JP6107299B2 - 内包磁石型同期機のアウターロータの製造方法 - Google Patents

内包磁石型同期機のアウターロータの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、希土類異方性ボンド磁石を内包した内包磁石型同期機、そのアウターロータ、そのアウターロータの製造方法およびそのヨークブロックに関する。
電動機(発電機を含めて単に「モータ」という。)には種々のタイプがある。最近ではインバータ制御の発達と高磁気特性の希土類磁石の普及に伴い、省電力、高効率、高トルクまたは高出力が望める永久磁石式同期機(PMモータ)が着目されている。
PMモータは、界磁用の永久磁石を有する回転子(ロータ)と、電機子巻線(コイル)を有する固定子(ステータ)とからなり、その電機子巻線に多相交流(AC)を供給することによりステータに回転磁界が生じ、それによりロータが回転するACモータである。PMモータは、永久磁石をロータの表面に配設(貼着)した表面磁石型モータ(SPM)と、永久磁石をロータの内部に埋め込んだ内包磁石型モータ(IPMモータ)とに大別される。
このうち、高速回転や高トルクが要求される場合は、IPMモータが現在の主流となりつつある。IPMモータは、マグネットトルクの他に突極によるリラクタンストルクも付加されるため、高い合成トルクが得られるからである。またIPMモータは、永久磁石がロータ(ヨーク)に内包されるため飛散することがなく信頼性が高い。
ところで従来のIPMモータは、所定の寸法に切削、研磨等された焼結磁石がロータに設けたスロットへ挿入して構成されることが多かった。ところが、このようなIPMモータでは、強力な希土類焼結磁石をスロットへ挿入しなければならないため、その際に欠損が生じたり、焼結磁石やスロットの形状が限定的とならざるを得なかった。そこで下記の特許文献1では、希土類磁石粉末と樹脂からなる溶融ストランドをロータのスロットへ配向磁場中で射出充填し、冷却固化させることにより、従来の希土類焼結磁石を希土類ボンド磁石で置換することが提案されている。
特開平11−206075号公報 特開2001−167963号公報 特開2005−317845号公報
もっとも特許文献1のIPMモータは、インナーロータ内に設けたスロットに対して、配向磁場中で希土類異方性ボンド磁石を射出成形したインナーロータ型IPMモータである。この際の配向磁場は、そのインナーロータの外周面側から印加されるから、当然、その配向磁場源もそのインナーロータの外周側に配設される。この場合、配向磁場源となる電磁石や永久磁石を設けるスペースを大きくとることができるため、配向磁場の印加に用いる配向金型の設計自由度も大きい。しかも、インナーロータは相対的に小径であるため、配向磁場源を含む配向金型は全体的にコンパクトになり易い。
しかし、アウターロータ型IPMモータの場合、アウターロータ内に設けたスロットへ配向磁場を印加する必要があり、従来はアウターロータの内周側に配向磁場源を含む配向金型を配置していた。ところが、通常、閉環状のアウターロータの内周側スペースは限られているために、配向金型の設計自由度は小さい。その結果、希土類異方性ボンド磁石の性能を十分に発揮させるに足りる配向磁場を、スロット(キャビティ)へ印加することが困難となった。ちなみに、希土類異方性磁石粒子は、一般的なフェライト磁石粒子よりも、磁束密度のみならず保磁力が遥かに高い。従って、希土類異方性ボンド磁石を配向磁場中で射出成形(これを適宜「磁場中成形」という。)するには、従来よりも遥かに高い配向磁場が必要となる。
なお、特許文献2または特許文献3にも、配向磁場中で射出成形した希土類異方性ボンド磁石を有するアウターロータからなるPMモータに関する記載がある。しかし、それら特許文献に記載されたPMモータは、永久磁石をアウターロータに内包するIPMモータではない。
本発明はこのような事情に鑑みて為されたものであり、本発明は希土類異方性ボンド磁石をアウターロータに内包したアウターロータ型IPMモータであり、その希土類異方性ボンド磁石を十分な配向磁場中で射出成形した高性能な内包磁石型同期機、そのアウターロータおよびそのアウターロータの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究し、試行錯誤を重ねた結果、IPMモータのアウターロータを分割または分断した状態で希土類異方性ボンド磁石を磁場中成形することを着想した。これにより配向金型の設計自由度が著しく向上し、高い配向磁場中で希土類異方性ボンド磁石の射出成形を行うことが可能となった。この成果を発展させることにより、以降に述べる本発明を完成するに至った。
《内包磁石型同期機のアウターロータ》
(1)本発明の内包磁石型同期機のアウターロータは、電機子からなるインナーステータを囲繞し該インナーステータに対して回転し得る軟磁性材からなる環状のアウターヨークと、該アウターヨークに形成された空隙からなる内包部に埋設された永久磁石と、を備える内包磁石型同期機のアウターロータであって、前記アウターヨークは、非閉環状なヨークブロックを閉環状に配設したブロック環体からなり、前記永久磁石は、単数の該ヨークブロック毎または複数の該ヨークブロック毎に配向磁場が印加された状態で、該内包部内へ射出成形された希土類異方性ボンド磁石からなることを特徴とする。
(2)本発明の内包磁石型同期機のアウターロータ(単に「アウターロータ」という。)は、その主要骨格を構成するアウターヨークが、非閉環状(または開環状)のヨークブロックを環状(または閉環状)に配設したブロック環体からなる。このため本発明によれば、当初は開いた状態にある非閉環状のヨークブロックに対して希土類異方性ボンド磁石を磁場中成形した後、そのヨークブロックの一つまたは二つ以上を閉環状に配設することにより、閉環状のアウターロータを構成することができる。
このため、従来のように予め閉環状に打ち抜いた電磁鋼板の積層体からなるアウターロータに設けた内包部(キャビティ)へ、希土類異方性ボンド磁石を磁場中成形していた場合とは異なり、本発明によれば、配向磁場源を含む配向金型を配置するスペースを大幅に拡大でき、その設計自由度も遥かに大きくなった。この結果、アウターロータのサイズ(径)が小さくて本来ならその内周側のスペースが小さい場合でも、内包部へ印加する配向磁場の調整が容易となり、十分に高い配向磁場中で希土類異方性ボンド磁石を射出成形することが可能となった。
また仮に、アウターロータのサイズが非常に大きい場合でも、本発明によれば、小分割したりコンパクトに配置したヨークブロック毎に磁場中成形を行うことが可能であり、専用の射出成形装置を用意するまでもなく、従来からある射出成形装置を利用することも可能となる。
このように本発明のアウターロータによれば、十分な配向磁場を印加した状態で希土類異方性ボンド磁石の射出成形が可能となるため、希土類異方性ボンド磁石本来の性能を十分に発揮させることができ、ひいては、内包磁石型同期機のさらなる高性能化(高効率化、高トルク化など)を図ることが可能となる。
ちなみに、本明細書でいう「閉環状」とは一つまたは二つ以上のヨークブロックの各周方向端面が相互に密接して環状になっている状態をいう。逆に「非閉環状」とは、そのような閉環状になっていない状態、つまり、ヨークブロックの周方向端面が密接していない状態である。ヨークブロック(または後述する連続ピース)が、直線状、湾曲状にあるときは勿論、例えば、C字状のように略環状でも一箇所に開端面がある状態でも本明細書でいう非閉環状に相当する。なお、本明細書では、文脈から混同を生じない限り、便宜的に、閉環状を単に「環状」、非閉環状を単に「非環状」ということがあることを断っておく。
(3)本発明に係るアウターヨークとなるブロック環体は、一つのヨークブロックを環状に変形させたものでも、複数のヨークブロックを環状に配列したものでもよい。ヨークブロックは、アウターヨークの一磁極分に相当する単位ピースに分けて考えることができる。本発明に係るヨークブロックは、一つの単位ピースからなってもよいし、複数の単位ピースからなってもよい。複数の単位ピースは、二以上連なった連続ピースとなっていると、取扱性がよくて好ましい。
ヨークブロックや単位ピースの詳細な形態は問わないが、アウターヨークの一磁極分に相当する単位ピースは、通常、環状体を半径方向に分断したものとなるから、略扇状となっている。この場合、上述した連続ピースは、複数の単位ピースを大径側の隣接域に形成した架橋部(連結部)により連結した形態とすれば好ましい。このような形態とすることにより、後述する背面環状配置の形成が容易となる。また連続ピースの成形性や取扱性も向上する。具体的に言えば、積層電磁鋼板を歩留りよく打ち抜くことができ、また磁場中成形後のヨークブロックを閉環状に配設してブロック環体とすることも容易となる。
連続ピースは連結する単位ピースの個数は問わないが、その連結数は3〜12、4〜10さらに5〜8であると好ましい。このような連続ピース(ヨークブロック)を用いることにより背面環状配置が容易となり、背面環状配置により配向磁石効率が著しく向上し、配向金型の大型化を回避しつつ、十分な配向磁場を内包部へ印加することが可能となる。なお、配向磁石効率の詳細については後述する。
勿論、連結されていない独立した単位ピースを個別に背面環状に配列等して一度に射出成形することも可能である。但し、一度に射出成形する個数分の単位ピースの全部または一部が一連状態にあると、磁場中成形の作業性が向上する。また単位ピースの連結数が過小(2個以下)では、背面環状配置等ができず、連結数が過大では配向金型の大型化を招くと共に取扱性も低下する。
《内包磁石型同期機のアウターロータの製造方法》
(1)本発明は、上述したアウターロータとしてのみならず、その製造方法としても把握できる。すなわち本発明は、軟磁性材からなる非閉環状なヨークブロックに設けた空隙からなる内包部へ、溶融したバインダ樹脂中に希土類異方性磁石粉末を分散させた溶融混合物を配向磁場中で射出充填し、永久磁石となる希土類異方性ボンド磁石を成形する射出成形工程と、該射出成形工程後のヨークブロックを閉環状に配設してアウターヨークとする配設工程と、を備えることを特徴とする内包磁石型同期機のアウターロータの製造方法でもよい。
(2)本発明に係る射出成形工程は、その詳細を問わない。例えば、一つのヨークブロック毎(さらには一つの単位ピース毎)に射出成形を行ってもよいし、二以上のヨークブロックを組み合わせて射出成形を行ってもよい。もっとも、アウターヨークを構成する単位ピースを背面環状に配置して希土類異方性ボンド磁石の磁場中成形を行うと、配向金型や射出成形装置の大型化を回避しつつ、射出成形工程を効率的に行うことができる。従って本発明に係る射出成形工程は、アウターヨークの一磁極分に相当すると共にヨークブロックの構成単位となる略扇状の単位ピースを、大径側の周側面である背面を内周側にして環状に配置する背面環状配置にして行う工程であると好適である。
なお、背面環状配置は、アウターヨークを構成する単位ピースを、アウターロータとしたときの本来の内周面側を外周側にし、その本来の外周面側を内周側とする配置である。これにより、本来なら内周側から外周側へ向けて印加されるべき配向磁場が、本発明に係る射出成形工程では、外周側から内周側へ向かう配向磁場となる。これにより配向金型のコンパクト化等を図りつつ、十分な配向磁場の下で効率的な射出成形を行える。ちなみに、背面環状配置に好適な単位ピースの個数は、上述した好適な連結数と同じである。これはアウターロータの極数が変化しても同様である。同形態の単位ピースを複数配置する際における相対的な配向磁石効率に基づくからである。
配設工程は、磁場中成形した単数または複数のヨークブロックを閉環状に配設する工程であるが、その詳細は問わない。例えば、配設工程は、射出成形後のヨークブロックの端面を接合して閉環状にしてもよいし、射出成形後のヨークブロックを環状筐体(軟磁性材からなるリングケース等)へ圧入等して閉環状にしてもよい。また、配設工程の際、適宜、射出成形後のアウターヨークを多少塑性変形させてもよい。
《内包磁石型同期機》
本発明は、上述したアウターロータやその製造方法としてのみならず、内包磁石型同期機としても把握できる。つまり本発明は、上述したアウターロータと、該アウターロータに囲繞された電機子からなるインナーステータと、を備えることを特徴とする内包磁石型同期機でもよい。
《ヨークブロック》
さらに本発明は、上述した同期機等以外に、そのアウターロータを構成するアウターヨークに用いられる非閉環状なヨークブロックとしても把握できる。この具体例として、電磁鋼板を打ち抜いて得られ、中間にスリットと該スリットの一方側を連結する架橋部とを有するヨークブロックがある(図2参照)。このようなヨークブロックは、従来のようにアウターロータの形状に沿って電磁鋼板を閉環状に打ち抜く必要がないため、電磁鋼板を打ち抜く際の形状自由度を非常に大きくすることができ、打ち抜き形状を工夫することにより電磁鋼板を歩留りよく有効活用できる。
《その他》
(1)本発明の製造方法では、射出成形工程後の着磁の有無を問わない。本発明によれば、単位ピースの内包部へ十分に高い配向磁場を印加できる。このため、磁場中成形された希土類異方性ボンド磁石は、磁場中成形後から高い磁束密度を発揮し、その後の着磁(後着磁)は必ずしも必要ではない。逆に本発明の製造方法では、射出成形工程後の配設工程前に脱磁工程を行い、環状のアウターロータとした段階で、別途、着磁を行ってもよい。
(2)本発明の内包磁石型同期機には電動機のみならず発電機も含まれ、本明細書でいう電動機(モータ)も特に断らない限り、発電機(ジェネレータ)を含む。また本発明の内包磁石型同期機には、固定子(インナーステータ)に設けたコイル(電機子巻線)へ供給する交流電流の周波数に同期して回転数が変化する本来的な同期機の他、ホール素子、ロータリエンコーダ、レゾルバ等の検出手段により検出された回転子(アウターロータ)の位置に基づいて固定子側に回転磁界を生じさせるブラシレス直流(DC)モータも含まれる。ちなみに、ブラシレスDCモータは、インバータに供給する直流電圧を変化させて回転数を変化させ得るので、通常の直流モータと同様に制御性に優れる。
(3)本明細書では、対象物または対象部を相対的に観て、特に断らない限り、アウターロータの回転中心に近い側を「内周側」といい、逆にその回転中心から遠い側を「外周側」という。
(4)特に断らない限り本明細書でいう「x〜y」は下限値xおよび上限値yを含む。本明細書に記載した種々の数値または数値範囲に含まれる任意の数値を、新たな下限値または上限値として「a〜b」のような範囲を新設し得る。
本発明の一実施例であるアウターロータの一部を示す平面図である。 その実施例に係る打ち抜き後のヨークブロックを示す平面図である。 そのヨークブロックを背面環状配置した様子を示す平面図である。 射出成形後のヨークブロックを正配置した様子を示す平面図である。 背面環状配置したヨークブロックを配向金型にセットした様子を示す平面図である。 その一部を拡大した拡大平面図である。 その一部であるキャビティ近傍の配向磁場を示すベクトル図である。 従来のアウターヨークを配向金型にセットした様子を示す平面図である。 その一部を拡大した拡大平面図である。 その一部であるキャビティ近傍の配向磁場を示すベクトル図である。 本実施例に係る取数と配向磁石効率の関係を示すグラフである。
本明細書で説明する内容は、本発明のアウターロータのみならず、それを用いた同期機にも該当し得る。製造方法に関する事項も、プロダクトバイプロセスとして理解すれば物に関する構成要素となり得る。本明細書中に記載した事項から任意に選択した一つまたは二つ以上を上述した本発明の構成要素に付加し得る。いずれの実施形態が最良であるか否かは、対象、要求性能等によって異なる。
《内包磁石型同期機のアウターロータ》
(1)アウターヨーク
アウターロータの骨格を構成するアウターヨークは、軟磁性材からなり、通常、両面を絶縁被覆した電磁鋼板の積層体、または絶縁被覆された金属粒子からなる軟磁性粉末を加圧成形した圧粉磁心等からなる。軟磁性材は、その材質を問わないが、例えば、純鉄、ケイ素鋼、合金鋼等の鉄系材であると好ましい。
アウターヨークを構成するヨークブロックが、複数の単位ピースを架橋部等により連ねた連続ピースからなる場合、配設工程時に多少の塑性変形が必要となることがある。このような場合、上記の軟磁性材は延性材(具体的には電磁鋼板の積層体)であると好ましい。また、複数の単位ピースを環状に配列してブロック環体を構成する場合、隣接する単位ピースが相互に当接する周方向端面近傍に、凹凸、ノッチ、ガイド等の係合部または嵌合部を設けると、配設工程を効率的に行うことができる。
(2)内包部
内包部は、ヨークブロックを構成する単位ピース毎に少なくとも一つ以上設けられた空隙からなる。この内包部へ希土類異方性ボンド磁石を磁場中成形することにより、単位ピース毎にアウターロータの一磁極が構成される。
内包部の形態は問わず、同期機の仕様等に応じて適宜調整される。例えば、内包部は、円弧状、U字状、曲角状、V字状、直線状等のいずれでもよい。また内包部が曲線状である場合、内周側(インナーステータ側)に向けて開いた状態であると、同期機の高性能化を図れて好ましい。また、内包部は均一的な溝幅からなる滑らかな曲線状(例えば円弧状)であるほど、内包部全体に高い配向磁場を均一的に作用させることができて好ましい。内包部は、通常、単位ピース内で連続的に形成され得るが、アウターロータの仕様に応じて、分断された状態でもよい。また、内包部は単位ピース内に多重(または多層)に設けられていてもよい。さらに、内包部に透磁率の低い低磁性部を設けて、配向磁場の強さや方向を制御してもよい。
《希土類異方性ボンド磁石》
(1)原料
希土類異方性ボンド磁石は、基本的に希土類異方性磁石粉末とバインダ樹脂からなる。希土類異方性磁石粉末は、その種類を問わないが、例えば、Nd−Fe−B系磁石粉末、Sm−Fe−N系磁石粉末、Sm−Co系磁石粉末等である。本発明に係る希土類異方性磁石粉末は、一種のみならず複数種でもよい。ちなみに複数種の磁石粉末は、成分組成が異なるものに限らず、粒径分布が異なるものでもよい。例えば、Nd−Fe−B系磁石粉末の粗粉と微粉を組み合わせたものでも、Nd−Fe−B系磁石粉末の粗粉とSm−Fe−N系磁石粉末の微粉を組み合わせたものでもよい。このような希土類異方性磁石粉末を用いることにより、ボンド磁石内の磁石粉末の充填率を向上させることができ、高磁束密度を発揮するボンド磁石が得られる。さらに、各種の等方性磁石粉末やフェライト磁石粉末等を希土類異方性磁石粉末中に混在させてもよい。
バインダ樹脂には、ゴムを含む種々の材料を用いることができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリロニトリル/スチレン樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート、超高分子量ポリエチレン、ポリブチレンテレフタレート、メチルペンテン、ポリカーボネイト、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー、ポリテトラフロロエチレン、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリアミドイミド等の熱可塑性樹脂を用いると好ましい。またエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ジリアルフタレート樹脂、ポリウレタン等の熱硬化性樹脂も適宜用いることもできる。
(2)射出成形
上記原料からなるペレット等を加熱溶融させた溶融混合物を、配向磁場を印加した内包部へ射出充填した後、冷却固化されることにより、内包部の形態に応じた希土類異方性ボンド磁石が成形される。射出成形の各条件は、原料の特性、充填量、内包部の冷却性等を考慮して適宜調整される。配向磁場は、溶融混合物の固化前に印加させる必要があるが、その開始は射出成形の当初からでも、射出成形の途中からでもよい。例えば、配向磁場源に永久磁石を用いる場合は射出成形の当初からとし、電磁石を用いる場合は射出成形の途中からでもよい。
配向磁場の印加形態(アウターロータ内に形成させる磁束密度の分布)は、内包部の形状ひいては同期機の仕様に応じて適宜調整される。配向磁場源は電磁石を用いても良いが、強力な永久磁石(希土類磁石)を用いると、省エネルギー化、配向金型や射出成形装置のコンパクト化等を図れて好ましい。
《内包磁石型同期機の用途》
本発明の内包磁石型同期機は、その用途を問わないが、例えば、洗濯機、エアコン若しくは冷蔵庫等に用いられる家電製品用モータ、または電気自動車、ハイブリッド車若しくは鉄道車両等に用いられる車両駆動用モータなどに好適である。特に本発明の同期機は、高出力、低振動、低騒音等が同時に要求されるダイレクトドライブ式モータ(DD式モータ)として好適である。
実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
《内包磁石型同期機のアウターロータ》
本発明の内包磁石型同期機のアウターロータに係る一実施例として、ダイレクトドライブ式モータ(内包磁石型同期機)に用いるアウターロータRの四半分を図1に示した。このアウターロータRは、環状のケースCと、このケースCの内周側に圧入された48個の単位ピースPと、各単位ピースPに設けられた半円弧状のキャビティ(内包部)kへ磁場中成形された希土類異方性ボンド磁石からなる永久磁石mとからなる。
ケースCおよび単位ピースPは、所定形状に打ち抜いた積層電磁鋼板からなる。各単位ピースPは、架橋部aにより6個づつ連結されたヨークブロックL1、L2・・となっている。本実施例のアウターロータRの場合、8個のヨークブロックL1〜L8がケースC内に嵌入された状態となっている。以下、その一つであるヨークブロックL1を取り上げて、本実施例について詳述する。
積層電磁鋼板から打ち抜いた状態(射出成形工程前)のヨークブロックL1を図2に示した。ヨークブロックL1は、スリットsにより略扇状に分断された6個の単位ピースPからなる。但し、単位ピースPの外周側(図上方側)には、隣接する単位ピースP同士を連結する5つの架橋部aが設けられている。この架橋部aは、外周側(図上方側)に形成された円弧状の細帯からなり、外周側(図上方側)および内周側(図下方側)のいずれにも塑性変形が容易となっている。なお、ヨークブロックL1は、図2に示すように、積層電磁鋼板からほぼ直線状に打ち抜かれた形状となっているため、積層電磁鋼板を歩留りよく使用できる。
アウターロータRとした際に(図4参照)、外周面側に位置する単位ピースPの外周面foを内周側に、その反対面側に位置する単位ピースPの内周面fiを外周側にして、ヨークブロックL1を環状に配置した様子を図3に示した。これが6個の単位ピースPの背面環状配置となる。
この背面環状配置したヨークブロックL1を、射出成形装置の配向金型(図5A参照)にセットして、配向磁場中で射出成形(磁場中成形)を行う(射出成形工程)。これにより、バインダ樹脂と希土類異方性磁石粉末の溶融混合物が配向磁場中でキャビティkへ射出充填される。そして、希土類異方性磁石粒子が配向磁場に沿って所望の方向に配向(姿勢変更)した後に冷却凝固される。こうして所望方向に配向した希土類異方性ボンド磁石からなる永久磁石mを内包したヨークブロックL1が得られる。
なお、本実施例では、希土類異方性磁石粉末として、Nd−Fe−B系異方性磁石粉末とSm−Fe−N系磁石粉末の混合磁石粉末を用いた。またバインダ樹脂として、ポリフェニレンサルファイド樹脂を用いた。射出成形した溶融混合物は、その混合磁石粉末とバインダ樹脂とからなるペレットを加熱溶融させたものである。
磁場中成形後のヨークブロックL1を配向金型から取り出し、ヨークブロックL1の合口部dから展開する。そして背面環状配置状態とは逆に、アウターロータRに沿った本来の形状となるように、単位ピースPの外周面foを外周側、その内周面fiを内周側とする配置にする。こうして得られたヨークブロックL1を図4に示した。この本来的な形態を適宜「正配置」という。
図4にはヨークブロックL1のみ示したが、ヨークブロックL2〜L8も同様な正配置にした後、それらが環状のケースC内へ嵌入される。こうして、永久磁石mを内包した閉環状のアウターヨーク(ブロック環体)からなるアウターロータR(図1)が完成する。なお、ヨークブロックL1〜L8をそれぞれケースCへ嵌入する際、ヨークブロックL1〜L8の外周面から突出している各架橋部aは、ケースCの内周面側に設けられた各凹部bへ嵌挿される。
《配向金型》
(1)射出成形装置に設けた配向金型Dへ、背面環状配置したヨークブロックL1をセットした様子を図5Aと図5Bに示した。図5Bは図5A中に示した四角部の拡大図である。配向金型Dは、6個の単位ピースPへそれぞれ配向磁場を印加する6極用である。配向金型Dは、各単位ピースPの内周面fiに対面すると共に半径方向へ放射状に延在する6個の配向ヨークDyと、各単位ピースPの外周面foに対面すると共に中央に配設された略六角形の中央ヨークDcと、配向ヨークDyを周方向両側から挟持する12個の略扇状の配向磁石Dmとからなる。
配向磁石Dmは、Nd−Fe−B系希土類異方性焼結磁石からなる永久磁石であり、12個全て同形状である。但し、図5Aおよび図5Bに示す配向磁場(矢印)から明らかなように、各配向磁石Dmの磁極の配置は異なっている。この配向金型Dによって、各単位ピースPのキャビティkに生じる配向磁場(磁力線)を示すベクトル図を図5Cに示した。
図5Aから明らかなように、本実施例に係る配向金型Dは、ヨークブロックL1がセットされた状態でも非常にコンパクトな円柱状となっており、また図5Cから明らかなように各キャビティkへ印加される配向磁場も非常に高磁場(高磁束密度)となっている。
(2)参考に、配向ヨークDy’と配向磁石Dm’などからなる閉環状用の配向金型D’を用いて閉環状のアウターヨークRy’へ配向磁場を印加する様子を図6Aと図6Bに示した。図6Bは図6A中に示した四角部の拡大図である。このとき、キャビティk’に形成される配向磁場(磁力線)を示すベクトル図を図6Cに示した。なお、図6B中に示した矢印は、図5Aおよび図5Bと同様に配向磁場の向きを示す。
図6Aから明らかなように、配向金型D’の配向ヨークDy’と配向磁石Dm’はアウターヨークRy’の内周側に配置されるため、それらの配置スペースがアウターヨークRy’内に限られ、配向磁石Dm’をあまり拡張できず、キャビティk’へ印加する配向磁場が制約される。その結果、図6Cから明らかなように、キャビティk’へ印加される配向磁場は低磁場(低磁束密度)となる。なお、アウターヨークRy’が大きくなると、配向金型D’ の配向ヨークDy’および配向磁石Dm’の配置スペースも拡大するが、それらの体格も非常に大きくなり汎用性がなくなる。
《配向磁石効率》
一つの配向金型Dで一度に磁場中成形する単位ピースPの個数を変化させたときの配向磁石効率(η)をシミュレーションにより算出した。その結果を図7に示した。ここでいう配向磁石効率は、単位ピースPのキャビティkに形成される配向磁場の平均値(Hm)を、磁石面積比(Sr)で除した値(Hm/Sr)である。磁石面積比(Sr)は、配向磁石Dmの総面積(St)を一度に磁場中成形する単位ピースPの個数(n)で除した値(St/n)である。なお、この際、配向磁場Dmの長さ(積厚)は一定と考えた。従って、Stは実質的に配向磁石Dmの総体積に相当する。ちなみに、Hmを一定値として考えると、Srとηは反比例関係になるため、最適なnの検討はηに替えてSrを用いても行うこともできる。
なお、図7に示した取数が1のときは、単位ピースPの内周面fi側と外周面fo側の両側に配向磁石Dmを配置した状態でシミュレーションした。また、取数が2のときは、2個の単位ピースPを直線状(図2参照)に並べ、各内周面fi側に配向ヨークDyおよび配向磁石Dmをほぼ平行に配置した状態でシミュレーションした。
図7から明らかなように、一度に射出成形する単位ピースPの個数(これを「取数」という。)を3〜12、4〜10さらには5〜8にすると、配向磁石効率(η)が急激に高まることがわかる。つまり、取数を上記の範囲とすることにより、配向磁石Dmひいては配向金型Dを小さくしつつ、多数の単位ピースPのキャビティkへ十分な配向磁場を印加できることがわかる。
R アウターロータ
L1 ヨークブロック
P 単位ピース
C ケース
D 配向金型
a 架橋部
m 永久磁石
k キャビティ(内包部)

Claims (5)

  1. 軟磁性材からなる非閉環状なヨークブロックに設けた空隙からなる内包部へ、溶融したバインダ樹脂中に希土類異方性磁石粉末を分散させた溶融混合物を配向磁場中で射出充填し、永久磁石となる希土類異方性ボンド磁石を成形する射出成形工程と、
    該射出成形工程後のヨークブロックを閉環状に配設してアウターヨークとする配設工程と、
    を備えることを特徴とする内包磁石型同期機のアウターロータの製造方法。
  2. 前記射出成形工程は、前記アウターヨークの一磁極分に相当すると共に前記ヨークブロックの構成単位となる略扇状の単位ピースを、大径側の周側面である背面を内周側にして環状に配置する背面環状配置にして行う工程である請求項に記載の内包磁石型同期機のアウターロータの製造方法。
  3. 前記ヨークブロックは、前記アウターヨークの一磁極分に相当する単位ピースまたは該単位ピースが二以上連なった連続ピースからなる請求項1または2に記載の内包磁石型同期機のアウターロータの製造方法
  4. 記連続ピースは、複数の前記単位ピースを大径側の隣接域に形成した架橋部により連結してなる請求項に記載の内包磁石型同期機のアウターロータの製造方法
  5. 前記連続ピースは、前記単位ピースを3〜12個連結してなる請求項またはに記載の内包磁石型同期機のアウターロータの製造方法
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