JP6101355B2 - 血液処理フィルター及び血液処理フィルターの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、血液成分を含む液体または血液から凝集物や白血球等の好ましくない成分を除去するための血液処理フィルター、及び血液処理フィルターの製造方法に関する。特に輸血用の全血製剤、赤血球製剤、血小板製剤、血漿製剤などから副作用の原因となる微小凝集物や白血球を除去する目的で用いられる、使い捨ての血液処理フィルター及び血液処理フィルターの製造方法に関するものである。
ドナーから採血された全血は、赤血球製剤、血小板製剤、血漿製剤等の血液成分製剤に分離され、貯蔵された後に輸血されるのが一般的となりつつある。これらの血液製剤に含まれる微小凝集物や白血球が種々の輸血副作用の原因となることから、輸血の前にこれらの好ましくない成分を除去してから輸血する方法、または、採血後にこれらの好ましくない成分を除去してから一旦保存したものを輸血する方法が多く用いられている。
血液製剤からこれらの好ましくない成分を除去するための方法としては、血液製剤を血液処理フィルターで処理するのが最も一般的である。血液処理フィルターとしては、不織布や多孔質体からなるフィルター要素を、例えば、特許文献1〜5に示されるような可撓性容器に内装したもの、及びポリカーボネート等の硬質容器に内装したものの二種類が用いられている。
通常、血液処理フィルターで血液製剤を処理する際は、血液処理フィルターの入口に処理対象の血液製剤が入った血液製剤バッグを接続し、血液製剤バッグを血液処理フィルターよりも20cm〜100cm程高い位置に置くことで、重力の作用により、血液製剤を血液製剤バッグから血液処理フィルターに導入する。一方、血液処理フィルターの出口には濾過後の血液製剤を収容する回収バッグを接続し、回収バッグを血液処理フィルターよりも50〜100cm程低い位置に置くことで、重力の作用により、濾過後の血液製剤を回収バッグに収容する。このとき、血液処理フィルター容器内におけるフィルター要素より入口側の空間は、フィルター要素の抵抗によって圧力損失が生じ、陽圧となる。一方、フィルター要素より出口側の空間では、出口から血液製剤が流出するため、逆に陰圧となる。
特許文献1〜5に示されるような可撓性容器の血液処理フィルターは、容器が可撓性であるため、入口側の空間では陽圧によって容器が風船状に膨らむと共に、フィルター要素が容器の出口側に押しつけられる。一方、出口側の空間では陰圧によって容器がフィルター要素に密着し、出口の開口部がふさがれた状態となる。即ち、血液はフィルター内から流出しようとするが、開口部が閉塞されているため、血液が流れ出すことが困難となる。
これに対して、硬質容器を用いた血液処理フィルターは、濾過の最中でも大きな変形を起こすことがなく、また、フィルター要素が出口側に押し付けられ、出口の開口部がふさがれた状態となることはない。このような硬質容器は、入口側容器材と出口側容器材とが嵌合されてなり、入口側容器材と出口側容器材とにそれぞれ設けられたリブ状の凸部同士を互いに押し付け合うことで、フィルター要素の外縁部を挟み込んでいる。
特開平11−216179号公報 特開平7−267871号公報 国際公開第2004/050147号 国際公開第95/17236号 欧州特許出願公開第0526678号明細書
しかし、このような硬質容器を用いた血液処理フィルターの場合、フィルター要素の外縁部の圧縮度と、好ましくない成分の除去効率との関係については配慮されておらず、従って、好ましくない成分を確実に除去するために、例えば、有効濾過面積を犠牲にして圧縮領域を増すなどの工夫が必要となり、血液処理効率の向上を図り難かった。
そこで、本発明の第1の態様は、血液処理効率を低下させることなく、好ましくない成分の除去が不完全となるリスクを容易に回避できる血液処理フィルター及び血液処理フィルターの製造方法を提供することを目的とする。
また、上記の背景技術では、硬質容器の接着には主に超音波溶着法が用いられるが、エネルギーの伝達効率の面から、外周部のみを押さえて溶着を行うため、容器の変形が起こりやすく、成形後のフィルター、及び、フィルター要素ともに、中央部が厚く、外周側が薄くなり、血液処理時の血液の流れが不均一になりやすい傾向があった。
そこで、本発明の第2の態様は、フィルター要素全体を均一に使用できる血液処理フィルター及び血液処理フィルターの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、フィルター要素の表裏の濾過面の外縁部を硬質容器の把持部で挟み付けて単に圧縮するだけではなく、フィルター要素の厚みが0.05〜0.5倍に圧縮されていることで、好ましくない成分を、所望の範囲で確実に除去できることを見出し、本発明の第1の態様に想到した。
つまり、本発明の第1の態様は、血液成分を含む液体または血液から好ましくない成分を除去するための血液処理フィルターであって、シート状のフィルター要素と、前記フィルター要素を挟んで配置された入口側容器材及び出口側容器材を有し、前記フィルター要素によって内部空間が入口空間及び出口空間に仕切られた硬質容器と、を備え、前記フィルター要素は、前記入口空間側の濾過面及び前記出口空間側の濾過面と、前記一対の濾過面の周縁に沿った端面とを有し、前記入口側容器材及び前記出口側容器材には、前記一対の濾過面の外縁部同士を挟み付けて圧縮する把持部が設けられ、前記把持部によって前記フィルター要素の厚みは0.05〜0.5倍に圧縮されていることを特徴とする。
この血液処理フィルターでは、好ましくない成分が、フィルター要素の外縁部を乗り越えて濾過されずに通過する横漏れ(サイドフロー)を、フィルター要素の厚みを0.05〜0.5倍に圧縮する把持部によって防止できる。その結果、把持部で圧縮する外縁部の領域を低減し易くなるので、血液処理効率を低下させることなく、好ましくない成分の除去が不完全となるリスクを容易に回避できる。
更に、第1の態様に係る血液処理フィルターでは、前記把持部は、前記フィルター要素の最外縁から1〜5mmの幅の範囲を前記外縁部として圧縮していると好適である。これによれば、フィルター要素が把持部から離脱することを防止でき、また、血液処理効率的に、若しくは経済的に許容される範囲での設計を行い易いものとなる。
更に、第1の態様に係る血液処理フィルターでは、前記入口側容器材及び前記出口側容器材の少なくとも一方には、内側表面にリブが設けられており、フィルター要素の厚みの変動係数(CV値/coefficient of variation value)が6%以下であると好適である。この血液処理フィルターによれば、フィルター要素全体を有効に利用できる。
更に、第1の態様に係る血液処理フィルターでは、前記入口空間における前記入口側容器から前記フィルター要素の入口側表面までの距離の変動係数(CV値)が10%以下であると好適である。この血液処理フィルターによれば、入口から入ってきた血液が入口空間内に均等に広がりフィルター要素を有効に使用することができる。
また、本発明の第2の態様は、血液成分を含む液体または血液から好ましくない成分を除去するための血液処理フィルターであって、シート状のフィルター要素と、前記フィルター要素を挟んで配置された入口側容器材及び出口側容器材を有し、前記フィルター要素によって内部空間が入口空間及び出口空間に仕切られた硬質容器と、を備え、前記フィルター要素は、前記入口空間側の濾過面及び前記出口空間側の濾過面と、前記一対の濾過面の周縁に沿った端面とを有し、前記入口側容器材及び前記出口側容器材には、前記一対の濾過面の外縁部同士を挟み付けて圧縮する把持部が設けられ、前記入口側容器材及び出口側容器材の少なくとも一方には、内側表面にリブが設けられており、前記フィルター要素の厚みの変動係数(CV値/coefficient of variation value)が6%以下であることを特徴とする。
血液等のろ過時にフィルター要素の場所ごとに厚みの差が大きい場合は、厚い部分つまり嵩密度の低い部分の抵抗が低くなりフィルター要素の厚い部分のみを血液等が通過することによって偏った流れが生じ易くなり、フィルター要素全体を使用できないリスクが生じる。これに対し、第2の態様に係る血液処理フィルターでは、フィルター要素の厚みの変動係数を6%以下に設定しているので、血液等の偏った流れを抑止し、フィルター要素全体を有効に利用できる。
更に第2の態様に係る血液処理フィルターでは、前記入口空間における前記入口側容器材から前記フィルター要素の入口側表面までの距離の変動係数が10%以下であると好適である。この血液処理フィルターによれば、入口から入ってきた血液が入口空間に均等に広がりフィルター要素を有効に使用することができる。
更に第2の態様に係る血液処理フィルターの前記フィルター要素の厚みは、前記把持部によって0.05〜0.5倍に圧縮されていると好適である。この血液処理フィルターによれば、血液処理効率を低下させることなく、好ましくない成分の除去が不完全となるリスクを容易に回避できる。
更に第2の態様に係る血液処理フィルターの前記把持部は、前記フィルター要素の最外縁から1〜5mmの幅の範囲を前記外縁部として圧縮していると好適である。この血液処理フィルターによれば、フィルター要素が把持部から離脱することを防止でき、また、血液処理効率的に、若しくは経済的に許容される範囲での設計を行い易いものとなる。
更に第1の態様、及び第2の態様に係る血液処理フィルターの前記把持部が前記フィルター要素の前記端面に密着していると好適である。把持部が端面に密着して位置決めされるのでフィルター要素がズレ難く、一対の濾過面の外縁部同士を高密度に圧縮する上で有利である。
更に第1の態様、及び第2の態様に係る血液処理フィルターでは、前記入口側容器材及び前記出口側容器材は、前記フィルター要素の前記端面を取り囲んで嵌り合う嵌合部を更に有していると好適である。これによれば、入口側容器材と出口側容器材との位置合わせ及び接合が行い易い。
更に、上記の血液処理フィルターでは、前記嵌合部は、前記入口側容器材に設けられた前記入口側嵌合部と、前記出口側容器材に設けられた前記出口側嵌合部と、を有し、前記入口側嵌合部と前記出口側嵌合部との摺接面の少なくとも一部は、溶融樹脂によって嵌合部の全周にわたって帯状に溶着されていると好適である。これによれば、気密性、液密性が高まる。
更に、上記の血液処理フィルターの前記摺接面には樹脂流路が設けられており、樹脂流路内に溶融樹脂が充填されて摺接面が溶着されていると好適である。これによれば、溶融樹脂が摺接面からはみ出しにくく、硬質容器内に侵入するおそれがない。
更に第1の態様、及び第2の態様に係る血液処理フィルターでは、前記硬質容器は、室温でのヤング率が1GPa以上の樹脂からなっていると好適である。これによれば、濾過時の変形を抑えることができる。
また、本発明の第1の態様に係る血液処理フィルターの製造方法は、血液成分を含む液体または血液から好ましくない成分を除去するための血液処理フィルターの製造方法であって、一方の金型で入口側容器材を、他方の金型で出口側容器材を射出成形する射出成形工程と、前記入口側容器材又は前記出口側容器材にフィルター要素を装填する装填工程と、前記一対の金型を型合わせし、前記入口側容器材と前記出口側容器材とを嵌り合せる嵌合工程と、前記入口側容器材と前記出口側容器材とを溶融樹脂によって溶着する溶着工程と、を備え、前記フィルター要素は、一対の濾過面と、前記一対の濾過面の周縁に沿った端面とを有し、前記入口側容器材及び前記出口側容器材には、前記一対の濾過面の外縁部同士を挟み付けて圧縮する把持部が設けられ、前記把持部は、前記フィルター要素の厚みを0.05〜0.5倍に圧縮している。
これによれば、一対の金型を型閉めし、入口側容器材と出口側容器材とを嵌り合せる嵌合工程を有するので、強い力で入口側容器材と出口側容器材とを押し付け合うことができる。このため、把持部によってフィルター要素を高密度に圧縮でき、フィルター要素の厚みを0.05〜0.5倍に圧縮できる。その結果、好ましくない成分が、フィルター要素の外縁部を乗り越えて濾過されずに通過する横漏れ(サイドフロー)を効果的に防止できる。従って、把持部で圧縮する外縁部の領域を低減し易くなるので、血液処理効率を低下させることなく、好ましくない成分の除去が不完全となるリスクを容易に回避できる血液処理フィルターを製造できる。
また、本発明の第2の態様に係る血液処理フィルターの製造方法は、血液成分を含む液体または血液から好ましくない成分を除去するための血液処理フィルターの製造方法であって、一方の金型で入口側容器材を、他方の金型で出口側容器材を射出成形する射出成形工程と、前記入口側容器材又は前記出口側容器材にフィルター要素を装填する装填工程と、前記一対の金型を型合わせし、前記入口側容器材と前記出口側容器材とを嵌り合せる嵌合工程と、前記入口側容器材と前記出口側容器材とを溶融樹脂によって溶着する溶着工程と、を備え、前記フィルター要素は、一対の濾過面と、前記一対の濾過面の周縁に沿った端面とを有し、前記入口側容器材及び前記出口側容器材には、前記一対の濾過面の外縁部同士を挟み付けて圧縮する把持部が設けられ、前記入口側容器材及び出口側容器材の少なくとも一方には、内側表面にリブが設けられ、前記フィルター要素の厚みの変動係数(CV値)が6%以下である。
この製造方法によれば、一対の金型を型閉めし、入口側容器材と出口側容器材とを嵌り合せる嵌合工程を有するので、強い力で入口側容器材と出口側容器材とを押し付け合うことができる。また、血液等のろ過時にフィルター要素の場所ごとに厚みの差が大きい場合は、厚い部分つまり嵩密度の低い部分の抵抗が低くなりフィルター要素の厚い部分のみを血液等が通過することによって偏った流れが生じ易くなり、フィルター要素全体を使用できないリスクが生じる。これに対し、第2の態様に係る血液処理フィルターの製造方法によれば、フィルター要素の厚みの変動係数を6%以下に設定するので、血液等の偏った流れを抑止し、フィルター要素全体を有効に利用できる血液処理フィルターを製造できる。
本発明の第1の態様に係る血液処理フィルター及び血液処理フィルターの製造方法によれば、血液処理効率を低下させることなく、好ましくない成分の除去が不完全となるリスクを容易に回避できる。また、本発明の第2の態様に係る血液処理フィルター及び血液処理フィルターの製造方法によれば、フィルター要素全体を均一に使用できる。
図1は、本発明の実施形態に係る血液処理フィルターの上面図である。 図2は、本発明の実施形態に係る血液処理フィルターの側面図である。 図3は、把持部を拡大して示す断面図である。 図4は、成形前後のフィルター要素の厚みを測定した測定結果である。 図5は、実施形態に係る血液処理フィルターの製造における射出成形工程を説明するための説明図である。 図6は、実施形態に係る血液処理フィルターの製造における装填工程を説明するための説明図である。 図7は、本発明の実施形態に係る血液処理フィルターの製造における嵌合工程を説明するための説明図である。 図8はフィルター要素の厚みの変動係数(CV値)、及び入口側容器材からフィルター要素の入口側表面までの距離の変動係数(CV値)を説明するための血液処理フィルターの断面図である。
以下、図面を参照しつつ本発明に係る血液処理フィルター及び血液処理フィルターの製造方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
まず、図1〜3を参照して、実施形態に係る血液処理フィルター1について説明する。血液処理フィルター1は、血液成分を含む液体または血液(以下、被処理液という。)から好ましくない成分を除去するためのものである。血液処理フィルター1は、全体的に矩形状をなし、シート状のフィルター要素2と、硬質容器3とを備えている。硬質容器3は、フィルター要素2を挟んで配置された入口側容器材4及び出口側容器材5を有し、フィルター要素2によって内部空間3sが入口空間4s及び出口空間5sに仕切られている。なお、血液処理フィルター1は、矩形状、円盤状、長円板状などのいずれでも良いが、製造時の材料ロスを少なくするためには、矩形状が好ましい。また、正方形や菱形も矩形状の一種と見なすこととする。
フィルター要素2は、入口空間4s側の濾過面2a及び出口空間5s側の濾過面2bと、一対の濾過面2a,2bの周縁に沿った端面2cとを有する矩形状の濾材である。フィルター要素2には、不織布や織布などの繊維状多孔性媒体や、スポンジ状構造物などの三次元網目状連続細孔を有する多孔質体などの公知の濾過媒体を用いることができる。これらの素材としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、スチレン−イソブチレン−スチレン共重合体、ポリウレタン、ポリエステル等が挙げられる。フィルター要素が不織布である場合には、生産性の点から特に好ましい。
フィルター要素2は、単一のフィルター要素でもよく、複数のフィルター要素からなってもよい。複数のフィルター要素からなる場合、上流に配置された主に微小凝集物を除去する第一のフィルター要素と、微小凝集物以外の好ましくない成分を除去するために、第一のフィルター要素の下流に配置された第二のフィルター要素からなるのが好ましい。例えば、入口側に繊維径が数〜数十μmの不織布からなるフィルター材を主に凝集物除去の為の第一のフィルター要素として配置し、次に繊維径が0.3〜3.0μmの不織布からなるフィルター材をそれ以外の好ましくない成分を除去するための第二のフィルター要素として配置し、更に下流側に特定の空間を有するポストフィルターを積層して用いる。第一、第二のフィルター材は、それぞれが更に複数種類のフィルター材から構成されていても良く、片方のみが複数種類のフィルター材から構成されてもよい。例えば繊維径が30〜40μmの不織布及び繊維径が10〜20μmの不織布の少なくとも一方からなる第一のフィルター材を上流側に配置し、第一のフィルター材の下流側に繊維径が1.5〜2.5μmの不織布及び繊維径が0.5〜1.8μmの不織布の少なくとも一方からなる第二のフィルター材を配置して用いても良い。また太い繊維径の不織布と細い繊維径の不織布が交互に配置されていても良いが、太い繊維径の不織布が上流側に配置されている方が好ましい。
硬質容器3は、所定の厚みを有する矩形状の容器であり、フィルター要素2を挟んで配置された入口側容器材4及び出口側容器材5を有している。また、硬質容器3の内部空間3sは、フィルター要素2によって入口空間4s側及び出口空間5s側に仕切られている。
入口側容器材4は、硬質容器3を厚み方向でほぼ半分に切断した矩形状の部材であり、外面4a及び内面4bを有している。外面4aの一つの角の部分には、入口4cが設けられている。これに対して、出口側容器材5は、硬質容器3の残りの部分である矩形状の部材であり、外面5a及び内面5bを有している。外面5aの入口4cが設けられた角の対角の部分には、出口5cが設けられている。入口4c及び出口5cは、血液処理フィルター1の使用時において、入口4cが上方に突出して開口し、且つ、出口5cが下方に突出して開口するように設けられている。また、入口側容器材4の内面4b側及び出口側容器材5の内面5b側には、矩形状の外形の内縁に沿って延在し、互いに嵌り合う入口側嵌合部4d及び出口側嵌合部5dがそれぞれ設けられている。入口側嵌合部4d及び出口側嵌合部5dは、雌雄の関係になっており、フィルター要素2の端面2cを取り囲んで嵌り合うことで嵌合部7を構成する。
嵌合部7において、入口側嵌合部4dと出口側嵌合部5dとの摺接面7aには、樹脂流路8が設けられている。樹脂流路8は、入口側嵌合部4d及び出口側嵌合部5dにそれぞれ設けられた凹状の溝4e及び溝5eから構成される空洞である。摺接面7aの少なくとも一部は、樹脂流路8内に溶融樹脂6が充填されることによって嵌合部7の全周にわたって帯状に溶着されている。本実施形態では、溝4e及び溝5eが両方設けられているが、いずれか一方でもよい。樹脂流路8は、硬質容器3の外部に通じる貫通孔(図示せず)を有している。貫通孔は1つであってもよいし、複数であってもよい。このように嵌合部7の全周にわたって帯状に溶着されることで、硬質容器3がシールされ、気密性、液密性が高まることとなる。なお、貫通孔は、溶融樹脂6を注入するための孔である。
入口側嵌合部4d及び出口側嵌合部5dの内縁には、入口側圧縮部4f及び出口側圧縮部5fがそれぞれ設けられている。入口側圧縮部4fは、入口側容器材4が内面4b側に隆起した段差によって形成されている。同様に出口側圧縮部5fは、出口側容器材5が内面5b側に隆起して形成した段差によって形成されている。入口側圧縮部4f及び出口側圧縮部5fは、フィルター要素2の一対の濾過面2a,2bの外縁部2d同士を挟み付けて圧縮している。また、出口側圧縮部5fの外縁には、フィルター要素2の端面2cに密着する密着部5gが設けられている。
本実施形態では、入口側圧縮部4f、出口側圧縮部5f及び密着部5gによって把持部9が構成されている。把持部9は、密着部5gによってフィルター要素2の端面2cに密着して位置決めされるのでズレ難く、一対の濾過面2a,2bの外縁部2d同士を高密度に圧縮する上で有利である。把持部9は、入口側圧縮部4f及び出口側圧縮部5fによって、フィルター要素2の最外縁、即ち端面2cの位置、から1〜5mmの幅Lの範囲を外縁部2dとして圧縮している。このように把持部9の幅Lを1mmより大きくすることで、フィルター要素2を押しつぶしていくときに、フィルター要素2が把持部9から離脱することを防止でき、除去不良の発生が抑えられる。また、実際に濾過に使えない把持部9の幅Lを5mmより小さくすることで、血液処理効率的に、若しくは経済的に許容される範囲での設計を行い易くなる。
入口側容器材4の内面4b側及び出口側容器材5の内面5b側において、入口側圧縮部4f及び出口側圧縮部5fの内側の領域には、更に、凸状のリブ4h、5hがそれぞれ複数設けられている。リブ4hは、フィルター要素2の濾過面2aを押圧し、濾過面2aと入口側容器材4の内面4bとの間の入口空間4sを確保している。同様に、リブ5hは、フィルター要素2の濾過面2bを押圧し、濾過面2bと出口側容器材5の内面5bとの間の出口空間5sを確保している。このように、フィルター要素2は、一対の濾過面2a,2bがリブ4h,5hによって挟み付けられることによって、圧縮された状態となっている。リブ4hの方がリブ5hより高く、入口空間4sが出口空間5sより広く確保されている。なお、リブ4h,5hの高さは同じであってもよいし、リブ5hの方がリブ4hより高くてもよい。
把持部9においてフィルター要素2の厚みDは、元の厚みDの0.05〜0.5倍に圧縮されたものであることが必要となり、D/D=0.05〜0.5である。ここで、フィルター要素は元の樹脂の密度以下には圧縮できないためD/D=0.05未満にすることは現実的に難しい。一方で、D/D=0.5より大きくなると、フィルター要素の高密度な圧縮状態とは言えず、好ましくない成分がフィルター要素の外縁部を乗り越えて、横漏れ(サイドフロー)が発生するリスクが生じるため、白血球等の好ましくない成分の除去性能が低下する。つまり、フィルター要素2について、元の樹脂の密度に近くなる程度まで圧縮した厚みDとすることが重要となり、その結果として白血球等の好ましくない成分の除去性能を高めることが可能となる。そのため、例えば、フィルター要素2の元の厚みDが10mmである場合、把持部9における厚みDを0.5mm〜5mm程度に圧縮することが必要となる。また、把持部9における厚みDを元の厚みDの0.05〜0.5倍に圧縮させるためには、把持部9の距離、即ち、入口側圧縮部4f及び出口側圧縮部5fの向かい合う面の距離が、元の厚みDの0.05〜0.5倍となるように成形用金型を調整する。なお、製造上の容易性と白血球等の好ましくない成分の除去性能の向上とを両立させるという観点からは、D/D=0.07〜0.45が好ましく、D/D=0.1〜0.4が更に好ましい。
次に、フィルター要素2の元の厚みDについて、成形後の血液処理フィルター1から検証する場合について説明する。成形後の血液処理フィルター1を解体し、把持されていない部分の厚みを測った場合に、その厚みの最大値Dは、把持部9で挟む前の元の厚みDに対して数%の誤差範囲であり、実質的に最大値Dは元の厚みDとみなすことができる。より具体的には、最大値Dは、把持部9、及びリブ4h、リブ5h等の硬質容器3内の凸部によりフィルター要素2が変形した部分以外であって、フィルター要素2の中央付近の、凹み等がなく、形状が変化していない部分から選んだ5カ所の厚みの最大値であり、その最大値Dは、把持部9で挟む前の元の厚みDとみなすことができる。
この検証を裏付ける実験結果について図4を参照して説明する。図4は、フィルター要素2(旭化成せんい社製、ポリエステル不織布)の断面の厚みについて、血液処理フィルター1の成形前と、成形後(成形後の血液処理フィルター1を解体)とを比較したグラフである。図4に示されるように、この血液処理フィルター1の場合、元の厚みDと最大値Dとの差は、元の厚みDの3%程度であった。つまり、フィルター要素2の元の厚みDと成形後の血液処理フィルター1を解体して得られるフィルター要素2の最大値Dとの差は、元の厚みDの数%程度であることが確認できた。なお、解体後の厚みの測定時期については、解体直後のものと、解体後1週間放置したものとで厚みの測定結果を比較しても、ほとんど変化がなかった。よって、解体後測定するまでに経過した時間は、厚みの測定結果にほとんど影響を与えないことを確認した。
以上の結果から、成形前の元の厚みDを把握するよりも、成形後の血液処理フィルター1を解体して得られるフィルター要素2の最大値Dを検出する方が容易である場合には、厚みDの代わりに最大値Dを検出し、最大値Dを元の厚みDとみなしてD/Dの値を把握することができる。具体的には、DはDと同じか、あるいは数%小さくなるはず(即ち、D≧D1)であるから、厚みDが最大値Dの0.5倍以下であれば(即ち、D/D≦0.5)、厚みDは元の厚みDの0.5倍以下となる(即ち、D/D≦0.5)。一方で、フィルター要素2は、元の樹脂の密度以下には圧縮できないため、下限値が0.05を下回ることは考え難く、従って、厚みDが最大値Dの0.05以上でありながら、厚みDが元の厚みDの0.05未満となることは考え難い。つまり、D/D=0.05〜0.5であれば、D/D=0.05〜0.5とみなすことができる。
また、最大値Dと元の厚みDとの差は、元の厚みDの数%程度であるためにほぼ無視できる程度と考えるが、この数%の誤差は、仮にD/D>0.5の場合であっても、実際にDを検出できた場合には、D/D≦0.5となる可能性があることを否定するものではない。
次に、D/D=0.07〜0.45の場合、及びD/D=0.1〜0.4の場合について説明する。D/Dの値は、物理的にこれらの下限値0.07及び0.1を下回ることが可能である。このため、D/Dの下限値が確実に0.07及び0.1以上となり得るD/Dの下限値について検討する。ここで、最大値Dと元の厚みDとの差が、上記の実験(図4参照)に比べて非常に大きな値、例えば、10%と仮定すると、D/D=0.07の場合には、D/D=0.078(=0.07/0.9)であり、D/D=0.1の場合には、D/D=0.11(=0.1/0.9)である。つまり、少なくともD/D=0.078〜0.45の場合には、D/D=0.07〜0.45とみなすことに無理は無く、また、D/D=0.11〜0.4の場合には、D/D=0.1〜0.4とみなすことに無理は無い。
一方、フィルター要素2の厚みの変動係数(CV値)が、6%以下であると好適である。図8に示す通り、フィルター要素2は、フィルター要素2を入口空間4s、出口空間5sの定位置に固定するために設置されたリブ4hによって固定されているが、固定時に圧縮を受けるため、厚みが不均一になりやすい。なぜなら、固定時の圧縮に対する反発力が同等であっても、変形しやすい中央部分での変形が大きくなり、中央部分と、周縁部分では厚みが不均一になるためである。特に、容器の溶着に超音波溶着方法を用いる場合は、容器の溶着部分に対応する部分、つまり容器の最外周のみをプレスするために、フィルター中央部側とフィルター外周部側のフィルター要素の厚みが不均一になりやすい。ここで、フィルター中央部側とフィルター外周部側のフィルター要素の厚みが不均一であると、偏流れの原因となり、問題となる可能性があった。なお、偏流れ(偏った流れ)とは、血液が特定の部分を選択的に通過してしまい、流れない部分、もしくは、流れにくい部分が生じてしまう現象である。
本実施形態に係る血液処理フィルター1では、上述の問題を解決するため、リブ4hとリブ4hの間およびリブ4hと外周部の間のフィルター要素2の厚み(a1,a2、・・・、a10)を少なくとも3点測定し、標準偏差を平均値で除した変動係数(CV値/coefficient of variation value)が6%以下となるように設定した。その結果、偏流れを防止することができ、有効にフィルター要素2全体を使用できる血液処理フィルター1を実現できた。ここで、フィルター要素2の厚みの測定は、3点以上であればよいが、5点以上で全てのリブ4hとリブ4hとの間およびリブ4hと外周部との間の測定をすることがより好ましい。
さらに、入口空間4sにおける入口側容器材4からフィルター要素2の入口側表面2sまでの距離Lxの変動係数(CV値)が10%以下であることが好ましい。図8に示す通り、フィルター要素2を入口空間4s、出口空間5sの定位置に固定するために設置されたリブ4hにより、フィルター要素2が固定されているが、フィルター要素2は固定時に圧縮を受け厚みが不均一になり易い。そのため、入口側容器材4とフィルター要素2の入口側表面2sまでの距離も不均一になってしまう。特に、容器の溶着に超音波溶着を用いる場合は、容器の溶着部分に対応する部分、つまり、容器の周縁部のみをプレスするために、フィルター中央部側とフィルター外周部側のフィルター要素2の厚みが不均一になりやすい。
本実施形態に係る血液処理フィルター1では、上述の問題を解決するため、リブ4hとリブ4hの間およびリブ4hと外周部の間のフィルター要素2の厚みとして測定した部分に対応させ、入口空間4sにおける入口側容器材4とフィルター要素2の入口側表面2sまでの距離Lxを測定し、標準偏差を平均値で除した変動係数(CV値/coefficient of variation value)の値が10%以下となるように設定した。その結果、入口から入ってきた血液等が入口空間4sに均等に広がり、フィルター要素2を有効に使用することができる。
硬質容器3の材料としては、濾過時の変形を抑えるため、室温でのヤング率1GPa以上の樹脂が好ましく、更にヤング率2GPa以上の樹脂が好ましい。例えば、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、HIPS,ABS、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等が使用できる。更に好ましくは耐熱性の高いポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド等が好ましい。なお、ヤング率の測定はISO527−1に従い測定した結果を用いることができる。
次に、血液処理フィルター1の製造方法の一例について説明する。図5に示されるように、射出成形機10は、固定型11、可動型(金型)12及びスライド移動型(金型)13を備えている。固定型11は、射出成形機10の固定盤(図示せず)に固定されている。この固定型11の上面には、スライド用のシリンダ14を有する架台15が設置されている。そして、油圧あるいは空気圧等によって作動されるシリンダ14はスライド移動型13の上面に連結されている。そして、スライド移動型13は、固定型11の側面に密着した状態を保ちながら上下にスライド移動できるようにされている。
可動型12は、射出成形機10に水平移動自在な可動盤(図示せず)に取付けられている。この可動盤は、射出成形機10の型開閉装置(図示せず)によって、固定型11に対して近接離隔移動できるようにされている。そして、可動型12は、スライド移動型13に密着する型閉め位置と、スライド移動型13から離れた型開き位置との間を移動できるようにされている。
固定型11には、その中心に、固定型11に取付けられた射出機(図示せず)から射出される溶融樹脂16を導くスプルー11aが設けられている。そして、スライド移動型13には、これが下方位置にあるときにスプルー11aと連続する中央のサブスプルー13aと、上方位置に移動したときにスプルー11aと連続する下方のサブスプルー13bとが設けられている。
また、スライド移動型13の型閉め面には、中央のサブスプルー12aの上下の対称位置に、雄型13cと雌型13dとが設けられている。この雄型13cは、入口側容器材4の内面4bを成形するものであり、雌型13dは、出口側容器材5の外面5aを成形するものである。一方、可動型12の型閉め面には、スライド移動型13が下方位置にあるときに雄型13c及び雌型13dにそれぞれ対向する雌型12c及び雄型12dが設けられている。この雌型12cは、入口側容器材4の外面4aを成形するものであり、雄型12dは、出口側容器材5の内面5bを成形するものである。そして、この可動型12側の雌型12cは、図6及び図7に示されるように、スライド移動型13が上方位置にあるときは、スライド移動型13側の雌型13dに対向するようにされている。
そして、図5に示されるように、スライド移動型13が下方位置にあり、可動型12がこれに型閉めされているときには、そのスライド移動型13と可動型12との間に、各雄型12d、13cと各雌型13d、12cとによってそれぞれ囲まれる一対の空隙17,18が形成されるようになっている。このとき、これら空隙には各雌型13d、12cの端縁部から可動型12に形成されたランナー12e及び一対のゲート12fを通して、スライド移動型13の中央のサブスプルー13aが連通するようにされている。また、図7に示されるように、スライド移動型13が上方位置にあり、可動型12がこれに型合わせされているときには、そのスライド移動型13及び可動型12の各雌型13d、12cが互いに突き合わされ、これら雌型13d、12cの端縁部に、ゲート12fを通して、下方のサブスプルー13b及びランナー12eが連通するようにされている。
このような射出成形機10を用いて血液処理フィルター1を成形するには、先ず、図5に示されるように、シリンダ14を伸長させてスライド移動型13を下方位置に位置させる。そして、射出成形機10の可動盤を固定盤側に移動させて、スライド移動型13と可動型12とを型閉めする。この状態においては、図5に示されるように、スライド移動型13の中央のサブスプルー13aは固定型11のスプルー11aに連続し、スライド移動型13と可動型12との間には一対の空隙17,18が形成される。次いで、固定盤に取付けられた射出機から溶融樹脂16を射出し、固定型11のスプルー11a、スライド移動型13の中央のサブスプルー13a、ランナー12e及びゲート12fを通って両方の空隙17,18に溶融樹脂16を導き、これら空隙17,18内に充填する。こうして、各空隙17,18において、雌雄一対の入口側容器材4及び出口側容器材5が形成される(射出成形工程)。
雌雄一対の入口側容器材4及び出口側容器材5の冷却固化後、型開閉装置によって、図6に示すように、可動型12とスライド移動型13とを型開きし、離隔させる。すると、各雄型13c,12dがその入口側容器材4及び出口側容器材5から離脱し、入口側容器材4及び出口側容器材5はそれぞれ雌型12c,13s側に残る。この型開き時、金型のスプルー11a、サブスプルー13a及びランナー12e及びゲート12f内等で固化した樹脂部分は、金型から突き出されて落下する。このようにして得られた入口側容器材4及び出口側容器材5は、その矩形状の外形の内縁に沿って、互いに突き合わされて嵌合部7を形成する入口側嵌合部4d及び出口側嵌合部5dが設けられている。
次いで、ポリエステル不織布からなるフィルター要素2を、出口側容器材5内にインサートした後、シリンダ14を収縮させ、スライド移動型13を上方位置に移動させる(装填工程)。すると、スライド移動型13の雌型13dと可動型12の雌型12cとが対向し、これらの雌型13d、12cに残された入口側容器材4及び出口側容器材5が互いに対向する状態となる。このとき、スライド移動型13の下方のサブスプルー13bは固定型11のスプルー11aに連続するように位置する。なお、本実施形態では、出口側容器材5内にフィルター要素2を装填する場合を例示するが、入口側容器材4内にフィルター要素2を装填する態様であっても良い。
この状態で可動型12をスライド移動型13側に移動させ、図7に示すように、これらを突き合せて型合わせし、入口側容器材4と出口側容器材5とを嵌り合わせる(嵌合工程)。すると、入口側嵌合部4d及び出口側嵌合部5dの突き合せ面が互いに突き合わされて、摺接面7aに溝4e及び溝5eからなる空洞の樹脂流路8が形成される。樹脂流路8は貫通孔を有しており、貫通孔を介してゲート12fに通じている。ゲート12fは更にランナー12eを介してサブスプルー13bに連通しているので、この状態で射出機から溶融樹脂16として溶融樹脂6を射出すると、この溶融樹脂6は、固定型11のスプルー11a、サブスプルー13b、ランナー12e、ゲート12f及び貫通孔を通して、樹脂流路8に充填される。これにより、入口側容器材4及び出口側容器材5は、嵌合部7周縁が溶融樹脂6によって互いに溶着される(溶着工程)。このように、樹脂流路8を形成後に、溶融樹脂6を充填する手法によれば、樹脂量のコントロールが容易となる。
この溶融樹脂6の冷却固化後、再び型開閉装置によってスライド移動型13と可動型12との型開きをすると、入口側容器材4及び出口側容器材5が嵌合溶着され、完全密封成形品として完成された血液処理フィルター1が得られる。尚、スプルー11a、サブスプルー13b、ランナー12e及びゲート12f内等で固化した樹脂部分は金型から突き出されて落下する。
このようにして完成した血液処理フィルター1を取り外した後、再びシリンダ14を伸長させ、スライド移動型13を下方位置に位置させる。そして、可動型12とスライド移動型13とを型閉めし、次の製品の成形工程へと移行する。そして、上記のような一連の工程を繰り返すことにより、血液処理フィルター1を連続的に成形することができる。しかも、その成形工程は、スライド移動型13の上下スライド、可動型12の前後移動による型閉め及び型開き、溶融樹脂16の射出という単純な工程によって構成されるので、その全工程の自動化も容易に行うことができる。したがって、血液処理フィルター1の量産化が可能となる。
このように、一組の金型12,13と射出成形機10を用いるだけで、入口側容器材4及び出口側容器材5の射出成形からフィルター要素2の内装、雌雄容器材である入口側容器材4及び出口側容器材5の溶着までを単一工程で連続的に行なうことができ、完全密封されたものであっても成形することができる。
上記の製造方法によって製造された血液処理フィルター1は、シート状のフィルター要素2と、フィルター要素2を挟んで配置された入口側容器材4及び出口側容器材5を有し、フィルター要素2によって内部空間3sが入口空間4s及び出口空間5sに仕切られた硬質容器3と、を備え、フィルター要素2は、入口空間4s側の濾過面2a及び出口空間5s側の濾過面2bと、一対の濾過面2a,2bの周縁に沿った端面2cとを有し、入口側容器材4及び出口側容器材5には、一対の濾過面2a,2bの外縁部2d同士を挟み付けて圧縮する把持部9が設けられ、把持部9によってフィルター要素2の厚みDは0.05〜0.5倍に圧縮されている。
この血液処理フィルター1では、好ましくない成分が、フィルター要素2の外縁部2dを乗り越えて濾過されずに通過する横漏れ(サイドフロー)を、フィルター要素2の厚みDを0.05〜0.5倍に圧縮する把持部9によって防止できる。その結果、把持部9で圧縮する外縁部2dの領域を低減し易くなるので、血液処理効率を低下させることなく、好ましくない成分の除去が不完全となるリスクを容易に回避できる。
更に、血液処理フィルター1の把持部9は、端面2cに密着して位置決めされるのでズレ難く、一対の濾過面2a,2bの外縁部2d同士を高密度に圧縮する上で有利である。
更に、血液処理フィルター1では、把持部9は、フィルター要素2の最外縁から1〜5mmの幅Lの範囲を外縁部2dとして圧縮しているので、フィルター要素2が把持部9から離脱することを防止でき、また、血液処理効率的に、若しくは経済的に許容される範囲での設計を行い易い。
更に、血液処理フィルター1では、入口側容器材4及び出口側容器材5は、フィルター要素2の端面2cを取り囲んで嵌り合う嵌合部7を更に有しているので、入口側容器材4と出口側容器材5との位置合わせ及び接合が行い易い。
更に、血液処理フィルター1では、嵌合部7は、入口側容器材4に設けられた入口側嵌合部4dと、出口側容器材5に設けられた出口側嵌合部5dと、を有し、入口側嵌合部4dと出口側嵌合部5dとの摺接面7aの少なくとも一部は、溶融樹脂6によって嵌合部7の全周にわたって帯状に溶着されているので、気密性、液密性が高い。
更に、血液処理フィルター1は、摺接面7aには樹脂流路8が設けられており、樹脂流路8内に溶融樹脂6が充填されて摺接面7aが溶着されているので、溶融樹脂6が摺接面7aからはみ出しにくく、硬質容器3内に侵入するおそれがない。
更に、血液処理フィルター1では、硬質容器3は、室温でのヤング率が1GPa以上の樹脂からなっているので、濾過時の変形を抑えることができる。
また、上記の血液処理フィルター1は、入口側容器材4及び出口側容器材5の両方の内側表面にリブ4h、リブ5hが設けられており、フィルター要素2の厚みの変動係数(CV値)が6%以下である。その結果、血液等の偏った流れを抑止し、フィルター要素全体を有効に利用できる。なお、本実施形態では、入口側容器材4及び出口側容器材5の両方にリブ4h、リブ5hを設けた場合を例示するが入口側容器材4及び出口側容器材5の一方にリブ4hまたはリブ5hを設けた場合も同様である。
また、上記の血液処理フィルター1は、入口側容器材4の内側表面にリブ4hが設けられており、入口空間4sにおける入口側容器材4からフィルター要素2の入口側表面2sまでの距離Lxの変動係数(CV値)が10%以下である。その結果、入口から入ってきた血液等が入口空間4sに均等に広がりフィルター要素2を有効に使用することができる。
また、本実施形態に係る血液処理フィルター1の製造方法は、スライド移動型13の雄型13c及び可動型12の雌型12cで入口側容器材4を、スライド移動型13の雌型13d及び可動型12の雄型12dで出口側容器材5を射出成形する射出成形工程と、入口側容器材4又は出口側容器材5にフィルター要素2を装填する装填工程と、一対の金型である可動型12及びスライド移動型13を型閉めし、入口側容器材4と出口側容器材5とを嵌り合せる嵌合工程と、入口側容器材4と出口側容器材5とを溶融樹脂6によって溶着する溶着工程と、を備え、フィルター要素2は、一対の濾過面2a,2bと、一対の濾過面2a,2bの周縁に沿った端面2cとを有し、入口側容器材4及び出口側容器材5には、一対の濾過面2a,2bの外縁部2d同士を挟み付けて圧縮する把持部9が設けられ、把持部9は、フィルター要素2の厚みDを0.05〜0.5倍に圧縮している。
これによれば、可動型12及びスライド移動型13を型閉めし、入口側容器材4と出口側容器材5とを嵌り合せる嵌合工程を有するので、例えば、数tf(重量トン)といった強い力で入口側容器材4と出口側容器材5とを押し付け合うことができる。なお、超音波溶着では数百kgf(重量キログラム)程度である。このため、好ましくない成分が、フィルター要素2の外縁部2dを乗り越えて濾過されずに通過する横漏れ(サイドフロー)を、フィルター要素2の端面2cに密着し、フィルター要素2の厚みDを0.05〜0.5倍に圧縮する把持部9によって防止できる。その結果、把持部9で圧縮する外縁部2dの領域を低減し易くなるので、血液処理効率を低下させることなく、好ましくない成分の除去が不完全となるリスクを容易に回避できる。
更に、本実施形態に係る製造方法においては、把持部9は、端面2cに密着して位置決めされるのでズレ難く、一対の濾過面2a,2bの外縁部2d同士を高密度に圧縮する上で有利である。
また、血液等のろ過時にフィルター要素の場所ごとに厚みの差が大きい場合は、厚い部分つまり嵩密度の低い部分の抵抗が低くなりフィルター要素の厚い部分のみを血液等が通過することによって偏った流れが生じ易くなり、フィルター要素全体を使用できないリスクが生じる。これに対し、上記の製造方法によれば、フィルター要素の厚みの変動係数を6%以下に設定するので、血液等の偏った流れを抑止し、フィルター要素全体を有効に利用できる血液処理フィルターを製造できる。
以上、実施形態を参照しつつ本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、入口側容器材4及び出口側容器材5を嵌合した後に高周波溶着を用い、硬質容器3とフィルター要素2とを一括で溶着して血液処理フィルター1を得ても良いし、硬質容器3の形成後、違う方式で樹脂流路8に溶融樹脂6を充填して血液処理フィルター1を得ても良い。違う方式として、例えば、フィルター要素2を装填するとともに、予め樹脂流路8となる溝4e及び溝5eの少なくともいずれか一方に溶融樹脂6を設けてから、型閉めを行なう方式が挙げられる。
なお、被処理液がフィルター要素2の外縁部2dを乗り越えて濾過されずに通過する横漏れの発生を防ぐためには、圧縮するフィルター要素2の密度をより高くすることが有効であることは上述の通りである。しかし、容器の溶着で通常用いられる超音波溶着の場合、フィルター要素を高密度に圧縮することが困難であり、圧縮できたとしても溶着された血液処理フィルターの溶着部のリークが発生したり、過剰に容器同士を押し付けるために容器の溶着部に割れ等が生じたりすることとなる。
また、入口側容器材4及び出口側容器材5は、入口側嵌合部4d及び出口側嵌合部5dを有さず、摺接面7aが一平面になるような入口側接合部(図示せず)及び出口側接合部(図示せず)を有するものであってもよい。即ち、入口側容器材4及び出口側容器材5は、雌雄の関係でなくてもよい。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
(全血での濾過性能評価)
濾過性能評価には、以下の様に調製した全血製剤を用いた。豚全血2100mLを抗凝固剤CPD320mLが入った血液バッグに採血、混和し、採血時に発生した比較的粗大な凝集物を以下に述べる実施例および比較例の血液処理フィルターとは別の下処理用フィルターで濾過して取り除いた。この下処理用フィルターは、孔径の平均値が60μmで目付が50g/mのもの12枚、孔径の平均値が50μmで目付がg/mのもの8枚、孔径の平均値が50μmで目付が30g/mのもの8枚を上流側からこの順に積層したものを、濾過面積が45cmの硬質樹脂からなる容器に収容した構成とした。下処理用フィルターで採血時の粗大な凝集物を取り除いた後の血液を、採血当日に460mLずつに分割し、バッグに分注した。こうして得た全血製剤を室温のままにしておき、採血当日に実施例および比較例の血液フィルターで、室温下で濾過した。また、濾過開始から終了までの濾過時間を測定し、これを濾過時間とした。白血球除去性能に関しては、下記の式(1)に従って算出した。
白血球除去性能=Log(濾過前白血球濃度(個/μL)/濾過後白血球濃度(個/μL))・・・(1)
濾過前後の白血球濃度は、自動血球計数装置SF3000(シスメックス社)を用いて測定した。
(実験例1)
[実施例1]
実施例1に係る血液処理フィルターは、上記の実施形態に係る血液処理フィルター1の製造方法にて説明した方法を利用して作成した。すなわち、一方の金型で入口側容器材を、他方の金型で出口側容器材を成形した後に、出口側容器材に血液処理フィルター要素を装填し、金型を移動させて雌雄の入口側容器材及び出口側容器材を突き合わせ嵌合した。続いて、入口側容器材及び出口側容器材の嵌合部の周縁に形成された金型の流路を通じて硬質容器の樹脂流路に溶融樹脂を射出し、嵌合部の全周縁を溶着する方法を用いて血液処理フィルターを作成した。
硬質容器の材料をポリカーボネート樹脂とし、把持部の距離、即ち、把持部におけるフィルター要素の厚みDを3.6mmとし、把持部の幅Lを5mmとし、有効濾過面積を46cmとした。また、フィルター要素として、ポリエステル不織布を以下の構成で積層したものを用いた。フィルター要素の元の厚みDは、9.1mmであった。
ポリエステル不織布1(平均繊維径が12μm、目付が30g/m) 6枚
ポリエステル不織布2(平均繊維径1.6μm、目付が66g/m) 2枚
ポリエステル不織布3(平均繊維径1.2μm、目付が30g/m) 32枚
このようにして作成した血液処理フィルターを用いて試験を実施した結果を表1に示す。白血球除去性能は1.46となり、高い性能を示した。
[実施例2]
入口側容器材と出口側容器材の把持部の距離、即ち、把持部におけるフィルター要素の厚みDを0.95mmとし、把持部の幅Lを1mmとした以外は実施例1と同様にして血液処理フィルターを作成した。この血液処理フィルターを用いて試験を実施した結果を表1に示す。白血球除去性能は1.52となり、高い性能を示した。
[実施例3]
HIPS樹脂を容器材料とし、把持部の距離、即ち、把持部におけるフィルター要素の厚みDを0.95mmとし、把持部の幅Lを5mmとした以外は実施例1と同様にして血液処理フィルターを作成した。この血液処理フィルターを用いて試験を実施した結果を表1に示す。白血球除去性能は1.44となり、高い性能を示した。
[実施例4]
把持部の距離、即ち、把持部におけるフィルター要素の厚みDを3.6mm、把持部の幅Lを1mmとした以外は実施例1と同様にして血液処理フィルターを作成した。この血液処理フィルターを用いて試験を実施した結果を表1に示す。白血球除去性能は1.47となり、高い性能を示した。
[比較例1]
把持部の距離、即ち、把持部におけるフィルター要素の厚みDを5mm、把持部の幅Lを1mmとした以外は実施例1と同様にして血液処理フィルターを作成した。この血液処理フィルターを用いて試験を実施した結果を表1に示す。白血球除去性能は0.50となり、実施例2や4に比べて低下した。すなわち、把持部の幅L等の条件が同じであっても、圧縮率が不十分であると、十分な白血球除去性能が得られないことが確認できた。
[比較例2]
把持部の距離、即ち、把持部におけるフィルター要素の厚みDを5mm、把持部の幅Lを5mmとした以外は実施例1と同様にして血液処理フィルターを作成した。この血液処理フィルターを用いて試験を実施した結果を表1に示す。白血球除去性能は0.55となり、実施例1や3に比べて低下した。すなわち、把持部の幅L等の条件が同じであっても、圧縮率が不十分であると、十分な白血球除去性能が得られないことが確認できた。
Figure 0006101355
(実験例2)
(フィルター要素の厚みのCV値の測定方法)
血液処理フィルターの断面を、X線CTを用いて撮影する。断面はフィルター要素の厚みが最大となる中心部分を通るように選択する。例えば、血液処理フィルターの重心を通るように選択することが好ましい。また、入口側容器材又は出口側容器材に設けられたリブが直線に走っている場合、リブに垂直になるように選択することが好ましい。入口側容器材及び出口側容器材の少なくとも一方に設けられたリブについて、リブとリブとの間の中間点、およびリブと外周縁との間の中間点において、フィルター要素の厚み(a1,a2、・・・、a10)を、少なくとも3点(好ましくは5点、より好ましくは10点)で測定し、標準偏差を平均値で除したCV値を算出した。
(入口側容器とフィルター要素の入口側表面までの距離のCV値の測定方法)
入口側容器材及び出口側容器材の少なくとも一方に設けられたリブについて、リブとリブの間の中間点、及びリブと外周縁との間の中間点において、入口側容器材とフィルター要素の入口側表面までの距離を少なくとも3点(好ましくは5点)で測定し、標準偏差を平均値で除したCV値を算出した。
[実施例5]
実施例5に係る血液処理フィルターは、上記の実施形態に係る血液処理フィルター1の製造方法にて説明した方法を利用して作成した。すなわち、一方の金型で入口側容器材を、他方の金型で出口側容器材を成形した後に、出口側容器材に血液処理フィルター要素を装填し、金型を移動させて雌雄の入口側容器材及び出口側容器材を突き合わせ嵌合した。続いて、入口側容器材及び出口側容器材の嵌合部の周縁に形成された金型の流路を通じて硬質容器の樹脂流路に溶融樹脂を射出し、嵌合部の全周縁を溶着する方法を用いて血液処理フィルターを作成した。
フィルター要素として、以下の構成で積層したものを用いた。
ポリエステル不織布1(平均繊維径が12μm、目付が30g/m) 6枚
ポリエステル不織布2(平均繊維径1.6μm、目付が66g/m) 2枚
ポリエステル不織布3(平均繊維径1.2μm、目付が30g/m)32枚
また、硬質容器の材料をポリカーボネート樹脂とし、フィルター要素の厚みの変動係数(CV値)は5.9%となり、入口側容器とフィルター要素の入口側表面までの距離の変動係数(CV値)が9.6%となった。このようにして作成した血液処理フィルターを用いて血液を濾過開始し出口側の全面が均等に濡れるまでの時間を測定した結果を表2に示す。
[実施例6]
フィルター要素として、以下の構成で積層したものを用いた。
ポリエステル不織布1(平均繊維径が12μm、目付が30g/m) 6枚
ポリエステル不織布2(平均繊維径1.6μm、目付が66g/m) 2枚
ポリエステル不織布3(平均繊維径1.2μm、目付が30g/m)30枚
また、硬質容器の材料をポリカーボネート樹脂とし、フィルター要素の厚みのCV値が3.6%となり、入口側容器とフィルター要素の入口側表面までの距離のCV値が10%とした以外は実施例1と同様にして血液処理フィルターを作成した。この血液処理フィルターを用いて試験を実施し、その結果を表2に示す。
[比較例3]
比較例3では、金型で入口側容器材、出口側容器材を成形した後に、フィルター要素を装填し、超音波溶着で容器を溶着する方法を用いて血液処理フィルターを作成した。比較例3では、フィルター要素の厚みのCV値を6.7%とし、入口側容器とフィルター要素の入口側表面までの距離のCV値を18%としたこと以外は実施例1と同ようにして血液処理フィルターを作成した。この血液処理フィルターを用いて血液の濾過を開始し、出口側の全面が均等に濡れるまでの時間を測定した。その結果を表2に示す。
[比較例4]
比較例4では、金型で入口側容器材、出口側容器材を成形した後に、フィルター要素を装填し、超音波溶着で容器を溶着する方法を用いて血液処理フィルターを作成した。比較例4では、フィルター要素の厚みのCV値を6.7%とし、入口側容器とフィルター要素の入口側表面までの距離のCV値を10%としたこと以外は実施例1と同ようにして作成した血液処理フィルターを作成した。この血液処理フィルターを用いて血液の濾過を開始し、出口側の全面が均等に濡れるまでの時間を測定した。その結果を表2に示す。
[実施例7]
入口側容器とフィルター要素の入口側表面までの距離のCV値が18.6%となるように、作成した以外は、実施例1と同様にして血液処理フィルターを作成した。この血液処理フィルターを用いて試験を実施した結果を表2に示す。
[実施例8]
フィルター要素の厚みのCV値が3.6%、入口側容器とフィルター要素の入口側表面までの距離のCV値が18.6%となるように作成した以外は、実施例1と同様にして血液処理フィルターを作成した。この血液処理フィルターを用いて試験を実施した結果を表2に示す。
Figure 0006101355
(総括)
表2に示されるように、実施例5、実施例6、実施例7、及び実施例8に係る各血液処理フィルターの場合、フィルター要素の厚みのCV値(%)は6%以下であり、比較例3,4に係る血液処理フィルターの場合、フィルター要素の厚みのCV値(%)は6%を超えている。そして、実施例5、実施例6、実施例7、及び実施例8に係る各血液処理フィルターでは、出口側の全面が均等に濡れるまでの時間は20秒〜22秒と短く、一方で、比較例3、及び比較例4に係る血液処理フィルターでは、出口側の全面が均等に濡れるまでの時間は33秒〜35秒とかなり長い。つまり、実施例5、実施例6、実施例7、及び実施例8によれば、入口から入ってきた血液が入口空間内に均等に広がるまでの時間が短く、比較例3、4に比べ、より効果的にフィルター要素を有効に使用できていることが実証された。
また、実施例5、及び実施例6に係る各血液処理フィルターの場合、入口側容器とフィルター要素の入口側表面までの距離のCV値が10%以下であるのに対し、実施例7、及び実施例8に係る各血液処理フィルターの場合、入口側容器とフィルター要素の入口側表面までの距離のCV値が10%を超えている。そして、実施例5、及び実施例6に係る血液処理フィルターと、実施例7、及び実施例8に係る血液処理フィルターとを比較した場合、実施例5、及び実施例6に係る血液処理フィルターの方が、僅かではあるが出口側の全面が均等に濡れるまでの時間が短くなる傾向を示した。つまり、入口側容器とフィルター要素の入口側表面までの距離のCV値が10%以下の方が、より効果的にフィルター要素を有効に使用できることが推察された。
1…血液処理フィルター、2…フィルター要素、2a,2b…濾過面、2c…端面、2d…外縁部、2s…入口側表面、3…硬質容器、3s…内部空間、4…入口側容器材、4a…外面、4b…内面、4c…入口、4d…入口側嵌合部、4e…溝、4f…入口側圧縮部、4h…リブ、4s…入口空間、5…出口側容器材、5a…外面、5b…内面、5c…出口、5d…出口側嵌合部、5e…溝、5f…出口側圧縮部、5g…密着部、5h…リブ、5s…出口空間、6…溶融樹脂、7…嵌合部、7a…摺接面、8…樹脂流路、9…把持部、12…可動型、13…スライド移動型、D…厚み、L…幅。

Claims (10)

  1. 血液成分を含む液体または血液から好ましくない成分を除去するための血液処理フィルターであって、
    シート状のフィルター要素と、
    前記フィルター要素を挟んで配置された入口側容器材及び出口側容器材を有し、前記フィルター要素によって内部空間が入口空間及び出口空間に仕切られた硬質容器と、を備え、
    前記フィルター要素は、前記入口空間側の濾過面及び前記出口空間側の濾過面と、前記一対の濾過面の周縁に沿った端面とを有し、
    前記入口側容器材及び前記出口側容器材には、前記一対の濾過面の外縁部同士を挟み付けて圧縮する把持部が設けられ、
    前記把持部によって前記フィルター要素の厚みは0.05〜0.5倍に圧縮されており、
    前記入口側容器材及び前記出口側容器材の少なくとも一方の内側表面には、前記フィルター要素の厚みの変動係数が6%以下となるようにリブが設けられていることを特徴とする血液処理フィルター。
  2. 前記リブは、複数設けられ、
    前記複数のリブは、前記フィルター要素の前記濾過面に沿って直線状に延在すると共に並んで配置されていることを特徴とする請求項1記載の血液処理フィルター。
  3. 前記把持部は、前記フィルター要素の最外縁から1〜5mmの幅の範囲を前記外縁部として圧縮していることを特徴とする請求項1又は2記載の血液処理フィルター。
  4. 前記入口空間における前記入口側容器から前記フィルター要素の入口側表面までの距離の変動係数が10%以下であることを特徴とする請求項に記載の血液処理フィルター。
  5. 前記把持部は前記フィルター要素の前記端面に密着していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の血液処理フィルター。
  6. 前記入口側容器材及び前記出口側容器材は、前記フィルター要素の前記端面を取り囲んで嵌り合う嵌合部を更に有することを特徴とする請求項1〜の何れか一項に記載の血液処理フィルター。
  7. 前記嵌合部は、前記入口側容器材に設けられた入口側嵌合部と、前記出口側容器材に設けられた出口側嵌合部と、を有し、
    前記入口側嵌合部と前記出口側嵌合部との摺接面の少なくとも一部は、溶融樹脂によって前記嵌合部の全周にわたって帯状に溶着されていることを特徴とする請求項記載の血液処理フィルター。
  8. 前記摺接面には樹脂流路が設けられており、前記樹脂流路内に前記溶融樹脂が充填されて前記摺接面が溶着されていることを特徴とする請求項記載の血液処理フィルター。
  9. 前記硬質容器は、室温でのヤング率が1GPa以上の樹脂からなることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項記載の血液処理フィルター。
  10. 血液成分を含む液体または血液から好ましくない成分を除去するための血液処理フィルターの製造方法であって、
    一方の金型で入口側容器材を、他方の金型で出口側容器材を射出成形する射出成形工程と、
    前記入口側容器材又は前記出口側容器材にフィルター要素を装填する装填工程と、
    前記一対の金型を型合わせし、前記入口側容器材と前記出口側容器材とを嵌り合せる嵌合工程と、
    前記入口側容器材と前記出口側容器材とを溶融樹脂によって溶着する溶着工程と、を備え、
    前記フィルター要素は、一対の濾過面と、前記一対の濾過面の周縁に沿った端面とを有し、
    前記入口側容器材及び前記出口側容器材には、前記一対の濾過面の外縁部同士を挟み付けて圧縮する把持部が設けられ、
    前記把持部は、前記フィルター要素の厚みが0.05〜0.5倍に圧縮されており、
    前記入口側容器材及び前記出口側容器材の少なくとも一方の内側表面には、前記フィルター要素の厚みの変動係数が6%以下となるようにリブが設けられていることを特徴とする血液処理フィルターの製造方法。
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