以下、図面を参照して、本発明の無段変速機の実施形態を説明する。本実施形態の無段変速機は、四節リンク機構型の無段変速機であり、変速比h(h=入力軸の回転速度/出力軸の回転速度)を無限大(∞)にして出力軸の回転速度を「0」にできる変速機、いわゆるIVT(Infinity Variable Transmission)の一種である。
[第1実施形態]
図1〜図6を参照して、本実施形態の無段変速機1Aについて説明する。
まず、図1及び図2を参照して、本実施形態の無段変速機1Aの構成について説明する。
本実施形態の無段変速機1Aは、図1に示すように、入力部2と、入力部2の回転中心軸線P1と平行に配置された出力軸3と、入力部2の回転中心軸線P1上に設けられた6個の回転半径調節機構4とを備える。
入力部2は、主駆動源であるエンジンENG(走行用駆動源)からの駆動力が伝達されることで回転中心軸線P1を中心に回転する。なお、主駆動源としては、内燃機関の他、電動機等を用いてもよい。
出力軸3は、図示省略したデファレンシャルギヤを介して車両の駆動輪(図示省略)に回転動力を伝達させる。なお、デファレンシャルギヤの代わりにプロペラシャフトを設けてもよい。
回転半径調節機構4は、入力部2の回転中心軸線P1上に設けられたカムディスク5(カム部)と、カムディスク5に回転自在に外嵌している回転ディスク6(回転部)とを有する。
カムディスク5は、円盤状であり、入力部2の回転中心軸線P1に対して偏心した状態で、入力部2と一体的に回転可能に、2個1組で設けられている。各1組のカムディスク5は、それぞれ位相が60°異なるように設定され、6組のカムディスク5で入力部2の回転中心軸線P1の周方向を一回りするように配置されている。
カムディスク5には、入力部2の回転中心軸線P1方向に貫通し、カムディスク5の中心P2に対して偏心した位置に穿設された貫通孔5aが形成されている。また、カムディスク5には、入力部2の回転中心軸線P1を挟んでカムディスク5の中心P2と反対側となる領域に、カムディスク5の外周面と貫通孔5aの内周面とを連通させる切欠孔5bが形成されている。
2個1組のカムディスク5同士はボルト(図示省略)で固定されている。また、2個1組のカムディスク5の一方は、隣接する回転半径調節機構4が有する他の2個1組のカムディスク5の他方と一体的に形成され、一体型カム部を構成している。また、カムディスク5のうち、最もエンジンENGに近い位置にあるカムディスク5は、入力部2と一体的に形成されている。このようにして、入力部2と複数のカムディスク5とで、入力軸が構成されることとなる。
なお、2個1組のカムディスク5同士は、ボルトではなく、他の手段で固定してもよい。また、一体型カム部は、一体成型で形成してもよく、2つのカムディスク5を溶接して一体化してもよい。また、最もエンジンENGに近い位置にあるカムディスク5と入力部2とを一体的に形成する方法としては、一体成型で形成してもよく、カムディスク5と入力部2とを溶接して一体化してもよい。
回転ディスク6は、図2に示すように、その中心P3から偏心した位置に受入孔6aが設けられた円盤状であり、入力部2の回転中心軸線P1に対して回転可能に設けられている。その受入孔6aには、各1組のカムディスク5が、回転自在に嵌め込まれている。また、回転ディスク6の受入孔6aには、図1に示すように、1組のカムディスク5の間となる位置に、内歯6bが設けられている。
また、回転ディスク6の受入孔6aは、入力部2の回転中心軸線P1からカムディスク5の中心P2(受入孔6aの中心)までの距離Rxとカムディスク5の中心P2から回転ディスク6の中心P3までの距離Ryとが同一となるように、カムディスク5に対して偏心している。
入力部2と複数のカムディスク5によって構成された入力軸は、カムディスク5の貫通孔5aが連なることによって構成される挿通孔50を備えている。これにより、入力軸は、エンジンENGとは反対側の一方端が開口し他方端が閉塞した中空軸形状となっている。
挿通孔50には、回転中心軸線P1と同心に、ピニオンシャフト7が入力軸と相対回転自在となるように配置されている。
ピニオンシャフト7は、回転ディスク6の内歯6bと対応する位置にピニオン7aを有している。また、ピニオンシャフト7は、入力部2の回転中心軸線P1方向において隣接するピニオン7aの間に位置させてピニオン軸受7bが設けられている。このピニオン軸受7bを介して、ピニオンシャフト7は、入力軸を支えている。
ピニオン7aは、ピニオンシャフト7のシャフト部と一体に形成されている。ピニオン7aは、カムディスク5の切欠孔5bを介して、回転ディスク6の内歯6bと噛合する。なお、ピニオン7aは、ピニオンシャフト7と別体に構成して、ピニオンシャフト7にスプライン結合で連結させてもよい。本実施形態においては、単にピニオン7aというときは、ピニオンシャフト7を含むものとして定義する。
また、ピニオンシャフト7は、遊星歯車機構などで構成される差動機構8が接続されている。
差動機構8は、図1に示すように、例えば、遊星歯車機構として構成され、サンギヤ9と、入力部2と複数のカムディスク5によって構成された入力軸に連結された第1リングギヤ10と、ピニオンシャフト7に連結された第2リングギヤ11と、サンギヤ9及び第1リングギヤ10と噛合する大径部12aと、第2リングギヤ11と噛合する小径部12bとからなる段付ピニオン12を自転及び公転自在に軸支するキャリア13とを有している。
サンギヤ9は、ピニオンシャフト7用の副駆動源であるアクチュエータ14(調節用駆動源)からの駆動力が伝達される。したがって、ピニオン7aにも、差動機構8を介して、アクチュエータ14の駆動力が伝達される。
ピニオンシャフト7の回転速度を入力部2の回転速度と同一にした場合、サンギヤ9と第1リングギヤ10とが同一速度で回転することとなる。その結果、サンギヤ9、第1リングギヤ10、第2リングギヤ11及びキャリア13の4個の要素が相対回転不能なロック状態となって、第2リングギヤ11と連結するピニオンシャフト7が入力部2と同一速度で回転する。
ピニオンシャフト7の回転速度を入力部2の回転速度よりも遅くした場合、サンギヤ9の回転数をNs、第1リングギヤ10の回転数をNR1、サンギヤ9と第1リングギヤ10のギヤ比(第1リングギヤ10の歯数/サンギヤ9の歯数)をjとすると、キャリア13の回転数が(j・NR1+Ns)/(j+1)となる。また、サンギヤ9と第2リングギヤ11のギヤ比((第2リングギヤ11の歯数/サンギヤ9の歯数)×(段付ピニオン12の大径部12aの歯数/小径部12bの歯数))をkとすると、第2リングギヤ11の回転数が{j(k+1)NR1+(k−j)Ns}/{k(j+1)}となる。
すなわち、入力部2の回転速度とピニオンシャフト7の回転速度とに差がある場合、ピニオンシャフト7のピニオン7aと噛合する回転ディスク6の内歯6bを介して伝達されたアクチュエータ14からの駆動力により、回転ディスク6は、カムディスク5の中心P2を中心にカムディスク5の周縁を回転する。
ところで、図2に示すように、回転ディスク6は、カムディスク5に対して、入力部2の回転中心軸線P1からカムディスク5の中心P2までの距離Rxと、カムディスク5の中心P2から回転ディスク6の中心P3までの距離Ryとが同一となるように偏心している。
そのため、回転ディスク6の中心P3を入力部2の回転中心軸線P1と同一線上に位置させて、入力部2の回転中心軸線P1と回転ディスク6の中心P3との距離(回転半径調節機構4の回転半径)、すなわち、偏心量R1を「0」にすることもできる。
回転ディスク6の周縁には、一方(入力部2側)の端部に大径の入力側環状部15aを有し、他方(出力軸3)の端部に入力側環状部15aの径よりも小径の出力側環状部15bを有するコネクティングロッド15が、回転自在に外嵌している。
コネクティングロッド15の入力側環状部15aは、軸方向に2個並べた2個1組のボールベアリングからなるコネクティングロッド軸受16を介して、回転ディスク6に回転自在に外嵌している。
出力軸3には、ワンウェイクラッチ17(一方向回転阻止機構)を介して、揺動リンク18が、コネクティングロッド15に対応させて6個軸支されている。
ワンウェイクラッチ17は、揺動リンク18と出力軸3との間に設けられ、揺動リンク18が出力軸3の回転中心軸線P5を中心として出力軸3に対して一方側に相対回転しようとする場合には、出力軸3に対して揺動リンク18を固定し(固定状態)、他方側に相対回転しようとする場合には、出力軸3に対して揺動リンク18を空転させる(空転状態)。
揺動リンク18は、環状に形成されており、その下方には、コネクティングロッド15の出力側環状部15bに連結される揺動端部18aが設けられている。揺動端部18aには、出力側環状部15bを軸方向で挟み込むように突出した一対の突片18bが設けられている。一対の突片18bには、出力側環状部15bの内径に対応する差込孔18cが穿設されている。
差込孔18c及び出力側環状部15bに、揺動軸としての連結ピン19が挿入されることによって、コネクティングロッド15と揺動リンク18とが連結される。
本実施形態の無段変速機1Aでは、上記のような構成を有する回転半径調節機構4と、揺動リンク18と、コネクティングロッド15とによって、てこクランク機構20が構成されている。
てこクランク機構20及びワンウェイクラッチ17は、変速機ケース21に収納されている。この変速機ケース21の下方には、潤滑油が油溜を形成している。
そして、揺動リンク18は、その揺動端部18aがケース21の下方に溜まった潤滑油の油溜に油没するように配置されている。
そのため、てこクランク機構20の駆動時には、揺動端部18aを油溜で潤滑するとともに、揺動リンク18の揺動運動により、油溜の潤滑油を掻き揚げて、無段変速機1Aの他の部品を潤滑させることができるようになっている。
なお、本実施形態においては、6個のてこクランク機構20を備えたものを説明した。
しかし、本発明の無段変速機におけるてこクランク機構の数は、その数に限られず、例えば、5個以下のてこクランク機構を備えていてもよいし、7個以上のてこクランク機構を備えていてもよい。
また、本実施形態においては、入力部2と複数のカムディスク5によって入力軸を構成し、入力軸がカムディスク5の貫通孔5aが連なることによって構成される挿通孔50を備えるものを説明した。
しかし、本発明の無段変速機における入力軸はこのように構成されたものに限らず、例えば、入力部を一端が開口するように挿通孔を有する中空軸状に構成し、円盤状のカムディスクに入力部を挿通できるように貫通孔を本実施形態のものよりも大きく形成して、カムディスクを中空軸状に構成された入力部の外周面にスプライン結合させてもよい。
この場合、中空軸からなる入力部には、カムディスクの切欠孔に対応させて切欠孔が設けられる。そして、入力部内に挿入されるピニオンは、入力部の切欠孔及びカムディスクの切欠孔を介して、回転ディスクの内歯と噛合する。
また、本実施形態においては、一方向回転阻止機構としてワンウェイクラッチ17を用いたものを説明した。
しかし、本発明の無段変速機における一方向回転阻止機構はワンウェイクラッチに限らず、例えば、揺動リンクから出力軸にトルクを伝達可能な揺動リンクの出力軸に対する回転方向を切換自在に構成されるツーウェイクラッチを用いてもよい。
次に、図1〜図4を参照して、本実施形態の無段変速機のてこクランク機構20について説明する。
本実施形態の無段変速機1Aは、図1に示すように、合計6個のてこクランク機構20(四節リンク機構)を備えている。てこクランク機構20は、図2に示すように、コネクティングロッド15と、揺動リンク18と、回転ディスク6を有しその回転半径を調節自在な回転半径調節機構4とで構成されている。このてこクランク機構20によって、入力軸の回転運動が、揺動リンク18の揺動運動に変換される。
このてこクランク機構20では、回転半径調節機構4の回転ディスク6の中心P3(入力側支点)の回転半径(偏心量R1)が、「0」でない場合、入力部2とピニオンシャフト7とを同一速度で回転させると、各コネクティングロッド15が、位相を変えながら、入力部2と出力軸3との間で、揺動端部18aを、出力軸3側に押したり、入力部2側に引いたりを交互に繰り返して、揺動リンク18を揺動させる。
そして、揺動リンク18と出力軸3との間にはワンウェイクラッチ17が設けられているので、揺動リンク18がコネクティングロッド15によって押し引きされて揺動すると、揺動リンク18が押し方向側又は引張り方向側のいずれか一方に回転するときには、揺動リンク18が出力軸3に対して固定されて出力軸3が回転し、揺動リンク18が他方に回転するときには、揺動リンク18が出力軸3に対して空回りする。
本実施形態の無段変速機1Aでは、6個のてこクランク機構20の回転半径調節機構4が、それぞれ60度ずつ位相を変えて配置されているので、出力軸3は、6個のてこクランク機構20で順に回転させられる。
図3は、回転半径調節機構4の回転ディスク6の中心P3(入力側支点)の回転半径(偏心量R1)を変化させた状態のピニオンシャフト7と回転ディスク6との位置関係を示す図である。
図3Aは、偏心量R1を「最大」とした状態を示し、入力部2の回転中心軸線P1とカムディスク5の中心P2と回転ディスク6の中心P3とが一直線に並ぶように、ピニオンシャフト7と回転ディスク6とが位置する。この場合の変速比hは最小となる。
図3Bは、偏心量R1を図3Aよりも小さい「中」とした状態を示し、図3Cは、偏心量R1を図3Bよりも更に小さい「小」とした状態を示している。変速比hは、図3Bでは図3Aの変速比hよりも大きい「中」となり、図3Cでは図3Bの変速比hよりも大きい「大」となる。
図3Dは、偏心量R1を「0」とした状態を示し、入力部2の回転中心軸線P1と、回転ディスク6の中心P3とが同心に位置する。この場合の変速比hは無限大(∞)となる。
また、図4は、回転半径調節機構4の回転ディスク6の中心P3(入力側支点)の回転半径(偏心量R1)と、揺動リンク18の揺動運動の揺動範囲θ2との関係を示す図である。
図4Aは、偏心量R1が図3Aの「最大」である場合(変速比hが最小である場合)、図4Bは、偏心量R1が図3Bの「中」である場合(変速比hが中である場合)、図4Cは、偏心量R1が図3Cの「小」である場合(変速比hが大である場合)、図4Dは、偏心量R1が図3Dの「0」である場合(変速比hが無限大(∞)である場合)を示す。
ここで、R2は、揺動リンク18の長さである。より具体的には、R2は、出力軸3の回転中心軸線P5からコネクティングロッド15と揺動端部18aの連結点、すなわち、連結ピン19の中心P4までの距離である。また、θ1は、回転半径調節機構4の回転ディスク6の位相である。
この図4から明らかなように、偏心量R1が小さくなるにつれ、揺動リンク18の揺動範囲θ2が狭くなり、偏心量R1が「0」になった場合には、揺動リンク18は揺動しなくなる。
次に、図1を参照して、本実施形態の無段変速機1Aの変速機ケース21について詳細に説明する。
変速機ケース21は、アルミニウム製である。その変速機ケース21は、図1に示すように、エンジンENGに固定されている一端壁部21aと、一端壁部21aに対向して配置されている他端壁部21bと、てこクランク機構20及びワンウェイクラッチ17を間隔を存して覆い、一端壁部21aの外縁と他端壁部21bの外縁とを連結する周壁部21cとを備えている。
一端壁部21aには、入力軸を軸支するための開口部21dと、出力軸3を軸支するための開口部21eが形成されている。
他端壁部21bには、入力軸を軸支するための開口部21fと、出力軸3を軸支するための開口部21gが形成されている。
これらの開口部21d,21e,21f,21gには、それぞれベアリング22,23,24,25(軸受)が、嵌め込まれている。入力軸及び出力軸3は、これらのベアリング22,23,24,25を介して、変速機ケース21に、回転自在に支持されている。
次に、図5及び図6を参照して、変速機ケース21に取り付けられたベアリング22,23,24,25について詳細に説明する。
ベアリング22,23,24,25は、図5及び図6に示すように、外輪22a,23a,24a,25aと、内輪22b,23b,24b,25bと、その外輪22a,23a,24a,25aと内輪22b,23b,24b,25bとの間に配置された複数のボール22c,23c,24c,25c(転動体)とで構成されたボールベアリング(アンギュラ玉軸受)である。
また、ベアリング22,23,24,25は、変速機ケース21の材料であるアルミニウムよりも熱膨張率の小さい材料である鉄鋼材料を用いて形成されている。
さらに、ベアリング22,23,24,25のうち、ベアリング22,24は、その内輪22b,24bの内側に入力軸が圧入されている。また、ベアリング23,25は、その内輪23b,25bの内側に出力軸3が圧入されている。
そして、ベアリング22,23,24,25は、無段変速機1AがエンジンENGからの熱等によって高温状態になった場合でも、変速機ケース21との間に熱膨張率の違いに起因する隙間が生じないように、すなわち、温度状態に関わらず締まり嵌めとなるように、その外輪22a,23a,24a,25aが、変速機ケース21の開口部21d,21e,21f,21gに圧入されている。
そのため、本実施形態の無段変速機1Aでは、変速機ケース21の開口部21d,21e,21f,21gとベアリング22,23,24,25との接触面において、フレッティング摩耗やクリープ摩耗が生じない。その結果、本実施形態の無段変速機1Aでは、ベアリング22,23,24,25がガタつくことがなく、振動や騒音が生じてしまうことがない。
ところで、温度状態に関わらず締まり嵌めとなるように変速機ケース21にベアリング22,23,24,25を圧入した場合、高温状態になって変速機ケース21が膨張した際に、ベアリング22,23,24,25の外輪22a,23a,24a,25aは、その復元力により、変速機ケース21の膨張方向(図5,図6における矢印で示す方向)に拡径することになる。
このとき、外輪22a,23a,24a,25aの内面が、変速機ケース21の膨張に追従するように、軸受中心軸線方向及び軸受中心軸線方向に対して垂直な方向に移動することになる。
その結果、ベアリング22,23,24,25として接触角φが0度である深溝玉軸受を用いた場合、ベアリングの内部クリアランス、すなわち、外輪と内輪との間の隙間が大きく変化し、振動や騒音が生じるおそれがある。なお、接触角φとは、ベアリングの外輪の内面又は内輪の外面からボールへ伝わる力の作用線とそのベアリングの軸受中心軸線に対して垂直な線とがなす角度である。
そこで、本実施形態の無段変速機1Aでは、ベアリング22,23,24,25の外輪22a,23a,24a,25aの内面又は内輪22b,23b,24b,25bの外面のボール22c,23c,24c,25cと接触する部分を、外輪22a,23a,24a,25aの内面又は内輪22b,23b,24b,25bの外面からボール22c,23c,24c,25cへ伝わる力の作用線と軸受中心軸線(すなわち、入力部2の回転中心軸線P1又は出力軸3の回転中心軸線P5)とが交わる点が、ベアリング22,23,24,25の軸受中心軸線方向におけるベアリング22,23,24,25の中央よりも変速機ケース21の外面側になるように、そのベアリング22,23,24,25の軸受中心軸線に対して傾斜させている。すなわち、ベアリング22,23,24,25の接触角φ1,φ2,φ3,φ4を、0度を超える値としている。
換言すれば、本実施形態の無段変速機1Aのベアリング22,23,24,25は、接触角φが0度である深溝玉軸受よりも、ボール22c,23c,24c,25cへ伝わる力の作用線が、そのベアリング22,23,24,25が取り付けられた領域における変速機ケース21の膨張方向(軸受の中心軸線に対して傾斜し、且つ、その中心軸線と変速機ケース21の内面側で交わる方向)に対して垂直に近い角度で交わることになる。
さらに換言すれば、本実施形態の無段変速機1Aのベアリング22,23,24,25は、深溝玉軸受よりも、外輪22a,23a,24a,25aの内面又は内輪22b,23b,24b,25bの外面のボール22c,23c,24c,25cと接触する部分の形状が、そのベアリング22,23,24,25が取り付けられた領域における変速機ケース21の膨張方向に対して平行に近くなっている。
そのため、高温状態になって変速機ケース21が膨張し、変速機ケース21からベアリング22,23,24,25への圧力が低下して、外輪22a,23a,24a,25aが復元力により拡径しながら内輪22b,23b,24b,25bに対して移動したとしても、その移動方向は、外輪22a,23a,24a,25aの内面又は内輪22b,23b,24b,25bの外面の傾斜と平行に近い方向であるので、本実施形態の無段変速機1Aのベアリング22,23,24,25は、深溝玉軸受よりも、内部クリアランスの変化が小さい。
また、本実施形態の無段変速機1Aにおいては、走行用駆動源が、エンジンENGであり、一端壁部21aが、エンジンENGに固定されているので、入力軸の一端側を軸支するベアリング22は、その接触角φ1が、入力軸の他端側を軸支するベアリング24の接触角φ3よりも大きくなるように構成されている。
走行用駆動源がエンジンENGであり、一端壁部21aがそのエンジンに固定されているので、変速機ケース21は、エンジンENGの熱により、エンジンENGに固定されている一端壁部21a側の方が、他端壁部21b側よりも大きく膨張する。
そこで、本実施形態の無段変速機1Aにおいては、その大きく膨張する一端壁部21a側に圧入されているベアリング22の接触角φ1を、一端壁部とは反対側の他端壁部21bに圧入されているベアリング24の接触角φ3よりも大きくし、内部クリアランスの変化をさらに小さくしている。
具体的には、例えば、ベアリング22の外径D1を、ベアリング24の外径D3よりも大きく形成するとともに、ベアリング22の接触角φ1を、エンジンENGから変速機ケース21へ伝わる熱を考慮して、以下の条件式(1)を若干超える値にする。
φ1=arctan(D1/L) ・・・(1)
ただし、φ1はベアリング22の接触角、D1はベアリング22と変速機ケース21の接触面の径、Lは一端壁部21aから他端壁部21bまでの距離である。
また、本実施形態の無段変速機1Aにおいては、入力軸の一端側を支持するベアリング22以外のベアリング23,24,25の接触角φ2,φ3,φ4が、以下の条件式(2),(3),(4)を満足することように構成されている。
φ2=arctan(D2/L) ・・・(2)
φ3=arctan(D3/L) ・・・(3)
φ4=arctan(D4/L) ・・・(4)
ただし、φ2,φ3,φ4はベアリング23,24,25の接触角、D2,D3,D4はベアリング23,24,25と変速機ケース21の接触面の径、Lは一端壁部21aから他端壁部21bまでの距離である。
高温状態において、変速機ケース21の、ベアリング22,23,24,25の中心軸方向の膨張量は、一端壁部21aから他端壁部21bまでの距離Lに応じて変化する。また、ベアリング22,23,24,25の径方向の膨張量は、ベアリング22,23,24,25の変速機ケースの接触面の径D1,D2,D3,D4、すなわち、ベアリング22,23,24,25が圧入される開口部21d,21e,21f,21gの内径に応じて変化する。
そこで、本実施形態の無段変速機1Aにおいては、エンジンENGの熱による影響が特に大きい位置に取り付けられたベアリング22を除いたベアリング23,24,25については、一端壁部21aから他端壁部21bまでの距離Lと各々の径D2,D3,D4とに基づいて、上記の条件式を満足するように、接触角φ2,φ3,φ4を規定して、内部クリアランスの変化をさらに小さくしている。
[第2実施形態]
図7〜図9を参照して、本実施形態の無段変速機1Bについて説明する。ただし、本実施形態の無段変速機1Bの構成のうち、第1実施形態の無段変速機1Aと同様の構成については同じ符号を付すとともに、それらについての説明は省略する。
まず、図7〜図9を参照して、本実施形態の無段変速機の変速機ケース26について詳細に説明する。
変速機ケース26は、アルミニウム製である。その変速機ケース26は、図7に示すように、エンジンENGに固定されている一端壁部26aと、一端壁部26aに対向して配置されている他端壁部26bと、てこクランク機構20及びワンウェイクラッチ17を間隔を存して覆い、一端壁部26aの外縁と他端壁部26bの外縁とを連結する周壁部26cとを備えている。
一端壁部26aには、入力軸を挿通するための開口部26d(図8参照)と、出力軸3を挿通するための開口部26e(図9参照)が形成されている。また、開口部26d,26eの変速機ケース26の内側の周縁部には、入力部2の回転中心軸線P1方向又は出力軸3の回転中心軸線P5方向に延びる鍔部26h,26i(第2の鍔部)が形成されている。
他端壁部26bには、入力軸を軸支するための開口部26f(図8参照)と、出力軸3を軸支するための開口部26g(図9参照)が形成されている。また、開口部26f,26gの変速機ケース26の内側の周縁部には、入力部2の回転中心軸線P1方向又は出力軸3の回転中心軸線P5方向に延びる鍔部26j,26k(第2の鍔部)が形成されている。
ところで、本実施形態の無段変速機1Bは、上記のように、入力部2及び複数のカムディスク5で構成された入力軸と、出力軸3とを備えている。
入力部2は、図8に示すように、変速機ケース26の内側に位置する部分に、入力部2の径方向に張出した円板状の張出部5cが形成されている。その張出部5cの周端部からは、鍔部5d(第1の鍔部)が、入力部2の回転中心軸線P1方向に延びている。
その鍔部5d(第1の鍔部)は、変速機ケース26の鍔部26h(第2の鍔部)と対向しており、それらの間には、入力軸の一端側を支持するベアリング27(軸受)が配置されている。
複数のカムディスク5のうち、変速機ケース26の他端壁部26bに最も近い位置にあるカムディスク5には、図8に示すように、変速機ケース26の内側となる部分に、入力部2の径方向に張出した円板状の張出部5eが形成されている。その張出部5eの周端部からは、鍔部5f(第1の鍔部)が、入力部2の回転中心軸線P1方向に延びている。
その鍔部5f(第1の鍔部)は、変速機ケース26の鍔部26j(第2の鍔部)と対向している。それらの間には、入力軸の他端側を支持するベアリング29(軸受)が配置されている。
また、本実施形態の無段変速機1Bの出力軸3は、図9に示すように、変速機ケース26の一端壁部26aとその一端壁部26aに最も近い位置にあるてこクランク機構20との間に、出力軸3の径方向に張出した円板状の張出部3aが形成されている。その張出部3aの周端部からは、鍔部3b(第1の鍔部)が、出力軸3の回転中心軸線P5方向に延びている。
その鍔部3b(第1の鍔部)は、変速機ケース26の鍔部26i(第2の鍔部)と対向している。それらの間には、出力軸3の一端側を支持するベアリング28(軸受)が配置されている。
また、出力軸3は、図9に示すように、変速機ケース26の他端壁部26bとその他端壁部26bに最も近い位置にあるてこクランク機構20との間に、出力軸3の径方向に張出した円板状の張出部3cが形成されている。その張出部3cの周端部からは、鍔部3d(第1の鍔部)が、出力軸3の回転中心軸線P5方向に延びている。
その鍔部3d(第1の鍔部)は、変速機ケース26の鍔部26k(第2の鍔部)と対向している。それらの間には、出力軸3の他端側を支持するベアリング30(軸受)が配置されている。
次に、図8及び図9を参照して、変速機ケース26に取り付けられたベアリング27,28,29,30について詳細に説明する。
ベアリング27,28,29,30は、図8及び図9に示すように、外輪27a,28a,29a,30aと、内輪27b,28b,29b,30bと、その外輪27a,28a,29a,30aと内輪27b,28b,29b,30bとの間に配置された複数のボール27c,28c,29c,30c(転動体)とで構成されたボールベアリング(アンギュラ玉軸受)である。
また、ベアリング27,28,29,30は、変速機ケース26の材料であるアルミニウムよりも熱膨張率の小さい材料である鉄鋼材料を用いて形成されている。
さらに、ベアリング27,28,29,30のうち、ベアリング27,29は、その外輪27a,29aが入力軸の鍔部5d,5f(第1の鍔部)に圧入されており、その軸受中心軸線と入力部2の回転中心軸線P1とが一致している。また、ベアリング28,30は、その外輪28a,30aが出力軸3の鍔部3b,3d(第1の鍔部)に圧入されており、その軸受中心軸線と出力軸3の回転中心軸線P5とが一致している。
そして、ベアリング27,28,29,30は、無段変速機1BがエンジンENGからの熱等によって高温状態になった場合でも、高温状態に至らない程度に温められた状態になった場合でも、変速機ケース26との間に熱膨張率の違いに起因する隙間が生じないように、すなわち、温度状態に関わらず締まり嵌めとなるように、その内輪27b,28b,29b,30bに、変速機ケース26の鍔部26h,26i,26j,26k(第2の鍔部)が圧入されている。
そのため、本実施形態の無段変速機1Bでは、変速機ケース26の鍔部26h,26i,26j,26k(第2の鍔部)とベアリング27,28,29,30との接触面において、フレッティング摩耗やクリープ摩耗が生じない。その結果、本実施形態の無段変速機1Bでは、ベアリング27,28,29,30がガタつくことがなく、振動や騒音が生じてしまうことがない。
ところで、高温状態でも高温状態に至らない程度に温められた状態でも、締まり嵌めとなるように変速機ケース26がベアリング27,28,29,30に圧入された場合、高温状態になって変速機ケース26が膨張した際に、ベアリング27,28,29,30の内輪27b,28b,29b,30bは、変速機ケース26に押し広げられて、変速機ケース26の膨張方向(図8,図9における矢印で示す方向)に拡径することになる。
このとき、内輪27b,28b,29b,30bの外面が、変速機ケース26の膨張に追従するように、軸受中心軸線方向及び軸受中心軸線方向に対して垂直な方向に移動することになる。
その結果、ベアリング27,28,29,30として接触角φが0度である深溝玉軸受を用いた場合、ベアリングの内部クリアランス、すなわち、外輪と内輪との間の隙間が大きく変化し、軸受のボール27c,28c,29c,30cの動作が阻害されるおそれがある。なお、接触角φとは、ベアリングの外輪の内面又は内輪の外面からボールへ伝わる力の作用線とそのベアリングの軸受中心軸線に対して垂直な線とがなす角度である。
そこで、本実施形態の無段変速機1Bでは、ベアリング27,28,29,30の外輪27a,28a,29a,30aの内面又は内輪27b,28b,29b,30bの外面のボール27c,28c,29c,30cと接触する部分を、外輪27a,28a,29a,30aの内面又は内輪27b,28b,29b,30bの外面からボール27c,28c,29c,30cへ伝わる力の作用線と軸受中心軸線(すなわち、入力部2の回転中心軸線P1又は出力軸3の回転中心軸線P5)とが交わる点が、ベアリング27,28,29,30の軸受中心軸線方向におけるベアリング27,28,29,30の中央よりも変速機ケース26の外面側になるように、そのベアリング27,28,29,30の軸受中心軸線に対して傾斜させている。すなわち、ベアリング27,28,29,30の接触角φ1,φ2,φ3,φ4を、0度を超える値としている。
換言すれば、本実施形態の無段変速機1Bのベアリング27,28,29,30は、接触角φが0度である深溝玉軸受よりも、ボール27c,28c,29c,30cへ伝わる力の作用線が、そのベアリング27,28,29,30が取り付けられた領域における変速機ケース26の膨張方向(軸受の中心軸線に対して傾斜し、且つ、その中心軸線と変速機ケースの内面側で交わる方向)に対して垂直に近い角度で交わることになる。
さらに換言すれば、本実施形態の無段変速機1Bのベアリング27,28,29,30は、深溝玉軸受よりも、外輪27a,28a,29a,30aの内面又は内輪27b,28b,29b,30bの外面のボール27c,28c,29c,30cと接触する部分の形状が、そのベアリング27,28,29,30が取り付けられた領域における変速機ケース26の膨張方向に対して平行に近くなっている。
そのため、高温状態になって変速機ケース26が膨張し、変速機ケース26からベアリング27,28,29,30への圧力が増加して、外輪27a,28a,29a,30aに対して内輪27b,28b,29b,30bが拡径しながら移動したとしても、その移動方向は、外輪27a,28a,29a,30aの内面又は内輪27b,28b,29b,30bの外面の傾斜と平行に近い方向であるので、本実施形態の無段変速機1Bのベアリング27,28,29,30は、深溝玉軸受よりも、内部クリアランスの変化が小さく、軸受のボール27c,28c,29c,30cの動作が阻害されにくい。
また、本実施形態の無段変速機1Bにおいては、走行用駆動源が、エンジンENGであり、一端壁部26aが、エンジンENGに固定されているので、入力軸の一端側を軸支するベアリング27は、その接触角φ1が、入力軸の他端側を軸支するベアリング29の接触角φ3よりも大きくなるように構成されている。
走行用駆動源がエンジンENGであり、一端壁部26aがそのエンジンに固定されているので、変速機ケース26は、エンジンENGの熱により、エンジンENGに固定されている一端壁部26a側の方が、他端壁部26b側よりも大きく膨張する。
そこで、本実施形態の無段変速機1Bにおいては、その大きく膨張する一端壁部26a側に圧入されているベアリング27の接触角φ1を、一端壁部とは反対側の他端壁部26bに圧入されているベアリング29の接触角φ3よりも大きくし、内部クリアランスの変化をさらに小さくしている。
具体的には、例えば、ベアリング27の外径D1を、ベアリング29の外径D3よりも大きく形成するとともに、ベアリング27の接触角φ1を、エンジンENGから変速機ケース26へ伝わる熱を考慮して、以下の条件式(1)を若干超える値にする。
φ1=arctan(D1/L) ・・・(1)
ただし、φ1はベアリング27の接触角、D1はベアリング27と変速機ケース26の接触面の径、Lは一端壁部26aから他端壁部26bまでの距離である。
また、本実施形態の無段変速機1Bにおいては、入力軸の一端側を支持するベアリング27以外のベアリング28,29,30の接触角φ2,φ3,φ4が、以下の条件式(2),(3),(4)を満足することように構成されている。
φ2=arctan(D2/L) ・・・(2)
φ3=arctan(D3/L) ・・・(3)
φ4=arctan(D4/L) ・・・(4)
ただし、φ2,φ3,φ4はベアリング28,29,30の接触角、D2,D3,D4はベアリング28,29,30と変速機ケース26の接触面の径、Lは一端壁部26aから他端壁部26bまでの距離である。
高温状態において、変速機ケース26の、ベアリング27,28,29,30の中心軸方向の膨張量は、一端壁部26aから他端壁部26bまでの距離Lに応じて変化する。また、ベアリング27,28,29,30の径方向の膨張量は、ベアリング27,28,29,30の変速機ケースの接触面の径D1,D2,D3,D4、すなわち、ベアリング27,28,29,30が圧入される鍔部26h,26i,26j,26kの外径に応じて変化する。
そこで、本実施形態の無段変速機1Bにおいては、エンジンENGの熱による影響が特に大きい位置に取り付けられたベアリング27を除いたベアリング28,29,30については、一端壁部26aから他端壁部26bまでの距離Lと各々の径D2,D3,D4とに基づいて、上記の条件式を満足するように、接触角φ2,φ3,φ4を規定して、内部クリアランスの変化をさらに小さくしている。
また、本実施形態の無段変速機1Bは、第1実施形態の無段変速機1Aが備えていない張出部3a,3c,5c,5eや鍔部3b,3d,5d,5f及び鍔部26h,26i,26j,26kが形成されている。
そのため、本実施形態の無段変速機1Bよりも、第1実施形態の無段変速機1Aは、変速機ケース21に対するベアリング22,23,24,25の取り付けが容易であり、生産性が高い。
しかし、本実施形態の無段変速機1Bでは、高温状態において、ベアリング27,28,29,30の内輪27b,28b,29b,30bに対し、ベアリング27,28,29,30よりも熱膨張率が高い材料で形成された変速機ケース26の一部である鍔部26h,26i,26j,26kから、押し広げるような力が加えられる。
そのため、本実施形態の無段変速機1Bは、第1実施形態の無段変速機1Aに比べ、ベアリング27,28,29,30と変速機ケース26との間に隙間が生じにくく、さらに振動や騒音が生じにくい。
以上、図示の実施形態について説明したが、本発明はこのような形態に限られるものではない。
例えば、上記実施形態においては、変速機ケース21,26はアルミニウムを用いて形成され、ベアリング22〜25,27〜30は鋼材を用いて形成されている。しかし、他の材料を用いて形成してもよい。
また、上記第2実施形態においては、ベアリング27,28,29,30を保持するための変速機ケース26の鍔部26h,26i,26j,26k(第2の鍔部)と入力軸の鍔部5d,5f(第1の鍔部)及び出力軸3の鍔部3b,3d(第1の鍔部)は、変速機ケース26の内側に形成されている。しかし、これらの鍔部は、変速機ケースの外側に形成してもよい。
また、上記実施形態においては、軸受としてボールベアリング(アンギュラ玉軸受)を用いている。しかし、接触角を任意の値に設計することができる軸受であれば、他の種類の軸受、例えば、円すいころ軸受等をボールベアリングの代わりに用いてもよい。
例えば、上記実施形態においては、接触角φ1,φ2,φ3,φ4を、エンジンENGに近い位置にあるφ1を除いて、距離L及び径D2,D3,D4を用いた条件式(2),(3),(4)を用いて規定している。しかし、その条件式(1),(2),(3),(4)は、好ましい接触角を規定したものであり、本発明における接触角φは、0度を超え、90度未満までであれば、必ずしもこの条件式(1),(2),(3),(4)を満足しなくてもよい。また、逆に、全ての接触角を条件式(1),(2),(3),(4)に基づいて規定してもよい。