以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに以下に記載した構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
(実施形態1)
図1は、実施形態1を示す双方向DC/DCコンバータ1の回路図である。ここで、1次直流電圧源2と2次直流電圧源3には、図示していないが各々負荷が接続されている。この双方向DC/DCコンバータ1は、1次回路4と2次回路5と、トランス19から構成されている。1次回路4は、1次直流電圧源2と1次側平滑コンデンサ11と1次側変換回路6と1次インダクタ8から構成されている。一方、2次回路5は、2次側変換回路7とバイパス回路9と2次インダクタ10と2次側平滑コンデンサ12と2次直流電圧源3から構成されている。
図1より、1次側変換回路6は、スイッチング素子Q1〜Q4から成るインバータ回路と、ダイオード等の整流素子D1〜D4から成る全波整流回路から構成されている。一方、2次側変換回路7は、スイッチング素子Q5とQ6から成るインバータ回路と、整流素子D5とD6から成る全波整流回路から構成されている。また、トランス19は、1次側変換回路6と2次側変換回路7間に接続され絶縁と電圧レベル変換を行う。そして、バイパス回路9は、スイッチング素子Q10、Q20からなる少なくとも1つのスイッチング回路で構成されており、2次直流電圧源3と2次インダクタ10との接続点13と、トランス19の2次巻線15との間に配置されている。なお、実施形態として整流回路は、全波整流回路としているが半波整流回路としてもよい。
図1より、1次側変換回路6のスイッチング素子Q1〜Q4から成るフルブリッジ構成のインバータ回路は、1次直流電圧源2から2次直流電圧源3に電力供給を行う手段として機能する。ここで、インバータ回路はトランス19の1次巻線14に正負の電圧を印加出来る構成であればよいので、ハーフブリッジやプッシュプル構成でもよく、更にはスイッチング動作を行う半導体素子の損失改善のため、ZVS(Zero Voltage Switching)、ZCS(Zero Current Switching)動作を行うような補助的な回路と素子が付加されていてもよい。また、1次回路4に位相シフト制御時にZVS動作の役割を担う1次インダクタ8が配置されており、1次インダクタ8にはトランス19の漏れインダクタンス成分も含まれる。
1次側変換回路6のスイッチング素子Q1とQ4、またはスイッチング素子Q2とQ3を対として、図示しない制御部により交互に導通制御が行われることにより、トランス19の1次巻線14に印加される電圧を正負交互に切り替えて2次回路5に電力が供給される。制御方法としては、PWM(Pulse Width Modulation)や位相シフト制御等を用いてもよい。
1次側変換回路6の整流素子D1〜D4から成るダイオードブリッジ全波整流回路は、2次直流電圧源3から1次直流電圧源2に電力供給を行う手段として機能する。図1では、スイッチング素子Q1〜Q4を、MOS−FET(Metal Oxide Semiconductor−Field Effect Transistor)で示しているが、MOS−FETはボディダイオードを有しており、このダイオードが全波整流の役割を担うことになり、全波整流回路を構成するため新たに整流素子を追加する必要はない。なお、スイッチング素子として、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、バイポーラトランジスタ等を用いてもよく、これらボディダイオードを有しない素子は、全波整流回路を構成するためスイッチング素子に並列に整流素子を接続する必要がある。また、1次側変換回路6のスイッチング素子Q1〜Q4は、整流素子D1〜D4が導通している際、導通している整流素子に並列接続しているスイッチング素子をオンさせる、いわゆる同期整流動作を行わせてもよい。
図1より、1次側平滑コンデンサ11は、1次直流電圧源2と1次側変換回路6との間に並列に配置される。1次直流電圧源2から2次直流電圧源3に電力供給を行う場合にはスイッチングに伴う高周波電流成分を供給する役割を果たし、2次直流電圧源3から1次直流電圧源2に電力供給を行う場合にはスイッチングに伴う高周波電流成分を吸収や除去を行い出力側に直流電流を供給する役割を果たす。
トランス19は、1次側変換回路6のスイッチング素子Q1〜Q4からなるインバータ回路からの出力を入力として絶縁と電圧レベル変換をして2次側変換回路7の入力となるように接続する。前記インバータ回路はフルブリッジ構成による2端子出力であるためトランス19の1次巻線14は1巻線であるが、前記インバータ回路がプッシュプル構成である場合は3端子出力となり、トランス19の1次巻線14はセンタータップを有する2巻線構造となる。一方、トランス19の2次巻線15は巻線中央部にタップが設けられたいわゆるセンタータップ構成となっている。なお、2次巻線15を1巻線構造とし、後述する2次側変換回路7をブリッジ構成の全波整流回路でもよい。
図1より、2次側変換回路7の整流素子D5とD6から成る全波整流回路は、1次直流電圧源2から2次直流電圧源3に電力供給を行う手段として機能する。すなわち、トランス19により絶縁と電圧レベル変換された信号を全波整流し、2次インダクタ10と2次側平滑コンデンサ12からなるフィルタ平滑部16により、脈流分が除去されて2次直流電圧源3に接続され供給される。また、2次側変換回路7のスイッチング素子Q5とQ6は、整流素子D5とD6が導通している際、導通している整流素子に並列接続しているスイッチング素子をオンさせる、いわゆる同期整流動作を行わせてもよい。また、トランス19の2次巻線15の両端部は整流素子D5とD6のアノードに接続しカソードを共通接続してフィルタ平滑部16の2次インダクタ10の一端に接続され、他端が2次直流電圧源3のプラス端子に接続され、トランス19の2次巻線15のセンタータップ部が2次直流電圧源3のマイナス端子に接続した整流部の構成でもよい。更に一般的なことであるが、2次インダクタ10は、2次直流電圧源3のプラス端子に接続されるが、マイナス端子側へ移動させても同じである。
2次側変換回路7のスイッチング素子Q5とQ6から成るインバータ回路は、2次インダクタ10と併せてカレントフェッドプッシュプル構成のスイッチング回路となり、2次直流電圧源3から1次直流電圧源2に電力供給を行う手段として機能する。図1では、2次側変換回路7のスイッチング素子Q5とQ6を、MOS−FETで示しているが、MOS−FETはボディダイオードを有しており、このダイオードが全波整流の役割を担うことになり、全波整流回路を構成するため新たに整流素子を追加する必要はない。なお、スイッチング素子として、IGBT、バイポーラトランジスタ等を用いてもよく、これらボディダイオードを有しない素子は、全波整流回路を構成するためスイッチング素子に並列に整流素子を接続する必要がある。
なお、1次側変換回路6と2次側変換回路7についてスイッチング素子の個数は、図1は1次側に4個で2次側に2個、図7では1次側に4個で2次側に4個となっており、1次側についてはプッシュプル、ハーフブリッジ構成の回路でも良く、その場合、1次側で使用するスイッチング素子は2個となる。使用するスイッチング素子が1個の場合となると、回路方式は所謂フォワード方式となり、適用可能である。
2次側平滑コンデンサ12は2次直流電圧源3に並列接続され、1次直流電圧源2から2次直流電圧源3に電力供給を行う場合において、2次インダクタ10と2次側平滑コンデンサ12からなるフィルタ平滑部16はLCフィルタ構成によりスイッチングに伴う高周波成分を除去する役割を果たし、2次直流電圧源3から1次直流電圧源2に電力供給を行う場合には、スイッチングに伴う高周波電流成分を供給する役割を果たす。
図1において、実施形態1では、2次回路5の2次インダクタ10と2次直流電圧源3との接続点13と、トランス19の2次巻線15との間に接続されたスイッチング素子Q10とQ20から成るバイパス回路9を備えている。スイッチング素子Q10の一端は、Q5のドレイン(整流素子D5のカソード)とトランス19の2次巻線15の一端側と接続し、他端は2次直流電圧源3のプラス側、2次インダクタ10の一端と接続している。また、スイッチQ20の一端は、Q6のドレイン(整流素子D6のカソード)とトランス19の2次巻線15の他端側と接続し、他端は2次直流電圧源3のプラス側で2次インダクタ10の一端と接続している。
バイパス回路9により、2次直流電圧源3から1次直流電圧源2へ電力供給を行う場合には、2次回路5の2次直流電圧源3を通らずに2次インダクタ10のエネルギーを出力である1次回路4へ放出出来る経路を設けるようにしている。また、1次直流電圧源2から2次直流電圧源3へ電力供給を行う場合には、出力である2次直流電圧源3を通らずに1次直流電圧源2から2次インダクタ10にエネルギーを蓄積させる経路を設けるようにしている。なお、実施形態1において、バイパス回路9を構成する双方向制御可能なスイッチング素子Q10、Q20からなる少なくとも1つのスイッチング回路をスイッチング動作させなければ、2次直流電圧源3から1次直流電圧源2への昇圧動作については、特許文献1で開示されている従来の技術を適用可能である。また、1次直流電圧源2から2次直流電圧源3への降圧動作についても、従来の技術を適用可能である。
このように実施形態1の構成にすることで、1次直流電圧源2から2次直流電圧源3に電力供給を行う順方向や、2次直流電圧源3から1次直流電圧源2に電力供給を行う逆方向の両方向において、昇圧及び降圧動作を行うことが可能となる。
(実施形態2)
双方向DC/DCコンバータにおいて、図1の実施形態1ではバイパス回路9がスイッチング素子Q10とQ20で構成されているのに対し、実施形態2ではバイパス回路39がスイッチング素子Q10とQ20の代わりにMOS−FETを用いている。
図2は、実施形態2の双方向DC/DCコンバータ30の回路図である。図2において、バイパス回路39は、4つのスイッチング素子Q11、Q12、Q21、Q22と、4つの整流素子D11、D12、D21、D22から構成されている。
図2において、実施形態1で使用したスイッチング素子Q10は、実施形態2では、MOS−FETで示したスイッチング素子Q11とQ12のソース端子を共通に逆向きに直列接続した双方向スイッチに置き換わって構成されている。同様に、実施形態1で使用したスイッチング素子Q20は、MOS−FETで示したスイッチング素子Q21とQ22のソース端子を共通に逆向きに直列接続した双方向スイッチに置き換わって構成されている。ここで、ソース端子ではなくドレイン端子を共通接続してもよく、MOS−FETではなく他の素子を用いて構成してもよい。また半導体素子を逆直列接続した構成でなく、逆耐圧を持った半導体素子等の他の構成で双方向スイッチを構成してもよい。
図2の実施形態2において、バイパス回路39を構成するスイッチング素子Q12とQ22については、1次直流電圧源2から2次直流電圧源3への順方向電力伝送時には、スイッチング動作させる必要はなく整流素子D12とD22を使用する。なお、整流素子D12とD22が導通している期間に、スイッチング素子Q12とQ22を導通させても問題ない。一方、スイッチング素子Q11とQ21については、2次直流電圧源3から1次直流電圧源2への逆方向電力伝送時には、スイッチング動作させる必要はなく整流素子D11とD21を使用する。なお、整流素子D11とD21が導通している期間に、スイッチング素子Q11とQ21を導通させても問題ない。
このように実施形態2の構成において、1次直流電圧源2から2次直流電圧源3に電力供給を行う順方向や、2次直流電圧源3から1次直流電圧源2に電力供給を行う逆方向の両方向において、昇圧及び降圧動作を行うことが可能となる。
(実施形態3)
図3は、実施形態3における双方向DC/DCコンバータ40の回路図である。実施形態1と2では、1次直流電圧源2から2次直流電圧源3に電力供給を行う順方向と、2次直流電圧源3から1次直流電圧源2に電力供給を行う逆方向の両方向において、昇圧や降圧動作を可能としたが、実際には2次直流電圧源3から1次直流電圧源2に電力供給を行う場合のみに昇圧や降圧動作を求められる場合もある。その場合は、図2の実施形態2における双方向DC/DCコンバータ30を、図3の実施形態3における双方向DC/DCコンバータ40に変形することが可能である。この回路により、バイパス回路49は、2つの整流素子と1つのスイッチング素子に簡素化することが可能である。
図3の実施形態3では、実施形態2で使用したスイッチング素子Q11とQ21は、順方向での昇圧動作は必要ないことから削除した。次に、実施形態2で使用した動作原理上変化無い整流素子D11とスイッチング素子Q12の接続位置を入れ替えて、同様に整流素子D21とスイッチング素子Q22の接続位置も入れ替えた。
更に、実施形態2で使用したスイッチング素子Q12とQ22を1つのスイッチング素子Q12にまとめた。その理由として、図2の実施形態2において、バイパス回路39を構成するスイッチング素子Q12がオンしているときには、整流素子D21が逆バイアスされることにより、スイッチング素子Q22の電圧はゼロとなる。これは、同タイミングにてオン動作していても問題ないことを示す。同様に、スイッチング素子Q22がオンしているときには、整流素子D11が逆バイアスされることにより、スイッチング素子Q12の電圧はゼロとなる。これは、同タイミングにてオン動作していても問題ないことを示す。このことから、図3の実施形態3のように、1つのスイッチング素子Q12にまとめても、動作上変化がないことを示している。
同様に、1次直流電圧源2から2次直流電圧源3に電力が供給されるときのみに昇圧や降圧動作を求められる場合に対しても、同様にスイッチング素子Q12とQ22は、逆方向での降圧動作は必要ないことから削除し、図4の実施形態3の変形例のように、スイッチング素子Q11とQ21を1つのスイッチング素子Q11にまとめても、動作上変化はない。なお、簡素化した変形を説明するため、ダイオードに並列接続したスイッチング素子を削除したが、同期整流動作を行わせたい場合は、削除する必要はない。
ところで、実施形態1〜3においては、バイパス回路9、39、49は、2次回路5の2次インダクタ10と2次直流電圧源3との接続点13と、トランス19の2次巻線15との間に接続されるが、バイパス回路9、39、49とトランス19の2次巻線15の接続点21及び22は2次側変換回路7とも接続されている。図5に示した変形例のように、バイパス回路69とトランス19の複数の巻線を有する2次巻線15の中間タップの1つに接続しても、本発明の趣旨から逸脱するものではなく、図6に示した別の変形例のように、トランス19の複数の巻線を有する2次巻線15のうちの主巻線N2及びN3とは、別巻線N4、N5をバイパス回路79の接続点としても、本発明の趣旨から逸脱するものではない。
また、図7に示した別の変形例のように、トランス19の2次巻線15を1巻線とし、2次側変換回路7は4素子を用いたブリッジダイオード、フルブリッジインバータの構成でもよい。また、図8に示した別の変形例のように、バイパス回路99は、1つのスイッチング素子Q10で構成させてもよい。
図2の実施形態2の回路構成において、バイパス回路39はじめ、各スイッチング素子をオンオフ動作をさせることで、1次直流電圧源2から2次直流電圧源3に電力供給を行う順方向と、2次直流電圧源3から1次直流電圧源2に電力供給を行う逆方向の両方向において、昇圧及び降圧動作を行うことが可能となる。以下の実施例において、具体的に説明していくこととする。
以下の説明において、トランス19の1次巻線14の巻数をN1、2次巻線15の巻数の各々をN2とN3とし、2次巻線15の各巻数は同じ巻数とする(N2=N3)。また、1次巻線と2次巻線の比を、n=N1/N2=N1/N3とする。nは設計項なので、製品仕様により様々であり、仕様により1より大きいときもあれば、小さいときもある。ちなみに、車載用のDC/DCコンバータでは1より大きくなる。また、入力である2次直流電圧源3の電圧値をV2とし、出力である1次直流電圧源2の電圧値をV1とする。
図9〜図13を参照して、2次直流電圧源3から1次直流電圧源2への逆方向電力伝送時に、1次直流電圧源2の2次回路5側での換算値が2次直流電圧源3よりも低い場合の、降圧動作の詳細について説明する。
図9は双方向DC/DCコンバータ30の各スイッチング素子のタイミングチャートと各部電圧や電流波形を示した図であり、図10〜図13は図9で示した各状態におけるエネルギーの流れを示した図である。
図9において、4つの遷移状態が存在しており、状態1はt0〜t1、状態2はt1〜t2、状態3はt2〜t3、状態4はt3〜t0であって、状態1→状態2→状態3→状態4→状態1という具合に遷移する。
図9の各波形は、オンオフ動作させる2次側変換回路7のスイッチング素子Q5とQ6のゲート信号、バイパス回路39のスイッチング素子Q12とQ22のゲート信号、2次インダクタ10の電流IL2(2次直流電圧源3からトランス19への方向を正とする)、ドレイン電流IQ5とドレイン−ソース間電圧VQ5、ドレイン電流IQ12とドレイン−ソース間電圧VQ12、ドレイン電流IQ6とドレイン−ソース間電圧VQ6、ドレイン電流IQ22とドレイン−ソース間電圧VQ22、1次側変換回路6の整流素子D1〜D4の電流ID1〜ID4(ID1=ID4、ID2=ID3)、トランス19の1次巻線14の電圧VTN1(黒丸で示す巻き始め端部18を正とする)、を示している。
状態1に遷移する前の状態は状態4であるが、時刻t0にてスイッチング素子Q22がオフ、スイッチング素子Q5がオンすることで、次の状態1へ遷移する。
図10は、実施例1の状態1(t0〜t1)において電流が流れる様子を示した回路図である。図10において、2次インダクタ10に流れていた電流が、それを維持しようとして入力である2次直流電圧源3、2次インダクタ10、トランス19において2次巻線15の巻線N2から1次巻線14の巻線N1、整流素子D1、1次直流電圧源2、整流素子D4、トランス19、スイッチング素子Q5、2次直流電圧源3の経路で電流が流れる。このとき、トランス19の1次巻線14側には整流素子D1とD4が導通することで出力である1次直流電圧源2が印加されるため、トランス19の2次巻線15側の巻線N2に現れる電圧は巻数比nで換算された電圧V1/nが現れる。例えば、車載用の場合には、nは1より大きくなるのでV1/nはV1よりも小さくなる。
したがって、2次インダクタ10には、降圧動作条件である入力側V2>V1/nから、図10において、V1/nよりもV2の方が電位が高くなるのでV2側を向くように示した矢印をプラスとして、2次直流電圧源3とトランス19の2次巻線15の巻線N2の電圧V1/nとの差分が印加され、2次インダクタ10に流れる電流は線形的に上昇する。すなわち、出力側1次直流電圧源2へエネルギーを伝送しつつ、2次インダクタ10にエネルギーを蓄積する動作を行っている。時刻t1にて、スイッチング素子Q5をオフ、スイッチング素子Q12をオンさせることで、次の状態2へ遷移する
図11は、実施例1の状態2(t1〜t2)において電流が流れる様子を示した回路図である。図11において、2次インダクタ10に流れていた電流は、それを維持しようとして2次インダクタ10、トランス19において2次巻線15の巻線N2から1次巻線14の巻線N1、整流素子D1、1次直流電圧源2、整流素子D4、トランス19、スイッチング素子Q12、整流素子D11、2次インダクタ10の経路で電流が流れる。2次インダクタ10のエネルギーが、入力である2次直流電圧源3を介さずに、出力である1次直流電圧源2に伝送される状態である。
トランス19の2次巻線15の巻線N2に現れる電圧は、状態1と同様に整流素子D1とD4が導通しているため、巻数比nで換算された電圧V1/nが現れる。したがって、2次インダクタ10には、図11に電位の高いV1/nの方をプラスとして示した矢印の向きでV1/nが印加され、2次インダクタ10に流れる電流は線形的に下降する。すなわち、2次インダクタ10のエネルギーを放出する動作を行っている。
つまり、1次回路4側は整流素子D1とD4が導通しているので、トランス19の1次巻線14には黒丸で示す巻き始め端18をプラスとして1次直流電圧V1が印加されて、トランス19の2次巻線15の巻線N2にはV1/nが現れる。2次回路5側は整流素子D11とスイッチング素子Q12が導通しているので、トランス19の2次巻線15の巻線N2、2次インダクタ10、整流素子D11、スイッチング素子Q12の短絡経路が形成されており、各々に印加される電圧の総和は短絡経路ではゼロになる。整流素子D12とスイッチング素子Q12は導通しているので印加電圧はゼロとなり、2次インダクタ10にトランス19の2次巻線15の巻線N2の電圧V1/nが印加される。そして、その電位の向きは短絡経路の中で、電圧の総和がゼロとなるように、図11の矢印の向きとなる。入力である2次直流電圧源3を介していないため、トランス19の2次巻線15の巻線N2の電圧V1/nが高くなり、矢印はV1/n側を向いている。
時刻t2にてスイッチング素子Q12がオフ、スイッチング素子Q6がオンすることで、次の状態3へ遷移する。
図12は、実施例1の状態3(t2〜t3)において電流が流れる様子を示した回路図である。図12において、2次インダクタ10に流れていた電流は、それを維持しようとして入力である2次直流電圧源3、2次インダクタ10、トランス19において2次巻線15の巻線N3から1次巻線14の巻線N1、整流素子D3、1次直流電圧源2、整流素子D2、トランス19、スイッチング素子Q6、2次直流電圧源3の経路で電流が流れる。
このとき、トランス19の1次回路4側には整流素子D3とD2が導通することで出力の1次直流電圧源2が印加されるため、トランス19の2次巻線15の巻線N3に現れる電圧は巻数比nで換算された電圧V1/nが現れる。したがって、図12のように、2次インダクタ10には、降圧動作条件であるV2>V1/nのため、電位はV2の方が高くなるようにするために、矢印がV2側をプラスとして向くように、入力用の2次直流電圧源3とトランス19の2次巻線15の巻線N3の電圧V1/nとの差分が印加されて、2次インダクタ10に流れる電流は線形的に上昇する。すなわち、出力側の1次直流電圧源2へエネルギーを伝送しつつ、2次インダクタ10にエネルギーを蓄積する動作を行っている。時刻t3にて、スイッチング素子Q6をオフ、スイッチング素子Q22をオンさせることで、次の状態4へ遷移する。
図13は、実施例1の状態4(t3〜t0)において電流が流れる様子を示した回路図である。図13において、2次インダクタ10に流れていた電流は、それを維持しようとして2次インダクタ10、トランス19において2次巻線15の巻線N3から1次巻線14の巻線N1、整流素子D3、1次直流電圧源2、整流素子D2、トランス19、スイッチング素子Q22、整流素子D21、2次インダクタ10の経路で電流が流れる。2次インダクタ10のエネルギーが、入力である2次直流電圧源3を介さずに、出力である1次直流電圧源2に伝送される状態である。
トランス19の2次巻線15の巻線N3に現れる電圧は、状態3と同様に整流素子D3とD2が導通しているため、巻数比nで換算された電圧V1/nが現れる。したがって、図13のように、2次インダクタ10には、入力である2次直流電圧源3を介していないため、V1/nの電位が高くなるため、V1/nをプラスとして向く矢印の向きに、V1/nが印加され、2次インダクタ10に流れる電流は線形的に下降する。すなわち、2次インダクタ10のエネルギーを放出する動作を行っている。時刻t0にてスイッチング素子Q22がオフ、スイッチング素子Q5がオンすることで、次の状態1へ遷移する。
ここで、入力である2次直流電圧源3の電圧値V2と出力である1次直流電圧源2の電圧値V1との比である入出力電圧比V1/V2を求めるに当たって、状態3と状態4は、状態1と状態2と同じ動作であるため、スイッチング周期Tsのt0からt2までの半周期Ts/2から求められる。2次インダクタ10のエネルギー蓄積、放出すなわち流れる電流の初期値i(t0)と最終値i(t2)が等しくなることで求められる。
まず、状態1での2次インダクタ10の電流上昇分ΔI1は、式(1)で表される。
ΔI1=i(t1)−i(t0)=(V2−V1/n)/L×Ton・・・(1)
ここで、Lは2次インダクタ10のインダクタンス値であり、Tonはスイッチング素子Q5のオン時間(=t1−t0)である。
次に、状態2での2次インダクタ10の電流下降分ΔI2は、式(2)で表される。
ΔI2=i(t1)−i(t2)=(V1/n)/L×Toff・・・(2)
ここで、Toffはスイッチング素子Q12のオン時間(=t2−t1)である。
動作が安定であるということは、ΔI1=ΔI2が成立するということであり、式(1)と式(2)を整理すると、入出力電圧比である式(3)が求まる。
V1/V2=nD・・・(3)
ここで、D=Ton/(Ton+Toff)はデューティ比を表し、0≦D≦1から巻数比n分の倍率以下の電圧の制御が可能であることを示している。
以上の説明のように、バイパス回路39を追加し、図9に示したスイッチングタイミングで動作させると、状態2と状態4のように入力用の2次直流電圧源3を介さずに出力へのエネルギー伝達可能な経路を造り出すことができるため、効率の良い降圧動作が可能となる。
次に、スイッチング素子Q5とQ6、およびスイッチング素子Q12とQ22において、図9で示したスイッチングのタイミングとは異なるタイミングを与えることで、別動作モードでの降圧動作も行うことが可能である。
図14と図15を参照して、2次直流電圧源3から1次直流電圧源2への逆方向電力伝送時の昇降圧動作の詳細について説明する。図14は双方向DC/DCコンバータ30の各スイッチング素子のタイミングチャートと各部電圧及び電流波形である。図15は図14で示した状態1(t0〜t1)と状態3(t2〜t3)におけるエネルギーの流れを示した図である。状態2(t1〜t2)と状態4(t3〜t0)は、実施例1の逆方向での降圧動作による電力伝送時の状態2(図11)と状態4(図13)と同じである。状態1に遷移する前の状態は、後に説明する状態4であるが、時刻t0にてスイッチング素子Q22がオフ、スイッチング素子Q5とQ6がオンすることで、次の状態1へ遷移する。
<状態1(t0〜t1)>
図15に示すように、2次インダクタ10に流れていた電流は、それを維持しようとして、1つ目の経路として、2次インダクタ10、トランス19の2次巻線15の巻線N2、スイッチング素子Q5、2次直流電圧源3があり、2つ目の経路として、2次インダクタ10、トランス19の2次巻線15の巻線N3、スイッチング素子Q6、2次直流電圧源3の2つの経路で電流が流れる。
また、スイッチング素子Q5とQ6がオンしているため、トランス19は短絡状態であり、整流素子D1からD4を順方向にバイアスすることが出来ず、1次回路4への電力伝送は出来ない。このとき、図15のように、2次インダクタ10には、2次直流電圧源3を介するために電位の高い2次直流電圧源3側をプラスとして矢印の向きが決まり、入力2次直流電圧源3が印加され、2次インダクタ10に流れる電流は線形的に上昇する。すなわち、2次インダクタ10にエネルギーを蓄積する動作を行っている。時刻t1にて、スイッチング素子Q5とQ6をオフ、スイッチング素子Q12をオンさせることで、次の状態2へ遷移する。
<状態2(t1〜t2)>
この状態2は、実施例1の図11で説明した状態2と同じで、2次インダクタ10のエネルギーが、入力である2次直流電圧源3を介さずに、出力である1次直流電圧源2に伝送される状態である。トランス19の2次巻線15の巻線N2に現れる電圧は、整流素子D1とD4が導通しているため、巻数比nで換算された電圧V1/nが現れ、2次インダクタ10に流れる電流は線形的に下降する。すなわち、2次インダクタ10のエネルギーを放出する動作を行っている。時刻t2にてスイッチング素子Q12がオフ、スイッチング素子Q5とQ6がオンすることで、次の状態3へ遷移する。
<状態3(t2〜t3)>
この状態は、実施例2の状態1と同じで、2次インダクタ10には、入力2次直流電圧源3が印加され、2次インダクタ10に流れる電流は線形的に上昇する。すなわち、2次インダクタ10にエネルギーを蓄積する動作を行っている。時刻t3にて、スイッチング素子Q5とQ6をオフ、スイッチング素子Q22をオンさせることで、次の状態4へ遷移する。
<状態4(t3〜t0)>
この状態4は、実施例1の図13で説明した状態4と同じで、2次インダクタ10のエネルギーが、入力である2次直流電圧源3を介さずに、出力である1次直流電圧源2に伝送される状態である。トランス19の2次巻線15の巻線N3に現れる電圧は、整流素子D3とD2が導通しているため、巻数比nで換算された電圧V1/nが現れ、2次インダクタ10に流れる電流は線形的に下降する。すなわち、2次インダクタ10のエネルギーを放出する動作を行っている。時刻t0にてスイッチング素子Q22がオフ、スイッチング素子Q5とQ6がオンすることで、次の状態1へ遷移する。
ここで、入力である2次直流電圧源3の電圧値V2と出力である1次直流電圧源2の電圧値V1との比である入出力電圧比V1/V2を求めるに当たって、状態3と状態4は、状態1と状態2と同じ動作であるため、スイッチング周期Tsのt0からt2までの半周期Ts/2から求められる。
2次インダクタ10のエネルギー蓄積、放出すなわち流れる電流の初期値i(t0)と最終値i(t2)が等しくなることで求められる。まず、状態1での2次インダクタ10の電流上昇分ΔI1は、式(4)で表される。
ΔI1=i(t1)−i(t0)=V2/L×Ton・・・(4)
ここで、Lは2次インダクタ10のインダクタンス値であり、Tonはスイッチング素子Q5のオン時間(=t1−t0)である。
次に、状態2での2次インダクタ10の電流下降分ΔI2は、式(5)で表される。
ΔI2=i(t1)−i(t2)=(V1/n)/L×Toff・・・(5)
ここで、Toffはスイッチング素子Q12のオン時間(=t2−t1)である。
動作が安定であるということは、ΔI1=ΔI2が成立することから、式(4)と式(5)を整理すると、入出力電圧比である式(6)が求まる。
V1/V2=n×D/(1−D)・・・(6)
ここで、D=Ton/(Ton+Toff)はデューティを表し、0≦D≦0.5の範囲であれば、0≦D/(1−D)≦1から巻数比nが倍以下の電圧の制御が可能であることを示している。また、0.5<Dの条件であれば、1<D/(1−D)から巻数比nの倍以上の電圧の制御が可能であることを示している。すなわち、昇降圧動作が可能であることを示している。
以上の説明のように、バイパス回路39を追加し、図14に示したスイッチングタイミングで動作させると、状態2や状態4のように入力2次直流電圧源3を介さずに出力へのエネルギー伝達可能な経路を造り出すことが出来て、効率の良い昇降圧動作が可能となる。
これまでの説明は、スイッチング素子Q11とQ12、およびQ21とQ22から成るバイパス回路39により、入力2次直流電圧源3を介さずに出力へのエネルギー伝達可能な経路を作り出すことで降圧動作を可能とした。ところで、1次側変換回路6のスイッチング素子は、これまでの説明では整流素子が導通している際に同期整流動作させてもよいという説明であったが、意図的にスイッチング動作させた状態を追加することで、これまで説明した動作状態の他にも、効率の良い動作状態を作り出すことが可能である。以下、更に多様な動作状態の説明を行う。
図16と図17は、実施例3において電流が流れる様子を示した回路図である。図16と図17に、図15で示した2次側変換回路7のスイッチング素子Q5とQ6により、2次インダクタ10に入力である2次直流電圧源3が印加され、エネルギーを蓄積する動作状態と等価な動作状態を1次側変換回路6のスイッチング素子により実現させた状態を示す。
図16は、2次側変換回路7のスイッチング素子Q5がオンした状態で、2次インダクタ10の電流は、それを維持しようとして、トランス19の1次巻線14の巻線N1の黒丸で示す巻き始め端18から流れ出そうとして、実施例1の図10のように1次側変換回路6の整流素子D1とD4を順バイアスしようとするが、ここで1次側変換回路6のスイッチング素子Q3をオンさせていることで、トランス19に対して短絡状態を作り出すことが出来る。したがって、図16のように、2次インダクタ10には、2次直流電圧源3を介するために電位が高くなり2次直流電圧源3側をプラスとして矢印の向きを決めて、入力である2次直流電圧源3が印加され、エネルギーを蓄積する動作となる。
また、図16で1次側変換回路6のスイッチング素子Q2をオンさせた破線のループでトランス19を短絡状態としてもよい。また、1次側変換回路6の整流素子D1やD4と並列接続しているスイッチング素子Q1とQ4をオンさせる、いわゆる同期整流動作させてもよい。また、図17は、2次側変換回路7のスイッチング素子Q6をオンさせた場合の状態で、1次側変換回路6のスイッチング素子Q1とQ4により、同様にトランス19の短絡状態を作り出した状態である。
図18と図19は、実施例3において電流が流れる様子を示した回路図である。図18と図19に、バイパス回路39と1次側変換回路6のスイッチング素子により、2次インダクタ10のエネルギーが、1次直流電圧源2と2次直流電圧源3の両電圧源を経由しない環流動作を示す。
図18は、バイパス回路39のスイッチング素子Q12がオンした状態で、2次インダクタ10の電流はそれを維持しようとして、トランス19の2次巻線15の巻線N2、バイパス回路39のスイッチング素子Q12、整流素子D11の経路で流れ、1次回路4側ではトランス19の1次巻線14の巻線N1の黒丸で示す巻き始め端18から流れ出そうとして、図11のように1次側変換回路6の整流素子D1とD4を順バイアスしようとする。しかしながら、ここで1次側変換回路6のスイッチング素子Q3をオンさせていることで、トランス19に対して短絡状態を作り出すことが出来るため、2次インダクタ10のエネルギーが、1次直流電圧源2や2次直流電圧源3の両電圧源を経由せず、環流する動作となる。
また、図18で1次側変換回路6のスイッチング素子Q2をオンさせた破線のループでトランス19を短絡状態としてもよい。また、1次側変換回路6の整流素子D1やD4と並列接続しているスイッチング素子Q1とQ4をオンさせる、いわゆる同期整流動作させてもよい。図19は、バイパス回路39のスイッチング素子Q22をオンさせた場合の状態で、1次側変換回路6のスイッチング素子Q1とQ4により、同様にトランス19の短絡状態を作り出した状態である。
この動作状態は、図示していない制御回路による制御時の1つの動作状態として利用するのは当然であるが、異常時の対応で2次インダクタ10のエネルギーを即座に両電圧源に対して、遮断することが可能となる。
図20と図21は、実施例4において電流が流れる様子を示した回路図である。図20と図21に、バイパス回路39と2次側変換回路7のスイッチング素子による特殊な動作状態を示す。特に、1次側変換回路6のスイッチング素子の状態や、1次直流電圧源2と2次直流電圧源3の電圧レベル差によって、動作が異なることが特長であるため、1次回路4側の電流の流れは図示していない。
図20は、2次側変換回路7のスイッチング素子Q5とバイパス回路39のスイッチング素子Q22がオンした状態で、2次インダクタ10の電流はそれを維持しようとして、1つの経路として、トランス19の2次巻線15の巻線N3、バイパス回路39のスイッチング素子Q22、整流素子D21の経路、および、2つ目の経路として、トランス19の2次巻線15の巻線N2、2次側変換回路7のスイッチング素子Q5、2次直流電圧源3の経路の2経路が存在する。
この2経路が成立するためには、トランス19の2次巻線15の巻線N2と巻線N3に入力である2次直流電圧源3の1/2が現れることで成立して安定した状態となる。したがって、2次インダクタ10には、図20に示した矢印をプラスとした向きにV2/2が印加され、2次インダクタ10に流れる電流は線形的に上昇する。すなわち、2次インダクタ10にエネルギーを蓄積する動作を行っている。
つまり、まずトランス19の2次巻線15の巻線N2とN3には、整流素子D21、スイッチング素子Q22、トランス19の2次巻線15の巻線N2とN3、スイッチング素子Q5、2次直流電圧源3の経路で考えると、巻線N2とN3は同じ巻数であるので、2次直流電圧をV2として各々V2/2が印加される。実施例4の2つの短絡経路では電圧の総和がゼロになっている。
次に、1次回路4側の動作については、1次巻線14の巻線N1には巻数比n倍のnV2/2が現れるので、入力である1次直流電圧源2がこの値よりも大きい場合は、1次側変換回路6の整流素子が順バイアス出来ないため、上述したように単純に2次インダクタ10にエネルギーが蓄積される動作状態となる。
一方、入力である1次直流電圧源2がnV2/2よりも小さい場合は、1次回路4側ではトランス19の1次巻線14の巻線N1の黒丸で示す巻き始め端18から流れ出す方向に流れようとして、1次側変換回路6の整流素子D1とD4を順バイアスしようとする。ここで過渡的な動作として、トランス19の漏れインダクタンスや共振インダクタである1次インダクタ8により、入力用1次直流電圧源2とトランス19の1次巻線14の巻線N1に現れた電圧nV2/2との差分が1次インダクタ8に印加され線形的に上昇する。
また、同じく巻き始め端から流れ出す方向であるトランス19の2次巻線15の巻線N3の電流は、反対に線形的に減少しゼロに達すると、2次巻線15の巻線N2の巻き始め端に流れ込む電流である2次インダクタ10の電流と、トランス19の1次巻線14の巻線N1から流れ出す電流(トランス19の巻数比nで換算された電流)が等しくなり、図10で示した2次インダクタ10のエネルギーを入力である2次直流電圧源3を介して、出力である1次直流電圧源2へ伝送する動作状態へと、スイッチング素子のタイミングに依らず遷移する。
また、1次回路4側ではトランス19の1次巻線14の巻線N1の黒丸で示す巻き始め端18から流れ出す方向に流れようとして、1次側変換回路6の整流素子D1とD4を順バイアスしようとするが、ここで1次側変換回路6のスイッチング素子Q3をオンさせていることで、1次インダクタ8にトランス19の1次巻線14に現れた電圧nV2/2が印加され線形的に上昇する。
また、同じく巻き始め端から流れ出す方向であるトランス19の2次巻線15の巻線N3の電流は、反対に線形的に減少しゼロに達すると、2次巻線15の巻線N2の巻き始め端に流れ込む電流である2次インダクタ10の電流と、トランス19の1次巻線14の巻線N1から流れ出る電流(トランス19の巻数比nで換算された電流)が等しくなり、図16で示した1次側変換回路6のスイッチング素子により、2次インダクタ10に入力である2次直流電圧源3が印加されエネルギーが蓄積される動作状態へと、スイッチング素子のタイミングに依らず遷移する。
ここで、1次側変換回路6のスイッチング素子Q3の代わりにQ2をオンさせてもよく、1次側変換回路6の整流素子D1やD4と並列接続しているスイッチング素子Q1とQ4をオンさせる、いわゆる同期整流動作させてもよい。図21は、2次側変換回路7のスイッチング素子Q6とバイパス回路39のスイッチング素子Q12をオンさせた場合の状態で、図20と同様の状態を作り出した状態である。
以上のように、1次側変換回路6と、2次側変換回路7と、バイパス回路39のスイッチングパターンにより、実施例1〜4の、図9や図14に示したスイッチングタイミングでの動作状態の他にも、様々な動作状態を作り出すことが可能である。図9や図14の説明では、スイッチング周期Tsの半周期の中で、2つの動作状態しか存在しないスイッチングパターンであったが、1次側変換回路6と、2次側変換回路7と、バイパス回路39のスイッチングパターンにより複数の動作状態を持たせることも可能であり、多様性に富んだ動作が可能な双方向DC/DCコンバータを実現することができる。
次に、図22〜図26を参照して、1次直流電圧源2から2次直流電圧源3への順方向電力伝送時、従来技術では不可能な2次直流電圧源3の1次回路4側での換算値が1次直流電圧源2よりも高い昇圧動作の詳細について説明する。図22は双方向DC/DCコンバータ30の各スイッチング素子のタイミングチャートと各部電圧と電流波形を示した図である。図23〜図26は、図22で示した各状態におけるエネルギーの流れを示したものである。
図22の各波形は、オンオフ動作させる1次側変換回路6のスイッチング素子Q1〜Q4のゲート信号、ドレイン電流IQ1〜IQ4、ドレイン−ソース間電圧VQ1〜VQ4、バイパス回路39のスイッチング素子Q11とQ21のゲート信号、ドレイン電流IQ11とIQ21、ドレイン−ソース間電圧VQ11とVQ21、2次側変換回路7の整流素子D5とD6に流れる電流ID5とID6、電圧VD5とVD6、トランス19の1次巻線14の巻線N1での電圧VTN1(黒丸で示す巻き始め端18を正とする)、2次インダクタ10の電流IL2(トランス19から2次直流電圧源3への方向を正とする)を示している。状態1に遷移する前の状態は、後に説明する状態4であるが、時刻t0にてスイッチング素子Q2、Q3がオフ、スイッチング素子Q1、Q4、Q11がオンすることで、次の状態1へ遷移する。
<状態1(t0〜t1)>
図23は、実施例5の状態1(t0〜t1)において電流が流れる様子を示した回路図である。図23に示すように、2次インダクタ10に流れていた電流は、それを維持しようとして入力である1次直流電圧源2、スイッチング素子Q1、トランス19の1次巻線14の巻線N1から2次巻線15の巻線N2、2次インダクタ10、スイッチング素子Q11、整流素子D12、トランス19、スイッチング素子Q4、1次直流電圧源2の経路で電流が流れる。このとき、トランス19の1次巻線14側にはスイッチング素子Q1とQ4が導通することで入力の1次直流電圧源2が印加されるため、トランス19の2次巻線15の巻線N2に現れる電圧は巻数比nで換算された電圧V1/nが現れる。
したがって、図23のように、2次インダクタ10には、2次直流電圧源3を介していないので、トランス19の2次巻線15の巻線N2の電圧V1/nに高い電位が生じるため巻線N2側をプラスとして矢印を決めて、トランス19の2次巻線15の巻線N2の電圧V1/nが印加され、2次インダクタ10に流れる電流は線形的に上昇する。すなわち、1次直流電圧源2から2次インダクタ10にエネルギーを蓄積する動作を行っている。時刻t1にて、スイッチング素子Q11をオフさせることで、次の状態2へ遷移する。
<状態2(t1〜t2)>
図24は、実施例5の状態2(t1〜t2)において電流が流れる様子を示した回路図である。図24に示すように、2次インダクタ10に流れていた電流は、それを維持しようとして入力である1次直流電圧源2、スイッチング素子Q1、トランス19の1次巻線14の巻線N1から2次巻線15の巻線N2、2次インダクタ10、2次直流電圧源3、整流素子D5、トランス19、スイッチング素子Q4、1次直流電圧源2の経路で電流が流れる。トランス19の2次巻線15の巻線N2に現れる電圧は、状態1と同様スイッチング素子Q1とQ4が導通しているため、巻数比nで換算された電圧V1/nが現れる。
したがって、図24のように、2次インダクタ10には、2次直流電圧源3側をプラスとして矢印を決めて、入力2次直流電圧源3とトランス19の2次巻線15の巻線N2の電圧V1/nとの差分が印加される。昇圧動作条件であるV2>V1/nから、2次インダクタ10に流れる電流は線形的に下降する。入力である1次直流電圧源2からのエネルギー伝送を行いつつ、2次インダクタ10のエネルギーを放出する動作を行っている。時刻t2にてスイッチング素子Q1とQ4がオフ、スイッチング素子Q2、Q3、Q21がオンすることで、次の状態3へ遷移する。
<状態3(t2〜t3)>
図25は、実施例5の状態3(t2〜t3)において電流が流れる様子を示した回路図である。図25に示すように、2次インダクタ10に流れていた電流は、それを維持しようとして入力である1次直流電圧源2、スイッチング素子Q3、トランス19の1次巻線14の巻線N1から2次巻線15の巻線N3、2次インダクタ10、スイッチング素子Q21、整流素子D22、トランス19、スイッチング素子Q2、1次直流電圧源2の経路で電流が流れる。このとき、トランス19の1次巻線14側にはスイッチング素子Q2とQ3が導通することで入力の1次直流電圧源2が印加されるため、トランス19の2次巻線15の巻線N3に現れる電圧は巻数比nで換算された電圧V1/nが現れる。
したがって、2次インダクタ10には、図25に示した矢印をプラスとして、トランス19の2次巻線15の巻線N3の電圧V1/nが印加され、2次インダクタ10に流れる電流は線形的に上昇する。すなわち、1次直流電圧源2から2次インダクタ10にエネルギーを蓄積する動作を行っている。時刻t3にて、スイッチング素子Q21をオフさせることで、次の状態4へ遷移する。
<状態4(t3〜t0)>
図26は、実施例5の状態4(t3〜t4)において電流が流れる様子を示した回路図である。図26に示すように、2次インダクタ10に流れていた電流は、それを維持しようとして入力である1次直流電圧源2、スイッチング素子Q3、トランス19の1次巻線14の巻線N1から2次巻線15の巻線N3、2次インダクタ10、2次直流電圧源3、整流素子D6、トランス19、スイッチング素子Q2、1次直流電圧源2の経路で電流が流れる。トランス19の2次巻線15の巻線N3に現れる電圧は、状態3と同様にスイッチング素子Q3とQ2が導通しているため、巻数比nで換算された電圧V1/nが現れる。
したがって、図26のように、2次インダクタ10には、2次直流電圧源3を介するため電位が高くなり2次直流電圧源3側をプラスとして矢印を決めて、入力2次直流電圧源3とトランス19の2次巻線15の巻線N3の電圧V1/nとの差分が印加される。昇圧動作条件であるV2>V1/nから、2次インダクタ10に流れる電流は線形的に下降する。入力である1次直流電圧源2からのエネルギー伝送と行いつつ、2次インダクタ10のエネルギーを放出する動作を行っている。時刻t0にてスイッチング素子Q3とQ2がオフ、スイッチング素子Q1、Q4、Q11がオンすることで、次の状態1へ遷移する。
ここで、入力である1次直流電圧源2の電圧値V1と出力である2次直流電圧源3の電圧値V2との比である入出力電圧比V2/V1を求めるに当たって、状態3と状態4は状態1と状態2と同じ動作であるため、スイッチング周期Tsのt0からt2までの半周期Ts/2から求められる。2次インダクタ10のエネルギー蓄積、放出すなわち流れる電流の初期値i(t0)と最終値i(t2)が等しくなることで求められる。
まず、状態1での2次インダクタ10の電流上昇分ΔI1は、式(7)で表される。
ΔI1=i(t1)−i(t0)=(V1/n)/L×Ton・・・(7)
ここで、Lは2次インダクタ10のインダクタンス値であり、Tonは状態1の時間(=t1−t0)である。
次に、状態2での2次インダクタ10の電流下降分ΔI2は、式(8)で表される。
ΔI2=i(t1)−i(t2)=(V2−V1/n)/L×Toff・・・(8)
ここで、Toffは状態2の時間(=t2−t1)であり、動作が安定であるということは、ΔI1=ΔI2が成立することから、式(7)と式(8)を整理すると、入出力電圧比である式(9)が求まる。
V2/V1=1/n/(1−D)・・・(9)
ここで、D=Ton/(Ton+Toff)はデューティを表し、0≦D≦1から巻数比1/n倍以上の電圧の制御が可能であることを示している。すなわち、昇圧動作が可能であることを示している。
以上の説明のように、バイパス回路39を追加し、図22に示したスイッチングタイミングで動作させると、状態1と状態3のように2次直流電圧源3を介さずに1次直流電圧源2から2次インダクタ10にエネルギーを蓄積可能な経路を造り出すことが出来て、従来回路では不可能であった昇圧動作が可能となる
次に、スイッチング素子Q1〜Q4とスイッチング素子Q11とQ21において、図22で示したスイッチングのタイミングとは異なるタイミングを与えることで、別動作モードでの昇圧動作も行うことが可能である。
図27〜図29を参照して、1次直流電圧源2から2次直流電圧源3への順方向電力伝送時の昇降圧動作の詳細について説明する。図27は双方向DC/DCコンバータ30の各スイッチング素子のタイミングチャートと各部電圧と電流波形を示した図である。
図28と図29は、図27で示した状態2と状態4におけるエネルギーの流れを示したものである。状態1と状態3は、実施例5における1次直流電圧源2から2次直流電圧源3への順方向での昇圧動作による電力伝送時の状態1(図23)と状態3(図25)と同じである。状態1に遷移する前の状態は、後に説明する状態4であるが、時刻t0にてスイッチング素子Q2がオフ、スイッチング素子Q1とQ11がオンすることで、次の状態1へ遷移する。
<状態1(t0〜t1)>
状態1は、実施例5の図23で説明した状態1と同じで、トランス19の1次回路4側にはスイッチング素子Q1とQ4が導通することで入力の1次直流電圧源2が印加されるため、トランス19の2次巻線15の巻線N2に現れる電圧は巻数比nで換算された電圧V1/nが現れる。したがって、2次インダクタ10には、図23に示した矢印をプラスとして、トランス19の2次巻線15の巻線N2の電圧V1/nが印加され、2次インダクタ10に流れる電流は線形的に上昇する。すなわち、1次直流電圧源2から2次インダクタ10にエネルギーを蓄積する動作を行っている。時刻t1にて、スイッチング素子Q4とQ11をオフさせ、スイッチング素子Q3をオンさせることで、次の状態2へ遷移する。
<状態2(t1〜t2)>
図28は、実施例6の状態2(t1〜t2)において電流が流れる様子を示した回路図である。図28に示すように、1次回路4側はスイッチング素子Q1とQ3がオンすることで、トランス19は短絡状態となり、2次インダクタ10に流れていた電流は、それを維持しようとして、1つ目の経路として、トランス19の2次巻線15の巻線N2、2次インダクタ10、2次直流電圧源3、整流素子D5があり、2つ目の経路として、トランス19の2次巻線15の巻線N3、2次インダクタ10、2次直流電圧源3、整流素子D6の2つの経路で電流が流れる。1次回路4側は、この2つの経路に流れる電流の差分が流れるが、理想素子で考えると2次回路5側の2つの経路には同じ電流値が流れ、1次回路4側には流れない。
2次インダクタ10には、トランス19が短絡状態であるため、図28に示した矢印をプラスとして、出力2次直流電圧源3が印加され、2次インダクタ10に流れる電流は線形的に下降する。すなわち、2次インダクタ10のエネルギーを放出する動作を行っている。時刻t2にてスイッチング素子Q1がオフ、スイッチング素子Q2とQ21がオンすることで、次の状態3へ遷移する。
<状態3(t2〜t3)>
この状態3は、実施例5の図25で説明した状態3と同じで、トランス19の1次回路4側にはスイッチング素子Q2とQ3が導通することで入力の1次直流電圧源2が印加されるため、トランス19の2次巻線15の巻線N3に現れる電圧は巻数比nで換算された電圧V1/nが現れる。したがって、2次インダクタ10には、図25に示した矢印をプラスとして、トランス19の2次巻線15の巻線N3の電圧V1/nが印加され、2次インダクタ10に流れる電流は線形的に上昇する。すなわち、1次直流電圧源2から2次インダクタ10にエネルギーを蓄積する動作を行っている。時刻t3にて、スイッチング素子Q3とQ21をオフさせ、スイッチング素子Q4をオンさせることで、次の状態4へ遷移する。
<状態4(t3〜t0)>
図29は、実施例6の状態4(t3〜t0)において電流が流れる様子を示した回路図である。図29に示すように、1次回路4側はスイッチング素子Q2とQ4がオンすることで、トランス19は短絡状態となり、2次インダクタ10に流れていた電流は、それを維持しようとして、1つ目の経路として、トランス19の2次巻線15の巻線N2、2次インダクタ10、2次直流電圧源3、整流素子D5となり、2つ目の経路として、トランス19の2次巻線15の巻線N3、2次インダクタ10、2次直流電圧源3、整流素子D6の2つの経路で電流が流れる。1次回路4側は、この2つの経路に流れる電流の差分が流れるが、理想素子で考えると2次回路5側の2つの経路には同じ電流値が流れ、1次回路4側には流れない。
2次インダクタ10には、トランス19が短絡状態であるため、図29に示した矢印をプラスとして、2次直流電圧源3が印加され、2次インダクタ10に流れる電流は線形的に下降する。すなわち、2次インダクタ10のエネルギーを放出する動作を行っている。時刻t0にてスイッチング素子Q2がオフ、スイッチング素子Q1、Q11がオンすることで、次の状態1へ遷移する。
入力である1次直流電圧源2の電圧値V1と出力である2次直流電圧源3の電圧値V2との比である入出力電圧比V2/V1を求めるに当たって、状態3と状態4は状態1と状態2と同じ動作であるため、スイッチング周期Tsのt0からt2までの半周期Ts/2から求められる。2次インダクタ10のエネルギー蓄積、放出すなわち流れる電流の初期値i(t0)と最終値i(t2)が等しくなることで求められる。
まず、状態1での2次インダクタ10の電流上昇分ΔI1は、式(10)で表される。
ΔI1=i(t1)−i(t0)=(V1/n)/L×Ton・・・(10)
ここで、Lは2次インダクタ10のインダクタンス値であり、Tonは状態1の時間(=t1−t0)である。
次に、状態2での2次インダクタ10の電流下降分ΔI2は、式(11)で表される。
ΔI2=i(t1)−i(t2)=V2/L×Toff・・・(11)
ここで、Toffは状態2の時間(=t2−t1)である。
動作が安定であるということは、ΔI1=ΔI2が成立することから、式(10)と式(11)を整理すると、入出力電圧比である式(12)が求まる。
V2/V1=1/n・D/(1−D)・・・(12)
ここで、D=Ton/(Ton+Toff)はデューティを表し、0≦D≦0.5の範囲であれば、0≦D/(1−D)≦1から巻数比1/n倍以下の電圧の制御が可能であることを示している。また、0.5<Dの条件であれば、1<D/(1−D)から巻数比1/n倍以上の電圧の制御が可能であることを示している。すなわち、昇降圧動作が可能であることを示している。
以上の説明のように、バイパス回路39を追加し、図27に示したスイッチングタイミングで動作させると、状態1と状態3のように2次直流電圧源3を介さずに1次直流電圧源2から2次インダクタ10にエネルギーを蓄積可能な経路を造り出すことが出来て、従来回路では不可能であった昇降圧動作が可能となる。
これまでの説明は、スイッチング素子Q11とQ12、及びQ21とQ22から成るバイパス回路39により、出力2次直流電圧源3を介さずに1次直流電圧源2から2次インダクタ10にエネルギーを蓄積可能な経路を造り出すことで昇圧動作を可能とした。ところで、これまで説明した動作状態の他にも、従来技術では実現出来ない動作状態を作り出すことが可能である。以下、更に多様な動作状態の説明を行う。
実施例7として、図30と図31に、バイパス回路39と1次側変換回路6のスイッチング素子により、2次インダクタ10のエネルギーが、1次直流電圧源2と2次直流電圧源3の両電圧源を経由しない環流動作を示す。
図30と図31は、実施例7において電流が流れる様子を示した回路図である。図30は、バイパス回路39のスイッチング素子Q11がオンした状態で、2次インダクタ10の電流は、それを維持しようとして、2次回路5側では、2次インダクタ10の電流は、2次インダクタ10、スイッチング素子Q11、整流素子D12、トランス19の2次巻線15の巻線N2、2次インダクタ10の経路で流れる。
一方、1次回路4側ではトランス19の1次巻線14の巻線N1の黒丸で示す巻き始め端18に流れ込もうとして、図11のように1次側変換回路6の整流素子D2とD3を順バイアスしようとするが、ここで1次側変換回路6のスイッチング素子Q1がオンしていることで、トランス19に対して短絡状態を作り出すことが出来るため、2次インダクタ10のエネルギーが、1次直流電圧源2と2次直流電圧源3の両電圧源を経由せず環流する動作となる。
また、図30で1次側変換回路6のスイッチング素子Q4をオンさせた破線のループでトランス19を短絡状態としてもよい。また、1次側変換回路6の整流素子D2とD3と並列接続しているスイッチング素子Q2とQ3をオンさせる、いわゆる同期整流動作させてもよい。図31は、バイパス回路39のスイッチング素子Q21をオンさせた場合の状態で、1次側変換回路6のスイッチング素子Q2とQ3により、同様にトランス19の短絡状態を作り出した状態である。
この動作状態は、図示していない制御回路による制御時の1つの動作状態として利用するのは当然であるが、異常時の対応で2次インダクタ10のエネルギーを即座に両電圧源に対して、遮断することが可能となる。
実施例8として、図32と図33に、1次側変換回路6のスイッチング素子が全てオフ状態で、バイパス回路39のスイッチング動作による、特殊な動作状態を示す。特に、1次直流電圧源2と2次直流電圧源3の電圧レベル差によって、動作が異なることが特長であるため、1次回路4側の電流の流れは図示していない。
図32と図33は、実施例8において電流が流れる様子を示した回路図である。図32は、1次側変換回路6のスイッチング素子が全てオフで、バイパス回路39のスイッチング素子Q21がオンした状態で、2次インダクタ10の電流は、それを維持しようとして、2次回路5側では2次インダクタ10の電流は、1つ目の経路として、スイッチング素子Q21、整流素子D22、トランス19の2次巻線15の巻線N3の経路があり、2つ目の経路として、2次直流電圧源3、整流素子D5、トランス19の2次巻線15の巻線N2の経路の2つの経路が存在する。
この2つの経路が成立するためには、トランス19の2次巻線15の巻線N2と巻線N3に入力である2次直流電圧源3の1/2が現れることで成立して安定した状態となる。したがって、2次インダクタ10には、図32に示した矢印をプラスとした向きにV2/2が印加され、2次インダクタ10に流れる電流は線形的に下降する。すなわち、2次インダクタ10にエネルギーを出力である2次直流電圧源3へ放出する動作を行っている。
次に、1次回路4側の動作については、1次巻線14の巻線N1には巻数比n倍のnV2/2が現れるので、1次側変換回路6のスイッチング素子が全てオフの状態で、入力である1次直流電圧源2がこの値よりも大きい場合は、1次側変換回路6の整流素子が順バイアス出来ないため、上述したように単純に2次インダクタ10のエネルギーが放出される動作状態となる。
一方、入力である1次直流電圧源2がnV2/2よりも小さい場合は、1次回路4側ではトランス19の1次巻線14の巻線N1の黒丸で示す巻き始め端18から流れ出す方向に流れようとして、1次側変換回路6の整流素子D1とD4を順バイアスしようとする。ここで過渡的な動作として、トランス19の漏れインダクタや共振インダクタである1次回路4側の1次インダクタ8により、入力1次直流電圧源2とトランス19の1次巻線14に現れた電圧nV2/2との差分が1次インダクタ10に印加され線形的に上昇する。
同じく巻き始めから流れ出す方向であるトランス19の2次巻線15の巻線N2の電流は、反対に線形的に減少しゼロに達すると、2次巻線15の巻線N3の巻き始めに流れ込む電流である2次インダクタ10の電流とトランス19の1次巻線14の巻線N1から流れ出す電流(トランス19の巻数比nで換算された電流)が等しくなり、これまでにない2次インダクタ10のエネルギーを入力である1次直流電圧源2へ放出する動作状態となる。この動作は、異常時の対応で2次インダクタ10のエネルギーを出力である2次直流電圧源3に対して、遮断することが可能となることを示している。図33は、バイパス回路39のスイッチング素子Q11がオンさせた場合の状態で、図32と同様の状態を作り出した状態である。
以上のように、1次側変換回路6と、2次側変換回路7と、バイパス回路39のスイッチングパターンにより、実施例5から8である図22や図27に示した動作状態の他にも、様々な動作状態を作り出すことが可能である。図22や図27の説明では、スイッチング周期Tsの半周期の中で、2つの動作状態しか存在しないスイッチングパターンであったが、1次側変換回路6と、2次側変換回路7と、バイパス回路39のスイッチングパターンにより複数の動作状態を持たせることも可能であり、多様性に富んだ動作が可能な双方向DC/DCコンバータを実現することができる。