以下に、本発明にかかる光起電力装置およびその製造方法、光起電力モジュールの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は以下の記述に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す図面においては、理解の容易のため、各部材の縮尺が実際とは異なる場合がある。各図面間においても同様である。また、平面図であっても、図面を見易くするためにハッチングを付す場合がある。
実施の形態1.
図1−1は、本発明の実施の形態1にかかる光起電力装置である太陽電池の裏面構造を模式的に示す平面図である。図1−2は、本発明の実施の形態1にかかる光起電力装置である太陽電池の断面構造を模式的に示す図であり、図1−1の線分A−A’における要部断面図である。本実施の形態では、一方の半導体膜を形成後に絶縁体フィルムとエッチングペーストによるエッチングとを組み合わせて2つの半導体接合領域をパターニングした後、絶縁体フィルムを用いてめっきにより2つの半導体接合領域に同時に裏面反射膜を兼ねた裏面電極を形成する例について示す。
実施の形態1にかかる太陽電池は、裏面接合型のヘテロ接合太陽電池であり、第1導電型の結晶系半導体基板であるn型半導体基板3を有する。n型半導体基板3は、例えばn型のドーパント(例えばリン(P))がドープされることでn型の導電型を呈する結晶系シリコン基板である。結晶系シリコン基板には、単結晶シリコン基板および多結晶シリコン基板を含むが、本実施の形態では単結晶のシリコン基板を用いた例を示す。
n型半導体基板3の受光面側の面には、微細凹凸からなるテクスチャー4が形成されている。テクスチャー4上には、テクスチャー4側から真性(i型)シリコン膜およびn型半導体基板3と同じ導電型(n型)のシリコン膜が積層された積層構造(図示せず)からなる受光面側電界層5と、反射防止膜6とがこの順で積層されている。
受光面側電界層5における真性(i型)シリコン膜は、n型半導体基板3の受光面を被覆して形成されており、n型半導体基板3の受光面側の基板表面におけるキャリア再結合を抑制する表面パッシベーション層としても働く。このような膜を形成することで、n型半導体基板3へのパッシベーション効果が得られ、開放電圧や短絡電流密度が向上するという効果が得られる。
反射防止膜6は、受光面側電界層5を被覆して形成されており、受光面側から太陽電池に入射する光の反射損失の低減を目的として設けられる層である。また、反射防止膜6は、n型半導体基板3の保護層としての機能も有する。
n型半導体基板3の受光面と反対の面(裏面)側には、n型半導体基板3と反対の導電型(p型)の不純物ドープ半導体薄膜からなる半導体層を有するp型半導体接合領域1と、n型半導体基板3と同じ導電型(n型)の不純物ドープ半導体薄膜からなる半導体層を有するn型半導体接合領域2と、がそれぞれ櫛形形状に交互に配列されている。そして、n型半導体基板3の裏面において、p型半導体接合領域1とn型半導体接合領域2とは、櫛形形状においてそれぞれ櫛歯に相当する部分が1本ずつ交互に噛み合わさるようにストライプ状に配置されている。すなわち、p型半導体接合領域1の櫛形形状において櫛歯に相当する領域の1本1本と、n型半導体接合領域2の櫛形形状において櫛歯に相当する領域の1本1本とが1本ずつ交互に噛み合わさるように配置されている。
p型半導体接合領域1とn型半導体接合領域2とは、n型半導体基板3の裏面側における後述する透明導電膜9上の全面に形成された透光性を有する絶縁体層である絶縁体フィルム10により、それぞれ画定、区画されている。すなわち、p型半導体接合領域1は、絶縁体フィルム10に設けられた開口パターン23に対応している。n型半導体接合領域2は、絶縁体フィルム10に設けられた開口パターン24に対応している。p型半導体接合領域1およびn型半導体接合領域2のストライプ状の部分(櫛歯に相当する部分)では、p型半導体接合領域1と絶縁体フィルム10とn型半導体接合領域2とがこの順で交互に配置されている。
絶縁体フィルム10は、後述するp型領域集電極14とn型領域集電極15とを電気的に分離するとともに、製造工程においては各部材の広がり防止壁として機能する。絶縁体フィルム10は、たとえば光硬化性または光軟化性を有する感光性フィルムや、熱硬化性の樹脂フィルムが用いられる。絶縁体フィルム10自体が光硬化性または光軟化性の特性を有することにより、開口パターンを形成しない状態でn型半導体基板3上に形成した後に、レジスト等を用いることなく写真製版によりパターニングが可能となる。また、絶縁体フィルム10が熱硬化性を有する場合には、樹脂材料等をn型半導体基板3上に塗布した後に熱硬化させることによりn型半導体基板3上に絶縁体フィルム10を形成することができる。また、絶縁体フィルム10は、後述するエッチングペースト25およびエッチングペースト26に対して対エッチング性を有する。また、絶縁体フィルム10は、製造工程環境に耐性を有し、たとえばn型半導体基板3の裏面に絶縁体フィルム10が配置された後の処理工程温度に対して耐熱性を有し、たとえば200℃以上の耐熱性を有する。絶縁体フィルム10としては、たとえば東レ感光性ポリイミドシート(東レ株式会社製)を用いることができる。
n型半導体基板3の裏面の面内における絶縁体フィルム10の形成領域およびp型半導体接合領域1には、n型半導体基板3の裏面上に真性(i型)シリコン膜7、p型シリコン膜8、透明導電膜9がp型半導体接合領域1と同様の櫛形形状にこの順で積層されている。p型半導体接合領域1では、p型シリコン膜8がi型シリコン膜7を介してn型半導体基板3の裏面とpn接合を形成する。n型半導体基板3とp型シリコン膜8との間のi型シリコン膜7は、n型半導体基板3とp型シリコン膜8との接合間の不純物拡散を抑制し、急峻な不純物プロファイルを有する接合を形成することができるため、良好な接合界面形成により高い開放電圧を得ることができる。なお、i型シリコン膜7は、n型半導体基板3の裏面の基板表面におけるキャリア再結合を抑制する裏面パッシベーション層としても働く。このような膜を形成することで、n型半導体基板3へのパッシベーション効果が得られ、開放電圧や短絡電流密度が向上するという効果が得られる。
そして、p型半導体接合領域1では、p型半導体接合領域1における各領域を電気的に結合し、発電された電力を各領域から集電して外部に取り出すためのp型領域集電極14が透明導電膜9上にp型半導体接合領域1と同様の櫛形形状に形成されている。p型領域集電極14は、p型半導体接合領域1の櫛歯に相当する部分(ストライプ状の部分)にグリッド電極が、p型半導体接合領域1の櫛歯の根本に相当する部分にバス電極が形成されている。p型領域集電極14は、n型半導体基板3側からNiめっき膜とCuめっき膜とSnめっき膜とがこの順で積層されためっき電極である。
また、透明導電膜9上におけるp型領域集電極14が設けられていない領域の全面には絶縁体フィルム10が形成されている。p型領域集電極14は、絶縁体フィルム10に設けられた開口パターン23内に、その上面が絶縁体フィルム10の上面よりも低い状態で埋設されている。したがって、グリッド電極の横方向(幅方向)は、絶縁体フィルム10の側面により制限されている。本明細書においては、図1−1の線分A−A’方向をグリッド電極の幅方向または横方向と呼ぶ。
また、絶縁体フィルム10の開口パターン23の側面は、n型半導体基板3の面方向に対して略垂直とされている。これにより、p型領域集電極14の断面形状は、矩形性の良い四角形状となり、p型領域集電極14の下部の透明導電膜9との接触面積に対して断面積を大きく保つことができる。このため、同じ底面積であっても通常のめっきにより形成される半円形上や印刷による三角形状の断面形状の電極よりも配線抵抗を低く保つことができる。
n型半導体基板3の裏面の面内におけるn型半導体接合領域2では、絶縁体フィルム10の開口パターン24の内面の全面に沿って、i型シリコン膜11、n型シリコン膜12、透明導電膜13がこの順で積層された積層構造が形成されている。すなわち、n型半導体基板3の裏面において真性(i型)シリコン膜7、p型シリコン膜8、透明導電膜9が形成されていない領域には、該積層構造がn型半導体接合領域2と同様の櫛形形状に形成されている。また、この積層構造は、開口パターン24の底面であるn型半導体基板3の裏面から絶縁体フィルム10の側壁、および絶縁体フィルム10の上面の全域までにわたってn型半導体接合領域2と同様の櫛形形状に形成されている。なお、i型シリコン膜11は、n型半導体基板3の裏面の基板表面におけるキャリア再結合を抑制する裏面パッシベーション層としても働く。このような膜を形成することで、n型半導体基板3へのパッシベーション効果が得られ、開放電圧や短絡電流密度が向上するという効果が得られる。
このように、n型半導体基板3の裏面において、絶縁体フィルム10の形成領域およびp型半導体接合領域1には真性(i型)シリコン膜7が形成され、n型半導体接合領域2には真性(i型)シリコン膜11が形成されることにより、n型半導体基板3の裏面の全面がパッシベーション層により覆われている。これにより、n型半導体基板3の裏面において表面再結合速度の低い領域を作らず、n型半導体基板3の裏面全面において再結合を抑制する効果が得られ、高い開放電圧と高い短絡電流を実現できる。
n型シリコン膜12は、n型半導体基板3よりもn型のドーパント(例えばリン(P))を高濃度に含有する。n型半導体基板3とn型シリコン膜12との間のi型シリコン膜11は、n型半導体基板3とn型シリコン膜12との接合間の不純物拡散を抑制し、急峻な不純物プロファイルを有する接合を形成することができるため、良好な接合界面形成により高い開放電圧を得ることができる。
そして、n型半導体接合領域2では、n型半導体接合領域2における各領域を電気的に結合し、発電された電力を各領域から集電して外部に取り出すためのn型領域集電極15が透明導電膜13上にn型半導体接合領域2と同様の櫛形形状に形成されている。n型領域集電極15は、n型半導体接合領域2の櫛歯に相当する部分(ストライプ状の部分)にグリッド電極が、p型半導体接合領域1の櫛歯の根本に相当する部分にバス電極が形成されている。n型領域集電極15は、透明導電膜13側からNiめっき膜とCuめっき膜とSnめっき膜とがこの順で積層されためっき電極である。
光反射率が高く配線抵抗が低いめっき電極であるn型領域集電極15が絶縁体フィルム10上に形成されていることにより、n型領域集電極15の配線抵抗を減らし、n型半導体接合領域2の幅が狭くてもn型半導体接合領域2の集電極の直列抵抗を低減できる。また、受光面から入射して絶縁体フィルム10を透過した光をこのn型領域集電極15により反射させることができるため、光吸収ロスを減らすことができ、高いフィルファクターと高い短絡電流を実現することができる。また、p型半導体接合領域1とn型半導体接合領域2とは、絶縁体フィルム10の段差により接触しないように形成されているため、シャント抵抗も高く保つことができる。
この太陽電池においては反射防止膜6側が受光面とされ、太陽光が入射される。この太陽電池は、p型領域集電極14およびn型領域集電極15が、太陽電池の裏面側にのみ配された裏面接合型のヘテロ接合太陽電池である。これにより、実施の形態1にかかる太陽電池は、受光面側のシャドーロスを抑制して光電変換効率の向上が図られている。
なお、絶縁体フィルム10の下部においてはp型半導体接合領域1とn型半導体接合領域2とが接触する部分があるが、ここでの接触は薄膜同士の接触のため接触面積が小さく、またi型シリコン膜11を含んで接触しているため、この接触部において電流リークは生じない。
つぎに、このような実施の形態1にかかる太陽電池の製造方法の一例について図2、図3−1〜図3−16を参照して説明する。図2は、実施の形態1にかかる太陽電池の製造方法を説明するためのフローチャートである。図3−1〜図3−16は、実施の形態1にかかる太陽電池の製造方法を説明するための断面図である。なお、図3−8〜図3−16では、理解の容易のため図3−1〜図3−7と上下方向を逆にしている。
まず、半導体基板を用意する。半導体基板はたとえばn型単結晶シリコン或いはn型多結晶シリコン、またはp型単結晶シリコン或いはp型多結晶シリコンから任意に選ぶことができるが、本実施の形態ではn型ドーパント原子としてたとえばリン(P)を所定の濃度で含有する単結晶シリコンからなるn型半導体基板3を用いた例を示す。n型半導体基板3として、たとえば寸法が100mm□であり、比抵抗が1Ωcmであり、主面の面方位が(100)の単結晶n型シリコン基板を用意する(図3−1)。
そして、n型半導体基板3をアルカリ溶液中に浸漬することにより、インゴットからワイヤーソーでスライスされた際のスライスダメージ層21が除去される(図3−2、ステップS10)。
つぎに、太陽電池において受光面と反対側の面(裏面)となるn型半導体基板3の一方の面に、耐アルカリ性のエッチング保護膜22としてたとえばプラズマCVDにより窒化シリコン膜が形成される(図3−3、ステップS20)。
その後、イソプロピルアルコールを添加したアルカリ溶液中にn型半導体基板3を浸漬することにより、エッチング保護膜22が形成されていないn型半導体基板3の片面にピラミッド状のテクスチャー4が形成される(図3−4、ステップS30)。さらに、n型半導体基板3をフッ酸に浸漬することにより、エッチング保護膜22として形成された窒化シリコン膜が除去され、片面にテクスチャー4が形成された片面テクスチャー基板が形成される(図3−5)。
なお、テクスチャー4はn型半導体基板3の片面のみに形成しても両面に形成しても構わないが、本実施の形態では片面のみにテクスチャー4を形成する。n型半導体基板3においてテクスチャー4が形成された面は、最終的に太陽電池が完成した際には受光面になる。以下、n型半導体基板3においてテクスチャー4が形成された面を受光面と呼ぶ場合がある。
つぎに、テクスチャー4が形成されたn型半導体基板3の受光面に受光面側電界層5が形成される(図3−6、ステップS40)。まず、n型半導体基板3にRCA洗浄によるクリーニングが施される。その後、n型半導体基板3を希フッ酸に浸漬することにより、n型半導体基板3の表面に形成された表面酸化膜が除去される。そして、n型半導体基板3において受光面となるテクスチャー4が形成された基板面に受光面側電界層5としてi型シリコン膜とn型シリコン膜との積層構造(図示せず)が形成される。
i型シリコン膜としては、たとえば13.56〜60MHzのRFプラズマCVDチャンバにおいて約2〜3nmの膜厚の酸素ドープi型非晶質シリコン層が形成される。成膜条件は、たとえばRF出力20〜100mW/cm2、基板温度100〜200℃、ガス圧400〜600Paの雰囲気下で、反応ガスの流量をシラン(SH4):10〜100sccm、水素(H2):500〜1000sccm、炭酸ガス(CO2):5〜20sccmとする。
続けて、プラズマCVDチャンバにおいて、i型シリコン膜が形成されたn型半導体基板3のテクスチャー4形成面に、約20nmの膜厚のn型シリコン膜がプラズマCVDにより形成される。成膜条件は、たとえばRF出力20〜100mW/cm2、基板温度100〜200℃、ガス圧400〜600Paの雰囲気下で、反応ガスの流量をシラン(SH4):5〜50sccm、水素(H2):50〜200sccm、1%に水素希釈したホスフィン(PH3):10〜50sccmとする。
つぎに、プラズマCVDチャンバにおいて、受光面側電界層5としてi型シリコン膜およびn型シリコン膜が形成されたn型半導体基板3の基板面に、反射防止膜6としてプラズマCVDにより屈折率2.0、膜厚80nmのシリコン窒化膜が形成される(図3−7、ステップS40)。
つぎに、n型半導体基板3にRCA洗浄によるクリーニングが施される(ステップS50)。そして、プラズマCVDチャンバにおいて、n型半導体基板3における裏面、すなわちテクスチャー4の非形成面(非テクスチャー形成面)に、i型シリコン膜7として約2〜3nmの膜厚の酸素ドープi型非晶質シリコン膜が形成される(図3−8、ステップS60)。成膜条件は、たとえばRF出力20〜100mW/cm2、基板温度100〜200℃、ガス圧400〜600Paの雰囲気下で、反応ガスの流量をシラン(SH4):10〜100sccm、水素(H2):500〜1000sccm、炭酸ガス(CO2):5〜20sccmとする。
続けて、プラズマCVDチャンバにおいて、i型シリコン膜7が形成されたn型半導体基板3における裏面に、p型シリコン膜8として約20nmの膜厚のp型非晶質シリコン膜が形成される(図3−8、ステップS70)。成膜条件は、たとえばRF出力20〜100mW/cm2、基板温度100〜200℃、ガス圧400〜600Paの雰囲気下で、反応ガスの流量をシラン(SH4):5〜50sccm、水素(H2):500〜2000sccm、1%に水素希釈したジボラン(B2H6):10〜50sccmとする。
つぎに、n型半導体基板3においてi型シリコン膜7およびp型シリコン膜8が形成された裏面に、透明導電膜9としてたとえばスパッタリング法により約70〜90nmの膜厚の酸化インジウム錫(ITO)が形成される(図3−8、ステップS80)。
つぎに、n型半導体基板3においてi型シリコン膜7、p型シリコン膜8および透明導電膜9が形成された裏面に、フィルムラミネータにより絶縁体フィルム10として厚さ20μmの感光性フィルムが貼り付けられる(図3−9、ステップS90)。感光性フィルムは、フォトレジストと同様に写真製版によりパターニングが可能なフィルムである。このパターニングが可能な感光性フィルムとしては、n型半導体基板3における受光面、すなわちテクスチャー形成面側から入射した光において、800nm以降の長波長側に吸収の無い材料を用いることが好ましい。
つぎに、n型半導体基板3の面内においてp型半導体接合領域1のパターンおよびn型半導体接合領域2のパターンに対応した開口パターンが写真製版により絶縁体フィルム10に形成される(図3−10、ステップS100)。まず、絶縁体フィルム10に露光を施して、n型半導体接合領域2に対応する幅50μmのグリッド電極のパターンおよび幅1mmのバス電極のパターン、およびp型半導体接合領域1に対応する幅500μmのグリッド電極のパターンおよび幅1mmのバス電極のパターンのパターンが転写される。
そして、絶縁体フィルム10を現像液で現像することにより、p型半導体接合領域1のパターンに対応した開口パターン23と、n型半導体接合領域2のパターンに対応した開口パターン24とが絶縁体フィルム10に形成される。開口パターン23は、n型半導体基板3の裏面の面内においてp型半導体接合領域1を画定する。開口パターン24は、n型半導体基板3の裏面の面内においてn型半導体接合領域2を画定する。n型半導体基板3の裏面において、開口パターン23および開口パターン24は、それぞれ櫛形形状に交互に配列される。そして、開口パターン23と開口パターン24とは、櫛形形状においてそれぞれ櫛歯に相当する部分が1本ずつ交互に噛み合わさるようにストライプ状に配置される。すなわち、ストライプ状部分では、開口パターン23の櫛形形状において櫛歯に相当する領域と、絶縁体フィルム10と、開口パターン24の櫛形形状において櫛歯に相当する領域とがこの順で交互に噛み合わさるように配置される。
p型半導体接合領域1のパターンに対応した開口パターン23と、n型半導体接合領域2のパターンに対応した開口パターン24とを分離する分離部である絶縁体フィルム10幅はたとえば50μmとされる。開口パターン23および開口パターン24では、透明導電膜9が露出する。
つぎに、n型半導体基板3の裏面における開口パターン24が形成された領域に、すなわち開口パターン24において露出した透明導電膜9上に、スクリーン印刷によりエッチングペースト25が塗布される(図3−11)。そして、n型半導体基板3をオーブン等で加熱することにより、開口パターン24内の透明導電膜9、p型シリコン膜8およびi型シリコン膜7がエッチングペースト25により開口パターン24と同じパターンでエッチングされる。その後、純水または薄いアルカリ溶液でn型半導体基板3を洗浄することにより、エッチングペースト25および被エッチング膜の残渣が除去される(図3−12、ステップS110)。これにより、開口パターン24にn型半導体基板3の裏面のシリコン面が露出する。また、透明導電膜9、p型シリコン膜8およびi型シリコン膜7は、絶縁体フィルム10の下部領域およびp型半導体接合領域1のパターンに対応した開口パターン23の下部領域に残存する。
この際、エッチングペースト25は、掘り込み部である開口パターン24に対する重ね合わせ精度を考慮して、開口パターン24の幅よりも狭い幅で印刷する必要がある。ここで、エッチングペースト印刷時の印刷スクリーンの開口部を絶縁体フィルム10の開口パターン24よりも狭くしておくことにより、エッチングペースト25の印刷位置が若干位置ずれを起こしても、絶縁体フィルム10で囲まれた絶縁体フィルム10の開口パターン24領域内からはみ出すことがなく、またエッチングペースト25が開口パターン24領域内で広がることによって開口パターン24の幅の細い領域を精度良くエッチングすることができる。また、エッチングペースト25の印刷厚が開口パターン24の深さを大きく超えないように、印刷版の乳剤厚や印刷条件を調整する必要がある。
また、エッチングペースト25の塗布後の加熱プロセスは、シリコン系膜を劣化させないように200℃以下の温度での加熱が必要である。エッチングペースト25の材料およびエッチングする各膜の種類によっては透明導電膜9、p型シリコン膜8、i型シリコン膜7を同時にエッチングすることができる。一方、透明導電膜9、p型シリコン膜8、i型シリコン膜7を同時にエッチングができない場合は、まず透明導電膜9用のエッチングペーストを用いて透明導電膜9を除去し、その後シリコン膜用のエッチングペーストを用いてp型シリコン膜8およびi型シリコン膜7を除去するなどの方法を用いる。
つぎに、開口パターン24に露出したn型半導体基板3の裏面がRCA洗浄により洗浄される(ステップS120)。そして、プラズマCVDチャンバにおいて、n型半導体基板3の裏面の全面に、i型シリコン膜11として約2〜3nmの膜厚の酸素ドープi型非晶質シリコン膜が形成される(図3−13、ステップS130)。成膜条件は、たとえばRF出力20〜100mW/cm2、基板温度100〜200℃、ガス圧400〜600Paの雰囲気下で、反応ガスの流量を(SH4):10〜100sccm、水素(H2):500〜1000sccm、炭酸ガス(CO2):5〜20sccmとする。ここで、i型シリコン膜11は、開口パターン24内および開口パターン23内においても、内面に沿って形成される。
続けて、プラズマCVDチャンバにおいて、i型シリコン膜11が形成されたn型半導体基板3における裏面の全面に、n型シリコン膜12として約20nmの膜厚のn型シリコン膜が形成される(図3−13、ステップS140)。成膜条件は、たとえばRF出力20〜100mW/cm2、基板温度100〜200℃、ガス圧400〜600Paの雰囲気下で、反応ガスの流量をシラン(SH4):5〜50sccm、水素(H2):50〜200sccm、1%に水素希釈したホスフィン(PH3):10〜50sccmとする。ここで、n型シリコン膜12は、開口パターン24内および開口パターン23内においても、内面に沿ってi型シリコン膜11上に形成される。
その後、n型半導体基板3に対して、フォーミングガスである水素5%含有の不活性ガス雰囲気中において、200℃で10分間の熱処理が行われる。この工程においては、p型半導体領域のi型シリコン膜7、p型シリコン膜8、透明導電膜9及びn型半導体領域のi型シリコン膜11、n型シリコン膜12が水素含有ガス雰囲気中でアニールされることにより、n型半導体基板とi型シリコン膜の界面の欠陥密度が低減され、欠陥による特性低下を防ぐことができる。また、200℃程度の温度で加熱されることにより透明導電膜9は結晶化され、この後で行うエッチングペーストによるエッチングに対する耐性が向上する。
つぎに、n型半導体基板3においてi型シリコン膜11およびn型シリコン膜12が形成された裏面の全面に、透明導電膜13としてたとえばスパッタリング法により約70〜90nmの膜厚の酸化インジウム錫(ITO)が形成される(図3−13、ステップS150)。ここで、透明導電膜13は、開口パターン24内および開口パターン23内においても、内面に沿ってn型シリコン膜12上に形成される。
つぎに、n型半導体基板3の裏面における開口パターン23が形成された領域に、すなわち開口パターン23内において露出した透明導電膜13上に、スクリーン印刷によりエッチングペースト26が塗布される(図3−14)。そして、n型半導体基板3をオーブン等で加熱することにより、開口パターン23の領域形成された透明導電膜13、n型シリコン膜12およびi型シリコン膜11がエッチングペースト26によりエッチングされる。その後、純水または薄いアルカリ溶液でn型半導体基板3を洗浄することにより、エッチングペースト26および被エッチング膜の残渣が除去される(図3−15、ステップS160)。これにより、開口パターン23に透明導電膜9が露出する。また、透明導電膜13、n型シリコン膜12およびi型シリコン膜11は、開口パターン24の内壁に沿った領域および絶縁体フィルム10上の領域に残存する。
この際、エッチングペースト26は、掘り込み部である開口パターン23に対する重ね合わせ精度を考慮して、開口パターン23の幅よりも狭い幅で印刷する必要がある。ここで、エッチングペースト印刷時の印刷スクリーンの開口部を絶縁体フィルム10の開口パターン23よりも狭くしておくことにより、エッチングペースト26の印刷位置が若干位置ずれを起こしても、絶縁体フィルム10で囲まれた絶縁体フィルム10の開口パターン23領域内からはみ出すことがなく、またエッチングペースト26が開口パターン24領域内で広がることによって開口パターン24の幅の細い領域を精度良くエッチングすることができる。なお、開口パターン23の内壁にはi型シリコン膜11、n型シリコン膜12および透明導電膜13が成膜されているので、これらの膜厚も考慮する。また、エッチングペースト25の印刷厚が開口パターン24の深さを大きく超えないように、印刷版の乳剤厚や印刷条件を調整する必要がある。
エッチングペースト26によるエッチング工程では、結晶化した透明導電膜をエッチングストップ層として利用する。初めに形成されたp型シリコン膜8上の透明導電膜9は前記のフォーミングガスによるアニール工程で結晶化されていることにより薬液耐性が高く、またn型シリコン膜12上の透明導電膜13は結晶化されていないために薬液耐性が低い。つまりn型シリコン膜12上の透明導電膜13はp型シリコン膜8上の透明導電膜9よりもエッチングされやすい。よってエッチングペースト26として、結晶化していない透明導電膜13やn型シリコン層12、i型シリコン層11をエッチングし、結晶化している透明導電膜をエッチングしないような材料を選択することにより、p型シリコン膜8上の透明導電膜9残すように透明導電膜13、n型シリコン膜12、i型シリコン膜11のみを除去することができる。
つぎに、めっき処理を施すことにより、内面に沿って透明導電膜13、n型シリコン膜12およびi型シリコン膜11が形成された開口パターン24の内部へのn型領域集電極15の形成、および開口パターン23の内部へのp型領域集電極14の形成が同時に行われる。まず、Ni無電解めっきの前処理として、n型半導体基板3がパラジウムを触媒とした液に浸漬される。パラジウム触媒は正イオンとして触媒液に分散しているため、酸化物である透明導電膜9および透明導電膜13に吸着する。逆に、n型半導体基板3における受光面側の表面に反射防止膜6として形成された窒化シリコン膜にはパラジウム触媒が付着しない。このため、n型半導体基板3の裏面の透明導電膜9および透明導電膜13にのみパラジウムを付着させることができる。なお、n型半導体基板3の裏面のみをパラジウムを触媒とした液に浸してもよい。
つぎに、n型半導体基板3が無電解Niめっき液に浸漬されることにより、パラジウム触媒が吸着したn型半導体基板3の裏面の透明導電膜9上および透明導電膜13上に選択的にNiめっき膜が成長する。無電解Niめっきはたとえば温度70℃で行われ、Niめっき膜の厚さが絶縁体フィルム10の厚さよりも厚さが薄くなるように、Niめっき膜がたとえば約1μmの厚さとなるように浸漬時間が調整される。これにより、透明導電膜9が露出した開口パターン23内部、透明導電膜13が露出した開口パターン24の内部および絶縁体フィルム10の上部領域にNiめっき膜が形成される。このとき、パラジウム触媒が吸着していない開口パターン23内部の絶縁体フィルム10の側壁にはNiは付着しない。
つぎに、n型半導体基板3が硫酸銅系の電解Cuめっき浴に浸漬されることにより、無電解Niめっき膜が形成された開口パターン23および開口パターン24のうちバス電極部分の各々に異なる直流電源に結線したマイナス電極を、アノード電極にプラス電極を接続し、電圧を印加して電解Cuめっきを行う。これにより、Niめっき膜上にCuめっき膜が形成される。電界Cuめっきは、たとえば1A/dm2の電圧下で行われ、開口パターン23においてNiめっき膜とCuめっき膜との合計の厚さが絶縁体フィルム10の厚さよりも薄くなるように、Cuめっき膜の厚さが絶縁体フィルム10の表面より若干薄くなり絶縁体フィルム10の上面からのCuめっき膜のはみ出しが無いような厚さに調整される。Cuめっき膜は、たとえば約15μmの厚さとなるように浸漬時間が調整される。さらに、Cuめっき膜の表面の酸化を防止するために、Cuめっき膜の表面にSnの置換めっきを行う。
このようにしてNiめっき膜とCuめっき膜とSnめっき膜とが積層しためっき電極が形成される。これにより、p型半導体接合領域1では、p型領域集電極14として開口パターン23の内部に絶縁体フィルム10よりも薄い膜厚で、すなわち表面が絶縁体フィルム10の上面よりも低いめっき電極が形成される。絶縁体フィルム10の厚さが20μmであるのに対して、p型領域集電極14は、約15μmの厚さとされる。このように、p型領域集電極14の厚さをパターニングされた絶縁体フィルム10よりも薄くすることにより、開口パターン23から横へのはみ出し無く、細いp型領域集電極14を形成できる。なお、ここでは、p型領域集電極14とn型領域集電極15とを同時に形成しているが、どちらか一方を先に形成してもよい。
また、n型半導体接合領域2では、n型領域集電極15として開口パターン24の内部領域を埋めるとともに該開口パターン24に隣接する絶縁体フィルム10上の領域にめっき電極が形成される。ここで、p型領域集電極14は開口パターン23の内部に絶縁体フィルム10の上面よりも低い膜厚で形成されるため、p型領域集電極14とn型領域集電極15とは、絶縁体フィルム10の段差により接触しない。なお、ここでは、p型領域集電極14の上面が絶縁体フィルム10の上面よりも低くしているが、p型領域集電極14とn型領域集電極15との構造を逆にして、n型領域集電極15の上面を絶縁体フィルム10の上面よりも低くしてもよい。
なお、上記においては長波長側に吸収の無い透光性の絶縁体フィルム10を用いたが、絶縁体フィルム内に光反射体や光散乱体の少なくとも一方を含むことによりこの絶縁体フィルム自体で、n型半導体基板3の裏面に到達した長波長光を散乱、反射させてもよい。絶縁体フィルム10の内部に長波長の光を散乱、反射する光散乱性材料を含む場合には、n型半導体基板3および裏面側の半導体領域を通過した長波長の光を散乱、反射してn型半導体基板3内に再入射させることにより、太陽電池での光の吸収効率を高めることができる。
また、上記においては、感光性フィルムを絶縁体フィルム10のパターニングフィルムとして用いたが、あらかじめ開口パターンがパターニングされている熱硬化性のシート状の樹脂絶縁体フィルムを熱圧着によりn型半導体基板3に接着してもよい。
また、上記においては、p型半導体接合領域1のグリッド電極の幅を500μm、n型半導体接合領域2のグリッド電極の幅を50μm、p型半導体接合領域1とn型半導体接合領域2とを分離する分離部である絶縁体フィルム10幅を50μm、絶縁体フィルム10の厚さを20μmとした。しかし、電極をめっきによるCu電極とした場合には、絶縁体フィルム10上に形成した電極領域を含むp型半導体接合領域1およびn型半導体接合領域2のそれぞれの集電極の電極断面積が600μm2以上であってp型領域集電極14の厚さが絶縁体フィルム10の厚さより薄い範囲であれば、電極幅、電極厚および絶縁体フィルム10の厚さを任意に設定することができる。それぞれの集電極の電極断面積が600μm2未満の場合には、直列抵抗が増大して太陽電池の電流−電圧特性におけるフィルファクターが低下する。
この場合、p型半導体接合領域1のp型領域集電極14とn型半導体接合領域2のn型領域集電極15とは、各々異なる大きさの電流を流すことにより各々の集電極に適した膜厚に調整することができる。ただし、絶縁体フィルム10の厚さが厚い場合には写真製版によるパターニング性が低下するため、絶縁体フィルム10の厚さは5μm〜50μmの範囲で形成することが好ましい。絶縁体フィルム10の厚さが5μm以上であることにより、エッチングペーストやめっき膜の横への広がりを防止することができる。また、絶縁体フィルム10の厚さが50μm以下であることにより、写真製版でのパターニングが可能となる。
また、上記と同様の工程を通常用いられる液状レジストで行うことも想定できるが、液状レジストは通常酸耐性が無く、パターニング後の酸洗浄などに対して耐性を持たないため、塗布厚の減少を起こすなどの問題を生じる。また、液状レジストは、CVD工程や電極の乾燥工程など、200℃程度の温度環境下におかれると熱収縮を起こし、パターン形状の変化や、収縮による応力に起因した剥離が生じる。したがって、上述した実施の形態1にかかる太陽電池の構造およびその製造プロセスを実現するためには、上述した絶縁体フィルムを用いる必要がある。
また、上記において、p型半導体接合領域1における構成とn型半導体接合領域2における構成とを入れ替えた構成とすることも可能である。
上述した実施の形態1においては、半導体基板上にはじめに形成した半導体膜上に、最終的に形成される電極より厚い厚さを有するとともに製造工程環境に耐性を有する透光性の絶縁体フィルムを形成し、各半導体接合領域に対応した開口パターンをこの絶縁体フィルムにパターニングする。この後は、絶縁体フィルムをエッチングペーストによるパターニングと組み合わせ、2つの半導体接合領域の形成、分離、集電極形成のためのパターニングの役割をこのフィルムが担うことにより、半導体接合領域および集電極のパターニングプロセスを簡略化することができる。
すなわち、絶縁体フィルム10を広がり防止壁として用いることにより、エッチングペーストによる各半導体接合領域のパターニング時のエッチングペーストの滲みを抑制して、幅の細い半導体接合領域を精度良くパターニングして形成することができる。また、めっきによる集電極形成時のめっき膜の横への広がりを抑制して、幅が細く、厚さの厚い集電極を精度良くパターニングして形成することができる。また、絶縁体フィルム10はp型領域集電極14とn型領域集電極15とを電気的に分離する。このため、p型領域集電極14とn型領域集電極15との間に、電気的な分離に必要以上な広い間隔が不要である。
また、上述した実施の形態1においては、光反射率が高く配線抵抗が低いめっき電極であるn型領域集電極15が絶縁体フィルム10上にも形成されていることにより、n型領域集電極15の接触抵抗および配線抵抗を減らし、n型半導体接合領域2の幅が狭くてもn型半導体接合領域2の集電極の直列抵抗を低減できる。
また、上述した実施の形態1においては、絶縁体フィルム10をp型半導体接合領域1とn型半導体接合領域2との間の領域に残すことにより、光反射率が高く配線抵抗が低いめっき電極であるn型領域集電極15が絶縁体フィルム10の開口パターン24の側壁および絶縁体フィルム10上にも形成される。これにより、n型領域集電極15とその下層の透明導電膜13との接触面積を大きくすることができ、n型領域集電極15の接触抵抗および配線抵抗を減らし、n型半導体接合領域2の幅が狭くてもn型半導体接合領域2の集電極の直列抵抗を低減できる。
また、上述した実施の形態1においては、光反射率が高く配線抵抗が低いめっき電極であるn型領域集電極15が絶縁体フィルム10上にも形成されていることにより、受光面から入射して絶縁体フィルム10を透過した光をこの絶縁体フィルム10上のn型領域集電極15によっても反射させることができる。これにより、n型半導体基板3の裏面の全面での光反射光かが得られ、光吸収ロスを減らすことができ、高いフィルファクターと高い短絡電流を実現することができる。また、p型半導体接合領域1とn型半導体接合領域1とは、絶縁体フィルム10の段差により接触しないように形成されているため、シャント抵抗も高く保つことができる。
また、上述した実施の形態1においては、n型半導体基板3の裏面は、絶縁体フィルム10がp型の導電型の半導体膜の上に形成されており、バス電極、グリッド電極などの集電極が絶縁体フィルム10を介して交互に配置された構造となるが、n型半導体基板3の裏面におけるすべての領域がp型またはn型のうちのどちらかの導電型の半導体膜と集電極とに覆われている。すなわち、n型半導体基板3の裏面の全面がパッシベーション層により覆われている。これにより、n型半導体基板3の裏面において表面再結合速度の低い領域を作らず、n型半導体基板3の裏面全面において再結合を抑制する効果が得られ、高い開放電圧と高い短絡電流を実現できる。
また、上述した実施の形態1においては、絶縁体フィルム10の開口パターンの側面は、n型半導体基板3の面方向に対して略垂直とされている。これにより、集電極の断面形状は、矩形性の良い四角形状となり、集電極の下部の透明導電膜との接触面積に対して断面積を大きく保つことができる。このため、同じ底面積であっても通常のめっきにより形成される半円形上や印刷による三角形状の断面形状の電極よりも配線抵抗を低く保つことができる。
したがって、実施の形態1によれば、電極厚より厚い絶縁体フィルムをp型およびn型の各半導体接合領域のパターニングおよび各領域の電極形成のパターニングに用いることにより、形成プロセスを簡略化することができる。また、配線抵抗や接触抵抗を犠牲にすることなく、たとえば100μm以下の幅の狭い半導体接合領域および50μm以下の幅の狭い集電極をたとえば5μm以上の厚さで精度良く形成することができる。また、n型半導体基板3の裏面全面に集電極を形成することにより、n型半導体基板3の裏面側での光の反射効率を高めることができる。これにより、光電変換効率に優れた裏面接合型のヘテロ接合太陽電池が得られる。
実施の形態2.
図4は、本発明の実施の形態2にかかる光起電力装置である太陽電池の断面構造を模式的に示す図である。実施の形態2にかかる太陽電池の裏面構造は、実施の形態1にかかる太陽電池と共通である。図4は、図1−1の線分A−A’における要部断面図に対応する。なお、実施の形態1にかかる太陽電池と共通の部材については、実施の形態1と同じ符号を付すことで詳細な説明を省略する。本実施の形態では、一方の半導体膜を形成後に絶縁体フィルムを用いて一方の半導体接合領域および一方のペースト裏面電極のパターニング形成を行い、その後、絶縁体フィルムとエッチングとを組み合わせて他方の半導体接合領域および他方のペースト裏面電極のパターニング形成を行う例について示す。
実施の形態2にかかる太陽電池は、裏面接合型のヘテロ接合太陽電池であり、第1導電型の結晶系半導体基板であるn型半導体基板3を有する。n型半導体基板3の受光面側の面には、微細凹凸からなるテクスチャー4が形成されている。テクスチャー4上には、テクスチャー4側から真性(i型)シリコン膜およびn型半導体基板3と同じ導電型(n型)のシリコン膜が積層された積層構造(図示せず)からなる受光面側電界層5と、反射防止膜6とがこの順で積層されている。
n型半導体基板3の受光面と反対の面(裏面)側には、n型半導体基板3と反対の導電型(p型)の不純物ドープ半導体薄膜からなる半導体層を有するp型半導体接合領域1と、n型半導体基板3と同じ導電型(n型)の不純物ドープ半導体薄膜からなる半導体層を有するn型半導体接合領域2と、がそれぞれ櫛型形状に交互に配列されている。そして、n型半導体基板3の裏面において、p型半導体接合領域1とn型半導体接合領域2とは、櫛形形状においてそれぞれ櫛歯に相当する部分が1本ずつ交互に噛み合わさるようにストライプ状に配置されている。すなわち、p型半導体接合領域1の櫛形形状において櫛歯に相当する領域の1本1本と、n型半導体接合領域2の櫛形形状において櫛歯に相当する領域の1本1本とが1本ずつ交互に噛み合わさるように配置されている。
p型半導体接合領域1とn型半導体接合領域2とは、n型半導体基板3の裏面側における後述する金属薄膜31上の全面に形成された透光性を有する絶縁体層である絶縁体フィルム10により、それぞれ区画されている。すなわち、p型半導体接合領域1は、絶縁体フィルム10に設けられた開口パターン23に対応している。n型半導体接合領域2は、絶縁体フィルム10に設けられた開口パターン24に対応している。p型半導体接合領域1およびn型半導体接合領域2のストライプ状の部分(櫛歯に相当する部分)では、p型半導体接合領域1と絶縁体フィルム10とn型半導体接合領域2とがこの順で交互に配置されている。
n型半導体基板3の裏面の面内におけるp型半導体接合領域1および絶縁体フィルム10の形成領域には、n型半導体基板3の裏面上に真性(i型)シリコン膜7、p型シリコン膜8、透明導電膜9、金属薄膜31がp型半導体接合領域1と同様の櫛形形状にこの順で積層されている。たとえば200℃以下で焼成されるスクリーン印刷による電極は、電極は粒子状であり光反射率が低い。このため、金属薄膜31は、たとえば200℃以下で焼成されるスクリーン印刷による電極よりも反射率の高い金属薄膜であり、たとえば蒸着膜またはスパッタリング膜が用いられる。このような金属薄膜31を備えることにより、n型半導体基板3の裏面に到達した光をより有効に反射し、光閉じ込め効果の高い構造を形成できる。
また、絶縁体フィルム10の直下の領域において、金属薄膜31と透明導電膜9とが積層されていることにより、金属薄膜31のみの場合に比べてn型半導体基板3の裏面に到達した光の光反射率をさらに向上させることができる。
そして、p型半導体接合領域1では、p型半導体接合領域1における各領域を電気的に結合し、発電された電力を各領域から集電して外部に取り出すためのp型領域集電極33が金属薄膜31上にp型半導体接合領域1と同様の櫛形形状に形成されている。p型領域集電極33は、p型半導体接合領域1の櫛歯に相当する部分(ストライプ状の部分)にグリッド電極が、p型半導体接合領域1の櫛歯の根本に相当する部分にバス電極が形成されている。p型領域集電極33は、スクリーン印刷により低温焼結型のAgペーストが印刷され、焼成されて形成されたペースト電極である。
また、金属薄膜31上におけるp型領域集電極33が設けられていない領域の全面には絶縁体フィルム10が形成されている。p型領域集電極33は、絶縁体フィルム10に設けられた開口パターン23内に埋設されている。したがって、グリッド電極の横方向(幅方向)は、絶縁体フィルム10の側面により制限されている。
また、絶縁体フィルム10の開口パターン23の側面は、n型半導体基板3の面方向に対して略垂直とされている。これにより、p型領域集電極33の断面形状は、矩形性の良い四角形状となり、p型領域集電極33の下部の金属薄膜31との接触面積に対して断面積を大きく保つことができる。このため、同じ底面積であっても通常のめっきにより形成される半円形上や印刷による三角形状の断面形状の電極よりも配線抵抗を低く保つことができる。
n型半導体基板3の裏面の面内におけるn型半導体接合領域2では、絶縁体フィルム10の開口パターン24の内面の全面に沿って、i型シリコン膜11、n型シリコン膜12、透明導電膜13、金属薄膜32がこの順で積層された積層構造が形成されている。すなわち、n型半導体基板3の裏面において真性(i型)シリコン膜7、p型シリコン膜8、透明導電膜9、金属薄膜31が形成されていない領域には、該積層構造がn型半導体接合領域2と同様の櫛形形状に形成されている。たとえば200℃以下で焼成されるスクリーン印刷による電極は、電極は粒子状であり光反射率が低い。このため、金属薄膜32は、たとえば200℃以下で焼成されるスクリーン印刷による電極よりも反射率の高い金属薄膜であり、たとえば蒸着膜またはスパッタリング膜が用いられる。このような金属薄膜32を備えることにより、n型半導体基板3の裏面に到達した光をより有効に反射し、光閉じ込め効果の高い構造を形成できる。
このように、n型半導体基板3の裏面において、絶縁体フィルム10の形成領域およびp型半導体接合領域1には真性(i型)シリコン膜7が形成され、n型半導体接合領域2には真性(i型)シリコン膜11が形成されることにより、n型半導体基板3の裏面の全面がパッシベーション層により覆われている。これにより、n型半導体基板3の裏面において表面再結合速度の低い領域を作らず、n型半導体基板3の裏面全面において再結合を抑制する効果が得られ、高い開放電圧と高い短絡電流を実現できる。
そして、n型半導体接合領域2では、n型半導体接合領域2における各領域を電気的に結合し、発電された電力を各領域から集電して外部に取り出すためのn型領域集電極34が金属薄膜32上にn型半導体接合領域2と同様の櫛形形状に形成されている。n型領域集電極34は、n型半導体接合領域2の櫛歯に相当する部分(ストライプ状の部分)にグリッド電極が、p型半導体接合領域1の櫛歯の根本に相当する部分にバス電極が形成されている。n型領域集電極34は、スクリーン印刷により低温焼結型のAgペーストが印刷され、焼成されて形成されたペースト電極である。
この太陽電池においては反射防止膜6側が受光面とされ、太陽光が入射される。この太陽電池は、p型領域集電極14およびn型領域集電極34が、太陽電池の裏面側にのみ配された裏面接合型のヘテロ接合太陽電池である。これにより、実施の形態2にかかる太陽電池は、受光面側のシャドーロスを抑制して光電変換効率の向上が図られている。
つぎに、このような実施の形態2にかかる太陽電池の製造方法の一例について図5、図6−1〜図6−15を参照して説明する。図5は、実施の形態2にかかる太陽電池の製造方法を説明するためのフローチャートである。図6−1〜図6−15は、実施の形態2にかかる太陽電池の製造方法を説明するための断面図である。なお、図6−8〜図6−15では、理解の容易のため図6−1〜図6−7と上下方向を逆にしている。
まず、図6−1〜図6−7およびステップS10〜ステップS40で示す工程を実施して、n型半導体基板3のテクスチャー形成面に受光面側電界層5と反射防止膜6とがこの順で形成される(図6−7、ステップS40)。なお、図6−1〜図6−7およびステップS10〜ステップS40で示す工程は、実施の形態1で図3−1〜図3−7を参照して説明したステップS10〜ステップS40の工程と同じである。
つぎに、n型半導体基板3にRCA洗浄によるクリーニングが施される(ステップS50)。そして、プラズマCVDチャンバにおいて、n型半導体基板3における裏面に、i型シリコン膜7として約2〜3nmの膜厚の酸素ドープi型非晶質シリコン膜が形成される(図6−8、ステップS60)。成膜条件は、たとえばRF出力20〜100mW/cm2、基板温度100〜200℃、ガス圧400〜600Paの雰囲気下で、反応ガスの流量をシラン(SH4):10〜100sccm、水素(H2):500〜1000sccm、炭酸ガス(CO2):5〜20sccmとする。
続けて、プラズマCVDチャンバにおいて、i型シリコン膜7が形成されたn型半導体基板3における裏面に、p型シリコン膜8として約20nmの膜厚のp型非晶質シリコン膜が形成される(図6−8、ステップS70)。成膜条件は、たとえばRF出力20〜100mW/cm2、基板温度100〜200℃、ガス圧400〜600Paの雰囲気下で、反応ガスの流量をシラン(SH4):5〜50sccm、水素(H2):500〜2000sccm、1%に水素希釈したジボラン(B2H6):10〜50sccmとする。
その後、n型半導体基板3に対して、フォーミングガスである水素5%含有の不活性ガス雰囲気中において、200℃で10分間の熱処理が行われる。
つぎに、n型半導体基板3においてi型シリコン膜7およびp型シリコン膜8が形成された裏面に、透明導電膜9としてたとえばスパッタリング法により約70〜90nmの膜厚の酸化インジウム錫(ITO)が形成される(図6−8、ステップS80)。
さらに、n型半導体基板3においてi型シリコン膜7、p型シリコン膜8および透明導電膜9が形成された裏面に、金属薄膜31としてたとえばスパッタリング法により約100nmの膜厚のAg薄膜が形成される(図6−8、ステップS210)。
つぎに、n型半導体基板3においてi型シリコン膜7、p型シリコン膜8および透明導電膜9、金属薄膜31が形成された裏面に、フィルムラミネータにより絶縁体フィルム10として厚さ20μmの感光性フィルムが貼り付けられる(図6−9、ステップS220)。絶縁体フィルム10のフィルム厚は、後の工程で形成されるスクリーン印刷によるAg電極の厚さよりも厚いフィルム厚としてたとえば20μmとされている。感光性フィルムは、フォトレジストと同様に写真製版によりパターニングが可能なフィルムである。このパターニングが可能な感光性フィルムとしては、n型半導体基板3における受光面、すなわちテクスチャー形成面から入射した光において、800nm以降の長波長側に吸収の無い材料を用いることが好ましい。
つぎに、n型半導体基板3の面内においてp型半導体接合領域1のパターンおよびn型半導体接合領域2のパターンに対応した開口パターンが写真製版により絶縁体フィルム10に形成される(図6−10、ステップS230)。まず、絶縁体フィルム10に露光を施して、n型半導体接合領域2に対応する幅50μmのグリッド電極のパターンおよび幅1μmのバス電極のパターン、およびp型半導体接合領域1に対応する幅500μmのグリッド電極のパターンおよび幅1μmのバス電極のパターンのパターンが転写される。
そして、絶縁体フィルム10を現像液で現像することにより、p型半導体接合領域1のパターンに対応した開口パターン23と、n型半導体接合領域2のパターンに対応した開口パターン24とが絶縁体フィルム10に形成される。n型半導体基板3の裏面において、開口パターン23および開口パターン24は、それぞれ櫛形形状に交互に配列される。そして、開口パターン23と開口パターン24とは、櫛形形状においてそれぞれ櫛歯に相当する部分が1本ずつ交互に噛み合わさるようにストライプ状に配置される。すなわち、ストライプ状部分では、開口パターン23の櫛形形状において櫛歯に相当する領域と、絶縁体フィルム10と、開口パターン24の櫛形形状において櫛歯に相当する領域とがこの順で交互に噛み合わさるように配置される。
p型半導体接合領域1のパターンに対応した開口パターン23と、n型半導体接合領域2のパターンに対応した開口パターン24とを分離する分離部である絶縁体フィルム10幅はたとえば50μmとされる。開口パターン23および開口パターン24では、金属薄膜31が露出する。
つぎに、n型半導体基板3の裏面における開口パターン23が形成された領域に、すなわち開口パターン23において露出した金属薄膜31上に、スクリーン印刷により低温焼結型のAgペーストを塗布し、200℃で1時間焼成することにより、p型領域集電極33としてAg電極が形成される(図6−11、ステップS240)。ここで、p型領域集電極33の厚さは、絶縁体フィルム10の厚さより薄くなるように印刷条件が調整される。
この際、Agペーストは、掘り込み部である開口パターン23に対する重ね合わせ精度を考慮して、開口パターン23の幅よりも狭い幅で印刷する必要がある。ここで、Agペースト印刷時の印刷スクリーンの開口部を絶縁体フィルム10の開口パターン23よりも狭くしておくことにより、Agペーストの印刷位置が若干位置ずれを起こしても、絶縁体フィルム10で囲まれた絶縁体フィルム10の開口パターン23領域内からはみ出すことがなく、またAgペーストが開口パターン23領域内で広がることによって開口パターン23の幅の細い領域を精度良く形成することができる。また、Agペーストの印刷厚が開口パターン23の深さを大きく超えないように、印刷版の乳剤厚や印刷条件を調整する必要がある。
つぎに、リン酸:硝酸=1:4となるリン硝酸にn型半導体基板3を浸漬することにより、n型半導体接合領域2のパターンに対応した開口パターン24内の領域の金属薄膜31(Ag薄膜)がエッチング除去される。続けて、n型半導体基板3をシュウ酸に浸漬することにより、開口パターン24内の領域の透明導電膜9(ITO膜)がエッチング除去される。
さらにフッ酸:硝酸=1:10となるフッ硝酸にn型半導体基板3を浸漬することにより、開口パターン24内の領域のp型シリコン膜8(p型非晶質シリコン膜)およびi型シリコン膜7(酸素ドープi型非晶質シリコン膜)をエッチング除去してn型半導体基板3の裏面の基板面を開口パターン24内に露出させる(図6−12、ステップS250)。なお、金属薄膜31(Ag薄膜)をエッチングする工程において、p型半導体接合領域1に形成されたp型領域集電極33としてのAg電極は若干エッチングされるが、このAg電極は金属薄膜31(Ag薄膜)に比べて極端に厚いため、エッチングされる量は無視できる。
つぎに、開口パターン24内に露出したn型半導体基板3の裏面の基板面にRCA洗浄によるクリーニングが施される(ステップS260)。そして、プラズマCVDチャンバにおいて、n型半導体基板3における裏面の全面に、i型シリコン膜11として約2〜3nmの膜厚の酸素ドープi型非晶質シリコン膜が形成される(図6−13、ステップS270)。成膜条件は、たとえばRF出力20〜100mW/cm2、基板温度100〜200℃、ガス圧400〜600Paの雰囲気下で、反応ガスの流量をシラン(SH4):10〜100sccm、水素(H2):500〜1000sccm、炭酸ガス(CO2):5〜20sccmとする。
続けて、プラズマCVDチャンバにおいて、i型シリコン膜11が形成されたn型半導体基板3における裏面の全面に、n型シリコン膜12として約20nmの膜厚のn型非晶質シリコン膜が形成される(図6−13、ステップS280)。成膜条件は、たとえばRF出力20〜100mW/cm2、基板温度100〜200℃、ガス圧400〜600Paの雰囲気下で、反応ガスの流量をシラン(SH4):5〜50sccm、水素(H2):500〜2000sccm、1%に水素希釈したホスフィン(PH3):10〜50sccmとする。
その後、フォーミングガス、たとえば水素5%含有の不活性ガス雰囲気中において、200℃で10分間の熱処理を行う。
つぎに、n型半導体基板3においてi型シリコン膜11およびn型シリコン膜12が形成された裏面の全面に、透明導電膜13としてたとえばスパッタリング法により約70〜90nmの膜厚の酸化インジウム錫(ITO)が形成される(図6−13、ステップS290)。
さらに、n型半導体基板3においてi型シリコン膜11、n型シリコン膜12および透明導電膜13が形成された裏面の全面に、金属薄膜32としてたとえばスパッタリング法により約100nmの膜厚のAg薄膜が形成される(図6−13、ステップS300)。
つぎに、n型半導体基板3の裏面においてi型シリコン膜11、n型シリコン膜12、透明導電膜13および金属薄膜32が積層形成された開口パターン24内に、スクリーン印刷により低温焼結型のAgペーストを塗布し、200℃で1時間焼成することにより、n型領域集電極34としてAg電極が形成される(図6−14、ステップS310)。
この際、Agペーストは開口パターン23に接触しなければ開口パターン24からはみ出して絶縁体フィルム10上に形成されてもよい。開口パターン24からはみ出して形成された場合にはAgペーストの断面積を増加させることができるため、開口パターン24が狭い場合であっても配線抵抗によるフィルファクターの増加を防ぐことができる。
つぎに、リン酸:硝酸=1:4となるリン硝酸にn型半導体基板3を浸漬することにより、p型半導体接合領域1上および絶縁体フィルム10上の金属薄膜32(Ag薄膜)がエッチング除去される。続けて、n型半導体基板3をシュウ酸に浸漬することにより、p型半導体接合領域1上および絶縁体フィルム10上の透明導電膜13(ITO膜)がエッチング除去される。
さらにフッ酸:硝酸=1:10となるフッ硝酸にn型半導体基板3を浸漬することにより、p型半導体接合領域1上および絶縁体フィルム10上のn型シリコン膜12(n型非晶質シリコン膜)とi型シリコン膜11(酸素ドープi型非晶質シリコン膜)とをエッチング除去してp型半導体接合領域1に形成されたp型領域集電極33、および絶縁体フィルム10を露出させる(図6−15、ステップS320)。
ここで、絶縁体フィルム10とp型領域集電極33とがエッチングマスクとして用いられる。金属薄膜32(Ag薄膜)、透明導電膜13(ITO膜)、n型シリコン膜12(n型非晶質シリコン膜)、i型シリコン膜11(酸素ドープi型非晶質シリコン膜)をパターニングする際に、厚さの厚いスクリーン印刷によるp型領域集電極33をエッチングマスクとすることにより、保護レジスト等を用いることなく簡単なプロセスでパターニングが可能である。
なお、金属薄膜32(Ag薄膜)をエッチングする工程において、n型半導体接合領域2に形成されたn型領域集電極34としてのAg電極は若干エッチングされるが、このAg電極は金属薄膜32(Ag薄膜)に比べて極端に厚いため、エッチングされる量は無視できる。
なお、上記においては、長波長側に吸収の無い絶縁体フィルム10を用いるとともに、p型半導体接合領域1、およびn型半導体接合領域2の両方にスパッタリングによるAg薄膜を用いたが、スクリーン印刷によるAg電極として光反射率の高いものを用いた場合はこのAg薄膜の形成を省略することができる。ただし、この場合は絶縁体フィルム10の形成領域には光反射体が無く、光が透過してしまう。このため、絶縁体フィルム10内に光反射体や光散乱体の少なくとも一方を含むことにより、絶縁体フィルム10自体でn型半導体基板3の裏面に到達した長波長光を散乱、反射させることが好ましい。これにより、n型半導体基板3および裏面側の半導体領域を通過した長波長の光を絶縁体フィルム10で散乱、反射してn型半導体基板3内に再入射させることにより、太陽電池での光の吸収効率を高めることができる。
また、上記においては、感光性フィルムを絶縁体フィルム10のパターニングフィルムとして用いたが、初めから開口パターンがパターニングされている絶縁体フィルムを熱圧着によりn型半導体基板3に接着してもよい。
また、上記においては、p型半導体接合領域1のグリッド電極の幅を500μm、n型半導体接合領域2のグリッド電極の幅を100μm、p型半導体接合領域1とn型半導体接合領域2とを分離する分離部である絶縁体フィルム10の幅を50μm、絶縁体フィルム10の厚さを20μmとした。しかし、電極をAgペーストによる電極とした場合には、p型半導体接合領域1およびn型半導体接合領域2のそれぞれの集電極の電極断面積が1600μm2以上であってp型領域集電極14の厚さが絶縁体フィルム10の厚さより薄い範囲であれば、電極幅、電極厚および絶縁体フィルム10の厚さを任意に設定することができる。それぞれの集電極の電極断面積が1600μm2未満の場合には、直列抵抗が増大して太陽電池の電流−電圧特性におけるフィルファクターが低下する。
ただし、絶縁体フィルム10の厚さが厚い場合には写真製版によるパターニング性が低下するため、絶縁体フィルム10の厚さは5μm〜50μmの範囲で形成することが好ましい。絶縁体フィルム10の厚さが5μm以上であることにより、Agペーストの横への広がりを防止することができる。また、絶縁体フィルム10の厚さが50μm以下であることにより、写真製版でのパターニングが可能となる。
また、絶縁体フィルム10の下部においてはp型半導体接合領域1とn型半導体接合領域2とが接触する部分があるが、n型半導体接合領域2の金属薄膜31(Ag薄膜)膜除去時(図6−12、ステップS250)にオーバーエッチングを施すことにより、絶縁体フィルム10下の金属薄膜31(Ag薄膜)とn型半導体接合領域2のシリコン薄膜との接触を防ぐことができる。
また、上記において、p型半導体接合領域1における構成とn型半導体接合領域2における構成とを入れ替えた構成とすることも可能である。
上述した実施の形態2においては、実施の形態1と同様に半導体基板上にはじめに形成した半導体膜上に、最終的に形成される電極より厚い厚さを有するとともに製造工程環境に耐性を有する透光性の絶縁体フィルムを形成し、各半導体接合領域に対応した開口パターンをこの絶縁体フィルムにパターニングする。この後は、絶縁体フィルムとAgの印刷電極をマスクとしたエッチングによるパターニングと組み合わせ、半導体接合領域の形成、分離、集電極形成のためのパターニングの役割をこのフィルムが担うことにより、半導体接合領域および集電極のパターニングプロセスを簡略化することができる。
すなわち、絶縁体フィルム10を広がり防止壁として用いることにより、エッチングによる半導体接合領域のパターニング時のエッチング領域の横への広がりを抑制して、幅の細い半導体接合領域を精度良くパターニングして形成することができる。また、スクリーン印刷による集電極形成時のペーストの横への広がりを抑制して、幅が細く、厚さの厚い集電極を精度良くパターニングして形成することができる。また、絶縁体フィルム10はp型領域集電極33とn型領域集電極34とを電気的に分離する。このため、p型領域集電極33とn型領域集電極34との間に、電気的な分離に必要以上な広い間隔が不要である。
また、上述した実施の形態2においては、実施の形態1と同様にn型半導体基板3の裏面は、絶縁体フィルム10がp型の導電型の半導体膜の上に形成されており、バス電極、グリッド電極などの集電極が絶縁体フィルム10を介して交互に配置された構造となるが、n型半導体基板3の裏面におけるすべての領域がp型またはn型のうちのどちらか導電型の半導体膜と集電極とに覆われている。すなわち、n型半導体基板3の裏面の全面がパッシベーション層により覆われている。これにより、n型半導体基板3の裏面において表面再結合速度の低い領域を作らず、n型半導体基板3の裏面全面において再結合を抑制する効果が得られ、高い開放電圧と高い短絡電流を実現できる。
また、上述した実施の形態2においては、実施の形態1と同様に絶縁体フィルム10の開口パターンの側面は、n型半導体基板3の面方向に対して略垂直とされている。これにより、集電極の断面形状は、矩形性の良い四角形状となり、集電極の下部の透明導電膜との接触面積に対して断面積を大きく保つことができる。このため、同じ底面積であっても通常のめっきにより形成される半円形上や印刷による三角形状の断面形状の電極よりも配線抵抗を低く保つことができる。
そして、上述した実施の形態2においては、絶縁体フィルム10の形成領域、p型半導体接合領域1、n型半導体接合領域2のほぼ全面にスパッタリングによる金属薄膜(Ag薄膜)が形成されていることにより、受光面から入射して絶縁体フィルム10を透過した光をこの金属薄膜(Ag薄膜)により反射させることができるため、光吸収ロスを減らすことができ、高いフィルファクターと高い短絡電流を実現することができる。また、p型半導体接合領域1とn型半導体接合領域2との集電極は、絶縁体フィルム10の段差により接触しないように形成されているため、シャント抵抗も高く保つことができる。
したがって、実施の形態2によれば、電極厚より厚い絶縁体フィルムをp型およびn型の各半導体接合領域のパターニングおよび各領域の電極形成のパターニングに用いることにより、形成プロセスを簡略化することができる。また、配線抵抗や接触抵抗を犠牲にすることなく、たとえば100μm以下の幅の狭い半導体接合領域および50μm以下の幅の狭い集電極をたとえば5μm以上の厚さで精度良く形成することができる。また、n型半導体基板3の裏面全面に集電極を形成することにより、n型半導体基板3の裏面側での光の反射効率を高めることができる。これにより、光電変換効率に優れた裏面接合型のヘテロ接合太陽電池が得られる。
また、上記の実施の形態で説明した構成を有する太陽電池セルを複数形成し、隣接する太陽電池セル同士を電気的に直列または並列に接続することにより、良好な光閉じ込め効果を有し、光電変換効率に優れた太陽電池モジュールが実現できる。この場合は、たとえば隣接する太陽電池セルの一方のp型領域集電極14と他方のn型領域集電極15とを電気的に接続すればよい。