JP6113554B2 - 電界シールド結晶性熱可塑性樹脂成形品及びその製造方法、並びに電界シールド結晶性熱可塑性樹脂成形品を有する輸送機用電子機器の筐体 - Google Patents

電界シールド結晶性熱可塑性樹脂成形品及びその製造方法、並びに電界シールド結晶性熱可塑性樹脂成形品を有する輸送機用電子機器の筐体 Download PDF

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Description

本発明は、電界シールド結晶性熱可塑性樹脂成形品及びその製造方法、並びに電界シールド結晶性熱可塑性樹脂成形品を有する輸送機用電子機器の筐体に関する。
近年、パソコン、OA機器、AV機器、携帯電話、電話機、ファクシミリ、家電製品、玩具用品、フラットパネルディスプレイ等のほか、自動車、鉄道車両、航空機といった輸送機用電子機器に例示される電子機器の誤作動防止のため、高い電界シールド性を有する電波遮蔽材を筐体として用いられつつある。中でも、輸送機で用いられる電子機器による電波ノイズは、比較的低い周波数帯であるAM・FMラジオ(0.3〜30MHz)の音声障害やデジタルTV放送(440〜710MHz)の視聴障害を引き起こす原因とも見られており、電界シールド性を高めることが望まれている。また、燃費向上の観点から、輸送機における電波遮蔽材については、軽量化も求められている。
この点から、樹脂材料からなる電波遮蔽材のニーズが高まっている。一例として、熱可塑性樹脂組成物又は熱硬化性樹脂組成物からなる筐体部品上に、レーザー照射によって炭化物層を形成し、その炭化物層の一部又は全部をアースにつなぐ事でシールド特性を発現することが提案されている(特許文献1参照)。
特開2003−238712号公報
しかしながら、特許文献1で用いられる樹脂材料は変性ポニフェニレンエーテル(変性PPE)であるため、充分な難燃性を有し得るものの、耐薬品性(ガソリン、軽油、オイル、グリース等)、耐熱性に重要な課題を有する。さらに、変性PPE等の非晶性ポリマーを主成分とするアロイは、流動性が悪く、成形性に課題を有する。
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、耐薬品性、耐熱性を有する難燃性の電界シールド結晶性熱可塑性樹脂成形品を提供することである。
本発明者らは、上記のような課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、難燃性の結晶性熱可塑性樹脂を含有する熱可塑性樹脂組成物の成形品の表面に電磁波を照射することで、広角X回折法に基づくX線回折スペクトルにおけるブラッグ角(2θ)25〜27°に回折ピークを有する炭化物が形成され、その結果、耐薬品性、耐熱性を有する難燃性の電界シールド結晶性熱可塑性樹脂成形品を提供できることを見出した。具体的に、本発明は以下のものを提供する。
(1)本発明は、試験片の厚みが1.6mmであるときのUL94燃焼性試験に準拠した難燃性がV−1以上である難燃性の結晶性熱可塑性樹脂を含有する結晶性熱可塑性樹脂組成物の成形品であり、表面に電磁波の照射により、広角X回折法に基づくX線回折スペクトルにおけるブラッグ角(2θ)25〜27°に回折ピークを有する炭化物層が形成され、周波数が1GHz以下である電磁波に対するアドバンテスト法又はKEC法、又は周波数が1GHz以上18GHz以下である電磁波に対する同軸管法による電界シールド性が3dB以上である電界シールド結晶性熱可塑性樹脂成形品である。
(2)また、本発明は、前記難燃性の結晶性熱可塑性樹脂が難燃性の結晶性芳香族ポリマーである、(1)に記載の電界シールド結晶性熱可塑性樹脂成形品である。
(3)また、本発明は、前記難燃性の結晶性芳香族ポリマーが分子中に硫黄原子及び/又は酸素原子を有する、(2)に記載の電界シールド結晶性熱可塑性樹脂成形品である。
(4)また、本発明は、前記難燃性の結晶性芳香族ポリマーがポリアリーレンスルフィド及び/又はポリアルキレンアリレートである、(2)又は(3)に記載の電界シールド結晶性熱可塑性樹脂成形品である。
(5)また、本発明は、前記難燃性の結晶性芳香族ポリマーがポリアリーレンスルフィドである場合、該ポリアリーレンスルフィドはポリフェニレンスルフィドであり、前記結晶性芳香族ポリマーがポリアルキレンアリレートである場合、該ポリアルキレンアリレートはポリブチレンテレフタレートである、(4)に記載の電界シールド結晶性熱可塑性樹脂成形品である。
(6)また、本発明は、前記難燃性の結晶性芳香族ポリマーが前記ポリアリーレンスルフィド又は前記ポリアルキレンアリレートをベースにしたポリマーアロイである、(4)又は(5)に記載の電界シールド結晶性熱可塑性樹脂成形品である。
(7)また、本発明は、前記結晶性熱可塑性樹脂組成物が電磁波吸収剤をさらに含有し、前記電磁波吸収剤がカーボンブラック、カーボンファイバー又はグラファイトから選択される少なくとも1種である、(1)から(6)のいずれかに記載の電界シールド結晶性熱可塑性樹脂成形品である。
(8)また、本発明は、前記結晶性熱可塑性樹脂組成物は難燃剤及び/又は難燃助剤をさらに含有する、(1)から(7)のいずれかに記載の電界シールド結晶性熱可塑性樹脂成形品である。
(9)また、本発明は、前記結晶性熱可塑性樹脂組成物が前記難燃剤をさらに含有する場合、該難燃剤はリン系難燃剤及び/又はハロゲン系難燃剤である、(8)に記載の電界シールド結晶性熱可塑性樹脂成形品である。
(10)また、本発明は、前記難燃剤がリン系難燃剤である場合、該リン系難燃剤はジアルキルホスフィン酸金属塩であり、前記難燃剤がハロゲン系難燃剤である場合、該ハロゲン系難燃剤はハロゲン化芳香族ビスイミド、ハロゲン化ベンジルアクリレート、ハロゲン化ポリスチレン、ハロゲン化ポリカーボネート又はハロゲン化芳香族エポキシから選ばれる少なくとも1種である、(9)に記載の電界シールド結晶性熱可塑性樹脂成形品である。
(11)また、本発明は、前記結晶性熱可塑性樹脂組成物が前記難燃助剤をさらに含有する場合、該難燃助剤は金属酸化物、窒素含有化合物又は芳香族樹脂から選択される少なくとも1種である、(8)に記載の電界シールド結晶性熱可塑性樹脂成形品である。
(12)また、本発明は、前記難燃助剤が金属酸化物である場合、該金属酸化物は、アンチモン化合物、ホウ酸化合物又はスズ化合物から選択される少なくとも1種であり、前記難燃助剤が窒素含有化合物である場合、該窒素含有化合物は、メラミン、メラム、メレム、メロン、メラミンシアヌレート、メラミンホスフェート、メラミンポリホスフェート、メラミン・メラム・メレムポリホスフェート複塩から選択される少なくとも1種であり、前記難燃助剤が芳香族樹脂である場合、該芳香族樹脂は、ノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂から選択される少なくとも1種である、(11)に記載の電界シールド結晶性熱可塑性樹脂成形品である。
(13)また、本発明は、前記電磁波がレーザー光である、(1)から(12)のいずれかに記載の電界シールド結晶性熱可塑性樹脂成形品である。
(14)また、本発明は、射出成形品又は押出成形品である、(1)から(13)のいずれかに記載の電界シールド結晶性熱可塑性樹脂成形品である。
(15)また、本発明は、(1)から(14)のいずれかに記載の電界シールド結晶性熱可塑性樹脂成形品を有する、輸送機用電子機器の筐体である。
(16)また、本発明は、試験片の厚みが1.6mmであるときのUL94燃焼性試験に準拠した難燃性がV−1以上である難燃性の結晶性熱可塑性樹脂を含有する結晶性熱可塑性樹脂組成物の成形品の表面に電磁波を照射して、広角X回折法に基づくX線回折スペクトルにおけるブラッグ角(2θ)25〜27°に回折ピークを有する炭化物を形成する電磁波照射工程を含む、電界シールド結晶性熱可塑性樹脂成形品の製造方法である。
(17)また、本発明は、前記電磁波照射工程では、中心周波数が1kHz以上のレーザー光を前記成形品の表面に1回以上照射し、その後、中心周波数が0kHzの連続波のレーザー光を前記成形品の表面に複数回照射する、(16)に記載の電界シールド性樹脂成形品の製造方法。
(18)また、本発明は、前記電磁波照射工程の後、前記結晶性熱可塑性樹脂組成物の成形品の表面全体を弱いエネルギーのレーザー光で徐々に焼き付け又は溶融する、(16)又は(17)に記載の電界シールド性樹脂成形品の製造方法。
本発明によると、耐薬品性、耐熱性を有する難燃性の電界シールド結晶性熱可塑性樹脂成形品を提供できる。
実施例1〜3及び比較例1〜3に係る電界シールド性樹脂成形品のアドバンテスト法による周波数と電界シールド性との関係を示す図である。 実施例4〜6及び比較例4〜6に係る電界シールド性樹脂成形品のアドバンテスト法による周波数と電界シールド性との関係を示す図である。 実施例1,3及び比較例1,3に係る電界シールド性樹脂成形品のKEC法による周波数と電界シールド性との関係を示す図である。 実施例5及び比較例5に係る電界シールド性樹脂成形品のKEC法による周波数と電界シールド性との関係を示す図である。 実施例1,3及び比較例1,3に係る電界シールド性樹脂成形品の同軸管法による周波数と電界シールド性との関係を示す図である。 実施例5及び比較例5に係る電界シールド性樹脂成形品の同軸管法による周波数と電界シールド性との関係を示す図である。 実施例2に係る電界シールド性樹脂成形品の平面写真及び拡大写真である。 比較例7に係る電界シールド性樹脂成形品の拡大写真である。 レーザー光による後処理前後の電界シールド性樹脂成形体のSEM写真を示す。 実施例21及び22に係る広角X回折法に基づくX線回折スペクトルである。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
<電界シールド結晶性熱可塑性樹脂成形品>
本発明の電界シールド結晶性熱可塑性樹脂成形品は、難燃性の結晶性熱可塑性樹脂を含有する熱可塑性の結晶性熱可塑性樹脂組成物の成形品であり、表面に電磁波の照射による広角X回折法に基づく特定のX線回折ピークを有する炭化物層が形成されている。
[結晶性熱可塑性樹脂組成物]
〔難燃性の結晶性熱可塑性樹脂〕
本明細書において、難燃性とは、試験片の厚みが1.6mmであるときのUL94燃焼性試験に準拠した難燃性がV−1以上であることをいうものとする。樹脂の難燃性がV−1未満である場合、信頼性が低下する可能性があるため、好ましくない。また、樹脂が、UL94燃焼性試験に準拠した遅燃性を有する場合、樹脂成形品の表面に電磁波を照射したとしても、樹脂成形品の表面を充分に炭化できず、その結果、充分な電界シールド性を有さない可能性があるため、好ましくない。
また、樹脂が熱可塑性を有する。樹脂が熱硬化性樹脂である場合、生産性、リサイクル性が低下するため、好ましくない。
また、樹脂は結晶性を有する。樹脂が非晶性である場合、耐薬品性、耐熱性、成形性が劣るため、好ましくない。
樹脂は、難燃性、熱可塑性及び結晶性を有するものであれば特に限定されるものではないが、分子内にベンゼン環を有する芳香族ポリマーであることが好ましい。該芳香族ポリマーを用いることで、樹脂成形品の表面に炭化物層を効率よく形成できる。なお、本明細書では、分子内に、ベンゼン環上の重合に寄与しない部位が置換された芳香族化合物を有するポリマーであっても「分子内にベンゼン環を有する芳香族ポリマー」に該当するものとする。また、分子内に、ナフタレン環、アントラセン環のような多環構造を有するポリマーであっても「分子内にベンゼン環を有する芳香族ポリマー」に該当するものとする。
耐熱性の観点から、芳香族ポリマーは、分子中に硫黄原子及び/又は酸素原子を有する結晶性芳香族ポリマーであることが好ましい。
そして、成形性の観点から、芳香族ポリマーは、ポリアリーレンスルフィド又はポリアルキレンアリレートであることが好ましい。芳香族ポリマーがポリアリーレンスルフィドである場合、該ポリアリーレンスルフィドはポリフェニレンスルフィドであることが好ましい。また、芳香族ポリマーがポリアルキレンアリレートである場合、該ポリアルキレンアリレートはポリブチレンテレフタレートであることが好ましい。
また、難燃性の観点から、芳香族ポリマーは、ポリアリーレンスルフィド又はポリアルキレンアリレートをベースにしたポリマーアロイであることが好ましい。
難燃性の結晶性熱可塑性樹脂熱可塑性樹脂の配合量は、結晶性熱可塑性樹脂組成物100重量部に対し、10重量部以上であることが好ましい。10重量部未満であるとV−1以上の難燃性を達成できない可能性があり、好ましくない。
〔電磁波吸収剤〕
必須ではないが、結晶性熱可塑性樹脂組成物は、電磁波吸収剤をさらに含有してもよい。電磁波吸収剤をさらに含有する場合、結晶性熱可塑性樹脂組成物の成形品の表面に電磁波を照射したときに、より良好な炭化物層が形成でき、その結果、充分な電界バリア性を得られる点で好ましい。
電磁波吸収剤の具体例として、カーボンブラック、カーボンファイバー又はグラファイト等が挙げられる。これらの炭化物は導電性を有するため、その結果、結晶性熱可塑性樹脂組成物の成形品の表面に電磁波を照射すると、電磁波吸収剤が好適に結晶性樹脂の炭化を促進し、良好な炭化物層が形成される結果、充分な電界バリア性が得られる。
電磁波吸収剤がカーボンブラックである場合、カーボンブラックの種類は特に限定されない。SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT、アセチレンブラック等、いずれのカーボンブラックであっても良い。すなわち、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック等、いずれの製法のものでも良く、またガスブラック、オイルブラック、アセチレンブラック等、いずれの原料のものであってもよい。
電磁波吸収剤を加える場合、電磁波吸収剤の添加による有意な効果を得るためには、電磁波吸収剤の配合量を、結晶性熱可塑性樹脂組成物100重量部に対し0.1重量部以上10重量部以下にすることが好ましく、0.3重量部以上3重量部以下にすることがより好ましい。0.1重量部未満であると、電磁波吸収剤の添加による有意な電界バリア性を得られない可能性がある。10重量部を超えると、難燃性の結晶性熱可塑性樹脂熱可塑性樹脂の配合量が少なすぎるために、物性低下する可能性があるため、好ましくない。
〔難燃剤及び/又は難燃助剤〕
また、炭化物層を好適に形成するため、結晶性熱可塑性樹脂組成物は、難燃剤及び/又は難燃助剤をさらに含有することが好ましい。
((難燃剤))
電界シールド結晶性熱可塑性樹脂成形品が難燃剤を含有するものである場合、難燃付与性能の観点から、難燃剤はリン系難燃剤及び/又はハロゲン系難燃剤であることが好ましい。
(リン系難燃剤)
難燃剤がリン系難燃剤である場合、該リン系難燃剤の例として、有機ホスフィン酸又はその塩が挙げられる(以下、「有機ホスフィン酸化合物」ともいう。)。
有機ホスフィン酸化合物として、ホスフィン酸又はホスフィン酸が縮合したビスホスフィン酸に、有機基(置換基を有していてもよい炭化水素基等)が置換した有機基置換ホスフィン酸、多価ホスフィン酸(多価有機基で複数のホスフィン酸が連結された多価ホスフィン酸等)、又はその塩[金属、ホウ素、アンモニウム及び塩基性窒素含有化合物から選択された少なくとも一種の塩形成成分との塩(金属塩、ホウ素塩(ボリル化合物等)、アンモニウム塩、アミノ基含有窒素含有化合物との塩等)等]等が挙げられる。
耐熱性の観点から、有機ホスフィン酸は、下記一般式(1)で表される有機ホスフィン酸(ビスホスフィン酸等)であることが好ましい。
一般式(1)において、R及びRで表される炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基[アルキル基(メチル、エチル、t−ブチル基等の直鎖状又は分岐鎖状C1−20アルキル基等)、アルケニル基(ビニル、アリル、イソプロペニル基等の直鎖状又は分岐鎖状C2−20アルケニル基等)等]、脂環族炭化水素基[シクロアルキル基(シクロヘキシル基等のC5−10シクロアルキル基等)等]、芳香族炭化水素基[アリール基(フェニル基等のC6−10アリール基等)、アラルキル基(ベンジル基等のC6−10アリール−C1−4アルキル基等)等]等が挙げられる。
及びRが結合して隣接するリン原子と共に形成する環は、環を構成するヘテロ原子として前記リン原子を有するヘテロ環(リン原子含有ヘテロ環)であり、通常、4〜20員ヘテロ環、好ましくは5〜16員ヘテロ環が挙げられる。また、前記リン原子含有ヘテロ環は、ビシクロ環であってもよい。前記リン原子含有ヘテロ環は、環内に、不飽和基(アルケニレン基、アルキニレン基等)及び/又は置換基を有していてもよい。
前記炭化水素基及びリン原子含有ヘテロ環が有する置換基としては、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素原子等)、アルキル基(メチル、エチル、t−ブチル基等の直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキル基等)、アルケニル基(ビニル基等の直鎖状又は分岐鎖状C2−6アルケニル基等)、前記例示のシクロアルキル基、前記例示のアリール基、前記例示のアラルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基(メトキシ、エトキシ基等の直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルコキシ基等)、カルボキシル基、アシル基(アセチル基等のC2−6アシル基等)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基等のC1−4アルコキシ−カルボニル基等)、アミノ基、N−置換アミノ基(メチルアミノ基、ジメチルアミノ基等のアルキルアミノ基等)、ニトロ基、シアノ基、オキソ基(=O)等が挙げられる。炭化水素及びリン原子含有ヘテロ環は、前記置換基を1つ有していてもよく、同種又は異種の置換基を複数個有していてもよい。
前記有機ホスフィン酸(1)には、例えば、下記式(1a)及び(1b)等の化合物が含まれる。
式中、環Z及びZは同一であっても異なっていてもよく、リン原子を環の構成原子として含む4〜10員環を示し、前記置換基を有してもよい。R及びRは前記と同じである。なお、前記環Z、及び環Zと環Zとで構成されるビシクロ環は、前記式(1)において、R及びRが隣接するリン原子と共に形成する環(リン原子含有ヘテロ環)に対応する。
環Z及びZの員数は、好ましくは4〜8員、さらに好ましくは5〜6員程度であってもよい。また、ヘテロ環Z及びZでは、ヘテロ環は、1〜2個の炭素−炭素不飽和結合を有していてもよい。
前記式(1a)において、R及びRは、置換基(ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基等)を有していてもよいアルキル基(C1−16アルキル基等)であるのが好ましい。
有機ホスフィン酸塩を形成する金属としては、周期表第1族金属(アルカリ金属)(カリウム、ナトリウム等)、周期表第2族金属(アルカリ土類金属)(マグネシウム、カルシウム、バリウム等)、周期表第4族金属(チタン、ジルコニウム等)、遷移金属(マンガン等の周期表第7族金属;鉄等の周期表第8族金属;コバルト等の周期表第9族金属;ニッケル等の周期表第10族金属;銅等の周期表第11族金属等)、亜鉛等の周期表第12族金属、アルミニウム等の周期表第13族金属等が挙げられる。これらの金属は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの金属のうち、周期表第1族金属、第2族金属、第4族金属、第8族金属、第12族金属及び第13族金属から選択された少なくとも一種、特に、周期表第2族金属及び/又は周期表第13族金属が好ましい。金属塩は、含水塩、例えば、含水マグネシウム塩、含水カルシウム塩、含水アルミニウム塩、含水亜鉛塩等であってもよい。また、金属塩には、金属が部分的に酸化された塩(例えば、チタニル塩、ジルコニル塩等)も含まれる。
また、塩を形成する塩基性窒素含有化合物としては、例えば、アミノ基を有する窒素含有化合物[アミノトリアジン化合物(メラミン、グアナミン、ベンゾグアナミン及び/又はその縮合物(メラム、メレム、メロン等のメラミン縮合物等)等)、グアニジン化合物(グアニジン等)等]、尿素化合物(尿素等)等が挙げられる。塩基性窒素含有化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの窒素含有化合物のうち、特に、アミノトリアジン化合物(メラミン、メラミン縮合物等)が好ましい。
これらの塩形成成分は、単独で又は二種以上組合せて使用できる。有機ホスフィン酸塩には、有機ホスフィン酸と複数種の塩形成成分との複塩、例えば、メラミン・メラム・メレム複塩、メラミン・メラム・メレム・メロン複塩等も含まれる。
有機ホスフィン酸化合物の具体例としては、前記式(1a)で表される有機ホスフィン酸又はその塩、例えば、置換基を有していてもよいアルキルホスフィン酸[ジアルキルホスフィン酸類(ジC1−10アルキルホスフィン酸等)、例えば、ジメチルホスフィン酸、メチルエチルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、エチル(n−、イソ−又はt−)ブチルホスフィン酸、ジn−プロピルホスフィン酸、ジイソプロピルホスフィン酸、ジn−ブチルホスフィン酸、ジイソブチルホスフィン酸、ジt−ブチルホスフィン酸、ジペンチルホスフィン酸、ジオクチルホスフィン酸等のジアルキルホスフィン酸;(ヒドロキシメチル)メチルホスフィン酸、(ヒドロキシエチル)メチルホスフィン酸、ビス(ヒドロキシメチル)ホスフィン酸、ビス(ヒドロキシエチル)ホスフィン酸等のヒドロキシル基含有ジアルキルホスフィン酸;(2−カルボキシエチル)メチルホスフィン酸等のカルボキシル基含有ジアルキルホスフィン酸;(メトキシメチル)メチルホスフィン酸等のアルコキシ基含有ジアルキルホスフィン酸等]、アリールホスフィン酸[フェニルホスフィン酸等のC6−10アリールホスフィン酸;ジフェニルホスフィン酸等のジC6−10アリールホスフィン酸等]、アルキルアリールホスフィン酸(メチルフェニルホスフィン酸等のC1−4アルキル−C6−10アリール−ホスフィン酸等)、及びこれらの有機ホスフィン酸の塩(ジメチルホスフィン酸Ca塩、メチルエチルホスフィン酸Ca塩、ジエチルホスフィン酸Ca塩、ジ(n−又はイソ−)プロピルホスフィン酸Ca塩、ジ(n−、イソ−又はt−)ブチルホスフィン酸Ca塩、エチル(n−又はイソ−)プロピルホスフィン酸Ca塩、エチル(n−、イソ−又はt−)ブチルホスフィン酸Ca塩、ジ(n−、イソ−又はt−)ブチルホスフィン酸Ca塩、ジペンチルホスフィン酸Ca塩、ジオクチルホスフィン酸Ca塩、(2−カルボキシエチル)メチルホスフィン酸Ca塩及びこれらのカルシウム塩に対応するMg塩等のアルカリ土類金属塩;ジメチルホスフィン酸Al塩、メチルエチルホスフィン酸Al塩、ジエチルホスフィン酸Al塩、ジ(n−又はイソ−)プロピルホスフィン酸Al塩、ジ(n−、イソ−又はt−)ブチルホスフィン酸Al塩、エチル(n−又はイソ−)プロピルホスフィン酸Al塩、エチル(n−、イソ−又はt−)ブチルホスフィン酸Al塩、ジペンチルホスフィン酸Al塩、ジオクチルホスフィン酸Al塩、(2−カルボキシエチル)メチルホスフィン酸Al塩等のアルミニウム塩;ジメチルホスフィン酸Ti塩、メチルエチルホスフィン酸Ti塩、ジエチルホスフィン酸Ti塩、ジ(n−又はイソ−)プロピルホスフィン酸Ti塩、ジ(n−、イソ−又はt−)ブチルホスフィン酸Ti塩、エチル(n−又はイソ−)プロピルホスフィン酸Ti塩、エチル(n−、イソ−又はt−)ブチルホスフィン酸Ti塩、ジペンチルホスフィン酸Ti塩、ジオクチルホスフィン酸Ti塩、(2−カルボキシエチル)メチルホスフィン酸Ti塩及びこれらの塩に対応するチタニル塩等のチタン塩;ジメチルホスフィン酸Zn塩、ジエチルホスフィン酸Zn塩、メチルエチルホスフィン酸Zn塩、ジ(n−又はイソ−)プロピルホスフィン酸Zn塩、ジ(n−、イソ−又はt−)ブチルホスフィン酸Zn塩、エチル(n−又はイソ−)プロピルホスフィン酸Zn塩、エチル(n−、イソ−又はt−)ブチルホスフィン酸Zn塩、ジペンチルホスフィン酸Zn塩、ジオクチルホスフィン酸Zn塩、(2−カルボキシエチル)メチルホスフィン酸Zn塩等の亜鉛塩;ジメチルホスフィン酸メラミン塩、メチルエチルホスフィン酸メラミン塩、ジエチルホスフィン酸メラミン塩、ジ(n−又はイソ−)プロピルホスフィン酸メラミン塩、ジ(n−、イソ−又はt−)ブチルホスフィン酸メラミン塩、エチル(n−又はイソ−)プロピルホスフィン酸メラミン塩、エチル(n−、イソ−又はt−)ブチルホスフィン酸メラミン塩、ジペンチルホスフィン酸メラミン塩、ジオクチルホスフィン酸メラミン塩、(2−カルボキシエチル)メチルホスフィン酸メラミン塩、これらのメラミン塩に対応するメラミン・メラム・メレム複塩等のアミノトリアジン化合物との塩等)等が挙げられる。
また、有機ホスフィン酸化合物の具体例としては、前記式(1b)で表される有機ホスフィン酸又はその塩、例えば、1−ヒドロキシ−1H−ホスホラン−1−オキシド、2−カルボキシ−1−ヒドロキシ−1H−ホスホラン−1−オキシド等の置換基を有していてもよいアルキレンホスフィン酸(C3−8アルキレンホスフィン酸等);1−ヒドロキシホスホラン−1−オキシド等の置換基を有していてもよいアルケニレンホスフィン酸(C3−8アルケニレンホスフィン酸等);1,3−シクロブチレンホスフィン酸、1,3−シクロペンチレンホスフィン酸、1,4−シクロオクチレンホスフィン酸、1,5−シクロオクチレンホスフィン酸等のシクロアルキレンホスフィン酸(C4−10シクロアルキレンホスフィン酸等);又はこれらの塩(1−ヒドロキシ−1H−ホスホラン−1−オキシドのアルカリ土類金属塩(Ca塩、Mg塩等)、Al塩、Ti塩、チタニル塩、Zn塩等の金属塩;メラミン塩、メラミン・メラム・メレム複塩等のアミノトリアジン塩等)等が挙げられる。
また、好ましい有機ホスフィン酸化合物のうち、前記多価ホスフィン酸の具体例としては、複数のホスフィン酸(又は有機ホスフィン酸)が多価有機基で連結された多価ホスフィン酸、例えば、アルカンビスホスフィン酸[エタン−1,2−ビス(ホスフィン酸)等のC1−10アルカンビス(ホスフィン酸)等]、アルカンビス(アルキルホスフィン酸)[エタン−1,2−ビス(メチルホスフィン酸)等のC1−10アルカンビス(C1−6アルキルホスフィン酸)等]、又はこれらの塩等が挙げられる。塩としては、エタン−1,2−ビスホスフィン酸Ca塩、エタン−1,2−ビス(メチルホスフィン酸)のCa塩、Mg塩、Al塩、Zn塩、Ti塩、又はチタニル塩等の金属塩;エタン−1,2−ビスホスフィン酸メラミン塩、エタン−1,2−ビス(メチルホスフィン酸)メラミン塩、メラム塩、メレム塩、メラミン・メラム・メレム複塩等の窒素含有化合物との塩等が挙げられる。
有機ホスフィン酸塩の具体例として、例えば、特開昭55−5979号公報、特開平8−73720号公報、特開平9−278784号公報、特開平11−236392号公報、特開2001−2686号公報、特開2004−238378号公報、特開2004−269526号公報、特開2004−269884号公報、特開2004−346325号公報、特表2001−513784号公報、特表2001−525327号公報、特表2001−525328号公報、特表2001−525329号公報、特表2001−540224号公報、米国特許第4180495号明細書、米国特許第4208321号明細書、米国特許第4208322号明細書、米国特許第6229044号明細書、米国特許第6303674号明細書に記載されている化合物が挙げられる。
中でも、優れた難燃性付与能、熱安定性、耐ブルーミング性、比較トラッキング指数(comparative tracking index:CTI)の観点から、リン系難燃剤はジアルキルホスフィン酸金属塩であることが好ましい。
(ハロゲン系難燃剤)
難燃剤がハロゲン系難燃剤である場合、その種類は特に限定されるものではないが、例えば、有機ハロゲン化物が挙げられる。有機ハロゲン化物は、通常、塩素、臭素及びヨウ素原子から選択された少なくとも一種のハロゲン原子を含有する。
ハロゲン系難燃剤としては、例えば、ハロゲン含有アクリル系樹脂[ハロゲン化ポリベンジル(メタ)アクリレート系樹脂、例えば、ポリ(ペンタブロモベンジル(メタ)アクリレート)等の臭素化ポリベンジル(メタ)アクリレート、ポリ(ペンタクロロベンジル(メタ)アクリレート)等のハロゲン化ベンジル(メタ)アクリレートの単独又は共重合体等]、ハロゲン含有スチレン系樹脂[ハロゲン化ポリスチレン(臭素化ポリスチレン、塩素化ポリスチレン等のスチレン系樹脂をハロゲン化処理したハロゲン化物、ハロゲン化スチレン系単量体の単独又は共重合体等)等]、ハロゲン含有ポリカーボネート系樹脂(臭素化ポリカーボネート、塩素化ポリカーボネート等ハロゲン化ポリカーボネート等)、ハロゲン含有エポキシ化合物(臭素化エポキシ樹脂、塩素化エポキシ樹脂等のハロゲン化エポキシ樹脂;臭素化フェノキシ樹脂等のハロゲン化フェノキシ樹脂等)、ハロゲン含有リン酸エステル[例えば、トリス(ブロモエチル)ホスフェート、トリス(モノ又はジブロモプロピル)ホスフェート、トリス(モノ又はジブロモブチル)ホスフェート、トリス(モノ乃至トリブロモネオペンチル)ホスフェート、ビス(トリブロモネオペンチル)フェニルホスフェート、トリス(モノ乃至トリブロモフェニル)ホスフェート等の臭素含有リン酸エステル等]、ハロゲン含有トリアジン化合物(例えば、トリス(トリブロモフェノキシ)トリアジン等の臭素含有トリアジン化合物等)、ハロゲン含有イソシアヌル酸化合物[例えば、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート、トリス(2,3,4−トリブロモブチル)イソシアヌレート、トリス(ペンタブロモベンジル)イソシアヌレート等の臭素含有イソシアヌル酸化合物等]、ハロゲン化ポリアリールエーテル化合物[例えば、オクタ乃至デカブロモジフェニルエーテル、オクタ乃至デカクロロジフェニルエーテル等のビス(ハロゲン化アリール)エーテル(例えば、ビス(ハロゲン化フェニル)エーテル等);臭素化ポリフェニレンエーテル等のハロゲン含有ポリフェニレンオキシド系樹脂等]、ハロゲン化芳香族イミド化合物[例えば、エチレンビス臭素化フタルイミド等の臭素化芳香族イミド化合物(例えば、ビスイミド化合物等)等]、ハロゲン化ビスアリール化合物[例えば、臭素化ジフェニル等のビス(ハロゲン化C6−10アリール);臭素化ジフェニルメタン等のビス(ハロゲン化C6−10アリール)C1−4アルカン;臭素化ビスフェノールA等のハロゲン化ビスフェノール類又はその誘導体(ハロゲン化ビスフェノール類のエチレンオキシド付加体を重合した臭素化ポリエステル等)等]、ハロゲン化脂環族炭化水素(架橋環式飽和又は不飽和ハロゲン化脂環族炭化水素、例えば、ドデカクロロペンタシクロオクタデカ−7,15−ジエン等のハロゲン化ポリシクロアルカジエン等)等が挙げられる。ハロゲン系難燃剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
中でも、耐熱性の観点から、ハロゲン系難燃剤はハロゲン化芳香族ビスイミド、ハロゲン化ベンジルアクリレート、ハロゲン化ポリスチレン、ハロゲン化ポリカーボネート又はハロゲン化芳香族エポキシから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
中でも、難燃性付与性能の観点から、ハロゲン系難燃剤としては、塩素原子及び/又は臭素原子を含有する化合物が好ましく、特に臭素原子を含有する有機臭素化物[臭素含有アクリル系樹脂、臭素含有スチレン系樹脂、臭素含有ポリカーボネート系樹脂、臭素含有エポキシ化合物(臭素化エポキシ樹脂等の臭素含有エポキシ樹脂、臭素化フェノキシ樹脂等の臭素含有フェノキシ樹脂等)、臭素含有リン酸エステル、臭素含有トリアジン化合物、臭素含有イソシアヌル酸化合物、臭素化ポリアリールエーテル化合物(オクタブロモジフェニルエーテル等のビス(臭素化アリール)エーテル化合物等)、臭素化芳香族イミド化合物、臭素化ビスアリール化合物等)等の臭素原子含有難燃剤]が好ましい。
((難燃助剤))
難燃助剤としては、芳香族樹脂[フェノール系樹脂、アニリン系樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂、芳香族エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂等)、フェノキシ樹脂(ビスフェノールA型フェノキシ樹脂等)、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアリレート樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、液晶性であってもよい芳香族ポリエステル樹脂、液晶性であってもよい芳香族ポリエステルアミド樹脂等]、アンチモン含有化合物、モリブデン含有化合物(酸化モリブデン等)、タングステン含有化合物(酸化タングステン等)、ビスマス含有化合物(酸化ビスマス等)、スズ含有化合物(酸化スズ等)、鉄含有化合物(酸化鉄等)、銅含有化合物(酸化銅等)、リン含有化合物[(縮合)リン酸アミノトリアジン塩を除くリン含有化合物、例えば、リン酸エステル、縮合リン酸エステル、リン酸エステルアミド(ホスホルアミド等)、縮合リン酸エステルアミド、ホスホニトリル化合物[例えば、(架橋)フェノキシホスファゼン、(架橋)トリルオキシホスファゼン、(架橋)キシリルオキシホスファゼン、(架橋)トリルオキシフェノキシホスファゼン、(架橋)キシリルオキシフェノキシホスファゼン等の非架橋又は架橋アリールオキシホスファゼン等]、有機ホスホン酸化合物又は有機亜ホスホン酸化合物(例えば、有機(亜)ホスホン酸エステル、有機(亜)ホスホン酸アミノトリアジン塩、有機(亜)ホスホン酸金属塩等)等の有機化合物;赤リン、リン酸ホウ素、(亜)リン酸金属塩、次亜リン酸金属塩等の無機化合物等]、ケイ素含有化合物[(ポリ)オルガノシロキサン、層状ケイ酸塩等]、イオウ含有化合物(有機スルホン酸化合物、パーフルオロアルカンスルホン酸の金属塩、スルファミン酸化合物又はその塩等)、フッ素含有樹脂等が例示できる。これらの難燃助剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。なお、前記難燃助剤としては、通常、前記ベース樹脂とは種類の異なる成分が使用される。特に、難燃助剤が樹脂状難燃助剤(芳香族樹脂、例えば、芳香族ポリエステル樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂等)の場合、前記ベース樹脂とは種類の異なる樹脂が使用される。
難燃性付与性能の観点から、難燃助剤は金属酸化物、窒素含有化合物又は芳香族樹脂から選択される少なくとも1種であることが好ましい。そして、難燃助剤が金属酸化物である場合、該金属酸化物は、アンチモン化合物、ホウ酸化合物又はスズ化合物から選択される少なくとも1種であることが好ましく、難燃助剤が窒素含有化合物である場合、該窒素含有化合物は、メラミン、メラム、メレム、メロン、メラミンシアヌレート、メラミンホスフェート、メラミンポリホスフェート、メラミン・メラム・メレムポリホスフェート複塩から選択される少なくとも1種であることが好ましく、難燃助剤が芳香族樹脂である場合、該芳香族樹脂は、ノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
アンチモン含有化合物としては、例えば、酸化アンチモン[三酸化アンチモン(Sb等)、五酸化アンチモン(xNaO・Sb・yHO(x=0〜1、y=0〜4)等)等]、アンチモン酸塩[アンチモン酸金属塩(例えば、アンチモン酸ナトリウム等のアルカリ金属塩、アンチモン酸マグネシウム等のアルカリ土類金属塩等)、アンチモン酸アンモニウム等]等が挙げられる。これらのアンチモン含有化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。前記アンチモン含有化合物のうち、酸化アンチモン及びアンチモン酸のアルカリ金属塩等が好ましい。
また、アンチモン含有化合物は、必要により、エポキシ化合物、シラン化合物、イソシアネート化合物及び/又はチタネート化合物等の表面処理剤で表面処理して用いてもよい。
なお、アンチモン含有化合物の平均粒子径は、例えば、0.02〜5μm、好ましくは0.1〜3μm程度であってもよい。
難燃剤及び/又は難燃助剤の配合量は、熱可塑性樹脂組成物100重量部に対し、3重量部以上50重量部以下であることが好ましく、5重量部以上30重量部以下であることがより好ましい。3重量部未満であると、難燃付与性能が低下する可能性があり、好ましくない。50重量部を超えると、物性が低下する可能性があり、好ましくない。
〔他の成分〕
また、結晶性熱可塑性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲に於いて、通常使用する添加剤、充填材、着色剤等を加えたものでもよい。すなわち、電磁波を照射しなくても著しく導電性を発現してしたり、又は著しく物性や成形性等を低下させたりしない範囲で、従来公知の添加剤等を使用できる。
添加剤として、例えば、酸化防止剤、難燃化剤、離型剤、着色剤、滑剤、耐熱安定剤、耐候性安定剤、防錆剤、抗菌剤等が挙げられる。
充填材として、例えば、ガラスファイバー、金属繊維、アラミド繊維、チタン酸カリウム、アスベスト、炭化ケイ素、セラミック、窒化ケイ素、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、カオリン、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、セリサイト、ゼオライト、マイカ、雲母、ネフェリンシナイト、タルク、アタルパジャイト、ウオラストナイト、フェライト、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化鉄、二硫化モリブデン、グラファイト、石膏、ガラスビーズ、ガラスバルーン、ガラスフレーク、石英、石英ガラス、アパタイト等が挙げられる。これらは中空であってもよい。また、これらは2種類以上を併用することが可能である。必要によりシラン系等のカップリング剤で予備処理し使用することができる。
[炭化物層]
炭化物層は、結晶性熱可塑性樹脂組成物がレーザーの照射によって変性し、本来であれば樹脂成形品を好適に溶かすことのできる良溶媒(本明細書ではヘキサフルオロイソプロパノール、α−クロロナフタレン)に対して不溶となった層である。したがって、正しくは、「良溶媒に対する不溶分で構成された層」という表現が適切であるが、発熱反応により不溶になった層であり、また色も黒色系であることから、本明細書では「炭化物層」という。
本明細書では、表面に電磁波の照射による炭化物層が形成されているか否かは、次の手法によって確認するものとする。まず、表面を炭化させた電界シールド結晶性熱可塑性樹脂成形品と未炭化サンプル
続いて、これらサンプルを広角X線回折法に基づき測定する。X線回折スペクトルにおけるブラッグ角(2θ)25〜27°にピークの出現・増加が確認されるならば、電磁波の照射により炭化物層が形成されているものとする。
[電界シールド性]
本発明の電界シールド性樹脂成形品は、周波数が1GHz以下である電磁波に対するアドバンテスト法又はKEC法、又は周波数が1GHz以上18GHz以下である電磁波に対する同軸管法による電界シールド性が3dB以上である。本明細書において、アドバンテスト法による電界シールド性は、電磁波シールド効果測定装置U3741 SPECTRUM ANALYZER(アドバンテスト社製)を用いて測定したときの電界シールド性を示すものとする。また、本明細書において、KEC法、同軸管法による電界シールド性は、千葉県産業支援技術研究所が所有する電磁波シールド効果測定装置を用いて測定したときの電界シールド性を示すものとする。
<電界シールド性樹脂成形品の製造方法>
本発明の電界シールド性樹脂成形品は、上記熱可塑性樹脂組成物を射出成形又は押出成形した後、その後の射出成形品又は押出成形品の表面に電磁波を照射し、広角X回折法に基づくX線回折スペクトルにおけるブラッグ角(2θ)25〜27°に回折ピークを有する炭化物を形成することによって得られる。
表面に炭化物層を形成する手法として、射出成形品又は押出成形品の表面に電磁波を照射する手法のほか、該表面に炎を近づけて焼く手法、該表面に高温物やプラズマを近づける或いは接触させる手法、該表面を他の物体と摩擦させて発熱させる手法等が挙げられる。しかしながら、表面に電磁波を照射する手法以外では、好適な電界シールド性を有するといえるだけの導電性を発現できないため、好ましくない。
[電磁波]
電磁波の種類は特に限定されるものではないが、電磁波照射機器が広く市販されており、汎用性に富むという点で、電磁波はレーザー光であることが好ましい。
レーザー光は、対象となる熱可塑性樹脂組成物が吸収できるとともに、表面に炭化物層を形成できるだけのエネルギーをもつものであれば、特に限定されない。例えば、波長1064nmのNd:YVOレーザー、Nd:YAGレーザーや、SHG及びTHGを利用したNd:YAGレーザーの2倍波(532nm)及び3倍波(355nm)の各可視光レーザー、波長824nmのAlGaAsレーザー等の半導体レーザー、また波長308nmのXeClエキシマーレーザー等の各種エキシマーレーザー、またさらには波長を任意に変えた色素レーザー、赤外線レーザーである炭酸ガスレーザー等を挙げることができる。
中でも、波長1064nmのNd:YAGレーザーは広く市販されており、また、Qスイッチ、ランプ電流、照射画像のドット間隔又は線間隔、スキャン速度を変えることで、単位面積当たりの照射総エネルギー量を自由にコントロールできるため、好ましい。また、Nd:YAGレーザーの場合、定格出力が、連続モードで1〜10Wの範囲にある点でも好ましい。
なお、被照射物である樹脂成形品へのレーザー光の照射振方式は、ポリゴンミラーを介したスキャン式でも、マスクを用いて一気に照射するマスク式でもよい。ポリゴンミラーを介したスキャン式のNd:YAGレーザーを照射して導電部を形成する方法は非常に簡便な方法であり、導電部のデザインを比較的自由に変更できる点が有利である。また、既に多く市販されている、Nd:YAGレーザーを使用したレーザーマーキング装置を転用できる点からも、好適である。しかし、生産数が多い場合、マスク式で行うか、又はダイオードレーザーを複数用いた方が生産効率の面で有利な場合もある。
また、照射部である導電部の形態は、一筆書き方式の連続画像でもドット式の画像でもよい。
レーザー光のエネルギー密度は、特に限定されるものでないが、1kW/cm以上100万kW/cm以下であることが好ましく、1万kW/cm以上8万kW/cm以下であることがより好ましい。より好適なエネルギー密度が得られる点で、瞬間的に高いエネルギー密度を作り出すQスイッチ法を用いたレーザー照射方法が好ましい。Qスイッチ法によるレーザー光のジャイアントパルス幅は、3ns以上100ns以下であることが好ましく、6ns以上50ns以下であることがより好ましい。
電磁波を照射する間隔は、シールド対象とする電磁波の波長以下であることが好ましいが、炭化面積が少ないと、充分な電界シールド性を得られない可能性があるため、出来るだけ狭い方が好ましい。
電磁波のPowerや照射回数、又は走査速度は、照射部位に広角X回折法に基づくX線回折スペクトルにおけるブラッグ角(2θ)25〜27°に回折ピークを有する炭化物を形成するような任意の条件を選択することが可能であり、特に限定されるものではないが、製造する効率を考慮すると、照射時間が短くなる条件で照射することが好ましい。
必須の態様ではないが、電磁波を、樹脂成形品の表面に対し、電磁波を、0度以上45以下の照射角で放射状に照射することが好ましい。
また、電磁波を照射する際、まずは、前処理として、中心周波数が1kHz以上のレーザー光を樹脂成形品の表面に1回以上照射し、その後、本処理として、中心周波数が0kHzの連続波のレーザー光を樹脂成形品の表面に複数回照射することが好ましい。このようにすることで、樹脂成形品が炭化しづらい場合でも、表面を均一に炭化できる。これは、前処理によって樹脂成形品の表面に小さな傷がつくことから、本処理において凹み部分でレーザー光の乱反射が生じるためと予想される。
また、本処理としてレーザー光を照射した後、後処理として樹脂成形品の表面全体を弱いエネルギーのレーザー光で複数回照射することが好ましい。本処理後の樹脂成形品表面には炭化粉末が生じるため、後処理として樹脂成形品の表面全体を弱いエネルギーのレーザー光で徐々に焼き付け又は溶融することにより炭化粉末を除去することができる。本明細書において、弱いエネルギーのレーザー光とは、炭化されていない樹脂成形品表面に照射した場合には照射箇所の樹脂が溶融はしない若しくは溶融はしても炭化させない、炭化粉末が生じている樹脂成形品の表面に照射した場合には照射箇所の樹脂が溶融し炭化粉末同士もしくは炭化粉末と成形品を互いに溶着させる、前記本処理におけるレーザー光よりも低いエネルギーのレーザー光のことをいう。弱いエネルギーのレーザー光は、レーザー出力、スポットサイズ、走査速度などを調節することにより得られる。
<筐体>
本発明の筐体は、上記電界シールド結晶性熱可塑性樹脂成形品を有する。本発明で言う筐体部品とはハウジングとも呼ばれる部品である。一般的には外装を為す箱型の部品であるが、製品形状、組み立て方法等の制約により平板形状をとる等必ずしも箱型でない場合もあるが、それらも本発明の範囲に含まれる。そしてこの筐体部品は一体化された成形品であっても複数の部品により構成されていても良い。ハウジングの内側にはデバイスが存在する。具体的にはIC、LSI、超LSI等のデジタル集積回路、アナログ集積回路、MOS集積回路、薄膜集積回路、混成集積回路、IIL等のメモリセル、TTL等の多重エミッタトランジスタ、液晶デバイス等である。これらは一般的に電界、電磁波、静電気等の影響を受けやすく、それが誤作動や劣化、破壊の原因となることがある。
また逆に筐体内のデバイスから電界、電磁波、静電気等が発生し、筐体外の製品に悪影響を及ぼすことがある。これらを防ぐ為、筐体部品にはそれらを防ぐ特性、即ちシールド特性が一般的には求められており、本発明はそれに応えるものである。また逆に、筐体内の電気・電子回路が原因で、周囲の電気・電子機器に悪影響を及ぼす、電界、電磁波、静電気を発する場合もある。この様な場合も本発明は有効である。
特に、本発明の筐体は、比較的低い周波数帯の遮蔽性に優れ、かつ、軽量であることから、自動車、電車、航空機といった輸送機における電波遮蔽材として用いることが有用である。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
<実施例1〜5及び比較例1〜11> 結晶性熱可塑性樹脂のスクリーニング
表1において、各種材料は次のとおりである。
(1)結晶性熱可塑性樹脂
PPS:ポリフェニレンスルフィド((株)クレハ製、フォートロンKPS W214A)
PBT:ポリブチレンテレフタレート(ウィンテックポリマー(株)製、ジュラネックス(固有粘度0.68dL/g))
(2)充填剤
GF:チョップドガラス繊維(日本電気硝子(株)製、ECS03T747)、平均繊維径:13μm

(3)難燃剤
ジエチルホスフィン酸アルミニウム(製品名:EXOLIT OP1240,クラリアントジャパン社製)
ポリベンジルアクリレート(製品名:FR-1025,ICL-IP JAPAN社製)
メラミンシアヌレート(製品名:MELAPUR MC50,BASFジャパン社製)
三酸化アンチモン(製品名:PATOX−M日本精鉱社製)
表1に記載の材料を表1に記載の割合(重量部)で混合し、押出機により混練押出してペレット状の樹脂組成物A〜Hを調製した。そして、樹脂組成物A〜Hをそれぞれ用いて、80mm×80mm以上×1mm以上の平板状に射出成形を行い、8種類の結晶性熱可塑性樹脂成形品を2つずつ作製した。
続いて、2つずつ作製した結晶性熱可塑性樹脂成形品の一方にNd:YVOレーザー光を格子状に照射した。照射装置は、レーザー照射装置3−Axis YVOLASER MARKER(キーエンス社製)とし、照射条件は、表2に記載のとおりとした。2つずつ作製した結晶性熱可塑性樹脂成形品の他方については、レーザー光の照射を行わなかった。上記の工程を経て、実施例1〜5及び比較例1〜7に係る結晶性熱可塑性樹脂成形品を作製した。
<評価>
実施例1〜5及び比較例1〜7に係る電界シールド結晶性熱可塑性樹脂成形品について、1GHz以下である電磁波に対する電界シールド性をアドバンテスト法によって測定した。一例として、実施例1〜3及び比較例1〜3についての測定結果を図1に示し、実施例4,5及び比較例4〜7についての測定結果を図2に示す。
また、1GHz以下である電磁波に対する電界シールド性をKEC法によって測定した。一例として、実施例1,3及び比較例1,3についての測定結果を図3に示し、実施例5及び比較例5についての測定結果を図4に示す。
また、1GHz以上18GHz以下である電磁波に対する電界シールド性を同軸管法によって測定した。一例として、実施例1,3及び比較例1,3についての測定結果を図5に示し、実施例5及び比較例5についての測定結果を図6に示す。
表面に電磁波の照射による炭化物層が形成されている結晶性熱可塑性樹脂組成物の成形品は、周波数が18GHz以下である電磁波に対するアドバンテスト法、KEC法及び同軸管法による電界シールド性が3dB以上であることが確認された(実施例)。図3から図6は、一例として、実施例1,3及び5についての測定結果を示したものであるが、他の実施例においても、電界シールド性が3dB以上であることが確認された(実施例)。図7の(A)は、実施例2に係る電界シールド結晶性熱可塑性樹脂成形品の平面写真であり、図7の(B)は、該平面写真の一部の拡大写真である。図7から、実施例に係る電界シールド結晶性熱可塑性樹脂成形品の表面には、炭化物層が適切に形成されており、その結果、充分な電界シールド性が得られたものと考えられる。
一方、図1から図6から、表面に電磁波を照射しない場合、電界シールド性をほとんど得られないことが確認された(比較例1〜6)。
また、表面に電磁波を照射した場合であっても、結晶性熱可塑性樹脂組成物が難燃性ではなく遅燃性である場合、充分な電界シールド性を得られないことが確認された(比較例6,7)。図8は、比較例7に係る樹脂成形品の一部の拡大写真である。図8から、結晶性熱可塑性樹脂組成物が難燃性ではなく遅燃性である場合、表面に電磁波を照射した場合であっても、結晶性熱可塑性樹脂成形品の表面を充分に炭化できないため、その結果、充分な電界シールド性が得られなかったものと考えられる。
<実施例11> 電磁波の照射で炭化層に生じる粉末の除去
上記樹脂組成物Bを80mm×80mm以上×1mm以上の平板状に射出成形し、樹脂成形品を作製した。
続いて、その樹脂成形品について、レーザー光の照射条件が表7のとおりであること以外は実施例1と同様の条件にてNd:YVOレーザー光を格子状に照射した。上記の工程を経て、実施例11に係る電界シールド結晶性熱可塑性樹脂成形品を作製した。
<評価>
実施例11に係る電界シールド結晶性熱可塑性樹脂成形品の表面を、本処理終了時と後処理終了時の2回について、電子顕微鏡(SEM)で拡大観察した。倍率は100倍とした。結果を図9に示す。
電磁波を、樹脂成形品の表面に対して照射すると、樹脂成形品の表面に粉末が生じる(図9の(A))。この粉末を、後処理として樹脂成形品の表面全体を弱いエネルギーのレーザー光で徐々に焼き付け又は溶融することにより、炭化粉末を除去できる(図9の(B))。
<実施例21及び比較例21> 炭化層の確認
上記樹脂組成物Cを80mm×80mm以上×1mm以上の平板状に射出成形し、樹脂成形品を2つ作製した。
これら2つの樹脂成形品を30mm×30mmの平板に切削し、レーザー光の照射条件が表8のとおりであること以外は実施例1と同様の条件にてNd:YVOレーザー光を格子状に照射した。上記の工程を経て、実施例21及び比較例21に係る電界シールド結晶性熱可塑性樹脂成形品を作製した。
<評価>
実施例21及び比較例21に係る電界シールド結晶性熱可塑性樹脂成形品の表面の広角X回折法に基づくX線回折スペクトルを図10に示す。
電磁波を、樹脂成形品の表面に対し照射することで、樹脂成形品の表面にX線回折スペクトルにおけるブラッグ角(2θ)25〜27°に回折ピークを有する物質が生成することが確認された(実施例21、比較例21、図10)。これはグラファイトに由来するピークであるため、電磁波の照射により樹脂成形品の表面に炭化物層が生成していると考えられる。

Claims (13)

  1. 試験片の厚みが1.6mmであるときのUL94燃焼性試験に準拠した難燃性がV−1以上である難燃性の結晶性熱可塑性樹脂を含有する結晶性熱可塑性樹脂組成物の成形品であり、
    該結晶性熱可塑性樹脂は、ポリアリーレンスルフィド及び/又はポリアルキレンアリレートに、難燃剤としてジアルキルホスフィン酸金属塩およびハロゲン系難燃剤から選択される少なくとも1種を含有するものであって、
    表面に電磁波の照射により、広角X回折法に基づくX線回折スペクトルにおけるブラッグ角(2θ)25〜27°に回折ピークを有する炭化物層が形成され、
    周波数が1GHz以下である電磁波に対するアドバンテスト法又はKEC法、又は周波数が1GHz以上18GHz以下である電磁波に対する同軸管法による電界シールド性が3dB以上である電界シールド結晶性熱可塑性樹脂成形品。
  2. 前記結晶性熱可塑性樹脂がポリアリーレンスルフィドである場合、該ポリアリーレンスルフィドはポリフェニレンスルフィドであり、前記結晶性熱可塑性樹脂がポリアルキレンアリレートである場合、該ポリアルキレンアリレートはポリブチレンテレフタレートである、請求項に記載の電界シールド結晶性熱可塑性樹脂成形品。
  3. 前記結晶性熱可塑性樹脂は、前記ポリアリーレンスルフィド又は前記ポリアルキレンアリレートをベースにしたポリマーアロイである、請求項又はに記載の電界シールド結晶性熱可塑性樹脂成形品。
  4. 前記結晶性熱可塑性樹脂組成物は電磁波吸収剤をさらに含有し、
    前記電磁波吸収剤は、カーボンブラック、カーボンファイバー又はグラファイトから選択される少なくとも1種である、請求項1からのいずれかに記載の電界シールド結晶性熱可塑性樹脂成形品。
  5. 記難燃剤がハロゲン系難燃剤である場合、該ハロゲン系難燃剤はハロゲン化芳香族ビスイミド、ハロゲン化ベンジルアクリレート、ハロゲン化ポリスチレン、ハロゲン化ポリカーボネート又はハロゲン化芳香族エポキシから選ばれる少なくとも1種である、請求項1から4いずれかに記載の電界シールド結晶性熱可塑性樹脂成形品。
  6. 前記結晶性熱可塑性樹脂組成物が、金属酸化物、窒素含有化合物又は芳香族樹脂から選択される少なくとも1種である難燃助剤をさらに含有する、請求項1から5いずれかに記載の電界シールド結晶性熱可塑性樹脂成形品。
  7. 前記難燃助剤が金属酸化物である場合、該金属酸化物は、アンチモン化合物、ホウ酸化合物又はスズ化合物から選択される少なくとも1種であり、
    前記難燃助剤が窒素含有化合物である場合、該窒素含有化合物は、メラミン、メラム、メレム、メロン、メラミンシアヌレート、メラミンホスフェート、メラミンポリホスフェート、メラミン・メラム・メレムポリホスフェート複塩から選択される少なくとも1種であり、
    前記難燃助剤が芳香族樹脂である場合、該芳香族樹脂は、ノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂から選択される少なくとも1種である、請求項に記載の電界シールド結晶性熱可塑性樹脂成形品。
  8. 前記電磁波がレーザー光である、請求項1からのいずれかに記載の電界シールド結晶性熱可塑性樹脂成形品。
  9. 射出成形品又は押出成形品である、請求項1からのいずれかに記載の電界シールド結晶性熱可塑性樹脂成形品。
  10. 請求項1からのいずれかに記載の電界シールド結晶性熱可塑性樹脂成形品を有する、輸送機用電子機器の筐体。
  11. 試験片の厚みが1.6mmであるときのUL94燃焼性試験に準拠した難燃性がV−1以上であるポリアリーレンスルフィド及び/又はポリアルキレンアリレートに、難燃剤としてジアルキルホスフィン酸金属塩およびハロゲン系難燃剤から選択される少なくとも1種を含有する結晶性熱可塑性樹脂を含有する結晶性熱可塑性樹脂組成物の成形品の表面に電磁波を照射して、広角X回折法に基づくX線回折スペクトルにおけるブラッグ角(2θ)25〜27°に回折ピークを有する炭化物を形成する電磁波照射工程を含む、電界シールド結晶性熱可塑性樹脂成形品の製造方法。
  12. 前記電磁波照射工程では、中心周波数が1kHz以上のレーザー光を前記成形品の表面に1回以上照射し、その後、中心周波数が0kHzの連続波のレーザー光を前記成形品の表面に複数回照射する、請求項11に記載の電界シールド性樹脂成形品の製造方法。
  13. 前記電磁波照射工程の後、前記結晶性熱可塑性樹脂組成物の成形品の表面全体を弱いエネルギーのレーザー光で徐々に焼き付け又は溶融する、請求項11又は12に記載の電界シールド性樹脂成形品の製造方法。
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