JP6102651B2 - エンジンの動弁装置 - Google Patents

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Description

本発明は、車両用等のエンジンの動弁装置、特に弁を開閉させるカムの切り換えが可能な動弁装置に関し、エンジンの動弁装置の技術分野に属する。
エンジンの動弁装置として、1つの弁についてノーズ部の形状が異なる複数のカムを備え、これらのカムのうちから弁を開閉させるカムを選択することにより、吸排気弁の開弁量や開閉弁時期等をエンジンの運転状態に応じて切り換え可能としたものが知られている。
例えば、特許文献1には、カムシャフトを、軸部と、該軸部上に軸方向に移動可能にスプライン嵌合された筒状のカム要素部とで構成し、このカム要素部の外周に1つの弁についてノーズ部の形状が異なる複数のカムを隣接させて設けると共に、このカム要素部を軸方向に移動させることにより、弁を開閉させるカムを切り換えるようにしたものが開示されている。
その場合に、この特許文献1の動弁装置においては、前記カム要素部の両端面に端面カムを対称に設けると共に、これらの端面カムの対面位置に対して突入退避可能に設けられて、突入時に端面カムに係合することによりカム要素部を軸方向両側にそれぞれ押動させる一対の操作部材を備え、これらをアクチュエータで作動させることにより、カムの切り換え動作を行うように構成されている。
特開2013−083202号公報
ところで、近年、上述のような動弁装置を備えたエンジンにおいては、運転状態に応じて、燃焼サイクル単位で最適なカムへの切り換えを行いたいという要望、つまり、カムの切り換えを瞬時に連続して行いたいという要望がある。そのためには、アクチュエータを制御して操作部材を所望のタイミングで確実に突入退避させる必要があるが、この操作部材の作動不良の可能性を皆無にすることは難しい。そのため、特許文献1の動弁装置では、一方側の操作部材の突入によりカム要素部を他方側に移動させてカム部を切り換える際に、作動不良などにより他方側の操作部材が誤って突出していた場合、カム要素部の両側の端面カムは各最大リフト部が同じ位相にあるように対称に設けられているので、両側の端面カム間の距離が操作部材間の距離より大きくなる位相がある。図12に示すように、両側の端面カム123、123間の距離が操作部材132、132間の距離Lpinより大きな位相になると、カム要素部120が両側の操作部材132、132間に挟まって回転不能となり、カムシャフト102の回転がロックするおそれがある。
この発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、操作部材の作動不良などによりカムシャフトの回転がロックすることを防止できるエンジンの動弁装置を提供するものである。
前記課題を解決するため、本発明は次のように構成したことを特徴とする。
まず、本願の請求項1に記載の発明は、
カムシャフトが、軸部と、該軸部に該軸部と一体回転し且つ軸方向に移動可能に嵌合されたカム要素部とでなり、該カム要素部に、1つの弁について共通のベースサークルを有し且つノーズ部の形状が異なる2つのカム部が隣接して設けられ、該カム要素部を前記軸部上で軸方向に移動させることにより弁を開閉させるカム部を切り換え可能としたエンジンの動弁装置であって、
前記カム要素部は、その軸方向の両端面に、周方向に沿って次第に軸方向の突出量が増大するリフト部を所定に備えた端面カムをそれぞれ備えると共に、
前記カム要素部の一端側に配置され、アクチュエータによって駆動されて前記一端側の端面カムの対面位置に突入して該端面カムの前記リフト部に係合することにより、該カム要素部を他端側に移動させる作動位置と、該端面カムの対面位置から退避した不作動位置とに移動する第1の操作部材と、
前記カム要素部の他端側に配置され、アクチュエータによって駆動されて前記他端側の端面カムの対面位置に突入して該端面カムの前記リフト部に係合することにより、該カム要素部を前記一端側に移動させる作動位置と、該端面カムの対面位置から退避した不作動位置とに移動する第2の操作部材とを備え、
前記カム要素部は、その両側の前記端面カムの最大リフト部が異なる位相に設けられ、同じ位相での各カム面間の軸方向の距離の最大値が前記第1の操作部材と前記第2の操作部材の間の軸方向の距離以下に形成されている
ことを特徴とするエンジンの動弁装置。
ここで、請求項1における「カム部」には、ノーズ部の形状がベースサークルと一致するもの(リフト量がゼロのもの)を含む。
また、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の発明において、
さらに、前記カム要素部の両端部における前記端面カムの各リフト部は、位相範囲が互いに重複している
ことを特徴とする。
また、請求項3に記載の発明は、前記請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の発明において、
前記カム要素部は、前記軸部に少なくとも2つ設けられ、
各カム要素部は、その軸方向の両端部に端面カムを備え、
隣接する2つの前記カム要素部の近接時に、アクチュエータによって駆動されて両カム要素部の前記端面カムの対向面間に突入してこれらの端面カムの前記リフト部に係合することにより、前記両カム要素部を互いに離間させる作動位置と、前記端面カムの対向面間から退避した不作動位置とに移動する前記両カム要素部に共通の操作部材を有し、
前記共通の操作部材は、隣接する2つの前記カム要素部のうち軸方向一方側に配置される前記カム要素部の他端側に配置される前記第2の操作部材と、隣接する2つの前記カム要素部のうち軸方向他方側に配置される前記カム要素部の一端側に配置される前記第1の操作部材とが共通とされた共通の操作部材であり、
さらに、隣接する2つの前記カム要素部は、互いに対向する前記端面カムの前記リフト部が互いに異なる位相に設けられ、近接時に前記リフト部の少なくとも一部が軸方向に重複する
ことを特徴とする。
ここで、請求項3における「隣接する2つのカム要素部」には、多気筒エンジンの各気筒に1つずつ設けられて隣接する2つのカム要素部と、単気筒エンジンまたは多気筒エンジンにおける1つの気筒の2つの弁にそれぞれ設けられた2つのカム要素部とを含む。
さらに、1つのカムシャフトに3つ以上のカム要素部が備えられる場合、「隣接する2つのカム要素部」は複数組存在し、それぞれの組について請求項3の構成が適用されることがある。その場合、1つの組における第2の端面カムおよび第2の操作部材が、他の組における隣接する2つのカム要素部の互いに対向する端面の端面カムおよびこれらの端面カムに係合する操作部材となる。
また、請求項4に記載の発明は、前記請求項3に記載の発明において、
前記共通の操作部材は、略円筒形に形成され、
さらに、隣接する2つの前記カム要素部は、その両側の前記端面カムが近接時に、同じ位相での各カム面間の軸方向の距離の最小値が前記共通の操作部材の直径より小さく形成されている
ことを特徴とする。
また、請求項5に記載の発明は、前記請求項3または請求項4のいずれか1項に記載の発明において、
さらに、突入した前記共通の操作部材により遅れて離間される前記カム要素部は、前記共通の操作部材が係合する前記端面カムの最大リフト部より回転遅れ側に向かって外方に傾斜し、前記端面カムによる移動が終了した後に前記共通の操作部材に摺接することにより前記共通の操作部材を作動位置から不作動位置に退避させるスロープ部を備える
ことを特徴とする。
前記の構成により、本願各請求項の発明によれば、次の効果が得られる。
まず、請求項1に記載の発明によれば、カム要素部は、その両側の端面カムの最大リフト部が異なる位相に設けられ、同じ位相での各カム面間の軸方向の距離の最大値が操作部材間の軸方向の距離以下に形成されている、すなわち、両側の端面カム間の距離が操作部材間の距離より大きくなる位相がないので、カム要素部が両側の操作部材間に挟まって回転不能となることがない。したがって、本発明によれば、カムシャフトの回転がロックするのを防止することができる。
また、請求項2に記載の発明によれば、カム要素部は、その両側の端面カムの各リフト部が設けられた位相範囲が軸方向からみて互いに重複して形成されているので、重複して形成されていない場合と比べて、少なくとも一方の端面カムが非リフト部である位相範囲が広くなる。ここで、操作部材は、この少なくとも一方の端面カムが非リフト部である位相範囲内で突入されるので、この範囲が狭いと、操作部材の突入速度を上げるために、アクチュエータを高速に駆動するための昇圧装置などの特別な構成が必要となる。したがって、本発明によれば、カムシャフトの回転のロックを防止しながら、操作部材の突入可能な区間を十分に確保でき、上述のような特別な構成が不要である。
請求項3に記載の発明によれば、隣接する2つのカム要素部は、互いに対向する端面カムのリフト部が互いに異なる位相に設けられ、近接時にリフト部の少なくとも一部が軸方向に重複するので、カムシャフトの軸方向のコンパクト化、ひいては当該エンジンのコンパクト化を進めることが可能となる。
請求項4に記載の発明によれば、隣接する2つのカム要素部は、その両側の端面カムが近接時に、同じ位相での各カム面間の軸方向の距離の最小値が共通の操作部材の直径より小さく形成されているので、端面カムが近接時にこれらのカム面間の距離が操作部材の直径より小さい部分では、作動不良等により共通の操作部材が突出しようとしても、端面カムの外周部に接触するだけで、端面カムのカム面には係合しないので、不用意にカム要素部が移動するのを防止できる。
請求項5に記載の発明によれば、突入した共通の操作部材により遅れて離間されるカム要素部は、共通の操作部材が係合する端面カムの最大リフト部より回転遅れ側に向かって外方に傾斜し、端面カムによる移動が終了した後に共通の操作部材に摺接することにより共通の操作部材を作動位置から不作動位置に退避させるスロープ部を備えるので、作動位置にある操作部材をこのスロープ部により不作動位置へ向けて確実に強制移動できる。しかも、操作部材によるカム要素部の移動が終了した後にスロープ部が作用するようになっているので、カム要素部の移動を確実に行いながら、速やかに操作部材を不作動位置へ退避できる。これにより、連続してカムを切り換える場合であっても、カム部の切り換え動作を瞬時に連続して行うことができる。
本発明の実施形態に係る排気側動弁装置の概略の構成を示す側面図である。 図1のx方向矢視による同動弁装置の正面図である。 図1のy−y線による拡大断面図である。 図1の状態から弁を開閉させるカム部を切り換えた状態を示す側面図である。 カム要素部の単体斜視図である。 第1気筒のカム要素部の側面図である。 同、第1気筒のカム要素部の正面図である。 第2気筒のカム要素部の側面図である。 同、第2気筒のカム要素部の正面図である。 第3、第4気筒のカム要素部を互いに離間させるときの各端面カムと操作部材との位置関係を示す、端面カムの円周に沿って展開した要部拡大展開図である。 第3、第4気筒のカム要素部を互いに接近させるときの各端面カムと操作部材との位置関係を示す、端面カムの円周に沿って展開した要部拡大展開図である。 従来の動弁装置の斜視図である。
以下、4気筒、4弁式DOHCエンジンの動弁装置を例にとって、まず本発明の実施形態を説明する。
(動弁装置の概略構成)
図1は、本実施形態に係る動弁装置の排気側の構成を示すものである。この動弁装置は、図示しないシリンダヘッドに、第1〜第4気筒1〜1のそれぞれについて2つずつ、合計8つの排気弁A…Aと、これらの排気弁A…Aを閉方向に付勢するリターンスプリングB…Bとが備えられている。さらに、シリンダヘッドの上部には、ロッカアームC…Cを介して前記リターンスプリングB…Bの付勢力に抗して各排気弁A…Aを開動させるカムシャフト2が備えられている。
このカムシャフト2は、シリンダヘッドにおける各気筒1〜1の中心位置に設けられた縦壁部D…Dと各縦壁部D…Dの上部に取り付けられたキャップ部材E…Eとで構成される軸受部F…Fに回転自在に支持されており、図示しないクランクシャフトによりチェーンを介して回転駆動される。
また、カムシャフト2は、軸部10と、該軸部10にスプライン嵌合され、該軸部10と一体回転しかつ軸方向に移動可能とされた第1〜第4カム要素部20〜20で構成されている。これらのカム要素部20〜20は、各気筒1〜1に対応させて、前記軸部10上で列状に配置されている。
そして、各カム要素部20〜20を前記軸部10上でそれぞれ所定ストローク移動させる電磁式の6つの操作装置30〜30が備えられている。具体的には、気筒列の第1気筒1側を前方として、該気筒列の前端位置に第1操作装置30が、第1、第2気筒1、1間位置に第2操作装置30が、第2、第3気筒1、1間の前端位置に第3操作装置30が、後端位置に第4操作装置30が、第3、第4気筒1、1間位置に第5操作装置30が、気筒列の後端位置に第6操作装置30がそれぞれ配置されている。
図2に示すように、これらの操作装置30〜30は、カムシャフト2を挟んで前記ロッカアームCにおけるカムフォロアC’の反対側において、前記ピン部32がカムシャフト2の軸心を指向するように配置されている。この実施形態の場合、操作装置30〜30は、カムシャフト2とカム要素部20〜20を上方から覆うシリンダヘッドカバーGに取り付けられている。
各操作装置30〜30は、その内部に電磁式アクチュエータを備えた本体31と、この電磁式アクチュエータへ通電時に該本体31から突出可能な略円筒状のピン部32と、該ピン部32を本体31側に押圧付勢するリターンスプリング33(図示しない)とを備えている。電磁式アクチュエータに通電しない状態では、図2に点線で示すように、ピン部32はリターンスプリング33の付勢力によって上方の不作動位置に保持される。一方、電磁式アクチュエータに通電されると、図2に実線に示すように、ピン部32はリターンスプリング33に抗して下方へ突出して作動位置に移動する。
各操作装置30〜30への通電は、図示しないエンジン回転角度センサからの検出信号に基づいて、所定のエンジン回転角度時期に、図示しないコンピュータによる各操作装置30〜30への通電指示によって行われる。
また、前記操作装置30〜30による各カム要素部20〜20の軸方向の移動を所定の2か所で位置決めするため、図3に第1、第2カム要素部20、20を例として示すように、軸部10と各カム要素部20〜20との嵌合部にディテント機構40がそれぞれ設けられている。
このディテント機構40は、軸部10の外周面から径方向に穿設された孔41と、該孔41内に収納されたスプリング42と、孔41の開口部に配置され、前記スプリング42により軸部10の外周面から径方向の外側へ飛び出すように付勢されたディテントボール43と、カム要素部20〜20の内周面に軸方向に隣接して設けられた2か所の周溝44、44とで構成されている。そして、このディテント機構40は、ディテントボール43が一方の周溝44に係合したときに、カム要素部20〜20が図1に示す第1位置に、前記ディテントボール43が他方の周溝44に係合したときに、カム要素部20〜20が図4に示す第2位置に、それぞれ位置決めされるように構成されている。
ここで、図1に示すように、第1〜第4カム要素部20〜20が全て第1位置に位置するとき、第1カム要素部20は後方に、第2カム要素部20は前方に、第3カム要素部20は後方に、第4カム要素部20は前方に位置する。したがって、第1、第2カム要素部20、20の対向端面は互いに近接し、第2、第3カム要素部20、20の対向端面は互いに離間し、第3、第4カム要素部20、20の対向端面は互いに近接した状態となる。
また、図4に示すように、第1〜第4カム要素部20〜20が全て第2位置に位置したときは、第1カム要素部20は前方に、第2カム要素部20は後方に、第3カム要素部20は前方に、第4カム要素部20は後方に位置する。したがって、第1、第2カム要素部20、20の対向端面は互いに離間し、第2、第3カム要素部20、20の対向端面は互いに近接し、第3、第4カム要素部20、20の対向端面は互いに離間した状態となる。
(カム要素部)
次に、図5〜図9により、カム要素部20〜20の構成について第1カム要素部20と第2カム要素部20を例としてさらに詳しく説明する。
カム要素部20(20〜20)は、筒状とされ、その中間部の外周面は前記軸受部Fに支持されるジャーナル部21とされていると共に、その前後両側に当該気筒の2つの排気弁A、A用の作動部22、22が設けられており、各作動部22、22には、図5に示すように、例えば低エンジン回転時用のリフト量が大きな第1カム部22と、例えば高エンジン回転時用のリフト量が小さな第2カム部22とが隣接させて設けられている。
この第1カム部22と第2カム部22は、図7(b)に示すように、ベースサークルaが共通で、リフト量が異なるノーズ部b、bが該ベースサークルa上にわずかに位相差をもって設けられている。そして、この第1カム部22と第2カム部22とが、2か所の作動部22、22において、前後方向に並ぶ順序およびノーズ部b、bの位相を一致させてそれぞれ設けられている。なお、ベースサークルaが共通とは、第1カム部22と第2カム部22とのベースサークルaのベース円径が同じであることを意味する。
その場合に、図1、図4に示すように、第1カム要素部20および第3カム要素部20においては、第1カム部22が前方、第2カム部22が後方にそれぞれ配置され、第2カム要素部20および第4カム要素部20においては、第2カム部22が前方、第1カム部22が後方にそれぞれ配置されている。
そして、カム要素部20〜20が上述のディテント機構40により軸部10上の第1位置に位置決めされたときは、いずれのカム要素部20〜20においても、2つの第1カム部22、22が対応する気筒1〜1の2つのロッカアームC、CのカムフォロワC’、C’に対応位置し(図1参照)、軸部10上の第2位置に位置決めされたときは、第2カム部22、22が前記カムフォロワC’、C’に対応位置する(図4参照)ように設定されている。
ここで、この実施形態に係るエンジンは、各気筒の爆発順序が、第3気筒1→第4気筒1→第2気筒1→第1気筒1とされており、各カム要素部20〜20の第1カム部22または第2カム部22のノーズ部b、bが、カムシャフト2の90°回転ごとに、この順序でカムフォロワC’、C’に対応位置するように、第1〜第4カム要素部20〜20が位相差を設けて前記軸部10にスプライン嵌合されている。
さらに、前記各カム要素部20〜20には、前後両端に端面カム23、23がそれぞれ設けられている。
この前後両端の端面カム23、23は、図6、図8に示すように、カム要素部20(20〜20)の軸方向の中心を通る断面に関して基準面23a、23aから軸方向の前方および後方にそれぞれ突出するリフト部23b、23bを有する。このリフト部23bは、図7、図9に示すように、リフト開始位置eからリフト終了位置f(本願請求項1に記載の「最大リフト部」に相当)に至る所定位相範囲α(例えば約120°)の間で、回転方向Xに対して前記基準面23a(リフト量ゼロ)から軸方向のリフト量が次第に増加し、リフト終了位置fまたは後述するスロープ終了位置gで基準面23aに戻るようになっている。
上述のような構成を前提として、カム要素部20〜20は、本発明の特徴として、図7(a)と図7(b)(または、図9(a)と図9(b))を見比べると明らかなように、その両側の端面カム23、23のリフト終了位置fが互いに異なる位相に設けられている。
加えて、このカム要素部20〜20は、同じ位相での各カム面間の軸方向の距離の最大値Lmaxが両端のピン部32、32の間の軸方向の距離Lpin以下に形成されている。すなわち、両側の端面カム23、23間の距離がピン部32、32の間の距離Lpinより大きくなる位相がない。
また、本実施形態では、図7(a)と図7(b)(または、図9(a)と図9(b))を見比べると明らかなように、各カム要素部20〜20の両端部における端面カム23、23のリフト部23b、23bは、そのリフト開始位置eからリフト終了位置fに至る位相範囲αが少なくとも一部の位相範囲β(図10、図11に図示)で互いに重複している。
さらに、上述のように、各カム要素部20〜20が各気筒1〜1の爆発順序に応じてそれぞれ所定の位相差を設けて軸部10にスプライン嵌合されていることに伴い、各カム要素部20〜20の互いに対向する端面カム23、23もそれぞれ位相差をもって対向する。本実施形態では、図1の符号ア、イに示すように、隣接する2つの第1および第2カム要素部20、20、並びに第3および第4カム要素部20、20は、互いに対向する端面カム23、23のリフト部23b、23bが互いに異なる位相に設けられており、この2つのカム要素部20〜20が近接時にこれらリフト部23b、23bの少なくとも一部が軸方向に重複している。このとき、互いに対向する端面カム23、23の同じ位相での各カム面間の軸方向の距離の最小値がピン部32の直径以下となるように構成されている。
そして、前記第2および第5操作装置30、30のピン部32、32は、対応する2つのカム要素部20〜20の近接時に互いに対向する端面カム23、23の対向面間に突出して作動位置に移動し、これらの端面カム23、23に係合することにより、カムシャフト2の回転に従って、近接していた2つのカム要素部20〜20を互いに離間させる方向にスライドさせるようになっている。
このとき、図1に示す状態では、近接していた第1、第2カム要素部20、20、および、第3、第4カム要素部20、20は、互いに離間することによりいずれも第1位置から図4に示す第2位置へ移動する。また、図4に示す状態では、近接していた第2、第3カム要素部20、20は、互いに離間することにより第2位置から図1に示す第1位置へ移動する。
一方、第1操作装置30のピン部32は、図4に示すように、第1カム要素部20が前方の第2位置にある状態で、該第1カム要素部20の前方の端面カム23に対面する作動位置へ突出することにより該端面カム23に係合し、カムシャフト2の回転に従って、第1カム要素部20を後方の第1位置へ移動させる。同様に、第4操作装置30のピン部32は、第3カム要素部20が前方の第2位置にある状態で、該第3カム要素部20の前方の端面カム23に対面する作動位置へ突出することにより該端面カム23に係合し、カムシャフト2の回転に従って、第3カム要素部20を後方の第1位置へ移動させる。
また、第3操作装置30のピン部32は、第2カム要素部20が後方の第2位置にある状態で、該第2カム要素部20の後方の端面カム23に対面する作動位置へ突出することにより該端面カム23に係合し、これを前方の第1位置へ移動させる。同様に、第6操作装置30のピン部32は、第4カム要素部20が後方の第2位置にある状態で、該第4カム要素部20の後方の端面カム23に対面する作動位置へ突出することにより該端面カム23に係合し、これを前方の第1位置へ移動させる。
ここで、各操作装置30〜30のピン部32の作動位置への突出は、以下のようなタイミングで行われる。すなわち、第1、第4操作装置30、30にあっては、ピン部32の指向位置に、第1、第3カム要素部20、20の前方の端面カム23の端面カム23の基準面23aが位置するタイミングで行われる。また、第3、第6操作装置30、30にあっては、ピン部32の指向位置に、第2、第4カム要素部20、20の後方の端面カム23の基準面23aが位置するタイミングでピン部32の突出が行われる。さらに、第2操作装置30にあっては、ピン部32の指向位置に、第1、第2カム要素部20、20の互いに対向する2つの端面カム23、23の両方の基準面23a、23aが位置するタイミングでピン部32の突出が行われる。第5操作装置30にあっては、ピン部32の指向位置に、第3、第4カム要素部20、20の互いに対向する2つの端面カム23、23の両方の基準面23a、23aが位置するタイミングでピン部32の突出が行われる。
また、このピン部32の作動位置への突出による各カム要素部20〜20の移動は、ロッカアームCのカムフォロアC’が第1カム部22または第2カム部22のベースサークルaに対応位置しているタイミング、すなわち、当該気筒が排気行程以外の行程にあるときに行われなければならない。
そこで、これらの作動タイミングの条件を満足するために、この実施形態では、図7に示すように、第1、第2カム部22、22のノーズ部b、bの頂部に対し、回転方向Xの前方側の所定位相の位置に端面カム23のリフト開始位置eを、該リフト開始位置eから回転方向Xの後方側の所定位相αの位置に端面カム23のリフト終了位置fを設定している。そして、端面カム23のリフト開始位置eから回転方向Xの後方側に向かう第1、第2カム部22、22のノーズ部b、bのリフト終了位置fまでの角度が180度よりも小さくなるような位置関係で設けられている。この場合、図2に示すロッカアームCのカムフォロアC’と操作装置30〜30のピン部32の位置関係において、各カム要素部20〜20は、排気行程の終了後間もなく移動することになる。
しかし、上述のような位置関係で第1、第2カム部22、22のノーズ部b、bと端面カム23のリフト部23bが設けられていても、作動不良等により操作装置30〜30のピン部32が意図していないタイミングで突出してしまった場合、このピン部32とリフト部23bとが不用意に係合してしまうおそれがある。そこで、本実施形態では、カム要素部20〜20の端面カム23に、作動位置へ突出したピン部32を強制的に不作動位置まで退避させるための戻しスロープ部23cが一体的に設けられている。
この戻しスロープ部23cは、各カム要素部20〜20のカム部22を切り換える順序、操作装置30の配置される個数等の条件によって実際に設けるべき場所が変わる。しかし、これら条件によらず、戻しスロープ部23cは、互いに隣接するカム要素部20〜20のうち、共通する操作装置30〜30によって遅れて離間されるカム要素部20〜20の対向する端部に少なくとも設ける必要がある。本実施形態の場合、燃焼順序と同じ第3気筒1→第4気筒1→第2気筒1→第1気筒1の順に各気筒1〜1のカム要素部20〜20のカム部22を切り換えるため、第1、第4カム要素部20、20の前後両端と、第2カム要素部20の後端と、第3カム要素部20の前端にそれぞれ戻しスロープ部23cが設けられている。
図7、図9に示すように、戻しスロープ部23cは、リフト部23bよりさらに軸方向に突出し、端面カム23の端面において端面カム23のリフト終了位置fより回転遅れ側(矢印Xと逆方向)に所定位相範囲、すなわちリフト終了位置(スロープ開始位置)fからスロープ終了位置gまで設けられており、回転遅れ側に向かって外方に傾斜して延びるカム面、すなわち、回転遅れ側に向かって半径方向のリフト量が次第に高くなるカム面を有する。このカム面は、スロープ開始位置fにおけるリフト量が作動位置にあるピン部32の先端部よりもわずかに低いと共に、スロープ終了位置gにおけるリフト量が不作動位置にあるピン部32の先端部よりもわずかに低く設定されている。
この戻しスロープ部23cによれば、リフト部23bによるカム要素部20〜20の移動が終了した後にピン部32の先端部にそのカム面で摺接することにより、ピン部32を作動位置から不作動位置に退避させることができる。なお、上述のように、スロープ終了位置gにおけるリフト量は不作動位置にあるピン部32の先端部よりも低いが、スロープ開始位置fからスロープ終了位置gに至るまでにピン部32に与えられた慣性力と電磁式アクチュエータの磁力によって、ピン部32はさらに不作動位置まで押し戻される。
また、戻しスロープ部23cは、隣接するカム要素部20〜20の離間時に、操作装置30〜30のピン部32の指向方向に位置するように端面カム23に設けられている。また、戻しスロープ部23cは、隣接するカム要素部20〜20の近接時に、互いに対向する端面カム23、23、特に端面カム23の戻しスロープ部23cと対向する端面カム23のリフト部23bとが干渉しないように設けられている。
さらに、本実施形態の場合、戻しスロープ部23cは、リフト部23bと共に、端面カム23に対して一体的に形成されている。なお、戻しスロープ部23cだけ端面カム23が設けられたカム要素部20〜20とは別体の部品として形成し、後に組立によりカム要素部20〜20と一体化してもよい。
(動弁装置の動作)
次に、この実施形態の動弁装置の動作について、図10、図11を参照しながら説明する。なお、図10、図11は、実際の操作装置30〜30のピン部32に対する第3および第4カム要素部20、20の回転を、両カム要素部20、20に対する端面カム23の円周方向へのピン部32の相対移動(図の左から右へ)として示した図である。そして、近接時(第1位置にあるとき)の両カム要素部20、20の端面カム23を実線、離間時(第2位置にあるとき)の両カム要素部20、20の端面カム23を一点鎖線で示している。
まず、図1に示すように、例えばエンジンの高回転時であって、第1〜第4カム要素部20〜20が第1位置に位置するとき、これらのカム要素部20〜20においては、いずれも、両端の作動部22、22におけるリフト量の大きな第1カム部22、22がロッカアームC、CのカムフォロワC’、C’に対応位置し、カムシャフト2の回転により、前述の順序で、排気行程時に各気筒1〜1の排気弁A…Aが相対的に大きな開弁量で開弁する。
この状態から、エンジン回転数の低下等に伴い、排気弁A…Aの開弁量を少なくするように切り換える場合、この動作は、第2、第5操作装置30、30を通電してピン部32、32を不作動位置から作動位置へ突出させることにより行われる。
すなわち、まず、第5操作装置30のピン部32が、第1位置にあって互いに近接した状態にある第3、第4カム要素部20、20の対向する端面カム23、23の間に突入し、これらの端面カム23、23に係合する。その場合、図10で符号(ア)で示すように、前記ピン部32は、第3、第4カム要素部20、20の対向する端面カム23、23(実線で図示)のリフト量がいずれもゼロの基準面23a、23aを指向する期間に突入される。
そして、まず、第3気筒1の排気行程が終了した後、第5操作装置30のピン部32の位置に第3カム要素部20の後方の端面カム23のリフト開始位置eが到達し、その後、第5操作装置30のピン部32が、図10で符号(イ)から(ウ)までの位置において、カムシャフト2の回転に従い、第3カム要素部20の後方の端面カム23のリフト部23bに摺接しながら第3カム要素部20を前方へ押し(下向き白抜き矢印で図示)、これを第2位置へスライドさせる(一点鎖線で図示)。
この第3カム要素部20のスライドの際、第3カム要素部20の前方の端面カム23が、不作動位置にある第4操作装置30のピン部32に対して接近する。ここで、第3カム要素部20は、リフト部23bのリフト終了位置fにおいて、第3カム要素部20の両端のカム面間の同じ位相での軸方向の距離が最大値Lmaxとなっている。この最大値Lmaxは、両端のピン部32、32の間の軸方向の距離Lpin以下(Lmax=Lpinで図示)となるように形成されている。そのため、図10で符号(ウ)で示すように、第3カム要素部20の前方の端面カム23が第4操作装置30のピン部32に最も接近したとき、作動不良等により第4操作装置30のピン部32が作動位置に突出していたとしても、突出している第4操作装置30のピン部32に第3カム要素部20の前方の端面カム23のリフト部23bが係合するものの、第5操作装置30のピン部32は既にリフト終了位置fを通過しており、それ以降も両端のカム面間の同じ位相での軸方向の距離がピン間距離Lpinより小さいので、第4および第5操作装置30、30のピン部32、32が同時に両端の端面カム23、23のカム面に係合し、第3カム要素部20が両側のピン部32、32間に挟まって回転不能となることがない。
また、第5操作装置30のピン部32の位置に前記第3カム要素部20の端面カム23のリフト開始位置eが到達した後、カムシャフト2が90°回転し、第4気筒1の排気行程が終了すると、次に、第4カム要素部20の後方の端面カム23のリフト開始位置eが到達し、その後、第5操作装置30のピン部32が、図10の符号(エ)から(オ)までの位置において、カムシャフト2の回転に従い、第4カム要素部20の後方の端面カム23のリフト部23bに摺接しながら第4カム要素部20を後方へ押し(上向き黒色矢印で図示)、第4カム要素部20の第2位置へのスライドする(一点鎖線で図示)。
この第4カム要素部20のスライドの際、第4カム要素部20の後方の端面カム23が、不作動位置にある第6操作装置30のピン部32に対して接近する。ここで、第3カム要素部20と同様に、第4カム要素部20もLmax≦Lpin(Lmax=Lpinで図示)となるように形成されている。そのため、図10で符号(オ)で示すように、第4カム要素部20の後方の端面カム23が第6操作装置30のピン部32に最も接近したとき、作動不良等により第6操作装置30のピン部32が作動位置に突出していたとしても、突出している第6操作装置30のピン部32に第4カム要素部20の後方の端面カム23のリフト部23bが係合するものの、第5操作装置30のピン部32は既にリフト終了位置fを通過しており、それ以降も両端のカム面間の同じ位相での軸方向の距離がピン間距離Lpinより小さいので、第5および第6操作装置30、30のピン部32、32が同時に両端の端面カム23、23のカム面に係合し、第4カム要素部20が両側のピン部32、32間に挟まって回転不能となることがない。
さらに、第5操作装置30のピン部32が図10で符号(オ)の位置を過ぎると、電磁式アクチュエータへの通電を止める。その後、図10で符号(カ)で示すように、このピン部32が戻しスロープ部23cを指向する間、カムシャフト2の回転に従い、ピン部32の先端面が戻しスロープ部23cのカム面に摺接しながら押し上げられ、ピン部32は強制的に不作動位置へ戻される。
その後、ピン部32はリターンスプリング33の付勢力によって、不作動位置に保持される。
次に、第2操作装置30のピン部32が、第1位置にあって互いに近接した状態にある第1、第2カム要素部20、20の対向する端面カム23、23の間に突入し、これらの端面カム23、23に係合する。その場合、第2操作装置30のピン部32は、第1、第2カム要素部20、20の対向する端面カム23、23のリフト量がいずれも0の基準面23a、23aを指向する期間に突入される。
そして、第2気筒1の排気行程が終了した後、第2操作装置30のピン部32の位置に第2カム要素部20の前方の端面カム23のリフト開始位置eが到達し、その後、カムシャフト2の回転に従い、前記ピン部32が該端面カム23のリフト部23bに摺接しながら第2カム要素部20を後方へ押し、これを第2位置へスライドさせる。
また、ピン部32の位置に前記第2カム要素部20の端面カム23のリフト開始位置eが到達した後、カムシャフト2が90°回転し、第1気筒1の排気行程が終了すると、ピン部32の位置に実線で示す第1カム要素部20の前方の端面カム23のリフト開始位置eが到達し、その後、カムシャフト2の回転に従い、前記ピン部32が該端面カム23のリフト部23bに摺接しながら第1カム要素部20を前方へ押し、これを第2位置へスライドさせる。
さらに、第2操作装置30の電磁式アクチュエータへの通電を止め、ピン部32が戻しスロープ部23cを指向する間、前述の第5操作装置30と同様に、ピン部32の先端面が戻しスロープ部23cのカム面に摺接しながら押し上げられ、ピン部32は強制的に不作動位置へ戻される。
その後、ピン部32はリターンスプリング33の付勢力によって、不作動位置に保持される。
以上により、第1〜第4カム要素部20〜20は全て第1位置から第2位置へ移動し、図4に示すように、第1〜第4カム要素部20〜20のいずれにおいても、両端の作動部22、22における第2カム部22…22がロッカアームC、CのカムフォロワC’、C’に対応位置し、排気行程時に各気筒1〜1の排気弁A…Aが相対的に小さな開弁量で開弁することになる。
一方、図4に示す各カム要素部20〜20のリフト量が小さな第2カム部22…22がロッカアームC…CのカムフォロワC’…C’に対応位置する状態から、例えばエンジン回転数の上昇に伴い、図1に示すリフト量が大きな第1カム部22…22がカムフォロワC’…C’に対応位置する状態に切り換える動作は、第1、第3、第4、第6操作装置30、30、30、30を通電し、これらの操作装置30、30、30、30のピン部32…32を不作動位置から作動位置へ突出させることにより行われる。
すなわち、まず、第4操作装置30のピン部32は、図11で符号(キ)で示すように、第3カム要素部20の前方の端面カム23のリフト量がいずれも0の基準面23aを指向する期間に入るとすぐに該端面カム23の対面位置に突出する。
そして、第3気筒1の排気行程が終了した後、突入された第4操作装置30のピン部32の位置に、まず第3カム要素部20の前方の端面カム23のリフト開始位置eが到達し、その後、第4操作装置30のピン部32が、図11の符号(ク)から(コ)までの位置において、カムシャフト2の回転に従い、該端面カム23のリフト部23bに摺接しながら第3カム要素部20を後方へ押し(上向き白抜き矢印で図示)、これを第1位置へスライドさせる(実線で図示)。
この第3カム要素部20のスライドの際、第3カム要素部20の後方の端面カム23が、不作動位置にある第5操作装置30のピン部32に対して接近する。ここで、第3カム要素部20は、前述のように、Lmax≦Lpin(Lmax=Lpinで図示)となるように形成されている。そのため、図11で符号(ク)で示すように、第3カム要素部20の後方の端面カム23が第5操作装置30のピン部32に最も接近したとき、作動不良等により第5操作装置30のピン部32が作動位置に突出していたとしても、第5操作装置30のピン部32は既にリフト部23bのリフト終了位置fを通過しており、それ以降も両端のカム面間の同じ位相での軸方向の距離がピン間距離Lpinより小さいので、第4および第5操作装置30、30のピン部32、32が同時に両端の端面カム23、23のカム面に係合し、第3カム要素部20が両側のピン部32、32間に挟まって回転不能となることがない。
また、前記第4操作装置30のピン部32の位置に第3カム要素部20の端面カム23のリフト開始位置eが到達した後、カムシャフト2が90°回転し、第3気筒1の排気行程が終了すると、図11で符号(ケ)で示すように、第6操作装置30のピン部32が第2位置にある第4カム要素部20の後方の端面カム23のリフト量がゼロの基準面23aを指向する期間に突出し、この端面カム23に係合する。
そして、第4気筒1の排気行程が終了した後、前記第6操作装置30のピン部32の位置に第4カム要素部20の後方の端面カム23のリフト開始位置eが到達し、その後、第6操作装置30のピン部32が、図11の符号(サ)から(シ)までの位置において、カムシャフト2の回転に従い、該端面カム23のリフト部23bに摺接しながら該第4カム要素部20を前方へ押し(下向き黒色矢印で図示)、これを第1位置へスライドさせる(実線で図示)。
この第4カム要素部20のスライドの際、第4カム要素部20の前方の端面カム23が、不作動位置にある第5操作装置30のピン部32に対して接近する。第3カム要素部20の場合と同様の理由により、図11で符号(サ)で示すように、第4カム要素部20の前方の端面カム23が第5操作装置30のピン部32に最も接近したとき、作動不良等により第5操作装置30のピン部32が作動位置に突出していたとしても、第5操作装置30のピン部32は既にリフト終了位置fを通過しており、それ以降も両端のカム面間の同じ位相での軸方向の距離がピン間距離Lpinより小さいので、第5および第6操作装置30、30のピン部32、32が同時に両端の端面カム23、23のカム面に係合し、第4カム要素部20が両側のピン部32、32間に挟まって回転不能となることがない。
その後、第5操作装置30は、ピン部32の下方に第4カム要素部20の端面カム23のスロープ部23cがなくなると、そのピン部32の作動位置への移動が可能となる。
また、このとき、第3操作装置30のピン部32が第2カム要素部20の対向する端面カム23に突入され、カムシャフト2の回転に従い、該ピン部32は第2カム要素部20の後方の端面カム23のリフト部23bに摺接しながら該第2カム要素部20を前方へ押し、これを第1位置へスライドさせる。
また、この第2カム要素部20のスライドとほぼ並行して、第1操作装置30のピン部32が、第2位置にある第1カム要素部20の前方の端面カム23の基準面23aを指向する期間に、該端面カム23の対面位置に突出する。
さらに、前記第3操作装置30のピン部32の位置に前記第2カム要素部20の端面カム23のリフト開始位置eが到達した後、カムシャフト2が90°回転し、第1気筒1の排気行程が終了すると、該第1操作装置30のピン部32の位置に第1カム要素部20の前方の端面カム23のリフト開始位置eが到達し、カムシャフト2の回転に従い、前記ピン部32が該端面カム23のリフト部23bに摺接しながら該第1カム要素部20を後方へ押し、これを第1位置へスライドさせる。
これにより、第1〜第4カム要素部20〜20は全て第2位置から第1位置へ移動し、図1に示すように、第1〜第4カム要素部20〜20の両端の作動部22、22における第1カム部22…22がロッカアームC、CのカムフォロワC’、C’に対応位置する状態に戻ることになる。
以上のように、この実施形態によれば、4つの気筒1〜1にそれぞれ備えられた4つのカム要素部20〜20が6つの操作装置30〜30により操作され、排気弁A…Aを開閉させるカム部22が、リフト量の小さな第1カム部22…22とリフト量の大きな第2カム部22…22との間で切り換えられる。
(動弁装置の特徴)
以上の本実施形態によれば、カム要素部20〜20は、その両側の端面カム23、23のリフト終了位置fが異なる位相に設けられ、同じ位相での各カム面間の軸方向の距離の最大値Lmaxがピン部32、32の間の軸方向の距離Lpin以下に形成されている、すなわち、両側の端面カム23、23間の距離がピン部32、32の間の距離Lpinより大きくなる位相がない。そのため、あるカム要素部20〜20の両側の端面カム23にそれぞれ係合可能な2つの操作装置30〜30のうちの一方側の操作装置30〜30のピン部32の突入によりカム要素部20〜20を他方側に移動させてカム部22、22を切り換える際に、作動不良などにより他方側の操作装置30〜30のピン部32が誤って突出していた場合にも、このカム要素部20〜20が両側のピン部32の間に挟まって回転不能となり、カムシャフト2の回転がロックしてしまうことがない。
また、本実施形態によれば、各カム要素部20〜20は、その両側の端面カム23、23の各リフト部23b、23bが設けられた位相範囲αが、軸方向からみて位相範囲βで互いに重複して形成されている。そのため、これが重複して形成されていない場合と比べて、少なくとも一方の端面カム23が非リフト部23aである位相範囲が広くなっている。ここで、ピン部32は、この少なくとも一方の端面カム23が非リフト部23aである位相範囲内で突入されるので、この範囲が狭いと、ピン部32の突入速度を上げるために、電磁式アクチュエータを高速に駆動するための昇圧装置などの特別な構成が必要となる。したがって、本発明によれば、カムシャフト2の回転のロックを防止しながら、ピン部32の突入可能な区間を十分に確保でき、上述のような特別な構成が不要である。
さらに、本実施形態によれば、隣接する2つのカム要素部20〜20は、互いに対向する端面カム23、23のリフト部23b、23bが互いに異なる位相に設けられ、近接時にリフト部23b、23bの少なくとも一部が軸方向に重複するので、カムシャフト2の軸方向のコンパクト化、ひいては当該エンジンのコンパクト化を進めることが可能となる。
また、本実施形態によれば、隣接する2つのカム要素部20〜20は、近接時に、互いに対向する端面カム23、23の同じ位相での各カム面間の軸方向の距離の最小値が、これら2つのカム要素部20〜20に共通する操作装置30、30のピン部32の直径より小さくなるように形成されている。そのため、端面カム23、23が近接時にこれらのカム面間の距離がピン部32の直径以下の部分では、作動不良等によりこの共通のピン部32が突出しようとしても、該端面カム23、23の外周部に接触するだけで、それらのカム面には係合しない。したがって、不用意にカム要素部20〜20が移動するのを防止できる。
また、本実施形態によれば、突入した共通する操作装置30、30のピン部32により遅れて離間されるカム要素部20〜20は、この共通のピン部32が係合する端面カム23のリフト部23bのリフト終了位置fより回転遅れ側に向かって外方に傾斜するカム面を備えるスロープ部23bを備える。このスロープ部23bは、端面カム23による移動が終了した後に共通のピン部32に摺接することにより共通のピン部32を作動位置から不作動位置に退避させることができるので、作動位置にあるピン部32をこのスロープ部23bにより不作動位置へ向けて確実に強制移動できる。しかも、ピン部32によるカム要素部20〜20の移動が終了した後にスロープ部23bが作用するようになっているので、カム要素部20〜20の移動を確実に行いながら、速やかにピン部32を不作動位置へ退避できる。これにより、連続してカムを切り換える場合であっても、カム部22、22の切り換え動作を瞬時に連続して行うことができる。
なお、本発明は例示された実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良および設計上の変更が可能であることは言うまでもない。
例えば、以上の説明は、排気側のカムシャフト2についてのものであるが、吸気側のカムシャフト2についても全く同様に構成することができ、前記の作用効果が吸気側についても得られる。
また、本実施形態に係るエンジンは、第3気筒1→第4気筒1→第2気筒1→第1気筒1の爆発順序に応じて、各カム要素部20〜20のカムの切り換えを行ったが、第2気筒1→第1気筒1→第3気筒1→第4気筒1の爆発順序に応じてカムの切り換えを行ってもよい。
また、本発明は、上述の実施形態に示す6つの操作装置30〜30を用いてカム要素部20〜20のカムの切り換えを行う動弁装置に限るものではない。例えば、8つの操作装置30〜30を用いて、各カム要素部20〜20のカムを異なる2つの操作装置30〜30で切り換えを行う動弁装置、または、5つの操作装置30〜30を用いて、第2および第3カム要素部20、20間も離間時に共通の操作装置30を用いる動弁装置にも適用することができる。
また、本実施形態では、操作装置30〜30はいずれのピン部32も同じ方向からカムシャフト2に対して突入するものである。しかし、このピン部32の突入方向は、必要に応じて、操作装置30〜30ごとに適宜設定可能なものである。そのため、例えば、一部の操作装置30〜30で、もしくは操作装置30〜30ごとにピン部32の突入方向が異なっていてもよい。
また、本実施形態では、カム要素部20〜20において、第1カム部22のリフト量を小さく、第2カム部22のリフト量を大きくしたが、このリフト量の大小関係を逆にしてもよい。さらに、一方のカム部22には通常のノーズ部bを設けると共に、他方のカム部22はノーズ部bをなくして全体をベースサークルaのみで形成し(ノーズ部bのリフト量を0とし)、このカム部22を用いた場合に弁が開閉しないようにしてもよい。これによれば、エンジンの低負荷運転時等における減筒運転が可能となる。
また、本発明は、上述の実施形態に示す端面カム23によってカムの切り換えを行う動弁装置に限らず、カム要素部20〜20の両端部の外周面にカム溝を設けた、いわゆるバレルカムによってカムの切り換えを行う動弁装置にも適用することが可能である。本発明を適用したカム要素部20〜20は、その両端のバレルカムの最大リフト部が異なる位相に設けられ、同じ位相での各カム溝間の軸方向の距離の最大値が両端のピン部32の間の軸方向の距離より短く形成されたものとなる。これによれば、両端のピン部32が各カム溝に同時に係合することがないので、上述のようなバレルカムを用いた動弁装置においても、カムシャフト2の回転のロックを防止することができる。
さらに、本発明は、上述の実施形態に示す4気筒、4弁式DOHCエンジンに限らず、直列6気筒エンジン、V型多気筒エンジン、4気筒2弁式DOHCエンジン、単気筒SOHCエンジン、多気筒SOHCエンジンなどを含め、気筒数および動弁形式が異なる各種のエンジンに適用可能である。
以上のように、本発明によれば、車両用等のエンジンの動弁装置において、操作部材の作動不良などによりカムシャフトの回転がロックするのを防止できるので、この種のエンジンの製造技術分野において好適に利用される可能性がある。
2 カムシャフト
10 軸部
20〜20 カム要素部
22、22 第1、第2カム部(カム部)
23 端面カム
23a 非リフト部
23b リフト部
23c 戻しスロープ部(スロープ部)
32 ピン部(第1の操作部材、第2の操作部材、共通の操作部材)
f リフト終了位置(最大リフト部)
Lmax 同じ位相での各カム面間の軸方向の距離の最大値
Lpin 両端のピン部32、32の間の軸方向の距離(第1の操作部材と第2の操作部材の間の軸方向の距離)

Claims (5)

  1. カムシャフトが、軸部と、該軸部に該軸部と一体回転し且つ軸方向に移動可能に嵌合されたカム要素部とでなり、該カム要素部に、1つの弁について共通のベースサークルを有し且つノーズ部の形状が異なる2つのカム部が隣接して設けられ、該カム要素部を前記軸部上で軸方向に移動させることにより弁を開閉させるカム部を切り換え可能としたエンジンの動弁装置であって、
    前記カム要素部は、その軸方向の両端面に、周方向に沿って次第に軸方向の突出量が増大するリフト部を所定位相範囲に備えた端面カムをそれぞれ備えると共に、
    前記カム要素部の一端側に配置され、アクチュエータによって駆動されて前記一端側の端面カムの対面位置に突入して該端面カムの前記リフト部に係合することにより、該カム要素部を他端側に移動させる作動位置と、該端面カムの対面位置から退避した不作動位置とに移動する第1の操作部材と、
    前記カム要素部の他端側に配置され、アクチュエータによって駆動されて前記他端側の端面カムの対面位置に突入して該端面カムの前記リフト部に係合することにより、該カム要素部を前記一端側に移動させる作動位置と、該端面カムの対面位置から退避した不作動位置とに移動する第2の操作部材とを備え、
    前記カム要素部は、その両側の前記端面カムの最大リフト部が異なる位相に設けられ、同じ位相での各カム面間の軸方向の距離の最大値が前記第1の操作部材と前記第2の操作部材の間の軸方向の距離以下に形成されている
    ことを特徴とするエンジンの動弁装置。
  2. さらに、前記カム要素部の両端部における前記端面カムの各リフト部は、位相範囲が互いに重複している
    ことを特徴とする請求項1に記載のエンジンの動弁装置。
  3. 前記カム要素部は、前記軸部に少なくとも2つ設けられ、
    各カム要素部は、その軸方向の両端部に端面カムを備え、
    隣接する2つの前記カム要素部の近接時に、アクチュエータによって駆動されて両カム要素部の前記端面カムの対向面間に突入してこれらの端面カムの前記リフト部に係合することにより、前記両カム要素部を互いに離間させる作動位置と、前記端面カムの対向面間から退避した不作動位置とに移動する前記両カム要素部に共通の操作部材を有し、
    前記共通の操作部材は、隣接する2つの前記カム要素部のうち軸方向一方側に配置される前記カム要素部の他端側に配置される前記第2の操作部材と、隣接する2つの前記カム要素部のうち軸方向他方側に配置される前記カム要素部の一端側に配置される前記第1の操作部材とが共通とされた共通の操作部材であり、
    さらに、隣接する2つの前記カム要素部は、互いに対向する前記端面カムの前記リフト部が互いに異なる位相に設けられ、近接時に前記リフト部の少なくとも一部が軸方向に重複する
    ことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか1項に記載のエンジンの動弁装置。
  4. 前記共通の操作部材は、略円筒形に形成され、
    さらに、隣接する2つの前記カム要素部は、その両側の前記端面カムが近接時に、同じ位相での各カム面間の軸方向の距離の最小値が前記共通の操作部材の直径より小さく形成されている
    ことを特徴とする請求項3に記載のエンジンの動弁装置。
  5. さらに、突入した前記共通の操作部材により遅れて離間される前記カム要素部は、前記共通の操作部材が係合する前記端面カムの最大リフト部より回転遅れ側に向かって外方に傾斜し、前記端面カムによる移動が終了した後に前記共通の操作部材に摺接することにより前記共通の操作部材を作動位置から不作動位置に退避させるスロープ部を備える
    ことを特徴とする請求項3または請求項4のいずれか1項に記載のエンジンの動弁装置。
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