以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。なお、第2の実施形態以降において、既に説明した実施形態の構成と同様又は類似する構成については、既に説明した実施形態の構成に付した符号と同一の符号を付し、また、説明を省略することがある。
<第1の実施形態>
図1(a)は、本発明の第1の実施形態に係る撮像装置3を有する車両101の模式的な側面図であり、図1(b)は、車両101のインストルメント・パネル105周辺の正面図である。
車両101は、車体103と、車体103に取り付けられた撮像装置3と、撮像装置3と接続されたECU(electronic control unit)107と、撮像装置3の撮像した画像を表示する表示装置109とを有している。なお、撮像装置3、ECU107及び表示装置109は、車載撮像システム1を構成している。
撮像装置3は、種々の目的に応じて、適宜な位置、向き及び数で設けられてよい。図1においては、車両101の前方に配置されて車両101の前方を撮像する撮像装置3と、車両101の後方に配置されて車両101の後方を撮像する撮像装置3とを例示している。この他、例えば、サイドミラーの位置に設けられ、後方を撮像する撮像装置3などが設けられてよい。
ECU107は、例えば、撮像装置3の制御を行う。また、例えば、ECU107は、撮像装置3の撮像した画像に基づいて、白線又は障害物等の対象物の検知、及び、その対象物の車両101に対する相対位置の特定を行い、自動運転等の運転支援を行う。また、例えば、ECU107は、撮像装置3の撮像した画像を表示装置109に表示させる。
表示装置109は、運転者等の便宜を考慮して、適宜な位置、数および大きさで設けられてよい。図1においては、インストルメント・パネル105に2つ設けられている場合を例示している。表示装置109は、例えば、液晶表示装置や有機EL表示装置により構成されている。
図2は、撮像装置3の要部の構成の一例を模式的に示す断面図である。なお、図2の紙面上下方向は、光軸方向である。
撮像装置3は、レンズ5と、その後側に位置する撮像素子7と、撮像素子7が実装された実装基板9と、これらを保持する保持部材11とを有している。
レンズ5は、1枚のレンズであってもよいし、レンズ群であってもよい。また、レンズ5は、ズームレンズのように少なくとも一部が移動可能であってもよい。レンズ5は、被写体からの光を集光して、撮像素子7の受光面7aに被写体の像をつくる。
撮像素子7は、例えば、CMOSイメージセンサ等のXYアドレス型の撮像素子である。撮像素子7は、受光面7aに入射した光(像)に応じた電気信号を画像信号として出力する。撮像素子7は、ベアチップの状態で実装基板9に実装されていてもよいし、パッケージされた状態で実装基板9に実装されていてもよい。また、その実装方式は、ボンディングワイヤを用いるもの、バンプを用いるもの又はピンを用いるものなど、適宜な方式とされてよい。図2では、パッケージされた撮像素子7がピンにより実装基板9に実装されている場合を例示している。
実装基板9は、例えば、回路基板13と、回路基板13に実装された1以上の電子部品15とを有している。回路基板13は、例えば、リジッド式のプリント配線板である。電子部品15は、例えば、コネクタ又はICである。実装基板9は、例えば、撮像素子7と他の電子装置(例えばECU107又は表示装置109)とを仲介する。
保持部材11は、例えば、樹脂又は金属により構成されている。保持部材11は、一体形成されたものであってもよいし、複数の部材が組み合わされて構成されたものであってもよい。保持部材11は、レンズ5及び実装基板9を保持している。これにより、レンズ5と撮像素子7とは位置決めされている。その保持方法は、公知の適宜な方法とされてよい。図2では、不図示の接着剤によりレンズ5が保持部材11に固定され、ねじ17により実装基板9が保持部材11に固定されている場合を例示している。
図3〜図5は、撮像装置3の光軸調整方法の原理の概要を説明する図である。
図3(a)は、車体103の平面図である。この図に示すように、この原理の概要の説明では、車体103の後方に取り付けられ、車体103の後方を撮像する撮像装置(図3(a)では250)を例にとるものとする。また、障害物151が車体103の後方に位置する場合を想定する。
図3(a)は、比較例に係る撮像装置250(のハードウェア)が理想的に製造された場合を示している。この場合、車体103の中心線103cと、撮像装置250の視野253の中心に位置する線(撮像装置250の光軸255)とは一致する。そして、障害物151は、撮像装置250の視野253の中央に位置している。なお、図3(a)では、図示の都合上、中心線103cと光軸255とは少しずらして示されている。
図3(b)は、図3(a)の場合における、撮像装置250の撮像した画像251を示している。なお、図3(b)では、光軸255も便宜的に示している。この図に示すように、撮像装置250が理想的に製造された場合においては、障害物151は、画像251の中央に位置する。
従って、ECU107は、この画像251に基づいて、障害物151が車体103の後方にあることを検知することができる。そして、車体103が後退するときには、ECU107は、警告音を出力する処理、ハンドルを切る処理又はブレーキをかける処理等の運転支援を行うことができる。又は、運転者は、表示装置109に表示された画像251を見て、適切な運転を行うことができる。
一方、図4(a)は、比較例に係る撮像装置250が理想的に製造されなかった場合の図3(a)に相当する平面図を示している。この場合、視野253は、車体103の中心線103cに対して傾いた方向に向いている。すなわち、撮像装置250の光軸255は、車体103の中心線103cと一致しない。そして、障害物151は、視野253の端に位置している。
図4(b)は、図4(a)の場合における、図3(b)に相当する図である。この図に示すように、障害物151は、画像251の端に位置する。
一方、ECU107は、図3(a)のように、撮像装置250の光軸255と、車体103の中心線103cとが一致することを前提として、図4(b)の画像251に基づいて、障害物151の車体103に対する相対位置を特定する。
従って、ECU107は、図4(b)の画像251に基づいて障害物151の位置を特定したときに、障害物151が図4(a)の2点鎖線で示す偽位置153にあるものと誤認してしまう。その結果、運転支援が適切に行われなくなる。
また、運転者においても、撮像装置250の光軸255と、車体103の中心線103cとが一致することを前提として、表示装置109を視認すると、表示装置109の表示に基づく運転が適切になされない。
図5(a)は、本実施形態の撮像装置3が設けられた場合の図3(a)に相当する平面図を示している。撮像装置3の最大視野53は、図4(a)の場合と同様に、車体103の中心線103cに対して傾いた方向に向いている。すなわち、撮像装置3の光軸55と、中心線103cとは一致していない。
しかし、撮像装置3は、最大視野53について撮像可能(画像信号を出力可能)であるものの、その一部である実視野57についてのみ、撮像(画像信号の出力)を行う。この実視野57は、その中心線(実光軸59)が車体103の中心線103cと一致するように設定されている。
図5(b)は、図5(a)の場合における画像を示している。撮像装置3は、最大視野53に対応する画像51を形成可能である。この画像51においては、障害物151は、最大視野53の光軸55から離れている。従って、この画像51を用いるとすれば、図4(b)の場合と同様に、ECU107及び運転者は、適切な処理又は運転を行うことができない。
しかし、画像51の一部であり、実視野57に対応する画像61では、障害物151は、実光軸59と一致する。すなわち、画像61は、比較例の撮像装置250が理想的に製造された場合の画像251(図3(b))と同様のものである。従って、ECU107及び運転者は、適切な処理又は運転を行うことができる。
以上のとおり、本実施形態においては、撮像装置3のハードウェアを高精度に製造するのではなく、最大視野53のうち、その一部である実視野57について画像を取得することとし、その実視野57を適切に設定することによって、実質的に光軸調整を行う。以下、このような光軸調整を可能とする具体的な構成及び方法を説明する。
図6は、車両101の信号処理系の構成を示すブロック図である。
既に述べたように、車両101は、撮像装置3、ECU107及び表示装置109を有しており、これらは互いに接続されている。また、また、撮像装置3は、撮像素子7と実装基板9とを有しており、これらは互いに接続されている。撮像素子7は、実装基板9を介してECU107と接続されている。
撮像素子7は、既に述べたように、例えば、CMOSイメージセンサである。すなわち、撮像素子7は、XY方向(図6の紙面左右方向)に配列された複数の画素21と、複数の画素21に接続されたX走査シフトレジスタ23X及びY走査シフトレジスタ23Y(以下、両者を区別せずに又は纏めて、単に「走査シフトレジスタ23」ということがある。)とを有している。各画素21は、光電変換素子を含んで構成され、受光した光の量に応じた量の信号電荷を蓄える。そして、走査シフトレジスタ23は、任意の画素21を選択して(実際にはXY方向に順次選択して)、その選択した画素21に蓄積された信号電荷を読み出す。
従って、撮像素子7は、その信号電荷を読み出し可能な全ての画素21が配列された受光領域7bのうち、その一部である出力領域7cについてのみ、信号電荷の読み出しを行うことが可能である。すなわち、撮像素子7は、図5に示した最大視野53に対応する複数の画素21のうち、実視野57に対応する複数の画素21についてのみ、画像信号を出力可能である。
撮像素子7は、更に、処理部25及び記憶部27を有している。これらは、例えば、IC等を含んで構成されている。
記憶部27は、例えば、開始アドレスの情報、走査広さの情報及びガイド線アドレスの情報を記憶している。
開始アドレスは、走査シフトレジスタ23が走査(信号電荷の読み出し)を開始する画素21のアドレス(XY方向の座標)である。走査シフトレジスタ23は、この開始アドレスの画素21を起点として、例えば、順次右側へ更には下方へ、画素21の信号電荷の読み出しを行う。例えば、図6の例では、開始アドレスは、出力領域7c内の4つの画素21のうち左上の画素21の座標である。開始アドレスは、実質的に、受光領域7b内における出力領域7cの位置を特定する。
走査広さは、出力領域7cのX方向及びY方向の大きさを規定する値である。例えば、図6の例では、出力領域7cのX方向の大きさは2画素であり、出力領域7cのY方向の大きさは2画素である。
ガイド線アドレスは、後述するガイド線71(図9(a)参照)のアドレスである。なお、ガイド線アドレスの情報は、ガイド線71と重なる全ての画素21のアドレスであってもよいし、代表点となる画素21のアドレスであってもよい。代表点は、2線の交点又は各線の両端など、適宜に設定されてよい。
記憶部27は、例えば、PROM等の書換え可能な不揮発性メモリを含んで構成されており、上述した開始アドレス、走査広さ及びガイド線アドレスの情報は、不揮発性メモリにより記憶されている。ただし、記憶部27は、マスクROM等の書換え不可能な不揮発性メモリを含み、書換えが不要な情報(例えば本実施形態では走査広さの情報)は、書換え不可能な不揮発性メモリに記憶されていてもよい。
処理部25は、記憶部27の記憶する情報を参照して所定の処理を行う。例えば、処理部25は、記憶部27の記憶する開始アドレスから走査(信号電荷の読み出し)が開始され、また、記憶部27の記憶する走査広さで走査が行われるように、走査シフトレジスタ23を制御する走査制御回路25aを有している。また、処理部25は、例えば、記憶部27の記憶するガイド線アドレスに基づいて、複数の画素21から読み出した信号電荷によって形成される画像にガイド線71の画像を重畳する処理を行うガイド線表示回路25bを有している。
以上のとおり、撮像素子7においては、記憶部27の記憶する開始アドレス及び走査広さによって出力領域7cが規定され、ひいては、図5の実視野57が規定される。従って、記憶部27に記憶される開始アドレスを適切に設定することにより、実視野57の位置を適切に設定することができる。
実装基板9は、処理部29及び記憶部31を有している。これらは、例えば、IC等を含んで構成されている。処理部29は、例えば、ECU107からの制御信号に基づいて撮像素子7を駆動する。また、処理部29は、例えば、撮像素子7からの画像信号に必要な処理を施してECU107に出力する。記憶部31は、例えば、そのような処理部29の動作に必要な情報を保持している。
ECU107は、処理部33及び記憶部35を有している。これらは、例えば、IC等を含んで構成されている。処理部33は、ユーザの所定の操作及び/又は記憶部35に記憶されているプログラムに基づいて、実装基板9に制御信号を出力する。また、処理部33は、例えば、運転支援を行うべく、実装基板9からの画像信号に基づいて、白線又は障害物等の対象物の検知及び対象物の車体103に対する座標の特定を行い、不図示のエンジン、不図示のブレーキ駆動装置又は不図示のハンドル駆動装置等の各種要素に制御信号を出力する。また、例えば、処理部33は、実装基板9からの画像信号に基づく画像を表示装置109に表示させるように表示装置109を制御する。記憶部35は、例えば、そのような処理部33の動作に必要な情報を保持している。
図7は、撮像装置3の光軸調整を行う検査システム131の構成を示す模式図である。
検査システム131は、例えば、撮像装置3により撮像されるチャート133と、チャート133と撮像装置3とを位置決めする位置決め機構135と、撮像装置3との間で信号を送受する検査装置137と、撮像装置3の撮像した画像を表示する表示装置139とを有している。
チャート133には、撮像装置3に撮像されるパターン141が描かれている。パターン141は、いわば、図5の障害物151に相当するものである。すなわち、撮像装置3の生成する画像において、所定の目標位置(例えば画像の中心)にパターン141が位置するように記憶部27の記憶する開始アドレスを書き換えることにより、実視野57を適切に設定することができる。
チャート133の材料及びパターン141の描画方法は公知の撮影用テストチャートと同様でよい。パターン141の模様は、撮像装置3によりパターン141を撮像したときに、その画像中において、パターン141の位置と、目標位置(例えば画像の中心)とのずれを特定可能なものであればよい。図7では、このようなパターン141として、画像の中心に位置すべき点で交差する十字が描かれている場合を例示している。
位置決め機構135は、所定の位置関係で撮像装置3とチャート133とを位置決めする。この位置関係は、同種の複数の撮像装置3に対して一定である。また、この位置関係は、例えば、撮像装置3のハードウェアが理想的に製造され、光軸ずれが生じていないと仮定したときに、パターン141のうち光軸に位置すべき点(本実施形態では十字の交点)が光軸上に位置する位置関係である。
位置決め機構135は、例えば、撮像装置3及びチャート133の位置合わせの基準となる部位(基準部位)に当接することによって、または、基準部位を目視等によって位置決め機構135の所定の位置に位置合わせすることによって、これらの位置決めを行う。この基準部位は、適宜に設定されてよい。ただし、撮像装置3においては、基準部位は、撮像装置3(実光軸59)と車体103との位置決めに利用される部位であることが好ましい。
検査装置137は、例えば、コンピュータによって構成されている。検査装置137は、例えば、撮像装置3に撮像を行わせる制御信号を撮像装置3に出力する撮像制御部137aを有している。また、例えば、検査装置137は、撮像装置3の撮像した画像内における、パターン141の位置と、目標位置とのずれ量を算出するずれ量算出部137bを有している。また、例えば、検査装置137は、ずれ量算出部137bの算出したずれ量に基づいて、撮像装置3の記憶部27が記憶する開始アドレスを書き換えるデータ補正部137cを有している。
表示装置139は、例えば、検査装置137の制御に従って、撮像装置3から出力された画像を表示可能である。これにより、例えば、検査システム131を使用して撮像装置3の光軸調整を行う作業者においては、光軸調整の適否を確認することができる。ただし、検査システム131において、表示装置139は省略可能である。
図8は、検査システム131を利用して行う撮像装置3の光軸調整の手順を示すフローチャートである。また、図9(a)〜図9(c)は、該手順等を説明するための撮像装置3の画像例を示す図である。
この検査が行われる前において、撮像装置3の記憶部27の記憶する開始アドレス、走査広さ及びガイド線アドレスは、適宜に設定されている。
例えば、走査広さは、撮像装置3の納入先(例えば車両101の製造業者)の要求する仕様に従って、受光領域7bの広さ未満の広さで適宜に設定されている。
また、例えば、開始アドレスは、前述の走査広さで出力領域7cを規定したときに、出力領域7cが受光領域7bの中央に位置するように設定されている。
なお、この場合、X方向の画素数又はY方向の画素数に関して、出力領域7cの画素数及び受光領域7bの画素数が共に偶数又は共に奇数の場合は、出力領域7cの中心は受光領域7bの中心に一致する。一方が偶数、他方が奇数である場合には、出力領域7cの中心は受光領域7bの中心に1画素未満の誤差でずれる。ただし、本願においては、この状態も中心同士が一致しているものとする。
また、例えば、ガイド線アドレスは、パターン141と同一の模様(本実施形態では十字)のガイド線71(図9(a))を特定可能に設定されている。また、ガイド線アドレスは、撮像装置3のハードウェアが理想的に製造されたときに、パターン141と一致する位置にガイド線71が位置するように設定されている。すなわち、本実施形態では、ガイド線アドレスは、出力領域7c(又は受光領域7b)の中心にガイド線71の十字の交点が位置するように設定されている。
ガイド線アドレスによって特定されるガイド線71の線幅は、例えば1画素である。ただし、ガイド線71は、表示装置139に表示されるに際しては、適宜な画像処理によって2画素以上の幅とされてもよい。なお、出力領域7c(又は受光領域7b)のX方向又はY方向の画素数が偶数である場合においては、ガイド線71の各線分は、中央に位置する2列の画素列のうち一方の画素列により構成されてもよいし、当該2列の画素列により構成されてもよい(線幅を2画素としてもよい。)。
ステップS1では、撮像装置3が位置決め機構135に配置される。これにより、撮像装置3とチャート133との位置決めがなされる。
ステップS2では、検査装置137は、撮像装置3を制御し、撮像装置3にチャート133を撮像させる。
図9(a)は、このとき撮像装置3から検査装置137に出力される画像73を示している。上述のように、出力領域7cは、受光領域7bの中央に設定されているから、受光領域7bに対応する仮想の画像75を想定すると、出力領域7cに対応する画像73は、仮想の画像75の中央に位置している。また、ガイド線71は、画像73の中央に交点を位置させている。そして、撮像装置3のハードウェアの製造誤差に起因して、画像73中のパターン141は、ガイド線71からずれている。
ステップS3では、検査装置137は、画像73に基づいて、ガイド線71とパターン141とのずれ量を算出する。例えば、パターン141に対応する画素と、ガイド線71に対応する画素とのずれ量を画素単位で算出する。なお、画像73中のパターン141の線幅(又はガイド線71の線幅)が1画素よりも太い場合においては、例えば、その線幅の中心に位置する画素を利用してずれ量を算出したり、線幅の中心に位置する線幅0の仮想線の位置を算出してずれ量を算出する。
ステップS4では、検査装置137は、ステップS3で算出したずれ量を記憶部27に記憶されていた開始アドレスに加算又は減算し、開始アドレスを補正する。
ステップS5では、検査装置137は、上記の補正後の開始アドレスによって、記憶部27の記憶する開始アドレスを書き換える。
なお、ステップS5の後、確認のために、撮像装置3によりパターン141を撮像してもよい。このとき撮像装置3から出力される画像77は、図9(b)に示すように、パターン141の交点が当該画像77の中央に位置するものとなる。すなわち、出力領域7c(実視野57)の位置が適切に設定され、実質的に撮像装置3の光軸調整がなされる。
また、ステップS4及びS5においては、記憶部27に記憶されているガイド線アドレスも、開始アドレスと同様に補正されて書き換えられてよい。この場合、特に図示しないが、画像77では、ガイド線71とパターン141とが一致する。
また、車載撮像システム1は、必要に応じて、上記の補正後のガイド線アドレスを白線又は障害物等の対象物の、車体103に対する相対位置の特定に利用してよい。例えば、ECU107は、対象物に対応する画素のアドレスと、ガイド線アドレスとの差から、対象物の画像内における位置を特定し、これに基づき、対象物の車体103に対する実際の相対位置を特定してもよい。
また、車載撮像システム1は、必要に応じて、補正後のガイド線アドレスに基づくガイド線71を表示装置109に表示してよい。図9(c)は、このような場合の表示装置109に表示される画像の一例である画像79を示している。運転者は、白線又は障害物155等の対象物の画像と、これに重畳されたガイド線71の画像とを比較することによって、対象物の位置を把握することができる。
ステップS1の撮像装置3の位置決め機構135への配置又はステップS2の検査装置137による処理の開始等は、作業者により行われてもよいし、適宜な自動化装置により行われてもよい。
ステップS2において述べたように、ガイド線71とパターン141とのずれ量の算出は、画素単位で行われ、また、出力領域7cの設定も画素単位で行われる。従って、位置決め機構135の位置決め精度、チャート133の加工精度及び画像からパターン141を検知する画像処理の精度等を向上させれば、1画素程度の精度で光軸調整が行われることが期待される。
ステップS5の後の撮像装置3においては、ステップS3で算出したずれ量が0であった場合(撮像装置3のハードウェアが理想的に製造された場合、及び、撮像装置3全体として誤差が相殺された場合。すなわち、補正が不要な場合)を除き、出力領域7cの中心は、ステップS3で算出したずれ量で、受光領域7bの中心からずれている。従って、撮像装置3の記憶部27等を解析し、出力領域7cの中心と受光領域7bの中心とがずれているか否かを特定すれば、上記の特殊な場合を除き、本実施形態の光軸調整が行われたか否かを特定することができる。
また、同一種類の複数の撮像装置3が製造されている場合においては、その記憶部27に記憶されている開始アドレスが互いに同一か否かによって、本実施形態の光軸調整が行われたか否かを特定できる。この場合、その一部に補正が不要であった撮像装置3が含まれていても、本実施形態の光軸調整が行われたことを特定可能である。
。
なお、以上の実施形態において、走査シフトレジスタ23は本発明の走査回路の一例であり、開始アドレスは本発明の基準アドレス及び基準位置の一例であり、ガイド線71は本発明のガイドパターンの一例であり、ガイド線表示回路は本発明のパターン表示回路の一例である。
以上のとおり、本実施形態では、撮像装置3は、レンズ5と、レンズ5に対して位置決めされたXYアドレス型の撮像素子7とを有している。撮像素子7の走査シフトレジスタ23(走査回路)は、信号電荷を読み出し可能な全ての画素21が配列された受光領域7bのうち、受光領域7bの一部であって、所定の開始アドレス(基準アドレス)により受光領域7b内の位置が特定される出力領域7cについてのみ、信号電荷を読み出し可能である。そして、撮像装置3は、開始アドレスの情報を記憶する不揮発性の記憶部27が設けられ、開始アドレスは、出力領域7cの中心が受光領域7bの中心からずれるように設定されている。
従って、例えば、撮像装置3は、レンズ5の光軸と受光領域7bの中心とがずれていても、そのずれに対応して出力領域7cがずれていることにより、撮像装置3の実光軸59を適切な方向に向けて撮像することができる。別の観点では、出力画像を確認しながら撮像装置3を組み立てる必要が無い。また、レンズ5と撮像素子7とが位置決めされた後(ハードウェアが完成した後)に、光軸調整(開始アドレスの補正)を行うことができるから、個々のレンズ5の偏心(各部材の誤差)に起因する光軸ずれ、及び、レンズ5と撮像素子7との位置決め精度に起因する光軸ずれ等を総合的に縮小するように光軸を調整できる。その結果、高精度な光軸調整が可能となる。
また、本実施形態では、ステップS4及びS5でガイド線アドレスを補正していなければ、記憶部27は、受光領域7bの中心を示すガイド線71のアドレスの情報を記憶しており、ステップS4でガイド線アドレスを補正していれば、記憶部27は、(補正後の)出力領域7cの中心を示すガイド線71のアドレスの情報を記憶している。
換言すれば、光軸調整前において、記憶部27は、受光領域7b(又は補正前の出力領域7c)の中心を示すガイド線71のアドレスの情報を記憶している。これにより、パターン141の位置との比較に利用される位置を簡便に検査装置137に教示することができる。ひいては、簡便に光軸調整がなされる。特に、実装基板9の記憶部31ではなく、撮像素子7の記憶部27に記憶されている場合においては、撮像素子7の製造業者において記憶させることができ、簡便且つ正確に情報を記録できる。
このようにガイド線71のアドレスは、光軸調整に役立つものであるから、ガイド線71のアドレスの情報が記憶部27に記憶されていることは、本実施形態の光軸調整が行われた一つの証拠となる。特に、受光領域7bの中心を示すガイド線71のアドレスの情報は、出力領域7cの補正後は基本的に不要であるから、当該情報が記憶されていることは、本実施形態の光軸調整が行われたことの有力な証拠になる。また、(補正後の)出力領域7cの中心を示すガイド線71のアドレスの情報は、図9(c)を参照して説明したように、障害物155の位置把握等に役立つ。
また、本実施形態に係る撮像装置3の光軸調整方法は、撮像装置3とチャート133とを所定の位置関係で位置決めした状態で、撮像装置3によりチャート133のパターン141を撮像する撮像ステップ(S2)と、その撮像した画像に基づいて撮像装置3の光軸(実光軸59)を実質的に調整する調整ステップ(S3〜S5)と、を有する。撮像装置3は、走査回路(走査シフトレジスタ23)によって信号電荷を読み出し可能な全ての画素21が配列された受光領域7bのうち、受光領域7bの一部である出力領域7cについてのみ、画像信号を出力可能である。調整ステップ(S3〜S5)では、パターン141が画像中の所定の目標位置(本実施形態では画像の中央)に位置するように出力領域7cを設定する。従って、上述したような、適切な方向に実光軸59を向けた撮像装置3を製造することができる。
<第2の実施形態>
図10は、第2の実施形態に係る撮像装置203の撮像素子207を示す、図6の一部に相当するブロック図である。
第1の実施形態では、ずれ量(補正量)により開始アドレスを補正し、その補正後の開始アドレスを記憶部27に書き込んだ。一方、第2の実施形態では、補正量を記憶部227に書き込む。具体的には、以下のとおりである。
撮像素子207の記憶部227(不揮発性の記憶部)は、原アドレスの情報及び補正量の情報を記憶している。なお、記憶部227が走査広さの情報及びガイド線アドレスの情報を有することは、第1の実施形態と同様である。
原アドレスは、第1の実施形態における、光軸調整前(補正前)の開始アドレスと同様の情報である。すなわち、原アドレスは、例えば、受光領域7bの中央に位置する出力領域7cの開始アドレスである。補正量は、上述のように、ステップS3で算出される、パターン141とガイド線71とのずれ量である。
撮像素子207の処理部225は、記憶部227の記憶する原アドレスに記憶部227の記憶する補正量を加算又は減算することにより、すなわち、原アドレスを補正することにより、開始アドレスを算出する開始アドレス算出部225cを有している。従って、撮像装置203においては、第1の実施形態のステップS4が画像出力の必要に応じて行われることになる。
なお、特に図示しないが、処理部225が走査制御回路やガイド線表示回路を有することは第1の実施形態と同様である。撮像装置203のその他の構成、及び、撮像装置203を有する車載撮像システム又は車両の構成は、第1の実施形態と同様である。また、撮像装置203の光軸調整を行うための検査システムの構成も第1の実施形態と概ね同様である。ただし、検査装置137のデータ補正部137cは、記憶部27の開始アドレスの情報に代えて、記憶部227の補正量の情報を書き換える(書き込む)。
光軸調整の手順は、図8において、ステップS4を省略したものと概ね同様である。ただし、光軸調整の前において、記憶部27の記憶する補正量は0とされている。従って、ステップS2のチャート撮像においては、原アドレスによって特定される出力領域7cに対応する画像が出力される。また、ステップS5においては、開始アドレスの情報の書き換えに代えて、補正量の情報の書き換えが行われる。
以上の第2の実施形態によっても、第1の実施形態と同様の効果が奏される。すなわち、出力画像を確認しながらの撮像装置の組み立ての必要性はなくなり、また、種々の要因に起因する光軸ずれを総合的に縮小することができる。すなわち、簡便且つ高精度に光軸調整を行うことができる。
<第3の実施形態>
図11は、第3の実施形態に係る車載撮像システム301の光軸調整方法を説明する模式図である。
第3の実施形態に係る撮像装置303、車載撮像システム301及び車両のハードウェア構成は、第1又は第2の実施形態と同様である。また、第3の実施形態における光軸調整の原理は、第1及び第2の実施形態の光軸調整の原理と概ね同様である。
ただし、第3の実施形態では、撮像装置303が車体103に取り付けられてから光軸調整が行われる。また、ステップS1(図8)では、位置決め機構135による撮像装置303とチャート133との位置決めに代えて、位置決め機構147による車体103とチャート143との位置決めが行われる。
その後の手順は、第1及び第2の実施形態と同様である。すなわち、チャート143の撮像が行われ(ステップS2)、チャート143のパターン145が目標位置(画像の中央)に位置するように出力領域7cが再設定される(ステップS3〜ステップS5)。
従って、第3の実施形態では、車体103に対する撮像装置303の取付誤差に起因する光軸ずれも含め、種々の要因に起因する光軸ずれを総合的に縮小することができる。
本発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
撮像装置は、車載用のものに限定されない。例えば、手で保持して使用される撮像装置に利用されてもよい。ただし、本発明の効果は、車載用の撮像装置及び防犯用の撮像装置など、移動体若しくは設置物(建築物)に取り付けられる撮像装置において特に有効である。また、車載用の撮像装置のように、被写体の位置の特定に供される画像を出力する撮像装置において特に有効である。
撮像素子は、受光領域のうちの一部である出力領域のみについて信号電荷を読み出し可能なXYアドレス型のものに限定されない。例えば、撮像素子は、CCDイメージセンサ等の電荷転送型のものであってもよい。この場合であっても、例えば、受光領域全体について信号電荷を読み出した後、出力領域のみについて、画像信号を出力するように撮像素子を構成することによって、実施形態と同様の効果を得ることができる。
上述のような、受光領域全体について信号電荷を読み出した後、出力領域のみについて、画像信号を取り出す動作は、撮像素子において行われなくてもよい。例えば、実装基板等の撮像装置内の撮像素子以外の部分において行われてもよいし、ECU等の撮像システム内の撮像装置以外の部分において行われてもよい。
開始アドレス(基準位置)、原アドレス(原位置)、補正量、走査広さ、ガイド線アドレス等の情報は、撮像素子の記憶部に代えて、実装基板の記憶部又はECUの記憶部など、撮像素子外の記憶部又は撮像装置外の記憶部が記憶してもよい。また、これらの情報は、情報毎に異なる記憶部に記憶されてもよい。また、第1の実施形態において、補正前の開始アドレスを書き換えずに、補正後の開始アドレスを補正前の開始アドレスとは別の記憶領域に記憶させるようにしてもよい。
光軸調整(ステップS1〜S5)においてのみ利用される情報は、撮像素子、撮像装置又は撮像システムが記憶している必要は無く、例えば、検査装置が記憶していてもよい。例えば、ガイド線アドレスが調整後の撮像装置3において利用されない態様においては、ガイド線アドレスは、撮像素子に記憶されずに、検査装置が記憶していてもよい。また、光軸調整においてのみ利用される情報は、光軸調整後に消去されてもよい。例えば、ガイド線アドレスは、光軸調整後に撮像素子の記憶部から消去されてもよい。
光軸調整は、撮像装置の製造者又は撮像装置を含む製品(例えば撮像システム又は車両)の製造者において行われることが好ましい。ただし、ユーザにおいて行うことができるように、撮像装置又は撮像装置を含む製品が構成されていてもよい。すなわち、実施形態の検査装置137が組み込まれた撮像装置又は撮像装置を含む製品が製造されてもよい。
チャートの撮像時(ステップS2)においては、撮像装置は、通常の撮像時とは異なる制御がなされてもよい。例えば、第1〜第3の実施形態において、出力領域7cではなく、受光領域7bの画像が取得され、ずれ量の算出が行われてもよい。また、第2の実施形態において、開始アドレス算出部の算出する開始アドレス(原アドレスに補正量0が加算された開始アドレス)ではなく、読み出されたままの原アドレスに基づいて出力領域7cが特定されてもよい。
基準アドレス(基準位置)は、走査が開始される開始アドレスに限定されない。例えば、出力領域の中心位置であってもよい。ただし、開始アドレスを用いれば、撮像素子の動作が簡素化される。
撮像素子、撮像装置又は撮像システムは、出荷後、常に出力領域に対応する画像信号を取り出すように動作する必要は無い。例えば、撮像素子、撮像装置又は撮像システムは、ユーザの操作等に基づいて、受光領域全体に対応する画像信号を取り出すように動作してもよいし、光軸調整で規定された出力領域とは位置及び/又は広さが異なる一部領域について画像信号を取り出すように動作してもよい。