〔参考例〕
本発明の実施形態を理解する上で参考となる例を説明する。
≪タッチパネルシステムの構成≫
〔参考形態1〕
(信号処理システム10の構成)
図1は、参考形態1に係る信号処理システム10の構成を示すブロック図である。信号処理システム10は、線形素子CXを駆動する駆動回路4と、駆動回路4を制御する制御回路14とを備えている。
制御回路14は、互いに異なる入出力伝達特性を有するサブシステム5a・5bと、サブシステム5a・5bのいずれかを駆動回路4に接続する切換回路6とを有している。
線形素子CXは、サブシステム5a又は5bにより制御される駆動回路4により駆動されて、連続的又は離散的に観測できて時々刻々と変化する値を有する時系列信号をアナログインターフェース回路7a(例えば、増幅回路)に供給する。アナログインターフェース回路7aは、この時系列信号を増幅してAD変換回路13に出力する。AD変換回路13は、アナログインターフェース回路7aから供給された時系列信号をAD変換し、離散時間でサンプリングされた時々刻々と変化する複数個の時系列信号を線形素子推定部11に供給する。線形素子推定部11は、AD変換された線形素子CXに基づく複数個の時系列信号に、加減算に基づく信号処理を行って線形素子CXの値、もしくは、線形素子CXの入力を推定する。信号処理システム10には、線形素子推定部11による線形素子CXの推定値もしくは線形素子CXの入力の推定値から、時系列信号に混入するノイズ量を推定するノイズ量推定回路9が設けられている。
切換回路6は、時系列信号に混入するノイズ周波数、ノイズ量、及び、入出力伝達特性に基づいて、加減算に基づく信号処理を行って線形素子CXの値もしくは入力を推定する結果に混入するノイズの影響を低減するようにサブシステム5a・5bを切り換えて駆動回路4に繋ぐ。
制御回路14は、アナログインターフェース回路7aを制御する。例えば、増幅回路への入力状態を切り換える偶数フェイズ駆動と奇数フェイズ駆動に対応する信号を制御回路14は制御する。また制御回路14は、AD変換回路13のサンプリング周波数、多重サンプリング数を制御する。さらに制御回路14は、線形素子推定部11の動作を制御する。
サブシステム5aに基づく線形素子CXからの時系列信号の多重サンプリング数と、サブシステム5bに基づく線形素子CXからの時系列信号の多重サンプリング数とは異なり得る。そして、サブシステム5aに基づく線形素子CXからの時系列信号のサンプリング周波数と、サブシステム5bに基づく線形素子CXからの時系列信号のサンプリング周波数とは異なり得る。
サブシステム5a・5bに基づく複数個の時系列信号の符号の正負は時系列に沿って反転し得る。また、サブシステム5a・5bに基づく複数個の時系列信号の符号の正負は時系列に沿って一定となり得る。
切換回路6は、ノイズ量推定回路9の推定結果に基づいてサブシステム5a・5bを切り換える。
線形素子CXは、例えば、キャパシタであり得る。線形素子CXは、熱電対を備えた温度計であってもよい。この場合は、駆動回路4が無くても、信号処理システム10が成立する。熱電対を用いて観測できる微小電圧(微小電流)を増幅回路により増幅した後、AD変換回路13によりサンプリングし、多重サンプリングのサンプリング数、サンプリング周波数を変えて、ノイズの影響を低減できる構成が実現できる。
(ノイズ量及びサンプリング周波数と信号変化量との間の周波数特性)
図2は、信号処理システム10により処理される時系列信号のノイズ量及びサンプリング周波数と時系列信号の信号変化量との間の周波数特性を示すグラフである。横軸は、信号周波数とサンプリング周波数との比である正規化係数を示している。縦軸は、信号の信号変化量を示している。
特性C1は、2個の信号をサンプリングして単純移動平均を出力する2重サンプリングの周波数特性を示している。特性C2は4個の信号をサンプリングして単純移動平均を出力する4重サンプリングの周波数特性を示しており、特性C3は8個の信号をサンプリングして単純移動平均を出力する8重サンプリングの周波数特性を示している。そして、特性C4は16個の信号をサンプリングして単純移動平均を出力する16重サンプリングの周波数特性を示している。
この周波数特性のグラフから、2重サンプリングでは、特性C1に示すように、正規化係数が0.5のとき信号変化量が−∞dBになる。従って、サンプリング周波数をノイズ周波数の2倍に設定するとノイズの影響をなくすことができる。また、正規化周波数が0.5に近づくようにサンプリング周波数を変更してもノイズの影響を低減することができる。
4重サンプリングでは、特性C2に示すように、正規化係数が0.5のとき、及び0.25のとき信号変化量が−∞dBになる。従って、サンプリング周波数をノイズ周波数の2倍又は4倍に設定するとノイズの影響をなくすことができる。正規化周波数が0.5又は0.25に近づくようにサンプリング周波数を変更してもノイズの影響を低減することができる。
8重サンプリングでは、特性C3に示すように、正規化係数が0.5、0.375、0.25、及び0.125のとき信号変化量が−∞dBになる。従って、サンプリング周波数をノイズ周波数の2倍、2.67倍、4倍、又は8倍に設定するとノイズの影響をなくすことができる。正規化周波数が0.5、0.375、0.25、又は0.125に近づくようにサンプリング周波数を変更してもノイズの影響を低減することができる。
16重サンプリングでも、特性C4に示すように、サンプリング周波数を設定、又は変更することにより、ノイズの影響を無くし、又は低減することができる。
このように、ノイズ周波数に対するサンプリング周波数を設定、又は変更することにより、ノイズの影響を無くし、又は低減することができる。
例えば、正規化周波数が0.25のとき、2重サンプリングでは信号変化量は−3dBであるが、4重サンプリング、8重サンプリング、及び16重サンプリングでは信号変化量は−∞dBである。従って、多重サンプリングの多重度を2重から4重、8重、及び16重のいずれかに変更すると、ノイズの影響を無くすことができる。このように、多重サンプリングの多重度を変更することによっても、ノイズの影響を無くし、又は低減することができる。
従って、図1に示す複数のサブシステムのサンプリング周波数を異なるように設定し、又は、多重サンプリングの多重度を異なるように設定しておき、ノイズの周波数に基づいて、図2に示す信号変化量「dB」が小さく(絶対値の大きい負の値に)なるように多重度、サンプリング周波数が設定されたサブシステムに切換回路6で切り換えることにより、ノイズの影響を無くし、又は低減することができる。
(タッチパネルシステム1の構成)
図3は、参考形態1に係るタッチパネルシステム1の構成を示す回路図である。タッチパネルシステム1は、タッチパネル2とタッチパネルコントローラ3とを備えている。タッチパネル2は、ドライブラインDL1〜DL4とセンスラインSL1〜SL4との交点にそれぞれ形成されたキャパシタC11〜C44を有する。
タッチパネルコントローラ3は、キャパシタC11〜C44をドライブラインDL1〜DL4に沿って駆動する駆動回路4を有している。
タッチパネルコントローラ3には、センスラインSL1〜SL4にそれぞれ接続された増幅回路7が設けられている。各増幅回路7は、駆動回路4により駆動されたキャパシタC11〜C44にそれぞれ蓄積された静電容量に基づく複数個の線形和信号をセンスラインSL1〜SL4に沿って読み出して増幅する。増幅回路7は、増幅器18と、増幅器18に並列に接続された積分容量Cint及びリセットスイッチを有している。
タッチパネルコントローラ3は、増幅回路7の出力をアナログ・デジタル変換するAD変換回路13と、アナログ・デジタル変換された増幅回路7の出力に基づいてキャパシタC11〜C44にそれぞれ蓄積された静電容量を推定する復号演算回路8とを有している。
タッチパネルコントローラ3は、駆動回路4を制御する制御回路14を有している。制御回路14は、異なる入出力伝達特性を有するサブシステム5a・5bと、線形和信号に混入するノイズ周波数、ノイズ量、及び、入出力伝達特性に基づいて、復号演算回路8によりキャパシタC11〜C44の静電容量を推定した結果に混入するノイズの影響を低減するようにサブシステム5a・5bを切り換えて駆動回路4に繋ぐ切換回路6とを有している。
制御回路14は、AD変換回路13のサンプリング周波数、多重サンプリング数を制御する。さらに制御回路14は、復号演算回路8の動作を制御する。
線形和信号の加減算に基づく信号処理による静電容量の推定値から、線形和信号に混入するノイズ量を推定するノイズ量推定回路9が設けられている。切換回路6は、ノイズ量推定回路9の推定結果に基づいてサブシステム5a・5bを切り換える。
(タッチパネルシステム1の動作)
図4はタッチパネルシステム1の駆動方法を説明するための回路図であり、図5はタッチパネルシステム1の駆動方法を示す数式を説明するための図である。
駆動回路4は、図5の式3に示される4行4列の符号系列に基づいてドライブラインDL1〜DL4を駆動する。符号行列の要素が「1」であれば、駆動回路4は電圧Vdriveを印加し、要素が「0」であれば、ゼロボルトを印加する。
増幅回路7は、駆動回路4により駆動されたキャパシタに蓄積された電荷に基づく静電容量のセンスラインに沿った線形和の測定値Y1、Y2、Y3、Y4を受け取って増幅する。
例えば、前記4行4列の符号系列による4回の駆動のうちの最初の駆動では、駆動回路4はドライブラインDL1に電圧Vdriveを印加し、残りのドライブラインDL2〜DL4にゼロボルトを印加する。すると、例えば、図5の式1で示される静電容量C31が蓄積されたキャパシタC31に対応するセンスラインSL3からの測定値Y1が増幅回路7から出力される。
そして、2回目の駆動では、ドライブラインDL2に電圧Vdriveを印加し、残りのドライブラインDL1、DL3、DL4にゼロボルトを印加する。すると、図5の式2で示される静電容量C32が蓄積されたキャパシタC32に対応するセンスラインSL3からの測定値Y2が増幅回路7から出力される。
次に、3回目の駆動では、ドライブラインDL3に電圧Vdriveを印加し、残りのドライブラインにゼロボルトを印加する。その後、4回目の駆動では、ドライブラインDL4に電圧Vdriveを印加し、残りのドライブラインにゼロボルトを印加する。
そうすると、図5の式3及び式4に示すように、測定値Y1、Y2、Y3、Y4そのものが、それぞれ静電容量値C1、C2、C3、C4と関連付けられる。なお、図5の式3〜式4においては、表記の簡単化のため、測定値Y1〜Y4について、係数(−Vdrive/Cint)を省略して記載している。
図6は、タッチパネルシステム1にノイズが印加される状況を示す回路図である。説明の簡潔化のためにセンスラインSL3を例に挙げて説明すると、センスラインSL3に結合された寄生容量Cpを介して、センスラインSL3に沿って読み出される線形和信号にノイズが印加されると、線形和信号が以下のようになる。
(−C×Vdrive/Cint)+(−Cp×Vn/Cint)
従って、
Ey=−Cp×Vn/Cint
により表されるノイズが線形和信号に混入する。
図7はタッチパネルシステム1の並列駆動方法を説明するための回路図であり、図8はタッチパネルシステム1の並列駆動方法を示す数式を説明するための図である。
駆動回路4は、図8の式5に示される4行4列の直交符号系列に基づいてドライブラインDL1〜DL4を駆動する。直交符号系列の要素は、「1」と「−1」とのいずれかであり。要素が「1」であれば、駆動部54は電圧Vdriveを印加し、要素が「−1」であれば、−Vdriveを印加する。ここで、電圧Vdriveは、電源電圧でもよいが、電源電圧以外の電圧であってもよい。
そして、図8の式6に示すように、測定値Y1、Y2、Y3、Y4と直交符号系列との内積をとることにより、式7に示すように、静電容量C1〜C4を推定することができる。
タッチパネルシステムでは、比較的ノイズが大きいため、前記動作を複数回行い、平均化した線形和信号データを真の値として取り扱うことがある。この複数回行う動作のタイミングを変えることによって、異なる入出力伝達特性を有するサブシステム5a・5b(図3参照)を実現することができる。
図9は、タッチパネルシステム1をM系列符号により並列駆動する方法を示す数式を説明するための図である。M系列符号によりキャパシタを並列駆動することによってもキャパシタの静電容量を推定することができる。式8〜式11に示すように、測定値Y1〜Y7の内積をとることにより、静電容量C1〜C7を推定することができる。「M系列」は、二進擬似乱数列の一種であり、1と0(又は0を−1に置き換えて、1と−1)の2値のみから構成される。なお、M系列の詳細については、後述する。M系列の1周期の長さは、2n−1である。長さ=23−1=7のM系列の例としては、「1、−1、−1、1、1、1、−1」が挙げられる。
(タッチパネルシステム1aの構成)
図10は、参考形態1に係る他のタッチパネルシステム1aの構成を示す回路図である。図3で前述した構成要素と同一の構成要素には同一の参照符号を付している。従って、これらの構成要素の詳細な説明は省略する。
タッチパネルシステム1aは、タッチパネルコントローラ3aを有している。タッチパネルコントローラ3aは、切換回路12を有している。切換回路12は、各増幅回路(センスアンプ)7の入力状態を、(2n)番目のセンスラインと(2n+1)番目のセンスラインとが入力される偶数フェイズ状態(フェイズ0)と、(2n+1)番目のセンスラインと(2n+2)番目のセンスラインとが入力される奇数フェイズ状態(フェイズ1)との間で切り換える。ここでnはゼロ以上31以下の整数である。
制御回路14は、増幅回路7を制御する。例えば、増幅回路7への入力状態を切り換える偶数フェイズ駆動と奇数フェイズ駆動に対応する切換回路12に与える信号を制御回路14は制御する。また制御回路14は、AD変換回路13のサンプリング周波数、多重サンプリング数を制御する。さらに制御回路14は、復号演算回路8の動作を制御する。
(タッチパネルシステム1aの駆動方法)
図11(a)(b)(c)(d)は、他のタッチパネルシステム1aによりキャパシタを駆動する実施単位を説明するための図である。
図11(a)は、フレーム単位でキャパシタを駆動するフレーム単位駆動を説明するための図である。タッチパネルシステム1aは、(M+1)個のフレーム駆動Flame0〜FlameMをこの順番に繰り返す。各フレーム駆動Flame0〜FlameMは、それぞれ(N+1)個のベクタ駆動Vector0〜VectorNを含む。各ベクタ駆動Vector0〜VectorNは、それぞれ偶数フェイズ駆動Phase0及び奇数フェイズ駆動Phase1を含む。
図11(a)に示す各フレーム駆動Flame0〜FlameMが含むベクタ駆動Vector0の偶数フェイズ駆動Phase0(図11(a)において、黒地に白抜きで「Phase0」と表記している)は、請求項に記載の「離散時間でサンプリングされた線形素子に基づく複数個の時系列信号」に相当する。
図11(b)は、同じフェイズで連続してキャパシタを駆動するフェイズ連続駆動を説明するための図である。まず、フレーム駆動Flame0のベクタ駆動Vector0に含まれるフェイズ駆動Phase0、フレーム駆動Flame1のベクタ駆動Vector0に含まれるフェイズ駆動Phase0、フレーム駆動Flame2のベクタ駆動Vector0に含まれるフェイズ駆動Phase0、…、フレーム駆動FlameMのベクタ駆動Vector0に含まれるフェイズ駆動Phase0の順番で、各フレーム駆動Flame0〜FlameMに含まれるベクタ駆動Vector0のフェイズ駆動Phase0のみで連続して駆動する。
そして、フレーム駆動Flame0のベクタ駆動Vector0に含まれるフェイズ駆動Phase1、フレーム駆動Flame1のベクタ駆動Vector0に含まれるフェイズ駆動Phase1、フレーム駆動Flame2のベクタ駆動Vector0に含まれるフェイズ駆動Phase1、…、フレーム駆動FlameMのベクタ駆動Vector0に含まれるフェイズ駆動Phase1の順番で、各フレーム駆動Flame0〜FlameMに含まれるベクタ駆動Vector0のフェイズ駆動Phase1のみで連続して駆動する。
次に、フレーム駆動Flame0のベクタ駆動Vector1に含まれるフェイズ駆動Phase0、フレーム駆動Flame1のベクタ駆動Vector1に含まれるフェイズ駆動Phase0、フレーム駆動Flame2のベクタ駆動Vector1に含まれるフェイズ駆動Phase0、…、フレーム駆動FlameMのベクタ駆動Vector1に含まれるフェイズ駆動Phase0の順番で、各フレーム駆動Flame0〜FlameMに含まれるベクタ駆動Vector1のフェイズ駆動Phase0のみで連続して駆動する。以下、同様にして、ベクタ駆動VectorNまで駆動する。
図11(c)は、同じベクタで連続してキャパシタを駆動する同一ベクタ連続駆動を説明するための図である。まず、フレーム駆動Flame0のベクタ駆動Vector0、フレーム駆動Flame1のベクタ駆動Vector0、フレーム駆動Flame2のベクタ駆動Vector0、…、フレーム駆動FlameMのベクタ駆動Vector0の順番で、各フレーム駆動Flame0〜FlameMに含まれるベクタ駆動Vector0のみで連続して駆動する。
そして、フレーム駆動Flame0のベクタ駆動Vector1、フレーム駆動Flame1のベクタ駆動Vector1、フレーム駆動Flame2のベクタ駆動Vector1、…、フレーム駆動FlameMのベクタ駆動Vector1の順番で、各フレーム駆動Flame0〜FlameMに含まれるベクタ駆動Vector1のみで連続して駆動する。
次に、フレーム駆動Flame0のベクタ駆動Vector2、フレーム駆動Flame1のベクタ駆動Vector2、フレーム駆動Flame2のベクタ駆動Vector2、…、フレーム駆動FlameMのベクタ駆動Vector2の順番で、各フレーム駆動Flame0〜FlameMに含まれるベクタ駆動Vector2のみで連続して駆動する。以下同様にして、ベクタ駆動VectorNまで駆動する。
図11(d)は、複数のベクタで連続してキャパシタを駆動する複数ベクタ連続駆動を説明するための図であり、L+1個の連続するベクタを一つの単位として駆動する。ここで、Lは、1≦L≦(N−1)を満足する整数である。
まず、フレーム駆動Flame0のベクタ駆動Vector0〜L,フレーム駆動Flame1のベクタ駆動Vector0〜L、フレーム駆動Flame2のベクタ駆動Vector0〜L…、フレーム駆動FlameMのベクタ駆動Vector0〜L…の順番で、各フレーム駆動Flame0〜FlameMに含まれるベクタ駆動Vector0〜Lのみを連続して駆動する。
そして、フレーム駆動Flame0のベクタ駆動VectorL+1〜2L+1、フレーム駆動Flame1のベクタ駆動VectorL+1〜2L+1、フレーム駆動Flame2のベクタ駆動VectorL+1〜2L+1、…、フレーム駆動FlameMのベクタ駆動VectorL+1〜2L+1の順番で、各フレーム駆動Flame0〜FlameMに含まれるベクタ駆動VectorL+1〜2L+1のみを連続して駆動する。
次に、フレーム駆動Flame0のベクタ駆動Vector2L+2〜3L+2、フレーム駆動Flame1のベクタ駆動Vector2L+2〜3L+2、フレーム駆動Flame2のベクタ駆動Vector2L+2〜3L+2、…、フレーム駆動FlameMのベクタ駆動Vector2L+2〜3L+2の順番で、各フレーム駆動Flame0〜FlameMに含まれるベクタ駆動Vector2L+2〜3L+2のみで連続して駆動する。以下同様にして、フレーム駆動FlameMに含まれるベクタ駆動VectorNを駆動するまで続ける。
なお、Flame0〜FlameM−1に含まれるベクタ駆動VectorNが出現する駆動の時に、連番となるベクタの個数がL+1個とならない場合、不足分だけダミーの駆動を行うか、不足分の期間に相当するブランク期間を設ける。
また、L=0とした時は、この複数ベクタ連続駆動は、図11(c)に示す同一ベクタ連続駆動と同じになり、L=Nとした時は、図11(a)に示すフレーム単位駆動と同じになる。
図12(a)(b)(c)は、タッチパネルシステム1aによりキャパシタを反転駆動する方法を説明するための図である。
図12(a)は、図11(b)に示したフェイズ連続駆動において、偶数回目の駆動を反転するフェイズ連続反転駆動の例である(反転する駆動箇所は黒地に白抜きで表記している)。まず、フレーム駆動Flame0のベクタ駆動Vector0に含まれるフェイズ駆動Phase0で駆動する。そして、フレーム駆動Flame1のベクタ駆動Vector0に含まれるフェイズ駆動Phase0で反転駆動する。
次に、フレーム駆動Flame2のベクタ駆動Vector0に含まれるフェイズ駆動Phase0で駆動する。その後、フレーム駆動Flame3のベクタ駆動Vector0に含まれるフェイズ駆動Phase0反転駆動する。
フェイズ連続反転駆動における反転は、1個のフェイズ駆動単位で行われることになる。そして、平均処理のための同一データの取得周期は1個のフェイズ駆動に対応する期間となる。この同一データの極性は偶数回目で反転する。
図12(b)は、図11(c)に示した同一ベクタ連続駆動において、偶数回目の2個のフェイズ駆動を反転する同一ベクタ連続反転駆動を示している(反転する偶数回目の駆動箇所は黒地に白抜きで表記している)。まず、フレーム駆動Flame0のベクタ駆動Vector0で駆動する。そして、フレーム駆動Flame1のベクタ駆動Vector0で反転駆動する。次に、フレーム駆動Flame2のベクタ駆動Vector0で駆動する。その後、フレーム駆動Flame3のベクタ駆動Vector0で反転駆動する。
同一ベクタ連続反転駆動における反転は、2個のフェイズ駆動単位で行われることになる。そして、平均処理のための同一データの取得周期は2個のフェイズ駆動に対応する期間となる。同一ベクタ連続反転駆動では、偶数回目の2個のフェイズ駆動の極性が反転する。
図12(c)は、図11(d)に示した複数ベクタ連続駆動において、偶数回目の複数ベクタの駆動を反転する複数ベクタ連続反転駆動を示している(反転する偶数回目の駆動箇所は黒地に白抜きで表記している)。まず、フレーム駆動Flame0のベクタ駆動Vector0〜Lで駆動する。そして、フレーム駆動Flame1のベクタ駆動Vector0〜Lで反転駆動する。次に、フレーム駆動Flame2のベクタ駆動Vector0〜Lで駆動する。その後、フレーム駆動Flame3のベクタ駆動Vector0〜Lで反転駆動する。
複数ベクタ連続反転駆動における反転は、2×(L+1)個のフェイズ駆動単位で行われることになる。そして、平均処理のための同一データの取得周期は2×(L+1)個のフェイズ駆動に対応する期間となる。複数ベクタ連続反転駆動では、偶数回目の(2×(L+1))個のフェイズ駆動の極性が反転する。
図13は、タッチパネルシステム1aにより1stベクタによる駆動の次に2ndベクタによる駆動を実施するときの駆動信号等の波形図である。図11(a)に示すフレーム単位駆動におけるベクタ駆動Vector0及びベクタ駆動Vector1のフェイズ駆動Phase0に対応する波形図が示されている。信号Phase0がオンのときは、偶数フェイズ駆動Phase0による駆動が行われ、信号Phase0がオフのときは、奇数フェイズ駆動Phase1による駆動が行われる。リセット信号reset_cdsがオンのときは増幅回路7がリセットされる。駆動信号DriveがオンになるとキャパシタC11〜C44が駆動される。クロック信号clk_shがオンのときに線形和信号がセンスラインに沿って読み出される。ベクタ駆動Vector0の偶数フェイズ駆動Phase0に基づく線形和信号は、1フレーム間隔(期間T1)で取得される。
図14(a)はタッチパネルシステム1aにより連続して1stベクタによる駆動を実施するときの駆動信号等の波形図であり、(b)は連続して1stベクタのフェイズ0による駆動を実施するときの駆動信号等の波形図である。
図11(c)に示すようにベクタ駆動Vector0(1stベクタ)を連続して実施する同一ベクタ連続駆動のときは、図14(a)に示すように、ベクタ駆動Vector0による線形和信号は、2フェイズ間隔(期間T2)で取得される。
図11(b)に示すようにベクタ駆動Vector0(1stベクタ)に含まれるフェイズ駆動Phase0を連続して実施するフェイズ連続駆動のときは、図14(b)に示すように、フェイズ駆動Phase0による線形和信号は、1フェイズ間隔(期間T3)で取得される。
図15(a)はタッチパネルシステム1aにより連続して1stベクタによる駆動を実施するときの駆動信号等の波形図であり、(b)は偶数回目における1stベクタによる駆動を反転する場合の駆動信号等の波形図である。
図15(a)に示すように、リセット信号reset_cdsが立ち上がると駆動信号Driveは立下り、リセット信号reset_cdsが時刻t3において立ち下がった後、駆動信号Driveが立ち上がる。
図15(b)に示すように、駆動の反転は、駆動信号Driveをハイからローに立ち下げることにより行われる。このため、リセット信号が立ち上がったときに駆動信号Driveを図15(a)に示すように立ち下げる必要がない。このため、反転駆動前のリセット信号の立ち下げを、図15(a)におけるリセット信号の立ち下げ時刻t3よりもΔTだけ早い時刻t2にすることができ、リセット信号reset_cdsがオンであるリセット時間をΔTだけ短縮することができる。このため、ベクタ駆動Vector0による線形和信号は、図15(a)では2フェイズ間隔(時刻t1から時刻t5までの期間T2)で取得されていたが、図15(b)では(2フェイズ−ΔT)の間隔(時刻t1から時刻t4までの期間T5)で取得することができる。
図16(a)は連続して1stベクタのフェイズ0による駆動を実施するときの駆動信号等の波形図であり、(b)は偶数回目における1stベクタのフェイズ0による駆動を反転する場合の駆動信号等の波形図である。
図16(b)を参照すると、反転駆動前のリセット信号の立ち下げを、図16(a)におけるリセット信号の立ち下げ時刻t8よりもΔTだけ早い時刻t7にすることができ、リセット信号reset_cdsがオンであるリセット時間をΔTだけ短縮することができる。そして、次のリセット信号の立ち下げを、図16(a)におけるリセット信号の立ち下げ時刻t12よりも合計でΔ2Tだけ早い時刻t11にすることができる。
このため、ベクタ駆動Vector0のフェイズ駆動Phase0による線形和信号は、図16(a)の例では1フェイズ間隔(時刻t6から時刻t10までの期間T3)で取得されていたが、図16(b)では(1フェイズ−ΔT)の間隔(時刻t6から時刻t9までの期間T7)で取得することができる。
図17(a)はタッチパネルシステム1aにより連続して1stベクタ〜3rdベクタによる駆動を実施するときの駆動信号等の波形図であり、(b)は偶数回目における1stベクタによる駆動を反転する場合の駆動信号等の波形図である。
図11(d)に示す複数ベクタ連続駆動において、L=2の場合は、Vector0(1stベクタ)〜Vector2(3rdベクタ)を連続して実施し、図17(a)に示すように、ベクタ駆動Vector0による線形和信号は、6フェイズ間隔(期間T4)で取得される。
図18(a)(b)は、タッチパネルシステム1aによる4重サンプリングの周波数特性を示すグラフである。横軸は周波数を示しており、縦軸は信号変化量を示している。それぞれのグラフにおいて、1フェイズの時間は2.5マイクロ秒(μs)である。
図18(a)は反転駆動を行わない場合の、フェイズ駆動を連続して実施したとき(図11(b)のフェイズ連続駆動)の周波数特性と、ベクタ駆動を連続して実施したとき(図11(c)の同一ベクタ連続駆動)の周波数特性と、3個のベクタ単位での駆動を連続して実施したとき(図11(d)の複数ベクタ連続駆動(L=2))の周波数特性とを示している。
図18(b)は反転駆動を行い、リセット信号の短縮時間ΔT=0.0μsの場合の、フェイズ駆動を連続して実施したときの周波数特性(図12(a)のフェイズ連続反転駆動)と、ベクタ駆動を連続して実施したとき(図12(b)の同一ベクタ連続反転駆動)の周波数特性と、3個のベクタ単位での駆動を連続して実施したとき(図12(c)の複数ベクタ連続反転駆動(L=2))の周波数特性とを示している。
図19は反転駆動を行い、リセット信号の短縮時間ΔT=0.5μsの場合の、フェイズ駆動を連続して実施したときの周波数特性(図12(a)のフェイズ連続反転駆動)とベクタ駆動を連続して実施したとき(図12(b)の同一ベクタ連続反転駆動)の周波数特性とを示している。
図18及び図19に示すこれらのグラフは、信号変化量が0dB程度となる周波数帯域はノイズに弱く、信号変化量「dB」が小さい(絶対値の大きい負の値の)周波数帯域ほど、ノイズに強いことを示している。図18及び図19に示す例では、どのような条件でも0dBとなる周波数帯域はないので、ノイズ周波数が一つであれば、サンプリング動作を変更することによってノイズの影響を抑圧することを期待することができる。なお、このサンプリングの条件では、複数ベクタ連続駆動におけるダミー駆動期間、ブランク期間が無い場合には、動作速度(レポートレート)は落ちない。
図20は、タッチパネルシステム1aによる他の4重サンプリングの周波数特性を示すグラフである。それぞれのグラフにおいて、1フェイズの時間は2.5μsである。
図20(a)は反転駆動を行わない場合の、1個のベクタ単位での駆動を連続して実施したとき(図11(c)の同一ベクタ連続駆動)の周波数特性と、3個のベクタ単位での駆動を連続して実施したとき(図11(d)の複数ベクタ連続駆動(L=2))の周波数特性と、5個のベクタ単位での駆動を連続して実施したとき(図11(d)の複数ベクタ連続駆動(L=4))の周波数特性とを示している。
図20(b)は反転駆動を行った場合の、1個のベクタ単位での駆動を連続して実施したとき(図12(b)の同一ベクタ連続駆動)の周波数特性と、3個のベクタ単位での駆動を連続して実施したとき(図12(c)の複数ベクタ連続駆動(L=2))の周波数特性と、5個のベクタ単位での駆動を連続して実施したとき(図12(c)の複数ベクタ連続駆動(L=4))の周波数特性とを示している。
図20に示す例では、連続するベクタ単位の個数を増やすと、減衰特性が悪い周波数帯域と減衰特性が良い周波数帯域との間隔が狭まるように変化する。連続するベクタ単位の個数を適切に変更することによって、除去したいノイズ周波帯域と、信号変化量「dB」が小さい(絶対値の大きい負の値である)周波数帯域とは、同じになることが期待できる。なお、このサンプリングの条件では、複数ベクタ単位での駆動におけるダミー駆動期間、ブランク期間が無い場合には、動作速度(レポートレート)は落ちない。
図21(a)(b)はタッチパネルシステム1aの駆動方法を比較するための図である。
図11(a)で説明したフレーム単位駆動の動作モードは((0)フレーム単位での駆動)、平均処理のための線形和信号データの取得時間間隔が1フレームであり、取得する線形和時系列信号の極性が全部同じである。減衰特性が悪い周波数は(1/Flame)×Nである。
図11(b)で説明したフェイズ連続駆動の動作モードは((1)フェイズ連続駆動)、平均処理のための線形和信号データの取得時間間隔が1フェイズであり、取得する線形和時系列信号の極性が全部同じである。減衰特性が悪い周波数は(1/phase)×Nである。
図11(c)で説明した同一ベクタ連続駆動の動作モードは((2)ベクタ連続駆動)、平均処理のための線形和信号データの取得時間間隔が2フェイズであり、取得する線形和時系列信号の極性が全部同じである。減衰特性が悪い周波数は(1/2phase)×Nである。
図11(d)で説明した複数ベクタ連続駆動の動作モードは((3)M ベクタ連続駆動)、平均処理のための線形和信号データの取得時間間隔が2フェイズ×Mであり、取得する線形和時系列信号の極性が全部同じである。減衰特性が悪い周波数は(1/(2×M)phase)×Nである。
図12(a)、図16(b)で説明したフェイズ駆動を連続して偶数回目の駆動を反転するフェイズ連続反転駆動の動作モードは((4)フェイズ連続駆動、偶数回目反転)、平均処理のための線形和信号データの取得時間間隔が(1フェイズ−ΔT)であり、取得する線形和時系列信号の極性は偶数回目で反転する。減衰特性が悪い周波数は(1/(1phase−ΔT))×(N+0.5)である。
図12(b)、図15(b)で説明したベクタ駆動を連続して偶数回目の駆動を反転する同一ベクタ連続反転駆動の動作モードは((5)ベクタ連続駆動、偶数回目反転)、平均処理のための線形和信号データの取得時間間隔が(2フェイズ−ΔT)であり、取得する線形和時系列信号の極性は偶数回目で反転する。減衰特性が悪い周波数は(1/(2phase−ΔT))×(N+0.5)である。
図12(c)、図17(b)で説明したベクタ駆動を連続して偶数回目の駆動を反転する複数ベクタ連続反転駆動の動作モードは((6)M ベクタ連続駆動、偶数回目反転)、平均処理のための線形和信号データの取得時間間隔が(2×M)フェイズであり、取得する線形和時系列信号の極性は偶数回目で反転する。減衰特性が悪い周波数は(1/(2×M)phase)×(N+0.5)である。
(ノイズ量推定回路9の動作)
ノイズ量推定回路9は、複数個の線形素子推定部の出力(加減算に基づく信号処理を行って線形素子CXの値、もしくは、線形素子CXの入力の複数個の推定結果)を用いて判断する。切換回路6は、ノイズ量推定回路9の推定結果に基づいてサブシステム5a・5bを切り換える。本来であれば、複数個の推定値は、同じ値になるはずであり、これが同じ値にならないとき、ノイズ量推定回路9は、推定結果に混入しているノイズの影響が増大したと推定する。
(サブシステムの構成)
制御回路14に設けられた複数のサブシステムは、外来ノイズの影響を低減するために、前述した説明に基づいて種々のタイプに構成することができる。
例えば、同じベクタ駆動で同じフェイズ駆動に基づく複数個の線形和信号を加算平均する実施単位をフレーム単位としたサブシステム、加算平均する実施単位をフェイズ単位としたサブシステム、加算平均する実施単位をベクタ単位としたサブシステム、加算平均する実施単位を複数ベクタ単位としたサブシステムを設け、これらのサブシステムを、正規化周波数と信号変化量との間の周波数特性に基づいて外来ノイズの影響を低減するように選択する構成としてもよい。
この加算平均の実施単位が、フェイズ単位、ベクタ単位、複数ベクタ単位の場合に、駆動信号の符号を反転させる機能を備えたサブシステムを設けてもよい。この場合、駆動反転周期をNフェイズ単位(Nは整数)としたサブシステムを設け、これらのサブシステムを、前記周波数特性に基づいて外来ノイズの影響を低減するように選択する構成としてもよい。
また、駆動信号の駆動反転機能を有する場合、増幅回路をリセットするリセット信号のリセット時間を短縮するサブシステムを設けてもよい。
〔参考形態2〕
本発明の他の参考形態について、図22に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、説明の便宜上、前記参考形態にて説明した図面と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
図22は、参考形態2に係るタッチパネルシステムの構成を示す回路図である。参考の形態2に係るタッチパネルシステムは、タッチパネルコントローラ3bを備えている。タッチパネルコントローラ3bには、増幅回路7bが設けられている。増幅回路7bは、差動増幅器18aを有している。差動増幅器18aは、互いに隣接するセンスラインに沿って読み出される線形和信号を受け取って増幅する。
このように、差動増幅器によって増幅回路を構成すると、タッチパネルコントローラのノイズ耐性をさらに強めることができる。
〔参考形態3〕
図23は、参考形態3に係る携帯電話機90(電子機器)の構成を示すブロック図である。携帯電話機90は、CPU96と、RAM97と、ROM98と、カメラ95と、マイクロフォン94と、スピーカ93と、操作キー91と、表示パネル92b及び表示制御回路92aを含む表示部92と、タッチパネルシステム1(タッチパネルシステム1aや、後述するタッチパネルシステム1bであってもよい)とを備えている。各構成要素は、相互にデータバスによって接続されている。
CPU96は、携帯電話機90の動作を制御する。CPU96は、たとえばROM98に格納されたプログラムを実行する。操作キー91は、携帯電話機90のユーザによる指示の入力を受ける。RAM97は、CPU96によるプログラムの実行により生成されたデータ、又は操作キー91を介して入力されたデータを揮発的に格納する。ROM98は、データを不揮発的に格納する。
また、ROM98は、EPROM(Erasable Programmable Read-Only Memory)やフラッシュメモリなどの書込み及び消去が可能なROMである。なお、図23には示していないが、携帯電話機90が、他の電子機器に有線により接続するためのインターフェイス(IF)を備える構成としてもよい。
カメラ95は、ユーザの操作キー91の操作に応じて、被写体を撮影する。なお、撮影された被写体の画像データは、RAM97や外部メモリ(たとえば、メモリカード)に格納される。マイクロフォン94は、ユーザの音声の入力を受付ける。携帯電話機90は、当該入力された音声(アナログデータ)をデジタル化する。そして、携帯電話機90は、通信相手(たとえば、他の携帯電話機)にデジタル化した音声を送る。スピーカ93は、たとえば、RAM97に記憶された音楽データなどに基づく音を出力する。
タッチパネルシステム1は、タッチパネル2とタッチパネルコントローラ3(タッチパネルコントローラ3aや、後述するタッチパネルコントローラ3bであってもよい)とを有している。CPU96は、タッチパネルシステム1の動作を制御する。
表示パネル92bは、表示制御回路92aにより、ROM98、RAM97に格納されている画像を表示する。表示パネル92bは、タッチパネル2に重ねられているか、タッチパネル2を内蔵している。
≪ドライブラインとセンスラインとの接続状態を切り換える構成≫
〔参考形態4〕
図24は、本参考形態に係るタッチパネルシステム1(タッチパネル装置)の構成を示すブロック図である。図25は、タッチパネルシステム1に設けられたタッチパネル2の構成を示す模式図である。
タッチパネルシステム1は、タッチパネル2とタッチパネルコントローラ3a(静電容量値分布検出装置)とを備えている。タッチパネル2は、水平方向(横方向)に沿って延び互いに平行に配置された水平信号線HL1〜HLM(第2信号線)と、垂直方向(縦方向)に沿って延び互いに平行に配置された垂直信号線VL1〜VLM(第1信号線)とを備えている。水平信号線HL1〜HLMと垂直信号線VL1〜VLMとの交点には、それぞれ静電容量C11〜CMMが形成される。
タッチパネルコントローラ3aは、マルチプレクサMU1、駆動回路4、読出部40、制御回路14(外来ノイズ除去低減部)、ノイズ検知部NS(外来ノイズ判定部)を備えている。
駆動回路4は、ドライブラインDL1〜DLMに、時系列で駆動信号を供給する。駆動信号が印加されると、タッチパネル2は、静電容量の値に対応する電荷をセンスラインSL1〜SLMから出力する。
読出部40は、センスラインSL1〜SLMを介して、タッチパネル2に供給された駆動信号と静電容量とに応じたセンス信号を受信する。読出部40は、水平信号線HL1〜HLMと垂直信号線VL1〜VLMとの各交点における静電容量の値に応じたセンス信号を受信する。受信したセンス信号の強度の分布は、タッチパネル2上の静電容量値の分布に対応する信号である。読出部40は、センス信号の強度分布をノイズ検知部NSに出力する。
図26は、マルチプレクサMU1の概略構成を示す回路図である。マルチプレクサMU1は、縦続接続されたM個の接続切替部CSを備える。制御回路14からの制御ラインCLは、1番目の接続切替部CSに入力されている。マルチプレクサMU1は、制御ラインCLを介して制御回路14から入力される制御信号に応じて、第1接続状態(第1動作モード)と第2接続状態(第2動作モード)とを切り替える。第1接続状態では、垂直信号線VL1〜VLMが駆動回路4のドライブラインDL1〜DLMにそれぞれ接続され、水平信号線HL1〜HLMが読出部40のセンスラインSL1〜SLMにそれぞれ接続される。第2接続状態では、垂直信号線VL1〜VLMが読出部40のセンスラインSL1〜SLMにそれぞれ接続され、水平信号線HL1〜HLMが駆動回路4のドライブラインDL1〜DLMにそれぞれ接続される。
図27は、接続切替部CSの具体的な構成の一例を示す回路図である。接続切替部CSは、4個のCMOSスイッチSW1〜SW4を有している。接続切替部CSの制御ラインCLは、前段の接続切替部CSの制御ラインCL及び後段の接続切替部CSの制御ラインCLに接続されている。すなわち、制御回路14からの制御ラインCLは、各接続切替部CSによって共有されている。なお、複数の制御ラインCLを設けて、各接続切替部CSの接続は各々に制御可能な構成としてもよい。制御ラインCLは、CMOSスイッチSW1のp型トランジスタの制御端子と、CMOSスイッチSW2のn型トランジスタの制御端子と、CMOSスイッチSW3のp型トランジスタの制御端子と、CMOSスイッチSW4のn型トランジスタの制御端子と、反転器invの入力とに接続されている。反転器invの出力は、CMOSスイッチSW1のn型トランジスタの制御端子と、CMOSスイッチSW2のp型トランジスタの制御端子と、CMOSスイッチSW3のn型トランジスタの制御端子と、CMOSスイッチSW4のp型トランジスタの制御端子とに接続されている。水平信号線HLkは、CMOSスイッチSW1・SW2の一端に接続されている。垂直信号線VLkは、CMOSスイッチSW3・SW4の一端に接続されている。ドライブラインDLkは、CMOSスイッチSW1・SW4の他端に接続されている。センスラインSLkは、CMOSスイッチSW2・SW3の他端に接続されている。ここで、例えばHLkは、k番目(1≦k≦M)の水平信号線を示す。
制御ラインCLの制御信号をHighにすると、水平信号線HL1〜HLMは、センスラインSL1〜SLMにそれぞれつながり、垂直信号線VL1〜VLMは、ドライブラインDL1〜DLMにそれぞれつながる(第1接続状態)。制御ラインCLの制御信号をLowにすると、水平信号線HL1〜HLMは、ドライブラインDL1〜DLMにそれぞれつながり、垂直信号線VL1〜VLMは、センスラインSL1〜SLMにそれぞれつながる(第2接続状態)。
制御回路14は、マルチプレクサMU1に接続状態を指示する制御信号を供給する。制御回路14は、駆動回路4及び読出部40のそれぞれの動作を規定する信号を生成し、駆動回路4及び読出部40のそれぞれに該信号を供給する。
ノイズ検知部NSは、センス信号の強度分布から、外来ノイズの有無を判定する。ノイズ検知部NSの詳細な処理は後述する。ノイズ検知部NSは、外来ノイズの有無の判定結果と、センス信号の強度分布とを出力できる。本明細書では、人体等が受けた電磁ノイズが指示体を介してタッチパネルシステムに混入したものを「外来ノイズ」と称する。
≪タッチペンを利用する構成≫
〔参考形態5〕
本発明の一参考形態について図28〜図41に基づいて説明すれば、以下のとおりである。
(タッチパネルシステムの構成)
本参考形態のタッチパネルシステム1の構成について、図29及び図30に基づいて説明する。図29は本参考形態のタッチパネルシステム1の構成を示すブロック図であり、図30はタッチパネルシステムに設けられたタッチパネルの構成を示す配線図である。
本参考形態のタッチパネルシステム1は、図29に示すように、タッチパネル2と、タッチペン及び電子ペンとしてのスタイラスペンSと、これらタッチパネル2及びスタイラスペンSを駆動するタッチパネルコントローラ3aとを備えている。
前記タッチパネル2は、図30に示すように、水平方向に沿って互いに平行に配置された複数本であるK本(Kは正の整数)の第1信号線としての水平信号線HL1〜HLKと、垂直方向に沿って互いに平行に配置された複数本であるL本(Lは正の整数)の第2信号線としての垂直信号線VL1〜VLLとを備えている。前記水平信号線HL1〜HLKと垂直信号線VL1〜VLLとの各交点には、静電容量C11〜CKLが発生するものとなっている。尚、KとLとは互いに同じか又は異なるかのいずれであってもよいが、本参考形態では、L≧Kとして説明を行う。また、本参考形態では、水平信号線HL1〜HLKと垂直信号線VL1〜VLLとは互いに垂直に交差しているが、本発明においては、必ずしもこれに限らず、両者が互いに交差していれば足りる。
タッチパネル2は、スタイラスペンSを把持した手を着くことができる広さを有していることが好ましいが、スマートフォンに使用される大きさであってもよい。
前記スタイラスペンSは、本参考形態では、単にタッチパネル2に接触させるための導電体からなるタッチペンにとどまらず、信号が入出力できるペンからなっている。このスタイラスペンSには、後述するように、同期信号検出回路36が設けられており、タッチパネルコントローラ3aのタイミングジェネレータ114にて発生された専用同期信号と同期を取るための同期信号が受信入力されるようになっている。
前記タッチパネルコントローラ3aは、図29に示すように、マルチプレクサMU1とドライバ112とセンスアンプ113とタイミングジェネレータ114とAD変換器115と容量分布計算部116とタッチ認識部117とペン位置検出部118とを備えている。
前記ドライバ112は、タッチパネル2における前述した水平信号線HL1〜HLK又は垂直信号線VL1〜VLLの駆動に対応してドライブラインDL1〜DLK又はドライブラインDL1〜DLLに電圧を印加するようになっている。
前記センスアンプ113は、第1信号線駆動期間における水平信号線HL1〜HLKの駆動時において、タッチパネル2の各静電容量C11〜CKLに対応する当初電荷の信号と、タッチ時におけるスタイラスペンSとL本の垂直信号線VL1〜VLLのそれぞれとの間の静電容量に対応するタッチ時電荷である第1ペン電荷信号とに対応する線形和信号を、センスラインSL1〜SLKを通して読み出して、AD変換器115に供給する。すなわち、第1信号線駆動期間において、各静電容量C11〜CKLに対応する電荷を検出しているときに、スタイラスペンSをタッチパネル2の或る位置に近づけると該位置の静電容量が変化するので、その変化した静電容量を線形和信号として検出することができる。通常、スタイラスペンSをタッチパネル2に近づけると、近づけた位置の各静電容量C11〜CKLは、増加することになる。
また、センスアンプ113は、第2信号線駆動期間における垂直信号線VL1〜VLLの駆動時において、タッチパネル2の各静電容量C11〜CKLに対応する当初電荷の信号と、タッチ時におけるスタイラスペンSとK本の水平信号線HL1〜HLKのそれぞれとの間の静電容量に対応するタッチ時電荷である第2ペン電荷信号とに対応する線形和信号を、センスラインSL1〜SLLを通して読み出して、AD変換器115に供給するようになっている。
次に、前記マルチプレクサMU1について、図31に基づいて説明する。図31は、タッチパネル2に設けられた水平信号線HL1〜HLK、又は垂直信号線VL1〜VLK〜VLLと、ドライバに接続されたドライブラインDL1〜DLK〜DLL又はセンスアンプ113に接続されたセンスラインSL1〜SLK〜SLLとの接続を切り替えるマルチプレクサの構成を示す回路図である。
マルチプレクサMU1は、複数の入力と複数の出力との接続を互いに切り替える接続切替回路である。本参考形態では、図31に示すように、水平信号線HL1〜HLKをドライバ112のドライブラインDL1〜DLKに接続し、垂直信号線VL1〜VLK〜VLLをセンスアンプ113のセンスラインSL1〜SLK〜SLLに接続する第1接続状態と、水平信号線HL1〜HLKをセンスアンプ113のセンスラインSL1〜SLKに接続し、垂直信号線VL1〜VLK〜VLLをドライバ112のドライブラインDL1〜DLK〜DLLに接続する第2接続状態とに切替える。
前記マルチプレクサMU1においては、図31に示す制御ラインCLの信号をLowにすると、水平信号線HL1〜HLKはドライブラインDL1〜DLKに接続されると共に、垂直信号線VL1〜VLLはセンスラインSL1〜SLLに接続される。一方、制御ラインCLの信号をHighにすると、水平信号線HL1〜HLKはセンスラインSL1〜SLKに接続されると共に、垂直信号線VL1〜VLLはドライブラインDL1〜DLLに接続されるようになっている。
次に、図29に示す前記タイミングジェネレータ114は、ドライバ112の動作を規定する信号と、センスアンプ113の動作を規定する信号と、AD変換器115の動作を規定する信号とを生成して、ドライバ112、センスアンプ113及びAD変換器115にそれぞれ供給する。また、タイミングジェネレータ114は同期信号を生成する。そして、タッチパネルコントローラ3aは、タイミングジェネレータ114にて生成した同期信号を同期専用信号として用いて水平信号線HL1〜HLK及び、又は、垂直信号線VL1〜VLLを駆動するようになっている。
次に、AD変換器115は、第1信号線駆動期間において、垂直信号線VL1〜VLLとセンスラインSL1〜SLLとを通して読み出される各静電容量C11〜CKLに対応する電荷と、スタイラスペンSとL本の垂直信号線VL1〜VLLのそれぞれとの間の静電容量に対応する電荷である第1ペン電荷信号とに対応する線形和信号をAD変換して容量分布計算部116に供給する。
また、AD変換器115は、第2信号線駆動期間において、水平信号線HL1〜HLKとセンスラインSL1〜SLKとを通して読み出される各静電容量C11〜CKLに対応する電荷と、スタイラスペンSとK本の水平信号線HL1〜HLKのそれぞれとの間の静電容量に対応する電荷である第2ペン電荷信号とに対応する線形和信号をAD変換して容量分布計算部116に供給する。
次に、容量分布計算部116は、前記第1ペン電荷信号及び第2ペン電荷信号を含む線形和信号と、駆動に基づいた符号系列とに基づいて、タッチパネル2上の静電容量分布、及びスタイラスペンSとL本の垂直信号線VL1〜VLLのそれぞれとの間の静電容量の分布、並びにスタイラスペンSとK本の水平信号線HL1〜HLKのそれぞれとの間の静電容量の分布を計算して、タッチパネル2上の静電容量分布をタッチ認識部117に供給すると共に、スタイラスペンSとL本の垂直信号線VL1〜VLLのそれぞれとの間の静電容量の分布、及びスタイラスペンSとK本の水平信号線HL1〜HLKのそれぞれとの間の静電容量の分布を位置検出手段であるペン位置検出部118に供給する。タッチ認識部117は、容量分布計算部116から供給された静電容量分布に基づいて、タッチパネル2上のタッチされた位置を認識する。
前記ペン位置検出部118は、スタイラスペンSとL本の垂直信号線VL1〜VLLのそれぞれとの間の静電容量の分布に基づいて、スタイラスペンSの水平信号線HL1に沿った位置を検出する。また、ペン位置検出部118は、スタイラスペンSとK本の水平信号線HL1〜HLKのそれぞれとの間の静電容量の分布に基づいて、スタイラスペンSの垂直信号線VL1に沿った位置を検出する。
(タッチペンのタッチ位置の検出動作)
前記構成のタッチパネルシステム1におけるスタイラスペンSのタッチ位置の検出動作について、以下に経時的に説明する。尚、ここでは、スタイラスペンSを単にタッチペンとして使用する場合の検出動作について説明する。
まず、第1信号線駆動期間においては、水平信号線HL1〜HLKをドライバ112のドライブラインDL1〜DLKに接続し、垂直信号線VL1〜VLLをセンスアンプ113のセンスラインSL1〜SLLに接続する第1接続状態において、ドライバ112が、ドライブラインDL1〜DLKに電圧を印加して水平信号線HL1〜HLKを駆動する。
そして、第1信号線駆動期間においては、水平信号線HL1〜HLKの駆動により各静電容量C11〜CKLに蓄積された電荷と、スタイラスペンSをタッチパネル2に近づけたときの該スタイラスペンSとL本の垂直信号線VL1〜VLLのそれぞれとの間の静電容量に対応する電荷である第1ペン電荷信号とに基づくL個の第1線形和信号がL本の垂直信号線VL1〜VLLのそれぞれから出力される。
センスアンプ113は、第1ペン電荷信号を含む前記L個の第1線形和信号を、マルチプレクサMU1及びセンスラインSL1〜SLLを介して読み出し、AD変換器115に供給する。AD変換器115は、第1ペン電荷信号を含む前記L個の第1線形和信号をAD変換して容量分布計算部116に出力する。
次に、前記第1接続状態から、水平信号線HL1〜HLKと垂直信号線VL1〜VLLとのドライブ信号とセンス信号とを互いに入れ替えるべく、第2接続状態に切り替える。すなわち、第2接続状態では、水平信号線HL1〜HLKをセンスアンプ113のセンスラインSL1〜SLKに接続し、垂直信号線VL1〜VLLをドライバ112のドライブラインDL1〜DLLに接続する。
その後、ドライバ112が、ドライブラインDL1〜DLLに電圧を印加して垂直信号線VL1〜VLLを駆動する。
そして、第2信号線駆動期間においては、垂直信号線VL1〜VLLの駆動により各静電容量C11〜CKLに蓄積された電荷と、スタイラスペンSとK本の水平信号線HL1〜HLKのそれぞれとの間の静電容量に対応する電荷である第2ペン電荷信号とに基づくK個の第2線形和信号がK本の水平信号線HL1〜HLKのそれぞれから出力される。このとき、センスアンプ113は、第2ペン電荷信号を含む前記K個の第2線形和信号を、マルチプレクサMU1及びセンスラインSL1〜SLKを介して読み出し、AD変換器115に供給する。AD変換器115は、第2ペン電荷信号を含む前記K個の第2線形和信号をAD変換して容量分布計算部116に出力する。
次に、位置検出工程においては、容量分布計算部116は、第1ペン電荷信号を含む前記第1線形和信号、第2ペン電荷信号を含む前記第2線形和信号、タッチパネル2上の静電容量分布を算出してタッチ認識部117に供給すると共に、スタイラスペンSの水平信号線HL1に沿った位置、及びスタイラスペンSの垂直信号線VL1に沿った位置を算出してペン位置検出部118に供給する。
その後、タッチ認識部117は、容量分布計算部116から供給された静電容量分布に基づいて、タッチパネル2上のタッチされた位置を認識する。
また、ペン位置検出部118は、容量分布計算部116により算出されたスタイラスペンSの水平信号線HL1に沿った位置、及びスタイラスペンSの垂直信号線VL1に沿った位置に基づいて、スタイラスペンSのタッチパネル2上の位置を検出する。
尚、前記の説明において、本参考形態では、水平信号線HL1〜HLK及び垂直信号線VL1〜VLLはいずれも並列に同時に駆動を行っている。つまり、並列駆動を行っている。ただし、必ずしもこれに限らず、前記のタッチパネル2におけるK本の水平信号線HL1〜HLKの駆動及びL本の垂直信号線VL1〜VLLの駆動は、並列駆動又は逐次駆動のいずれであってもよい。並列駆動とは、K本の水平信号線HL1〜HLKの駆動又はL本の垂直信号線VL1〜VLLを並列に同時に駆動することであり、逐次駆動とはK本の水平信号線HL1〜HLKの駆動又はL本の垂直信号線VL1〜VLLを水平信号線HL1又は垂直信号線VL1から順に逐次、駆動することである。速さの点からは、並列駆動が好ましく、本参考形態では、並列駆動を採用している。
このように、本参考形態のタッチパネルシステム1は、複数の第1信号線と複数の第2信号線との交点にそれぞれ形成される静電容量を有するタッチパネル2とタッチペンとタッチパネルコントローラ3aとを備えている。タッチパネルコントローラ3aは、第1信号線駆動期間において複数の第1信号線である水平信号線HL1〜HLKを駆動して各静電容量に基づく電荷信号を各第2信号線である垂直信号線VL1〜VLLから出力させ、第2信号線駆動期間において複数の第2信号線である垂直信号線VL1〜VLLを駆動して各静電容量に基づく電荷信号を各第1信号線である水平信号線HL1〜HLKから出力させる切り替え駆動を反復して行っているときに、タッチペンをタッチパネル2にタッチさせることにより、タッチペンによる静電容量の変化に基づいてタッチ位置を検出する。
前記構成のタッチパネルシステム1におけるタッチペンの座標位置検出方法では、タッチペンがタッチパネル2にタッチされた場合には、第1信号線駆動期間での検出位置と第2信号線駆動期間における検出位置とが同じ位置に表れる。一方、電磁ノイズを受けた人体の手、指等のタッチパネル2へのタッチに起因して生じるファントムノイズによる誤信号は、第1信号線と第2信号線との切り替えにより第1信号線駆動期間に表れたとしても第2信号線駆動期間には同位置には表れない。したがって、第1信号線駆動期間での検出位置と第2信号線駆動期間での検出位置との論理積にて検出位置を判断することによって、タッチペンのタッチ信号とファントムノイズによる誤信号とを区別し、該ファントムノイズによる誤信号を除去することが可能となる。
尚、ファントムノイズとは、タッチペンを握る手を介してタッチペンのタッチ位置とは異なる位置に静電気に基づく検出信号が発生するノイズであり、タッチペンの正規のタッチ位置とは違うので、ノイズとされるものである。
(スタイラスペンの構成及び筆圧センサ機能)
本参考形態のスタイラスペンSは、例えば、筆圧を検知するための筆圧センサを有しており、この筆圧センサからに筆圧信号は、タッチパネルコントローラ3aと同期を取りながら出力されるようになっている。ただし、スタイラスペンSは、必ずしもこれに限らず、筆圧を検知するための筆圧センサを有していなくてもよい。
前記スタイラスペンSの構成について、図32に基づいて説明する。図32は、スタイラスペンSの構成を示す断面図である。
スタイラスペンSは、図32に示すように、使用者が手で握るために略円筒状に形成された導電性の把持部30aを有するユーザが手で握るペン本体30を有し、ペン本体30の先端には、タッチ操作時にタッチパネル2に押し当てられるペン先部31が設けられている。
前記ペン先部31は、ペン先カバー31aと、ペン先軸31bと、ペン先カバー31aを軸方向に進出移動自在に保持する絶縁体31cと、ペン先軸31bの奥側に設けられた筆圧センサ31dとを有している。
前記ペン先カバー31aは絶縁性材料からなっていると共に、ペン先軸31bは導電性の材料、例えば金属又は導電性合成樹脂材からなっている。
また、筆圧センサ31dは、例えば、半導体ピエゾ抵抗圧力センサからなっており、図示しないダイヤフラムの表面に半導体ひずみゲージが形成されている。したがって、タッチ操作時にペン先部31のペン先カバー31aをタッチパネル2に押し当てると、ペン先カバー31aを介してペン先軸31bが押し込まれて、筆圧センサ31dのダイヤフラムの表面を押圧し、これにより、ダイヤフラムが変形して発生するピエゾ抵抗効果による電気抵抗の変化を電気信号に変換する。これにより、スタイラスペンSにおける筆圧を検出できるようになっている。尚、筆圧検出の原理については、必ずしもこれに限らず、他の検出原理を採用することが可能である。
前記ペン本体30の内部には、接続スイッチ32と、制御回路33と、動作切替スイッチ34a・34bと、センス回路35と、同期信号検出回路36と、タイミング調整回路37と、ドライブ回路38とが設けられている。
また、スタイラスペンSには、例えば、プッシュ式の第1操作スイッチ39aと第2操作スイッチ39bとが設けられており、第1操作スイッチ39a及び第2操作スイッチ39bを押下操作することによって、第1操作スイッチ39a及び第2操作スイッチ39bに割り当てられた機能を、制御回路33を介して実行させる。第1操作スイッチ39aに割り当てられた機能としては、例えば消しゴム機能を挙げることができ、この消しゴム機能のオン・オフを第1操作スイッチ39aにて行うことが可能である。また、第2操作スイッチ39bに割り当てられた機能としては、例えばマウスの右クリック機能を挙げることができ、このマウスの右クリック機能のオン・オフを第2操作スイッチ39bにて行うことが可能である。
尚、消しゴム機能及びマウスの右クリック機能は一例であり、消しゴム機能及びマウスの右クリック機能に限らない。また、さらに他の操作スイッチを設けて他の機能を付加することも可能である。
ところで、スタイラスペンSのタッチパネル2へのタッチ信号、つまり前述した第1ペン電荷信号及び第2ペン電荷信号は、スタイラスペンSの接続スイッチ32をオフした状態(ペン先軸31bはペン本体30の把持部30aと電気的に遮断されている状態)でスタイラスペンSをタッチパネル2にタッチすることによって、前述したように、水平信号線HL1〜HLKと垂直信号線VL1〜VLLとの切り替え駆動によってタッチ位置が検出される。
本参考形態では、前記スタイラスペンSにおけるペン先部31の駆動をタッチパネルコントローラ3aにて検出するために、スタイラスペンSのドライブ回路38による駆動において、その駆動パターンを、第1信号線駆動期間においてはタッチパネルコントローラ3aによるタッチパネル2の水平信号線HLK+1(又はそれ以降)の駆動パターン、つまりドライバ112のK+1番目(又はそれ以降)のドライブラインDLK+1(又はそれ以降)の駆動パターンに一致させると共に、第2信号線駆動期間においてはタッチパネルコントローラ3aによるタッチパネル2の垂直信号線VLL+1(又はそれ以降)の駆動パターン、つまりドライバ112のL+1番目(又はそれ以降)のドライブラインDLL+1(又はそれ以降)の駆動パターンに一致させるという方法を採用している。ここで、水平信号線HLK+1(又はそれ以降)及び垂直信号線VLL+1(又はそれ以降)自体は、存在しない。
尚、図29及び図30においては、前記ドライブラインDLK+1又はドライブラインDLL+1のように駆動期間によって駆動パターンは異なっている(K≠L)場合もあるが、表記の見易さのためドライブラインDLL+1の表記を用いて仮想線にて表示している。また、以降の説明においてもドライブラインDLL+1と表記する。
(タッチパネルコントローラとスタイラスペンとの同期の基本動作)
ところで、本参考形態のスタイラスペンSは、無線にてタッチパネルコントローラ3aと信号の送受信を行っている。したがって、タッチパネルコントローラ3aにおけるドライブラインDL1〜DLLの駆動のタイミングに合うようにドライブラインDLL+1を駆動するのと同じパターンでペン先部31を駆動する。そこで、スタイラスペンSでは、ドライブ回路38を設けてタッチパネルコントローラ3aのドライバ112と同様に駆動を行うようにしている。
一方、タッチパネルコントローラ3aにおけるドライブラインDL1〜DLLの駆動は、タイミングジェネレータ114にて生成される駆動タイミングに基づいている。このため、スタイラスペンSにおいても、タッチパネルコントローラ3aが駆動するタイミングに同期をとって動作させなければならない。そこで、本参考形態のスタイラスペンSでは、センス回路35、同期信号検出回路36及びタイミング調整回路37を設けることにより、スタイラスペンSにてタッチパネルコントローラ3aが駆動する専用同期信号を検出して、該タッチパネルコントローラ3aの専用同期信号のタイミングとスタイラスペンSにおいてタイミング調整回路37にて発生するペン同期信号のタイミングとを一致させるようにしている。
前記ペン本体30の内部には、接続スイッチ32が設けられている。接続スイッチ32は、省略することも可能である。接続スイッチ32を省略する場合には、ペン本体30の把持部30aは、例えば、基準電位(GND)に接続される。
前記接続スイッチ32は、電界効果トランジスタ(FET:Field effect transistor)等からなる電子スイッチであり、制御回路33にてオン・オフ制御される。ここで、接続スイッチ32がオフの場合、ペン先軸31bはペン本体30の把持部30aと電気的に遮断されている。このとき、ペン先部31とタッチパネル2間の容量は小さいため、ペン先カバー31aをタッチパネル2に近接させても、スタイラスペンSはタッチパネルの同期信号の取得に困難を伴うことがある。
一方、接続スイッチ32がオンになると、ペン先軸31bは、ペン本体30の把持部30aと電気的に接続され、人体は把持部30aを介してペン先軸31bと導通する。これにより、人体は比較的大きな静電容量を有するため、スタイラスペンSがタッチパネル2に近接・接触すると、スタイラスペンSはタッチパネルの同期信号の取得が容易になることがある。
ここで、タッチパネルシステム1におけるスタイラスペンSの同期の取り方の基本原理について、図33に基づいて説明する。図33は、同期の取り方の基本原理を示すタイミングチャートである。
スタイラスペンSは、センス回路35及び同期信号検出回路36にて、タッチパネルコントローラ3aのタイミングジェネレータ114にて発生した専用同期信号を検出する。ここでは、簡単のために、専用同期信号は、単一パルスであるとする。
図33に示すように、単一パルスからなる専用同期信号であるタッチパネル同期信号S0が一定の周期で発生しているとする。
これに対して、スタイラスペンSでは、センス回路35にて、複数の同期信号候補S1〜Sp(pは2以上の整数)を発生させる。尚、図33に示す同期信号候補Spは、同期信号候補S1が1周期程度遅れた信号を表している。スタイラスペンSは、タッチパネルコントローラ3aのタイミングジェネレータ114から送信される専用同期信号と一致度が高い同期信号を、同期信号候補S1〜Spの中から選択し、タッチパネルコントローラ3aとの通信の同期信号として採用する。図33に示す例では、タッチパネル同期信号S0と一致度が高い同期信号候補S4又はS5をスタイラスペンSのペン同期信号として採用する。
スタイラスペンSは、同期が取れるまで、検出モードになり、ドライブ回路38の駆動は行われない。
このような原理により、スタイラスペンSは、タッチパネルコントローラ3aにおける専用同期信号と同期を取ることができる。
(タッチパネルコントローラとスタイラスペンとの同期の特徴的動作)
ところで、実際の同期の取り方において、タッチパネルコントローラ3aからの専用同期信号の受信においては、ノイズが存在するので、容易ではない。具体的には、専用同期信号に低周波成分が重畳されるので、正しい専用同期信号のパルスの振幅を把握するのが困難となり、その結果、専用同期信号のパルスの取り逃がしが発生するという問題を有している。
このような問題の解消方法の一例について、図28(a)(b)、図34(a)(b)〜図39(a)(b)(c)に基づいて説明する。図28(a)はタッチパネルシステムにおけるタッチパネルコントローラからスタイラスペンに送信されるマンチェスタ符号化された周期性を有する疑似不規則化系列の同期波形を示す図であり、図28(b)は同期波形とタッチ検出用波形とを示す波形図である。図34(a)はタッチパネルコントローラにおけるドライバのドライブライン及びセンスアンプのセンスラインにおけるタッチパネル及びスタイラスペンへの出力関係を示す図であり、図34(b)は同期波形とタッチ検出用波形とを示す波形図である。図35(a)はタッチパネルコントローラからスタイラスペンに送信される同期波形及びタッチ検出用波形等の駆動波形と低周波ノイズとを示す波形図であり、図35(b)は駆動波形と低周波ノイズとが重畳された状態を示す波形図であり、図35(c)はリセットタイミングによりリセットした状態を示す波形図である。図36は、前記スタイラスペンにおける同期信号検出回路に設けられたリセット回路の構成を示す図である。図37(a)はタッチパネルコントローラから送信される同期波形の一例を示す波形図であり、図37(b)は受信であるスタイラスペンでの入力波形を示す波形図であり、図37(c)は図37(b)においてリセットタイミングR1にて基準電位を定めたときの内部波形を示す波形図であり、図37(d)は図37(b)においてリセットタイミングR2にて基準電位を定めたときの内部波形を示す波形図である。図38(a)はマンチェスタ符号化しない場合のM系列符号「1110010」を用いた同期波形を示す波形図であり、図38(b)はマンチェスタ符号化したM系列符号「1110010」を用いた同期波形を示す波形図である。図39(a)はタッチパネルコントローラから送信されるHigh期間の長い同期波形の一例を示す波形図であり、図39(b)は受信であるスタイラスペンでの入力波形のリセットタイミングR3を示す波形図であり、図39(c)は図39(b)においてリセットタイミングR3にて基準電位を定めたときの内部波形を示す波形図である。
本参考形態のタッチパネルシステム1では、図34(a)に示すように、タッチパネルコントローラ3aの専用同期信号は、タッチパネルコントローラ3aのタイミングジェネレータ114にて作成され、ドライバ112によりドライブラインDL1〜DLLを用いて送信される。そして、タッチパネルコントローラ3aの駆動タイミングである専用同期信号をスタイラスペンSに通知する仕組みとして、図34(b)に示すように、通常のタッチ検出用の波形とは別に同期を表す波形にてドライブラインDL1〜DLLを駆動するようにしている。具体的には、各ドライブラインDL1〜DLLにおいては、同期波形を発生した後にタッチ検出用の波形を発生させている。尚、ここでは、説明を分かり易くするため、逐次駆動にて、タッチ検出用の波形を発生させている。また、同期波形の発生において、複数の連続したパルスで表記しているのは、逐次駆動の波形との見た目の区別をし易くするためであり、実際には本参考形態にて提案しているM系列符号等をマンチェスタ符号化した波形である方が同期波形として検出し易くなる。
ところで、スタイラスペンSにて受信される信号波形には各種のノイズ、特に低周波のノイズが混入している。図35(a)においては、太直線で示すものが、タッチパネルコントローラ3aが駆動した複数の密集したパルスからなる専用同期波形であり、sinカーブで示されるものをノイズとして仮定する。
スタイラスペンSにて受信される信号波形は、図35(b)に示すように、前記タッチパネルコントローラ3aからの同期波形と低周波のノイズとが重畳されたものとなる。この結果、スタイラスペンSにて受信される信号波形は、取り出したいタッチパネルコントローラ3aからの同期波形の振幅よりも低周波のノイズの振幅の方が大きくなる。このため、受信信号波形の最小電位から最大電位までを扱うようにすると、同期波形信号の振幅はノイズに比べて相対的に微小な振幅の信号となるため、同期波形信号の取り出しが困難となる。
そこで、図35(b)に示す同期波形と低周波のノイズとが重畳された波形から同期波形を見出す方法として、例えば、低周波カットフィルタにて低周波のノイズを除く方法と、同期波形と低周波のノイズとが重畳された波形に対しての基準電位を定めるリセット動作を行い、その基準電位からの電位差により内部波形の振幅を求める方法とがある。しかしながら、低周波カットフィルタは高価である。
このため、本参考形態では、同期波形の受信側であるスタイラスペンSは、受信した入力波形に対しての基準電位を定めるリセット動作を行い、その基準電位からの電位差により内部波形の振幅を求める方法を採用している。ただし、本発明においては、必ずしもこれに限らず、低周波カットフィルタを用いて、低周波成分からなるノイズを除去することも可能である。
本参考形態では、受信した入力波形に対しての基準電位を定めるリセット動作を行うために、スタイラスペンSの同期信号検出回路36は、図36に示すリセット回路36aを備えている。このリセット回路36aでは、図35(b)に示すタッチパネルコントローラ3aからの同期波形と低周波のノイズとが重畳された重畳信号波形に対してリセットを行う。このリセットを行うことにより、図35(c)に示すように、リセットタイミングにおいて重畳信号波形が基準電位に戻される。つまり、基準電位を入力信号と同じ電位にする。そして、入力された重畳信号波形の電位が基準電位よりも高ければ正の電位を出力する一方、入力された重畳信号波形の電位が基準電位よりも低ければ負の電位を出力する。これにより、低周波成分を除去し、信号の振幅を一定の範囲に収めることが可能となる。
ところで、タッチパネルコントローラ3aからの同期波形を等間隔の複数パルス列にて表現すると、受信した入力波形に対して基準電位を定めるリセット動作を行う場合には、受信側のスタイラスペンSの基準電位を定めるリセットタイミングと同期波形のパルスとが重なってしまった場合に、パルスを取り逃し、タッチパネルコントローラ3aの駆動タイミングである専用同期信号の判別が困難になるという問題を有している。
例えば、タッチパネルコントローラ3aから、図37(a)に示す同期波形が送信されている場合、受信側のスタイラスペンSでの入力波形は、図37(b)の波形にて示される。このとき、図37(b)の波形において、リセットタイミングR1にて基準電位を定めたときの内部波形は、図37(c)にて示される。しかしながら、図37(b)の波形において、第2番目のパルスにリセットタイミングR2が設定されたときには、基準電位を定めたときの内部波形は、図37(d)に示すようになる。この結果、第2番目のパルスは正の立ち上がりが無くなるので、第2番目のパルスを取り逃すことになる。すなわち、タッチパネルコントローラ3aの駆動タイミングである専用同期信号の判別が困難になる。
そこで、本参考形態では、タッチパネルコントローラ3aにて送信する同期波形として、周期性を有する疑似不規則化系列にてなる一定パターン同期信号を用いている。具体的には、M系列(M-sequence)符号又はゴールド(Gold)系列符号を用いている。
ここで、疑似不規則化系列とは、人工的に作られた不規則信号である疑似不規則信号(pseudorandom signal)に用いられる符号系列をいう。すなわち、自然界に存在する真に不規則な信号は通常、不規則信号(random signal)とよばれるが、これに対して、人工的に作られた不規則信号を、疑似不規則信号(pseudorandom signal)という。人工的に作るわけであるから、ある規則が必要であるが、作られた信号の統計的性質は真の不規則信号のそれにできるだけ近いものとなるように種々の工夫がなされている。通常の場合、作られた信号の自己相関関数が白色雑音の自己相関関数δ(t)にできるだけ近くなるように工夫される。疑似不規則信号は疑似不規則な系列(数字の列)を電圧等の物理量に対応させて作られる。疑似不規則系列(pseudorandom sequence)には、有限長の系列と周期的系列があるが、発生のし易さ、利用のし易さの点から、周期系列が多く用いられている。そして、周期系列の代表として、M系列(M-sequence)及びゴールド(Gold)系列がある。
M系列信号及びゴールド(Gold)系列符号の自己相関は非常に鋭いピークを示し,自分以外との相関値は極めて低いという性質を有している。このM系列及びゴールド(Gold)系列は0と1との2進数からなり、2値系列が連なった周期性を有する系列である。なお、0を−1と置き直して表現することもできる。
このM系列符号又はゴールド(Gold)系列符号を、タッチパネルコントローラ3aにて送信する同期波形として用いることにより、リセットタイミングが1つのパルスと重なった場合においても、このM系列符号と一致するものを正しい同期タイミングと判断すればよいので、同期判定の信頼性が高まる。
例えば、図38(a)に示すように、M系列符号「1110010」を用いる場合に、「0」を同期波形のLowに対応させ、「1」を同期波形のHighに対応させることにより、図38(a)に示す同期波形を得ることができる。
ところで、前述のように、タッチパネルコントローラ3aにて送信する同期波形としてM系列符号を用いると共に、スタイラスペンSのセンス回路35及び同期信号検出回路36において、同じM系列符号にて一致判断することにより、パルスの取り逃しに対する耐性が高まる。しかし、系列を長くするとHigh又はLowの連続数が大きくなるパターンが含まれるため、この部分で基準電位を定めるリセットタイミングとなってしまうと不要な電位変動が発生し波形の判断が困難となる。
例えば、タッチパネルコントローラ3aにて送信する同期波形に、図39(a)に示すように、長い期間Highとなるパルスが存在し、図39(b)に示すスタイラスペンSの受信入力波形において、リセットタイミングR3にて基準電位を定めたときの内部波形は、図39(c)に示すものとなり、検出が困難となる。
そこで、本参考形態では、M系列等の自己相関特性がよい符号に対して、マンチェスタ符号化した波形を用いて、タッチパネルコントローラ3aの同期波形としての駆動を行う。ここで、マンチェスタ符号化した波形とは、図38(b)に示すように、「0」を同期波形のHigh→Lowに対応させ、「1」を同期波形のLow→Highに対応させることをいう。尚、この逆でもよい。これにより、図38(b)に示すように、M系列符号「1110010」を用いる場合に、High又はLowの期間が長い場合が発生するのを防止することができる。
このように、リセット動作を考慮すると、マンチェスタ符号化したM系列符号又はゴールド系列符号を用いることが好ましい。
本参考形態では、図28(a)に示すように、前述した例えば7bitのM系列符号「1110010」をマンチェスタ符号化したものを用いて、図28(a)に示すように、パルスを対応させる。そして、図28(b)に示すように、タッチパネルコントローラ3aの同期波形として用いる。
これにより、長期の連続したHigh又はLowの期間が同期波形に現れない状態となり、自己相関特性により検出し易い同期パターンを使用することができる。また、同期波形中には最大でも1bitを表現する時間しかHigh又はLowが継続しないため、受信側のスタイラスペンSにて基準電位を定めるリセットタイミングを調整することも可能となる。
例えば、1bitを表現する時間以上電位が高い状態が継続した場合には、ノイズの影響とみなし、その時点での電位を以降の基準電位とする。また、電位が高い状態から基準電位に近づいた場合には、その時点での電位を以降の基準電位とする。これにより、ノイズ等によって電位が大きく低下した場合でも、追従することが可能となる。
(タッチパネルシステム及びスタイラスペンの同期とタッチ位置検出との連続動作)
前記構成のタッチパネルシステム1及びスタイラスペンSの同期とタッチ位置検出との連続動作について、図40及び図41(a)(b)(c)に基づいて説明する。図40は、タッチパネルコントローラ3aの駆動動作とスタイラスペンSの駆動動作との対応関係を示す動作イメージ図である。図41(a)(b)(c)は、図40に示す同期信号検出期間、休止期間及び通常の駆動期間の具体的駆動動作を示す図である。
図40に示すように、スタイラスペンSの駆動動作は、動作切替スイッチ34aをオンにし、かつ動作切替スイッチ34bをオフにしてセンス回路35及び同期信号検出回路36によりタッチパネルコントローラ3aからの同期信号を検出するための同期信号検出期間と、準備期間と、動作切替スイッチ34aをオフにし、かつ動作切替スイッチ34bをオンにしてドライブ回路38によりペン先部31を駆動する駆動モード期間との3期間の繰り返しによって構成されている。
前記同期信号検出期間は、同期波形を表すビットパターンを検出するための待ち期間であり、ペン先部31のドライブを切り、ペン先信号波形から同期信号パターンを検出する期間である。具体的には、同期信号検出期間では、図41(a)に示すように、ドライバ112のドライブラインDL1〜DLLをそれぞれ同じ波形でドライブする。波形のパターンは例えばM系列のような自己相関特性があるパターンが含まれているものを使用する。
図40に示す準備期間は、同期信号パターン検出後の付加情報とスタイラスペンS自身の状態を基にドライブする符号を選択し、タッチパネルコントローラ3aとタイミングを合わせてペン先を駆動し始めるための準備期間であり、ドライブ開始のタイミングをとる付加情報を解釈する期間である。
また、駆動モード期間は、ドライブ回路38によりペン先部31を駆動する期間であり、タッチパネルコントローラ3aの駆動タイミングに合うよう、駆動波形のエッジを微調整しながら、選択した符号でペン先部31を駆動する期間である。このときには、タッチパネルコントローラ3aの駆動タイミングに合わせてスタイラスペンSのドライブ回路38が駆動される。
一方、タッチパネルコントローラ3aの駆動動作は、ドライブラインDL1〜DLLを同じ波形で駆動する期間と、休止期間Bと、ドライブラインDL1〜DLK〜DLLとセンスラインSL1〜SLK〜SLLとを切り替え駆動する期間との3期間の繰り返しにて構成されている。
ドライブラインDL1〜DLLを同じ波形で駆動する期間は、スタイラスペンSが同期を取るための同期波形+付加情報の駆動期間である。具体的には、前記図41(a)に示すように、ドライブラインDL1〜DLLを同じ波形で駆動する。
前記休止期間Bは、スタイラスペンSが同期検出を終える期間、及び駆動準備をするための期間である。具体的には、図41(b)に示すように、スタイラスペンSが同期波形を検出して通常の駆動を行う準備期間を設けるための待ち時間である。このため、駆動波形に意味はなく完全に任意である。したがって、駆動しなくてもよい。尚、スタイラスペンS側の準備期間が不要の場合にはこの区間は不要である。
次に、ドライブラインDL1〜DLK〜DLLとセンスラインSL1〜SLK〜SLLとを切り替え駆動する期間は、タッチパネル2の一面分のデータを得るための位置検出のための通常駆動期間である。具体的には、この通常駆動期間では、図41(c)に示すように、ドライブラインDL1〜DLLをスタイラスペンSのタッチ位置検出に必要な波形にてドライブ及びセンスを繰り返す。駆動方法としては、逐次駆動や並列駆動にて行われる。尚、図41(c)においては、駆動パターンの順序が視覚的に分かり易いように逐次駆動で表現している。
スタイラスペンSは、同期波形が検出できた場合に、タッチパネル2の外側に相当するドライブラインDLL+1と同じ波形でペン先部31を駆動する。尚、図41(c)において、背景に色がついているのはセンス期間、つまり、タッチ位置検出のための静電容量を検出している期間を示す。
このように、本参考形態のタッチパネルシステム1では、複数の第1信号線としての水平信号線HL1〜HLKと複数の第2信号線としての垂直信号線VL1〜VLLとの交点にそれぞれ形成される静電容量を有するタッチパネル2とタッチペンとしてのスタイラスペンSとタッチパネルコントローラ3aとを備え、前記タッチパネルコントローラ3aは、第1信号線駆動期間において複数の水平信号線HL1〜HLKを駆動して各静電容量に基づく電荷信号を各垂直信号線VL1〜VLLから出力させ、第2信号線駆動期間において複数の垂直信号線VL1〜VLLを駆動して各静電容量に基づく電荷信号を各水平信号線HL1〜HLKから出力させる切り替え駆動を反復して行っているときに、スタイラスペンSのペン先部31をドライブラインDLL+1の波形で駆動しながらタッチパネル2にタッチさせることにより、スタイラスペンSによる静電容量の変化に基づいてタッチ位置を検出する。
これにより、スタイラスペンSがタッチパネル2にタッチされた場合には、第1信号線駆動期間での検出位置と第2信号線駆動期間における検出位置とが同じ位置に表れる。一方、電磁ノイズを受けた人体の手、指等のタッチパネルへのタッチに起因して生じるタッチ位置とは異なる他の位置に発生するノイズによる誤信号は、第1信号線と第2信号線との切り替え駆動により第1信号線駆動期間に表れたとしても第2信号線駆動期間には同位置には表れない。
したがって、スタイラスペンSのタッチ信号とノイズによる誤信号とを区別し、該ノイズによる誤信号を容易に除去することが可能となっている。
ところで、タッチペンとして、信号を入出力できる電子ペンとしてのスタイラスペンSを使用する場合には、スタイラスペンSにおいてタッチパネルコントローラ3aで用いる同期信号との同期を取る必要がある。
この場合に、本参考形態では、タッチパネルコントローラ3aの同期信号送信部としてのドライバ112は、第1信号線駆動期間の直前と第2信号線駆動期間の直前とのそれぞれの同期信号送信期間にスタイラスペンSに同期信号を送信するので、第1信号線及び第2信号線への駆動用の駆動信号を用いて同期信号を作成することが可能である。このため、同期信号を作成するための別途回路を設けることがないので、部品点数の削減を図ることができる。
ここで、タッチパネルコントローラ3aからスタイラスペンSへ同期信号を送る場合に、低周波信号がノイズとして重畳されるので、単一のパルスではノイズとの分離が適切に行われないときには、同期信号を取り逃がすことがある。一方、同一ピッチの変化のない複数のパルスでは、どの部分が同期信号に該当するかが不明確である。
そこで、本参考形態では、タッチパネルコントローラ3aのドライバ112は、同期信号送信期間に、M系列符号又はゴールド系列符号等の周期性を有する疑似不規則化系列にてなる波形の同期信号をスタイラスペンSに送信すると共に、スタイラスペンSは、前記同期信号を検出する同期信号検出部としてのセンス回路35及び同期信号検出回路36を備えている。
このため、同期信号は、周期性を有する疑似不規則化系列にてなる波形にて送信されるので、自己相関特性がよい。このため、同期信号であるか否かの識別の精度が高くなり、同期信号の取り逃がしを減少させることができる。
したがって、同期信号の検出を適格に行うことができるタッチパネルシステム1を提供することができる。
ところで、例えば、低周波成分が重畳された同期信号を受信したときに、周期的にリセット動作を行って受信した入力波形を基準電位に戻すことにより同期信号の振幅を検出する場合には、パルスのHigh期間又はLow期間が長いときにリセット動作が行われると、不要な電位変動を行われ、波形の判断が行い難くなる。
そこで、本参考形態では、疑似不規則化系列にてなる波形の同期信号は、マンチェスタ符号化されている。すなわち、マンチェスタ符号化処理では、疑似不規則化系列の「0」を同期波形のHigh→Lowに対応させ、「1」を同期波形のLow→Highに対応させる処理を行う。尚、この逆でもよい。これにより、High又はLowの期間が長くなるのを防止することができる。
また、本参考形態のタッチパネルシステム1では、タッチパネルコントローラ3aの同期信号送信部としてのドライバ112は、前記複数の第1信号線としての水平信号線HL1〜HLK又は複数の第2信号線としての垂直信号線VL1〜VLLを駆動するための駆動信号を供給する駆動部としてのドライバ112を兼ねており、該ドライバ112は、前記複数の水平信号線HL1〜HLK又は複数の垂直信号線VL1〜VLLを駆動するための駆動信号を、周期性を有するマンチェスタ符号化された疑似不規則化系列にてなる波形に変えて同期信号を送信する。
これにより、同期信号送信部は駆動部を兼ねたドライバ112にてなっているので、水平信号線HL1〜HLK及び垂直信号線VL1〜VLLへの駆動用のドライブラインDL1〜DLLの駆動信号の波形パターンを変えるだけで同期信号を作成することが可能である。このため、同期信号を作成するための別途回路を設けることがないので、部品点数の削減を確実に図ることができる。
〔参考形態6〕
本発明の他の参考形態について図42〜図48に基づいて説明すれば、以下のとおりである。尚、本参考形態において説明すること以外の構成は、前記参考形態5と同じである。また、説明の便宜上、前記の参考形態5の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
(タッチパネルコントローラとスタイラスペンとの同期の特徴的動作)
本参考形態では、スタイラスペンSでの同期の取り方において、さらに、専用同期信号のパルスの取り逃がしの発生を防止し得る方法について、図42(a)(b)〜図46(a)(b)(c)に基づいて説明する。図42(a)は本参考形態におけるタッチパネルシステムにおいてスタイラスペンにて受信された信号の入力波形を示す波形図であり、図42(b)はリセットタイミングR1〜R6にて基準電位を定めたときの内部波形を示す波形図である。図43(a)はタッチパネルコントローラから送信される同期波形の一例を示す波形図であり、図43(b)は受信であるスタイラスペンでの入力波形のリセットタイミングR7・R8・R9を示す波形図であり、図43(c)は図43(b)に示すリセットタイミングR7・R8・R9にて基準電位を定めたときの同期波形を示す波形図である。図44は、同期波形が出力される直前に固定期間を設けたタッチパネルコントローラの出力波形を示すタイミングチャートである。図45(a)はタッチパネルコントローラから送信される同期波形の一例を示す波形図であり、図45(b)は受信であるスタイラスペンでの入力波形のリセットタイミングR11・R12・R13を示す波形図であり、図45(c)は図45(b)に示すリセットタイミングR11・R12・R13にて基準電位を定めたときの同期波形を示す波形図である。図46(a)はタッチパネルコントローラにおけるドライバのドライブラインDL1〜DLLによって送信される同期波形の送信方法を示す図であり、図46(b)は受信であるスタイラスペンでの入力波形を示す波形図であり、図46(c)は図46(b)に示す固定期間にて最初にリセットして基準電位を定めたときの同期波形を示す波形図である。
スタイラスペンSにおいて、例えば、図42(a)に示す入力波形が得られた場合に、基準電位を定めるリセットタイミングR1〜R6にてリセットすると、図42(b)に示す内部波形が得られる。
この場合、マンチェスタ符号化したM系列符号を用いていたとしても、図43(a)(b)(c)に示すように、基準電位を定めるリセット動作のタイミングによっては同じ信号でも電位が異なってしまい、タッチパネルコントローラ3aの同期波形の出力がHigh又はLowのいずれであったのかの判別が困難となることには変わらない。つまり、第2のピークがHigh又はLowのいずれであるのかが分からない。
そこで、本参考形態では、図44に示すように、同期波形が出力される直前に、固定期間Fを設けてタッチパネルコントローラ3aの出力波形を固定するようにしている。固定する時間は、受信側であるスタイラスペンSにて基準電位を決めるリセット動作タイミングが少なくとも1回は含まれる時間とする。
これにより、同期波形が出力される前段階で、安定した電位を基準電位として定めることができる。
具体的には、図45(a)(b)に示すように、固定期間FにリセットタイミングR11・R12・R13を設けて基準電位を定める。これにより、図45(c)に示すように、同期波形を検出するときに、タッチパネルコントローラ3aの出力がHigh又はLowのいずれであったのか判別し易くなる。
この結果、図44に示すように、同期波形が出力される前段階に固定期間Fを設けることによって、リセット動作が終了する時点の電位が基準電位となる。このため、図46(a)(b)(c)に示すように、スタイラスペンSにおいて、リセット間隔よりも長い固定期間Fを設けることにより、タッチパネルコントローラ3aが駆動電位が定まった状態で同期信号検出期間の前に必ずリセットが1回以上実施され、同期信号検出期間の先頭から安定した状態で波形の整形を行うことができる。
(タッチパネルシステム及びスタイラスペンの総合動作)
前記構成のタッチパネルシステム1及びスタイラスペンSの総合動作について、図47及び図48に基づいて説明する。図47は、タッチパネルコントローラ3aの駆動動作とスタイラスペンSの駆動動作との対応関係を示す動作イメージ図である。図48は、図47に示す固定期間の具体的駆動動作を示す図である。尚、図47及び図48の説明は、参考形態5の図40及び図41(a)(b)(c)と同じ部分は、その説明を簡易に行う。
図47に示すように、スタイラスペンSは、センス回路35及び同期信号検出回路36によりタッチパネルコントローラ3aからの同期信号を検出するための同期信号検出期間と、準備期間と、ドライブ回路38によりペン先部31を駆動する駆動モード期間とを含んでいる。
前記同期信号検出期間、準備期間、駆動モード期間は、前記図40及び図41(a)(b)(c)にて説明したとおりである。
一方、タッチパネルコントローラ3aは、固定期間Fと、ドライブラインDL1〜DLLを同じ波形で駆動する期間と、休止期間Bと、ドライブラインDL1〜DLLを駆動しセンスラインSL1〜SLLで静電容量の変化を読み出す期間とを有している。
固定期間Fは、スタイラスペンSが同期を検出する信号レベルを安定させるための期間である。具体的には、固定期間Fでは、図48に示すように、ドライブラインDL1〜DLLをLow又はHighのいずれかに固定する。尚、Low又はHighのいずれでもよいが、本参考形態では、Lowとしている。このため、タッチパネルコントローラ3aのドライブラインDL1〜DLLは0である。このとき、スタイラスペンSのドライブラインDLL+1は駆動しない。
ドライブラインDL1〜DLLを同じ波形で駆動する期間は、スタイラスペンSが同期を取るための同期波形+付加情報の駆動期間である。具体的には、前記図41(b)に示すように、ドライブラインDL1〜DLLを同じ波形で駆動する。
前記休止期間Bは、スタイラスペンSが同期検出を終える期間、及び駆動準備をするための期間である。具体的には、前記図41(b)に示すように、スタイラスペンSが同期波形を検出して通常の駆動を行う準備期間を設けるための待ち時間であるため駆動波形に意味はなく完全に任意である。したがって、駆動しなくてもよい。また、スタイラスペンSのドライブラインDLL+1も駆動しない。尚、スタイラスペンS側の準備期間が不要の場合にはこの区間は不要である。
次に、ドライブラインDL1〜DLLを駆動し、センスラインSL1〜SLLにて静電容量の変化を読み出す期間は、タッチパネル2の一面分のデータを得るための位置検出のための通常駆動期間である。具体的には、この通常駆動期間では、前記図41(c)に示すように、ドライブラインDL1〜DLLのドライブ及びセンスラインSL1〜SLLからの読み出しを繰り返す。駆動方法としては、逐次駆動や並列駆動にて行われる。尚、図41(c)においては、駆動パターンの順序が視覚的に分かり易いように逐次駆動で表現している。
スタイラスペンSは、同期波形が検出できた場合に、タッチパネル2の外側に相当するドライブラインDLL+1を駆動する。すなわち、タッチパネルコントローラ3aによるドライブラインDL1〜DLLの駆動に合わせて、ドライブラインDLL+1に相当する波形を出力する。尚、図41(c)において、背景に色がついているのはセンス期間、つまり、静電容量を検出している期間を示す。
このように、本参考形態のタッチパネルシステム1では、電子ペンとしてのスタイラスペンSの同期信号検出部としてのセンス回路35及び同期信号検出回路36は、低周波成分が重畳された同期信号を受信したときに、周期的にリセット動作を行って受信した入力波形を基準電位に戻すことにより同期信号の振幅を検出する。これにより、ノイズとして重畳された低周波成分を高価な低周波カットフィルタを用いることなく安価に同期信号の振幅を検出することができる。
ところで、受信した入力波形に対して任意にリセット動作を行う場合に、リセット動作がパルスのHigh部分に重なったときには、その後の信号波形が負になるので、正確な正のパルスのHigh部分と認識できない。その結果、同期信号を取り逃がす虞が発生する。
そこで、本参考形態では、同期信号送信期間は、波形がHigh又はLowに固定された固定同期信号が送信される固定期間Fと、M系列符号又はゴールド系列符号等の周期性を有する疑似不規則化系列にてなる波形の同期信号が送信される疑似不規則化系列波形期間とからなっている。そして、固定期間Fでは、リセット動作が少なくとも1回行われる。
これにより、波形がHigh又はLowに固定された固定期間Fにて、入力波形を基準電位に戻すので、以降のパルスがHigh又はLowのいずれであるかを適格に判断することができる。
〔実施形態1〕
本発明の第一実施形態について、図49〜図50に基づいて説明する。なお、説明の便宜上、前述した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
≪タッチパネルシステムの構成≫
図49は、本実施形態のタッチパネルシステム1bの構成を示す回路図である。
図49に示されるように、タッチパネルシステム1bは、タッチパネル2と、タッチパネルコントローラ3cとを備える。
タッチパネルコントローラ3cは、駆動回路4と、制御回路14と、読出部40と、ノイズ検知部NSと、マルチプレクサMU1・MU2とを備える。
(読出部)
読出部40は、切換回路12と、増幅回路7(センスアンプ)と、AD変換回路13と、復号演算回路8とを含む。
また、読出部40は、タッチパネル2と、制御回路14と、ノイズ検知部NSとに接続されている。
また、読出部40は、駆動回路4によって駆動されたタッチパネル2のキャパシタに蓄積された電荷に基づく線形和信号を上述の水平信号線(第2信号線)に沿って読み出すために設けられている。
(ノイズ検知部)
ノイズ検知部NSは、期間規定部41と、駆動規定部42とを含む。
また、ノイズ検知部NSは、制御回路14と、読出部40とに接続されている。
(期間規定部)
期間規定部41は、制御回路14と、駆動規定部42とに接続されている。
また、期間規定部41は、制御回路14を介し、駆動回路4の駆動パターンを取得する。そして、期間規定部41は、駆動回路4がタッチパネル2のキャパシタを駆動しない間に、タッチパネル2に混入したノイズ信号を読み出すノイズ読出期間を規定する。
ここで、「駆動パターン」は、例えば、以下に列挙するものである。
・図11の(a)に示される、フレーム単位駆動
・図11の(b)に示される、フェイズ連続駆動
・図11の(c)に示される、同一ベクタ連続駆動
・図11の(d)に示される、複数ベクタ連続駆動
・図12の(a)に示される、図11(b)に示したフェイズ連続駆動において、偶数回目の駆動を反転するフェイズ連続反転駆動
・図12の(b)に示される、図11(c)に示した同一ベクタ連続駆動において、偶数回目の2個のフェイズ駆動を反転する同一ベクタ連続反転駆動
・図12の(c)に示される、図11(d)に示した複数ベクタ連続駆動において、偶数回目の複数ベクタの駆動を反転する複数ベクタ連続反転駆動
期間規定部41がノイズ読出期間を規定する詳細な動作については、後述する。
(駆動規定部)
駆動規定部42は、制御回路14と、読出部40と、期間規定部41とに接続されている。
また、駆動規定部42は、ノイズ読出期間に読出部40により読み出されたノイズ信号に基づき、タッチ検出期間の駆動パターンを規定する。そして、制御回路14では、駆動回路4が、駆動規定部42によって規定された駆動パターンによってタッチパネル2のドライブラインを駆動するように、切換回路6は、サブシステム5a・5bを切り換えて駆動回路4に繋ぐ。
(マルチプレクサ)
マルチプレクサMU1は、前述した構成を備える。マルチプレクサMU2は、複数のサンプルホールド(S/H;Sample and Hold)回路を含む。また、マルチプレクサMU2は、増幅回路7(センスアンプ)と、AD変換回路13との間に接続されている。
≪タッチパネルシステムの動作≫
(ノイズ読出期間の規定)
図50は、図49に示されるタッチパネルシステム1bにおいて、期間規定部41がノイズ読出期間P1〜P4を規定する動作を説明するタイミングチャートであって、(a)はノイズ読出期間P1〜P4が規定される前の動作を示し、(b)はノイズ読出期間P1〜P4が規定された後の動作を示す。
図50の(a)に示されるように、タッチパネルシステム1bは、例えば、図24〜図27に示される構成により、タッチ検出期間Q1〜Q4(例えば、10ミリ秒(ms))ごとに、ドライブラインとセンスラインとの接続状態を切り換える。
なお、タッチ検出期間Q1〜Q4ごとにドライブラインとセンスラインとの接続状態を切り換える動作に限定されるわけではなく、同じ種類のタッチ検出期間が続く動作であってもよい。
図50の(a)及び(b)において、「X軸:センス」とは、図49及び24に示されるマルチプレクサMU1が、図25に示される水平信号線HL1〜HLMを、センスラインSL1〜SLMに接続している状態を意味する。また、「Y軸:ドライブ」とは、マルチプレクサMU1が、垂直信号線VL1〜VLMを、ドライブラインDL1〜DLMに接続している状態を意味する。
また、「X軸:ドライブ」とは、マルチプレクサMU1が、水平信号線HL1〜HLMを、ドライブラインDL1〜DLMに接続している状態を意味する。また、「Y軸:センス」とは、マルチプレクサMU1が、垂直信号線VL1〜VLMを、センスラインSL1〜SLMに接続している状態を意味する。
図50の(b)に示されるように、期間規定部41は、ノイズ読出期間P1〜P4を、Report[N+1]〜Report[N+4]で示される各時刻を終端とする1msの長さの期間に規定する。
ここで、時刻Report[N+1]の1ms前には、駆動回路4によるキャパシタの駆動が完了しているため、駆動回路4によるキャパシタの駆動に起因する線形和信号の値が収束している。他の時刻Report[N+2]〜Report[N+4]についても同様である。
(ノイズの判定)
ノイズ読出期間P1〜P4において、駆動回路4によるキャパシタの駆動に起因する線形和信号の値は、収束している(例えば、0になっている)。それゆえ、ノイズ読出期間P1〜P4において、読出部40が読み出した線形和信号は、駆動回路4によるキャパシタの駆動に起因しない線形和信号(つまり、ノイズ)を読み出すことができる。
ノイズは、例えば、物体(人間の指、タッチペン)がタッチパネルに接触することで、当該物体以外のノイズ源(ACアダプター、蛍光灯など)から流れ込む信号が原因となり発生する。
駆動規定部42は、所定のノイズ読出期間P1に読み出されたノイズに基づき、当該所定のノイズ読出期間P1よりも後の期間であるタッチ検出期間Q2における駆動パターンを規定する。このとき、前述の方法に基づき、駆動パターンとして、ノイズの抑制量の多いものを規定できる。なお、ノイズ読出期間P2・P3よりも、それぞれ後の期間であるタッチ検出期間Q3・Q4についても同様である。また、タッチ検出期間Q1の前にも、ノイズ読出期間が設けられてよい。
以上によれば、ノイズを検知するために、ドライブラインとセンスラインとの接続状態を切り換える必要がない。そして、タッチパネル2の動作中にノイズを読み出し、タッチ検出において、時間的に変化するノイズの影響を適時に抑制できる。さらに、ノイズを読み出すためだけにタッチパネルを動作させる必要がなく、11msに1度の頻度(周波数90.9Hz)で、適時にノイズを読み出せる。
(比較例)
特許文献1の静電容量値分布検出装置は、図50の(a)に示される動作と同様に、ドライブラインとセンスラインとの接続状態を一定時間ごとに切り換える。しかし、特許文献1の静電容量値分布検出装置は、時刻Report[N]にノイズを検知した場合、次にノイズを検知する時刻は、タッチ検出期間Q2の後の時刻Report[N+2]でなければならない。なぜならば、特許文献1の静電容量値分布検出装置は、タッチ検出期間Q1の静電容量値分布検出結果と、タッチ検出期間Q2の静電容量値分布検出結果とを比較しなければ、ノイズを検知できないからである。
つまり、特許文献1の静電容量値分布検出装置では、ノイズを読み出すためだけにタッチパネルを動作させる必要があり、かつ、少なくとも20msに1度の頻度(周波数50Hz)でしかノイズを読み出せない。
≪タッチパネルシステムの効果≫
ノイズを検知するために、ドライブラインとセンスラインとの接続状態を切り換える必要がない。そして、タッチパネル2の動作中にノイズを読み出し、タッチ検出において、時間的に変化するノイズの影響を適時に抑制できる。さらに、ノイズを読み出すためだけにタッチパネルを動作させる必要がなく、特許文献1の静電容量値分布検出装置などの従来技術よりも、適時にノイズを読み出せる。
なお、タッチパネルシステム1bは、図23に示されるように、携帯電話機90(電子機器)の一部に組み込むことができる。
〔実施形態2〕
本発明の第二実施形態について、図51〜図52に基づいて説明する。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
≪ノイズ読出期間を規定する種々の構成・動作及びその効果≫
(ノイズ読出期間の規定位置)
図51は、本実施形態の、図49に示されるタッチパネルシステム1bにおいて、期間規定部41がノイズ読出期間Pを規定する動作を説明するタイミングチャートであって、(a)はノイズ読出期間Pが規定される前の動作を示し、(b)はノイズ読出期間Pが規定された後の動作を示す。
図51の(a)に示されるように、タッチパネルシステム1bは、例えば、図24〜図27に示される構成により、ドライブラインとセンスラインとの接続状態を10msごとに切り換える。
そして、図51の(b)に示されるように、期間規定部41は、ノイズ読出期間Pを、時刻Report[N+4]を終端とする1msの長さの期間に規定してもよい。
このように、期間規定部41は、駆動回路4の駆動パターンからノイズ読出期間Pを規定するときに、タッチ検出期間Q1〜Q4ごとにノイズ読出期間Pを、必ず規定する必要があるわけではない。
図51の(b)に示される例では、読出部40は、41msに1度の頻度(周波数24.4Hz)でノイズを読み出す。所望のノイズ読み出し頻度が24.4Hz以下であるのならば、ノイズ読出期間Pは、図51の(b)に示されるように規定されてよい。
また、特許文献1に示されている従来方法(例えば、ノイズメトリックを取得)を継続的に行っておき、ノイズメトリックがある閾値レベルを超えたときに、ノイズ読み出し期間を設ける構成としてもよい。この方法では、ノイズ周波数やノイズ量の変化自体は従来技術の方法で判断を行う。駆動規定部42の動作を行うため、期間規定部41にて、駆動回路4がタッチパネル2のキャパシタを駆動しない間に、タッチパネル2に混入したノイズ信号を読み出す期間を定める。
(省電力休止期間におけるノイズ読出期間の規定)
図52は、図49に示されるタッチパネルシステム1bにおいて、期間規定部41がノイズ読出期間P1〜P4を規定する動作を説明するタイミングチャートであって、(a)はノイズ読出期間P1〜P4が規定される前の動作を表し、(b)はノイズ読出期間P1〜P4が規定された後の動作を表す。
図52の(a)に示されるように、タッチパネルシステム1bの消費電力を抑制するために、駆動回路4は、タッチ検出期間Q1〜Q4(例えば、4msの期間)の間の休止期間B1〜B4(省電力期間;例えば、6msの期間)において、ドライブラインの駆動を休止することがある。
この場合、図52の(b)に示されるように、期間規定部41は、ノイズ読出期間P1(例えば、1msの期間)を、休止期間B1内に規定してもよい。ノイズ読出期間P2〜P4についても同様である。
以上により、タッチパネルシステム1bの省電力化を図りつつ、10msに1度の頻度(周波数100Hz)で、適時にノイズを読み出せる。
(タッチペンを併用する形態におけるノイズ読出期間の規定)
タッチパネルシステム1bでは、前述のようにタッチペンを併用することがある。
この場合、期間規定部41は、図40に示される休止期間B(コントローラが同期信号を送信しない期間)の一部又は全体に、一つ又は複数のノイズ読出期間を規定してもよい。また、期間規定部41は、図47に示される休止期間B又は固定期間Fの一部又は全体に、一つ又は複数のノイズ読出期間を規定してもよい。
以上により、タッチペンのタッチ信号とノイズによる誤信号とを区別し、該ノイズによる誤信号を容易に除去しつつ、適時にノイズを読み出せる。
〔実施形態3〕
本発明の第三実施形態について、図53に基づいて説明する。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
≪サンプリング周波数を最適化する構成・動作及びその効果≫
(サンプリング周波数の最適化)
図53は、本実施形態の、図49に示されるタッチパネルシステム1bが備える読出部40を簡略化して示すブロック図であって、(a)は読出部40の簡略化された構成を示し、(b)は読出部40の簡略化された動作を示し、(c)は読出部40の簡略化された他の動作を示し、(d)は読出部40の簡略化されたさらに他の動作を示す。
図53の(a)に示されるように、読出部40が含む増幅回路7の個数は、10個(増幅回路Amp1〜Amp10)に簡略化されている。また、図49に示される複数のS/H回路は、一つのマルチプレクサMU2として簡略化されている。
図53の(b)に示されるように、“1”〜“10”で示される増幅回路Amp1〜Amp10の各出力は、マルチプレクサMU2を介してAD変換回路13で順番にAD変換される。
ここで、AD変換回路13のサンプリング頻度が、10メガサンプル/秒(Msps;Mega-sample per second)であれば(つまり、AD変換回路13のサンプリング周波数が10MHzであれば)、増幅回路Amp1〜Amp10のうちの一つの増幅回路の出力がAD変換される頻度は、1Mspsになる。このとき、サンプリング定理により、当該出力から復元できる信号の最大周波数は、0.5MHzになる。
以上の場合、駆動規定部42は、所定のノイズ読出期間に読み出された線形和信号に基づき、当該所定のノイズ読出期間よりも後の期間における駆動パターンを規定するときに、高速フーリエ変換(FFT;Fast Fourier Transform)演算等を行うことにより、最大0.5MHzまでの周波数成分のノイズに対して、正しくノイズ周波数を推測することができ、最大0.5MHzまでの周波数成分のノイズに対し、ノイズの抑制量の多い駆動パターンを正しく規定できる。
ここで、AD変換回路13は、省電力のために、サンプリング頻度を低く設定されていることがある。この場合、図53の(c)に示されるように、AD変換回路13のサンプリング頻度を、例えば100Mspsまで上げ、増幅回路Amp1〜Amp10のうちの一つの増幅回路の出力がAD変換される周期を10Mspsにする。
以上の場合、駆動規定部42は、所定のノイズ読出期間に読み出された線形和信号に基づき、当該所定のノイズ読出期間よりも後の期間における駆動パターンを規定するときに、FFT演算等を行うことにより、最大5MHzまでの周波数成分のノイズに対して、正しくノイズ周波数を推測することができ、最大5MHzまでの周波数成分のノイズに対して、ノイズの抑制量の多い駆動パターンを正しく規定できる。
ここで、AD変換回路13のサンプリング周波数は、AD変換回路13の数を増やし並列化するなどによっても上げることができる。この場合、有意なノイズを測定できる最大周波数まで、サンプリング周波数を上げればよい。
具体的には、駆動規定部42は、上述のノイズ読出期間にAD変換回路13により読み出されたノイズ信号の最大周波数の2倍を上限として、AD変換回路13のサンプリング周波数を規定すればよい。
(サンプリングする水平信号線の最適化)
図53の(a)に示される構成において、予めノイズが観測される増幅回路7(この例では、増幅回路Amp2〜Amp3)が判明している場合、マルチプレクサMU2は、増幅回路Amp2〜Amp3の出力のみを、AD変換回路13に送信してよい。この場合、AD変換回路13のサンプリング周波数が10Mspsであるならば、増幅回路Amp2〜Amp3の出力がAD変換される周期を5Mspsにできる。
駆動規定部42は、所定のノイズ読出期間に読み出された線形和信号に基づき、当該所定のノイズ読出期間よりも後の期間における駆動パターンを規定するときに、FFT演算等を行うことにより、最大2.5MHzまでの周波数成分のノイズに対して、正しくノイズ周波数を推測することができ、ノイズの抑制量の多いものを正しく規定できる。
なお、ノイズが観測される増幅回路を特定するために、複数の増幅回路7を順番に検査してよい。
また、前述のように、物体がタッチパネルに接触(タッチ)することで、当該物体以外のノイズ源から流れ込む信号に起因し、ノイズが検知されることがある。よって、ノイズが観測される増幅回路を特定するために、タッチされることが多い増幅回路7(例えば最近タッチされたセンスラインの信号線に対応する増幅回路7)を優先的に検査してもよい。この場合、読出部40は、ノイズ読出期間において、ノイズ読出期間よりも前の、タッチ検出期間にタッチが検出されたセンスラインの信号線に沿って線形和信号を読み出せばよい。
〔実施形態4〕
本発明の第四実施形態について、図54に基づいて説明する。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
≪サンプリング周波数の半分の周波数以上のノイズ同定≫
図49に示される駆動規定部42が、よりノイズ低減量が大きい駆動パターンを規定するためには、正確なノイズ周波数が、特定され得ることが望ましい。換言するならば、読出部40のサンプリング周波数は、できるだけ高いことが望ましい。しかし、読出部40の動作周波数などの制約により、当該サンプリング周波数は律速される。
(予想される弊害の例)
読出部40のサンプリング周波数Fsが、500kHz(サンプリング間隔2usに対応)である場合、読出部40が正しく観測できる信号の最大周波数は、250kHzである。そして、読出部40が観測する信号のうち250kHz以上の周波数成分は、本来とは異なる周波数として観測される(いわゆる「折り返し」)。
このとき、読出部40が観測する信号に、300kHzのノイズが重畳したと仮定すると、読出部40が観測する信号の周波数成分は、200kHzと推定(誤判定)されることがある。
そして、駆動規定部42が、周波数が200kHzであるノイズの影響の抑圧量が大きい駆動パターンを規定する(ノッチを当てる)と、実際のノイズである300kHzの周波数成分は、十分に抑圧されないことがある。
(サンプリング周波数の半分の周波数以上のノイズ同定)
ここで、読出部40のサンプリング周波数Fsは既知である。このとき、読出部40が観測する信号に重畳するノイズ周波数をFnoiseとおくと、折り返し周波数Ffは、「Ff=Fs−Fnoise」によって求められる。
そして、駆動規定部42が、ノイズ周波数Fnoiseの信号に対して抑圧量が大きい駆動パターンを規定し(ノイズ周波数Fnoiseに対応するノッチを当て)、後述する方法により、ノイズの影響が減ったか否かを判断する。ノイズの影響が減っていなければ、駆動規定部42が、折り返し周波数Ffの信号に対して抑圧量が大きい駆動パターンを規定し、ノイズの影響が減ったか否かを判断する。
(ノイズの影響が減ったか否かの判断方法)
ノッチを当てた(駆動規定部42が規定した)駆動パターンに対し、1フェイズの時間(フェイズ長)が定まる。当該フェイズ長にてノイズ読出期間(ドライブラインを駆動しない期間)において、前述のノイズ分析動作と同様に読出部40を動作させ、AD変換回路13の出力(ADダンプ値)を取得し、駆動規定部42で規定しようとしている駆動パターンに対応する加減算を含む平均化処理を行えば、ノイズの影響が減ったか否か(ノイズ混入量の大小)を判断できる。
図54は、本実施形態の、フェイズ長の設定に応じたAD変換回路13の連続した2つの出力を単純加算平均した結果を示すグラフであって、(a)はAD変換回路13のサンプリング周波数が400kHzである場合のグラフを示し、(b)は当該サンプリング周波数が600kHzである場合を示す。
図54の(a)に示されるように、AD変換回路13のサンプリング周波数が400kHzである場合、単純加算平均の値は、実際のノイズ周波数Fnoiseが200kHzであれば、0に抑圧される(実線)。しかし、実際のノイズ周波数Fnoiseが300kHzであれば、0には抑圧されない(破線)。
次に、図54の(b)に示されるように、AD変換回路13のサンプリング周波数が600kHzである場合、単純加算平均の値は、実際のノイズ周波数Fnoiseが300kHzであれば、0に抑圧される(破線)。しかし、実際のノイズ周波数Fnoiseが200kHzであれば、0には抑圧されない(実線)。
以上のように、図54の(a)及び(b)を比較することにより、ノッチが当たったか否かを判断し、読出部40が観測する信号に重畳するノイズの実際のノイズ周波数Fnoiseを同定できる。そして、従来方法(例えば、ノイズメトリックを取得する方法)よりも、ノイズの影響が減ったか否かを高速に判断できる。
なお、以上は駆動規定部42で規定しようとしている駆動パターンが、同じフェイズで2連続してキャパシタを駆動するフェイズ連続駆動の場合の例であり、ノイズの影響が減ったか否かの判断は、AD変換回路13の出力(ADダンプ値)を取得し、駆動規定部42で規定しようとしている駆動パターンに対応する加減算を含む平均化処理を行えばよい。
〔実施形態5〕
本発明の第五実施形態について、図55に基づいて説明する。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
≪特定の駆動パターンにおけるサンプリング周波数の最適化≫
ノイズ読出期間において、読出部40が線形和信号を読み出すことで、タッチ検出期間において、読出部40によって観測される信号に重畳するノイズの周波数が求まる。この場合、以下の方法によってサンプリング周波数を最適化し、ノイズの影響を抑圧できる。
(サンプリングの個数が8である同一ベクタ連続駆動パターンにおける最適化)
駆動規定部42によって規定される駆動パターンが、例えば、サンプリングの個数が8である、図11(c)の同一ベクタ連続駆動パターンであるとする。
この場合、サンプリング周波数Fsとノイズ周波数Fnoiseとの関係について、所定の許容誤差をΔEとして、次式を満たすサンプリング周波数Fsを求める。なお、次式においてNは整数である。
Fnoise/Fs=N+((1/8±ΔE) or (2/8±ΔE) or (3/8±ΔE) or (4/8±ΔE) or (5/8±ΔE) or (6/8±ΔE) or (7/8±ΔE)) ……式(1)
以下において、フェイズピリオドとは、フェイズピリオドをPP、サンプリング周波数をFs、タッチパネルシステム1bの基準クロック周波数をFclkとおくと、関係式「Fs=Fclk/(PP×2)」により表されるものを意味する。
また、正規化周波数とは、読出部40によって観測される信号に重畳するノイズ周波数をFnoiseとおくと、「Fnoise/Fs」により表される数値(上式(1)の左辺)を意味する。
ここで、以下(A)〜(C)のように仮定する。
(A)フェイズピリオドPPは、探査範囲120〜160に含まれ、例えば133である。
(B)図49に示されるタッチパネルシステム1bの基準クロックの周波数は、40MHzである。
(C)ノイズ周波数Fnoiseは、93.75kHzである。
このとき、サンプリング周波数Fsは、40[MHz]/(133×2)=150.376[kHz]であると求められるので、正規化周波数Fnoise/Fsは、0.623と求まる。
そして、上式(1)における許容誤差ΔEを0.01に設定すると、正規化周波数Fnoise/Fsは、(5/8±ΔE)の範囲に含まれる。
よって、サンプリング周波数が150.376kHz(つまり、フェイズピリオドPPが133)であれば、駆動規定部42が、駆動パターンとして、サンプリングの個数が8である、図11(c)の同一ベクタ連続駆動パターンを規定することにより、ノイズの影響を抑圧できる(ノッチが当たる)ことがわかる。
なお、ΔEが最小になるように、サンプリング周波数を最適化することが望ましい。
以上のように、駆動規定部42は、駆動パターン(例えば、サンプリングの個数が8である同一ベクタ連続駆動パターン)と、所定のノイズ読出期間に読み出された線形和信号に基づく信号の周波数(例えば、93.75kHz)とから、読出部のサンプリング周波数を規定する。
≪複数の周波数成分が含まれるノイズの影響の抑圧≫
ノイズ読出期間において、読出部40が線形和信号を読み出すことで、読出部40によって観測される信号に重畳するノイズの周波数が求まる。そして、ノイズの周波数は、複数存在することがある。この場合でも、以下の方法により、複数周波数のノイズの影響を抑圧できる。
本実施形態の例では、駆動規定部42が規定し得る駆動パターンの候補は、次の(a)及び(b)の2つの駆動パターンであるとする。
(a)反転駆動を行わない場合の、サンプリングの個数が8である図11(c)の同一ベクタ連続駆動
(b)反転駆動を行った場合の、サンプリングの個数が8である図12(b)の同一ベクタ連続反転駆動
図55は、本実施形態の、サンプリングの個数が8である図11(c)の同一ベクタ連続駆動と、図12(b)の同一ベクタ連続反転駆動とにおけるノイズの伝達特性を示すグラフであって、(a)は正規化周波数に対する信号変化量の関係を示し、(b)はサンプリング周波数に対するノイズ推定量を示す。
ここで、「信号変化量」とは、前述の図18〜図20の縦軸に示される信号変化量と同じものを意味する。
図55の(a)に示されるように、駆動パターンが同一であっても、反転駆動を行わない場合と、反転駆動を行った場合とで、正規化周波数に対する信号変化量(つまり、ノイズ抑圧量)が変化する。
よって、例えば、読出部40によって観測される信号に重畳するノイズの周波数が、ノイズ周波数Fnoise1(35.714kHz)と、ノイズ周波数Fnoise2(142.857kHz)とであるとき、図55の(a)のグラフに基づいて、反転駆動を行うべきか否かを決定することは困難である。
そこで、次式で表されるノイズ推定量Nestを導入する。次式では、ノイズ周波数がFnoise1であるノイズの振幅をAnoise1、ノイズ周波数がFnoise2であるノイズの振幅をAnoise2、正規化周波数がFnであるときの図55(a)に示される信号変化量をf(Fn)とおいている。
Nest=sqrt((Anoise1×f(Fnoise1/Fs))^2+(Anoise2×f(Fnoise2/Fs))^2) ……式(2)
図55の(b)に示されるように、上式(2)で表されるノイズ推定量Nestは、駆動パターンが反転駆動を行う駆動パターンである場合、サンプリング周波数が142.857kHz(つまり、フェイズピリオドPPが140)であるときに、最小値になることがわかる。
以上のように、駆動規定部42は、所定のノイズ読出期間に読み出された線形和信号に基づく信号の周波数であるノイズ周波数(例えば、ノイズ周波数Fnoise1・ノイズ周波数Fnoise2)と、当該ノイズ周波数における駆動パターンの信号変化量(例えば、図55の(a)に示される信号変化量)とから、読出部40のサンプリング周波数を規定する。
≪本実施形態の効果≫
駆動規定部42が規定する特定の駆動パターンにおいて、読出部40のサンプリング周波数を最適化することにより、ノイズの影響を抑圧できる。
また、図49に示されるように、制御回路14に設けられた複数のサブシステムは、外来ノイズの影響を低減するために、前述した説明に基づいて種々のタイプに構成することができる。換言するならば、駆動規定部42が規定する駆動パターンは、種々のパターンが存在する。
ここで、例えば、同じベクタ駆動で同じフェイズ駆動に基づく複数個の線形和信号を加算平均する実施単位をフレーム単位としたサブシステム、加算平均する実施単位をフェイズ単位としたサブシステム、加算平均する実施単位をベクタ単位としたサブシステム、加算平均する実施単位を複数ベクタ単位としたサブシステムを設け、これらのサブシステムを、正規化周波数と振幅変化率(信号変化量)との間の周波数特性に基づいて外来ノイズの影響を低減するように選択する構成とできる。
このように、複数の駆動パターンを選択し得る状況においても、読出部40のサンプリング周波数を最適化し、複数周波数のノイズの影響を抑圧できる。
〔まとめ〕
本発明の態様1に係るタッチパネルシステムは、複数本の第1信号線(垂直信号線VL1〜VLM)と複数本の第2信号線(水平信号線HL1〜HLM)との交点にそれぞれ形成された複数個のキャパシタを有するタッチパネル2と、前記タッチパネルを制御するコントローラ(タッチパネルコントローラ3・3a・3b・3c)とを備えたタッチパネルシステム1・1a・1bであって、前記コントローラは、前記タッチパネル上のタッチ位置を検出する期間であるタッチ検出期間Q1〜Q4において、駆動パターンに基づいて前記キャパシタを前記第1信号線に沿って駆動する駆動回路4と、前記駆動回路によって駆動された前記キャパシタに蓄積された電荷に基づく線形和信号を前記第2信号線に沿って読み出すために設けられた読出部40と、前記駆動回路が前記キャパシタを駆動しない間に、前記タッチパネルに混入したノイズ信号を読み出すノイズ読出期間P・P1〜P4を規定する期間規定部41と、前記ノイズ読出期間に前記読出部により読み出されたノイズ信号に基づき、前記タッチ検出期間の前記駆動パターンを規定する駆動規定部42とを備える。
前記構成によれば、駆動規定部は、期間規定部が規定したノイズ読出期間において、ノイズ信号に基づき、ノイズ信号の抑制量が多い駆動パターンを規定できる。
以上によれば、ノイズを検知するために、ドライブラインとセンスラインとの接続状態を切り換える必要がない。そして、タッチパネルの動作中にノイズを読み出し、タッチ検出において、時間的に変化するノイズの影響を適時に抑制できる。さらに、ノイズを読み出すためだけにタッチパネルを動作させる必要がなく、適時にノイズを読み出せる。
本発明の態様2に係るタッチパネルシステムでは、前記態様1において、前記期間規定部は、前記タッチパネルの省電力期間(休止期間B1〜B4)内に、前記ノイズ読出期間を規定してよい。
本発明の態様3に係るタッチパネルシステムは、前記態様1又は2において、信号を入出力できるタッチペンをさらに備え、前記コントローラは、前記タッチペンに同期信号を送信し、前記期間規定部は、前記コントローラが前記同期信号を送信しない期間(休止期間B、固定期間F)に、前記ノイズ読出期間を規定してよい。
本発明の態様4に係るタッチパネルシステムでは、前記態様1から3のいずれか一態様において、前記駆動規定部は、前記駆動パターンと、前記所定の前記ノイズ読出期間に読み出された前記線形和信号に基づく信号の周波数とから、前記読出部のサンプリング周波数Fsを規定してよい。
本発明の態様5に係るタッチパネルシステムでは、前記態様1から3のいずれか一態様において、前記駆動規定部は、前記所定の前記ノイズ読出期間に読み出された前記線形和信号に基づく信号の周波数であるノイズ周波数Fnoise・Fnoise1・Fnoise2と、当該ノイズ周波数における複数の候補となる前記駆動パターンの信号変化量とから、当該複数の候補となる前記駆動パターンのうちの一つの駆動パターンと、前記読出部のサンプリング周波数Fsとを規定してよい。
本発明の態様6に係るタッチパネルシステムでは、前記態様1から5のいずれか一態様において、前記駆動規定部は、前記ノイズ読出期間に前記読出部により読み出された前記ノイズ信号の最大周波数の2倍を上限として、前記読出部のサンプリング周波数Fsを規定してよい。
本発明の態様7に係るタッチパネルシステムでは、前記態様1から6のいずれか一態様において、前記読出部は、前記タッチ検出期間にタッチが検出された前記第2信号線に沿って前記線形和信号を読み出してよい。
本発明の態様8に係るタッチパネルシステムでは、前記態様1から7のいずれか一態様において、前記駆動規定部は、前記所定の前記ノイズ読出期間に読み出された前記線形和信号に基づく信号の周波数であるノイズ周波数における前記駆動パターンでのノイズ混入量と、当該ノイズ周波数に対応する折り返し周波数における前記駆動パターンでのノイズ混入量とを比較し、前記ノイズ混入量が小さい前記駆動パターンを規定してよい。
本発明の態様9に係る電子機器は、前記態様1から8のいずれか一態様のタッチパネルシステムを備える。
〔付記事項〕
本発明は前述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。