以下、図面を参照しつつ本発明に係る血液処理フィルター及び血液処理フィルターの製造方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
まず、図1〜3を参照して、実施形態に係る血液処理フィルター1について説明する。血液処理フィルター1は、血液成分を含む液体または血液(以下、被処理液という。)から好ましくない成分を除去するためのものである。
血液処理フィルター1は、全体的に矩形状をなし、シート状のフィルター要素2と、硬質容器3とを備えている。硬質容器3は、フィルター要素2を挟んで配置され、且つ互いに固着された入口側容器材4及び出口側容器材5を有し、フィルター要素2によって内部空間3sが入口空間4s及び出口空間5sに仕切られている。入口側容器材4には被処理液を内部に導入する入口ポート4aが設けられ、出口側容器材5にはフィルター要素2によって処理された処理液を排出する出口ポート5aが設けられている。なお、血液処理フィルター1は、矩形状、円盤状、長円板状などのいずれでも良いが、製造時の材料ロスを少なくするためには、矩形状が好ましい。また、正方形や菱形も矩形状の一種と見なすこととする。また、本実施形態では容器の一例として硬質容器3を例示するが、可撓性を有する軟質容器とすることも可能である。
硬質容器3の主要部となる入口側容器材4及び出口側容器材5の材料としては、フィルター要素2の導入時、及び濾過時の硬質容器3の変形を抑えるため、室温でのヤング率0.1GPa以上の樹脂が好ましい。例えば、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、HIPS,ABS、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等が使用できる。更に好ましくは耐熱性の高いポリカーボネート等が好ましい。なお、ヤング率の測定はISO527−1に従い測定した結果を用いることができる。
(フィルター要素について)
フィルター要素2には、不織布や織布などの繊維状多孔性媒体や、スポンジ状構造物などの三次元網目状連続細孔を有する多孔質体などの公知の濾過媒体を用いることができる。これらの素材としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、スチレン−イソブチレン−スチレン重合体、ポリウレタン、ポリエステル等が挙げられる。フィルター要素2が不織布である場合には、生産性の点から特に好ましい。
フィルター要素2は、単一のフィルター要素でもよく、積層された複数のシート状フィルター材からなる複数のフィルター要素からなってもよい。複数のフィルター要素からなる場合、上流に配置された主に微小凝集物を除去する第一のフィルター要素と、微小凝集物以外の好ましくない成分を除去するために、第一のフィルター要素の下流に配置された第二のフィルター要素からなるのが好ましい。
例えば、入口側に繊維径が数〜数十μmの不織布からなるフィルター材を主に凝集物除去の為の第一のフィルター要素として配置し、次に繊維径が0.3〜3.0μmの不織布からなるフィルター材を、凝集物以外の好ましくない成分を除去するための第二のフィルター要素として配置して用いることができる。第一、第二のフィルター要素は、それぞれが更に繊維径の異なる複数種類のフィルター材から構成されていても良く、片方のみが複数種類のフィルター材から構成されてもよい。
例えば繊維径が30〜40μmの不織布および/または繊維径が10〜20μmの不織布からなる第一のフィルター要素を上流側に配置し、第一のフィルター要素の下流側に繊維径が1.5〜2.5μmの不織布および/または繊維径が0.5〜1.8μmの不織布からなる第二のフィルター要素を配置してフィルター要素2を形成しても良い。なお、太い繊維径の不織布と細い繊維径の不織布が交互に配置されていても良いが、太い繊維径の不織布が上流側に配置されている方が好ましい。
(硬質容器の嵌合部、及び把持部によるフィルター要素の圧縮について)
上述の通り、硬質容器3は、所定の厚みを有する矩形状の容器であり、フィルター要素2を挟んで配置された入口側容器材4及び出口側容器材5を有している。また、硬質容器3の内部空間3sは、フィルター要素2によって入口空間4s側及び出口空間5s側に仕切られている。また、フィルター要素2は、入口空間4sに面する濾過面2aと、出口空間5sに面する濾過面2bと、一対の濾過面2a,2bの周縁に沿った端面2cとを有する。
入口側容器材4は、硬質容器3を厚み方向でほぼ半分に切断した矩形状の部材(図2参照)であり、出口側容器材5は、硬質容器3の残りの部分である矩形状の部材である。入口側容器材4の周縁には入口側嵌合部4d(図3参照)が設けられており、出口側容器材5の周縁には入口側嵌合部4dが嵌合する出口側嵌合部5dが設けられている。入口側嵌合部4dと出口側嵌合部5dとは雌雄の関係になっており、フィルター要素2の端面2cを取り囲んで嵌り合うことで嵌合部7を形成する。なお、以下の説明では、入口側嵌合部4dが雄側、出口側嵌合部5dが雌側となる構造を例に嵌合部7を更に詳しく説明するが、この雌雄の関係が逆になっても良い。
嵌合部7について更に詳しく説明する。入口側容器材4の周縁には凸状の入口側嵌合部4dが設けられている。一方で、出口側容器材5の周縁には、入口側嵌合部4dの内周面42に当接して係合する壁部52と、入口側嵌合部4dの先端面41に当接する座部51とが設けられている。出口側嵌合部5dは、壁部52及び座部51によって形成されている。また、入口側嵌合部4dと出口側嵌合部5dとの接触部位は、嵌合部7の摺接部7aであり、摺接部7aには、樹脂流路8が設けられている。入口側容器材4と出口側容器材5とは、樹脂流路8内に充填された溶融樹脂6による接着によって固定されている。なお、樹脂流路8を設けることなく、超音波溶着等で入口側容器材4と出口側容器材5とを固定することも可能である。
樹脂流路8は、入口側嵌合部4d及び出口側嵌合部5dにそれぞれ設けられただ断面U字状の溝4b及び溝5bから構成される空洞である。摺接部7aの少なくとも一部は、樹脂流路8内に溶融樹脂6が充填されることによって嵌合部7の全周にわたって帯状に溶着されている。このように嵌合部7の全周にわたって帯状に溶着されることで、硬質容器3がシールされ、気密性、液密性が高まることとなる。なお、樹脂流路8は、硬質容器3内、または硬質容器3の外部に通じる貫通孔(図示せず)を有している。貫通孔は1つであってもよいし、複数であってもよい。なお、本実施形態に係る樹脂流路8は、入口側嵌合部4d及び出口側嵌合部5dにそれぞれ設けられただ断面U字状の溝4b及び溝5bの両方から構成される空洞であるが、いずれか一方のみによって樹脂流路8を形成することも可能である。
図3に示されるように、嵌合部7の内側には、フィルター要素2の表裏である一対の濾過面2a,2bの外縁部2d,2e同士を挟み付けて圧縮する把持部9が設けられている。把持部9は、入口側容器材4に形成された入口側圧縮部4fと、出口側容器材5に形成された出口側圧縮部5fとによって形成されている。
入口側圧縮部4fは、入口側容器材4の周縁が内面側(出口側容器材5側)に向けて湾曲し、且つ外方に屈曲した段差によって形成されている。同様に出口側圧縮部5fは、出口側容器材5の周縁が内面側(入口側容器材4側)に向けて湾曲し、且つ外方に屈曲した段差によって形成されている。入口側圧縮部4f及び出口側圧縮部5fは、フィルター要素2の表裏である一対の濾過面2a,2bの外縁部2d,2e同士を挟み付けて圧縮している。
把持部9は、入口側圧縮部4f及び出口側圧縮部5fによって、フィルター要素2の最外縁から1〜5mmの幅Lの範囲を圧縮している。このように把持部9の幅Lを1mmより大きくすることで、フィルター要素2を押しつぶしていくときに、フィルター要素2が把持部9から離脱することを防止でき、除去不良の発生が抑えられる。また、実際に濾過に使えない領域を作ってしまう把持部9の幅Lを5mmより小さくすることで、血液処理の効率的に、若しくは経済的に許容される範囲での設計を行い易くなる。
入口側容器材4の内面側には、入口側圧縮部4fで囲まれた内側の領域に凸状のリブ4hが複数設けられている。また、出口側容器材5の内面側には、出口側圧縮部5fで囲まれた内側の領域に凸状の5hが複数設けられている。入口側容器材4のリブ4hは、フィルター要素2の濾過面2aを押圧し、入口側容器材4の内面と濾過面2aとの間の入口空間4sを確保している。同様に、出口側容器材5のリブ5hは、フィルター要素2の濾過面2bを押圧し、出口側容器材5の内面と濾過面2bとの間の出口空間5sを確保している。
以上の通り、本実施形態に係る血液処理フィルター1では、フィルター要素2の一対の濾過面2a,2bが、リブ4h,5hによって挟み付けられ、部分的に圧縮されることで入口空間4s、及び出口空間5sを効果的、且つ安定した状態で確保している。なお、本実施形態では、入口側容器材4のリブ4hの方が、リブ5hよりも背が高くなっており、その結果、入口空間4sは出口空間5sより広く確保されている。なお、リブ4hとリブ5hの高さは同じであってもよいし、逆に、リブ5hの方が高くてもよい。
把持部9においてフィルター要素2の厚みDは、元の厚みD0の0.05〜0.5倍に圧縮されたものであることが必要となり、D/D0=0.05〜0.5である。ここで、フィルター要素2は元の樹脂の密度以下には圧縮できないためD/D0=0.05未満にすることは現実的に難しい。一方で、D/D0=0.5より大きくなると、フィルター要素2の高密度な圧縮状態とは言えず、好ましくない成分がフィルター要素2の外縁部2d,2eを乗り越えて、横漏れ(サイドフロー)が発生するリスクが生じるため、白血球等の好ましくない成分の除去性能が低下する。これは、高温高圧の蒸気滅菌時の高温のため容器の収縮が起こることに起因し顕著になる。つまり、フィルター要素2について、元の樹脂の密度に近くなる程度まで圧縮した厚みDとすることが重要となり、その結果として白血球等の好ましくない成分の除去性能を高めることが可能となる。そのため、例えば、フィルター要素2の元の厚みD0が10mmである場合、把持部9における厚みDを0.5mm〜5mm程度に圧縮することが必要となる。また、把持部9における厚みDを元の厚みD0の0.05〜0.5倍に圧縮させるためには、把持部9の距離、即ち、入口側圧縮部4f及び出口側圧縮部5fの向かい合う面の距離が、元の厚みD0の0.05〜0.5倍となるように成形用金型を調整する。なお、製造上の容易性と白血球等の好ましくない成分の除去性能の向上とを両立させるという観点からは、D/D0=0.07〜0.45が好ましく、D/D0=0.1〜0.4が更に好ましい。
次に、フィルター要素2の元の厚みD0について、成形後の血液処理フィルター1から検証する場合について説明する。成形後の血液処理フィルター1を解体し、把持されていない部分の厚みを測った場合に、その厚みの最大値D1は、把持部9で挟む前の元の厚みD0に対して数%の誤差範囲であり、実質的に最大値D1は元の厚みD0とみなすことができる。より具体的には、最大値D1は、把持部9やリブ4h,5h等の硬質容器3内の凸部によりフィルター要素2が変形した部分以外であって、フィルター要素2の中央付近の、凹み等がなく、形状が変化していない部分から選んだ5カ所の厚みの最大値であり、その最大値D1は、把持部9で挟む前の元の厚みD0とみなすことができる。
この検証を裏付ける実験結果について図9を参照して説明する。図9は、フィルター要素2(ポリエステル不織布)の断面の厚みについて、血液処理フィルター1の成形前と、成形後(成形後の血液処理フィルター1を解体)とを比較したグラフである。図9に示されるように、この血液処理フィルター1の場合、元の厚みD0と最大値D1との差は、元の厚みD0の3%程度であった。つまり、フィルター要素2の元の厚みD0と成形後の血液処理フィルター1を解体して得られるフィルター要素2の最大値D1との差は、元の厚みD0の数%程度であることが確認できた。なお、解体後の厚みの測定時期については、解体直後のものと、解体後1週間放置したものとで厚みの測定結果を比較しても、ほとんど変化がなかった。よって、解体後測定するまでに経過した時間は、厚みの測定結果にほとんど影響を与えないことを確認した。
以上の結果から、成形前の元の厚みD0を把握するよりも、成形後の血液処理フィルター1を解体して得られるフィルター要素2の最大値D1を検出する方が容易である場合には、厚みD0の代わりに最大値D1を検出し、最大値D1を元の厚みD0とみなしてD/D0の値を把握することができる。具体的には、D1はD0と同じか、あるいは数%小さくなるはず(即ち、D0≧D1)であるから、厚みDが最大値D1の0.5倍以下であれば(即ち、D/D1≦0.5)、厚みDは元の厚みD0の0.5倍以下となる(即ち、D/D0≦0.5)。一方で、フィルター要素2は、元の樹脂の密度以下には圧縮できないため、下限値が0.05を下回ることは考え難く、従って、厚みDが最大値D1の0.05以上でありながら、厚みDが元の厚みD0の0.05未満となることは考え難い。つまり、D/D1=0.05〜0.5であれば、D/D0=0.05〜0.5とみなすことができる。
また、最大値D1と元の厚みD0との差は、元の厚みD0の数%程度であるためにほぼ無視できる程度と考えるが、この数%の誤差は、仮にD/D1>0.5の場合であっても、実際にD0を検出できた場合には、D/D0≦0.5となる可能性があることを否定するものではない。
次に、D/D0=0.07〜0.45の場合、及びD/D0=0.1〜0.4の場合について説明する。D/D0の値は、物理的にこれらの下限値0.07及び0.1を下回ることが可能である。このため、D/D0の下限値が確実に0.07及び0.1以上となり得るD/D1の下限値について検討する。ここで、最大値D1と元の厚みD0との差が、上記の実験(図9参照)に比べて非常に大きな値、例えば、10%と仮定すると、D/D0=0.07の場合には、D/D1=0.078(=0.07/0.9)であり、D/D0=0.1の場合には、D/D1=0.11(=0.1/0.9)である。つまり、少なくともD/D1=0.078〜0.45の場合には、D/D0=0.07〜0.45とみなすことに無理は無く、また、D/D1=0.11〜0.4の場合には、D/D0=0.1〜0.4とみなすことに無理は無い。
(嵌合部の壁部について)
図3、図4、及び図5に示されるように、嵌合部7には壁部52が設けられている。壁部52は、フィルター要素2の端面2cを取り囲むように配置されており、フィルター要素2の端面2cに対向する対向面52cと、対向面52cからフィルター要素2側に向けて突き出す突起部52dとを有する。突起部52dは、出口側容器材5にフィルター要素2を装填する際に、出口側容器材5の内部の適切な位置にフィルター要素2を誘導する機能を有する。なお、壁部52が入口側容器材4に設けられている場合、壁部52に設けられた突起部52dは、入口側容器材4にフィルター要素2を装填する際に、入口側容器材4の内部の適切な位置にフィルター要素2を誘導する機能を有することになる。
本実施形態に係る突起部52d(図1参照)は、壁部52の周方向に間隔を空けて複数設けられており、特に、等間隔となる四か所に設けられている。より具体的には、平面視で矩形状の血液処理フィルター1において各辺に相当する部分の中央に各突起部52dが設けられており、結果として、フィルター要素2を挟んで対向配置された突起部52dの組が、二組形成されている。なお、フィルター要素2を挟んで対向配置された突起部52dの組は一組であっても良く、その場合に、残りの突起部52dが必ずしも組にならず、任意に配置される態様であっても良い。
図6(a)に示されるように、突起部52dは、壁部52の先端(開放)52a側から基端(奥)52b側に向けてフィルター要素2を誘導するテーパ部52eを有し、テーパ部52eは、壁部52の先端52a側の突き出し量が小さく、基端52b側の突き出し量が大きくなる勾配面S(図4参照)を有する。なお、壁部52の先端52aは、対向面52c側が一部切り欠かれて傾斜部52gが形成されており、この傾斜部52gがテーパ部52eに面一(連続的)に繋がっている。
図6(b)に示されるように、テーパ部52eの勾配面Sの傾斜角度θとは、対向面52cを基準としたときの傾きであり、60°以下が望ましい(図6(c)参照)。勾配面Sの傾斜角度θが60°を超えていると、変形し易い柔らかなフィルター要素2を装填しようとした場合に、突起部52dに干渉して潰れ易くなる。したがって、傾斜角度θは60°以下が好ましく、45°以下が更に好ましく、40°以下が更に好ましく、35°以下が更に好ましい。
また、図6(a)、(b)に示されるように、突起部52dは、テーパ部52eよりも壁部52の基端52b側に形成されると共に、フィルター要素2の端面2cに密着してフィルター要素2を支持する固定部52fを有する。固定部52fは、テーパ部52eの傾斜角度θよりも小さな傾斜角度δを有し、対向面52cを基準としたときに10°以下が望ましい(図6(d)参照)。固定部52fの傾斜角度δが10°を超えると、一度装填されたフィルター要素2が逆に抜け易く(離脱し易く)なるので、固定部52fの傾斜角度δは10°以下が好ましく、9°以下が更に好ましく、8°以下が更に好ましく、5°以下が更に好ましい。なお、型を抜いて製造する際の手間や不具合等が解消できれば、固定部52fの傾斜角度δは0°であってもよい。つまり、固定部52fの傾斜角度δが10°以下の範囲には、0°も含まれ、つまり、固定部52fが実質的に壁部52の対向面52cに平行であってもよい。
固定部52fがフィルター要素2の端面2cに接する総面積は、フィルター要素2の端面2cの総面積の5%以下であると好ましい。5%を上回る場合、フィルター要素2を硬質容器3に装填する際にかかる圧力によってフィルター要素2全体に変形をもたらす恐れがある。つまり、5%以下とすることで、フィルター要素2の端面2cに密着して支持する面積を適度に残して一部のみでの支持を可能としながら、フィルター要素2を硬質容器3内に装填する際の変形を低減できる。また、突起部52dに用いる材料、例えば、樹脂の量を削減する経済的効果もある。なお、フィルター要素2を適切に支持し、かつフィルター要素2を容器内に装填する際の変形を低減できるのであれば、3%以下や2%以下であっても良い。
一方で、固定部52fがフィルター要素2の端面2cに接する総面積が大きいほど、装填後のフィルター要素2の位置ズレを防止できるので、固定部52fがフィルター要素2の端面2cに接する総面積は0.5%以上が好ましく、1%以上であるとより好ましい。
また、固定部52fがフィルター要素2の端面2cに接する幅の総和は、フィルター要素2の外周の長さの15%以下であると好ましい。15%を上回る場合、フィルター要素2を硬質容器3に装填する際にかかる圧力によってフィルター要素2全体に変形をもたらし、フィルター要素2の適切な位置合わせを妨げる恐れがある。つまり、15%以下とすることで、所定の位置にフィルター要素2を配置するための突起部52dの幅を適度に残しつつ、フィルター要素2の変形による位置合わせの難しさを低減できる。また、突起部52dに用いる材料、例えば、樹脂の量を削減する経済的効果もある。また、フィルター要素2を適切に位置合わせし、かつフィルター要素2を容器内に装填する際の変形を低減できるのであれば、10%以下や5%以下であっても良い。
一方で、固定部52fがフィルター要素2の端面2cに接する幅の総和が大きいほど、装填後のフィルター要素2の位置ズレを防止できるので、固定部52fがフィルター要素2の端面2cに接する幅の総和は0.5%以上が好ましく、1%以上であるとより好ましく、3%以上であるとさらに好ましい。
次に、本実施形態に係る血液処理フィルター1の作用、効果について説明する。この血液処理フィルター1では、壁部52が設けられた出口側容器材5にフィルター要素2が装填される工程において、突起部52dがフィルター要素2を内部の所定の位置に案内するので、フィルター要素2の位置ずれが生じ難い。その結果、フィルター要素2が硬質容器3の内部に適切に内装された血液処理フィルター1を容易に実現できるので、使用時に好ましくない成分の除去が不完全となるリスクを、容易に回避できる。
また、突起部52dとしては様々な形態を想定できるが、本実施形態に係る突起部52dは、壁部52の先端52a側から基端52b側に向けてフィルター要素2を誘導するテーパ部52eを有し、テーパ部52eは、壁部52の先端52a側の突き出し量が小さく、基端52b側の突き出し量が大きくなる勾配面Sを有する。この勾配面Sによってフィルター要素2の誘導がスムーズに行われる。
また、本実施形態に係る突起部52dは、壁部52の周方向に間隔を空けて複数配置されている。突起部52dが1箇所のみの場合でもフィルター要素2の誘導は可能である。しかしながら、1箇所の突起部52dで位置合わせを行うと、フィルター要素2の突起部52dに接する反対側で位置ずれが発生しやすい。また、突起部52dを複数設けることを前提にすれば、血液処理フィルター1の形状に対して適した数の突起部52dを配置することができる。
また、本実施形態に係る突起部52dは、壁部52の周方向に等間隔で配置されており、その結果、フィルター要素2をバランス良く誘導でき、位置ずれを効果的に抑止できる。また、フィルター要素2を挟んで対向配置された二組の突起部52dを有するので、突起部52dの組でフィルター要素2を挟み、フィルター要素2の位置ずれを効果的に抑止できる。なお、フィルター要素2の位置ずれを抑止するという効果については、少なくとも一組の突起部52dを対向配置することで享受できるが、組数が増えるほど、位置ずれし難くなる。
また、本実施形態に係る血液処理フィルター1の入口側容器材4及び出口側容器材5は、フィルター要素2の端面2cを取り囲んで嵌り合う嵌合部7を有するため、入口側容器材4及び出口側容器材5の位置合わせ、及び接合を行い易い。
また、本実施形態の嵌合部7は、入口側容器材4に設けられた入口側嵌合部4dと、出口側容器材5に設けられた出口側嵌合部5dと、を有し、入口側嵌合部4dと出口側嵌合部5dとの摺接部7aの少なくとも一部は、溶融樹脂6によって嵌合部7の全周にわたって帯状に接着されている。その結果、溶融樹脂6によって、嵌合部7の全周を帯状に接着することになり、気密性、及び液密性が高まる。
また、本実施形態の摺接部7aには樹脂流路8が設けられており、樹脂流路8内に溶融樹脂6が充填されて摺接部7aが接着されているので、溶融樹脂6が摺接部7aからはみ出し難く、容器内に侵入する可能性を低減できる。
また、突起部52dは、フィルター要素2の端面2cに密着してフィルター要素2を支持する固定部52fを更に有する。仮に、固定部52fを設けなければ、テーパ部52eでフィルター要素2の誘導とフィルター要素2の固定という両機能を担う必要があり、傾斜角度δの最適化が難しくなる。しかしながら、突起部52dにテーパ部52eと固定部52fとを設けることができれば、テーパ部52eには、所定の位置にフィルター要素2を配置し易い傾斜角度θを持たせ、逆に、固定部52fについては、フィルター要素2が装填後に位置ずれし難い状態になることを優先した態様にすることができ、血液処理フィルター1の最適化が容易になる。
上記の作用、効果は、本実施形態に係る血液処理フィルター1に限定されず、例えば、図7、または図8に示されるような各実施形態に係る血液処理フィルター1A,1B,1C,1D,1E,1F,1Gであっても享受できる。
まず、図7(a)は、第2の実施形態に係る血液処理フィルター1Aの概略を示す平面図であり、図7(b)は、第3の実施形態に係る血液処理フィルター1Bの概略を示す平面図であり、図7(c)は、第4の実施形態に係る血液処理フィルター1Cの概略を示す平面図であり、図7(d)は、第5の実施形態に係る血液処理フィルター1Dの概略を示す平面図である。
例えば、第2の実施形態に係る血液処理フィルター1A(図7(a)参照)のように、第1の実施形態に係る血液処理フィルター1に比べ、個々の突起部53dの幅を広げることも可能である。また、第3の実施形態に係る血液処理フィルター1B(図7(b)参照)のように、対角の部分の2箇所ずつ、計4箇所の突起部54dを配置するようにすれば、フィルター要素が適切な位置に位置合わせでき、フィルター要素を容器に導入した後の位置ずれをより効果的に抑制できる。なお、本実施形態に係る突起部54dは、平面視でL字状に形成されており、フィルター要素2の角部に沿うように屈曲しているので位置合わせにより好適である。しかしながら、屈曲していなくてもよく、例えば、第1の実施形態に係る血液処理フィルター1の突起部52dや第2の実施形態に係る血液処理フィルター1Aの突起部53dと同様の突起部が、各角部に近接して設けられていても良い。更に、本実施形態では、四角状の血液処理フィルター1Bを例に説明したが、ひし形、あるいは五角形以上の多角形状の血液処理フィルターに適用することも可能である。
また、第4の実施形態に係る血液処理フィルター1C(図7(c)参照)のように、平面視で円形の血液処理フィルター1Cに円形のフィルター要素2を装填する態様において、フィルター要素2の周方向の複数個所(例えば、3箇所)、特に等間隔に突起部55dを設けることもできる。このように、円形のフィルター要素2の周方向に対して等間隔の3箇所以上に突起部55dを配置すると、位置合わせされやすくなって好ましい。
また、第5の実施形態に係る血液処理フィルター1D(図7(d)参照)のように、矩形状の血液処理フィルター1Dにおいて、一辺あたり2箇所、合計8箇所に突起部56dを配置すると、硬質容器3の全辺から均一に誘導を受けやすくなり、フィルター要素2がより位置合わせされ易くなり、好ましい。
また、図8(a)は、他の実施形態と比較するための第1の実施形態に係る血液処理フィルター1の壁部52の断面図であり、図8(b)は、第6の実施形態に係る血液処理フィルター1Eの壁部52Eの断面図であり、図8(c)は、第7の実施形態に係る血液処理フィルター1Fの壁部52Fの断面図であり、図8(d)は、第8の実施形態に係る血液処理フィルター1Gの壁部52Gの断面図である。
第1の実施形態に係る壁部52(図8(a)参照)は、先端52aの対向面52c側が一部切り欠かれて傾斜部52gが形成されており、この傾斜部52gが突起部52dのテーパ部52eに面一(連続的)に繋がっている。更に、壁部52には、テーパ部52eよりも基端52b側に固定部52fが設けられている。テーパ部52eの勾配面Sは一つであり、従って傾斜角度θは一つである。
一方で、図8(b)に示されるように、第6の実施形態に係る血液処理フィルター1Eでは、突起部57dのテーパ部57eは屈曲して二つの勾配面S1,S2を有する。そして、壁部52Eの先端52a側の勾配面S1の傾斜角度θの方が、基端52b側の勾配面S2の傾斜角度θよりも大きい。また、図8(c)に示されるように、第7の実施形態に係る血液処理フィルター1Fでは、突起部58dのテーパ部58eが屈曲して三つの勾配面S3,S4,S5を有し、壁部52Fの先端52aに最も近い第1の勾配面S3の傾斜角度θが一番大きく、次に、壁部52の先端52aに近い第2の勾配面S4の傾斜角度θは、第1の勾配面S1の傾斜角度θよりも小さいが、基端52bに最も近い第3の勾配面S5の傾斜角度θよりも大きい。なお、第6、及び第7の実施形態に係る壁部52E,52Fは、第1の実施形態に血液処理フィルター1と同様に、先端52aの対向面52c側が一部切り欠かれて傾斜部52gが形成されており、この傾斜部52gがテーパ部57e,58eに面一(連続的)に繋がっている。
また、図8(d)に示されるように、第8の実施形態に係る血液処理フィルター1Gでは、テーパ部52pが曲面状(凸面状)に滑らかに連続しており、テーパ部52pの傾斜角度とは、曲面における接線を仮定した場合に、その接線の対向面52cに対する角度を意味する。そして、第8の実施形態に係る血液処理フィルター1Gのテーパ部52pにおいて、壁部52Gの先端52a側の傾斜角度の方が、基端52b側の傾斜角度よりも大きい。なお、第8の実施形態に係る壁部52Gは、先端52aには曲面状の傾斜部52nが形成されており、この傾斜部52nが曲面状のテーパ部52pに面一(連続的)に繋がっている。
第6、及び第7の実施形態に係る血液処理フィルター1E,1Fのように、テーパ部57e,58eが複数の勾配面S1〜S5を有することで、例えば、変形し易いフィルター要素2を硬質容器3内に装填する場合であっても、フィルター要素2に過負荷がかからないように、フィルター要素2を徐々に位置決めする方向に誘導できる。なお、複数の勾配面S1〜S5は、屈曲して連続していても良いが、第8の実施形態に係る血液処理フィルター1Gのように、曲面状に滑らかに連続していても良く、この形態によっても同様の効果を奏することができる。なお、曲面を金型で作製するのは技術的に困難を伴う場合もあるので、製造上、屈曲しながら連続している方が有利な場合もある。
次に、血液処理フィルター1、1A〜1Gの製造方法の一例について説明する。なお、以下では、テーパ部52eが一つの勾配面Sのみを有する血液処理フィルター1を例に、その製造方法を説明するが、他の実施形態に係る血液処理フィルター1A〜1Gの場合も、基本的には、同様の工程からなる。最初に、この製造方法にて使用される射出成形機10について説明する。
図10に示されるように、射出成形機10は、固定型11、可動型(金型)12及びスライド移動型(金型)13を備えている。固定型11は、射出成形機10の固定盤(図示せず)に固定されている。この固定型11の上面には、スライド用のシリンダ14を有する架台15が設置されている。そして、油圧あるいは空気圧等によって作動されるシリンダ14はスライド移動型13の上面に連結されている。そして、スライド移動型13は、固定型11の側面に密着した状態を保ちながら上下にスライド移動できるようにされている。
可動型12は、射出成形機10に水平移動自在な可動盤(図示せず)に取付けられている。この可動盤は、射出成形機10の型開閉装置(図示せず)によって、固定型11に対して近接離隔移動できるようにされている。そして、可動型12は、スライド移動型13に密着する型閉め位置と、スライド移動型13から離れた型開き位置との間を移動できるようにされている。
固定型11には、その中心に、固定型11に取付けられた射出機(図示せず)から射出される溶融樹脂16を導くスプルー11aが設けられている。そして、スライド移動型13には、これが下方位置にあるときにスプルー11aと連続する中央のサブスプルー13aと、上方位置に移動したときにスプルー11aと連続する下方のサブスプルー13bとが設けられている。
また、スライド移動型13の型閉め面には、中央のサブスプルー13aの上下の対称位置に、雄型13cと雌型13dとが設けられている。この雄型13cは、入口側容器材4の内面を成形するものであり、雌型13dは、出口側容器材5の外面を成形するものである。一方、可動型12の型閉め面には、スライド移動型13が下方位置にあるときに雄型13c及び雌型13dにそれぞれ対向する雌型12c及び雄型12dが設けられている。この雌型12cは、入口側容器材4の外面を成形するものであり、雄型12dは、出口側容器材5の内面を成形するものである。そして、この可動型12側の雌型12cは、図11及び図12に示されるように、スライド移動型13が上方位置にあるときは、スライド移動型13側の雌型13dに対向するようにされている。
そして、図10に示されるように、スライド移動型13が下方位置にあり、可動型12がこれに型閉めされているときには、そのスライド移動型13と可動型12との間に、各雄型12d、13cと各雌型13d、12cとによってそれぞれ囲まれる一対の空隙17,18が形成されるようになっている。このとき、これら空隙には各雌型13d、12cの端縁部から可動型12に形成されたランナー12e及び一対のゲート12fを通して、スライド移動型13の中央のサブスプルー13aが連通するようにされている。また、図9に示されるように、スライド移動型13が上方位置にあり、可動型12がこれに型合わせされているときには、そのスライド移動型13及び可動型12の各雌型13d、12cが互いに突き合わされ、これら雌型13d、12cの端縁部に、ゲート12fを通して、下方のサブスプルー13b及びランナー12eが連通するようにされている。
射出成形機10を用いて血液処理フィルター1を成形するには、先ず、図10に示されるように、シリンダ14を伸長させてスライド移動型13を下方位置に位置させる。そして、射出成形機10の可動盤を固定盤側に移動させて、スライド移動型13と可動型12とを型閉めする。この状態においては、スライド移動型13の中央のサブスプルー13aは固定型11のスプルー11aに連続し、スライド移動型13と可動型12との間には一対の空隙17,18が形成される。
次いで、固定盤に取付けられた射出機から溶融樹脂16を射出し、固定型11のスプルー11a、スライド移動型13の中央のサブスプルー13a、ランナー12e及びゲート12fを通って両方の空隙17,18に溶融樹脂16を導き、これら空隙17,18内に充填する。こうして、各空隙17,18において、雌雄一対の入口側容器材4及び出口側容器材5が形成される(容器材成形工程)。
雌雄一対の入口側容器材4及び出口側容器材5の冷却固化後、型開閉装置によって、図11に示すように、可動型12とスライド移動型13とを型開きし、離隔させる。すると、各雄型13c,12dがその入口側容器材4及び出口側容器材5から離脱し、入口側容器材4及び出口側容器材5はそれぞれ雌型12c,13s側に残る。この型開き時、金型のスプルー11a、サブスプルー13a及びランナー12e及びゲート12f内等で固化した樹脂部分は、金型から突き出されて落下する。このようにして得られた入口側容器材4及び出口側容器材5は、その矩形状の外形の内縁に沿って、互いに突き合わされて嵌合部7を形成する入口側嵌合部4d及び出口側嵌合部5dが設けられている。
次いで、ポリエステル不織布からなるフィルター要素2を、出口側容器材5の内部に装填する装填工程を実施する。ここで、出口側容器材5には、フィルター要素2の端面2cを取り囲む壁部52が設けられ、壁部52には、フィルター要素2の内部への装着を誘導する突起部52dが設けられている。従って、フィルター要素2は、装填工程の際、突起部52dによって出口側容器材5の内部の所定の位置に案内され、従って、後述の工程においてもフィルター要素2の位置ずれが生じ難い。その結果、フィルター要素2が硬質容器3の内部に適切に内装された血液処理フィルター1を容易に実現できるので、使用時に好ましくない成分の除去が不完全となるリスクを、容易に回避できる。
次に、シリンダ14を収縮させ、スライド移動型13を上方位置に移動させる。すると、スライド移動型13の雌型13dと可動型12の雌型12cとが対向し、これらの雌型13d、12cに残された入口側容器材4及び出口側容器材5が互いに対向する状態となる。このとき、スライド移動型13の下方のサブスプルー13bは固定型11のスプルー11aに連続するように位置する。この状態で可動型12をスライド移動型13側に移動させ、図12に示されるように、これらを突き合わせて型閉めする(接合工程)。つまり、フィルター要素2が装填された状態で、入口側容器材4と出口側容器材5とが突き合せられると共に、フィルター要素2の外縁部2d,2eが圧縮される接合工程が実行される。この際、摺接部7aの溝4b及び溝5bによって、空洞の樹脂流路8が形成される。
なお、本実施形態では、上記の接合工程において、スライド移動型13と可動型12とを型合わせし、フィルター要素2を挟んだ状態で入口側容器材4と出口側容器材5とを嵌合させているので、入口側容器材4及び出口側容器材5の位置合わせが容易となり、より確実な接合が可能になる。
接合工程において形成された樹脂流路8は貫通孔を有しており、貫通孔を介してゲート12fに通じ、ゲート12fは更にランナー12eを介してサブスプルー13bに連通している。この状態で、樹脂流路8に充填される溶融樹脂6(図3参照)として、射出機から溶融樹脂16を射出する。すると、この溶融樹脂16は、固定型11のスプルー11a、サブスプルー13b、ランナー12e、ゲート12f及び貫通孔を通り、溶融樹脂6として樹脂流路8に充填される。これにより、入口側容器材4及び出口側容器材5は、嵌合部7の周縁が溶融樹脂6によって互いに接着される(固着工程)。このように、樹脂流路8を形成後に、溶融樹脂6を充填する手法によれば、樹脂量のコントロールが容易となる。
この溶融樹脂6の冷却固化後、再び型開閉装置によってスライド移動型13と可動型12との型開きをすると、入口側容器材4及び出口側容器材5が嵌合溶着され、完全密封成形品として完成された血液処理フィルター1が得られる。尚、スプルー11a、サブスプルー13b、ランナー12e及びゲート12f内等で固化した樹脂部分は金型から突き出されて落下する。
このようにして完成した血液処理フィルター1を取り外した後、再びシリンダ14を伸長させ、スライド移動型13を下方位置に位置させる。そして、可動型12とスライド移動型13とを型閉めし、次の製品の成形工程へと移行する。そして、上記のような一連の工程を繰り返すことにより、血液処理フィルター1を連続的に成形することができる。しかも、その成形工程は、スライド移動型13の上下スライド、可動型12の前後移動による型閉め及び型開き、溶融樹脂16の射出という単純な工程によって構成されるので、その全工程の自動化も容易に行うことができる。したがって、血液処理フィルター1の量産化が可能となる。
このように、一組の金型である可動型12、及びスライド移動型13と射出成形機10を用いるだけで、入口側容器材4及び出口側容器材5の射出成形からフィルター要素2の内装、雌雄容器材である入口側容器材4及び出口側容器材5の溶着までを単一工程で連続的に行なうことができ、完全密封されたものであっても成形することができる。
以上、各実施形態に係る血液処理フィルター1、1A〜1Gによれば、壁部52,52E〜52Gが設けられた出口側容器材5にフィルター要素2が装填される工程において、突起部52d,53d,54d,55d,56d,57d,58d,59dがフィルター要素2を内部の所定の位置に案内するので、フィルター要素2の位置ずれが生じ難い。その結果、フィルター要素2が硬質容器3の内部に適切に内装された血液処理フィルター1を容易に実現できるので、使用時に好ましくない成分の除去が不完全となるリスクを、容易に回避できる。
なお、上記の各実施形態では、出口側容器材5に壁部52,52E〜52Gを設け、出口側容器材5の内部にフィルター要素2が装填される態様をくわしく説明したが、入口側容器材4に突起部が設けられた壁部を設け、入口側容器材4の内部にフィルター要素2が装填される態様であっても実質的に同様の作用、及び効果を奏する。
また、上述の実施形態に係る製造方法によれば、血液処理フィルター1、1A〜1Gを容易に、且つ効率よく製造できるので、製造上、非常に有利である。また、従来の製造方法では、フィルター要素の位置づれや落下によって設備停止トラブルなどが起こると、生産性の低下を招いていたが、上記の血液処理フィルター1、1A〜1Gの製造方法によれば、これを回避することができる。
以上、実施形態を参照しつつ本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、入口側容器材4及び出口側容器材5を嵌合した後に高周波溶着を用い、硬質容器3とフィルター要素2とを一括で溶着して血液処理フィルター1を得ても良い。また、硬質容器3の形成後、他の方式で樹脂流路8に溶融樹脂6を充填して血液処理フィルター1を得ても良い。この他の方式として、例えば、フィルター要素2を装填するとともに、予め樹脂流路8となる溝4b及び溝5bの少なくともいずれか一方に溶融樹脂6を充填しておいてから型閉めを行なう方式が挙げられる。
また、本実施形態に係る血液処理フィルター1では、嵌合部7を設けた態様にて説明したが、嵌合部7を設けず、例えば、摺接部7aが一平面になるような入口側接合部(図示せず)及び出口側接合部(図示せず)を有するものであってもよい。即ち、入口側容器材4及び出口側容器材5は、雌雄の関係でなくてもよい。