JP6093277B2 - Vgsタイプターボチャージャにおける可変翼の製造方法 - Google Patents

Vgsタイプターボチャージャにおける可変翼の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、自動車用エンジン等に用いられるターボチャージャに組み込まれる可変翼の製造方法に関するものであって、特に翼部端面(翼端)の切削時に発生していたバリを防止できるようにした新規な製造方法に係るものである。
例えば自動車用エンジンの高出力化、高性能化の一手段として用いられる過給機としてターボチャージャが知られており、このものはエンジンの排気エネルギによってタービンを駆動し、このタービンの出力によってコンプレッサを回転させ、エンジンに自然吸気以上の過給状態をもたらす装置である。ところで、このターボチャージャは、エンジンが低速回転しているときには、排気流量の低下により排気タービンがほとんど働かず、従って高回転域まで回るエンジンにあってはタービンが効率的に回るまでのもたつき感と、その後の一挙に吹き上がるまでの所要時間いわゆるターボラグ等が生ずることを免れないものであった。また、もともとエンジン回転が低いディーゼルエンジンでは、ターボ効果を得にくいという欠点があった。
このため低回転域からでも効率的に作動するVGSタイプのターボチャージャ(VGSユニット)が開発されており、このものは少ない排気流量を可変翼(羽)で絞り込み、排気の速度を増し、排気タービンの仕事量を大きくすることで、低速回転時でも高出力を発揮できるようにしたものである。このためVGSユニットにあっては、別途可変翼の可変機構等を必要とし、周辺の構成部品も従来のものに比べて形状等をより複雑化させなければならなかった。
このようなことから本出願人も、可変翼やその可変機構等に関し、鋭意、研究開発を重ね、多くの特許出願に至っている(例えば特許文献1〜3参照)。
これら従来の製造手法では、可変翼は合金素材で軸部と翼部とを一体に形成し(これが可変翼の原形となり素形材と称する)、この素形材を所望寸法に切削し、またその切削時に発生するバリを除去して、完成品としての可変翼1を得るものであり、切削工程とバリ除去工程とは、不可分の工程と考えられていた。
具体的には、可変翼1′が片軸タイプの場合には(翼部11′の一方にのみ軸部12′が存在する可変翼1′の場合には)、一例として図6(a)に示すように、軸ナシ側の翼端(翼端面)については当該部位をエンドミルEMで切削して行くものである。この際、エンドミルEMを回転させながら材料(可変翼1′の端面)を切削して行くため、エンドミルEMが作用する左右両側の翼端エッジを比べた場合には、材料を引きずる方の翼端エッジに図示のようなバリBが発生するものであった。
また可変翼1′が両軸タイプの場合には(翼部11′の両側に軸部12′が存在する可変翼1′の場合には)、一例として図6(b)に示すように、可変翼1′を回転させながら、翼端にバイトCTを当てて切削して行くため、材料を引きずる方は、図示のように軸部12′を中心としてほぼ180度対向した位置(点対称の位置)となり、当該部位にバリBが発生する。
なお、片軸の可変翼1′の軸部12′の翼端を切削する場合にも、可変翼1′を回転させながらの切削となるため、軸部12′を中心として点対称の位置にバリBが発生するものである。
そして、このようなバリBは、従来、バフ研磨やショットブラストあるいは電解研磨等のバリ除去工程で除去しており、この工程が技術常識となっていた。このため、従来の可変翼1′の製造工程では、図7に示すように、長軸側の切削工程(翼端切削)と、短軸側の切削工程(翼端切削)との後に、計2回のバリ除去工程(例えばバフ研磨)を行っていた。
しかしながら、本出願人は、このような技術常識を根本的に見直し、本発明に至ったものである。すなわち、本出願人は、素形材を獲得する段階、より詳細には翼端切削を受けるの前の素形材の形状を工夫することにより、このような翼端切削で生じるバリを防止し得る着想から本発明に至ったものである。
特開2007−23840号公報 特開2007−23841号公報 特開2012−20318号公報
本発明は、このような背景を認識してなされたものであって、翼端切削を受ける素形材の断面形状を工夫することにより、従来の製造工程では、翼端切削工程で生じていたバリの発生を防止し、翼端切削に付随して行われていた二回のバリ除去工程(例えばバフ研磨工程)を廃止するようにしたVGSタイプターボチャージャにおける新規な可変翼の製造方法の開発を試みたものである。
まず請求項1記載の、VGSタイプターボチャージャにおける可変翼の製造方法は、
回動中心となる軸部と、実質的に排気ガスの流量を調節する翼部とを具え、
エンジンから排出された比較的少ない排気ガスを適宜絞り込み、排気ガスの速度を増幅させ、排気ガスのエネルギで排気タービンを回し、この排気タービンに直結されたコンプレッサで自然吸気以上の空気をエンジンに送り込み、低速回転時であってもエンジンが高出力を発揮できるようにしたVGSタイプのターボチャージャに組み込まれる可変翼を製造する方法において、
その工程は、少なくとも
翼部と軸部とを一体に具えた可変翼の原形となる合金素材を得る、素形材の準備工程と、
素形材の軸部を所望の径太さに加工し、また翼部の端面を所望の翼幅寸法に加工する切削工程とを具えて成り、
前記可変翼の原形となる素形材には、翼端エッジに一定傾斜やR形状の面取りを形成しておき、この状態で翼端面の切削加工を行い、切削加工後のバリ除去工程を排除するものであり、
且つ、前記素形材の準備工程では、素形材は、鋳造によって得るものであり、素形材を鋳込む鋳型に前記面取り加工を施し、素形材を鋳型から取り出した段階で、既に翼部の翼端エッジに面取りが形成されるようにしたことを特徴として成るものである。
また請求項記載の、VGSタイプターボチャージャにおける可変翼の製造方法は、前記請求項記載の要件に加え、
前記素形材の翼端エッジに形成する面取りは一定傾斜の面取りであり、その角度は45度の傾斜面であることを特徴として成るものである。
また請求項記載の、VGSタイプターボチャージャにおける可変翼の製造方法は、前記請求項1または2記載の要件に加え、
前記可変翼は、翼部の両側に軸部を有する両軸タイプのものであることを特徴として成るものである。
これら各請求項記載の発明の構成を手段として前記課題の解決が図られる。
まず請求項1記載の発明によれば、素形材における翼部の翼端エッジに、一定傾斜やR形状の面取りを形成した状態で翼端切削を行うため、当該切削によるバリの発生を防止できる。なお、従来は、翼端エッジに特に面取りが行われていなかったため、この種の端面切削にはその後のバリ除去工程(例えばバフ研磨)が不可分と考えられていたが、本発明では、このようなバリ除去工程を廃止できるようにしたものである。
なお、翼端エッジに形成する面取りを一定傾斜の面取りとした場合には、切削位置によって翼端エッジに形成した傾斜面(面取り)の角度が変わることがなく(一定であり)、バリの発生を効果的に防止することができ(バリ発生の抑制効果が高くなり)、望ましいものである。これに対し、翼端エッジに形成する面取りをR形状の面取りとした場合には、切削位置によって、切削面とR面(面取り)の接線方向との成す角が変化するため、バリ発生の抑制効果としては幾らか低下することが考えられるが、切削位置の設定を適正に行えば、上記一定傾斜の面取りを形成した場合と同様のバリ抑制効果が得られるものである。
また本発明によれば、素形材を鋳型から取り出した段階で既に翼部の翼端エッジに一定傾斜やR形状の面取りが形成されるため、素形材の獲得後(つまり鋳造後)に、別途、面取り加工を行う必要がなく、可変翼を効率良く製造することができる。
また請求項記載の発明によれば、翼部の翼端エッジに形成する面取りの具体的構成を現実のものとする。なお、45度の面取りは、極めて一般的な面取りであるため、素形材を鋳造によって得るにあたり、鋳型に施す面取り加工が行い易いものとなる。
また請求項記載の発明によれば、可変翼が両軸タイプのものであるため、可変翼を回転させながら、長軸側の翼端切削と短軸側の翼端切削とを行い、つまり同様の切削態様となり、加工が行い易いものである。一方、可変翼が片軸タイプである場合には、軸部のない方の翼端切削は、回転するエンドミルに可変翼を当てる加工となり、加工の態様が異なる。
本発明に係る可変翼を組み込んだVGSタイプのターボチャージャの一例を示す斜視図(a)、並びに排気ガイドアッセンブリの一例を示す分解斜視図(b)である。 本発明に係る可変翼(基準面アリ)の正面図、左側面図、右側面図である。 本発明に係る他の可変翼(基準面ナシ)の正面図、右側面図である。 可変翼の製造工程を骨格的に示す流れ図である。 翼端エッジに一定傾斜の面取りを形成した場合の翼部と、その場合における翼端切削の様子を示す説明図(a)、並びに翼端エッジにR形状の面取りを形成した場合の翼端切削の様子を示す説明図(b)である。 従来の片軸タイプの可変翼において軸ナシ側の翼端面を切削する様子と、この際に生じるバリの様子を示す説明図(a)、並びに従来、両軸タイプの可変翼の翼端面を切削する様子と、この際に生じるバリの様子を示す説明図(b)である。 従来の両軸タイプの可変翼(長軸部の先端に基準面が形成される場合)の製造工程を骨格的に示す流れ図である。
本発明を実施するための形態は、以下の実施例に述べるものをその一つとするとともに、更にその技術思想内において改良し得る種々の手法を含むものである。
説明にあたっては、本発明に係る可変翼1を適用したVGSユニットの排気ガイドアッセンブリAについて説明しながら、併せて可変翼1について説明し、その後、可変翼の製造方法について説明する。
排気ガイドアッセンブリAは、特にエンジンの低速回転時において排気ガスGを適宜絞り込んで排気流量を調節するものであり、一例として図1に示すように、排気タービンTの外周に設けられ実質的に排気流量を設定する複数の可変翼1と、可変翼1を回動自在に保持するタービンフレーム2と、排気ガスGの流量を適宜設定すべく可変翼1を一定角度回動させる可変機構3とを具えて成るものである。以下各構成部について説明する。
まず可変翼1について説明する。このものは一例として図1に示すように、排気タービンTの外周に沿って円弧状に複数(一基の排気ガイドアッセンブリAに対して概ね10〜15個程度)配設され、そのそれぞれが、ほぼ同程度ずつ回動して排気流量を調節するものである。可変翼1は、翼部11と、軸部12とを具えて成り、以下、これらについて説明する。
まず翼部11は、主に排気タービンTの幅寸法に応じて一定幅を有するように形成されるものであり、その幅方向における断面が翼形に形成され、排気ガスGが効果的に排気タービンTに向かうように構成されている。なお、ここで図1(b)に示すように、翼部11の幅寸法を便宜上、翼幅hとする。また図2に示すように、翼部11の翼形断面において厚肉となる端縁を前縁11a、薄肉となる端縁を後縁11bとし、前縁11aから後縁11bまでの長さを翼弦長Lとする。更にまた、翼部11には、軸部12との境界部(接続部)に、軸部12より幾分大径の鍔部13が形成される。なお鍔部13の底面(座面)は、翼部11の端面と、ほぼ同一平面上に形成され、この平面が可変翼1をタービンフレーム2に取り付けた際の座面となり、排気タービンTにおける幅方向(翼幅hの方向)の位置規制を図る作用を担っている。
一方、軸部12は、翼部11と一体的に形成されるものであり、翼部11を動かす際の回動軸となる。なお、本実施例では、主に翼部11の両側に軸部12が形成される、いわゆる両持ちタイプの可変翼1を図示しており、これら両軸部12を区別して示す場合には、その軸長に因み、長軸部12aと短軸部12bとして便宜上区別する。因みに、このような両軸タイプの可変翼1は、翼部11の一方のみに軸部12が形成される、いわゆる片軸タイプ(片持ちタイプ)のものに比べ、可変翼1の作動安定性(回動安定性)や強度等を向上させ得る点で有効である。
また長軸部12aと短軸部12bとには、例えば上記図2(b)に併せ示すように、軸径よりも幾分大径となる摺動段差14が部分的に形成される。これは、可変翼1を回動させる際に、タービンフレーム2の軸受部(後述するタービンフレーム2の受入孔25)と接触する面であり、これにより可変翼1を回動させる際の摺動抵抗(摩擦抵抗)が抑制され、可変翼1の安定した作動(回動)を図るものである。なお可変翼1は、高温・排ガス雰囲気という過酷な環境下で繰り返し使用されるため、摺動段差14による摺動抵抗の抑制は、このような厳しい環境下での開閉作動をより安定化させるものである。
また、摺動段差14は、必ずしも基部となる軸部12よりも大径の凸状に形成される必要はなく、軸受部と部分接触するという観点から見れば、例えば図3に示すように、軸部12の一部を凹陥状に形成(ここでは短軸部12bにおける鍔部13の根元をクビレ状に形成)し、基部となる軸部12が軸受部と部分接触するように構成しており、このような部分接触部も実質的な摺動段差14となる。因みに、摺動段差14は可変翼1において、必ずしも必須の構成要素ではない。
更に長軸部12aの先端側には、可変翼1の取付状態の基準となる基準面15が形成される。この基準面15は、後述する可変機構3に対しカシメ等によって固定される部位であり、一例として図1、2に示すように、軸部12を対向的に切り欠いた二平面として形成される。しかしながら、基準面15は、必ずしも対向する二平面として形成されるだけでなく、長方形断面や正方形断面を成す四平面として形成されてもよく、要は可変翼1の姿勢(取付姿勢)が規制できれば種々の形態が採り得るものである。
因みに、このような基準面15も、必ずしも必須の構成要素ではなく、可変翼1の可変構造等によっては形成されないこともあり得る(例えば図3参照)。
次に、タービンフレーム2について説明する。このものは、複数の可変翼1を回動自在に保持するフレーム部材として構成されるものであって、一例として図1に示すように、フレームセグメント21と保持部材22とによって可変翼1(翼部11)を挟み込むように構成される。フレームセグメント21は、可変翼1の長軸部12aを受け入れるフランジ部23と、後述する可変機構3を外嵌めするボス部24とを具えて成る。なお、このような構造からフランジ部23の周縁部分には、可変翼1と同数の受入孔25が等間隔で形成されるものである。
また保持部材22は、図1に示すように中央部分が開孔された円板状に形成されており、本実施例では可変翼1が両軸タイプであるため、この保持部材22にも可変翼1の短軸部12bを受け入れる受入孔25が等配される。
そしてこれらフレームセグメント21と保持部材22とによって挟み込まれた可変翼1(翼部11)を、常に円滑に回動させ得るように、両部材間の寸法が、ほぼ一定(概ね可変翼1の翼幅h程度)に維持されるものであり、一例として受入孔25の外周部分に、四カ所設けられたカシメピン26によって両部材間の寸法が維持される。ここで、このカシメピン26を受け入れるためにフレームセグメント21及び保持部材22に開孔される孔をピン孔27とする。
なお、本実施例では、フレームセグメント21のフランジ部23は、保持部材22とほぼ同径のフランジ部23Aと、保持部材22より幾分大きい径のフランジ部23Bとの二つのフランジ部分から成り、これらを同一部材で形成するものであるが、同一部材での形成が難しい場合等にあっては、径の異なる二つのフランジ部を別体で形成しておき、後にカシメ加工やブレージング加工等によって接合することも可能である。
次に可変機構3について説明する。このものはタービンフレーム2のボス部24の外周側に設けられ、排気流量を調節するために可変翼1を回動させるものであり、一例として図1に示すように、アッセンブリ内において実質的に可変翼1の回動を生起する回動部材31と、この回動を可変翼1に伝える伝達部材32とを具えて成るものである。回動部材31は、図示するように中央部分が開孔された略円板状に形成され、その周縁部分に可変翼1と同数の伝達部材32を等配して成るものである。また、この伝達部材32は、回動部材31に対し回転自在に取り付けられる駆動要素32Aと、可変翼1の基準面15にカシメ等によって固定状態に取り付けられる受動要素32Bとを具えて成るものであり、これら駆動要素32Aと受動要素32Bとが接続された係合状態で、回動が伝達される。具体的には四角片状の駆動要素32Aを、回動部材31に対して回転自在にピン止めするとともに、可変翼1の基準面15を受動要素32Bに圧入し、かしめるものである。ここで受動要素32Bには、予め駆動要素32Aを受け入れ得る略U字状部が形成されており、この部位に四角片状の駆動要素32Aを嵌め込むことにより、双方の係合を図りながら、回動部材31をボス部24に取り付けるものである。
なお複数の可変翼1を取り付けた初期状態において、これらを周状に整列させるにあたっては、各可変翼1と受動要素32Bとが、ほぼ一定の角度で取り付けられる必要があり、本実施例においては、主に可変翼1の基準面15がこの作用を担っている。また回動部材31を単にボス部24に嵌め込むだけでは、回動部材31がタービンフレーム2から僅かに離反した際、伝達部材32の係合が解除されてしまうことが懸念される。このため、これを防止すべくタービンフレーム2の対向側から回動部材31を挟むようにリング33等を設け、回動部材31に対してタービンフレーム2側への押圧傾向を付与するものである。
このような構成によって、エンジンが低速回転を行った際には、可変機構3の回動部材31を適宜回動させ、伝達部材32を介して軸部12に伝達するものであり、これにより、可変翼1を図1(a)に示すように回動させ、排気ガスGを適宜絞り込んで、排気流量を調節するものである。
本発明に係る可変翼1を適用した排気ガイドアッセンブリAの一例は、以上のように構成されて成り、以下、この可変翼1の製造方法について図4に基づき説明する。
本発明に係る可変翼1は、以下に示す(1) 〜(5) の工程によって、素形材Wから最終製品(可変翼1)に加工されるものである。
(1)素形材の準備工程P1
(2)長軸側の切削工程P2(長軸側の翼端切削も含む)
(3)短軸側の切削工程P3(短軸側の翼端切削も含む)
(4)二面切削工程(基準面切削工程)P4
(5)バレル研磨工程
(1)素形材の準備工程P1
この工程は、翼部11と軸部12とを合金素材で一体に具えた素形材W(可変翼1の原形)を準備する工程であり、ロストワックスに代表される精密鋳造法が適用される。もちろん、本工程においては、素形材Wが目的の可変翼1を実現し得るボリューム(体積)を有するように考慮された鋳造が行われるが、その後の切削加工を極力、少なくするように、素形材Wを最終製品状態(いわゆるニヤネットシェイプ状態)に近づけることが好ましい。
なお、素形材Wには、これを鋳型から取り出した段階で、例えば図4に示すように、翼端エッジに面取りC(ここでは一定傾斜の面取りC)が形成されるものであり、そのためには素形材Wを鋳造する鋳型(翼端エッジを形成する部位)に面取り加工を施しておくものである。これにより、鋳造と同時に素形材Wの翼端エッジに面取りCが形成でき、鋳造後に別途面取り加工を施す必要がなく、可変翼1をより効率的に製造することができるものである。
因みに、翼部11の翼端エッジに形成する面取りCとしては、必ずしも一定傾斜の面取りC(例えば45度の傾斜面)に限定されるものではなく、他にも図5(b)に示すように、断面視でR形状の面取りCを形成しても構わない。ここで、本明細書で「R形状」と記載したのは、翼端エッジに丸みを帯びた面取り加工を施す場合、面取りとしての丸み(ラウンド形状)が常に一定の径寸法に形成されるものだけでなく、例えば断面視で楕円形(長円形)のように徐々に径寸法が変化するものも含むためである。また、翼端エッジに形成する面取りCとしては、例えば一定の傾斜面(断面視では傾斜状の直線)から徐々にR形状に変化するもの、つまりC面とR面とを組み合わせたものなども含まれるものである。
(2)長軸側の切削工程P2
この工程は、主に長軸部12aの径寸法を所望の寸法に切削する工程であるが、長軸側の翼端切削も行う工程である。具体的には、可変翼1を回転させながら、バイトCTを長軸部12aの軸方向に沿って動かし、長軸部12aを所望の径寸法に切削する。このとき可変翼1が摺動段差14を有するものであれば、この摺動段差14も併せて形成される。その後、回転する可変翼1に対し、バイトCTを翼端面に沿って動かし、長軸側の翼端面を切削するものである。なお、本発明では、この翼端切削を行う際、既に素形材Wの段階で翼端エッジに一定傾斜やR形状の面取りCが形成されているため、翼端エッジにバリBが発生しないものである。従って、従来、本工程後に行っていたバリ除去工程(バフ研磨など)を廃止することができる。
因みに、翼部11の翼端エッジに形成する面取りCとしては、R形状の面取りCよりも一定傾斜の面取りCの方が好ましく、以下、これについて説明する。
例えば素形材Wの翼端エッジに一定傾斜の面取りCを形成した場合には、一例として図5(a)に示すように、切削位置(切削代)が変わっても、面取りCの傾斜角度(ここでは45度)が一定のため極めてバリBが発生し難いものである。これに対し、素形材Wの翼端エッジにR形状の面取りCを形成した場合には、一例として図5(b)に示すように、切削位置(切削代)が変わると、R面(R形状の面取りC)における接線方向と切削面との成す角度が変化するため(ばらつくため)、バリBの抑制効果も幾らか低下し得るものである。しかしながら、翼端エッジにR形状の面取りCを形成した場合であっても、切削位置の設定を適正に行えば、上記一定傾斜の面取りCを形成した場合と同様のバリ抑制効果が得られるものである。
(3)短軸側の切削工程P3
この工程は、一例として図4に併せ示すように、主に短軸部12bの径寸法を所望の寸法に切削する工程であるが、短軸側の翼端切削も行う工程である。また、本工程では、短軸部12bの先端の切削も行い、短軸部12bを所望長さに形成するものである。具体的には、例えば回転させたエンドミルEMに短軸部12bの先端を当てて、短軸部12bを所望長さに切削し、その後、可変翼1を回転させながら、バイトCTを短軸部12bの軸方向に沿って動かし、短軸部12bを所望の径寸法に切削する。このとき可変翼1が摺動段差14を有するものであれば、この摺動段差14も併せて形成される。その後、回転する可変翼1に対し、バイトCTを翼端面に沿って動かし、短軸側の翼端面を切削するものである。なお、本発明では、この翼端切削においても長軸側と同様に、素形材Wの段階で既に翼端エッジに一定傾斜やR形状の面取りCが形成されているため、翼端エッジにバリBが発生しないものである。従って、ここでも従来、本工程後に行っていたバリ除去工程を廃止することができる。
(4)二面切削工程(基準面切削工程)P4
この工程は、可変翼1が軸部12(長軸部12a)の先端に基準面15を具備する場合に行われる工程(切削工程)である。なお、ここでは基準面15の形成(切削)に伴い、長軸部12aの先端も切削するものであり、これにより長軸部12aが所望の長さ寸法に形成される。因みに、可変翼1がもともと基準面15を有しない場合には、上述した長軸側の切削工程P2において、長軸部12aの先端も切削され、当該部位を所望長さに形成するものである。
また、ここでは基準面15を、長軸部12aにおける対向する二平面として形成しているが、基準面15は先に述べたように必ずしもこれに限定されるものではなく、長方形断面や正方形断面を成す四平面として形成されてもよく、その場合には本工程は四面切削工程となる(基準面切削工程であることは変わらない)。
(5)バレル研磨工程
この工程は、二面切削工程P4を終了した可変翼1(素形材W)を全体的に表面研磨する工程であり、例えば可変翼1とメディアと呼ばれる添加剤とをバレル容器に入れ、バレル容器を回転もしくは振動させることによって、可変翼1とメディアとを衝突させて、可変翼1の表面を仕上げるものである。
1 可変翼
2 タービンフレーム
3 可変機構

1 可変翼
11 翼部
11a 前縁
11b 後縁
12 軸部
12a 長軸部
12b 短軸部
13 鍔部
14 摺動段差
15 基準面

2 タービンフレーム
21 フレームセグメント
22 保持部材
23 フランジ部
23A フランジ部(小)
23B フランジ部(大)
24 ボス部
25 受入孔
26 カシメピン
27 ピン孔

3 可変機構
31 回動部材
32 伝達部材
32A 駆動要素
32B 受動要素
33 リング

h 翼幅
A 排気ガイドアッセンブリ
B バリ(翼端切削時のバリ)
C 面取り
G 排気ガス
L 翼弦長
T 排気タービン
W 素形材
CT バイト
EM エンドミル

P1 素形材の準備工程
P2 長軸側の切削工程
P3 短軸側の切削工程
P4 二面切削工程(基準面切削工程)

Claims (3)

  1. 回動中心となる軸部と、実質的に排気ガスの流量を調節する翼部とを具え、
    エンジンから排出された比較的少ない排気ガスを適宜絞り込み、排気ガスの速度を増幅させ、排気ガスのエネルギで排気タービンを回し、この排気タービンに直結されたコンプレッサで自然吸気以上の空気をエンジンに送り込み、低速回転時であってもエンジンが高出力を発揮できるようにしたVGSタイプのターボチャージャに組み込まれる可変翼を製造する方法において、
    その工程は、少なくとも
    翼部と軸部とを一体に具えた可変翼の原形となる合金素材を得る、素形材の準備工程と、
    素形材の軸部を所望の径太さに加工し、また翼部の端面を所望の翼幅寸法に加工する切削工程とを具えて成り、
    前記可変翼の原形となる素形材には、翼端エッジに一定傾斜やR形状の面取りを形成しておき、この状態で翼端面の切削加工を行い、切削加工後のバリ除去工程を排除するものであり、
    且つ、前記素形材の準備工程では、素形材は、鋳造によって得るものであり、素形材を鋳込む鋳型に前記面取り加工を施し、素形材を鋳型から取り出した段階で、既に翼部の翼端エッジに面取りが形成されるようにしたことを特徴とする、VGSタイプターボチャージャにおける可変翼の製造方法。
  2. 前記素形材の翼端エッジに形成する面取りは一定傾斜の面取りであり、その角度は45度の傾斜面であることを特徴とする請求項記載の、VGSタイプターボチャージャにおける可変翼の製造方法。
  3. 前記可変翼は、翼部の両側に軸部を有する両軸タイプのものであることを特徴とする請求項1または2記載の、VGSタイプターボチャージャにおける可変翼の製造方法。
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