JP6095562B2 - 銅合金材、電気自動車用の配電部材及びハイブリッド自動車用の配電部材 - Google Patents
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Description
本発明の第1の態様によれば、少なくとも0.003質量%以上0.01質量%以下のZrと、0.03質量%以上0.1質量%以下のAgとを含有し、酸素の含有量が0.001質量%以下であり、導電率が95%IACS以上であり、ビッカース硬さが120Hv以上である銅合金材が提供される。
本実施形態にかかる銅合金材は、少なくとも、0.003質量%以上0.01質量%以下のジルコニウム(Zr)と、0.03質量%以上0.1質量%以下の銀(Ag)とを含有している。すなわち、銅合金材は、銅(Cu)を母材とし、その母材中に、少なくとも、0.003質量%以上0.01質量%以下のZrと、0.03質量%以上0.1質量%以下のAgとが添加された銅合金を用いて形成されている。これにより、銅合金材は、95%IACS以上の高い導電率(優れた導電性)を維持しながら、優れた耐熱性を有する。すなわち、ZrとAgとの成分間の相互作用を利用することで、導電率の低下が最小限に抑えられつつ、耐熱性を向上させることができる。
次に、本実施形態にかかる銅合金材の製造方法の一実施形態について説明する。
本実施形態にかかる銅合金材の製造方法では、まず、所定の組成を有する銅合金を鋳造する。すなわち、まず、母材である銅(Cu)を例えば高周波溶解炉等を用いて溶解して溶湯を製造する。この溶湯中に、0.003質量%以上0.01質量%以下のジルコニウム(Zr)と、0.03質量%以上0.1質量%以下の銀(Ag)とを添加して、銅合金の溶湯を形成する。このとき、銅合金の溶湯中の酸素(O)の含有量が0.001質量%以下となるように調整する。そして、この銅合金の溶湯を鋳型に供給して所定形状のインゴットを鋳造する。なお、上記酸素含有量の調整は、溶湯を作製する際の雰囲気中の酸素分圧を調整することで制御でき、酸素含有量を少なくする際は、例えば、雰囲気に一酸化炭素や水素などの還元性ガスを混入することで、制御することができる。
鋳造工程が終了した後、例えば連続鋳造圧延方式によって、鋳造したインゴットを所定温度(例えば950℃)に加熱して熱間圧延処理を行い、所定厚さの銅合金の板材を形成する。熱間圧延終了後は、なるべく速やかに銅合金の板材を冷却するとよい。
熱間圧延処理が終了した後、銅合金の板材に、冷間圧延処理と、所定温度(例えば700℃)に加熱する熱処理(焼鈍処理)とを行って、所定厚さの銅合金材を形成する。冷間圧延処理と熱処理とはそれぞれ所定回数繰り返して行うとよい。このとき、最終の冷間圧延処理を所定の加工度(例えば60%)で行うとよい。最終の冷間圧延処理の加工度が高すぎると、銅合金材に歪みが蓄積されやすくなる。この歪みが応力緩和のエネルギ源となるため、銅合金材が加熱されると(銅合金材が高温になると)、応力緩和が生じ、強度が低下しやすくなる場合がある。すなわち、銅合金材の耐熱性が低下してしまう場合がある。なお、冷間圧延処理と熱処理とを1回ずつ行ってもよい。熱処理はバッチ処理であっても、連続処理であってもよい。これにより、本実施形態にかかる銅合金材が製造されて、その製造工程を終了する。
本実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の効果を奏する。
実施例1では、母材として無酸素銅を用いた。そして、高周波溶解炉を用い、窒素雰囲気下にて無酸素銅を溶解して溶湯を作製(溶製)した。窒素雰囲気下にて、その溶湯中にジルコニウム(Zr)を0.004質量%、銀(Ag)を0.05質量%添加し、銅合金の溶湯を作製した。その後、作製した銅合金の溶湯を鋳型に供給し、厚さ25mm、幅30mm、長さ150mmのインゴットを鋳造した。
実施例2〜8及び比較例1〜10では、銅合金の溶湯中に添加するZr及びAgの添加量を表1に示す通りとした。この他は、上述の実施例1と同様にして銅合金材を作製した。これらをそれぞれ、実施例2〜8及び比較例1〜10の試料とした。
実施例9では、高周波溶解炉を用いて溶湯を作製する際、窒素と酸素とを混合し、所定の酸素分圧に調整した雰囲気下にて溶湯を作製し、この雰囲気下で溶湯中に所定量のZr(0.004質量%)とAg(0.050質量%)とを添加して銅合金の溶湯を作製した。この他は、上述の実施例1と同様にして銅合金材を作製した。これを実施例9の試料とした。
実施例10及び比較例11〜13では、酸素分圧をそれぞれ変更したこと以外は、上述の実施例9と同様にして、0.004質量%のZrと0.050質量%のAgとが添加された銅合金材を作製した。これらをそれぞれ、実施例10及び比較例11〜13の試料とした。
比較例14では、熱間圧延処理を行って形成した厚さが8mmの銅合金の板材に、冷間圧延処理を行って厚さが1mmの銅合金の板材を作製した。厚さが1mmの銅合金の板材に、700℃で1分間の熱処理(焼鈍処理)を行った。その後、最終の冷間圧延処理を80%の加工度で行った。この他は、上述の実施例1と同様にして、厚さが0.2mmである銅合金材を作製した。これを比較例14の試料とした。
Claims (7)
- 少なくとも0.003質量%以上0.01質量%以下のZrと、0.03質量%以上0.1質量%以下のAgとを含有し、
酸素の含有量が0.001質量%以下であり、
導電率が95%IACS以上であり、
ビッカース硬さが120Hv以上であり、
400℃で5分間加熱した後のビッカース硬さが100Hv以上である
ことを特徴とする銅合金材。 - 少なくとも0.003質量%以上0.01質量%以下のZrと、0.03質量%以上0.1質量%以下のAgとを含有し、
酸素の含有量が0.001質量%以下であり、
導電率が95%IACS以上であり、
ビッカース硬さが120Hv以上であり、
450℃で5分間加熱した後のビッカース硬さが98Hv以上である
ことを特徴とする銅合金材。 - 少なくとも0.003質量%以上0.01質量%以下のZrと、0.03質量%以上0.1質量%以下のAgとを含有し、
酸素の含有量が0.001質量%以下であり、
導電率が95%IACS以上であり、
ビッカース硬さが120Hv以上であり、
150℃で1000時間加熱した後の応力緩和率が30%以下である
ことを特徴とする銅合金材。 - 導電率が97%IACS以上である
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の銅合金材。 - 150℃で1000時間加熱した後の応力緩和率が30%以下である
ことを特徴とする請求項1、2、または4のいずれかに記載の銅合金材。 - 請求項1ないし5のいずれかに記載の銅合金材を用いて形成される
ことを特徴とする電気自動車用の配電部材。 - 請求項1ないし5のいずれかに記載の銅合金材を用いて形成される
ことを特徴とするハイブリッド自動車用の配電部材。
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