以下、図面を参照しつつ本発明に係るフィルターの実施形態について、血液処理フィルターを例にして説明するが、本発明に係るフィルターは、血液処理フィルターに限定されず、液体を濾過するフィルターが広く含まれる。
第1の実施形態に係る血液処理フィルターは、血液成分を含む液体または血液(以下、被処理液という。)から好ましくない成分を除去するためのものである。なお、血液成分を含む液体とは、輸血用の全血製剤、赤血球製剤、血小板製剤、血漿製剤などの血液製剤を含む液体も含まれる。
図1〜図4に示される通り、本実施形態に係る血液処理フィルター1は、全体的に矩形状をなし、シート状のフィルター要素2と、硬質容器3とを備えている。硬質容器3は、フィルター要素2を挟んで配置され、且つ互いに固着された入口側容器材4及び出口側容器材5を有し、フィルター要素2によって内部空間3sが入口空間4s及び出口空間5sに仕切られている。入口側容器材4には被処理液を内部に導入する入口ポート4cが設けられ、出口側容器材5にはフィルター要素2によって処理された処理液を排出する出口ポート5cが設けられている。なお、固着とは、溶着及び接着を含む概念であることを意味する。また、血液処理フィルター1は、矩形状、円盤状、長円板状などのいずれでも良いが、製造時の材料ロスを少なくするためには、矩形状が好ましい。また、正方形や菱形も矩形状の一種と見なすこととする。
硬質容器3の主要部となる入口側容器材4及び出口側容器材5の材料としては、濾過時の変形を抑えるため、室温でのヤング率1MPa以上の樹脂が好ましく、更にヤング率2MPa以上の樹脂が好ましい。例えば、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、HIPS,ABS、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等が使用できる。更に好ましくは耐熱性の高いポリカーボネート等が好ましい。なお、ヤング率の測定はISO527−1に従い測定した結果を用いることができる。
なお、本実施形態では、硬質容器3とフィルター要素2との間にリブ4h,5hが設けられている。その結果、ろ過中に血液処理フィルター1の内圧が陰圧になったとしても、フィルター要素2が硬質容器3に張り付かないためにろ過時間の延長等の発生は起こりにくくなる。
(フィルター要素について)
フィルター要素2は、入口空間4s側の濾過面2a及び出口空間5s側の濾過面2bと、一対の濾過面2a,2bの周縁に沿った端面2cとを有する矩形状の濾材である。フィルター要素2には、不織布や織布などの繊維状多孔性媒体や、スポンジ状構造物などの三次元網目状連続細孔を有する多孔質体などの公知の濾過媒体を用いることができる。これらの素材としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、スチレン−イソブチレン−スチレン共重合体、ポリウレタン、ポリエステル等が挙げられる。フィルター要素2が不織布である場合には、生産性の点から特に好ましい。
フィルター要素2は、単一のフィルター要素でもよく、積層された複数のシート状フィルター材からなる複数のフィルター要素からなってもよい。複数のフィルター要素からなる場合、上流に配置された主に微小凝集物を除去する第一のフィルター要素と、微小凝集物以外の好ましくない成分を除去するために、第一のフィルター要素の下流に配置された第二のフィルター要素からなるのが好ましい。
例えば、入口側に繊維径が数〜数十μmの不織布からなるフィルター材を主に凝集物除去の為の第一のフィルター要素として配置し、次に繊維径が0.3〜3.0μmの不織布からなるフィルター材を、凝集物以外の好ましくない成分を除去するための第二のフィルター要素として配置して用いることができる。第一、第二のフィルター要素は、それぞれが更に繊維径の異なる複数種類のフィルター材から構成されていても良く、片方のみが複数種類のフィルター材から構成されてもよい。
例えば繊維径が30〜40μmの不織布および/または繊維径が10〜20μmの不織布からなる第一のフィルター要素を上流側に配置し、第一のフィルター要素の下流側に繊維径が1.5〜2.5μmの不織布および/または繊維径が0.5〜1.8μmの不織布からなる第二のフィルター要素を配置してフィルター要素2を形成しても良い。なお、太い繊維径の不織布と細い繊維径の不織布が交互に配置されていても良いが、太い繊維径の不織布が上流側に配置されている方が好ましい。
上述の通り、硬質容器3は、所定の厚みを有する矩形状の容器であり、フィルター要素2を挟んで配置された入口側容器材4及び出口側容器材5を有している。また、硬質容器3の内部空間3sは、フィルター要素2によって入口空間4s側及び出口空間5s側に仕切られている。
入口側容器材4は、硬質容器3を厚み方向でほぼ半分に切断した矩形状の部材(図2参照)であり、外面4a及び内面4bを有している。これに対して、出口側容器材5は、硬質容器3の残りの部分である矩形状の部材であり、外面5a及び内面5bを有している。入口側容器材4の内面4b及び出口側容器材5の内面5bは互いに対向する面である。また、入口側容器材4の外面4aは内面4bとは反対側となる表面であり、出口側容器材5の外面5aは内面5bとは反対側となる表面である。なお、以下の説明では、入口側容器材4の外面4a及び出口側容器材5の外面5aを、それぞれ外表面4a,5aという。
入口側容器材4の外表面4aの4個の角部のうち、一つの角部には入口ポート4cが設けられている。また、出口側容器材5の外表面5aの4個の角部のうち、入口ポート4cが設けられた角部とは対角となる角部には、出口ポート5cが設けられている。入口ポート4cには、硬質容器3内の入口空間4sに連通する流路が形成されており、先端が開口している。また、出口ポート5cには硬質容器3内の出口空間5sに連通する流路が形成されており、先端が開口している。入口ポート4c及び出口ポート5cは、血液処理フィルター1の使用時において、入口ポート4cが上方に突出して開口し、且つ、出口ポート5cが下方に突出して開口するように設けられている。
入口側容器材4の内面4b側及び出口側容器材5の内面5b側には、矩形状の外縁に沿って延在し、互いに嵌合する入口側接合部4d及び出口側接合部5dがそれぞれ設けられている(図4参照)。入口側接合部4d及び出口側接合部5dは、雌雄の関係になっており、フィルター要素2の端面2cを取り囲んで嵌り合うことで接合部7を形成する。なお、以下の説明では、入口側接合部4dが雄側、出口側接合部5dが雌側となる構造を例に接合部7を更に詳しく説明するが、この雌雄の関係が逆になっても良い。
入口側接合部4dは、入口側容器材4の周縁に沿って設けられた凸状部であり、先端面41と内周面42とを有する。一方で、出口側接合部5dは、出口側容器材5の周縁に沿って設けられており、入口側接合部4dの内周面42に当接して係合する壁部52と、入口側接合部4dの先端面41に当接する座部51とを有する。座部51と入口側接合部4dの先端面41との当接部分には、樹脂流路8が設けられており、樹脂流路8内に充填された溶融樹脂6が硬化することによって入口側容器材4と出口側容器材5とが接着される。
樹脂流路8は、入口側接合部4d及び出口側接合部5dにそれぞれ設けられただ断面U字状の溝4x及び溝5xから構成される空洞である。入口側接合部4dと出口側接合部5dとは互いに嵌合することによって接合されているが、更に、樹脂流路8内に溶融樹脂6が充填されることにより、接合部7の全周にわたって帯状に溶着されている。このように接合部7が嵌合のみならず、溶融樹脂6を介して接合されることで、より強固に接合され、更に、接合部7の全周にわたって帯状に溶着されることで、硬質容器3がシールされ、気密性、液密性が高まることとなる。
図4に示されるように、接合部7の内側には、フィルター要素2の表裏である一対の濾過面2a,2bの外縁部2d,2e同士を挟み付けて圧縮する把持部9が設けられている。把持部9は、入口側容器材4に形成された入口側圧縮部4fと、出口側容器材5に形成された出口側圧縮部5fとによって形成されている。
入口側圧縮部4fは、入口側容器材4の周縁が内面側(出口側容器材5側)に向けて湾曲し、且つ外方に屈曲した段差によって形成されている。同様に出口側圧縮部5fは、出口側容器材5の周縁が内面側(入口側容器材4側)に向けて湾曲し、且つ外方に屈曲した段差によって形成されている。入口側圧縮部4f及び出口側圧縮部5fは、フィルター要素2の表裏である一対の濾過面2a,2bの外縁部2d,2e同士を挟み付けて圧縮している。
把持部9は、入口側圧縮部4f及び出口側圧縮部5fによって、フィルター要素2の最外縁から1〜5mmの幅Lの範囲を圧縮している。このように把持部9の幅Lを1mmより大きくすることで、フィルター要素2を押しつぶしていくときに、フィルター要素2が把持部9から離脱することを防止でき、除去不良の発生が抑えられる。また、実際に濾過に使えない領域を作ってしまう把持部9の幅Lを5mmより小さくすることで、血液処理の効率的に、若しくは経済的に許容される範囲での設計を行い易くなる。
入口側容器材4の内面側には、入口側圧縮部4fで囲まれた内側の領域に凸状のリブ4hが複数設けられている。また、出口側容器材5の内面側には、出口側圧縮部5fで囲まれた内側の領域に凸状の5hが複数設けられている。入口側容器材4のリブ4hは、フィルター要素2の濾過面2aを押圧し、入口側容器材4の内面と濾過面2aとの間の入口空間4sを確保している。同様に、出口側容器材5のリブ5hは、フィルター要素2の濾過面2bを押圧し、出口側容器材5の内面と濾過面2bとの間の出口空間5sを確保している。
以上の通り、本実施形態に係る血液処理フィルター1では、フィルター要素2の一対の濾過面2a,2bが、リブ4h,5hによって挟み付けられ、部分的に圧縮されることで入口空間4s、及び出口空間5sを効果的、且つ安定した状態で確保している。なお、本実施形態では、入口側容器材4のリブ4hの方が、リブ5hよりも背が高くなっており、その結果、入口空間4sは出口空間5sより広く確保されている。なお、リブ4hとリブ5hの高さは同じであってもよいし、逆に、リブ5hの方が高くてもよい。
把持部9においてフィルター要素2の厚みDは、元の厚みD0の0.05〜0.5倍に圧縮されたものであることが必要となり、D/D0=0.05〜0.5である。ここで、フィルター要素2は元の樹脂の密度以下には圧縮できないためD/D0=0.05未満にすることは現実的に難しい。一方で、D/D0=0.5より大きくなると、フィルター要素2の高密度な圧縮状態とは言えず、好ましくない成分がフィルター要素2の外縁部2d,2eを乗り越えて、横漏れ(サイドフロー)が発生するリスクが生じるため、白血球等の好ましくない成分の除去性能が低下する。これは、高温高圧の蒸気滅菌時の高温のため容器の収縮が起こることに起因し顕著になる。つまり、フィルター要素2について、元の樹脂の密度に近くなる程度まで圧縮した厚みDとすることが重要となり、その結果として白血球等の好ましくない成分の除去性能を高めることが可能となる。そのため、例えば、フィルター要素2の元の厚みD0が10mmである場合、把持部9における厚みDを0.5mm〜5mm程度に圧縮することが必要となる。また、把持部9における厚みDを元の厚みD0の0.05〜0.5倍に圧縮させるためには、把持部9の距離、即ち、入口側圧縮部4f及び出口側圧縮部5fの向かい合う面の距離が、元の厚みD0の0.05〜0.5倍となるように成形用金型を調整する。なお、製造上の容易性と白血球等の好ましくない成分の除去性能の向上とを両立させるという観点からは、D/D0=0.07〜0.45が好ましく、D/D0=0.1〜0.4が更に好ましい。
次に、フィルター要素2の元の厚みD0について、成形後の血液処理フィルター1から検証する場合について説明する。成形後の血液処理フィルター1を解体し、把持されていない部分の厚みを測った場合に、その厚みの最大値D1は、把持部9で挟む前の元の厚みD0に対して数%の誤差範囲であり、実質的に最大値D1は元の厚みD0とみなすことができる。より具体的には、最大値D1は、把持部9やリブ4h,5h等の硬質容器3内の凸部によりフィルター要素2が変形した部分以外であって、フィルター要素2の中央付近の、凹み等がなく、形状が変化していない部分から選んだ5カ所の厚みの最大値であり、その最大値D1は、把持部9で挟む前の元の厚みD0とみなすことができる。
この検証を裏付ける実験結果について図13を参照して説明する。図13は、フィルター要素2(ポリエステル不織布)の断面の厚みについて、血液処理フィルター1の成形前と、成形後(成形後の血液処理フィルター1を解体)とを比較したグラフである。図13に示されるように、この血液処理フィルター1の場合、元の厚みD0と最大値D1との差は、元の厚みD0の3%程度であった。つまり、フィルター要素2の元の厚みD0と成形後の血液処理フィルター1を解体して得られるフィルター要素2の最大値D1との差は、元の厚みD0の数%程度であることが確認できた。なお、解体後の厚みの測定時期については、解体直後のものと、解体後1週間放置したものとで厚みの測定結果を比較しても、ほとんど変化がなかった。よって、解体後測定するまでに経過した時間は、厚みの測定結果にほとんど影響を与えないことを確認した。
以上の結果から、成形前の元の厚みD0を把握するよりも、成形後の血液処理フィルター1を解体して得られるフィルター要素2の最大値D1を検出する方が容易である場合には、厚みD0の代わりに最大値D1を検出し、最大値D1を元の厚みD0とみなしてD/D0の値を把握することができる。具体的には、D1はD0と同じか、あるいは数%小さくなるはず(即ち、D0≧D1)であるから、厚みDが最大値D1の0.5倍以下であれば(即ち、D/D1≦0.5)、厚みDは元の厚みD0の0.5倍以下となる(即ち、D/D0≦0.5)。一方で、フィルター要素2は、元の樹脂の密度以下には圧縮できないため、下限値が0.05を下回ることは考え難く、従って、厚みDが最大値D1の0.05以上でありながら、厚みDが元の厚みD0の0.05未満となることは考え難い。つまり、D/D1=0.05〜0.5であれば、D/D0=0.05〜0.5とみなすことができる。
また、最大値D1と元の厚みD0との差は、元の厚みD0の数%程度であるためにほぼ無視できる程度と考えるが、この数%の誤差は、仮にD/D1>0.5の場合であっても、実際にD0を検出できた場合には、D/D0≦0.5となる可能性があることを否定するものではない。
次に、D/D0=0.07〜0.45の場合、及びD/D0=0.1〜0.4の場合について説明する。D/D0の値は、物理的にこれらの下限値0.07及び0.1を下回ることが可能である。このため、D/D0の下限値が確実に0.07及び0.1以上となり得るD/D1の下限値について検討する。ここで、最大値D1と元の厚みD0との差が、上記の実験(図13参照)に比べて非常に大きな値、例えば、10%と仮定すると、D/D0=0.07の場合には、D/D1=0.078(=0.07/0.9)であり、D/D0=0.1の場合には、D/D1=0.11(=0.1/0.9)である。つまり、少なくともD/D1=0.078〜0.45の場合には、D/D0=0.07〜0.45とみなすことに無理は無く、また、D/D1=0.11〜0.4の場合には、D/D0=0.1〜0.4とみなすことに無理は無い。
(樹脂流路、溶融樹脂の充填口、及び充填確認口について)
図5に示されるように、樹脂流路8には、溶融樹脂6の充填入口(以下、「充填口」という)91と溶融樹脂6の充填出口(以下、「充填確認口」という)95とが設けられている。充填口91及び充填確認口95は、樹脂流路8が外部に通じる開口として機能するため、入口側容器材4の外表面4a又は出口側容器材5の外表面5aに設けられており、また、充填口91と充填確認口95とは樹脂流路8を介して互いに接続している。
特に、充填確認口95は、充填口91から充填された溶融樹脂6の流動末端(最終充填部)に配置されており、その結果、ガス抜け効果により成形性が向上し、気密性、液密性の安定性も向上する。また、本実施形態に係る樹脂流路8は、フィルター要素2の端面2cに沿った全周にわたり、つまり、接合部7の全周にわたって連続的に設けられている。その結果、硬質容器3が確実にシールされ、気密性、液密性が高まることとなる。なお、本実施形態では、樹脂流路8が接合部7の全周にわたって設けられていることからも明らかな通り、矩形環状であり、流路の端部が存在しない。したがって、上記の流動末端とは、一または複数の充填口91から最も遠い位置を意味する。
本実施形態では、矩形状の出口側容器材5の四個の角部のうち、出口ポート5cが設けられた角部を避け、対角となる二か所の角部に、それぞれ充填口91が設けられている。これに対し、対になるように二個の充填確認口95が設けられており、一方の充填確認口95は、矩形状の入口側容器材4の四個の角部のうち、入口ポート4cの角部、及び充填口91に重なる二か所の角部を避けて設けられている。また、他の充填確認口95は、入口側容器材4ではなく、出口側容器材5の外表面5aであり、入口側容器材4の入口ポート4cの裏側となる角部に設けられている。
なお、本実施形態では、樹脂流路8が接合部7の全周にわたって連続的に設けられているが、連続的に設けるのではなく、樹脂流路8の一部を遮断(閉塞)させた態様とすることも可能である。しかしながら、樹脂流路8の少なくとも一部を遮断して溶融樹脂6が流れない箇所を設けた場合には、その箇所には溶融樹脂6が充填されないため、遮断箇所が大きいほど、気密性、液密性が低下するリスクが高くなる。
したがって、フィルター要素2の端面2cを取り囲む全周のうち、少なくとも90%以上の領域が溶融樹脂6によって接着されていることが好ましい。例えば、溶融樹脂6によって接着されている領域が90%未満の場合には、高い品質を担保するため、別途漏洩試験の検査工程が必要となる場合がある。また、この領域が90%未満の場合、例えば、接着されていない箇所の気密性を確保するために、入口側容器材4と出口側容器材5とを強固に嵌合接触させる必要が生じ、その過負荷によってクラックが発生し易くなる。
以上、本実施形態に係る血液処理フィルター1を説明したが、例えば、充填口91や充填確認口95は二個以上の複数に限定されず、単数であっても良く、また、充填口91と充填確認口95との数は対になっていなくてもよく、従って、同数でなくてもよい。ただし、生産性を考慮すると充填口91の数と、充填確認口95の数は対(同数)である方が好ましい。
次に、本実施形態に係る血液処理フィルター1の作用、さらに、本作用を奏するための原理、更に、他の実施形態について説明する。
血液処理フィルター1(図5参照)は、入口側容器材4と出口側容器材5とを備え、入口側容器材4と出口側容器材5とは、樹脂流路8に充填された溶融樹脂6によって接着されている。入口側容器材4の外表面4a及び出口側容器材5の外表面5aの少なくとも一方には、溶融樹脂6が充填される充填口91が設けられ、入口側容器材4の外表面4a及び出口側容器材5の外表面5aの少なくとも一方には、樹脂流路8を介して充填口91に接続された充填確認口95が設けられている。
樹脂流路8内に行き渡らせるために必要な溶融樹脂6の量は、樹脂流路8の容積(以下、「必要量」という)に基づいて事前に割り出すことができる。従って通常は、溶融樹脂6の充填を開始して必要量の充填が完了するタイミングにて充填を終了し、その後、リーク検査が行われる。
血液処理フィルター1の場合、充填確認口95から溶融樹脂6を目視にて確認できれば、充填口91から充填された溶融樹脂6は少なくとも充填確認口95まで到達したと推認できる。つまり、充填口91と充填確認口95との間での樹脂流路8内には溶融樹脂6が行き渡っており、樹脂流路8内に溶融樹脂6が十分に充填されていることを視覚的に確認できる(図6(b)、(c)参照)。つまり、充填確認口95から溶融樹脂6を確認できれば、少なくとも樹脂流路8内は溶融樹脂6によって満たされていると推定され、従ってリークの可能性の無い良品の血液処理フィルター1と判断できる。
一方で、製造される血液処理フィルター1には個体差があり、樹脂流路8の内径が不均一であったり、溶融樹脂6の粘性に不具合等があったりすると溶融樹脂6が充填確認口95まで到達しない場合がある(図6(a)参照)。このような場合、充填確認口95から目視にて溶融樹脂6を確認することができない。その結果、樹脂流路8が溶融樹脂6によって完全に満たされているか否かの確認ができず、逆に言えば、リークの可能性を完全には排除できない不良の漏洩フィルターであると判断できる。その結果、目視による簡易なリーク検査によって漏洩フィルターを容易に選別、排除できる。なお、充填確認口95から溶融樹脂6を目視にて確認するとは、溶融状態の溶融樹脂6を確認する場合に限定されず、硬化した後の溶融樹脂6を確認する場合も含まれる。
以上が基本的な原理であるが、本実施形態に係る血液処理フィルター1では、無端状である矩形環状の樹脂流路8上に二個(複数)の充填口91と二個(複数)の充填確認口95とが設けられている。以下、図7を参照し、一つの樹脂流路8上に複数の充填口91、及び複数の充填確認口95を設けた場合における溶融樹脂6の充填状態の確認について説明する。
図7に示されるように、樹脂流路8は、複数の充填口91及び複数の充填確認口95によって分割された複数の分割流路8a,8b,8c,8dに区分けして考えることができる。図7は、血液処理フィルター1を簡略化して示す説明図であり、(a)は一方の外表面4a側から見た平面図であり、(b)は(a)図のb1−b1線、b2−b2線、b3−b3線、b4−b4線の各線に沿った断面図である。血液処理フィルター1の各分割流路8a,8b,8c,8dの長さは同じであり、また、各分割流路8a,8b,8c,8dは、溶融樹脂6が流動する方向に直交する断面において面積が同じである。つまり、各分割流路8a,8b,8c,8dの容積は全て同じになる。
その結果、二個の充填口91から溶融樹脂6を同じタイミング、同じ流量で充填すると、同じ経過時間(タイミング)にて二個の充填確認口95に到達するはずであり、この到達のタイミングにて溶融樹脂6の充填を終了する。その後、目視にて二個の充填確認口95の両方から溶融樹脂6を確認できれば、良品の血液処理フィルター1と判断でき、逆に、少なくとも一方の充填確認口95で溶融樹脂6を確認できなければリークの可能性があると判断でき、不良の可能性のある漏洩フィルターとして排除することになる。
上記の作用は、本実施形態に係る血液処理フィルター1に限定されず、例えば、図8〜図12に示されるような各実施形態に係る血液処理フィルター1A,1B,1C,1D,1Eであっても奏する。
まず、図8(a)は、血液処理フィルター1を簡素化した第2の実施形態に係る血液処理フィルター1Aの概略を示す平面図であり、図8(b)は、第3の実施形態に係る血液処理フィルター1Bの概略を示す平面図である。
例えば、第2の実施形態に係る血液処理フィルター1A(図8(a)参照)のように、矩形環状の樹脂流路8上に充填口91と充填確認口95とを一対だけ設けることも可能である。この場合、充填口91、及び充填確認口95によって分割された分割流路81a,81bは二個となり、二個の分割流路81a,81bの容積が同じになるように設計することで、同様の作用を期待できる。また、第3の実施形態に係る血液処理フィルター1B(図8(b)参照)のように、矩形環状の樹脂流路8上に、充填口91と充填確認口95とが対になるようにそれぞれ三か所に設けることも可能である。この場合、充填口91、及び充填確認口95によって分割された分割流路82a,82b,82c,82d,82e,82fは六個となり、六個の分割流路82a,82b,82c,82d,82e,82fの容積が同じになるように設計することで、同様の作用を期待できる。
また、図9は、分割流路83a,83b,83c,83dの長さが異なる場合を例示した第4の実施形態に係る血液処理フィルター1Cを示し、(a)は一方の外表面4a側から見た概略を示す平面図であり、(b)は(a)図のb1−b1線、b2−b2線、b3−b3線、b4−b4線の各線に沿った断面図である。
第4の実施形態に係る血液処理フィルター1Cでは、充填口91a,91bから充填確認口95a,95bに至る複数の分割流路83a,83b,83c,83dの長さが異なる場合に、各分割流路83a,83b,83c,83dの内径を変えることで実質的に各分割流路83a,83b,83c,83dの容積を同じになるようにして、溶融樹脂6の到達時間をコントロールしている。
詳細には、第4の実施形態に係る血液処理フィルター1Cでは、矩形環状の樹脂流路8上に、二個(複数)の充填口91a,91bと二個(複数)の充填確認口95a,95bとが設けられている。二個(複数)の充填口91a,95bのうち、第1の充填口91aから第1、第2の充填確認口95a,95bそれぞれまでの分割流路83a,83dの距離Lxは同じであるが、第2の充填口91bから第1の充填確認口95aまでの距離Laは、第2の充填口91bから第2の充填確認口95bまでの距離(2Lx−La)よりも短い。しかしながら、第2の充填口91bから第1の充填確認口95aまでの分割流路83bの内径daは、第2の充填口91bから第2の充填確認口95bまでの分割流路83cの内径dbよりも大きく、更に、第1の充填口91から第1、第2の充填確認口95a,95bまでの分割流路83a,83dの内径dxよりも大きい。なお、分割流路83cの内径dbは分割流路83a,83dの内径dxよりも小さい。その結果、実質的に分割流路83a,83b,83c,83dの容積は同じになるように調整されている。
また、図10は、分割流路84a,84b,84c,84dの長さが異なる場合を例示した第5の実施形態に係る血液処理フィルター1Dを示し、(a)は一方の外表面4a側から見た概略を示す平面図であり、(b)は(a)図のb1−b1線、b2−b2線の各線に沿った断面図である。
第5の実施形態に係る血液処理フィルター1Dでは、充填口91cから充填確認口95c,95dに至る複数の分割流路84a,84dの長さが異なる場合に、複数設けた充填口91c,91dの内径dm,dnを変えて溶融樹脂6の到達時間をコントロールすることを想定している。
詳細には、第5の実施形態に係る血液処理フィルター1Dでは、矩形環状の樹脂流路8上に、二個(複数)の充填口91c,91dと二個(複数)の充填確認口95c,95dとが設けられている。二個(複数)の充填口91c,91dのうち、第1の充填口91cから第1、第2の充填確認口95c,95dまでの分割流路84a,84dの距離は同じであり、第2の充填口91dから第1、第2の充填確認口95c,95dまでの分割流路84b,84cの距離は同じである。しかしながら、第1の充填口91cから第1、第2の充填確認口95c,95dまでの分割流路84a,84dの距離は、第2の充填口91dから第1、第2の充填確認口95c,95dまでの分割流路84b,84cの距離よりも短い。
ここで、第2の充填口91dから樹脂流路8に連絡する第2の経路の内径dmは、第1の充填口91cから樹脂流路8に連絡する第1の経路の内径dmよりも大きい。その結果、実質的に第2の経路から単位時間当りに充填される溶融樹脂6の量(流量)を増加させることができる。従って、分割流路84b,84cの長さが分割流路84a,84dよりも長くても、充填確認口95c,95dまでの到達時間を短くすることができ、各充填口91c,91dからの溶融樹脂6の充填を同じタイミングで開始し、想定上、同じタイミングにて各充填確認口95c,95dに溶融樹脂6が到達する血液処理フィルター1Dとすることができる。
上記の各実施形態では、分割流路8a〜8d、81a,81b、82a〜82d、83a〜83d、84a〜84dの構造、例えば、容積等を調整して溶融樹脂6が充填口91、91a,91b、91c,91dから充填確認口95、95a,95b、95c,95dに到達する時間をコントロールする態様を例示したが、例えば、溶融樹脂6を充填するタイミングをずらすことを同様の作用を奏するものとすることも可能である。
図11は、溶融樹脂6を充填するタイミングをずらす態様を説明するための図であり、(a)は第1の実施形態に係る血液処理フィルター1を示し、(b)は第6の実施形態に係る血液処理フィルター1Eを示している。
第6の実施形態に係る血液処理フィルター1Eでは、矩形環状の樹脂流路8上に、二個(複数)の充填口91e,91fと二個(複数)の充填確認口95e,95fとが設けられている。二個(複数)の充填口91e,91fのうち、第1の充填口91eから第1、第2の充填確認口95e,95fまでの分割流路85a,85dの長さに対し、第2の充填口91fから第1、第2の充填確認口95e,95fまでの分割流路85b,85cの長さの方が長くなっている。したがって、長い側の分割流路85b,85cの方が短い側の分割流路85a,85dよりも容積が大きく、従って、第1、第2の充填口91e,91fから同じタイミングで溶融樹脂6の充填を開始すると、第2の充填口91fから充填した溶融樹脂6が第1、第2の充填確認口95e,95fに到達するタイミングが、第1の充填口91eから充填した溶融樹脂6が第1、第2の充填確認口95e,95fに到達するタイミングよりも遅れてしまう。
そこで、この遅れ分を事前に割り出しておき、溶融樹脂6を射出する装置の樹脂射出口のゲートオープン時間などを調整することで、その遅れ分だけ第2の充填口91eから充填を開始するタイミングを早めることで、第1、第2の充填口91e,91f双方から充填された溶融樹脂6が第1、第2の充填確認口95e,95fに到達するタイミングが揃うように調整されている。
また、上記の各実施形態に係る血液処理フィルター1,1A〜1Eの外形としては、正方形状などに限定されず、図12に示されるように様々な形状を採用することができる。例えば、図12(a)は外形が三角形の態様を示し、(b)は外形が五角形の態様を示し、(c)は外形が六角形の態様を示し、(d)は外形が七角形の態様を示し、(e)は外形が八角形の態様を示し、(f)は外形が九角形の態様を示している。
以上、各実施形態に係る血液処理フィルター1,1A〜1Eについて説明した。これらの各態様については、製品のサイズ、要求性能または製造上の効率性などを考慮して適宜に選択できるが、各要素の考察として以下の説明を行うことができる。
例えば、樹脂流路8は金型加工性、成形性を考慮すると一様な断面積にする方が好ましい。また、充填口91、91a〜91f(以下、代表して「充填口91」という)と充填確認口95、95a〜95f(以下、代表して「充填確認口95」という)とは樹脂流路8に沿って交互に配置されると共に、隣り合う充填口91と充填確認口95との間の樹脂流路8の容積が一定であれば、樹脂流路8において、充填口91と充填確認口95とによって分割される複数の分割流路8a〜8d、81a,81b、82a〜82d、83a〜83dの容積は同じになる。その結果、各充填口91から充填した溶融樹脂6が各充填確認口95に到達するタイミングを揃えるための複雑な制御などが不要となり、好適である。
また、充填口91や充填確認口95は対をなす方が好ましく、特に、1対(充填口91が1個、充填確認口95が1個)よりも2対(充填口91が2個、充填確認口95が2個)の方が好ましい。なお、充填口91や充填確認口95は少ないほどシンプルな構成となるが、一方で、樹脂流路8(分割流路)の長さが長くなる程、各充填口91から各充填確認口95に到達する溶融樹脂6の到達時間にバラツキが出易くなるため、分割流路8a〜8d、81a,81b、82a〜82d、83a〜83d、84a〜84d、85a〜85dの容積が適切になるように充填口91、及び充填確認口95の数や配置を決定する必要がある。
また、充填口91や充填確認口95は、入口側容器材4の入口ポート4cや出口側容器材5の出口ポート5cを避けて設ける方が好ましい。入口ポート4cや出口ポート5cには、硬質容器3の内部空間3sに連通する内部流路が形成されるため、これらの内部流路を避けながら充填口91や充填確認口95を形成することが難しく、構造が複雑になり易いためである。なお、入口ポート4cや出口ポート5cを避けるとは、充填口91や充填確認口95を入口側容器材4側に設ける場合には、平面視で入口ポート4cに重ならないように設けることを意味し、充填口91や充填確認口95を出口側容器材5側に設ける場合には、平面視で出口ポート5cに重ならないように設けることを意味する。
また、一つの樹脂流路8に対し、一または複数の充填口91を設けることは可能であり、また、一または複数の充填確認口95を設けることは可能である。複数の充填口91を設けることで溶融樹脂6の充填効率を向上でき、複数の充填確認口95を設けることで、樹脂流路8内の充填状況を確認し易くなる。
ここで、特に、一つの樹脂流路8に対して複数の充填確認口95を設ける場合には、複数の充填確認口95それぞれと充填口91とを連絡する各分割流路8a〜8d、81a,81b、82a〜82d、83a〜83dの容積は同じとなるように形成すると好ましい。なお、上記に第5、第6の実施形態の如く、一つの樹脂流路8に対し、複数の充填口91c〜91fが形成されている場合で、各分割流路84a〜84d、85a〜85dの容積が異なる場合には、各充填口91c,91dの内径が異なるようにしたり、各充填口91e,91fからの溶融樹脂6の充填開始タイミングをずらすなどしたりして調整する必要がある。
また、複数の充填確認口95は、入口側容器材4及び出口側容器材5の両方に設けられていても良いし、どちらか一方にまとめて設けられていても良い。両方に設ける場合には、入口ポート4cや出口ポート5cを避けながら設ける必要がある場合などに、充填確認口95を形成可能な場所としての候補が増え、最適な場所に形成し易くなる。一方で、どちらか一方にまとめて設けられていると、リーク検査の際に、血液処理フィルター1,1A〜1Eの、充填確認口95が設けられた一方の側面のみを確認するだけで足りるので、その都度、裏返す手間が省けて好適である。
また、複数の充填口91は、入口側容器材4及び出口側容器材5の両方に設けられていても良いし、どちらか一方にまとめて設けられていても良い。両方に設ける場合には、入口ポート4cや出口ポート5cを避けながら設ける必要がある場合などに、充填口91を形成可能な場所としての候補が増え、最適な場所に形成し易くなる。一方で、どちらか一方にまとめて設けられていると、溶融樹脂6を充填する際に、充填口91が設けられた一方の側面のみから溶融樹脂6を充填することになるので、溶融樹脂6を充填する装置の構造や制御の簡素化が可能になり、好適である。
また、充填確認口95及び充填口91の少なくとも一方を複数設けた場合に、複数の充填確認口95または充填口91を、フィルター要素2の端面2cに沿った全周にわたって設けられた樹脂流路8に沿って等間隔で配置すると、偏りが無くなり、溶融樹脂6の適切な充填や目視による確認が可能になって好適である。
また、血液処理フィルター1,1A〜1Eの形状が多角形状の場合、各角部に充填口91または充填確認口95を配置すると、分割流路8a〜8d等は多角形状の各辺に沿った直線状になるため、溶融樹脂6の流れが各分割流路8a〜8d等で整い易く、充填確認口95に到達するタイミングにバラツキが生じ難くなり、溶融樹脂6が適切に充填されたか否かを判断する上での信頼性が高まり、好適である。
次に、上記の各実施形態に係る血液処理フィルター1,1A〜1Eの製造方法について説明する。なお、各実施形態に係る血液処理フィルター1,1A〜1Eの製造方法は基本的に同様であるため、血液処理フィルター1を想定して、製造方法の一例について説明する。最初に、この製造方法にて使用される射出成形機10について説明する。
図14に示されるように、射出成形機10は、固定型11、可動型(金型)12及びスライド移動型(金型)13を備えている。固定型11は、射出成形機10の固定盤(図示せず)に固定されている。この固定型11の上面には、スライド用のシリンダ14を有する架台15が設置されている。そして、油圧あるいは空気圧等によって作動されるシリンダ14はスライド移動型13の上面に連結されている。そして、スライド移動型13は、固定型11の側面に密着した状態を保ちながら上下にスライド移動できるようにされている。
可動型12は、射出成形機10に水平移動自在な可動盤(図示せず)に取付けられている。この可動盤は、射出成形機10の型開閉装置(図示せず)によって、固定型11に対して近接離隔移動できるようにされている。そして、可動型12は、スライド移動型13に密着する型閉め位置と、スライド移動型13から離れた型開き位置との間を移動できるようにされている。
固定型11には、その中心に、固定型11に取付けられた射出機(図示せず)から射出される溶融樹脂16を導くスプルー11aが設けられている。そして、スライド移動型13には、これが下方位置にあるときにスプルー11aと連続する中央のサブスプルー13aと、上方位置に移動したときにスプルー11aと連続する下方のサブスプルー13bとが設けられている。
また、スライド移動型13の型閉め面には、中央のサブスプルー13aの上下の対称位置に、雄型13cと雌型13dとが設けられている。この雄型13cは、入口側容器材4の内面4bを成形するものであり、雌型13dは、出口側容器材5の外表面5aを成形するものである。一方、可動型12の型閉め面には、スライド移動型13が下方位置にあるときに雄型13c及び雌型13dにそれぞれ対向する雌型12c及び雄型12dが設けられている。
可動型12の雌型12cは、入口側容器材4の外表面4a(図4参照)を成形するものであり、雄型12dは、出口側容器材5の内面5bを成形するものである。そして、この雌型12c(図15、図16参照)は、スライド移動型13が上方位置にあるときは、スライド移動型13側の雌型13dに対向するようにされている。
図14に示されるように、スライド移動型13が下方位置にあり、可動型12がこれに型閉めされているときには、そのスライド移動型13と可動型12との間に、各雄型12d、13cと各雌型13d、12cとによってそれぞれ囲まれる一対の空隙17,18が形成されるようになっている。このとき、これら空隙には各雌型13d、12cの端縁部から可動型12に形成されたランナー12e及び一対のゲート12fを通して、スライド移動型13の中央のサブスプルー13aが連通するようにされている。
また、図16に示されるように、スライド移動型13が上方位置にあり、可動型12がこれに型合わせされているときには、そのスライド移動型13及び可動型12の各雌型13d、12cは互いに突き合わされている。この状態において、雌型13d、12cの端縁部には、ゲート12fを通して、下方のサブスプルー13b及びランナー12eに連通する孔(図示省略)が形成されている。この孔は、出口側容器材5または入口側容器材4に形成された充填口91に連通する孔であり、樹脂流路8に溶融樹脂16(溶融樹脂6)を充填するために設けられている。
射出成形機10を用いて血液処理フィルター1を成形するには、先ず、図14に示されるように、シリンダ14を伸長させてスライド移動型13を下方位置に位置させる。そして、射出成形機10の可動盤を固定盤側に移動させて、スライド移動型13と可動型12とを型閉めする。この状態においては、スライド移動型13の中央のサブスプルー13aは固定型11のスプルー11aに連続し、スライド移動型13と可動型12との間には一対の空隙17,18が形成される。
次いで、固定盤に取付けられた射出機から溶融樹脂16を射出し、固定型11のスプルー11a、スライド移動型13の中央のサブスプルー13a、ランナー12e及びゲート12fを通って両方の空隙17,18に溶融樹脂16を導き、これら空隙17,18内に充填する。こうして、各空隙17,18において、雌雄一対の入口側容器材4及び出口側容器材5が形成される(容器材成形工程)。
雌雄一対の入口側容器材4及び出口側容器材5の冷却固化後、型開閉装置によって、図15に示すように、可動型12とスライド移動型13とを型開きし、離隔させる。すると、各雄型13c,12dがその入口側容器材4及び出口側容器材5から離脱し、入口側容器材4及び出口側容器材5はそれぞれ雌型12c,13s側に残る。この型開き時、金型のスプルー11a、サブスプルー13a及びランナー12e及びゲート12f内等で固化した樹脂部分は、金型から突き出されて落下する。このようにして得られた入口側容器材4及び出口側容器材5には、その矩形状の外形の内縁に沿って入口側接合部4d及び出口側接合部5dが設けられており、後工程(接合工程)において、入口側接合部4d及び出口側接合部5dが互いに突き合わされて接合部7が形成される。
次いで、図15に示されるように、ポリエステル不織布からなるフィルター要素2を、出口側容器材5内にインサートした後、シリンダ14を収縮させ、スライド移動型13を上方位置に移動させる(装填工程)。すると、スライド移動型13の雌型13dと可動型12の雌型12cとが対向し、これらの雌型13d、12cに残された入口側容器材4及び出口側容器材5が互いに対向する状態となる。このとき、スライド移動型13の下方のサブスプルー13bは固定型11のスプルー11aに連続するように位置する。
この状態で可動型12をスライド移動型13側に移動させ、図16に示されるように、これらを突き合わせて型閉めする。すると、入口側接合部4d及び出口側接合部5dの突き合せ面が互いに突き合わされ、摺接部7aの溝4x及び溝5x(図4参照)によって、空洞の樹脂流路8が形成される(接合工程)。
樹脂流路8は充填口91、及び充填確認口95を介してゲート12fに通じ、ゲート12fは更にランナー12eを介してサブスプルー13bに連通している。この状態で、樹脂流路8に充填される溶融樹脂6(図3参照)として、射出機から溶融樹脂16を射出する。すると、この溶融樹脂16は、固定型11のスプルー11a、サブスプルー13b、ランナー12e、ゲート12f及び充填口91を通り、溶融樹脂6として樹脂流路8に充填される。これにより、入口側容器材4及び出口側容器材5は、接合部7の周縁が溶融樹脂6によって互いに溶着される(固着工程)。このように、樹脂流路8を形成後に、溶融樹脂6を充填する手法によれば、樹脂量のコントロールが容易となる。
この溶融樹脂6の冷却固化後、再び型開閉装置によってスライド移動型13と可動型12との型開きをすると、入口側容器材4及び出口側容器材5が嵌合接着され、完全密封成形品として完成された血液処理フィルター1が得られる。尚、スプルー11a、サブスプルー13b、ランナー12e及びゲート12f内等で固化した樹脂部分は金型から突き出されて落下する。
このようにして完成した血液処理フィルター1を取り外した後、再びシリンダ14を伸長させ、スライド移動型13を下方位置に位置させる。そして、可動型12とスライド移動型13とを型閉めし、次の製品の成形工程へと移行する。そして、上記のような一連の工程を繰り返すことにより、血液処理フィルター1を連続的に成形することができる。しかも、その成形工程は、スライド移動型13の上下スライド、可動型12の前後(水平)移動による型閉め及び型開き、溶融樹脂16の射出という単純な工程によって構成されるので、その全工程の自動化も容易に行うことができる。したがって、血液処理フィルター1の量産化が可能となる。
このように、一組の金型である可動型12、及びスライド移動型13と射出成形機10を用いるだけで、入口側容器材4及び出口側容器材5の射出成形からフィルター要素2の内装、雌雄容器材である入口側容器材4及び出口側容器材5の接着までを単一工程で連続的に行なうことができ、完全密封されたものであっても成形することができる。
次に、各実施形態に係るリーク検査方法について説明する。上記の製造方法によって、各実施形態に係る血液処理フィルター1,1A〜1Eを製造した後、血液処理フィルター1,1A〜1Eの硬質容器3に形成された充填確認口95、95a〜95fを目視にて確認する。その結果、溶融樹脂6を充填確認口95、95a〜95fから確認できた場合には、入口側容器材4及び出口側容器材5の接合部7の液密性が高い、つまり良品であることを確認できる。逆に、溶融樹脂6を充填確認口95から確認できなかった場合には、その血液処理フィルター1,1A〜1Eは接合部7の液密性が低い、つまり不良品であることを確認できる。
以上、各実施形態に係る血液処理フィルター1,1A〜1Eでは、充填口91、91a〜91fから樹脂流路8内に溶融樹脂6が充填されて、入口側容器材4及び出口側容器材5の接合部7が接合されている。ここで、充填口91、91a〜91fから充填された溶融樹脂6が充填確認口95、95a〜95fまで到達すると、充填確認口95、95a〜95fから溶融樹脂6の充填状況を目視にて確認でき、その結果、充填口91、91a〜91fと充填確認口95、95a〜95fとの間の樹脂流路8内には溶融樹脂6が充填されていることを確認できる。逆に、充填確認口95、95a〜95fから溶融樹脂6を確認できなければ、リークの可能性を有する漏洩フィルターであると判断でき、漏洩フィルターを容易に選別、排除できる。