JP6095562B2 - 銅合金材、電気自動車用の配電部材及びハイブリッド自動車用の配電部材 - Google Patents

銅合金材、電気自動車用の配電部材及びハイブリッド自動車用の配電部材 Download PDF

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Description

本発明は、銅合金材に関し、特に高い導電率を維持しつつ、優れた耐熱性を有する銅合金材に関する。
従来より、例えば半導体リードフレームやコネクタ端子等の電気・電子部品の材料等として、銅合金材が幅広く用いられている。近年、このような銅合金材は、例えば電気自動車やハイブリッド自動車の配電部材等の大きな電流が流れる部材にも用いられることがある。このため、銅合金材には、高い導電率を有することが求められている。
また、銅合金材が例えば電気自動車等に用いられる場合、銅合金材は、比較的高温に長時間晒される過酷な環境下で使用されることが多い。このため、銅合金材には、このような過酷な環境下で使用された場合であっても、強度が低下せず、高い信頼性を維持することが求められている。すなわち、銅合金材には、耐熱性を有することが求められている。
一般的に、高い導電率を有する銅合金材として、例えば、優れた導電性及び熱伝導性を有するタフピッチ銅(C1100)や無酸素銅(C1020)を用いて形成した銅合金材が提案されている。このような銅合金材は、100%IACS程度の導電率を有している。しかしながら、このようなタフピッチ銅や無酸素銅を用いた銅合金材は、耐熱性が低いため、上述の過酷な環境下で使用されると、強度が低下する場合があった。
そこで、例えば、少量の錫(Sn)や、少量の鉄(Fe)、少量のジルコニウム(Zr)を添加することで強度を向上させ、耐熱性を向上させた銅合金材が提案されている。すなわち、少量の錫(Sn)を含む銅合金(C1441)、少量の鉄(Fe)を含む銅合金(C1921)、少量のジルコニウム(Zr)を含む銅合金(C1510)等を用いて形成した銅合金材が提案されている(例えば特許文献1〜4参照)。
特許第4495251号公報 特開平9−118943号公報 特開2008−248275号公報 特開2007−92176号公報
しかしながら、上述の例えば少量のFe等を添加した銅合金材は、優れた耐熱性を有するものの、導電率が90%IACS程度と低くなることが多い。このため、このような銅合金材は、大きな電流を流す必要がある例えば電気自動車の配線部材等として用いることが難しい場合があった。また、近年の電気自動車等で求められる使用環境を考えると、銅合金材には、さらに高い温度領域での信頼性、すなわち、さらに高い耐熱性が要求されている。
そこで、本発明は、上記課題を解決し、高い導電率を維持しつつ、耐熱性をより向上させた銅合金材を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は次のように構成されている。
本発明の第1の態様によれば、少なくとも0.003質量%以上0.01質量%以下のZrと、0.03質量%以上0.1質量%以下のAgとを含有し、酸素の含有量が0.001質量%以下であり、導電率が95%IACS以上であり、ビッカース硬さが120Hv以上である銅合金材が提供される。
本発明の第2の態様によれば、導電率が97%IACS以上である第1の態様の銅合金材が提供される。
本発明の第3の態様によれば、400℃で5分間加熱した後のビッカース硬さが100Hv以上である第1又は第2の態様の銅合金材が提供される。
本発明の第4の態様によれば、450℃で5分間加熱した後のビッカース硬さが98Hv以上である第1ないし第3の態様のいずれかの銅合金材が提供される。
本発明の第5の態様によれば、150℃で1000時間加熱した後の応力緩和率が30%以下である第1ないし第4の態様のいずれかの銅合金材が提供される。
本発明の第6の態様によれば、第1ないし第5の態様のいずれかの銅合金材を用いて形成される電気自動車用の配電部材が提供される。
本発明の第7の態様によれば、第1ないし第5の態様のいずれかの銅合金材を用いて形成されるハイブリッド自動車用の配電部材が提供される。
本発明にかかる銅合金材、電気自動車用の配電部材及びハイブリッド自動車用の配電部材によれば、高い導電率を維持しつつ、耐熱性をより向上させることができる。
以下に、本発明にかかる銅合金材の一実施形態について説明する。
(1)銅合金材の構成
本実施形態にかかる銅合金材は、少なくとも、0.003質量%以上0.01質量%以下のジルコニウム(Zr)と、0.03質量%以上0.1質量%以下の銀(Ag)とを含有している。すなわち、銅合金材は、銅(Cu)を母材とし、その母材中に、少なくとも、0.003質量%以上0.01質量%以下のZrと、0.03質量%以上0.1質量%以下のAgとが添加された銅合金を用いて形成されている。これにより、銅合金材は、95%IACS以上の高い導電率(優れた導電性)を維持しながら、優れた耐熱性を有する。すなわち、ZrとAgとの成分間の相互作用を利用することで、導電率の低下が最小限に抑えられつつ、耐熱性を向上させることができる。
従って、本実施形態にかかる銅合金材は、比較的高温に長時間晒される過酷な環境下で、大きな電流を流して用いられる例えば電気自動車やハイブリッド自動車等の配電部材に好適に用いることができる。このような配電部材は、大きな電流を流すことができるとともに、配電部材の温度が上昇した場合であっても強度低下が抑制される。
Zrのみが含まれる銅合金材であると、耐熱性を向上させることはできるものの、導電率の低下を免れることができず、高い導電率を維持することが難しい場合があった。
Agのみが含まれる銅合金材は、導電率の低下を抑制しつつ、耐熱性の向上が期待できる。しかしながら、Agは高価であるため、製造コストの上昇を抑えるためには、含有量を微量に抑える必要がある。従って、Agのみが含まれる銅合金材では、所望とする耐熱性まで向上させることができない場合がある。
Zrの含有量が0.003質量%未満であると、耐熱性の向上効果が低く、所望とする耐熱性が得られない場合がある。Zrの含有量が0.01質量%を超えると、所望とする耐熱性を得ることはできるが、導電率が低下してしまう場合がある。すなわち、銅合金材は、95%IACS以上の高導電率を維持することが難しくなる場合がある。特に、Zrの含有量を0.003質量%以上0.006質量%以下にすることがより好ましく、この場合、良好な導電率が得られやすくなる。
Agの含有量が0.03質量%未満であると、上述のZrの場合と同様に、耐熱性の向上効果が低く、所望とする耐熱性が得られない場合がある。Agの含有量が0.1質量%を超えると、導電率が低下してしまい、95%IACS以上の導電率を維持することが難しくなる場合がある。また、高価なAgの添加量が多くなると、製造コストが上昇してしまう。特に、Agの含有量を0.03質量%以上0.06質量%以下にすることがより好ましく、この場合、良好な特性と製造コストのバランスが得られやすくなる。
銅合金材中の酸素(O)の含有量は0.001質量%以下である。ZrやAgが有する耐熱性の向上効果を妨げる要因として、銅合金材中に含まれる酸素の存在が挙げられる。銅合金材中に含まれる酸素は、ZrやAgと反応して酸化物を形成する。特にZrは酸素と反応して酸化物(ZrO)を形成しやすい。Zrが酸化物になると、耐熱性を向上させる効果が著しく低下する。従って、本実施形態にかかる銅合金材では、酸素の含有量が0.001質量%以下となるように調整されている。これにより、ZrとAgとを含有させることによる耐熱性の向上効果をより引き出すことができる。従って、Zr及びAgの含有量を最小限に抑えることができるので、導電率の低下が抑制される。その結果、銅合金材は、高い導電率を維持しつつ、耐熱性を向上させることができる。
酸素の含有量が0.001質量%を超えると、所望とする耐熱性が得られない場合がある。すなわち、特にZrが酸素と反応して酸化物を形成することによるエネルギロスが大きくなるため、耐熱性を十分に向上させることができない場合がある。
後述するように、銅合金材が製造される際、冷間圧延処理と熱処理とが所定回数繰り返して行われる。一般的に、冷間圧延処理を行うと、銅合金材の硬度は増すが、導電率は低下する。このとき、少なくともZr及びAgの含有量と、酸素の含有量とが上述したように設定されることにより、銅合金材は、95%IACS以上、好ましくは97%IACS以上の導電率を維持しつつ、ビッカース硬さを120Hv以上とすることができる。すなわち、銅合金材は、冷間圧延処理によってビッカース硬さが120Hv以上となるまで硬化させた後であっても、95%IACS以上、好ましくは97%IACS以上の高い導電率を維持することができる。
これに対し、従来の例えば錫(Sn)や鉄(Fe)等を添加することで耐熱性を向上させた銅合金材では、ビッカース硬さが120Hv程度となるまで硬化させた後の導電率を95%IACS以上とすることが困難な場合があった。
ここで、参考までに、例えば、タフピッチ銅や無酸素銅を用いて形成した銅合金材は、熱処理後の軟化した状態での導電率は102%IACS程度であり、冷間圧延処理によってビッカース硬さが120Hv程度となるまで硬化させた後の導電率は100%IACS前後である。
また、本実施形態にかかる銅合金材は、400℃で5分間加熱した後のビッカース硬さが100Hv以上である。450℃で5分間加熱した後のビッカース硬さが98Hv以上であるとより良い。すなわち、本実施形態にかかる銅合金材は、95%IACS以上の高い導電率を維持しつつ、優れた耐熱性を有する。これに対し、従来の例えばタフピッチ銅や無酸素銅を用いて形成した銅合金材では、300℃程度で5分間加熱すると、軟化が生じてビッカース硬さが著しく低下する場合があった。
また、本実施形態に係る銅合金材は、150℃で1000時間加熱した後の応力緩和率が30%以下である。すなわち、本実施形態にかかる銅合金材は、応力緩和率の観点からも優れた耐熱性を有する。なお、応力緩和率は、日本電子材料工業会標準規格EMAS−1011および日本伸銅協会技術標準JCBA−T309に規定されている片持ち梁方式にて測定した値である。
上述したように、本実施形態にかかる銅合金材は、高い導電率を維持しつつ、優れた耐熱性を有する。従って、比較的高温に長時間晒される過酷な環境下で、大きな電流が流されて使用される場合であっても、強度低下が抑制され、十分な信頼性を確保できる。その結果、本実施形態にかかる銅合金材は、例えば電気自動車やハイブリッド自動車等に配電部材に好適に用いることができる。
(2)銅合金材の製造方法
次に、本実施形態にかかる銅合金材の製造方法の一実施形態について説明する。
(銅合金の鋳造工程)
本実施形態にかかる銅合金材の製造方法では、まず、所定の組成を有する銅合金を鋳造する。すなわち、まず、母材である銅(Cu)を例えば高周波溶解炉等を用いて溶解して溶湯を製造する。この溶湯中に、0.003質量%以上0.01質量%以下のジルコニウム(Zr)と、0.03質量%以上0.1質量%以下の銀(Ag)とを添加して、銅合金の溶湯を形成する。このとき、銅合金の溶湯中の酸素(O)の含有量が0.001質量%以下となるように調整する。そして、この銅合金の溶湯を鋳型に供給して所定形状のインゴットを鋳造する。なお、上記酸素含有量の調整は、溶湯を作製する際の雰囲気中の酸素分圧を調整することで制御でき、酸素含有量を少なくする際は、例えば、雰囲気に一酸化炭素や水素などの還元性ガスを混入することで、制御することができる。
(熱間圧延工程)
鋳造工程が終了した後、例えば連続鋳造圧延方式によって、鋳造したインゴットを所定温度(例えば950℃)に加熱して熱間圧延処理を行い、所定厚さの銅合金の板材を形成する。熱間圧延終了後は、なるべく速やかに銅合金の板材を冷却するとよい。
(冷間圧延・熱処理工程)
熱間圧延処理が終了した後、銅合金の板材に、冷間圧延処理と、所定温度(例えば700℃)に加熱する熱処理(焼鈍処理)とを行って、所定厚さの銅合金材を形成する。冷間圧延処理と熱処理とはそれぞれ所定回数繰り返して行うとよい。このとき、最終の冷間圧延処理を所定の加工度(例えば60%)で行うとよい。最終の冷間圧延処理の加工度が高すぎると、銅合金材に歪みが蓄積されやすくなる。この歪みが応力緩和のエネルギ源となるため、銅合金材が加熱されると(銅合金材が高温になると)、応力緩和が生じ、強度が低下しやすくなる場合がある。すなわち、銅合金材の耐熱性が低下してしまう場合がある。なお、冷間圧延処理と熱処理とを1回ずつ行ってもよい。熱処理はバッチ処理であっても、連続処理であってもよい。これにより、本実施形態にかかる銅合金材が製造されて、その製造工程を終了する。
(3)本実施形態にかかる効果
本実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の効果を奏する。
(a)本実施形態によれば、銅合金材は、少なくとも0.003質量%以上0.01質量%以下のZrと、0.03質量%以上0.1質量%以下のAgとを含有している。また、銅合金材中の酸素(O)の含有量が0.001質量%以下となるように調整されている。これにより、銅合金材は、高い導電率を維持しつつ、耐熱性を向上させることができる。すなわち、銅合金材は、母材として純銅を用いた銅合金材と同程度の高い導電率を維持しつつ、高温下であっても強度低下を起こさない優れた耐熱性を有する。すなわち、95%IACS以上、好ましくは97%IACS以上の導電率を維持しつつ、ビッカース硬さを120Hv以上とすることができる。従って、本実施形態にかかる銅合金材は、比較的高温に長時間晒される過酷な環境下で使用され、大きな電流が流される例えば電気自動車やハイブリッド車等の配電部材として好適に用いることができる。この他、例えばさまざまな環境下での信頼性が必要な例えばパワーモジュール等に用いることができる。
(b)本実施形態によれば、銅合金材は、400℃で5分間加熱した後のビッカース硬さが100Hv以上である。好ましくは、450℃で5分間加熱した後のビッカース硬さが98Hv以上である。すなわち、本実施形態にかかる銅合金材は、95%IACS以上の高い導電率を維持しつつ、優れた耐熱性を有する。
(c)本実施形態によれば、銅合金材は、150℃で1000時間加熱した後の応力緩和率が30%以下である。すなわち、実施形態にかかる銅合金材は、応力緩和率の観点からも優れた耐熱性を有する。
次に、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
実施例1では、母材として無酸素銅を用いた。そして、高周波溶解炉を用い、窒素雰囲気下にて無酸素銅を溶解して溶湯を作製(溶製)した。窒素雰囲気下にて、その溶湯中にジルコニウム(Zr)を0.004質量%、銀(Ag)を0.05質量%添加し、銅合金の溶湯を作製した。その後、作製した銅合金の溶湯を鋳型に供給し、厚さ25mm、幅30mm、長さ150mmのインゴットを鋳造した。
このインゴットを所定の温度(950℃)にて加熱して熱間圧延処理を行い、厚さが8mmの銅合金の板材を作製した。次に、厚さが8mmの銅合金の板材に、冷間圧延処理を行って厚さが0.5mmの銅合金の板材を作製した。厚さが0.5mmの銅合金の板材に、700℃で1分間の熱処理(焼鈍処理)を行った。その後、最終の冷間圧延処理を60%の加工度で行い、厚さが0.2mmである銅合金材を作製した。これを実施例1の試料とした。
(実施例2〜8及び比較例1〜10)
実施例2〜8及び比較例1〜10では、銅合金の溶湯中に添加するZr及びAgの添加量を表1に示す通りとした。この他は、上述の実施例1と同様にして銅合金材を作製した。これらをそれぞれ、実施例2〜8及び比較例1〜10の試料とした。
以上のようにして作製した実施例1〜8及び比較例1〜10の各試料について、酸素(O)の含有量を分析した。その結果を表1に示す。
Figure 0006095562

表1に記載の通り、実施例1〜8及び比較例1〜10の各試料はいずれも、酸素の含有量が0.001質量%以下であることを確認した。
以上のようにして作製した実施例1〜8及び比較例1〜10の各試料について、導電率、加熱前のビッカース硬さ、400℃で5分間加熱した後のビッカース硬さ、450℃で5分間加熱した後のビッカース硬さ、150℃で1000時間加熱した後の応力緩和率をそれぞれ測定した。その結果を表2に示す。
応力緩和率の測定は、日本電子材料工業会標準規格EMAS−1011および日本伸銅協会技術標準JCBA−T309に規定されている片持ち梁方式にて行った。すなわち、まず、各試料から所定の大きさの試験片を切り出す。各試験片を片持ち梁の状態にして試験台に保持し、0.2%耐力値の80%の値である曲げ応力(初期の表面最大応力)を負荷として与えた。このとき試験片に生じたたわみ量(初期たわみ量)を測定した。試験片に負荷を与えた状態で、各試験片を150℃に加熱した例えば加熱機構(例えばオーブン)内で1000時間保持する。その後、加熱機構から試験片を取り出し、曲げ応力を除荷したときの永久歪み(永久変形によるたわみ量)を測定した。そして、応力緩和率=(永久変形によるたわみ量/初期たわみ量)×100の式から応力緩和率を算出した。
Figure 0006095562
表2に記載の通り、実施例1の試料では、導電率が97.9%IACS、加熱前のビッカース硬さが126Hvであることを確認した。すなわち、実施例1の試料は、冷間圧延処理によってビッカース硬さが126Hvとなるまで硬化した後の状態で97%IACS以上の高い導電率を維持していることを確認した。これにより、実施例1の試料は、母材として純銅を用いて形成した銅合金材と同程度の高い導電率を有することを確認した。
また、実施例1の試料では、400℃で5分間加熱した後のビッカース硬さが114Hvであり、450℃で5分間加熱した後のビッカース硬さが110Hvであることを確認した。すなわち、実施例1の試料は、450℃で5分間加熱した後であって、100Hv以上のビッカース硬さを維持していることを確認した。また、実施例1の試料では、応力緩和率が20.4%と、30%以下の値を維持していることを確認した。これらの結果から、実施例1の試料は、良好な耐熱性を有することを確認した。
実施例2〜8の各試料はいずれも、冷間圧延処理によってビッカース硬さが120Hv以上となるまで硬化した後の状態で、95%IACS以上の導電率を維持していることを確認した。特にZrの添加量をより少量にした実施例4〜5の試料では、97%IACS以上の高い導電率を維持していることを確認した。
実施例2〜8の各試料はいずれも、400℃で5分間加熱した後も100Hv以上のビッカース硬さを維持していることを確認した。特にZrの添加量をより多めにした実施例6〜8の試料では、450℃で5分間加熱した後も100Hv以上のビッカース硬さを維持していることを確認した。すなわち、実施例2〜8の各試料はいずれも、より優れた耐熱性を有することを確認した。
また、実施例2〜8の各試料はいずれも、応力緩和率が30%以下に抑えられており、応力緩和率の面からも優れた耐熱性を有することを確認した。
以上の結果から、実施例1〜8の各試料はいずれも、高い導電率と優れた耐熱性とを兼備していることを確認した。
Zrを添加せずにAgのみを添加した比較例1〜2の各試料、及びZrの添加量を0.003質量%未満とした比較例3〜4の各試料では、実施例1〜8の各試料と比べて耐熱性が劣ることを確認した。すなわち、比較例1〜4の各試料は、400℃で5分間加熱すると軟化が進み、ビッカース硬さが100Hvを大きく下回ることを確認した。
Zrの添加量が0.1質量%を超える比較例5〜7の各試料では、実施例1〜8の各試料と比較して、優れた耐熱性を有するものの、導電率の低下が大きく、95%IACS以上の導電率を維持できないことを確認した。
Agを添加せずにZrのみを添加した比較例8の試料は、実施例1〜8の各試料と比べて耐熱性が劣ることを確認した。すなわち、比較例8の試料は、400℃で5分間加熱すると軟化が進み、ビッカース硬さが100Hvを大きく下回ることを確認した。
Agの添加量が0.03質量%未満である比較例9の試料は、実施例1〜8の各試料と比べて、耐熱性が劣ることを確認した。すなわち、比較例9の試料は、400℃で5分間加熱すると軟化が進み、ビッカース硬さが100Hvを下回ることを確認した。
Agの添加量が0.1質量%を超える比較例10の試料では、実施例1〜8の各試料と比べて、導電率が低下し、95%IACS以上の導電率を維持することができないことを確認した。また、高価なAgの添加量が増えることで、製造コストが増えるという問題も生じることを確認した。
(実施例9)
実施例9では、高周波溶解炉を用いて溶湯を作製する際、窒素と酸素とを混合し、所定の酸素分圧に調整した雰囲気下にて溶湯を作製し、この雰囲気下で溶湯中に所定量のZr(0.004質量%)とAg(0.050質量%)とを添加して銅合金の溶湯を作製した。この他は、上述の実施例1と同様にして銅合金材を作製した。これを実施例9の試料とした。
(実施例10及び比較例11〜13)
実施例10及び比較例11〜13では、酸素分圧をそれぞれ変更したこと以外は、上述の実施例9と同様にして、0.004質量%のZrと0.050質量%のAgとが添加された銅合金材を作製した。これらをそれぞれ、実施例10及び比較例11〜13の試料とした。
(比較例14)
比較例14では、熱間圧延処理を行って形成した厚さが8mmの銅合金の板材に、冷間圧延処理を行って厚さが1mmの銅合金の板材を作製した。厚さが1mmの銅合金の板材に、700℃で1分間の熱処理(焼鈍処理)を行った。その後、最終の冷間圧延処理を80%の加工度で行った。この他は、上述の実施例1と同様にして、厚さが0.2mmである銅合金材を作製した。これを比較例14の試料とした。
以上のようにして作製した実施例9〜10及び比較例11〜14の各試料について、酸素(O)の含有量を分析した。また、実施例9〜10及び比較例11〜14の各試料について、導電率、加熱前のビッカース硬さ、400℃で5分間加熱した後のビッカース硬さ、450℃で5分間加熱した後のビッカース硬さ、150℃で1000時間加熱した後の応力緩和率をそれぞれ測定した。これらの結果をまとめて表3に示す。
Figure 0006095562
表3に記載の通り、銅合金材中の酸素の含有量が増加すると、耐熱性が低下する傾向にあることが分かる。実施例9及び実施例10から、銅合金材中の酸素の含有量が0.001質量%以下であれば、400℃で5分間加熱した後のビッカース硬さが100Hv以上であり、優れた耐熱性を有することを確認した。また、実施例9及び実施例10の試料は、応力緩和率も30%以下を維持できることを確認した。これに対し、酸素含有量が0.001質量%を超える比較例11〜13の試料は、400℃で5分間加熱した後のビッカース硬さが100Hv未満であるとともに、応力緩和率が30%を超えることを確認した。この結果から、400℃で5分間加熱した後に100Hv以上のビッカース硬さを維持するためには、銅合金材中の酸素含有量が0.001質量%以下となるように調整する必要があることを確認した。
なお、比較例14から、最終の冷間圧延処理の加工度を大きくすると、所定量のZrとAgとを添加した場合であっても、耐熱性が低下することを確認した。
以上の結果から、少なくとも0.003質量%以上0.01質量%以下のZrと、0.03質量%以上0.1質量%以下のAgとを含有し、酸素の含有量が0.001質量%以下となるように調整した銅合金を用いて得た本実施例に係る銅合金材は、導電率が95%IACS以上であり、ビッカース硬さが120Hv以上であり、高い導電率を有することを確認した。さらに、このような本発明の実施例にかかる銅合金材は、400℃で5分間加熱した後のビッカース硬さが100Hv以上であるとともに、150℃で1000時間加熱した後の応力緩和率が30%以下であり、優れた耐熱性を有することを確認した。すなわち、本発明の実施例にかかる銅合金材は、高い導電率を維持しつつ、優れた耐熱性を有することを確認した。










Claims (7)

  1. 少なくとも0.003質量%以上0.01質量%以下のZrと、0.03質量%以上0.1質量%以下のAgとを含有し、
    酸素の含有量が0.001質量%以下であり、
    導電率が95%IACS以上であり、
    ビッカース硬さが120Hv以上であり、
    400℃で5分間加熱した後のビッカース硬さが100Hv以上である
    ことを特徴とする銅合金材。
  2. 少なくとも0.003質量%以上0.01質量%以下のZrと、0.03質量%以上0.1質量%以下のAgとを含有し、
    酸素の含有量が0.001質量%以下であり、
    導電率が95%IACS以上であり、
    ビッカース硬さが120Hv以上であり、
    450℃で5分間加熱した後のビッカース硬さが98Hv以上である
    ことを特徴とする銅合金材。
  3. 少なくとも0.003質量%以上0.01質量%以下のZrと、0.03質量%以上0.1質量%以下のAgとを含有し、
    酸素の含有量が0.001質量%以下であり、
    導電率が95%IACS以上であり、
    ビッカース硬さが120Hv以上であり、
    150℃で1000時間加熱した後の応力緩和率が30%以下である
    ことを特徴とする銅合金材。
  4. 導電率が97%IACS以上である
    ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の銅合金材。
  5. 150℃で1000時間加熱した後の応力緩和率が30%以下である
    ことを特徴とする請求項1、2、または4のいずれかに記載の銅合金材。
  6. 請求項1ないし5のいずれかに記載の銅合金材を用いて形成される
    ことを特徴とする電気自動車用の配電部材。
  7. 請求項1ないし5のいずれかに記載の銅合金材を用いて形成される
    ことを特徴とするハイブリッド自動車用の配電部材。
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