以下、本発明の詳細を説明する。
(エポキシ樹脂材料)
本発明に係るエポキシ樹脂材料は、エポキシ樹脂と、硬化剤と、重量平均分子量が30000以上である有機化合物(以下、有機化合物Xと記載することがある)と、無機フィラーとを含む。上記有機化合物Xは、ポリイミド部位又はポリアミドイミド部位と、芳香族部位とを含む第1の構造単位を有する。上記有機化合物Xは、シリコーン部位と脂肪族部位とを含む第2の構造単位を有する。ポリイミド部位又はポリアミドイミド部位と芳香族部位とを含む第1の構造単位は、比較的硬い部分である。シリコーン部位と脂肪族部位とを含む第2の構造単位は、比較的柔らかい部分である。
本発明に係るエポキシ樹脂材料に含まれている無機フィラーを除く固形分(以下、固形分Aと記載することがある)100重量%中、上記有機化合物の含有量は0.5重量%以上、20重量%以下である。本発明に係るエポキシ樹脂材料に含まれている固形分(以下、固形分Bと記載することがある)100重量%中、上記無機フィラーの含有量は50重量%以上、85重量%以下である。
上記組成の採用により、特に、ポリイミド部位又はポリアミドイミド部位と芳香族部位とを有する第1の構造単位を有し、かつ重量平均分子量が30000以上である有機化合物Xの使用によって、熱による寸法変化が小さい硬化物を得ることが可能になる。上記有機化合物Xを用いた場合には、上記有機化合物Xを用いていなかったり、又は上記有機化合物Xではない他の有機化合物を用いていたりする場合と比較して、硬化物の熱による寸法変化を小さくすることができる。上記有機化合物Xは、比較的剛直な部位であるポリイミド部位又はポリアミドイミド部位を有するために、硬化物の熱膨張率が低くなり、結果的に硬化物の熱による寸法変化が小さくなる。上記有機化合物Xの使用は、硬化物の熱寸法安定性の向上に大きく寄与する。
また、上記組成の採用により、特に、シリコーン部位と脂肪族部位とを含む第2の構造単位を有し、かつ重量平均分子量が30000以上である有機化合物Xの使用によって、硬化物の反りを抑制できる。例えば、硬化物を用いた電子部品の反りが抑えられる。上記有機化合物Xが、比較的柔軟な部位であるシリコーン部位と脂肪族部位とを含む第2の構造単位を有するために、硬化物の反りを抑制する効果が得られる。上記有機化合物Xの使用は、硬化物の反りの抑制に大きく寄与する。
また、上記有機化合物Xの使用により、樹脂組成物であるエポキシ樹脂材料の塗工性及び成膜性を高めることもできる。
また、エポキシ樹脂と硬化剤とを含むエポキシ樹脂材料において、シリカなどの無機フィラーを多く配合することにより、硬化物の熱による寸法変化をより一層小さくすることができ、すなわち熱膨張率を低くすることができる。
本発明では、上記固形分B100重量%の上記無機フィラーの含有量が50重量%以上であるので、硬化物の熱による寸法変化がかなり小さくなる。
また、エポキシ樹脂と硬化剤と無機フィラーとを含む樹脂組成物において、溶剤を多く配合すると、樹脂組成物の粘度が低くなり、樹脂組成物を塗工したときに外観不良が発生しやすくなることがある。また、100μm以上の厚みに樹脂組成物を塗工することが困難である。これに対して、上記樹脂組成物に従来用いられているフェノキシ樹脂を配合することで、樹脂組成物の塗工性を高くすることは可能である。しかし、上記樹脂組成物がフェノキシ樹脂を含むと、硬化物の熱による寸法変化が大きくなる傾向がある。
これに対して、本発明では、特定の上記有機化合物Xが用いられているので、樹脂組成物の粘度が適度に高くなり、樹脂組成物の塗工性及び成膜性が高くなり、更に樹脂組成物を塗工した時に外観不良が生じ難くなる。さらに、硬化物の熱による寸法変化も小さくなり、硬化物の反りも抑えられる。また、上記有機化合物Xの分子量は比較的大きく、かつ上記有機化合物Xは上記第1,第2の構造単位を有するため、上記有機化合物Xを用いた場合には、強直な骨格のみを有するポリアミドイミド樹脂を用いた場合と比較して、特に比較的柔軟な部位である第2の構造単位に起因して、埋め込み性も良好になる。
また、エポキシ樹脂と硬化剤と無機フィラーとを含むBステージフィルムにおいて、エポキシ樹脂及び硬化剤の内の一方又は双方の分子量が1000以下であると、Bステージフィルムの溶融粘度を適度に低くすることができる。このため、樹脂組成物であるエポキシ樹脂材料の塗工性及び成膜性をより一層高めることができる。また、基板上にBステージフィルムをラミネートしたときに、無機フィラーが均一に存在しやすくなる。
本発明に係るエポキシ樹脂材料は、ペースト状であってもよく、フィルム状であってもよい。本発明に係るエポキシ樹脂材料は、樹脂組成物であってもよく、該樹脂組成物がフィルム状に成形されたBステージフィルムであってもよい。
以下、本発明に係るエポキシ樹脂材料に含まれているエポキシ樹脂、硬化剤、上記有機化合物X、及び無機フィラーなどの各成分の詳細を説明する。
[エポキシ樹脂]
上記エポキシ樹脂材料に含まれているエポキシ樹脂は特に限定されない。該エポキシ樹脂として、従来公知のエポキシ樹脂を使用可能である。該エポキシ樹脂は、少なくとも1個のエポキシ基を有する有機化合物をいう。エポキシ樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、アダマンタン骨格を有するエポキシ樹脂、トリシクロデカン骨格を有するエポキシ樹脂、及びトリアジン核を骨格に有するエポキシ樹脂等が挙げられる。
上記エポキシ樹脂は、ビフェニル骨格を有することが好ましく、ビフェニル型エポキシ樹脂であることが好ましい。上記エポキシ樹脂がビフェニル骨格を有することで、硬化物と金属層との接着強度がより一層高くなる。
粗化処理された硬化物の表面の表面粗さをより一層小さくし、硬化物と金属層との接着強度をより一層高くする観点からは、上記エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは90以上、より好ましくは100以上、好ましくは1000以下、より好ましくは800以下である。
上記エポキシ樹脂の分子量は1000以下であることが好ましい。この場合には、エポキシ樹脂材料における無機フィラーの含有量が50重量%以上であっても、流動性が高い樹脂組成物であるエポキシ樹脂材料が得られる。一方で、分子量が1000以下であるエポキシ樹脂と上記有機化合物Xとの併用により、エポキシ樹脂材料であるBステージフィルムの溶融粘度の低下が抑えられる。このため、Bステージフィルムを基板上にラミネートした場合に、無機フィラーを均一に存在させることができる。
上記エポキシ樹脂の分子量及び後述する硬化剤の分子量は、上記エポキシ樹脂又は硬化剤が重合体ではない場合、及び上記エポキシ樹脂又は硬化剤の構造式が特定できる場合は、当該構造式から算出できる分子量を意味する。また、上記エポキシ樹脂又は硬化剤が重合体である場合は、重量平均分子量を意味する。
[硬化剤]
上記エポキシ樹脂材料に含まれている硬化剤は特に限定されない。該硬化剤として、従来公知の硬化剤を使用可能である。硬化剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記硬化剤としては、シアネートエステル化合物(シアネートエステル硬化剤)、フェノール化合物(フェノール硬化剤)、アミン化合物(アミン硬化剤)、チオール化合物(チオール硬化剤)、イミダゾール化合物、ホスフィン化合物、酸無水物、活性エステル化合物及びジシアンジアミド等が挙げられる。なかでも、熱による寸法変化がより一層小さい硬化物を得る観点からは、上記硬化剤は、シアネートエステル化合物又はフェノール化合物であることが好ましい。上記硬化剤は、シアネートエステル化合物であることが好ましく、フェノール化合物であることも好ましい。上記硬化剤は、上記エポキシ樹脂のエポキシ基と反応可能な官能基を有することが好ましい。
粗化処理された硬化物の表面の表面粗さをより一層小さくし、硬化物と金属層との接着強度をより一層高くし、かつ硬化物の表面により一層微細な配線を形成する観点からは、上記硬化剤は、シアネートエステル化合物、フェノール化合物又は活性エステル化合物であることが好ましい。
上記シアネートエステル化合物の使用により、無機フィラーの含有量が多いBステージフィルムのハンドリング性が良好になり、硬化物のガラス転移温度がより一層高くなる。上記シアネートエステル化合物は特に限定されない。該シアネートエステル化合物として、従来公知のシアネートエステル化合物を使用可能である。上記シアネートエステル化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記シアネートエステル化合物としては、ノボラック型シアネートエステル樹脂、ビスフェノール型シアネートエステル樹脂、並びにこれらが一部三量化されたプレポリマー等が挙げられる。上記ノボラック型シアネートエステル樹脂としては、フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂及びアルキルフェノール型シアネートエステル樹脂等が挙げられる。上記ビスフェノール型シアネートエステル樹脂としては、ビスフェノールA型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールE型シアネートエステル樹脂及びテトラメチルビスフェノールF型シアネートエステル樹脂等が挙げられる。
上記シアネートエステル化合物の市販品としては、フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂(ロンザジャパン社製「PT−30」及び「PT−60」)、及びビスフェノール型シアネートエステル樹脂が三量化されたプレポリマー(ロンザジャパン社製「BA−230S」、「BA−3000S」、「BTP−1000S」及び「BTP−6020S」)等が挙げられる。
上記フェノール化合物の使用により、硬化物と金属層との接着強度がより一層高くなる。また、上記フェノール化合物の使用により、例えば、樹脂組成物の硬化物の表面上に設けられた銅の表面を黒化処理又はCz処理したときに、硬化物と銅との接着強度がより一層高くなる。
上記フェノール化合物は特に限定されない。該フェノール化合物として、従来公知のフェノール化合物を使用可能である。上記フェノール化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記フェノール化合物としては、ノボラック型フェノール、ビフェノール型フェノール、ナフタレン型フェノール、ジシクロペンタジエン型フェノール、アラルキル型フェノール及びジシクロペンタジエン型フェノール等が挙げられる。
上記フェノール化合物の市販品としては、ノボラック型フェノール(DIC社製「TD−2091」)、ビフェニルノボラック型フェノール(明和化成社製「MEH−7851」)、アラルキル型フェノール化合物(明和化成社製「MEH−7800」)、並びにアミノトリアジン骨格を有するフェノール(DIC社製「LA1356」及び「LA3018−50P」)等が挙げられる。
粗化処理された硬化物の表面の表面粗さをより一層小さくし、硬化物と金属層との接着強度をより一層高くし、かつ硬化物の表面により一層微細な配線を形成する観点からは、上記フェノール化合物は、ビフェニルノボラック型フェノール化合物、又はアラルキル型フェノール化合物であることが好ましい。
上記活性エステル化合物は特に限定されない。上記活性エステル化合物の市販品としては、DIC社製「HPC−8000」等が挙げられる。
粗化処理された硬化物の表面の表面粗さをより一層小さくし、硬化物と金属層との接着強度をより一層高くし、かつ硬化物の表面により一層微細な配線を形成し、かつ硬化剤によって良好な絶縁信頼性を付与する観点からは、上記硬化剤は、当量が250以下である硬化剤を含むことが好ましい。上記硬化剤の当量は、例えば、硬化剤がシアネートエステル化合物である場合にはシアネートエステル基当量を示し、硬化剤がフェノール化合物である場合にはフェノール性水酸基当量を示し、硬化剤が活性エステル化合物である場合には活性エステル基当量を示す。
上記硬化剤の分子量は1000以下であることが好ましい。この場合には、エポキシ樹脂材料における無機フィラーの含有量が50重量%以上であっても、流動性が高い樹脂組成物であるエポキシ樹脂材料が得られる。一方で、分子量が1000以下である硬化剤と上記有機化合物Xとの併用により、エポキシ樹脂材料であるBステージフィルムの溶融粘度の低下が抑えられる。このため、Bステージフィルムを基板上にラミネートした場合に、無機フィラーを均一に存在させることができる。
上記エポキシ樹脂材料に含まれている上記無機フィラーを除く固形分A100重量%中、上記エポキシ樹脂と上記硬化剤との合計の含有量は、好ましくは75重量%以上、より好ましくは80重量%以上、好ましくは99重量%以下、より好ましくは97重量%以下である。
上記エポキシ樹脂と上記硬化剤との合計の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、より一層良好な硬化物が得られ、溶融粘度を調整することができるために無機フィラーの分散性が良好になり、かつ硬化過程で、意図しない領域にBステージフィルムが濡れ拡がることを防止できる。さらに、硬化物の熱による寸法変化をより一層抑制できる。また、上記エポキシ樹脂と上記硬化剤との合計の含有量が上記下限未満であると、樹脂組成物又はBステージフィルムの回路基板の穴又は凹凸に対する埋め込みが困難になり、さらに無機フィラーが不均一に存在しやすくなる傾向がある。また、上記エポキシ樹脂と上記硬化剤との合計の含有量が上記上限を超えると、溶融粘度が低くなりすぎて硬化過程で、意図しない領域にBステージフィルムが濡れ拡がりやすくなる傾向がある。「固形分A」とは、エポキシ樹脂と硬化剤と上記有機化合物Xと必要に応じて配合される他の固形分との総和をいう。固形分Aには、無機フィラーは含まれない。「固形分」とは、不揮発成分であり、成形又は加熱時に揮発しない成分をいう。
エポキシ樹脂と硬化剤との配合比は特に限定されない。エポキシ樹脂と硬化剤との配合比は、エポキシ樹脂と硬化剤との種類により適宜決定される。
[無機フィラー]
上記エポキシ樹脂材料に含まれている無機フィラーは特に限定されない。該無機フィラーとして、従来公知の無機フィラーを使用可能である。上記無機フィラーは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記無機フィラーとしては、シリカ、タルク、クレイ、マイカ、ハイドロタルサイト、アルミナ、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウム及び窒化ホウ素等が挙げられる。粗化処理された硬化物の表面の表面粗さを小さくし、硬化物と金属層との接着強度をより一層高くし、かつ硬化物の表面により一層微細な配線を形成し、かつ硬化物により良好な絶縁信頼性を付与する観点からは、上記無機フィラーは、シリカ又はアルミナであることが好ましく、シリカであることがより好ましく、溶融シリカであることが更に好ましい。シリカの使用により、硬化物の線膨張率がより一層低くなり、かつ粗化処理された硬化物の表面の表面粗さが効果的に小さくなり、硬化物と金属層との接着強度が効果的に高くなる。シリカの形状は略球状であることが好ましい。
上記無機フィラーの平均粒子径は、好ましくは0.1μm以上、好ましくは20μm以下、より好ましくは1μm以下である。上記無機フィラーの平均粒子径として、50%となるメディアン径(d50)の値が採用される。上記平均粒子径は、レーザー回折散乱方式の粒度分布測定装置を用いて測定できる。
上記無機フィラーは、表面処理されていることが好ましく、カップリング剤により表面処理されていることがより好ましい。これにより、粗化処理された硬化物の表面の表面粗さがより一層小さくなり、硬化物と金属層との接着強度がより一層高くなり、かつ硬化物の表面により一層微細な配線が形成され、かつより一層良好な配線間絶縁信頼性及び層間絶縁信頼性を硬化物に付与することができる。
上記カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤及びアルミニウムカップリング剤等が挙げられる。上記シランカップリング剤としては、アミノシラン、イミダゾールシラン、ビニルシラン及びエポキシシラン等が挙げられる。
上記固形分B100重量%中、上記無機フィラーの含有量は50重量%以上、85重量%以下である。上記固形分B中の上記無機フィラーの含有量が50重量%以上であることで、硬化物の熱による寸法変化がかなり小さくなり、更に上記有機化合物Xの使用による硬化物の熱寸法安定性の向上効果が特に大きくなる。
上記固形分B100重量%中、上記無機フィラーの含有量は、より好ましくは55重量%以上、更に好ましくは60重量%以上、より好ましくは80重量%以下である。上記無機フィラーの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、粗化処理された硬化物の表面の表面粗さがより一層小さくなり、硬化物と金属層との接着強度がより一層高くなり、かつ硬化物の表面により一層微細な配線を形成することができると同時に、この無機フィラー量であれば金属銅並に硬化物の熱線膨張係数を低くすることも可能である。「固形分B」とは、エポキシ樹脂と硬化剤と上記有機化合物Xと無機フィラーと必要に応じて配合される固形分との総和をいう。「固形分」とは、不揮発成分であり、成形又は加熱時に揮発しない成分をいう。
(有機化合物X)
上記エポキシ樹脂材料は、重量平均分子量が30000以上である有機化合物Xを含む。上記有機化合物Xは、ポリイミド部位又はポリアミドイミド部位と、芳香族部位とを含む第1の構造単位を有する。上記有機化合物Xは、シリコーン部位と脂肪族部位とを含む第2の構造単位を有する。
上記有機化合物は、例えば、ポリイミド部位を有するポリイミド樹脂であるか、又はポリアミドイミド部位を有するポリアミドイミド樹脂である。上記有機化合物Xは、ポリイミド部位を有する有機化合物であることが好ましく、ポリイミド部位を有するポリイミド樹脂であることが好ましい。さらに、上記有機化合物Xは、ポリアミドイミド部位を有する有機化合物であることが好ましく、ポリアミドイミド部位を有する有機化合物であることが好ましい。
上記有機化合物Xは、上記第1の構造単位と第2の構造単位とが結合した有機化合物であることが好ましく、上記第1の構造単位と第2の構造単位とが連続して結合した有機化合物であることが好ましく、上記第1の構造単位と上記第2の構造単位とが交互に結合した有機化合物であることが好ましい。上記第1の構造単位をX上記第2の構造単位をYとしたときに、−X−Y−X−Y−のように、上記第1の構造単位と上記第2の構造単位とが交互に結合していることが好ましい。
上記芳香族部位としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、テトラセン環、クリセン環、トリフェニレン環、テトラフェン環、ピレン環、ペンタセン環、ピセン環及びペリレン環などを有する部位等が挙げられる。なかでも、上記芳香族部位は、ベンゼン環を含む部位であることがより好ましい。
上記シリコーン部位は、シロキサン結合を含むことが好ましい。上記シリコーン部位としては、具体的には、例えば、下記式(1)で示される構造を有する。
上記式(1)中、R1及びR2はそれぞれ、芳香族を含まないアルキル基又は水素原子を表す。上記芳香族を含まないアルキル基は、環状であってもよく、鎖状であってもよい。R1及びR2が芳香族を含まないアルキル基である場合には、該アルキル基は、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基であり、より好ましくはメチル基又はエチル基であり、特に好ましくはメチル基である。R1及びR2は、特に好ましくはメチル基である。
上記脂肪族部位は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、非環状であってもよく、環状であってもよい。上記脂肪族部位は、具体的には、直鎖状の−(CH2)n−で表すことができる。繰り返し単位nの数は、好ましくは2以上であり、より好ましくは5以上である。
上記有機化合物Xにおける上記第1の構造単位のmol数は、上記有機化合物Xにおける上記第2の構造単位のmol数よりも多いことが好ましい。この場合には、比較的剛直な第1の構造単位の割合が多いことから、硬化物の熱による寸法変化をより一層小さくすることができる。
さらに、上記有機化合物Xは、エポキシ樹脂、硬化剤(フェノール硬化剤、シアネート硬化剤、活性エステル硬化剤等)と反応性を有さないため、熱硬化過程で硬化収縮に伴う内部応力歪等が発生しない。このため、硬化物の反りが効果的に抑えられる。
上記有機化合物Xの重量平均分子量は、好ましくは300000以下、より好ましくは150000以下である。上記有機化合物Xの重量平均分子量が上記上限以下であると、上記有機化合物Xと他の成分との相溶性、並びに樹脂組成物であるエポキシ樹脂材料の塗工性及び成膜性がより一層高くなる。
上記固形分A100重量%中、上記有機化合物の含有量は0.5重量%以上、20重量%以下である。上記固形分A100重量%中、上記有機化合物Xの含有量は、好ましくは0.8重量%以上、より好ましくは3重量%以上、更に好ましくは5重量%以上、好ましくは10重量%以下である。上記有機化合物Xの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化物の熱による寸法変化をより一層抑制でき、硬化物の反りをより一層抑制できる。また、成膜性も向上し、樹脂組成物又はBステージフィルムの回路基板の穴又は凹凸に対する埋め込み性が良好になる。上記有機化合物Xの含有量が20重量部を超えると、エポキシ樹脂材料中の柔軟骨格部位が増加するために、熱膨張率の低減効果が得られなくなる傾向がある。また、上記有機化合物Xの含有量が20重量部を超えると、エポキシ樹脂材料中の比較的分子量が大きい成分の含有量が相対的に多くなることから、埋め込み性も悪くなる傾向がある。
[他の成分及びエポキシ樹脂材料の詳細]
上記エポキシ樹脂材料は、必要に応じて硬化促進剤を含んでいてもよい。硬化促進剤の使用により、エポキシ樹脂材料の硬化速度がより一層速くなる。エポキシ樹脂材料を速やかに硬化させることで、硬化物の架橋構造が均一になると共に、未反応の官能基数が減り、結果的に架橋密度が高くなる。該硬化促進剤は特に限定されず、従来公知の硬化促進剤を使用可能である。上記硬化促進剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール化合物、リン化合物、アミン化合物及び有機金属化合物等が挙げられる。
上記イミダゾール化合物としては、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール及び2−フェニル−4−メチル−5−ジヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
上記リン化合物としては、トリフェニルホスフィン等が挙げられる。
上記アミン化合物としては、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジエチレンテトラミン、トリエチレンテトラミン及び4,4−ジメチルアミノピリジン等が挙げられる。
上記有機金属化合物としては、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト、ビスアセチルアセトナートコバルト(II)及びトリスアセチルアセトナートコバルト(III)等が挙げられる。
硬化物の絶縁信頼性を高める観点からは、上記硬化促進剤は、イミダゾール化合物であることが特に好ましい。
上記硬化促進剤の含有量は特に限定されない。エポキシ樹脂材料を効率的に硬化させる観点からは、上記固形分A100重量%中、上記硬化促進剤の含有量は好ましくは0.01重量%以上、好ましくは3重量%以下である。
耐衝撃性、耐熱性、樹脂の相溶性及び作業性等の改善を目的として、エポキシ樹脂材料には、カップリング剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線劣化防止剤、消泡剤、増粘剤、揺変性付与剤及び上述した樹脂以外の他の樹脂等を添加してもよい。
上記カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤及びアルミニウムカップリング剤等が挙げられる。上記シランカップリング剤としては、ビニルシラン、アミノシラン、イミダゾールシラン及びエポキシシラン等が挙げられる。
上記他の樹脂としては、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ジビニルベンジルエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ベンゾオキサゾール樹脂、ビスマレイミド樹脂及びアクリレート樹脂等が挙げられる。
(Bステージフィルムであるエポキシ樹脂材料)
上記樹脂組成物をフィルム状に成形する方法としては、例えば、押出機を用いて、樹脂組成物を溶融混練し、押出した後、Tダイ又はサーキュラーダイ等により、フィルム状に成形する押出成形法、樹脂組成物を有機溶剤等の溶剤に溶解又は分散させた後、キャスティングしてフィルム状に成形するキャスティング成形法、並びに従来公知のその他のフィルム成形法等が挙げられる。なかでも、薄型化に対応可能であることから、押出成形法又はキャスティング成形法が好ましい。フィルムにはシートが含まれる。
上記樹脂組成物をフィルム状に成形し、熱による硬化が進行し過ぎない程度に、例えば90〜200℃で1〜180分間加熱乾燥させることにより、Bステージフィルムを得ることができる。
上述のような乾燥工程により得ることができるフィルム状の樹脂組成物をBステージフィルムと称する。上記Bステージフィルムは、半硬化状態にある半硬化物である。半硬化物は、完全に硬化しておらず、硬化がさらに進行され得る。
上記Bステージフィルムは、プリプレグではないことが好ましい。上記Bステージフィルムがプリプレグではない場合には、ガラスクロスなどに沿ってマイグレーションが生じることがなくなる。また、Bステージフィルムをラミネート又はプレキュアする際に、表面にガラスクロスに起因する凹凸が生じることがなくなる。また、本発明に係るエポキシ樹脂材料をプリプレグを含まないBステージフィルムとすることで、硬化物の熱による寸法変化が小さくなり、形状保持性が高くなり、セミアディティブプロセス適性が高くなる。
上記樹脂組成物は、基材と、該基材の一方の表面に積層されたBステージフィルムとを備える積層フィルムを形成するために好適に用いることができる。積層フィルムのBステージフィルムが、上記樹脂組成物により形成される。
上記積層フィルムの上記基材としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム及びポリブチレンテレフタレートフィルムなどのポリエステル樹脂フィルム、ポリエチレンフィルム及びポリプロピレンフィルムなどのオレフィン樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、銅箔及びアルミニウム箔などの金属箔等が挙げられる。上記基材の表面は、必要に応じて、離型処理されていてもよい。
上記エポキシ樹脂材料を回路の絶縁層として用いる場合、エポキシ樹脂材料により形成された層の厚さは、回路を形成する導体層の厚さ以上であることが好ましい。上記エポキシ樹脂材料により形成された層の厚さは、好ましくは5μm以上、好ましくは200μm以下である。
(プリント配線板)
上記エポキシ樹脂材料は、プリント配線板において絶縁層を形成するために好適に用いられる。
上記プリント配線板は、例えば、上記樹脂組成物により形成されたBステージフィルムを用いて、該Bステージフィルムを加熱加圧成形することにより得られる。
上記Bステージフィルムに対して、片面又は両面に金属箔を積層できる。上記Bステージフィルムと金属箔とを積層する方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、平行平板プレス機又はロールラミネーター等の装置を用いて、加熱しながら又は加熱せずに加圧しながら、上記Bステージフィルムを金属箔に積層できる。
(銅張り積層板及び多層基板)
上記エポキシ樹脂材料は、銅張り積層板を得るために好適に用いられる。上記銅張り積層板の一例として、銅箔と、該銅箔の一方の表面に積層されたBステージフィルムとを備える銅張り積層板が挙げられる。この銅張り積層板のBステージフィルムが、本発明に係るエポキシ樹脂材料により形成される。
上記銅張り積層板の上記銅箔の厚さは特に限定されない。上記銅箔の厚さは、1〜50μmの範囲内であることが好ましい。また、エポキシ樹脂材料を硬化させた硬化物層と銅箔との接着強度を高めるために、上記銅箔は微細な凹凸を表面に有することが好ましい。凹凸の形成方法は特に限定されない。上記凹凸の形成方法としては、公知の薬液を用いた処理による形成方法等が挙げられる。
また、本発明に係るエポキシ樹脂材料は、多層基板を得るために好適に用いられる。上記多層基板の一例として、回路基板と、該回路基板の表面上に積層された硬化物層とを備える多層基板が挙げられる。この多層基板の硬化物層が、上記エポキシ樹脂材料を硬化させることにより形成される。上記硬化物層は、回路基板の回路が設けられた表面上に積層されていることが好ましい。上記硬化物層の一部は、上記回路間に埋め込まれていることが好ましい。
上記多層基板では、上記硬化物層の上記回路基板が積層された表面とは反対側の表面が粗化処理されていることが好ましい。
粗化処理方法は、従来公知の粗化処理方法を用いることができ特に限定されない。上記硬化物層の表面は、粗化処理の前に膨潤処理されていてもよい。
また、上記多層基板は、上記硬化物層の粗化処理された表面に積層された銅めっき層をさらに備えることが好ましい。
また、上記多層基板の他の例として、回路基板と、該回路基板の表面上に積層された硬化物層と、該硬化物層の上記回路基板が積層された表面とは反対側の表面に積層された銅箔とを備える多層基板が挙げられる。上記硬化物層及び上記銅箔が、銅箔と該銅箔の一方の表面に積層されたBステージフィルムとを備える銅張り積層板を用いて、上記Bステージフィルムを硬化させることにより形成されていることが好ましい。さらに、上記銅箔はエッチング処理されており、銅回路であることが好ましい。
上記多層基板の他の例として、回路基板と、該回路基板の表面上に積層された複数の硬化物層とを備える多層基板が挙げられる。上記複数層の硬化物層の内の少なくとも1層がが、上記エポキシ樹脂材料を硬化させることにより形成される。上記多層基板は、上記エポキシ樹脂材料を硬化させることにより形成されている上記硬化物層の少なくとも一方の表面に積層されている回路をさらに備えることが好ましい。
図1に、本発明の一実施形態に係るエポキシ樹脂材料を用いた多層基板を模式的に部分切欠正面断面図で示す。
図1に示す多層基板11では、回路基板12の上面12aに、複数層の硬化物層13〜16が積層されている。硬化物層13〜16は、絶縁層である。回路基板12の上面12aの一部の領域には、金属層17が形成されている。複数層の硬化物層13〜16のうち、回路基板12側とは反対の外側の表面に位置する硬化物層16以外の硬化物層13〜15には、上面の一部の領域に金属層17が形成されている。金属層17は回路である。回路基板12と硬化物層13の間、及び積層された硬化物層13〜16の各層間に、金属層17がそれぞれ配置されている。下方の金属層17と上方の金属層17とは、図示しないビアホール接続及びスルーホール接続の内の少なくとも一方により互いに接続されている。
多層基板11では、硬化物層13〜16が、本発明に係るエポキシ樹脂材料を硬化させることにより形成されている。本実施形態では、硬化物層13〜16の表面が粗化処理されているので、硬化物層13〜16の表面に図示しない微細な孔が形成されている。また、微細な孔の内部に金属層17が至っている。また、多層基板11では、金属層17の幅方向寸法(L)と、金属層17が形成されていない部分の幅方向寸法(S)とを小さくすることができる。また、多層基板11では、図示しないビアホール接続及びスルーホール接続で接続されていない上方の金属層と下方の金属層との間に、良好な絶縁信頼性が付与されている。
(粗化処理及び膨潤処理)
本発明に係るエポキシ樹脂材料は、粗化処理される硬化物を得るために用いられることが好ましい。上記硬化物には、更に硬化が可能な予備硬化物も含まれる。
本発明に係るエポキシ樹脂材料を予備硬化させることにより得られた予備硬化物の表面に微細な凹凸を形成するために、予備硬化物は粗化処理されることが好ましい。粗化処理の前に、予備硬化物は膨潤処理されることが好ましい。硬化物は、予備硬化の後、かつ粗化処理される前に、膨潤処理されており、さらに粗化処理の後に硬化されていることが好ましい。ただし、予備硬化物は、必ずしも膨潤処理されなくてもよい。
上記膨潤処理の方法としては、例えば、エチレングリコールなどを主成分とする化合物の水溶液又は有機溶媒分散溶液などにより、予備硬化物を処理する方法が用いられる。膨潤処理に用いる膨潤液は、一般にpH調整剤などとして、アルカリを含む。膨潤液は、水酸化ナトリウムを含むことが好ましい。具体的には、例えば、上記膨潤処理は、40重量%エチレングリコール水溶液等を用いて、処理温度30〜85℃で1〜30分間、予備硬化物を処理することにより行なわれる。上記膨潤処理の温度は50〜85℃の範囲内であることが好ましい。上記膨潤処理の温度が低すぎると、膨潤処理に長時間を要し、更に硬化物と金属層との接着強度が低くなる傾向がある。
上記粗化処理には、例えば、マンガン化合物、クロム化合物又は過硫酸化合物などの化学酸化剤等が用いられる。これらの化学酸化剤は、水又は有機溶剤が添加された後、水溶液又は有機溶媒分散溶液として用いられる。粗化処理に用いられる粗化液は、一般にpH調整剤などとしてアルカリを含む。粗化液は、水酸化ナトリウムを含むことが好ましい。
上記マンガン化合物としては、過マンガン酸カリウム及び過マンガン酸ナトリウム等が挙げられる。上記クロム化合物としては、重クロム酸カリウム及び無水クロム酸カリウム等が挙げられる。上記過硫酸化合物としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム及び過硫酸アンモニウム等が挙げられる。
上記粗化処理の方法は特に限定されない。上記粗化処理の方法として、例えば、30〜90g/L過マンガン酸又は過マンガン酸塩溶液及び30〜90g/L水酸化ナトリウム溶液を用いて、処理温度30〜85℃及び1〜30分間の条件で、1回又は2回、予備硬化物を処理する方法が好適である。上記粗化処理の温度は50〜85℃の範囲内であることが好ましい。
膨潤液を用いて膨潤処理し、次に粗化液を用いて粗化処理したときに、粗化処理された硬化物の表面の算術平均粗さRaが、50nm以上、350nm以下であることが好ましい。この場合には、硬化物と金属層又は配線との接着強度が高くなり、更に硬化物層の表面により一層微細な配線を形成することができる。
(デスミア処理)
また、本発明に係るエポキシ樹脂材料を予備硬化させることにより得られた予備硬化物又は硬化物に、貫通孔が形成されることがある。上記多層基板などでは、貫通孔として、ビア又はスルーホール等が形成される。例えば、ビアは、CO2レーザー等のレーザーの照射により形成できる。ビアの直径は特に限定されないが、60〜80μm程度である。上記貫通孔の形成により、ビア内の底部には、硬化物層に含まれている樹脂成分に由来する樹脂の残渣であるスミアが形成されることが多い。
上記スミアを除去するために、硬化物層の表面は、デスミア処理されることが好ましい。デスミア処理が粗化処理を兼ねることもある。
上記デスミア処理には、上記粗化処理と同様に、例えば、マンガン化合物、クロム化合物又は過硫酸化合物などの化学酸化剤等が用いられる。これらの化学酸化剤は、水又は有機溶剤が添加された後、水溶液又は有機溶媒分散溶液として用いられる。デスミア処理に用いられるデスミア処理液は、一般にアルカリを含む。デスミア処理液は、水酸化ナトリウムを含むことが好ましい。
上記デスミア処理の方法は特に限定されない。上記デスミア処理の方法として、例えば、30〜90g/L過マンガン酸又は過マンガン酸塩溶液及び30〜90g/L水酸化ナトリウム溶液を用いて、処理温度30〜85℃及び1〜30分間の条件で、1回又は2回、予備硬化物又は硬化物を処理する方法が好適である。上記デスミア処理の温度は50〜85℃の範囲内であることが好ましい。
本発明に係るエポキシ樹脂材料の使用により、デスミア処理された硬化物の表面の表面粗さが十分に小さくなる。
以下、実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。
(エポキシ樹脂)
ビフェニル骨格含有エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC−3000H」、分子量1000以下)
(硬化剤)
アミノトリアジン骨格クレゾールノボラック硬化剤含有液(DIC社製「LA3018−50P」、分子量1000以下、固形分50重量%とプロピレングリコールモノメチルエーテル含有溶剤50重量%とを含む)
(硬化促進剤)
イミダゾール化合物(2−フェニル−4−メチルイミダゾール、四国化成工業社製「2P4MZ」)
(有機化合物X)
柔軟骨格含有ポリアミドイミド樹脂含有液(ニッポン高度紙工業社製「SOXR−C」、重量平均分子量40000、ポリアミドイミド部位と芳香族部位とを含む第1の構造単位及びシリコーン部位と脂肪族部位とを含む第2の構造単位を有する、固形分20重量%とシクロペンタノン溶剤80重量%とを含む、重量平均分子量約100000)
(他の有機化合物)
柔軟骨格を有さないポリイミド樹脂の含有液(ポリアミドイミドの剛直骨格のみを有し、シリコーン部位及び脂肪族部位を有さない高分子アミドイミド樹脂、ニッポン高度紙工業社製「SOXR−O」、固形分19重量%とNMP(N−メチルピロリドン)81重量%とを含む、重量平均分子量約100000)
(無機フィラー)
シリカ含有スラリー(アドマテックス社製「SC2050HNK」、平均粒子径0.5μmの溶融シリカを含む、固形分70重量%とシクロヘキサノン30重量%とを含む)
(他の成分)
レベリング剤(楠本化成社製「LF1980」、固形分50重量%と酢酸ビニル溶剤50重量%とを含む)
(実施例1)
上記シリカ含有スラリー(アドマテックス社製「SC2050HNK」)66.6重量部(固形分で46.6重量部)と、アミノトリアジン骨格クレゾールノボラック硬化剤含有液(DIC社製「LA3018−50P」)14.2重量部(固形分で7.1重量部)と、ビフェニル骨格含有エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC−3000H」)13.5重量部と、イミダゾール化合物(四国化成工業社製「2P4MZ」)0.2重量部と、柔軟骨格含有ポリアミドイミド樹脂含有液(ニッポン高度紙工業社製「SOXR−C」)5.5重量部(固形分で1.1重量部)と、レベリング剤(楠本化成社製「LF1980」)0.03重量部とを混合し、均一な液となるまで常温で攪拌し、樹脂組成物ワニスを得た。
離型処理された透明なポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(リンテック社製「PET5011 550」、厚み50μm)を用意した。このPETフィルムの離型処理された面上にアプリケーターを用いて、乾燥後の厚みが40μmとなるように、得られた樹脂組成物ワニスを塗工した。次に、100℃のギアオーブン内で2分間乾燥して、縦200mm×横200mm×厚み40μmの樹脂シートの未硬化物(Bステージフィルム)とポリエチレンテレフタレートフィルムとの積層フィルムを作製した。次に、積層フィルムからポリエチレンテレフタレートフィルムを剥がし、樹脂シートの未硬化物を180℃のギアオーブン内で80分間加熱して、樹脂シートの一次硬化物を作製した。
(実施例2〜4及び比較例1〜5)
使用した材料の種類及び配合量(重量部)を下記の表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、積層フィルム及び樹脂シートの一次硬化物を作製した。
(評価)
(1)平均線膨張率
得られた樹脂シートの一次硬化物を、190℃で3時間加熱して硬化させ、硬化物Aを得た。得られた硬化物Aを、3mm×25mmの大きさに裁断した。線膨張率計(セイコーインスツルメンツ社製「TMA/SS120C」)を用いて、引張り荷重3.3×10−2N、昇温速度5℃/分の条件で、裁断された硬化物Aの25〜150℃における平均線膨張率(α1)を測定した。平均線膨張率を下記の基準で判定した。
[平均線膨張率の判定基準]
○:平均線膨張率(α1)が25ppm/℃以下
×:平均線膨張率(α1)が25ppm/℃を超える
(2)埋め込み性
銅張り積層板(厚さ150μmのガラスエポキシ基板と厚さ35μmの銅箔との積層体)を用意した。銅箔をエッチング処理し、L/Sが50μm/50μm及び長さが1cmである銅パターンを26本作製し、凹凸基板を得た。
得られた樹脂シートの未硬化物(厚さ40μm)を凹凸基板の凹凸表面に重ねて、名機製作所製真空加圧式ラミネーター機(型番:MVLP−500)を用い、ラミネート圧0.4MPa及びラミネート温度90℃で20秒間ラミネートし、更にプレス圧力0.8MPa及びプレス温度90℃で20秒間プレスした。このようにして、凹凸基板上に樹脂シートの未硬化物が積層されている積層体を得た。
得られた積層体において、樹脂シートの未硬化物を170℃で60分間加熱した後、190℃で180分間さらに加熱して、硬化物を得た。
積層体の状態で、Veeco社製のWYKOを用いて、硬化物の上面の凹凸の値を測定した。具体的には、凹凸の隣り合う凹部部分と凸部部分との高低差の最大値を、凹凸の値として採用した。埋め込み性を下記の基準で判定した。
[埋め込み性の判定基準]
○:凹凸の値が0.3μm以下
△:凹凸の値が0.3μmを超え、0.5μm以下
×:凹凸の値が0.5μmを超える
(3)ピール強度
厚さ35μmの銅箔を用意し、銅箔をエッチング処理した。得られた樹脂シートの未硬化物(厚み40μm)を上記エッチング処理した銅箔に重ねて、名機製作所社製の真空加圧式ラミネーター機(型番:MVLP−500)を用い、ラミネート圧0.4MPa及びラミネート温度90℃で20秒間ラミネートし、更にプレス圧力0.8MPa及びプレス温度90℃で20秒間プレスした。このようにして、銅箔上に樹脂シートの未硬化物が積層されている積層体を得た。得られた積層体において、樹脂シートの未硬化物を170℃で60分加熱した後に190℃で180分加熱して、硬化物を得た。
得られた銅箔が積層された硬化物において、銅箔の表面に、10mm幅に切り欠きを入れた。その後、引張試験機(島津製作所社製「AG−5000B」)を用いて、クロスヘッド速度5mm/分の条件で、硬化物と銅箔とのピール強度を測定した。ピール強度を下記の基準で判定した。
[ピール強度の判定基準]
○○:ピール強度が5.5N/cmを超える
○:ピール強度が4.9N/cmを超え、5.5N/cm以下
×:ピール強度が4.9N/cm以下
(4)反り
得られた樹脂シートの未硬化物(厚み40μm)を50mm×50mmの大きさに裁断した。裁断された樹脂シートの未硬化物を厚み100μmの銅板に重ねて、名機製作所社製の真空加圧式ラミネーター機(型番:MVLP−500)を用い、ラミネート圧0.4MPa及びラミネート温度90℃で20秒間ラミネートし、更にプレス圧力0.8MPa及びプレス温度90℃で20秒間プレスした。このようにして、銅板上に樹脂シートの未硬化物が積層されている積層体を得た。
得られた積層体において、樹脂シートの未硬化物を170℃で60分加熱した後に190℃で180分加熱して、硬化物を得た。銅板が下側かつ硬化物が上側となるように、積層体を平坦なガラスの上に置き、4つの角がどの程度反っているかを測定した。平坦なガラスの上面からの4つの角までの各距離を反り量とし、4つの角の反り量の平均値を求めた。反りを下記の基準で判定した。
[反りの判定基準]
○:反り量が2mm以下
×:反り量が2mmを超える
(5)成膜性
アプリケーターを用いてPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムの離型処理された面上に得られた樹脂ワニスを塗工した。100℃の恒温器(エスペック社製)内で2分間乾燥し、溶剤を揮発させた。このようにしてPETフィルム(厚み25μm)上に厚さが40μmであり、溶剤の残量が1.0重量%以上3.0重量%以下である樹脂フィルムを得た。得られた樹脂フィルムの表面を、顕微鏡(オリンパス社製「STM6」)により観察し、ベナードセルの発生の有無を評価した。またレーザー干渉計(Veeco社製「NT1100」)により0.5cm×2.0cmの範囲内の凹凸を解析した。両解析結果から、成膜性を下記の基準で判定した。
[成膜性の判定基準]
○:表面の凹凸が1.5μm未満であり、かつベナードセルが発生していない
△:表面の凹凸が1.5μm以上2.0μm未満であり、かつベナードセルが発生していない
×::表面の凹凸が2.0μm以上、又はベナードセル、ゆず肌が発生している
結果を下記の表1に示す。下記の表1において、「固形分A」は、上記エポキシ樹脂材料に含まれている無機フィラーを除く固形分を示し、「固形分B」は、上記エポキシ樹脂材料に含まれている固形分を示す。