本発明を監視領域の出入り口付近を監視する画像センサに適用した実施の形態について、図面に基づいて説明する。画像センサは、監視領域への侵入者を検出対象として検出するセンサである。
先ず、本発明の第1の実施形態について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態である画像センサ1の構成を示した図である。画像センサ1は、照明部20、撮像制御部30、撮像部40、記憶部50、画像処理部60及び出力部70にて構成されている。本実施の形態では、画像センサ1として各部を一体的に説明するが、照明部20・撮像制御部30・撮像部40と、記憶部50・画像処理部60・出力部70とを別筐体とし、通信技術を駆使して必要な制御信号等を通信するようにしてもよい。その他の筐体構成を採用しても良い。
照明部20は、夜間等であっても撮像部40にて監視領域に生じた変化を画像から検出できるように、少なくとも撮像部40の撮像範囲を照らすことができる照明用LED等の照明装置である。照明部20は、撮像制御部30による制御にしたがい点灯または消灯する。本実際の形態では、照明用LEDに近赤外LEDを用いている。
撮像制御部30は、照明部20を消灯させた状態で撮像部40にて撮像した消灯入力画像51と照明部20を消灯させた状態で撮像部40にて撮像した点灯入力画像52を取得するために、照明部20の点灯または消灯の制御を行い、撮像部40の撮像タイミングや露光制御を実行する。なお、本実施の形態では、照明部20を点灯または消灯のいずれかに制御するものとしたが、画像に写った影の領域と人物の領域の輝度差が十分出る程度に照明部20の点灯強度を制御するようにしてもよい。
撮像部40は、光学系、CCD素子又はC−MOS素子等の撮像素子、光学系部品、アナログ/デジタル変換器等を含んで構成される。撮像部40は、撮像制御部30からの制御に基づき、監視すべき領域を順次撮像し、撮像したデジタル画像を記憶部50に出力する。
記憶部50は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の半導体メモリ、ハードディスク等のメモリ装置で構成される。記憶部50は、撮像部40及び画像処理部60からアクセス可能である。記憶部50に記憶される主な画像には、消灯入力画像51、点灯入力画像52、背景画像53がある。なお、図示していないが、記憶部50には、撮像部40の設置高・俯角などの各種カメラパラメータ、画像センサ1の各処理を実現するための各種プログラムやパラメータなども記憶している。
ここで、記憶部50に記憶する各種画像について説明する。消灯入力画像51は、照明部20を消灯させた状態で撮像部40にて撮像した画像であって、現時点の処理対象となる画像である。消灯入力画像51は、撮像部40から撮影される都度に記憶部50に記憶される。点灯入力画像52は、照明部20を点灯させた状態で撮像部40により撮像した画像であって、現時点の処理対象となる画像である。消灯入力画像51及び点灯入力画像52は、撮像部40から撮影される都度に記憶部50に記憶される。
背景画像53は、過去の点灯入力画像52のうち侵入者等が抽出されていない画像であり、後述する画像処理部60の背景画像生成手段66にて適宜更新される。
画像処理部60は、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)又はMCU(Micro Control Unit)等の演算装置により構成され、記憶部50に記憶している各種プログラムを読み出して実行する。画像処理部60は、撮像部40で撮影された画像を順次処理する。なお、処理する画像は、1フレーム毎に撮影時間順に処理してもよいし、数フレームおきに処理を行ってもよい。
画像処理部60は、判定領域設定手段61、暗変化判定手段62、点消灯差分手段63、特徴量算出手段64、第1判定手段65及び背景画像生成手段66の各モジュールから構成されている。
判定領域設定手段61は、記憶部50に記憶された点灯入力画像52中に、侵入者が存在するか否かを判定する対象となる判定領域を設定する。具体的には、先ず、点灯入力画像52と背景画像53との間にて輝度差分の処理を実行し、所定の閾値以上の差分のある変化領域を抽出する。
次に、判定領域設定手段61は、抽出された変化領域に対して、カメラパラメータ等を用いて算出される物体の大きさや位置関係を考慮して、単一物体(一人の人物)による変化領域として統合した領域を判定領域として設定する。なお、判定領域の設定方法は、これに限られるものではなく、時間的に隣り合う点灯入力画像52のフレーム間差分処理によって抽出した領域を判定領域として設定する方法、検出対象である人物画像を学習した学習識別器によって人物領域とされた領域を判定領域として設定する方法、人物テンプレートとのマッチング処理にて類似するとされた領域を判定領域として設定する方法など種々の方法を採用してもよい。
暗変化判定手段62は、点灯入力画像52における判定領域において、影や黒服人物が監視領域2に出現した場合に生じる「暗くなる変化」が生じているかを判定する手段である。具体的には、判定領域毎に点灯入力画像52が背景画像53よりも閾値以上暗くなったか否かを判定し、暗くなった領域を暗変化領域として抽出する。
なお、この閾値は、影や黒服人物によって輝度が暗く変化する量を実験的または経験的に定めた値であり、例えば画像の輝度レベルが0〜255の階調で表現されている場合、例えば輝度値20に設定する。
また、本実施の形態では、「暗くなる変化」が生じているかを判定する際に、点灯入力画像52の輝度値と背景画像53の輝度値を比較しているが、点灯入力画像52の輝度値と所定の基準値を比較するようにしてもよい。この場合、所定の基準値は、影や黒服人物によって輝度が暗く変化したことを点灯入力画像52との比較によって判定可能な値を実験的または経験的に定めればよい。
点消灯差分手段63は、判定領域について、照明部20の点灯時と消灯時で明るさにどの程度の変化が生じているかを求める手段である。具体的には、先ず、暗変化判定手段62で抽出した暗変化領域における消灯入力画像51と点灯入力画像52の差分の平均値である点消灯差分値を算出する。かかる点消灯差分値は、判定領域が影であれば大きな値となり、黒服人物であれば比較的小さな値となる。これは、照明部20が黒服人物に照射した場合の画像における輝度変化は、光を吸収するため小さいが、影であれば背景物にもよるが光を吸収することが少ないので比較的大きくなるので、黒服人物と影とを区別する有力な特徴量となる。点消灯差分手段63は、特徴量算出手段64を介して後述する影属性値要素として、算出した点消灯差分値を第1判定手段65に出力する。本実施の形態では、暗変化領域と判定された判定領域全体について点消灯差分値を算出したが、判定領域における暗変化した画素について点消灯差分値を算出するようにしてもよい。なお、本実施の形態では、発明を明確にするために、点消灯差分手段63を特徴量算出手段64と分けて説明しているが、特徴量算出手段64に含め、その一つの特徴を算出する手段に位置づけられる。
特徴量算出手段64は、各判定領域に対して、判定領域が人物である可能性を示す特徴量である人属性値要素と、影である可能性を示す特徴量である影属性値要素を算出する手段である。
特徴量算出手段64は、人属性値要素として、人属性値要素1「実面積」、人属性値要素2「長短軸比」、人属性値要素3「長軸角度絶対値」を判定領域から算出する。
「実面積」は、判定領域に外接する矩形について、その画像内の位置と記憶部50に記憶された設置高・俯角情報等のカメラパラメータに基づいて実空間での高さ×幅から面積を算出した値であり、判定領域が人物の大きさとしての妥当性を示す。「長短軸比」は、判定領域を楕円近似したときの画像内の短軸長と長軸長との比(短軸長÷長軸長)を算出した長短軸比であり、判定領域が人物の形状としての妥当性を示す。「長軸角度絶対値」は、判定領域を楕円近似したときに、水平方向(X軸方向)を0度とした場合の長軸の傾きを算出した長軸角度絶対値であり、判定領域が人物の姿勢としての妥当性を示す。本実施の形態では、説明を簡単にするために、3つの人属性値要素にて説明したが、これに限られるものではなく、種々の特徴量を利用しても良い。
また、特徴量算出手段64は、影属性値要素として、影属性値要素1「背景画像平均値」、影属性値要素2「暗変化領域比率」を判定領域から算出する。「背景画像平均値」は、判定領域に対応する背景画像53の輝度値の平均値を算出したものである。影は背景画像53の輝度が高い、すなわち背景が明るい(光の反射率が高い)ほど点灯入力画像52との輝度差が大きくなるので、判定領域の影としての妥当性を示している。「暗変化領域比率」は、暗変化領域の面積を判定領域の面積で除算したものであり、影は判定領域中で暗く変化するので、その割合は判定領域の影としての妥当性を示している。
特徴量算出手段64は、算出した人属性要素及び影属性要素を第1判定手段65に出力する。なお、特徴量算出手段64は、点消灯差分手段63が算出した点消灯差分値を影属性値要素3として第1判定手段65に出力する。
第1判定手段65は、特徴量算出手段64から入力された人属性値要素1、2、3を用いて、判定領域毎に「人らしさ」を表す人属性値(検出対象属性)を算出し、特徴量算出手段64から入力された影属性値要素1、2、3を用いて、判定領域毎に「影らしさ」を表す影属性値(非検出対象属性)の算出処理を行う。そして、各属性値を用いて、判定領域が人物によるものか否かの判定を行う。
特徴量算出手段64から入力された人属性値要素1「実面積」、人属性値要素2「長短軸比」、人属性値要素3「長軸角度絶対値」をそれぞれ図5に示すメンバーシップ関数に適用して人属性値を算出する。ここで、図5に示すメンバーシップ関数について説明する。ここでは、特徴量を人物である可能性が高いほど1に近づき、低いほど0に近づくように正規化した人属性値要素として求めている。
人属性値要素1「実面積」は、4000平方センチメートル以下は人物の可能性が低いとして「0」、4000平方センチメートル〜6000平方センチメートルは直線的に人物の可能性を0から1の間で高くし、6000平方センチメートル以上では人物の可能性が高いとして「1」とするメンバーシップ関数である。
人属性値要素2「長短軸比」は、0.5以下の場合は、太った人物を含めて人物の可能性が高く「1」とし、0.5から0.75になるほど人物の形状として崩れるので直線的に人物の可能性を1から0の間で低くなるようにし、0.75以上の場合はもはや人物の形状に程遠いとして「0」とするメンバーシップ関数である。
人属性値要素3「長軸角度絶対値」は、50度以下の場合は、歩行等している人物である可能性が低く「0」とし、50度から75度に近づくほど歩行等している人物の可能性が1から0の間で高くなるようにし、75度以上の場合は歩行等する人物の可能性が高いとして「1」とするメンバーシップ関数である。なお、本実施の形態にて紹介する人属性値要素のメンバーシップ関数は本実施例の設定であって、他の実施例においては、実験・経験・設置場所・検出対象によって適宜設計されるものである。
第1判定手段65は、複数の人属性値要素を用いて、判定領域毎に「人らしさ」を表わす人属性値を算出する。すなわち、人属性値要素を乗算して、人属性値=人属性値要素1×人属性値要素2×人属性値要素3として求める。人属性値の算出は、乗算に限られるものではなく、各要素の重み付け和とするなど、目的に応じて種々の算出方法を用いても良い。
次に、影属性値を算出するためのメンバーシップ関数について説明する。特徴量算出手段64から入力された影属性値要素1「背景画像平均値」、影属性値要素2「暗変化領域比率」、影属性値要素3「点消灯差分値」をそれぞれ図4に示すメンバーシップ関数に適用して影属性値を算出する。ここでは、特徴量を影である可能性が高いほど1に近づき、低いほど0に近づくように正規化した影属性値要素として求めている。
影属性値要素1「背景画像平均値」は、影が撮影された影領域は、背景画像の輝度値が低いほど変化領域として現れにくいことを利用し、背景画像平均値が0〜30では高くなるほど直線的に影の可能性を0から1の間で高くし、30以上は影の可能性が高いとして「1」とするメンバーシップ関数である。本実施の形態では、前述したとおり、画像の輝度階調を0〜255に分解して表現している。これは、影であれば、背景が暗すぎるところに現われることは少ないので、背景画像平均値が小さいほど影属性値要素1が小さな値になることを利用したものである。
影属性値要素2「暗変化領域比率」は、判定領域のうち輝度が暗く変化した領域の度合いであり、0.7以下であれば人物の服装等による部分的な影響によって暗く変化した可能性があり影である可能性を低く「0」とし、0.7から1.0まで直線的に影の可能性を0〜1の間で高くなるようにしたメンバーシップ関数である。これは、影であれば判定領域の多くの部分が背景画像よりも暗く変化するので、暗変化領域比率が高いほど影属性値要素2が大きな値になることを利用したものである。
影属性値要素3「点消灯差分値」は、影領域は輝度差が30以下の場合は、黒服人物の可能性が高いので影である可能性が低く「0」とし、30から65に近づくほど黒服人物より影である可能性が0から1の間で直線的に高くなるようにし、65以上の場合は影である可能性が高いとして「1」とするメンバーシップ関数である。本実施の形態では、前述したとおり、画像の輝度階調を0〜255に分解して表現している。これは、光が遮られることで暗く写る影ならば照明部20の光を反射し、そもそも光を反射しにくいため暗く写る「黒い物体」ならば照明部20の光も反射しにくいので、点消灯差分値が大きいほど影属性値要素3が大きな値になることを利用したものである。この点消灯差分値を用いることにより、影と黒服人物を区別することができるようになる。
なお、本実施の形態にて紹介する影属性値要素のメンバーシップ関数は本実施例の設定であって、他の実施例においては、実験・経験・設置場所・検出対象・照明部20の出力などによって適宜設計されるものである。
第1判定手段65は、複数の影属性値要素を用いて、判定領域毎に「影らしさ」を表わす影属性値を算出する。すなわち、影属性値要素を乗算して、影属性値=影属性値要素1×影属性値要素2×影属性値要素3として求める。なお、本実施の形態では影属性値を用いているが、影属性値を用いることなく、影属性値が小さいほど人属性値を大きくするようにしてもよい。なお、影属性値の算出は、乗算に限られるものではなく、各要素の重み付け和とするなど、目的に応じて種々の算出方法を用いても良い。
第1判定手段65は、判定領域毎に、求めた人属性値と影属性値にもとづき、すなわち人属性値が大きく、且つ影属性値が小さい判定領域を「人物」と判定する。具体的には、人属性値が0.9以上、且つ影属性値が0.1以下のときに「人物」と判定する。他方、この条件を満たさない場合は、判定領域を「人物」とは判定しない。また、一組の点灯入力画像52と消灯入力画像51にて判定するのではなく、判定領域を順次追跡して、時系列に入力される複数組分の人属性値および影属性値を蓄積して総合的に判定を行うようにしてもよい。
背景画像生成手段66は、撮像部40にて撮影された点灯入力画像52と第1判定手段65の判定結果を用いて、背景画像53を更新する。具体的には、背景画像生成手段66は、人物が存在していないと第1判定手段65が判定した点灯入力画像52を記憶部50の背景画像53として上書き更新して記憶する。本実施の形態では、第1判定手段65にて人物が存在していないと判定する毎に更新しているが、数フレーム毎や一定時間毎に取得した点灯入力画像52にて更新するようにしても良い。また、判定領域設定手段61にて変化領域が所定面積以下である点灯入力画像52にて更新するようにしてもよい。
出力部70は、第1判定手段65で監視領域内に侵入者がいると判定された場合、異常信号を警報部(図示しない)に出力し、ブザーの鳴動や警告灯の表示などにより周囲に異常の発生を通知する構成とすることができる。また、インターネット等の通信網を介して遠隔の監視センタ(図示しない)に監視センタに出力することによって、異常の発生を監視センタに通知する構成としてもよい。
次に、本実施形態の画像センサ1の動作を説明する。図2は、画像センサ1が設置された監視領域2とその周辺の夜間における状況を模式的に示した図である。図2(a)は、塀に囲まれている監視領域2内に侵入者3が入り、自動車5のヘッドライトによる光6が監視領域2に差し込み、侵入者3の影4が出ている状況を示している。なお、侵入者3は、黒い服を着用している。図2(b)は、監視領域2の外側に通行人7が所在し、自動車5のヘッドライトによる光6により、通行人7の影8が監視領域2に入っている状況を示している。また、画像センサ1は、図2に示すように監視領域2への侵入経路として想定される塀が開口している領域を撮像部40にて撮像できるように設置されている。
図6、図3及び図4を参照して、本実施の形態の画像センサ1の処理を説明する。なお、図6は、画像処理のフローチャート、図3は判定領域、及び暗変化領域の抽出方法の説明図、図4は、点消灯差分値のイメージを説明する図である。先ず、ステップS1では、撮像部40にて撮影した画像の取得を行う。取得する画像は、消灯入力画像51と点灯入力画像52の2種類である。例えば、1/10秒毎に交互に取得し、2種類の画像の組が揃ったところで以降の処理を行う。
ステップS2では、判定領域設定手段61において、点灯入力画像52と、記憶部50に記憶されている背景画像53との差分の絶対値を閾値処理し、点灯入力画像52中の変化領域を2値画像として抽出する。点灯入力画像52と背景画像53との二値化差分処理を実行して変化領域(図示しない)を抽出する。
ステップS3では、判定領域設定手段61にて、人物の大きさ等を考慮し、一人の人物による変化領域が纏まるようにラベル付けを順次行い判定領域として設定する。図3(a)は、図2(a)に示す状況での画像であり、図3(b)は、図2(b)に示す状況での画像である。図3(a)の例では、ステップS2にて抽出した変化領域から判定領域9および判定領域10を抽出している。図3(b)の例では判定領域11を抽出している。
以降、ステップS4からステップS10では、ステップS3にて抽出された判定領域毎にステップS5からS9までの処理を繰り返す。
ステップS5では、暗変化判定手段62にて、判定領域について点灯入力画像52が背景画像53より閾値(例えば輝度値20)以上暗くなる領域を暗変化領域(2値)として抽出する。図3(a)の例では、ステップS3にて抽出した判定領域9に対して暗変化領域12、判定領域10に対して暗変化領域13をそれぞれ抽出している。図3(b)の例では判定領域11に対して暗変化領域14を抽出している。
ステップS6では、点消灯差分手段63にて、暗変化判定手段62で抽出した暗変化領域における点消灯差分値を算出する。そして、点消灯差分手段63は、影属性値要素3として算出した点消灯差分値を特徴量算出手段64に出力する。図4(a)は、図2(a)に示す状況での画像であり、図4(b)は、図2(b)に示す状況での画像である。図4に示した点消灯差分値のイメージ図は、暗変化領域について、点灯入力画像52と消灯入力画像51の輝度差が所定値以上である領域を白色、それ以外の領域を黒色で表現している。すなわち、暗変化領域がイメージ図の白色の領域に重なるほど点消灯差分手段63にて算出される点消灯差分値は大きな値になることを示している。図4(a)の例では、暗変化領域12の位置は、イメージ図で黒色の領域になっており、暗変化領域13の位置は、イメージ図で白色の領域になっている。図4(b)の例では、暗変化領域14の位置は、イメージ図で白色の領域になっている。すなわち、暗変化領域13、14について算出された点消灯差分値は、暗変化領域12について算出された点消灯差分値より大きい値になる。
ステップS7では、判定領域毎に、人属性値要素1,2,3および影属性値要素1,2を算出する。すなわち、特徴量算出手段64にて、人属性値要素1の「実面積」、人属性値要素2の「長短軸比」、人属性値要素3の「長軸角度絶対値」、影属性値要素1の「背景画像平均値」、影属性値要素2の「暗変化領域比率」をそれぞれ算出する。
特徴量算出手段64は、算出した人属性値要素1,2,3及び影属性値要素1,2,3を第1判定手段65に出力する。
ステップS8では、第1判定手段65は、人属性値要素1,2,3および影属性値要素1,2,3を図5にて説明した各メンバーシップ関数に代入し、人属性値および影属性値を算出する。
ステップS9では、第1判定手段65は、算出された各属性値を用いて、判定領域が人物であるかどうか判定する。具体的には、人属性値が大きく、影属性値が小さいと人物と判定する。ステップS5〜ステップS9の処理を抽出した全ての判定領域に対して実行し、判定領域が検出対象である人物(侵入者)であるか否かを判定する。すべての判定領域について判定が終了するとステップS11に処理を移行させる。
ステップS11では、背景画像生成手段66は、記憶部50に記憶されている背景画像53を更新する。上述したように、背景画像生成手段66による更新は、監視領域に人物がいると判定された場合には背景更新を行わず、人物がいないと判定された場合には背景更新を行う。
ステップS12では、第1判定手段65にて、人物と判定された判定領域があった場合、ステップS13に移行させ、そうでない場合にはステップS1に処理を戻る。ステップS13では、出力部70は、第1判定手段65で監視領域内に侵入者(人物)がいると判定されたことを示す情報を画像センサ1の外部の警報装置に出力する。外部の警報装置では出力結果に基づき、警報などを発する。
以上のように、本発明によれば、夜間など監視領域が暗い場合に、影と影以外の黒い物体(例えば、黒服人物)を精度良く区別することができる。
次に、本発明の第二の実施形態を説明する。図7は、本発明の第2の実施形態である画像センサ1aの構成を示した図である。第二の実施形態では、第一の実施形態と構成および処理が部分的に異なる。以下に、第1の実施形態と異なる構成、処理について詳述する。
先ず、記憶部50aは、消灯入力画像51、点灯入力画像52、背景画像53、に加えて、外部光無点灯画像54、外部光無消灯画像55を記憶している。外部光無点灯画像54は、過去に照明部20を点灯して撮像した画像であって、侵入者等が抽出されておらず、照明部20からの光以外である外部光による輝度変化すなわち照明変動する直前の画像である。外部光無消灯画像55は、過去に照明部20を消灯して撮像した画像であって、侵入者等が抽出されておらず、照明部20からの光以外である外部光による輝度変化すなわち照明変動する直前の画像である。外部光無点灯画像54および外部光無消灯画像55は、後述する画像処理部60aの外部光無画像生成手段69にて適宜更新される。
画像処理部60aは、判定領域設定手段61、暗変化判定手段62、外部光有無差分手段67、特徴量算出手段64a、第2判定手段68、背景画像生成手段66及び外部光無画像生成手段69の各モジュールから構成されている。
外部光有無差分手段67は、判定領域について、照明部20の点灯時と消灯時の明るさの変化をヘッドライトの光6のような外部光の有る場合と無い場合で比較する手段である。
具体的には、先ず、外部光有無差分手段67は、第1の実施形態と同様に暗変化判定手段62で抽出した暗変化領域における消灯入力画像51と点灯入力画像52の差分の平均値である点消灯差分値を算出する。また、暗変化判定手段62で抽出した暗変化領域における外部光無点灯画像54と外部光無消灯画像55の差分の平均値である外部光無差分値を算出する。そして、外部光無差分値と点消灯差分値の比率を外部光有無差分比率として算出する。外部光有無差分比率は、点消灯差分値を外部光無差分値で除算して求める。かかる外部光有無差分比率は、判定領域が影であれば点消灯差分値と外部光無差分値は近い値となるため1に近くなり、黒服人物であれば点消灯差分値と外部光無差分値は近い値にならないため1に近くならない。
以下に、外部光有無差分比率の原理を説明する。先ず、影は光が遮られることで生じるため、外部光による影の輝度値とその影に対応するその外部光が入射していないときの輝度値はほぼ等しくなる。一方、黒服人物は物体であるので、外部光が入射したときの黒服人物の輝度値とその黒服人物に対応するその外部光が入射していないときの輝度値は等しくならない。さらに、照明部20が黒服人物に照射した場合の画像における輝度変化は、光を吸収するため小さいが、影であれば背景物にもよるが光を吸収することが少ないので比較的大きくなる。したがって、点消灯差分値は、黒服人物では小さく、影では大きくなる。また、侵入者、新たな外部光が入射していない監視領域に照明部20が光を照射した場合と照射しない場合の画像における輝度変化は、照明部20による光の有無による変化となる。つまり、外部光無差分値は、照明部20に起因する輝度変化を示すこととなる。したがって、外部光無差分値と点消灯差分値の比率である外部光有無差分比率は、照明部20に起因する輝度変化量に対する黒服人物と影との違いに起因する輝度変化量の比率で示すので単に点消灯差分値を用いるよりも黒服人物と影で顕著に異なる値となり、黒服人物と影とを区別する有力な特徴量となる。
外部光有無差分手段67は、特徴量算出手段64aを介して後述する影属性値要素として、算出した外部光有無差分比率を第2判定手段68に出力する。本実施の形態では、暗変化領域と判定された判定領域全体について外部光有無差分比率を算出したが、判定領域における暗変化した画素について外部光有無差分比率を算出するようにしてもよい。なお、本実施の形態では、発明を明確にするために、外部光有無差分手段67を特徴量算出手段64aと分けて説明しているが、特徴量算出手段64aに含め、その一つの特徴を算出する手段に位置づけられる。
特徴量算出手段64aは、第1の実施形態の特徴量算出手段64と同様に人物属性値要素として、人属性値要素1「実面積」、人属性値要素2「長短軸比」、人属性値要素3「長軸角度絶対値」を判定領域から算出する。また、特徴量算出手段64aは、第1の実施形態と同様に影属性値要素として、影属性値要素1「背景画像平均値」、影属性値要素2「暗変化領域比率」を判定領域から算出する。そして、特徴量算出手段64aは、算出した人属性要素及び影属性要素を第2判定手段68に出力する。なお、特徴量算出手段64aは、外部光有無差分手段67が算出した外部光有無差分比率を影属性値要素4として第2判定手段68に出力する。
第2判定手段68は、第1の実施形態の第1判定手段65と同様に特徴量算出手段64aから入力された人属性値要素1、2、3を用いて、判定領域毎に「人らしさ」を表す人属性値(検出対象属性)を算出する。また、第2判定手段68は、特徴量算出手段64aから入力された影属性値要素1、2、4を用いて、判定領域毎に「影らしさ」を表す影属性値(非検出対象属性)の算出処理を行う。そして、第1判定手段65と同様に各属性値を用いて、判定領域が人物によるものか否かの判定を行う。
図8は、本実施の形態で用いる人属性値および影属性値を算出するためのメンバーシップ関数である。本実施の形態では、第2判定手段68は、影属性値要素4「外部光有無差分比率」を影属性値の算出に用いる点のみが第1判定手段65と異なるため、以下では、影属性値要素4「外部光有無差分比率」について図8のメンバーシップ関数を説明する。
影属性値要素4「外部光有無差分比率」は、影領域は外部光有無差分比率が0.7以下の場合は、黒服人物の可能性が高いので影である可能性が低く「0」とし、0.7から1に近づくほど黒服人物より影である可能性が0から1の間で直線的に高くなるようにし、1以上の場合は影である可能性が高いとして「1」とするメンバーシップ関数である。
なお、本実施の形態にて紹介する影属性値要素のメンバーシップ関数は本実施例の設定であって、他の実施例においては、実験・経験・設置場所・検出対象・照明部20の出力などによって適宜設計されるものである。
第2判定手段68は、第1判定手段65と同様に複数の影属性値要素を用いて、判定領域毎に「影らしさ」を表わす影属性値を算出する。すなわち、影属性値要素を乗算して、影属性値=影属性値要素1×影属性値要素2×影属性値要素4として求める。なお、本実施の形態では影属性値を用いているが、影属性値を用いることなく、影属性値が小さいほど人属性値を大きくするようにしてもよい。なお、影属性値の算出は、乗算に限られるものではなく、各要素の重み付け和とするなど、目的に応じて種々の算出方法を用いても良い。
なお、図示はしないが、影属性値要素4に変えて別の影属性値要素を用いてもよい。具体的には、別の影属性値要素として、図5に示した第1の実施形態の影属性値要素3「点消灯差分値」の閾値を外部光無差分値に応じて可変したメンバーシップ関数を設定する。この場合、外部光無差分値をRとし、図5に示す点消灯差分値のメンバーシップ関数を輝度差が(R×0.8)以下の場合は、黒服人物の可能性が高いので影である可能性が低く「0」とし、(R×0.8)からRに近づくほど黒服人物より影である可能性が0から1の間で直線的に高くなるようにし、R以上の場合は影である可能性が高いとして「1」とすればよい。
背景画像生成手段66は、第1の実施形態と同様に撮像部40にて撮影された点灯入力画像52と第2判定手段68の判定結果を用いて、背景画像53を更新する。
外部光無画像生成手段69は、外部光有無差分手段67で用いられる外部光無点灯画像54、外部光無消灯画像55を記憶部50aに記憶する。具体的には、外部光無画像生成手段69は、人物が存在していないと第2判定手段68が判定した点灯入力画像52と、その点灯入力画像52と組になって処理対象とされた消灯入力画像51を記憶部50aに記憶する。次のフレーム以降は、第2判定手段68にて人物が存在していないと判定される毎に記憶部50aに記憶した人物が存在していない消灯入力画像51および点灯入力画像52を更新する。なお、本画像センサ1の初期起動時には人物が存在していない消灯入力画像51および点灯入力画像52が記憶部50aに保持されてないため、初期起動時には予め照明部20を消灯・点灯させて人物の存在しない監視領域を撮像した画像を消灯入力画像51および点灯入力画像52として記憶部50aに保持する処理を行う。また、外部光無画像生成手段69は、処理対象の点灯入力画像52について、照明部20からの光以外の新たな外部光による輝度変化の有無すなわち照明変動の有無を検知する。そして「照明変動の有」と判定された点灯入力画像52が撮像される以前に撮像された画像であって、記憶部50aに保持されている人物が存在していない消灯入力画像51および消灯入力画像51をそれぞれ外部光無点灯画像54、外部光無消灯画像55として記憶部50aに記憶する。外部光無画像生成手段69は、「照明変動の有」と判定する毎に記憶部50aに記憶している外部光無点灯画像54、外部光無消灯画像55を更新する。なお、本画像センサ1の初期起動時には外部光無点灯画像54、外部光無消灯画像55が記憶部50aに保持されてないため、初期起動時に予め照明部20を消灯・点灯させて外部光がなく人物の存在しない夜間の監視領域を撮像した画像を外部光無点灯画像54、外部光無消灯画像55として記憶部50aに保持する処理を行う。本実施の形態では、画像処理によって特定された外部光無点灯画像54、外部光無消灯画像55を記憶部50aに記憶しているが、照明部20を消灯・点灯させて外部光がなく人物の存在しない夜間の監視領域を撮像した画像を撮像した時刻と対応付けて予め用意し、点灯入力画像52の撮像時刻に対応する撮像時刻の予め用意した画像を外部光無点灯画像54、外部光無消灯画像55として順次記憶部50aに記憶・更新するような構成にしてもよい。
外部光無画像生成手段69の照明変動検知について説明する。外部光無画像生成手段69は、点灯入力画像52の平均輝度値を毎フレーム算出し、その値を数フレーム分、記憶部50aに保持する。そして、現在処理対象となっている点灯入力画像52の平均輝度値と保持している過去の平均輝度値の平均値とを比較し、算出した平均輝度値から過去の平均輝度値の平均値を減算した値が所定値以上となったときに照明変動が有ったことを検知する。この所定値は、ヘッドライトの光など照明部20からの光以外である外部光によって輝度が明るく変化する量を実験的または経験的に定めた値に設定する。記憶部50aに平均輝度値を保持する際、外部光無画像生成手段69は、「照明変動無し」と判定された点灯入力画像52の平均輝度値を算出する毎に保持してある平均輝度値のうち時系列順に古いものから削除し、算出した平均輝度値を時系列順に最も新しい輝度平均値として記憶する。なお、本画像センサ1の初期起動時には数フレーム分の輝度平均値が記憶部50aに保持されてないため、初期起動時に予め人物の存在しない監視領域を撮像した画像の輝度平均値を数フレーム分、記憶部50aに保持する処理を行う。本実施の形態では、画像処理によって照明変動の有無を検知しているが、照度計の計測値を用いて照明変動の有無を検知するようにしてもよい。具体的には、監視領域内の照度を計測する照度計を設け、外部光無画像生成手段69は、照度計から、現在処理対象となっている点灯入力画像52の撮像時刻に照度計にて計測された照度を入力して、計測した照度が所定値以上であれば「照明変動有り」を検知するようにしてもよい。
出力部70は、第1の実施形態と同様に第2判定手段68で監視領域内に侵入者がいると判定された場合、異常信号を警報部(図示しない)に出力し、ブザーの鳴動や警告灯の表示などにより周囲に異常の発生を通知する。
次に、第2の実施形態の画像センサ1の処理を説明する。本実施の形態の処理は、図6に示したフローチャートのステップS1、ステップS2、ステップS3、ステップS4、ステップS10、ステップS5について、前述した第1の実施形態の処理と同様であるのでこれらの処理については、説明を省略する。以下、第1の実施形態と異なる処理について説明する。
先ず、ステップS6では、外部光有無差分手段67は、記憶部50aから外部光無点灯画像54、外部光無消灯画像55を読み出し、暗変化判定手段62で抽出した暗変化領域における外部光有無差分比率を算出する処理を行う。そして、外部光有無差分手段67は、影属性値要素4として算出した外部光有無差分比率を特徴量算出手段64に出力する。
ステップS7では、前述した第1の実施形態と同様に判定領域毎に、人属性値要素1,2,3および影属性値要素1,2を算出する。そして、特徴量算出手段64aは、算出した人属性値要素1,2,3及び影属性値要素1,2,4を第2判定手段68に出力する。
ステップS8では、第2判定手段68は、人属性値要素1,2,3および影属性値要素1,2,4を図8にて説明した各メンバーシップ関数に代入し、人属性値および影属性値を算出する。
ステップS9では、第2判定手段68は、算出された属性値を用いて、判定領域が人物であるかどうか判定する。具体的には、人属性値が大きく、影属性値が小さいと人物と判定する。ステップS5〜ステップS9の処理を抽出した全ての判定領域に対して実行し、判定領域が検出対象である人物(侵入者)であるか否かを判定する。すべての判定領域について判定が終了するとステップS11に処理を移行させる。
ステップS11では、背景画像生成手段66は、記憶部50aに記憶されている背景画像53を更新する。上述したように、背景画像生成手段66のよる更新は、監視領域に人物がいると判定された場合には背景更新を行わず、人物がいないと判定された場合には背景更新を行う。
ステップS12では、第2判定手段68にて、人物と判定された判定領域があった場合、ステップS13に移行させる。ステップS13では、出力部70は、第2判定手段68で監視領域内に侵入者(人物)がいると判定されたことを示す情報を画像センサ1の外部の警報装置に出力し、ステップS14(図示しない)に移行する。外部の警報装置では出力結果に基づき、警報などを発する。第2判定手段68にて、人物と判定された判定領域がなかった場合、ステップS14(図示しない)に移行する。
ステップS14では、外部光無画像生成手段69は、処理対象の点灯入力画像52について、照明部20からの光以外である外部光による輝度変化の有無すなわち照明変動の有無を検知する。ステップS14で「照明変動有り」とされた場合、記憶部50aに記憶されている人物が存在していないと第2判定手段68が判定した点灯入力画像52と、その点灯入力画像52と組になって処理対象とされた消灯入力画像51をそれぞれ外部光無点灯画像54、外部光無消灯画像55として記憶部50aに記憶し、ステップS1に移行する。
ステップS14で「照明変動無し」とされた場合、外部光無画像生成手段69は、S14の照明変動検知処理で用いる情報として、処理対象である点灯入力画像52の平均輝度値を算出し、その値を記憶部50aに記憶・更新する。その後、処理をステップS15(図示しない)に移行する。
ステップS15では、外部光無画像生成手段69は、人物が存在していないと第2判定手段68が判定した点灯入力画像52と、その点灯入力画像52と組になって処理対象とされた消灯入力画像51を記憶部50aに記憶・更新し、ステップS1に移行する。
以上のように、本発明によれば、夜間など監視領域が暗い場合に、影と影以外の黒い物体(例えば、黒服人物)を精度良く区別することができる。