JP6099043B2 - 造血又は腸管放射線障害防護剤 - Google Patents

造血又は腸管放射線障害防護剤 Download PDF

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Description

本発明は、造血器官や腸管における放射線障害の防護に有用な医薬に関する。
原子力発電所の作業者、非破壊検査員、放射性検査薬を扱う臨床検査技師並びにレントゲン検査・癌等の放射線療法に従事する医師や診療放射線技師は、わずかな量でも業務中、常に放射線を被ばくしている可能性がある。また、原子力発電所の事故が起きると、作業者の他、周辺地域の住民も一度に大量の放射線を被ばくする可能性がある。放射線を被ばくすると、生体内に酸素ラジカルが発生し、発生した酸素ラジカルによって、細胞死、突然変異等の障害が引き起こされる。そして、放射線の吸収線量に応じて造血・免疫系、消化器系、呼吸器系、中枢神経系等に障害を生じ、これを原因として被ばく者は死亡する場合がある。
また、放射線療法を受ける癌患者等は、患部に大量の放射線を受けるが、この時、患部周辺の正常組織にも放射線を受けるため、放射線によって生じた酸素ラジカルにより造血・免疫系、消化器系等に障害を生じる場合がある。
本発明者は、公知の一酸化窒素発生剤であり、血圧降下剤として上市されているニトロプルシドが、放射線被ばくや放射線療法に伴う障害を予防または治療し、生存率を上昇させる効果を有することを見出している(特許文献1)。しかしながら、その作用機序は未だ明らかとはなっていない。
特開2011−207841号公報
上記の事情に鑑み、本発明は、ニトロプルシドが放射線障害を防護する作用機序を解明し、その作用機序に基づき、ニトロプルシドの好適な投与態様や、新たな用途を提供することである。
本発明者は、鋭意検討した結果、造血幹細胞及び前駆細胞の数の回復、並びに小腸幹細胞の放射線誘発アポトーシスの抑制が、ニトロプルシドによる放射線障害防護の作用機序であることを見出し、更に検討を加え、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下に関する。
[1]ニトロプルシドまたはその薬理学的に許容される塩を含有する、放射線誘発小腸幹細胞アポトーシス抑制剤。
[2]ニトロプルシドまたはその薬理学的に許容される塩を含有する、腸管放射線障害防護剤。
[3]ニトロプルシドまたはその薬理学的に許容される塩を含有する、放射線により減少した造血幹細胞数及び/又は造血前駆細胞数の回復を促進するための剤。
本発明によれば、効果的に、放射線により減少した造血幹細胞数及び前駆細胞数の回復を図ることができる。また、本発明によれば、小腸幹細胞の放射線誘発アポトーシスを効果的に抑制することができる。従って、本発明の剤は、造血機能や免疫機能の障害を伴う放射線障害、小腸機能の障害を伴う放射線障害の予防や治療に有用である。
ニトロプルシドによる、X線被ばくにより減少した白血球数及び血小板数の回復。 ニトロプルシドによる、X線被ばくにより減少した骨髄幹細胞数及び前駆細胞数の回復。 ニトロプルシドによる、X線被ばくにより誘導された小腸腺窩におけるアポトーシスの抑制。
本発明は、ニトロプルシド、またはその薬理学的に許容される塩を含有する剤を提供するものである。
本発明におけるニトロプルシドとは、式(Fe(CN)NO)2−で表される化合物である。
ニトロプルシドの薬理学的に許容される塩としては、例えば、無機塩基との塩、有機塩基との塩などが挙げられる。
無機塩基との塩の好適な例としては、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩;並びにアルミニウム塩、アンモニウム塩などが挙げられる。
有機塩基との塩の好適な例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N−ジベンジルエチレンジアミンなどとの塩が挙げられる。
ニトロプルシドの薬理学的に許容される塩の好適な例としては、ニトロプルシドのナトリウム塩(NaFe(CN)NO)やカリウム塩(KFe(CN)NO)が挙げられる。
ニトロプルシドまたはその薬理学的に許容される塩は、結晶であってもまた非結晶であってもよく、水和物及び/又は溶媒和物の形で存在することもあるので、これらの水和物及び/又は溶媒和物も「ニトロプルシドまたはその薬理学的に許容される塩」に包含される。化学量論量の水和物および凍結乾燥のような方法によって得られる種々の量の水を含む化合物も本発明の範囲内にある。ニトロプルシドのナトリウム塩やカリウム塩
は、通常2水和物の形で利用される。
一態様において、本発明の剤は、放射線により誘発された小腸幹細胞のアポトーシスを抑制するので、腸管放射線障害の防護剤として有用である。
本発明において、放射線には、放射性物質から放出されるα線、β線、γ線や人工的に作り出したX線、陽子線、炭素線、中性線、電子線が包含される。放射線の被ばく原因としては、原発事故や核爆発による全身性の放射線被ばく、癌治療等の医療目的での放射線照射または放射線被ばく事故等による局所性の放射線被ばく等が挙げられ、特に限定されない。
一態様において、腸管における癌治療の目的で、小腸幹細胞を含む腸管へ放射線を局所的に照射する際に、放射線誘発小腸幹細胞アポトーシス抑制や、腸管放射線障害防護のため、本発明の剤が使用される。
小腸幹細胞は、クリプト細胞とも呼ばれ、小腸腺窩の基部に局在し、新たな小腸上皮細胞を供給する細胞をいう。
腸管放射線障害とは、放射線による粘膜上皮細胞の再生障害をいい、消化管の絨毛の退縮、粘膜の剥離、バリア機能の低下、腸管蠕動障害、吸収障害、下痢、細菌移行に伴う感染症や敗血症、消化管出血等の症状を呈する。腸管の吸収上皮の細胞は常にリニューアルされており、腸絨毛の基部(腺窩)にある幹細胞が分裂し、腸絨毛の先端へ向かいながら分化して吸収上皮を形成している。従って、放射線により幹細胞が死滅すると吸収上皮を形成するための細胞の供給が絶たれる為に吸収上皮の脱落が起こる。腸管の幹細胞の死滅により生じる吸収上皮の脱落は、一般的に、5Gy以上(X線の場合は5Sv以上)の被ばくで生じ、5〜15Gy(X線の場合は5〜15Sv)の被ばく時には腸管の症状が主となる。従って、一態様において、5Gy以上(X線の場合は5Sv以上)の被ばく(好ましくは、5〜15Gy(X線の場合は5〜15Sv)の被ばく)時における、放射線誘発小腸幹細胞アポトーシス抑制や、腸管放射線障害防護のため、本発明の剤が使用される。
一態様において、本発明の剤は、放射線被ばくにより減少した造血幹細胞数及び/又は造血前駆細胞数の回復を促進するので、造血・免疫系の放射線障害の防護剤として有用である。本発明の剤は、好適には、放射線被ばくにより減少した骨髄造血幹細胞数及び/又は骨髄造血前駆細胞数の回復を促進する。
造血幹細胞とは、全ての血球系細胞に分化する多分化能力を有するとともに自己を複製する自己複製能力を有する細胞をいう。造血前駆細胞とは、1つ又は限定された複数(2〜3)の系統の血液細胞への分化能を有する(単能性又は寡能性(非全能性))細胞をいう。
放射線被ばくにより減少した造血幹細胞数及び/又は造血前駆細胞数の回復は、評価対象の個体の骨髄や末梢血から、造血幹細胞や造血前駆細胞が含まれる細胞画分を単離し、造血コロニー形成細胞アッセイを行い、形成された造血コロニーの数を計測することにより評価することができる。
骨髄の造血幹細胞数及び造血前駆細胞の死滅による骨髄死は、一般的には1.5Gy(X線の場合は1.5Sv)の被ばくで生じる。従って、一態様において、1.5Gy以上(X線の場合は1.5Sv以上)の被ばく(好ましくは、1.5〜15Gy(X線の場合は1.5〜15Sv)の被ばく)により減少した造血幹細胞数及び/又は造血前駆細胞数の回復を促進するため、本発明の剤が適用される。
一態様において、1.5Gy以上、5Gy未満(X線の場合は1.5Sv以上、5Sv未満)の被ばくにより減少した造血幹細胞数及び/又は造血前駆細胞数の回復を促進するため、本発明の剤が適用される。本態様においては、造血幹細胞数及び/又は造血前駆細胞数の減少による造血・免疫系の放射線障害が主症状の患者に対して、本発明の剤が投与され、放射線被ばくにより減少した造血幹細胞数及び/又は造血前駆細胞数の回復を促進する。
一態様において、5〜15Gy(X線の場合は5〜15Sv)の被ばくにより、造血・免疫系の放射線障害と腸管放射線障害を併発した患者に対して、本発明の剤が使用される。当該患者に本発明の剤を投与することにより、被ばくにより減少した造血幹細胞数及び/又は造血前駆細胞数の回復を促進し、且つ放射線誘発小腸幹細胞アポトーシスを抑制することにより、造血・免疫系の放射線障害及び腸管放射線障害の両方から患者を防護し得る。
本発明の剤は、ニトロプルシド、またはその薬理学的に許容される塩を活性成分として含有し、任意の他の治療のための有効成分との混合物として含有することもできる。また、本発明の剤は、活性成分を薬理学的に許容される一種もしくはそれ以上の担体と一緒に混合し、製剤学の技術分野においてよく知られている任意の方法により製造される。
薬理学的に許容される担体としては、製剤素材として慣用の各種有機あるいは無機担体物質が用いられ、その具体例としては、固形製剤における賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、液状製剤における溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤などが挙げられる。製剤化の際には、必要に応じて、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤などの製剤添加剤を用いてもよい。
また、投与経路は、治療に際し最も効果的なものを使用するのが望ましく、ニトロプルシド、またはその薬理学的に許容される塩を、標的細胞である、小腸幹細胞、造血幹細胞又は造血前駆細胞へ送達可能であれば特に限定されないが、通常は、腹腔内、経皮、静脈内等の非経口または経口で投与される。ニトロプルシド、またはその薬理学的に許容される塩は、好ましくは、腹腔内に投与される。腸管は、上および下腸間膜動静脈によって養われているので、腹腔内投与により、小腸幹細胞へ効率的にニトロプルシド、またはその薬理学的に許容される塩を送達することができる。また、造血幹細胞/前駆細胞が存在する骨髄への薬剤の送達においても、腹腔内投与が好ましい。
非経口投与に適当な製剤は、好ましくは受容者の血液と等張である活性化合物を含む滅菌水性剤からなる。例えば、注射剤の場合は、塩溶液、ブドウ糖溶液または塩水とブドウ糖溶液の混合物からなる担体等を用いて注射用の溶液を調製する。これら非経口剤には、更に、必要に応じて溶解補助剤、緩衝剤、pH調整剤、等張化剤、無痛化剤、保存剤等を添加することもできる。また、非経口に適当な製剤は、ニトロプルシド、またはその薬理学的に許容される塩を、注射用蒸留水または植物油に懸濁して調製したものであってもよく、この場合、必要に応じて基剤、懸濁化剤、粘調剤等を添加することができる。また、非経口に適当な製剤は、ニトロプルシド、またはその薬理学的に許容される塩の粉末または凍結乾燥品を用時溶解する形であってもよく、必要に応じて賦形剤等を添加することができる。経口製剤としては、錠剤(舌下錠、口腔内崩壊剤を含む)、カプセル剤(ソフトカプセル、マイクロカプセルを含む)、散剤、顆粒剤、トローチ剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤などが挙げられる。これらの製剤は、速放性製剤または除放性製剤などの放出制御製剤(例、除放性マイクロカプセル)であってもよい。
なお、ニトロプルシド、またはその薬理学的に許容される塩として、ニトロプルシドナトリウムを有効成分とする血圧降下剤(注射剤)が、すでに臨床において使用されているので〔ニトプロ(丸石製薬(株)製)、Nitropress(Abbott(株)製)、Nipride(Roche(株)製)〕、本発明の剤として、上記市販製剤をそのまま用いることができる。
本発明の剤の投与対象は、哺乳動物であり、例えば、ヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ等が挙げられ、好ましくはヒトである。
本発明の剤は、放射線を被ばくの直前または直後に投与することが好ましく、具体的には、放射線被ばくの前または後60分以内、好ましくは30分以内、より好ましくは15分以内、さらに好ましくは10分以内、特に好ましくは5分以内に投与を開始する。また、放射線被ばくから1日後以降に更に追加投与をすることが、薬効向上の観点から好ましい。具体的には、放射線被ばくから1日後以降且つ10日以内(より好ましくは8日以内、特に好ましくは7日以内)に更に1回以上(例えば1回、好ましくは2回、より好ましくは3回)追加投与することが好ましい。投与と投与の間隔は、通常0.5日以上(例えば1日)であるが、放射線被ばくの前または後60分以内の単独投与と比較して、放射線誘発小腸幹細胞アポトーシス抑制効果又は放射線被ばくにより減少した造血幹細胞数及び/又は造血前駆細胞数の回復を促進する効果が増強される限りこれに限定されない。例えば、追加投与を放射線被ばくの翌日に行うことが好ましく、放射線被ばくの翌日と2日後に行うことがさらに好ましい。
また、放射線被ばくの翌日、もしくは翌日と2日後の追加投与に加えて、放射線被ばくから6〜10日後(好ましくは7日後)に、更に追加投与することが薬効を更に向上させる観点から好ましい。具体的な投与スケジュールの例としては、放射線被ばくの前または後60分以内、放射線被ばくから1日後、2日後および7日後の計4回投与を挙げることができる。
なお、上記の追加投与の記載は、それ以外の時期に投与することを排除するものではない。
本発明の剤の投与量は、その用途、患者の年齢や状態などの条件に応じて適宜選択可能であるが、生体内でのニトロプルシドまたはその薬理学的に許容される塩の濃度が、投与直後に15〜60μM(好ましくは30〜60μM)となるように、投与することが好ましい。具体的に投与量は、ニトロプルシドが細胞外液に均等分配されると仮定して、平均細胞外液量、ニトロプルシドの分子量(251.95、ニトロプルシドナトリウムを用いる場合は297.95)および上記で設定した生体内でのニトロプルシドの投与直後の濃度から算出することができる。また平均細胞外液量は、細胞外液の比重を1.00として、ヒトの場合は体重(kg)×0.2、マウスの場合は体重(kg)×0.35から得られる。ただし、血圧降下作用が生じないような低用量が好ましく、1回の投与あたりの投与量は、体重1kgあたり、ニトロプルシドとして0.9〜3.6mg、さらに好ましくは1.8〜3.6mg、特に好ましくは2.3〜3.6mgである。また、投与制限速度は、1.0〜2.0μg/kg/分である。
以下に実施例を示して、本発明をより詳細に説明するが、これらは単なる例示であって、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
[材料および方法]
1.マウス
正常マウス(jcl:ICR、日本クレア(株)、8週齢、雄)を通常飼育して、実験に用いた。
2.マウスへのX線照射
無麻酔下でアクリル製照射用容器にマウスを1匹ずつ収容し、X線照射装置MBR−1520A−3(日立メディコ(株))を用いて、0.5mmアルミニウム/0.3mm銅のフィルターを介して、X線を、線量率0.5Gy/minで6.5Gy照射した。照射前日からはゼリー状飼料(DietGel(登録商標)Recovery,ClearH2O社)をマウスに与え、照射後もその飼料で飼育した。
3.ニトロプルシドナトリウムのマウスへの投与
照射直後、1日後、2日後および7日後に体液量換算で最終濃度が30μMとなるようにニトロプルシドナトリウム(SNP)を腹腔内投与した。投与後の血圧低下による体温低下に対しては、42℃に設定したホットプレート上にマウスを置くことにより対処した。
4.生存率の解析
照射日をDay0として、照射後30日間飼育し、生存匹数から生存率を求めた。
5.末梢血の採血及び血球成分解析
照射14日後に麻酔下(ペントバルビタール・ナトリウムを使用)において、眼窩より末梢血を100μl採取し、生理食塩水で希釈し、動物用全自動血球計数器(MEK−6458、日本光電工業(株))を用いて白血球数、赤血球数、血小板数を測定した。
6.骨髄の造血幹細胞活性の解析
照射14日後にマウスを頚椎脱臼により安楽死させ、左右の大腿骨を摘出し、SpinSep(登録商標)(StemCell Technologies社)を用いて骨髄細胞を採取し、MethoCult(登録商標)(StemCell Technologies社)を用いて増殖能及び分化能を有する造血幹細胞数を計測した。
7.小腸腺窩におけるアポトーシス細胞の解析
照射36時間後にマウスを頚椎脱臼により安楽死させ、開腹後便のない小腸部分を15mm程度摘出し、中性ホルマリン固定後、パラフィン切片とし、TUNEL染色した。
[結果]
1.X線被ばくによる致死効果とSNP投与による生存率の回復
8週齢、雄の正常マウス(jcl:ICR)へのX線照射(6.5Gy)後の生存率が35〜40%であることが確認された。またX線照射直後、1日後、2日後及び7日後の計4回のSNP投与(最終体内濃度30μM)により、生存率が75〜80%まで回復することが確認された。
2.X線被ばくによる末梢血中の血球数減少とSNP投与による回復促進
ICRマウス(n=10)に対して、X線発生装置(MBR−1520A−3、日立メディコ(株))を用いて、X線を、線量率0.5Gy/minで6.5Gy照射した(0.5mm Al/0.3mm Cuフィルター使用)。SNPは照射直後、1日後、2日後及び7日後に、体液量換算で最終濃度が30μMとなるように腹腔内投与した。照射から14日目にX線照射のみをした実験群のマウス及びX線照射後SNPを投与した実験群のマウスの眼窩から麻酔下において末梢血を採取し、血球成分分析を3回行った(図1)。
対照群である非被ばくマウスでは、白血球数 27.8±5.8×10個/μl、血小板数 83.5±7.2×10個/μlであった。X線照射のみの実験群のマウスの末梢血においては、白血球及び血小板共に枯渇し、白血球数は4.5±2.8×10個/μl、血小板数は2.5±1.2×10個/μlであった。これらの結果から、造血機能及び免疫機能が完全に障害されていることが示唆された。
一方、X線照射後SNPを投与した実験群のマウスの末梢血においては、白血球数及び血小板数ともに顕著な回復を示し、白血球数は18.2±2.2×10個/μl、血小板数は13.2±3.6×10個/μlであった。これらの結果からSNP投与により被ばくしたマウスの造血機能及び免疫機能の回復が促進されていることが示唆された。
3.X線被ばくによる骨髄造血幹細胞数及び前駆細胞数の減少とSNP投与による回復促進
X線照射14日後にマウスを頚椎脱臼により安楽死させ、左右の大腿骨を摘出し、SpiSep(登録商標)(StemCell Technologies社)を用いて骨髄細胞を採取し、MethoCult(登録商標)(StemCell Technologies社)を用いて増殖能および分化能を有する造血幹細胞数を計測した(図2)。
対照群である非被ばくマウスでは、骨髄幹細胞及び前駆細胞が大腿骨あたり1.6±0.2×10個認められた。これは正常マウス(jcl:ICR)での標準値(1〜2×10個)の範疇であった。また、X線被ばくしたマウスでは、骨髄幹細胞及び前駆細胞がほとんど認められず、大腿骨あたり4.2±1.6×10個であった。
一方、X線照射直後、1日後、2日後及び7日後の計4回のSNP投与(最終体内濃度30μM)を行ったマウスでは、大腿骨あたり9.2±2.4×10個であり、顕著な骨髄幹細胞及び前駆細胞数の回復が認められた。また、この結果は、末梢血血球成分検査の結果とも非常によく一致し、SNPの投与により造血機能及び免疫機能の回復が促進されていることが強く示唆された。
4.X線被ばくによる小腸腺窩におけるアポトーシス誘導とSNP投与によるアポトーシスの抑制
ICRマウス(n=10)に対して、X線発生装置(MBR−1520A−3、日立メディコ(株))を用いて、X線を、線量率0.5Gy/minで6.5Gy照射した(0.5mm Al/0.3mm Cuフィルター使用)。SNPは照射直後、1日後、2日後及び7日後に、体液量換算で最終濃度が30μMとなるように腹腔内投与した。照射から36時間後にX線照射のみをした実験群のマウス及びX線照射後SNPを投与した実験群のマウスを頚椎脱臼により安楽死させ、小腸を15mm程度摘出し、中性ホルマリン固定後、パラフィン切片として標本を作製し、TUNEL染色を行った(図3)。
X線照射のみの実験群のマウスの小腸では、小腸腺窩の基部に局在して各腺窩あたり3〜4個のTUNEL陽性細胞が観察され、X線被ばくによる小腸吸収上皮でのアポトーシス誘導が確認された。これらのアポトーシス細胞の分布は、Pottenら、あるいはClversらが提唱している小腸幹細胞の位置と非常によく一致しており、小腸幹細胞において特異的にアポトーシスが誘導されていることが示唆された。また、小腸幹細胞がアポトーシスによって失われると、小腸吸収上皮の再生は不可能となり、腸死の原因である吸収上皮の脱落の原因であることが強く示唆された。
一方、X線照射後SNPを投与した実験群のマウスの小腸では、やはり小腸腺窩の基部に局在して各腺窩あたり1〜2個程度のTUNEL陽性細胞が観察され、X線被ばくによる小腸吸収上皮でのアポトーシス誘導がSNPの投与により抑制されていることが明らかとなった。従って、SNPの放射線障害防護の作用機構の1つとして、小腸吸収上皮再生の源となる小腸幹細胞でのX線誘発アポトーシスの抑制が示唆された。
本発明によれば、効果的に、放射線により減少した造血幹細胞数及び前駆細胞数の回復を図ることができる。また、本発明によれば、小腸幹細胞の放射線誘発アポトーシスを効果的に抑制することができる。従って、本発明の剤は、造血機能や免疫機能の障害を伴う放射線障害、腸管放射線障害の予防や治療に有用である。

Claims (2)

  1. ニトロプルシドまたはその薬理学的に許容される塩を含有する、放射線誘発小腸幹細胞アポトーシス抑制剤であって、放射線が、X線、γ線、β線及び電子線からなる群から選択されるいずれかである、剤
  2. ニトロプルシドまたはその薬理学的に許容される塩を含有する、腸管放射線障害防護剤であって、放射線が、X線、γ線、β線及び電子線からなる群から選択されるいずれかである、剤
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