JP2014040647A - 放熱性及び繰り返し曲げ加工性に優れた銅合金板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 Ag、Cr、Fe、In、Ni、P、Si、Sn、Ti、Zn及びZrからなる群から選択された一種以上を合計で0.01質量%以上含有し、Agは1.0質量%以下、Tiは0.08質量%以下、Niは2.0質量%以下、Znは3.5質量%以下、Cr、Fe、In、P、Si、Sn、及びZrは、これらの群から選択された一種類以上を合計で0.5質量%以下含有し、残部Cu及び不純物からなり、
導電率が60%IACS以上であり、
引張強さが350MPa以上であり、
圧延平行断面において、材料厚みTを4等分する厚み方向に垂直な3本の直線の内、中心線を除いた残り2本の直線について、各々の長さ100Tの観察範囲において、各直線と交差するせん断帯の個数nが、
n≦300
を満たす銅合金板。
【選択図】図1
Description
発熱への対応として、FPCに放熱板としてアルミニウム板を張り合わせた場合、FPCの回路を構成している銅配線との線熱膨張係数の違いにより、FPC回路にそりが生じるという問題がある。さらに、熱による膨張、収縮を繰り返すことで、FPCの銅配線が繰返し引張り応力を受け、破断に至る問題もある。
放熱板として銅板を用いた場合には上記問題は発生しないが、銅はアルミニウムよりも加工硬化係数が大きいため、複雑な形状にFPCを成型する際に、曲げ部、あるいは曲げ戻しと再曲げ加工を行う等の成形条件では、曲げ部にクラックが発生し易い。クラックが発生すると、これを車載などの繰返し振動が加わる環境下で使用する場合、クラックが進展して破断に至るなどの問題が生じる。
FPCの基板として銅板を用いて照明装置を立体成形する方法も考えられるが、一般的なタフピッチ銅は、照明装置に使用されている間に発熱により銅板自体が軟化し、初期の形状を維持することが困難である。
すなわち、本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、放熱性、繰返し曲げ加工性、形状維持性、及び、耐熱性に優れたFPC基板用銅合金板を提供することを課題とする。
導電率が60%IACS以上であり、
引張強さが350MPa以上であり、
圧延平行断面において、材料厚みTを4等分する厚み方向に垂直な3本の直線の内、中心線を除いた残り2本の直線について、各々の長さ100Tの観察範囲において、各直線と交差するせん断帯の個数nが、
n≦300
を満たす銅合金板である。
本発明では、銅箔の耐熱性を改善するために、銅にAg、Cr、Fe、In、Ni、P、Si、Sn、Ti、Zn及びZrからなる群から選択された一種以上を合計で0.01質量%以上添加する。添加元素の合計濃度が0.01質量%を下回ると、添加元素の効果が発現せず耐熱性が不足する。また、添加元素の合計濃度の上限については、次の通りである。
Agは添加による導電率の低下の影響が小さいため、特に制限はないが、添加濃度が高くなると共にコストが増加するため、1.0質量%以下が好ましい。
添加による導電率低下の影響が大きいCr、Fe、In、P、Si、Sn、及びZrは、これら元素の合計につき、0.5質量%以下が、また、特に影響が大きいTiは、0.08質量%以下が好ましい。
また、Niは2.0質量%以下、Znは3.5質量%以下が好ましい。
Cuと比較し酸化しやすいCr、Fe、In、Ni、P、Si、Sn、Ti、Zn及びZrは、無酸素銅溶湯中に添加するのが一般的である。酸素を含有する溶銅にP、Si等の脱酸剤を添加して酸素濃度を10ppm以下に下げた後、これら合金元素を添加しても良い。AgはCuより酸化しにくいので、タフピッチ銅溶湯中、無酸素銅溶湯中ともに添加できる。
加熱された材料を放熱するには、熱伝導が良い材料が求められる。熱伝導は、材料の導電率が高いものが良い。LED照明点灯時の発熱を考えると、LEDの実装密度や照明装置の形状などの影響要因もあるが、材料の導電率は60%IACS以上であればよく、70%IACS以上であればより好ましい。
繰返し曲げ加工性については、金属組織との関係を調べたところ、せん断帯の存在密度と関係があり、圧延平行断面において、材料厚みTを4等分する厚み方向に垂直な3本の直線の内、中心線を除いた残り2本の直線について、各々の長さ100Tの観察範囲、すなわち、合計で長さ200Tの観察範囲において、各直線と交差するせん断帯の個数nがn≦300の場合に、繰返し曲げ加工性が良好であった。nの値は、好ましくは250以下、より好ましくは150以下である。
せん断帯は、材料を強加工した場合に、せん断変形が集中的に起こって形成される組織が観察面に現れたものであり、圧延加工では、圧延組織の不連続面として観察され、圧延面に対して30度から60度傾いた線として識別可能である。また、せん断帯は厚み方向に広がっており、材料の厚みや加工度などにより、その広がり、すなわち厚み方向の長さが異なる場合がある。
せん断帯は、最終圧延後の銅箔圧延平行断面を、例えば集束イオンビーム(FIB:Focused Ion Beam)で加工し、走査イオン顕微鏡(SIM:Scanning Ion Microscopy)や走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscopy)にて観察する、あるいはクロスセクションポリッシャ(CP:Cross Section Polisher)で加工し、SEMにて観察することが可能である。
材料を所定の形状に成形した後、初期の加工形状を維持するには、ある程度の材料強度が必要である。加工形状などの構造の影響もあるが、材料強度である引張強さにつき、これが350MPa未満の場合には、加わる力で材料が容易に変形するため、引張強さは350MPa以上であり、400MPa以上であるのがより好ましい。強度の上限については特に設定しないが、材料の加工度を上げることで強度を高くした場合には、一般に曲げ加工性が劣化することが知られており、従って、曲げ加工性とのバランスを考慮して材料を加工すれば良い。
耐熱性については、LED照明の特性から、照明機器として長時間使用できるよう、通常は150℃未満の温度で使用されるように設計される。150℃未満であっても、一般的なタフピッチ銅は長時間の使用によって軟化する事は避けられず、軟化した場合には初期の加工形状を維持することができない。このような現象を避けるため、耐熱性を確保することは重要である。一方、照明機器としては数万時間程度の使用が想定されるが、これをそのまま再現する長時間の加熱試験は現実的ではないため、目安として、実使用条件よりも高温で短時間、ここでは200℃で30分間保持する条件で加熱し、引張強さ250MPa以上の場合に耐熱性が良好と判断した。また、200℃で30分間加熱後に300MPa以上を維持するのがより好ましい。
先述の繰返し曲げ加工性、引張強さおよびせん断帯の存在密度につき、規定範囲を満たす銅箔は、最終再結晶焼鈍の昇温速度、ならびに最終再結晶焼鈍の直後に行われる最終冷間圧延の加工条件である総加工度、及び、1パス目の加工度を調整することで得られる。ここで、最終再結晶焼鈍とは、製品の厚みまで加工する最終冷間圧延の前の再結晶焼鈍である。また、最終冷間圧延では、一対のロール間に材料を繰返し通過させ(以下「パス」とする)、厚みを仕上げていく。ここで、1パス目とは、最終再結晶焼鈍後の材料を製品の厚みに仕上げる最終冷間圧延における最初のパスを示す。
最終再結晶焼鈍の昇温速度は12〜50℃/sであれば良い。昇温速度が12℃/s未満である場合、及び、50℃/s超である場合は、先述の繰返し曲げ加工性を満たすことが困難である。
最終冷間圧延の総加工度は85%以下であれば良い。ここで、加工度は、圧延前と圧延後との厚みの差を圧延前の厚みで除した値を百分率で表わしたものである。最終冷間圧延の総加工度が85%を超える場合は、先述の繰返し曲げ加工性を満たすことが困難である。また、総加工度の下限値については、合金成分や濃度により異なるが、引張強さの下限値を超えるように設定すれば良い。
最終冷間圧延の1パス目の加工度は20%以下であれば良い。最終冷間圧延の1パス目の加工度が20%を超える場合は、せん断帯が生じやすくなることで、規定のせん断帯の存在密度を満たすことができず、先述の繰り返し曲げ加工性を満たすことが困難である。
無酸素銅に各種元素を添加し、厚み100mmのインゴットを鋳造した。次に、インゴットを熱間圧延にて5mmまで圧延し、酸化スケールを除去した後、冷間圧延と焼鈍を繰り返し、最終冷間圧延にて表1、2に記載の条件で0.05〜0.3mmまで圧延した。最終再結晶焼鈍は表1、2に記載の昇温速度で、材料温度が最高で500℃となるよう加熱し、室温(25℃)から500℃まで到達する時間から、昇温速度を算出した。そして、材料温度が500℃に到達後、直ちに冷却を行った。
JIS Z 2241に準じて、圧延平行方向が長手方向となるように採取したJIS13B号試験片を供試材とし、引張り試験により引張強さを求めた。引張り試験では、ORIENTEC社製のUTM−10Tを用い、引張り速度5mm/分にて、同一試料につきn=2で測定した平均値を測定値とした。形状維持性は、引張強さ350MPa以上の場合、良好(○)と評価した。また、350MPa未満の場合形状維持性は不良(×)と評価した。
最終冷間圧延後の板厚にて、JIS H 0505に準拠した四端子法により測定した導電率(%IACS)にて評価した。
最終冷間圧延後の材料につき、CPにて圧延平行方向に材料を切断して、SEMによる断面像を得た。圧延面に対して30〜60度傾いた圧延組織との不連続な部分をせん断帯と判定した。材料厚みを4等分する厚み方向に垂直な3本の直線の内、中心線を除いた残り2本の直線について、各々の長さ100T、すなわち、合計長さ200Tを観察範囲として、各直線と交差するせん断帯の個数を電子顕微鏡のモニター上で目視にて評価した。せん断帯の個数の評価を例示すると、図1に示す模式図のように観察された場合、材料厚みを4等分する厚み方向に垂直な3本の直線の内、中心線を除いた残り2本の直線に交差するせん断帯の個数は4である。また、図2に、銅合金板を圧延平行方向に切断して観察したときのSEM断面写真を示す。図2において、点線で示す部分がせん断帯である。
上記のJIS13B号試験片を用い、これを加熱炉に入れて温度が200℃に達した後に30分間保持して試料を取り出し、空冷して引張り試験に供した。引張り試験は、上記の形状維持性と同じ条件で実施した。耐熱性は、引張強さ250MPa以上を「○」、250MPa未満を「×」とした。
表1及び2に評価条件及び結果を示す。
以下の手順で、繰返し曲げ加工性を評価した。
(1)圧延平行方向および直角方向につき、長さ50mm×幅10mmに試料を切り出した。
(2)曲げR=0.5mmにて、90°にV曲げ加工し、これを元の短冊状に曲げ戻した後、90°V曲げ加工と曲げ戻しを繰り返した。
(3)上記操作を繰り返して、1回毎に90°V曲げした時の曲げ加工部を50倍に拡大観察し、クラックまたは破断発生の有無を確認した。そして、クラックまたは破断が発生しない最大曲げ回数を調査した。クラックが発生しない最大曲げ回数が5回以上を「◎」、4回を「○」、3回を「△」、3回未満を「×」として評価した。
以上の評価条件とその結果を表1、2に示す。
比較例1は、添加元素の無い純銅であり、耐熱性が悪かった。
比較例2は、Snを添加しているが、濃度が0.01質量%未満であるため、耐熱性が悪かった。
比較例3は最終冷間圧延の総加工度が85%を超えているため、せん断帯密度が規定数を満たしておらず、繰返し曲げ加工性が悪かった。
比較例4は、添加元素濃度が高すぎるため、導電率が低くて放熱性が悪かった。
比較例5と9は、最終冷間圧延における圧延総加工度は85%以下であるが、最終冷間圧延における1パス目の加工度が20%を超えているため、せん断帯密度が規定数を満たしておらず、繰返し曲げ加工性が悪かった。
比較例6は、最終冷間圧延における圧延総加工度は85%以下であるが、最終再結晶焼鈍における昇温速度が12℃/s未満となっているいため、せん断帯密度が規定数を満たしておらず、繰返し曲げ加工性が悪かった。
比較例7は、最終冷間圧延における圧延総加工度は85%以下であるが、最終再結晶焼鈍における昇温速度が50℃/sを超えているため、せん断帯密度が規定数を満たしておらず、繰返し曲げ加工性が悪かった。
比較例8は、最終再結晶焼鈍における総加工度が低すぎるため、引張り強さが350MPa未満となっており、形状維持性が悪かった。
Claims (7)
- Ag、Cr、Fe、In、Ni、P、Si、Sn、Ti、Zn及びZrからなる群から選択された一種以上を合計で0.01質量%以上含有し、Agは1.0質量%以下、Tiは0.08質量%以下、Niは2.0質量%以下、Znは3.5質量%以下、Cr、Fe、In、P、Si、Sn、及びZrは、これらの群から選択された一種類以上を合計で0.5質量%以下含有し、残部Cu及び不純物からなり、
導電率が60%IACS以上であり、
引張強さが350MPa以上であり、
圧延平行断面において、材料厚みTを4等分する厚み方向に垂直な3本の直線の内、中心線を除いた残り2本の直線について、各々の長さ100Tの観察範囲において、各直線と交差するせん断帯の個数nが、
n≦300
を満たす銅合金板。 - 引張強さが200℃で30分間加熱後に250MPa以上である請求項1に記載の銅合金板。
- FPC基板用である請求項1又は2に記載の銅合金板。
- LED照明を実装したFPC基板用である請求項3に記載の銅合金板。
- 厚みが0.05〜0.3mmである請求項1〜4のいずれかに記載の銅合金板。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の銅合金板を用いた電子機器部品。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の銅合金板を用いたLED照明を実装したFPC。
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