A.直接形交流電力変換装置の第1の構成.
図1は、以下の第1〜第5の実施の形態において説明される制御装置6と、制御装置6の制御対象となる直接形交流電力変換装置100の構成を示す回路図である。
ここで例示される直接形交流電力変換装置100はインダイレクトマトリックスコンバータであり、AC/DC変換を行う電流形コンバータ2と、DC/AC変換を行う電圧形インバータ4と、電流形コンバータ2と電圧形インバータ4とを結ぶ直流リンク7とを備えている。
電流形コンバータ2と電圧形インバータ4とは、直流リンク7として機能する直流母線LH,LLによって接続される。直流電圧たるリンク電圧Vdcの差で直流母線LHは直流母線LLよりも高電位となる。
直流母線LL,LHの間には、非特許文献2で提案されるように、クランプ回路を設けても良い。
電流形コンバータ2は三個の入力端Pr,Ps,Ptを有する。入力端Pr,Ps,Ptは例えば三相交流電源1に接続され、三相交流電圧Vr,Vs,Vtを相毎に入力する。電流形コンバータ2は、入力端Pr,Ps,Ptから供給される線電流ir,is,itを第1期間と第2期間とに区分される周期で転流して、直流母線LH,LL間にリンク電流Idcを印加する。つまり電流形コンバータ2は三相交流を直流に変換する機能を有する。以下では、線電流ir,is,itは入力端Pr,Ps,Ptから電圧形インバータ4へ向かう方向を正方向として説明する。
第1期間は、入力端Pr,Ps,Ptの内、最大相を呈する交流電圧と最小相を呈する交流電圧とが印加される一対に流れる電流が、直流母線LH,LL間にリンク電流Idcとして供給される期間である。
第2期間は、入力端Pr,Ps,Ptの内、中間相を呈する交流電圧と最小相を呈する交流電圧とが印加される一対に流れる電流が、直流母線LH,LL間にリンク電流Idcとして供給される期間である。
電流形コンバータ2はスイッチQxp,Qxn(但し、xはr,s,tを代表する。以下同様)を備えている。スイッチQxpは入力端Pxと直流母線LHとの間に設けられている。スイッチQxnは入力端Pxと直流母線LLとの間にそれぞれ設けられている。
スイッチQxp,Qxnはいずれも逆阻止能力を有しており、図1ではこれらがRB−IGBT(Reverse Blocking IGBT)として例示されている。あるいはこれらのスイッチは、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)とダイオードとの直列接続で実現することもできる。
スイッチQxp,Qxnにはそれぞれスイッチング信号Sxp,Sxnが入力される。スイッチング信号Sxpの活性/非活性に応じてスイッチQxpがそれぞれ導通/非導通し、スイッチング信号Sxnの活性/非活性に応じてスイッチQxnがそれぞれ導通/非導通する。
電圧形インバータ4は接続点Pu,Pv,Pwを有する。電圧形インバータ4は、リンク電圧Vdcに対してパルス幅変調に基づくスイッチングパターンでスイッチングを行って、接続点Pu,Pv,Pwから三相電圧Vu,Vv,Vwを出力する。
電圧形インバータ4は、リンク電圧Vdcが印加される直流母線LH,LLの間で相互に並列に接続される3つの電流経路を備える。
第1の電流経路は接続点Puと、上アーム側のスイッチQupと、下アーム側のスイッチQunとを有している。第2の電流経路は接続点Pvと、上アーム側のスイッチQvpと、下アーム側のスイッチQvnとを有している。第3の電流経路は接続点Pwと、上アーム側のスイッチQwpと、下アーム側のスイッチQwnとを有している。
スイッチQup,Qvp,Qwpは導通時には直流母線LHからそれぞれ接続点Pu,Pv,Pwに電流を流す。スイッチQun,Qvn,Qwnは導通時にはそれぞれ接続点Pu,Pv,Pwから直流母線LLに電流を流す。接続点Pu,Pv,Pwからは三相負荷5に三相電圧Vu,Vv,Vwが印加され、三相電流iu,iv,iwが出力される。
なお、以下では三相負荷5として三相モータを採用する場合を例にとって説明する。
スイッチQup,Qvp,Qwpに対して、それぞれ上アーム側のダイオードDup,Dvp,Dwpが逆並列に接続される。スイッチQun,Qvn,Qwnに対してそれぞれ下アーム側のダイオードDun,Dvn,Dwnが逆並列に接続される。なお、「逆並列」とは、二つの素子が並列に接続されており、かつ二つの素子の導通方向が相互に反対である態様を示す。
スイッチQyp,Qynにはそれぞれスイッチング信号Syp,Synが入力される(但し、yはu,v,wを代表する。以下同様)。スイッチング信号Sypの活性/非活性に応じてスイッチQypがそれぞれ導通/非導通し、スイッチング信号Synの活性/非活性に応じてスイッチQynがそれぞれ導通/非導通する。但し、同じ電流経路においては、スイッチQypとスイッチQynとは相互に排他的に導通する。
制御装置6は、三相電流iu,iv,iwと、電圧Vr(あるいは電圧Vs,Vt、あるいは線間電圧)と、三相負荷5の回転角周波数についての指令値たる回転角速度指令ω*とに基づいて、スイッチング信号Sxp,Sxn,Syp,Synを生成する。
スイッチング信号Sxp,Sxn,Syp,Synに基づいた電流形コンバータ2の動作は、例えば特許文献1,2,5や非特許文献2等で公知であるので、詳細は説明は省略する。但し、各実施の形態の説明の前提となる部分について簡単に説明する。
今、電圧Vtが最小相であり、電圧Vr,Vsが、それぞれ最大相と中間相となる場合を想定する。相電圧波形の対称性から、このような想定は、相順の読替、及びスイッチQxp,Qxnの相の読替により、一般性を失わない。
そしてこのように想定される場合において、線間電圧(Vr−Vt),(Vs−Vt)はいずれも正であり、これらが選択的にリンク電圧Vdcとして出力される。このような選択的な出力は、スイッチQrp,Qtnがオンし、スイッチQrn,Qtpがオフする第1状態と、スイッチQtn,Qspがオンし、スイッチQtp,Qsnがオフする第2状態とが選択されることで実現される。第1状態が維持される期間が上述の第1期間であり、第2状態が維持される期間が上述の第2期間である。そして第1状態と第2状態の切り替えは、電圧Vr,Vs,Vtにおける最大相、中間相、最小相の入れ替わりに伴う転流と共に、電流形コンバータ2の転流として把握される。
第1状態と第2状態とを、三相交流電圧Vr,Vs,Vtの周波数(以下、「電源周波数」とも称す)よりも高い周波数で切り替える(即ち電流形コンバータ2が転流する)ことにより、電源周波数の6倍の周波数で変動する脈動を含むものの、直流電圧たるリンク電圧Vdcが得られる。
このような転流のタイミングは、対称三角波と、通流比drt,dst(=1−drt)とで決定することができる。対称三角波の周期をT0、最大値を1、最小値を0とすると、第1期間の長さは期間drt・T0で、第2期間の長さはdst・T0で、それぞれ決定される。よって、対称三角波が、通流比の一方、例えば通流比drtと等しくなる時点で、電流形コンバータ2が転流する。この場合に通流比drt,dstをどのように選定することが望ましいかについては、上記の文献で公知であるので、ここでは説明を省略する。
また、対称三角波の最大値、最小値が値1,0を採る場合以外であっても、通流比drt,dstに対して適宜の線形処理を行うことにより、転流のタイミングを上記の説明へと帰着することができるのは明白である。
図2は、制御装置6の構成を例示するブロック図である。制御装置6は、コンバータ制御部20、インバータ制御部30、変調率算出部40、センサレスベクトル制御部50を備えている。
コンバータ制御部20は、電源位相検出部21と、通流比生成部22と、比較器23と、電流形ゲート論理変換部24と、キャリア生成部25とを有する。
電源位相検出部21は例えば電圧Vrを検出して、入力端Pr,Ps,Ptに印加される三相交流電圧の位相角θを検出し、通流比生成部22に出力する。
通流比生成部22は受け取った位相角θに基づいて、通流比dac,dbcを出力する。通流比dac,dbcは、上述の通流比drt,dstを一般化して示したものであり、電圧Vr,Vs,Vtがそれぞれ最大相、中間相、最小相である場合には、記号a,b,cは、それぞれ記号r,s,tに相当する。
キャリア生成部25は、上述の対称三角波であるキャリアC0を生成する。比較器23は、キャリアC0と通流比dac,dbcとを比較した結果を出力し、これに基づいて電流形ゲート論理変換部24がスイッチング信号Srp,Ssp,Stp,Srn,Ssn,Stnを生成する。
インバータ制御部30は、信号波生成部32と、電圧指令生成部34と、キャリア生成部35と、比較器36と、論理演算部38とを有する。
信号波生成部32は、変調率算出部40から受け取った変調率ks及び位相角φに基づいて、電圧形インバータ4の信号波群V1*,V2*を生成する。変調率ksは電圧Vr,Vs,Vtの波高値に対するリンク電圧Vdcの波高値の比である。位相角φは例えば電圧Vuの位相であり、三相負荷5にとっての電気角である。信号波群V1*,V2*については「B.信号波群の説明」で説明する。
電圧指令生成部34は、信号波群V1*,V2*のいずれか一方と、通流比dac,dbcとから、電圧指令群V**を生成する。電圧指令群V**は6つの電圧指令(そのうちの二つが等しくなることもある)を含み、かかる電圧指令を得るための演算は実施の形態によって異なるので、それぞれの実施の形態で説明する。
キャリア生成部35はキャリアC1,C2の少なくとも一方を生成する。実施の形態によってはキャリアC1,C2のいずれか一方だけでも足り、あるいは両方を採用する。キャリアC1,C2の形状については後述する。但し、キャリアC1,C2の周期は、キャリアC0の周期T0と等しい。
電圧指令群V**が含む電圧指令は、比較器36においてキャリアC1,C2の少なくとも一方と比較され、その結果が論理演算部38によって演算される。当該演算により、論理演算部38はスイッチング信号Syp,Synを生成する。つまり論理演算部38はスイッチング信号生成部として機能する。
変調率算出部40は、センサレスベクトル制御部50からd軸電圧指令Vd*及びq軸電圧指令Vq*を受け取って、変調率ksと位相角φとを算出し、これらを信号波生成部32に出力する。
センサレスベクトル制御部50は、三相電流iu,iv,iwに基づいてモータの回転角速度ωを算出し、これらと外部から入力される回転角速度指令ω*とに基づいてd軸電圧指令Vd*とq軸電圧指令Vq*とを生成する。
論理演算部38、変調率算出部40、センサレスベクトル制御部50の機能及びその構成も公知技術であるのでここではその詳細を省略する。
制御装置6は、マイクロコンピュータと記憶装置を含んで構成される。マイクロコンピュータは、プログラムに記述された各処理ステップ(換言すれば手順)を実行する。上記記憶装置は、例えばROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、書き換え可能な不揮発性メモリ(EPROM(Erasable Programmable ROM)等)などの各種記憶装置の1つ又は複数で構成可能である。当該記憶装置は、各種の情報やデータ等を格納し、またマイクロコンピュータが実行するプログラムを格納し、また、プログラムを実行するための作業領域を提供する。なお、マイクロコンピュータは、プログラムに記述された各処理ステップに対応する各種手段として機能するとも把握でき、あるいは、各処理ステップに対応する各種機能を実現するとも把握できる。また、制御装置6はこれに限らず、制御装置6によって実行される各種手順、あるいは実現される各種手段又は各種機能の一部又は全部をハードウェアで実現しても構わない。
B.信号波群の説明.
図3及び図4はそれぞれ、全ての実施の形態において共通に採用される、信号波群V1*,V2*を示すグラフである。図3及び図4のいずれにおいても、横軸には位相角φを採用した。
信号波群V1*は信号波Vu1*,Vv1*,Vw1*を含み、信号波群V2*は信号波Vu2*,Vv2*,Vw2*を含む。
信号波Vu1*,Vu2*はいずれも、スイッチQupがキャリアC0の周期T0において導通する期間の総計の、周期T0に対する割合を示す。信号波Vv1*,Vv2*はいずれも、スイッチQvpがキャリアC0の周期T0において導通する期間の総計の、周期T0に対する割合を示す。信号波Vw1*,Vw2*はいずれも、スイッチQwpがキャリアC0の周期T0において導通する期間の総計の周期T0に対する割合を示す。
換言すれば、信号波群V1*に基づいて生成された電圧指令群V**に含まれる電圧指令が、キャリアC1(あるいはキャリアC2)と比較される場合において、スイッチQypがキャリアC0の一周期で導通する長さの総計は、Vy1*・T0である。信号波群V2*に基づいて生成された電圧指令群V**に含まれる電圧指令が、キャリアC1(あるいはキャリアC2)と比較される場合において、スイッチQypがキャリアC0の一周期で導通する長さの総計は、Vy2*・T0である。
信号波Vu1*から信号波Vv1*を引いた値は、信号波Vu2*から信号波Vv2*を引いた値に等しく、信号波Vv1*から信号波Vw1*を引いた値は、信号波Vv2*から信号波Vw2*を引いた値に等しい。よって、キャリアC0の一周期において電圧形インバータ4で採用されるスイッチングパターンの長さの総計は、リンク電流Idcが零となるスイッチングパターンを除けば、電圧指令群V**に含まれる電圧指令が信号波群V1*に基づいて生成されたか、信号波群V2*に基づいて生成されたかには拘わらない。
後の説明のため、スイッチングパターンに対応する単位電圧ベクトルVgを導入する。但し当該表記において、値gは、U相、V相、W相にそれぞれ値4,2,1を割り当て、それぞれに対応する上アームが導通するときに、割り当てられた値を合計した値であって、0〜7の整数を採る。
例えば単位電圧ベクトルV4はスイッチQup,Qvn,Qwnが導通し、スイッチQun,Qvp,Qwpが非導通となるスイッチングパターンを表す。また単位電圧ベクトルV6はスイッチQup,Qvp,Qwnが導通し、スイッチQun,Qvn,Qwpが非導通となるスイッチングパターンを表す。また単位電圧ベクトルV0はスイッチQun,Qvn,Qwnが導通し、スイッチQup,Qvp,Qwpが非導通となるスイッチングパターンを表す。また単位電圧ベクトルV7はスイッチQup,Qvp,Qwpが導通し、スイッチQun,Qvn,Qwnが非導通となるスイッチングパターンを表す。
単位電圧ベクトルV0,V7はいずれもリンク電流Idcが零となるスイッチングパターンを表し、これらは零電圧ベクトルと称される。
さて、以下ではいわゆる二相変調方式で、直接形交流電力変換装置100を動作させる場合について取り扱う。二相変調方式では、キャリアC1(あるいはキャリアC2)の一周期(この長さはキャリアC0の周期T0と等しい)において、いずれか一つの電流経路におけるスイッチQypの導通/非導通が維持される。
信号波群V1*に関しては、例えば、0≦φ≦π/3において下式(1)〜(3)が設定される(例えば特許文献1参照)。同様にして、π/3≦φ≦2π/3において下式(4)〜(6)が設定される。但し期間τ0,τ2,τ4,τ6は、それぞれ単位電圧ベクトルV0,V4,V6が、キャリアC0の一周期において採る期間の総計を示す。
τ0/T0=1−ks・sin(φ+π/3)…(1)
τ4/T0=ks・sin(π/3−φ)…(2)
τ6/T0=ks・sin(φ)…(3)
τ0/T0=1−ks・sin(φ)…(4)
τ2/T0=ks・sin(φ−π/3)…(5)
τ6/T0=1−ks・sin(φ+π/3)…(6)。
よって図3を参照して、0≦φ≦2π/3において、信号波群V1*は下式(7)〜(9)で設定される。この場合、第3の電流経路における上アーム側のスイッチQwpが、キャリアC1(あるいはキャリアC2)の一周期において非導通が維持される。
Vu1*=ks・sin(φ+π/3)…(7)
Vv1*=ks・sin(φ)…(8)
Vw1*=0…(9)。
同様にして、2π/3≦φ≦4π/3において、信号波群V1*は下式(10)〜(12)で設定される。この場合、第1の電流経路における上アーム側のスイッチQupが、キャリアC1(あるいはキャリアC2)の一周期において非導通が維持される。
Vu1*=0…(10)
Vv1*=ks・sin(φ−π/3)…(11)
Vw1*=−ks・sin(φ+π/3)…(12)。
同様にして、4π/3≦φ≦2πにおいて、信号波群V1*は下式(13)〜(15)で設定される。この場合、第2の電流経路における上アーム側のスイッチQvpが、キャリアC1(あるいはキャリアC2)の一周期において非導通が維持される。
Vu1*=−ks・sin(φ−π/3)…(13)
Vv1*=0…(14)
Vw1*=−ks・sin(φ)…(15)。
信号波群V1*が上述のように採用される場合、−π/3≦φ≦π/3において、信号波群V2*は図4を参照して下式(16)〜(18)で設定される。但し図4において、期間τ7は、零電圧ベクトルV7がキャリアC0の一周期において採る期間の総計を示す。この場合、第1の電流経路における上アーム側のスイッチQupが、キャリアC1(あるいはキャリアC2)の一周期において導通が維持される。
Vu2*=1…(16)
Vv2*=1−ks・sin(φ−π/3)…(17)
Vw2*=1−ks・sin(φ+π/3)…(18)。
0≦φ≦π/3において下式が成立し、信号波群V2*は、信号波群V1*と同様に、期間τ4,τ6が式(2),(3)を満足するように設定されていることがわかる。
Vu2*−Vv2*=ks・sin(φ−π/3)=τ4/T0…(19)
Vv2*−Vw2*=ks・sin(φ−π/3)+ks・sin(φ+π/3)
=2・ks・sin(φ)・cos(π/3)=ks・sin(φ)=τ6/T0…(20)。
同様にして、π/3≦φ≦π/2において、信号波群V2*は下式(21)〜(23)で設定される。この場合、第2の電流経路における上アーム側のスイッチQvpが、キャリアC1(あるいはキャリアC2)の一周期において導通が維持される。
Vu2*=1−ks・sin(φ−π/3)…(21)
Vv2*=1…(22)
Vw2*=1−ks・sin(φ)…(23)。
同様にして、π≦φ≦5π/3において、信号波群V1*は下式(24)〜(26)で、それぞれ設定される。この場合、第3の電流経路における上アーム側のスイッチQwpが、キャリアC1(あるいはキャリアC2)の一周期において導通が維持される。
Vu2*=1+ks・sin(φ+π/3)…(24)
Vv2*=1+ks・sin(φ)…(25)
Vw2*=1…(26)。
図3と図4との比較、及び式(7)〜(15)と、式(16)〜(18),(21)〜(26)との比較から、信号波群V2*に含まれる信号波Vu2*,Vv2*,Vw2*は、信号波群V1*に含まれる信号波Vu1*,Vv1*,Vw1*と位相が180度ずれた値を1から差し引いた値を採ることがわかる。
C.第1の実施の形態.
図5及び図6はいずれも、0≦φ≦π/3において、キャリアC1と電圧指令群V**とを比較して、スイッチング信号Sup,Svp,Swpの活性/非活性が決定される様子を示すグラフである。但し、電流形コンバータ2の転流を決定する、キャリアC0及び通流比drtについても併記した。また、キャリアC1は対称三角波である。
まず、図5に示された場合に採用される電圧指令群V**は、信号波群V1*に基づいて生成される。具体的には電圧指令群V**は、キャリアC1の最大値及び最小値をそれぞれCmax,Cminとし(図5では簡単のため、Cmax=1,Cmin=0として示した)、変動幅ΔC=Cmax−Cminを導入して、次の6つの電圧指令を含む:
第1電圧指令;Cmin+ΔC・drt・Vu1*、
第2電圧指令;Cmin+ΔC・drt・Vv1*、
第3電圧指令;Cmin+ΔC・drt・Vw1*、
第4電圧指令;Cmin+ΔC・(drt+dst・(1−Vu1*))
=Cmax−ΔC・(1−(drt+dst・(1−Vu1*)))
=Cmax−ΔC・dst・Vu1*、
第5電圧指令;Cmin+ΔC・(drt+dst・(1−Vv1*))
=Cmax−ΔC・(1−(drt+dst・(1−Vv1*)))
=Cmax−ΔC・dst・Vv1*、
第6電圧指令;Cmin+ΔC・(drt+dst・(1−Vw1*))
=Cmax−ΔC・(1−(drt+dst・(1−Vv1*)))
=Cmax−ΔC・dst・Vw1*。
上述のように採用された通流比drt,dstは零または正であり、変動幅ΔCは正であるので、ΔC・drt,ΔC・dstはいずれも非負である。
0≦φ≦π/3においては式(9)で示されるようにVw1*=0であるので、第3電圧指令Cmin+ΔC・drt・Vw1*は最小値Cminに等しく、第6電圧指令Cmax−ΔC・dst・Vw1は最大値Cmaxに等しい(図5ではCmax=1,Cmin=0の場合を例示しており、第3電圧指令、第6電圧指令は,それぞれ値0,1を採る)。
そして、キャリアC1が第1電圧指令Cmin+ΔC・drt・Vu1*よりも小さいときと、第4電圧指令Cmax−ΔC・dst・Vu1*よりも大きいときにおいて、スイッチング信号Supを活性化させ、スイッチQupを導通させる。キャリアC1が第2電圧指令Cmin+ΔC・drt・Vv1*よりも小さいときと、第5電圧指令Cmax−ΔC・dst・Vv1*よりも大きいときにおいて、スイッチング信号Svpを活性化させ、スイッチQvpを導通させる。キャリアC1が第3電圧指令Cmin+ΔC・drt・Vw1*よりも小さいときと、第6電圧指令Cmax−ΔC・dst・Vw1*よりも大きいときにおいて、スイッチング信号Swpを活性化させ、スイッチQwpを導通させる。
スイッチング信号Syが活性化する期間は式(27)で計算される。
[{Cmax−(Cmax−ΔC・dst・Vy1*)}+{(Cmin+ΔC・drt・Vy1*)−Cmin}]×T0/ΔC=Vy1*・T0…(27)。
よって上述のように電圧指令群V**を定め、電圧指令群V**とキャリアC1との比較によって上述のようにスイッチング信号Sypを設定することにより、信号波群V1*で設定されるスイッチQypの導通期間の総計が得られることになる。
なお0≦φ≦π/3においては式(9)で示されるようにVw1*=0であるので、第3電圧指令は0であり、第6電圧指令は1であり、スイッチング信号Swpは非活性が維持される。
このようにして得られる二相変調方式を、便宜上、第1の二相変調方式と称することにする。
第1の二相変調方式では、電流形コンバータ2が転流するタイミング(変動幅ΔCと通流比drtとの積と、最小値Cminとの和に、キャリアC0が等しくなるタイミング)が、電圧形インバータ4の動作に零電圧ベクトルV0が採用される期間に含まれる。よって電流形コンバータ2はリンク電流Idcが零のときに転流する、いわゆる零電流スイッチングが実現される。これは当該転流の際のスイッチング損失を回避する点で望ましい。
キャリアC1の一周期において、単位電圧ベクトルV6が採用される期間は第1期間及び第2期間においてそれぞれ連続する期間として得られる。よって単位電圧ベクトルV6が採用される期間において、リンク電流Idcを測定するために必要な期間を得やすい。
しかし図3及び式(2)を参照して、位相角φが60°未満において60°に近づくと、長さτ4/T0が短くなる。しかも図5を参照して、単位電圧ベクトルV4が採用される期間は、第1期間と第2期間とでそれぞれ2つに区分されている。よって単位電圧ベクトルV4が採用される期間は、リンク電流Idcを測定するために必要な長さを得にくい。
同様にして、位相角φが60°より大きいままで60°に近づくと、長さτ2/T0が短くなり、単位電圧ベクトルV2が採用される期間は、リンク電流Idcを測定するために必要な長さを得にくくなる。
そこで、本実施の形態では、位相角φが60°未満であって60°に近い場合、電圧指令群V**として信号波群V2*に基づいて生成されるものを採用する(図6参照)。具体的には電圧指令群V**は、次の6つの電圧指令を含む(図6では簡単のため、Cmax=1,Cmin=0として示した):
第1電圧指令;Cmin+ΔC・drt・Vu2*
=Cmax−ΔC+ΔC・drt・Vu2*
=Cmax−(ΔC・dst+ΔC・drt)+ΔC・drt・Vu2*、
第2電圧指令;Cmin+ΔC・drt・Vv2*
=Cmax−ΔC+ΔC・drt・Vv2*
=Cmax−(ΔC・dst+ΔC・drt)+ΔC・drt・Vv2*、
第3電圧指令;Cmin+ΔC・drt・Vw2*
=Cmax−ΔC+ΔC・drt・Vw2*
=Cmax−(ΔC・dst+ΔC・drt)+ΔC・drt・Vw2*、
第4電圧指令;Cmin+ΔC・(drt+dst・(1−Vu2*))
=Cmax−ΔC・(1−(drt+dst・(1−Vu2*)))
=Cmax−ΔC・dst・Vu2*、
第5電圧指令;Cmin+ΔC・(drt+dst・(1−Vv2*))
=Cmax−ΔC・(1−(drt+dst・(1−Vv2*)))
=Cmax−ΔC・dst・Vv2*、
第6電圧指令;Cmin+ΔC・(drt+dst・(1−Vw2*))
=Cmax−ΔC・(1−(drt+dst・(1−Vw2*)))
=Cmax−ΔC・dst・Vw2*。
なお、0≦φ≦π/3においては式(16)で示されるようにVu2*=1であるので、第1電圧指令Cmin+ΔC・drt、第4電圧指令Cmax−ΔC・dstが得られ、これらは互いに等しい(図6ではCmax=1,Cmin=0の場合を例示しているので、これらの値は通流比drtに等しい)。
そして、キャリアC1が第1電圧指令Cmin+ΔC・drtよりも小さいときと、第4電圧指令Cmax−ΔC・dstよりも大きいときにおいて、スイッチング信号Supを活性化させ、スイッチQupを導通させる。キャリアC1が第2電圧指令Cmin+ΔC・drt・Vv2*よりも小さいときと、第5電圧指令Cmax−ΔC・dst・Vv2*よりも大きいときにおいて、スイッチング信号Svpを活性化させ、スイッチQvpを導通させる。キャリアC1が第3電圧指令Cmin+ΔC・drt・Vw2*よりも小さいときと、第6電圧指令Cmax−ΔC・dst・Vw2*よりも大きいときにおいて、スイッチング信号Swpを活性化させ、スイッチQwpを導通させる。
スイッチング信号Syが活性化する期間は式(28)で計算される。
[{Cmax−(Cmax−ΔC・dst・Vy2*)}+{(Cmin+ΔC・drt・Vy2*)−Cmin}]×T0/ΔC=Vy2*・T0…(28)。
よって上述のように電圧指令群V**を定め、電圧指令群V**とキャリアC1との比較によって上述のようにスイッチング信号Sypを設定することにより、信号波群V2*で設定されるスイッチQypの導通期間の総計が得られることになる。
なお0≦φ≦π/3においては上述のように第1電圧指令Cmin+ΔC・drtと第4電圧指令Cmax−ΔC・dstが互いに等しいので、スイッチング信号Supは活性が維持される。
このようにして得られる二相変調方式を、便宜上、第2の二相変調方式と称することにする。
第1の二相変調方式と第2の二相変調方式では、それぞれ信号波群V1*と信号波群V2*で設定された、スイッチの導通期間の総計が得られる。そして「B.信号波群の説明.」で0≦φ≦π/3において例示されたように、零電圧ベクトルV0,V7が採用される場合を除き、キャリアC0の一周期において電圧形インバータ4で採用されるスイッチングパターンの長さの総計は、信号波群V1*と信号波群V2*のいずれでも等しく設定される。よって第1の二相変調方式と第2の二相変調方式では、リンク電流Idcが零となる場合を除き、単位電圧ベクトルが採用される期間の総計は異ならない。
リンク電流Idcが零となる場合には、零電圧ベクトルV0,V7が採用される期間における、検出信号によりリンク電流Idcを検出する回路のオフセットの補償等を行う。しかしこの検出におけるドリフトの時定数は、キャリア周期に対して非常に大きい。よって零電圧ベクトルが検出可能な期間が確保できるタイミングで、適宜にリンク電流Idcの検出及びオフセットの補償を行えば足りる。
そして第2の二相変調方式では、単位電圧ベクトルV4が採用される期間は第1期間及び第2期間においてそれぞれ連続する期間として得られる。よって単位電圧ベクトルV4が採用される期間において、リンク電流Idcを測定するために必要な期間を得やすい。
他方、単位電圧ベクトルV6が採用される期間は第1期間と第2期間とでそれぞれ2つに区分されている。よって単位電圧ベクトルV4が採用される期間は、リンク電流Idcを測定するために必要な長さを得にくい。
よって、期間τ4が短くなる60°近傍では第2の二相変調方式を採用し、期間τ6が短くなる0°近傍では第1の二相変調方式を採用することが望ましい。
これは、いずれの二相変調方式でも、零電圧ベクトルV0,V7以外では、単位電圧ベクトルV4,V6の二種のみが採用されていることを利用している。つまり、第1の二相変調方式では、キャリアC1の一周期において二回現れる零電圧ベクトルV0が採用される期間が、単位電圧ベクトルV4が採用される期間で隣接して挟まれることにより、単位電圧ベクトルV6が採用される期間はその残りの期間で発生することとなる。これにより、単位電圧ベクトルV6が採用される期間はキャリアC1の一周期において二つに区分されるだけで済む。
他方、第2の二相変調方式では、キャリアC1の一周期において二回現れる零電圧ベクトルV7が採用される期間が、単位電圧ベクトルV6が採用される期間で隣接して挟まれることにより、単位電圧ベクトルV4が採用される期間はその残りの期間で発生することとなる。これにより、単位電圧ベクトルV4が採用される期間はキャリアC1の一周期において二つに区分されるだけで済む。
これらを一般化して述べると下記のようになる:
(i)第1の二相変調方式で採用される電圧指令群V**は、一対の電流経路のそれぞれにおける上アーム側のスイッチ(上述の例示、即ち0≦φ≦π/3の場合にはスイッチQwp,Qvp)が、キャリアC1の一周期において導通する期間の総計同士が零で等しい時点(上述の例示では信号波Vv1*,Vw1*がいずれも零となる位相角φ=0°)を含む第1区間において採用され;
(ii)当該一周期において全ての電流経路の上アーム側のスイッチQup,Qwp,Qvpが非導通する期間(零電圧ベクトルV0が採用される期間)が、当該一対の電流経路の上アーム側のスイッチ(上述の例示ではスイッチQwp,Qvp)のいずれもが非導通して、他の上アーム側のスイッチ(上述の例示ではQup)が導通する期間(上述の例示では単位電圧ベクトルV4が採用される期間)の一対に隣接して挟まれる.
(iii)第2の二相変調方式で採用される電圧指令群V**は、一対の電流経路のそれぞれにおける上アーム側のスイッチ(上述の例示ではスイッチQup,Qvp)が、キャリアC1の一周期において導通する期間の総計同士が非零で等しい時点(上述の例示では信号波Vu1*,Vv1*がいずれも等しく、かつ非零となる位相角φ=60°)を含む第2区間において採用され;
(iv)当該一周期において全ての電流経路の上アーム側のスイッチQup,Qwp,Qvpが導通する期間(零電圧ベクトルV7が採用される期間)が、当該一対の電流経路の上アーム側のスイッチ(上述の例示ではスイッチQup,Qvp)のいずれもが導通して、他の上アーム側のスイッチ(上述の例示ではスイッチQwp)が非導通である期間(上述の例示では単位電圧ベクトルV6が採用される期間)の一対に隣接して挟まれる.
(v)そして上記(i)〜(iv)で説明される電圧指令群に対応してスイッチング信号Syp,Synが決定される。
なお、第1区間の長さ、第2区間の長さは、電流検出に必要な長さに応じて、適宜に決定できる。但し第1区間と第2区間とは排他的でなければならないのは当然である。
このように、第1の二相変調方式と第2の二相変調方式とを位相角φに応じて使い分けることにより、ベクトルパターンを維持する期間を本来維持すべき期間よりも延長することなく電流検出を行うことができる。よって電圧ベクトルの補償を必要とすることも無く、出力歪やスイッチング損失の増大が回避される。
なお、波形の対称性から、0≦φ≦π/3以外で位相角φが採り得る他の範囲についても上記(i)〜(v)で説明できることは明白である。
D.第2の実施の形態.
本実施の形態では、第2区間において上記(iii),(iv)を満足する、第2の二相変調方式とは異なった、第3の二相変調方式を提案する。
図7は第3の二相変調方式の動作を示すグラフであって、0≦φ≦π/3において、キャリアC2と電圧指令群V**とを比較して、スイッチング信号Sup,Svp,Swpの活性/非活性が決定される様子を示す。但し、電流形コンバータ2の転流を決定する、キャリアC0及び通流比drtについても併記した。
本実施の形態では、位相角φが60°未満であって60°に近い場合、第3の二相変調方式を採用する。第3の二相変調方式でも、電圧指令群V**として信号波群V2*に基づいて生成されるものを採用する。具体的には第2の二相変調方式で採用される電圧指令群V**と同じ6つの電圧指令を含む(図7では簡単のため、Cmax=1,Cmin=0として示した):
第1電圧指令;Cmin+ΔC・drt・Vu2*
=Cmax−ΔC+ΔC・drt・Vu2*
=Cmax−(ΔC・dst+ΔC・drt)+ΔC・drt・Vu2*、
第2電圧指令;Cmin+ΔC・drt・Vv2*
=Cmax−ΔC+ΔC・drt・Vv2*
=Cmax−(ΔC・dst+ΔC・drt)+ΔC・drt・Vv2*、
第3電圧指令;Cmin+ΔC・drt・Vw2*
=Cmax−ΔC+ΔC・drt・Vw2*
=Cmax−(ΔC・dst+ΔC・drt)+ΔC・drt・Vw2*、
第4電圧指令;Cmin+ΔC・(drt+dst・(1−Vu2*))
=Cmax−ΔC・(1−(drt+dst・(1−Vu2*)))
=Cmax−ΔC・dst・Vu2*、
第5電圧指令;Cmin+ΔC・(drt+dst・(1−Vv2*))
=Cmax−ΔC・(1−(drt+dst・(1−Vv2*)))
=Cmax−ΔC・dst・Vv2*、
第6電圧指令;Cmin+ΔC・(drt+dst・(1−Vw2*))
=Cmax−ΔC・(1−(drt+dst・(1−Vw2*)))
=Cmax−ΔC・dst・Vw2*。
そして、0≦φ≦π/3においては式(16)で示されるようにVu2*=1であるので、第1電圧指令Cmin+ΔC・drt、第4電圧指令Cmax−ΔC・dstが得られ、これらは互いに等しい(図7ではCmax=1,Cmin=0の場合を例示しているので、これらの値は通流比drtに等しい)。
但し、第3の二相変調方式で採用されるキャリアC2は、第2の二相変調方式で採用されるキャリアC1とは波形が異なる。キャリアC2は長さdrt・T0の第1期間において連続する部分C2rと、長さdst・T0の第2期間において連続する部分C2sとに区分される。
部分C2r,C2sのそれぞれは対称三角波であり、部分C2rは極大値を採り、部分C2sは極小値を採り、この極大値と極小値とはいずれも値(Cmin+ΔC・drt)(=Cmax−ΔC・dst)に等しい。
部分C2r,C2s同士は不連続である。具体的にはキャリアC2が部分C2sにおいて極小値を採った後に増大してキャリアC2の最大値Cmaxに至ると、キャリアC2はその最小値Cminまで立ち下り、部分C2rにおいて極大値を採るまで増大を続ける。キャリアC2が部分C2rにおいて極大値を採った後に減少してキャリアC2の最小値Cminに至ると、キャリアC2はその最大値Cmaxまで立ち上がり、部分C2sにおいて極小値を得るまで減少を続ける。
換言するとキャリアC2が呈する三角波は、その周期T0一つ当たり(一周期当たり)において、最大値Cmaxおよび最小値Cminをそれぞれ二回ずつ呈する。キャリアC2は、第2期間から第1期間へと遷移する第1の時点で最大値Cmaxから最小値Cminへ切り替わる。キャリアC2は、第1期間から第2期間へと遷移する第2の時点で最小値Cminから最大値Cmaxへ切り替わる。また、キャリアC2は一周期当たりにおいて、値が等しい極大値及び極小値をそれぞれ一回ずつ呈する。
キャリアC2が第1電圧指令Cmin+ΔC・drtよりも小さいときと、第4電圧指令Cmax−ΔC・dstよりも大きいときにおいて、スイッチング信号Supを活性化させ、スイッチQupを導通させる。キャリアC2が第2電圧指令Cmin+ΔC・drt・Vv2*よりも小さいときと、第5電圧指令Cmax−ΔC・dst・Vv2*よりも大きいときにおいて、スイッチング信号Svpを活性化させ、スイッチQvpを導通させる。キャリアC2が第3電圧指令Cmin+ΔC・drt・Vw2*よりも小さいときと、第6電圧指令Cmax−ΔC・dst・Vw2*よりも大きいときにおいて、スイッチング信号Swpを活性化させ、スイッチQwpを導通させる。このような電圧指令群V**とキャリアC2との比較は、第2の二相変調方式における電圧指令群V**とキャリアC1との比較と同じである。
キャリアC2の部分C2rは、キャリアC1のうち第1期間にある波形を、第1期間の中央で分離して前後を入れ替えた形状を呈する。またキャリアC2の部分C2sは、キャリアC1のうち第2期間にある波形を、第2期間の中央で分離して前後を入れ替えた形状を呈する。
以上のことから、第3の二相変調方式においてスイッチング信号Syが活性化する期間は、第2の二相変調方式と同様に式(28)で計算される。よって上述のように電圧指令群V**を定め、電圧指令群V**とキャリアC2との比較によって上述のようにスイッチング信号Sypを設定することにより、信号波群V2*で設定されるスイッチQypの導通期間の総計が得られることになる。
なお0≦φ≦π/3においては上述のように第1電圧指令Cmin+ΔC・drtと第4電圧指令Cmax−ΔC・dstが互いに等しいので、スイッチング信号Supは活性が維持される。
以上のように、第3の二相変調方式も、第2の二相変調方式と同様に第2区間で(iii),(iv)を満足することができる。よって本実施の形態でも第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
第2の二相変調方式では、第1期間と第2期間との境界は、電圧形インバータ4で単位電圧ベクトルV4が採用される期間にあるので、いわゆる零電流スイッチングが実現されない。しかしながら第3の二相変調方式では、当該境界は、電圧形インバータ4で単位電圧ベクトルV7が採用される期間にあるので、いわゆる零電流スイッチングが実現される。
E.第3の実施の形態.
本実施の形態では、第2区間において上記(iii),(iv)を満足する、第2の二相変調方式および第3の二相変調方式のいずれとも異なった、第4の二相変調方式を提案する。
図8は第4の二相変調方式の動作を示すグラフであって、0≦φ≦π/3において、キャリアC1と電圧指令群V**とを比較して、スイッチング信号Sup,Svp,Swpの活性/非活性が決定される様子を示すグラフである。但し、電流形コンバータ2の転流を決定する、キャリアC0及び通流比drtについても併記した。
本実施の形態では、位相角φが60°未満であって60°に近い場合、第4の二相変調方式を採用する。第4の二相変調方式でも、電圧指令群V**として信号波群V2*に基づいて生成されるものを採用するが、第2の二相変調方式や第3の二相変調方式で採用されるものとは異なる。具体的には電圧指令群V**は次の6つの電圧指令を含む(図8では簡単のため、Cmax=1,Cmin=0として示した):
第1電圧指令;Cmin+ΔC・drt・(1−Vu2*)、
第2電圧指令;Cmin+ΔC・drt・(1−Vv2*)、
第3電圧指令;Cmin+ΔC・drt・(1−Vw2*)、
第4電圧指令;Cmin+ΔC・(drt+dst・Vu2*)
=Cmax−ΔC・(1−drt−dst・Vu2*)
=Cmax−ΔC・dst・(1−Vu2*)、
第5電圧指令;Cmin+ΔC・(drt+dst・Vv2*)
=Cmax−ΔC・(1−drt−dst・Vv2*)
=Cmax−ΔC・dst・(1−Vv2*)、
第6電圧指令;Cmin+ΔC・(drt+dst・Vw2*)
=Cmax−ΔC・(1−drt−dst・Vw2*)
=Cmax−ΔC・dst・(1−Vw2*)。
そして、0≦φ≦π/3においては式(16)で示されるようにVu2*=1であるので、第1電圧指令Cmin+ΔC・drt・(1−Vu2*)は最小値Cminに等しく、第4電圧指令Cmax−ΔC・dst・(1−Vu2*)は最大値Cmaxに等しい(図8ではCmax=1,Cmin=0の場合を例示しているので、第1電圧指令、第4電圧指令は,それぞれ値0,1を採る)。
そして、キャリアC1が第1電圧指令Cmin+ΔC・drt・(1−Vu2*)より大きく、かつ第4電圧指令Cmax−ΔC・dst・(1−Vu2*)よりも小さいときにおいて、スイッチング信号Supを活性化させ、スイッチQupを導通させる。キャリアC1が第2電圧指令Cmin+ΔC・drt・(1−Vv2*)より大きく、かつ第5電圧指令Cmax−ΔC・dst・(1−Vv2*)よりも小さいときにおいて、スイッチング信号Svpを活性化させ、スイッチQvpを導通させる。キャリアC1が第3電圧指令Cmin+ΔC・drt・(1−Vw2*)より大きく、かつ第6電圧指令Cmax−ΔC・dst・(1−Vw2*)よりも小さいときにおいて、スイッチング信号Swpを活性化させ、スイッチQwpを導通させる。
スイッチング信号Syが活性化する期間は式(29)で計算される。
[{Cmax−ΔC・dst・(1−Vy2*)}−{Cmin+ΔC・drt・(1−Vy2*)}]×T0/ΔC=Vy2*・T0…(29)。
よって上述のように電圧指令群V**を定め、電圧指令群V**とキャリアC1との比較によって上述のようにスイッチング信号Sypを設定することにより、信号波群V2*で設定されるスイッチQypの導通期間の総計が得られることになる。
なお0≦φ≦π/3においては上述のように第1電圧指令Cmin+ΔC・drt・(1−Vu2*)は最小値Cminに等しく、第4電圧指令Cmax−ΔC・dst・(1−Vu2*)は最大値Cmaxに等しいので、スイッチング信号Supは活性が維持される。
以上のように、第4の二相変調方式も、第2の二相変調方式と同様に第2区間で(iii),(iv)を満足することができる。よって本実施の形態でも第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
第4の二相変調方式では、第3の二相変調方式と同様に、いわゆる零電流スイッチングが実現される。しかも第4の二相変調方式で採用されるキャリアC1は、第3の二相変調方式で採用されたキャリアC2よりも波形が単純であって生成しやすい。またキャリアC1はキャリアC0と共用されることができる。
F.第4の実施の形態.
本実施の形態では、第1区間において上記(i),(ii)を満足する、第1の二相変調方式とは異なった、第5の二相変調方式を提案する。
図9は第5の二相変調方式の動作を示すグラフであって、0≦φ≦π/3において、キャリアC2と電圧指令群V**とを比較して、スイッチング信号Sup,Svp,Swpの活性/非活性が決定される様子を示すグラフである。但し、電流形コンバータ2の転流を決定する、キャリアC0及び通流比drtについても併記した。
本実施の形態では、位相角φが0°より大きく0°に近い場合、第5の二相変調方式を採用する。第5の二相変調方式でも、電圧指令群V**として信号波群V1*に基づいて第1の二相変調方式で採用されるものを採用する。具体的には第1の二相変調方式で採用される電圧指令群V**と同じ6つの電圧指令を含む(図9では簡単のため、Cmax=1,Cmin=0として示した):
第1電圧指令;Cmin+ΔC・drt・Vu1*、
第2電圧指令;Cmin+ΔC・drt・Vv1*、
第3電圧指令;Cmin+ΔC・drt・Vw1*、
第4電圧指令;Cmin+ΔC・(drt+dst・(1−Vu1*))
=Cmax−ΔC・(1−drt−dst・(1−Vu1*))
=Cmax−ΔC・dst・Vu1*、
第5電圧指令;Cmin+ΔC・(drt+dst・(1−Vv1*))
=Cmax−ΔC・(1−drt−dst・(1−Vv1*))
=Cmax−ΔC・dst・Vv1*、
第6電圧指令;Cmin+ΔC・(drt+dst・(1−Vw1*))
=Cmax−ΔC・(1−drt−dst・(1−Vw1*))
=Cmax−ΔC・dst・Vw1*。
0≦φ≦π/3においては式(9)で示されるようにVw1*=0であるので、第3電圧指令Cmin+ΔC・drt・Vw1*は最小値Cminに等しく、第6電圧指令Cmax−ΔC・dst・Vw1は最大値Cmaxに等しい(図9ではCmax=1,Cmin=0の場合を例示しているので、第3電圧指令、第6電圧指令は,それぞれ値0,1を採る)。
そして、キャリアC2が第1電圧指令Cmin+ΔC・drt・Vu1*よりも小さいときと、第4電圧指令Cmax−ΔC・dst・Vu1*よりも大きいときにおいて、スイッチング信号Supを活性化させ、スイッチQupを導通させる。キャリアC2が第2電圧指令Cmin+ΔC・drt・Vv1*よりも小さいときと、第5電圧指令Cmax−ΔC・dst・Vv1*よりも大きいときにおいて、スイッチング信号Svpを活性化させ、スイッチQvpを導通させる。キャリアC2が第3電圧指令Cmin+ΔC・drt・Vw1*よりも小さいときと、第6電圧指令Cmax−ΔC・dst・Vw1*よりも大きいときにおいて、スイッチング信号Svpを活性化させ、スイッチQvpを導通させる。
第5の二相変調方式では、第3の二相変調方式と同様にしてキャリアC2を採用するので、第5の二相変調方式においてスイッチング信号Syが活性化する期間は、第1の二相変調方式と同様に式(27)で計算される。よって上述のように電圧指令群V**を定め、電圧指令群V**とキャリアC2との比較によって上述のようにスイッチング信号Sypを設定することにより、信号波群V1*で設定されるスイッチQypの導通期間の総計が得られることになる。
なお0≦φ≦π/3においては上述のように第3電圧指令が最小値Cminに等しく、第6電圧指令は最大値Cmaxに等しいので、スイッチング信号Swpは非活性が維持される。
以上のように、第5の二相変調方式も、第1の二相変調方式と同様に第1区間で(i),(ii)を満足することができる。よって本実施の形態でも第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
第5の二相変調方式では、第1期間と第2期間との境界(つまり電流形コンバータ2が転流するタイミング)は、電圧形インバータ4で単位電圧ベクトルV6が採用される期間にあるので、いわゆる零電流スイッチングが実現されない。しかし換言すれば、第1区間という期間τ6が短い期間であっても、通流比drtで決定される電流形コンバータ2が転流するタイミングでリンク電流Idcを測定することで、相電流を検出しやすくなる。
これは特に、第2区間において第2の二相変調方式(図6参照)を採用することで、より有利な効果となる。第2の二相変調方式においては、第2区間という期間τ4が短い期間であっても、通流比drtで決定される電流形コンバータ2が転流するタイミングでリンク電流Idcを測定することで、相電流を検出しやすくなる。つまり、第1区間であれ第2区間であれ、採用される期間が短くなる単位電圧ベクトルについて、同じタイミング、具体的には電流形コンバータ2が転流するタイミングで相電流を検出しやすくなる。
G.第5の実施の形態.
本実施の形態では、第1区間において上記(i),(ii)を満足する、第1の二相変調方式および第5の二相変調方式のいずれとも異なった、第6の二相変調方式を提案する。
図10は第6の二相変調方式の動作を示すグラフであって、0≦φ≦π/3において、キャリアC1と電圧指令群V**とを比較して、スイッチング信号Sup,Svp,Swpの活性/非活性が決定される様子を示すグラフである。但し、電流形コンバータ2の転流を決定する、キャリアC0及び通流比drtについても併記した。
本実施の形態では、位相角φが0°より大きく0°に近い場合、第6の二相変調方式を採用する。第6の二相変調方式でも、電圧指令群V**は信号波群V1*に基づいて生成される。具体的には次の6つの電圧指令を含む(図10では簡単のため、Cmax=1,Cmin=0として示した):
第1電圧指令;Cmin+ΔC・drt・(1−Vu1*)
=Cmax−ΔC+ΔC・drt・(1−Vu1*)
=Cmax−(ΔC・drt+ΔC・dst)+ΔC・drt・(1−Vu1*)、
第2電圧指令;Cmin+ΔC・drt・(1−Vv1*)
=Cmax−ΔC+ΔC・drt・(1−Vv1*)
=Cmax−(ΔC・drt+ΔC・dst)+ΔC・drt・(1−Vv1*)、
第3電圧指令;Cmin+ΔC・drt・(1−Vw1*)
=Cmax−ΔC+ΔC・drt・(1−Vw1*)
=Cmax−(ΔC・drt+ΔC・dst)+ΔC・drt・(1−Vw1*)、
第4電圧指令;Cmax−ΔC・dst・(1−Vu1*)
=Cmax・(drt+dst・Vu1*)+Cmin・dst・(1−Vu1*)、
第5電圧指令;Cmax−ΔC・dst・(1−Vv1*)
=Cmax・(drt+dst・Vv1*)+Cmin・dst・(1−Vv1*)、
第6電圧指令;Cmax−ΔC・dst・(1−Vw1*)
=Cmax・(drt+dst・Vw1*)+Cmin・dst・(1−Vw1*)。
そして、0≦φ≦π/3においては式(9)で示されるようにVw1*=0であるので、第3電圧指令Cmin+ΔC・drt、第6電圧指令Cmax−ΔC・dstが得られ、これらは互いに等しい(図10ではCmax=1,Cmin=0の場合を例示しているので、これらの値は通流比drtに等しい)。
そして、キャリアC1が第1電圧指令Cmin+ΔC・drt・(1−Vu1*)より大きく、かつ第4電圧指令Cmax−ΔC・dst・(1−Vu1*)よりも小さいときにおいて、スイッチング信号Supを活性化させ、スイッチQupを導通させる。キャリアC1が第2電圧指令Cmin+ΔC・drt・(1−Vv1*)より大きく、かつ第5電圧指令Cmax−ΔC・dst・(1−Vv1*)よりも小さいときにおいて、スイッチング信号Svpを活性化させ、スイッチQvpを導通させる。キャリアC1が第3電圧指令Cmin+ΔC・drt・(1−Vw1*)より大きく、かつ第6電圧指令Cmax−ΔC・dst・(1−Vw1*)よりも小さいときにおいて、スイッチング信号Svpを活性化させ、スイッチQvpを導通させる。
スイッチング信号Syが活性化する期間は式(30)で計算される。
[{Cmax−ΔC・dst・(1−Vy1*)}−{Cmin+ΔC・drt・(1−Vy1*)}]×T0/ΔC=Vy1*・T0…(30)。
よって上述のように電圧指令群V**を定め、電圧指令群V**とキャリアC1との比較によって上述のようにスイッチング信号Sypを設定することにより、信号波群V1*で設定されるスイッチQypの導通期間の総計が得られることになる。
なお0≦φ≦π/3においては上述のように第3電圧指令Cmin+ΔC・drtと第6電圧指令Cmax−ΔC・dstが互いに等しいので、スイッチング信号Swpは非活性が維持される。
以上のように、第6の二相変調方式も、第1の二相変調方式、第5の二相変調と同様に第1区間で(i),(ii)を満足することができる。よって本実施の形態でも第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
第6の二相変調方式では、第5の二相変調方式と同様に、いわゆる零電流スイッチングが実現されない。しかし第4の実施の形態でも説明したように、第1区間という期間τ6が短い期間であっても、通流比drtで決定される電流形コンバータ2が転流するタイミングでリンク電流Idcを測定することで、相電流を検出しやすくなる。
そしてこれは特に、第2区間において第2の二相変調方式(図6参照)を採用することで、より有利な効果となることも、第4の実施の形態で説明した通りである。
また、第1の二相変調方式と同様に、第6の二相変調方式で採用されるキャリアC1は、第5の二相変調方式で採用されたキャリアC2よりも波形が単純であって生成しやすい。またキャリアC1はキャリアC0と共用されることができる。
H.二相変調方式の組み合わせ.
第1区間においては第1の二相変調方式、第5の二相変調方式、第6の二相変調方式を採用することができる。また第2区間においては第2の二相変調方式、第3の二相変調方式、第4の二相変調方式を採用することができる。
第1の実施の形態では第1の区間において第1の二相変調方式を採用し、第2の区間において第2の二相変調方式を採用する場合を例示した。第2の実施の形態では第2の区間において第3の二相変調方式を採用する場合を例示したが、この場合、第1の区間において第1の二相変調方式、第5の二相変調方式、第6の二相変調方式のいずれかを採用することができる。同様に、第3の実施の形態では第2の区間において第4の二相変調方式を採用する場合を例示したが、この場合、第1の区間において第1の二相変調方式、第5の二相変調方式、第6の二相変調方式のいずれかを採用することができる。
あるいは第4の実施の形態では第1の区間において第5の二相変調方式を採用する場合を例示したが、この場合、第2の区間において第2の二相変調方式、第3の二相変調方式、第4の二相変調方式のいずれかを採用することができる。同様に、第5の実施の形態では第1の区間において第6の二相変調方式を採用する場合を例示したが、この場合、第2の区間において第2の二相変調方式、第3の二相変調方式、第4の二相変調方式のいずれかを採用することができる。
そしてこのような二相変調方式の組み合わせは、上述の(i)〜(iv)を満足するので、ベクトルパターンを維持する期間を本来維持すべき期間よりも延長することなく電流検出を行えるようにし、以て出力歪やスイッチング損失の増大を回避できる。
特に、第1区間において第1の二相変調方式を採用し、第2区間において第2の二相変調方式あるいは第3の二相変調方式を採用することは、零電流スイッチングを行える観点で望ましい。
また、第1区間において第1の二相変調方式あるいは第6の二相変調方式を採用し、第2区間において第2の二相変調方式あるいは第4の二相変調方式を採用することは、キャリアC1という波形が単純なキャリアC1を採用できる観点で望ましい。またこの場合、キャリアC1をキャリアC0と共用することができる観点でも望ましい。
また、第1区間において第5の二相変調方式あるいは第6の二相変調方式を採用し、第2区間において第2の二相変調方式を採用することは、相電流を検出するタイミングを第1区間と第2区間とで異ならせる必要が無い観点で望ましい。
I.直接形交流電力変換装置の第2の構成.
図11は、以下の第6〜第10の実施の形態において説明される制御装置8と、制御装置8の制御対象となる直接形交流電力変換装置200の構成を示す回路図である。
ここで例示される直接形交流電力変換装置200は単相全波整流を行う整流回路12と、電力バッファ回路9と、DC/AC変換を行う電圧形インバータ4と、整流回路12及び電力バッファ回路9と電圧形インバータ4とを結ぶ直流リンク7とを備えている。かかる構成それ自体は特許文献3や非特許文献3等で公知である。
整流回路12の入力側は、単相交流電源10と接続されている。整流回路12と電力バッファ回路9とは、電圧形インバータ4に対し、直流リンク7として機能する直流母線LH,LLによって相互に並列に接続される。直流母線LHには直流母線LLよりも高い電位が印加される。
整流回路12はブリッジ回路を構成するダイオードD21〜D24を備えている。整流回路12は単相交流電源10から入力される単相交流電圧Vinを単相全波整流して整流電圧Vrec(=|Vin|)に変換し、これを直流母線LH,LLの間に出力する。整流回路12は単相交流電源10から電流irecを入力する。
電圧形インバータ4の構成及び動作は第1から第5の実施の形態におけるそれらと同じであるので、ここでは説明を省略する。
電力バッファ回路9はコンデンサ90、放電回路91、充電回路92を有し、直流母線LH,LLとの間で電力を授受する。充電回路92は整流電圧Vrecを昇圧してコンデンサ90を充電する。放電回路91はコンデンサ90を放電する。
放電回路91はダイオードD92と逆並列接続されたトランジスタ(ここでは絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ:以下「IGBT」と略記)Scを含んでいる。トランジスタScはコンデンサ90に対して直流母線LH側で、直流母線LH,LLの間で直列に接続されている。トランジスタScとダイオードD92とは纏めて一つのスイッチScとして把握することができる。スイッチScの導通によってコンデンサ90が放電して直流母線LH,LL間へと電力を授与する。スイッチScは制御装置6からの信号SScによってその開閉が制御される。
充電回路92は、例えばダイオードD90と、リアクトルL9と、トランジスタ(ここではIGBT)Slとを含んでいる。ダイオードD90は、カソードと、アノードとを備え、当該カソードはスイッチScとコンデンサ90との間に接続される。かかる構成はいわゆる昇圧チョッパとして知られている。トランジスタSlにはダイオードD91が逆並列接続されており、両者を纏めて一つのスイッチSlとして把握することができる。
コンデンサ90は充電回路92により充電され、整流電圧Vrecよりも高い両端電圧Vc(以下「昇圧電圧Vc」とも称す)が発生する。つまり電力バッファ回路9は昇圧回路として機能し、リンク電圧Vdcへ昇圧電圧Vcが寄与するか否かがスイッチScによって決定される。
より具体的には、スイッチScが非導通のときには整流電圧Vrecがリンク電圧Vdcとして採用される。スイッチScが導通するときには、昇圧電圧Vcは整流電圧Vrecよりも高いので、昇圧電圧Vcがリンク電圧Vdcとして採用される。
図12は特に電圧に着目し、整流電圧Vrec及び昇圧電圧Vcと、リンク電圧Vdcとの関係を模式的に示すブロック図である。整流回路12は単相交流電圧Vinから整流電圧Vrecを生成し、整流電圧VrecはスイッチS91の一端91aと充電回路92とに与えられる。充電回路92はコンデンサ90を昇圧電圧Vcに充電し、昇圧電圧VcはスイッチS91の他端91bに与えられる。スイッチS91の共通端91cは昇圧電圧Vcを電圧形インバータ4に出力する。
スイッチS91において共通端91cと一端91aとが接続されることはスイッチScが非導通であることに対応し、共通端91cと他端91bとが接続されることはスイッチScが導通することに対応する。このようにリンク電圧Vdcは、整流電圧Vrecと昇圧電圧Vcとを排他的に採用して得られる。
図13は図11に示された回路の、特に電流に着目した等価回路を示す回路図である。当該等価回路において電流irec1は、スイッチSrecが導通するときにこれを経由する電流irec1として等価的に表されている。同様に、放電電流icは、スイッチScが導通するときにこれを経由する電流として等価的に表されている。
また、電圧形インバータ4において接続点Pu,Pv,Pwが直流母線LH,LLのいずれか一方に共通して接続されるときに電圧形インバータ4を介して負荷3に流れる電流も、スイッチSzが導通するときにこれを経由して流れる零相電流izとして等価的に表されている。また図12では、充電回路92を構成するリアクトルL9とダイオードD90とスイッチSlとが表され、リアクトルL9を流れる電流ilが付記されている。
このようにして得られた等価回路においては、スイッチSrec,Sc,Szが導通するそれぞれのデューティdrec,dc,dzとを導入してdrec+dc+dz=1が成立する。但し、0≦drec≦1,0≦dc≦1,0≦dz≦1である。
リンク電流IdcはスイッチSrec,Sc,Szをそれぞれ導通する電流irec1,ic,izの総和である。また電流irec1,ic,izはそれぞれリンク電流Idcにデューティdrec,dc,dzを乗算したものであるので、これらはスイッチSrec,Sc,Szのスイッチング周期における平均値である。
デューティdrecは整流回路12が電流を電圧形インバータ4に流し得る期間を設定するデューティであるので、整流デューティdrecと称する。またデューティdcは、コンデンサ90が放電するデューティであるので、放電デューティdcと称する。またデューティdzは電圧形インバータ4においてその出力する電圧によらずに必ず零相電流izが流れるデューティであるので、零デューティdzと称する。
なお、スイッチSlは充電デューティdlに基づいた信号SSlの活性化によって導通し、リアクトルL9に電流Ilを流すことによってリアクトルL9にエネルギーを蓄積する。スイッチSlが非導通することでダイオードD90を介してコンデンサ90が充電される。換言すれば、コンデンサ90を充電するデューティは充電デューティdlと相補的となる。
このような構成の電力バッファ回路9の動作や、図13に示された等価回路、上述の各種デューティの具体的な設定の一例については、特許文献3、非特許文献3で詳述されているので、ここでは詳細な説明を省略する。
但し、図11の構成、及びリンク電圧Vdcとして昇圧電圧Vcが採用されるのはスイッチScが導通する場合のみであることからわかるように、(等価的な)スイッチSrecはそれ自体は能動的に機能せず、スイッチScの動作によって受動的に機能する。よって電圧の観点で模式的に示された図12のスイッチS91は、電流の観点で等価的に示された図13のスイッチSc,Szを纏めたものと把握することができる。
つまり、スイッチS91において、その共通端91cと他端91bとが接続されるデューティは放電デューティdcに等しく、共通端91cと一端91aとが接続されるデューティは整流デューティdrecと零デューティdzとの和に等しいと見ることができる。
なお、特許文献3、非特許文献3では、零デューティdzに対応して電流irec1,icが流れない場合を考慮してリンク電圧Vdcの平均的な値を用いており、スイッチS91を用いて説明した瞬時的なリンク電圧Vdcとは異なることを付言する。
図14は制御装置8の構成を例示するブロック図である。制御装置8は、コンバータ制御部80、インバータ制御部30、変調率算出部40、センサレスベクトル制御部50を備えている。インバータ制御部30、変調率算出部40、センサレスベクトル制御部50の構成及び動作は制御装置6のそれらと同一であるので、電圧指令生成部34の動作を除いて、ここでは詳細な説明を省略する。電圧指令生成部34の動作は第6〜10の実施の形態において説明される。
なお、キャリア生成部35はキャリアC1,C3のいずれかを出力して比較器36に与える。比較器36は第1〜5の実施の形態と同様に動作する。
コンバータ制御部80は、電流分配率生成部81と、加算器82と、比較器83と、キャリア生成部85とを有する。
電流分配率生成部81は、諸量に基づいて、整流デューティdrec、放電デューティdc、零デューティdz、充電デューティdlを生成し、これらを出力する。当該諸量として、例えば昇圧電圧Vcの指令値Vc*、リンク電流Idcの指令値Idc*、単相交流電圧Vinの回転角速度ω及び波高値Vm、電流irecの波高値Imが例示される。
加算器82は整流デューティdrecと零デューティdzとの和を出力する。当該和は比較器83においてキャリアC0と比較され、その比較された結果が信号SScとして採用される。比較器83は更に、充電デューティdlとキャリアC0とを比較し、その比較された結果が信号SSlとして採用される。
キャリアC0はキャリア生成部85によって生成される。第1〜第5の実施の形態と同様に、キャリアC0は周期T0、最小値0、最大値1の対称三角波を採用する。つまりキャリア生成部85はキャリア生成部25と同じ構成を採用することができる。
電圧指令生成部34には放電デューティdc及び零デューティdzが入力される。上述のようにdrec+dc+dz=1の関係があるので、零デューティdzに代えて整流デューティdrecを電圧指令生成部34に入力しても良い。
制御装置8も制御装置6と同様に、マイクロコンピュータと記憶装置を含んで構成される。マイクロコンピュータは、プログラムに記述された各処理ステップ(換言すれば手順)を実行する。マイクロコンピュータは、プログラムに記述された各処理ステップに対応する各種手段として機能するとも把握でき、あるいは、各処理ステップに対応する各種機能を実現するとも把握できる。また、制御装置8はこれに限らず、制御装置8によって実行される各種手順、あるいは実現される各種手段又は各種機能の一部又は全部をハードウェアで実現しても構わない。
J.第6の実施の形態.
図15及び図16はいずれも、0≦φ≦π/3において、キャリアC1と電圧指令群V**とを比較して、スイッチング信号Sup,Svp,Swpの活性/非活性が決定される様子を示すグラフである。但し図13で示された(等価的な)スイッチSrec,Sz及び放電回路13のスイッチScの動作、及びこれらの動作を決定する、キャリアC0及び二つのデューティについても併記した。本実施の形態ではキャリアC1は対称三角波である。但し図15及び図16では簡単のため、キャリアC1の最大値及び最小値をそれぞれCmax=1,Cmin=0として示した。
スイッチSrec,Sc,Szのオン/オフはそれぞれのグラフの高/低で示される。キャリアC1の周期T0は、整流デューティdrec、放電デューティdc、零デューティdzの比によって分割される。
上述のように整流デューティdrecは放電デューティdc、零デューティdzによって受動的に決定される。そこでキャリアC0の比較対象として、放電デューティdcを1から引いた値を放電補デューティ(1−dc)(これはスイッチScが非導通となるデューティであって整流デューティdrecと零デューティdzとの和に等しい)と称し、これを採用する。
図15及び図16はそれぞれ第1の実施の形態で示された図5及び図6に対応する。即ち、図15は期間τ6が短くなる0°近傍で採用される第7の二相変調方式の動作を示す。第7の二相変調方式も、第1の二相変調方式と同様に、キャリアC1の一周期において二回現れる零電圧ベクトルV0が採用される期間が、単位電圧ベクトルV4が採用される期間で隣接して挟まれることにより、単位電圧ベクトルV6が採用される期間はその残りの期間で発生することとなる。これにより、単位電圧ベクトルV6が採用される期間はキャリアC1の一周期において二つに区分されるだけで済む。
図16は期間τ4が短くなる60°近傍で採用される第8の二相変調方式の動作を示す。第8の二相変調方式も、第2の二相変調方式と同様に、キャリアC1の一周期において二回現れる零電圧ベクトルV7が採用される期間が、単位電圧ベクトルV6が採用される期間で隣接して挟まれることにより、単位電圧ベクトルV4が採用される期間はその残りの期間で発生することとなる。これにより、単位電圧ベクトルV4が採用される期間はキャリアC1の一周期において二つに区分されるだけで済む。
以下、上述のように単位電圧ベクトルが配置され、上述の(i)〜(iv)を得るために必要な電圧指令群V**について、第7の二相変調方式(図15参照)及び第8の二相変調方式(図16参照)のそれぞれについて詳述する。
図15は第7の二相変調方式が採用される場合についてのグラフであり、0≦φ≦π/3において、キャリアC1と電圧指令群V**とを比較して、スイッチング信号Sup,Svp,Swpの活性/非活性が決定される様子を示す。但し、キャリアC0並びに放電補デューティ(1−dc)及び整流デューティdrecについても併記した。
周期T0は期間tc(=dc・T0),trec(=drec・T0)、一対の期間tz/2(=dz・T0/2)によって分割される。即ち、キャリアC0が放電補デューティ(1−dc)以上となる期間が期間tcであり、キャリアC0が整流デューティdrec以下となる期間が期間trecであり、キャリアC0が整流デューティdrec以上で放電補デューティ(1−dc)以下となる期間が一対の期間tz/2として存在する。
第7の二相変調方式において、期間tcは直接形交流電力変換装置100の電流形コンバータ2について説明された第2期間に対応する。期間trecと一対の期間tz/2は纏めて、電流形コンバータ2について説明された第1期間に対応する。このような対応を考えると、電流形コンバータ2について説明された第1状態及び第2状態は、それぞれスイッチScが非導通の状態及び導通の状態に、それぞれ対応する。よって第1期間と第2期間との境界において、昇圧電圧Vcがリンク電圧Vdcに採用されるか否かが切り替わると把握することができる。
このような切り替わりのタイミングは、上述の様に、キャリアC0と放電デューティdc、より具体的には放電補デューティ(1−dc)とで決定される。この放電デューティdcをどのように設定することが望ましいかについては特許文献3や非特許文献3で公知であるので、ここでは説明を省略する。
第7の二相変調方式は、位相角φが60°未満であって0°に近い場合に採用されるので、電圧指令群V**として信号波群V1*に基づいて生成されるものを採用する。具体的には電圧指令群V**は、変動幅ΔC=Cmax−Cminを導入して、第1の二相変調と類似して下記の6つの電圧指令を含む:
第1電圧指令;Cmin+ΔC・drec・Vu1*
=Cmin+ΔC・(1−dz−dc)・Vu1*、
第2電圧指令;Cmin+ΔC・drec・Vv1*
=Cmin+ΔC・(1−dz−dc)・Vv1*、
第3電圧指令;Cmin+ΔC・drec・Vw1*
=Cmin+ΔC・(1−dz−dc)・Vw1*、
第4電圧指令;Cmin+ΔC(drec+dz+dc・(1−Vu1*))
=Cmax−ΔC・(1−(drec+dz+dc・(1−Vu1*)))
=Cmax−ΔC・dc・Vu1*、
第5電圧指令;Cmin+ΔC(drec+dz+dc・(1−Vv1*))
=Cmax−ΔC・(1−(drec+dz+dc・(1−Vv1*)))
=Cmax−ΔC・dc・Vv1*
第6電圧指令;Cmin+ΔC(drec+dz+dc・(1−Vw1*))
=Cmax−ΔC・(1−(drec+dz+dc・(1−Vw1*)))
=Cmax−ΔC・dc・Vw1*。
なお0≦φ≦π/3においては式(9)で示されるようにVw1*=0であるので、第3電圧指令は最小値Cminに等しく、第6電圧指令は最大値Cmaxに等しい(図15ではCmax=1,Cmin=0の場合を例示しているので、第3電圧指令、第6電圧指令は,それぞれ値0,1を採る)。
そして、キャリアC1が第1電圧指令Cmin+ΔC・(1−dz−dc)・Vu1*よりも小さいときと、第4電圧指令Cmax−ΔC・dc・Vu1*よりも大きいときにおいて、スイッチング信号Supを活性化させ、スイッチQupを導通させる。キャリアC1が第2電圧指令Cmin+ΔC・(1−dz−dc)・Vv1*よりも小さいときと、第5電圧指令Cmax−ΔC・dc・Vv1*よりも大きいときにおいて、スイッチング信号Svpを活性化させ、スイッチQvpを導通させる。キャリアC1が第3電圧指令Cmin+ΔC・(1−dz−dc)・Vw1*よりも小さいときと、第6電圧指令Cmax−ΔC・dc・Vw1*よりも大きいときにおいて、スイッチング信号Swpを活性化させ、スイッチQwpを導通させる。ここで電圧指令群V**を整流デューティdrecを用いない形式で示したのは、図14を参照して、電圧指令生成部34には整流デューティdrecが入力しないからである。
上記の第1電圧指令乃至第6電圧指令について等式で示される関係から、電圧指令群V**を零デューティdzを用いずに示すことができるのは明白である。
スイッチング信号Syが活性化する期間は式(31)で計算される。
[{Cmax−(Cmax−ΔC・dc・Vy1*)}+{(Cmin+ΔC・drec・Vy1*)−Cmin}]×T0/ΔC=(1−dz)・Vy1*・T0…(31)。
よって上述のように電圧指令群V**を定め、電圧指令群V**とキャリアC1との比較によって上述のようにスイッチング信号Sypを設定することにより、信号波群V1*で設定されるスイッチQypの導通期間の総計の(1−dz)倍が得られることになる。
ここで零デューティdzに対応する一対の期間tz/2では電圧形インバータ4には電流が供給されず(図13参照)、リンク電圧Vdcが電圧形インバータ4で利用されないことに鑑みれば、第7の二相変調方式において決定されるスイッチQypの導通期間が信号波群V1*で設定される当該導通期間の(1−dz)倍となることは問題とはならない。
なお0≦φ≦π/3においては式(9)で示されるようにVw1*=0であるので、スイッチング信号Swpは非活性が維持される。
以上のようにして、第7の二相変調方式は第1の二相変調方式と同様にして、単位電圧ベクトルV6が採用される期間は第1期間及び第2期間においてそれぞれ連続する期間として得られる。よって単位電圧ベクトルV6が採用される期間において、リンク電流Idcを測定するために必要な期間を得やすい。
図16は第8の二相変調方式が採用される場合についてのグラフであり、0≦φ≦π/3において、キャリアC1と電圧指令群V**とを比較して、スイッチング信号Sup,Svp,Swpの活性/非活性が決定される様子を示す。但し、キャリアC0並びに放電補デューティ(1−dc)及び零デューティdzについても併記した。
第8の二相変調方式において、周期T0は期間tc(=dc・T0),一対の期間trec/2(=drec・T0/2)、一対の期間tz(=dz・T0)によって分割される。期間tcはキャリアC0が放電補デューティ(1−dc)以上となる期間であり、第7の二相変調方式において採用された期間tcと同じである。他方、キャリアC0が零デューティdz以下となる期間が期間tzであり、キャリアC0が零デューティdz以上で放電補デューティ(1−dc)以下となる期間が一対の期間trec/2として存在する。
第8の二相変調方式においても期間tcは直接形交流電力変換装置100の電流形コンバータ2について説明された第2期間に対応するが、第1期間に対応するのは、期間tzと一対の期間trec/2との纏まりである。このような対応を考えると、電流形コンバータ2について説明された第1状態及び第2状態は、それぞれスイッチScが非導通の状態及び導通の状態に、それぞれ対応する。よって第8の二相変調方式においても、第1期間と第2期間との境界において、昇圧電圧Vcがリンク電圧Vdcに採用されるか否かが切り替わる、と把握することができる。
第8の二相変調方式は、位相角φが60°未満であって60°に近い場合に採用されるので、電圧指令群V**として信号波群V2*に基づいて生成されるものを採用する。具体的には電圧指令群V**は、変動幅ΔC=Cmax−Cminを導入して、下記の6つの電圧指令を含む:
第1電圧指令;Cmin+ΔC・(dz+drec・Vu2*)
=Cmax−ΔC・(1−dz−drec・Vu2*)
=Cmax−ΔC・(drec+dc−drec・Vu2*)
=Cmax−(ΔC・drec+ΔC・dc)+ΔC・drec・Vu2*、
=Cmax−ΔC・((1−dz)+(1−dc−dz)・Vu2*)、
第2電圧指令;Cmin+ΔC(dz+drec・Vv2*)
=Cmax−ΔC・(1−dz−drec・Vv2*)
=Cmax−ΔC・(drec+dc−drec・Vv2*)
=Cmax−(ΔC・drec+ΔC・dc)+ΔC・drec・Vv2*
=Cmax−ΔC・((1−dz)+(1−dc−dz)・Vv2*)、
第3電圧指令;Cmin+ΔC(dz+drec・Vw2*)
=Cmax−ΔC・(1−dz−drec・Vw2*)
=Cmax−ΔC・(drec+dc−drec・Vw2*)
=Cmax−(ΔC・drec+ΔC・dc)+ΔC・drec・Vw2*、
=Cmax−ΔC・((1−dz)+(1−dc−dz)・Vw2*)、
第4電圧指令;Cmin+ΔC(drec+dz+dc・(1−Vu2*)
=Cmax−ΔC・(1−drec−dz−dc・(1−Vu2*))
=Cmax−ΔC・dc・Vu2*、
第5電圧指令;Cmin+ΔC(drec+dz+dc・(1−Vv2*)
=Cmax−ΔC・(1−drec−dz−dc・(1−Vv2*))
=Cmax−ΔC・dc・Vv2*、
第6電圧指令;Cmin+ΔC(drec+dz+dc・(1−Vw2*)
=Cmax−ΔC・(1−drec−dz−dc・(1−Vw2*))
=Cmax−ΔC・dc・Vw2*。
そして、キャリアC1が第1電圧指令Cmax−ΔC((1−dz)+(1−dc−dz)・Vu2*)よりも小さいときと、第4電圧指令Cmax−ΔC・dc・Vu2*よりも大きいときにおいて、スイッチング信号Supを活性化させ、スイッチQupを導通させる。キャリアC1が第2電圧指令Cmax−ΔC((1−dz)+(1−dc−dz)・Vv2*)よりも小さいときと、第5電圧指令Cmax−ΔC・dc・Vv2*よりも大きいときにおいて、スイッチング信号Svpを活性化させ、スイッチQvpを導通させる。キャリアC1が第3電圧指令Cmax−ΔC((1−dz)+(1−dc−dz)・Vw2*)よりも小さいときと、第6電圧指令Cmax−ΔC・dc・Vw2*よりも大きいときにおいて、スイッチング信号Svpを活性化させ、スイッチQvpを導通させる。ここで電圧指令群V**を整流デューティdrecを用いない形式で示したのは、図14を参照して、電圧指令生成部34には整流デューティdrecが入力しないからである。
上記の第1電圧指令乃至第6電圧指令について等式で示される関係から、電圧指令群V**を零デューティdzを用いずに示すことができるのは明白である。
スイッチング信号Syが活性化する期間は式(32)で計算される。
[{Cmax−(Cmax−ΔC・dc・Vy2*)}+{(Cmin+ΔC・(dz+drec・Vy2*))−Cmin}]×T0/ΔC
=[(1−dz)Vy2*+dz]・T0…(32)。
よって上述のように電圧指令群V**を定め、電圧指令群V**とキャリアC1との比較によって上述のようにスイッチング信号Sypを設定することにより、信号波群V2*で設定されるスイッチQypの導通期間の総計の(1−dz)倍と期間tzとの和が得られることになる。
ここで零デューティdzに対応する期間tzでは電圧形インバータ4には電流が供給されず(図13参照)、リンク電圧Vdcが電圧形インバータ4で利用されないことに鑑みれば、第8の二相変調方式において決定されるスイッチQypの導通期間が信号波群V2*で設定される当該導通期間に対して上述の様に相違することは問題とはならない。
なお0≦φ≦π/3においては式(16)で示されるようにVu2*=1であるので、第1電圧指令及び第4電圧指令はいずれも値Cmin+ΔC・(1−dc)に等しくなり(図16ではCmax=1,Cmin=0の場合を例示しているので、これらの値は放電補デューティ(1−dc)に等しい)、スイッチング信号Supは活性が維持される。
以上のようにして、第8の二相変調方式は第2の二相変調方式と同様にして、単位電圧ベクトルV4が採用される期間は第1期間及び第2期間においてそれぞれ連続する期間として得られる。よって単位電圧ベクトルV4が採用される期間において、リンク電流Idcを測定するために必要な期間を得やすい。
以上のように電圧指令群V**を設定することにより、上記(i)〜(iv)が満足されることになる。
第7の二相変調方式では、スイッチScが切り替わるタイミングが、電圧形インバータ4の動作に零電圧ベクトルV0が採用される期間に含まれる。これはスイッチScのスイッチング損失を回避する点で望ましい。
K.第7の実施の形態.
本実施の形態では、第2区間において上記(iii),(iv)を満足する、第8の二相変調方式とは異なった、第9の二相変調方式を提案する。第9の二相変調方式は第3の二相変調方式に対応する。
図17は第9の二相変調方式の動作を示すグラフであって、0≦φ≦π/3において、キャリアC3と電圧指令群V**とを比較して、スイッチング信号Sup,Svp,Swpの活性/非活性が決定される様子を示すグラフである。
但し図17では、キャリアC0並びに整流デューティdrec及び放電補デューティ(1−dc)についても併記した。第9の二相変調方式では第7の二相変調方式と同様に、キャリアC0周期T0は期間tc(=dc・T0),trec(=drec・T0)、一対の期間tz/2(=dz・T0/2)によって分割される。そして期間tcは直接形交流電力変換装置100の電流形コンバータ2について説明された第1期間に、期間trecと一対の期間tz/2とは纏めて第2期間に、それぞれ対応する。よって第1期間と第2期間との境界において、昇圧電圧Vcがリンク電圧Vdcに採用されるか否かが切り替わる、と把握することができる。
本実施の形態では、位相角φが60°未満であって60°に近い場合、第9の二相変調方式を採用する。第9の二相変調方式でも、電圧指令群V**として信号波群V2*に基づいて生成されるものを採用する。具体的には第8の二相変調方式で採用される電圧指令群V**と同じ6つの電圧指令を含む(図17では簡単のため、Cmax=1,Cmin=0として示した):
第1電圧指令;Cmin+ΔC・(dz+drec・Vu2*)
=Cmax−ΔC・(1−dz−drec・Vu2*)
=Cmax−ΔC・(drec+dc−drec・Vu2*)
=Cmax−(ΔC・drec+ΔC・dc)+ΔC・drec・Vu2*、
=Cmax−ΔC・((1−dz)+(1−dc−dz)・Vu2*)、
第2電圧指令;Cmin+ΔC・(dz+drec・Vv2*)
=Cmax−ΔC・(1−dz−drec・Vv2*)
=Cmax−ΔC・(drec+dc−drec・Vv2*)
=Cmax−(ΔC・drec+ΔC・dc)+ΔC・drec・Vv2*
=Cmax−ΔC・((1−dz)+(1−dc−dz)・Vv2*)、
第3電圧指令;Cmin+ΔC・(dz+drec・Vw2*)
=Cmax−ΔC・(1−dz−drec・Vw2*)
=Cmax−ΔC・(drec+dc−drec・Vw2*)
=Cmax−(ΔC・drec+ΔC・dc)+ΔC・drec・Vw2*、
=Cmax−ΔC・((1−dz)+(1−dc−dz)・Vw2*)、
第4電圧指令;Cmin+ΔC・(drec+dz+dc・(1−Vu2*)
=Cmax−ΔC・(1−drec−dz−dc・(1−Vu2*))
=Cmax−ΔC・dc・Vu2*、
第5電圧指令;Cmin+ΔC・(drec+dz+dc・(1−Vv2*)
=Cmax−ΔC・(1−drec−dz−dc・(1−Vv2*))
=Cmax−ΔC・dc・Vv2*、
第6電圧指令;Cmin+ΔC・(drec+dz+dc・(1−Vw2*)
=Cmax−ΔC・(1−drec−dz−dc・(1−Vw2*))
=Cmax−ΔC・dc・Vw2*。
第9の二相変調方式で採用されるキャリアC3は、第8の二相変調方式で採用されるキャリアC1と同様にキャリアC0の周期T0と等しい周期を有するものの、キャリアC1とは波形が異なる。
キャリアC3は長さdc・T0の第1期間(これは期間tcとして把握できる)において連続する部分C3cと、長さ(dz+drec)・T0の第2期間(これは一対の期間trec/2と期間tzとを纏めた期間として把握できる)において連続する部分C3rとに区分される。
部分C3c,C3rのそれぞれは対称三角波であり、部分C3cは極小値を採り、部分C3rは極大値を採り、この極大値と極小値とはいずれも放電補デューティ(1−dc)に等しい。
部分C3c,C3r同士は不連続である。具体的にはキャリアC3が部分C3rにおいて極小値を採った後に増大してキャリアC3の最大値Cmaxに至ると、キャリアC3はその最小値Cminまで立ち下り、部分C3rにおいて極大値を採るまで増大を続ける。キャリアC3が部分C3rにおいて極大値を採った後に減少してキャリアC3の最小値Cminに至ると、キャリアC3はその最大値Cmaxまで立ち上がり、部分C3cにおいて極小値を得るまで減少を続ける。
換言するとキャリアC3が呈する三角波は、第2の実施の形態で示されたキャリアC2と同様に、その特徴を以下のように説明することができる。キャリアC3は、その周期T0一つ当たり(一周期当たり)において、最大値Cmaxおよび最小値Cminをそれぞれ二回ずつ呈する。キャリアC3は、第2期間から第1期間へと遷移する第1の時点で最大値Cmaxから最小値Cminへ切り替わる。キャリアC3は、第1期間から第2期間へと遷移する第2の時点で最小値Cminから最大値Cmaxへ切り替わる。また、キャリアC3は一周期当たりにおいて、値が等しい極大値及び極小値をそれぞれ一回ずつ呈する。
キャリアC3が第1電圧指令Cmax−ΔC・((1−dz)+(1−dc−dz)・Vu2*)よりも小さいときと、第4電圧指令Cmax−ΔC・dc・Vu2*よりも大きいときにおいて、スイッチング信号Supを活性化させ、スイッチQupを導通させる。キャリアC3が第2電圧指令Cmax−ΔC・((1−dz)+(1−dc−dz)・Vv2*)よりも小さいときと、第5電圧指令Cmax−ΔC・dc・Vv2*よりも大きいときにおいて、スイッチング信号Svpを活性化させ、スイッチQvpを導通させる。キャリアC3が第3電圧指令Cmax−ΔC・((1−dz)+(1−dc−dz)・Vw2*)よりも小さいときと、第6電圧指令Cmax−ΔC・dc・Vw2*よりも大きいときにおいて、スイッチング信号Svpを活性化させ、スイッチQvpを導通させる。
このような電圧指令群V**とキャリアC3との比較は、第8の二相変調方式における電圧指令群V**とキャリアC1との比較と同じである。
そして第8の二相変調方式と同様に、電圧指令群V**を整流デューティdrecを用いない形式で示したのは、図14を参照して、電圧指令生成部34には整流デューティdrecが入力しないからである。また上記の第1電圧指令乃至第6電圧指令について等式で示される関係から、電圧指令群V**を零デューティdzを用いずに示すことができるのは明白である。
キャリアC3の部分C3rは、キャリアC1のうち第1期間にある波形を、第1期間の中央で分離して前後を入れ替えた形状を呈する。またキャリアC3の部分C3cは、キャリアC1のうち第2期間にある波形を、第2期間の中央で分離して前後を入れ替えた形状を呈する。
以上のことから、第9の二相変調方式においてスイッチング信号Syが活性化する期間は、第8の二相変調方式と同様に式(32)で計算される。よって上述のように電圧指令群V**を定め、電圧指令群V**とキャリアC3との比較によって上述のようにスイッチング信号Sypを設定することにより、信号波群V2*で設定されるスイッチQypの導通期間の総計の(1−dz)倍と期間tzとの和が得られることになる。
なお0≦φ≦π/3においては式(16)で示されるようにVu2*=1であるので、第1電圧指令及び第4電圧指令はいずれも値Cmin+ΔC・(1−dc)に等しくなる(図17ではCmax=1,Cmin=0の場合を例示しているので、これらの値は放電補デューティ(1−dc)に等しい)ので、スイッチング信号Supは活性が維持される。
以上のように、第9の二相変調方式も、第8の二相変調方式と同様に第2区間で(iii),(iv)を満足することができる。よって本実施の形態でも第7の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
第8の二相変調方式では、第1期間と第2期間との境界は、電圧形インバータ4で単位電圧ベクトルV4が採用される期間にある。これに対して、第9の二相変調方式では、スイッチScが切り替わるタイミングが、電圧形インバータ4の動作に零電圧ベクトルV7が採用される期間に含まれる。よってスイッチScのスイッチング損失を回避する点では第8の二相変調方式よりも第9の二相変調方式の方が望ましい。
他方、キャリアC3よりもキャリアC1の波形の方が単純であるので、キャリア生成部85の機能や構成を簡単にする観点では第9の二相変調方式よりも第8の二相変調方式の方が望ましい。
L.第8の実施の形態.
本実施の形態では、第2区間において上記(iii),(iv)を満足する、第8の二相変調方式および第9の二相変調方式のいずれとも異なった、第10の二相変調方式を提案する。
図18は第10の二相変調方式の動作を示すグラフであって、0≦φ≦π/3において、キャリアC1と電圧指令群V**とを比較して、スイッチング信号Sup,Svp,Swpの活性/非活性が決定される様子を示す。
但し図18では、キャリアC0並びに整流デューティdrec及び放電補デューティについても併記した。第10の二相変調方式でも第7の二相変調方式と同様に、キャリアC0周期T0は期間tc(=dc・T0),trec(=drec・T0)、一対の期間tz/2(=dz・T0/2)によって分割される。そして期間tcは第1期間に、期間trecと一対の期間tz/2とは纏めて第2期間に、それぞれ対応する。よって第1期間と第2期間との境界において、昇圧電圧Vcがリンク電圧Vdcに採用されるか否かが切り替わる、と把握することができる。
本実施の形態では、位相角φが60°未満であって60°に近い場合、第10の二相変調方式を採用する。第10の二相変調方式でも、電圧指令群V**として信号波群V2*に基づいて生成されるものを採用するが、第8の二相変調方式や第9の二相変調方式で採用されるものとは異なる。具体的には電圧指令群V**は次の6つの電圧指令を含む(図18では簡単のため、Cmax=1,Cmin=0として示した):
第1電圧指令;Cmin+ΔC・drec・(1−Vu2*)
=Cmin+ΔC・(1−dz−dc)・(1−Vu2*)、
第2電圧指令;Cmin+ΔC・drec・(1−Vv2*)
=Cmin+ΔC・(1−dz−dc)・(1−Vv2*)、
第3電圧指令;Cmin+ΔC・drec・(1−Vw2*)
=Cmin+ΔC・(1−dz−dc)・(1−Vw2*)、
第4電圧指令;Cmin+ΔC・(drec+dz+dc・Vu2*)
=Cmax−ΔC・(1−(drec+dz+dc・Vu2*))
=Cmax−ΔC・dc・(1−Vu2*)、
第5電圧指令;Cmin+ΔC・(drec+dz+dc・Vv2*)
=Cmax−ΔC・(1−(drec+dz+dc・Vv2*))
=Cmax−ΔC・dc・(1―Vv2*)
第6電圧指令;Cmin+ΔC・(drec+dz+dc・Vw2*)
=Cmax−ΔC・(1−(drec+dz+dc・Vw2*))
=Cmax−ΔC・dc・(1−Vw2)*。
そして、0≦φ≦π/3においては式(16)で示されるようにVu2*=1であるので、第1電圧指令Cmin+ΔC・drec・(1−Vu2*)は最小値Cminに等しく、第4電圧指令Cmax−ΔC・dc・(1−Vu2*)は最大値Cmaxに等しい(図18ではCmax=1,Cmin=0の場合を例示しているので、第1電圧指令、第4電圧指令は,それぞれ値0,1を採る)。
そして、キャリアC1が第1電圧指令Cmin+ΔC・(1−dz−dc)・(1−Vu2*)より大きく、かつ第4電圧指令Cmax−ΔC・dc・(1−Vu2*)よりも小さいときにおいて、スイッチング信号Supを活性化させ、スイッチQupを導通させる。キャリアC1が第2電圧指令Cmin+ΔC・(1−dz−dc)・(1−Vv2*)より大きく、かつ第5電圧指令Cmax−ΔC・dc・(1−Vv2*)よりも小さいときにおいて、スイッチング信号Svpを活性化させ、スイッチQvpを導通させる。キャリアC1が第3電圧指令Cmin+ΔC・(1−dz−dc)・(1−Vw2*)より大きく、かつ第6電圧指令Cmax−ΔC・dc・(1−Vw2*)よりも小さいときにおいて、スイッチング信号Swpを活性化させ、スイッチQwpを導通させる。
第8の二相変調方式と同様に、電圧指令群V**を整流デューティdrecを用いない形式で示したのは、図14を参照して、電圧指令生成部34には整流デューティdrecが入力しないからである。また上記の第1電圧指令乃至第6電圧指令について等式で示される関係から、電圧指令群V**を零デューティdzを用いずに示すことができるのは明白である。
スイッチング信号Syが活性化する期間は式(33)で計算される。
[{Cmax−ΔC・dc・(1−Vy2*)}−{Cmin+ΔC・(1−dz−dc)・(1−Vy2*)}]×T0/ΔC
=[(1−dz)Vy2*+dz]・T0…(33)。
よって上述のように電圧指令群V**を定め、電圧指令群V**とキャリアC1との比較によって上述のようにスイッチング信号Sypを設定することにより、第8の二相変調方式と同様に、信号波群V2*で設定されるスイッチQypの導通期間の総計の(1−dz)倍と期間tzとの和が得られることになる。
そして第8の二相変調方式について説明したのと同様にして、第10の二相変調方式において決定されるスイッチQypの導通期間も、信号波群V2*で設定される当該導通期間に対して上述の様に相違することは問題とはならない。
以上のようにして、第10の二相変調方式は第2の二相変調方式や第8の二相変調方式と同様にして、単位電圧ベクトルV4が採用される期間は第1期間及び第2期間においてそれぞれ連続する期間として得られる。よって単位電圧ベクトルV4が採用される期間において、リンク電流Idcを測定するために必要な期間を得やすい。
なお0≦φ≦π/3においては第1電圧指令は最小値Cminに等しく、第4電圧指令は最大値Cmaxに等しいので、スイッチング信号Supは活性が維持される。
以上のように、第10の二相変調方式も、第8の二相変調方式と同様に第2区間で(iii),(iv)を満足することができる。よって本実施の形態でも第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
そして第10の二相変調方式では第9の二相変調方式と同様に、スイッチScが切り替わるタイミングが、電圧形インバータ4の動作に零電圧ベクトルV7が採用される期間に含まれる。よってスイッチScのスイッチング損失を回避する点では第8の二相変調方式よりも第10の二相変調方式の方が望ましい。
しかも、キャリアC3よりもキャリアC1の波形の方が単純であるので、キャリア生成部85の機能や構成を簡単にする観点では第9の二相変調方式よりも第10の二相変調方式の方が望ましい。
M.第9の実施の形態.
本実施の形態では、第1区間において上記(i),(ii)を満足する、第6の二相変調方式とは異なった、第11の二相変調方式を提案する。
図19は第11の二相変調方式の動作を示すグラフであって、0≦φ≦π/3において、キャリアC3と電圧指令群V**とを比較して、スイッチング信号Sup,Svp,Swpの活性/非活性が決定される様子を示すグラフである。但し、キャリアC0並びに放電補デューティ(1−dc)及び零デューティdzについても併記した。
第11の二相変調方式において、周期T0は期間tc(=dc・T0),一対の期間trec/2(=drec・T0/2)、一対の期間tz(=dz・T0)によって分割される。期間tcはキャリアC0が放電補デューティ(1−dc)以上となる期間であり、第7の二相変調方式において採用された期間tcと同じである。他方、キャリアC0が零デューティdz以下となる期間が期間tzであり、キャリアC0が零デューティdz以上で放電補デューティ(1−dc)以下となる期間が一対の期間trec/2として存在する。
第11の二相変調方式においても期間tcは第1期間に対応し、期間tzと一対の期間trec/2との纏まりが第2期間に対応する。よって第8の二相変調方式と同様、第1期間と第2期間との境界において、昇圧電圧Vcがリンク電圧Vdcに採用されるか否かが切り替わる、と把握することができる。
本実施の形態では、位相角φが0°より大きく0°に近い場合、第11の二相変調方式を採用する。第11の二相変調方式でも、電圧指令群V**として信号波群V1*に基づいて第7の二相変調方式で採用されるものを採用する。具体的には第7の二相変調方式で採用される電圧指令群V**と同じ6つの電圧指令を含む(図19では簡単のため、Cmax=1,Cmin=0として示した):
第1電圧指令;Cmin+ΔC・drec・Vu1*
=Cmin+ΔC・(1−dz−dc)・Vu1*、
第2電圧指令;Cmin+ΔC・drec・Vv1*
=Cmin+ΔC・(1−dz−dc)・Vv1*、
第3電圧指令;Cmin+ΔC・drec・Vw1*
=Cmin+ΔC・(1−dz−dc)・Vw1*、
第4電圧指令;Cmin+ΔC・(drec+dz+dc・(1−Vu1*))
=Cmax−ΔC・(1−(drec+dz+dc・(1−Vu1*)))
=Cmax−ΔC・dc・Vu1*、
第5電圧指令;Cmin+ΔC・(drec+dz+dc・(1−Vv1*))
=Cmax−ΔC・(1−(drec+dz+dc・(1−Vv1*)))
=Cmax−ΔC・dc・Vv1*
第6電圧指令;Cmin+ΔC・(drec+dz+dc(1−Vw1*))
=Cmax−ΔC・(1−(drec+dz+dc・(1−Vw1*)))
=Cmax−ΔC・dc・Vw1*。
0≦φ≦π/3においては式(9)で示されるようにVw1*=0であるので、第3電圧指令は最小値Cminに等しく、第6電圧指令は最大値Cmaxに等しい(図19ではCmax=1,Cmin=0の場合を例示しているので、第3電圧指令、第6電圧指令は,それぞれ値0,1を採る)。
そして、キャリアC3が第1電圧指令Cmin+ΔC・(1−dz−dc)・Vu1*よりも小さいときと、第4電圧指令Cmax−ΔC・dc・Vu1*よりも大きいときにおいて、スイッチング信号Supを活性化させ、スイッチQupを導通させる。キャリアC3が第2電圧指令Cmin+ΔC・(1−dz−dc)・Vv1*よりも小さいときと、第5電圧指令Cmax−ΔC・dc・Vv1*よりも大きいときにおいて、スイッチング信号Svpを活性化させ、スイッチQvpを導通させる。キャリアC3が第3電圧指令Cmin+ΔC・(1−dz−dc)・Vw1*よりも小さいときと、第6電圧指令Cmax−ΔC・dc・Vw1*よりも大きいときにおいて、スイッチング信号Swpを活性化させ、スイッチQwpを導通させる。ここで電圧指令群V**を整流デューティdrecを用いない形式で示したのは、図14を参照して、電圧指令生成部34には整流デューティdrecが入力しないからである。
上記の第1電圧指令乃至第6電圧指令について等式で示される関係から、電圧指令群V**を零デューティdzを用いずに示すことができるのは明白である。
第11の二相変調方式では、第9の二相変調方式と同様にしてキャリアC3を採用する。そしてキャリアC3の波形は、上述の様に、キャリアC1のうち第1期間にある波形を、第1期間の中央で分離して前後を入れ替えた形状を呈する。またキャリアC3の部分C3cは、キャリアC1のうち第2期間にある波形を、第2期間の中央で分離して前後を入れ替えた形状を呈する。
よって、第11の二相変調方式においてスイッチング信号Syが活性化する期間は、第7の二相変調方式と同様に式(31)で計算される。よって上述のように電圧指令群V**を定め、電圧指令群V**とキャリアC3との比較によって上述のようにスイッチング信号Sypを設定することにより、信号波群V1*で設定されるスイッチQypの
導通期間の総計の(1−dz)倍が得られることになる。
なお、0≦φ≦π/3においては上述の様にVw1*=0であるので、第3電圧指令は最小値Cminに等しく、第6電圧指令は最大値Cmaxに等しく、スイッチング信号Swpは非活性が維持される。
以上のように、第11の二相変調方式も、第7の二相変調方式と同様に第1区間で(i),(ii)を満足することができる。よって本実施の形態でも第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
第11の二相変調方式では、第1期間と第2期間との境界(つまりスイッチScが切り替わるタイミング)は、電圧形インバータ4で単位電圧ベクトルV6が採用される期間にあるので、スイッチScのスイッチング損失が低減されない。しかし換言すれば、第1区間という期間τ6が短い期間であっても、スイッチScが切り替わるタイミングでリンク電流Idcを測定することで、相電流を検出しやすくなる。
これは特に、第2区間において第8の二相変調方式(図16参照)を採用することで、より有利な効果となる。第8の二相変調方式においては、第2区間という期間τ4が短い期間であっても、スイッチScが切り替わるタイミングでリンク電流Idcを測定することで、相電流を検出しやすくなる。つまり、第1区間であれ第2区間であれ、採用される期間が短くなる単位電圧ベクトルについて、同じタイミング、具体的にはスイッチScが切り替わるタイミングで相電流を検出しやすくなる。
N.第10の実施の形態.
本実施の形態では、第1区間において上記(i),(ii)を満足する、第7の二相変調方式および第11の二相変調方式のいずれとも異なった、第12の二相変調方式を提案する。
図20は第12の二相変調方式の動作を示すグラフであって、0≦φ≦π/3において、キャリアC1と電圧指令群V**とを比較して、スイッチング信号Sup,Svp,Swpの活性/非活性が決定される様子を示すグラフである。但し、キャリアC0並びに整流補デューティ(1−dc)及び零デューティdzについても併記した。
本実施の形態では、位相角φが0°より大きく0°に近い場合、第12の二相変調方式を採用する。第12の二相変調方式でも、電圧指令群V**は信号波群V1*に基づいて生成される。具体的には次の6つの電圧指令を含む(図20では簡単のため、Cmax=1,Cmin=0として示した):
第1電圧指令;Cmin+ΔC・(dz+drec・(1−Vu1*))
=Cmax−ΔC+ΔC・(dz+drec・(1−Vu1*))
=Cmax−(ΔC・drec+ΔC・dc)+ΔC・drec・(1−Vu1*)、
=Cmin+ΔC・((1−dc)−(1−dz−dc)・Vu1*)
第2電圧指令;Cmin+ΔC・(dz+drec・(1−Vv1*))
=Cmax−ΔC+ΔC・(dz+drec・(1−Vv1*))
=Cmax−(ΔC・drec+ΔC・dc)+ΔC・drec・(1−Vv1*)
=Cmin+ΔC・((1−dc)−(1−dz−dc)・Vv1*)、
第3電圧指令;Cmin+ΔC・(dz+drec・(1−Vw1*))
=Cmax−ΔC+ΔC・(dz+drec・(1−Vw1*))
=Cmax−(ΔC・drec+ΔC・dc)+ΔC・drec・(1−Vw1*)
=Cmin+ΔC・((1−dc)−(1−dz−dc)・Vw1*)、
第4電圧指令;Cmin+ΔC・(drec+dz+dc・Vu1*)
=Cmax−ΔC+ΔC・(drec+dz+dc・Vu1*)
=Cmax−ΔC・dc・(1−Vu1*)、
第5電圧指令;Cmin+ΔC・(drec+dz+dc・Vv1*)
=Cmax−ΔC+ΔC・(drec+dz+dc・Vv1*)
=Cmax−ΔC・dc・(1−Vv1*)、
第6電圧指令;Cmin+ΔC・(drec+dz+dc・Vw1*)
=Cmax−ΔC+ΔC・(drec+dz+dc・Vw1*)
=Cmax−ΔC・dc・(1−Vw1*)。
そして、0≦φ≦π/3においては式(9)で示されるようにVw1*=0であるので、第3電圧指令、第6電圧指令はいずれも値(Cmax−ΔC・dc)に等しい(図20ではCmax=1,Cmin=0の場合を例示しているので、この値は放電補デューティ(1−dc)に等しい)。
そして、キャリアC1が第1電圧指令Cmin+ΔC・((1−dc)−(1−dz−dc)・Vu1*)より大きく、かつ第4電圧指令Cmax−ΔC・dc・(1−Vu1*)よりも小さいときにおいて、スイッチング信号Supを活性化させ、スイッチQupを導通させる。キャリアC1が第2電圧指令Cmin+ΔC・((1−dc)−(1−dz−dc)・Vv1*)より大きく、かつ第5電圧指令Cmax−ΔC・dc・(1−Vv1*)よりも小さいときにおいて、スイッチング信号Svpを活性化させ、スイッチQvpを導通させる。キャリアC1が第3電圧指令Cmin+ΔC・((1−dc)−(1−dz−dc)・Vw1*)より大きく、かつ第6電圧指令Cmax−ΔC・dc・(1−Vw1*)よりも小さいときにおいて、スイッチング信号Svpを活性化させ、スイッチQvpを導通させる。ここで電圧指令群V**を整流デューティdrecを用いない形式で示したのは、図14を参照して、電圧指令生成部34には整流デューティdrecが入力しないからである。
上記の第1電圧指令乃至第6電圧指令について等式で示される関係から、電圧指令群V**を零デューティdzを用いずに示すことができるのは明白である。
スイッチング信号Syが活性化する期間は式(34)で計算される。
[{Cmax−ΔC・dc・(1−Vy1*)}−{Cmin+ΔC・(dz+drec・(1−Vy1*))}]×T0/ΔC=(1−dz)・Vy1*・T0…(34)。
よって上述のように電圧指令群V**を定め、電圧指令群V**とキャリアC1との比較によって上述のようにスイッチング信号Sypを設定することにより、信号波群V1*で設定されるスイッチQypの導通期間の総計の(1−dz)倍が得られることになる。
ここで零デューティdzに対応する一対の期間tz/2では電圧形インバータ4には電流が供給されず(図13参照)、リンク電圧Vdcが電圧形インバータ4で利用されないことに鑑みれば、第7の二相変調方式において決定されるスイッチQypの導通期間が信号波群V1*で設定される当該導通期間の(1−dz)倍となることは問題とはならない。
なお0≦φ≦π/3においては上述のように第3電圧指令と第6電圧指令とが互いに等しいので、スイッチング信号Swpは非活性が維持される。
以上のように、第12の二相変調方式も、第7の二相変調方式、第11の二相変調と同様に第1区間で(i),(ii)を満足することができる。よって本実施の形態でも第6の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
第12の二相変調方式では、第11の二相変調方式と同様に、スイッチScのスイッチング損失が低減されない。しかし第9の実施の形態でも説明したように、第1区間という期間τ6が短い期間であっても、スイッチScが切り替わるタイミングでリンク電流Idcを測定することで、相電流を検出しやすくなる。
そしてこれは特に、第2区間において第8の二相変調方式(図16参照)を採用することで、より有利な効果となることも、第9の実施の形態で説明した通りである。
また、第7の二相変調方式と同様に、第12の二相変調方式で採用されるキャリアC1は、第11の二相変調方式で採用されたキャリアC3よりも波形が単純であって生成しやすい。またキャリアC1はキャリアC0と共用されることができる。
O.二相変調方式の組み合わせ.
第1区間においては第7の二相変調方式、第11の二相変調方式、第12の二相変調方式を採用することができる。また第2区間においては第8の二相変調方式、第9の二相変調方式、第10の二相変調方式を採用することができる。
第6の実施の形態では第1の区間において第7の二相変調方式を採用し、第2の区間において第8の二相変調方式を採用する場合を例示した。第7の実施の形態では第2の区間において第9の二相変調方式を採用する場合を例示したが、この場合、第1の区間において第7の二相変調方式、第11の二相変調方式、第12の二相変調方式のいずれかを採用することができる。同様に、第8の実施の形態では第2の区間において第10の二相変調方式を採用する場合を例示したが、この場合、第1の区間において第7の二相変調方式、第11の二相変調方式、第12の二相変調方式のいずれかを採用することができる。
あるいは第9の実施の形態では第1の区間において第11の二相変調方式を採用する場合を例示したが、この場合、第2の区間において第8の二相変調方式、第9の二相変調方式、第10の二相変調方式のいずれかを採用することができる。同様に、第10の実施の形態では第1の区間において第12の二相変調方式を採用する場合を例示したが、この場合、第2の区間において第8の二相変調方式、第9の二相変調方式、第10の二相変調方式のいずれかを採用することができる。
そしてこのような二相変調方式の組み合わせは、上述の(i)〜(iv)を満足するので、ベクトルパターンを維持する期間を本来維持すべき期間よりも延長することなく電流検出を行えるようにし、以て出力歪やスイッチング損失の増大を回避できる。
特に、第1区間において第7の二相変調方式を採用し、第2区間において第8の二相変調方式あるいは第9の二相変調方式を採用することは、スイッチScのスイッチング損失が低減される観点で望ましい。
また、第1区間において第7の二相変調方式あるいは第12の二相変調方式を採用し、第2区間において第8の二相変調方式あるいは第10の二相変調方式を採用することは、キャリアC1という波形が単純なキャリアC1を採用できる観点で望ましい。またこの場合、キャリアC1をキャリアC0と共用することができる観点でも望ましい。
また、第1区間において第11の二相変調方式あるいは第12の二相変調方式を採用し、第2区間において第8の二相変調方式を採用することは、相電流を検出するタイミングを第1区間と第2区間とで異ならせる必要が無い観点で望ましい。
P.第1〜第6の二相変調方式と第7〜第12の二相変調方式との比較.
第1〜第5の実施の形態で説明された第1〜第6の二相変調方式は、リンク電圧Vdcの供給源として電流形コンバータ2を備える直接形交流電力変換装置100に採用される。第6〜第10の実施の形態で説明された第7〜第12の二相変調方式は、リンク電圧Vdcの供給源として整流回路12及び電力バッファ回路9を備える直接形交流電力変換装置200に採用される。よって第1〜第6の二相変調方式と第7〜第12の二相変調方式とは、その電圧指令群V**は異なるものの、共通した概念で表すことができる。以下、その共通する点と、相違する点とを比較して述べる。
(p-1) 第1の二相変調方式と第7の二相変調方式.
これら二つの二相変調方式のいずれにおいても、電圧指令群V**はキャリアC1と比較される。キャリアC1は一周期当たりに最大値Cmaxおよび最小値Cminをそれぞれ一回ずつ呈する。
これら二つの二相変調方式において第1電圧指令、第2電圧指令、第3電圧指令は、信号波群V1*の信号波Vy1*と第1乗数との積を、キャリアC1の最小値Cminに対して加算した値を採る、と言う点で共通する。ここで第1乗数とは、第1の二相変調方式ではΔC・drtであり、第7の二相変調方式ではΔC・drecであって、非負である。
またこれら二つの二相変調方式において、第4電圧指令、第5電圧指令、第6電圧指令は、信号波群V1*の信号波Vy1*と第2乗数との積を、キャリアC1の最大値Cmaxから減算した値を採る、と言う点で共通する。ここで第2乗数とは、第1の二相変調方式ではΔC・dstであり、第7の二相変調方式ではΔC・dcであって、非負である。
そしてスイッチング信号SupはキャリアC1が第1電圧指令よりも小さいときと、第4電圧指令よりも大きいときにおいて活性化する点でもこれら二つの二相変調方式は共通する。スイッチング信号Svp,Swpについても同様である。
但し、第1の二相変調方式では、第1乗数ΔC・drtと第2乗数ΔC・dstとの和は変動幅ΔC(=Cmax−Cmin)に等しい一方、第7の二相変調方式では、第1乗数ΔC・drecと第2乗数ΔC・dcとの和は変動幅ΔC以下となる。これは零デューティdzが非負であるからであり、零デューティdzが零であれば第7の二相変調方式でも、第1乗数ΔC・drecと第2乗数ΔC・dcとの和は変動幅ΔCに等しくなる。
(p-2) 第2の二相変調方式と第8の二相変調方式.
これら二つの二相変調方式のいずれにおいても、電圧指令群V**はキャリアC1と比較される。
これら二つの二相変調方式において第1電圧指令、第2電圧指令、第3電圧指令は、信号波群V2*の信号波Vy2*と第1乗数との積をキャリアC1の最大値Cmaxに対して加算した値から、第1乗数及び第2乗数の和を減算した値を採る、と言う点で共通する。
ここで第2の二相変調方式での第1乗数及び第2乗数は第1の二相変調方式でのそれらと同じであり、第8の二相変調方式での第1乗数及び第2乗数は第7の二相変調方式でのそれらと同じである。
またこれら二つの二相変調方式において、第4電圧指令、第5電圧指令、第6電圧指令は、信号波群V2*の信号波Vy2*と第2乗数との積を、キャリアC1の最大値Cmaxから減算した値を採る、と言う点で共通する。
そして第2の二相変調方式と第8の二相変調方式におけるスイッチング信号Sup,Svp,Swpの活性化についての共通性及び第1乗数と第2乗数との和に関する相違点も、第1の二相変調方式と第7の二相変調方式における当該共通性及び相違点と同様である。
(p-3) 第3の二相変調方式と第9の二相変調方式.
第3の二相変調方式において電圧指令群V**はキャリアC2と、第9の二相変調方式において電圧指令群V**はキャリアC3と、それぞれ比較される。キャリアC2,C3はいずれも、一周期当たりに最大値Cmaxおよび最小値Cminをそれぞれ二回ずつ呈し、第1の時点で最大値Cmaxから最小値Cminへ切り替わり、第2の時点で最小値Cminから最大値Cmaxへ切り替わり、最大値Camxから第2乗数を減算した値を、極大値及び極小値としてそれぞれ一回ずつ呈する点で共通する。
ここで第3の二相変調方式での第2乗数は第1の二相変調方式でのそれと同じであり、第9の二相変調方式での第2乗数は第7の二相変調方式でのそれと同じである。
第3の二相変調方式での第1時点と第9の二相変調方式での第1時点とは、第2期間から第1期間へ遷移する時点である観点で共通する。第3の二相変調方式での第2時点と第9の二相変調方式での第2時点とは、第1期間から第2期間へ遷移する時点である観点で共通する。
これら二つの二相変調方式において第1電圧指令、第2電圧指令、第3電圧指令は、信号波群V2*の信号波Vy2*と第1乗数との積を最大値Cmaxに対して加算した値から、第1乗数及び第2乗数の和を減算した値を採る、と言う点で共通する。ここで第3の二相変調方式での第1乗数は第1の二相変調方式でのそれと同じであり、第9の二相変調方式での第1乗数は第7の二相変調方式でのそれと同じである。
また第3の二相変調方式と第9の二相変調方式において、第4電圧指令、第5電圧指令、第6電圧指令は、信号波群V2*の信号波Vy2*と第2乗数との積を、キャリアC1の最大値Cmaxから減算した値を採る、と言う点で共通する。
そして第3の二相変調方式と第9の二相変調方式におけるスイッチング信号Sup,Svp,Swpの活性化についての共通性及び第1乗数と第2乗数との和に関する相違点も、第1の二相変調方式と第7の二相変調方式における当該共通性及び相違点と同様である。
(p-4) 第4の二相変調方式と第10の二相変調方式.
これら二つの二相変調方式のいずれにおいても、電圧指令群V**はキャリアC1と比較される。キャリアC1は一周期当たりに最大値Cmaxおよび最小値Cminをそれぞれ一回ずつ呈する。
これら二つの二相変調方式において第1電圧指令、第2電圧指令、第3電圧指令は、信号波群V2*の信号波Vy2*を1から差し引いた値(1−Vy2*)と第1乗数との積を最小値Cminに対して加算した値を採る、と言う点で共通する。また第4電圧指令、第5電圧指令、第6電圧指令は、値(1−Vy2*)と第2乗数との積を最大値Cmaxから減算した値を採る、と言う点で共通する。
ここで第4の二相変調方式での第1乗数及び第2乗数は第1の二相変調方式でのそれらと同じであり、第10の二相変調方式での第1乗数及び第2乗数は第7の二相変調方式でのそれらと同じである。
そしてスイッチング信号SupはキャリアC1が第1電圧指令よりも大きく、かつ第4電圧指令よりも小さいときにおいて活性化する点でもこれら二つの二相変調方式は共通する。スイッチング信号Svp,Swpについても同様である。
第4の二相変調方式と第10の二相変調方式とにおいて、第1乗数と第2乗数との和に関する相違点は、第1の二相変調方式と第7の二相変調方式における当該相違点と同様である。
(p-5) 第5の二相変調方式と第11の二相変調方式.
第5の二相変調方式において電圧指令群V**はキャリアC2と、第11の二相変調方式において電圧指令群V**はキャリアC3と、それぞれ比較される。キャリアC2,C3の共通性並びに第1時点及び第2時点の共通性については、上記(p-3)で述べたとおりである。
また第5の二相変調方式での第1乗数及び第2乗数は第1の二相変調方式でのそれらと同じであり、第11の二相変調方式での第1乗数及び第2乗数は第7の二相変調方式でのそれらと同じである。
これら二つの二相変調方式において第1電圧指令、第2電圧指令、第3電圧指令は、信号波群V1*の信号波Vy1*と第1乗数との積を最小値Cminに対して加算した値を採る、という点で共通する。また第4電圧指令、第5電圧指令、第6電圧指令は、信号波Vy1*と第2乗数との積を最大値Cmaxから減算した値を採る、という点で共通する。
そしてスイッチング信号SupはキャリアC2,C3が第1電圧指令よりも小さいときと、第4電圧指令よりも大きいときにおいて活性化する点でもこれら二つの二相変調方式は共通する。スイッチング信号Svp,Swpについても同様である。
第5の二相変調方式と第11の二相変調方式とにおいて、第1乗数と第2乗数との和に関する相違点は、第1の二相変調方式と第7の二相変調方式における当該相違点と同様である。
(p-6) 第6の二相変調方式と第12の二相変調方式.
これら二つの二相変調方式のいずれにおいても、電圧指令群V**はキャリアC1と比較される。
これら二つの二相変調方式において第1電圧指令、第2電圧指令、第3電圧指令は、信号波群V1*の信号波Vy1*を1から差し引いた値(1−Vy1*)と第1乗数との積を最大値Cmaxに加算した値から、第1乗数と第2乗数との和を減算した値を採る、と言う点で共通する。また第4電圧指令、第5電圧指令、第6電圧指令は、値(1−Vy1*)と第2乗数との積を最大値Cmaxから減算した値を採る、と言う点で共通する。
第6の二相変調方式での第1乗数及び第2乗数は第1の二相変調方式でのそれらと同じであり、第12の二相変調方式での第1乗数及び第2乗数は第7の二相変調方式でのそれらと同じである。
そしてスイッチング信号SupはキャリアC1が第1電圧指令よりも大きく、かつ第4電圧指令よりも小さいときにおいて活性化する点でもこれら二つの二相変調方式は共通する。スイッチング信号Svp,Swpについても同様である。
第6の二相変調方式と第12の二相変調方式とにおいて、第1乗数と第2乗数との和に関する相違点は、第1の二相変調方式と第7の二相変調方式における当該相違点と同様である。
(p-7)第1、第2、第4、第6の二相変調方式と、第7、第8、第10、第12の二相変調方式との比較.
第1、第2、第4、第6の二相変調方式において電流形コンバータ2が転流するタイミングも、第7、第8、第10、第12の二相変調方式においてスイッチScが切り替わるタイミングも、キャリアC1がその最小値Cminと第1乗数との和を採るときである点で、共通する。但し、上述の様に第1乗数と第2乗数との和に関する相違点が存在する。
(p-8)第3、第5の二相変調方式と、第9、第11の二相変調方式との比較.
第3、第5の二相変調方式において電流形コンバータ2が転流するタイミングも、第9、第11の二相変調方式においてスイッチScが切り替わるタイミングも、第1の時点及び第2の時点である点で、共通する。第1の時点と第2の時点とについてのこれらの二相変調方式における共通性は上記(p-3),(p-5)で述べたとおりである。