以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
実施例1
1.画像形成装置の全体構成
図1は、本発明の一実施例に係る画像形成装置の模式的な断面図である。本実施例の画像形成置100は、電子写真方式を利用してフルカラー画像の形成が可能な中間転写方式を採用したインライン式(タンデム型)のレーザービームプリンタである。
画像形成装置100は、複数の画像形成部として、第1、第2、第3、第4の画像形成部(ステーション)Sa、Sb、Sc、Sdを有する。そして、複数色成分に分解された画像情報に従って各画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdで形成した各色のトナー像を、中間転写体としての中間転写ベルト6上に順次重ね合わせて一次転写した後、転写材Pに一括して二次転写することで記録画像を得る。
本実施例では、各画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdは、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナー像を形成する。各画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdの基本的な構成及び動作は、使用するトナーの色を除いて実質的に同一である。従って、以下、特に区別を要しない場合は、いずれかの色用に設けられた要素であることを示す符号の末尾のa、b、c、dは省略して、総括的に説明する。
画像形成部Sは、像担持体としてのドラム型の電子写真感光体(感光体)である感光ドラム1を有する。感光ドラム1は、駆動手段としての駆動モータ(図示せず)によって図1中の矢印R1方向(反時計回り)に回転駆動される。感光ドラム1の周囲には、その回転方向に沿って次の各手段が配置されている。先ず、帯電手段としてのローラ型の帯電部材である帯電ローラ2である。次に、露光手段(静電像形成手段)としての露光装置(レーザースキャナー)3である。次に、現像手段としての現像装置4である。次に、一次転写手段としてのブラシ状の転写部材である一次転写ブラシ5である。次に、感光体クリーニング手段としてのドラムクリーナ7である。
各感光ドラム1a、1b、1c、1dの図中下方に、トナー像を記録材Pに転写するための転写装置(転写ユニット)60が配置されている。転写装置60は、各感光ドラム1a、1b、1c、1dと対向するように、被転写体としての中間転写体である中間転写ベルト6を有する。中間転写ベルト6は、駆動ローラ61、二次転写対向ローラ62及びテンションローラ63の3個のローラに張架された、円筒状、且つ、無端ベルト状のフィルムで構成されている。中間転写ベルト6は、駆動ローラ61が図1中の矢印R2方向(時計回り)に回転駆動されることによって、感光ドラム1の表面の移動速度と略同じ速度で、図1中の矢印R3方向(時計回り)に回転(周回移動)する。中間転写ベルト6の内周面側において、中間転写ベルト6を挟んで各感光ドラム1a、1b、1c、1dと対向する位置に、上記一次転写ブラシ5a、5b、5c、5dがそれぞれ配置されている。各一次転写ブラシ5a、5b、5c、5dは、中間転写ベルト6を介して各感光ドラム1a、1b、1c、1dに押圧され、各感光ドラム1a、1b、1c、1dと中間転写ベルト6との接触部に一次転写部N1a、N1b、N1c、N1dが形成されている。又、中間転写ベルト6の外周面側において、二次転写対向ローラ62と対向する位置には、二次転写手段としてのローラ型の転写部材である二次転写ローラ8が配置されている。二次転写ローラ8は、中間転写ベルト6を介して二次転写対向ローラ62に押圧され、中間転写ベルト6と二次転写ローラ8との接触部に二次転写部N2が形成されている。又、中間転写ベルト6の外周面側において、駆動ローラ61と対向する位置には、中間転写体クリーニング手段としてのベルトクリーナ65が配置されている。
又、画像形成装置100は、二次転写部N2に記録用紙、OHPシートなどとされる記録材Pを供給する記録材供給装置10、二次転写部N2よりも記録材Pの搬送方向の下流側に設けられた定着手段としての定着装置9などを有する。
画像形成時には、感光ドラム1が回転駆動され、回転する感光ドラム1の表面が帯電ローラ2により略一様に帯電される。このとき、帯電ローラ2には、本実施例では所定の直流電圧とされる帯電電圧(帯電バイアス)が印加される。詳しくは後述するように、本実施例では、各画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdの帯電ローラ2a、2b、2c、2dには、帯電電圧印加手段としての独立した帯電電源(高圧電源)20(図3)から帯電電圧が印加される。
略一様に帯電した感光ドラム1の表面は、感光ドラム1の回転によって露光装置3による露光位置に至り、露光装置3により画像情報に従ったレーザ光Lが照射される。これにより、感光ドラム1上に画像情報に従った静電像(静電潜像)が形成される。
感光ドラム1上に形成された静電像は、感光ドラム1の回転によって現像装置4との対向部(現像位置)に至り、現像装置4により現像剤としてのトナーでトナー像として現像(可視化)される。本実施例では、静電像を現像するトナーの意図された帯電極性(正規の帯電極性)は負極性である。本実施例では、現像装置4は、略一様に帯電された後に露光によって電位の絶対値が低下した感光ドラム1上の画像部(露光部)に、感光ドラム1の帯電極性(本実施例では負極性)と同極性に帯電したトナーを付着させて静電像の現像(反転現像)を行う。
感光ドラム1上に形成されたトナー像は、感光ドラム1の回転によって一次転写部N1に至り、一次転写ブラシ5に印加される一次転写電圧(一次転写バイアス)の作用により、中間転写ベルト6の外周面上に転写(一次転写)される。本実施例では、一次転写電圧は、トナーの正規の帯電極性とは逆極性(本実施例では正極性)の直流電圧である。詳しくは後述するように、本実施例では、各画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdの一次転写ブラシ5a、5b、5c、5dには、一次転写電圧印加手段としての共通の一次転写電源(高圧電源)50から共通の一次転写電圧が印加される。又、詳しくは後述するように、一次転写電源50によって供給される一次転写電流(転写電流)は、共通の一次転写電流検知回路(電流検知回路)51により検知される。
ここで、図3に示すように、一次転写ブラシ5は、支持部材52に支持されており、該支持部材52を介して一次転写部材5とは反対側に設けられた付勢手段としてのバネ53により支持部材52が中間転写ベルト6に向けて付勢されている。これにより、一次転写部材5は、中間転写ベルト6を介して感光ドラム1に押圧されている。
一次転写工程において中間転写ベルト6に転写されずに感光ドラム1上に残留したトナー(一次転写転写残トナー)は、感光ドラム1の回転によってドラムクリーナ7との対向部(クリーニング位置)に至り、ドラムクリーナ7により除去されて回収される。ドラムクリーナ7は、クリーニング部材としてのクリーニングブレード72によって、回転する感光ドラム1の表面から一次転写残トナーを掻き取り、廃トナー容器71に収容する。
例えばフルカラー画像形成時には、上述のような帯電、露光、現像、一次転写の各工程が、中間転写ベルト6の外周面の移動方向の上流側の画像形成部Sから順番に、各画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdで行われる。これにより、中間転写ベルト6の外周面上に4色のトナー像が重なったフルカラー画像用のトナー像が形成される。
中間転写ベルト6の外周面上に形成されたトナー像は、中間転写ベルト6の回転によって二次転写部N2に至り、二次転写ローラ8に印加される二次転写電圧(二次転写バイアス)の作用により、転写材P上に転写(二次転写)される。本実施例では、二次転写電圧は、トナーの正規の帯電極性とは逆極性(本実施例では正極性)の直流電圧である。二次転写ローラ8には、二次転写電圧印加手段としての二次転写電源(高圧電源)80から二次転写電圧が印加される。又、二次転写電源80によって供給される二次転写電流(転写電流)は、二次転写電流検知回路(電流検知回路)81により検知される。
記録材Pは、記録材供給装置10によって、二次転写部N2に供給される。即ち、カセット11に収容されている転写材Pは、供給ローラ12により送り出され、その後レジストローラ13により所定のタイミングで二次転写部N2に供給される。それとほぼ同時に、二次転写ローラ8に二次転写電源80から二次転写電圧が印加される。
二次転写工程において転写材P上に転写されずに中間転写ベルト6上に残留したトナー(二次転写残トナー)は、感光ドラム1の回転によってベルトクリーナ65との対向部(クリーニング位置)に至り、ベルトクリーナ65により除去されて回収される。ベルトクリーナ65は、クリーニング部材としてのクリーニングブレード66によって、回転する中間転写ベルト6の外周面から二次転写残トナーを掻き取り、廃トナー容器64に収容する。
トナー像が転写された転写材Pは、定着装置9へと搬送され、定着ローラ91と加圧ローラ92との間に形成される定着ニップにおいて挟持されて搬送されることで、熱と圧力とが付与され、その上のトナー像が定着される。
その後、トナー像が定着された転写材Pは、搬送ローラ(図示せず)などにより、図1中の矢印R4で示すように機外に搬送される。
本実施例では、各画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdにおいて、感光ドラム1と、これに作用するプロセス手段としての帯電ローラ2、現像装置4及びドラムクリーナ7とは、一体的にプロセスカートリッジ110を構成している。プロセスカートリッジ110は、交換可能な画像形成ユニットとして、画像形成装置100の装置本体に対して着脱可能とされており、例えば現像装置4内のトナー残量が無くなった際に新品のプロセスカートリッジ110と交換される。
又、本実施例では、転写装置60は、交換可能な画像形成ユニットとして、画像形成装置100の装置本体に対して着脱可能なように構成されている。
本実施例では、第1、第2、第3、第4の画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdは、それぞれ上記感光ドラム1、帯電ローラ2、露光装置3、現像装置4、一次転写ブラシ5及びドラムクリーナ7を有して構成されている。
2.制御態様
図6は、本実施例の画像形成装置100の要部の概略制御態様を示す。画像形成装置100の動作は、画像形成装置100に設けられた制御部150が統括的に制御する。制御部150は、制御手段としてのCPU151、記憶手段としてのROM152、RAM153などを有する。そして、制御部150は、CPU151において、ROM152に格納され、必要に応じてRAM153に読み出されたプログラムやデータに従って、画像形成装置100の各部の動作を制御する。
本実施例との関係では、制御部150は、帯電電源20、一次転写電源50、二次転写電源80などの高圧電源のON/OFF、出力値の制御を行う。又、制御部150には、一次転写電流検知回路51、二次転写電流検知回路81の検知結果に係る信号が入力される。
そして、詳しくは後述するように、本実施例では、制御部150のCPU151は、帯電電源20から帯電ローラ2に出力する電圧を設定する設定手段として機能する。又、制御部150のCPU151と、一次転写電源50と、一次転写電流検知回路51とで、一次転写手段に定電流制御された電圧を出力しているときの電圧値又は定電圧制御された電圧を出力しているときの電流値を検知する検知手段が構成される。又、制御部150のCPU151は、上記検知を実行させる実行手段としても機能する。更に、本実施例では、制御部150のCPU151は、一次転写電源50から一次転写ブラシ5に画像形成時に出力する電圧を決定する決定手段としても機能する。
CPU151は、一次転写電流検知回路51からの電圧信号、プロセス速度情報、環境情報、廃トナーカウント情報などに基づいて一次転写電源50を制御するワンチップマイクロコンピュータで構成できる。
3.ATVC制御
本実施例では、中間転写ベルト6の材料として、イオン導電性を有するPEN(ポリエチレンナフタレート)を用いている。そのため、中間転写ベルト6は、そのイオン導電の材料の特性上、電気抵抗が環境の温度や湿度に伴って大きく変動することがある。
一方、本実施例では、一次転写部材としては、中間転写ベルト6の内周面に接触してこれを摺擦する一次転写ブラシ5を用いている。この一次転写ブラシ5の中間転写ベルト6の内周面に接触する先端部には、一次転写ブラシ5と中間転写ベルト6の内周面との間での摺擦により発生する中間転写ベルト6や一次転写ブラシ5の摩耗粉などの付着物が付着する場合がある。そのため、一次転写ブラシ5は、使用量の増加によって電気抵抗が上昇することがある。
本実施例の画像形成装置100は、このような環境変動や耐久変動が生じた場合でも画像形成時に最適な一次転写電圧を選択できるように、ATVC制御(Active Transfer Voltage Control)を実行する。ATVC制御では、概略、画像形成を行う前に画像形成部の電気抵抗を検知する。そして、その結果に基づいて画像形成時の一次転写電圧を決定する。詳細な制御方法については後述する。
本実施例では、ATVC制御は、非画像形成時としての画像形成動作前の前回転動作時に画像形成毎に行なわれる。前回転動作とは、画像形成装置100に画像形成開始指示が入力されて、感光ドラム1、中間転写ベルト6などの回転駆動が開始されてから実際に中間転写ベルト6にトナー像が転写されるまでの間に行われる準備動作である。
尚、ATVC制御を行い得る非画像形成時としては、次のものが挙げられる。画像形成装置の電源投入時やスリープモードからの復帰時などの定着温度の立ち上げなどのための所定の準備動作が実行される前多回転動作時がある。又、画像形成信号が入力されてから実際に画像情報に応じた画像を書き出すまでに所定の準備動作が実行される上記前回転動作時がある。又、連続画像形成時の記録材と記録材との間に対応する紙間時がある。又、画像形成が終了した後に所定の整理動作(準備動作)が実行される後回転動作時がある。
ここで、詳しくは後述するように、本実施例では、帯電ローラ2は、可変電源回路とされる帯電電源20により帯電電圧が印加され、感光ドラム1の表面を正極性の電位から負極性の電位までの所定の範囲内の任意の電位に帯電させることが可能である。
通常、ATVC制御時には、画像形成時と同様に、感光体の表面を−600V程度に帯電させ、一次転写部材に+200V程度の電圧を印加し、その時に一次転写部材と感光体との間に流れる電流値を検知する。そして、画像形成時には、その電流値に基づいて決定された所定の一次転写電圧を一次転写部材に印加して画像形成を行う。仮に、感光体の帯電電位が、−600Vではなく、より正極性側に高い(絶対値の小さい)−200V又は0Vであった場合には、一次転写部材に+200Vの電圧を印加しても、一次転写部材と感光体との電位差は400V又は200Vとなる。この場合、一次転写部材と感光体との間には、放電開始電位差(放電可能電位差)である約500Vに満たない電位差しか形成されないため、一次転写部材と感光体との間には電流が流れないか、又はその電流の絶対値は無視できる程度に小さい。
このように、帯電電源20から帯電ローラ2に出力する電圧を調整して感光ドラム1の帯電電位を調整することで、一次転写ブラシ5と感光ドラム1との間に電流が流れないか、又はその電流の絶対値を無視できる程度に小さくできる。ここでは、このような状態を、一次転写ブラシ5と感光ドラム1との間が見掛け上電気的に遮断されている状態、或いは一次転写ブラシ5(中間転写ベルト6)と感光ドラム1とが擬似的に離間された状態という。
4.一次転写電源及び一次転写電流検知回路
図2(a)は、本実施例の画像形成装置100における一次転写ブラシ5に対する一次転写電圧の印加構成を模式的に示し、図2(b)はその等価回路を示す。尚、図中のRda、Rdb、Rdc、Rddは感光ドラム1の電気抵抗を示し、Ra、Rb、Rc、Rdは主に中間転写ベルト6や一次転写ブラシ5の電気抵抗とされる一次転写部Nの電気抵抗を示す。
本実施例では、装置の小型化や低コスト化などのために、一次転写ブラシ5に電力供給を行う一次転写電源50は、全ての画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdで共通化されている。又、本実施例では、一次転写電流検知回路51は、全ての画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdで共通化されている。
図2(a)では、各画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdの一次転写ブラシ5a、5b、5c、5dには、共通の一次転写電源50から同一(共通)の一次転写電圧Vが印加されている。又、各画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdの帯電ローラ2a、2b、2c、2dには、感光ドラム1a、1b、1c、1dの表面を略均一に負極性の所定の電位に帯電させるために、負極性の所定の帯電電圧Vtが印加されている。このとき、感光ドラム1の表面は、帯電ローラ2に印加した帯電電圧Vtよりも若干正極性側に高い(絶対値の小さい)電位Vtmに帯電させられる。
そして、図2(b)に示すように、各画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdの電気抵抗Ra、Rb、Rc、Rdに流れる電流Ia、Ib、Ic、Idは、それぞれIa=V/Ra、Ib=V/Rb、Ic=V/Rc、Id=V/Rdとなる。
この場合、各画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdに流れる上記電流を合計した電流Iall=Ia+Ib+Ic+Idが、一次転写電流検知回路51で検知される。
一方、図2(c)、(d)は、図2(a)、(b)と同様の図であるが、第1の画像形成部Saの帯電ローラ2aにその他の画像形成部Sb、Sc、Sdの帯電ローラ2b、2c、2dとは異なる電圧が印加されている場合を示している。
図2(c)では、第1の画像形成部Saの帯電ローラ2aには、その他の画像形成部Sb〜Sdよりも正極性側に高い(絶対値の小さい)電圧Vtdが印加されている。この電圧Vtdとは、感光ドラム1と一次転写ブラシ5との間で放電が発生しない程度にしか感光ドラム1を帯電させない値の電圧である。即ち、第1の画像形成部Saでは、感光ドラム1の電位を、感光ドラム1と一次転写ブラシ5との間の電位差が放電開始電位差未満の電位差になるようにする電圧Vtdが、帯電ローラ2に印加されている。その他の画像形成部Sb、Sc、Sdでは、感光ドラム1の電位を、感光ドラム1と一次転写ブラシ5との間の電位差が放電開始電位差以上の電位差になるようにする電圧Vtが、帯電ローラ2に印加されている。
従って、第1の画像形成部Saの感光ドラム1aの表面電位Vtmdは、その他の画像形成部Sb、Sc、Sdの感光ドラム1b、1c、1dの表面電位Vtmよりも正極性側に高く(絶対値が小さく)なる。そして、第1の画像形成部Saでは、一次転写ブラシ5aと感光ドラム1aとの間に電流が流れないため、第1の画像形成部Saでは、一次転写ブラシ5aと感光ドラム1aとが疑似的に離間された状態となる。
この場合、第2、第3、第4の画像形成部Sb、Sc、Sdにおいてのみ、一次転写ブラシ5b、5c、5dと感光ドラム1b、1c、1dとの間に流れる。そのため、第2、第3、第4の画像形成部に流れる上記電流を合計した電流Iall=Ib+Ic+Idが、一次転写電流検知回路51で検知される。
5.帯電電源(可変電源回路)
図3(a)は、本実施例の画像形成装置100における帯電ローラ2に対する帯電電圧の印加構成を模式的に示し、図3(b)はその等価回路を示す。
本実施例では、各画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdの帯電ローラ2a、2b、2c、2dには、それぞれ独立した可変電源回路とされる帯電電源20が接続されている。そして、各帯電ローラ2a、2b、2c、2dは、各感光ドラム1a、1b、1c、1dの表面を所定の範囲の任意の電位(例えば+200V〜−700V)に帯電させることが可能である。
帯電電源20は、所定の範囲で可変の正極性の電圧(プラスバイアス)を出力する正電圧出力部21と、所定の範囲で可変の負極性の電圧(マイナスバイアス)を出力する負電圧出力部22とを有する。正電圧出力部21は、例えば+100V〜+800Vの電圧を出力できるようになっている。又、負電圧出力部22は、例えば−100V〜−800Vの電圧を出力できるようになっている。
そして、本実施例では、次のようにして、各画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdのうち任意の画像形成部Sの電気抵抗を、一次転写電流検知回路51を用いて検知できるようにする。
先ず、電気抵抗の検知を行いたい画像形成部Sにおいて、帯電電源20の負電圧出力部22の出力の絶対値を大きくし、反対に正電圧出力部21の出力の絶対値を小さくする。これにより、その画像形成部Sにおいて、感光ドラム1の帯電電位と一次転写ブラシ5との間の電位差を、放電開始電位差である約500V以上にして、その画像形成部Sで感光ドラム1と一次転写ブラシ5との間で電流が流れるようにする。そして、そのときの電流値、電圧値から、その画像形成部Sの電気抵抗を検知する。
一方、その際に、電気抵抗の検知を行わない画像形成部Sでは、帯電電源20の負電圧出力部22の出力の絶対値を小さくし、反対に正電圧出力部21の出力の絶対値を大きくする。これにより、その画像形成部Sにおいて、感光ドラム1の帯電電位と一次転写ブラシ5との間の電位差を、放電開始電位差である約500V未満にして、その画像形成部Sで感光ドラム1と一次転写ブラシ5との間で電流が流れないようにする。即ち、その画像形成部Sにおいて、一次転写ブラシ5と感光ドラム1とを擬似的に離間された状態とする。本実施例では、このとき実際には、各画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdの一次転写ブラシ5はいずれも、中間転写ベルト6を介して感光ドラム1に当接された状態に維持される。
このように、本実施例では、各画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdにおいて、帯電ローラ2に正極性の電圧と負極性の電圧との両方を印加できるような回路を設ける。そして、各画像形成部Sの各帯電ローラ2に印加する電圧を可変として、各一次転写部N1における一次転写ブラシ5と感光ドラム1との間の電位差を可変とする。これにより、任意の画像形成部Sの電気抵抗を、一次転写電流検知回路51を用いて検知できる。
6.シーケンス
図4は、本実施例におけるATVC制御の手順を示す。又、図5(a)、(c)、(e)、(g)、(i)は、本実施例におけるATVC制御の各過程における各画像形成部Sにおける電圧印加設定を示し、図5(b)、(d)、(f)、(h)、(j)は同各過程における等価回路を示す。尚、図5では、感光ドラム1は、実質的に帯電電圧と同じ電位に帯電されるものとし、又画像形成部Sの電気抵抗は主に中間転写ベルト6や一次転写ブラシ5の電気抵抗とされる一次転写部N1の電気抵抗で代表している。
CPU151は、パーソナルコンピュータなどのホスト情報機器から画像形成開始指示(プリント信号)受け取ると、各種モータや各種電圧の立ち上げ動作などを行う前回転動作を開始させる(S101)。
その後、CPU151は、前回転動作時に、第1、第2、第3、第4の画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdの電気抵抗の検知動作を順次に行わせる(S102、S103、S104、S105)。S102、S103、S104、S105では、それぞれ次のS201〜S204に従う動作が行われる。
先ず、S102の第1の画像形成部Saの電気抵抗の検知動作では、S201において、CPU151は、図5(a)に示すように、第1の画像形成部Saの帯電ローラ2aに負極性側に大きい電圧Vtを印加させる。一方、CPU151は、第2、第3、第4の画像形成部Sb、Sc、Sdの帯電ローラ2b、2c、2dに正極性側に大きい電圧Vtdを印加させる。これにより、第2、第3、第4の画像形成部Sb、Sc、Sdでは、感光ドラム1と一次転写ブラシ5との間で放電が発生せず、電流が流れないため、一次転写ブラシ5と感光ドラム1とが疑似的に離間された状態となる。この状態では、第1の画像形成部Saだけに電流が流れているため、一次転写電流検知回路51によってこの第1の画像形成部Saに流れている電流値を検知する。そして、その電流値とその際に一次転写電源50が出力している電圧値とから、第1の画像形成部Saの電気抵抗を検知できる。
次に、S102の第1の画像形成部Saの電気抵抗の検知動作では、S202において、CPU151は、図5(b)に示すように、一次転写電源50を目標電流Itで定電流制御させる。尚、所定値を超えて高い電圧になった場合は検知を中止する。
次に、S102の第1の画像形成部Saの電気抵抗の検知動作では、S203において、CPU151は、図5(b)に示すように、定電流制御時の一次転写電源50の発生電圧Vatを所定時間検知し、その結果をRAM153に記憶する。そして、計算式Ra=Vat/Itにより、第1の画像形成部Saの電気抵抗Raを算出する。尚、電圧Vatは、上記所定時間検知した電圧値を平均するなどの所定の統計処理を施した値であってよい。
次に、S102の第1の画像形成部Saの電気抵抗の検知動作では、S204において、CPU151は、一次転写電源50による一次転写ブラシ5への電流供給と帯電電源20による帯電ローラ2への電圧供給を終了する。
S103、S104、S105の第2、第3、第4の画像形成部Sb、Sc、Sdの電気抵抗の検知動作においても、上記同様にして、S201〜S204の動作が行われる。
但し、S103の第2の画像形成部Sbの電気抵抗の検知動作では、S201において、CPU151は、図5(c)に示すように、第2の画像形成部Sbの帯電ローラ2bに負極性側に大きい電圧Vtを印加させる。一方、CPU151は、第1、第3、第4の画像形成部Sa、Sc、Sdの帯電ローラ2a、2c、2dに正極性側に大きい電圧Vtdを印加させる。これにより、第1、第3、第4の画像形成部Sa、Sc、Sdでは、感光ドラム1と一次転写ブラシ5との間で放電が発生せず、電流が流れないため、一次転写ブラシ5と感光ドラム1とが疑似的に離間された状態となる。これにより、図5(d)に示すように、第2の画像形成部Sbにのみ電流を流して、計算式Rb=Vbt/Itにより、第2の画像形成部Sbの電気抵抗Rbを算出する。
又、S104の第3の画像形成部Scの電気抵抗の検知動作では、S201において、CPU151は、図5(e)に示すように、第3の画像形成部Scの帯電ローラ2cに負極性側に大きい電圧Vtを印加させる。一方、CPU151は、第1、第2、第4の画像形成部Sa、Sb、Sdの帯電ローラ2a、2b、2dに正極性側に大きい電圧Vtdを印加させる。これにより、第1、第2、第4の画像形成部Sa、Sb、Sdでは、感光ドラム1と一次転写ブラシ5との間で放電が発生せず、電流が流れないため、一次転写ブラシ5と感光ドラム1とが疑似的に離間された状態となる。これにより、図5(f)に示すように、第3の画像形成部Scにのみ電流を流して、計算式Rc=Vct/Itにより、第3の画像形成部Scの電気抵抗Rcを算出する。
更に、S105の第4の画像形成部Sdの電気抵抗の検知動作では、S201において、CPU151は、図5(g)に示すように、第4の画像形成部Sdの帯電ローラ2dに負極性側に大きい電圧Vtを印加させる。一方、CPU151は、第1、第2、第3の画像形成部Sa、Sb、Scの帯電ローラ2a、2b、2cに正極性側に大きい電圧Vtdを印加させる。これにより、第1、第2、第3の画像形成部Sa、Sb、Scでは、感光ドラム1と一次転写ブラシ5との間で放電が発生せず、電流が流れないため、一次転写ブラシ5と感光ドラム1とが疑似的に離間された状態となる。これにより、図5(h)に示すように、第4の画像形成部Sdにのみ電流を流して、計算式Rd=Vdt/Itにより、第4の画像形成部Sdの電気抵抗Rdを算出する。
その後、CPU151は、S102〜S105で得られた各画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdの電気抵抗Ra、Rb、Rc、Rdの算出結果を用いて、画像形成時に各一次転写ブラシ5a、5b、5c、5dに印加する一次転写電圧Vpを決定する(S106)。ここで、本実施例では、各画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdの電気抵抗Ra、Rb、Rc、Rdと、各種情報と、に鑑みて最適化された画像形成時の一次転写電圧Vpを決定する。
具体的には、例えば、各画像形成部Sa〜Sdの電気抵抗Ra〜Rdから、最も電気抵抗が高く、良好な転写効率を得るために正極性側に高い一次転写電圧が望まれる画像形成部Sに合わせて、画像形成時の一次転写電圧を決定することができる。この場合、例えば、CPU151が、ROM152に予め設定されている最も電気抵抗が高い画像形成部Sの電気抵抗と画像形成時の一次転写電圧とを関係付ける情報(テーブルなど)を用いて画像形成時の一次転写電圧を決定する。尚、このテーブルなどの情報は、環境情報(温度、湿度、又は温度及び湿度の情報など)に対応して複数設けられていてよい。そして、CPU151が、画像形成部Sの電気抵抗の検知結果の他、環境検知手段としての温湿度センサ(図示せず)などの検知信号に応じて画像形成時の一次転写電圧を決定できるようになっていてよい。
その後、CPU151は、画像形成を開始させて、上記画像形成時の一次転写電圧Vpを所定のタイミングで各一次転写ブラシ5a〜5dに印加させ、各画像形成部Sa〜Sdの感光ドラム1上のトナー像を中間転写ベルト6の外周面上に転写させる(S107)。画像形成時には、CPU151は、帯電ローラ2に帯電電圧Vtを印加させると共に、一次転写電源50を上述のようにして決定した一次転写電圧Vpで定電圧制御させる(図5(i)、(j))。
その後、CPU151は、各画像形成部Sa〜Sdの感光ドラム1上のトナー像を中間転写ベルト6の外周面へ転写させた後に、各一次転写ブラシ5a〜5dへの画像形成時の一次転写電圧Vpの印加を終了させ、画像形成を終了させる(S108)。
このように、本実施例によれば、各画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdの電気抵抗を個別に検知できる。これにより、各画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdの個別の電気抵抗を反映した最適な画像形成時の一次転写電圧を選択できる。そのため、一次転写電源50及び一次転写電流検知回路51を共有化して装置の小型化や低コスト化を図りつつ、より安定して良好な画像を形成できる。
尚、上述のような各画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdの電気抵抗を個別に算出することに加えて、全ての画像形成部Sb、Sb、Sc、Sdの合成抵抗を求める動作を行ってもよい。この場合、ATVCにおける電気抵抗の検知動作で、全ての画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdにおいて帯電ローラ2に負極性側に大きい電圧Vtを印加して、全ての画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdに電流を流す。そして、この際に流す電流値と発生電圧値とから合成抵抗を算出する。そして、各画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdの個別の電気抵抗の算出結果と、全ての画像形成部Sb、Sb、Sc、Sdの合成抵抗の算出結果とに基づいて、画像形成時に各一次転写ブラシ5a、5b、5c、5dに印加する一次転写電圧Vpを決定する。
具体的には、例えば、通常であれば最適な一次転写電圧値を上記合成抵抗に基づいて決定すると共に、各画像形成部の個別の電気抵抗に基づいてその他の考慮要素に応じてその最適な一次転写電圧値を補正することが可能である。その他の考慮要素としては、後述する廃トナー漏れリスク、再転写の抑制などがあり、詳しい制御については後述する。
尚、上述では、検知手段は、転写電源が複数の画像形成部の転写手段に定電流制御された電圧を印加しているときの電圧値を検知するものとしたが、これに限定されるものではなく、定電圧制御された電圧を印加しているときの電流値を検知するものであってもよい。又、上述では検知手段の検知結果から画像形成部の電気抵抗を算出するものとして説明したが、画像形成部の電気抵抗に対応する情報が検知できればよい。画像形成部の電気抵抗に対応する情報としては、電気抵抗の算出結果の他、電流や電圧の検知結果が挙げられる。
又、上述では全ての画像形成部の電気抵抗を個別に検知するものとして説明したが、複数の画像形成部のうち少なくとも一部である、個別の画像形成部の電気抵抗又は複数の画像形成部の合成抵抗を検知することができる。複数の画像形成部のうち少なくとも一部の電気抵抗の検知結果を用いて画像形成時の一次転写電圧を決定できればよい。
7.応用例
次に、上述のATVC制御における各画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdの電気抵抗の検知動作の応用例について説明する。
7−1.廃トナー漏れリスク判断
例えば、ある一色に偏った画像を形成するなどして、トナーの消費量が極端に少なくなる画像形成部が生じることがある。この場合、その画像形成部以外の画像形成部のトナーの消費量は通常通りであるため、トナーの消費量が極端に少なくなる画像形成部以外の画像形成部の画像形成ユニットのみが新品の画像形成ユニットと交換されることになる。この場合、交換されない画像形成ユニットは使用量が増加し、廃トナーが多くなるため、廃トナー容器から廃トナーが漏れ出してしまうおそれ(廃トナー漏れリスク)がある。
そのため、上記廃トナー漏れリスクを低減することをも考慮して、画像形成時に各画像形成部の一次転写部材に印加する最適な一次転写電圧を選択することが望まれる。例えば、上記廃トナー漏れリスクのある画像形成部において転写効率を上げ、その画像形成部における廃トナー量を減らして、廃トナー漏れのリスクを低減できる。
しかし、一次転写電源や一次転写電流検知回路が共通化されている従来の画像形成装置では、各画像形成部の電気抵抗を個別に検知することができないため、各画像形成部の個別の電気抵抗を反映した最適な一次転写電圧を選択することは難しい。
これに対して、本実施例のATVC制御によれば、各画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdの電気抵抗を算出し、その値からそれぞれの画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdの廃トナー容器71から廃トナーが漏れるおそれ(廃トナー漏れリスク)を判断できる。
例えば、第4の画像形成部Sdの色の比率が低い画像が連続して印刷された場合を想定する。
この場合、第4の画像形成部Sd以外の第1、第2、第3の画像形成部Sa、Sb、Scでは、第4の画像形成部Sdよりも多くのトナーが消費される。そのため、第1、第2、第3の画像形成部Sa、Sb、Scでは、第4の画像形成部Sdよりも、プロセスカートリッジ110が頻繁に新品のものと交換され、その度にプロセスカートリッジ110に付随している廃トナー容器71は廃トナーがない状態となる。これに対し、交換頻度の少ない第4の画像形成部Sdのプロセスカートリッジ110に付随した廃トナー容器71は、長期にわたり廃トナーがある状態になり、第4の画像形成部Sdでは廃トナー容器71から廃トナーが漏れ出してしまうリスクが相対的に高くなる。そのため、このような廃トナー漏れリスクを低減することが望まれる。
ここで、プロセスカートリッジ110の交換頻度が少ない第4の画像形成部Sdでは、プロセスカートリッジ110に付随している感光ドラム1は、使用量が増加することでその表面が削られたり荒れたりする。これにより、第4の画像形成部Sdと、第1、第2、第3の画像形成部Sa、Sb、Scとでは、電気抵抗が明らかに異なってくる。
そのため、上述のATVC制御における各画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdの電気抵抗の検知動作を行うことで、第4の画像形成部Sdの電気抵抗が他の画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdの電気抵抗よりも相対的に高い状態であることを検知できる。
そして、その検知結果に基づいて、第4の画像形成部Sdの廃トナー容器71内の廃トナーの状態を予測し、第4の画像形成部Sdにおける廃トナー漏れリスクを低減するような、画像形成時の最適な一次転写電圧Vpを選択できる。
(比較結果)
従来のATVC制御における抵抗検知結果を用いた場合(比較例)と、本実施例のATVC制御における抵抗検知結果を用いた場合(本実施例)とで廃トナー漏れリスクを比較した結果について説明する。比較例の画像形成装置の構成及び動作は、ATVC制御において各画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdの電気抵抗を個別に算出しない従来の方法を採用していることを除いて、実質的に本実施例の画像形成装置と同じである。表1に比較実験の結果を示す。
尚、ここでは、廃トナー漏れリスクは、廃トナー容器71の容量に対する廃トナーの容量の百分率で定義する。そして、廃トナー漏れリスクが98%を超えると、画像形成装置100が警告を発するレベルとなり、それから約200枚程度画像形成すると廃トナー漏れリスクが100%となる。廃トナー漏れリスクが100%になると、廃トナーが廃トナー容器71から漏れ出して機内が汚れるおそれがあり、場合によっては画像不良が発生するおそれがある。
比較実験は、次のケース(1)とケース(2)について行った。
ケース(1)は、全ての画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdのプロセスカートリッジ110が新品の場合であり、各画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdの電気抵抗は、それぞれRa=50MΩ、Rb=50MΩ、Rc=50MΩ、Rd=50MΩである。
ケース(2)は、第4の画像形成部Sdのプロセスカートリッジ110を使い続けている場合であり、各画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdの電気抵抗は、それぞれRa=50MΩ、Rb=50MΩ、Rc=50MΩ、Rd=70MΩである。
表1には、各画像形成部の電気抵抗(別途測定)と、ATVC制御において検知された各画像形成部の電気抵抗と、転写性及び廃トナー漏れリスクと、を一覧で示している。
ここで、本実施例では、ATVC制御における各画像形成部の電気抵抗の検知動作において、電気抵抗を検知する画像形成部では、帯電電圧としてVt=−600[V]を印加した。一方、一次転写ブラシ5と感光ドラム1とを疑似的に離間された状態とする画像形成部では、帯電電圧としてVtd=0[V]を印加した。又、本実施例及び比較例において、ATVC制御での一次転写電源50の出力電圧の上限は10KVとした。又、本実施例及び比較例において、ATVC制御での目標電流Itは10μAとした。
そして、比較実験では、最初に、2万枚の画像形成を行った。画像印字率の設定を、第1、第2、第3の画像形成部Sa、Sb、Scでは10%、第4の画像形成部Sdでは0.1%とした。その後、全ての画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdの画像印字率を10%に固定して画像形成を継続した。廃トナー漏れリスクの検知は、第4の画像形成部Sdの現像装置4の残トナー量が3%を切る時点で行った。
先ず、ケース(1)では、全ての画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdの電気抵抗が50MΩである。これは、全ての画像形成部Saにおいてプロセスカートリッジ110が新品状態であるか、又は全ての画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdのプロセスカートリッジ110を同時期に交換していることを意味する。このとき、全ての画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdの合成抵抗(全体抵抗)を一度に検知する従来のATVC制御を用いた場合、10μAの目標電流Itを流す際の出力電圧値は125Vである。一方、各画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdの電気抵抗を個別に検知できる本実施のATVC制御を用いた場合、10μAの目標電流Itを流す際の出力電圧値は、全ての画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdにおいて500Vである。これにより、全ての画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdの状態は同じであるということが判断できる。
つまり、ケース(1)のような系の場合、プロセスカートリッジ110や転写装置60は全てほぼ同一の状態であると判断できる。そのため、ケース(1)のような系の場合、特に廃トナー漏れリスクを低減することを考慮せずに最適な画像形成時の一次転写電圧を選択した場合でも、いずれかの画像形成部Sにおいて廃トナー漏れが発生するリスクは低いと考えられる。
次に、上記ケース(1)のATVC制御における出力電圧値が、従来のATVC制御では125V、本実施例のATVC制御では500Vであることを基礎として、ケース(2)について検討する。
ケース(2)では、第4の画像形成部Sdの電気抵抗は70MΩと高くプロセスカートリッジ110は使用量が増加した状態にあり、その他の画像形成部Sa、Sb、Scでは電気抵抗が50MΩでありプロセスカートリッジ110はほぼ新品状態である。この状態で従来のATVC制御と、本実施例のATVC制御とを行った。その結果、ATVC制御における出力電圧値は、従来のATVC制御では135Vとなった。一方、本実施例のATVC制御では、第1、第2、第3の画像形成部Sa〜Scでは500Vであるのに対して、第4の画像形成部Sdでは700Vという高い値となった。
この結果を、上記ケース(1)と比較すると、従来のATVC制御では、ATVC制御における出力電圧値は上記ケース(1)よりも約10V高くなっているもののその変動幅は比較的小さい。そのため、この程度の出力電圧値の変動は、ばらつきの範囲であると認識され、画像形成時の一次転写電圧の制御はケース(1)と同じ制御を行うことがある。つまり、第4の画像形成部Sdでは、電気抵抗が高いので、転写効率を向上するためには、プロセスカートリッジ110の新品時よりも正極性側に高い一次転写電圧が印加されることが望ましい。しかし、従来のATVC制御によれば、第4の画像形成部Sdのプロセスカートリッジ110も新品と同様であると判断される。そのため、第4の画像形成部Sdにおいて転写不良による画像不良が発生してしまうことがある。又、第4の画像形成部Sdにおいて一次転写電圧が不足することは、第4の画像形成部Sdにおいて一次転写工程後に感光ドラム1に残存するトナーが多くなるということを意味する。そのため、第4の画像形成部Sdにおいて廃トナー漏れリスクが高くなる。
一方、本実施例のATVC制御では、ATVC制御における出力電圧値は、上記ケース(1)では500Vであったのに対し、ケース(2)では700Vと大きく値が変動している。つまり、ATVC制御における出力電圧値が700Vである第4の画像形成部Sdでは、その他の画像形成部Sa、Sb、Scとは異なる状態であると判断できる。従って、ATVC制御で700Vの出力電圧値が検知された第4の画像形成部Sdに合わせた最適な一次転写電圧を選択できる。
具体的には、電気抵抗が高くなっている第4の画像形成部Sdに合わせて、画像形成時の一次転写電圧を、廃トナー漏れリスクを考慮しない場合の最適値に対して若干正極性側に高めに設定する。例えば、CPU151は、電気抵抗が所定値以上に高くなっている画像形成部がある場合には、画像形成時の一次転写電圧を最適値に対して所定量だけ正極性側に高い値に決定する。このとき、廃トナー漏れリスクを考慮しない場合の画像形成時の一次転写電圧の最適値は、前述のように、各画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdの個別の電気抵抗に基づいて決定したものであってもよいし、合成抵抗に基づいて決定したものであってもよい。これにより、第4の画像形成部Sd以外の画像形成部Sa、Sb、Scでは電気抵抗が低い状態であるため若干正極性側に高めの一次転写電圧が印加されることになるが、第4の画像形成部Sdにおける廃トナー漏れリスクを低減できる。
7−2.再転写抑制
上記一例では、廃トナー漏れリスクの低減について説明したが、例えば、廃トナー容器71の容量が十分に大きい場合など、廃トナー漏れリスクを考慮する必要がない場合もある。そのような場合には、その他の懸念されるリスクに対して最適な一次転写電圧を選択することもできる。
例えば、再転写による画像不良の低減を考慮することが考えられる。再転写とは、次のような現象である。中間転写体の移動方向の上流側の画像形成部の一次転写部で中間転写体に転写されたトナー像が同方向の下流側の画像形成部の一次転写部を通過する際に、下流側の画像形成部における一次転写電圧が適正な一次転写電圧よりも大きくなることがある。このような場合には、上流側の画像形成部からのトナー像は下流側の画像形成部の一次転写部から放電を受けることになり、これによってそのトナーの帯電極性が反転してしまう。その結果、その帯電極性が反転したトナーが、例えば、中間転写体の外周面上から上記下流側の画像形成部よりも更に下流の画像形成部の感光体に逆転写され、中間転写体上のトナー像のトナー量が減少して画像濃度が低下してしまうことがある。
この場合、各画像形成部の電気抵抗を個別に検知することができれば、上記下流側の画像形成部における逆転写を抑制することをも考慮して各画像形成部の一次転写部材に印加する最適な一次転写電圧を選択できる。
しかし、一次転写電源や一次転写電流検知回路が共通化されている従来の画像形成装置では、各画像形成部の電気抵抗を個別に検知することができないため、各画像形成部の個別の電気抵抗を反映した最適な一次転写電圧を選択することは難しい。
これに対して、本実施例のATVC制御によれば、各画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdの電気抵抗を個別に検知できる。従って、トナーの帯電極性の反転が懸念される上記下流側の画像形成部に合わせた最適な一次転写電圧を選択できる。具体的には、トナーの帯電極性の反転が懸念される画像形成部に合わせて、画像形成時の一次転写電圧を再転写の抑制を考慮しない場合の最適値に対して若干正極性側で低め(負極性側に高め)に設定する。これにより、再転写による画像不良を抑制できる。
例えば、各画像形成部の電気抵抗が大きく異なる場合、電気抵抗の高い画像形成部に最適化した一次転写電圧を選択することで、他の画像形成部における転写電界が大きくなり過ぎてしまうことがある。これにより、上述のような再転写が悪化してしまう場合がある。これに対して、本実施例のATVC制御によれば、各画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdの電気抵抗を個別に検知できるので、上述のような再転写の悪化を予測できる。例えば、CPU151は、電気抵抗が所定値以上に高くなっている画像形成部がある場合には、画像形成時の一次転写電圧を最適値に対して所定量だけ正極性側で低い(負極性側に高い)値に決定する。このとき、再転写の抑制を考慮しない場合の画像形成時の一次転写電圧の最適値は、前述のように、各画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdの個別の電気抵抗に基づいて決定したものであてもよいし、合成抵抗に基づいて決定したものであってもよい。このように、再転写の悪化が予測された場合には、一次転写電圧値として、再転写の抑制を考慮しない場合の最適値に対して若干正極性側で低い値を選択することで、再転写の悪化を抑制できる。
8.効果
以上説明したように、本実施例では、画像形成装置100は、複数の画像形成部Sを有する。複数の画像形成部Sは、感光体1、電圧が印加されて感光体1を帯電させる帯電手段2、感光体1にトナーを供給してトナー像を形成する現像手段4、及び感光体1から被転写体6にトナー像を転写する転写手段5をそれぞれが有する。又、この画像形成装置100は、複数の画像形成部Sの転写手段5に電圧を印加する共通の転写電源50を有する。又、この画像形成装置100は、転写電源50が複数の画像形成部Sの転写手段5に定電流制御された電圧を印加しているときの電圧値又は定電圧制御された電圧を印加しているときの電流値を検知する検知手段(一次転写電流検知回路51等)を有する。又、この画像形成装置100は、帯電手段2に印加される電圧を設定する設定手段(CPU1)151を有する。設定手段151は、転写電源50から複数の転写手段5に共通の電圧が印加されている状態において、次のような設定を行う。即ち、複数の画像形成部Sのうち少なくとも一つの画像形成部の帯電手段2に印加される電圧を、該少なくとも一つの画像形成部の感光体1と転写手段5との間の電位差が放電開始電位差以上になるように設定する。それと共に、設定手段151は、複数の画像形成部Sのうちその残りの画像形成部Sの帯電手段2に印加される電圧を、該残りの画像形成部Sの感光体1と転写手段5との間の電位差が放電開始電位差未満になるように設定する。更に、この画像形成装置100は、上記放電開始電位差以上の電位差と上記放電開始電位差未満の電位差とが形成された状態で検知手段による上記電圧値又は上記電流値の検知を実行させる実行手段(CPU)151を有する。
本実施例では、設定手段151は、次のような各電位差が形成されるように設定することを、複数の画像形成部Sの全てで上記放電開始電位差以上の電位差が形成されるように上記放電開始電位差以上の電位差が形成される画像形成部を順次に変更して行う。即ち、一つの画像形成部Sにおいて上記放電開始電位差以上の電位差が形成され、残りの画像形成部Sにおいて上記放電開始電位差未満の電位差が形成されるように設定することである。又、本実施例では、実行手段151は、上記放電開始電位差以上の電位差が形成される画像形成部Sが変更される毎に検知手段による上記電圧値又は上記電流値の検知を実行させる。そして、本実施例では、画像形成装置100は、次の検知結果に基づいて、画像形成時に転写電源50が複数の画像形成部Sの転写手段5に印加する電圧を決定する決定手段(CPU)151を有する。即ち、上記放電開始電位差以上の電位差と上記放電開始電位差未満の電位差とが形成された状態における検知手段の検知結果である。
又、設定手段151は更に、複数の画像形成部Sの全てにおいて上記放電開始電位差以上の電位差が形成されるように、上記複数の画像形成部Sの帯電手段2に印加される電圧を設定することが可能であってよい。又、実行手段151は更に、複数の画像形成部Sの全てにおいて上記放電開始電位差以上の電位差が形成された状態で検知手段による上記電圧値又は上記電流値の検知を実行させるようになっていてよい。この場合、決定手段151は、次の各検知結果に基づいて、画像形成時に転写電源50により複数の画像形成部Sの転写手段5に印加する電圧を決定する。即ち、上記放電開始電位差以上の電位差と上記放電開始電位差未満の電位差とが形成された状態における検知手段の検知結果と、複数の画像形成部Sの全てにおいて上記放電開始電位差以上の電位差が形成された状態における検知手段の検知結果とである。
このように、本実施例によれば、各画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdの電気抵抗を個別に検知できる。これにより、各画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdの各種状況を把握できる。従って、各画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdの各種状況を考慮した最適な画像形成時の一次転写電圧を選択できる。そのため、一次転写電源50及び一次転写電流検知回路51を共通化して装置の小型化や低コスト化を図りつつ、より安定して良好な画像を形成できる。このように、本実施例によれば、複数の画像形成部に対し転写電圧を出力する転写電源が共通化されていても、一部の画像形成部の電気抵抗に対応する情報を取得できる。
又、本実施例によれば、各画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdの電気抵抗を個別に検知するために、各一次転写部N1において実際に一次転写ブラシ5を感光ドラム1から離間させる必要はない。従って、例えばフルカラー画像形成時などの複数の画像形成部Sを用いる場合に、その各画像形成部Sの個別の電気抵抗の検知のために一次転写ブラシ5の当接離間動作を行わなくてよい。そのため、装置構成の簡易化や、画像形成開始指示から実際に画像が出力されるまでの時間(ファーストプリントタイム)を短縮することができる。尚、単色画像形成時に使用しない画像形成部の消耗・劣化を防止するなどのために、画像形成装置が一次転写ブラシ5を感光ドラム1に対して当接又は離間させる当接離間機構を有していてもよい。
実施例2
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は、実施例1のものと同じである。従って、実施例1の画像形成装置のものと同一又はそれに相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付して、詳しい説明は省略する。
本実施例では、各画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdの電気抵抗の検知結果を、一次転写電圧だけでなく、一次転写電圧と帯電電圧の両者に反映させる点が実施例1とは異なる。
図7は、本実施例におけるATVC制御の手順を示す。図7に示す本実施例のATVC制御のS101〜S105の手順は、図4に示す実施例1のATVC制御のS101〜S105の手順と同一である。
その後、CPU151は、各画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdの電気抵抗Ra、Rb、Rc、Rdから、各画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdに流れる電流Ia、Ib、Ic、Idを、下記計算式により計算する(S301)。このとき、各画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdにおいて増減した電気抵抗の差分をそれぞれRha、Rhb、Rhc、Rhdとし、流れる電流をIa、Ib、Ic、Idとし、印加する電圧をVtとする。
画像形成部Sa:Ia=Vt/(Ra+Rha)
画像形成部Sb:Ib=Vt/(Rb+Rhb)
画像形成部Sc:Ic=Vt/(Rc+Rhc)
画像形成部Sd:Ic=Vt/(Rd+Rhd)
次に、CPU151は、各画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdにおける感光ドラム1側に現れる電位Va、Vb、Vc、Vdを、下記計算式により計算する(S302)。
画像形成部Sa:Va=Rha×Ia
画像形成部Sb:Vb=Rhb×Ib
画像形成部Sc:Vc=Rhc×Ic
画像形成部Sd:Vd=Rhd×Id
次に、CPU151は、各画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdにおける感光ドラム1の電位の差分を計算する(S303)。
例えば、単色画像形成(モノカラー画像形成)の際には、第4の画像形成部Sdにおける一次転写ブラシ5dのみが中間転写ベルト6を介して感光ドラム1に当接された状態で画像形成が行われるものとする。この場合、単色画像形成のみが継続されると、第4の画像形成部Sdの一次転写ブラシ5dの電気抵抗が、その他の画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdの一次転写ブラシ5a、5b、5cに比べて高くなることがある。その結果、第4の画像形成部Sdの一次転写ブラシ5dにおける分担電圧が大きくなり、感光ドラム1と一次転写ブラシ5との間の転写電界が、第4の画像形成部Sdにおいて、その他の画像形成部Sa、Sb、Scに比べて小さくなってしまうことがある。そのため、第4の画像形成部Sdにおいて転写不良が発生してしまうことがある。
そこで、例えば第1の画像形成部Saを基準として、第1の画像形成部Saと第4の画像形成部Sdとの感光ドラム1の電位の差分ΔVを、下記計算式により算出する。
ΔV=|Va−Vd|
尚、上記計算式では、一例として第1の画像形成部Saの感光ドラム1の電位を基準としている。その他の画像形成部の感光ドラムの電位を基準としたい場合は、上記計算式における基準となる画像形成部の電位部分を変更すればよい。
次に、CPU151は、上記計算式により算出された各画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdにおける感光ドラム1の電位の差分ΔVだけ、帯電電圧及び現像電圧を各画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdで変化させる(S304)。これにより、各画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdにおいて、感光ドラム1と一次転写ブラシ5との間の転写電界(放電電位差)を一定にできる。
例えば、画像形成装置100の使用量の増加に伴って、第1の画像形成部Saの電気抵抗の変化が無く、第4の画像形成部Sdの電気抵抗が変化したと仮定する。このとき、第1の画像形成部Saと第4の画像形成部Sdとでの感光ドラム1の電位の差分ΔVは、上記計算式から|Va−Vd|と算出できる。この場合、上記感光ドラム1の電位の差分ΔVである|Va−Vd|を、第4の画像形成部Sdの帯電電圧と現像電圧とにフィードバックする。これにより、第1の画像形成部Saと第4の画像形成部Sdとでの感光ドラム1の電位の差分、つまり、放電電位差を一定にできる。従って、より安定して良好な画像を形成できる。
更に説明すると、第1の画像形成部Saにおける帯電電圧をVfa、現像電圧をVgaとする。又、第4の画像形成部Sdにおける帯電電圧をVfd、現像電圧をVgdとする。この場合、第4の画像形成部Sdにおける帯電電圧Vfdは、Vfd=Vfa+|Va−Vd|、現像電圧Vgdは、Vgd=Vga+|Va−Vd|とする。これにより、第1の画像形成部Saと第4の画像形成部Sdとでの感光ドラム1の電位の差分ΔV、つまり、放電電位差を一定にできる。従って、より安定して良好な画像を形成できる。
その後、CPU151は、決定した一次転写電圧、帯電電圧値、現像電圧値に設定して画像形成を開始し(S305)、これらの出力を終了させて画像形成動作を終了する(S306)。
尚、ATVC制御における電圧検知動作において算出された電気抵抗に鑑みて、基準となる画像形成部を変更したい場合は、上記計算式における基準となる画像形成部の電圧部分を変更すればよい。例えば、上述のように電気抵抗の変化のない(例えば、公称値に対して所定値未満の変化しかしていない)画像形成部を基準とすることができる。
又、本実施例においても、実施例1と同様に、各画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdの合成抵抗を検知して、その検知結果をも用いて画像形成時の一次転写電圧を決定するようにしてもよい。
このように、本実施例では、例えば第4の画像形成部Sdの電気抵抗Rdと、第1、第2、第3の画像形成部Sa、Sb、Scの電気抵抗Ra、Rb、Rcとを検知する。更に、各画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdに流れる電流から、最終的に各画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdにおける感光ドラム1の電位の差分を算出し、その差分に基づいて、各画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdの帯電電圧及び現像電圧を決定する。これにより、各画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdの状態にあった最適な転写電界を形成し、より安定した良好な画像を形成できる。本実施例では、制御部150のCPU151は、帯電電圧決定手段、現像電圧決定手段としても機能する。
以上説明したように、画像形成装置100は、次のようにして画像形成時に帯電手段2に印加される電圧を決定する帯電電圧決定手段(CPU)151を有していてよい。即ち、帯電電圧決定手段151は、上記放電開始電位差以上の電位差と上記放電開始電位差未満の電位差とが形成された状態における検知手段の検知結果に基づいて、画像形成時に帯電手段2に印加される電圧を決定する。又、画像形成装置100は、次のようにして画像形成時に現像手段4に印加される電圧を決定する現像電圧決定手段(CPU)151を有していてよい。即ち、現像電圧決定手段151は、上記放電開始電位差以上の電位差と上記放電開始電位差未満の電位差とが形成された状態における検知手段の検知結果に基づいて、画像形成時に現像手段4に印加される電圧を決定する。
このように、本実施例によれば、先ず、各画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdに流れる電流を計算する。次に、各画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdにおける感光ドラム1の電位の差分を算出する。そして、その差分に基づいて、各画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdの帯電電圧及び現像電圧を決定する。これにより、各画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdの電気抵抗が変化した場合であっても、各画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdの個別の電気抵抗を反映した最適な一次転写電界を帯電電圧で形成できる。又、それに対応して最適な現像電圧を供給できる。これにより、より安定して良好な画像を形成できる。
その他
以上、本発明を具体的な実施例に即して説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではない。
上述の実施例では、中間転写方式の画像形成装置に本発明を適用した例について説明した。但し、本発明は、直接転写方式の画像形成装置にも適用でき、上述の実施例と同様の効果を得ることができる。図8は、直接転写方式の画像形成装置の一例の要部の概略構成を示す。図8において、図1に示す中間転写方式の画像形成装置と同一又は対応する機能、構成を有する要素には同一符号を付している。直接転写方式の画像形成装置は、上述の実施例における中間転写ベルト6に代えて、記録材担持体として例えば無端ベルト状の転写ベルト106を有する。又、上述の実施例における一次転写ブラシ5に対応する転写ブラシ5などの転写部材が、転写ベルト106を介して感光ドラム1に押圧される。そして、各画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdにおいて各感光ドラム1a、1b、1c、1dに形成されたトナー像は、各転写部Nにおいて、転写ベルト106に担持されて搬送される転写材P上に順次重ね合わせて転写される。斯かる直接転写方式の画像形成装置において、転写電圧の制御のためにATVC制御が行われる。従って、上述の実施例における中間転写方式の画像形成装置の場合と同様に本発明を適用して、ATVC制御において各画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdの電気抵抗を個別に検知でき、その検知結果に応じて画像形成時の最適な転写電圧を選択できる。