以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
[実施例1]
1.画像形成装置の全体的な構成及び動作
図1は、本実施例の画像形成装置100の概略断面図である。本実施例の画像形成装置100は、電子写真方式を用いてフルカラー画像を形成することが可能な、中間転写方式を採用したタンデム型の複合機(複写機、プリンタ、ファクシミリ装置の機能を有する。)である。
画像形成装置100は、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナー像を形成する4個の画像形成部UY、UM、UC、UKを有する。各画像形成部UY、UM、UC、UKにおける同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、いずれかの色用の要素であることを表す符号の末尾のY、M、C、Kを省略して総括的に説明することがある。本実施例では、画像形成部Uは、後述する感光ドラム1、帯電ローラ2、露光装置3、現像装置4、1次転写ローラ5、ドラムクリーニング装置6などを有して構成される。
トナー像を担持する像担持体としての、回転可能なドラム型の感光体(電子写真感光体)である感光ドラム1は、図中矢印R1方向に回転駆動される。回転する感光ドラム1の表面は、帯電手段としてのローラ型の帯電部材である帯電ローラ2によって、所定の極性(本実施例では負極性)の所定の電位に一様に帯電処理される。帯電時に、帯電ローラ2には、所定の帯電バイアス(帯電電圧)が印加される。帯電処理された感光ドラム1の表面は、画像情報に基づいて露光手段としての露光装置(レーザースキャナー)3によって走査露光され、感光ドラム1上に静電像(静電潜像)が形成される。感光ドラム1上に形成された静電像は、現像手段としての現像装置4によって現像剤としてのトナーが供給されて現像(可視化)され、感光ドラム1上にトナー像が形成される。本実施例では、一様に帯電処理された後に画像情報に基づいて露光されることで電位の絶対値が低下した感光ドラム1上の露光部(イメージ部)に、感光ドラム1の帯電極性と同極性(本実施例では負極性)に帯電したトナーが付着する(反転現像方式)。本実施例では、現像時のトナーの帯電極性であるトナーの正規の帯電極性(ここでは、単に「正規極性」ともいう。)は負極性である。現像時に、現像装置4が備える現像剤担持体としての現像ローラには、所定の現像バイアス(現像電圧)が印加される。
4個の感光ドラム1に対向するように、中間転写体としての無端状のベルトで構成された中間転写ベルト7が配置されている。中間転写ベルト7は、複数の張架ローラ71~76に掛け回されて所定の張力で張架されている。中間転写ベルト7は、複数の張架ローラのうちの1つである駆動ローラ71が回転駆動されることによって図中矢印R2方向に150~470mm/secの周速度で回転(周回移動)する。複数の張架ローラのうちの他の1つであるテンションローラ74は、中間転写ベルト7の張力を一定に制御する。複数の張架ローラのうちの更に他の1つである2次転写対向ローラ76は、後述する2次転写ローラ8の対向部材(対向電極)として機能する。中間転写ベルト7の内周面側には、各感光ドラム1に対応して、1次転写手段としてのローラ型の1次転写部材である1次転写ローラ5が配置されている。1次転写ローラ5は、中間転写ベルト7を介して感光ドラム1に向けて押圧され、感光ドラム1と中間転写ベルト7とが接触する1次転写部(1次転写ニップ)T1を形成する。上述のように感光ドラム1上に形成されたトナー像は、1次転写部T1において、1次転写ローラ5の作用によって、回転している中間転写ベルト7上に1次転写される。1次転写時に、1次転写ローラ5には、1次転写電源(高圧電源)E1により、トナーの正規極性とは逆極性(本実施例では正極性)の直流電圧である1次転写バイアス(1次転写電圧)が印加され、1次転写部に1次転写電流が供給される。例えば、1次転写時に、各1次転写ローラ5には、+1~+3KV程度の定電圧制御された1次転写バイアスが印加され、各1次転写部T1に20~60μA程度の電流が流される。例えばフルカラー画像の形成時には、各感光ドラム1上に形成されたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナー像が、中間転写ベルト7上に重ね合わされるようにして順次1次転写される。本実施例では、各1次転写ローラ5には、各色のトナー像が1次転写部T1に搬送されてくるのに同期して1次転写バイアスが印加される。
中間転写ベルト7の外周面側において、2次転写対向ローラ76に対向する位置には、2次転写手段としてのローラ型の2次転写部材である2次転写ローラ8が配置されている。2次転写ローラ8は、中間転写ベルト7を介して2次転写対向ローラ76に向けて押圧され、中間転写ベルト7と2次転写ローラ8とが当接(直接接触又は記録材Pを挟持)する2次転写部(二次転写ニップ)T2を形成する。上述のように中間転写ベルト7上に形成されたトナー像は、2次転写部T2において、2次転写ローラ8の作用によって、中間転写ベルト7と2次転写ローラ8とに挟持されて搬送される紙などの記録材P上に2次転写される。2次転写時に、2次転写ローラ8には、2次転写電源(高圧電源)E2により、トナーの正規極性とは逆極性(本実施例では正極性)の直流電圧である2次転写バイアス(2次転写電圧)が印加され、2次転写部T2に2次転写電流が供給される。例えば、2次転写時に、2次転写ローラ8には、+1~+7KV程度の定電圧制御された2次転写バイアスが印加され、2次転写部T2に40~120μA程度の電流が流される。記録材Pは、記録材収納部(図示せず)から1枚ずつ給送された後、レジストローラ9によって、中間転写ベルト7上のトナー像とタイミングが合わされて2次転写部T2へと搬送される。本実施例では、画像形成装置100は、2次転写ローラ8を中間転写ベルト7に対して離接させる離接手段としての離接機構90(図3参照)を有している。そして、本実施例では、2次転写ローラ8は、中間転写ベルト7上のトナー像が2次転写部T2に搬送されてくるのに同期して、中間転写ベルト7に当接させられて、2次転写バイアスが印加される。
なお、本実施例における2次転写対向ローラ76を2次転写部材として用いて、これに本実施例とは逆極性の2次転写バイアスを印加すると共に、本実施例における2次転写ローラ8を2次転写対向部材として用いて、これを電気的に接地してもよい。
トナー像が転写された記録材Pは、定着手段としての定着装置10へと搬送される。定着装置10は、未定着のトナー像を担持した記録材Pを加熱及び加圧することによって、トナー像を記録材P上に定着(溶融、固着)させる。トナー像が定着された記録材Pは、画像形成装置100の装置本体の外部へと排出(出力)される。
また、1次転写時に中間転写ベルト7に転写されずに感光ドラム1上に残留したトナー(1次転写残トナー)は、感光体クリーニング手段としてのドラムクリーニング装置6によって感光ドラム1上から除去されて回収される。また、2次転写時に記録材Pに転写されずに中間転写ベルト7上に残留したトナー(2次転写残トナー)は、中間転写体クリーニング手段としてのベルトクリーニング装置20によって中間転写ベルト7上から除去されて回収される。ベルトクリーニング装置20については、後述して更に詳しく説明する。
ここで、本実施例では、1次転写ローラ5は、芯金(基材)と、芯金の外周にイオン導電系発泡ゴムで形成された弾性層と、を有して構成される。本実施例では、1次転写ローラ5の外径は、15~20mmである。また、本実施例では、1次転写ローラ5の電気抵抗値は、N/N環境(23℃、50%RH)で2kVを印加して測定した場合1×105~1×108Ωである。
また、本実施例では、2次転写ローラ8は、芯金(基材)と、芯金の外周にイオン導電系発泡ゴムで形成された弾性層と、を有して構成される。本実施例では、2次転写ローラ8の外径は、20~25mmである。また、本実施例では、2次転写ローラ8の電気抵抗値は、N/N環境(23℃、50%RH)で2kVを印加して測定した場合1×105~1×108Ωである。
また、本実施例では、2次転写対向ローラ76は、芯金(基材)と、芯金の外周に電子導電性のゴムで形成された弾性層と、を有して構成される。本実施例では、2次転写対向ローラ76の外径は、20~22mmである。また、本実施例では、2次転写対向ローラ76の電気抵抗値は、N/N環境(23℃、50%RH)で50Vを印加して測定した場合1×105~1×108Ωである。
また、本実施例では、中間転写ベルト7は、基層(裏面の層)、弾性層(中間層)、表層を有する複数層構成のベルトである。基層は、ポリイミド、ポリカーボネートなどの樹脂又は各種ゴムなどに帯電防止剤としてカーボンブラックを適当量含有させた材料で形成されており、厚みは0.05~0.15[mm]である。弾性層は、CRゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴムなどの各種ゴムなどにイオン導電剤を適当量含有させた材料で形成されており、厚みは0.1~0.500[mm]である。イオン導電剤としては、例えば、脂肪族スルホン酸塩などが用いられる。表層は、ウレタン樹脂、フッ素樹脂などの樹脂で形成されており、厚みは0.0002~0.020[mm]である。中間転写ベルト7の体積抵抗率は、5×108~1×1014[Ω/cm](23℃、50%RH)である。また、中間転写ベルト7の硬度は、MD1硬度で60~85°(23℃、50%RH)である。また、中間転写ベルト7の静止摩擦係数は、0.15~0.6(23℃、50%RH、HEIDON社製type94i)である。
2.ベルトクリーニング装置
図2は、本実施例におけるベルトクリーニング装置20の近傍の模式的な拡大断面図である。ベルトクリーニング装置20は、中間転写ベルト7の回転方向において、2次転写部T2よりも下流かつ1次転写部T1(最上流の1次転写部T1Y)よりも上流、特に、中間転写ベルト7を介して駆動ローラ71に対向する位置に配置されている。本実施例では、ベルトクリーニング装置20は、中間転写ベルト7上のトナーを静電的に回収する静電クリーニング装置、特に、導電性ファーブラシローラを用いた静電式ブラシクリーニング装置で構成されている。
本実施例では、ベルトクリーニング装置20は、中間転写ベルト7の近傍に配置されたハウジング21を有する。ハウジング21の内部には、次の各部材が設けられている。まず、第1、第2のクリーニング部材としての第1、第2のクリーニングブラシ22a、22bである。また、第1、第2の回収部材としての第1、第2の回収ローラ23a、23bである。また、第1、第2の掻き取り部材としての第1、第2のブレード24a、24bである。
第1、第2のクリーニングブラシ22a、22bは、回転可能な導電性ファーブラシローラで構成されている。第1、第2のクリーニングブラシ22a、22bのブラシ繊維は、糸の電気抵抗値が3×105~1×1013(Ω/cm)、繊維太さが2~15デニールのカーボン分散型ナイロン繊維、アクリル繊維又はポリエステル繊維で構成されている。そして、第1、第2のクリーニングブラシ22a、22bは、このブラシ繊維を、植毛密度5万本~50万本/inch2の割合で基材としての金属ローラ上に植毛して構成されている。第1、第2のクリーニングブラシ22a、22bは、中間転写ベルト7に対して約1.0~2.0mmの侵入量を保って配置されている。また、第1、第2のクリーニングブラシ22a、22bは、駆動手段としての駆動モータ(図示せず)により、中間転写ベルト7の周速度の20~80%の周速度で図中矢印R3方向へ回転駆動される。つまり、第1、第2のクリーニングブラシ22a、22bは、中間転写ベルト7との接触部において中間転写ベルト7の移動方向とは逆方向に移動するように回転し、中間転写ベルト7の表面を摺擦する。本実施例では、第1、第2のクリーニングブラシ22a、22bは、中間転写ベルト7を介して対向部材(対向電極)として機能する駆動ローラ71に当接させられている。駆動ローラ71は、電気的に接地(グランドに接続)されている。第1、第2のクリーニングブラシ22a、22bは、その回転軸線方向が中間転写ベルト7の表面の移動方向と略直交する幅方向と略平行に配置されている。第1、第2のクリーニングブラシ22a、22bの回転軸線方向の長さは、中間転写ベルト7の幅方向における中間転写ベルト7上の最大画像形成幅よりも長い。第1のクリーニングブラシ22aと中間転写ベルト7との接触部が、第1のクリーニングブラシ22aによる中間転写ベルト7上からのトナーの回収が行われる第1のクリーニング部CL1である。また、第2のクリーニングブラシ22bと中間転写ベルト7との接触部が、第2のクリーニングブラシ22bによる中間転写ベルト7上からのトナーの回収が行われる第2のクリーニング部CL2である。第1、第2のクリーニング部CL1、CL2は、中間転写ベルト7の回転方向において、2次転写部T2よりも下流かつ1次転写部T1(最上流の1次転写部T1Y)よりも上流に位置する。そして、本実施例では、中間転写ベルト7の回転方向において、第1のクリーニング部CL1は、第2のクリーニング部CL2よりも上流に位置する。
第1、第2の回収ローラ23a、23bは、回転可能な金属製(本実施例ではアルミニウム製)のローラ(金属ローラ)で構成されている。第1、第2の回収ローラ23a、23bは、第1、第2のクリーニングブラシ22a、22bに対して約1.5~2.5mmの侵入量を保って配置されている。また、第1、第2の回収ローラ23a、23bは、駆動手段としての駆動モータ(図示せず)により、第1、第2のクリーニングブラシ22a、22bと同等の周速度で図中矢印R4方向へ回転駆動される。つまり、第1、第2の回収ローラ23a、23bは、第1、第2のクリーニングブラシ22a、22bとの接触部において第1、第2のクリーニングブラシ22a、22bの移動方向と順方向に移動するように回転する。第1、第2の回収ローラ23a、23bは、その回転軸線方向が中間転写ベルト7の幅方向と略平行に配置されている。第1、第2の回収ローラ23a、23bの回転軸線方向の長さは、第1、第2のクリーニングブラシ22a、22bの回転軸線方向の長さと同等とされている。
第1、第2のブレード24a、24bは、第1、第2の回収ローラ23a、23bに当接して配置されている。第1、第2のブレード24a、24bは、弾性部材としてのウレタンゴムなどのゴム材料で形成されている。第1、第2のブレード24a、24bは、第1、第2の回収ローラ23a、23bの回転軸線方向と略平行に配置される長手方向と、該長手方向と略直交する短手方向と、にそれぞれ所定の長さを有し、所定の厚さを有する板状の部材である。第1、第2のブレード24a、24bの厚みは1.6~2.2mm、硬度はIRHD硬度で70~78°(23℃、50%RH)である。また、第1、第2のブレード24a、24bは、第1、第2の回収ローラ33a、33bに対して0.5~2.0mmの侵入量を保って配置されている。第1、第2のブレード24a、24bは、第1、第2の回収ローラ23a、23bの回転方向に対してカウンター方向(自由端部が回転方向の上流側を向く方向)に、第1、第2の回収ローラ23a、23bに当接させられている。第1、第2のブレード24a、24bの回転軸線方向の長さは、第1、第2の回収ローラ23a、23bの回転軸線方向の長さと同等とされている。
本実施例では、中間転写ベルト7の回転方向において上流側に位置する第1のクリーニングブラシ22aには、トナーの正規極性と同極性である負極性の電圧(第1のクリーニングバイアス、第1のクリーニング電圧)が印加される。本実施例では、直流電源である第1のクリーニング電源(高圧電源)25aにより、第1の回収ローラ23aに負極性の電圧が印加されることにより、該第1の回収ローラ23aを介して第1のクリーニングブラシ22aに負極性の電圧が印加される。本実施例では、第1のクリーニングブラシ22a(すなわち、第1のクリーニング部CL1)に流れる電流(第1のクリーニング電流)が20μAとなるように定電流制御された負極性の直流電圧が、第1のクリーニングブラシ22aに印加される。この第1のクリーニング電流は、中間転写ベルト7の内周面側から外周面側に向かう方向(外方向)に流れる電流を正の値で表す場合+20μAである。
一方、本実施例では、中間転写ベルト7の回転方向において下流側に位置する第2のクリーニングブラシ22bには、トナーの正規極性とは逆極性である正極性の電圧(第2のクリーニングバイアス、第2のクリーニング電圧)が印加される。本実施例では、直流電源である第2のクリーニング電源(高圧電源)25bにより、第2の回収ローラ23bに正極性の電圧が印加されることにより、該第2の回収ローラ23bを介して第2のクリーニングブラシ22bに正極性の電圧が印加される。本実施例では、第2のクリーニングブラシ22b(すなわち、第2のクリーニング部CL2)に流れる電流(第2のクリーニング電流)が20μAとなるように定電流制御された正極性の直流電圧が、第2のクリーニングブラシ22bに印加される。この第2のクリーニング電流は、中間転写ベルト7の外周面側から内周面側に向かう方向(内方向)に流れる電流を負の値で表す場合-20μAである。
上述のように第1、第2のクリーニングブラシ22a、22bに電圧が印加されることで、第1、第2のクリーニングブラシ22a、22bと中間転写ベルト7との間に中間転写ベルト7上のトナーを回収するのに適した電界(クリーニング電界)が形成される。これにより、中間転写ベルト7上の2次転写残トナーは、第1、第2のクリーニングブラシ22a、22bに静電的に吸着され、中間転写ベルト7上から除去される。第1のクリーニングブラシ22aには、中間転写ベルト7上の2次転写残トナーのうち正規極性とは逆極性である正極性に帯電したトナーが付着する。また、第2のクリーニングブラシ22bには、中間転写ベルト7上の2次転写残トナーのうち正規極性である負極性に帯電したトナーが付着する。また、このトナーは、第1、第2の回収ローラ23a、23bと第1、第2のクリーニングブラシ22a、22bとの間に形成された電界により、第1、第2のクリーニングブラシ22a、22bから第1、第2の回収ローラ23a、23bに転移する。さらに、第1、第2の回収ローラ23a、23bに転移したトナーは、第1、第2のブレード24a、24bによって第1、第2の回収ローラ23a、23b上から掻き落とされる。第1、第2の回収ローラ23a、23bから掻き落されたトナーは、ハウジング21内に収容され、更に搬送部材(スクリューなど)によって回収容器(図示せず)へと搬送される。
3.ディスチャージ装置の構成
図2に示すように、中間転写ベルト7の回転方向において、2次転写ローラ8(2次転写部T2)よりも下流かつベルトクリーニング装置20(第1、第2のクリーニング部CL1、CL2)よりも上流に、ディスチャージ装置30が配置されている。本実施例では、ディスチャージ装置30は、静電クリーニング装置、特に、導電性ファーブラシローラを用いた静電式ブラシクリーニング装置と同様の構成を有する。
ディスチャージ装置(抵抗上昇抑制装置)30は、中間転写ベルト7の近傍に配置されたディスチャージ部ハウジング31を有する。ハウジング31の内部には、次の各部材が設けられている。まず、ディスチャージ部材(抵抗上昇抑制部材)としてのディスチャージブラシ32である。また、ディスチャージ部回収部材としてのディスチャージ部回収ローラ33である。また、ディスチャージ部掻き取り部材としてのディスチャージ部ブレード34である。
ディスチャージブラシ32は、回転可能な導電性ファーブラシローラで構成されている。ディスチャージブラシ32のブラシ繊維は、糸の電気抵抗値が3×105~1×1013(Ω/cm)、繊維太さが2~15デニールのカーボン分散型ナイロン繊維、アクリル繊維又はポリエステル繊維で構成されている。そして、ディスチャージブラシ32は、このブラシ繊維を、植毛密度5万本~50万本/inch2の割合で基材としての金属ローラ上に植毛して構成されている。ディスチャージブラシ32は、中間転写ベルト7に対して約1.0~2.0mmの侵入量を保って配置されている。また、ディスチャージブラシ32は、駆動手段としての駆動モータ(図示せず)により、中間転写ベルト7の周速度の20~80%の周速度で図中矢印R3方向へ回転駆動される。つまり、ディスチャージブラシ32は、中間転写ベルト7との接触部において中間転写ベルト7の移動方向とは逆方向に移動するように回転し、中間転写ベルト7の表面を摺擦する。本実施例では、中間転写ベルト7の内周面側において、ディスチャージブラシ32に対向する位置に、対向部材(対向電極)としての対向ローラ80が配置されている。本実施例では、ディスチャージブラシ32は、中間転写ベルト7を介して対向ローラ80に当接させられている。対向ローラ80は、電気的に接地されている。ディスチャージブラシ32は、その回転軸線方向が中間転写ベルト7の幅方向と略平行に配置されている。ディスチャージブラシ32の回転軸線方向の長さは、中間転写ベルト7の幅方向における中間転写ベルト7上の最大画像形成幅よりも長い。ディスチャージブラシ32と中間転写ベルト7との接触部が、ディスチャージブラシ32により中間転写ベルト7に電流を供給して中間転写ベルト7内のイオンの偏りを均すことが行われるディスチャージ部Dである。本実施例では、ディスチャージ部Dは、中間転写ベルト7の回転方向において、2次転写部T2よりも下流かつ第1、第2のクリーニング部CL1、CL2よりも上流に位置する。
ディスチャージ部回収ローラ33は、回転可能な金属製(本実施例ではアルミニウム製)のローラ(金属ローラ)で構成されている。ディスチャージ部回収ローラ33は、ディスチャージブラシ32に対して約1.5~2.5mmの侵入量を保って配置されている。また、ディスチャージ部回収ローラ33は、駆動手段としての駆動モータ(図示せず)により、ディスチャージブラシ32と同等の周速度で図中矢印R4方向へ回転駆動される。つまり、ディスチャージ部回収ローラ33は、ディスチャージブラシ32との接触部においてディスチャージブラシ32の移動方向と順方向に移動するように回転する。ディスチャージ部回収ローラ33は、その回転軸線方向が中間転写ベルト7の幅方向と略平行に配置されている。ディスチャージ部回収ローラ33の回転軸線方向の長さは、ディスチャージブラシ32の回転軸線方向の長さと同等とされている。
ディスチャージ部ブレード34は、ディスチャージ部回収ローラ33に当接して配置されている。ディスチャージ部ブレード34は、弾性部材としてのウレタンゴムなどのゴム材料で形成されている。ディスチャージ部ブレード34は、ディスチャージ部回収ローラ33の回転軸線方向と略平行に配置される長手方向と、該長手方向と略直交する短手方向と、にそれぞれ所定の長さを有し、所定の厚さを有する板状の部材である。ディスチャージ部ブレード34の厚みは1.6~2.2mm、硬度はIRHD硬度で70~78°(23℃、50%RH)である。また、ディスチャージ部ブレード34は、ディスチャージ部回収ローラ33に対して0.5~2.0mmの侵入量を保って配置されている。ディスチャージ部ブレード34は、ディスチャージ部回収ローラ33の回転方向に対してカウンター方向(自由端部が回転方向の上流側を向く方向)に、ディスチャージ部回収ローラ33に当接させられている。ディスチャージ部ブレード34の回転軸線方向の長さは、ディスチャージ部回収ローラ33の回転軸線方向の長さと同等とされている。
本実施例では、ディスチャージブラシ32には、トナーの正規極性とは逆極性である正極性の電圧(ディスチャージバイアス、ディスチャージ電圧)が印加される。本実施例では、直流電源であるディスチャージ電源(高圧電源)35により、ディスチャージ部回収ローラ33に正極性の電圧が印加されることにより、該ディスチャージ部回収ローラ33を介してディスチャージブラシ32に正極性の電圧が印加される。これにより、ディスチャージブラシ32(すなわち、ディスチャージ部D)に、中間転写ベルト7内のイオンの偏りを均すための電流(ディスチャージ電流)が供給される。ディスチャージブラシ32に印加する電圧については後述して更に詳しく説明する。
4.制御態様
図3は、本実施例の画像形成装置100の要部の制御態様を示す概略ブロック図である。制御手段としての制御部50は、演算処理を行う中心的素子である演算制御手段としてのCPU51、記憶手段としてのRAM52、ROM53などのメモリ(記憶媒体)などを有して構成される。書き換え可能なメモリであるRAM52には、制御部50に入力された情報、検知された情報、演算結果などが格納され、ROM53には制御プログラム、予め求められたデータテーブルなどが格納されている。CPU51とRAM52、ROM53などのメモリとは互いにデータの転送や読込みが可能となっている。
制御部50には、画像形成装置100の操作部及び画像読み取り部、パーソナルコンピュータなどの外部装置が接続されている。制御部50は、画像形成装置100の操作部からの指示及び画像読み取り部からの画像データ、あるいは外部装置からの画像形成信号(画像データ、制御指令)に基づき、画像形成装置100の各部を統括的に制御して、画像形成動作を実行させる。図3には、画像形成装置100の各部を代表して1次転写電源E1、2次転写電源E2、ディスチャージ電源35、第1、第2のクリーニング電源25a、25b、接離機構90が示されている。
ここで、画像形成装置100は、一の開始指示により開始される、単一又は複数の記録材Pに画像を形成して出力する一連の動作である画像形成動作(プリントジョブ)を実行する。画像形成動作は、一般に、画像形成工程、前回転工程、複数の記録材Pに画像を形成する場合の紙間工程、及び後回転工程を有する。画像形成工程は、実際に記録材Pに形成して出力する画像の静電像の形成、トナー像の形成、トナー像の1次転写、2次転写を行う期間であり、画像形成時とはこの期間のことをいう。より詳細には、画像形成時のタイミングは、上記静電像の形成、トナー像の形成、トナー像の1次転写、2次転写の各工程を行う位置で異なり、感光ドラム1上や中間転写ベルト7上の画像領域が上記各位置を通過している期間に相当する。前回転工程は、開始指示が入力されてから実際に画像を形成し始めるまでの、画像形成工程の前の準備動作を行う期間である。紙間工程は、複数の記録材Pに対する画像形成を連続して行う際(連続画像形成)の記録材Pと記録材Pとの間に対応する期間である。後回転工程は、画像形成工程の後の整理動作(準備動作)を行う期間である。非画像形成時とは、画像形成時以外の期間であって、上記前回転工程、紙間工程、後回転工程、更には画像形成装置100の電源投入時又はスリープ状態からの復帰時の準備動作である前多回転工程などが含まれる。より詳細には、非画像形成時のタイミングは、感光ドラム1上や中間転写ベルト7上の非画像領域が、上記静電像の形成、トナー像の形成、トナー像の1次転写、2次転写の各工程を行う各位置を通過している期間に相当する。なお、感光ドラム1上や中間転写ベルト7上の画像領域とは、記録材Pに転写されて画像形成装置100から出力される画像が形成される領域であり、非画像領域は画像領域以外の領域である。非画像領域には後述するように試験用トナー像が形成されることがある。
5.ディスチャージバイアスの制御
<ディスチャージバイアスの設定>
図4(a)は、中間転写ベルト7に電圧を印加した場合の電圧印加時間(電流供給時間)と中間転写ベルト7の電気抵抗との関係の一例を示すグラフ図である。図4(b)は、図4(a)に示す結果を得た測定装置200の模式図である。図4(b)に示すように、第1ローラ201に中間転写ベルト7を巻き付け、第2ローラ202を当接させる。そして、一定速度で第1ローラ201及び第2ローラ202の両方を回転させながら、第1ローラ201を接地し、第2ローラ202に一定の電流が流れるように高圧電源203から第2ローラ202に定電流制御で正極性の電圧を印加する。これにより、中間転写ベルト7に外周面側から内周面側に向かう方向(内方向)の電流(ここでは、内方向に流れる電流を負極性の電流とする。)が流れる。図4(a)に示すように、イオン導電性の弾性層を有する中間転写ベルト7は、電圧印加時間に比例して電気抵抗が上昇する。そして、一定の電圧印加時間が経過した後に、第2ローラ202に絶対値が上記と同一の一定の電流が流れるようにして、高圧電源203から第2ローラ202に定電流制御で印加する電圧の極性を上記とは逆極性である負極性に変更する。これにより、中間転写ベルト7の内周面側から外周面側に向かう方向(外方向)の電流(ここでは、外方向に流れる電流を正極性の電流とする。)が流れるようになる。このように電流の方向を変更すると、変更前の電圧印加時間と略同一の電圧印加時間が経過した後に、中間転写ベルト7の電気抵抗はほぼ元の電気抵抗に戻る。
表1は、本実施例において画像形成動作中に各部で中間転写ベルト7に供給される電流の関係を示す。
中間転写ベルト7には、1次転写部T1(T1Y、T1M、T1C、T1K)、2次転写部T2、第1、第2のクリーニング部CL1、CL2で電流が供給される。表1では、中間転写ベルト7の内周面側から外周面側に向かう方向(外方向)の電流の値を正(プラス)の値、中間転写ベルト7の外周面側から内周面側に向かう方向(内方向)の電流の値を負(マイナス)の値で表している。表1から、画像形成動作中に1次転写部T1、2次転写部T2、第1、第2のクリーニング部CL1、CL2で供給される電流の総和を求めると、外方向の電流の方が内方向の電流よりも90μA多いことが分かる。そのため、中間転写ベルト7内のイオンに偏りが発生し、中間転写ベルト7の電気抵抗が上昇する。
ここで、画像形成動作中に1次転写部T1、2次転写部T2、第1、第2のクリーニング部CL1、CL2、ディスチャージ部Dで供給される電流の値の総和を、画像形成動作中に中間転写ベルト7に通電される「電流収支」とする。このとき、本実施例では、この電流収支を略0にするように、画像形成動作中にディスチャージ部Dに90μAの内方向の電流を供給する。つまり、本実施例では、画像形成動作中に、ディスチャージブラシ32(すなわち、ディスチャージ部D)に流れるディスチャージ電流が90μAとなるように定電流制御された正極性の直流電圧が、ディスチャージブラシ32に印加される。このディスチャージ電流は、中間転写ベルト7の外周面側から内周面側に向かう方向(内方向)に流れる電流を負の値で表す場合-90μAである。
なお、画像形成動作中にディスチャージ部Dに供給する電流の設定値は上記の設定値に限定されるものではない。この電流は、画像形成動作中の中間転写ベルト7内のイオンの偏りを均す方向(本実施例では内方向)の電流であり、画像形成動作中に中間転写ベルト7に通電される電流収支を0とする値に対し±50%の範囲の値(本実施例では45μA~135μA)の電流であればよい。つまり、この電流は、その絶対値が画像形成動作中の1次転写電流、2次転写電流及び第1、第2のクリーニング電流(すなわち、ディスチャージ電流を除く電流)の総和の絶対値の50%~150%であり、該総和とは逆極性の電流であればよい。また、この電流は、好ましくは電流収支を0とする値に対し±30%の範囲の値の電流であり、より好ましくは電流収支を略0とする値の電流である。本実施例では、電流収支を略0とする値の電流とは、電流収支を0とする値に対し±5%の範囲の値の電流であることを指す。本発明者の検討によれば、このような設定値とすることで、中間転写ベルト7の電気抵抗の上昇を十分に抑制して、中間転写ベルト7を十分に長寿命化する効果が得られる。典型的には、この電流は、最適クリーニング電流よりも絶対値が大きくなる。この電流が、電流収支を0とする値に対し-50%未満の値の電流であると、中間転写ベルト7の電気抵抗の上昇を抑制する効果が不十分となり、中間転写ベルト7を十分に長寿命化できなくなる。一方、この電流が、電流収支を0とする値に対し+50%より大きい値の電流であると、上述とは逆方向へのイオンの偏りが生じる可能性がある。
なお、ディスチャージ装置30を設けない場合よりも、中間転写ベルト7の使用開始からその電気抵抗が許容し得ないほど上昇するまでに可能な画像形成枚数が多ければ、長寿命化の効果は得られたこととなる。ただし、ディスチャージ装置30を設けない場合よりも、例えば上記画像形成枚数で10~30%程度以上長寿命化できることが好ましい。本実施例では、上記画像形成枚数で10%程度以上の長寿命化を図ることができた。
また、1次転写バイアス、2次転写バイアス、第1、第2のクリーニングバイアス、ディスチャージバイアスのうち定電流制御されるものについては、その定電流制御の目標電流値を上述の電流収支を求めるために用いることができる。また、これら各バイアスのうち定電圧制御されるものについては、該バイアスの印加により流れる電流の平均値や該定電圧制御の目標電圧値を設定するために用いられる目標電流値を、上述の電流収支を求めるために用いることができる。また、本実施例では、画像形成中に1次転写部T1、2次転写部T2、第1、第2のクリーニング部CL1、CL2、ディスチャージ部Dに供給される電流の値は、中間転写ベルト7上の画像領域が上記各部を通過している際の電流の値で代表される。画像形成動作中に上記各部での電流の供給タイミング(電流供給時間)が異なることなどによって、画像形成動作中に中間転写ベルト7を流れる外方向の電流量と内方向の電流量とが厳密に同じにならなくてもよい。画像形成動作中にディスチャージ部Dに供給する電流を上述のように設定することで、中間転写ベルト7の電気抵抗の上昇を十分に抑制して、十分に中間転写ベルト7の長寿命化を図ることができる。
制御部50は、予め設定されてROM53に記憶されているデータテーブルなどを参照することによって、例えば画像形成動作(プリントジョブ)ごとにディスチャージ電流の値を設定することができる。ディスチャージ電流の設定は、画像形成に使用される記録材Pの種類や環境(画像形成装置100の内部又は外部の少なくとも一方の温度又は湿度の少なくとも一方)に応じて異なっていてよい。
<クリーニング性>
次に、画像形成動作中の2次転写残トナーのクリーニング性について説明する。
図5は、本実施例における2次転写残トナーのクリーニング性を説明するためのグラフ図である。横軸は第2のクリーニングブラシ22bに供給する電流の絶対値、縦軸は第2のクリーニングブラシ22bを通過した後の中間転写ベルト7上の2次転写残トナーの量(クリーニング残トナー量)である。図5において、縦軸の値が0になる電流の領域が良好なクリーニング性が得られる電流の領域となる。なお、第1のクリーニングブラシ22aに供給する電流の絶対値は事前の検討で得た2次転写残トナーを回収するための最適値(最適クリーニング電流)である20μAに固定している。また、図5に示すクリーニング性は、ディスチャージ装置30が設けられていない構成で調べたものである。
図5に示すように、本実施例の構成では、第2のクリーニングブラシ22bに供給する電流の絶対値を10~40μA付近とすることで良好なクリーニング性を得ることができる。つまり、本実施例の構成では、最適クリーニング電流は10~40μA、典型的には20μAである。一方、第2のクリーニングブラシ22bに供給する電流の絶対値が40μAを超えると、一旦中間転写ベルト7から第2のクリーニングブラシ22bに付着したトナーが、第2のクリーニングブラシ22bから中間転写ベルト7上に再付着する現象が発生する。つまり、クリーニング電界が強い場合には、第2のクリーニングブラシ22bに回収された正規極性のトナーの帯電極性が、第2のクリーニングブラシ22b内での放電により逆極性に反転し始めるため、上述のような再付着現象が発生する。
本実施例では、画像形成動作中に第1のクリーニングブラシ22a(第1のクリーニング部CL1)に供給する電流の絶対値は20μA(外方向)に固定している。また、本実施例では、画像形成動作中に第2のクリーニングブラシ22b(第2のクリーニング部CL2)に供給する電流の絶対値は20μA(内方向)に固定している。
なお、最適クリーニング電流の値は、より詳細には、第2のクリーニングブラシ22bを単独で用いた場合(つまり、ディスチャージブラシ32、第1のクリーニングブラシ22aを設けない場合)の次のような値で代表することができる。つまり、中間転写ベルト7上の最大トナー載り量のトナー像の未転写トナーが、第2のクリーニング部CL2を通過した後に中間転写ベルト7上に残るトナーの量を、最小とすることが可能な第2のクリーニング電流の値である。中間転写ベルト7上の最大トナー載り量は、画像形成装置100において中間転写ベルト7上に形成することが可能なトナー像のうち単位面積当たりのトナーの質量である載り量(mg/cm2)が最大であるトナー像の該載り量である。
上述のような第2のクリーニングブラシ22bにおける再付着現象は、ディスチャージブラシ32においても同様に発生する。そのため、画像形成動作中にディスチャージブラシ32に供給する電流の絶対値を90μAに設定すると、2次転写残トナーは一旦ディスチャージブラシ32に取り込まれるが、ディスチャージブラシ32の1周回転後などに中間転写ベルト7上に再付着する。
ここで、図6(a)に示すようにディスチャージ装置30を中間転写ベルト7の回転方向においてベルトクリーニング装置20よりも下流に配置した比較例1、図6(b)に示すようにディスチャージ装置30が設けられていない比較例2について説明する。比較例1、比較例2についても、本実施例のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については本実施例と同一の符号を付すものとする。比較例1において画像形成動作中に1次転写部T1、2次転写部T2、第1、第2のクリーニング部CL1、CL2、ディスチャージ部Dに供給される電流の設定は本実施例と同じである。また、比較例2において画像形成動作中に1次転写部T1、2次転写部T2、第1、第2のクリーニング部CL1、CL2に供給される電流の設定は本実施例と同じである。表2は、本実施例、比較例1、比較例2における次のような耐久試験を行った場合のクリーニング性の推移を示す。耐久試験では、5%Duty(印字率)の画像をA3サイズの普通紙に連続して形成した。そして、連続画像形成動作中に、画像面側にクリーニング不良が発生するか否かを確認した。表2において、〇は、視認できる画像汚れが発生せずクリーニング性が良好であったことを示し、△は、うっすらと画像汚れが発生することがあったことを示す。
本実施例、比較例1、比較例2のいずれについても、500枚目までは良好なクリーニング性が得られた。しかし、比較例1では、1000枚目以降にうっすらと画像汚れが発生する現象が発生した。
一般に、画像形成動作中にベルトクリーニング装置20によって中間転写ベルト7上の2次転写残トナーを100%除去することは難しい。そのため、通常では視認できないレベルのトナーがベルトクリーニング装置20を通過した後にも中間転写ベルト7上には付着している。比較例2の構成では、中間転写ベルト7の回転方向においてベルトクリーニング装置20よりも下流に、ベルトクリーニング装置20を通過したトナーを回収する部材が存在しない。そのため、比較例2の構成では、ベルトクリーニング装置20を通過したトナーが蓄積し続ける部材がないため、画像不良は発生しない。ただし、比較例2では、画像形成を行うことによる中間転写ベルト7内のイオンの偏りを均す手段を有していないため、中間転写ベルト7の長寿命化を図ることはできない。
比較例1の構成では、中間転写ベルト7の回転方向においてベルトクリーニング装置20よりも下流に、ディスチャージ装置20が配置されている。そして、比較例1の構成では、画像形成動作中にディスチャージブラシ32に最適クリーニング電流よりも絶対値が大きい電流が供給される。そのため、比較例1の構成では、ディスチャージブラシ32は常に上述の再付着現象を発生させつつ、徐々にトナーを回収して溜め込んでもいる。そして、比較例1の構成では、ディスチャージブラシ32が一定量のトナーを溜め込んだ後、あるタイミングで溜め込んだトナーを中間転写ベルト7上に一度に再付着させる現象が発生してしまったものと考えられる。
比較例1の構成の場合、連続画像形成動作中に、所定の頻度で(例えば一定の枚数だけ画像を形成した後に)、ディスチャージブラシ32を清掃する動作を実行する必要がある。この動作としては、ディスチャージブラシ32に画像形成動作中とは逆極性の電圧を印加して、ディスチャージブラシ32に付着したトナーを中間転写ベルト7に吐き出すことを含む動作を行うことが考えられる。そのため、この動作のためにダウンタイム(画像を形成できない期間)が生じ、この動作にかかる時間の分だけ画像形成装置100の生産性が低下してしまう。また、ジャム(紙詰まり)が発生して中間転写ベルト7上に未転写トナーが残った場合などには、ベルトクリーニング装置20を用いても1回で中間転写ベルト7をクリーニングすることは困難である。そのため、ベルトクリーニング装置20よりも下流に配置されたディスチャージ装置30に多量のトナーが一度に到達する。この場合も、ディスチャージブラシ32に付着したトナーを清掃する動作のための時間が余計に必要となり、ジャム後の復帰時間が余計に長くかかってしまう。なお、ディスチャージブラシ32を中間転写ベルト7に対して離接させる機構を設け、未転写トナーがディスチャージブラシ32に付着することを抑制する構成も考えられるが、装置が複雑化してしまう。
一方、本実施例では、ディスチャージ装置30は、中間転写ベルト7の回転方向において2次転写ローラ8(2次転写部T2)よりも下流かつベルトクリーニング装置20(第1、第2のクリーニング部CL1、CL2)よりも上流に配置されている。そして、本実施例では、画像形成動作中にディスチャージ部Dに中間転写ベルト7の電流収支を略0とするディスチャージ電流が供給される。ディスチャージ部Dにこのようなディスチャージ電流を供給することで、中間転写ベルト7内のイオンの偏りを均すことができ、中間転写ベルト7の電気抵抗の上昇を抑制して、中間転写ベルト7の長寿命化を図ることができる。また、ディスチャージ部Dにこのようなディスチャージ電流を供給することでディスチャージブラシ32から中間転写ベルト7上に再付着した正極性に帯電しているトナーは、第1のクリーニングブラシ22aによって回収することが可能である。つまり、ディスチャージブラシ32を清掃する動作を行わなくても、ディスチャージブラシ32から中間転写ベルト7上に再付着した正極性に帯電しているトナーは、第1のクリーニングブラシ22aによって回収される。また、本実施例では、ディスチャージブラシ32によって回収されなかった負極性に帯電している2次転写トナーは、第2のクリーニングブラシ22bによって回収することが可能である。このように、本実施例では、中間転写ベルト7内のイオンの偏りを均して中間転写ベルト7の電気抵抗の上昇を抑制しつつ、ディスチャージブラシ32の清掃のためにダウンタイムが生じて生産性が低下することを抑制することができる。
<シーケンス>
次に、本実施例における画像形成動作時の各部の動作のシーケンスについて説明する。
図7は、本実施例における、画像形成動作時の各部の動作のシーケンスを示すタイミングチャート図である。同図には、次の各部の動作シーケンスが示されている。まず、中間転写ベルト7の駆動のON/OFFである。また、1次転写バイアスのON/OFFである。また、2次転写ローラ8の離接及び2次転写バイアスのON/OFFである。また、ディスチャージローラ32の駆動のON/OFF及びディスチャージバイアスのON/OFFである。また、第1、第2のクリーニングブラシ22a、22bの駆動のON/OFF及び第1、第2のクリーニングバイアスのON/OFFである。なお、便宜上、1次転写バイアスは、中間転写ベルト7の回転方向において最上流の画像形成部UYにおけるONから最下流の画像形成部UKにおけるOFFまでをON期間として示している。
画像形成動作(プリントジョブ)が開始されると、中間転写ベルト7の駆動が開始される(t1)。このとき、各感光ドラム1の駆動も開始される。次に、第1、第2のクリーニングブラシ22a、22bの駆動及び第1、第2のクリーニングバイアスの印加が実質的に同時に開始される(t2)。また、タイミングt2と実質的に同時か又はタイミングt2より十分に短い所定時間だけ後に、ディスチャージブラシ32の駆動及びディスチャージバイアスの印加が開始される(t3)。なお、ディスチャージブラシ32と第1、第2のクリーニングブラシ22a、22bとの配置関係にもよるが、第1、第2のクリーニングバイアスの印加開始タイミングは次のようにすることが好ましい。つまり、少なくとも中間転写ベルト7の停止中にディスチャージ部Dにあった中間転写ベルト7上の位置が第1のクリーニング部CL1に到達する前に、第1、第2のクリーニングバイアスの印加を開始することが好ましい。これにより、中間転写ベルト7の回転が開始する際のショックなどでディスチャージブラシ32から中間転写ベルト7上に再付着することのあるトナーを第1、第2のクリーニングブラシ22a、22bでより確実に回収することができる。次に、クリーニングバイアス及びディスチャージバイアスが印加された中間転写ベルト7上の位置が1次転写部T1に到達するのに合わせて、帯電バイアス、現像バイアスの印加、1次転写バイアスの印加などが開始され、前回転工程が開始される(t4)。次に、画像形成の準備が整い次第、各感光ドラム1にトナー像が形成され、形成されたトナー像が中間転写ベルト7に1次転写される。そして、中間転写ベルト7上のトナー像が2次転写部T2に到達するのに合わせて、2次転写ローラ8が中間転写ベルト7に当接されると共に、2次転写バイアスの印加が開始される(t5)。
その後、トナー像の中間転写ベルト7への1次転写が終了した後に1次転写バイアスの印加が終了される(t6)。また、トナー像の記録材Pへの2次転写(画像形成)が終了した後に2次転写ローラ8が中間転写ベルト7から離間され、2次転写バイアスの印加が終了される(t7)。その後、ベルトクリーニング装置20による2次転写残トナーのクリーニングが終了した後に、ディスチャージブラシ32の駆動及びディスチャージバイアスの印加が終了される(t8)。また、これと実質的に同時か又は後に、第1、第2のクリーニングブラシ22a、22bの駆動及び第1、第2のクリーニングバイアスの印加が終了される(t9)。その後、中間転写ベルト7の駆動が停止される(t10)。これにより画像形成動作が終了する。
以上説明したように、本実施例によれば、中間転写ベルト7内のイオンの偏りを均して中間転写ベルト7の電気抵抗の上昇を抑制しつつ、ディスチャージブラシ32の清掃のために生産性が低下することを抑制することができる。
[実施例2]
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は、実施例1の画像形成装置のものと同じである。したがって、実施例1の画像形成装置のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、実施例1と同一の符号を付して、詳しい説明は省略する。
本実施例では、中間転写ベルト7上の非画像領域に形成される試験用トナー像がディスチャージ部Dを通過している際のディスチャージバイアスを、中間転写ベルト7上の画像領域がディスチャージ部Dを通過している際のディスチャージバイアスと異ならせる。
1.濃度制御
画像形成装置100では、環境や経時変化などで画像濃度が変動することがある。そこで、本実施例の画像形成装置100は、連続画像形成動作中に、所定の枚数(N枚目)の画像形成が終了した後の紙間工程又は後回転工程において、最大濃度(ベタ画像)に対する濃度を補正(調整)する濃度制御(制御モード)を実行可能である。
図3、図8~図10を用いて、本実施例における濃度制御について説明する。図8は濃度制御用のパターン画像の配置を示す模式図、図9は濃度制御の手順の概略を示すフローチャート図、図10は濃度制御時の信号値と電位との関係を示すグラフ図である。
濃度制御が開始されると(S100)、2次転写ローラ8が中間転写ベルト7から離間状態とされる。次に、前回の制御でROM53に格納された目標濃度に対応する現像コントラストV0を挟んだ2つの現像コントラストV1、V2の設定で(図10)、それぞれ濃度N1、N2のパターン画像(試験用トナー像)77(図8)が形成される(S101)。パターン画像77は、各濃度N1、N2ごとに、感光ドラム1上に25mm×25mmの正方形で形成され、中間転写ベルト7上に1次転写される。パターン画像77の形成位置は、中間転写ベルト7の幅方向における最大画像形成幅内にある。
画像形成装置100には、中間転写ベルト7上のトナー像の濃度を検知する濃度検知手段としての濃度センサ17が設けられている(図1)。濃度センサ17は、中間転写ベルト7の回転方向において最下流の1次転写部T1Kよりも下流かつ2次転写部T2よりも上流で中間転写ベルト7上のトナー像の濃度を検知可能なように配置されている。濃度センサ17内には、発光素子(図示せず)及び受光素子(図示せず)が配置されている。濃度センサ17は、パターン画像N1、N2に光を照射し、その反射光を検知して、それぞれのパターン画像の光学濃度に対応した出力値Q1、Q2をCPU51に入力する。CPU51は、入力された出力値Q1、Q2をRAM52に一時的に記憶させる(S102)。
本実施例では、X-rite反射濃度計を用いて測定した画像濃度が0となる場合にQ=0、また画像濃度が1.5となる場合にQ=255となるように組まれたデータが予めROM53に格納されている。パターン画像77を濃度センサ17で検出した検出信号値Q1、Q2から、目標濃度になるときの目標濃度信号値Qtに対応する現像コントラストVtが、CPU51によって線形補完により算出される(S103)。例えば、目標最大濃度を1.2とし、これに対応する現在の現像コントラストが200Vであったとする。本実施例の画像形成装置100が、現像コントラストが20V変化するとベタ部近傍の濃度が0.1程度変化する装置である場合、現在のコントラスト±20Vでパターン画像を出力する。すなわち、濃度約1.0(N1)となる現像コントラスト160V(V1)と濃度約1.4(N2)となる現像コントラスト240V(V2)でパターン画像77を形成して、濃度センサ17で検出する。ここで、検出信号がQ1=175、Q2=245であったものとする。この場合、検出したこの2つの信号値から線形補完して、新しい現像コントラストVt=193Vを決定し、ROM53に記憶されている現在の現像コントラストV0を新しい現像コントラストVtに変更(更新)する(S104)。その後、パターン画像77は、未転写トナーの状態でディスチャージ部D及び第1、第2のクリーニング部CL1、CL2へと搬送される。そして、パターン画像77がベルトクリーニング装置20によって回収された後に、濃度調整が終了され、次の画像形成に戻る(S105)。
2.ディスチャージバイアスの制御
<ディスチャージバイアスの設定>
本実施例においても、画像形成動作中に、非画像領域に形成される試験用トナー像がディスチャージ部Dを通過している期間を含む所定の期間以外の期間では、ディスチャージ部Dに実施例1と同じディスチャージ電流(内方向に90μA)が供給される。なお、本実施例における画像形成動作中に1次転写部T1、2次転写部T2、第1、第2のクリーニング部CL1、CL2に供給される電流の設定は実施例1と同じである。
次に、中間転写ベルト7上の試験用トナー像がディスチャージ部Dを通過する際のディスチャージバイアスについて説明する。
上述のように、本実施例の画像形成装置100は、中間転写ベルト7上に形成した試験用トナー像(濃度制御用のパターン画像)を検知して画像形成装置100の動作設定の制御(濃度制御)を実施している。試験用トナー像が2次転写部T2を通過する際には、2次転写ローラ8は中間転写ベルト7から離間された状態とされる。そのため、試験用トナー像は、実質的に全てディスチャージ部Dに到達し、その後第1、第2のクリーニング部CL1、CL2に到達してベルトクリーニング装置20によって回収される。試験用トナー像は、画像領域に形成される通常の画像の2次転写残トナーよりも、中間転写ベルト7上のトナー載り量が多い。本実施例では、2次転写残トナーのトナー載り量が0.05mg/cm2程度であるに対して、試験用トナー像(未転写トナー)は画像形成装置100における最大トナー載り量である0.45mg/cm2程度になる。
図11は、本実施例における試験用トナー像のクリーニング性を説明するための図5と同様のグラフ図である。横軸は第2のクリーニングブラシ22bに供給する電流の絶対値、縦軸は第2のクリーニングブラシ22bを通過した後に中間転写ベルト7上に残った試験用トナー像のトナーの量(クリーニング残トナー量)である。図11中の実線は、図5に示した2次転写残トナーのクリーニング性を示す曲線であり、破線が試験用トナー像のクリーニング性を示す曲線である。なお、第1のクリーニングブラシ22aに供給する電流の絶対値は20μAに固定している。また、図11に示すクリーニング性は、ディスチャージ装置30が設けられていない構成で調べたものである。
図11中の破線で示すように、中間転写ベルト7上の試験用トナー像は、第2のクリーニングブラシ22bによって1回ではクリーニングすることができない。また、ディスチャージ装置30を設けて、試験用トナー像がディスチャージ部Dを通過している際に、通常の画像の2次転写残トナーが通過している際と同様のディスチャージ電流(内方向に90μA)を供給した状態とすると、次のようになる。つまり、ディスチャージブラシ32は試験用トナー像の大部分を一旦取り込んだ後、そのほとんどを中間転写ベルト7上に再付着させて中間転写ベルト7上に戻してしまう。
図12は、次の各状態における試験用トナー像のトナーの電荷量の分布を示すグラフ図である。つまり、ディスチャージ部Dに到達する前、ディスチャージ部Dを通過した後かつ第1のクリーニング部CL1に到達する前、第1のクリーニング部CL1を通過した後かつ第2のクリーニング部CL2に到達する前の各状態である。横軸は中間転写ベルト7上の試験用トナー像のトナーの単位面積あたりの電荷量Q/M(q/cm2)、縦軸はトナー量(質量基準)である。図12(a)は、ディスチャージ部Dに内方向に90μAの電流を供給した場合、図12(b)は、ディスチャージ部Dに内方向に10μAの電流を供給した場合のトナーの電荷量の分布を示す。なお、第1のクリーニング部CL1には、実施例1と同じ第1のクリーニング電流(外方向に20μA)が供給される。
図12(a)から、試験用トナー像がディスチャージ部Dを通過している際にディスチャージ部Dに内方向に90μAの電流を供給した場合は、ディスチャージブラシ32内で放電電流を受けてトナーの電荷が正極性に反転していることがわかる。このトナーは、中間転写ベルト7上に再付着して第1のクリーニング部CL1に到達する。第1のクリーニング部CL1を通過した後には、正極性のトナーがおおよそ第1のクリーニングブラシ22aで回収され、負極性寄りのトナーが中間転写ベルト7上に残存する。しかし、第1のクリーニング部CL1を通過した後の中間転写ベルト7上には、負極性側だけでなく、電荷量が0付近のトナーも比較的多く存在する。この電荷量が0付近のトナーは、第2のクリーニングブラシ22bでは回収することができず、次に形成される画像に付着して画像不良を発生させてしまう可能性がある。
一方、図12(b)から、試験用トナー像がディスチャージ部Dを通過している際にディスチャージ部Dに内方向に10μAの電流を供給した場合は、ディスチャージブラシ32においてトナーの電荷がほとんど正極性に反転しないことがわかる。そのため、第1のクリーニング部CL1を通過した後には、中間転写ベルト7上に存在する電荷量が0付近のトナーも比較的少ない。したがって、第2のクリーニングブラシ22bで試験用トナー像のトナーを十分に回収することが可能となり、画像不良の発生を抑制することが可能となる。
本実施例では、実施例1と同様、画像形成動作中に第1のクリーニングブラシ22a(第1のクリーニング部CL1)に供給する電流の絶対値は20μA(外方向)に固定している。また、本実施例では、実施例1と同様、画像形成動作中に第2のクリーニングブラシ22b(第2のクリーニング部CL2)に供給する電流の絶対値は20μA(内方向)に固定している。
なお、試験用トナー像がディスチャージ部Dを通過している際にディスチャージ部Dに供給する電流の設定値は上記の設定値に限定されるものではない。中間転写ベルト7上の試験用トナー像が形成された領域がディスチャージ部Dを通過している際のディスチャージ電流の値は、中間転写ベルト7上の画像領域がディスチャージ部Dを通過している際のディスチャージ電流の値よりも絶対値が小さければよい。典型的には、試験用トナー像が形成された領域がディスチャージ部Dを通過している際のディスチャージ電流の値は、該領域が第2のクリーニング部CL2を通過している際の第2のクリーニング電流の値よりも絶対値が小さくなるようにする。このような設定値とすることで、試験用トナー像のトナーの電荷をディスチャージブラシ32において反転させることを抑制して、試験用トナー像のトナーをベルトクリーニング装置20により十分に回収することが可能となる。本実施例では、この電流は、画像形成動作中の中間転写ベルト7内のイオンの偏りを均す方向(本実施例では内方向)の電流であり、最適クリーニング電流よりも絶対値が小さい値の電流とした。このような設定値とすることで、上述のように試験用トナー像のトナーの電荷の反転を抑制すると共に、試験用トナー像がディスチャージ部Dを通過している際にも、ディスチャージ電流による中間転写ベルト7内のイオンの偏りを均す効果がある程度得られる。ただし、試験用トナー像がディスチャージ部Dを通過している際にディスチャージ部Dに供給する電流の設定値は、ゼロもしくはマイナスの値としてもよい。
<シーケンス>
次に、本実施例における画像形成動作時の各部の動作のシーケンスについて説明する。本実施例では、画像形成動作中の紙間工程において濃度制御が実施される。
図13は、本実施例における、画像形成動作時の各部の動作のシーケンスを示すタイミングチャート図である。同図には、実施例1における図7と同様の各部の動作シーケンスが示されている。
画像形成動作(プリントジョブ)が開始されると、中間転写ベルト7の駆動が開始される(t1)。このとき、各感光ドラム1の駆動も開始される。次に、第1、第2のクリーニングブラシ22a、22bの駆動及び第1、第2のクリーニングバイアスの印加が実質的に同時に開始される(t2)。また、タイミングt2と実質的に同時か又はタイミングt2より十分に短い所定時間だけ後に、ディスチャージブラシ32の駆動及びディスチャージバイアスの印加が開始される(t3)。このとき、ディスチャージバイアスは、ディスチャージ部Dで内方向に90μAの電流が流れるように定電流制御で印加される。なお、第1、第2のクリーニングバイアスの印加開始タイミングは実施例1で説明したのと同様のタイミングとすることが好ましい。次に、クリーニングバイアス及びディスチャージバイアスが印加された中間転写ベルト7上の位置が1次転写部T1に到達するのに合わせて、帯電バイアス、現像バイアスの印加、1次転写バイアスの印加などが開始され、前回転工程が開始される(t4)。次に、画像形成の準備が整い次第、各感光ドラム1にトナー像が形成され、形成されたトナー像が中間転写ベルト7に1次転写される。そして、中間転写ベルト7上のトナー像が2次転写部T2に到達するのに合わせて、2次転写ローラ8が中間転写ベルト7に当接されると共に、2次転写バイアスの印加が開始される(t5)。
本実施例では、画像形成動作中に所定の枚数の画像を形成するごとに、濃度制御シーケンスが実施される。濃度制御シーケンスが開始されると、濃度制御シーケンスが開始される前の最後の画像の2次転写が終了した後に、速やかに2次転写ローラ8が中間転写ベルト7から離間され、2次転写バイアスの印加が終了される(t6)。そして、中間転写ベルト7上の非画像領域(紙間)に試験用トナー像が形成され、その濃度が濃度センサ17で検出されて、濃度制御が実行される。また、試験用トナー像がディスチャージ部Dに到達する前に、ディスチャージバイアスの定電流制御の目標電流値が90μAから10μAに変更される(t7)。つまり、ディスチャージバイアスは、ディスチャージ部Dで内方向に10μAの電流が流れるように定電流制御で印加されるようになる。この変更タイミングは、濃度制御シーケンスが開始される前の最後の画像の2次転写残トナーがディスチャージ部Dを通過した後かつ試験用トナー像がディスチャージ部Dに到達する前の任意のタイミングとすることが好ましい。その後、次の画像の2次転写残トナーがディスチャージ部Dに到達する前に、ディスチャージバイアスの定電流制御の目標電流値が10μAから90μAに変更される(t8)。この変更タイミングは、試験用トナー像がディスチャージ部Dを通過した後かつ濃度制御シーケンスが終了した後の最初の画像の2次転写残トナーがディスチャージ部Dに到達する前の任意のタイミングとすることが好ましい。本実施例では、試験用トナー像がディスチャージ部Dを通過した後に速やかにディスチャージバイアスの定電流制御の目標電流値が変更される。また、その後、濃度制御シーケンスが終了した後の最初の画像が2次転写部T2に到達するのに合わせて、2次転写ローラ8が中間転写ベルト7に当接されると共に、2次転写バイアスの印加が開始される(t9)。
その後、トナー像の中間転写ベルト7への1次転写が終了した後に1次転写バイアスの印加が終了される(t10)。また、トナー像の記録材Pへの2次転写(画像形成)が終了した後に2次転写ローラ8が中間転写ベルト7から離間され、2次転写バイアスの印加が終了される(t11)。その後、ベルトクリーニング装置20による2次転写残トナーのクリーニングが終了した後に、ディスチャージブラシ32の駆動及びディスチャージバイアスの印加が終了される(t12)。また、これと実質的に同時か又は後に、第1、第2のクリーニングブラシ22a、22bの駆動及び第1、第2のクリーニングバイアスの印加が終了される(t13)。その後、中間転写ベルト7の駆動が停止される(t14)。これにより画像形成動作が終了する。
以上説明したように、本実施例では、画像形成動作中に試験用トナー像(未転写トナー)がディスチャージ部Dを通過している際には、ディスチャージ部Dに最適クリーニング電流よりも絶対値が小さい電流を供給する。これにより、実施例1と同様の効果を得ることができると共に、ベルトクリーニング装置20による試験用トナー像のクリーニング性の低下を抑制することができる。
[実施例3]
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は、実施例1の画像形成装置のものと同じである。したがって、実施例1の画像形成装置のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、実施例1と同一の符号を付して、詳しい説明は省略する。
本実施例では、中間転写ベルト7の回転方向における第1、第2のクリーニングブラシ22a、22b、ディスチャージブラシ32の配置が実施例1とは異なる。
図14は、本実施例におけるベルトクリーニング装置20及びディスチャージ装置30の近傍の模式的な拡大断面図である。本実施例においても、実施例1と同様に、ベルトクリーニング装置20は、第1、第2のクリーニングブラシ22a、22b、第1、第2の回収ローラ23a、23b、第1、第2のブレード24a、24bを有して構成される。また、本実施例においても、実施例1と同様に、ディスチャージ装置30は、ディスチャージブラシ32、ディスチャージ部回収ローラ33、ディスチャージ部ブレード34を有して構成される。本実施例では、これらの部材は、共通のハウジング81内に設けられている。また、本実施例では、第1のクリーニングブラシ22a(第1のクリーニング部CL1)は、中間転写ベルト7の回転方向において、第2のクリーニングブラシ22b(第2のクリーニング部CL2)よりも下流に配置されている。なお、本実施例においても、実施例1と同様に、第1、第2のクリーニング部CL1、CL2は、中間転写ベルト7の回転方向において、2次転写部T2よりも下流かつ1次転写部T1(最上流の1次転写部T1Y)よりも上流に配置されている。本実施例では、中間転写ベルト7を介して第2のクリーニングブラシ22bに対向する位置に対向ローラ80が配置されている。
そして、本実施例では、ディスチャージブラシ32(ディスチャージ部D)は、中間転写ベルト7の回転方向において、第1のクリーニングブラシ22a(第1のクリーニング部CL1)よりも上流かつ第2のクリーニングブラシ22b(第2のクリーニング部CL2)よりも下流に配置されている。
本実施例においても、実施例1と同様に、画像形成動作中にディスチャージ部Dに内方向に90μAの電流が流れるように、ディスチャージブラシ32に定電流制御された直流電圧が印加される。また、実施例1と同様に、画像形成中に第1のクリーニング部CL1に外方向に20μAの電流が流れるように、第1のクリーニングブラシ22aに定電流制御された直流電圧が印加される。また、実施例1と同様に、画像形成中に第2のクリーニング部CL2に内方向に20μAの電流が流れるように、第2のクリーニングブラシ22bに定電流制御された直流電圧が印加される。
このように、ディスチャージブラシ32を、中間転写ベルト7の回転方向において、少なくとも2次転写ローラ8(2次転写部T2)よりも下流かつ第1のクリーニングブラシ22a(第1のクリーニング部CL1)よりも上流に配置する。これにより、ディスチャージブラシ32から中間転写ベルト7上に再付着した正極性に帯電しているトナーは、第1のクリーニングブラシ22aによって回収することが可能である。また、本実施例では、第2のクリーニングブラシ22bによって回収されなかった負極性の2次転写残トナーは、ディスチャージブラシ32で電荷が反転されて中間転写ベルト7上に再付着し、第1のクリーニングブラシ22aにより回収することが可能である。したがって、本実施例によれば、実施例1と同様に、中間転写ベルト7内のイオンの偏りを均して中間転写ベルト7の電気抵抗の上昇を抑制しつつ、ディスチャージブラシ32の清掃のために生産性が低下することを抑制することができる。
なお、本実施例においても、実施例2と同様に、中間転写ベルト7上の試験用トナー像が形成された領域がディスチャージ部Dを通過している際には、ディスチャージ部Dに最適クリーニング電流よりも絶対値が小さい内方向の電流を供給することができる。