JP6094241B2 - 端部部材の製造方法、及び感光体ドラムユニットの製造方法 - Google Patents

端部部材の製造方法、及び感光体ドラムユニットの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、レーザープリンタ、複写機等の画像形成装置に用いられる感光体ドラムユニットの製造方法、該感光体ドラムユニットに備えられる端部部材の製造方法、端部部材、及び感光体ドラムユニットに関する。
レーザープリンタ、複写機等の画像形成装置には感光体ドラムが備えられている。感光体ドラムは、紙等の記録媒体に文字や図形等、表されるべき内容を転写するための部材である。このような感光体ドラムは、アルミニウム等により形成された導電性の円筒形状である基体の外周面に感光層が被覆されて構成されている。被覆される感光層の種類は当該感光体ドラムが適用される装置により適宜選択される。
円筒形状である感光体ドラムの両端には、感光体ドラムを画像形成装置内に保持するとともに、感光体ドラムを円筒軸を中心に回転させるための端部部材が装着される。従って感光体ドラムは、その両端に端部部材が装着された状態で感光体ドラムユニットとして画像形成装置内に配置されている。
感光体ドラムへの端部部材の装着は、円筒形状である感光体ドラムの内側に端部部材の一部(嵌合部)が差し込まれることにより行われ、嵌合部の外表面と感光体ドラムの内表面とが接着剤により固定される。
ここで、アルミニウム等により形成される基体と、樹脂により形成される端部部材と、を接着剤により固定することについて、剥離や負荷トルクに対する耐久力(トルク強度)等のような接着性に問題があった。これは、端部部材にはギア(歯車)を併せ持ったものもあり、形状が複雑な場合には成形性のよい樹脂を用いることが好ましいが、このような樹脂は接着剤との相性により接着性に問題があることが1つの要因である。
かかる観点から感光体ドラムと端部部材との接着性を高める技術が特許文献1に開示されている。この技術によれば、樹脂製の端部部材を製造する際に嵌合部に予め溝を設けておき、アンカー効果により接着性を向上させることができる。
また、感光体ドラムに端部部材を挿入した後に機械的に「かしめて」固定する技術も知られている。
さらに特許文献2、3には嵌合部の表面をショットブラスト加工により粗面化して接着強度を高める技術が開示されている。
一方、コスト削減、省エネルギー、及び省資源化の観点から、端部部材をリユースすることも求められている。
特開2001−83838号公報 米国特許第7747189号明細書 特開2003−255759号公報
しかしながら、近年における高速印刷の要求により、感光体ドラムユニットが晒される環境はさらに過酷になっており、特許文献1に記載のような技術によっても接着性が十分とは言えなかった。また、溝を形成する必要性や、溝内に配置される分の接着剤の増加等、製造及びコストの観点からも改善の要望があった。さらにリユースの端部部材の中には特許文献1に記載のような溝を有していないものも多く、そのまま接着すると十分な接着強度を得ることができない。
また、かしめによる端部部材の固定では生産性が低下し、製品についても感光体ドラムの振れが大きくなったり、感光体ドラム端部の真円度が低下したりする虞があった。
特許文献2、3のようなブラスト加工による方法では、加工されるべきでない部位にメディアが衝突したり、粉塵等により後工程を汚染したりする虞もあった。また、ブラストのメディアを衝突させるため、及びその周辺のために大掛かりな装置が必要になる。すなわち、ブラストをする装置及び工程に加え、工程に沿って部材を並べたり、部材をつかんだりする工程があり、また部材に食い込んだメディアを除去するための洗浄工程、及び洗浄後の乾燥工程も必要になる。従って、設備が大掛かりとなり、生産性が悪いことも問題であった。
そこで本発明は、上記問題点に鑑み、アルミニウム製又はアルミニウム合金製の基体を有する感光体ドラムと結晶性樹脂製の端部部材との接着剤による接合において、端部部材の嵌合部に必ずしも溝や粗面を必要とすることなく接着性を向上させることができる端部部材の製造方法、及び感光体ドラムユニットの製造方法を提供することを課題とする。また、端部部材、及び感光体ドラムユニットを提供する。
本発明の上記課題は、下記構成により解決される。なおここではわかりやすさのため図面の参照符号を括弧書きで付記するが、本発明はこれに限定されるものではない。
請求項1に記載の発明は、感光体ドラム(11)の端部に装着され、結晶性樹脂を含む材料により成形される端部部材(12、17)を製造する方法であって、端部部材は、感光体ドラムの端部に嵌合される嵌合部(16)を有し、少なくとも嵌合部の外表面をオゾン処理する工程を有し、オゾン処理が雰囲気中に窒素酸化物が実質的に含まれていないオゾン暴露である、端部部材の製造方法である。
請求項2に記載の発明は、感光体ドラム(11)の端部に装着され、結晶性樹脂を含む材料により成形される端部部材(12、17)を製造する方法であって、端部部材は、感光体ドラムの端部に嵌合される嵌合部(16)を有し、少なくとも嵌合部の外表面をオゾン処理する工程を有し、オゾン処理が窒素酸化物が実質的に含まれていないオゾン水への浸漬である、端部部材の製造方法である。
請求項3に記載の発明は、感光体ドラムの端部に装着され、結晶性樹脂を含む材料により成形される端部部材を製造する方法であって、端部部材は、感光体ドラムの端部に嵌合される嵌合部を有し、少なくとも嵌合部の外表面をオゾン処理する工程を有し、オゾン処理に用いられるオゾンは電解法により生成される、端部部材の製造方法である。
窒素酸化物が実質的に含まれていない。」とは、意図しない窒素酸化物が不可避的に含まれてしまう場合があることは許容されることを意味する。以下同様である。
請求項に記載の発明は、請求項1乃至のいずれか一項に記載の端部部材の製造方法において、結晶性樹脂はポリアセタールである。
請求項に記載の発明は、請求項1乃至のいずれか一項に記載の端部部材の製造方法により製造された端部部材(12、17)の嵌合部(16)を、アルミニウム又はアルミニウム合金による円筒形状の基体及び該基体の外周面に積層された感光層を備える感光体ドラム(11)の内側に挿入し、嵌合部の外表面と感光体ドラムの円筒形状の内表面とを接着剤により接着する、感光体ドラムユニットの製造方法である。
請求項に記載の発明は、請求項に記載の感光体ドラムユニットの製造方法において、接着剤はシアノアクリレート系接着剤である。
本発明によれば、アルミニウム又はアルミニウム合金製の基体を有する感光体ドラムと、結晶性樹脂製の端部部材と、の接着剤による接合に対して、嵌合部の酸素濃度が高められて活性化されており、端部部材の嵌合部に必ずしも溝や粗面を必要とすることなく接着性を向上させることができる。
また、接着性を向上するに際し、複数の部材をチャンバーや槽に設置し、大量にバッチ処理することができるため、生産性にも優れている。
画像形成装置の構造を概念的に説明する図である。 図2(a)は感光体ドラムユニットの斜視図である。図2(b)は一方の端部部材を感光体ドラムから離隔して表した感光体ドラムユニットの分解斜視図である。 図2にIIIで示した方向から端部部材を見た正面図である。
本発明の上記した作用及び利得は、次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。以下本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。ただし本発明はこれら実施形態に限定されるものではない。
初めに感光体ドラムユニット、及び感光体ドラムユニットに具備される端部部材の一例について説明する。図1は感光体ドラムユニット10を含む画像形成装置の内部構造を概念的に表した図である。画像形成装置としては、例えばレーザープリンタ、複写機、ファクシミリ等を挙げることができる。
画像形成装置は、感光体ドラムユニット10(図2参照)、帯電ローラ1、現像ローラ2、規制部材3、転写手段4、及びクリーニングブレード5を有している。紙等の媒体が図1にIで示した線に沿って移動することにより、当該媒体に画像が転写される。以下に各構成について説明する。
感光体ドラムユニット10には、その外周面に、紙等の記録媒体に転写すべき文字や図形等が形成される。図2には、感光体ドラムユニット10の斜視図を示した。図2(a)は感光体ドラム11に端部部材12、17が組み合わされた図、図2(b)は一方の端部部材12を感光体ドラム11から離隔して表した分解斜視図である。また、図3は、図2にIIIで示した方向から端部部材12をみた正面図である。
図2からわかるように感光体ドラムユニット10は、感光体ドラム11、端部部材12、及び端部部材17を備えている。
感光体ドラム11は、円筒形状である基体の外周面に感光層を被覆した部材である。基体はアルミニウム、又はアルミニウム合金による導電性材料が円筒形状に形成されたものである。基体の外周面に形成される感光層は特に限定されることはなく、その目的に応じて公知のものを適用することができる。ここで用いられるアルミニウム合金の種類は特に限定されるものではないが、感光体ドラムの導電性支持体として用いられることが多いJIS規格で定められる6000系、5000系、3000系のアルミニウム合金であることが好ましい。
基体は、切削加工、押し出し加工、引き抜き加工等により円筒形状を形成することにより製造することができる。そして基体の外周面に感光層を塗布する等して積層して感光体ドラム11を作製することが可能である。
端部部材12は、端部部材の1つの形態であり、感光体ドラム11の端部のうち一方の端部に取り付けられるギア(歯車)付きの部材である。端部部材12は、画像形成装置の回転駆動軸から回転駆動力を受けて感光体ドラムユニット10自体を回転させるとともに、備えられるギアにより感光体ドラムユニット10に隣接する他のローラ(帯電ローラ1等)にもこの回転力を伝達する機能を有する。端部部材12は、筒状体13、筒状体13の外周面に備えられる歯車部14、感光体ドラム11の端面に接触して係止する接触壁15、及び感光体ドラム11の内側に挿入する嵌合部16を具備している。
筒状体13は、一方の端部に底を具備し、他方の端部に接触壁15を有する有底の円筒形状の部材である。筒状体13のうち当該底からは、外側に突出するように軸13aが設けられている。軸13aは、画像形成装置の回転駆動軸に連結し、該回転駆動軸からの回転力を感光体ドラムユニット10に伝達する機能を有している。従って、軸13aは、画像形成装置の回転駆動軸から回転力が効率よく端部部材12に伝わるような形状を有している。このような機能を有する形状であれば特に限定されることはないが、例えば感光体ドラムユニット10の回転軸方向から感光体ドラムユニット10を見たときに矩形となる形状(図2(a)、図2(b)参照)を挙げることができる。
歯車部14は、筒状体13の外周面に備えられる歯車であり、現像ローラ等に回転力を伝達する。図示した本形態では歯車部14は平歯車である。ただし歯車の種類は目的を達することができるものであれば特に限定されることはなく、例えばはす歯歯車等であってもよい。ただし、本形態では歯車部が設けられた例を示したが、端部部材には必ずしも歯車部が備えられている必要はない。
接触壁15は、筒状体13の端部のうち軸13aが備えられた側とは反対側の端部に設けられ、筒状体13の外周面に立設するリング状の部材である。接触壁15は、図2(a)からわかるように、端部部材12を感光体ドラム11に装着した姿勢で、感光体ドラム11の端面に接触するように配置される。これにより端部部材12の感光体ドラム11への挿入深さが規制される。
嵌合部16は、接触壁15のうち筒状体13、歯車部14が設けられる側とは反対側に突出する円筒形状の部位である。嵌合部16は感光体ドラム11の内側に挿入され、後述する接着剤と相俟って端部部材12を感光体ドラム11の端部に固定する機能を有する。従って、嵌合部16の外径は、感光体ドラム11の円筒形状の内側に挿入可能な範囲で、感光体ドラム11の内径と概ね同じである。
端部部材12は、結晶性樹脂により形成されていることが好ましい。結晶性樹脂であれば、金型を用いて射出成型するに際し、流れが良好であることから成型加工性がよく、ガラス転移点にまで冷却させなくても結晶化して固化することにより離型することができる。従って、生産性を大きく向上させることが可能である。また、結晶性樹脂は、耐熱性、耐溶剤性、耐油性、耐グリース性に優れ、耐摩擦摩耗性や摺動性も良好であり、さらには剛性及び硬さの観点からも端部部材に適用する材料として好ましい。
結晶性樹脂としては例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、メチルペンテン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエテルケトン、ポリテトラフロロテチレン、ナイロン等を挙げることができる。
この中でも成型加工性の観点からポリアセタール系樹脂を用いることが好ましい。
ここに用いられるポリアセタール系樹脂としては、オキシメチレンユニット(−CHO−)を主たる構成単位として含むポリアセタール系樹脂が好ましい。
このようなポリアセタール系樹脂は、オキシメチレン基以外のユニットを含むポリアセタールコポリマーであってもよく、オキシメチレン基以外のユニットとしては、炭素数2〜6程度、好ましくは炭素数2〜4程度のオキシアルキレン単位(例えば、オキシエチレン基(−CHCHO−)、オキシプロピレン基、オキシテトラメチレン基など)を構成単位として含むポリアセタールコポリマーが好ましい。
上記ポリアセタールコポリマーは、二成分で構成されたコポリマー、三成分で構成されたターポリマー等の複数の成分で構成されていてもよい。ポリアセタールコポリマーは、一般にランダムコポリマーであるが、ブロックコポリマー、グラフトコポリマーなどであってもよい。
上記したポリアセタール系樹脂は、ホルムアルデヒドの環状オリゴマーであるトリオキサンやテトラオキサンとエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,3−ジオキソラン、1,4−ブタンジオールのホルマールなどの炭素数2〜6程度のオキシアルキレンユニットを有する環状エーテルとを共重合することにより製造できる。
上記適用される結晶性樹脂には、必要に応じて、酸化防止剤(フェノール系、リン系、イオウ系)、光安定剤、難燃剤、顔料、結晶核材などを添加することができる。また、複数の樹脂を相溶させたり、マスターバッチを添加して任意の色に着色してもよい。さらに、褶動性を向上させるためにフッ素樹脂やポリエチレン、シリコンゴムなどを添加することもできる。より具体的には次の通りである。
端部部材に用いられる材料には結晶性樹脂に加えて、公知の殆ど全ての熱可塑性樹脂を併用することができる。併用可能な熱可塑性樹脂としては、ポリスチレン(PS)、スチレン/アクリロニトリル共重合体樹脂(SAN)等のスチレン系樹脂、ポリメチルメチクリレート(PMMA)等のアクリル系ビニル重合体、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリフェニレンエーテル樹脂(PPE)及びその変性品、芳香族ポリエステル樹脂(PET、PBT)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)等のポリアミド樹脂(PA)等が挙げられる。これらは1種又は2種以上併用することができる。また、グラフト共重合体等の相溶化剤を併用することもできる。
その他、コア−シェル型、若しくはエラストマー等のゴム質重合体を配合することもできる。その具体例としては、メチルメタクリレート/ブタジエン/スチレン共重合体樹脂(MBS樹脂)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体樹脂(ABS樹脂)等のジエン系コアシェル型ゴム質重合体、アクリレート/スチレン/アクリロニトリル共重合体樹脂(ASA樹脂)、アクリレート/メチルメタクリレート共重合体樹脂等のアクリル系コアシェル型ゴム質重合体、シリコーン/アクリレート/メチルメタクリレート共重合体樹脂、シリコーン/アクリレート/アクリロニトリル/スチレン共重合体樹脂等のシリコーン系コアシェル型ゴム質重合体、エチレン/プロピレン共重合体(EPR)、エチレン/ブテン−1共重合体、エチレン/プロピレン/非共役ジエン共重合体(EPDM)、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン/アクリル酸エチル共重合体(EEA)等のオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン/エチレン/ブチレン/スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン/エチレン/プロピレンブロック共重合体(SEP)、スチレン/イソプレン/スチレン共重合体(SIS)等のスチレン系熱可塑性エラストマー(TPE)、及びこれらの無水マレイン酸やグリシジルメタクリレート等による変性品、熱可塑性ポリエステル(TPEs)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、イソブテン/イソプレンゴム(IIR)、ポリイソプレン(IR)、天然ゴム(NR)、ブタジエン/アクリロニトリル共重合体(NBR)、ブタジエン/スチレン共重合体(SBR)等が挙げられる。これらは1種又は2種以上併用することができる。
その他、端部部材の材料には結晶性樹脂本来の特性を損なわない範囲で、必要に応じて各種添加剤を配合することができる。その具体例としては、顔料や染料、ガラス繊維、金属繊維、金属フレーク、炭素繊維等の補強剤や充填剤、2,6−ジ−ブチル−4−メチルフェノール、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)等のフェノール系酸化防止剤、トリス(ミックスド、モノ及びジニルフェニル)ホスファイト、ジフェニル・イソデシルホスファイト等のホスファイト系酸化防止剤、ジラウリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネートジアステリアルチオジプロピオネート等の硫黄系酸化防止剤、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ビス(2,2,6,6)−テトラメチル−4−ピペリジニル)等の光安定剤、ヒドロキシルアルキルアミン、スルホン酸塩等の帯電防止剤、エチレンビスステアリルアミド、金属石鹸等の滑剤、及びテトラブロムフェノールA、デカブロモフェノールオキサイド、TBAエポキシオリゴマー、TBAポリカーボネートオリゴマー、三酸化アンチモン、TPP、リン酸エステル等の難燃剤等が挙げられる。かかる各種添加剤を配合することで、より望ましい物性、特性に調節することができる。
端部部材12の嵌合部16には接着性向上ための溝や粗面が予め設けられていても、設けられていなくてもよい。当該溝や粗面がない場合には後述する製造方法により接着性向上が特に顕著であるが、溝や粗面が設けられていてもさらなる接着性向上の効果があるからである。
また、端部部材12では少なくとも嵌合部16の外表面が酸化処理された表面(酸化処理表面)とされている。これにより接着性に問題があるとされる結晶性樹脂であっても表面が活性化され、後述する接着剤による感光体ドラム11との接着性を向上させることができる。すなわち、従来のように嵌合部に溝や粗面を形成することなく十分な接着性を有するものとなる。
端部部材17は、感光体ドラム11の端部のうち、端部部材12が配置される側とは反対側の端部に装着される端部部材である。端部部材17は、歯車部は備えられていないが端部部材の1つの形態である。従ってその材質は端部部材12と同様のものを用いることができる。
端部部材17は円盤状である軸受部17aと、該軸受部17aの面から感光体ドラム11の内側に突出する嵌合部17b(図2(a)に透視して破線で示している。)と、を備えている。そして端部部材17では、感光体ドラム11の円筒内側に嵌合される嵌合部17bと、感光体ドラム11の一端面を覆うように配置される軸受部17aとが同軸に形成されている。ここで軸受部17aは、感光体ドラム11の端面を覆う円板状であるとともに、軸を受ける不図示の部位を具備する。また、端部部材17には、不図示の導電性材料からなるアース板が配置され、これにより感光体ドラム11と画像形成装置本体とを電気的に接続させている。本形態では端部部材17にアース板を配置する例を説明したが、これに限らずアース板が端部部材12側に配置されてもよい。
また、本形態では端部部材17についても端部部材12と同様に、少なくとも嵌合部17bの外表面が酸化処理された表面(酸化処理表面)とされている。これにより接着性に問題があるとされる結晶性樹脂であっても表面が活性化され、後述する接着剤による感光体ドラム11との接着性を向上させることができる。すなわち、従来のように嵌合部に溝や粗面を形成することなく十分な接着性を有するものとなる。
感光体ドラム11と端部部材12、17とは接着剤により固定されている。すなわち、感光体ドラム11の内側に差し込まれる端部部材12、17の嵌合部16、17bの外周面と感光体ドラム11の内周面との間に具備された接着剤により固定されている。
用いられる接着剤はシアノアクリレート系、ポリウレタン系、アクリル樹脂系を用いることが好ましい。その中でも特に、周囲の水分によって急速に硬化するため硬化速度の速いシアノアクリレート系接着剤が好ましい。
以上のような端部部材12、17及びこれを含む感光体ドラムユニット10は、例えば次のように製造することができる。
本例では、端部部材12、17を製造するときに、結晶性樹脂による従来と同様の端部部材(処理前の端部部材)を準備する。処理前の端部部材は新たに製造されたものであってもよいし、リユースによるものであってもよい。新たに製造するものについては、その製造方法は特に限定されることはなく、例えば射出成型等により作製することができる。
次に、処理前の端部部材のうち、少なくとも嵌合部となる部位の外表面の酸素濃度を高める酸化処理をおこなう。当該酸化処理の前には、該処理前の端部部材の表面を洗浄しておくことが好ましい。洗浄方法は特に限定されることなく、公知の方法を適用することができる。
酸化処理の方法は特に限定されることなく、あらゆる方法を取り得るが、例えば次のように、オゾンの発生工程とオゾン処理工程とに分けて考えることができる。
オゾンの発生工程は端部部材に接触させるべきオゾンを発生する工程である。これには例えば無声放電、紫外線照射、及び電気分解によるオゾン発生を挙げることができる。
無声放電によるオゾンの発生は空気中おいてコロナ放電を生じさせることにより、コロナ放電のエネルギーで空気中の酸素からオゾンを発生する方法である。
紫外線照射によるオゾンの発生は空気に紫外線を照射することにより、紫外線のエネルギーで空気中の酸素からオゾンを発生する方法である。
電気分解によるオゾンの発生は電解法ともよばれ、例えば陰極に黒鉛電極、陽極に白金電極を用いて希硫酸を電気分解することによりオゾンを発生させる。このときには陽極からオゾンが生成される。
電気分解によるオゾンの発生によれば、オゾンの発生とともに窒素酸化物(例えば無水硝酸(N))が発生することがなく、オゾン処理工程で端部部材にオゾン処理をしたときに端部部材の変色を抑制することができる。
ここで、オゾンの発生方法は特に限定されることはないが、オゾン発生時に窒素酸化物が生成しない方法である方法が好ましい。これにより端部部材へのオゾン処理工程後の端部部材の変色を抑制することができる。例えば無声放電によるオゾン発生ではオゾンとともに無水硝酸(N)が発生し、無水硝酸が水蒸気を吸湿して硝酸(HNO)となる。これにより端部部材にオゾン処理をすると硝酸が光により分解し(4HNO+光→4NO+2HO+O)、端部部材を変色(黄変)させると考えられる。
オゾン処理工程は、上記オゾンの発生工程で発生させたオゾンを用いて端部部材の少なくとも嵌合部の表面に対してオゾンを接触させて処理をする工程である。オゾン処理工程として、オゾン暴露による方法、及びオゾン水への浸漬による方法を挙げることができる。
オゾン暴露による方法とは、気相法と呼ばれることもあり、オゾンが含まれた気体雰囲気中に端部部材を晒す(暴露)することにより処理をする方法である。これは例えばオゾンが含まれた空気雰囲気のチャンバー内に端部部材を晒すことによりおこなうことができる。オゾンの生成が無声放電や紫外線照射による場合には当該チャンバー内に端部部材を配置した状態で無声放電や紫外線照射をすればオゾン発生工程とオゾン処理工程とを同時に行うことができる。
オゾン水への浸漬による方法とは、液相法と呼ばれることもあり、所定のオゾン濃度を有する水であるオゾン水が貯留された槽に処理前の端部部材を浸漬することにより行われる。オゾン水の製造は上記オゾン発生工程により発生させたオゾンを用いて公知の方法で行うことができる。
オゾン処理工程では、いずれの方法を適用する場合であってもオゾン濃度が高く、処理温度が高温であり、処理時間が長い方が接着性改良効果は高い。ただし、その程度によっては端部部材を構成する樹脂の表面の劣化に伴う樹脂性能の低下の方が顕著になることもあるので、用いられた樹脂の種類等により適切な条件が設定されるべきである。
例えば、数分から数十分という短い時間で効率よく処理することを考えた場合、十分な接着力を得るには、オゾンの濃度は1ppm以上が好ましく、より好ましくは10ppm以上である。また、その際の処理温度は20℃〜25℃の常温でも可能であるが、30℃以上が好ましく、より好ましくは40℃以上である。
また、上記したようにオゾン処理工程では端部部材の変色を抑制する観点からは処理の際の雰囲気やオゾン水に窒素酸化物を実質的に含まないことが好ましい。ただし、意図しない窒素酸化物が不可避的に混入されている程度は許容することができる。
このような処理によりオゾンの作用で端部部材のオゾン処理がされた表面部分における材料の分子鎖が切断され、−OH、−COOH等が生成されるので端部部材の表面が活性化される。これにより接着剤による接着性が向上すると考えられる。
オゾン処理工程では、端部部材の全部を処理してもよいし、嵌合部のみ等、一部のみを処理してもよい。端部部材の一部のみを処理する方法としては、気相法ではチャンバー内に処理部位のみを露出させる方法を挙げることができる。一方、液相法では気相法と同様にオゾン水層中に処理部位を浸漬させる方法や、液面を処理部位までとする方法を挙げることができる。
一方、感光体ドラム11の内表面端部のうち、端部部材12、17の嵌合部16、17bが挿入される部位に接着剤を塗布する。ここで、用いられる接着剤はシアノアクリレート系、ポリウレタン系、アクリル樹脂系を用いることが好ましい。その中でも特に、周囲の水分によって急速に硬化するため硬化速度の速いシアノアクリレート系接着剤が好ましい。
そして、上記製造しておいた端部部材12、17の嵌合部16、17bを感光体ドラム11のそれぞれの端部から内側に挿入する。このとき、端部部材12は接触壁部15、端部部材17は軸受部17aが感光体ドラム11のそれぞれの端面に接触するまで挿入する。
本発明では上記したように嵌合部16、17bの外表面における酸素濃度が高められており、表面が活性化されているので、高い接着性で端部部材12、17と感光体ドラム11との接着が可能となる。従って、嵌合部に溝や粗面を設ける必要もなく十分な接着性を得ることができる。また、溝や粗面を有していないリユースの端部部材も上記処理をするだけで接着性を向上させることができる。
図1に戻って、画像形成装置の構造について説明をする。画像形成装置には、上記のように感光体ドラムユニット10の他、帯電ローラ1、現像ローラ2、規制部材3、転写手段4、及びクリーニングブレード5があり、それぞれは次のようなものである。
帯電ローラ1は、画像形成装置からの電圧印加により感光体ドラム11を帯電させる。これは、当該帯電ローラ1が感光体ドラム11に追随して回転し、感光体ドラム11の外周面に接触することにより行われる。
現像ローラ2は、感光体ドラム11に現像剤を供給するローラである。そして、当該現像ローラ2により、感光体ドラム11に形成された静電潜像が現像される。なお現像ローラ2には、固定磁石が内蔵されている。
規制部材3は、上記した現像ローラ2の外周面に付着する現像剤の量を調整するとともに、現像剤自体に摩擦帯電電荷を付与する部材である。
転写手段4は、感光体ドラム11に形成された像を紙等の記録媒体に転写するためのローラである。
クリーニングブレード5は、感光体ドラム11の外周面に接触してその先端により転写後に残存した現像剤を除去するブレードである。
ここでは、画像形成装置に備えられる主要なローラ及びブレードについて説明したが、ここに具備される部材はこれに限定されるものではなく、その他画像形成装置に通常に備えられる部材、部位、及び現像剤等が具備されていることが好ましい。
次に画像形成装置の動作について説明する。画像形成装置を作動させる際には、上記した感光体ドラムユニット10の軸13aを画像形成装置に設けられた回転軸に連結し、必要に応じて回転させる。上記した帯電ローラ1、現像ローラ2、転写手段4等は端部部材12の歯車部14から回転力を直接、又は間接的に受けて回転するように構成されている。これにより感光体ドラムユニット10が回転し、感光体ドラム11が帯電ローラ1により帯電される。
感光体ドラムユニット10が回転している状態で、不図示の各種光学部材を用いて画像情報に対応したレーザー光を感光体ドラム11に照射し、当該画像情報に基づいた静電潜像を得る。この潜像は現像ローラ2により現像される。
一方、紙等の記録媒体は、画像形成装置の他の部位にセットされ、該画像形成装置に設けられた送り出しローラ、搬送ローラ等により転写位置に搬送され、図1の線Iに沿って移動する。転写位置には転写手段4が配置されており、記録媒体の通過に伴い転写手段4に電圧が印加されて感光体ドラム11から記録媒体に像が転写される。その後、記録媒体に熱及び圧力が加えられることにより当該像が記録媒体に定着する。そして排出ロール等により画像形成装置本体から像が形成された記録媒体が排出される。
また、感光体ドラム11では、次の画像に備え、クリーニングブレード5が感光体ドラム11の外周面に接触してその先端により転写後に残存した現像剤を除去する。クリーニングブレード5により掻き取られた現像剤は公知のように排出される。
画像形成装置の作動からも、感光体ドラム11が回転及び停止の繰り返しにより負荷が大きく、及び帯電や加熱等もあるという厳しい条件に置かれていることがわかる。本発明によれば、上記したように、端部部材の嵌合部に必ずしも溝等や粗面を設けることなく感光体ドラムと端部部材との接着性を向上させることができ、画像形成装置の信頼性も高めることが可能である。
<端部部材の製造>
外径28.5mmのポリアセタール樹脂による端部部材(旭化成株式会社、LA543)を成形し、酸化処理を行った。嵌合部の表面にはいずれの溝及び粗面も設けておらず、嵌合部は平滑な円筒面である。
実施例1、2では、オゾン発生工程で電気分解によりオゾンを発生させ、湿潤雰囲気を含んだオゾン含有気体(O、O、HOの混合気体)を生成した。これをオゾン処理工程において、オゾン暴露による方法で処理した。具体的には、実施例1については、ガラスフラスコ(3リットル)に端部部材を設置し、生成した混合気体を、乾燥空気をキャリアガスとしてガラスフラスコに流通させた。実施例2については、同じくガラスフラスコ(3リットル)に端部部材を設置し、フラスコ内部のオゾン濃度が500ppmになるように高濃度である50000ppmのオゾンガスをシリンジで封入し、流通させることなく180分間静置した。
実施例3、4でも、オゾン発生工程で電気分解によりオゾンを発生させ、湿潤雰囲気を含んだオゾン含有気体(O、O、HOの混合気体)を生成した。これをオゾン処理工程において、オゾン水へ浸漬する方法により処理した。具体的には、生成した混合気体を超純水に溶解させオゾン水とし、該オゾン水をガラスビーカーに8リットル/分の流量で流し、そこに端部部材を浸漬するように設置した。オゾン水の濃度はビーカー前段にてモニタリングした。なお、オゾンを溶解させやすくするため、オゾン水を作製するに際してオゾン溶解前段にて超純水中に炭酸ガスを溶解させた。
実施例1〜4におけるオゾンガスの生成には、株式会社ササクラ製の電解法オゾン発生装置「オゾンマスター」を用いた。従って、実施例1〜4には窒素酸化物を実質的に含んでいない。
参考例5〜8では、オゾン発生工程において、荏原実業株式会社製のオゾン発生器「CEA−1000」を用いて、乾燥空気を原料とし、無声放電により空気中の酸素をオゾンに変換した。次いでオゾン処理工程において、ステンレス製チャンバー内に端部部材を設置し、作製したオゾンガスを導入した。それぞれのオゾン濃度は放電強度(電圧)を調整することによりおこなった。
このようにしてオゾンを発生させたので、参考例5〜8では窒素酸化物が含まれていた。
比較例1は酸化処理をしなかった。
比較例2では、端部部材の平滑な円筒面である嵌合部に対して、ブラスト加工装置として、ホーザン株式会社製のSG−106を用い、ブラスト加工用メディアとして共栄研磨材株式会社製のニューガラスビーズ♯80を用いて、合計10秒間噴射してブラスト加工を行い、端部部材を得た。
各実施例、比較例におけるオゾン濃度及び暴露時間又は浸漬時間等の条件、及びその他の条件を表1に示した。
Figure 0006094241
<感光体ドラムユニットの製造>
実施例1〜4、参考例5〜8、及び比較例1、2にかかる端部部材の嵌合部にシアノアクリレート系接着剤を0.1g塗り、アルミニウム切削管による感光体ドラム用基体に挿入して接着した。その後、35℃湿度85%で24時間以上乾燥させた。今回は感光層は不要であることから感光層を設けることなく基体により試験をおこなった。
<接着性試験:トルク測定試験>
接着性を評価する試験としてトルク強度測定を行った。具体的には次の通りである。−20℃2時間と40℃2時間とを1サイクルとし、これを5サイクル繰り返すヒートサイクルで保持した後、トルク測定試験機(株式会社小野測器 TS−3600A)を用いて感光体ドラムユニットの耐トルク強度をそれぞれ4回測定してこれを平均した。それぞれの結果を表2に示す。
<変色の評価>
変色は目視により評価した。全く変色しない場合を「◎」、許容される範囲で変色があった場合を「○」、許容範囲を超えて変色があった場合を「△」、許容範囲を超えさらに激しく変色した場合を「×」で評価した。結果を表2に示す。
Figure 0006094241
以上からわかるように、酸化処理をすることにより十分なトルク強度、すなわち接着強度を得ることができた。そして、接着強度を得る観点からはいずれの酸化方法であってもよいことがわかる。ただし、端部部材の変色の観点からは、窒素酸化物を含まない実施例1〜4が良好であった。また、未処理はもちろんのこと(比較例1)、ブラスト処理をした場合(比較例2)であっても平均トルクは酸化処理をした場合に比べて低く、不十分であった。
10 感光体ドラムユニット
11 感光体ドラム
12 端部部材
13 筒状体
14 歯車部
15 接触壁
16 嵌合部
17 端部部材

Claims (6)

  1. 感光体ドラムの端部に装着され、結晶性樹脂を含む材料により成形される端部部材を製造する方法であって、
    前記端部部材は、前記感光体ドラムの端部に嵌合される嵌合部を有し、
    少なくとも前記嵌合部の外表面をオゾン処理する工程を有し、
    前記オゾン処理が雰囲気中に窒素酸化物が実質的に含まれていないオゾン暴露である、
    端部部材の製造方法。
  2. 感光体ドラムの端部に装着され、結晶性樹脂を含む材料により成形される端部部材を製造する方法であって、
    前記端部部材は、前記感光体ドラムの端部に嵌合される嵌合部を有し、
    少なくとも前記嵌合部の外表面をオゾン処理する工程を有し、
    前記オゾン処理が窒素酸化物が実質的に含まれていないオゾン水への浸漬である、
    端部部材の製造方法。
  3. 感光体ドラムの端部に装着され、結晶性樹脂を含む材料により成形される端部部材を製造する方法であって、
    前記端部部材は、前記感光体ドラムの端部に嵌合される嵌合部を有し、
    少なくとも前記嵌合部の外表面をオゾン処理する工程を有し、
    前記オゾン処理に用いられるオゾンは電解法により生成される、
    端部部材の製造方法。
  4. 前記結晶性樹脂はポリアセタールである、請求項1乃至のいずれか一項に記載の端部部材の製造方法。
  5. 請求項1乃至のいずれか一項に記載の端部部材の製造方法により製造された前記端部部材の前記嵌合部を、アルミニウム又はアルミニウム合金による円筒形状の基体及び該基体の外周面に積層された感光層を備える感光体ドラムの内側に挿入し、前記嵌合部の外表面と前記感光体ドラムの円筒形状の内表面とを接着剤により接着する、感光体ドラムユニットの製造方法。
  6. 前記接着剤はシアノアクリレート系接着剤である、請求項に記載の感光体ドラムユニットの製造方法。
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