次に、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
(1)凹版印刷機の全体構成
図1に示す凹版印刷機1において、シートとしての紙2が積載されたシート供給装置としての給紙装置3には、当該給紙装置3のサッカ機構により上層から一枚ずつ送り出された紙2を搬送するフィーダーボード4が連絡される。そして、このフィーダーボード4には、当該フィーダーボード4上の紙2をくわえて揺動するスイング装置5が連絡される。
スイング装置5には、紙2をくわえて保持するくわえ爪装置が周方向に沿って等間隔で3つ配設された、いわゆる3倍胴の圧胴6が渡胴7を介して連絡されており、その圧胴6がフレーム23に回転自在に支持されている。
渡胴7には、圧胴6のくわえ爪装置と同様なくわえ爪装置が設けられており、スイング装置5から受け渡された紙2は渡胴7のくわえ爪装置から圧胴6のくわえ爪装置にくわえ替えされる。
圧胴6には、周方向に沿って3枚の凹版を取り付けることができる、いわゆる3倍胴でなる回転体としての凹版胴8が対接されており、その凹版胴8がフレーム23に回転自在に支持されている。この凹版胴8の凹版面には、周方向に沿って4枚のゴム製のブランケットを取り付けることができる、いわゆる4倍胴のインキ集合胴9が対接されており、そのインキ集合胴9がフレーム24に回転自在に支持されている。
インキ集合胴9には、圧胴6のブランケットや凹版胴8の凹版面の長さに対応した周面長をなす、いわゆる単一胴のパターンローラ(シャブロン胴)10が周方向にわたって5つ対接されており、そのパターンローラ10がフレーム24にそれぞれ支持されている。
これらのパターンローラ10には、当該パターンローラ10にインキを供給するインキ供給装置11がそれぞれ対接されており、これらのインキ装置11がフレーム25にそれぞれ支持される。これらインキ供給装置11内には、互いに異なる色のインキが各々充填されている。
また圧胴6には、排紙胴27が対接されており、その排紙胴27には排紙装置22のスプロケット(図示せず)が同軸をなして設けられている。排紙装置22のスプロケット(図示せず)と、スプロケット22aとには、一対の排紙チェーン22bが張架されている。排紙チェーン22bには、排紙爪(図示せず)が設けられている。排紙チェーン22bの走行方向下流側には、排出装置としての排紙台22cが複数設けられている。
さらに凹版印刷機1は、凹版胴8の凹版面にワイピング装置21のワイピングローラ19が対接されており、当該ワイピングローラ19がワイピングタンク20内に配置されていると共に、当該ワイピング装置21の凹版胴8の回転方向上流側にはインキ除去装置としての凹版胴洗浄装置18が設けられており、当該凹版胴洗浄装置18が凹版胴8の凹版面を洗浄するように構成されている。
(2)ワイピング装置及び凹版胴洗浄装置の構成
続いて、凹版印刷機1におけるワイピング装置21及び凹版胴洗浄装置18の構成を、図2を用いて説明する。
(2−1)ワイピング装置の構成
図2に示すようにワイピング装置21は、内部にワイピングタンク20が設けられた本体部31と、ワイピングタンク20内に回転可能に支持され凹版胴8に対接するワイピングローラ19とが設けられている。
そしてワイピング装置21は、ワイピングローラ19に対接し当該ワイピングローラ19の表面に付着した余剰インキを除去する第1のワイピングパッド32および第2のワイピングパッド33が設けられている。すなわち、第1のワイピングパッド32はワイピングローラ19の回転方向上流側に設けられ、第2のワイピングパッド33はワイピングローラ19の回転方向下流側に設けられている。
第1のワイピングパッド32は、本体部31に支持された本体32Aと、当該本体32A上に金網、スポンジ、金属ブラシ等で形成され、ワイピングローラ19に圧接されるパッド部材32Bとを備える。
第2のワイピングパッド33は、本体部31に支持された本体33Aと、当該本体33A上に金網、スポンジ、金属ブラシ等で形成され、ワイピングローラ19に圧接されるパッド部材33Bとを備える。
さらにワイピング装置21は、ワイピングローラ19の表面に付着した余剰インキを除去するのに好適な強アルカリ性の苛性ソーダを含むワイピング液を噴射するための3つの噴射ノズル32C、33Cおよび34を有している。
第2のワイピング液供給装置としての噴射ノズル32Cは、第1のワイピングパッド32のパッド部材32Bの背面側に配設された位置で、第1のワイピングパッド32の本体32Aに取り付けられており、パッド部材32Bとワイピングローラ19との対接箇所を指向している。
第1のワイピング液供給装置としての噴射ノズル34は、第1のワイピングパッド32よりもワイピングローラ19の回転方向上流側に配設された位置で本体部31に取り付けられており、第1のワイピングパッド32よりもワイピングローラ19の回転方向上流側の当該ワイピングローラ19の周面を指向している。
第3のワイピング液供給装置としての噴射ノズル33Cは、第1のワイピングパッド32の噴射ノズル32Cよりもワイピングローラ19の回転方向下流側で、かつ第2のワイピングパッド33のパッド部材33Bよりもワイピングローラ19の回転方向上流側に配設された位置で、第2のワイピングパッド33の本体33Aに取り付けられており、パッド部材33Bとワイピングローラ19との対接箇所の対接面を指向している。
ワイピング液供給装置47は、噴射ノズル32C、33C、34および後述する噴射ノズル54にワイピング液を供給するものである。噴射ノズル32C、33Cは、ポンプ46を介してワイピング液供給装置47に接続され、噴射ノズル34、54は三方弁44およびポンプ46を介してワイピング液供給装置47に接続されている。なお、三方弁44は、ワイピング液の供給先を噴射ノズル34(矢印A方向)および噴射ノズル54(矢印B方向)の一方または両方に切り替える切替弁である。
廃液処理装置49は、廃液槽としてのワイピングタンク20に貯留されたワイピング液の廃液(以下、これをワイピング廃液と呼ぶ)35および後述する凹版胴洗浄装置18の廃液受け53からのワイピング廃液を清浄化処理する装置である。廃液処理装置49は、ワイピングタンク20のドレーン41にポンプ45を介して接続され、かつ、凹版胴洗浄装置18の廃液受け53にポンプ55を介して接続されるとともに、ワイピング液供給装置47にポンプ48を介して接続されている。
ところでワイピング装置21は、図3に示すように、ワイピングローラ19の軸19Aが本体部31に回動自在に支持された偏芯軸受19Bによって回転自在に支持されており、当該偏芯軸受19Bは本体部31に支持されたアクチュエータ19Cに接続されている。偏芯軸受19Bおよびアクチュエータ19Cは、ワイピングローラ19を凹版胴8に対して接触離反させるワイピングローラ着脱部66(図6)を構成している。
(2−2)インキ除去装置の構成
図2乃至図4に示すようにインキ除去装置としての凹版胴洗浄装置18は、その周面にブラシが植設された洗浄部材としてのブラシローラ51と、このブラシローラ51のブラシ部分にワイピング液を噴射する噴射ノズル54と、凹版胴8の凹版面を洗浄した際に出るワイピング廃液を受ける廃液受け53が設けられている。
図4および図5に示されるように、廃液受け53は、ブラシローラ51を回転可能に支持するとともに噴射ノズル54を支持し、回動軸58を介してフレーム71、72に回動自在に支持されるとともに、エアーシリンダ等でなるアクチュエータ52に接続されている。
すなわち、廃液受け53、回動軸58及びアクチュエータ52によってブラシローラ51を凹版胴8に対して接触離反させるブラシローラ着脱部67(図6)を構成している。
図5に示されるように、廃液受け53には駆動モータ59が取り付けられている。駆動モータ59に固定された第1ギア74は、廃液受け53に回動自在に支持された第2ギア75と歯合し、当該第2ギア75はブラシローラ51の軸51Aの一端に固定された第3ギア76に歯合しており、駆動モータ59がブラシローラ51を回転させるように構成されている。
廃液受け53には、モータ73が取り付けられており、当該モータ73には、廃液受け53の外周面にモータ軸の軸方向へ傾斜した傾斜溝部81Aを有する円柱状の溝カム81が固定されている。そして、この溝カム81の傾斜溝部81Aには、廃液受け53に取り付けられた支柱84のピン85を介して揺動自在に支持されているレバー82の一端部に設けられたカムフォロワ82Aが係合している。
一方、ブラシローラ51の軸51Aには、その周方向にわたって形成された係合溝部83Aを有する往復動受部83が固定されている。そして、この往復動受部83の係合溝部83Aには、レバー82の他端部に設けられたカムフォロワ82Bが係合している。すなわち凹版胴洗浄装置18は、モータ73、溝カム81、支柱84、ピン85、レバー82、カムフォロワ82A、82B及び往復動受部83によって往復動装置を構成している。
(3)凹版印刷機における制御系の構成
図6に示すように、CPU(Central Processing Unit)構成でなる制御装置60には、凹版印刷機1の例えばパネル(図示せず)上に設けられた印刷開始スイッチ61、印刷停止スイッチ62、洗浄開始スイッチ63が接続され、また凹版印刷機1の位相を検出する本機位相検出部65、ブラシローラ51の凹版胴8に対する着脱回数をカウントするカウンタ64が接続される。さらに制御装置60には、ワイピングローラ着脱部66のアクチュエータ19C、ブラシローラ着脱部67のアクチュエータ52、駆動モータ59、およびモータ73が接続される。
(4)印刷処理
このように構成されていることにより、凹版印刷機1では、給紙装置3からフィーダーボード4上へ一枚ずつ送り出された紙2がスイング装置5から渡胴7を経由して圧胴6のくわえ爪装置にくわえ替えられて搬送される一方、各インキ供給装置11のインキが各パターンローラ10を介してインキ集合胴9に転写されて凹版胴8の凹版面上に供給される。
そして、凹版胴8の凹版面上に供給されたインキの余剰分(以下、これを余剰インキと呼ぶ)がワイピング装置21のワイピングローラ19によって取り除かれ、紙2が圧胴6と凹版胴8との間を通過するときに、紙2に凹版胴8のインキが転写されて印刷され、その紙2が排紙胴27を介して排紙装置22の排紙チェーン22bにより搬送された後、排紙台22c上に排紙される。
印刷処理中においてワイピング装置21のワイピングローラ19は、図3に示すように、アクチュエータ19Cによる偏芯軸受19Bの一方向への回動により凹版胴8の凹版面に押圧される作動位置(図3の実線位置)に位置付けられて凹版胴8上の余剰インキを除去する。
そしてワイピング装置21は、凹版胴8の凹版面から余剰インキを除去したワイピングローラ19を洗浄する。すなわち、図2に示されるように、ワイピングローラ19の表面に付着した余剰インキを、噴射ノズル32C、33C、34から噴射されたワイピング液と第1のワイピングパッド32及び第2のワイピングパッド33によって除去するのである。
凹版胴8の凹版面から余剰インキを除去したワイピングローラ19は、先ず、噴射ノズル34から当該ワイピングローラ19の周面にワイピング液が供給される。これにより、最初の段階で、ワイピングローラ19の表面に付着した余剰インキは大量のワイピング液により溶解させられ、後続の第1のワイピングパッド32による余剰インキの除去が容易になるのである。
次に、回転するワイピングローラ19に第1のワイピングパッド32が押付けられることによって、ワイピングローラ19の表面に付着した余剰インキが当該第1のワイピングパッド32により除去される。第1のワイピングパッド32のパッド部材32Bの背面には噴射ノズル32Cからワイピング液が供給されている。
この第1のワイピングパッド32による余剰インキの除去は、ワイピングローラ19の表面に付着した余剰インキを最初に掻き落として除去する粗除去であり、噴射ノズル34及び噴射ノズル32Cにより事前に供給された大量のワイピング液によって余剰インキが溶解されているので掻き取り効果が高く、かつ噴射ノズル32Cからのワイピング液によりパッド部材32Bに対する余剰インキの目詰まりが防止されているので、粗除去として常時高い掻き取り効果を維持している。
そして、回転するワイピングローラ19に第2のワイピングパッド33が押付けられることによって第1のワイピングパッド32のパッド部材32Bにより余剰インキが除去された後の残余分が当該第2のワイピングパッド33により完全に除去される。第2のワイピングパッド33による余剰インキの残余分の除去の前に、パッド部材33Bとワイピングローラ19とが対接する部分の対接面に向けて噴射ノズル33Cからワイピング液が供給される。
この第2のワイピングパッド33による余剰インキの除去は、第1のワイピングパッド32のパッド部材32Bにより余剰インキが除去された後の残余分を除去する仕上除去であり、噴射ノズル33Cにより供給されるワイピング液によって、第2のワイピングパッド33のパッド部材32Bが十分に湿らされる。
また、第2のワイピングパッド33は、樹脂で形成されているワイピングローラ19の周面を研磨してワイピング液を拭き取りながら当該周面を整える。
なお、第1のワイピングパッド32のパッド部材32Bの材質や表面形状や剛性は粗除去に好適なものが選択され、第2のワイピングパッド33のパッド部材33Bの材質や表面形状や剛性は仕上除去に好適なものが選択される。但し、第1のワイピングパッド32のパッド部材32Bと、第2のワイピングパッド33のパッド部材33Bとが、同じものであっても良い。
印刷処理中においては、制御装置60により三方弁44を矢印A方向へ開栓し、かつ矢印B方向へ閉栓するよう制御し、ワイピング液をワイピング液供給装置47からポンプ46及び三方弁44を介して、噴射ノズル34、32C、33Cからワイピング液を噴射する。
そしてワイピング装置21では、噴射ノズル34、32C、33Cから噴射されたワイピング液及び第1のワイピングパッド32及び第2のワイピングパッド33によって拭き取られた余剰インキからなるワイピング廃液35を廃液槽としてのワイピングタンク20内に一時的に貯留させた後、ドレーン41及びポンプ45を介して廃液処理装置49へ排出する。
印刷処理が終了すると、ワイピングローラ着脱部66のアクチュエータ19Cを介して偏芯軸受19Bを他方向に回動させ、ワイピングローラ19を凹版胴8の凹版面から離反する退避位置(図3の二点鎖線位置)に位置付ける。
因みに凹版胴洗浄装置18は、印刷処理中においては、制御装置60によりブラシローラ着脱部67のアクチュエータ52を介して凹版胴8の凹版面から当該ブラシローラ51を離反させるように制御される。
(5)凹版胴の洗浄処理
凹版胴8を洗浄するときには、図4に示すように、アクチュエータ52を作動させて廃液受け53を図中の退避位置(二点鎖線位置)から洗浄位置(実線位置)へ位置付けることにより、ブラシローラ51が凹版胴8の凹版面に接触する。ここでワイピング液供給装置47(図2)からのワイピング液は、噴射ノズル54を介して当該ブラシローラ51のブラシ部分に直接噴射される。
さらに、図5に示すように、駆動モータ59を駆動させると、第1ギア74、第2ギア75、第3ギア76を介してブラシローラ51が回転する。図4に示すように、ブラシローラ51の回転により凹版胴8の凹版面に残存している絵柄部分のインキや異物等が当該凹版面に対する円周方向に掻き取られる。
図5に示すように、モータ73を駆動させると、円柱状の溝カム81が回転し、この溝カム81の傾斜溝部81Aに沿ってカムフォロワ82Aが動いてレバー82がピン85を中心に矢印R方向へ揺動する。レバー82の揺動により、カムフォロワ82B及び係合溝部83Aを有する往復動受部83を介してブラシローラ51が軸方向(矢印Y方向)へ往復動する。
ブラシローラ51は、その幅が凹版胴8の凹版面と同じなので、当該ブラシローラ51が軸51Aに沿って往復動したとき、凹版胴8の凹版面を全体にわたって左右方向にブラッシングする。このように、凹版胴8の凹版面とブラシローラ51とを対接させた状態で、ブラシローラ51を回転させながら軸方向へ往復動させることにより、回転中の凹版胴8の凹版面に残存している絵柄部分のインキや異物等が当該ブラシローラ51によって完全に除去される。
洗浄処理中においては、制御装置60により、三方弁44を矢印B方向へ開栓し、かつ矢印A方向へ開栓するように制御し、ワイピング液供給装置47(図2)からポンプ46及び三方弁44を介して噴射ノズル54からワイピング液を噴射する。
さらに凹版胴洗浄装置18は、制御装置60により、凹版胴8の洗浄処理中、ブラシローラ着脱部67を介して当該凹版胴8の凹版面に当該ブラシローラ51を対接させる。ここで、凹版胴8を凹版印刷機1に保持するための版万力(図示せず)が収納されている切欠部8A、8B及び8C(図3)とブラシローラ51とが対向している間は、ブラシローラ着脱部67を介して当該ブラシローラ51を凹版胴8から離反させるように制御される。
すなわち制御装置60は、ブラシローラ51を凹版胴8の凹版面に接触させているブラシローラ「着」状態と、ブラシローラ51を凹版胴8から離反させているブラシローラ「脱」状態とを、本機位相検出部65により検出される本機位相に基づいて切り換えるのである。
また制御装置60は、ブラシローラ51を凹版胴8の凹版面から離反させている間、ブラシローラ51の回転及び軸方向への往復動を停止させるように駆動モータ59及びモータ73を制御する。
すなわち凹版胴洗浄装置18は、制御装置60、駆動モータ59及びモータ73により停止装置を構成する。更に凹版胴洗浄装置18は、ブラシローラ51の回転及び軸方向への往復動を停止させると同時に、制御装置60により、噴射ノズル54からワイピング液の噴射を停止するように制御される。
この場合、凹版胴洗浄装置18は、凹版胴8の洗浄処理中、制御装置60により、三方弁44を矢印B方向へ開栓し、かつ矢印A方向へ開栓しているが、当該三方弁44と噴射ノズル54との間に設けられたワイピング液切換弁(図示せず)を閉栓することにより、凹版胴8の切欠部8A、8B及び8Cとブラシローラ51とが対向するタイミング、すなわち当該ブラシローラ51を凹版胴8の凹版面から離反させると共にブラシローラ51の回転を停止している間だけ、噴射ノズル54からワイピング液の供給を停止する。
さらに凹版胴洗浄装置18は、ブラシローラ51の回転により凹版胴8の凹版面を洗浄した際に出るワイピング廃液を廃液受け53に一時的に貯留し、それをポンプ55(図2)を介してワイピング装置21の廃液処理装置49へ送出する。
廃液処理装置49では、ワイピングタンク20から排出されたワイピング廃液35及び廃液受け53から排出されたワイピング廃液を清浄化処理し、清浄化処理後のワイピング液を生成(再生)し、これをポンプ48を介してワイピング液供給装置47へ送出する。これによりワイピング装置21では、ワイピング廃液35をそのまま廃棄するのではなく再利用することができるので、ワイピング液の補充やワイピング廃液35の廃棄といった煩雑な手間を省略し、効率的にワイピングローラ19及び凹版胴8を洗浄することができる。
(6)凹版印刷機における印刷処理手順
このような構成の凹版印刷機1における印刷処理手順を図7のフローチャートにより説明する。
凹版印刷機1の制御装置60は、ルーチンRT1の開始ステップから入って次のステップSP1へ移り、印刷開始スイッチ61が操作されたか否かを判定し、否定結果が得られると再度ステップSP1へ戻り、印刷開始スイッチ61が操作されるまで待ち受けるのに対し、印刷開始スイッチ61が操作されたことを認識すると、肯定結果を得て次のステップSP2へ移る。
ステップSP2において制御装置60は、印刷開始スイッチ61が操作されたことを認識したので、ワイピング装置21のワイピングローラ着脱部66のアクチュエータ19Cを制御することによりワイピングローラ19を凹版胴8の凹版面に接触させたワイピングローラ「着」状態として、次のステップSP3へ移る。
ステップSP3において制御装置60は、三方弁44を矢印A方向に開栓すると共に矢印B方向に閉栓し、噴射ノズル34からワイピング液をワイピングローラ19に対して直接噴射し、次のステップSP4へ移る。なお、このとき凹版印刷機1では、ワイピング液供給装置47から噴射ノズル32C及び33Cを介して第1のワイピングパッド32及び第2のワイピングパッド33に対してもワイピング液を供給している。
ステップSP4において制御装置60は、予め設定された所定枚数分の印刷処理が完了したか否か、または印刷停止スイッチ62が操作されたか否かを判定し、否定結果が得られるとステップSP4へ戻るのに対し、肯定結果が得られると次のステップSP5へ移る。
ステップSP5において制御装置60は、予め設定された所定枚数分の印刷処理が完了したか、または印刷停止スイッチ62が操作されたことを認識したので、ワイピング装置21のワイピングローラ着脱部66のアクチュエータ19Cを制御することによりワイピングローラ19を凹版胴8の凹版面から離反させたワイピングローラ「脱」状態として、次のステップSP6へ移って印刷処理手順を終了する。
このように凹版印刷機1では、印刷処理中であれば、噴射ノズル34、第1のワイピングパッド32の噴射ノズル32C及び第2のワイピングパッド33の噴射ノズル33Cを介してワイピング液をワイピングローラ19へ供給し、当該ワイピングローラ19を洗浄しながら、凹版胴8の凹版面上の余剰インキをワイピングローラ19により完全に取り除くことにより、良質な印刷処理を実行することができる。
(7)凹版印刷機における凹版胴の洗浄処理手順
続いて、凹版印刷機1における凹版胴8の洗浄処理手順を図8のフローチャートにより説明する。
凹版印刷機1の制御装置60は、ルーチンRT2の開始ステップから入って次のステップSP11へ移り、洗浄開始スイッチ63が操作されたか否かを判定し、否定結果が得られると再度ステップSP11へ戻り、洗浄開始スイッチ63が操作されるまで待ち受けるのに対し、洗浄開始スイッチ63が操作されたことを認識すると、肯定結果を得て次のステップSP12及びステップSP13へ移る。
ステップSP12において制御装置60は、洗浄開始スイッチ63が操作されたことを認識したことに応じて、ワイピング装置21のワイピングローラ着脱部66のアクチュエータ19Cを制御することにより、ワイピングローラ19を凹版胴8の凹版面に接触させたワイピングローラ「着」状態として、次のステップSP21へ移る。
ここで、後述するステップSP13乃至SP20において、凹版胴8をワイピング液で洗浄した後、その凹版面にワイピング液が残存したままでは、当該ワイピング液に強アルカリ性の苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)が含まれているので、時間の経過に伴い苛性ソーダが結晶化して付着してしまい、その凹版胴8を別途洗浄しなければならなくなる。
そこでステップSP12では、第1のワイピングパッド32及び第2のワイピングパッド33によって洗浄した際にワイピングローラ19に付着したワイピング液を当該第2のワイピングパッド33よりもワイピングローラ19回転方向下流側に設けられたブレード(図示せず)により拭き取る。その後、きれいなワイピングローラ19によって、後述する凹版胴洗浄装置18のブラシローラ51がワイピング液により凹版胴8を洗浄した後の当該凹版胴8の凹版面に残存しているワイピング液を完全に拭き取って取り除く。
一方、ステップSP13において制御装置60は、洗浄開始スイッチ63が操作されたことに応じて、三方弁44を矢印A方向に開栓すると共に矢印B方向にも開栓し、噴射ノズル54からワイピング液を凹版胴洗浄装置18におけるブラシローラ51のブラシ部分に直接噴射できるように設定し、かつ噴射ノズル34からワイピング液をワイピングローラ19へ直接噴射できるように設定し、次のステップSP14へ移る。
ステップSP14において制御装置60は、ブラシローラ51により凹版胴8の凹版面を洗浄するに際し、ブラシローラ「着」状態となった回数をカウンタ64によって計数するため、カウンタ64のカウント値「i」を「i=0」に初期設定し、次のステップSP15へ移る。
ステップSP15において制御装置60は、本機位相検出部65によってブラシローラ着位相であることを検出したか否かを判定し、否定結果が得られるとステップSP15へ戻ってブラシローラ着位相であることを検出するまで待ち受けるのに対し、ブラシローラ着位相であることを検出すると肯定結果を得て次のステップSP16へ移る。
このときステップSP16において制御装置60は、凹版胴8の切欠部8A、8B又は8Cの後端REとブラシローラ51とが対向するタイミングであると判断し、駆動モータ59を駆動してブラシローラ51の回転を開始させるとともにモータ73を駆動してブラシローラ51の軸方向への往復動を開始させた後、ブラシローラ着脱部67のアクチュエータ52を作動させることによりブラシローラ51を凹版胴8の凹版面に接触させてブラシローラ「着」状態とし、次のステップSP17へ移る。
ステップSP17において制御装置60は、ブラシローラ「着」状態となったときカウンタ64によって「1」インクリメントとすることにより、計数値「i =i +1」としてカウントアップし、次のステップSP18へ移る。
ステップSP18において制御装置60は、本機位相検出部65によってブラシローラ脱位相であることを検出したか否かを判定し、否定結果が得られるとステップSP18へ戻ってブラシローラ脱位相であることを検出するまで待ち受けるのに対し、ブラシローラ脱位相であることを検出すると肯定結果を得て次のステップSP19へ移る。
このときステップSP19において制御装置60は、凹版胴8の切欠部8A、8B又は8Cの前端REとブラシローラ51とが対向するタイミングであると判断し、駆動モータ59を介してブラシローラ51の回転を停止するとともにモータ73を駆動してブラシローラ51の軸方向への往復動を停止した後、ブラシローラ着脱部67のアクチュエータ52を作動させることによりブラシローラ51を凹版胴8の凹版面から離反させてブラシローラ「脱」状態とし、次のステップSP20へ移る。
ステップSP20において制御装置60は、噴射ノズル54と三方弁44との間に設けられたワイピング液切換弁(図示せず)を閉栓することにより、一時的に噴射ノズル54からのワイピング液の供給を停止し、次のステップSP21へ移る。
このように凹版印刷機1の制御装置60では、例えワイピング液の供給を停止したとしても、ブラシローラ51が常時回転してると、ブラシの毛先に付着しているワイピング液やインキカス等の異物が凹版胴8の切欠部8A、8B又は8Cや意図しない箇所へ飛散するため、これを防止すべく、ステップSP19においてブラシローラ51の回転および軸方向への往復動を停止してブラシローラ「脱」状態とすると共に、ワイピング液の供給を停止するのである。
ステップSP21において制御装置60は、カウンタ64の計数値「i =i0(i0:予め設定した設定値)」となったか否かを判定する。ここで「i0」の値が例えば「15」であれば、凹版胴8が3個の切欠部3A、3B及び3Cを有しているので、凹版胴8が5周したときに凹版胴洗浄装置18による凹版胴8の洗浄を終了すると判断する。
ステップSP21で否定結果が得られると、このことはカウンタ64の計数値「i =i0」となっていない、つまり凹版胴洗浄装置18による凹版胴8の洗浄を継続することを表しており、このとき制御装置60はステップSP15へ戻って、それ以降の処理を繰り返す。
これに対してステップSP21で肯定結果が得られると、制御装置60はブラシローラ「脱」状態であるので、その状態を維持したまま、次のステップSP22へ移る。
ステップSP22において制御装置60は、凹版胴洗浄装置18による凹版胴8の洗浄を終了したので、ワイピング装置21のワイピング着脱部66のアクチュエータ19Cを制御してワイピングローラ19をワイピングローラ「脱」状態とし、次のステップSP23へ移る。
ステップSP23において制御装置60は、凹版胴洗浄装置18による凹版胴8の洗浄処理を終了したため、三方弁44を矢印A方向に閉栓すると共に矢印B方向にも閉栓した後、次のステップSP24へ移って凹版胴8の洗浄処理を終了する。
このように凹版印刷機1では、これまでのように作業者による手動でのマニュアル清掃ではなく、凹版胴洗浄装置18のブラシローラ51により凹版胴8を自動的に洗浄するような構成とすると共に、洗浄処理にワイピング装置21で用いられるワイピング液を使用することにより、凹版胴8に用いられるインキに対して好適な溶解力を得ることができるので、凹版胴洗浄装置18によるインキ除去効率を従来に比して大幅に向上させ、凹版胴8を効率的に洗浄することができる。
(8)作用および効果
以上の構成において、凹版印刷機1は、インキ除去装置としての凹版胴洗浄装置18を設け、印刷処理後の凹版胴8に対して凹版胴洗浄装置18の噴射ノズル54からワイピング液を供給し、ブラシローラ51によって凹版胴8を洗浄することにより、当該凹版胴8の凹版面に残存している絵柄部分のインキ等を良好に溶解しながら当該ブラシローラ51によって効率的かつ確実に除去することができる。
このとき凹版印刷機1では、当該凹版胴洗浄装置18のブラシローラ51を凹版胴8の凹版面に対接した状態で回転させると共に、当該ブラシローラ51を軸方向へ往復動させることにより、凹版胴8の凹版面に残存している絵柄部分のインキや異物等を確実に除去することができる。
また凹版印刷機1は、凹版胴洗浄装置18のブラシローラ51で使用するワイピング液をワイピング装置21のワイピング液供給装置47から供給するように構成した。すなわち凹版印刷機1では、ワイピング液供給装置47と凹版胴洗浄装置18とによって凹版胴洗浄装置を構成することができ、ワイピング装置21のワイピング液供給装置47を凹版胴洗浄装置18にも兼用することができるので、別途、凹版胴8専用の洗浄液や洗浄液貯留タンクを設ける必要がなく、その構成を簡素化してコストダウンを図ることができると共に、洗浄液の残量管理等の煩雑な作業から作業者を解放させることができる。
さらに凹版印刷機1の制御装置60は、凹版胴洗浄装置18による凹版胴8への洗浄開始の命令に応じて、ブラシローラ着脱部67を介して凹版胴8の凹版面にブラシローラ51を接触させるように制御すると共に、ワイピング装置21のワイピングローラ着脱部66を介して凹版胴8の凹版面にワイピングローラ19を接触させるように制御する。
これにより凹版印刷機1では、ブラシローラ51により凹版胴8の凹版面を洗浄した際、当該凹版面に付着したワイピング残液をワイピングローラ19によって拭き取ることができるので、ワイピング液に含まれている強アルカリ性の苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)が時間の経過に伴い結晶化して凹版胴8の凹版面に残存してしまうような事態を予め防止することができ、かくして高い印刷品質を維持することができる。
すなわち凹版印刷機1では、印刷処理時に用いられるワイピング装置21のワイピングローラ19に対して、凹版胴8の凹版面に付着した余剰インキをワイピングローラ19によってワイピングする機能と、凹版胴8の洗浄処理中に凹版面に付着したワイピング残液を拭き取って除去する機能の2つを併せ持たせることにより、その構成を複雑化することなく、効率的に印刷処理及び凹版胴8の洗浄処理を実行することができる。
さらに凹版印刷機1は、凹版胴8の切欠部8A、8B及び8Cとブラシローラ51とが対向するとき、当該ブラシローラ51の回転を停止した後に凹版胴8から離反させると共に、噴射ノズル54からのワイピング液の供給を停止することにより、ワイピングローラ19によりワイピング残液を除去し得ない切欠部8A、8B及び8Cに対して、ブラシローラ51の空転によりワイピング液やインキカス等の異物を飛散させて付着させたり、意図しない箇所にまで異物を飛散させてしまう事態を予め回避することができる。
なお凹版印刷機1は、凹版胴洗浄装置18のブラシローラ51が凹版胴8と接触したブラシローラ「着」状態のカウンタ64による計数値 i に基づいて当該ブラシローラ51による洗浄処理を停止制御するようにしたことにより、凹版胴8における凹版の洗浄回数を指定することができ、洗浄処理を正確に実行することができる。
(7)他の実施の形態
なお、上述した実施の形態においては、噴射ノズル54からワイピング液をブラシローラ51に対して直接噴射するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、凹版胴8とブラシローラ51とが対接している箇所や、凹版胴8に対して直接噴射するようにしても良く、要は、凹版胴8の洗浄処理において凹版胴8とブラシローラ51とが接触中に当該凹版胴8の凹版面にワイピング液が付着するようにワイピング液を噴射するようにすれば良い。
また、上述した実施の形態においては、凹版胴洗浄装置18のブラシローラ51が凹版胴8と接触したブラシローラ「着」状態のカウンタ64による計数値「i」に基づいて当該ブラシローラ51による洗浄処理を停止制御するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、ブラシローラ51が凹版胴8と離反したブラシローラ「脱」状態のカウンタ64による計数値に基づいて当該ブラシローラ51による洗浄処理を停止制御するようにしてもよい。
さらに、上述した実施の形態においては、その周面にブラシが配されたブラシローラ51を用いるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、ブラシローラ51ではなく、布状やスポンジ状の洗浄パッドを用いるようにしてもよい。
さらに、上述した実施の形態においては、噴射ノズル34をワイピングローラ19の周面に直接噴射するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、第1のワイピングパッド32のパッド部材32Bとワイピングローラ19とが対接する対接箇所に噴射するようにしてもよい。
さらに、上述した実施の形態においては、噴射ノズル33Cがパッド部材33Cとワイピングローラ19が対接する対接箇所に噴射しているが、本発明はこれに限らず、当該噴射ノズル33Cがパッド部材33Cよりもワイピングローラ19の回転方向上流側の当該ワイピングローラ19の周面に対して直接ワイピング液を噴射するようにしても良い。