小とすることができる。その結果、実施例2の場合に比べて、ねじり梁群132a,132bのX軸方向の長さを増大させることなく、応力緩和の可能なねじり梁群132a,132bを実現することができる。
(実施例4)
図8は本実施例のMEMS装置190を示している。MEMS装置190は、実施例3のMEMS装置130とほぼ同様の構成を備えている。
MEMS装置190では、ねじり梁群192a,192bを介して、揺動板6が支持フレーム4に対して揺動軸C軸周りに揺動可能に支持されている。
ねじり梁群192aは、7つのねじり梁196a,134a,136a,138a,140a,142a,198aを備えている。ねじり梁群192bは、7つのねじり梁196b,134b,136b,138b,140b,142b,198bを備えている。
ねじり梁134a,134b,136a,136b,138a,138b,140a,140b,142a,142bの構成は、図7に示す実施例3と同様である。ねじり梁196a,198aは、MEMS装置190を上方から平面視したときに、ねじり梁134a,142aよりも外側で、ねじり梁138aを挟んで対称な位置に配置されている。ねじり梁196b,198bは、MEMS装置190を上方から平面視したときに、ねじり梁134b,142bよりも外側で、ねじり梁138bを挟んで対称な位置に配置されている。ねじり梁196a,196b,198a,198bは、揺動軸Cに沿った直線状に形成された中央部と、中央部の一方の端部から外側に垂直に屈曲して直線状に伸びる応力緩和部と、その応力緩和部の端部から内側に垂直に屈曲して直線状に伸び、揺動板6に接続する終端部と、中央部の他方の端部から外側に垂直に屈曲して直線状に伸びる応力緩和部と、その応力緩和部の端部から内側に垂直に屈曲して直線状に伸び、支持フレーム4に接続する終端部を備えている。
数式(14)に関して上述したように、個々のねじり梁の断面の短辺の長さbが短く、かつねじり梁の本数nが多いねじり梁群を用いることで、ねじり梁群の長さを短くすることができる。本実施例のように、ねじり梁群192a,192bのねじり梁の本数を7本にすることで、実施例3のようにねじり梁の本数を5本とする場合に比べて、ねじり梁群192a,192bのX方向の長さをより短くすることができる。
(実施例5)
図9は本実施例のMEMS装置200を示している。MEMS装置200は、参考例のMEMS装置2とほぼ同様の構成を備えている。
MEMS装置200では、ねじり梁群206a,206bを介して、揺動板6が支持フレーム4に対して揺動軸C軸周りに揺動可能に支持されている。支持フレーム4のねじり梁群206a,206bが接続する箇所には、円弧状の切り欠き202a,202bが形成されている。揺動板6のねじり梁群206a,206bが接続する箇所には、円弧状の切り欠き204a,204bが形成されている。
ねじり梁群206aは、5つのねじり梁208a,210a,212a,214a,216aを備えている。ねじり梁群206bは、5つのねじり梁208b,210b,212b,214b,216bを備えている。ねじり梁208a,208b,210a,210b,212a,212b,214a,214b,216a,216bは、何れも矩形断面を有しており、同一平面内(XY平面内)に配置されている。ねじり梁212a,212bは、MEMS装置200を上方から平面視したときに、揺動軸Cと重なる位置に配置されている。ねじり梁210a,214aは、MEMS装置200を上方から平面視したときに、ねじり梁212aを挟んで対称な位置に配置されている。ねじり梁208a,216aは、MEMS装置200を上方から平面視したときに、ねじり梁210a,214aよりも外側で、ねじり梁212aを挟んで対称な位置に配置されている。ねじり梁210b,214bは、MEMS装置200を上方から平面視したときに、ねじり梁212bを挟んで対称な位置に配置されている。ねじり梁208b,216bは、MEMS装置200を上方から平面視したときに、ねじり梁210b,214bよりも外側で、ねじり梁212bを挟んで対称な位置に配置されている。
ねじり梁212a,212bは、直線状に形成されている。ねじり梁208a,208b,210a,210b,214a,214b,216a,216bは、揺動軸Cに沿った直線状に形成された中央部218a,218b,224a,224b,230a,230b,236a,236bと、中央部218a,218b,224a,224b,230a,230b,236a,236bの一方の端部から外側に曲線的に屈曲して揺動板6の切り欠き204a,204bに接続する応力緩和部222a,222b,228a,228b,234a,234b,240a,240bと、中央部218a,218b,224a,224b,230a,230b,236a,236bの他方の端部から外側に曲線的に屈曲して支持フレーム4の切り欠き202a,202bに接続する応力緩和部220a,220b,226a,226b,232a,232b,238a,238bを備えている。
本実施例のMEMS装置200では、支持フレーム4に切り欠き202a,202bが形成されているので、応力緩和部220a,220b,226a,226b,232a,232b,238a,238bと支持フレーム4の接続角度を実質的に同じ角度とし、接続部分における開口の形状を均一化することができる。また、本実施例のMEMS装置200では、揺動板6に切り欠き204a,204bが形成されているので、応力緩和部222a,222b,228a,228b,234a,234b,240a,240bと揺動板6の接続角度を実質的に同じ角度とし、接続部分における開口の形状を均一化することができる。このような構成とすることによって、エッチング等の加工によってねじり梁群206a,206bを形成する際の、形状ばらつきの発生を抑制することができる。
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
上記の実施例では、何れも1つの揺動軸C(X軸)の周りに揺動板6を揺動させる構成について説明したが、例えば支持フレーム4の外側を囲う第2の支持フレームを用意し、Y軸に沿って配置された第2のねじり梁群によって支持フレーム4と第2の支持フレームを接続して、2つの揺動軸周りに揺動板6を揺動させる構成としてもよい。この場合、永久磁石12をX軸の両側から挟むように配置された一対の電磁石を別途用意することで、揺動板6を2軸周りに揺動させることができる。
上記の実施例の何れにおいても、揺動板とねじり梁群の接続部分や、支持フレームとねじり梁群の接続部分や、ねじり梁群の屈曲部分に、角Rを形成することで、ねじり梁群の強度をより向上することができる。
ねじり梁群の個々のねじり梁の断面形状に関して、断面の長辺がZ方向に沿うように形成することが望ましい。このような構成とすることで、すべてのねじり梁を揺動軸Cに近づけることができ、MEMS装置が動作したときに揺動軸Cから離れた位置にあるねじり梁に作用する引張応力を低減することができる。また、すべてのねじり梁を揺動軸Cに近づけることで、ねじり剛性に及ぼす傾き角の影響を抑制し、共振周波数を傾き角に依らず一定とすることができる。これによって、所望の共振周波数を維持しつつ、大きく動作可能なMEMS装置を実現することができる。
なお、上記の実施例1から実施例5では、応力緩和部を、ねじり梁群と揺動板の接続部分の近傍と、ねじり梁群と支持フレームの接続部分の近傍の双方に設ける場合について説明した。これとは異なり、応力緩和部を、ねじり梁群と揺動板の接続部分の近傍のみ、あるいはねじり梁群と支持フレームの接続部分の近傍のみに設ける構成としてもよい。
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。