本発明の実施形態の光偏向器について説明する。本実施形態の光偏向器1は、反射部2と、一対の第1圧電アクチュエータ31,32と、第1支持部4と、一対の第2圧電アクチュエータ51,52と、第2支持部6とを備える。ここで、本実施形態の反射部2、一対の第1圧電アクチュエータ31,32、及び第1支持部4を含めたものが、本発明におけるミラー部に相当する。また、本実施形態の一対の第2圧電アクチュエータ51,52が、本発明における圧電アクチュエータに相当する。また、本実施形態の第2支持部6が、本発明における支持部に相当する。
反射部2は、入射した光を反射する円形の反射面2aと、反射面2aを支持する円形の反射面支持体2bとを備える。反射面2aは、反射面支持体2b上の金属薄膜(本実施形態では一層の金属薄膜)を半導体プレーナプロセスを用いて形状加工して形成されている。金属薄膜の材料としては、例えば、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)等が用いられる。
金属薄膜の厚みは、例えば100〜500nm程度に設定される。金属薄膜は、例えば、スパッタ法、電子ビーム蒸着法等により成膜する。反射面支持体2bは、シリコン基板で構成される。反射面支持体2bには、その両端から外側へ延びた一対のトーションバー21,22が連結されている。
第1圧電アクチュエータ31,32は、各々が半円弧形状に形成され、互いに反射部2を囲むように空隙を隔てて配置されている。第1圧電アクチュエータ31,32は、各々の一方の端部が一方のトーションバー21を挟んで対向して配置され、各々の他方の端部が他方のトーションバー22を挟んで対向して配置されている。
第1支持部4は、矩形の枠形状に形成されており、反射部2と第1圧電アクチュエータ31,32とを囲むように設けられている。第1支持部4は、第1圧電アクチュエータ31,32の円弧部の中心位置の外側に連結されており、第1圧電アクチュエータ31,32を介して反射部2を支持している。
第1圧電アクチュエータ31,32の各々は、圧電駆動によって屈曲変形するように構成された第1圧電カンチレバー31A,32Aを備える。詳細には、第1圧電アクチュエータ31,32のうちの一方の第1圧電アクチュエータ31が一方の第1圧電カンチレバー31Aを備え、第1圧電アクチュエータ31,32のうちの他方の第1圧電アクチュエータ32が他方の第1圧電カンチレバー32Aを備える。第1圧電アクチュエータ31,32は、第1圧電カンチレバー31A,32Aの屈曲変形により、トーションバー21,22を介して、反射部2を第1支持部4に対して第1軸Y周りに揺動可能となっている。
第2圧電アクチュエータ51,52は、第1支持部4を挟んで対向して配置されている。第2圧電アクチュエータ51,52は、それらの先端部が、第1支持部4のトーションバー21,22と直交する方向の一対の両側に各々連結されている。
第2支持部6は、矩形の枠形状に形成されており、第1支持部4と第2圧電アクチュエータ51,52とを囲むように設けられている。第2支持部6には、第2圧電アクチュエータ51,52の、第1支持部4と連結されていない側の一対の他端が各々連結されている。これにより、第2支持部6は、第2圧電アクチュエータ51,52を介して第1支持部4を支持している。
第2圧電アクチュエータ51,52の各々は、圧電駆動によって屈曲変形するように構成された第2圧電カンチレバー51A〜51D,52A〜52Dを備える。詳細には、一対の第2圧電アクチュエータ51,52のうちの一方の第2圧電アクチュエータ51は、4つの圧電カンチレバーからなる一方の第2圧電カンチレバー51A〜51Dを備える。また、一対の第2圧電アクチュエータ51,52のうちの他方の第2圧電アクチュエータ52は、4つの圧電カンチレバーからなる他方の第2圧電カンチレバー52A〜52Dを備える。
一方の第2圧電カンチレバー51A〜51Dは、その長さ方向が同じになるように各々の両端部が隣り合うと共に、反射部2を第2軸X(第1軸Yに直交する軸)周りに揺動可能に所定の間隔で並んで配置されている。ここで、第2軸Xが本発明における所定の軸に相当する。そして、一方の第2圧電カンチレバー51A〜51Dは、隣り合う圧電カンチレバーに対して折り返すように連結されている(所謂ミアンダ形状に構成されている)。
他方の第2圧電カンチレバー52A〜52Dは、一方の第2圧電カンチレバー51A〜51Dと同様に、その長さ方向が同じになるように各々の両端部が隣り合うと共に、反射部2を第2軸X周りに揺動可能に所定の間隔で並んで配置されている。そして、他方の第2圧電カンチレバー52A〜52Dは、隣り合う圧電カンチレバーに対して折り返すように連結されている(所謂ミアンダ形状に構成されている)。
また、第2圧電カンチレバー51A〜51D,52A〜52Dのうちの最も反射部2側(第1支持部4側)に配置されているカンチレバー(以下、「1番目の第2圧電カンチレバー」という)51A,52Aは、その隣り合う第2圧電カンチレバー(以下、「2番目の第2圧電カンチレバー」という)51B,52Bと連結されていない側の各々の一端が第1支持部4の外周部に連結されている。
第2圧電カンチレバー51A〜51D,52A〜52Dのうちの最も第2支持部6側に配置されている圧電カンチレバー(以下、「4番目の第2圧電カンチレバー」という)51D,52Dは、その隣り合う第2圧電カンチレバー(以下、「3番目の第2圧電カンチレバー」という)51C,52Cと連結されていない側の各々の一端が第2支持部6の内周部に連結されている。
これにより、第1支持部4は、第2圧電カンチレバー51A〜51D,52A〜52Dの屈曲変形によって、第2支持部6に対して第2軸X周りに揺動可能となっている。
以降、第2圧電カンチレバー51A〜51D,52A〜52Dのうち、第1支持部4と第2圧電アクチュエータ51,52と第2支持部6とが連結された経路上において、第1支持部4側から第2支持部6側に向かって数えたときに、奇数番目に配置された各々の圧電カンチレバー(1番目の第2圧電カンチレバー51A,52A及び3番目の第2圧電カンチレバー51C,52C)を奇数番目の第2圧電カンチレバー51A,51C,52A,52Cという。また、奇数番目の第2圧電カンチレバー51A,51C,52A,52Cのうち、一方の第2圧電カンチレバー51A〜51Dに含まれるものを一方の奇数番目の第2圧電カンチレバー51A,51Cといい、他方の第2圧電カンチレバー52A〜52Dに含まれるものを他方の奇数番目の第2圧電カンチレバー52A,52Cという。
同様に、第2圧電カンチレバー51A〜51D,52A〜52Dのうち、第1支持部4と第2圧電アクチュエータ51,52と第2支持部6とが連結された経路上において、第1支持部4側から第2支持部6側に向かって数えたときに、偶数番目に配置された各々の圧電カンチレバー(2番目の第2圧電カンチレバー51B,52B及び4番目の第2圧電カンチレバー51D,52D)を偶数番目の第2圧電カンチレバー51B,51D,52B,52Dという。また、偶数番目の第2圧電カンチレバー51B,51D,52B,52Dのうち、一方の第2圧電カンチレバー51A〜51Dに含まれるものを一方の偶数番目の第2圧電カンチレバー51B,51Dといい、他方の第2圧電カンチレバー52A〜52Dに含まれるものを他方の偶数番目の第2圧電カンチレバー52B,52Dという。
図2は、図1の光偏向器1のA−A線端面図の一方の第1圧電アクチュエータ31及び一方の第2圧電アクチュエータ51を模式的に示した図である。図3は、図1の光偏向器1のA−A線端面図の他方の第1圧電アクチュエータ32及び他方の第2圧電アクチュエータ52を模式的に示した図である。なお、図2及び図3では、反射部2及び第2支持部6を省略して示している。
第1圧電カンチレバー31A,32Aの各々と、第2圧電カンチレバー51A〜51D,52A〜52Dの各々とは、起歪体(カンチレバー本体)としての支持体Bの層上に、下部電極L1、圧電体L2及び上部電極L3を積層した構造の圧電カンチレバーである。詳細には、圧電カンチレバーには、支持体Bの層上に、下部電極L1、圧電体L2、及び上部電極L3が積層されており、これらの下部電極L1、圧電体L2、及び上部電極L3を囲むように層間絶縁膜M1が設けられている。そして、層間絶縁膜M1上に上部電極配線Wが積層され、この上部電極配線Wを囲むようにパッシベーション膜M2が設けられている。
但し、偶数番目の第2圧電カンチレバー51B,51D,52B,52Dは、他の圧電カンチレバーとは異なり、下部電極L1上に、圧電体L2と検知用圧電体L21とが、互いに圧電カンチレバーの幅方向に平面的に分離されて配置されている。そして、圧電体L2の上に上部電極L3が配置され、検知用圧電体L21の上に検知用上部電極L31が配置されている。このとき、上部電極L3と、検知用上部電極L31とが、互いに圧電カンチレバーの幅方向に平面的に分離されて配置されている。
そして、層間絶縁膜M1がこれらの分離された空間に設けられ、「圧電体L2と検知用圧電体L21」及び「上部電極L3と検知用上部電極L31」は互いに絶縁されている。そして、この層間絶縁膜M1上に上部電極配線Wが積層され、この上部電極配線Wを囲むようにパッシベーション膜M2が設けられていることは、他の圧電カンチレバーと同様である。ここで、上部電極配線Wは、第1駆動配線Wy、第2奇数駆動配線Wo、第2偶数駆動配線We、及び検知配線Wmからなる。
なお、第2圧電カンチレバー51A〜51D,52A〜52Dの各々の隣り合う圧電カンチレバーの連結部は、その隣り合う圧電カンチレバーの各々の支持体Bを一体に連結した部分となっている。この連結部には圧電体L2及び上部電極L3の層は設けられておらず、下部電極L1を囲むように層間絶縁膜M1が設けられ、該層間絶縁膜M1上に、上部電極配線Wが設けられている。
光偏向器1は、第2支持部6に、下部電極パッド61a,62aと、第1上部電極パッド61b,62bと、奇数用第2上部電極パッド61c,62cと、偶数用第2上部電極パッド61d,62dと、検知用電極パッド61e,62eとが設けられている。
下部電極パッド61a,62aのうちの一方の下部電極パッド61aは、一方の第1圧電カンチレバー31Aの下部電極L1、及び一方の第2圧電カンチレバー51A〜51Dの下部電極L1に電気的に接続されている。下部電極パッド61a,62aのうちの他方の下部電極パッド62aは、他方の第1圧電カンチレバー32Aの下部電極L1、及び他方の第2圧電カンチレバー52A〜52Dの下部電極L1に電気的に接続されている。また、下部電極パッド61a,62aは、当該光偏向器1が搭載される装置の基準電位点に接続(接地)されている。このため、下部電極パッド61a,62aに電気的に接続された各下部電極L1も基準電位点に接続(接地)されることとなる。
第1上部電極パッド61b,62bのうちの第1正相上部電極パッド61bは、第1駆動配線Wyを介して一方の第1圧電カンチレバー31Aの上部電極L3に電気的に接続されている。第1上部電極パッド61b,62bのうちの第1逆相上部電極パッド62bは、第1駆動配線Wyを介して他方の第1圧電カンチレバー32Aの上部電極L3に電気的に接続されている。
奇数用第2上部電極パッド61c,62cのうちの一方の奇数用第2上部電極パッド61cは、第2奇数駆動配線Woを介して一方の奇数番目の第2圧電カンチレバー51A,51Cの上部電極L3に電気的に接続されている。奇数用第2上部電極パッド61c,62cのうちの他方の奇数用第2上部電極パッド62cは、第2奇数駆動配線Woを介して他方の奇数番目の第2圧電カンチレバー52A,52Cの上部電極L3に電気的に接続されている。
偶数用第2上部電極パッド61d,62dのうちの一方の偶数用第2上部電極パッド61dは、第2偶数駆動配線Weを介して一方の偶数番目の第2圧電カンチレバー51B,51Dの上部電極L3に電気的に接続されている。偶数用第2上部電極パッド61d,62dのうちの他方の偶数用第2上部電極パッド62dは、第2偶数駆動配線Weを介して他方の偶数番目の第2圧電カンチレバー52B,52Dの上部電極L3に電気的に接続されている。
検知用電極パッド61e,62eのうちの一方の検知用電極パッド61eは、検知配線Wmを介して一方の偶数番目の第2圧電カンチレバー51B,51Dの検知用上部電極L31に電気的に接続されている。検知用電極パッド61e,62eのうちの他方の検知用電極パッド62eは、検知配線Wmを介して他方の偶数番目の第2圧電カンチレバー52B,52Dの検知用上部電極L31に電気的に接続されている。
以上のような電気的接続により、上部電極L3と下部電極L1との間に駆動電圧が印加された場合に、この印加された上部電極L3と下部電極L1との間に積層された圧電体L2の圧電駆動により、該圧電体L2を支持する支持体B(圧電カンチレバー)が屈曲変形する。ここで、第2圧電カンチレバー51A〜51D,52A〜52Dが支持する圧電体L2が、本発明における駆動用圧電体に相当する。
偶数番目の第2圧電カンチレバー51B,51D,52B,52Dの屈曲変形による圧電効果によって検知用圧電体L21から発生した電圧が、検知用電極パッド61e,62eと下部電極パッド61a,62aとの間の電位差として出力される。
以下、上述した上部電極配線W、上部電極L3、圧電体L2及び下部電極L1の詳細について説明する。
「一対の下部電極パッド61a,62a」と、「第1圧電カンチレバー31A,32A、及び第2圧電カンチレバー51A〜51D,52A〜52Dの下部電極L1」とは、シリコン基板上の金属薄膜(本実施形態では2層の金属薄膜、以下、下部電極層ともいう)を、半導体プレーナプロセスを用いて形状加工することにより形成される。この金属薄膜の材料としては、例えば、1層目(下層)にはチタン(Ti)、二酸化チタン(TiO2)又は酸化量が調整された酸化チタン(TiOx)が用いられ、2層目(上層)には白金(Pt)、LaNiO3又はSrRuO3が用いられる。
この場合、第1圧電カンチレバー31A,32Aの下部電極L1は、当該第1圧電カンチレバー31A,32Aの支持体B上のほぼ全面に形成される。第2圧電カンチレバー51A〜51D,52A〜52Dの下部電極L1は、当該第2圧電カンチレバー51A〜51D,52A〜52Dの支持体B上(各圧電カンチレバーが延在する直線部と連結部とを合わせた全体)のほぼ全面に形成される。
そして、下部電極パッド61a,62aは、第2支持部6及び第1支持部4の支持体B上に形成された下部電極L1を介して、第1圧電カンチレバー31A,32A、及び第2圧電カンチレバー51A〜51D,52A〜52Dの各下部電極L1に導通される。
「第1圧電カンチレバー31A,32A、及び第2圧電カンチレバー51A〜51D,52A〜52Dの各圧電体L2」及び「偶数番目の第2圧電カンチレバー51B,51D,52B,52Dの検知用圧電体L21」は、半導体プレーナプロセスを用いて、下部電極層上の1層の圧電膜(以下、圧電体層ともいう)を形状加工することにより、各々の圧電カンチレバーの下部電極L1上に互いに分離して形成されている。この圧電膜の材料としては、例えば、圧電材料であるチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)が用いられる。
この場合、第1圧電カンチレバー31A,32Aの圧電体L2は、当該圧電カンチレバー31A,32Aの下部電極L1上のほぼ全面に形成されている。奇数番目の第2圧電カンチレバー51A,51C,52A,52Cの圧電体L2は、各第2圧電カンチレバー51A,51C,52A,52Cの延在部分(直線部)において、下部電極L1上に、長さが下部電極L1の長さとほぼ同等で、幅が下部電極L1の幅とほぼ同等に形成されている。
偶数番目の第2圧電カンチレバー51B,51D,52B,52Dの圧電体L2は、各第2圧電カンチレバー51B,51D,52B,52Dの延在部分(直線部)において、下部電極L1上に、長さが下部電極L1の長さとほぼ同等で、幅が下部電極L1の幅の7割程度に形成されている。偶数番目の第2圧電カンチレバー51B,51D,52B,52Dの検知用圧電体L21は、各第2圧電カンチレバー51B,51D,52B,52Dの延在部分(直線部)において、下部電極L1上に、長さが下部電極L1の長さとほぼ同等で、幅が下部電極L1の幅の3割程度に形成されている。
ここで、偶数番目の第2圧電カンチレバー51B,51D,52B,52Dの幅方向において、当該カンチレバーに配置された、圧電体L2と検知用圧電体L21の各々の長さとを足すと、当該カンチレバーの下部電極L1の長さとほぼ同等になる。更に、偶数番目の第2圧電カンチレバー51B,51D,52B,52Dの長さ方向において、当該カンチレバーに配置された、圧電体L2及び検知用圧電体L21の各々の長さは、当該カンチレバーの延在部分の長さとほぼ同等である。
「第1上部電極パッド61b,62b、奇数用第2上部電極パッド61c,62c、偶数用第2上部電極パッド61d,62d及び検知用電極パッド61e,62e」と、「第1圧電カンチレバー31A,32A、及び第2圧電カンチレバー51A〜51D,52A〜52Dの各上部電極L3」と、「偶数番目の第2圧電カンチレバー51B,51D,52B,52Dの各検知用上部電極L31」と、これらを導通する「上部電極配線W」とは、半導体プレーナプロセスを用いて、圧電体層上の金属薄膜(本実施形態では1層の金属薄膜。以下、上部電極層ともいう)を形状加工することにより形成されている。この金属薄膜の材料としては、例えば、白金(Pt)、金(Au)、アルミニウム(Al)、又はアルミニウム合金(Al合金)等が用いられる。このとき、上部電極L3と上部電極配線Wとの間には層間絶縁膜M1が形成される。
第1圧電カンチレバー31A,32A、及び第2圧電カンチレバー51A〜51D,52A〜52Dの各上部電極L3は、各圧電カンチレバー毎の圧電体L2上のほぼ全面に形成されている。また、偶数番目の第2圧電カンチレバー51B,51D,52B,52Dの検知用上部電極L31は、偶数番目の第2圧電カンチレバー51B,51D,52B,52D毎の検知用圧電体L21上のほぼ全面に形成されている。
第2支持部6に設けられた上部電極配線Wは、第1駆動配線Wyが第1上部電極パッド61b,62bに、第2奇数駆動配線Woが奇数用第2上部電極パッド61c,62cに、第2偶数駆動配線Weが偶数用第2上部電極パッド61d,62dに、検知配線Wmが検知用電極パッド61e,62eに、各々電気的に接続されている。
また、第2支持部6と4番目の第2圧電カンチレバー51D,52Dとの間の連結部には、当該連結部に設けられた層間絶縁膜M1上に上部電極配線Wが設けられており、第2支持部6の上部電極配線Wは、4番目の第2圧電カンチレバー51D,52Dに設けられた上部電極配線Wに電気的に接続されている。
また、「4番目の第2圧電カンチレバー51D,52Dと3番目の第2圧電カンチレバー51C,52Cとの間の連結部」、「3番目の第2圧電カンチレバー51C,52Cと2番目の第2圧電カンチレバー51B,52Bとの間の連結部」、及び「2番目の第2圧電カンチレバー51B,52Bと1番目の第2圧電カンチレバー51A,52Aとの間の連結部」には、当該連結部に設けられた層間絶縁膜M1上に上部電極配線Wが設けられており、当該上部電極配線Wは、当該連結部を介して連結された第2圧電カンチレバーに設けられた上部電極配線Wを互いに電気的に接続している。
偶数番目の第2圧電カンチレバー51B,51D,52B,52Dに設けられた層間絶縁膜M1上には、図2及び図3に示されるように、上部電極配線Wが、第1支持部4側から第2支持部6側に向かって(図2の左方向又は図3の右方向に向かって)「検知配線Wm→第1駆動配線Wy→第2偶数駆動配線We→第2奇数駆動配線Wo」の順番に、平面的に互いに分離して設けられている。このとき、第2偶数駆動配線Weは、当該層間絶縁膜M1に設けられた電極ビア内に配された導通材料(金属等)によって偶数番目の第2圧電カンチレバー51B,51D,52B,52Dの上部電極L3に電気的に接続されている。
また、第2偶数駆動配線Weは、2番目の第2圧電カンチレバー51B,52Bの上部電極L3と導通する電極ビアのところまで設けられており、それ以降(第2支持部6から反射部2まで、第2圧電アクチュエータ51,52、第1支持部4及び第1圧電アクチュエータ31,32を介して連結された経路(以下、この経路を「連結経路」という)上において、当該電極ビアよりも反射部2側)には設けられていない。また、検知配線Wmは、2番目の第2圧電カンチレバー51B,52Bの検知用上部電極L31と導通する電極ビアのところまで設けられており、連結経路上において、当該電極ビアよりも反射部2側には設けられていない。
3番目の第2圧電カンチレバー51C,52Cに設けられた層間絶縁膜M1上には、上部電極配線Wが、第1支持部4側から第2支持部6側に向かって「第2奇数駆動配線Wo→第2偶数駆動配線We→第1駆動配線Wy→検知配線Wm」の順番に、平面的に互いに分離して設けられている。このとき、第2奇数駆動配線Woは、当該層間絶縁膜M1に設けられた電極ビア内に配された導通材料によって3番目の第2圧電カンチレバー51C,52Cの上部電極L3に電気的に接続されている。
1番目の第2圧電カンチレバー51A,52Aに設けられた層間絶縁膜M1上には、上部電極配線Wが、第1支持部4側から第2支持部6側に向かって「第2奇数駆動配線Wo→第1駆動配線Wy」の順番に、平面的に互いに分離して設けられている。このとき、第2奇数駆動配線Woは、当該層間絶縁膜M1に設けられた電極ビア内に配された導通材料によって1番目の第2圧電カンチレバー51A,52Aの上部電極L3に電気的に接続されている。また、第2奇数駆動配線Woは、1番目の第2圧電カンチレバー51A,52Aの上部電極L3と導通する電極ビアのところまで設けられており、連結経路上において当該電極ビアよりも反射部2側には設けられていない。
第1圧電カンチレバー31A,32Aに設けられた層間絶縁膜M1上の一部には、図2及び図3に示されるように第1駆動配線Wyが設けられている。一方の第1圧電カンチレバー31Aに設けられた第1駆動配線Wyは、第1正相上部電極パッド61bに電気的に接続され、他方の第1圧電カンチレバー32Aに設けられた第1駆動配線Wyは、第1逆相上部電極パッド62bに電気的に接続されている。このとき、第1駆動配線Wyは、当該層間絶縁膜M1に設けられた電極ビア内に配された導通材料によって第1圧電カンチレバー31A,32Aの上部電極L3に電気的に接続されている。また、第1駆動配線Wyは、第1圧電カンチレバー31A,32Aに設けられた電極ビアのところまで設けられており、連結経路上において当該電極ビアよりも反射部2側には設けられていない。
また、パッシベーション膜M2は、半導体プレーナプロセスを用いて、上部電極配線W上に当該上部電極配線Wを囲うように形成されている。また、反射面支持体2bと、トーションバー21,22と、各圧電カンチレバー31A,32A,51A〜51D,52A〜52Dの支持体Bと、第1支持部4と、第2支持部6とは、複数の層から構成される半導体基板(シリコン基板)を形状加工することにより一体的に形成されている。半導体基板を形状加工する手法としては、フォトリソグラフィ技術やドライエッチング技術等を利用した半導体プレーナプロセス及びMEMSプロセスが用いられる。
以上のように、本実施形態の光偏向器1が構成されている。なお、このような光偏向器1は、プロジェクタやコピー機等に光走査機器として搭載される。
次に、本実施形態の光偏向器1の作動について説明する。第2圧電アクチュエータ51,52に、第1電圧信号Vx1及び第2電圧信号Vx2が印加されることで、第1支持部4が第2支持部6に対して第2軸X周りに揺動する。また、第1圧電アクチュエータ31,32に、第3電圧信号Vy1及び第4電圧信号Vy2が印加されることで、反射部2が第1支持部4に対して第1軸Y周りに揺動する。
まず、第1圧電アクチュエータ31,32により、反射部2を第1支持部4に対して第1軸Y周りに揺動させる場合について説明する。
この場合には、光偏向器1は、第1圧電アクチュエータ31,32に、図4(a)に示されるような駆動電圧を印加する(図4において全てのグラフは、横軸が時間[s]を示し、縦軸が電圧値[V]を示す)。具体的には、第1正相上部電極パッド61bと一方の下部電極パッド61aとの間に第3電圧信号Vy1(実線)を印加することで、一方の第1圧電アクチュエータ31に第3電圧信号Vy1を印加し、一方の第1圧電カンチレバー31Aを垂直方向(図1の上方向U)に屈曲変形させる。なお、圧電体L2を支持するカンチレバー31A,32A,51A〜51D,52A〜52Dの屈曲変形の大きさは、上部電極L3と下部電極L1との間の電位差が大きいほど大きくなる。また、第1逆相上部電極パッド62bと他方の下部電極パッド62aとの間に第4電圧信号Vy2(破線)を印加することで、他方の第1圧電アクチュエータ32に第4電圧信号Vy2を印加し、他方の第1圧電カンチレバー32Aを垂直方向に屈曲変形させる。
ここで、第3電圧信号Vy1と第4電圧信号Vy2とは、周期性を有する単極性の電圧信号(例えば正弦波等に直流成分を加えた信号)である。また、第3電圧信号Vy1と第4電圧信号Vy2とは、互いに逆位相の電圧信号(すなわち互いに180度位相がずれた電圧信号)である。
このため、第3電圧信号Vy1の値と第4電圧信号Vy2の値が等しいときに、各第1圧電カンチレバー31A,32Aの屈曲変形の大きさが等しくなる(以下、この状態を「状態1A」という)。また、第3電圧信号Vy1の値が第4電圧信号Vy2の値より大きいときに、一方の第1圧電カンチレバー31Aの屈曲変形が、他方の第1圧電カンチレバー32Aの屈曲変形より大きくなる(以下、この状態を「状態1B」という)。また、第3電圧信号Vy1の値が第4電圧信号Vy2の値より小さいときに、一方の第1圧電カンチレバー31Aの屈曲変形が、他方の第1圧電カンチレバー32Aの屈曲変形より小さくなる(以下、この状態を「状態1C」という)。
図4(a)に示されるように、互いに逆位相の第3電圧信号Vy1と第4電圧信号Vy2とが、第1圧電アクチュエータ31,32に印加されるので、「状態1B→状態1A→状態1C(→状態1A…)」が繰り返される。このような第1圧電カンチレバー31A,32Aの動きにより、反射部2にはトーションバー21,22を中心とした回転トルクが作用する。これにより、反射部2は、トーションバー21,22を中心軸として第1軸Y周りで回転する。
本実施形態の光偏向器1では、第1圧電アクチュエータ31,32を含む反射部2の機械的な共振周波数付近の周波数の電圧信号を、第1圧電アクチュエータ31,32に印加して共振駆動させている。本実施形態では、反射部2を第1軸Y周りに揺動することができ、所定の第1周波数Fyで所定の第1偏向角の光走査をすることができる。
次に、第2圧電アクチュエータ51,52により、第1支持部4を第2支持部6に対して第2軸X周りに揺動させる場合について説明する。
この場合、光偏向器1は、第2圧電アクチュエータ51,52に、図4(b)に示されるような駆動電圧を印加する。具体的には、奇数用第2上部電極パッド61c,62cと下部電極パッド61a,62aとの間に第1電圧信号Vx1(実線)を印加することで、奇数番目の第2圧電カンチレバー51A,51C,52A,52Cの圧電体L2に第1電圧信号Vx1を印加し、奇数番目の第2圧電カンチレバー51A,51C,52A,52Cを屈曲変形させる。また、これと共に、偶数用第2上部電極パッド61d,62dと下部電極パッド61a,62aとの間に第2電圧信号Vx2(破線)を印加することで、偶数番目の第2圧電カンチレバー51B,51D,52B,52Dの圧電体L2に第2電圧信号Vx2を印加し、偶数番目の第2圧電カンチレバー51B,51D,52B,52Dを屈曲変形させる。
ここで、第1電圧信号Vx1と第2電圧信号Vx2とは、周期性を有する単極性の電圧信号(例えば正弦波又はノコギリ波等に直流成分を加えた信号)である。また、第1電圧信号Vx1と第2電圧信号Vx2とは、互いに逆位相の電圧信号(すなわち互いに180度位相がずれた電圧信号)である。ここで、第1電圧信号Vx1が本発明における第1電圧信号に相当し、第2電圧信号Vx2が本発明における第2電圧信号に相当する。
このため、第1電圧信号Vx1の値と第2電圧信号Vx2の値が等しいときに、各第2圧電カンチレバー51A〜51D,52A〜52Dの屈曲変形の大きさが等しくなる(以下、この状態を「状態2A」という)。また、第1電圧信号Vx1の値が第2電圧信号Vx2の値より大きいときに、奇数番目の第2圧電カンチレバー51A,51C,52A,52Cの屈曲変形が、偶数番目の第2圧電カンチレバー51B,51D,52B,52Dの屈曲変形より大きくなる(以下、この状態を「状態2B」という)。また、第3電圧信号Vy1の値が第4電圧信号Vy2の値より小さいときに、奇数番目の第2圧電カンチレバー51A,51C,52A,52Cの屈曲変形が、偶数番目の第2圧電カンチレバー51B,51D,52B,52Dの屈曲変形より小さくなる(以下、この状態を「状態2C」という)。
図4(b)に示されるように、互いに逆位相の第1電圧信号Vx1と第2電圧信号Vx2とが、第2圧電アクチュエータ51,52に印加されるので、「状態2B→状態2A→状態2C(→状態2A…)」が繰り返される。このような第2圧電カンチレバー51A〜51D,52A〜52Dの動きにより、第1支持部4(ひいては反射部2)は、第2軸X周りで回転する。
詳細には、4番目の第2圧電カンチレバー51D,52Dは、第2支持部6と連結した基端部を支点として、その先端部に上方向の角度変位が発生する。3番目の第2圧電カンチレバー51C,52Cは、4番目の第2圧電カンチレバー51D,52Dの先端部と連結した基端部を支点として、その先端部に上方向の角度変位が発生する。
2番目の第2圧電カンチレバー51B,52Bは、3番目の第2圧電カンチレバー51C,52Cの先端部と連結した基端部を支点として、その先端部に上方向の角度変位が発生する。1番目の第2圧電カンチレバー51A,52Aは、2番目の第2圧電カンチレバー51B,52Bの先端部と連結した基端部を支点として、その先端部(第1支持部4と連結している)に上方向の角度変位が発生する。これにより、第2圧電アクチュエータ51,52では、各第2圧電カンチレバー51A〜51D,52A〜52Dの屈曲変形の大きさを累積した大きさの角度変位が発生する。
このようにして、第1支持部4を第2軸X周りに揺動することができ、所定の第2周波数Fxで所定の第2偏向角の光走査をすることができる。このとき、これらの第2圧電アクチュエータ51,52には、駆動電圧として第2圧電アクチュエータ51,52を含む第1支持部4の機械的な共振周波数付近の周波数の電圧信号を印加して共振駆動させることで、より大きな偏向角で光走査することができる。
また、第2圧電アクチュエータ51,52は、各第2圧電カンチレバー51A〜51D,52A〜52Dの屈曲変形の大きさを累積するように構成されているので、光偏向器1の機械的な共振周波数ではない非共振周波数の電圧信号を印加した場合であっても、充分に、光走査可能な偏向角を得ることができる。
また、第1支持部4を第2軸X周りに揺動する場合には、上述したように周期性を有する電圧信号を印加する必要はなく、直流の電圧信号を印加してもよい。この場合、第2圧電カンチレバー51A〜51D,52A〜52Dで発生する屈曲変形の大きさは、直流電圧の大きさに応じて線形的に変化する。従って、例えば周期性を有する電圧信号を印加して圧電カンチレバーを共振駆動させる場合と異なり、直流電圧の大きさを制御することで第2圧電アクチュエータ51,52から任意の出力を得ることができる。
このように、光偏向器1では、第2軸X周りに揺動する場合には、駆動電圧として印加した直流電圧の大きさに応じて線形的に偏向角を制御することができるので、任意の速度で任意の偏向角を得ることができる。
また、第2圧電アクチュエータ51,52は、各々がミアンダ形状に形成されている。これによって、各圧電カンチレバーの屈曲変形が累積されるように形成されている。このため、第2圧電アクチュエータ51,52は、第1圧電アクチュエータ31,32に比べて大きな偏向角を得やすい。
このため、本実施形態では、第1圧電アクチュエータ31,32によって揺動する場合には、なるべく大きな偏向角を得るために、第1圧電アクチュエータ31,32の上方向又は下方向の変位を変化させる周波数、すなわち第1周波数Fyを、光偏向器1(特に、圧電カンチレバー等)の構造及び材料等によって決定される共振周波数になるように設定している。
また、第2圧電アクチュエータ51,52は、各々が備えるカンチレバーの数が偶数(本実施形態では4つ)であるので、各圧電カンチレバー51A〜51D,52A〜52Dに電圧信号が印加されていないときの第1支持部4に対して、第1支持部4をバランスよく揺動させることができる。
また、第2圧電アクチュエータ51,52は、ミアンダ形状に形成されており、第1圧電アクチュエータ31,32に比べて揺動しやすい。このため、第2周波数Fxは、第1周波数Fyに比べて充分に低く設定されている。本実施形態では、例えば、第1周波数Fyを30[kHz]、第2周波数Fxを60[Hz]に設定している。なお、図4においては、各電圧波形を、高周波数と低周波数との違いを概念的に示すものであり、第1周波数Fyが30[kHz]、第2周波数Fxが60[Hz]のときの各波形を示すものではない。
以上のように、本実施形態の光偏向器1は、反射部2を第1軸Y周りに揺動すると共に第1支持部4を第2軸X周りに揺動することで、反射部2を様々な角度に駆動させることができ、反射面2aに入射した光を様々な角度に出射することができる。
第2圧電アクチュエータ51,52に、第1電圧信号Vx1及び第2電圧信号Vx2を印加することで、第2圧電カンチレバー51A〜51D,52A〜52Dが屈曲変形するとき、偶数番目の第2圧電カンチレバー51B,51D,52B,52Dの屈曲変形に伴って、偶数番目の第2圧電カンチレバー51B,51D,52B,52Dの検知用圧電体L21が屈曲変形する。このように、検知用圧電体L21が、駆動用の圧電体L2による偶数番目の第2圧電カンチレバー51B,51D,52B,52Dの屈曲変形と同じように屈曲変形するので、検知用上部電極L31と下部電極L1との間の電位差、ひいては、検知用電極パッド61e,62eと下部電極パッド61a,62aとの間の電位差は、該屈曲変形に応じた電位差となっている。
第1電圧信号Vx1と第2電圧信号Vx2とは、互いに180度位相が異なっているので、ミラー部としての第1支持部4の偏向角は、偶数番目の第2圧電カンチレバー51B,51D,52B,52D(又は奇数番目の第2圧電カンチレバー51A,51C,52A,52C)の屈曲変形に応じて決定される。従って、駆動用圧電体L2と共に屈曲変形する検知用圧電体L21から出力された電圧は、第1支持部4(又は反射面2a)の偏向角を高精度に示したものとなる。
従って、従来の「検知用圧電体が、駆動用圧電体を屈曲変形させる圧電カンチレバーとは異なる圧電カンチレバーに支持されている構成」に比べて、検知用圧電体L21が、駆動用の圧電体L2を屈曲変形させる圧電カンチレバー51B,51D,52B,52Dと同じ圧電カンチレバー51B,51D,52B,52Dに支持されているので、該検知用圧電体L21が、駆動用の圧電体L2及び圧電カンチレバー51B,51D,52B,52Dと同様に屈曲変形するため、非共振周波数で反射部2を第2軸X周りに揺動させる場合であっても、ミラー部としての第1支持部4(又は反射面2a)の偏向角を高精度に検知できる。
なお、第1電圧信号Vx1及び第2電圧信号Vx2の周波数が非共振周波数の場合に限らず、第1電圧信号Vx1及び第2電圧信号Vx2が、周期性を有する信号であり、該信号の周波数が光偏向器1の機械的な共振周波数の場合、又は第3電圧信号Vy1及び第2電圧信号Vx2が、直流電圧信号の場合であっても、該検知用圧電体L21が、駆動用の圧電体L2及び圧電カンチレバー51B,51D,52B,52Dと同様に屈曲変形するため、ミラー部としての第1支持部4(又は反射面2a)の偏向角を高精度に検知できる。
また、一方の第2圧電カンチレバー51A〜51Dの検知配線Wmが、一方の偶数番目の第2圧電カンチレバー51B,51Dの各々の圧電体L2を直列に接続しているので、該第2圧電カンチレバー51B,51Dの検知用圧電体L21が出力した電圧が加算された値が、一方の検知用電極パッド61eと一方の下部電極パッド61aとの間の電位差として出力される。同様に、他方の第2圧電カンチレバー52A〜52Dの検知配線Wmが、他方の偶数番目の第2圧電カンチレバー52B,52Dの各々の圧電体L2を直列に接続しているので、該第2圧電カンチレバー52B,52Dの検知用圧電体L21が出力した電圧が加算された値が、他方の検知用電極パッド62eと他方の下部電極パッド62aとの間の電位差として出力される。このようにして、検知用電極パッド61e,62eと下部電極パッド61a,62aとの間の電位差を大きくすることで、ノイズ等の影響を低下させることで、駆動用の圧電体L2による偶数番目の第2圧電カンチレバー51B,51D,52B,52Dの屈曲変形が高精度に検知され、ひいては、ミラー部としての第1支持部4(又は反射面2a)の偏向角を高精度に検知できる。
本願発明者は、上記のように構成された光偏向器1の作動の実験を行った。本実験では、第3電圧信号Vy1及び第4電圧信号Vy2として、尖頭値が30[V]及び周波数が30[kHz]の正弦波に、15[V]の直流成分を加えた、単極性の周期性を有する電圧信号を用いた。このとき、第3電圧信号Vy1及び第4電圧信号Vy2は、互いに逆位相に設定されている。また、第1電圧信号Vx1及び第2電圧信号Vx2として、尖頭値が30[V]及び周波数が60[Hz](非共振周波数)の正弦波に、15[V]の直流成分を加えた、単極性の周期性を有する電圧信号を用いた。このとき、第1電圧信号Vx1及び第2電圧信号Vx2は、互いに逆位相に設定されている。
これにより、一方の第1圧電カンチレバー31Aの圧電体L2に導通する第1駆動配線Wyには第3電圧信号Vy1が印加され、他方の第1圧電カンチレバー32Aの圧電体L2に導通する第1駆動配線Wyには第4電圧信号Vy2が印加され、第2奇数駆動配線Woには第1電圧信号Vx1が印加され、第2偶数駆動配線Weには第2電圧信号Vx2が印加される。従って、反射部2は、第1軸Y周りに30[kHz]の周波数で揺動し、第2軸X周りに60[Hz]の周波数で揺動する。
このとき、検知用電極パッド61e,62eと下部電極パッド61a,62aとの間の電位差を表す検知信号Sxを、オシロスコープ等の測定器により測定した。この結果、図4(c)に示されるように、検知信号Sxは、尖頭値が150[mV]、周波数が60[Hz]の正弦波に直流成分を加えた、単極性の周期性を有する信号に近い信号として観測された。
また、このときの、第2電圧信号Vx2の値に対する反射部2の偏向角(実線)及び検知信号Sxの値(破線)の関係を図5に示す。図5において、横軸は、所定の時点における第2電圧信号Vx2の電圧の値を示す。また、図5において、縦軸は、反射部2の偏向角(実線)においては角度(単位は、[deg])を示し、検知信号Sx(破線)においては電位差の値(単位は、[V])を示す。
図5において、駆動電圧(第2電圧信号Vx2の電圧の値)の変化に応じた、反射部2の偏向角は、非線形的に変化していることが分かる。このように、圧電体L2の圧電効果には、非線形性の電歪効果が含まれている。本発明者は、特許文献1に記載されているような従来の「駆動用圧電体が、奇数番目の圧電カンチレバーのみで支持され、検知用圧電体が、偶数番目の圧電カンチレバーのみで支持されている」構成の光偏向器においては、この非線形的に変化した部分の誤差が特に大きかった。しかしながら、本実施形態の光偏向器1においては、図5に破線で示されているように、検知信号Sxは、反射部2の偏向角とほぼ同様の非線形的な変化をしていることが分かる。このように、第2電圧信号Vx2に非共振周波数の電圧信号を用いた場合であっても、ミラー部としての第1支持部4(又は反射面2a)の偏向角を高精度に検知できる。
なお、本実施形態の光偏向器1は、反射部2を第1軸Yと第2軸Xとの2軸周りに揺動させることができるように構成されているが、反射部2を第2軸Xの1軸周りにのみ揺動させることが可能に構成されていてもよい。この場合には、光偏向器は、本実施形態の第1支持部4及び第1圧電アクチュエータ31,32を備えずに、第2圧電アクチュエータ51,52の1番目の第2圧電カンチレバー51A,52Aが、反射部2に連結されているように構成される。この場合であっても、ミラー部としての第1支持部4(又は反射面2a)の偏向角を高精度に検知できるという本発明の効果が得られる。
また、本実施形態の光偏向器1は、検知用圧電体L21を、偶数番目の第2圧電カンチレバー51B,51D,52B,52Dが備えているが、奇数番目の第2圧電カンチレバー51A,51C,52A,52Cが備えていてもよい。
また、本実施形態の光偏向器1では、検知用圧電体L21を備えていない第2圧電カンチレバー(すなわち、奇数番目の第2圧電カンチレバー)51A,51C,52A,52Cの、圧電体L2の幅を、下部電極L1とほぼ同等の幅としているが、これに限らず、例えば、検知用圧電体L21を備えている第2圧電カンチレバー(すなわち、偶数番目の第2圧電カンチレバー)51B,51D,52B,52Dの圧電体L2の幅と同じにしてもよい。
また、本実施形態では、第1軸Yと第2軸Xとを直交するようにしているが正確に直交する必要はなく、反射面2aを二軸周りに揺動可能な程度の角度で交差していればよい。
また、本実施形態の光偏向器1では、一対の第2圧電アクチュエータ51,52の各々が4つの圧電カンチレバーを備えているが、圧電カンチレバーの本数は何本であってもよい。
また、本実施形態の光偏向器1は、第1圧電アクチュエータ31,32を反射部2を挟んで対向するように配置し、第1支持部4を反射部2及び第1圧電アクチュエータ31,32を囲むように形成し、第2圧電アクチュエータ51,52を第1支持部4を挟んで対向するように配置して第2圧電カンチレバー51A〜51D,52A〜52Dをミアンダ形状に形成し、第2支持部6を第1支持部4及び第2圧電アクチュエータ51,52を囲むように形成しているがこれに限らない。
例えば、第1圧電アクチュエータ及び第2圧電アクチュエータを、本実施形態の光偏向器1の第2圧電アクチュエータ51,52のように所謂ミアンダ形状に形成してもよい。この場合には、第1圧電アクチュエータが各圧電カンチレバーの屈曲変形を累積できるように構成されるので、第1圧電アクチュエータに印加する電圧の周波数は、第1圧電アクチュエータを含むミラー部の機械的な共振周波数である必要はない。このような場合には、第1圧電アクチュエータに印加する電圧の周波数が、第2圧電アクチュエータに印加する電圧の周波数より低くてもよい。
また、各圧電カンチレバーに配置される上部電極配線Wの各々の配線Wo,We,Wm,Wyの順番は、本実施形態のものに限らず、どのような順番であってもよい。