JP6079606B2 - 電極の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、帯状の金属箔に電極ペーストを塗布して活物質層が形成される電極の製造方法に関する。
電池に用いられる電極を製造する場合、帯状の金属箔に電極ペーストを塗布し、電極ペーストを乾燥させて活物質層を形成する。電極ペーストには溶剤が含まれているので、溶剤を除去するためにこのような乾燥工程が必要となる。製品となる活物質層を形成する前に、活物質層の目付け量(重量)や幅等が規格範囲(設計値)内に入るように、条件出しを行っている。条件出しでは、上記と同様に条件出し用に活物質層を形成し、その条件出し用の活物質層に対して品質確認を行う。そして、条件出し用の活物質層の目付け量や幅等が規格範囲内に入るまで、条件出し用の活物質層の形成及び品質確認を繰り返し行う。例えば、特許文献1には、電池の電極ではないが、溶剤とポリマを含む塗液を基材に塗布して乾燥させるフィルム塗工において、塗工乾燥条件が最終決定するまで塗液の試し塗り、乾燥、微調整を繰り返し行うことが開示されている。
特開2009−233663号公報
条件出しの品質確認は活物質層に対して行うので、乾燥工程の終了後に行うことになる。そのため、条件出しを複数回行う場合、金属箔には条件出し用の任意の回の活物質層とその前回の活物質層との間に少なくとも乾燥工程の乾燥炉の区間分は電極ペーストが塗布されず、活物質層が形成されない区間が存在する。この区間の金属箔は条件出しにも製品にも使われないので、無駄な金属箔となり、材料ロスとなる。この材料ロスは、条件出しの回数が多くなるほど増加する。
そこで、本技術分野においては、条件出しでの金属箔の材料ロスを低減できる電極の製造方法が要請されている。
本発明の一側面に係る電極の製造方法は、搬送される帯状の金属箔に電極ペーストを塗布して活物質層が形成される電極の製造方法であって、製品用の塗布を行う前に、条件出し用に帯状の金属箔に電極ペーストを塗布する条件出し用塗布工程と、条件出し用塗布工程で塗布された電極ペーストを乾燥し、活物質層を形成する条件出し用乾燥工程と、条件出し用乾燥工程で形成された活物質層の品質が不合格の場合、最大で条件出し用塗布工程で帯状の金属箔に電極ペーストが前回塗布された領域の始端の位置が条件出し用塗布工程における塗布位置に来るように帯状の金属箔を逆方向に搬送する逆送工程とを含み、逆送工程で帯状の金属箔を逆方向に搬送した場合に条件出し用塗布工程、条件出し用乾燥工程を繰り返す。
この電極を製造方法では、製品となる活物質層を帯状の金属箔に形成する前に、条件出し用塗布工程で条件出し用に帯状の金属箔に電極ペーストを塗布し、条件出し用乾燥工程でその電極ペーストを乾燥して活物質層を形成し、その条件出し用の活物質層に対して品質確認が行われる。この条件出し用塗布工程及び条件出し用乾燥工程は帯状の金属箔を正方向に搬送しながら実施され、条件出し用乾燥工程が終了後も品質確認が実施される位置まで帯状の金属箔を搬送している。したがって、品質確認が実施される位置まで到達している条件出し用に電極ペーストが塗布された領域(条件出し用の活物質層の領域)から条件出し用塗布工程で塗布される位置までの金属箔の部分には、電極ペーストが塗布されていない(活物質層が形成されていない)。そこで、この電極の製造方法では、条件出し用の活物質層の品質が不合格の場合、逆送工程において最大で帯状の金属箔に電極ペーストが前回塗布された領域の始端の位置が条件出し用塗布工程における塗布位置に来るように帯状の金属箔を逆方向に搬送し、その逆方向に搬送された金属箔の位置から上記の条件出し用塗布工程と条件出し用乾燥工程を繰り返して活物質層を形成し、品質確認を再度行う。この金属箔を逆方向に搬送した分だけ、無駄になる金属箔の部分が少なくなり、金属箔の材料ロスを低減できる。このように、この電極の製造方法は、複数回条件出しを行う場合には条件出し用の再塗布を行う前に帯状の金属箔を逆方向に搬送することにより、条件出しでの金属箔の材料ロスを低減できる。
なお、最大で電極ペーストが前回塗布された領域の始端の位置まで帯状の金属箔を逆方向に搬送するので、前回形成された条件出し用の活物質層に重なる位置まで金属箔が逆方向に搬送される場合がある。その場合、前回形成された条件出し用の活物質層の一部分又は全部分の上に電極ペーストが塗布されることになるので、金属箔上に直接塗布される位置(特に、品質確認に必要となる領域分)まで電極ペーストを塗布する必要がある。
一形態の電極の製造方法の逆送工程では、条件出し用塗布工程で帯状の金属箔に電極ペーストが前回塗布された領域の終端の位置の所定範囲内の位置が条件出し用塗布工程における塗布位置に来るように帯状の金属箔を逆方向に搬送する。
金属箔において条件出し用に前回塗布された領域の終端から以降には条件出し用の活物質層が形成されていないので、条件出し用に前回塗布された領域の終端から以降であれば条件出し用の活物質層上に電極ペーストが塗布されることはない。そこで、この電極の製造方法では、逆送工程において帯状の金属箔に電極ペーストが前回塗布された領域の終端の位置の所定範囲内の位置が条件出し用塗布工程における塗布位置に来るように帯状の金属箔を逆方向に搬送する。この所定範囲が短いほど、金属箔の材料ロスを低減できる。このように、この電極の製造方法は、条件出し用の電極ペーストが前回塗布された領域の終端の位置の所定範囲内の位置まで帯状の金属箔を逆方向に搬送することにより、条件出しでの金属箔の材料ロスを低減できるとともに、電極ペーストを無駄に塗布するようなこともない。
一形態の電極の製造方法の逆送工程では、条件出し用塗布工程で帯状の金属箔に電極ペーストが前回塗布された領域の終端の位置が条件出し用塗布工程における塗布位置に来るように帯状の金属箔を逆方向に搬送する。このように、この電極の製造方法は、条件出し用の電極ペーストが前回塗布された領域の終端の位置(上記の所定範囲が零の場合)まで帯状の金属箔を逆方向に搬送することにより、条件出しでの金属箔の材料ロスを最も低減できるとともに、電極ペーストを無駄に塗布するようなこともない。
一形態の電極の製造方法は、条件出し用乾燥工程で形成された活物質層の品質を確認する品質確認工程を含み、逆送工程では、品質確認工程で活物質層の品質が不合格の場合、帯状の金属箔を逆方向に搬送し、逆送工程で帯状の金属箔を逆方向に搬送した場合に条件出し用塗布工程、条件出し用乾燥工程、品質確認工程を繰り返す。
本発明によれば、条件出しでの金属箔の材料ロスを低減できる。
本実施の形態に係る電極の製造ラインの一部を模式的に示す図である。 金属箔に1回目と2回目の条件出し用の活物質層が形成された状態を模式的に示す平面図であり、(a)が1回目の条件出しの後に金属箔を逆送した場合の一例であり、(b)が1回目の条件出しの後に金属箔を逆送した場合の他の例であり、(c)が従来の金属箔を逆送しない場合の一例である。 金属箔に1回目と2回目の条件出し用の活物質層が形成された状態の一例を模式的に示す側面図である。
以下、図面を参照して、本発明に係る電極の製造方法の実施の形態を説明する。なお、各図において同一又は相当する要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
本実施の形態では、本発明に係る電極の製造方法を、電池に用いられる電極の製造ラインに組み込まれる製品用の塗布工程及び乾燥工程の前に実施される条件出し用の条件出し用塗布工程、条件出し用乾燥工程、品質確認工程、逆送工程を含む電極の製造方法に適用する。本実施の形態では、条件出し用塗布工程、条件出し用乾燥工程、品質確認工程及び逆送工程は、製品用の塗布工程及び乾燥工程等を行う同じ製造ラインで実施される。本実施の形態では、その他の電極の製造工程については説明を省略する。なお、製造される電極は、例えば、二次電池又は電気二重層キャパシタ等の蓄電装置に用いられる。二次電池としては、例えば、リチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池である。また、製造される電極は、一次電池に用いられてもよい。本実施の形態では、リチウムイオン二次電池に用いられる電極を製造する場合とする。
電極は、帯状の金属箔の少なくとも一面に電極ペーストが塗布されて活物質層が形成されており、電極ペーストが塗布されていないタブも有している。帯状の金属箔は、例えば、銅箔、アルミニウム箔である。電極ペーストは、活物質、バインダ、溶剤等を含んでいる。活物質は、正極活物質及び負極活物質のいずれであってもよい。正極活物質としては、例えば、複合酸化物、金属リチウム、硫黄である。複合酸化物は、マンガン、ニッケル、コバルト及びアルミニウムの少なくとも1つとリチウムとを含む。負極活物質は、例えば、黒鉛、高配向性グラファイト、メソカーボンマイクロビーズ、ハードカーボン、ソフトカーボン等のカーボン、リチウム、ナトリウム等のアルカリ金属、金属化合物、SiOx(0.5≦x≦1.5)等の金属酸化物、ホウ素添加炭素である。溶剤は、例えば、NMP(N−メチルピロリドン)、メタノール、メチルイソブチルケトン等の有機溶剤、水である。また、電極ペーストは、カーボンブラック、黒鉛、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等の導電助剤を含んでいてもよい。また、電極ペーストは、カルボキシメチルセルロース(CMC)等の増粘剤を含んでいてもよい。
図1〜図3を参照して、本実施の形態に係る製造ライン1(特に、条件出し用塗布工程2、条件出し用乾燥工程3、品質確認工程4、逆送工程5)について説明する。図1は、製造ライン1の一部を模式的に示す図である。図2は、金属箔に1回目と2回目の条件出し用の活物質層が形成された状態を模式的に示す平面図であり、(a)が1回目の条件出しの後に金属箔を逆送した場合の一例であり、(b)が1回目の条件出しの後に金属箔を逆送した場合の他の例であり、(c)が従来の金属箔を逆送しない場合の一例である。図3は、金属箔に1回目と2回目の条件出し用の活物質層が形成された状態の一例を模式的に示す側面図である。
製造ライン1では、製品用の電極を製造するために、帯状の金属箔Lに電極ペーストPを塗布して(塗布工程)、その塗布した電極ペーストPを乾燥して活物質層Aを形成する(乾燥工程)。その前に条件出し用として、製造ライン1では、帯状の金属箔Lに条件出し用に電極ペーストPを塗布して(条件出し用塗布工程2)、その塗布した電極ペーストPを乾燥して条件出し用の活物質層Aを形成し(条件出し用乾燥工程3)、その活物質層Aの品質確認を行う(品質確認工程4)。特に、品質確認で不合格となった場合(活物質層Aが規格範囲(設計値)内でない場合)、製造ライン1では、条件出し用に前回塗布した領域に重ならない位置まで通常の搬送方向(正方向)とは逆方向に帯状の金属箔Lを搬送し(逆送工程5)、その逆方向に搬送した位置から上記と同様に条件出し用の各工程2,3,4を繰り返し行う。なお、この製造ライン1は、金属箔Lの表裏の一面にのみ連続塗布で活物質層を形成する。
図1に示すように、この条件出し用塗布工程2、条件出し用乾燥工程3、品質確認工程4における工程においては、ロール状に巻き取られている帯状の金属箔Lが巻出ロール6から送り出され、各工程を順次経由した後、巻取ロール7で活物質層が形成された金属箔Lがロール状に巻き取られる。この方向に帯状の金属箔Lが搬送される方向を、通常の搬送方向の正方向とする。この搬送速度は、例えば、10m/minである。搬送中は、帯状の金属箔Lに所定のテンション(張力)がかかっている。
巻出ロール6及び巻取ロール7は、駆動装置(図示せず)によってそれぞれ駆動される。この各駆動装置は、モーターや各種ギア等を備えており、モーターの回転駆動力をギアを介して各ロール6,7に伝達している。各モーターは、正逆の両方向に回転するモーターである。帯状の金属箔Lを正方向に搬送する場合、巻出ロール6の駆動装置では巻出ロール6で送り出す方向にモーターを回転駆動させ、巻取ロール7の駆動装置では巻取ロール7で巻き取る方向にモーターを回転駆動させる。帯状の金属箔Lを逆方向に搬送する場合、巻出ロール6の駆動装置では巻出ロール6で巻き取る方向にモーターを回転駆動させ、巻取ロール7の駆動装置では巻取ロール7で送り出す方向にモーターを回転駆動させる。各駆動装置は、製造ライン1の制御装置(図示せず)によって制御される。この制御装置では、駆動装置に制御指令を送信して、搬送方向(モーターの回転方向)、搬送速度、モーターの作動/停止等を制御する。逆送工程5は、巻出ロール6、巻取ロール7の各駆動装置が製造ライン1の制御装置によって制御されることによって構成される。なお、帯状の金属箔Lが搬送される長さや位置は、エンコーダーによって高精度に計測される。
なお、正逆の両方向に回転するモーターとしたが、一方向にのみ回転するモーターでも適用可能である。その場合、帯状の金属箔Lを正方向に搬送する場合、巻取ロール7の駆動装置のみが稼働し、巻取ロール7で巻き取る方向にモーターを回転駆動させる。帯状の金属箔Lを逆方向に搬送する場合、巻出ロール6の駆動装置のみが稼働し、巻出ロール6で巻き取る方向にモーターを回転駆動させる。また、モーターで正方向と逆方向との搬送方向を切り替えるのではなく、逆方向に搬送する場合には逆方向に反転させるギアを介在させるなどしてもよい。
条件出し用塗布工程2は、帯状の金属箔L上に条件出し用の活物質層Aを形成するための電極ペーストPを塗布する工程である。条件出し用塗布工程2は、金属箔L上に電極ペーストPを塗布するガン23を備える。容器20には、投入口20aからそれぞれ投入された活物質、バインダ、溶剤等が攪拌翼20bによって混練・攪拌された電極ペーストPが貯蔵されている。ガン23には、この容器20から供給管21を介してポンプ22によって電極ペーストPが供給される。また、ガン23に対向して、塗布ロール24が配置されており、金属箔Lを支持している。ガン23では、供給された電極ペーストPが内部のマニホールド23aに一旦溜まり、マニホールド23aから先端のノズル23bに電極ペーストPが押し出され、ノズル23bから金属箔L上に電極ペーストPを吐出する。このように、ガン23は、ダイ方式の塗布装置の一部をなす。条件出し用の電極ペーストPは、予め決められた長さL1分塗布される(図3参照)。この長さL1は、品質確認工程4で品質確認を行うことが可能な十分な長さであり、例えば、1m、数10cmである。条件出し用塗布工程2でのポンプ22等の制御は、上記の製造ライン1の制御装置によって行われる。ガン23では、電極ペーストPを塗布する幅、塗布する量等を調整可能である。この調整は、品質確認工程4からの品質確認結果に基づく製造ライン1の制御装置からの制御指令によって自動的に行ってもよいし、あるいは、品質確認工程4からの品質確認結果に基づいて人が行ってもよい。なお、塗布方式としては、ダイ方式以外のコンマロール方式等の塗布も適用可能である。
条件出し用乾燥工程3は、条件出し用塗布工程2で帯状の金属箔L上に塗布された電極ペーストPを乾燥し、電極ペーストP中の溶剤を除去する工程である。条件出し用乾燥工程3は、乾燥炉30を備える。乾燥炉30内には、補助ロール8により案内される帯状の金属箔Lの経路に沿って、加熱手段が配置されている。電極ペーストPが塗布された金属箔Lは、乾燥炉30内を通過している間に加熱され、電極ペーストP中の溶剤が除去され、金属箔L上に条件出し用の活物質層Aが形成される。条件出し用乾燥工程3での乾燥炉30等の制御は、上記の製造ライン1の制御装置によって行われる。ちなみに、乾燥炉30の長さは、例えば、数m、十数m程度ある。したがって、条件出し用塗布工程2で電極ペーストPを塗布する位置から品質確認工程4で品質確認する位置までの区間は、この乾燥炉30の長さよりも長くなる。
品質確認工程4は、金属箔L上に形成された条件出し用の活物質層Aの品質を確認し、活物質層Aが規格範囲(設計値)内か否かを判定する工程である。品質を確認する項目としては、例えば、目付け量(重量)、幅がある。品質確認工程4は、品質確認装置40を備えている。品質確認装置40は、品質を確認するための周知の装置であり、例えば、画像を利用した装置、X線やβ線を利用した装置である。品質確認装置40では、品質を確認する項目毎に、条件出し用の活物質層Aからその項目の値を測定し、その測定値がその項目の規格範囲に入っているか否かを判定する。全ての項目が規格範囲内に入っていると判定した場合、品質確認装置40では、品質が合格を示す品質確認結果を製造ライン1の制御装置に送信する。少なくとも1の項目が規格範囲内に入っていないと判定した場合、品質確認装置40では、品質が不合格及び規格範囲内に入っていない項目毎にその規格範囲内からのずれ量等を示す品質確認結果を製造ライン1の制御装置に送信する。
図3には、金属箔L上に形成された2回分の条件出し用の活物質層A1,A2の一例が示されている。条件出し用の活物質層A1,A2は、金属箔Lに長さL1分形成される。品質確認工程4では、その長さL1の活物質層A1,A2のうち状態として安定している中央部の長さL2分の領域に対して品質確認を行う。この長さL2は、長さL1よりも短く、例えば、数10cmである。品質確認工程4では、品質確認を行う場合、条件出し用の活物質層A1,A2における中央部の長さL2分の領域を品質確認装置40で品質確認できる位置で帯状の金属箔Lの搬送を停止させる。なお、本実施の形態では、1回目の条件出し用の活物質層A1の品質が不合格となり、2回目の条件出し用の活物質層A2の品質が合格となった場合の例を示す。
逆送工程5は、品質確認工程4で品質が不合格になった場合に、帯状の金属箔Lを逆方向に搬送する工程である。逆送工程5は、上記したように製造ライン1の制御装置と各ロール6,7の駆動装置によって構成される。帯状の金属箔Lを逆方向にどの位置まで搬送するかは、帯状の金属箔Lに条件出し用に前回形成された活物質層Aに重ならず、帯状の金属箔Lの材料ロスを極力低減できる位置とする。逆送工程5では、品質確認工程4で品質が不合格になった場合、製造ライン1の制御装置による制御指令に応じて、巻出ロール6の駆動装置で巻出ロール6を巻き取る方向にモーターを回転駆動させるとともに巻取ロール7の駆動装置で巻取ロール7を送り出す方向にモーターを回転駆動させて帯状の金属箔Lを逆方向に搬送し、上記の所定の位置が条件出し用塗布工程2における塗布位置(ガン23のノズル23bから電極ペーストPを吐出する位置)に来ると各駆動装置ではモーターを停止させる。上記したように帯状の金属箔Lを搬送する長さや位置についてはエンコーダーで計測されているので、そのエンコーダーによる計測値に基づいて帯状の金属箔Lを逆方向に搬送する際の長さや位置を高精度に管理できる。
図2を参照して、帯状の金属箔Lを逆方向に搬送する位置についての具体例を説明する。図2(a)に示す例は、1回目の条件出し用の活物質層A1の領域(1回目の条件出し用の電極ペーストPが塗布された領域)の終端の位置P1まで帯状の金属箔Lを逆方向に搬送する例である。この場合、2回目の条件出し用の電極ペーストPの塗布は金属箔L上の1回目の条件出し用の活物質層A1の領域の終端の位置P1から開始されるので、2回目の条件出し用の活物質層A2が1回目の条件出し用の活物質層A1の領域に接して形成される。逆方向に戻される金属箔Lの長さは、条件出し用塗布工程2で金属箔L上の1回目の条件出し用の電極ペーストPの塗布が終了した位置から品質確認工程4で品質確認される位置まで金属箔Lが進んだ分の長さに相当する。この例の場合、金属箔Lの材料ロスは、無い。なお、条件出し用の活物質層A1,A2の後の活物質層Aは、製品用の活物質層である。
図2(b)に示す例は、1回目の条件出し用の活物質層A1の領域の終端の位置P1から所定長さL3分離れた位置まで帯状の金属箔Lを逆方向に搬送する例である。この所定長さL3は、短いほど金属箔Lの材料ロスを少なくでき、例えば、数cm、10cm程度である。この場合、2回目の条件出し用の電極ペーストPの塗布は1回目の条件出し用の活物質層A1の領域の終端の位置P1から所定長さL3分離れた位置から開始されるので、2回目の条件出し用の活物質層A2’が1回目の条件出し用の活物質層A1の領域から所定長さL3分を空けて形成される。逆方向に戻される金属箔Lの長さは、条件出し用塗布工程2で金属箔L上の1回目の条件出し用の電極ペーストPの塗布が終了した位置から品質確認工程4で品質確認される位置まで金属箔Lが進んだ分の長さから所定長さL3分減算した長さに相当する。この例の場合、金属箔Lの材料ロスは、その所定長さL3分になる。
なお、図2(c)には、従来の条件出しの場合の例を示している。この場合、2回目の条件出し用の電極ペーストPの塗布は1回目の品質確認で停止した位置からそのまま開始されるので、2回目の条件出し用の活物質層A2”が1回目の条件出し用の活物質層A1の領域からかなりの長さ分を空けて形成される。この場合、金属箔Lの材料ロスは、金属箔L上の1回目の条件出し用の電極ペーストPの塗布が終了した位置から品質確認される位置まで金属箔Lが進んだ分の長さ(乾燥炉の長さより長い長さ)となる。
図1〜図3を参照して、上記構成の製造ライン1における条件出し用塗布工程2、条件出し用乾燥工程3、品質確認工程4及び逆送工程5の動作について説明する。ここでは、1回目の条件出し用の活物質層A1の品質が不合格となり、2回目の条件出し用の活物質層A2の品質が合格となった場合の動作とする。また、ポンプ22、乾燥炉30、各ロール6,7の駆動装置等は、製造ライン1の制御装置による制御に応じて動作する。
1回目の条件出しを行う場合、ガン23による電極ペーストPの塗布位置に、帯状の金属箔Lにおける電極ペーストPを塗布可能な最端の位置がくるように、帯状の金属箔Lが位置調整される。そして、巻出ロール6の駆動装置では巻出ロール6で送り出す方向にモーターの回転駆動を開始し、巻取ロール7の駆動装置では巻取ロール7で巻き取る方向にモーターの回転駆動を開始する。これによって、帯状の金属箔Lに対して巻出ロール6から巻取ロール7の正方向への搬送を開始する。条件出し用塗布工程2では、ポンプ22が作動し、容器20から供給管21を介してガン23に電極ペーストPを供給する。ガン23では、電極ペーストPがマニホールド23aに一旦溜まり、マニホールド23aからノズル23bに電極ペーストPを押し出し、ノズル23bから塗布ロール24で支持されている金属箔L上に1回目の条件出し用の電極ペーストPを塗布する。条件出し用の長さL1分塗布すると、条件出し用塗布工程2では、ポンプ22を停止し、ガン23からの塗布を終了する。
条件出し用乾燥工程3では、乾燥炉30内に電極ペーストPが塗布された金属箔Lが入ると、乾燥炉30内に配置された加熱手段が電極ペーストPを加熱し、電極ペーストP中の溶剤を蒸発させ、電極ペーストPを乾燥する。これによって、金属箔L上に1回目の条件出し用の活物質層A1が形成される。
品質確認装置40で品質確認する位置に、金属箔L上の1回目の条件出し用の活物質層A1が到達すると(特に、活物質層A1の中央部の長さL2分の領域を品質確認装置40で品質確認できる位置になると)、巻出ロール6の駆動装置ではモーターの回転駆動を停止し、巻取ロール7の駆動装置ではモーターの回転駆動を停止する。品質確認装置40では、1回目の条件出し用の活物質層A1の品質確認を行い、品質の合格/不合格を判定する。品質確認装置40では、1回目の条件出し用の活物質層A1に対して不合格と判定し、品質が不合格及び規格範囲内に入っていない項目毎にその規格範囲内からのずれ量等を示す品質確認結果を製造ライン1の制御装置に送信する。
制御装置の制御指令に応じて、逆送工程5では、巻出ロール6の駆動装置では巻出ロール6で巻き取る方向にモーターの回転駆動を開始し、巻取ロール7の駆動装置では巻取ロール7で送り出す方向にモーターの回転駆動を開始する。これによって、帯状の金属箔Lに対して巻取ロール7から巻出ロール6の逆方向への搬送を開始する。逆送工程5では、ガン23による電極ペーストPの塗布位置に帯状の金属箔Lにおける1回目の条件出し用の活物質層A1の領域(1回目の条件出し用の電極ペーストPが塗布された領域)の終端の位置P1が到達すると、巻出ロール6の駆動装置ではモーターの回転駆動を停止し、巻取ロール7の駆動装置ではモーターの回転駆動を停止する。また、品質確認工程4からの品質確認結果に基づいてガン23では塗布する幅、塗布する量等が調整される。
そして、制御装置に制御指令に応じて、巻出ロール6の駆動装置では巻出ロール6で送り出す方向にモーターの回転駆動を開始し、巻取ロール7の駆動装置では巻取ロール7で巻き取る方向にモーターの回転駆動を開始する。これによって、帯状の金属箔Lに対して巻出ロール6から巻取ロール7の正方向への搬送を開始する。条件出し用塗布工程2では、上記と同様の動作により、金属箔L上に2回目の条件出し用の電極ペーストPを塗布する。条件出し用乾燥工程3では、上記と同様の動作により、電極ペーストPを乾燥する。これによって、金属箔L上に2回目の条件出し用の活物質層A2が形成される。この活物質層A2の始端の位置は、1回目の活物質層A2の終端の位置と一致する。
品質確認装置40で品質確認する位置に、金属箔L上の2回目の条件出し用の活物質層A2が到達すると、巻出ロール6の駆動装置ではモーターの回転駆動を停止し、巻取ロール7の駆動装置ではモーターの回転駆動を停止する。品質確認装置40では、2回目の条件出し用の活物質層A2の品質確認を行い、品質の合格/不合格を判定する。品質確認装置40では、2回目の条件出し用の活物質層A2に対して合格と判定し、品質が合格を示す品質確認結果を製造ライン1の制御装置に送信する。これで、条件出しが終了する。製品用の塗布工程では、この条件出しで設定された塗布幅、塗布量等で電極ペーストPの塗布が行われることになる。
この製造ライン1による電極の製造方法によれば、複数回条件出しを行う場合には条件出し用の再塗布を行う前に帯状の金属箔Lを逆方向に搬送することにより、条件出しでの帯状の金属箔Lの材料ロスを低減できる。特に、この製造方法によれば、条件出し用の電極ペーストが前回塗布された領域の終端の位置P1又は終端の位置P1から極僅かの範囲内の位置まで帯状の金属箔Lを逆方向に搬送することにより、条件出しでの帯状の金属箔Lの材料ロスを極力低減できるとともに、前回の条件出し用の活物質層に重ならないので、電極ペーストPを無駄に塗布するようなこともない。
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されることなく様々な形態で実施される。
例えば、本実施の形態では金属箔の表裏の一面に活物質層を形成した電極を例にして説明したが、金属箔の両面に活物質層をそれぞれ形成した電極にも適用可能である。また、本実施の形態では金属箔に電極ペーストを連続塗布して連続の活物質層を形成した電極を例にして説明したが、電極ペーストを間欠塗布して一定間隔を空けて活物質層を形成した電極にも適用可能である。
また、本実施の形態では帯状の金属箔に電極ペーストが前回塗布された領域の終端の位置まで帯状の金属箔を逆方向に搬送して、1回目と2回目の条件出し用の活物質層を隣接させて形成する例、帯状の金属箔に電極ペーストが前回塗布された領域の終端の位置の所定範囲内の位置まで帯状の金属箔を逆方向に搬送して、1回目と2回目の条件出し用の活物質層との間を少し空けて形成する例を示したが、帯状の金属箔に電極ペーストが前回塗布された領域の始端から終端までの任意の位置まで帯状の金属箔を逆方向に搬送して、1回目の条件出し用の活物質層の一部分又は全部分の上にも電極ペーストを塗布し、1回目の条件出し用の活物質層の一部分又は全部分の上に2回目の条件出し用の活物質層の一部が形成されるようにしてもよい。この場合、2回目の条件出し用の電極ペーストの塗布において金属箔上に直接塗布される位置(特に、品質確認に必要となる領域分の位置)まで電極ペーストを塗布する必要がある。
また、本実施の形態では条件出しを2回行う例(2回目の条件出し用の活物質層の品質が合格した例)を示したが、2回目の条件出しでも合格せず、3回目以上の条件出しを行う場合にも適用できる。3回以上の場合も、品質確認で不合格になる毎に金属箔の逆送を行う。
また、本実施の形態では品質確認装置を用いて品質確認を行う構成としたが、品質確認を人が行ってもよい。人が行う場合、品質が不合格になったときに、逆送工程の駆動装置に対する搬送方向(正方向/逆方向)、モーターの作動/停止等の操作、電極ペーストを塗布する幅や量等の調整も人が行ってもよい。
1…製造ライン、2…条件出し用塗布工程、3…条件出し用乾燥工程、4…品質確認工程、5…逆送工程、6…巻出ロール、7…巻取ロール、8…補助ロール、20…容器、20a…投入口、20b…攪拌翼、21…供給管、22…ポンプ、23…ガン、23a…マニホールド、23b…ノズル、24…塗布ロール、30…乾燥炉、40…品質確認装置。

Claims (4)

  1. 搬送される帯状の金属箔に電極ペーストを塗布して活物質層が形成される電極の製造方法であって、
    製品用の塗布を行う前に、条件出し用に前記帯状の金属箔に前記電極ペーストを塗布する条件出し用塗布工程と、
    前記条件出し用塗布工程で塗布された前記電極ペーストを乾燥し、活物質層を形成する条件出し用乾燥工程と、
    前記条件出し用乾燥工程で形成された活物質層の品質が不合格の場合、最大で前記条件出し用塗布工程で前記帯状の金属箔に前記電極ペーストが前回塗布された領域の始端の位置が前記条件出し用塗布工程における塗布位置に来るように前記帯状の金属箔を逆方向に搬送する逆送工程と、
    を含み、
    前記逆送工程で前記帯状の金属箔を逆方向に搬送した場合に前記条件出し用塗布工程、前記条件出し用乾燥工程を繰り返す、電極の製造方法。
  2. 前記逆送工程では、前記条件出し用塗布工程で前記帯状の金属箔に前記電極ペーストが前回塗布された領域の終端の位置の所定範囲内の位置が前記条件出し用塗布工程における塗布位置に来るように前記帯状の金属箔を逆方向に搬送する、請求項1に記載の電極の製造方法。
  3. 前記逆送工程では、前記条件出し用塗布工程で前記帯状の金属箔に前記電極ペーストが前回塗布された領域の終端の位置が前記条件出し用塗布工程における塗布位置に来るように前記帯状の金属箔を逆方向に搬送する、請求項2に記載の電極の製造方法。
  4. 前記条件出し用乾燥工程で形成された活物質層の品質を確認する品質確認工程を含み、
    前記逆送工程では、前記品質確認工程で活物質層の品質が不合格の場合、前記帯状の金属箔を逆方向に搬送し、
    前記逆送工程で前記帯状の金属箔を逆方向に搬送した場合に前記条件出し用塗布工程、前記条件出し用乾燥工程、前記品質確認工程を繰り返す、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の電極の製造方法。
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