JP6092735B2 - 表面被覆工具 - Google Patents

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Description

本発明は基体の表面に被覆層が成膜されている表面被覆工具に関する。
現在、切削工具や耐摩部材、摺動部材といった耐摩耗性や摺動性、耐欠損性を必要とする部材では、超硬合金やサーメット等の焼結合金、ダイヤモンドやcBN(立方晶窒化硼素)の高硬度焼結体、アルミナや窒化珪素等のセラミックスからなる基体の表面に被覆層を成膜して、耐摩耗性、摺動性または耐欠損性を向上させた表面被覆工具が使われている。
また、イオンプレーティング法やスパッタリング法を用いて成膜されるTiやAlを主成分とする窒化物からなる被覆層が盛んに研究されており、工具寿命を延命させるための改良が続けられている。
例えば、特許文献1では、基体の表面に、Ti1−a−b−c−dAlSi(C1−x)(ただし、MはNb、Mo、Ta、Hf、Yから選ばれる1種以上、0.45≦a≦0.55、0.01≦b≦0.1、0.01≦c≦0.05、0.01≦d≦0.1、0≦x≦1)層を被覆した切削工具が開示されている。
特開2009−050997号公報
しかしながら、特許文献1に記載された被覆層を含有する切削工具では、高速切削のような被覆層の温度が高くなる加工条件では、被覆層に被削材が溶着しやすくなる場合があり、この場合には、溶着した部分から被覆層が急激に摩耗することがあった。
本発明は上記課題を解決するためのものであり、その目的は、耐摩耗性および耐欠損性に優れるとともに、耐溶着性に優れた表面被覆工具を提供することにある。
本発明の表面被覆工具は、基体の表面に被覆層を具備する表面被覆工具であって、前記被覆層が、Ti1−a−b−c−d−eAlSi(C1−x)(ただし、MはNb、Mo、Ta、Hf、Yから選ばれる1種以上、0.45≦a≦0.6、0.01≦b≦0.1、0.01≦c≦0.1、0.01≦d≦0.1、0.01≦e≦0.2、0≦x≦1)からなるとともに、前記被覆層中に、金属Wを含有する第1分散相と、金属Vを含有する第2分散相とが点在しているものである。
本発明の表面被覆工具は、被覆層の組成が、Ti1−a−b−c−d−eAlSi(C1−x)(ただし、MはNb、Mo、Ta、Hf、Yから選ばれる1種以上、0.45≦a≦0.6、0.01≦b≦0.1、0.01≦c≦0.1、0.01≦d≦0.1、0.01≦e≦0.2、0≦x≦1)からなる。この組成領域では被覆層が高温になっても耐摩耗性が劣化しにくく、高い耐摩耗性を維持できる。また、被覆層の耐欠損性が高い。しかも、被覆層の被加工物に対する耐溶着性が高い。これにより、
溶着による摩耗の急激な進行も抑制できる。さらに、被覆層の中には、金属Wを含有する第1分散相と、金属Vを含有する第2分散相とが点在している。そのために、被覆層内に存在する内部応力を低減できる結果、被覆層の耐欠損性が向上する。さらに、第2分散相が被加工面に露出した際に、酸化バナジウムに変化する。酸化バナジウムは耐溶着性に優れた材料であることから、被覆層の被加工物に対する耐溶着性をより高めることができる。
本発明の表面被覆工具の一例を示し、(a)概略斜視図、(b)被覆層を含む断面図である。 本発明の表面被覆工具の他の一例を示す断面図である。
本発明の表面被覆工具についての好適な実施態様である図1を用いて説明する。
図1によれば、切削工具1は、基体2の表面に被覆層6を具備している。また、切削工具1は、主面がすくい面3を、側面が逃げ面4を、すくい面3と逃げ面4との交差稜線が切刃5となる。
本実施態様によれば、被覆層6は、Ti1−a−b−c−d−eAlSi(C1−x)(ただし、MはNb、Mo、Ta、Hf、Yから選ばれる1種以上、0.45≦a≦0.6、0.01≦b≦0.1、0.01≦c≦0.1、0.01≦d≦0.1、0.01≦e≦0.2、0≦x≦1)からなる。また、被覆層6中には、金属Wを含有する第1分散相7aと、金属Vを含有する第2分散相7bとが点在している。これによって、高温になっても耐摩耗性が劣化しにくく、高い耐摩耗性を維持できる。また、被覆層の耐欠損性が高い。しかも、被覆層の被加工物に対する耐溶着性が高いために、溶着による摩耗の急激な進行も抑制できる。
ここで、a(Al含有比率)が0.45よりも少ないと被覆層の耐酸化性が低下して、被覆層6の耐摩耗性が低下する。a(Al含有比率)が0.6よりも多いと被覆層6の結晶構造が立方晶から六方晶に変化する傾向があり硬度が低下して、被覆層6の耐摩耗性が低下する。aの特に望ましい範囲は0.48≦a≦0.55である。また、b(W含有比率)が0.01よりも少ないと被覆層の耐欠損性が低下して切削中にチッピングが発生しやすくなり、b(W含有比率)が0.1よりも多いと被覆層の硬度が低下する。bの特に望ましい範囲は0.01≦b≦0.08である。さらに、c(Si含有比率)が0.01よりも少ないと酸化開始温度が低下して切削時の耐摩耗性が低下し、c(Si含有比率)が0.1よりも多いと、被覆層6の耐欠損性が低下する。cの特に望ましい範囲は0.01≦c≦0.04である。また、d(V含有比率)が0.01よりも少ないと被覆層の耐溶着性が低くなってしまい、d(V含有比率)が0.1よりも多いと被覆層6の硬度が低下する。dの特に望ましい範囲は0.01≦d≦0.08である。また、e(M含有比率)が0.01よりも少ないと酸化開始温度が低くなってしまい、e(M含有比率)が0.2よりも多いと被覆層6の耐酸化性が低下して、被覆層6の耐摩耗性が低下する。eの特に望ましい範囲は0.01≦e≦0.08である。
なお、金属MはNb、Mo、Ta、Hf、Yから選ばれる1種以上であるが、中でもNbまたはMoを含有する場合には、被覆層6の耐酸化性がより向上して、被覆層6の耐摩耗性がより向上する。
また、被覆層6の非金属成分であるC、Nは切削工具に必要な硬度および靭性に影響を及ぼすものであり、本実施態様では、x(N含有比率)は0≦x≦1、特に、0.8≦x
≦1である。ここで、本発明によれば、上記被覆層6の組成は、エネルギー分散型X線分光分析法(EDX)またはX線光電子分光分析法(XPS)にて測定できる。
ここで、被覆層6の中には、金属Wを含有する第1分散相7aと、金属Vを含有する第2分散相7bとが点在しているために、被覆層6内に存在する内部応力を低減できる。さらに、第2分散相7bは、加工中に被覆層6の摩耗によって、被覆層6の表面に露出した際に、第2分散相7b中に含有される金属Vが酸化されて酸化バナジウム(例えばV)となる。そして、酸化バナジウムは耐溶着性が高いために、被覆層6の被加工物に対する耐溶着性をより高めることができる。なお、金属Wを含有する第1分散相7aおよび金属Vを含有する第2分散相7bの平均粒径は30〜300nmである。また、第1分散相7aの具体的な組成は、金属元素総量に対するモル比で、例えば、Tiを0.1〜0.3、Alを0.1〜0.3、Wを0.2〜0.4、Siを0〜0.1、金属Mを0〜0.2の比率で含有する合金からなる。なお、第1分散相7aの外周側は炭化または窒化されて、炭化物および窒化物の少なくとも1種が形成されていてもよい。さらに、第2分散相7bの具体的な組成は、金属元素総量に対するモル比で、例えば、Tiを0.1〜0.3、Alを0.1〜0.3、Vを0.2〜0.4、Siを0〜0.1、金属Mを0〜0.2の比率で含有する合金からなる。なお、第2分散相7aの外周側は炭化または窒化されて、炭化物および窒化物の少なくとも1種が形成されていてもよい。
また、金属Vは、窒化バナジウムや炭化バナジウムに比べて、大気中に晒された状態で、酸化バナジウムに変化しやすいので、加工中に被覆層6の表面に酸化バナジウムが生成する確率が高い。そのために、被覆層6の耐溶着性がより確実に向上する。また、第2分散相7bは被覆層6中に分散して存在するので、被覆層6全体の耐溶着性を向上させることができる。すなわち、被覆層6の表面のみに酸化バナジウムが存在する場合には、摩耗しやすい酸化バナジウムが加工初期に摩滅してしまい、酸化バナジウムの溶着を抑制する効果がすぐになくなってしまう。
さらに、図2の実施態様においては、被覆層6が異なる組成のそれぞれ2層以上が交互に積層された多層積層体の構成となっている。そして、本実施態様においては、Vを含まないか、または第2薄層10よりもV含有比率が低い第1薄層9と、第1薄層9よりもV含有比率が高い第2薄層10とのそれぞれ2層以上が、交互に積層されている。これによって、被覆層6内にクラックが進展することを抑制することができ、かつ被覆層6全体が高硬度化して、耐摩耗性が向上する。ここで、本実施態様においては、第1薄層9中のV含有比率は、金属元素総量に対する比率で0〜0.02であり、第2薄層10中のV含有比率は、金属元素総量に対する比率で0.02〜1である。
そして、本実施態様によれば、被覆層6の第2薄層10中に含有されるV含有比率は、基体2側よりも最表面側のほうが高くなっている。これによって、加工の初期から、被覆層6の表面に被加工物の一部が溶着して、工具を使用できる時間が極端に短くなることを抑制することができる。
なお、本発明においては、このように組成の異なる2種類以上の多層構成からなる被覆層6の組成は、被覆層6の全体組成で表わし、電子線マイクロアナライザー(EPMA)等によって分析可能である。また、第1薄層9および第2薄層10の各層の組成は、透過型電子顕微鏡(TEM)観察において、エネルギー分散型X線分析(EDS)によって確認できる。
また、本実施態様では、被覆層6の内部には、図1(b)に示すように、第1分散相7aおよび第2分散相7b以外に、WおよびV以外の被覆層6を構成する金属元素を含有する他の分散相7cが存在する。他の分散相7cの具体的な組成は、金属元素総量に対する
モル比で、例えば、Tiを0.1〜0.5、Alを0.1〜0.5、Siを0〜0.1、金属Mを0〜0.2の比率で含有する合金からなる。なお、他の分散相7cの外周側は炭化または窒化されて、炭化物および窒化物の少なくとも1種が形成されていてもよい。
なお、本実施態様によれば、分散相7(第1分散相7a、第2分散相7bおよび他の分散相7c)以外の被覆層6を構成する粒子は、図1(b)に示すように、被覆層6の厚み方向に長い柱状結晶となっている。これによって、被覆層6の耐摩耗性および耐欠損性が高いものである。
さらに、本実施態様によれば、被覆層6の内部に存在する分散相7(第1分散相7a、第2分散相7bおよび他の分散相7c)の数は、透過型電子顕微鏡(TEM)観察における10μm×被覆層6の厚みの観察領域に存在する直径30nm以上の分散相7の個数を、被覆層6の厚みを5μmに換算したときの含有比率に換算して(例えば、観察領域の被覆層6の厚みが2.5μmの場合には、観察領域の被覆層6中に観察される分散相7の個数の2倍の個数を分散相の含有比率とする。)、分散相7の含有比率が3〜30個数、望ましくは5〜20個数の比率で存在する。これによって、被覆層6の内部応力が低減され、被覆層6の耐欠損性が向上する。
ここで、本実施態様によれば、被覆層6の内部に存在する第1分散相7aの分散相7の全個数に対する存在比率は、30〜70個数%(全個数の30〜70%)であり、被覆層6の内部に存在する第2分散相7bの分散相7の全個数に対する存在比率は5〜50個数%である。さらに、被覆層6の内部に存在する第1分散相7aおよび第2分散相7bの合計の存在比率は、分散相7の全個数に対して50%以上である。なお、TEM観察において、10μm×被覆層の厚みの領域を1視野として観察しても確認できないほど小さな分散粒子7が存在する場合があるので、分散粒子7を確認する際には、顕微鏡の倍率を上げて、観察すればよい。
また、本実施態様において、被覆層6の表面においては、分散相7の全個数に対して他の分散相7cが50個数%以上、特に60個数%以上存在する。さらに、被覆層6の表面に存在する他の分散相7cの全個数に対する50個数%以上はAlを主成分とする。これによって、被覆層6の表面において、切削油等の保液性を高めて、切屑の通過による発熱が緩和される。
なお、基体2としては、炭化タングステンや炭窒化チタンを主成分とする硬質相とコバルト、ニッケル等の鉄族金属を主成分とする結合相とからなる超硬合金やサーメットの硬質合金、窒化ケイ素や酸化アルミニウムを主成分とするセラミックス、多結晶ダイヤモンドや立方晶窒化ホウ素からなる硬質相とセラミックスや鉄族金属等の結合相とを超高圧下で焼成する超高圧焼結体等の硬質材料が好適に使用される。
さらに、上記記載では切削工具1について説明したが、摺動部品や金型等の耐摩部品、掘削工具、刃物等の工具、耐衝撃部品等の各種の用途への応用も可能である。特に、切削工具1を高速切削条件で加工した場合に優れた切削性能を示す。
(製造方法)
次に、本発明の表面被覆工具の製造方法について説明する。
まず、工具形状の基体を従来公知の方法を用いて作製する。次に、基体の表面に、被覆層を成膜する。被覆層の成膜方法として、イオンプレーティング法やスパッタリング法等の物理蒸着(PVD)法が好適に適応可能である。成膜方法の一例についての詳細について説明すると、被覆層をアークイオンプレーティング法で作製する場合には、被覆層を構
成する金属元素を含有するターゲットを、チャンバの側壁面位置にセットする。
具体的なターゲットの組成は、被覆層を構成する金属元素の金属または合金からなる。このターゲットをチャンバの側壁面の所定の位置に載置して、成膜する。ここで、被覆層中に、金属Wを含有する第1分散相と金属Vを含有する第2分散相とを存在させるためには、以下のターゲットを用いる。ターゲットの具体的な構成は、WとVは他の成分とは別に、例えば円柱状の塊として、ターゲット中に埋め込んだ形態とする。
また、第1薄層と第2薄層との繰り返し交互積層からなる被覆層6を成膜するには、例えば、金属バナジウム(V)の含有比率の多いターゲットと、被覆層6を構成する所定の金属(Ti、Al、Cr、W、Nb、Mo、Ta、Hf、Si、ZrおよびYから選ばれる少なくとも1種以上)をそれぞれ独立に含有する金属ターゲット、複合化した合金ターゲットまたは焼結体ターゲットをチャンバの側壁面位置にセットする。このとき、ターゲットの具体的な載置方法は、例えば、チャンバの側壁面の対向する位置に、第1ターゲットと第2ターゲットとをそれぞれ載置する。また、3枚以上のは複数枚のターゲットを用いる場合には、第1ターゲットの枚数を第2ターゲットの枚数よりも多く用いるとともに、第2ターゲットの載置位置をチャンバの側壁面の全周に対して偏った位置となるように載置して成膜する。
この方法において、被覆層中に、金属Wを含有する第1分散相を存在させるためには、上記のターゲットと同様に、Wについては、他の成分とは別に、例えば円柱状の塊として、ターゲット中に埋め込んだ形態とする。また、被覆層中に、金属Vを含有する第2分散相を存在させるためには、第2ターゲットにかける電流を第1ターゲットにかける電流よりも大きくする方法が適用できる。さらに、被覆層のV含有比率を、基体側よりも最表面側のほうが高くなるようにする、すなわち、第1薄層と第2薄層との交互積層からなる被覆層6の第2薄層中に含有されるV含有比率を、基体側よりも最表面側のほうが高くなるようにするためには、成膜後期において、第2ターゲットに流す電流を大きくすればよい。
なお、成膜する際には、これらのターゲットを用いて、アーク放電やグロー放電などにより金属源を蒸発させイオン化すると同時に、窒素源の窒素(N)ガスや炭素源のメタン(CH)/アセチレン(C)ガスと反応させるイオンプレーティング法またはスパッタリング法によって被覆層を成膜する。このとき、基体をセットする向きは、例えば、逃げ面がチャンバの側面とほぼ平行に、かつすくい面がチャンバの上面とほぼ平行な向きにセットする。基体をセットする向きは、すくい面がチャンバの側面とほぼ平行に、かつ逃げ面がチャンバの上面とほぼ平行な向きであってもよい。
なお、上記被覆層を成膜する際には、被覆層の結晶構造を適正なものとして、高硬度で基体との密着性が高い被覆層を成膜するために、本実施態様では、基体に対して、35〜200Vのバイアス電圧を印加した状態で成膜する。
平均粒径0.8μmの炭化タングステン(WC)粉末を主成分として、平均粒径1.2μmの金属コバルト(Co)粉末を10質量%、平均粒径1.0μmの炭化バナジウム(VC)粉末を0.1質量%、平均粒径1.0μmの炭化クロム(Cr)粉末を0.3質量%の割合で添加し混合して、プレス成形により京セラ製切削工具LOMU100408ER-GM形状のスローアウェイチップ形状に成形した後、脱バインダ処理を施し、
0.01Paの真空中、1450℃で1時間焼成して超硬合金を作製した。また、各試料のすくい面表面をブラスト加工、ブラシ加工等によって研磨加工した。さらに、作製した超硬合金にブラシ加工にて刃先処理(ホーニング)を施した。
このようにして作製した基体に対して、金属Wおよび金属Vを円柱状の塊として含有するターゲットをセットして、バイアス電圧75Vを印加し、アーク電流150Aをそれぞれ流し、成膜温度540℃として表1に示す組成の被覆層を成膜した。なお、被覆層の組成は下記方法にて全体組成を測定した。なお、試料No.16については、金属Vを他の金属と同じく合金として含有するターゲットを使用し、試料No.18については、金属Wを他の金属と同じく合金として含有するターゲットを使用した。
得られた試料に対して、被覆層の断面から、逃げ面の被覆層の任意3か所について、走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察し、電子線マイクロアナライザ(EPMA)にて、被覆層の組成を分析した。3か所の平均組成を被覆層の組成として表1に記載した。また、透過型電子線顕微鏡(TEM)にて、被覆層を含む切削工具の断面について観察し、10μm×被覆層の厚みの任意領域における直径30nm以上の分散相の組成を、エネルギー分散分光分析(EDS)(アメテック社製EDAX)によって測定し、第1分散相、第2分散相、その他の分散相を特定した。これらの個数を測定し、10μm×被覆層の厚みの測定領域で観察された分散相の個数から、被覆層の厚みを5μmの基準厚みに換算した場合で見積もって、10か所における平均個数を算出し、分散相として存在比率を表1に示した。なお、被覆層の表面についてもSEM観察を行い、分散相の組成を確認したところ、いずれの試料についても、分散相の全個数に対して他の分散相の個数が50個数%以上の比率で存在しており、他の分散相の個数の50%以上はAlを主成分とするものであった。結果は表1に示した。
次に、得られたスローアウェイチップを用いて以下の切削条件にて切削試験を行った。結果は表1に示した。
切削方法:ミリング加工
被削材 :合金鋼(SCM435)
切削速度:250m/分
送り :0.2mm/rev
切り込み:2.0mm
切削状態:乾式
評価方法:切削時間80分加工後の切削工具を観察して切刃状態を確認した。また、工具寿命まで加工できた加工数を確認し、そのときの逃げ面摩耗幅と先端摩耗幅を測定した。
表1に示す結果より、本発明の被覆層の組成範囲Ti1−a−b−c−d−eAlSi(C1−x)(ただし、MはNb、Mo、Ta、Hf、Yから選ばれる1種以上、0.45≦a≦0.6、0.01≦b≦0.1、0.01≦c≦0.1、0.01≦d≦0.1、0.01≦e≦0.2、0≦x≦1)に対して、a、b、eが外れる試料No.17、19、20、22では、被覆層の耐摩耗性が低下して、摩耗幅が大きくなった。また、本発明の被覆層の組成範囲に対して、Vを含まず、dが0.01より小さい試料No.1では、被削材の溶着があり、摩耗幅が大きくなった。さらに、本発明の被覆層の組成範囲に対して、cが0.10より大きい試料No.21では、被覆層の耐欠損性が低下した。さらに、金属Wを含有する第1分散相が存在しない試料No.18では、被覆層の内部応力が高くなってチッピングが発生し、金属Vを含有する第2分散相が存在しない試料No.16では、被覆層の表面に溶着が発生して摩耗幅が大きいものであるとともに、直線切刃の一部にはチッピングも見られた。
これに対して、本発明の範囲内である試料No.2〜15では、いずれもチッピングの発生が少なく、かつ摩耗幅も小さい良好な切削性能を発揮した。
実施例1の基体に対して、主ターゲットである第1ターゲット、Vを含有する第2ターゲットをセットして、バイアス電圧75Vを印加し、第1ターゲットに流すアーク電流を
100A、第2ターゲットに流すアーク電流を150Aとし、成膜温度540℃として、表2〜3に示す組成の被覆層を成膜した。得られた試料の被覆層の断面についてのTEM観察によって、第1薄層と第2薄層とが存在することを確認できた。そして、EDSによって、第1薄層と第2薄層の組成を分析した。さらに、実施例1と同様に、第1分散相、第2分散相、その他の分散相を特定し、分散相として存在比率を測定した。また、試料の断面について、SEM観察をするとともに、EPMAにて被覆層の厚み方向の全体の領域について組成を分析した。さらに、実施例1と同じ条件で切削性能を評価した。結果は表2〜3に示した。
なお、被覆層の表面についてもSEM観察を行い、分散相の組成を確認したところ、いずれの試料についても、分散相の全個数に対して他の分散相の個数が50個数%以上の比率で存在しており、他の分散相の個数の50%以上はAlを主成分とするものであった。また、各試料の被覆層の厚みは3.0μm、第1薄層の1層の平均厚みは60nm、第2薄層の1層の平均厚みは第1ターゲットと第2ターゲットとの載置枚数を変えることによって、10〜40nmの範囲内で調整した。
表2、3の結果から、金属Wを含有する第1分散相が存在しない試料No.28では、被覆層の内部応力が高くなってチッピングが発生し、金属Vを含有する第2分散相が存在しない試料No.27では、被覆層の表面に溶着が発生して摩耗幅が大きく、直線切刃にはチッピングも見られた。これに対して、本発明の範囲内である試料No.23〜26では、いずれもチッピングの発生が少なく、かつ摩耗幅も小さい良好な切削性能を発揮した。
1 切削工具
2 基体
3 すくい面
4 逃げ面
5 切刃
6 被覆層
7 分散相
7a 第1分散相
7b 第2分散相
7c 他の分散相
9 第1薄層
10 第2薄層

Claims (3)

  1. 基体の表面に被覆層を具備する表面被覆工具であって、前記被覆層が、Ti1−a−b−c−d−eAlSi(C1−x)(ただし、MはNb、Mo、Ta、Hf、Yから選ばれる1種以上、0.45≦a≦0.6、0.01≦b≦0.1、0.01≦c≦0.1、0.01≦d≦0.1、0.01≦e≦0.2、0≦x≦1)からなるとともに、前記被覆層中に、金属Wを含有する第1分散相と、金属Vを含有する第2分散相とが点在している表面被覆工具。
  2. 前記被覆層は、Vを含まないかまたはV含有比率が低い第1薄層と、該第1薄層に比べてV含有比率が高い第2薄層とのそれぞれ2層以上が、交互に積層した多層積層体からなる請求項1記載の表面被覆工具。
  3. 前記被覆層の前記基体側の前記第2薄層よりも、最表面側の前記第2薄層のほうが、該第2薄層中に含有されるV含有比率が高い請求項2記載の表面被覆工具。
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