JP6097824B2 - ペプチドおよびその使用 - Google Patents

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Description

本開示は、タンパク質同定および医薬分野に関する。詳細には、本開示は、強力な鎮痛作用および抗インフルエンザウイルス作用を有する天然のペプチド、それをコード化するポリヌクレオチド、その調製および使用、ならびに該ペプチドを含有する医薬組成物に関する。
疼痛は、しばしば強い刺激または損傷刺激によって引き起こされる不快感である。国際疼痛学会〔The International Association for the Study of Pain〕は、「疼痛」を「実際のもしくは潜在的な組織損傷と関連付けられた、またはこのような損傷の観点において述べられた、不快な感覚および精神的な経験」として幅広く定義している〔Pain 1979;6:247−8〕。疼痛は、米国において医師の相談を受ける際の最も一般的な理由である〔Raj PP.Taxonomy and classification of pain.In:Niv D,Kreitler S,Diego B,Lamberto A.The Handbook of Chronic Pain.Nova Biomedical Books 2007〕。疼痛は、多数の医学的状態における主要な症状であり、人間の生活の質および一般的な機能を大いに妨げる可能性がある〔Breivik H,Borchgrevink PC,Allen SM,Rosseland LA,Romundstad L,Hals EK,Kvarstein G,Stubhaug A.Assessment of pain.Br J Anaesth.2008;101(1):17−24〕。大部分の症例において、疼痛は、通常一時的なものであり、単に、有害な刺激が除かれるかまたは根本的な損傷もしくは病状が治癒するまで継続する。しかしながら、いくつかの疼痛状態、例えば、関節リウマチ、末梢性ニューロパシー、癌および特発性疼痛は、何年も持続し得る。長期に継続する疼痛は「慢性」と呼ばれ、迅速に静まる疼痛は「急性」と呼ばれる。伝統的には、急性疼痛と慢性疼痛の区別は、発症からの時間の恣意的な間隔に依拠してなされてきており;最も一般的に使用される2つのマーカーは、研究者の幾人かは12カ月で急性疼痛から慢性疼痛に移行するとして設定しているものの〔Spanswick CC,Main CJ.Pain management:an interdisciplinary approach.Edinburgh:Churchill Livingstone 2000〕、疼痛の発症から3カ月および6カ月である〔Turk DC,Okifuji A.Pain terms and taxonomies of pain.In:Bonica JJ,Loeser JD,Chapman CR,Turk DC,Butler SH.Bonica’s management of pain.Hagerstwon,MD:Lippincott Williams & Wilkins;2001〕。他の研究者は、30日未満継続する疼痛を「急性」と命名し、6カ月を超える疼痛を「慢性」と命名し、1から6カ月継続する疼痛を「亜急性」と命名している〔Thienhaus O,Cole BE.Classification of pain.In:Weiner R.Pain management:a practical guide for clinicians.Boca Raton:CRC Press;2002〕。
ヒトにおいて、末梢性疼痛の検出は、自由神経終末から開始される。多モード受容体と高閾値機械的受容体は、強力な機械的な力、H、K、化学物質、および温度などの有害刺激を検出する。刺激の検出後、疼痛の感覚は、末梢から脊髄(すなわち、脊髄視床路)に移動し、次に反対側に上行する前に前白交連(脊髄にある)を介してX字形に交差する。脳に到達する前に、脊髄視床路は、外側新脊髄視床路と内側旧脊髄視床路に分かれ(Skevington,S.M.Psychology of pain.Chichester,UK:Wile 1995;p18)、その後、視床後外側腹側核で終わり、そこでそれらは体性感覚皮質の樹状突起においてシナプスを形成する。疼痛を引き起こす有害刺激とは別に、ヒトにおける末梢神経の損傷は、多くの場合、自発的な、通常は灼熱痛、アロディニア(非有害刺激に対する疼痛反応)および痛覚過敏(有害刺激に対する過剰疼痛応答)によって特徴付けられる持続性の神経因性疼痛状態に至る。交感神経遮断薬療法は疼痛の軽減に幾分有効であり、このことは神経因性疼痛が交換神経系における活性によって少なくとも部分的に維持されることを示しているが、多数の患者は応答しない。神経因性疼痛のためのオピオイドの有効性もまた限定的なものであり〔Rowbotham MC.Ann Neurol 1994;35:S46−S49〕、多少議論の余地がある。
急性疼痛は、通常、鎮痛剤および麻酔薬などの薬剤を用いてコントロールされる。しかしながら、慢性疼痛または神経因性疼痛のコントロールは、非常に困難である。多くの薬物は、急性疼痛の軽減に役立ち、一般的に、それらは非オピオイド薬およびオピオイド薬に分けることができる。非オピオイド薬は、アセチルサリチル酸(アスピリン)およびCOX−2(シクロオキシゲナーゼ−2)阻害剤などの非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)を含む。NSAIDにおける「非ステロイド性」なる用語は、幅広い他の効果の中で、類似したエイコサノイド抑制、抗炎症作用を有するステロイドからこれら薬物を区別するために使用される。鎮痛薬として、NSAIDは、それらが非麻薬性であるという点で異例である。NSAIDは、通常、疼痛および炎症が存在する急性症状または慢性症状の治療のために必要とされる。
アスピリンは、多くの場合、小さな痛みおよび疼痛を軽減するための鎮痛薬として、熱を下げるための解熱剤として、または抗炎症薬として使用されている。アスピリンは、鈍く、ズキズキする疼痛によく効くが、ほとんどの筋けいれん、腫脹、内臓膨満、および急性皮膚炎による疼痛には効果がない。術後鎮痛剤として、アスピリンは、NSAIDの1つであるイブプロフェンに劣り、より高い胃腸毒性を有している。さらに、アスピリンはまた、多くの禁忌および望ましくない効果を有する;例えば、アスピリンの使用は、消化性潰瘍、軽度の糖尿病、または胃炎を有する集団において慎重である必要がある。これらの条件のいずれも存在しない場合であっても、胃の出血のリスクがなおも増加する。NSAIDの他のカテゴリーは、炎症および疼痛に関与する酵素であるCOX−2を直接標的とするCOX−2選択的阻害剤である。COX−2に対する標的選択性は、消化性潰瘍のリスクを低減し、セレコキシブ、ロフェコキシブ、およびこの薬物カテゴリーの他のメンバーの主な特徴である。COX−2阻害剤はまた副作用を有しており、腎不全のリスクが高まることが最も顕著であり、いくつかの結果はトロンボキサンの相対的増加による心臓発作、血栓症および脳卒中のリスクの増加を示している。これらの懸念のため、ロフェコキシブ〔一般的にバイオックス(Vioxx)として知られている〕が2004年に市場から回収されたことに注目すべきである。
鎮痛薬の代替のカテゴリーはオピオイド薬である。オピオイドは、中枢および末梢神経系ならびに消化管で主に見出されるオピオイド受容体に結合することによって作用する精神活性化学物質である。これらの臓器系における受容体は、有益な効果とオピオイドの副作用の両方を媒介する。オピオイドの鎮痛作用は、疼痛知覚の減少、疼痛に対する反応の減少ならびに疼痛耐性の増加による。オピオイドは、急性疼痛(術後疼痛など)を治療するために長期間使用され、癌などの末期状態などの重症であって、慢性の動けないほどの疼痛、および関節リウマチなどの変性状態に対する緩和ケアにおいて非常に有益である。しかしながら、オピオイドは、慢性非癌性疼痛において非常に慎重に使用されなければならない。高用量は、進行した、または末期の疾患の疼痛を制御するために必ずしも必要とされない。耐性(身体の鎮痛剤および他の作用に対する反応をより低下させる物理的反応)が発生する可能性が非常にあることから、オピオイドは疼痛制御のための最後の選択肢とされている。
上記の検討から、重度の急性疼痛および慢性疼痛の両方を制御するための、新しい種類の有効な非耐性および非鎮静鎮痛薬を開発することが急務であることは明らかである。
カリクレイン−キニン系に対する阻害剤を含む、ワクシニア・バリオラエ(Vaccinia variolae)ウイルスの接種によって誘発される炎症を有するウサギの皮膚組織から抽出された生物活性な薬物の混合物は、数十年間、疼痛治療に使用されてきた(K.Ono,A.Inoue,and M.Nakamuro.Jpn Pharmacol Ther,1981;9:299−307)。薬理学的および臨床実験は、ウサギの皮膚から調製された生物活性な薬物のこのような混合物が、すべての種類の、症候性神経痛、腰痛(lambago)、胆嚢仙痛(cholecystagia)、狭心症、動脈塞栓症疼痛、創傷による急性疼痛、火傷および熱傷、外科手術中の疼痛または術後の疼痛、消化性潰瘍疼痛、月経困難症、出産後の陣痛、頭痛、ならびに様々な腫瘍によって誘発される疼痛などに対して鎮痛作用を有することを示した。研究はまた、生物活性な薬物のこの混合物は、マクロファージの活性化を効果的に促進することができ、II型アレルギー反応における抗補体活性を有意に阻害できることを示した。効果は、用量と線形相関を有する。そのため、薬物は、免疫と相関した炎症反応の阻害、および免疫機能の向上に効果がある。さらに、ラットにおけるウサギの皮膚から調製された薬物の連続した28日間の腹腔内投与後、ラットは死亡せず、尿、目、血液生化学、病理学および解剖学の検査において存在する薬物によって誘導される変化はなかった。したがって、このような鎮痛薬はほとんど毒性作用がない(特許文献1参照)。しかしながら、薬剤設計および創薬に関するペプチド研究は新薬の開発において最も有望な分野の一つであるが、このような混合物が数十年間、市場に存在し、鎮痛について良好な作用を有するとしても、この分野における研究者は混合物中の活性なタンパク質成分に研究をフォーカスするという報告はなかった。したがって、有効成分(単数または複数)の同定は作動メカニズム(単数または複数)の理解に役立ち、鎮痛作用に関与する正確な成分の精製は臨床使用のために十分に明らかにされた薬物(単数または複数)の製造を促進する。
インフルエンザウイルスAは、ウイルスのオルトミクソウイルス科の属である。疾患はまれであるが、インフルエンザA型ウイルスのすべてのサブタイプの菌株が野鳥から単離されている。インフルエンザA型ウイルスのいくつかの分離株は、家禽と、まれではあるがヒトの両方において重度の疾患を引き起こす(「鳥インフルエンザ(「鳥インフル」)−概況報告書」、WHO)。時として、ウイルスは、野生の水鳥から家禽に移動し、これが突発的感染を引き起こしたり、ヒトインフルエンザパンデミックを生じさせる場合がある〔Klenk,et al.(2008).“Avian Influenza:Molecular Mechanisms of Pathogenesis and Host Range”.Animal Viruses:Molecular Biology.Caister Academic Press & Kawaoka Y,ed.(2006).Influenza Virology:Current Topics.Caister Academic Press〕。インフルエンザA型ウイルスは、ネガティブセンスの一本鎖セグメント化RNAウイルスである。いくつかのサブタイプが存在し、H番号(ヘマグルチニンのタイプに関する)とN番号(ノイラミニダーゼのタイプに関する)に従ってコード化される。少なくとも16種の異なるH抗原(H1からH16)と9種の異なるN抗原(N1からN9)が存在する。異なるインフルエンザウイルスは、異なるヘマグルチニンとノイラミニダーゼタンパク質をコード化する;例えば、H5N1ウイルスは、タイプ5のヘマグルチニン(H)タンパク質とタイプ1のノイラミニダーゼ(N)タンパク質を有するインフルエンザA型サブタイプを示す。さらに、それぞれのウイルスのサブタイプは、病原性プロファイルが異なる様々な菌株に変異している;いくつかは他の種ではなく、1つの種に病原性であり、いくつかは複数の種に病原性である。理論的には、これらのタンパク質の144個の異なる組合せが可能である〔“Influenza Viruses”.Centers for Disease Control and Prevention.November 18,2005〕。いくつかの変異体が同定され、それらが似ている分離株に従って命名され、それらの典型的な宿主(例えば:ヒトインフルエンザウイルス)によって、それらのサブタイプ(例えば:H3N2)によって、およびそれらの致死性(例えば:LP、低い病原性)によって、系統(例えば:福建インフルエンザウイルス様)を共有するものと推定される。そのため、分離株A型/福建/411/2002(H3N2)に類似したウイルス由来のインフルエンザは、福建型インフルエンザ、ヒトインフルエンザ、またはH3N2インフルエンザと呼ばれている。
「ヒトインフルエンザウイルス」は、通常、ヒトの間で広く蔓延するそれらのサブタイプを指す。すべての菌株の中で、H1N1、H1N2、およびH3N2は、ヒトの中で現在循環している唯一の既知のインフルエンザA型ウイルスサブタイプである(CDC、米国:鳥インフルエンザ(鳥インフル)および鳥インフルエンザA型(H5N1)ウイルスについての主要な事実)。インフルエンザの治療は、インフルエンザ疾患に応じて使用されるある範囲の薬および治療を含む。治療は、インフルエンザウイルス自体を直接標的とするものであってもよく;または、代わりに疾患の症状に対して単に軽減させるものであってもよく、一方で生体自身の免疫系は感染から回復するように作用する〔Montalto NJ,Gum KD,Ashley JV(2000).“Updated treatment for influenza A and B”.Am Fam Physician 62(11):2467−76〕。インフルエンザウイルスに対して使用される、2つの主要な種類の抗ウイルス薬は、ノイラミニダーゼ阻害剤、例えばザナミビルおよびオセルタミビル、またはウイルスM2タンパク質の阻害剤、例えばアマンタジンおよびリマンタジンである。これらの薬物は、感染後すぐに摂取すれば、症状が重症化するのを軽減することができ、また感染のリスクを低下させるために摂取することもできる。しかしながら、両種類の薬物に対する薬物耐性を有するウイルス菌株が出現している。これは、細菌の抗生物質耐性の発生と同様に、これらの薬剤の過剰使用に起因し得る。例えば、最近の研究では、2009 H1N1「ブタインフルエンザ」のノイラミニダーゼ(NA)が、季節性H1N1菌株において現在広まっているタミフル耐性(His274Tyr)変異し得たというシナリオにおいて、これらの薬物の性能の評価に基づいて、ザナミビル〔リレンザ(Relenza)〕などの追加の抗ウイルス薬とともに、オセルタミビル〔タミフル(Tamiflu)〕の緊急な備蓄の必要性を強調している〔Venkataramanan Soundararajan,Kannan Tharakaraman,Rahul Raman,S.Raguram,Zachary Shriver,V.Sasisekharan,Ram Sasisekharan(2009).“Extrapolating from sequence−the 2009 H1N1‘swine’influenza virus”.Nature Biotechnology 27(6):510−3〕。別の例は耐性ウイルスの急速な産生をもたらす場合があるアマンタジン治療の症例であり、これらの薬物の過剰使用はおそらく耐性の広がりに寄与している〔Lynch JP,Walsh EE(April 2007).“Influenza: evolving strategies in treatment and prevention”.Semin Respir Crit Care Med 28(2):144−58〕。
しかしながら、一方、ノイラミニダーゼ阻害剤に耐性のあるいくつかの菌株が出現し、関連する薬物の多くが使用されることなく出回り、薬剤耐性株が出現する頻度は、これらの薬物の使用レベルとほとんど相関関係を示さない(Lackenby A,Thompson CI,Democratis J(December 2008).“The potential impact of neuraminidase inhibitor resistant influenza”.Curr.Opin.Infect.Dis.21(6):626−38)。実験室での研究はまた、薬剤耐性の発生に寄与する予防的手段として、これらの薬物の最適以下の用量の使用について可能であることを示している〔Lackenby A,Thompson CI,Democratis J(December 2008).“The potential impact of neuraminidase inhibitor resistant influenza”.Curr.Opin.Infect.Dis.21(6):626−38〕。効力を有し、副作用がより少ない、より新しい種類の抗インフルエンザウイルス活性の探索は、バイオ医学界の挑戦となっている。
米国特許出願番号第20110003009号
本開示の目的は、SEQ ID NO:5に示されるようなアミノ酸配列を有する鎮痛ペプチド、その変異体および誘導体を提供することである。驚くべきことに、このペプチドはまた、抗インフルエンザA型ウイルス活性を示す。
本開示の別の目的は、ペプチドをコード化するポリヌクレオチド、その変異体および/または誘導体を提供することである。
本開示のさらに別の目的は、ペプチド、その変異体および/または誘導体の調製ならびにその使用を提供することである。
一態様において、本開示は、SEQ ID NO:5に示されるようなアミノ酸配列を含む単離されたペプチド、その保存された変異体、その活性な断片、およびその活性な誘導体を提供する。好ましくは、該ペプチドは、SEQ ID NO:5に示されるようなDEAQETAVSSHEQDのアミノ酸配列を有する。
別の態様において、本開示は、SEQ ID NO:5に示されるようなアミノ酸配列に対して、少なくとも50%の相同性、例えば、少なくとも60%の相同性、少なくとも70%の相同性、少なくとも80%の相同性または少なくとも90%の相同性を共有するアミノ酸配列を含み、鎮痛作用および/または抗インフルエンザA型ウイルス活性を保持する単離されたペプチドを提供する。
別の態様において、本開示は、SEQ ID NO:5に示されるようなアミノ酸配列と比較して、1〜7個(例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個または7個)の保存されたアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含み、鎮痛作用および/または抗インフルエンザA型ウイルス活性を保持する単離されたペプチドを提供する。
別の態様において、本明細書に開示されたペプチド、その変異体および/または誘導体は、化学合成によって得られる。
別の態様において、本開示は、
(a)SEQ ID NO:5に示されるようなアミノ酸配列を含むペプチドをコード化するヌクレオチド配列、その変異体および/または誘導体、ならびに
(b)(a)のヌクレオチド配列を補足するポリヌクレオチド
からなる群から選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも50%の相同性を共有するヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチドを提供し、
ここで、該ペプチド、その変異体および/または誘導体は、鎮痛作用および/または抗インフルエンザA型ウイルス活性を保持する。
別の態様において、本開示は、SEQ ID NO:5に示されるようなアミノ酸配列を含むペプチドをコード化する単離されたポリヌクレオチドを提供する。
別の態様において、本開示は、上記のポリヌクレオチドを含むベクター、および前記ベクターまたはポリヌクレオチドで形質転換された宿主細胞を提供する。
別の態様において、本開示は、
(a)上記の形質転換された宿主細胞を発現条件下で培養すること;
(b)培養物から本発明のペプチドを単離すること
を含む、SEQ ID NO:5に示されるような該ペプチドの活性を有するペプチドを製造するための方法を提供する。
別の態様において、本開示は、SEQ ID NO:5に示されるようなペプチド活性を刺激し、促進しおよびアンタゴナイズする化合物を提供する。
別の態様において、本開示は、本明細書における、有効量のペプチド、その変異体および/または誘導体、ならびに医薬として許容される担体を含む医薬組成物を提供する。この医薬組成物は、対象における疼痛と関連付けられた疾患および/または症状を治療または軽減するために使用することができる。本明細書における疼痛と関連付けられた疾患および/または症状には、限定されないが、すべての種類の、症候性神経痛、腰痛(lambago)、胆嚢仙痛(cholecystagia)、狭心症、動脈塞栓症疼痛、創傷による急性疼痛、火傷および熱傷、外科手術中の疼痛または術後の疼痛、消化性潰瘍疼痛、月経困難症、出産後の陣痛、頭痛、ならびに様々な腫瘍によって誘発される疼痛から選択されるものが含まれる。この医薬組成物はまた、対象におけるインフルエンザA型ウイルスの活性を阻害するために使用することができる。本明細書におけるインフルエンザA型ウイルスは、好ましくは、H5N1およびH1N1から選択される。
別の態様において、本開示は、対象における疼痛と関連付けられた疾患および/または症状を治療するための方法であって、本明細書における、有効量のペプチド、その変異体および/または誘導体を対象に投与することを含む方法を提供する。
別の態様において、本開示は、対象におけるインフルエンザA型ウイルスの活性を阻害するための方法であって、本明細書における、有効量のペプチド、その変異体および/または誘導体を対象に投与することを含む方法を提供する。
別の態様において、本開示は、対象における疼痛と関連付けられた疾患および/または症状を治療または緩和するための薬剤の調製における、本明細書におけるペプチド、その変異体および/または誘導体の使用を提供する。
別の態様において、本開示は、対象におけるインフルエンザA型ウイルスの活性を阻害するための薬剤の調製における、本明細書におけるペプチド、その変異体および/または誘導体の使用を提供する。
本発明の他の態様は、本開示の教示に照らして当業者に明らかとなる。
本明細書において言及されているすべての刊行物は、他に別段記載がなければ、それぞれの刊行物が、全体として参照により組み込まれるものと、具体的におよび個別に示されていたかのように、同程度に参照により組み込まれる。
以下の図面は、実施形態を例示し、特許請求の範囲において定義されている本発明の範囲を限定するものではない。
ワクシニアウイルスの接種によって誘導された炎症性ウサギ皮膚の粗製抽出物由来のペプチド/小ペプチドレベルの鎮痛因子をスクリーニングするために使用される手法の模式図を示す。 機能性ペプチド(単数または複数)の同定を示す。二重に荷電されたイオンm/z772.745のMS/MSスペクトルを示す。SEQ ID NO:5に示されるようなアミノ酸配列は、yおよびb−断片イオンシリーズにおけるMS差から決定され、ウサギα1−アンチプロテイナーゼの残基1〜14と適合した。 ペプチド5(SEQ ID NO:5)は、酢酸の腹腔内注射をすることによって誘導された疼痛の発症における有意な遅延によって示されるように、他のペプチドに対して最も優れた疼痛軽減作用を有し、1mgのモルヒネに匹敵する(n=6)。注記:ペプチド5とペプチド1、2、3、4、または6の間はp<0.005;ペプチド5とモルヒネの間はp>0.05;対照:水のみ。 SEQ ID NO:5に示されるようなペプチド5はまた、酢酸注射後の30分間で総身悶え数の有意な減少を引き起こした(n=6)。注記:ペプチド5とペプチド1、2、3、4、または6の間はp<0.01;ペプチド5とモルヒネの間はp>0.05。対照:水のみ。 ペプチド5は、神経性起源の強力な鎮痛作用を保持した。熱刺激では、2mgのSEQ ID NO:5に示されるようなペプチド5(DEAQETAVSSHEQD)の腹腔内注射による処置は、坐骨神経を損傷させた肢(痛覚過敏)の温度誘導性疼痛を有意に減少させた。データは、時間(秒)の平均±SDとして表される。N=6。注記:5日目、10日目または30日目における未処置と処置された損傷の同側肢の間は**p<0.005(ANOVAによる)。 SEQ ID NO:5に示されるようなペプチド5は、神経損傷のある肢または神経損傷のない肢の熱アロディニア全体で強力な作用を保持した。機械的刺激では、2mgのSEQ ID NO:5に示されるようなペプチド5の腹腔内注射による処置は、坐骨神経を損傷させた肢の熱アロディニアを有意に減少させた。データは、フォン・フォーリーヘア閾値(グラム)の平均±SDとして表される。時点あたりn=6。注記:5日目、10日目または30日目における未処置と処置された損傷の同側肢の間は**p<0.005(ANOVAによる)。 SEQ ID NO:5に示されるようなペプチド5は、インビトロでのH5N1およびH1N1ウイルス複製の阻害における強力な作用を有する。SEQ ID NO:5に示されるようなペプチド5を純水に溶解し、5,000pfu/mlのH5N1ウイルス(左パネル)またはH1N1ウイルス(右パネル)の様々な菌株によって同時に感染させた単層MDCK細胞に添加した(0、0.001、0.01、0.1、1、10μM)。3日後、プラーク数を手動でカウントし、未処置の対照(すなわち、0μM)に対して標準化した。 注記: A型/ベトナム/1194/04(H5N1)について:(1)未処置と0.1μMによる処置の間は統計的有意差なし(2)未処置と1μMによる処置の間はp<0.01(3)未処置と10μMによる処置の間はp<0.001 一方、A型/香港/97(H5N1)とA型/ガチョウ/台中/Q156/05(H5N1)の両方について:(1)未処置と0.1μMによる処置の間はp<0.05(2)未処置と1μMによる処置の間はp<0.005(3)未処置と10μMによる処置の間はp<0.001 汎発性H1N1/2009について:(1)未処置と0.01μMによる処置の間は統計的有意差なし(2)未処置と0.1μMによる処置の間はp<0.05(3)未処置と1μMによる処置の間はp<0.005(4)未処置と10μMによる処置の間はp<0.001 A型/台湾/01/86(H1N1)について:(1)未処置と0.01μMによる処置の間はp<0.05(2)未処置と0.1μMによる処置の間はp<0.01(3)未処置と1μMによる処置の間はp<0.005(4)未処置と10μMによる処置の間はp<0.001
本開示のペプチド、医薬組成物、使用および方法の実施形態は、例示であって、限定されないことが意図される。変性および改変は、上記の教示に照らして、当業者によって行うことができ、詳細には、それらは、鎮痛作用および/または抗インフルエンザA型ウイルス作用に対して、天然に近い機能を維持するペプチドにおける変更に関連することができる。したがって、変更は、記載されたものの範囲内で、開示されている特定の実施形態においてなされてもよいことは理解されなければならない。
本明細書で使用するとき、SEQ ID NO:5に示されるようなアミノ酸を有するペプチドは、ウサギα1−アンチプロテイナーゼFの断片である。
本明細書で使用するとき、用語「単離された」は、元の環境から単離された物質を指す。天然に存在する物質については、元の環境は天然の環境である。例えば、生細胞中で天然に存在する状態でのポリヌクレオチドおよびペプチドは、単離および精製されていない。しかしながら、同ポリヌクレオチドおよびペプチドが、天然でそれらと共存する他の成分から単離された場合、それらは単離または精製されている。
開示されているペプチドは、組換え、天然の、または合成したペプチド、好ましくは組換えペプチドであってもよい。開示されているペプチドは、精製された天然の生産物または化学的に合成した生産物であってもよい。あるいは、組換え技術を用いて、細菌、酵母、高等植物、昆虫、および哺乳動物細胞などの原核生物または真核生物宿主から生産され得る。組換え生産において使用される宿主に応じて、ペプチドはグリコシル化または非グリコシル化されてもよい。
本明細書で使用するとき、用語「誘導体」および「変異体」は、DEAQETAVSSHEQDの天然ペプチドの同生物学的機能または活性を本質的に保持するペプチドを意味する。
本明細書で使用するとき、本明細書で使用される「誘導体」なる用語は、限定されないが、(i)1個または複数個のアミノ酸残基が置換基を含むもの、(ii)ペプチドが、別の化合物、例えば、ペプチドの半減期を増加させる化合物(例えば、ポリエチレングリコール)と融合されているもの、(iii)追加のアミノ酸が、ペプチド、例えば、リーダー配列もしくは分泌配列、またはペプチドまたは前駆タンパク質を精製するために使用される配列と融合されているもの、あるいは(iv)ペプチドが、いくつかの変性によって変性されているものを含む。このような誘導体は、本明細書における教示に基づいて、当業者に知られている。
本明細書で使用するとき、用語「変性」(通常は、一次配列を変更させない)には、インビボまたはインビトロでのペプチドの化学的誘導、例えば、アセチル化(acelylation)またはカルボキシル化が含まれる。また、グリコシル化の変性も含まれ、例えば、ペプチドの合成および処理中に、またはさらなる処理工程において、ペプチドのグリコシル化パターンを変性することによって、例えば、グリコシル化酵素(例えば、哺乳動物のグリコシル化または脱グリコシル化酵素)へのペプチドの曝露によってなされる変性が挙げられる。さらに、リン酸化されたアミノ酸残基、例えば、ホスホチロシン、ホスホセリン、ホスホスレオニンを有する配列、ならびにタンパク質分解に対する耐性を向上させ、または溶解特性を最適にするように変性された配列が含まれる。
本明細書で使用するとき、用語「変異体」には、限定されないが、C末端、N末端またはペプチド内で、いくつかのアミノ酸の欠失、挿入および/または置換、好ましくは、いくつかの保存されたアミノ酸置換(典型的には、1〜7個、好ましくは1〜6個、より好ましくは1〜5個、さらにより好ましくは1〜4個、なおさらに好ましくは1〜3個、最も好ましくは1〜2個)、ならびに1個または複数個(典型的には、20個未満、好ましくは10個未満、より好ましくは5個未満)のアミノ酸の付加が含まれる。例えば、タンパク質機能は、通常、アミノ酸残基が同様のまたは類似したアミノ酸によって置換されている場合、例えば、保存されたまたは保存されていないアミノ酸残基(好ましくは、保存されたアミノ酸残基)で置換されている場合、変化しない。さらに、C末端および/またはN末端における1個または複数個のアミノ酸の付加は、通常、タンパク質機能を変化させない。
本明細書で使用するとき、用語「保存されたアミノ酸置換」とは、DEAQETAVSSHEQDのアミノ酸配列と比較した場合、同じまたは類似した特性を実質的に有するアミノ酸を用いて、最大7個、好ましくは最大6個、より好ましくは5個、最も好ましくは最大3個のアミノ酸で置換することによって形成されたペプチドを意味する。好ましくは、これらの保存された突然変異体は、表1に記載の置換によって形成されている。
本発明のポリヌクレオチドは、DNAおよびRNAの形態であってもよい。DNAは、一本鎖または二本鎖の形態で、cDNA、ゲノムDNA、および合成DNAを含む。本発明のポリヌクレオチドは、縮重配列であってもよい。本明細書で使用するとき、用語「縮重配列」とは、コドンの縮重により同一のタンパク質をコード化する異なる配列が存在することを意味する。
用語「ペプチドをコード化するポリヌクレオチド」は、該ペプチドをコード化するポリヌクレオチド、ならびに追加のおよび/または非コード化配列を含むポリヌクレオチドを含む。
本明細書におけるペプチドをコード化するポリヌクレオチドは、PCR増幅、組換え法および合成法によって調製することができる。PCR増幅について、本明細書に開示されているヌクレオチド配列、特にORFに基づいてプライマーを設計し、市販のまたは鋳型として当該技術分野における日常的な技術によって調製されたcDNAライブラリーを用いることによって、該配列を得ることができる。配列が得られると、組換え法によって、多数の配列を生産することができる。通常、該配列は、ベクターにクローニングされ、次に宿主細胞に形質転換される。配列は、従来の技術を用いて、増幅された宿主細胞から単離される。
本発明はさらに、開示されているポリヌクレオチドを含むベクター、前記ベクターまたは開示されているポリヌクレオチドを用いて形質転換された、遺伝子操作された宿主細胞、および組換え技術によって前記ペプチドを生産するための方法に関する。
組換えペプチドは、本発明のポリヌクレオチド配列を用いて、従来の組換えDNA技術(Science,1984;224:1431)によって発現させ、または生産することができる。一般的には、以下の工程:
(1)ペプチドをコード化するポリヌクレオチドまたは前記ポリヌクレオチドを含むベクターを用いて、適切な宿主細胞に形質移入または形質転換すること;
(2)適切な培地中で宿主細胞を培養すること;
(3)培地または細胞からタンパク質を単離または精製すること
を含む。
本発明において、本明細書におけるポリヌクレオチド配列は、組換え発現ベクターに挿入することができる。用語「発現ベクター」とは、細菌プラスミド、バクテリオファージ、酵母プラスミド、植物ウイルスまたは哺乳動物細胞ウイルス、例えば、アデノウイルス、レトロウイルスもしくは当該技術分野において知られている任意の他のビヒクルを意味する。任意のプラスミドまたはベクターは、宿主において複製することができ、安定である限り、組換え発現ベクターを構築するために使用することができる。発現ベクターの1つの重要な特徴は、発現ベクターが、典型的には、複製起点、プロモーター、マーカー遺伝子、ならびに置き換え調節成分を含むことである。
既知の方法を用いて、本明細書における配列および適切な転写/置き換え調節成分を含む発現ベクターを構築することができる。これらの方法には、インビトロの組換えDNA技術、DNA合成技術、インビボの組換え技術などが含まれる。DNA配列は、mRNAの合成を指向するために、発現ベクターにおいて適切なプロモーターに効率的に連結されている。例示的なプロモーターは、大腸菌(E.coli)のlacまたはtrpプロモーター;ファージのPLプロモーター;真核生物プロモーター、例えば、CMV前初期プロモーター、HSVチミジンキナーゼプロモーター、初期および後期SV40プロモーター、レトロウイルスのLTR、および原核細胞、真核細胞またはウイルスにおける遺伝子発現を調節する、いくつかの他の既知のプロモーターである。発現ベクターは、置き換えを開始するためのリボソーム結合部位、転写ターミネーターなどをさらに含んでもよい。
本明細書で使用するとき、用語「宿主細胞」は、原核生物、例えば、細菌;下等真核生物、例えば、酵母;高等真核細胞、例えば、哺乳動物細胞を含む。代表的な例としては、細菌細胞、例えば、大腸菌(E.coli)、ストレプトミセス属、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium);真菌細胞、例えば、酵母;植物細胞;昆虫細胞、例えば、ショウジョウバエS2またはSf9;動物細胞、例えば、CHO、COSまたはボウズメラノーマなどである。
本明細書で使用するとき、用語「鎮痛作用」は、「抗痛覚過敏作用」および「抗アロディニア作用」を含む。しかしながら、これらの3つの用語は、異なる疾患またはモデルにおいて疼痛軽減を示すため、別々に使用することができる。
本明細書で使用するとき、用語「対象」は、ヒト、非ヒト哺乳動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ウサギ、イヌ、マウス、ラット、サルなど)、および家禽を含む。
本発明はまた、本明細書における安全および有効な量のペプチド、その変異体および/または誘導体を、医薬として許容される担体と組み合わせて含む医薬組成物を提供する。このような担体は、限定されないが、生理食塩水、緩衝液、グルコース、水、グリセリン、エタノール、またはこれらの組合せを含む。医薬製剤は、送達方法に適しているべきである。医薬組成物は、生理食塩水またはグルコースもしくは補助物質を含む他の水溶液を用いて、従来の方法によって製造される注射剤の形態であってもよい。錠剤またはカプセルの形態である医薬組成物は、日常的な方法によって調製することができる。医薬組成物、例えば注射剤、溶液、錠剤、およびカプセルは、無菌条件下で製造されなければならない。有効成分は、治療的に有効な量、例えば、1日あたり約1μg〜50mg/kg体重またはそれを超える量で投与される。さらに、本発明のペプチドは、他の治療剤とともに投与することができる。
先の実験の証拠は、ワクシニアウイルスの接種によって誘導された炎症性ウサギ皮膚の粗製抽出物が鎮痛における薬理効果を発揮できることを示している。疼痛軽減用の正確な成分を同定するために、親因子AGC(登録商標)によって実証されているように、本発明者らは、ナノLC−MS/MSを用いることによって、質量対電荷比(m/z)の差を決定するためにプロテオミクスアプローチを用いた。高度化した化学的精製およびデータベース検索を通じて、本発明者らは、強力な鎮痛作用、抗痛覚過敏作用、抗アロディニア作用および抗インフルエンザA型ウイルス作用を保持するDEAQETAVSSHEQDのペプチド配列を同定した。
本発明を以下の実施例によってさらに例示する。これらの実施例は、本発明を例示するためだけのものであり、本発明の範囲を限定するものではないことを意図している。以下の実施例における実験方法について、日常的な条件下で、例えば、他に指示がなければ、Sambrook.et al.,in Molecule Clone.A Laboratory Manual,New York:Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989に記載されている条件下、または製造業者によって指示されるように行った。
〔実施例1〕―ペプチド同定
A.試料調製
ワクシニア・バリオラエ(Vaccinia variolae)ウイルスの接種によって誘発される炎症を有するウサギの皮膚組織から抽出された生物活性な薬物の混合物が記載(Y.Imai,K.Saito,S.Maeda et al.Inhibition of the release of bradykinin−like substances into the perfusate of rat hind paw by neurotropin.Jpn J Pharmacol 1984,36:104−106)されているように調製され、商品名をAGC(登録商標)(10U/mL、25mL/バイアル)としてVanworld Pharmaceutical Co Ltd,Rugao,Chinaによって提供された。約200μLのAGC(登録商標)の粗製調製物を真空遠心分離機において乾燥させた。凍結乾燥された材料は、37℃で1時間、8M尿素および0.5Mジチオスレイトール(DTT)を含有する0.5M炭酸水素アンモニウム緩衝液(pH8.5)の100μLで再構成され、10μLの0.5Mヨードアセトアミド(IAM)をアルキル化のために添加した場合、暗条件下でさらに2時間4℃にて再構成された。その後、次に得られた溶液は18時間37℃にて、0.2μgのトリプシンで消化され、続いて、トリプシン消化された溶液は、10%トリフルオロ酢酸(TFA)/HOによってpHが3.0値になるまで酸性にされた。反応後、完全に酸性化された溶液は、200μLの0.1%TFA/HO(pH3.0)で前平衡化された逆相C18カラムに適用された。また、カラムを200μLの0.1%TFA/HO(pH3.0)で洗浄し、次に室温にて0.1%TFA中で50%から100%の段階的なアセトニトリルの勾配を用いて溶出した。
B.ナノ−LC−MS/MS分析
溶出された画分を回収し、真空遠心分離機において乾燥させ、次にHO中の0.1%ギ酸(FA)10μLにおいて再構成し、LTQ Orbitrap XL(Thermo Fisher Scientific、San Jose、CA)によって分析した。逆相ナノ−LC分離は、Agilent 1200シリーズナノフローシステム(Agilent Technologies、Santa Clara、CA)において行われた。画分からの全10μL試料をAgilent Zorbax XDB C18プレカラム(0.35mm、5μm)に装填し、続いてC18カラム(内径75μm×25cm、3μm、Micro Tech、Fontana、CA)を用いて分離した。使用した移動相は、(A)0.1%FAおよび(B)100%ACN中の0.1%FAであった。流速300nL/分で90分時間をかけた5%から35%(B)の直線勾配を適用した。ペプチドは、1.8Kvの電圧をインジェクションニードルに適用することによって、陽イオンモードにおいて分析された。MSはデータに依存して操作され、ここではm/zが300〜2000で1回の全スキャンを30ms/スキャンの速度を用いてOrbitrap(R=60000、m/z 400)において行われた。LTQ中で35%の標準化された衝突エネルギーによる断片化に対する6つの最大強度ピークを選択した。30秒の反復期間が断片化に関する再選択から同じm/zイオンを排除するために適用された。対照としての再構成された液体は、還元、アルキル化および脱塩によって処理もされ、酸性にし、トリプシン消化を除いて、上記したナノ−LC−MS/MS分析に供された。
C.データベースサーチおよび同定
MASCOTサーチプログラム(http://www.matrixscience.com;Hirosawa et al.、1993)を用いた正確な適合について、NCBIデータベースにおける動物分類に対するサーチによって、ナノ−LC−MS/MSスペクトルから変換されたピークリストによって、ペプチドを同定した。前駆イオンと断片イオンの両方の質量許容範囲を0.8Daにセットした。サーチは、カルバミドメチル化(C)として固定された変性を可能にし、酵素としてトリプシンを含まないようにして行われた。得られた同定は、統計的に有意な(P≦0.05)ペプチドスコア(組み合わせたMSとMS/MSスペクトルに基づく)と最良のイオンスコア(MS/MSスペクトルに基づく)を有していた。
D.結果
次に、トリプシン消化してまたはトリプシン消化しないで生じたタンパク質断片の質量スペクトルパターンは、無傷なタンパク質(タンパク質ID)を同定するために使用することができる、ペプチド配列を確認するためのデータバンクに寄託された以前より知られているタンパク質の質量スペクトルパターンと比較するために使用された。したがって、本発明者らは、ショットガン分析によってペプチドの大規模な範囲を達成し、ペプチドまたは小ペプチドの発現の概要を解明し、配列ならびに生化学的特徴を同定することができる。本研究において使用したフローチャートと、生化学的特徴を用いて同定されたすべてのペプチドを表2に列挙する。MS/MS分析からの代表的なペプチドピークを検出し(図2)、MASCOTサーチによって確信のあるタンパク質同定をもたらした。二重に荷電されたイオンm/z772.745のMS/MSスペクトルを示す。SEQ ID NO:5に示されるようなアミノ酸配列DEAQETAVSSHEQDは、yおよびb断片イオンシリーズにおけるMS差から決定され、ヒト、マウスまたはウシとは異なるウサギのα1−アンチプロテイナーゼFの残基1〜14と適合した。さらに、それはまた、オピオイドアゴニストDAGOを含む他の鎮痛関連ペプチドとの相同性を共有しない。計算による予測によれば、線形であり、α−ヘリックス、β−シート、β−ターン、または曲げ部分のような構造を有している可能性は低い。
表2はナノLC−MS/MSからのMS/MSスペクトルによって同定された6つの小ペプチドの特徴付けを示す。
〔実施例2〕−インビボにおける鎮痛作用
固相Fmoc化学を用いたMission Biotech Co.(MB、Taipei、Taiwan)の商業機関でペプチドを合成し、90%超の純度まで逆相高速液体クロマトグラフィーによって精製し、MSによって確認した。実験使用のために、最終ペプチド生成物をDMSOに溶解した。
マウスにおける急性内臓痛モデルについて、体重が20〜25gのC57BL/6雄性マウスは、1mgのモルヒネ(陽性対照として)または合成ペプチド1−6SEQ ID NO:1−6、それぞれ2mg)を腹腔内に注射された。30分後、続いて、マウスは、腹腔内に1%酢酸を1ml注射された。1回目の身悶えの開始と以降30分間での身悶えの頻度を記録した。
SEQ ID NO:5に示されるようなペプチド5(14個のアミノ酸のペプチド)は、足引っ込めの遅延した反応時間(図3)、および30分以内に測定される身悶え発現の減少(図4)において示されるように、1mgのモルヒネに匹敵する類似した疼痛軽減作用を有する。
〔実施例3〕−抗痛覚過敏作用
体重が20〜25gのC57BL/6雄性マウスを用いた。外科的手法は、ハロタン(2〜3%)麻酔下で実施された。部分的な坐骨神経損傷は、記載(Malmberg AB and Basbaum AI.Pain 1998;76:215−222)されているように、坐骨神経の直径のおよそ3分の1から2分の1を9−0絹縫合糸でしっかりした結紮を試みることによってなされた。シャム手術のマウスにおいては、坐骨神経を露出させたが、結紮しなかった。その後、マウスは、熱試験とフォン・フォーリー(von Foley)ヘア試験前の少なくとも1時間に試験環境に慣れさせた。熱試験において、足引っ込め反応時間は、疼痛の指標として測定された。フォン・フォーリー試験において、刺激強度は、正常なマウスにおける10秒の足引っ込め反応時間を与えるように調節され、一方、応答がない場合のカットオフは20秒であった。フォン・フォーリーヘアの機械的感度は、アップダウンパラダイム(Chaplan et al,J Neurosci Methods 1994;53:53−66)によって評価された。検証パラダイムのためのフィラメントは、0.3−gmとなるものが選ばれた。
SEQ ID NO:5に示されるようなペプチド5は、坐骨神経結紮を受けたマウスにおけるその抗痛覚過敏作用について試験された。シャム手術されたマウスと神経損傷を受けたマウスの熱試験の結果は、手術後の5日目、10日目および30日目に並行して比較された。神経損傷を受けた肢が、対側肢またはシャム手術肢と比較して、大幅に減少した足引っ込め反応時間によって示されるように痛覚過敏を有したことを結果は明確に示した(図5)。さらに、2mgのSEQ ID NO:5に示されるようなペプチド5の腹腔内注射(「処理」と表記される)は、DMSO溶媒を与えられた対照マウス(「未処理」と表記される)と比較して、足引っ込め反応時間の増加によって示されるように(図5)、実際に熱誘発性疼痛に対する耐性を有意に増加させることができた。
〔実施例4〕−抗アロディニア作用
実施例3と同じ動物モデルを使用した。SEQ ID NO:5に示されるようなペプチド5は、坐骨神経結紮を受けたマウスにおける抗アロディニア作用について試験された。シャム手術マウスと神経損傷マウスの機械的刺激(フォン・フォーリー試験)からの結果は、手術後の5日目、10日目および30日目に並行して比較された。結果は、対側肢またはシャム手術肢と比較して、有意差のある低いフォン・フォーリー閾値によって示されるように、神経損傷を受けた肢が過剰アロディニアを有したことを明確に示した(図6)。さらに、2mgのSEQ ID NO:5に示されるようなペプチド5の腹腔内注射(「処理」と表記される)は、純水を与えられた対照マウス(「未処理」と表記される)と比較して、フォン・フォーリー閾値の増加によって示されるように(図6)、実際に、有意差をもって機械的刺激に対する耐性を増加させることができた。
〔実施例5〕−抗ウイルス作用
A.ウイルスおよび細胞
H5N1分離株A型/ベトナム/1194/04およびA型/香港/97は、香港大学微生物学部から入手された。ウイルスは、実験用に3×10TCID50で使用された。また、A型/台湾/01/86(H1N1)は、実験用に3×10TCID50で使用された。H5N1実験は、バイオセーフティーレベル(BSL)3+封じ込め施設で実施された。ストックウイルスのアリコートを−80℃で保存した。Madin−Darbyイヌ腎臓(MDCK)細胞をアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(Manassas,Va,USA)から入手し、10%ウシ胎児血清および1%抗生物質(ペニシリン/ストレプトマイシン)を補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で維持した。50%組織培養感染量(TCID50)は、37℃で3日間のインキュベーション後、MDCK細胞において決定され、値は、ReedおよびMuench法(Reed LJ,Muench H.A simple method for estimating fifty percent endpoints.American Journal of Hygiene.1938;27:493−497)によって計算された。ウイルス複製の阻害におけるSEQ ID NO:5に示されるようなペプチド5の有効性を決定するために、pfu/mlは、播種された初期のpfu/mlと比較され(初期のpfu/mlによって除され)、初期力価のパーセンテージとして表された(5×10pfu/mlであった)。
B.プラークアッセイによるウイルス力価の決定
本明細書において使用されるすべてのウイルスは、最初に、MDCK細胞で定量し、感染力価(mLあたりのプラーク形成単位、pfu/ml)を決定した。要約すると、24ウェルプレート中でMDCK細胞を単層に増殖させ、SEQ ID NO:5に示されるようなペプチド5(0.001、0.01、0.1、1および10μM)による処理後、5×10pfu/mlでウイルスに感染させた。コンフルエントなMDCK細胞に37℃にて1時間結合後、未結合のウイルスをPBSで穏やかに洗い出し、1:1のノーブル寒天(1.8%)と2×DME−F12〔Glutamax(Invitrogen、Carlsbad、CA)、ITS(Invitrogen)、および3μg/mlアセチル化トリプシン(Sigma、St.Louis、MO)が補充されている〕で覆った。寒天を固化した後、プレートを約72時間、37℃にてインキュベートした後、クリスタルバイオレットで固定し、それぞれの希釈でのプラーク数をカウントした。3日後、プラーク数を手動でカウントし、未処理の対照(すなわち、0μM)に対して標準化した。
C.SEQ ID NO:5に示されるようなペプチド5はインビトロでインフルエンザウイルスH5N1とH1N1の複製を阻害する
インフルエンザウイルスH5N1とH1N1の複製に対するSEQ ID NO:5に示されるようなペプチド5の阻害効果を決定するために、連続希釈したSEQ ID NO:5に示されるような合成ペプチド5は、5000pfu/mlのH5N1のA型/ベトナム/1194/04、A型/香港/97およびA型/ガチョウ/台中/Q156/05、またはH1N1に曝露された、24ウェルプレート中の単層MDCK細胞の培養物に補充された。3日後、それぞれの薬物濃度を有するウイルスプラークの数をカウントし、プラーク数を未処理の対照に対して標準化した(図7)。これは、SEQ ID NO:5に示されるようなペプチド5が、インビトロにおけるH5N1とH1N1ウイルスの複製の阻害において強力な作用を有することを示した。
本明細書に記載されている実施形態の態様は、他の形態で具現化され、またはその精神もしくは本質的な特徴から逸脱することなく他の方法で実施することができる。したがって、本開示は、すべての態様において、例示であり、限定的ではないとみなされるべきであり、均等の意味と範囲に入るすべての変更が、そこに受け入れられることを意図している。

Claims (12)

  1. 鎮痛作用および抗インフルエンザA型ウイルス活性を有するペプチドであって、前記ペプチドが、SEQ ID NO:5に示すアミノ酸配列からなるペプチド。
  2. 鎮痛作用および抗インフルエンザA型ウイルス活性を有するペプチドであって、前記ペプチドが、SEQ ID NO:5に示すアミノ酸配列からなるペプチドをコード化する、ポリヌクレオチド。
  3. 請求項1に記載のペプチド及び医薬として許容される担体を含む医薬組成物。
  4. 請求項1に記載のペプチドを含む、疼痛と関連付けられた疾患および/または症状を治療または予防する薬剤。
  5. 疼痛と関連付けられた疾患および/または症状が、症候性神経痛、腰痛(lumbago)、胆嚢仙痛(cholecystagia)、狭心症、動脈塞栓症疼痛、創傷による急性疼痛、火傷および熱傷による疼痛、外科手術中の疼痛または術後の疼痛、消化性潰瘍疼痛、月経困難症、陣痛、頭痛、ならびに様々な腫瘍によって誘発される疼痛から選択される請求項4に記載の薬剤。
  6. 請求項1に記載のペプチドを含む、インフルエンザA型ウイルスに対する治療用または予防用薬剤。
  7. インフルエンザA型ウイルスがH5N1およびH1N1から選択される、請求項6に記載の治療用または予防用薬剤。
  8. 疼痛と関連付けられた疾患および/または症状を治療または予防する薬剤の調製における、請求項1に記載のペプチドの使用。
  9. 疼痛と関連付けられた疾患および/または症状が、症候性神経痛、腰痛(lumbago)、胆嚢仙痛(cholecystagia)、狭心症、動脈塞栓症疼痛、創傷による急性疼痛、火傷および熱傷による疼痛、外科手術中の疼痛または術後の疼痛、消化性潰瘍疼痛、月経困難症、陣痛、頭痛、ならびに様々な腫瘍によって誘発される疼痛から選択される、請求項8に記載のペプチドの使用。
  10. インフルエンザA型ウイルスに対する治療用または予防用薬剤の調製における、請求項1に記載のペプチドの使用。
  11. 前記インフルエンザA型ウイルスがH5N1およびH1N1から選択される、請求項10に記載のペプチドの使用。
  12. 対象がヒト、非ヒト哺乳動物および家禽から選択される、請求項8から11のいずれか一項に記載のペプチドの使用。
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