JP6111107B2 - 弾性波探査方法 - Google Patents
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例えば、地山を掘削してトンネルを形成する工事においては、地山の性状を把握するために、地山の各部の弾性波速度を測定することが行われており、この弾性波速度に基いてトンネル切羽近傍の岩盤等級を区分し、岩盤等級毎に適切なトンネル掘削や支保工パターンを選定する。
このような岩盤の弾性波速度を測定する手法としては、地山の所定の地点(起振点)で人工的に振動を起こすことにより弾性波を発生させ、この弾性波を起振点から離れた既知の地点(受振点)で計測し、これを解析することにより、弾性波速度を測定する屈折法弾性波探査などが周知であり、特許文献1その他多くの文献に開示されている。
一般に、屈折法弾性波探査は、トンネル切羽や側壁の起振点で、小規模の発破を爆破したり重錘により打撃を加えたり、また、トンネル掘削用の発破を爆破させて、振動を発生させ、起振点での振動の発生を検知器により検知し、この検知器に電気的に接続された記録装置に振動信号として振動発生時刻とともに記録し、起振点で発生させた振動により地山を伝播する弾性波を地山の既知の複数の受振点で小型の受振センサにより受振し、この受振センサに電気的に接続された記録装置に弾性波データとして弾性波初動到達時刻とともに記録して、記録装置に記録された振動発生時刻と弾性波初動到達時刻に基いて地山の弾性波速度を算出する。
通常、この種の弾性波探査では、受振センサとして複数(24箇〜48箇)のジオフォンと、点火装置付きの多チャンネル(24又は48チャンネル)記録装置を使用し、複数のジオフォンを点火装置付きの多チャンネル記録装置に1本のケーブル(テイクアウトケーブル)で繋いでいる。そして、点火装置により発破を点火して振動(弾性波)を発生させると、多チャンネル記録装置により発破点火時の電気信号が検知されて弾性波の記録が開始され、各ジオフォンに時間遅れで到達する弾性波が各ジオフォンにより検出されて、その時刻とエネルギー(振幅)が多チャンネル記録装置に記録される。このような弾性波探査の場合、発破点火時の電気信号と弾性波データが共通の記録装置に記録されるため、発破により弾性波が発生した時刻と、発破により発生した弾性波がそれぞれのジオフォンに到達する時刻の決定が容易である。
また、この種の弾性波探査では、トンネル坑内で発生させた弾性波をトンネル坑外の地表面に設置したジオフォンで検出して、記録装置に記録するような場合など、複数のジオフォンと点火装置付きの多チャンネル記録装置を1本のケーブルで繋ぐことが困難な場合があり、このような場合に、トンネル坑内に振動信号を記録する記録装置を、トンネル坑外に弾性波データを記録する記録装置を各別に設置し、各記録装置に内蔵の時計の時刻をGPSや原子時計を用いて一致させ、トンネル坑内の記録装置で発破時刻を決定し、トンネル坑外の記録装置で弾性波初動時刻を決定する方法がある。かかる方法が特許文献2、3などにより提案されている。
(1)地山の受振点に複数のジオフォンを設置し、これらのジオフォンと点火装置付きの多チャンネル記録装置を1本のケーブルで繋ぐ形式では、ジオフォンの設置位置と記録装置の設置位置との間に民家や道路などがある場合に、ケーブルを敷設することができない。
(2)地山の受振点に複数のジオフォンを設置し、これらのジオフォンと点火装置付きの多チャンネル記録装置を1本のケーブルで繋ぐ形式では、ジオフォンの設置位置と記録装置の設置位置との間の距離が長くなると、測定機器、機材の設置作業が煩雑になり、また、その距離が数kmに亘るなど過度に長い場合には測定機器、機材の設置が困難になる。
(3)上記(1)、(2)の各問題に対して、既述のGPSや原子時計を用いた特殊な測定装置を用いて対応しようとすると、この測定装置が高価で、取扱いが難しいため、弾性波の測定に要するコストが大幅に増大する。
この弾性波探査方法では、受振センサにジオフォンを含む可搬型の電気機械式の受振センサを採用することが好ましい。
また、この弾性波探査方法では、地山の受振点が複数の場合、受振点毎に受振センサと記憶装置の基本セットを設置することが好ましい。
さらに、この弾性波探査方法では、起振点での振動の発生を終了した後、各記憶装置間に録音時間の誤差がある場合、前記各記憶装置を録音状態としたまま、検知器、受振センサから切り離した後、任意の同時刻にパルス信号を入力して、録音時間の誤差を補正することが好ましい。
図1に示すように、この弾性波探査方法は、地山の起振点で振動を発生させて、起振点での振動の発生を検知器1により検知し、この検知器1に電気的に接続された記録装置2に振動信号として振動発生時刻とともに記録し、起振点で発生させた振動により地山を伝播する弾性波を地山の既知の受振点で受振センサ3により受振し、この受振センサ3に電気的に接続された記録装置2に弾性波データとして弾性波初動到達時刻とともに記録して、これら記録装置2に記録された振動発生時刻と弾性波初動到達時刻に基いて地山の弾性波速度を算出するものである。
この場合、図2に示すように、記録装置2にステレオIC(Integrated Circuit)レコーダ(以下、ICレコーダ2という。)を用い、検知器1に発破信号検知装置(直流センサ)(以下、発破信号検知装置1という。)を用い、受振センサ3にジオフォン(以下、ジオフォン3という。)を用いることとし、発破器4を設置する所定の測定地点に発破信号検知用の発破信号検知装置1とICレコーダ2の基本セットを1セット準備し、受振点に弾性波測定用のジオフォン3とICレコーダ2の基本セットを、弾性波を測定する受振点の数だけ、例えば測定受振点が24箇所あれば24台のジオフォン3とICレコーダ2の基本セットを準備する。なお、ICレコーダ2はすべて同種のICレコーダを使用し、ジオフォン3はすべて同種のジオフォンを使用する。
この場合、発破信号検知用のICレコーダ2を発破信号検知装置1から切り離しておき、発破信号検知装置1は所定の測定地点に設置する発破器4に通信ケーブルを介して接続する。また、弾性波信号測定用のICレコーダ2をジオフォン3から切り離しておき、ジオフォン3は受振点に設置する。そして、発破器4で起振点の発破を点火する前に、すべてのICレコーダ2を同時又は順次に録音状態とし、各ICレコーダ2の外部マイク端子の一方のチャンネル(例えば、右側のチャンネル)から並列回路を用いて任意の同時刻に共通のパルス信号を入力する。なお、このパルス信号の入力に当たり、(図5を参照)発破器4に抵抗器5を結合して回路を作成し、この回路に各ICレコーダ2を発破信号検知装置1を介して接続して、発破器4を作動させることによって生ずるパルス状の電気信号から発破信号検知装置1によりパルス信号を発生させて、パルス信号を入力するようにしてもよい。
この場合、振動信号検知用のICレコーダ2を、録音中の状態を続けたまま、外部端子のパルス信号を入力したチャンネルとは異なる他方のチャンネル(例えば、左側のチャンネル)を使って、所定の測定地点に設置され、発破器4に接続された発破信号検知装置1に通信ケーブルを介して接続する。なお、既述のとおり、発破器4の電気信号を使ってICレコーダ2にパルス信号を入力した場合は、発破信号検知装置1から発破信号検知用のICレコーダ2を取り外さず接続したままにしておけば、発破信号検知装置1にICレコーダ2をあらためて接続する必要がない。また、弾性波測定用のICレコーダ2を、同様に、録音中の状態を続けたまま、外部端子のパルス信号を入力したチャンネルとは異なる他方のチャンネル(例えば、左側のチャンネル)を使って、受振点に設置したジオフォン3に通信ケーブルを介して接続する。
この場合、発破器4により地山の起振点の発破を点火して振動を発生させると、この発破器4の発破点火時に発生する電気信号により発破信号検知装置1からパルス信号が発生し、このパルス信号が振動信号として振動信号検知用のICレコーダ2に記録される。そして、起振点で発生した弾性波はジオフォン3に時間遅れで到達し、これがジオフォン3により検出されて、弾性波信号測定用のICレコーダ2に弾性波データとして記録される。
なお、発破の終了後、各ICレコーダ2が有する録音時間の誤差を補正するため、測定開始時と同様に、各ICレコーダ2を録音状態としたまま、各ICレコーダ2に並列回路を用いて任意の同時刻にパルス信号を入力し、録音時間の誤差の補正を行うことが望ましい。
そして、起振点での振動の発生(発破)を終了した後、各ICレコーダ2間に録音時間の誤差がある場合は、既述のとおり、各ICレコーダ2を録音状態としたまま、発破信号検知装置1、ジオフォン3から切り離した後、各ICレコーダ2に任意の同時刻にパルス信号を入力して、録音時間の誤差の補正を行えばよい。
図3(1)は各ICレコーダ2における信号、データの記録例を示している。図3(1)に示すように、振動信号検知用のICレコーダ2には、右チャンネルから入力された時刻情報としてのパルス信号と、左チャンネルから入力された発破信号(パルス信号)が記録され、弾性波測定用のICレコーダ2には、右チャンネルから入力された時刻情報としてのパルス信号と、左チャンネルから入力された弾性波データ(波形)が記録される。この場合、録音(状態)開始時刻が同じ又は異なるICレコーダ2が混在しており、各ICレコーダ2のパルス信号の入力時刻は同一のものもあれば異なるものもあり、一定ではない。
図3(2)は各ICレコーダ2に記録された信号、データを予め各ICレコーダ2に入力した共通のパルス信号を基準時刻として時間合せをして示している。図3(2)に示すように、各ICレコーダ2に記録された信号、データを共通のパルス信号により時間合せをして表すことにより、振動信号検知用のICレコーダ2に記録された振動信号から、パルス信号入力時刻から当該振動信号が発生するまでの時間を同定し、弾性波測定用のICレコーダ2に記録された弾性波データから、パルス信号入力時刻から弾性波の初動までの時間を同定することが可能となる。
図3(3)は各ICレコーダ2の基準時刻に時間合せをした後の信号、データから弾性波の初動到達時間を求めたものを示している。図3(3)に示すように、振動信号検知用のICレコーダ2に記録された基準時刻に時間合せした後の振動信号から振動信号発生時刻を決定することができ、弾性波測定用のICレコーダ2に記録された基準時刻に時間合せした後の弾性波データの初動から、弾性波初動到達時刻を決定することができるので、これら振動信号発生時刻、弾性波初動到達時刻から弾性波の初動到達時間を算出する。
図4に複数のジオフォン3とICレコーダ2の基本セットの3次元的なレイアウトを例示している。この場合、トンネル坑内の切羽付近に発破信号検知用の発破信号検知装置1とICレコーダ2の基本セットを1セット設置し、切刃前方のトンネル坑外の地表面に弾性波測定用の複数のジオフォン3とICレコーダ2の基本セットを3次元的に設置している。このようなジオフォン3とICレコーダ2の基本セットのレイアウトにより、トンネル坑内の切羽から発破の点火により発生した弾性波をトンネル坑外の地表面に3次元的な配置のジオフォン3とICレコーダ2の基本セットで受振記録して、これら弾性波の伝播経路を3次元的に表すことができる。
なお、このトンネルでジオフォンや点火装置付きの多チャンネル記録装置を用いた従来の弾性波探査方法を行おうとすると、一方の切羽側に点火装置付きの多チャンネル記録装置を設置し、他方の切羽側にジオフォンを設置して、これらを1本のテイクアウトケーブルで繋がなければならないため、坑内2,699m、坑外3,000mで5km以上のケーブルが必要になり、ケーブルを使用しない場合は、既述のGPSや原子時計を用いた特殊な測定装置が必要になると考えられた。
このトンネルで実施した弾性波探査方法では、基準時刻決定のためのパルス信号は、発破器4を抵抗器5に結合して回路を作成し、発破器4を作動させることによって生じるパルス状の電気信号から、発破信号検知装置1を用いてパルス信号を発生させた。
この弾性波探査では、一方の切羽付近に発破器4をセットし、発破器4に発破信号検知装置1を接続してこの発破信号検知装置1にICレコーダ2を接続し、他方の切羽近傍に弾性波測定用のジオフォン3及びICレコーダ2を設置して、一方の切羽で発破を行い、他方の切羽で弾性波を測定した。
測定の結果、弾性波の初動到達時間は24.84msであることが確認された。発破地点とジオフォンの距離は132.70mであることは既知の情報であり、この区画の弾性速度は5.342km/secであることが算出された。
また、記録装置に、ICレコーダの他、このようなICレコーダと概ね同等の機能を有する各種可搬型の不揮発性の記憶装置を採用してもよく、受振センサに、ジオフォンの他、このようなジオフォンと概ね同等の機能を有する各種可搬型の電気機械式の受振センサを採用してもよく、測定機器は種々に変更可能である。
2 記録装置(ステレオICレコーダ)
3 受振センサ(ジオフォン)
4 発破器
5 抵抗器
Claims (4)
- 地山の起振点で振動を発生させて、起振点での振動の発生を検知器により検知し、前記検知器に電気的に接続された記録装置に振動信号として振動発生時刻とともに記録し、起振点で発生させた振動により地山を伝播する弾性波を地山の既知の受振点で受振センサにより受振し、前記受振センサに電気的に接続された記録装置に弾性波データとして弾性波初動到達時刻とともに記録して、前記記録装置に記録された前記振動発生時刻と前記弾性波初動到達時刻に基いて地山の弾性波速度を算出する弾性波探査方法において、
前記記録装置に、振動信号検知用、弾性波測定用として各別に、ICレコーダを含む可搬型の不揮発性の記憶装置を採用して、前記検知器と前記記憶装置、前記受振センサと前記記憶装置をそれぞれ基本セットとし、
地山の起振点で振動を発生させる前に、前記振動信号検知用、弾性波測定用の各記憶装置を前記検知器、前記受振センサに接続しないで録音状態とし、この録音状態で、前記各記憶装置に任意の同時刻に共通のパルス信号を入力し、前記パルス信号入力後の前記各記憶装置を録音状態のまま前記検知器、前記受振センサに接続して、
この状態から、地山の起振点で振動を発生させて、前記起振点での振動の発生を前記検知器により検知して前記振動信号検知用の記憶装置に振動信号として記録するとともに、前記起振点で発生させた振動により地山を伝播する弾性波を前記受振センサで受振して前記弾性波測定用の記憶装置に前記弾性波データとして記録して、
前記起振点での振動発生前に前記各記憶装置に入力した前記パルス信号を前記振動信号検知用、弾性波測定用の各記憶装置内の基準時刻として、前記振動信号検知用の記憶装置に記録された前記振動信号から振動信号発生時刻を決定し、前記弾性波測定用の記憶装置に記録された前記弾性波データから弾性波初動到達時刻を決定して、弾性波の初動到達時間を求め、当該初動到達時間に基いて地山の弾性波速度を算出する、
ことを特徴とする弾性波探査方法。 - 受振センサにジオフォンを含む可搬型の電気機械式の受振センサを採用する請求項1に記載の弾性波探査方法。
- 地山の受振点が複数の場合、受振点毎に受振センサと記憶装置の基本セットを設置する請求項1又は2に記載の弾性波探査方法。
- 起振点での振動の発生を終了した後、各記憶装置間に録音時間の誤差がある場合、前記各記憶装置を録音状態としたまま、検知器、受振センサから切り離した後、任意の同時刻にパルス信号を入力して、録音時間の誤差を補正する請求項1乃至3のいずれかに記載の弾性波探査方法。
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