JP6084961B2 - 多重反射容器 - Google Patents

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Description

本発明は、レーザ光を用いた光反応もしくは分光分析等に用いられる多重反射容器であって、特に非点収差型の多重反射容器に関する。
レーザ光を用いた光反応は、特定のエネルギー準位間の光学遷移を誘起できることから、同位体ガス成分等の低濃度かつ希少価値の高い物質の分離及び濃縮方法として用いられている(例えば、特許文献1及び2)。
また、光源にレーザ光を用いてガス成分の吸光度を測定するレーザ吸収分光法は、高い測定精度と感度の点から、混合ガス中の微量物質を分析する方法として広く用いられている。
一般に、光を吸収する物質を含む試料を光が透過する場合、入射光の光量と透過光の光量との関係は(1)式に示すLambert-Beerの法則で表されることが知られている。
ここでI0は入射光の光量[W]、I(z)は光路長z[m]の試料を透過する透過光の光量[W]、σは光吸収断面積[m2/molecule]、Nは光吸収する物質の分子密度[molcules/m3]であり、(1)式は光路長が大きいほど物質により吸収される光量が大きいことを示す。
また、吸収される光量と入射光量の比である光利用率ηは、(2)式で表される。
(2)式より、光路長zに比例して光利用率ηは増加し、光利用率が高いほど物質の光吸収による入射光と透過光の光量の変化が大きいことが分かる。
光反応の場合においては、光を吸収した分子が反応のポテンシャル障壁を乗り越えて分子結合を切断・再結合することにより、光反応が進行する。したがって、光反応速度は光利用率を増加させることによって大きくなる。また、分光分析においては、光利用率が高いほど高感度で物質を検出することができる。
このように、光反応もしくは分光分析のいずれにおいても光利用率を増加させることが重要となる。
光利用率を増加させる代表的な方法として、照射対象物質の分子数の増加、適切な光波長の選択、入射光量の増加、光の反射等を利用した長光路化等が挙げられる。
これらの方法のうち、長光路化を実現するものとして、ミラー等の反射面によりレーザ光を複数回反射させる多重反射容器が知られており、その代表例としてヘリオットセルがある。
ヘリオットセルは、凹状反射面を有する一対の球面ミラーを互いの光軸が一致するように対向して配置し、球面ミラーの一方側に開けられた穴、もしくは球面ミラー間に配置したガイドミラーにより、球面ミラー間に入射光を導入し、対向する球面ミラー間で入射光を多重反射させるように構成したものである(非特許文献1)。
球面ミラーの凹状反射面においてレーザが照射されている箇所をスポットと呼び、該凹状反射面上にてレーザ光が多重反射している場合、該凹状反射面上における複数個のスポットは円状あるいは楕円状のパターンを示す。このパターンをスポットパターンと呼び、適切な露光特性を有するカメラ等を用いて前記凹状反射面上のスポットからの拡散光を撮影することにより、スポットパターンの確認や前記凹状反射面上におけるレーザ光の反射回数を計測することができる。
さらに、ヘリオットセルに備えられる球面ミラーの凹状反射面において、光軸に直交するx軸方向とy軸方向の曲率半径rx、ryが異なる場合、反射光の焦点距離はx軸方向とy軸方向で異なり、非点収差となる。非点収差の凹状反射面を有する一対の球面ミラー間でレーザ光を多重反射させると、凹状反射面におけるスポットはリサージュパターンを示すことが知られている(非特許文献2)。このように、反射光が非点収差である多重反射容器を特に非点収差型ヘリオットセルと呼び、非点収差のないヘリオットセルを通常型ヘリオットセルと呼ぶ。
非点収差型ヘリオットセルは、通常型ヘリオットセルに比べると、反射面の単位面積あたりの反射回数を多くすることができ、光反射に使用されないミラー面積を少なくできるため、ミラーを有効に使用でき、必要な光路長を得るためのセル容積を減らすことができるといった利点を有する。
非点収差型ヘリオットセルを構成する方法として、以下の2つの方法が知られている。
方法1:球面ミラーの外周部を挟んで固定する2枚以上の部材をボルトにより締め付け、該ボルトにより球面ミラーに対して応力を加えることにより、球面ミラーの反射面を変形させる方法(非特許文献2)。
方法2:光軸に直交するx軸方向とy軸方向の曲率半径ry及びryが異なる凹状反射面を有する一対の球面ミラーを予め製造し、互いに対向するように配置する方法(非特許文献3)。
特開2008−73673号公報 特開2006−272090号公報
D. Herriott,H. Kogelnik and R.Kompfner,Applied Optics,Vol. 3,No. 4,1964,pp. 523-526 D. Herriott and H. Shulte,Applied Optics,Vol. 4,No. 8,1965,pp. 883-889 J. B. McManus,P. L. Kebabian and M. S. Zahniser,Applied Optics,Vol. 34,No. 18,1995,pp. 3336-3348
ヘリオットセルを非点収差型にする前記2つの方法には、以下に示す課題がある。
前記の方法1に関しては、球面ミラーを固定するボルトの締め付けトルク管理だけで反射面の変形量を再現することが極めて困難であり、スポットパターンを確認しながらボルト締め付けトルクを調整する必要があり、調整作業が難しく手間である。
また、周囲環境の温度変化により、ボルトが緩むことや、球面ミラーを固定する部材と球面ミラーとの間に熱応力が発生することにより、反射面の変形量が変化する恐れがある。
さらに、ボルトを締め付けるための工具スペースをヘリオットセル内に確保する必要がある。
前記の方法2に関しては、反射面のx軸方向とy軸方向における曲率半径や対向する一対の球面ミラー間の距離を10-4以下の寸法精度で製作する必要があり、厳しい製作精度が要求される。
さらに、前記の方法1と同様に、周囲環境の温度変化によって、球面ミラーを固定する部材と球面ミラーとの間に発生する熱応力により反射面が変形する恐れがある。
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、周囲環境温度による影響を受けることなく、球面ミラーの凹状反射面の変形を簡便な方法により調整することで、入射したレーザ光の反射回数を増加することができる多重反射容器を提供することを目的とする。
(1)本発明に係る多重反射容器は、レーザ光を複数回反射するために対向して設けられた一対の凹状球面ミラーを内装し、光反応もしくは分光分析に用いる多重反射容器であって、前記球面ミラーの外周部を保持して固定する保持固定部材と、該保持固定部材を所定の温度に冷却する冷却機構を備え、該冷却機構によって前記保持固定部材を冷却することで、前記球面ミラーに対して応力を付与し、該応力により前記球面ミラーの反射面を変形させて焦点距離を変化させることを特徴とするものである。
(2)上記(1)に記載のものにおいて、前記冷却機構は所定の温度に調節された熱媒体を流通させることにより前記保持固定部材を冷却することを特徴とするものである。
(3)上記(2)に記載のものにおいて、前記保持固定部材は、前記熱媒体が流通する流路を有し、前記冷却機構により前記保持固定部材を冷却することを特徴とするものである。
(4)上記(2)に記載のものにおいて、前記冷却機構は、前記熱媒体が流通する流路を備える冷却部材を有し、該冷却部材を前記保持固定部材と当接させて、熱伝導によって前記保持固定部材を冷却することを特徴とするものである。
(5)上記(2)に記載のものにおいて、前記冷却機構は、前記熱媒体が流通する流路を備える冷却部材を有し、該冷却部材を前記多重反射容器の外壁面に設置し、前記保持固定部材を間接的に冷却することを特徴とするものである。
(6)上記(1)乃至(5)のいずれかに記載のものにおいて、前記保持固定部材は、椀型又は円筒形状であり、前記球面ミラーの外周部を保持することを特徴とするものである。
(7)上記(1)乃至(6)のいずれかに記載のものにおいて、前記保持固定部材と前記球面ミラーとの間の隙間を、周方向において異なるように調整し、前記冷却機構によって前記保持固定部材を冷却することで前記球面ミラーに付与される前記応力が周方向において異なる構造としたことを特徴とするものである。
本発明においては、レーザ光を複数回反射するために対向して設けられる一対の球面ミラーを内装し、光反応もしくは分光分析に用いる多重反射容器であって、前記球面ミラーの外周部を保持して固定する保持固定部材と、該保持固定部材を所定の温度を冷却する冷却機構を備え、該冷却機構によって前記保持固定部材を冷却することで、前記球面ミラーに対して応力を付与し、該応力により前記球面ミラーの凹状反射面を変形させて焦点距離を変化させることにより、周囲環境温度の影響を受けることなく凹状反射面からの反射光を非点収差化することが容易となり、前記多重反射容器に入射されたレーザ光の反射回数を増加させることができ、コンパクトで長光路を確保できる。
本発明の一実施の形態に係る多重反射容器の説明図である。 本発明に係る球面ミラーにおける保持固定部材の説明図である。 本発明に係る球面ミラーの曲率半径の説明図である。 本発明の他の実施の形態に係る多重反射容器の説明図である。 本発明の実施例に係る多重反射容器の説明図である。 本発明の比較例に係る球面ミラーの反射面上におけるスポットパターンである。 本発明例に係る球面ミラーの反射面上におけるスポットパターンである。
[実施の形態1]
本発明の一実施の形態に係る多重反射容器を、図1〜図3に基づいて説明する。
多重反射容器1は、図1に示すように、両端に底部3bを備える容器本体3、球面ミラー5及び7、保持固定部材9、冷却部材11、調整構造体13、窓15、ガイドミラー17から構成され、保持固定部材9を冷却する冷却機構として熱媒体流路19、熱媒体入側流路21、熱媒体出側流路23、冷凍機25及び温度計27を備えている。
また、容器本体3には、ガス分析又は光反応を行う際にガスを流通させるためのガス流路入口29、ガス流路出口31が備えられている。
球面ミラー5及び7は凹状反射面を有し、椀型形状の保持固定部材9の内部に保持及び固定され、保持固定部材9は球面ミラー5と7の光軸が一致するように対向して調整構造体11に固定される。球面ミラー5及び7は、ガラス製もしくは銅やアルミ等の金属でよく、材質は問わない。
保持固定部材9は、図2に示すように、保持固定部材9の内部の一部に調整材33が設置されており、球面ミラー5又は7を保持及び固定した際に、球面ミラー5又は7の外周部5a又は7aと保持固定部材9との間には当接する部位と隙間が生じる部位が設けられる。保持固定部材9には、使用する温度域で脆性の起こしにくい材料が望ましい。
冷却部材11は、熱媒体流路19を内部に備えており、保持固定部材9に当接するように設置される。冷却部材11には熱伝導性の良い材料が望ましい。
調整構造体13は、球面ミラー5及び7のあおりや首振り方向、及び球面ミラー5及び7のミラー間距離を調整するために供されており、容器本体3内に設置される。
本実施の形態に係る多重反射容器1の動作を以下に説明する。
レーザ光は容器本体3に設けられた窓15より入射し、球面ミラー7の近傍に設けられたガイドミラー17で反射した後、球面ミラー5及び7間で多重反射する。球面ミラー5及び7において多重反射したレーザ光はガイドミラー17で反射し、再度窓15を通って容器本体3の外へと出射する。
保持固定部材9の冷却機構は、冷凍機25及び温度計27により所定の温度に設定された熱媒体を熱媒体入側流路21より熱媒体流路19へ供給することによって冷却部材11を冷却し、保持固定部材9から冷却部材11への熱伝導により冷却する。冷却部材11を冷却した熱媒体は、熱媒体出側流路23より排出される。これより、保持固定部材9は熱媒体に直接触れることなく、目標温度に冷却された冷却部材11により冷却される。そのため、冷凍機25には、冷却部材11の目標温度に応じて適切なものを選定する必要がある。
前記冷却機構により保持固定部材9を冷却すると、保持固定部材9は収縮する。このとき、球面ミラー5及び7の外周部5a及び7aは調整材33を介して保持固定部材9の内部に保持及び固定されているため、調整材33によって保持固定部材9の内部と球面ミラー5又は7の外周部5a又は7aとが当接する部位においては、球面ミラー5又は7の外周から中心へ向かう圧縮応力が付与される。一方、球面ミラー5又は7の外周部5a又は7aと保持固定部材9に隙間がある部位においては、球面ミラー5又は7に付与される前記圧縮応力は前記隙間によって緩和される。
例として、図2に示すように、球面ミラー5又は7の凹状反射面の光軸に直交するx軸方向とy軸方向において、保持固定部材9の内部のy軸方向の上部と下部にのみ調整材33を設置することによって、保持固定部材9のx軸方向とy軸方向の内径Dx及びDyを異なる保持固定部材9を前記冷却機構によりを冷却した場合、球面ミラー5又は7のy軸方向に対しては圧縮応力が付与されるのに対し、x軸方向に対しては球面ミラー5又は7と保持固定部材9との間に隙間があるため圧縮応力が緩衝される。
これにより、図3に示す球面ミラー5を例とすると、球面ミラー5の凹状反射面の変形は、該凹状反射面のx軸方向とy軸方向とで差異が生じ、x軸方向とy軸方向の曲率半径rx、ryが異なる。その結果、x軸方向とy軸方向の焦点距離fx、fyも異なる値となり、前記凹状反射面からの反射光は非点収差となって、球面ミラー5の凹状反射面上において多重反射されたレーザ光は非点収差型ヘリオットセルと同様のスポットパターンを示す。球面ミラー7の凹状反射面においても、上記の球面ミラー5と同様に非点収差型のスポットパターンが得られる。
以上より、本実施の形態に係る多重反射容器1においては、熱媒体により冷却部材11を冷却してミラーの反射面形状を変形させることで、厳しい製作精度が要求される非点収差ミラーを使用することなく、非点収差型ヘリオットセルと同様のスポットパターンを容易に得ることができる。
さらに、熱媒体の設定温度により前記スポットパターンの形状を調整できるとともに、周辺環境温度の変化の影響に対しては熱媒体の設定温度を変更することにより補正することができる。これにより、周囲環境温度の影響を排除することができ、従来の非点収差型ヘリオットセルにおいて課題であった反射面形状を調整するためのボルト締め付けトルクの管理や、前記ボルト締め付けの工具を使用するためのスペースの確保を必要としない。
上記の例ではミラーを非点収差型とするため、保持固定部材9の内部の一部に調整材33を設置し、ミラーの光軸に直交するx軸方向とy軸方向に付与する圧縮応力を個別に調整できるようにすることによって各方向の焦点距離を変化させている。適当な調整材33を入手できない場合は、保持固定部材9の内部を切削又は研磨加工し、内部の各方向の内径DxとDyを異なる値とすることによっても、調整材33を用いた場合と同様の効果を得ることができる。
また、上記の説明において保持固定部材9は椀型形状であったが、円筒形状のものであっても、椀型形状のものと同様の効果が得られる。
さらに、本実施の形態において、保持固定部材9とは別に冷却部材11を設けた例を示したが、これによって、保持固定部材9には冷却した時の収縮性に優れ、使用温度域で脆性の起こしにくい材料を用い、冷却部材11には熱伝導性の良い材料を用いる等、優れた効果を得るために適した材料を選択することができるという利点を有する。ただし、保持固定部材9の内部に熱媒体流路19を設けて熱媒体を流通させることによって、保持固定部材9を直接冷却しても、保持固定部材9により保持及び固定される球面ミラー5又は7の凹状反射面を非点収差型にすることは可能である。
また、保持固定部材9を冷却する冷却部材11は内部に熱媒体を流通させる熱媒体流路19のみを有するものであったが、前記熱媒体を流通させる熱媒体流路19の他に、冷却部材11を加温するために別の熱媒体を流通させて保持固定部材9の温度を微調整する別の流路を有するものとしてもよい。
[実施の形態2]
本発明の他の実施の形態は、図4に示す多重反射容器41に関するものであり、容器本体3の底部3bの外壁面に取り付けられた分割冷却部材43及び45により間接的に保持固定部材9を冷却する構造としたものである。
図4において、図1と同一部分には同一の符号を付しており、以下その説明を省略する。
分割温調部材43及び45は、銅管を容器本体3の外壁周囲に複数回巻きつけ、銀ろうつけあるいは熱伝セメントにより固定したものである。さらに、容器本体3は発泡ウレタンなどの断熱材49により断熱される。
多重反射容器41において、熱媒体は熱媒体入側流路21から供給され、分割冷却部材43内を通過し、分割冷却部材43ならびに調整構造体13全体を冷却する。さらに、分割冷却材43から流出する熱媒体は熱媒体流路47を経て分割冷却部材45に供給され、熱媒体出側流路23から排出される。
このように低温の熱媒体を循環させることで、多重反射容器41の壁面内部の熱伝導や、内壁面と内部ガスとの間の対流伝熱等により、保持固定部材9が冷却される。
図4に示す構造の多重反射容器41においても、実施の形態1に係る多重反射容器1と同様に、保持固定部材9の冷却により非点収差化したスポットパターンを得ることができる。
本発明の他の実施の形態に係る多重反射容器41は、実施の形態1に比べて冷却対象となる保持固定部材9と熱媒体との間の熱抵抗が大きいため、冷却に要する時間が長くなるものの、冷却部材11を容器本体3に内装するものではないため、多重反射容器41の内容積及び表面積を減らすことができるというメリットがある。
多重反射容器の容積と表面積を減少することは、容器表面からのアウトガスを減らすことにつながるため、多重反射容器を反応器や分析機器として用いる際の待ち時間を削減することができる。
本発明の多重反射容器によるレーザ光の反射回数増加の効果を確認するための具体的な実験を行ったので、その結果について以下に説明する。
実験は、図5に示す多重反射容器51にレーザ光を入射し、球面ミラー5の反射面におけるスポットパターンを観察するというものである。
多重反射容器51は実施の形態1で示した多重反射容器1に、スポットパターンの確認及び撮影用の観察窓53とカメラ55を追加して設置したものである。
観察窓53にはコバール窓を用い、カメラ55には市販のデジタルカメラを用いた。カメラ55は、レーザ光の波長に対して感度を有し長時間露光の撮影が可能であればよい。
球面ミラー5及び7は外径75.0mm、反射面の光軸に直交するx軸方向及びy軸方向の焦点距離が共に500mmのガラス製ミラーを用い、球面ミラー5と7の間の距離は1mとした。
レーザ光は波長1μmの半導体レーザを光源として、窓15より多重反射容器41内に入射する。窓15にはレーザ光の乱反射を防ぐため、両面にARコーティングを施した石製窓を用いた。また、ガイドミラー17には45°ロッドミラーを用いた。
冷却部材11は銅合金製の材料を用い、保持固定部材9に直接接触して冷却できるようネジで取り付けた。
熱媒体は冷凍機25により所定の目標温度まで冷却され、多重反射容器51に供給される。本実施例では、冷凍機25には-120℃以下に冷却できる能力を持つHFC冷凍機を用いた。冷却部材11の内部に設けた熱媒体流路19と接続する熱媒体入側流路21及び熱媒体出側流路23は結露防止のため発泡ウレタン材で断熱した。
本実施例において、保持固定部材9にはSUS304製で椀型形状のものを使用した。
保持固定部材9を常温から-120℃まで冷却した時の収縮量は次式で算出される。
ΔL=πD×α×ΔT
ここでΔLは固定部材の内円周の変化量[mm]、Dは固定部材の代表内径[mm]、αは部材の線膨張率[℃-1]、ΔTは温度変化量[℃]である。
SUS304の線膨張率は1.73×10-5-1であるので、内径D=75.0mmの保持固定部材9を常温25℃から-120℃まで冷却したときの収縮量は、上式の関係から、次式で与えられる。
π×75.0×1.73×10-5×{25-(-120)}=0.591mm
該収縮量は保持固定部材9の内円周の変化量であり、内径の変化量に換算すると約0.2mmの収縮に相当する。
上記の収縮量の計算結果に基づいて、本実施例においては、保持固定部材9を内径75.2mmとして製作し、保持固定部材9と球面ミラー5又は7との間に設置する調整材33を厚さ0.1mm、SUS304製の薄板とし、図2に示すようにy軸方向の上部及び下部に設置した。この場合、保持固定部材9と球面ミラー5及び7との間にはy軸方向には隙間がないのに対し、x方軸向には収縮による内径の減少を緩衝する隙間があるため、球面ミラー5及び7の反射面はy軸方向にのみ圧縮応力が付与されて変形する。その結果、x軸方向とy軸方向の曲率半径rx、ryは異なるため、焦点距離fx、fyも異なり、球面ミラー5及び7による反射光は非点収差となる。
図6に、冷却部材11を冷却する熱媒体を循環せずに、常温でレーザ光を多重反射容器51に入射した場合の、球面ミラー5の反射面上におけるスポットパターンを撮影した画像を示す。
画像中央付近にて円状に広がるのがスポットパターンである。また、画像左上に円弧状に明るくなっている箇所は、多重反射容器51の内部における散乱光がカメラ55に写り込んだものである。
撮影したスポットパターンからスポット数を測定すると、球面ミラー5における反射回数は68回であった。
図7に、-120℃に設定した熱媒体を循環して保持固定部材9を冷却した場合の、球面ミラー5の凹状反射面上におけるスポットパターンを撮影した画像を示す。
図6に示した冷却前のスポットパターンと比べて、保持固定部材9を冷却して球面ミラー5及び7の凹状反射面を変形させることによりスポット数が飛躍的に増加している。また、図7に示すスポットパターンは、非特許文献3のHerriottらの実験でも出現したスポットパターンと類似しており、本実施例に係る多重反射容器51に入射したレーザ光の多重反射が非点収差化したことを示すものである。
図7においては、スポット同士が重なるものがあるため、反射回数を正確に計測することは困難であるが、判別できるスポット数を計測すると、少なくとも140回以上の反射回数が確認できた。さらに、図7に示すスポットパターンは、冷凍機25を一度停止し、保持固定部材9の温度を常温まで回復させた後に再度冷却しても、同じ熱媒体の設定温度において同じスポットパターンが得られる再現性が確認された。
以上より、球面ミラーの外周部を保持して固定する保持固定部材を冷却機構によって冷却することで、前記球面ミラーに対して応力を付与し、該応力により前記球面ミラーの凹状反射面を変形させて焦点距離を変化させることにより、入射されたレーザ光を前記凹状反射面において多重反射させ、光路長を容易に増加させることができる。
1 多重反射容器
3 容器本体
3a 底部
5 球面ミラー
5a 外周部
7 球面ミラー
7a 外周部
9 保持固定部材
11 冷却部材
13 調整構造体
15 窓
17 ガイドミラー
19 熱媒体流路
21 熱媒体入側流路
23 熱媒体出側流路
25 冷凍機
27 温度計
29 ガス流路入口
31 ガス流路出口
33 調整材
41 多重反射容器
43 分割冷却部材
45 分割冷却部材
47 熱媒体流路
49 断熱材
51 多重反射容器
53 観察窓
55 カメラ

Claims (7)

  1. レーザ光を複数回反射するために対向して設けられた一対の凹状球面ミラーを内装し、光反応もしくは分光分析に用いる多重反射容器であって、
    前記球面ミラーの外周部を保持して固定する保持固定部材と、
    該保持固定部材を所定の温度に冷却する冷却機構を備え、
    該冷却機構によって前記保持固定部材を冷却することで、前記球面ミラーに対して応力を付与し、該応力により前記球面ミラーの反射面を変形させて焦点距離を変化させることを特徴とする多重反射容器。
  2. 前記冷却機構は所定の温度に調節された熱媒体を流通させることにより前記保持固定部材を冷却することを特徴とする請求項1記載の多重反射容器。
  3. 前記保持固定部材は、前記熱媒体が流通する流路を有し、前記冷却機構により前記保持固定部材を冷却することを特徴とする請求項2記載の多重反射容器。
  4. 前記冷却機構は、前記熱媒体が流通する流路を備える冷却部材を有し、該冷却部材を前記保持固定部材と当接させて、熱伝導によって前記保持固定部材を冷却することを特徴とする請求項2記載の多重反射容器。
  5. 前記冷却機構は、前記熱媒体が流通する流路を備える冷却部材を有し、該冷却部材を前記多重反射容器の外壁面に設置し、前記保持固定部材を間接的に冷却することを特徴とする請求項2記載の多重反射容器。
  6. 前記保持固定部材は、椀型又は円筒形状であり、前記球面ミラーの外周部を保持することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の多重反射容器。
  7. 前記保持固定部材と前記球面ミラーとの間の隙間を、周方向において異なるように調整し、前記冷却機構によって前記保持固定部材を冷却することで前記球面ミラーに付与される前記応力が周方向において異なる構造としたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の多重反射容器。
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