JP6086301B2 - 微生物培養具、微生物培養具に検体情報を印刷する印刷システムおよび印刷方法、コンピュータを印刷システムの制御装置として機能させるためのプログラム、および、プログラムを格納した記録媒体 - Google Patents

微生物培養具、微生物培養具に検体情報を印刷する印刷システムおよび印刷方法、コンピュータを印刷システムの制御装置として機能させるためのプログラム、および、プログラムを格納した記録媒体 Download PDF

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Description

本発明は、微生物を培養するための微生物培養具に関する。また本発明は、微生物培養具に検体情報を印刷する印刷システムおよび印刷方法に関する。また本発明は、コンピュータを印刷システムの制御装置として機能させるためのプログラム、および、プログラムを格納した記録媒体に関する。
微生物の存在を確認し、又は微生物数を測定する方法としては、寒天平板混釈法がある。この寒天平板混釈法では、あらかじめ滅菌したシャーレに形成した寒天培地を使用する。このため、寒天培地を高圧蒸気滅菌するためのオートクレーブや、微生物検査を無菌的に行うための検査室を必要とする。また、微生物のサンプリングから試料液の調製、分注、培地との混釈、培養、計数に至る微生物検査の操作に、熟練を要する。そこで、高度な熟練を必要とせず、簡易に微生物検査を行うことができる培養層を備える微生物培養具が開発されている。
例えば特許文献1において、水をベースとする接着剤組成物と、接着剤組成物の上に付着され、ゲル化剤を含む冷水可溶性粉体と、を含む培養層を備える微生物培養具が開示されている。また特許文献2において、方形の粘着シート上に積層された円形の多孔質マトリックス層および水溶性高分子化合物層を含む培養層と、その上に配置された透明なカバーフィルムと、を備える微生物培養具が開示されている。
特許第3383304号公報 特許第4396078号公報
微生物培養具を用いた検査においては、検査対象から抽出された検体を含む被検液を微生物培養具の培養層上に滴下する被検液滴下工程を実施する。ここで、培養層上に滴下された被検液の検体が、どの検査対象から抽出されたものであるかを特定するため、通常、被検液滴下工程の前に、検体に関する検体情報が微生物培養具に付与される。例えば、検査者が検体情報を微生物培養具に書き込むことが考えらえる。また、微生物培養具の各々に、微生物培養具のシリアル番号に関する情報が表示されている場合、シリアル番号と、このシリアル番号が付された微生物培養具に滴下される被検液とを関連付けてデータベースに記録しておくことも考えられる。
しかしながら、検体情報が微生物培養具に手書きで付与される場合、人によって文字の書体にばらつきがあるため、検体情報の読み間違いが発生する可能性がある。また、OCRなどのリーダーやカメラ等を用いて検体情報を読み取る際に、読み取りエラーが発生する可能性もある。
また、上述のシリアル番号は一般に、微生物培養具の製造者によって付与されるものであり、従ってシリアル番号自体は、被検液に関連する意味を特に有していない。このため、検査者は、微生物培養具に表示されているシリアル番号を見ただけでは、どの製品から抽出された検体の被検液が微生物培養具に滴下されているかを知ることができない。検査者は、検体について知るためには、例えば、微生物培養具に表示されているシリアル番号をデータベースで照合する必要がある。このため、検査の作業性が悪くなってしまうことが考えられる。
本発明は、このような課題を効果的に解決し得る微生物培養具を提供することを目的とする。
本発明は、基材シートと、前記基材シートの上面に設けられ、微生物を培養するよう構成された培養層と、前記基材シートの上面に接合され、前記培養層を覆うことができるカバーフィルムと、を備え、前記カバーフィルムの上面または前記基材シートの上面のうちの少なくともいずれか一方に、検査対象の製品から抽出され前記培養層によって培養される検体に関する検体情報がデジタルフォントを利用して表示されており、前記検体情報は、製品名および検体の検査日に関する情報を少なくとも含む、微生物培養具である。
本発明による微生物培養具において、前記検体情報は、製品名を直接的に表示する製品名表示を有していてもよい。
本発明による微生物培養具において、前記検体情報は、略号を用いて製品名に関する情報を表現する略号表示を有していてもよい。
本発明による微生物培養具において、前記検体情報は、前記カバーフィルムの上面または前記基材シートの上面のうち前記培養層と重ならない領域に配置されていてもよい。
本発明による微生物培養具において、前記カバーフィルムの上面または前記基材シートの下面のうちの少なくともいずれか一方に、前記微生物培養具の製造情報を少なくとも含む培養具情報が表示されていてもよい。
本発明による微生物培養具において、前記検体情報は、検体の希釈率に関する情報、製品が製造された製造ラインに関する情報、検体を検査する検査者に関する情報、または検体のn数に関する情報をさらに含んでいてもよい。
本発明は、微生物培養具に対して、製品から抽出され前記微生物培養具によって培養される検体に関する検体情報を印刷する印刷システムにおいて、前記微生物培養具に検体情報を印刷する印刷装置と、前記印刷装置を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記微生物培養具に印刷されるべき検体情報を生成する生成部を有し、検体情報は、製品名および検体の検査日に関する情報を少なくとも含む、印刷システムである。
本発明による印刷システムは、前記印刷装置の下流側に配置され、前記微生物培養具に印刷された検体情報を認識する検体情報認識装置をさらに備え、前記制御装置は、前記検体情報認識装置によって取得された検体情報と、前記生成部によって生成された検体情報とを照合する照合部をさらに有していてもよい。
本発明による印刷システムにおいて、前記制御装置の前記生成部は、製造現場で製造された製品に関する情報が記録されている生産管理データベースと、製品に対して実施されるべき検査に関する情報が記録されている検査データベースと、を参照して、前記微生物培養具に印刷されるべき検体情報を生成してもよい。
本発明による印刷システムにおいて、前記検査データベースに記録されている情報は、製品に含まれ得る微生物に関する情報を少なくとも含み、製品に含まれ得る微生物の種類に応じて複数のタイプの微生物培養具が準備されており、前記印刷システムは、複数のタイプの微生物培養具を前記印刷装置に向けて順に供給する供給装置と、前記供給装置と前記印刷装置との間に配置され、前記微生物培養具のタイプを判別するタイプ判別装置と、をさらに備え、前記制御装置は、前記タイプ判別装置によって判別された前記微生物培養具のタイプに対応した種類の微生物が含まれ得る製品から抽出された検体に関する検体情報を前記印刷装置に送信してもよい。
本発明による印刷システムにおいて、前記カバーフィルムの下面または前記基材シートの上面のうちの少なくともいずれか一方に、前記微生物培養具の製造情報を少なくとも含む培養具情報が表示されており、前記タイプ判別装置は、前記培養具情報を利用して前記微生物培養具のタイプを判別してもよい。
本発明は、コンピュータを、上記記載の印刷システムの制御装置として機能させるためのプログラムである。
本発明は、上記記載のプログラムを格納した、コンピュータが読み取り可能な記録媒体である。
本発明は、微生物培養具に対して、製品から抽出され前記微生物培養具によって培養される検体に関する検体情報を印刷する印刷方法において、前記微生物培養具に印刷されるべき検体情報を生成する検体情報生成工程と、前記検体情報生成工程において生成された検体情報を前記微生物培養具に印刷する印刷工程と、を備え、検体情報は、製品名および検体の検査日に関する情報を少なくとも含む、印刷方法である。
本発明による印刷方法は、前記微生物培養具に印刷された検体情報を認識する検体情報認識工程と、前記検体情報認識工程において認識された検体情報と、前記検体情報生成工程において生成された検体情報とを照合する照合工程と、をさらに備えていてもよい。
本発明による印刷方法の前記検体情報生成工程において、前記微生物培養具に印刷されるべき検体情報は、製造現場で製造された製品に関する情報が記録されている生産管理データベースと、製品に対して実施されるべき検査に関する情報が記録されている検査データベースと、を参照することによって生成されてもよい。
本発明による印刷方法において、前記検査データベースに記録されている情報は、製品に含まれ得る微生物に関する情報を少なくとも含み、製品に含まれ得る微生物の種類に応じて複数のタイプの微生物培養具が準備されており、前記印刷方法は、複数のタイプの微生物培養具を、前記印刷工程を実施する印刷装置に向けて順に供給する供給工程と、前記印刷装置に到達する前の前記微生物培養具のタイプを判別するタイプ判別工程と、をさらに備え、前記印刷工程において、前記タイプ判別工程において判別された前記微生物培養具のタイプに対応した種類の微生物が含まれ得る製品から抽出された検体に関する検体情報が、前記微生物培養具に印刷されてもよい。
本発明による印刷方法において、前記微生物培養具に、前記微生物培養具の製造情報を少なくとも含む培養具情報が表示されており、前記タイプ判別工程は、前記培養具情報を利用して前記微生物培養具のタイプを判別してもよい。
本発明の微生物培養具には、製品から抽出され培養層によって培養される検体に関する検体情報がデジタルフォントによって表示されている。このため、微生物培養具に表示される検体情報の書体にばらつきが生じることがない。これによって、検体情報の読み間違いや読み取りエラーが発生することを抑制することができる。また検体情報は、製品名および検体の検査日に関する情報を少なくとも含んでいる。このため検査者は、微生物培養具に表示されている検体情報を見ることによって、微生物培養具に滴下されている被検液の検体が抽出された製品を即座に認識することができる。このことにより、検査の作業性を向上させることができる。
図1は、本発明の実施の形態における微生物培養具を示す平面図。 図2は、図1の微生物培養具を矢印Aの方向から見た場合を示す側面図。 図3は、カバーフィルムが持ち上げられた状態の微生物培養具を示す斜視図。 図4は、図1の微生物培養具の基材シートをB−B方向から見た場合を示す縦断面図。 図5は、図1の微生物培養具のカバーフィルムをB−B方向から見た場合を示す縦断面図。 図6は、微生物培養具に検体情報を付与する方法、および、微生物培養具を用いて検体を検査する方法を示すフローチャート。 図7は、微生物培養具に検体情報を印刷する印刷システムを示す図。 図8は、製造現場で製造された製品に関する情報が記録されている生産管理データベースの一例を示す図。 図9は、製品に対して実施されるべき検査に関する情報が記録されている検査データベースの一例を示す図。 図10は、印刷システムの制御装置の生成部によって生成された検体情報の一例を示す図。 図11(a)〜(d)は、微生物培養具に被検液を接種させる方法の一例を示す図。 図12は、作業台上に並べられた微生物培養具を示す平面図。 図13は、微生物のコロニーが形成された微生物培養具を示す平面図。 図14は、微生物培養具のカバーフィルムの一変形例を示す縦断面図。 図15は、微生物培養具に表示される検体情報の一変形例を示す平面図。 図16は、微生物培養具の基材シートの一変形例を示す縦断面図。 図17は、図16に示す基材シートを備えた微生物培養具の一例を示す側面図。 図18は、図16に示す基材シートを備えた微生物培養具の一例を示す平面図。 図19は、微生物培養具に表示される検体情報の一変形例を示す平面図。 図20は、微生物培養具に表示される検体情報の一変形例を示す平面図。
以下、図1乃至図13を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
微生物培養具
本実施の形態による微生物培養具は、例えば、食品メーカーや食品研究所などで製造された製品から抽出された検体を検査するために用いられる。ここで「製品」とは、市販されるものだけでなく、無料で提供される試供品や、研究段階において作製される試作品なども含む概念である。以下、図1乃至図3を参照して、本実施の形態における微生物培養具1Aの構造について説明する。図1は、微生物培養具1Aを示す平面図であり、図2は、図1の微生物培養具1Aを矢印Aの方向から見た場合を示す側面図である。図3は、微生物培養具1Aを示す斜視図である。なお図1においては、後述するカバーフィルム40よりも下側にある枠体20、接合部25および培養層30などの微生物培養具1Aの構成要素が、透視されて点線で示されている。
図1に示すように、微生物培養具1Aは、平面図で見た場合に略四角形状の輪郭を有している。この微生物培養具1Aは、図1および図2に示すように、基材シート10と、基材シート10の上面に設けられた培養層30と、培養層30を囲うよう基材シート10の上面に設けられた枠体20と、を備えている。また微生物培養具1Aは、培養層30および枠体20を覆うことができるカバーフィルム40をさらに備えている。
図1に示すように、基材シート10およびカバーフィルム40はいずれも、平面図で見た場合に、すなわち基材シート10の法線方向から見た場合に、略四角形状の輪郭を有している。具体的には、基材シート10は、基材シート10の法線方向から見た場合に、直線状の第1外縁11と、第1外縁11に対向する直線状の第2外縁12と、第1外縁11および第2外縁12の間を延び、互いに対向する直線状の第3外縁13および第4外縁14と、を含む輪郭を有している。同様に、カバーフィルム40は、各々が直線状の第1外縁41,第2外縁42,第3外縁43および第4外縁44を含む輪郭を有している。
図2に示すように、基材シート10には、カバーフィルム40の一部分を基材シート10の一部分に接合する接合部25が設けられていてもよい。これによって、カバーフィルム40は、接合部25を軸として基材シート10に対して変位することが可能となる。このことにより、カバーフィルム40の操作や取り扱いを容易にすることができる。また、基材シート10に対するカバーフィルム40の位置を確実に定めることができる。図3においては、カバーフィルム40の一部分が接合部25によって基材シート10に対して固定されながら、カバーフィルム40が基材シート10に対して持ち上げられた状態にある微生物培養具1Aが示されている。
接合部25は、例えば、基材シート10の第1外縁11の近傍に配置されている。ここで「近傍」とは、接合部25が第1外縁11に接するよう接合部25が配置されている場合、および、接合部25が第1外縁11に接してはいないが、接合部25と第1外縁11との間の距離が接合部25と他の外縁12,13,14との間の距離よりも小さくなっている場合の両方を含む概念である。
枠体20は、培養層30上に供給される後述する被検液の吸水範囲を確実に限定するためのものである。図3においては、枠体20と培養層30との間には隙間がなく、両者が接触している例が示されている。しかしながら、被検液が枠体20の外側に洩れることを防ぐことができる限りにおいて、枠体20と培養層30との間の位置関係が特に限定されることはない。
図3においては、枠体20が円形状の輪郭を有する例が示されている。しかしながら、培養層30上に供給される被検液の吸水範囲が所定の面積にわたって広がることができる限りにおいて、枠体20の輪郭が特に限定されることはない。例えば枠体20は、方形、楕円形、多角形、不定形等の輪郭を有していてもよい。
図3に示すように、カバーフィルム40には枡目線40aが形成されていてもよい。枡目線40aは、培養層30によって培養された微生物の数を算出する際の目安となるものである。このような枡目線40aは、カバーフィルム40に含まれる、後述する印刷層47などによってもたらされ得る。なお、このような枡目線は、カバーフィルム40ではなく基材シート10に形成されていてもよい。
また、カバーフィルム40のうち少なくとも第2外縁42を含む領域の色と、基材シート10のうち平面図で見た場合に上記第2外縁42を含む領域に隣接する領域の色と、が異なっていてもよい。例えば図1に示すように、カバーフィルム40のうち第2外縁42を含むよう第2外縁42に沿って延びる、符号40Cで示される領域を、基材シート10とは異なる色で着色された着色領域40Cとしてもよい。これによって、カバーフィルム40をめくり上げる際に基材シート10とカバーフィルム40との境界が認識され易くなり、このことにより、カバーフィルム40を、より掴み易いものとすることができる。なお第2外縁42に沿って延びる着色領域40Cに加えて、若しくは第2外縁42に替えて、第1外縁41に沿って延びる領域を着色領域40Cとしてもよい。
なお、着色領域40Cの色は、微生物培養具1Aのタイプに応じて異なっていてもよい。例えば、製品の検体に含まれ得る微生物の種類に応じて複数のタイプの微生物培養具1Aが準備される場合、微生物培養具1Aのタイプに応じて着色領域40Cの色が異なっていてもよい。なお、異なるタイプの微生物培養具1Aの間においては、例えば、培養対象とする微生物の種類に対応して、設けられている培養層30の組成や構造などが異なっている。
検体情報
また図1に示すように、微生物培養具1Aには、検査対象となっている製品から抽出され、培養層30によって培養される検体に関する検体情報70が表示されている。以下、検体情報70について説明する。
図1に示すように、検体情報70は、デジタルフォントを利用して微生物培養具1Aに表示されている。ここでデジタルフォントとは、コンピュータ画面に表示したり、媒体に印刷したりするために利用できるようにした書体データのことを指す。書体とは、一定の文字体系のもとにある文字について、それぞれの字体が一貫した特徴と独自の様式を備えた字形として表現されているものをいう。なお、文字としては、漢字、平仮名、片仮名、アルファベット、数字、記号等が挙げられる。このようなデジタルフォントを利用して検体情報70を微生物培養具1Aに表示するにすることにより、検体情報70が手書きで微生物培養具1Aに付与されている場合に比べて、検査者が検体情報70を読み取る際の読み間違いを抑制することができる。また、OCRなどの機械によって検体情報70が読み取られる際の読み取りエラーが発生することを抑制することができる。これによって、微生物培養具1Aを用いた検査の結果を、機械を利用してより確実に管理することができる。なお以下の説明において、検体情報70が表示されている微生物培養具を符号1Aで示し、検体情報70が表示されていない微生物培養具、すなわち検体情報70が付与される前の微生物培養具を符号1で示す、という符号の使い分けをすることもある。
検体情報70は、検体が抽出された製品の製品名および検体の検査日に関する情報を少なくとも含むよう構成されている。例えば図1に示す例において、検体情報70は、「チキンカレー甘口」という、製品名を直接的に表示する製品名表示71と、「20120706」という、検査日が2012年7月6日であることを表示する検査日表示72と、を含んでいる。このため検査者は、微生物培養具1Aに表示されている検体情報70を見ることによって、微生物培養具1Aに滴下されている被検液の検体が抽出された製品を即座に認識することができる。このことにより、検査の作業性を向上させることができる。なお「製品名」は、製品に付されている名称を意味する場合もあり、若しくは、製品に用いられている原材料の名称を意味する場合もある。また「検査日」は、検査が実施される日を意味する場合もあり、若しくは、製品から検体が抽出された日を意味する場合もある。なお検査日は、年月日を含んでいてもよく、若しくは、月日や日のみを含んでいてもよい。
検体情報70が検査者によって読み取られ得る限りにおいて、検体情報70が表示される階層や位置が特に限られることはないが、好ましくは、検体情報70は、カバーフィルム40が基材シート10に被せられている状態のときに上方に露出している位置に表示されている。例えば図1および図2に示すように、検体情報70は、カバーフィルム40の上面であって、接合部25の近傍の位置に表示されている。検体情報70の表示位置をこのように決定することにより、後述するように、カバーフィルム40を捲り上げることなく検体情報70を微生物培養具1に対して印刷することが可能となる。なお「接合部25の近傍」とは、接合部25がカバーフィルム40の第1外縁41の近傍に位置している場合、第1外縁41と検体情報70との間の距離が、第1外縁41に対向する第2外縁42と検体情報70との間の距離よりも小さくなっていることを意味している。
また好ましくは、検体情報70は、カバーフィルム40の上面の領域のうち、基材シート10の法線方向から見た場合に培養層30と重ならない領域に配置されている。これによって、検体情報70が培養層30と重なる場合に比べて、検体情報70の視認性を高くすることができる。
培養具情報
また図1に示すように、微生物培養具1には、微生物培養具1の製造情報を少なくとも含む培養具情報80がさらに表示されていてもよい。培養具情報80は識別コードで表示することができ、例えば、シリアル番号を数字で表示するシリアル番号表示81とすることができる。製造情報としては、微生物培養具1のタイプ、微生物培養具1の製造日、微生物培養具1のシリアル番号(製造番号)などが挙げられ、少なくともこれらのうちの何れかを含むようにする。培養具情報80が表示される階層や位置は特には限られないが、好ましくは培養具情報80は、外部に露出しない位置に表示されている。例えば、培養具情報80は、カバーフィルム40の下面または基材シート10の上面のうちの少なくともいずれか一方に表示されている。培養具情報80の表示位置をこのように決定することにより、培養具情報80が外部に露出してしまうことを、対向する基材シート10またはカバーフィルム40によって防ぐことができる。このことにより、例えば微生物培養具1を用いた検査を実施する場所へ微生物培養具1を搬送する際に、複数の微生物培養具1の間で生じる摩擦に起因して培養具情報80が摩滅してしまうことを防ぐことができる。なお培養具情報80の形式が特に限られることはない。例えば培養具情報80は、JANコードなどの1次元コードやQRコードなどの2次元コードを含むバーコードであってもよく、カラーマトリックスであってもよい。例えば、2012年6月17日の118番目に製造された一般生菌用(AC)の微生物培養具1に表示されるQRコードに搭載する製造情報は、AC−120617−000118とすることができる。一般的に、微生物培養具1においては、基材シート10に培養層30を形成した後、基材シート10とカバーフィルム40が接合される。従って、基材シート10に培養具情報80を表示することにより、製造情報を管理しやすくすることができる。
微生物培養具の層構成
次に図4および図5を参照して、微生物培養具1Aの層構成について説明する。図4および図5は、図1の微生物培養具1Aの基材シート10およびカバーフィルム40をB−B方向から見た場合を示す縦断面図である。はじめに図4を参照して、基材シート10および基材シート10の上面に設けられる枠体20および培養層30について説明する。
(基材シート)
基材シート10には、培養層30を形成するために基材シート10上に塗布される培地液によって劣化しない程度の耐溶剤性や培養時に必要な耐水性が求められる。また、培養層30を形成する際の乾燥処理に耐え得る耐熱性も求められる。また、培養層30において培養される微生物が好気性細菌である場合、基材シート10には、酸素透過性が求められる。基材シート10が酸素透過性を有することにより、好気性細菌に酸素を供給することが可能となる。
基材シート10を構成する材料としては、耐水性及び耐熱性、および必要に応じて酸素透過性を有している限りにおいて、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル等のプラスチックシートを使用することができる。これらのプラスチックシートは、透明性に優れる点において好ましい。後述するように、微生物培養具1Aは、培養層30中で発育した微生物のコロニーを観察、計数するものである。基材シート10の透明性が高いと、微生物培養具1Aの下側(基材シート10側)からの投射光や側面側からの入射光によりコロニーの視認性を高めることができ、コロニーの計測が容易となる。ただし、必ずしも透明である必要はなく、微生物の種類、コロニーの着色の有無等によって、基材シート10の光学特性を適宜選択することができる。例えば、発泡により白色を呈するものや、着色されたものを基材シート10として使用することもできる。
基材シート10は、単層であってもよいし、2層以上の積層シートであってもよい。積層シートとしては、上記プラスチックシートの2種以上を積層したものが挙げられる。その他、上記プラスチックシートに紙基材を積層した積層シートや、紙基材に合成樹脂をコーティングした積層シート等も好適に使用することができる。このような積層シートとしては、例えば、ポリエチレンフィルムと紙基材との積層シートが挙げられる。また、基材シート10に上述の酸素透過性が求められる場合、合成樹脂を主原料とした合成紙を好適に使用することができる。このような合成紙の市販品としては、例えば、ユポ・コーポレーション社製の「ユポ」、東洋紡社製の「クリスパー」等が挙げられる。
基材シート10の上面には、培養層30との密着性を向上させるために、あらかじめ表面処理が実施されていてもよい。表面処理としては、例えば、コロナ放電処理、オゾン処理、グロー放電処理、化学薬品等を用いる酸化処理、酸素ガス又は窒素ガス等を用いる低温プラズマ処理等の公知の表面処理を用いることができる。
また、アンカーコート剤を基材シート10の上面に塗布するという表面処理を行ってもよい。このようなアンカーコート剤としては、イソシアネート系(ウレタン系)、ポリエチレンイミン系、ポリブタジエン系、有機チタン系、その他のアンカーコーティング剤が例示できる。より好ましくは、例えば、トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアナート等の芳香族ポリイソシアナート、又はヘキサメチレンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナート等の脂肪族ポリイソシアナート等の多官能イソシアナートと、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリアクリレートポリオール、その他のヒドロキシル基含有化合物との反応によって得られるポリエーテルポリウレタン系樹脂、ポリエステル系ポリウレタン系樹脂、ポリアクリレートポリウレタン系樹脂を主成分とするものである。
基材シート10は、カール等がなく平坦であることが好ましい。基材シート10の厚さは、特に限定されないが、通常、25〜1500μmの範囲内であり、好ましくは50〜500μmの範囲内である。
(培養層)
培養層30は、少なくともゲル化剤を含む乾式の培養層であって、微生物を培養するよう構成された層である。ここで、乾式の培養層とは、溶媒を含んだ培地液を乾燥させて溶媒を揮発させることにより得られるものである。例えば培養層30は、固着剤、ゲル化剤、栄養成分および可塑剤を含んでいる。また培養層30は、発色指示薬や選択剤等などをさらに含んでいてもよい。培養層30の各成分は、培養の対象となる微生物に応じて適宜選択される。以下、各成分の役割、および各成分を構成する材料の例について説明する。
〔固着剤〕
固着剤は、ゲル化剤、栄養成分、可塑剤、発色指示薬、選択剤等の他の成分を基材シート10に固着させる役割を有するものである。固着剤としては、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール等が挙げられ、特に、ポリビニルピロリドンが好ましい。ポリビニルピロリドンを用いる場合、アルコール系溶媒に可溶であるので、培地液の粘度を容易に調整することができる。また、ポリビニルピロリドンを用いる場合、アルコール系溶媒を使用することができるので、ゲル化剤を溶解させずに、分散させた培地液を調製することができる。これにより、ゲル化剤に起因する培地液の著しい粘度上昇を抑制することができる。更に、所定のパターンで培地液を基材シート10上に塗布した後に、高温で加熱することなく培地液から溶媒を除去することができる。またポリビニルピロリドンの皮膜性が高いので、ゲル化剤、栄養成分、可塑剤、発色指示薬、選択剤等の他の成分を取り込んで成膜することができる。また、基材シート10との密着性に優れている。
〔ゲル化剤〕
ゲル化剤は、被検液35Aが供給された培養層30をゲル化させ、これによって、培養層30の粘度を、微生物の培養に良好なものとするためのものである。また、培養層30がゲル化剤を含むことにより、培養層30がカバーフィルム40に密着しやすくなるため、培養時の培養層30からの水分の蒸発を抑制することができる。
ゲル化剤としては、水吸収性(または水膨潤性)を有し、水を吸収しまたは水により膨潤した際に実質的にその形状を保持し得るものを使用することができる。例えば、ゲル化剤として、ポリビニルアルコール(PVA)、変性PVA、セルロース誘導体、澱粉およびその誘導体、セルロース誘導体および澱粉以外の多糖類、アクリル酸およびその誘導体、ポリエーテル、およびタンパク質などの水溶性ポリマーの架橋物;澱粉系吸水性ポリマー;セルロース系吸水性ポリマー;アクリル系吸水性ポリマー;無水マレイン酸系コポリマー;ビニルピロリドン系コポリマー;ポリエーテル系吸水性ポリマー;アクリル繊維加水分解物;およびその他の吸水性ポリマー、グアーガム、サイリウムシードガム、キサンタンガム、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリルアミド、ローカストビーンガム、アルギン等が挙げられる。これらを単独で使用してもよく、又は2種以上を混合して使用することができる。
〔栄養成分〕
栄養成分は、微生物の種類に応じて、適宜選択することができる。例えば、一般生菌検査用としては、ソルビトール・ピルビン酸ナトリウム・酵母エキス・ペプトン・ブドウ糖混合物、肉エキス・ペプトン混合物、ペプトン・大豆ペプトン・ブドウ糖混合物等や、これらにリン酸二カリウム及び/又は塩化ナトリウムを加えた混合物が挙げられる。大腸菌・大腸菌群検査用としては、デソキシコール酸ナトリウム・ペプトン・クエン酸鉄アンモニウム・塩化ナトリウム・リン酸二カリウム・乳糖混合物、ペプトン・乳糖・リン酸二カリウム混合物等が挙げられる。ブドウ球菌用としては、肉エキス・ペプトン・塩化ナトリウム・マンニット・卵黄混合物、ペプトン・肉エキス・酵母エキス・ピルビン酸ナトリウム・グリシン・塩化リチウム・亜テルル酸卵黄液混合物等が挙げられる。ビブリオ用としては、酵母エキス・ペプトン・蔗糖・チオ硫酸ナトリウム・クエン酸ナトリウム・コール酸ナトリウム・クエン酸第2鉄・塩化ナトリウム・牛胆汁混合物等が挙げられる。腸球菌用としては、牛脳エキス・ハートエキス・ペプトン・ブドウ糖・リン酸二カリウム・窒化ナトリウム混合物等が挙げられる。真菌用としては、ペプトン・ブドウ糖混合物、酵母エキス・ブドウ糖混合物、ポテトエキス・ブドウ糖混合物等が挙げられる。これらの中から、発育させようとする微生物の種類に応じて、1種類又はそれ以上を選択し、混合して使用することができる。
〔可塑剤〕
可塑剤は、ポリビニルピロリドンなどの固着剤によって構成される培養層30の被膜が硬く脆い場合に添加されるものである。可塑剤としては、例えば、グリセリンやグリセリン誘導体系可塑剤、ポリエチレングリコール等が挙げられる。このような可塑剤を添加することにより、培養層30の被膜に柔軟性を与えることができる。このことにより、例えば、基材シート10の外縁近傍がカールしてしまうことを抑制することができる。なお培養層30中における可塑剤の含有比率が高くなりすぎると、微生物の培養特性や視認性が低下してしまうことが考えらえる。従って、培養層30中における可塑剤の含有比率は、培養層30における所望の柔軟性、培養特性や視認性などの様々な点を考慮して決定される。例えば可塑剤としてグリセリンが用いられる場合、好ましくは、培養層30の固形分(アルコールなどの溶媒を除く成分)の全体に対するグリセリンの重量%が10〜15%の範囲内となっている。
〔発色指示薬〕
発色指示薬は、培養過程で発育する微生物の代謝により産出される特異物質との反応、pH変化の認識、酵素との反応等によって発色してコロニーを着色するものである。発色指示薬を用いることにより、コロニー数の計数を極めて容易にすることができる。発色指示薬としては、例えば、トリフェニルテトラゾリウムクロライド(以下、TTCとする)、p−トリルテトラゾリウムレッド、テトラゾリウムバイオレット、ペテトリルテトラゾリウムブルー等のテトラゾリム塩や、ニュートラルレッド混合物、フェノールレッド、ブロムチモールブルー、チモールブルー混合物等のpH指示薬が挙げられる。また発色指示薬として、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−B−D−グルクロニドシクロヘキシルアンモニウム水和物、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトピラノシド、5−ブロモ−6−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトピラノシド、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルフォスフェートなどを用いることもできる。
〔選択剤〕
選択剤は、検出対象ではない微生物の発育を抑えるために培養層30に添加されるものである。このような選択剤としては、メチシリン、セフタメタゾール、セフィキシム、セフタジジム、セフスロジン、バシトラシン、ポリミキシンB、リファンピシン、ノボビオシン、コリスチン、リンコマイシン、クロラムフェニコール、テトラサイクリン、ストレプトマイシン、アザクタム、アクリフラビン等の抗生物質、サルファ剤、ナリジクス酸、オラキンドックス等の合成抗菌剤、クリスタルバイオレット、ブリリアントグリーン、マラカイトグリーン、メチレンブルー等の静菌又は殺菌作用を有する色素、Tergitol7、ドデシル硫酸塩、ラウリル硫酸塩、コール酸ナトリウム等の界面活性剤、亜セレン酸塩、亜テルル酸塩、亜硫酸塩、窒化ナトリウム、塩化リチウム、シュウ酸塩、アジ化ナトリウム、高濃度の塩化ナトリウム等の無機塩等が挙げられる。
上記の構成成分を含む培養層30を形成するために基材シート10上に塗布される培地液に使用する溶媒としては、選択した構成成分を溶解又は分散し得るものであれば特に限定されるものではないが、アルコール系溶媒を使用することが好ましい。アルコール系溶媒は、水やトルエン等の高沸点溶媒とは異なり、溶媒除去の際に高温加熱する必要がない。このため、各成分が熱分解するおそれがなく、また、溶媒除去に長時間を要しないので、生産効率に優れる点において好ましい。アルコール系溶媒としては、炭素数1〜5のアルコールが好ましく、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。これらの中でも、沸点が低く、乾燥による溶媒除去が容易であって、且つ、微生物の発育を阻害しないメタノールが最も好ましい。なお、上記溶媒は、単独又は2種以上を混合して使用することができる。溶媒の使用量は、培地液の構成成分や溶媒の種類によって、適宜選択するとよい。
なお図4においては、培養層30が1層で構成されている例を示したが、これに限られることはなく、培養層30を2層以上の多層で構成してもよい。例えば、固着剤およびゲル化剤を含む培地液を用いて第1培養層を形成し、その上に、固着剤、ゲル化剤および/または栄養成分を含む培地液を用いて第2培養層を形成してもよい。
(枠体)
枠体20は、上述のように、培養層30を囲うよう基材シート10の上面に設けられるものである。このような枠体20を設けることにより、被検液35Aを培養層30上に供給するときに、被検液35Aが枠体20を超えて拡がることを防止することができるとともに、被検液35Aが広がる領域を一定にすることができる。従って、カバーフィルム40を被せるたけで被検液35Aを拡げることができるため、スプレッダを用いて培養層30上の被検液35Aを拡げる作業を省くことができ、このことにより、検査工程に要する時間を短縮することができる。また、被検液35Aが基材シート10上に洩れてしまうことを防ぐこともできる。
枠体20は、培養層30の形成前に形成されてもよく、若しくは培養層30の形成後に形成されてもよいが、培養層30の形成後に形成されると、枠体20と培養層30との間に隙間が生じやすくなることが考えられる。この場合、微生物を培養した際にその隙間に菌が遊走し、正確なコロニー数の計測が困難となることがある。従って、培養層30の形成前に枠体20が形成されることが好ましい。また、培養層30の形成前に枠体20を形成することにより、培地液が拡がる範囲、すなわち培養層30が形成される範囲を画定することができるため、高価な微生物培養材料が無駄になることを低減することができる。
枠体20の幅は、最細部が幅0.5〜5.0mmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは1.0〜3.0mmの範囲内である。上記範囲であれば、培養層30が吸水して膨潤した場合であっても、枠体20の形状が崩れるおそれが少ない。
被検疫35Aを滴下してカバーフィルム40を被せたときに、被検液35Aがカバーフィルム40に接触するように、枠体20の高さが設定される。枠体20は、培養層30の高さより100〜1200μm高くなるよう設定され、より好ましくは200〜1000μm高くなるよう設定され、特に好ましくは300〜800μm高くなるよう設定される。枠体20の高さと培養層30の高さの差を100μmより大きくすることにより、被検液の拡がりを十分に抑制することができ、これによって、基材シート10上への漏れが生じることを防ぐことができる。また、枠体20の高さと培養層30の高さの差を1200μmよりも小さくすることにより、被検液35Aおよび培養層30とカバーフィルムとの間の密着性を確保することができる。これによって、被検液35Aを培養層30に給水させながら被検液35Aを培養層30の全域に拡げることができる。
枠体20の高さh、すなわち基材シート10から枠体20の上端までの距離は、300〜1400μmとなっており、好ましくは500〜900μmとなっている。枠体20の高さhを300μmより大きくすることにより、被検液35Aを滴下するためにカバーフィルム40をめくり上げる際に、基材シート10とカバーフィルム40との間に指が入りやすくなるため、カバーフィルム40をめくり上げやすくすることができる。また、枠体20の高さhを1400μmより小さくすることにより、高価である培地液を基材シート10上に塗布する量を減らすことができるため、微生物培養具1のコストを下げることができる。
枠体20を構成する材料としては、好ましくは、疎水性を有する材料が用いられ、例えば疎水性樹脂が用いられる。疎水性樹脂としては、例えば、UV硬化樹脂、ホットメルト樹脂、熱発泡インクやUV発泡剤等を好適に使用することができる。これらは着色されていてもよい。
UV硬化樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、ラジカル型では、アクリレート系や不飽和ポリエステル系等が挙げられ、カチオン型では、エポキシアクリレート系、オキセタン系やビニルエーテル系等が挙げられる。
ホットメルト樹脂としては、軟化点温度が120度以下、より好ましくは100度以下のものを好適に使用することができる。例えば、ホットメルト樹脂として、ウレタン系、ポリアミド系、ポリオレフィン系、ポリエステル系、エチレン酢酸ビニル系、スチレンブタジエンゴム系やウレタンゴム系等の合成ゴム系等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
その他にも、枠体20を構成する疎水性樹脂として、熱発泡インクやUV発泡剤等も好適に使用することができる。例えば、バインダーとしてポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリアクリレート系樹脂、ポリエステル系樹脂、そして、塩素化ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、また、塩化ゴムや環化ゴム等のゴム類等を用いたインクを使用することができる。これらのインクは、撥水性を有していれば更に好ましく、この点から上記の樹脂にシリコーン類やワックス類を添加したインクが更に好ましい。
枠体20に用いる疎水性樹脂は、疎水性、撥水性を有すると同時に、その塗膜の厚さが大きくできるものであることが好ましい。この観点からは、上記の樹脂に従来公知の発泡剤等を添加して、発泡インクとして使用することが効果的である。このようなUV発泡インクとして、少なくともアクリレート反応性希釈剤又はメタクリレート反応性希釈等の反応性希釈剤と、ウレタンアクリレート光重合性オリゴマー、ポリエステルアクリレート光重合性オリゴマー、エポキシアクリレート光重合性オリゴマー、アクリル系光重合性オリゴマー、特殊光重合性オリゴマー等の光重合性オリゴマーと、光重合開始剤からなる紫外線硬化型インクに、無機発泡剤、有機発泡剤、液体発泡剤等の発泡剤を含有してなる紫外線硬化型発泡インクを挙げることができる。
なお、上記疎水性樹脂には、添加剤として、消泡剤、重合禁止剤、顔料分散剤等を添加してもよい。また、通常使用される着色顔料を、15質量%未満の範囲で含有してもよい15質量%を超えると、発泡を阻害するおそれがあるため好ましくない場合がある。
本実施の形態による微生物培養具1においては、枠体20の材料として、上記いずれの疎水性樹脂も好適に使用することができるが、UV硬化樹脂又はホットメルト樹脂が好ましく、ホットメルト樹脂がより好ましい。枠体20の形成には、一定の高さを有するパターン形成が必要であるが、UV硬化樹脂やホットメルト樹脂は、非溶媒系の状態でディスペンサー等による塗布により容易に形状加工ができ、加工後も光照射や冷却により硬化させるだけで容易にパターン形成できるからである。ただし、UV照射に起因して変質する成分が培養層30に含まれている場合には、UV照射の際に培養層30を金属等で覆う必要があり、作業が煩雑となるため、ホットメルト樹脂を使用するとよい。
なお、疎水性材料のくりぬき品を基材シート10の上面に接着して枠体20を形成してもよい。もしくは基材シート10を熱成形、プレス成形、しぼり成形などを用いて枠体状に成形することにより、枠体20を形成してもよい。
(接合部)
接合部25は、カバーフィルム40を基材シート10に対して接合するためのものである。カバーフィルム40が接合部25を軸として基材シート10に対して変位し、これによって、枠体20および培養層30がカバーフィルム40によって覆われている被覆状態と、枠体20および培養層30がカバーフィルム40によって覆われていない開放状態と、を実現することができる限りにおいて、接合部25の具体的な構成が特に限られることはない。例えば図2および図4に示すように、接合部25を、基材シート10およびカバーフィルム40とは別個の部材を用いて構成してもよい。この場合、接合部25として、例えば一般的な両面テープやホットメルト剤や粘着剤を用いることができる。若しくは、図示はしないが、接合部25を、基材シート10およびカバーフィルム40と同一の材料を用いて構成してもよい。例えば、一枚のプラスチックシートや積層シートを準備し、このシートを折り曲げることによって、一連のシート上に基材シート10およびカバーフィルム40を画定してもよい。この場合、基材シート10とカバーフィルム40との間に位置する折り曲げられた領域が、カバーフィルム40を基材シート10に対して接合する接合部25となる。
(カバーフィルム)
次に図5を参照して、カバーフィルム40について説明する。カバーフィルム40は、培養中の落下菌等による汚染を防止するとともに、培養層30の水分蒸発を防止するという作用を有する。またカバーフィルム40は、培養層30上に供給された被検液35Aの塊を培養層30の全域にわたって拡げるという作用も有する。カバーフィルム40は、図5に示すようにベース層46を含んでいる。
カバーフィルム40のベース層46は、防水性、水蒸気不透過性を有すると同時に、透明性を有することが好ましい。これによって、微生物の培養後、カバーフィルム40を通してコロニーを観察したり、計数したりすることができる。例えばベース層46を構成する材料として、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル等のプラスチックフィルムを使用することができる。
また、カバーフィルム40のベース層46には、基材シート10の項で記載したコロナ放電処理等の表面処理がなされていてもよい。なお、カバーフィルム40は、培養する微生物の種類により、適した気体透過性、主に酸素透過性、又は酸素非透過性を有することが好ましく、この点も考慮して選定するとよい。
カバーフィルム40は、被検液35Aを培養層30上に供給するためにカバーフィルム40を基材シート10から持ち上げる際に、適度の柔軟性が確保されることが好ましい。したがって、カバーフィルム40の厚さは、10〜200μm程度が好ましく、20〜70μm程度が更に好ましい。
図5に示すように、ベース層46の上面側に印刷適合層50が配置され、この印刷適合層50によってカバーフィルム40の上面が構成されていてもよい。以下、印刷適合層50について説明する。
〔印刷適合層〕
印刷適合層50は、後述する印刷処理によって付与されるインクを保持するよう構成された層である。このような印刷適合層50をカバーフィルム40あるいは基材シート10のうちの少なくともいずれか一方に設けることにより、検体情報70を印刷する際、インクの滲みが生じることを抑制することができる。また、インクをより確実に固着させることができる。なお、印刷適合層50の構成が特に限られることはなく、印刷処理を実施するために用いられる印刷装置のタイプに応じて適宜設定される。
例えば、顔料を溶媒に溶解させた顔料インクや、染料を溶媒に溶解させた染料インクを印刷対象に対して塗布する、インクジェット方式の印刷装置が用いられる場合、印刷適合層50は、顔料インクや染料インクがその表面に固着され得るよう構成されている。この場合、印刷適合層50に固着した顔料インクや染料インクの溶剤が揮発することにより、印刷適合層50に検体情報70が形成される。
また、昇華型熱転写方式の印刷装置が用いられる場合、印刷適合層50は、昇華性の染料インクの溶媒に対して溶融することができるよう構成されている。なお昇華型熱転写方式の印刷装置においては、基材層と染料インク層とが積層された転写シートが用いられる。この場合、転写シートの染料インク層を適切なパターンで印刷適合層50へ転移させることにより、印刷適合層50に検体情報70が形成される。染料インク層は、加熱により昇華して転移するする染料と、非熱転移性のバインダーとを含んでいる。
また、溶融型熱転写方式の印刷装置が用いられる場合、印刷適合層50は、加熱により溶融するワックスインク層がその表面に固着され得るよう構成されている。なお溶融型熱転写方式の印刷装置においては、基材層とワックスインク層とが積層された転写シートが用いられる。この場合、転写シートのワックスインク層を適切なパターンで印刷適合層50へ転移させることにより、印刷適合層50に検体情報70が形成される。ワックスインク層は、加熱により溶融するバインダーと、着色剤とを含んでいる。着色剤としては、顔料あるいは染料が挙げられる。
印刷適合層50は、単層であってもよく、若しくは複数の層を含んでいてもよい。印刷適合層50の厚みは、印刷処理を実施するために用いられる印刷装置のタイプに応じて適宜設定されるが、好ましくは0.5〜20μmとなっており、より好ましくは2〜8μmとなっている。
以下、印刷適合層50として、昇華性の染料インクを保持するよう構成されたインク受容層が用いられる場合について、特に詳細に説明する。なお、このような印刷適合層50は、昇華型熱転写方式の印刷処理だけでなく、インクジェット方式や溶融型熱転写方式の印刷処理が実施される場合にも用いられ得る。インク受容層を構成する樹脂として、インクの溶媒に可溶な樹脂を用いることができる。例えば、水系溶媒に可溶な水性樹脂や、有機溶媒に可溶な溶剤系樹脂を用いることができる。インク受容層を構成する樹脂に微粒子が添加されていてもよい。なお、水系溶媒は、水を主成分とする溶媒をも含む概念である。例えば水系溶媒は、主成分としての水と、有機溶剤とを含む溶媒であってもよい。インク受容層を構成する水性樹脂あるいは溶剤系樹脂は、下記に挙げる1種類の樹脂あるいは2種類以上の樹脂を混合した樹脂により構成され得る。なお、インクジェット方式の印刷処理が実施される場合、インク受容層は、水性樹脂に微粒子が添加された樹脂とすることが好ましい。
水性樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸系樹脂、セルロース誘導体系樹脂、または、ポリエーテル系樹脂等が挙げられる。これらのうち、ポリ塩化ビニル系樹脂またはスチレン−アクリル系共重合体を用いることが好ましい。
溶剤系樹脂としては、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニリデン等のハロゲン化ポリマー、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリルエステル等のポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、エチレンやプロピレン等のオレフィンと他のビニルモノマーとの共重合体系樹脂、アイオノマー、セルロースジアセテート等のセルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等が挙げられる。これらのうち、ポリエステル系樹脂、あるいは/および、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体を用いることが好ましい。
次に、ベース層46または印刷適合層50に関連する変形例について説明する。
図示はしないが、ベース層46と印刷適合層50との密着性あるいは基材シート10と印刷適合層50との密着性を向上させるために、ベース層46あるいは基材シート10のうちの少なくともいずれか一方にコロナ処理が施されていてもよく、若しくは、ベース層46と印刷適合層50との間あるいは基材シート10と印刷適合層50との間のうちの少なくともいずれか一方にプライマー層が設けられていてもよい。プライマー層の厚みは、好ましくは1〜20μmとなっており、より好ましくは1〜10μmとなっている。プライマー層を構成する樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸系樹脂、セルロース誘導体系樹脂、または、ポリエーテル系樹脂等が挙げられる。これらのうち、ポリエステル樹脂を用いることが好ましい。
また図示はしないが、カバーフィルム40のベース層46と印刷適合層50との間あるいは基材シート10と印刷適合層50との間のうちの少なくともいずれか一方に、中間層が設けられていてもよい。中間層としては、クッション性を有するクッション層や、断熱性を有する断熱層等が挙げられる。
クッション層は、単層であってもよく、若しくは複数の層を含んでいてもよい。クッション層を設けることにより、微生物培養具1全体の平滑性が低い場合であっても、十分な精度で検体情報70を微生物培養具1に印刷することができる。クッション層の厚みは、好ましくは0.5〜20μmとなっており、より好ましくは1〜10μmとなっている。クッション層は、下記に挙げる1種類の樹脂あるいは2種類以上の樹脂を混合した樹脂により構成され得る。クッション層を構成する樹脂としては、ポリウレタン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂等が挙げられる。
断熱層は、単層であってもよく、若しくは複数の層を含んでいてもよい。断熱層を設けることにより、印刷の際に微生物培養具1に印加される熱によって微生物培養具1が損傷したり変形したりすることを抑制することができる。断熱層は、下記に挙げる1種類の樹脂あるいは2種類以上の樹脂を混合した樹脂と中空粒子とで構成され得る。断熱層を構成する樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸系樹脂、セルロース誘導体系樹脂、または、ポリエーテル系樹脂等を挙げることができる。また、中空粒子を構成する樹脂としては、架橋スチレン−アクリル樹脂等のスチレン系樹脂、アクリロニトリル−アクリル樹脂等の(メタ)アクリル系樹脂、フェノール系樹脂、フッ素系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテル系樹脂等を挙げることができる。
印刷適合層50は、検体情報70が表示される位置にのみ設けられていてもよく、若しくはカバーフィルム40あるいは基材シート10のうちの少なくともいずれか一方の全域にわたって設けられていてもよい。例えば、図5に示すように、カバーフィルム40の全域にわたって設けることができる。
なおインクジェット方式の印刷装置や溶融型熱転写方式の印刷装置が用いられる場合、印刷適合層50は、ベース層46あるいは基材シート10のうちの少なくともいずれか一方に、コロナ処理などの、親水性を向上させる改質処理を施すことによって得られる層であってもよい。すなわち、印刷適合層50は、ベース層46あるいは基材シート10とは別個に設けられる層だけでなく、ベース層46あるいは基材シート10のうちの少なくともいずれか一方に改質処理を施すことによって得られる層をも含む概念である。
以下、カバーフィルム40に含まれ得るその他の層についてさらに説明する。
〔印刷層〕
図5に示すように、ベース層46の下面側に、枡目線40aを構成する印刷層47が設けられていてもよい。印刷層47は、好ましくは、水に不溶性であり、かつ微生物の生育に影響を与えないインクを用いることによって構成されている。印刷層47によって構成される枡目線40aは、コロニーが多数形成された場合に、数ヶ所の枡目内の菌数を計測し、枡目の合計数に比例した数を掛けるだけで、おおよその全体数を求めるために形成されるものである。枡目の大きさは、10mm角程度が適当である。
〔特定成分層〕
カバーフィルム40のうち培養層30と対向する領域に、特定成分層48が形成されていてもよい。特定成分層としては、例えば、固着剤を溶解、又は分散した液に、ゲル化剤、栄養成分、発色指示薬、選択剤及び基質からなる群から選択される1種以上を配合した特定成分溶液を塗布することにより得られる層が用いられる。なお、カバーフィルム40に設けられた特定成分層48が発色指示薬を含んでいる場合、培養層30や被検液35Aに発色指示薬を添加する手間を省くことができる。
〔着色層〕
また図5に示すように、上述の着色領域40Cを構成するための着色層49が、ベース層46の下面側に設けられていてもよい。
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用および効果について説明する。ここでは、検体情報70が表示された微生物培養具1Aを準備し、そして微生物培養具1Aを用いて検体を検査する方法について説明する。図6は、微生物培養具1Aを準備するための印刷方法S10と、微生物培養具1Aを用いて検体を検査する検査方法S20と、を示すフローチャートである。
印刷方法
はじめに、図6乃至図10を参照して、微生物培養具1に対して、製品から抽出される検体に関する検体情報70を印刷する印刷方法について説明する。図7は、検体情報70を微生物培養具1に印刷するための印刷システム60を示す図である。
図7に示すように、印刷システム60は、微生物培養具1を搬送する搬送装置63と、微生物培養具1に検体情報を印刷する印刷装置64と、微生物培養具1を印刷装置64に向けて1つずつ順に供給する供給装置62と、印刷装置64を制御する制御装置61と、を備えている。また印刷システム60は、印刷装置64の下流側に配置され、微生物培養具1Aに表示されている検体情報70を認識する検体情報認識装置65をさらに備えていてもよい。
〔検体情報生成工程〕
はじめに、微生物培養具1に印刷されるべき検体情報を生成する検体情報生成工程S11を実施する。ここでは、制御装置61によって検体情報が生成される。
図7に示すように、制御装置61は、微生物培養具1に印刷されるべき検体情報を生成する生成部61aを有している。図10は、生成部61aによって生成される検体情報の一例を示す図である。図10に示すように、生成部61aによって生成される検体情報は、検査ID、検査日、製品名、ロット番号、検査者、検査対象となる微生物の種類(菌種)、検体の希釈率、対象の製品に対して実施される検査のn数(検査枚数)などに関する情報を含むことができる。なお、図10に示される検体情報の全てが微生物培養具1に表示される必要はない。本実施の形態においては、少なくとも製品名および検査日に関する情報が微生物培養具1に表示されていればよい。
制御装置61の生成部61aが検体情報を生成する方法が特に限られることはなく、様々な方法が採用され得る。例えば、検査者が検体情報を、制御装置61または制御装置61として機能するコンピュータなどに手動で入力し、これによって検体情報を制御装置61に認識させてもよい。若しくは、制御装置61の生成部61aは、生産管理データベースD1と検査データベースD2とを参照して、微生物培養具1に印刷されるべき検体情報を生成するよう構成されていてもよい。
生産管理データベースD1は、図8に示すように、製造現場で製造された製品に関する情報が記録されているものである。例えば生産管理データベースD1には、チキンカレー甘口という製品が、7月6日に製造ラインAにおいて製造班3によって50,000個製造されたというデータが記録されている。なお生産管理データベースD1は、図8に示されるデータ以外のデータをさらに含んでいてもよい。
検査データベースD2は、図9に示すように、製品に対して実施されるべき検査に関する情報が製品名ごとに記録されているものである。例えば検査データベースD2には、チキンカレー甘口という製品に対して、一般生菌(AC)に関する検査が、希釈率1かつ検査枚数1、および希釈率2かつ検査枚数1で、35度,48時間という培養条件のもとで実施される必要があるというデータが記録されている。なお、希釈率n(n=1,2,…)という表示は、検体の希釈の倍率が10倍であることを示す略号である。検査データベースD2は、検査の規格値に関するデータや、図9に示されるデータ以外のデータをさらに含んでいてもよい。
制御装置61の生成部61aは、例えばチキンカレー甘口という製品に関して、生産管理データベースD1から得られる、チキンカレー甘口が7月6日に製造されたというデータと、検査データベースD2から得られる、チキンカレー甘口に対して実施されるべき検査の希釈率や検査枚数に関するデータとに基づいて、チキンカレー甘口という製品の製品名、検査日、希釈率、検査枚数などの情報を含む検体情報を生成することができる。
〔印刷工程〕
次に、検体情報生成工程S11において生成された検体情報を微生物培養具1に印刷する印刷工程を、検体情報を微生物培養具1に付与するための検体情報付与工程S12として実施する。まず印刷工程の前段階として、微生物培養具1を、印刷工程を実施する印刷装置64に向けて順に供給する(供給工程)。次に、印刷装置64が、微生物培養具1のカバーフィルム40の上面に対してインクを所定のパターンで供給する。これによって、微生物培養具1に検体情報70が印刷される。なお、印刷装置64のタイプが特に限られることはなく、上述のように、インクジェット方式、昇華型熱転写方式、溶融型熱転写方式などの様々な方式の印刷装置が用いられ得る。
ここで上述のように、カバーフィルム40の上面がインクを適切に保持することができる印刷適合層50によって構成されている場合、インクの滲みが生じることを抑制することができ、また、インクをカバーフィルム40の上面に安定的に固着させることができる。また、検体情報70がカバーフィルム40の上面に印刷されるため、印刷処理を、カバーフィルム40を捲り上げることなく実施することができる。また、印刷装置64を用いて検体情報70を微生物培養具1に付与することにより、手書きで検体情報70を微生物培養具1に付与する場合に比べて、検体情報付与工程に要する時間を短縮することができる。
検査を高い精度で実施するためには、培養層30に雑菌やゴミが付着していないことが好ましい。このため一般に、微生物培養具1はクリーンルームなどの清浄な空間で製造され、かつ、培養層30はカバーフィルム40によって覆われている。しかしながら、印刷処理の際にカバーフィルム40が捲り上げられる場合、培養層30に雑菌やゴミが付着してしまうことが考えられる。ここで本実施の形態によれば、上述のように、カバーフィルム40の上面に検体情報70を印刷するため、カバーフィルム40を捲り上げることなく印刷処理を実施することができる。このため、清浄な培養層30を有する微生物培養具1Aを用いて検査を実施することができる。
ところで、図1に示すように、微生物培養具1に表示される検体情報70の印字方向は、微生物培養具1の第1外縁11,41および第2外縁12,42に平行している。従って、好ましくは、微生物培養具1の第2外縁12,42および第2外縁12,42に対向する第1外縁11,41が、微生物培養具1の搬送方向と平行になるよう、微生物培養具1が印刷装置64に供給される。これによって、印刷処理の際に印刷装置64の印字ヘッドが稼働する範囲を小さくすることができ、このことにより、印刷処理に要する時間を短くすることができる。このため、単位時間当たりに印刷処理を施すことができる微生物培養具1の枚数を増加させることができる。
〔検体情報認識工程〕
次に、微生物培養具1Aに印刷された検体情報70を認識する検体情報認識工程S13を実施する。ここでは、検体情報認識装置65によって検体情報70が認識される。
微生物培養具1Aに印刷された検体情報70を文字データとして認識することができる限りにおいて、検体情報認識装置65の具体的な構成が特に限られることはない。例えば、検体情報認識装置65は、微生物培養具1Aに印刷された検体情報70を撮影して検体情報70の画像を取得する撮影部と、取得された画像を解析して文字データを生成するOCR部と、を有している。
ここで本実施の形態によれば、上述のように、検体情報70にはデジタルフォントが利用されている。このため、検体情報認識装置65を用いて検体情報70を認識する際に読み取りエラーが発生する確率を低くすることができる。
〔照合工程〕
次に、検体情報認識工程S13において認識された検体情報と、検体情報生成工程S11において生成された検体情報とを照合する照合工程S14を実施する。例えば、制御装置61は、検体情報認識装置65によって取得された検体情報と、生成部61aによって生成された検体情報とを照合する照合部61bをさらに有しており、この照合部61bによって照合工程S14が実施される。ここで照合とは、検体情報認識装置65によって認識された検体情報と、生成部61aによって生成された検体情報とが、文字データとして互いに一致しているかどうかを判定することを意味している。このような照合工程を実施することにより、誤った検体情報が表示された微生物培養具1Aや検体情報認識装置65に検体情報が認識されなかった微生物培養具1Aが検査において用いられてしまうことを防ぐことができる。なお、適切な検体情報70が微生物培養具1Aに表示されていることが確認された場合、制御装置61によって保管されている、図10に示す検体情報に、確認が完了した旨を表す情報を追加してもよい。
なお検体情報認識装置65は、微生物培養具1Aに表示されている検体情報70だけでなく、微生物培養具1Aに表示されている培養具情報80をも認識するよう構成されていてもよい。例えば、検体情報認識装置65によって、検体情報70の製品名表示71および検査日表示72だけでなく、培養具情報80のシリアル番号表示81も認識されてもよい。これによって、製品名および検体の検査日に関する情報を含む検体情報70を、微生物培養具1Aの培養具情報80(シリアル番号表示81)と関連付けて記録することができる。また検体情報認識装置65は、検体情報70や培養具情報80だけでなく、微生物培養具1A全体の画像を取得するよう構成されていてもよい。これによって、検体情報70や培養具情報80と関連付けて、被検液が接種される前の微生物培養具1Aの状態を画像として記録することができる。このことにより、例えば、後の検査工程において異常な検査結果を示す微生物培養具1Bが存在する場合に、被検液が接種される前の当該微生物培養具1Aの培養層30の状態を画像で確認することが可能となる。例えば、被検液が接種される前の当該微生物培養具1Aに、ゴミなどが付着していないかどうかを確認することができる。このことにより、検査結果の信頼性を高めることができる。
検査方法
次に、微生物培養具1Aを用いて微生物を検査する方法について、図11(a)〜(d)および図12を参照して説明する。
はじめに図11(a)に示すように、微生物培養具1Aを作業台5の上に配置する。ここで作業台5は、図12に示すように、微生物培養具1Aの培養層30上に被検液を供給する作業を実施するための作業領域5aと、被検液が供給された後の微生物培養具1Bを一時的に保管するための保管領域5bと、を含んでいる。図11(a)に示す工程において、微生物培養具1Aは、作業台5の作業領域5a内に配置される。なお、以下の説明において、被検液が接種された微生物培養具1Aを符号1Bで示すこともある。
(被検液滴下工程)
次に、図11(b)に示すように、微生物培養具1Aの培養層30上に被検液35Aを滴下する被検液滴下工程S21を実施する。被検液35Aは、所定の希釈率で希釈された検体を含んでいる。被検液35Aは例えば、培養層30の一部分に塊として供給される。被検液滴下工程においては、図11(b)に示すように、カバーフィルム40が基材シート10から持ち上げられている。このとき、基材シート10の上面に検体情報70を表示するようにすると、検査者は検体情報70を見ながら被検液35Aを滴下することができるため、作業の確実性を向上させることができる。
ところで本実施の形態においては、上述のように、微生物培養具1Aには、デジタルフォントを利用した検体情報70が表示されている。また検体情報70は、検体が抽出された製品の製品名および検体の検査日に関する情報を少なくとも含んでいる。このため検査者は、微生物培養具1Aに表示されている検体情報70を見ることによって、微生物培養具1Aに滴下されるべき被検液35Aを即座に認識することができる。このことにより、滴下工程の効率性を向上させることができる。また、検体情報70が手書きで表示されている場合に比べて、検体情報70の読み間違いが発生する確率を低くすることができる。
次に、微生物培養具1Aの培養層30および枠体20を、微生物培養具1Aのカバーフィルム40を用いて覆う。例えば図11(c)に示すように、接合部25を軸としてカバーフィルム40を基材シート10に向けて変位させる。このとき、カバーフィルム40の下面が被検液35Aに接触する。被検液35Aは、カバーフィルム40と接触することによって、培養層30上で拡がっていく。これによって、図11(d)に示すように、被検液35Aを培養層30の全域に行き渡らせることができる。ここで本実施の形態によれば、培養層30は、培養層30よりも大きい厚み(高さ)を有する枠体20によって囲われている。このため、被検液35Aが基材シート10上に洩れてしまうことを抑制しながら、被検液35Aを培養層30の全域に迅速に行き渡らせることができる。このようにして、培養層30に被検液35Aを接種することができる。
(培養工程)
次に、孵卵器を用いて微生物を培養する培養工程S22を実施する。具体的には、被検液35Aが滴下された培養層30がゲル化した後、微生物培養具1Bが孵卵器に入れられる。微生物培養具1Bを孵卵器に入れる時間は、被検液35Aや培養層30の種類に応じて適宜設定されるが、例えば35度で48時間に設定される。なお、孵卵器に入れられる前の微生物培養具1B全体の画像を、例えば検体情報認識装置65を用いて取得してもよい。この画像は、好ましくは、検体情報70や培養具情報80と関連付けて記録される。このことにより、例えば、後の検査工程において異常な検査結果を示す微生物培養具1Bが存在する場合に、培養工程が実施される前の当該微生物培養具1Bの状態を画像で確認することが可能となる。このことにより、検査結果の信頼性を高めることができる。
ところで、被検液35Aが滴下された培養層30がゲル化するためには所定の時間を有する。このため、図12に示すように、被検液35Aが接種されてから培養層30がゲル化するまでの間、微生物培養具1Bを保管領域5bで保管してもよい。これによって、培養層30のゲル化を待つ間に、次の被検液35Aを次の微生物培養具1Aに滴下する作業を作業領域5aで実施することができる。ここで本実施の形態においては、上述のように、微生物培養具1Bには、デジタルフォントを利用した検体情報70が表示されている。このため検査者は、微生物培養具1Bを保管領域5bへ搬送する作業や、微生物培養具1Bを孵卵器に入れる作業を、微生物培養具1Bに接種されている被検液35Aを容易に認識しながら実施することができる。このことにより、作業の効率性や確実性を向上させることができる。例えば、微生物培養具1Bに接種されている被検液35Aに対応した培養時間や培養温度などの培養条件を検査者が孵卵器に設定する際、設定ミスが生じることを抑制することができる。なお、微生物培養具1Bに表示されている検体情報70は、製品名および検体の検査日に関する情報だけでなく、培養条件に関する情報をさらに含んでいてもよい。
(観察工程)
次に、培養された微生物を観察する観察工程S23を実施する。具体的には、孵卵器において所定の時間にわたって微生物を培養した後、微生物培養具1Bを孵卵器から取り出し、発生したコロニー90(図13参照)の状態を観察する。このようにして、製品から抽出された検体を含む被検液35Aに含まれる微生物を検査することができる。ここで本実施の形態においては、上述のように、微生物培養具1Bには、デジタルフォントを利用した検体情報70が表示されている。このため、微生物培養具1Bに接種されている被検液35Aを即座に認識することができる。このことにより、観察工程の効率性を向上させることができる。
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、図面を参照しながら、変形の一例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した実施の形態と同様に構成され得る部分について、上述の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。
カバーフィルムの変形例
上述の本実施の形態において、ベース層46の下面側に印刷層47や着色層49が設けられている例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、図14に示すように、ベース層46の上面側かつベース層46と印刷適合層50との間に、印刷層47や着色層49が設けられていてもよい。例えば、被検液に含まれる微生物が、インクによって生育に大きな悪影響を受ける微生物である場合、ベース層46の上面側に印刷層47や着色層49が設けられていることが好ましい。インクによって生育に悪影響が及び得る微生物としては、例えば大腸菌や黄色ブドウ球菌を挙げることができる。なおベース層46の上面側に印刷層47や着色層49が設けられる場合、好ましくは、印刷層47や着色層49は保護層51によって覆われている。保護層51は、印刷層47や着色層49が擦れたり剥がれたりすることを防止するために設けられる層である。保護層51を構成する材料としては、例えばアクリル樹脂が挙げられる。また、印刷適合層50が保護層51を兼ねるようにしてもよい。
検体情報の変形例
また上述の本実施の形態において、検体情報70が、接合部25の近傍に、すなわちカバーフィルム40の第1外縁41の近傍に表示されている例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、図15に示すように、また図14に一点鎖線で示すように、検体情報70が、第1外縁41に対向する第2外縁42の近傍に表示されていてもよい。なお「近傍」とは、第2外縁42と検体情報70との間の距離が、第1外縁41と検体情報70との間の距離よりも小さくなっていることを意味している。
ところで、カバーフィルム40の上面のうち、第1外縁41の近傍の領域には、接合部25に起因して、段差や基材シート10からの浮き上がりが存在することが考えられる。従って、より平滑な環境下で印刷処理を実施することが求められる場合、検体情報70が、第2外縁42の近傍に印刷されることが好ましい。一方、第2外縁42は、接合部25から遠位にある端部、すなわち自由端である。このため、印刷処理の際、カバーフィルム40の第2外縁42の近傍の領域が基材シート10に対して変位してしまうことが考えらえる。従って、そのような変位が生じにくい環境下で印刷処理を実施することが求められる場合、検体情報70が、固定端である第1外縁41の近傍に印刷されることが好ましい。
また上述の本実施の形態および変形例において、検体情報70が、カバーフィルム40の上面に表示されている例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、図16に示すように、基材シート10の上面の領域であって、基材シート10の法線方向から見た場合に培養層30と重ならない領域に検体情報70が表示されていてもよい。この場合、好ましくは図16に示すように、検体情報70は、接合部25の近傍に位置する第1外縁11に対向する第2外縁12の近傍に表示される。これによって、検体情報70を基材シート10の上面に印刷する工程がカバーフィルム40によって阻害される程度をより小さくすることができる。例えば、培養層30が露出されない程度にカバーフィルム40を捲り上げることのみによって、検体情報70を基材シート10の上面に印刷することが可能になる。
検体情報70が基材シート10の上面に表示される場合、好ましくは、図16に示すように、基材シート10の上面が印刷適合層50によって構成されている。これによって、インクの滲みが生じることを抑制することができ、また、インクを基材シート10の上面により確実に固着させることができる。
なお、検体情報70が基材シート10の上面に表示される場合、カバーフィルム40は、カバーフィルム40が培養層30を覆う際、基材シート10の上面の領域が少なくとも部分的に露出されるよう構成されてもよい。この場合、検体情報70は、図17および図18に示すように、基材シート10の上面の領域のうち、カバーフィルム40によって覆われることなく露出している領域に表示される。これによって、印刷処理を、カバーフィルム40を捲り上げることなく実施することができる。このため、印刷処理の際に培養層30に雑菌やゴミが付着してしまうことを確実に防ぐことができる。
また上述の本実施の形態および変形例において、微生物培養具1Aに表示される検体情報70が、製品名を直接的に表示する製品名表示71と、検査日表示72とを含む例を示した。しかしながら、検体情報70を見た検査者が製品名および検体の検査日に関する情報を容易に認識することができる限りにおいて、表示される検体情報70の形式が特に限られることはない。例えば図19に示すように、検体情報70は、製品名表示71や検査日表示72に加えて、若しくは製品名表示71や検査日表示72に替えて、ロット番号などの略号を用いて製品名に関する情報を表現する略号表示73を有していてもよい。略号表示73は、製品名略号表示73a、検査日表示73b(検査日略号表示とも称する)、製造ライン略号表示73c、n数表示73d、検査者略号表示73eまたは希釈率略号表示73fなどを含むことができる。図19に示す例において、製品名略号表示73aは、チキンカレー甘口という製品名を表現する、「CM」という略号である。また検査日表示73bは、2012年7月6日という検査日を表現する、「20120706」という数字(略号)である。また製造ライン略号表示73cは、製品が製造ラインAで製造されたということを表現する、「A」という略号である。またn数表示73dは、対象の製品に対して実施される検査のn数(検査枚数)が1であることを表現する、「1」という略号である。また検査者略号表示73eは、検査者のイニシャルなど、検査者が誰であるかを表現する「KT」という略号である。また希釈率略号表示73fは、製品の検体を含む被検液の希釈の倍率が10であることを表現する、「2」という略号である。
また図20に示すように、微生物培養具1Aに、デジタルフォントを利用した検体情報70だけでなく、識別コードを利用した追加検体情報75がさらに表示されていてもよい。追加検体情報75は、カバーフィルム40の上面または基材シート10の上面のうちの少なくともいずれか一方に表示することができる。識別コードとしては、JANコード等の一次元バーコード、QRコード(登録商標)等の二次元バーコード、カラーマトリックスなど、スキャナやリーダーやカメラなどによって読み取り可能なコードが挙げられる。図20においては、カバーフィルム40の上面に追加検体情報75としてQRコード表示76が表示される例が示されている。このような追加検体情報75をさらに微生物培養具1Aに表示することにより、微生物培養具1Aから得られる情報量を増加させることができる。
また図示はしないが、検体情報70は、検査対象となる製品に応じて設定された色で表示されていてもよい。例えば、チキンカレー甘口という製品から抽出された検体に関する検体情報70が、微生物培養具1Aに青色で表示され、一方、ビーフカレー辛口という製品から抽出された検体に関する検体情報70が、微生物培養具1Aに赤色で表示されていてもよい。この場合、検査者は、微生物培養具1Aがどの製品に対応するものであるかをより直感的に判断することができるため、作業の効率性をより向上させることができる。
また本実施の形態および変形例において、検体情報を微生物培養具1に付与するための検体情報付与工程が、印刷工程として実施される例を示した。すなわち、印刷処理によって検体情報70が微生物培養具1Aに付与される例を示した。しかしながら、検査者が視認可能な検体情報70が微生物培養具1Aに付与される限りにおいて、その他の方法が用いられてもよい。例えば、はじめに、粘着性を有するテープなどの上面に検体情報70を印刷し、次に、検体情報70が印刷されたテープを微生物培養具1に貼り付け、これによって、検体情報70が表示された微生物培養具1Aを作製してもよい。この場合も、検体情報70にはデジタルフォントが利用されており、かつ、検体情報70は製品名および検体の検査日に関する情報を少なくとも含んでいる。従って、検査者は、微生物培養具1Aに滴下されるべき被検液35Aを、または微生物培養具1Bに接種されている被検液35Aを容易に認識することができる。
印刷方法の変形例
ところで、微生物の検査においては、上述の一般生菌だけでなく、製品に含まれ得る、大腸菌や黄色ブドウ球菌などのその他の微生物を対象とした検査が実施されることがある。上述の検査データベースD2には、このような、製品に含まれ得る微生物に関する情報がさらに含まれていてもよい。また、製品の検体に含まれ得る微生物の種類に応じて複数のタイプの微生物培養具1が用いられてもよい。例えば、一般生菌に対応した微生物培養具1と、大腸菌に対応した微生物培養具1と、黄色ブドウ球菌に対応した微生物培養具1とがそれぞれ準備されてもよい。
ところで、複数のタイプの微生物培養具1が準備される場合、検体情報70を微生物培養具1に印刷する工程が煩雑になることが考えられる。なぜなら、検体情報70に対応する微生物の種類に応じて、適切なタイプの微生物培養具1を印刷システム60の印刷装置64に供給しなければならないからである。このような課題を考慮して、印刷システム60は、図7において一点鎖線で示すように、供給装置62と印刷装置64との間に配置され、微生物培養具1のタイプを判別するタイプ判別装置66をさらに備えていてもよい。このようなタイプ判別装置66を用いることにより、印刷装置64に供給される微生物培養具1のタイプを判別し、その結果を制御装置61に送信することができる。この場合、制御装置61は、タイプ判別装置66によって判別された微生物培養具1のタイプに対応した種類の微生物が含まれ得る製品から抽出された検体に関する検体情報を、印刷装置64に送信する。例えば、タイプ判別装置66によって判別された微生物培養具1のタイプが、大腸菌タイプである場合、制御装置61は、大腸菌が検査対象となっている製品から抽出された検体に関する検体情報を印刷装置64に送信する。これによって、印刷装置64に供給される微生物培養具1のタイプと、この微生物培養具1に印刷される検体情報70とを容易に適合させることができる。このことにより、複数のタイプの微生物培養具1が準備される場合であっても、印刷工程が煩雑になることを防ぐことができる。
タイプ判別装置66が微生物培養具1のタイプを判別する方法が特に限られることはなく、様々な方法が用いられ得る。例えば、培養具情報80が、微生物培養具1が対応する微生物のタイプに関する情報を含む場合、タイプ判別装置66は、微生物培養具1に表示されている培養具情報80を読み取ることにより、微生物培養具1のタイプを判別してもよい。また、着色領域40Cの色が、微生物培養具1のタイプに応じて異なっている場合、タイプ判別装置66は、着色領域40Cの色を読み取ることにより、微生物培養具1のタイプを判別してもよい。
印刷システムの構成例
また、上述の印刷システム60の少なくとも一部は、ハードウェアで構成してもよいし、ソフトウェアで構成してもよい。例えば、制御装置61の機能は、少なくとも部分的に、ソフトウェアとして構成されていてもよい。この場合、制御装置61の少なくとも一部の機能を実現するプログラムをフレキシブルディスクやCD−ROM等の記録媒体に格納し、コンピュータに読み込ませて実行させてもよい。記録媒体は、磁気ディスクや光ディスク等の着脱可能なものに限定されず、ハードディスク装置やメモリ等の固定型の記録媒体でもよい。また、制御装置61の少なくとも一部の機能を実現するプログラムを、インターネット等の通信回線(無線通信も含む)を介して頒布してもよい。さらに、同プログラムを暗号化したり、変調をかけたり、圧縮した状態で、インターネット等の有線回線や無線回線を介して、あるいは記録媒体に収納して頒布してもよい。
なお、上述した実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。
1 微生物培養具
1A 検体情報が付与された微生物培養具
1B 被検液が接種された培養具培養具
10 基材シート
20 枠体
25 接合部
30 培養層
35A 被検液
40 カバーフィルム
40C 着色領域
46 ベース層
50 印刷適合層
60 印刷システム
61 制御装置
64 印刷装置
65 検体情報認識装置
70 検体情報
71 製品名表示
72 検査日表示
73 略号表示
80 培養具情報
90 コロニー
D1 生産管理データベース
D2 検査データベース

Claims (17)

  1. 基材シートと、
    前記基材シートの上面に設けられ、微生物を培養するよう構成された培養層と、
    前記基材シートの上面に接合され、前記培養層を覆うことができるカバーフィルムと、を備え、
    前記カバーフィルムの上面に、前記培養層によって培養される検体に関する検体情報がデジタルフォントを利用して表示されており、
    前記検体情報は、前記カバーフィルムの上面のうち前記培養層と重ならない領域に配置されている、微生物培養具。
  2. 前記検体は、検査対象の製品から抽出されたものであり、
    前記検体情報は、製品名を表示する製品名表示を有する、請求項1に記載の微生物培養具。
  3. 前記検体は、検査対象の製品から抽出されたものであり、
    前記検体情報は、略号を用いて製品名に関する情報を表現する略号表示を有する、請求項1に記載の微生物培養具。
  4. 前記カバーフィルムの下面または前記基材シートの上面のうちの少なくともいずれか一方に、前記微生物培養具のタイプ、製造日またはシリアル番号のいずれかに関する情報を少なくとも含む培養具情報が表示されている、請求項1乃至のいずれか一項に記載の微生物培養具。
  5. 微生物培養具に対して、前記微生物培養具によって培養される検体に関する検体情報を印刷する印刷システムにおいて、
    前記微生物培養具は、基材シートと、前記基材シートの上面に設けられ、微生物を培養するよう構成された培養層と、前記基材シートの上面に接合され、前記培養層を覆うことができるカバーフィルムと、を備え、
    前記印刷システムは、
    前記微生物培養具の前記カバーフィルムの上面のうち前記培養層と重ならない領域に検体情報をデジタルフォントを利用して印刷する印刷装置と、
    前記印刷装置を制御する制御装置と、を備え、印刷システム。
  6. 前記印刷装置の下流側に配置され、前記微生物培養具に印刷された検体情報を認識する検体情報認識装置をさらに備え、
    前記制御装置は、前記微生物培養具に印刷されるべき前記検体情報を生成する生成部と、前記検体情報認識装置によって取得された検体情報と前記生成部によって生成された検体情報とを照合する照合部と、をさらに有する、請求項に記載の印刷システム。
  7. 前記検体は、検査対象の製品から抽出されたものであり、
    前記制御装置の前記生成部は、製造現場で製造された製品に関する情報が記録されている生産管理データベースと、製品に対して実施されるべき検査に関する情報が記録されている検査データベースと、を参照して、前記微生物培養具に印刷されるべき検体情報を生成する、請求項に記載の印刷システム。
  8. 前記検査データベースに記録されている情報は、製品に含まれ得る微生物に関する情報を少なくとも含み、
    製品に含まれ得る微生物の種類に応じて複数のタイプの微生物培養具が準備されており、
    前記印刷システムは、
    複数のタイプの微生物培養具を前記印刷装置に向けて順に供給する供給装置と、
    前記供給装置と前記印刷装置との間に配置され、前記微生物培養具のタイプを判別するタイプ判別装置と、をさらに備え、
    前記制御装置は、前記タイプ判別装置によって判別された前記微生物培養具のタイプに対応した種類の微生物が含まれ得る製品から抽出された検体に関する検体情報を前記印刷装置に送信する、請求項に記載の印刷システム。
  9. 前記カバーフィルムの下面または前記基材シートの上面のうちの少なくともいずれか一方に、前記微生物培養具のタイプ、製造日またはシリアル番号のいずれかに関する情報を少なくとも含む培養具情報が表示されており、
    前記タイプ判別装置は、前記培養具情報を利用して前記微生物培養具のタイプを判別する、請求項に記載の印刷システム。
  10. コンピュータを、請求項乃至のいずれか一項に記載の印刷システムの制御装置として機能させるためのプログラム。
  11. 請求項10に記載のプログラムを格納した、コンピュータが読み取り可能な記録媒体。
  12. 微生物培養具に対して、製品から抽出され前記微生物培養具によって培養される検体に関する検体情報を印刷する印刷方法において、
    前記微生物培養具は、基材シートと、前記基材シートの上面に設けられ、微生物を培養するよう構成された培養層と、前記基材シートの上面に接合され、前記培養層を覆うことができるカバーフィルムと、を備え、
    前記印刷方法は、前記検体情報を前記微生物培養具の前記カバーフィルムの上面のうち前記培養層と重ならない領域デジタルフォントを利用して印刷する印刷工程を備える、印刷方法。
  13. 前記微生物培養具に印刷されるべき検体情報を生成する検体情報生成工程をさらに備える、請求項12に記載の印刷方法。
  14. 前記微生物培養具に印刷された検体情報を認識する検体情報認識工程と、
    前記検体情報認識工程において認識された検体情報と、前記検体情報生成工程において生成された検体情報とを照合する照合工程と、をさらに備える、請求項13に記載の印刷方法。
  15. 前記検体は、検査対象の製品から抽出されたものであり、
    前記検体情報生成工程において、前記微生物培養具に印刷されるべき検体情報は、製造現場で製造された製品に関する情報が記録されている生産管理データベースと、製品に対して実施されるべき検査に関する情報が記録されている検査データベースと、を参照することによって生成される、請求項13または14に記載の印刷方法。
  16. 前記検査データベースに記録されている情報は、製品に含まれ得る微生物に関する情報を少なくとも含み、
    製品に含まれ得る微生物の種類に応じて複数のタイプの微生物培養具が準備されており、
    前記印刷方法は、
    複数のタイプの微生物培養具を、前記印刷工程を実施する印刷装置に向けて順に供給する供給工程と、
    前記印刷装置に到達する前の前記微生物培養具のタイプを判別するタイプ判別工程と、をさらに備え、
    前記印刷工程において、前記タイプ判別工程において判別された前記微生物培養具のタイプに対応した種類の微生物が含まれ得る製品から抽出された検体に関する検体情報が、前記微生物培養具に印刷される、請求項15に記載の印刷方法。
  17. 前記微生物培養具に、前記微生物培養具のタイプ、製造日またはシリアル番号のいずれかに関する情報を少なくとも含む培養具情報が表示されており、
    前記タイプ判別工程は、前記培養具情報を利用して前記微生物培養具のタイプを判別する、請求項16に記載の印刷方法。
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