JP6097328B2 - ランゲルハンス島の移植におけるアジュバントとしてのcxcr1/2の阻害薬 - Google Patents
ランゲルハンス島の移植におけるアジュバントとしてのcxcr1/2の阻害薬 Download PDFInfo
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Description
ランゲルハンス島移植は、全膵臓移植と比較して侵襲性が少ない代替法であり、かつ重篤な合併症のリスクがそれよりはるかに低いので、特に魅力的である;しかし、そのような措置は有効性が劣ることによってなお制限される。
Edmontonプロトコルによれば、ランゲルハンス島を死亡ドナーの膵臓から摘出し、精製し、次いで上腹部を通して肝臓の門脈内へ配置したカテーテルによりレシピエントに移植する;それらを肝臓に注入した直後に細胞はインスリンを放出し始める。拒絶を防ぐために新たな免疫抑制方式を採用し、それは免疫抑制薬の組合わせ、すなわちシロリムス(Sirolimus)とタクロリムス(Tacrolimus)、およびCD25モノクローナル抗体
ダクリズマブ(Daclizumab)の使用を必要とする(Saphiro et al . N Engl. J Med, 2000, 343 (4): 230-238)。
ランゲルハンス島移植に関連する第1の欠点は、Edmontonプロトコルが成功率を著しく高めたにもかかわらず、一連の複雑な現象、たとえばIBMIR、炎症細胞の動員および非特異的免疫のため、なお高いパーセントの早期移植体機能不全があることである。事実、ヒトの肝臓内注入は即時血液仲介炎症反応(immediate blood-mediated inflammatory reaction)、血栓形成および肝組織虚血を伴い、それと共に血中肝酵素が増加する(Barshes NR at al., J Am Coll Surg, 2005, 200(3): 353-361; Barshes NR et al, J
Leukoc Biol, 2005, 77(5): 587-97; Bertuzzi et al, J Clin Endocrinol Metab, 2004, 89(11): 5724-8; Bhargava R et al Diabetes, 2004, 53(5),: 1311-7; Contreras et al, 2004, 53(11): 2894-14; Johansson et al, Diabetes, 2005, 54(6): 1755-62)。肝
臓に移植定着する際の50〜75%もの損失(Contreras et al, 上記参照)が、正常血糖
を達成するのにきわめて多数のランゲルハンス島を必要とすることに関係する主因であることが示唆された(Barshes et al, 上記参照)。
を制限し、移植から2年後には14%の患者がインスリン非依存性を示すにすぎない[Meloche RM World J Gastroenterol 2007; 13(47): 6347-6355]。
CXCL8は炎症メディエーターにより誘導されるケモカインであり、組織修復の初期に関与することが示唆され、内皮細胞の走化性、生存および増殖の誘導により血管新生を促進し(Li et al, J Immunol, 2003, 170: 3369-3376)、かつ好中球誘因物質として作用
することが証明されている。それは、それのコグネイトGタンパク質共役型受容体CXCR1およびCXCR2への結合によりそれの作用を発揮する。
EP 1 123 276には、CXCL8により誘導される好中球走化性および脱顆粒の阻害薬として使用するための、特に乾癬、リウマチ性関節炎、潰瘍性大腸炎、急性呼吸不全(ARDS)、特発性線維症および腎炎などの病的状態の処置に使用するための、N−(2−アリール−プロピオニル)−スルホンアミド、特にR(−)−2−[(4−イソブチルフェニル)プロピオニル]−メタンスルホンアミド(I)、およびそれらの医薬的に許容できる塩類が開示されている。
本発明による“CXCR1および/またはCXCR2の阻害薬”について、それはCXCR1および/またはCXCR2活性化から生じるCXCL8生物活性を阻止できる化合物を意味する。これらの化合物はこれらの受容体の競合性アンタゴニストまたはアロステリック阻害薬である可能性がある。
axin)またはレパリキシンとして知られ、以下、レパリキシンと呼ぶ)およびR(−)−2−[(4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]プロピオニル−メタンスルホンアミド(一般にメラキシン(Meraxin)として知られ、以下、そのように呼ぶ)
である。
後記に述べるように、動物モデルにおいて式Iの化合物はランゲルハンス島移植後の移植体の生存率および機能を効果的に改善することができる。
本発明の化合物は、I型糖尿病において移植したランゲルハンス島の移植定着を支持するのに有効である。
レパリキシンを静脈内投与すると、対照と比較して正常血糖値(250mg/mlより低い非空腹時血糖値)に達する確率がより高くなり、かつそれに達する中央時間が短縮された。
同種異系ランゲルハンス島の移植実験により、CXCR1および/またはCXCR2阻害薬レパリキシンの投与は、移植後一次機能を達成したマウスにおいて拒絶反応の発生を著しく低下させることが証明された。
移植体の機能および生存率の改善におけるレパリキシンの有効性が、肝臓および骨髄の両方におけるランゲルハンス島移植において示された。
ョンに示すように、レパリキシンによるCXCR1/2受容体の遮断は移植後一次機能を達成したマウスにおいて拒絶までの時間を延長し、一方、これはラパマイシンによって有意に変化しなかった。さらに、レパリキシン単独投与はレパリキシンとラパマイシンの組合わせの投与によって得られたものに匹敵する結果をもたらした。
一般法に従って製造できる。好ましくは、上記の投与形態それぞれにおけるレパリキシンまたはそれの医薬的に許容できる塩の量は、化合物または塩2〜15mg/kg体重を供給する量であり、一方、メラキシンまたはそれの医薬的に許容できる塩の量は、化合物または塩10〜20mg/kg体重を供給する量である。いずれの場合も、医薬の投与方式および投与量は医師が患者の要件に従って決定するであろう。
ランゲルハンス島の生存に対するCXCR1およびCXCR2によるCXCL8シグナル伝達経路の活性化の役割を調べるために、同系ランゲルハンス島を肝臓内移植した後のランゲルハンス島の機能をBalb/c CXCR2−/−マウスおよびCXCR2+/+マウスにおいて評価した。CXCR1はマウスでは発現しないので、CXCR2のノックアウトはCXCL8により誘導されるシグナル伝達を完全に無効にする。
2.マウスにおける同系ランゲルハンス島移植
12週令のC57マウスからのランゲルハンス島を糖尿病C57マウス(アロキサン(alloxan)誘導糖尿病、血糖>450mg/dl)の肝臓に移植した。2種類の辺縁ラン
ゲルハンス島質量モデル、150 IE(ランゲルハンス島当量(Islet Equivalent))および250 IEを用いた。ランゲルハンス島移植後−1日目から開始して6日目または13日目まで、レパリキシンを8mg/kg/時間の用量で皮下連続注入により投与した。対照動物には連続皮下ビヒクル投与した。
値に達する能力をまず評価した。図2に示すように、正常血糖(<200mg/dl)に達する確率および中央時間は下記のとおりであった:ビヒクルで処理したマウスについての35.1%および50日と比較して、レパリキシンで処理したマウスについては50%および7日(Logランク p<0.012)。
12週令のBalb/cマウスからのランゲルハンス島を糖尿病のC57マウスの肝臓に移植した(アロキサン,血糖>450mg/dl)。ある実験では、何らかの自己免疫反応の存在を評価するために、12週令のC57BL/6(B6)からのランゲルハンス島を糖尿病の雌NOD/LtJ(NOD)マウスに移植した。NODマウスを、少なくと
も3回の非空腹時血糖の読みが350mg/dLを超えた後にランゲルハンス島移植のレシピエントとして用いた。両例とも400 IEを移植した。動物を、レパリキシン単独(移植後−1日目から開始して7日目まで、5.28mg/kg/時間の連続皮下注入)、ラパマイシン単独(1日1回の腹腔内注射を0日目に0.3mg/kgの誘導量で開始し、続いて0.15mg/kgの維持量で14日目まで)、レパリキシン+ラパマイシン、またはビヒクルで処理した。
そのほか、レパリキシンによる処理は、移植後一次機能に達したマウスにおいて拒絶までの時間を有意に延長した(図7)。生存中央時間は、ラパマイシンの不存在下でレパリキシン処理マウスおよびビヒクル処理マウスについて、それぞれ12±0.6日間(n=13)および8±0.5日間(n=7)であった。ラパマイシンの存在下では、生存中央時間はレパリキシンマウスおよび対照マウスについて、それぞれ12±2日間(n=11)および8±0.6日間(n=11)であった。これらのデータは、共変量としてレパリキシン処理、ラパマイシン処理、およびレシピエントの移植前糖血症を含む多変量Cox回帰解析により確認された。レパリキシン処理は移植体生存率の損失に対する有意に独立した保護因子であることが確認され(オッズ比:0.252;95%の信頼区間:0.099〜0.64;p=0.004)、一方、ラパマイシン処理(オッズ比:1.173;95%の信頼区間:0.562〜2.45;p=0.67)および移植前糖血症(オッズ比:1.002;95%の信頼区間:0.604〜1.661;p=0.99)は有意でなかった。
肝臓内白血球集団を、マウスにおいてレパリキシン処理の存在下または不存在下での同種異系肝臓内ランゲルハンス島移植後に分析した。12週令のBalb/cマウスからのランゲルハンス島(400 EI)を、糖尿病のC57マウス(アロキサン誘導,>450mg/dl)の肝臓に移植した;8mg/時間/kgの用量で−1日目から開始して7日間の皮下連続注入レパリキシンの存在下、またはビヒクルの存在下。マウスをランゲルハンス島移植後0、+1、+3、+5、+7、+10、+14日目にと殺し、剖検時に肝臓を秤量した。既知重量の2つの肝葉から単一細胞懸濁液を調製し、フローサイトメトリーによる肝臓内白血球(IHL)集団の分析を実施した。細胞を下記のもので表面染色した:イソチオシアン酸フルオレセイン(FITC)標識、フィコエリトリン(PE)標識
またはアロフィコシアニン(APC)標識した、抗CD4、抗CD8、抗CD3、抗CD19、抗TCR、抗NK1.1、抗CD11、抗Gr−1、抗CD11b、および抗CD11c Abs(PharMingen、San Diego、CA);下記の検出のため:Gr−1+/CD11b+/CD11c−細胞(大部分がPMN)、CD4+/TCR+(大部分がTヘルパー細胞)、CD8+/TCR+細胞(大部分がCTL)、NK1.1+/CD3−細胞(NK細胞)、NK1.1+/CD3+細胞(NKT細胞)およびGr−1−/CD11b+/CD11c−(大部分がマクロファージ)、CD115+/CD11b+/Cd11c−(大部分が単球)、CD11c+/CD11b+/Gr1−(大部分が樹状細胞)、CD19(大部分がBリンパ球)。試料をFACSCaliburフローサイトメーター上に採取し、CELLQuestソフトウェア(Becton Dickinson Immunocytometry Systems、San Jose、CA)を用いてデータを分析した。
得られた結果により、レパリキシン処理は同種異系移植後の肝臓における白血球動員および浸潤を低下させることが確認される。特にCXCR2を発現する白血球亜集団であるPMN(図8)およびNKT細胞(図9)は有意に影響を受け、これは図10にもみられる。
12週令のBalb/cマウスからのランゲルハンス島(400EI)を、糖尿病のC57マウス(アロキサン誘導,>450mg/dl)の骨髄に、8mg/時間/kgの用量で−1日目から開始して7日間の皮下連続注入レパリキシンの存在下で移植した。対照グループのマウスをビヒクルで処理した。実験の一次エンドポイントは、ランゲルハンス島移植後2回の連続測定について250mg/dl未満の非空腹時血糖値として定義する一次機能に達する能力、および2回連続して350mg/dLを超える非空腹時血糖の読みとして定義する拒絶までの時間であった。
本願発明の他の態様は、以下の通りである;
態様1
I型糖尿病患者にランゲルハンス島を移植するためのアジュバント医薬の調製のための、CXCR1および/またはCXCR2の阻害薬の使用。
態様2
阻害薬が式Iの化合物またはその医薬的に許容できる塩:
態様3
医薬的に許容できる塩がリジン塩およびナトリウム塩から選択される、態様2に記載の使用。
態様4
医薬が、ランゲルハンス島細胞の移植定着および早期の移植体機能を改善する、態様1〜3のいずれか1項に記載の使用。
態様5
医薬が、移植されたランゲルハンス島の機能不全の発生を低下させる、態様1〜4のいずれか1項に記載の使用。
態様6
医薬が、ランゲルハンス島細胞移植体拒絶までの時間およびその発生を低下させる、態様5に記載の使用。
態様7
医薬が、長期移植体生存率を改善する、態様6に記載の使用。
態様8
式Iの化合物が、R(−)−N−2−[(4−イソブチルフェニル)プロピオニル]−メタンスルホンアミドおよびR(−)−2−[(4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]プロピオニル−メタンスルホンアミドから選択される、態様1〜7のいずれか1項に記載の使用。
Claims (12)
- I型糖尿病患者にランゲルハンス島を移植するためのアジュバント医薬の調製のための、CXCR1および/またはCXCR2の阻害薬の使用。
- 該阻害薬がCXCR2の阻害薬である、請求項1に記載の使用。
- 医薬が、ランゲルハンス島細胞の移植定着および早期の移植体機能を改善する、請求項1または2に記載の使用。
- 医薬が、移植されたランゲルハンス島の機能不全の発生を低下させる、請求項1〜3のいずれかに記載の使用。
- 医薬が、ランゲルハンス島細胞移植体拒絶までの時間およびその発生を低下させる、請求項4に記載の使用。
- 医薬が、長期移植体生存率を改善する、請求項5に記載の使用。
- CXCR1および/またはCXCR2の阻害薬を含む、I型糖尿病患者にランゲルハンス島を移植するためのアジュバント医薬。
- 該阻害薬がCXCR2の阻害薬である、請求項7に記載のアジュバント医薬。
- 医薬が、ランゲルハンス島細胞の移植定着および早期の移植体機能を改善する、請求項7または8に記載のアジュバント医薬。
- 医薬が、移植されたランゲルハンス島の機能不全の発生を低下させる、請求項7〜9のいずれかに記載のアジュバント医薬。
- 医薬が、ランゲルハンス島細胞移植体拒絶までの時間およびその発生を低下させる、請求項10に記載のアジュバント医薬。
- 医薬が、長期移植体生存率を改善する、請求項11に記載のアジュバント医薬。
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