JP6114803B2 - 船舶搭載用の排気ガス浄化装置 - Google Patents

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Description

本願発明は、船舶に搭載したディーゼルエンジンのような内燃機関(エンジン)において、排気ガスを浄化処理するための船舶搭載用の排気ガス浄化装置に関するものである。
従来、例えばタンカーや輸送船等の船舶においては、各種補機、荷役装置、照明、空調その他の機器類の消費する電力量が膨大であり、これらの電気系統に電力を供給するために、ディーゼルエンジンと、当該ディーゼルエンジンの駆動にて発電する発電機とを組み合わせてなるディーゼル発電機を複数備えている(例えば特許文献1等参照)。
ディーゼルエンジンは、内燃機関の中で最もエネルギー効率の高いものの1つであることが知られており、単位出力当りの排気ガスに含まれる二酸化炭素量が少ない。しかも、例えば重油のような低質の燃料を使用できるため経済的にも優れるという利点がある。
特開2006−341742号公報
ところで、ディーゼルエンジンの排気ガス中には、二酸化炭素以外に、窒素酸化物、硫黄酸化物及び粒子状物質等も多く含まれている。これらは、主に燃料である重油に由来して生成されるものであり、環境保全の妨げになる有害物質である。特に、窒素酸化物(以下、NOxという)は人体に有害で且つ強い酸性を呈するものであり、酸性雨の原因とも考えられている。
従って、例えば船舶のように、ディーゼル発電機(ディーゼルエンジン)を駆動させる機械においては、NOxの排出量が極めて多く、地球環境に与える負担が大きいと解される。地球環境に配慮すれば、排気ガス中のNOxをできるだけ取り除くことが必要であり、このためには、簡単な構成で且つ効率よく、NOxを還元処理して無害化することが要請される。
本願発明は、このような要請に応えることを目的とするものである。
本願発明は、船舶に搭載したエンジンからの排気ガス中にあるNOxを取り除くための後処理装置を、前記エンジンの排気経路に備えている船舶搭載用の排気ガス浄化装置において、気体供給源(32)からの圧縮気体を吹き付ける噴気ノズル(37)が、前記後処理装置(27)の前部に設けられており、前記噴気ノズル(37)からの圧縮気体により前記後処理装置(27)内に溜まった煤塵を強制的に除去するというものである。
本願発明の排気ガス浄化装置において、前記排気経路のうち前記後処理装置の上流側からバイパス経路を分岐させ、前記分岐部分と前記後処理装置との間並びに前記バイパス経路の入口側に、切換バルブを設け、前記後処理装置(27)を構成する後処理ケーシング(61)に前記バイパス経路(29)の出口側を接続し、前記バイパス経路(29)の出口側からの排気ガスを前記後処理ケーシング(61)に導入してから前記後処理ケーシング(61)外に排出するように構成しており、前記後処理ケーシング(61)内に、排気ガス中のNOxの還元を促進させるNOx触媒(62)および残存還元剤の酸化処理を促進させるスリップ処理触媒(63)を配置し、前記NOx触媒(62)および前記スリップ処理触媒(63)の下流側に前記バイパス経路(29)の出口側を接続し、前記噴気ノズル(37)が、前記NOx触媒(62)より上流側の部位に設けられて、気体供給源(32)から送られた圧縮気体が、前記噴気ノズル(37)から前記NOx触媒(62)に向けて圧縮気体が吹き付けられる。
本願発明によると、後処理装置(27)の前部に設けられた噴気ノズル(37)が、気体供給源(32)から圧縮気体を吹き付けることにより、長期間の使用で後処理装置(27)内に溜まった煤塵を強制的に除去することが可能になる。特に、NOx触媒(62)より上流側に、NOx触媒(62)に向けて気体供給源(32)からの圧縮気体を噴出する噴気部としての噴気ノズル(37)が設けられているから、当該噴気ノズル(37)の作用により、長期間の使用でNOx触媒(62)内に溜まった煤塵を強制的に除去できる。
本願発明によると、前記排気経路(25)のうち前記後処理装置(27)の上流側からバイパス経路(29)を分岐させ、前記分岐部分と前記後処理装置(27)との間並びに前記バイパス経路(29)の入口側に、切換バルブ(30)(31)を設けているから、前記切換バルブ(30)(31)によって、排気ガスの浄化処理が必要なNOx排出の規制海域内での航行中と、浄化処理が不要なNOx排出の規制海域外での航行中とにおいて、排気ガスの通過する経路(25)(29)を簡単に選択でき、浄化処理の要不要に応じて排気ガスを効率よく処理できる。また、前記バイパス経路(29)及び前記切換バルブ(30)(31)の存在によって、前記排気経路(25)の完全閉塞のおそれを格段に低減できる。
また、前記後処理装置(27)を構成する後処理ケーシング(61)に前記バイパス経路(29)の出口側を接続し、前記バイパス経路(29)の出口側からの排気ガスを前記後処理ケーシング(61)に導入してから前記後処理ケーシング(61)外に排出するように構成しているから、前記排気経路(25)と前記バイパス経路(29)との両方を前記船舶(1)のファンネル(煙突)まで延長させる必要がなく、前記後処理装置(27)よりも下流側の排気構造を簡素化でき、コスト低減に寄与する。
船舶の全体側面図である。 発電装置の概略系統図である。 発電装置における燃料系統の説明図である。 発電装置の排気系統と還元剤供給装置との説明図である。 触媒装置の側面断面図である。 触媒装置への排気ガスの流れを説明する側面断面図である。
以下に、本願発明を具体化した実施形態を、船舶に搭載された複数台のディーゼル発電機に適用した場合の図面(図1〜図6)に基づいて説明する。
(1).船舶の概要
まず始めに、図1を参照しながら、船舶1の概要について説明する。
実施形態の船舶1は、船体2と、船体2におけるデッキ3上の後部に設けられたキャビン4と、キャビン4の後方に配置されたファンネル5(煙突)と、船体2の後方下部に設けられたプロペラ6及び舵7とを備えている。船体2内の後部には、プロペラ6の駆動源である主エンジン8(実施形態ではディーゼルエンジン)及び減速機9と、船舶2内の電気系統に電力を供給するための発電装置10とが設置されている。主エンジン8から減速機9を経由した回転動力にて、プロペラ6が回転駆動することになる。
(2).発電装置の構造
次に、図2を参照しながら、発電装置10の構造について説明する。
発電装置10は、発電用ディーゼルエンジン12(以下、発電用エンジンという)と、発電用エンジン12の駆動にて発電する発電機13とを組み合わせたディーゼル発電機11を複数台(実施形態では3台)備えたものである。これらディーゼル発電機11は、船舶2内の必要電力量に対応して効率的に稼働するように構成されている。例えば大量の電力を消費する航行時には、全てのディーゼル発電機11を稼働させ、比較的電力消費の少ない停泊時には、任意の台数のディーゼル発電機11を稼働させる。
各発電機13の駆動にて生じた発電電力は船舶2内の電気系統に供給される。各発電機13は、発電機制御盤14内の電力トランスデューサ15に電気的に接続されている。電力トランスデューサ15は各発電機13による発電電力を検出するためのものである。電力トランスデューサ15の検出情報に基づき発電電力が発電機制御盤14にて予め設定された目標電力と一致するように、各発電用エンジン12の駆動は制御される。電力トランスデューサ15は、後述する還元剤供給装置43のコントローラ55にも電気的に接続されている。
(3).発電装置の燃料系統
次に、図2及び図3を参照しながら、発電装置10の燃料系統について説明する。
船体2内には、各発電用エンジン12の燃料(重油)を貯留する燃料タンク16が設置されている。燃料タンク16には1本の供給管路17が接続されている。供給管路17の上流側には、燃料入口バルブ18と燃料フィルタ19と燃料流量計20とが設けられている。燃料流量計20は、後述する還元剤供給装置43のコントローラ55に電気的に接続されている。
供給管路17のうち燃料流量計20より下流側からは、複数の送り管路21(実施形態では3本)が延びており、それぞれが対応する発電用エンジン12の燃料ポンプ16に接続されている。燃料ポンプ16に送られた燃料は、発電用エンジン12に設けられた燃料噴射装置(図示省略)にて、発電用エンジン12における気筒毎の燃焼室(図示省略)内に噴射されることになる。
各送り管路21の中途部にはリターンチャンバー22が設けられている。燃料噴射装置から発電用エンジン12外に延びる戻し管路23は、リターンチャンバー22を介して燃料タンク16に接続されている。従って、発電用エンジン12において未使用の余剰燃料は、戻し管路23を通じて燃料タンク16に戻されることになる。戻し管路23のうちリターンチャンバー22より下流側には逆止弁24が設けられている。
(4).発電装置の吸排気系統
次に、図2及び図4を参照しながら、発電装置10の吸排気系統について説明する。
各発電用エンジン12には、空気取り込み用の吸気経路(図示省略)と排気ガス排出用の排気経路25とが接続されている。吸気経路を通じて取り込まれた空気は、発電用エンジン12の各気筒内(吸気行程の気筒内)に送られる。そして、各気筒の圧縮行程完了時に、燃料タンク16から吸い上げられた燃料を燃料噴射装置にて気筒毎の燃焼室(副室)内に圧送することにより、各燃焼室にて混合気の自己着火燃焼に伴う膨張行程が行われることになる。
各発電用エンジン12の排気経路25は、いずれも1本の集合経路26に合流している。このように、発電用エンジン12を複数台有する場合の排気構造が簡素化されている。集合経路26はファンネル5まで延びており、集合経路26の中途部には、主として排気ガスの浄化処理をする後処理装置27が設けられている。膨張行程後の排気行程において、複数台の発電用エンジン12から各排気経路25に送られた排気ガスは、集合経路26にてまとめられ、後処理装置27を経由して船舶1外に放出されることになる。
各排気経路25には、これを開閉する開閉部材として、空気作動式の開閉バルブ28が設けられている。各開閉バルブ28は、それぞれ対応する発電用エンジン12の状態に応じて開閉させる。すなわち、駆動中の発電用エンジン12に対する開閉バルブ28は開き、停止中の発電用エンジン12に対応する開閉バルブ28は閉じることになる。このため、集合経路26から停止中の発電用エンジン12に向けて排気ガスが逆流するのを簡単且つ確実に防止できる。
集合経路26のうち最下流の排気経路25との合流部分と後処理装置27との間には、後処理装置27内のNOx触媒62及びスリップ処理触媒63(詳細は後述する)を迂回するためのバイパス経路29が接続されている。バイパス経路29の出口側は、後処理装置27の後部、具体的には、後述するNOx触媒62及びスリップ処理触媒63より下流側の部位に接続されている。
集合経路26のうちバイパス経路29への分岐部分より下流側(分岐部分と後処理装置27との間)には、当該部分を開閉する経路切換部材として、気体作動式の集合側切換バルブ30が設けられている。また、バイパス経路29の入口側には、経路切換部材としての気体作動式のバイパス側切換バルブ31が設けられている。
これら切換バルブ30,31は排気ガスの通過する経路を選択するためのものであり、一方を開けば他方を閉じるという関係になっている。集合側切換バルブ30を開いてバイパス側切換バルブ31を閉じた状態では、集合経路26にてまとめられた排気ガスは、後処理装置27内のNOx触媒62及びスリップ処理触媒63を通過して浄化処理をされてから、船舶1外に放出される。バイパス側切換バルブ31を開いて集合側切換バルブ30を閉じた状態では、集合経路26にてまとめられた排気ガスは、後処理装置27内のNOx触媒62及びスリップ処理触媒63を迂回して浄化処理をすることなく、船舶1外に放出される。
前述の通り、各バルブ28,30,31は気体作動式のものであり、それぞれの駆動部が気体枝管路34を介して気体供給源32から延びる気体幹管路33に接続されている。実施形態の気体供給源32は、バルブ28,30,31作動用の圧縮気体としての空気(窒素ガスでもよい)を供給するためのものである。各気体枝管路34の中途部には、上流側から順に、ゲートバルブ35と減圧バルブ36とが設けられている。
気体幹管路33の出口側は、後処理装置27の前部、具体的には、後述するNOx触媒62及びスリップ処理触媒63より上流側の部位に設けられた噴気部としての噴気ノズル37に接続されている。噴気ノズル37は、気体供給源32からの圧縮気体をNOx触媒62及びスリップ処理触媒63に向けて吹き付けるものであり、当該噴気ノズル37の作用により、長期間の使用で後処理装置27内に溜まった煤塵を強制的に除去することが可能になる。
気体幹管路33のうち最下流の空気枝管路34と噴気ノズル37との間には、上流側から順に、ゲートバルブ38、減圧バルブ39、エアフィルタ40、レジューサ41及び噴気用電磁弁42が設けられている。噴気用電磁弁42は、後述する還元剤供給装置43のコントローラ55に電気的に接続されていて、コントローラ55からの制御情報に基づいて開閉作動するように構成されている。
(5).還元剤供給装置の構造
次に、図2及び図4を参照しながら、還元剤供給装置43の構造について説明する。
還元剤供給装置43は、集合経路26内の排気ガスにNOx還元用の還元剤を供給するためのものであり、還元剤供給通路44と還元剤制御盤45とを備えている。還元剤供給通路44の一端側は、還元剤としての尿素水溶液(以下、尿素水という)を貯留する尿素水タンク46に接続されている一方、他端側は、集合経路26のうちバイパス側切換バルブ31と後処理装置27との間に設けられた還元剤供給部としての尿素水噴射ノズル47に接続されている。
還元剤供給通路44には、上流側から順に、尿素水入口バルブ48、レジューサ49、フィードポンプ50、尿素水フィルタ51、尿素水流量計52及び噴射用電磁弁53等が設けられている。フィードポンプ50は、尿素水タンク46内の尿素水を吸い上げて尿素水噴射ノズル47に向けて吐出するためのものである。フィードポンプ50には電動モータ54が連結されている。後述するコントローラ55からインバータ56を経由した制御情報に基づき電動モータ54の回転駆動量を調節することにより、フィードポンプ50からの尿素水供給量を調節する構成になっている。噴射用電磁弁53は後述するコントローラ55に電気的に接続されていて、コントローラ55からの制御情報に基づいて開閉作動するように構成されている。
還元剤制御盤45は、制御手段としてのコントローラ55と、インバータ56と、温度調節器57と、後処理装置27の詰り状態を検出する詰り検出手段としての圧力センサ58とを備えている。コントローラ55は主として、排気ガス中のNOx濃度に応じた適切な量の尿素水を集合経路26に供給するように、フィードポンプ50と噴射用電磁弁53とを作動させるという還元剤調節制御を実行するものである。
詳細は図示しないが、コントローラ55は、各種演算処理や制御を実行するCPUの他、制御プログラムやデータを記憶させるためのROM、制御プログラムやデータを一時的に記憶させるためのRAM、及び入出力インターフェイス等を備えている。
コントローラ55には、インバータ56を介して電動モータ54に電気的に接続されている一方、温度調節器57を介して、集合経路26内の排気ガス温度を検出する温度センサ59が電気的に接続されている。また、コントローラ55には、発電機制御盤14の電力トランスデューサ15、燃料流量計20、尿素水流量計52、圧力センサ58、尿素水貯留量を検出する尿素水量センサ60、噴気用電磁弁42及び噴射用電磁弁53も電気的に接続されている。
詰り検出手段としての圧力センサ58は、前述した噴気ノズル37と同様に、後処理装置27の前部、具体的には、後述するNOx触媒62及びスリップ処理触媒63より上流側の部位に設けられている。実施形態では、後処理装置27内に煤塵が堆積していない新品状態でのNOx触媒62上流側の圧力(基準圧力値)を、コントローラ55のROM等に予め記憶させておき、同じ測定箇所における現在の圧力を圧力センサ58にて検出し、基準圧力値と圧力センサ58の検出値との圧力差を求め、当該圧力差に基づいて後処理装置27の煤塵堆積量が換算される。
そして、圧力差が設定値以上になると、コントローラ55からの指令にて噴気用電磁弁42が開き、気体供給源32から噴気ノズル37に圧縮気体が送られ、噴気ノズル37からNOx触媒62及びスリップ処理触媒63に向けて圧縮気体が吹き付けられることになる。なお、集合経路26のうち後処理装置27を挟んで上下流側に、それぞれ圧力センサを配置し、両者の検出値の差から後処理装置27の煤塵堆積量を換算するようにしてもよい。
集合経路26内の排気ガス温度を検出する温度センサ59は、集合経路26のうち尿素水噴射ノズル47と後処理装置27との間に設けられている。実施形態では、温度センサ59の検出温度が所定温度(例えば305℃)以上になると、コントローラ55からの指令にて噴射用電磁弁53が開き、フィードポンプ50の駆動にて尿素水タンク46から尿素水噴射ノズル47に尿素水が送られ、尿素水噴射ノズル47から集合経路26内に尿素水が噴射される。
尿素水貯留量を検出する尿素水量センサ60はフロート式のものであり、尿素水タンク46内に配置されている。この場合、尿素水量センサ60の上下高さ位置の変化に基づき、尿素水タンク46内の尿素水貯留量が検出される。
コントローラ55は、電力トランスデューサ15にて検出された発電電力量に基づき、インバータ56を介して電動モータ54の回転駆動量を調節して、フィードポンプ50からの尿素水供給量を調節するように構成されている。これは、排気ガス中のNOx濃度が、ディーゼル発電機11群の合計発電電力量(発電用エンジン12群の合計出力(又は合計負荷)でもよい)と比例関係にあるためである。従って、NOxの還元に必要な尿素水供給量(還元剤供給量)は、合計発電電力量、すなわち排気ガス中のNOx濃度に比例することになる。ここで、図示は省略するが、NOxの還元に必要な尿素水供給量と発電電力量との関係は、例えばマップ形式又は関数表形式にて、コントローラ55(例えばROM等)に予め記憶されている。
この場合、コントローラ55は、電力トランスデューサ15にて検出された合計発電電力量と、コントローラ55に予め記憶されたマップ又は関数表とから、NOxの還元に必要な尿素水供給量を求め、当該求められた供給量の尿素水を尿素水噴射ノズル47から適宜時間内に噴射するように電動モータ54を回転駆動させ、フィードポンプ50の作動量を調節している。
実施形態の電力トランスデューサ15はNOx検出手段に相当するものである。すなわち電力トランスデューサ15は発電機13群の合計発電電力量を検出し、当該電力トランスデューサ15の検出結果に基づき、排気ガス中のNOx濃度が間接的に求められるのである。なお、NOx検出手段は、電力トランスデューサ15に限らず、各発電用エンジン12の出力を検出するものでもよいし、燃料噴射量から各発電用エンジン12の負荷を検出するものでもよい。また、排気ガス中のNOx濃度を直接検出するものでもよい。
(6).後処理装置の構造
次に、図2及び図4〜図6を参照しながら、後処理装置27の構造について説明する。
後処理装置27は、略筒型に形成された耐熱金属材料製の後処理ケーシング61内に、上流側から順に、排気ガス中のNOxの還元を促進させるNOx触媒62と、余分に供給された還元剤(実施形態では加水分解後のアンモニア)の酸化処理を促進させるスリップ処理触媒63と、排気ガスの排気音を減衰させる消音器64とを直列に並べて収容したものである。各触媒62,63は、多孔質な(ろ過可能な)隔壁にて区画された多数個のセルからなるハニカム構造になっており、例えばアルミナ、ジルコニア、バナジア/チタニア又はゼオライト等の触媒金属を有している。
NOx触媒62は、尿素水噴射ノズル47からの尿素水の加水分解にて生じたアンモニアを還元剤として、排気ガス中のNOxを選択還元することにより、後処理装置27内に送られた排気ガスを浄化するものである。また、スリップ処理触媒63は、NOx触媒62から流出した未反応(余剰)のアンモニアを酸化して無害な窒素にするものである。この場合、後処理ケーシング61内では下記の反応式:
(NHCO+HO → 2NH+CO(加水分解)
NO+NO+2NH→ 2N+3HO(NOx触媒62での反応)
4NH+3O→ 2N+6HO(スリップ処理触媒63での反応)
が生ずることになる。
消音器64は後処理ケーシング61の後部側に形成されている。後処理ケーシング61の後部側は2枚の蓋板65,66にて塞がれていて、これら両蓋板65,66を略筒型の排出パイプ67が貫通している。排出パイプ67の出口側は後処理ケーシング61の出口に連通している。排出パイプ67における前後両蓋板65,66の間は閉鎖板68にて閉鎖されており、排出パイプ67のうち閉鎖板68を挟んで両側の周壁部には、それぞれ複数の連通穴69,70が形成されている。後処理ケーシング61における両蓋板65,66の間は、排出パイプ67内に複数の連通穴69,70を介して連通する共鳴室71になっている。
従って、排出パイプ67の上流側に入り込んだ排気ガスは、上流側の連通穴69、共鳴室71、下流側の連通穴70を介して排出パイプ67の下流側を通過し、後処理ケーシング61外に放出されることになる。
後処理ケーシング61のうちスリップ処理触媒63と前蓋板65との間には、バイパス経路29の出口側が接続されている。このため、図6(a)に示すように、集合側切換バルブ30を開いてバイパス側切換バルブ31を閉じると、集合経路26にてまとめられた排気ガスは、NOx触媒62及びスリップ処理触媒63を通過して浄化処理をされる。そして、浄化処理後の排出ガスは、排出パイプ67の上流側から、上流側の連通穴69、共鳴室71、下流側の連通穴70を経由して、排出パイプ67の下流側に入り、後処理ケーシング61外ひいては船舶1外に放出される。
また、図6(b)に示すように、バイパス側切換バルブ31を開いて集合側切換バルブ30を閉じると、集合経路26にてまとめられた排気ガスは、NOx触媒62及びスリップ処理触媒63を迂回して浄化処理をすることなく、排出パイプ67の上流側に入る。そして、排気ガスは、上流側の連通穴69、共鳴室71、下流側の連通穴70を経由して、排出パイプ67の下流側を通過し、後処理ケーシング61外ひいては船舶1外に放出される。
従って、両切換バルブ30,31の開閉状態の切換により、排気ガスの浄化処理が必要な場合(例えば規制海域内での航行中)と、浄化処理が不要な場合(例えば規制海域外での航行中)とにおいて、排気ガスの通過する経路を簡単に選択でき、排気ガスの効率よい処理が可能なのである。
(7).作用及び効果
以上の構成によると、各発電用エンジン12の排気経路25は1つの集合経路26に合流しているので、発電用エンジン12を複数台有する場合の排気構造を簡素化できる。また、集合経路26には、上流側から順に、還元剤供給部としての尿素水噴射ノズル47とNOx触媒62とが配置されており、電力トランスデューサ15にて検出された合計発電電力量から、排気ガス中のNOx濃度、ひいては、NOxの還元に必要な尿素水供給量(還元剤供給量)を把握するので、排気ガス中のNOx濃度に見合った量の尿素水を集合経路26に供給できる。従って、後処理装置27内のNOx触媒62の作用にて、排気ガス中のNOxを効率よく窒素と水とに分解できる。また、排気ガス中のNOx濃度に見合った量の尿素水を集合経路26に供給するので、未反応(過剰な量)のアンモニアを外部に放出するアンモニアスリップを抑制できる。
各排気経路25には、これを開閉する開閉部材として、空気作動式の開閉バルブ28が設けられているので、各発電用エンジン12の状態に応じてそれぞれ対応する開閉バルブ28を開閉することにより、集合経路26から停止中の発電用エンジン12に向けて排気ガスが逆流するのを簡単且つ確実に防止できる。
NOx触媒62を収容する後処理ケーシング61のうちNOx触媒62より上流側には、NOx触媒62に向けて気体供給源32からの圧縮気体を噴出する噴気部としての噴気ノズル37が設けられているから、当該噴気ノズル37の作用により、長期間の使用でNOx触媒62内に溜まった煤塵を強制的に除去できる。
NOx触媒62を収容する後処理ケーシング61内には、NOx触媒62より下流側に、余分に供給された還元剤(実施形態では加水分解後のアンモニア)の酸化処理を促すスリップ処理触媒63が配置されているから、NOx触媒62を未反応のまま通過しようとする余剰の還元剤(アンモニア)を、窒素に酸化処理して無害化でき、排気ガス中にアンモニアが残存するおそれを確実に回避できる。また、NOx触媒62とスリップ処理触媒63とをパッケージ化でき、排気構造の下流側をコンパクトに構成できる。
更に、NOx検出手段としての電力トランスデューサ15は発電機13群の合計発電電力量を検出し、当該電力トランスデューサ15の検出結果に基づき、排気ガス中のNOx濃度が間接的に求められる構成になっているから、NOx濃度検出専用のセンサが要らず、構成を簡素化して製造コストの低減に寄与できる。
実施形態では、集合経路26のうち最下流の排気経路25との合流部分と後処理装置27との間には、NOx触媒62を迂回するためのバイパス経路29が分岐接続されており、集合経路26のうちバイパス経路29への分岐部分より下流側と、バイパス経路29の入口側とには、これら各経路26,29を開閉する経路切換部材としての切換バルブ30,31が設けられているから、両切換バルブ30,31の開閉状態の切換により、排気ガスの浄化処理が必要な場合(例えば規制海域内での航行中)と、浄化処理が不要な場合(例えば規制海域外での航行中)とにおいて、排気ガスの通過する経路を簡単に選択でき、排気ガスの効率よい処理が可能である。
NOx触媒62を収容する後処理ケーシング61には、排気ガスの排気音を減衰させるための消音器64を備えているから、NOx触媒62、スリップ処理触媒63及び消音器64を単一の後処理ケーシング61にパッケージ化でき、排気構造の下流側をコンパクトに構成できる。
また、バイパス経路29の出口側は、後処理ケーシング61の消音器64に連通接続されているから、NOx触媒62及びスリップ処理触媒63を通過して浄化された排気ガスと、NOx触媒62及びスリップ処理触媒63を迂回してバイパス経路29を経由した排気ガスとを、同じ消音器64に送り込めることになる。従って、排気構造を簡単化して製造コストの低減に寄与できるのである。
上記の記載並びに図2及び図4から明らかなように、船舶(1)に搭載したエンジン(12)からの排気ガス中にあるNOxを取り除くための後処理装置(27)を、前記エンジン(12)の排気経路(25)に備えている船舶搭載用の排気ガス浄化装置において、前記排気経路(25)のうち前記後処理装置(27)の上流側からバイパス経路(29)を分岐させ、前記分岐部分と前記後処理装置(27)との間並びに前記バイパス経路(29)の入口側に、切換バルブ(30)(31)を設けているから、前記切換バルブ(30)(31)によって、排気ガスの浄化処理が必要なNOx排出の規制海域内での航行中と、浄化処理が不要なNOx排出の規制海域外での航行中とにおいて、排気ガスの通過する経路(25)(29)を簡単に選択でき、浄化処理の要不要に応じて排気ガスを効率よく処理できる。また、前記バイパス経路(29)及び前記切換バルブ(30)(31)の存在によって、前記排気経路(25)の完全閉塞のおそれを格段に低減できる。
また、前記後処理装置(27)の下流側に前記バイパス経路(29)の出口側を接続しているから、前記排気経路(25)と前記バイパス経路(29)との両方を前記船舶(1)のファンネル(煙突)まで延長させる必要がなく、前記後処理装置(27)よりも下流側の排気構造を簡素化でき、コスト低減に寄与する。
更に、前記排気経路(25)において前記切換バルブ(30)と前記後処理装置(27)との間に、前記排気ガスにNOx還元用の還元剤を供給する還元剤供給部(47)を設けているから、前記還元剤供給部(47)からの還元剤が前記バイパス経路(29)側に漏れ出すおそれがない。すなわち、未使用の還元剤が前記バイパス経路(29)経由で船外に漏れ出すおそれを確実に防止できる。
なお、各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。
1 船舶
10 発電装置
11 ディーゼル発電機
12 発電用ディーゼルエンジン
13 発電機
14 発電機制御盤
15 電力トランスデューサ
25 排気経路
26 集合経路
27 後処理装置
28 開閉バルブ
29 バイパス経路
30 集合側切換バルブ
31 バイパス側切換バルブ
32 気体供給源
42 噴気用電磁弁
43 還元剤供給装置
44 還元剤供給通路
45 還元剤制御盤
46 尿素水タンク
47 尿素水噴射ノズル
50 フィードポンプ
53 噴射用電磁弁
54 電動モータ
55 制御手段としてのコントローラ
58 圧力センサ
59 温度センサ
61 後処理ケーシング
62 NOx触媒
63 スリップ処理触媒
64 消音器

Claims (1)

  1. 船舶に搭載したエンジンからの排気ガス中にあるNOxを取り除くための後処理装置を、前記エンジンの排気経路に備えている船舶搭載用の排気ガス浄化装置において、
    気体供給源(32)からの圧縮気体を吹き付ける噴気ノズル(37)が、前記後処理装置(27)の前部に設けられており、前記噴気ノズル(37)からの圧縮気体により前記後処理装置(27)内に溜まった煤塵を強制的に除去し、
    前記排気経路のうち前記後処理装置の上流側からバイパス経路を分岐させ、前記分岐部分と前記後処理装置との間並びに前記バイパス経路の入口側に、切換バルブを設け、
    前記後処理装置(27)を構成する後処理ケーシング(61)に前記バイパス経路(29)の出口側を接続し、前記バイパス経路(29)の出口側からの排気ガスを前記後処理ケーシング(61)に導入してから前記後処理ケーシング(61)外に排出するように構成しており、
    前記後処理ケーシング(61)内に、排気ガス中のNOxの還元を促進させるNOx触媒(62)および残存還元剤の酸化処理を促進させるスリップ処理触媒(63)を配置し、前記NOx触媒(62)および前記スリップ処理触媒(63)の下流側に前記バイパス経路(29)の出口側を接続し、
    前記噴気ノズル(37)が、前記NOx触媒(62)より上流側の部位に設けられて、気体供給源(32)から送られた圧縮気体が、前記噴気ノズル(37)から前記NOx触媒(62)に向けて圧縮気体が吹き付けられることを特徴とする船舶搭載用の排気ガス浄化装置。
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