JP6111847B2 - 板材の溶接方法 - Google Patents
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しかしながら、プレス加工品は三次元形状を有することが一般的である。そのため、溶接部位の位置に応じて、加熱する際の焦点位置等の加工条件を設定したり、加熱装置の姿勢を変更したりする必要があった。また、溶接部位によっては、加熱することが難しい場合があり、専用治具を用いたり、治具の大幅な変更が必要となったりして、加熱作業に手間がかかるという問題が発生していた。
前記焼入れ工程は、平板状の第1の板材に対し、溶接予定部位の近傍位置に焼入れ加工することで焼入れ硬化部を形成する。
前記加圧工程は、前記焼入れ工程によって前記焼入れ硬化部が形成された前記第1の板材をプレス加工することにより、前記焼入れ硬化部の周囲に減肉部を形成する。
前記溶接工程は、前記加圧工程によって形成された前記減肉部に第2の板材を重ね合わせ、前記減肉部によって板材間の微細な隙間を確保してから前記溶接予定部位を溶融溶接する。
すなわち、焼入れ加工は、平板状(2次元)の第1の板材に対して行われるため、焼入れ加工機の移動方向が平面的になり、焼入れ硬化部の形成部位に応じて加工機の姿勢を変更することが不要となる。また、加工機の姿勢が一定であるので、専用治具等の特殊な設備が必要ない。さらに、加工機の移動量を抑えることもできる。しかも、加圧工程におけるプレス加工も、平板状の第1の板材に対して行うため、容易にプレス加工を行うことができる。
また、焼入れ硬化部では、焼入れを行ったことにより焼入れをしていない部分よりも伸び(展延性)が失われている。このため、加圧工程においてプレス加工すると、焼入れ硬化部の周囲は伸びて減肉するが、焼入れ硬化部では硬く伸びないために、減肉せずに凸形状となる。このため、焼入れ硬化部の周囲に減肉部が形成され、第2の板材を重ね合わせた際に、板材間に隙間が生じることとなる。
この結果、加熱によって被覆層から発生するガスを逃がすための微細な隙間を、重ねた板材同士の間に容易に確保することができる。
まず、構成を説明する。
図1は、実施例1の板材の溶接方法によって、亜鉛メッキ鋼板を溶接するレーザ溶接加工機を示す概略図である。
なお、このレーザ溶接加工機3では、レーザ発振器から出力される際のレーザ光4のエネルギー密度を変更することで、第1,第2亜鉛メッキ鋼板1,2の加熱温度を調整することができる。
つまり、図3(a)に示すように、平板状のブランク材である第1亜鉛メッキ鋼板1をレーザ溶接加工機3にセットし、加工ヘッド6を第1亜鉛メッキ鋼板1上の焼入れ部位Yに正対させる。
次に、図3(b)に示すように、レーザ溶接加工機3からレーザ光4を出射し、焼入れ部位Yを加熱する。
そして、図3(c)に示すように、焼入れを行った第1亜鉛メッキ鋼板1を冷却し、焼き戻し等の熱処理を行うことで、焼入れ部位Yに焼入れ硬化部7を形成する。
ここで、焼入れ部位Yは、図4に示すように、溶接部位(溶接予定部位)Rの近傍位置に適宜設定される。なお、図4では線状に延在した溶接部位Rに対し、溶接部位Rから離れた位置で、溶接部位Rよりも短いが平行に延びるように焼入れ部位Yが設定されている。また、図4では、複数の焼入れ部位Yが、線状の溶接部位Rを挟んで交互に設定されている。
つまり、図5(a)に示すように、平板状の第1亜鉛メッキ鋼板1をプレス加工機8にセットする。このとき、プレス加工機8の下型8a及び上型8bは、平坦なプレス面を有するものとする。
次に、図5(b)に示すように、プレス加工機8の下型8a及び上型8bの型締めを行い、第1亜鉛メッキ鋼板1を加圧する。ここで、焼入れ硬化部7は、焼入れを行ったことで、焼入れを行っていない被焼入れ部分(焼入れ部位Y以外の部分)よりも硬くなり、伸び(展延性)が失われている。そのため、プレス加工機8によって加圧された際、焼入れ硬化部7以外の部分は加圧によって伸びて肉厚が薄くなる(減肉する)が、焼入れ硬化部7では伸びが少なく肉厚変化が少ない。
これにより、図5(c)に示すように、焼入れ硬化部7の周囲に減肉部9が形成され、焼入れ硬化部7は周囲に比べて突出した凸形状になる。
なお、実施例1では、焼入れ硬化部7が第1亜鉛メッキ鋼板1の表裏のいずれにも露出するように形成されているので、減肉部9も第1亜鉛メッキ鋼板1の両面に形成される。
つまり、図6(a)に示すように、平板状の第1亜鉛メッキ鋼板1上に、平板状の第2亜鉛メッキ鋼板2を重ね合わせ、レーザ溶接加工機3にセットし、加工ヘッド6を溶接部位Rに正対させる。このとき、第1亜鉛メッキ鋼板1には、焼入れ硬化部7の周囲に減肉部9が形成されている。そのため、焼入れ硬化部7が第2亜鉛メッキ鋼板2と接触しても、減肉部9は第2亜鉛メッキ鋼板2に接触しない。これにより、この減肉部9の分だけ、第1亜鉛メッキ鋼板1と第2亜鉛メッキ鋼板2との間にごく僅かな隙間が生じる。
次に、図6(b)に示すように、レーザ溶接加工機3からレーザ光4を出射し、溶接部位Rを加熱する。このとき、溶接熱によって第1,第2亜鉛メッキ鋼板1,2の亜鉛メッキ層から亜鉛ガスが発生するが、この亜鉛ガスは、減肉部9によって生じた第1亜鉛メッキ鋼板1と第2亜鉛メッキ鋼板2との間の隙間に流れ込む。
これにより、亜鉛ガスが第1,第2亜鉛メッキ鋼板1,2の溶融部分に吸収することが防止され、図6(c)に示すように、溶接部位Rには高品質の接合部Sが形成される。
つまり、図7(a)に示すように、溶接により一体化した平板状の第1,第2亜鉛メッキ鋼板1,2をプレス加工機8にセットする。このとき、プレス加工機8の下型8c及び上型8dは、所望のプレス加工品に応じた凹凸形状となったプレス面を有する。
次に、図7(b)に示すように、プレス加工機8の下型8c及び上型8dの型締めを行い、第1,第2亜鉛メッキ鋼板1,2をプレス成型する。
これにより、図7(c)に示すように、所望のプレス加工品Pが形成される。なお、このときの加圧力によって、第1,第2亜鉛メッキ鋼板1,2は密着し、鋼板間に生じていたごく僅かな隙間はなくなる。
まず、比較例の板材の溶接方法とその課題を説明し、続いて、実施例1の板材の溶接方法における「加工容易化作用」説明する。
図8は、比較例の板材の溶接方法の手順を示すフローチャートである。以下、図8に基づいて、比較例の溶接方法を説明する。
ここで、レーザ加工及び溶接加工を行う場合には、溶接部位R1に対してレーザ溶接加工機3´を正対させる必要がある。これに対し、プレス加工品P1は図9に示すように3次元形状であることが一般的である。
そのときには、専用治具を用いたり、治具の大幅な変更が必要となったりしていた。そのため、レーザ光4を照射する作業に手間がかかる上、汎用性に乏しいという問題があった。
実施例1の板材の溶接方法において、第1亜鉛メッキ鋼板1と第2亜鉛メッキ鋼板2を溶接する場合では、まず、図2に示すフローチャートのステップS1で、第1,第2亜鉛メッキ鋼板1,2をブランク加工し、平板状のまま輪郭形状を形成する。
また、この焼入れ硬化部7は、被焼入れ部分(第1亜鉛メッキ鋼板1のうち焼入れ硬化部7以外の部分)よりも硬度が高く、材料の伸び(展延性)が失われている。
これにより、溶接熱によって亜鉛メッキ層から亜鉛ガスが生じても、亜鉛ガスが隙間に流れ込み、第1,第2亜鉛メッキ鋼板1,2の溶融部分に吸収されることを防止できる。すなわち、加熱によって亜鉛メッキ層から発生する亜鉛ガスを逃がすための微細な隙間を、重ねた第1,第2亜鉛メッキ鋼板1,2同士の間に容易に確保することができる。そして、亜鉛ガスが溶融部分に入り込まないため、溶接部位Rに高品質の接合部Sを形成することができる。
このため、焼入れ硬化部7や減肉部9を形成することによるプレス加工品Pの精度低下を防止し、高精度のプレス加工品Pを形成することができる。
実施例1の板材の溶接方法にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
平板状の第1の板材(第1亜鉛メッキ鋼板)1に対し、溶接部位Rの近傍位置に焼入れ加工することで焼入れ硬化部7を形成する焼入れ工程(ステップS2)と、
前記焼入れ工程(ステップS2)によって前記焼入れ硬化部7が形成された前記第1の板材(第1亜鉛メッキ鋼板)1をプレス加工し、前記焼入れ硬化部7の周囲に減肉部9を形成する加圧工程(ステップS3)と、
前記加圧工程(ステップS3)によって形成された前記減肉部9に第2の板材(第2亜鉛メッキ鋼板)2を重ね合わせ、前記減肉部9によって板材間の微細な隙間を確保してから前記溶接部位Rを溶融溶接する溶接工程(ステップS4)と、
を備えた構成とした。
これにより、溶接熱によって亜鉛メッキ層から発生する亜鉛ガスを逃がすための微細な隙間を、重ねた第1,第2亜鉛メッキ鋼板1,2同士の間に容易に確保することができる。
これにより、焼入れ硬化部7や減肉部9を形成することによるプレス加工品Pの精度低下を防止し、高精度のプレス加工品Pを形成することができる。
実施例2は、焼入れ硬化部の形成位置を、実施例1とは異なる構成とした例である。
このため、下面1b側の見栄えを損なうことがなくなり、プレス加工品の外観悪化を防止することができる。
これにより、減肉部9を形成したくない反対側の面(下面1b)の見栄えを損なうことがなくなり、プレス加工品の外観悪化を防止することができる。
2 第2亜鉛メッキ鋼板(第2の板材)
3 レーザ溶接加工機
4 レーザ光
5 光ファイバケーブル
6 加工ヘッド
7 焼入れ硬化部
8 プレス加工機
9 減肉部
R 溶接部位(溶接予定部位)
Y 焼入れ部位
S 接合部
P プレス加工品
Claims (3)
- 加熱によりガスが発生する被覆層によって表面処理された板材を含む少なくとも二枚の板材同士を重ね合わせて溶接する際に、前記板材同士の間に微細な隙間を確保する板材の溶接方法において、
平板状の第1の板材に対し、溶接予定部位の近傍位置に焼入れ加工することで焼入れ硬化部を形成する焼入れ工程と、
前記焼入れ工程によって前記焼入れ硬化部が形成された前記第1の板材をプレス加工することにより、前記焼入れ硬化部の周囲に減肉部を形成する加圧工程と、
前記加圧工程によって形成された前記減肉部に第2の板材を重ね合わせ、前記減肉部によって板材間の微細な隙間を確保してから前記溶接予定部位を溶融溶接する溶接工程と、
を備えたことを特徴とする板材の溶接方法。 - 請求項1に記載された板材の溶接方法において、
前記焼入れ工程では、前記第1の板材の表面のうち、前記減肉部を形成したい面に対して前記焼入れ加工を行い、前記減肉部を形成したい面の表面に前記焼入れ硬化部を設ける
ことを特徴とする板材の溶接方法。 - 請求項1又は請求項2に記載された板材の溶接方法において、
前記焼入れ工程及び前記加圧工程は、少なくとも前記第1の板材をプレス成型して任意の形状に変形するプレス成型工程よりも前に実行する
ことを特徴とする板材の溶接方法。
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