以下、図面を参照して、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但し、以下の実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、本発明を以下の実施例に限定する趣旨のものではない。
(実施例1)
[画像形成装置の構成及び動作]
図1は、本実施例における画像形成装置100の概略断面図である。また、図2は、本実施例の画像形成装置100の制御系統のブロック図である。図2に示すように、画像形成装置100は、外部機器であるホストコンピュータ97に接続している。ホストコンピュータ97による動作開始指令と画像信号は、制御手段としてのコントローラ10に送信され、コントローラ10が各種手段を制御することによって、画像形成装置100において画像形成が実行される。制御に関する説明は後述する。
図1に示すように、本実施例の画像形成装置100は、電子写真方式を利用した、中間転写方式のカラー画像形成装置であり、複数の画像形成手段として、第1、第2、第3、第4の画像形成部64a、64b、64c、64dを有する。第1、第2、第3、第4の画像形成部64a、64b、64c、64dはそれぞれ、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の各色の画像を形成するためのものである。これらの4個の画像形成部64a、64b、64c、64dは、一定の間隔をおいて1列に配置されている。なお、本実施例では、第1~第4の画像形成部64a~64dの構成は、使用するトナーの色が異なることを除いて実質的に同じである。従って、以下、特に区別を要しない場合は、いずれかの色用に設けられた要素であることを示すために図中符号に与えた添え字a、b、c、dは省略して、総括的に説明する。
図1に示すように、画像形成部64は、像担持体としてドラム状の電子写真感光体(以下、感光ドラムという)56と、帯電部材である帯電ローラ57と、現像部材としての現像ローラ58を有する現像手段5と、クリーニング手段61と、を備える。感光ドラム56は、図示矢印R1方向に所定の周速度(プロセススピード)で回転駆動される。また、画像形成部64の近傍には、感光ドラム56の回転方向に関して、帯電ローラ57よりも下流側であって且つ現像手段5よりも上流側の位置に光を照射する露光手段60(レーザースキャナ)が配置されている。
帯電ローラ57は、感光ドラム56に所定の圧接力で接触しており、帯電電源400(図2に図示)から所定の電圧を印加されることで、感光ドラム56の表面を所定の電位に均一に帯電する。本実施例では、感光ドラム56は、帯電ローラ57により負極性に帯電させられる。なお、本実施例においては、帯電ローラ57を感光ドラム56に当接させて感光ドラム56の帯電を行う接触帯電方式について説明したが、これに限らず、感光ドラム56を帯電する方式としては、コロナ帯電方式などの非接触帯電方式を用いてもよい。
露光手段60は、感光ドラム56の表面を露光することにより、帯電ローラ57で帯電された感光ドラム56の表面に、画像情報に応じた静電潜像を形成する。即ち、露光手段60において、ホストコンピュータ97から入力される画像情報の時系列電気デジタル画素信号に対応して変調されたレーザ光がレーザ出力部から出力され、このレーザ光が反射ミラーを介して感光ドラム56の表面に照射される。
本実施例における現像手段5は、現像方式として1成分接触現像方式を用いており、トナー担持体としての現像ローラ58を有する。現像ローラ58に薄層状に担持されたトナーは、駆動源(不図示)によって現像ローラ58が回転駆動されることで、感光ドラム56と現像ローラ58とが対向する対向部(現像部)に搬送される。そして、現像電源500(図2に図示)から現像ローラ58に電圧が印加されることにより、露光手段60によって感光ドラム56に形成された静電潜像がトナー像として現像される。なお、本実施例においては、トナーの正規の帯電極性は負極性であり、感光ドラム56の帯電極性と同極性に帯電したトナーを、露光手段60によって形成された静電潜像に対応する位置に付着させる反転現像方式によって感光ドラム56にトナー像を現像している。
また、各現像手段5a、5b、5c、5dには、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナーが収納されている。本実施例の画像形成装置100の構成においては、画像形成部64a~64dの全てを用いて画像形成を行うフルカラー画像形成モードでは、現像手段5a~5dにおいて全ての現像ローラ58a~58dを感光ドラム56a~56dに対して当接させる。一方で画像形成部64dのみを用いて画像形成を行うモノカラー(単色)画像形成モードでは、現像ローラ58dを感光ドラム56dに当接させ、現像ローラ58a~58cは感光ドラム56a~56cに対して離間させる。これは、画像形成を行わない画像形成部64a~64cにおける現像ローラ58a~58c及びトナーの劣化、消耗を防止するためである。
クリーニング手段61は、感光ドラム56に当接するクリーニング部材としてのクリーニングブレードと、クリーニングブレードによって回収されたトナーを収容する廃トナーボックスと、を備え、感光ドラム56に残留したトナーを回収する。
画像形成装置100において画像形成動作の開始信号が発せられると、感光ドラム56は図示矢印R1方向に回転駆動される。感光ドラム56は回転過程で、帯電ローラ57により所定の極性(本実施例では負極性)で所定の電位に一様に帯電処理され、露光手段60により画像信号に応じた露光を受ける。これにより、各感光ドラム56には、目的のカラー画像の各色成分像に対応した静電潜像が形成される。次いで、その静電潜像は現像部において現像手段5により現像され、トナー像として可視化される。ここで、現像手段5に収容されたトナーの正規の帯電極性は、負極性である。
中間転写体としての中間転写ベルト54は、無端状の移動可能なベルト体であり、支持部材としての張架ローラ55a、55b、55cで張架されている。そして、中間転写ベルト54は、感光ドラム56と略同一の周速度で図示矢印R2方向に回転駆動される。感光ドラム56に形成されたトナー像は、感光ドラム56と中間転写ベルト54とが当接する一次転写部N1を通過する過程で、感光ドラム56から中間転写ベルト54に一次転写される。一次転写後に感光ドラム56に残留した一次転写残トナーは、クリーニング手段61aにより除去され、感光ドラム56は、再度帯電以下の画像形成プロセスに供せられる。
中間転写ベルト54の内周面には、各画像形成部64の各感光ドラム56に対応して、導電性のブラシ部材である一次転写部材59a~59dがそれぞれ配置されている。一次転写部材59には、一次転写電源200が接続されており、一次転写電源200は正極性または負極性の電圧を一次転写部材59に印加することが可能である。また、一次転写部材59は、中間転写ベルト54に対して当接又は離間することが可能である。画像形成時においては、一次転写部材59を中間転写ベルト54に対して当接させた状態で、一次転写電源200から一次転写部材59にトナーの正規の帯電極性とは逆極性(本実施例においては正極性)の電圧を印加する。これによって、感光ドラム56に形成されたトナー像が中間転写ベルト54に一次転写される。
図1に示すように、本実施例においては、各一次転写部材59a~59dに対して、一つの共通の一次転写電源200から電圧を印加している。このように、複数の一次転写部材59に電圧を印加する一次転写電源200を共通の構成とすることによって、画像形成装置のコストダウン及び電源基板の省スペース化を達成することが可能である。
各画像形成部64において形成された各色のトナー像は、各一次転写部N1において中間転写ベルト54上に順次重ねて一次転写される。その後、中間転写ベルト54上の4色のトナー像は、中間転写ベルト54と二次転写ローラ63が形成する二次転写部N2を通過する過程で、給紙ローラ51により給紙された転写材Pの表面に一括して二次転写される。
本実施例においては、二次転写部材としての二次転写ローラ63は外径8mmのニッケルメッキ鋼棒に、体積抵抗108Ω・cm、厚み5mmに調整したNBRとエピクロルヒドリンゴムを主成分とする発泡スポンジ体で覆った外径18mmのものを用いている。また、二次転写ローラ63は、中間転写ベルト54に対して、50Nの加圧力で当接し、二次転写部N2を形成している。二次転写ローラ63は中間転写ベルト54に対して従動回転し、また、二次転写部N2において中間転写ベルト54から転写材Pにトナー像を二次転写しているときには、1800~2300Vの電圧が二次転写電源300から二次転写ローラ63に印加される。
その後、4色のトナー像を担持した転写材Pは定着手段62に導入され、そこで加熱および加圧されることにより4色のトナーが溶融混色して転写材Pに固定される。二次転写後に中間転写ベルト54に残留した二次転写残トナーは、クリーニングブラシ65により帯電され、中間転写ベルト54の移動に伴って移動する。そしてその後、一次転写部N1において中間転写ベルト54から感光ドラム56に逆転写されることで中間転写ベルト54から除去され、感光ドラム56のクリーニング手段61によって回収される。以上の動作により、フルカラーの画像が転写材Pに形成される。
[画像形成装置の制御]
図2は、本実施例における画像形成装置100の制御を行う制御手段としてのコントローラ10の構成について説明するブロック図である。ホストコンピュータ97から画像形成装置100に対して画像情報と画像形成動作の開始信号が送信されると、コントローラ10は、ビデオコントローラ98によって変換された各画像信号を受信する。そして、コントローラ10は、各制御部(露光制御部101、帯電制御部102、現像制御部103)を制御して画像形成動作を実行する。
コントローラ10は、制御部としてのCPU150を有する。CPU150は、ROM151、およびRAM152を内蔵する。CPU150は、ROM151に格納されている制御プログラムに応じて、露光制御部101、帯電制御部102、現像制御部103、一次転写制御部104、二次転写制御部105を統括的に制御する。また、環境テーブルや転写制御の各種テーブルはROM151に格納されており、画像形成装置100の設置環境における温度及び湿度を検知する検知手段としての環境センサ106により検知された環境情報を元に、CPU150から呼び出されて反映される。
RAM152は、制御データを一時的に保持し、また、制御に伴う演算処理の作業領域として用いられる。帯電制御部102は、帯電電源400から出力する電圧を制御している。現像制御部103は、現像電源500から出力する電圧を制御している。一次転写制御部104は、一次転写電源200を制御し、電流検出回路201が検出する電流値に基づいて一次転写電源200から出力する電圧を制御している。二次転写制御部105は、二次転写電源300を制御し、不図示の電流検出回路が検出する電流値に基づいて二次転写電源300から出力する電圧を制御している。
[一次転写部材の当接離間動作]
画像形成装置100は、一次転写部材59a、59b、59c、59dを、中間転写ベルト54に対して当接、又は離間させる手段(不図示)を有する。そして、コントローラ10は、フルカラー画像形成モード(以下、フルカラーモードと称する)と、モノカラー画像形成モード(以下、モノクロモードと称する)のいずれかを選択して画像形成を行うことが可能である。図3(a)は、本実施例のフルカラーモードについて説明する模式図であり、図3(b)は、本実施例のモノクロモードについて説明する模式図である。
図3(a)に示すように、フルカラーモードでは、不図示の当接離間機構によって一次転写部材59a~59dを中間転写ベルト54に対して当接させて画像形成を行う。即ち、フルカラーモードにおいては、一次転写部材59a~59dが中間転写ベルト54と接触する第1の状態が形成される。一方で、モノクロモードでは、図3(b)に示すように、不図示の当接離間機構によって一次転写部材59dのみを中間転写ベルト54に当接させて画像形成を行う。即ち、モノクロモードにおいては、一次転写部材59dが中間転写ベルト54と当接し、一次転写部材59a~59cが中間転写ベルト54から離間した第2の状態が形成される。
モノクロモードでは、図3(b)に示すように、不図示の当接離間機構によって一次転写部材59a~59dを中間転写ベルト54に当接させる状態が解除される。その結果、モノクロモードによって画像形成を行う時には、各画像形成部64a~64cにおいて各部材の駆動を停止することができる。このような構成とすることにより、不要な動作を抑え、各画像形成部64a~64cの寿命の長期化を図ることができる。
一次転写部材59と中間転写ベルト54を当接又は離間させる機構に関しては、例えば、バネなどの付勢手段を用いる構成が考えられる。このような構成においては、バネによる付勢状態を解除することで一次転写部材59を中間転写ベルト54から離間させることが可能である。
[一次転写部を流れる電流の経路]
次に、図4(a)~(b)、図5を用いて、フルカラーモードとモノクロモードにおける一次転写部N1を流れる電流の経路について説明する。図4(a)は、フルカラーモードにおける一次転写部N1を流れる電流の経路について説明する模式図であり、図4(b)は、電流検知回路201について説明する模式図である。また、図5は、モノクロモードにおける一次転写部N1を流れる電流の経路について説明する模式図である。なお、本実施例の特徴は、共通の一次転写電源200から複数の一次転写部材59に電圧を供給する点と、それぞれの一次転写部N1に流れる一次転写電流を共通の電流検知回路201(検知手段)で検出する点である。
<フルカラーモード>
コントローラ10は、ジョブの前回転工程において実行されるATVC制御により、そのジョブの一次転写時に一次転写電源200から一次転写部材59a、59b、59c、59dに印加する一次転写電圧の値を設定する。なお、以下の説明においては、一次転写部材59a、59b、59c、59dに関して同一の制御を行う場合は、いずれの画像形成部64a~64dに対応した一次転写部材59a~59dであるかを示す添え字a~dを省略し、単に各一次転写部材59と称する。
ATVC制御では、まず、所定の電流値(ターゲット電流値)で定電流制御された電圧が一次転写電源200から各一次転写部材59に印加される。このとき、電流検知回路201によって、各一次転写部N1に向かって流れる電流、即ち、各一次転写部材59に流れる電流の合算値が求められる。コントローラ10は、電流検知回路201の検知結果に基づいて一次転写電源200から各一次転写部材59に印加された電圧値を求め、そして、この電圧値に基づいて一次転写電圧の値を設定する。
ここで、図4(b)を用いて、電流検知回路201を説明する。電流検知回路201は、一次転写電源200とアースとの間に電気的に接続されている。また、電流検知回路201は、一次転写電源200に接続されたオペアンプ204、抵抗202、203、205を有しており、オペアンプ204の出力をコントローラ10へフィードバックしている。オペアンプ204の正極入力には、電源電圧Vccが抵抗202、203によって分圧された電圧(以降、この電圧をVtとする)が入力されている。電圧Vtの電圧値は、オペアンプ204の定格を考慮し、数V程度に設定されている。ここで、オペアンプ204は、抵抗205による負帰還回路を構成しているため、オペアンプ204の正極入力と負極入力の電位差は0Vとなる。すなわち、オペアンプ204の正極入力と負極入力は、電圧Vtと同電位となる。
一次転写電源200の出力がオンすると、各一次転写部材59に電圧が印加されると共に、図4(a)で示すように、各一次転写部材59a、59b、59c、59dには、それぞれ電流Ia、Ib、Ic、Idが流れる。ここで、電流Iaは、一次転写部材59a、感光ドラム56aを介してGND(グラウンド)に流れる電流であり、電流Ib~Idも電流Iaと同様に、各一次転写部材59b~59d、各感光ドラム56b~56dを介してGNDに流れる電流である。各一次転写部材59に流れる電流Ia~Idの合算値は、合算電流ItとしてGNDからオペアンプ204へ流れる。合算電流Itは、オペアンプ204の出力単位から抵抗205を介して一次転写電源200に戻る。以上説明した電流経路により、抵抗205の両端に電圧が発生し、オペアンプ204の出力(以降、この電圧をVisnsとする)は、次の式1で表される電圧値になる。
Vtisns=Vt+R205×It ・・・(式1)
ここで、R205は抵抗205の抵抗値である。電圧Vtisnsの電圧値と、各一次転写部材59に流れる電流の合算値である合算電流Itとを対応付けた情報である式1は、コントローラ10のROM151に予め記憶されている。コントローラ10は、式1と電流検知回路201から出力された電圧Vtisnsに基づいて、各一次転写部材59に流れる電流値を合算電流Itとして検知できる。
そして、抵抗205の両端に発生した電圧値(発生電圧値)に基づいて一次転写電圧の値が設定され、感光ドラム56から中間転写ベルト54にトナー像を一次転写する際に、一次転写電源200から各一次転写部材59に設定された一次転写電圧が出力される。本実施例においては、一次転写を行うときには、前述の方法によって設定された所定の一次転写電圧を壱時転写電源200から各一次転写部材59に印加する定電圧制御を実施している。
なお、ATVC制御で設定される一次転写電圧の値は、ATVC制御における発生電圧値そのものであってもよいし、予め求められた演算式、ルックアップテーブル(LUT)などに基づいてその発生電圧値に応じて決定されるものであってもよい。本実施例では、一次転写電圧は、コントローラ10により、プロセス速度情報、環境情報などに基づき、プロセス速度、環境などの条件ごとに、電流検知回路201からの検知信号(電圧信号)に基づいて制御されるようになっている。すなわち、本実施例では、プロセス速度、環境などの条件に応じて、複数の上記ターゲット電流値が設定されている。なお、ATVC制御は、ジョブの画像形成を開始するまでである前回転工程時に限らず、非画像形成時であれば、任意のタイミングで実行することができる。
<モノクロモード>
前述のフルカラーモードと同様に、コントローラ10は、ジョブの前回転工程において実行されるATVC制御により、そのジョブの一次転写時に一次転写電源200から一次転写部材59a、59b、59c、59dに印加する一次転写電圧の値を設定する。
一次転写電源200の出力がオンすると、一次転写部材59a、59b、59c、59dに電圧が印加される。このとき、図5で示すように、一次転写部材59dには電流Id´が流れるが、一次転写部材59a~59cには電流は流れない。より詳細には、中間転写ベルト54と一次転写部材59a~59cは離間した状態であるため、一次転写部材59a~59c、感光ドラム56a~56cを介してGNDに接続される電流経路が解消され、図5(a)で示した電流Ia~Icが流れない。一方、中間転写ベルト54と一次転写部材59dは当接状態であるため、一次転写部材59d、感光ドラム56dを介してGNDに接続される電流経路によって、一次転写部材59に電流Id´が流れる。
一次転写部材59dに流れる電流Id´は、合算電流ItとしてGNDからオペアンプ204へ流れた後に、オペアンプ204の出力端子から抵抗205を介して一次転写電源200に戻る。コントローラ10は、式1と電流検知回路201から出力された電圧Vtisnsに基づいて、一次転写部材59dに流れる電流値を検知できる。
[一次転写電流と一次転写電圧の関係]
次に、各条件下における、一次転写部材59に印加する一次転写電圧と、電流検知回路201が検知する合算電流Itとの関係を、図6(a)~(f)を用いて説明する。
図6(a)は、本実施例のフルカラーモードにおける、一次転写電源200から各一次転写部材59に出力した電圧(一次転写電圧Vt1)と、電流検知回路201によって検知された合算電流Itとの関係を説明するグラフである。また、図6(b)は、本実施例のモノクロモードにおける、一次転写電源200から各一次転写部材59dに出力した電圧(一次転写電圧Vt1)と、電流検知回路201によって検知された合算電流Itとの関係を説明するグラフである。
図6(a)の条件においては、各感光ドラム56を各帯電ローラ57により画像形成時と同様に-500[V]に帯電させた後に、各露光手段60による画像形成領域のレーザ露光を行わないことで、表面電位を約-500[V]とした。各一次転写部材59は、中間転写ベルト54に当接させ、中間転写ベルト54としては、表面抵抗ρsが1.0×109.5[Ω/□]のものを使用した。また、測定は、室温25℃、湿度80%の環境下で行った。
図6(a)に示すように、一次転写電圧Vt1と合算電流Itとの関係は、領域Aと領域Bの2つの領域に分けて考えることができる。領域Aは、一次転写電圧Vt1が+100[V]より大きい領域であり、領域Bは、一次転写電圧Vt1が+100[V]以下の領域である。また、一次転写電圧Vt1が+500[V]のとき、合算電流Itは、40[μA]となった。
領域Aでは、一次転写電源200から各一次転写部材59に一次転写電圧Vt1(+100[V]以上)が印加されると、各感光ドラム56の表面と中間転写ベルト54の表面との間の電位差が放電閾値(本実施例では約600[V])を超える。そのため、各感光ドラム56の表面と中間転写ベルト54の表面との間で放電が発生し、各感光ドラム56に電流が流れる。
一方、領域Bでは、一次転写電源200から各一次転写部材59に一次転写電圧Vt1が印加されても、各感光ドラム56の表面と中間転写ベルト54の表面との間の電位差は放電閾値以下である。そのため、各感光ドラム56の表面と中間転写ベルト54の表面との間で放電が発生しないので、各感光ドラム56には電流は流れない。電流検知回路201によって検知される合算電流Itと一次転写電圧Vt1との関係は、一次転写電圧Vt1が+100[V]の位置を通る比例関係となる。
次に、図6(b)について説明する。図5で既に説明したように、モノクロモードにおいては、一次転写部材59a~59cは中間転写ベルト54と離間していることから、一次転写部材59dのみに電流が流れる。その結果、図6(b)に示すように、一次転写電圧Vt1が+500[V]のとき、合算電流Itは、10[μA]となった。このように、モノクロモードでは、電流検知回路201によって検知される合算電流Itと一次転写電圧Vt1との関係は、図6(a)と比較すると傾きが小さくなる。
なお、領域Aでは、一次転写電源200から各一次転写部材59に+100[V]以上の一次転写電圧Vt1が印加されると、感光ドラム56dの表面と中間転写ベルト54の表面との間の電位差が放電閾値を超え、一次転写部N1dに電流が流れる。一方、領域Bでは、図6(a)と同様に、各感光ドラム56には電流は流れない。電流検知回路201によって検知される合算電流Itと一次転写電圧Vt1との関係は、一次転写電圧Vt1が+100[V]の位置を通る比例関係となる。
以上、図6(a)~(b)で説明したように、合算電流Itと一次転写電圧Vt1との関係は、中間転写ベルト54と各一次転写部材59の当接離間状態に応じて変化する。
図6(c)は、画像形成装置100のフルカラーモードにおいて、各帯電ローラ57による各感光ドラム56の帯電を行わない場合の、一次転写電圧Vt1と合算電流Itとの関係を説明するグラフである。また、図6(d)は、画像形成装置100のフルカラーモードにおいて、各露光手段60によって各感光ドラム56の表面を露光し、各感光ドラム56の表面電位を-100[V]とした場合の、一次転写電圧Vt1と合算電流Itとの関係を説明するグラフである。
図6(c)に示すように、領域Aでは、一次転写電源200から各一次転写部材59に+600[V]以上の一次転写電圧Vt1が印加されると、各感光ドラム56の表面と中間転写ベルト54の表面との間の電位差が放電閾値を超える。このとき、各感光ドラム56の表面と中間転写ベルト54の表面との間で放電が発生し、各感光ドラム56に電流が流れる。一方、領域Bでは、図6(a)における領域Bと同様に、各感光ドラム56には電流は流れない。したがって、図6(c)の条件下においては、電流検知回路201によって検知される合算電流Itと一次転写電圧Vt1との関係は、一次転写電圧Vt1が+600[V]の位置を通る比例関係となる。
また、図6(d)に示すように、各露光手段60によって各感光ドラム56の表面電位を-100[V]としたところ、領域Aでは、各一次転写部材59に印加する一次転写電圧Vt1が+500[V]以上である場合に、各感光ドラム56に電流が流れる。一方、領域Bでは、図6(a)と同様に、各感光ドラム56には電流は流れない。そのため、電流検知回路201によって検知される合算電流Itと一次転写電圧Vt1との関係は、一次転写電圧Vt1が+500[V]の位置を通る比例関係となる。
図6(a)と比較すると、図6(c)、(d)の条件においては、電流検知回路201によって検知される合算電流Itと一次転写電圧Vt1との関係の傾きがほぼ同等になる。一方で、領域Aと領域Bの境界、即ち、各感光ドラム56に電流が流れ始める一次転写電圧Vt1の値が異なる。より詳細には、図6(c)、(d)の条件では、各一次転写部材59を介して各感光ドラム56に電流を流すために各一次転写部材59に印加する電圧が、図6(a)の条件よりも絶対値が大きい値であった。また、図6(c)各一次転写部材59を介して各感光ドラム56に電流を流すために各一次転写部材59に印加する電圧が、図6(d)の条件よりも絶対値が大きい値であった。
以上、図6(c)~(d)で説明したように、合算電流Itと一次転写電圧Vt1との関係は、各感光ドラム56の表面電位に応じて変化する。
図6(e)は、画像形成装置100の使用環境が変化した場合の、フルカラーモードにおける、一次転写電圧Vt1と合算電流Itとの関係を説明するグラフである。なお、図6(e)においては、中間転写ベルト54の抵抗値によらず、各一次転写部材59に印加する一次転写電圧Vt1が+100[V]以上である場合に、各感光ドラム56に電流が流れる。即ち、図6(e)の各条件下においては、図6(a)と同様に、電流検知回路201によって検知される合算電流Itと一次転写電圧Vt1との関係は、一次転写電圧Vt1が+100[V]の位置を通る比例関係となる。
中間転写ベルト54は、画像形成装置100の使用環境の変化によって、表面抵抗が変動する場合がある。図6(a)においては、中間転写ベルト54の表面抵抗ρsは1.0×109.5[Ω/□]であった。これに対し、図6(e)のグラフRLOWは、中間転写ベルト54の表面抵抗ρsが1.0×107[Ω/□]に低下したときの、一次転写電圧Vt1と合算電流Itとの関係を示している。また、図6(e)のグラフRHighは、中間転写ベルト54の表面抵抗ρsが1.0×1011[Ω/□]に上昇したときの、一次転写電圧Vt1と合算電流Itとの関係を示している。
グラフRLOWに示すように、中間転写ベルト54の表面抵抗ρsが1.0×107[Ω/□]まで減少する場合、一次転写電圧Vt1が+500[V]のときに合算電流Itは60[μA]となった。なお、グラフRLOWに関しては、中間転写ベルト54の抵抗値が減少しているため、図6(a)と比較すると、各感光ドラム56に電流が流れ易くなっている。そのため、電流検知回路201によって検知される合算電流Itと一次転写電圧Vt1との関係は、図6(a)と比較すると傾きが大きくなる。
そして、グラフRHighに示すように、中間転写ベルト54の使用環境が変化し、表面抵抗ρsが1.0×1011[Ω/□]に上昇した場合、一次転写電圧Vt1が+500[V]のときに合算電流Itは20[μA]となった。グラフRLOWに関しては、中間転写ベルト54の抵抗値が上昇しているため、図6(a)と比較すると、各感光ドラム56に電流が流れにくくなっている。そのため、電流検知回路201によって検知される合算電流Itと一次転写電圧Vt1との関係は、図6(a)と比較すると傾きが小さくなる。
最後に、図6(f)について説明する。図6(f)は、画像形成装置100の使用を継続することによって各感光ドラム56の表層膜厚が薄くなった場合の、フルカラーモードにおける、一次転写電圧Vt1と合算電流Itとの関係を説明するグラフである。各感光ドラム56は、膜厚が薄くなると、各帯電ローラ57と各感光ドラム56間の空隙間に生じる電位差が大きくなることで、帯電後の各感光ドラム56の表面電位の絶対値が大きくなる。即ち、図6(f)に示すように、帯電後の各感光ドラム56の表面電位が約-600[V]となる。
すると、図6(f)において、領域Aでは、一次転写電源200から各一次転写部材59に+0[V]以上の一次転写電圧Vt1が印加されると、各感光ドラム56の表面と中間転写ベルト54の表面との間の電位差が放電閾値を超える。このとき、各感光ドラム56の表面と中間転写ベルト54の表面との間で放電が発生し、各感光ドラム56に電流が流れる。したがって、図6(f)の条件下においては、電流検知回路201によって検知される合算電流Itと一次転写電圧Vt1との関係は、一次転写電圧Vt1が0[V]の位置を通る比例関係となる。
図6(a)と比較すると、図6(f)の条件においては、各感光ドラム56に電流が流れやすくなっており、一次転写電圧Vt1が+500[V]のとき、合算電流Itは、60[uA]となった。即ち、図6(f)に示すように、電流検知回路201によって検知される合算電流Itと一次転写電圧Vt1との関係は、図6(a)と比較すると傾きが大きくなる。
以上、図6(a)~(f)のグラフの結果を整理すると、合算電流Itと一次転写電圧Vt1との関係は、中間転写ベルト54と各一次転写部材59の当接離間状態、感光ドラム56の表面電位、中間転写ベルト54の抵抗値などによって変動する。
[一次転写部材と中間転写ベルトの当接状態の検出]
図7は、本実施例における、一次転写部材59と中間転写ベルト54の当接状態の検出方法を説明するフローチャートである。
図7に示すように、一次転写部材59と中間転写ベルト54の当接状態を検出する場合、先ず、S10で、各現像ローラ58を離間する。これにより、各感光ドラム56の表面電位は、トナーが付着することなく各一次転写部材59の位置まで搬送される。その後、S11で、帯電電源400から各帯電ローラ57a、57b、57c、57dに所定電圧Aを印加する。そして、S12で、一次転写電源200から各一次転写部材59に所定電圧Bを印加する。ここで、所定電圧A及び所定電圧Bは、予め求められた演算式、ルックアップテーブルなどに基づいてその発生電圧値に応じて決定されるものである。
その後、S13で、電流検知回路201によって合算電流Itを検知した後に、S14で合算電流Itと予め設定された閾値α(第1の閾値)の値を比較する。なお、閾値αの詳細は、後述する。合算電流Itが閾値αより大きな値だった場合、S15で、コントローラ10は、各一次転写部材59が中間転写ベルト54に当接している第1の状態であると判断する。一方、合算電流Itが閾値α以下だった場合、S16で、コントローラ10は、一次転写部材59dのみが中間転写ベルト54に当接している状態であると判断する。即ち、S16で、コントローラ10は、一次転写部材59dと中間転写ベルト54が当接し、且つ、一次転写部材59a~59cが中間転写ベルト54から離間した第2の状態であると判断する。
次に、閾値αについて説明する。閾値αは、電流検知回路201によって検知される合算電流Itと比較するために予め設定された閾値であり、本実施例においては、図2に記載のROM151に格納されている。また、閾値αの値は、帯電ローラ57に印加する所定電圧Aと、各一次転写部材59に印加する所定電圧Bに加え、図6で説明した、合算電流Itが変動する値の範囲を考慮して決定する必要がある。
本実施例では、各感光ドラム56の表面電位が少なくとも-400[V]以上になるように、帯電ローラ57に印加する所定電圧Aを決定する。そのため、図6(c)~(d)で説明したように、各一次転写部材59に印加する一次転写電圧Vt1としてより絶対値が大きい値の電圧を印加する必要がない。言い換えると、図6(a)~(b)で説明したように、より低い値の一次転写電圧Vt1によって、一次転写部材59と中間転写ベルト54の当接状態を検出することが可能である。
本実施例では、一次転写部材59と中間転写ベルト54の当接と離間の状態を検出するために、所定電圧Aの値を-1000[V]に設定し、所定電圧Bの値を+350[V]に設定した。また、一次転写電圧Vt1に対して合算電流Itが小さくなる条件を考慮して、閾値αの値を5[μA]に設定した。ここで、合算電流Itが小さくなる条件とは、例えば、感光ドラム56の膜厚が厚い、中間転写ベルト54の抵抗値が高い、などの条件のことである。
本実施例の構成によれば、帯電ローラ57によって感光ドラム56の表面電位を制御し、一次転写電源200から一次転写部材59に電圧を印加した際の電流検知手段201の検知結果に基づいて、一次転写部材59と中間転写ベルト54との当接状態を判断する。これにより、一次転写電源200から複数の一次転写部材59に電圧を印加する構成において、電流検知回路201において安定して電流を検知することができ、一次転写部材59と中間転写ベルト54との当接状態を精度よく判断することが可能である。
さらに、本実施例においては、帯電ローラ57によって感光ドラム56の表面電位を制御することで、一次転写電源200から一次転写部材59に出力する電圧の値が大きくなることを好適に抑制することが可能である。これにより、一次転写部材59や感光ドラム56に対する通電による耐久性の低下を更に抑制することが可能となる。
具体的には、帯電ローラ57によって感光ドラム56の表面を帯電しない場合、図6(c)に示したように、一次転写部材59から感光ドラム56に電流を流すためには、一次転写部材59に-600[V]の電圧を印加する必要がある。一方で、本実施例の構成によれば、図6(a)~(b)に示すように、一次転写部材59に-100[V]の電圧を印加することで、一次転写部材59から感光ドラム56に電流を流すことができ、電流検知回路201によってその電流値を検知することができる。
なお、本実施例では、フルカラーモードとモノクロモードとを区別する方法について説明したが、本発明はこれらのモード以外のモードを検知する場合にも用いることが可能である。例えば、イエローとマゼンタの画像形成部64a、64bのみを用いて画像形成を行う2色モードや、イエローとマゼンタとシアンの画像形成部64a、64b、64cのみを用いて画像形成を行う3色モード等、色々な組み合わせのモードが考えられる。このような各種カラーモードを持つ画像形成装置においても、本実施例において説明した検知方法を用いることで、いずれの一次転写部材と中間転写ベルトとが当接しているかを判断することが可能である。
また、本実施例では、所定電圧A及び所定電圧Bは、予め求められた演算式、ルックアップテーブルなどに基づいてその発生電圧値に応じて決定されるものを採用したが、これに限定されるものではない。例えば、環境センサ106の検知結果に応じて、所定電圧A及び所定電圧Bの値をさらに補正されるものを採用しても良い。
さらに、本実施例では、現像ローラ58を感光ドラム56から離間させることで、感光ドラムへトナーを付着させないようにしたが、これに限らず、現像ローラ58を感光ドラム56に対して当接させた状態を維持しても良い。この場合、例えば、現像電源500から現像ローラ58に印加する電圧として、画像形成時とは逆極性の電圧を印加することで、現像ローラ58に担持されているトナーを感光ドラム56に移動させないように制御すれば良い。
本実施例においては一次転写部材59として導電性のブラシ部材を用いたが、これに限らず、導電弾性層を有するローラ部材や、導電性のシート部材、金属ローラ等を用いることも可能である。
また、本実施例においては、各一次転写部材59a~59dを中間転写ベルト54から離間させることが可能な構成について説明したが、これに限らない。例えば、黒色のトナーを収容する画像形成部64dに対応した一次転写部材59dを常に中間転写ベルト54に当接させる構成、即ち、一次転写部材59dと中間転写ベルト54とが常に当接する構成としてもよい。この場合、一次転写部材59a~59cのみを中間転写ベルト54に対して当接又は離間可能とする付勢構成を採用すれば良い。
なお、本実施例においては、全ての一次転写部材59a~59dに共通の一次転写電源200から電圧を印加する構成を用いたが、これに限らず、一部の一次転写部材59だけ共通化しても良い。より詳細には、少なくとも2つの一次転写部材に電圧を印加する一次転写電源を共通化することによって、本実施例において説明した効果を得ることが可能である。
(実施例2)
実施例1においては、電流検知回路201による検知結果と、所定の閾値αとの比較によって、第1の状態又は第2の状態のいずれの状態が形成されているかを判断した。これに対し、実施例2は、一次転写部材59を中間転写ベルト54から離間させる制御を実施する前及び実施した後における、電流検知回路201のそれぞれの検知結果に基づいて、第1の状態又は第2の状態のいずれの状態が形成されていたかを判断する。なお、以下の説明において、実施例2が実施例1と共通する構成及び制御に関しては、同一の符号を付して説明を省略する。
所定ジョブが完了した後に、続けて新たなジョブで画像形成動作を実行する場合、画像形成装置100は、新たなジョブを開始する際に第1の状態が形成されているのか、又は第2の状態が形成されているのかを把握しておく必要がある。そこで、本実施例においては、一次転写部材59を中間転写ベルト54から離間させる制御を実施する前及び実施した後における、電流検知回路201のそれぞれの検知結果に基づいて、第1の状態又は第2の状態のいずれの状態が形成されていたかを判断する。以下、図8を用いて詳細に説明する。
[一次転写部材と中間転写ベルトの当接状態の検出]
図8は、本実施例における、一次転写部材59と中間転写ベルト54の当接状態の検出方法を説明するフローチャートである。
図8に示すように、一次転写部材59と中間転写ベルト54の当接状態がどのような状態であるかを検出する場合、先ず、S20で、各現像ローラ58を離間する。これにより、各感光ドラム56の表面電位は、トナーが付着することなく各一次転写部材59の位置まで搬送される。その後、S21で、帯電電源400から各帯電ローラ57a、57b、57c、57dに所定電圧Aを印加する。そして、S22で、一次転写電源200から各一次転写部材59に所定電圧Bを印加する。ここで、所定電圧A及び所定電圧Bは、予め求められた演算式、ルックアップテーブルなどに基づいてその発生電圧値に応じて決定されるものである。
その後、S23で、電流検知回路201によって合算電流ItAを検知する。なお、この時点では、第1の状態が形成されているか、若しくは第2の状態が形成されているかはわからない状態である。そして、S24で、コントローラ10は、一次転写部材59を付勢する付勢手段(不図示)を制御して一次転写部材59a、59b、59cを中間転写ベルト54から離間させる動作を実施する。コントローラ10によって一次転写部材59a、59b、59cを中間転写ベルト54から離間させる制御が実施されたと判断された後に、S25で、電流検知回路201によって合算電流ItBを検知する。
続いて、S26で、コントローラ10は、合算電流ItAと合算電流ItBの値を比較する。合算電流ItAが合算電流ItBより大きな値だった場合、コントローラ10は、S27で、各一次転写部材59と中間転写ベルト54との当接状態は、第1の状態から第2の状態に切り替わったと判断する。即ち、S23の時点においては、各一次転写部材59は中間転写ベルト54と当接する第1の状態であったと判断する。
一方、合算電流ItAが合算電流ItB以下だった場合、コントローラ10は、S28で、一次転写部材59dのみが中間転写ベルト54に当接している状態であると判断する。即ち、S28で、コントローラ10は、各一次転写部材59と中間転写ベルト54との当接状態は、検知動作開始時から、一次転写部材59dと中間転写ベルト54のみが当接する第2の状態であると判断する。言い換えると、S23の時点においては、一次転写部材59dのみが中間転写ベルト54と当接する第2の状態であったと判断する。
以上、本実施例によれば、一次転写部材59を中間転写ベルト54から離間させる制御を実施する前及び実施した後における、電流検知回路201のそれぞれの検知結果に基づいて、一次転写部材59と中間転写ベルト54の当接状態を判断することができる。その結果、本実施例においては、実施例1と同様の効果が得られるだけでなく、所定ジョブが完了した後に、続けて新たなジョブで画像形成動作を実行する場合の一次転写部材59と中間転写ベルト54の当接状態も検出することができる。
さらに、本実施例の構成によれば、離間動作前後において、一次転写部材59に流れる電流の相対差での比較が可能になる。その結果、実施例1と同様の効果が得られるだけでなく、図6(e)、(f)など、各部材のインピーダンスが変動してしまう条件においても、より精度良く一次転写部材59と中間転写ベルト54の当接状態を判断できる。
なお、本実施例では、コントローラ10によって一次転写部材59a、59b、59cを中間転写ベルト54から離間させる動作を実施し、その前後の電流検知回路201の検知結果に基づいて一次転写部材59と中間転写ベルト54の当接状態を判断した。しかし、これに限らず、RAM152に前ジョブ等の電流検知回路201における検知結果を格納しておき、その格納された値と、電流検知回路201の検知結果と比較することで、一次転写部材59と中間転写ベルト54の当接状態を判断する構成としても良い。
(実施例3)
実施例1においては、電流検知回路201による検知結果と、所定の閾値αとの比較によって、第1の状態又は第2の状態のいずれの状態が形成されているかを判断した。これに対し、実施例3は、各露光手段60によって各感光ドラム56を順次露光し、電流検知回路201による検知結果に基づいて、第1の状態又は第2の状態のいずれの状態が形成されているかを判断する。なお、以下の説明において、実施例3が実施例1と共通する構成及び制御に関しては、同一の符号を付して説明を省略する。
[露光手段による感光ドラムの順次露光]
図9(a)は、露光手段60aによって感光ドラム56aを露光することで、感光ドラム56aに静電潜像80が形成された様子を示す模式図である。図9(a)に示すように、静電潜像80は、露光手段60aの走査方向に関して、感光ドラム56aがトナー像を担持することが可能な領域である画像形成領域の幅に対して最大限幅広く形成されている。また、静電潜像80は、感光ドラム56aの回転方向である図示矢印R1方向に関して、5ライン程度の幅を有して形成されている。ここで、静電潜像80の主走査方向の幅は、電流検知回路201によってより良好な検出結果を得るために、画像形成領域の最大幅の半分以上の幅で形成するようにすることが望ましい。
図9(b)は、静電潜像80が一次転写部N1aに到達した時の、電流検知回路201における検知結果について説明するグラフである。図9(b)において、縦軸は電流検知手段201によって検知された電流の値であり、横軸は経過時間を示している。図9(b)に示すように、電流検知回路201によって検知される電流は、静電潜像80が一次転写部N1aに到達したことで、時刻Tmaにおいて電流値が極小となり、その後静電潜像80が一次転写部N1aを通過した後に電流値が大きくなっていく。
ここで、時刻T1において電流検知回路201によって検知される電流値が減少する理由について説明する。図9(c)は、感光ドラム56aの表面電位を示す模式図である。図9(c)において、横軸は感光ドラム56aの回転方向に関する表面位置を示しており、縦軸は電位を示している。領域83は、静電潜像80が形成された位置を示している。電位VDは、感光ドラム56aの表面において露光手段60aによって露光されていない位置の電位であり、電位VLは、感光ドラム56aの表面において露光手段60aによって露光されている位置の電位である。また、電位VTは、本実施例において一次転写部材59の当接状態を検知するために一次転写電源200から一次転写部材59aに印加する電圧の値である。
図9(c)に示すように、静電潜像80の領域83では、一次転写部材59aと感光ドラム56aとの電位差84が、それ以外の領域における電位差85と比べ小さくなる。このため、静電潜像80が一次転写部N1aに到達すると、一次転写部材59aに流れる電流の値が減少する。そして、これに伴って電流検知回路201による検知結果も減少することで、図9(b)に示したように時刻T1で、電流検知回路201によって検知される電流値が極小となる。このように、電流検知回路201によって検知される電流値は、感光ドラム56aの表面電位を反映したものとなる。
[一次転写部材と中間転写ベルトの当接状態の検出]
図10は、本実施例における、一次転写部材59と中間転写ベルト54の当接状態の検出方法を説明するフローチャートである。図11(a)は、一次転写部材59a~59dが全て中間転写ベルト54と当接している第1の状態において電流検知回路201によって検知される電流について説明する模式図である。また、図11(b)は、一次転写部材59a~59cが中間転写ベルト54から離間しており、一次転写部材59dのみが中間転写ベルト54と当接している第2の状態において電流検知回路201によって検知される電流について説明する模式図である。
図10に示すように、一次転写部材59と中間転写ベルト54の当接状態を検出する場合、先ず、S30で、各現像ローラ58を離間する。これにより、各感光ドラム56の表面電位は、トナーが付着することなく各一次転写部材59の位置まで搬送される。その後、S31で、帯電電源400から各帯電ローラ57a、57b、57c、57dに所定電圧Aを印加する。そして、S32で、一次転写電源200から各一次転写部材59に所定電圧Bを印加する。ここで、所定電圧A及び所定電圧Bは、予め求められた演算式、ルックアップテーブルなどに基づいてその発生電圧値に応じて決定されるものである。
その後、S33で、コントローラ10は露光制御部101を制御し、図11(a)~(b)に示す時刻T1のタイミングで各露光手段60a~60dにレーザ信号86a~86dの4つの信号を順次出力する。そして、各露光手段60a~60dは、出力されたレーザ信号86a~86dに基づいて、各感光ドラム56a~56dに対して光照射を行い、レーザ信号86a~86dに対応した静電潜像80a~80dを各感光ドラム56a~56dに形成する。なお、ここで、静電潜像80b~80dは、形成される感光ドラムが異なることを除いて既に図9(a)~(c)を用いて説明した静電潜像80aと実質同一である。
図11(a)、(b)において、時刻T1から時刻T2の間の時間は、露光手段60aから感光ドラム56aに光照射を開始した位置から一次転写部N1aまでの間の距離を、感光ドラム56aが回転移動するのに要する時間である。時刻T2においては、図9(b)で説明したように、各静電潜像80a~80dに対応した電流の極小値が電流検知回路201によって検知される。より詳細には、各一次転写部材59a~59dが中間転写ベルト54と当接する第1の状態が形成されている場合、図11(a)に示すように、時刻Tma~時刻Tmdにおいて、各静電潜像80a~80dに対応した電流の極小値が4回検知される。一方で、一次転写部材59dのみが中間転写ベルト54と当接する第2の状態が形成されている場合、図11(b)に示すように、時刻Tmdにおいて静電潜像80dに対応した電流の極小値が1回だけ検知される。
以上を踏まえ、本実施例においては、図10に示すS34で、所定の検知時間としての時間ΔTにおいて電流検知回路201が電流の極小値を検知したかどうかを判断する。ここで、時間ΔTは、図11(a)、(b)に示される、時間T2から時間T3の区間のことである。より具体的には、時間ΔTは少なくとも、感光ドラム56aに形成された静電潜像80aの回転方向に関する先端位置が一次転写部N1aに到達した時間から、感光ドラム56dに形成された静電潜像80dが一次転写部N1dを通過し終えた時間までを含む。
その後、S35で、時間ΔTの間に検知された電流の極小値の回数をカウントして検知回数Nを算出し、S36で、検知回数Nが1より大きいかを判断する。カウント回数Nが1より大きな値だった場合、S37で、各一次転写部材59が中間転写ベルト54に当接していると判断する。検知回数Nが1より大きい場合、コントローラ10は、S37で、各一次転写部材59と中間転写ベルト54とが当接している第1の状態であると判断する。一方、検知回数Nが1以下の場合、コントローラ10は、S38で、一次転写部材59dのみが中間転写ベルト54に当接している状態であると判断する。即ち、S38で、コントローラ10は、一次転写部材59dと中間転写ベルト54が当接し、且つ、一次転写部材59a~59cが中間転写ベルト54から離間した第2の状態であると判断する。
なお、本実施例においては、第1の状態と第2の状態のいずれかを判断する場合について説明したが、例えば、本実施例の構成においては、全ての一次転写部材59を中間転写ベルト54から離間させた第3の状態を検知することが可能である。より詳細には、例えば、S36において、Nが1以下である場合に更に別のシーケンスを設定し、Nが1であるか0であるかを判断する。そして、Nが1である場合には、一次転写部材59dのみが中間転写ベルト54と当接する第2の状態であると判断し、Nが0である場合には、全ての一次転写部材59が中間転写ベルト54から離間した第3の状態であると判断すれば良い。
以上説明したように、本実施例によれば、各露光手段60によって各感光ドラム56を順次露光し、電流検知回路201による検知結果に基づいて、第1の状態又は第2の状態のいずれの状態が形成されているかを判断する。この構成により、実施例1と同様の効果が得られるだけでなく、電流検知回路201による電流の検知精度に依存することなく、より精度良く一次転写部材59と中間転写ベルト54の当接状態を判断できる。
なお、本実施例では、感光ドラム56の一周分の回転に対して合計1回の静電潜像80を形成したが、静電潜像80を形成する回数はこれに限らない。静電潜像80を形成する回数は1回以上でも良く、また、各感光ドラム56に形成する回数をそれぞれ異なる回数にしても良い。このように回数制御を行うことで、いずれの一次転写部材59が中間転写ベルト54に当接しているのかを、より高精度に検知することが可能となる。
(実施例4)
実施例1~3においては、電流検知回路201による検知結果に基づいて、第1の状態又は第2の状態のいずれの状態が形成されているかを判断した。これに対し、実施例4は、電流検知回路201による検知結果と、中間転写ベルト54に形成したテスト画像の検知結果とに基づいて、第1の状態又は第2の状態のいずれの状態が形成されているかを判断する。なお、以下の説明において、実施例4が実施例1~3と共通する構成及び制御に関しては、同一の符号を付して説明を省略する。
[テスト画像の検知]
図12は、本実施例の画像形成装置100の制御系統のブロック図である。図12において、テスト画像制御部107は、テスト画像検知手段としてのセンサ600と協働して、感光ドラム56から中間転写ベルト54に形成されたテスト画像を検知することが可能である。ここで、テスト画像とは、例えば、画像形成時に置けるトナー像の位置や濃度を制御するために、画像形成を行わないタイミング(以下、非画像形成時)で感光ドラム56から中間転写ベルト54に形成される画像のことである。
センサ600は、LED発光素子と受光素子(不図示)を有する正反射光学系であり、センサ600によって検知された情報はテスト画像制御部107に送信される。CPU150は、テスト画像制御部107からの検出データを演算処理し、次の画像形成時に形成するトナー像に対する色ずれ量および補正量を算出することが可能である。本実施例において、コントローラ10は、センサ600によって所定のテスト画像が検出されないと判断された場合に、一次転写部材59dのみ中間転写ベルト54に当接している第2の状態が形成されていると判断することが可能である。以下、図13を用いて詳細に説明する。
[一次転写部材と中間転写ベルトの当接状態の検出]
図13は、本実施例における、一次転写部材59と中間転写ベルト54の当接状態の検出方法を説明するフローチャートである。本実施例においては、電流検知回路201による検知結果と、中間転写ベルト54に形成したテスト画像の検知結果とに基づいて、一次転写部材59と中間転写ベルト54の当接離間を判断する。
図13に示すように、一次転写部材59と中間転写ベルト54の当接状態を検出する場合、先ず、S40で、各現像ローラ58を離間する。これにより、各感光ドラム56の表面電位は、トナーが付着することなく各一次転写部材59の位置まで搬送される。その後、S41で、帯電電源400から各帯電ローラ57a、57b、57c、57dに所定電圧Aを印加する。そして、S42で、一次転写電源200から各一次転写部材59に所定電圧Bを印加する。ここで、所定電圧A及び所定電圧Bは、予め求められた演算式、ルックアップテーブルなどに基づいてその発生電圧値に応じて決定されるものである。
その後、S43で、電流検知回路201によって合算電流ItAを検知する。そして、S44で、コントローラ10によって一次転写部材59を付勢する付勢手段(不図示)を制御して一次転写部材59a、59b、59cを中間転写ベルト54から離間させる動作を実施する。コントローラ10によって一次転写部材59a、59b、59cを中間転写ベルト54から離間させる制御が実施されたと判断された後に、S45で、電流検知回路201によって合算電流ItBを検知する。そして、S46で、合算電流ItAと合算電流ItBの差の値と、閾値βの値とを比較する。なお、閾値βの詳細は、後述する。
S46において、合算電流ItAと合算電流ItBの差の値が閾値βより大きな値だった場合、S47で、コントローラ10は、合算電流ItAと合算電流ItBの値を比較する。そして、合算電流ItAが合算電流ItBより大きな値だった場合、コントローラ10は、S48で、各一次転写部材59と中間転写ベルト54との当接状態は、第1の状態から第2の状態に切り替わったと判断する。即ち、S43の時点においては、各一次転写部材59は中間転写ベルト54と当接する第1の状態であったと判断する。
一方、合算電流ItAが合算電流ItB以下だった場合、コントローラ10は、S49で、一次転写部材59dのみが中間転写ベルト54に当接している第2の状態であると判断する。即ち、S49で、コントローラ10は、各一次転写部材59と中間転写ベルト54との当接状態は、検知動作開始時から、一次転写部材59dと中間転写ベルト54のみが当接する第2の状態であると判断する。
S46において、合算電流ItAと合算電流ItBの差の値が閾値β以下であった場合、S50で、コントローラ10はテスト画像制御部107を制御し、各感光ドラム56a~56dの全ての感光ドラム56を用いて中間転写ベルト54にテスト画像を形成する。そして、S51で、コントローラ10は、センサ600が想定通りのテスト画像を検出したかを判断する。センサ600が想定通りのテスト画像を検出した場合、S52で、コントローラ10は、各一次転写部材59が中間転写ベルト54に当接している第1の状態であると判断する。一方、センサ600が想定通りのテスト画像を検出しない場合、S53で、コントローラ10は、一次転写部材59dのみ中間転写ベルト54に当接している第2の状態であると判断する。
ここで、全ての感光ドラム56を用いてテスト画像を形成したにもかかわらず、センサ600が想定通りのテスト画像を検知しない場合について補足して説明する。この場合、いずれかの一次転写部材59が中間転写ベルト54に当接していないことで、いずれかの感光ドラム56におけるトナー像が中間転写ベルト54に転写されないため、センサ600は想定通りのテスト画像を検知しない。本実施例において、画像形成装置は、第1の状態及び第2の状態を有していることから、想定通りのテスト画像が検知されない場合には、一次転写部材59のみが中間転写ベルト54と当接している第2の状態であると判断することが可能である。
なお、本実施例においては全ての感光ドラム56を用いてテスト画像を形成したが、これに限らず、例えば、感光ドラム56a~56cのみを用いてテスト画像を形成しても良い。この場合、想定通りのテスト画像が形成されないことで、一次転写部材59a~59cが中間転写体に対して離間していることを判断することが可能である。さらに、テスト画像の条件をより詳細に設定して本実施例の検出シーケンスに組み込むことによって、いずれの一次転写部材59a~59dが中間転写ベルト54に対して当接しているかをより細かく検知することも可能である。このテスト画像の設定は、検知したい情報に基づいて適宜設定されることが好ましい。
次に、閾値βについて説明する。閾値βは、電流検知回路201によって検知される合算電流ItAと合算電流ItBの差の値と比較するための閾値であり、ROM151(図12に図示)に格納されている。また、閾値βの値は、各帯電ローラ57に印加する所定電圧Aと、各一次転写部材59に印加する所定電圧Bに加え、図6で説明した、合算電流It(本実施例においては、合算電流ItAと合算電流ItB)が変動する値の範囲を考慮して決定する必要がある。
本実施例では、各感光ドラム56の表面電位が少なくとも-400[V]以上になるように、帯電ローラ57に印加する所定電圧Aを決定し、各一次転写部材59に流れる電流が5[μA]以上になるように所定電圧Bを決定する。そして、これらの条件を踏まえ、閾値βの値は3[μA]に設定した。
以上説明したように、本実施例では、電流検知回路201による検知結果と、中間転写ベルト54に形成したテスト画像の検知結果とに基づいて、一次転写部材59と中間転写ベルト54の当接状態を判断する。この構成により、実施例1及び2と同様の効果が得られるだけでなく、外部要因によって電流検知回路201の検知結果が変動してしまった場合においてもより精度よく中間転写ベルト54に対する一次転写部材59の当接状態を判断することが可能である。
なお、本実施例においては、一次転写部材59を中間転写ベルト54から離間させる制御を実施する前及び実施した後における、電流検知回路201のそれぞれの検知結果と、テスト画像の検知結果に基づいて、一次転写部材59の当接状態を判断した。しかし、これに限らず、実施例1~3で説明した構成においても、本実施例と同様に、テスト画像による検知を併用して用いることで、より精度よく一次転写部材59の当接状態を判断することが可能である。例えば、本実施例の変形例としての図14に示すように、実施例1における電流検知結果とテスト画像の検知結果と、に基づいて、第1の状態又は第2の状態のいずれの状態が形成されているかを判断しても良い。