JP6078423B2 - 塗膜観察方法 - Google Patents

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Description

本発明は、皮膚表面に塗布した皮膚外用組成物の塗膜観察方法に関する。また、本発明は、皮膚外用組成物を塗布した表皮角質層の観察方法に関する。さらに、本発明は、当該方法に用いる観察用試料の調製方法に関する。
化粧品の使用感や効果の持続性は、消費者が化粧品を購入する際の重要なファクターとなる。化粧品開発において、この使用感等の評価は、主に官能評価により行われている。しかし、官能評価は、ヒトが実際に製品を使用して評価する方法であるため、評価に時間がかかり効率的でないこと、結果には評価者の主観が入るため、客観的且つ一般的な評価結果を得ることが難しいこと、等の問題がある。
官能評価によらない客観的な化粧料の評価方法としては、例えば、ヒトが化粧料を使用し、使用者の皮膚上で化粧料の状態を観察したり、物性を測定することが行われている。しかし、この方法は人体上で行われるため、人体への影響を考慮して観察態様や測定機器が制限される。特に、ミクロなレベルでの形態観察は難しい。
一方、採取した皮膚や化粧料を用いた方法、代替皮膚を用いた方法も提案されている。化粧料は皮膚の最上層である角質層(角層)に対して使用されるが、この角質層の状態を調べる方法として、例えば、非特許文献1や特許文献1がある。非特許文献1には、網目状グリッドを用いて角層細胞を採取し、細胞間脂質の構造解析を行うことが記載されている。特許文献1には、角層細胞の弾性率等の物性を測定する方法が提案されている。
また、化粧料の状態を調べる方法として、例えば、特許文献2には、口紅等の化粧料を植物の葉に塗布し、これを凍結割断して化粧料膜の断面を観察する方法が提案されている。また、人工皮膚や剥離した皮膚(豚皮など)の表面に化粧料を塗布して、顕微鏡により塗布膜の状態を観察することも行われている。
また、ヒト皮膚上に化粧料を塗布した後、これを採取し解析する方法として、非特許文献2がある。この方法は、皮膚上に塗布した化粧膜にレプリカ剤を滴下して硬化させた後、一定時間経過後に該レプリカ剤と化粧塗膜を皮膚から剥離して、顕微鏡によって塗膜を観察するものである。
特開2012−93144号公報 特開2005−84005号公報
G. S. K. Pilgram et al., Journal of Microscopy,Vol.189(1), p.71-78, January 1998 田中健一ほか、化粧塗膜の微視的評価法の確立と製剤開発への応用、第51回SCCJ研究討論会講演要旨集、日本化粧品技術者会、2002年11月19日、p.21-24
化粧料の使用感や効果の持続性を適切に評価するためには、使用時の状態をできるだけ維持・再現したまま、化粧料や皮膚サンプルを採取することが望まれる。そのためには、化粧料を適用する角質層を含めて化粧料塗膜を採取し観察できること、採取された試料が使用時の状態から変形や変質していないこと、化粧料塗布後の経時的な観察ができること、が好ましい。
上記非特許文献1や特許文献1は、皮膚上の化粧料を分析する方法ではない。また、上記特許文献2の方法や剥離した皮膚を用いる方法では、化粧料塗布時の状態はある程度評価できるものの、経時的な変化まで評価することは難しい。実際の化粧料はヒトの皮膚上に塗布して使用されるため、体温による塗膜の流動や皮膚表面からの水分蒸散等の影響を受け、時間の経過とともにその性状が変化するものである。また、上記非特許文献2の方法は、塗膜の経時的な変化を観察できるものの、レプリカ剤の滴下又は硬化時に塗膜の構造が変形する可能性がある。また、硬化した化粧料塗膜を皮膚から剥離する際に、剥離面の塗膜構造が破壊される、塗膜の一部が皮膚上に残存してしまい塗膜の全体構造を観察できない、といった問題が生じる。
本発明は、皮膚上に塗布された化粧料等の皮膚外用組成物の塗膜を、現実の使用時に極めて近い状態で観察できる方法を提供することを課題とする。具体的には、皮膚に塗布した該組成物の塗膜を、変形や変質させることなく、表皮の角質層ごと採取し観察できる方法を提供することを課題とする。
本発明者等は上記課題に鑑み、皮膚外用組成物が皮膚上に塗布された状態を保ったまま皮膚角質層ごと採取し、観察する方法について鋭意検討を行った。
その結果、透孔を有する基材の片面に粘着部を設けた支持体を皮膚に貼着し、支持体の上から皮膚外用組成物を塗布することで、支持体の透孔下の皮膚に該組成物を直接塗布できること、塗布後に支持体を皮膚から剥離すると、支持体の粘着部の作用で支持体下の角質層が一緒に剥離し、剥離した角質層上に塗布された皮膚外用組成物の塗膜も一緒に採取できることを見出した。これにより、角質層との境界面の塗膜を損なうことなく、塗膜全体を採取することができた。本発明はこの知見に基づき完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記(1)〜(4)の工程を有する、塗膜観察方法に関する。
(1)透孔を設けた基材と該基材の皮膚接合面側に形成された粘着部とを有する支持体を、皮膚表面に貼着する工程
(2)貼着した支持体の透孔部に、支持体の非皮膚接合面側から皮膚外用組成物を塗布する工程
(3)支持体を皮膚から剥離して、支持体とともに支持体に接合した角質層及び該角質層上に塗布された皮膚外用組成物の塗膜を採取する工程
(4)採取された角質層上の塗膜を観察する工程
また、本発明は、下記(1)〜(3)及び(5)の工程を有する、角質層の観察方法に関する。
(1)透孔を設けた基材と該基材の皮膚接合面側に形成された粘着部とを有する支持体を、皮膚表面に貼着する工程
(2)貼着した支持体の透孔部に、支持体の非皮膚接合面側から皮膚外用組成物を塗布する工程
(3)支持体を皮膚から剥離して、支持体とともに支持体に接合した角質層及び該角質層上に塗布された皮膚外用組成物の塗膜を採取する工程
(5)採取された角質層を観察する工程
また、本発明は、前記(1)〜(3)の工程を有する、塗膜観察用試料の調製方法に関する。
また、本発明は、前記(1)〜(3)の工程を有する、角質層観察用試料の調製方法に関する。
さらに、本発明は、前記観察方法により得られた観察結果に基づいて、皮膚外用組成物の性能を評価する、皮膚外用組成物の評価方法に関する。
本発明の方法によれば、皮膚上に塗布された皮膚外用組成物の塗膜を、現実の使用時に極めて近い状態で観察できる。また、本発明の方法によれば、塗布された皮膚外用組成物が皮膚上でどのような挙動を示すかを、経時的に観察することができる。さらに、本発明の方法によれば、皮膚外用組成物が塗布された表皮角質層の状態についても観察することができる。これらの方法では、塗膜や角質層の微細構造をサブミクロンレベルで観察することが可能である。
さらに、本発明の方法によれば、現実の使用状態に近い状態を維持したまま、皮膚外用組成物の塗膜又は角質層の観察用試料を調製することができる。
さらに、本発明の方法によれば、上記塗膜又は角質層の観察結果に基づいて、皮膚外用組成物の性能を評価することができる。
本発明に用いられる支持体の一例を模式的に示す図である。(a)は支持体を非皮膚接合面からみた平面図を、(b)は支持体のA−A断面図である。 図1の支持体をヒトの皮膚に貼着した状態を模式的に示す図である。 図2の支持体の上から、皮膚外用組成物を塗布した状態を模式的に示す図である。(a)はヒトの腕の内側に支持体を貼着し、その上から皮膚外用組成物を塗布した状態を、(b)は(a)において組成物を塗布した後の支持体の断面図を、それぞれ示す。 図3の支持体を皮膚から剥離した状態を模式的に示す図である。 支持体の外縁領域と観察領域とを模式的に示す図である。 実施例で用いた基材透孔の拡大写真である。 実施例で用いた支持体の、粘着部形成工程の概略を示す図である。(a)は基材中心部への粘着剤を塗布する装置図、(b)〜(d)は(a)の装置の基材部分の断面図であり、(b)は粘着剤塗布前の状態、(c)は粘着剤塗布直後の状態、(d)は粘着剤を吸引した後の状態をそれぞれ示す。 実施例で採取した塗膜試料のX線回折の結果を示す図である。 実施例で採取した観察用試料断面の走査型顕微鏡写真である。 図9の塗膜部分を拡大した走査型顕微鏡写真である。
本発明の観察用試料の調製方法は、下記(1)〜(3)の工程を有する。
(1)透孔を設けた基材と該基材の皮膚接合面側に形成された粘着部とを有する支持体を、皮膚表面に貼着する工程
(2)貼着した支持体の透孔部に、支持体の非皮膚接合面側から皮膚外用組成物を塗布する工程
(3)支持体を皮膚から剥離して、支持体とともに支持体に接合した角質層及び該角質層上に塗布された皮膚外用組成物の塗膜を採取する工程
当該方法を用いることで、皮膚上に塗布した皮膚外用組成物の塗膜観察用試料、及び皮膚外用組成物が塗布された角質層観察用試料を調製することができる。本発明の方法で調製された観察用試料は、角質層を含めて塗膜を採取する方法であるため、角質層との境界面の塗膜を損なうことなく、塗布した塗膜全体を採取することができる。また、採取時に、塗膜に対し化学的或いは物理的な処理を行わないため、塗膜の変質や変形を抑えられる。さらに、支持体の粘着部を皮膚に貼着し剥離するという低侵襲な方法であるため、生体(特にヒト)からの試料採取に適している。
本発明の観察方法は、前記(1)〜(3)の工程の後に、下記(4)又は(5)の工程を有する。
(4)採取された角質層上の塗膜を観察する工程、又は
(5)採取された角質層を観察する工程
本発明の観察方法は、本発明の調製方法により得られた観察用試料を用いて観察を行うもので、角質層上の塗膜、角質層(角層細胞や細胞間脂質)、或いはその両方を観察することができる。また、塗膜を塗布した角質層を含めて観察でき、塗膜の変質や変形も少ないため、現実の使用時に極めて近い状態を観察することができる。また、生体に適用できる方法であるため、塗布した組成物が体温や皮膚表面からの水分蒸散等の影響を受け、時間の経過とともにその性状がどのように変化していくかを、経時的に観察することができる。さらに、観察には皮膚から剥離した後の試料を用いるため、人体への安全性に配慮した観察方法や使用機器の制限がなく、断面構造の観察、電子顕微鏡を用いた微細構造の観察が可能である。
本発明の評価方法は、本発明の観察方法により得られた観察結果に基づいて、皮膚外用組成物の性能を評価する。本発明の観察方法では、従来法よりも実使用状態を正確に反映した観察結果が得られるため、より精度の高い評価が可能となる。
以下、図面を適宜引用し、且つ例をもって本発明を詳細に説明する。
1.観察用試料の調製
1−1.基材及び支持体
[支持体]
図1に例示するように、支持体1は、透孔2を設けた基材3と、基材3の皮膚接合面(裏面)側に形成された粘着部4とを有している。
[基材]
基材に設けられる透孔は、図1に示すように複数であってもよいし、単孔であってもよい。また、透孔の平面形状としては、例えば、円形、楕円形、四角形、六角形等が挙げられるが、他の形状であってもよい。
皮膚外用組成物の塗布性及び塗膜や角質層の採取効率の点から、各孔の孔面積は0.8μm以上が好ましく、70μm以上がより好ましく、300μm以上がさらに好ましく、700μm以上がよりさらに好ましく、636200μm以下が好ましく、196400μm以下がより好ましく、49100μm以下がさらに好ましく、7900μm以下がよりさらに好ましい。同様の観点から、孔径は、1μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましく、20μm以上がさらに好ましく、30μm以上がよりさらに好ましく、900μm以下が好ましく、500μm以下がより好ましく、250μm以下がさらに好ましく、100μm以下がよりさらに好ましい。
なお、本発明で孔径とは、透孔が円形の場合は直径を、楕円形の場合は長径を、四角形の場合は長辺を、六角形の場合は対辺をいう。
基材の開口率は、支持体の皮膚への貼着性及び塗膜や角質層の採取効率の点から、10%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましく、50%以上であることがさらに好ましく、90%以下であることが好ましく、85%以下であることがより好ましく、80%以下であることがさらに好ましい。なお、開口率とは、基材平面において、透孔の孔面積の総和が基材平面の面積に占める割合をいう。
基材上の複数の透孔は、一定間隔で規則的に配置されていることが好ましい。この場合、孔と孔の間隔(ピッチ)は、10μm以上が好ましく、20μm以上がより好ましく、30μm以上がさらに好ましく、1000μm以下が好ましく、500μm以下がより好ましく、100μm以下がさらに好ましい。
基材の平面形状として、例えば、円形、楕円形、四角形、六角形等が挙げられるが、他の形状であってもよい。
皮膚への貼着性や皮膚外用組成物の塗布性の点から、基材平面の面積は0.7mm以上が好ましく、4mm以上がより好ましく、7mm以上がさらに好ましく、1970mm以下が好ましく、320mm以下がより好ましく、80mm以下がさらに好ましい。同様の観点から、基材の直径は1mm以上が好ましく、2mm以上がより好ましく、3mm以上がさらに好ましく、50mm以下が好ましく、20mm以下がより好ましく、10mm以下がさらに好ましい。ここで、基材の直径とは、基材が円形の場合は直径を、楕円形の場合は長径を、四角形の場合は長辺を、六角形の場合は対辺をいう。
皮膚への貼着性や皮膚外用組成物の塗布性の点から、基材の厚さは、1μm以上が好ましく、3μm以上がより好ましく、5μm以上がさらに好ましく、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、20μm以下がさらに好ましい。
基材の材質は、採取した塗膜や角質層を生体に近い状態で維持できるよう、伸縮性が小さく、ヒトの皮膚表面の凹凸に適合できるようある程度の柔軟性を有するものが好ましい。また、後から塗布する皮膚外用組成物の皮膚への塗布性を向上させるため、皮膚外用組成物との親和性がよいものが好ましい。例えば、銅、金、白金、アルミニウム、ニッケル、ステンレス、チタン、モリブデン、銅合金、アルミニウム合金などが挙げられる。なかでも、銅、白金、ステンレス、チタン、銅合金、アルミニウム合金が好ましく、銅、白金、ステンレス、チタンがより好ましい。
基材には、皮膚外用組成物との親和性を高めるために、表面処理を施してもよい。表面処理の例としては、上記材質の基剤表面に、例えばロジウム、金、白金などの金属をコーティングする方法が挙げられる。コーティングは、金属の表面コーティングに通常用いられる方法により行うことができ、例えば、蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法を用いることができる。表面にコーティングされる金属の厚さは、用いる金属の種類に応じて適宜選択することができるが、支持体剥離時にコーティング膜が剥がれない厚さとすることが好ましい。一例として、白金をコーティングする場合、10nm程度の厚さとすることが好ましい。
また、基材に不活性ガス下で放電処理を施してもよい。不活性ガスとしては、例えば、アルゴン、クリプトン等の希ガス、窒素などを用いることができる。放電処理の条件は、処理中の圧力が20Pa以下であることが好ましく、10Pa以下であることがより好ましい。電圧は1kV以下であることが好ましく、500V以下であることがより好ましい。処理時間は30秒以下であることが好ましく、20秒以下であることがより好ましい。
[粘着部]
支持体の粘着部は、基材の皮膚接合面側に形成される。粘着部の作用により、支持体を皮膚へ貼着でき、剥離時には皮膚表面の角質層を支持体に接合したまま採取することができる。
粘着部の厚さは、20μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましい。
粘着部の形状は、下記の観点から、基材の透孔の少なくとも一部が粘着部により閉塞されていないこと必要であり、透孔をできるだけ閉塞しないよう粘着部を形成することが好ましい。図2に示すように、支持体1は、粘着部4を設けた面(皮膚接合面)を下にして皮膚5に貼着される。このとき、粘着部4は、皮膚5の最表面に存在する角質層6と接合する。支持体貼着後、図3(a)に示すように、支持体1の上から(非皮膚接合面側から)皮膚外用組成物7を塗布する。皮膚外用組成物7を塗布した後の、支持体の断面状態は図3(b)のようになる。なお、図3(b)では、支持体1の上部及び周辺部に塗布されている皮膚外用組成物7は省略している。塗布された皮膚外用組成物7は、基材3の透孔2を通って透孔下の皮膚5(角質層6)上に塗布される。このとき、皮膚上での皮膚外用組成物の挙動を観察するためには、透孔2の下に位置する皮膚に直接皮膚外用組成物7が塗布されることが必要である。透孔2の皮膚接合面側が、粘着部4により閉塞されていると、皮膚外用組成物7を透孔内の皮膚上に塗布することができない。
粘着部は、粘着剤を用いて形成することができる。用いる粘着剤は、支持体を皮膚へ貼着した後、剥離できるものであればよい。具体的には、アニオン性樹脂(例えば、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、クロトン酸−酢酸ビニル−ネオデカン酸ビニル共重合体、クロトン酸−酢酸ビニル−プロピオン酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸モノブチル−アクリル酸イソボロニル共重合体、アクリル酸オクチルアミド−アクリル酸エステル共重合体、N−ビニルピロリドン−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体であるアクリル樹脂アルカノールアミン液、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル−ジアセトンアクリルアミド−メタクリル酸共重合体、メチルビニルエーテル−マレイン酸モノアルキル共重合体)、カチオン性樹脂(例えば、ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウムクロリド、塩化O−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース、N−ビニルピロリドン−メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、ビニルイミダゾリウムトリクロリド−N−ビニルピロリドン共重合体、N−ビニルピロリドン−メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、N−ビニルピロリドン−アクリル酸アミノアルキル−N−ビニルカプロラクタム共重合体、N−ビニルピロリドン−メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド共重合体、N−アルキルアクリルアミド−アクリル酸−N−(アルキルアミノ)アルキルアクリルアミド−ポリエチレングリコールメタクリレート共重合体、ポリ塩化ジメチルメチレンピペリジニウム液、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド−アクリルアミド共重合体、カチオン化グアーガム等)、ノニオン性樹脂(例えば、ポリビニルアルコール、ポリ(N−ビニルピロリドン)、N−ビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体、N−ビニルピロリドン−酢酸ビニル−プロピオン酸ビニル共重合体、N−ビニルピロリドン−酢酸ビニル−アミノアルキルアクリレート共重合体、酢酸ビニル−N−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン共重合体、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルホルムアミド、ポリビニルアセトアミド等)、両性樹脂(例えば、アクリル酸オクチルアミド−アクリル酸ヒドロキシプロピル−メタクリル酸ブチルアミノエチル共重合体、N−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン−メタクリル酸エステル共重合体、アクリル酸−メタクリル酸−アクリル酸2−ヒドロキシプロピル−メタクリル酸ジメチルアミノエチル−メタクリル酸エチル−ジアセトンアクリルアミド−N−ビニルピロリドン共重合体及びそのアルカノールアミン液等)等が挙げられる。粘着部には、これらの粘着剤を1種又は2種以上用いることができる。
図3(b)に示すように、粘着部4は塗布された皮膚外用組成物7と接触するため、粘着剤は皮膚外用組成物と親和性の少ないものが好ましい。また、皮膚外用組成物と接して溶解したり、粘着力が低下しないように、皮膚外用組成物に対し安定なものが好ましい。この観点から、粘着剤としてノニオン性樹脂又は両性樹脂が好ましく、両性樹脂がより好ましい。
前述のように、粘着部は基材の透孔をできるだけ塞がないように形成されることが求められる一方、皮膚外用組成物の塗布時にずれたり、剥がれたりしないだけの粘着力も要求される。
両者を実現するためには、上記粘着剤の選択に加え、粘着部の位置に変化をつけることも好ましい。例えば、図5に示すように、基材3を外縁領域8とその内側の観察領域9とにわけ、外縁領域8の皮膚接合面側全体に粘着部を形成し、観察領域9の皮膚接合面側は透孔を塞がないように粘着部を形成することが好ましい。すなわち、外縁領域8では透孔を塞ぐように一様に粘着部が形成されるため、支持体の粘着力を強化することができる。一方、中心の観察領域9では透孔が粘着部により塞がれないため、皮膚上に組成物を直接塗布できる。このような粘着部の塗り分けより、塗膜観察には支障をきたさず、支持体の皮膚への粘着力を上げることができる。
上記観察領域の面積は、基材平面の面積に対して、90%以下であることが好ましく、80%以下であることがより好ましく、10%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましい。
また、上記観察領域の孔開口率が、50%以上100%以下であることが好ましく、80%以上100%以下であることがより好ましい。本発明において、観察領域の孔開口率は下記数式(I)により算出される。

数式(I)
観察領域の孔開口率(%)=(観察領域中の粘着部により塞がれていない透孔の数/観察領域中の全透孔数)×100

なお、透孔が粘着部により塞がれているか否かは、光学顕微鏡によって観察、測定できる。
1−2.皮膚外用組成物の塗布
[皮膚外用組成物]
皮膚外用組成物は、皮膚に製品を直接接触させて使用しうる形態の製品であれば使用できる。例えば、化粧料、医薬品を含む皮膚外用剤が挙げられる。なお、当該化粧料には、日本の薬事法上、化粧品及び医薬部外品の両方に属するものが含まれる。
本発明で用いる皮膚外用組成物は、化粧料が好ましい。化粧料としては、スキンケア化粧料(例えば、化粧水、乳液、美容液、クリーム、オイル、パック、日焼け止め)、メイクアップ化粧料(例えば、口紅、リップグロス、ファンデーション、コンシーラー)、清浄用化粧料(例えば、洗顔料、クレンジング、ボディシャンプー)、等が挙げられる。
皮膚外用組成物の塗布は、当該組成物を通常使用するのと同様に行うことができ、手で塗っても、専用品(ブラシ、スポンジ等)を用いてもよい。
皮膚外用組成物の塗布量は、用いる組成物の通常の使用量とすることが好ましい。例えば、スキンケア化粧料の場合は、塗布量1mg/cm以上が好ましく、4mg/cm以下が好ましい。メイクアップ化粧料の場合、塗布量0.2mg/cm以上が好ましく、0.6mg/cm以下が好ましい。特に、リキッドファンデーション等では、塗布量0.4mg/cm以上が好ましく、0.6mg/cm以下が好ましい。また、パウダーファンデーション等では、塗布量0.2mg/cm以上が好ましく、0.4mg/cm以下が好ましい。
1−3.塗膜の採取
皮膚外用組成物を塗布した後、皮膚から支持体を剥離する。
塗布から剥離までの時間は、観察目的に応じて適宜選択することができる。例えば、複数の支持体を用いて同時に組成物の塗布を行い、剥離を塗布直後、一定時間経過後と順次行っていくことで、塗膜の皮膚上での経時変化を調べることができる。このような経時観察を行うことで、化粧料の使用感の変化、効果の持続性、化粧崩れ等に関する情報が得られる。
図3及び図4に示すように、支持体1を皮膚5から剥離すると、皮膚5の最表部である角質層6の一部が、支持体1とともに皮膚5から剥離する。この時、粘着部4に接合している角質層6とともに、粘着部が形成されていない透孔2の下に位置する角質層6も剥離される。皮膚の角質層は、角層細胞が10〜20層ほど積層されて形成されており、表面から剥がれやすい構造となっている。このため、粘着部4に接合した角質層が剥離する際、粘着部4で囲まれた透孔2の下に位置する角質層6も一緒に剥離することができる。透孔2の下に位置する角質層6の上には、皮膚外用組成物7の塗膜が形成されている。
剥離・採取される角質層の厚さに特に制限はないが、500nm以上が好ましい。また、支持体の角質層採取率は、10%以上100%以下であることが好ましく、30%以上100%以下であることがより好ましい。なお、支持体の角質層採取率は下記数式(II)で算出される。

数式(II)
角質層採取率(%)=(支持体皮膚接合面上に採取された角質層の全面積/支持体平面の面積)×100
2.塗膜及び角質層の観察
採取された皮膚外用組成物の塗膜及び角質層試料の観察方法は特に限定されず、通常の生体試料の観察や分析に用いられる手法を用いることができる。また、本発明の観察方法には、構造や形態観察のみならず、化学的性質の分析や物性の測定なども含まれる。
本発明の方法で採取された観察用試料は、塗膜及び角質層の表面観察、断面観察のいずれにも適し、また構造(形態)観察にも物性測定にも適する。
観察方法として具体的には、光学顕微鏡、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型電子顕微鏡(SEM)、走査型プローブ顕微鏡(SPM)、レーザー共焦点顕微鏡等による形態・構造観察;蛍光X線やエネルギー分散型X線分光法(EDX)、波長分散型X線分光法(WDX)、電子エネルギー損失分光法(Electron Energy-Loss Spectroscopy(EELS))による構成元素や電子構造の解析;X線回折法、電子線回折法等による微細な周期構造(例えば、角質層中の細胞間脂質のラメラ構造、皮膚外用組成物中のラメラ構造など)の解析;等を行うことができる。
中でも、塗膜及び角質層の微細構造まで観察できる点から、SEM観察(例えば、クライオ(Cryo)SEM、低真空SEM)、又はTEM観察(例えば、クライオ(Cryo)TEM)が好ましい。
試料は、観察や分析に適するよう、適宜加工して用いることができる。例えば、顕微鏡観察に適するよう、ミクロトーム等を用いて薄片試料を作成してもよい。また、断面観察を行う場合は、凍結切削法や凍結割断法を用いて断面試料を作成することができる。この場合、塗膜及び角質層試料を支持体ごと液体窒素等で凍結し割断することが好ましい。
以下に、Cryo−SEM及びCryo−TEMを用いた観察例を示すが、他の方法により観察を行なうこともできる。
塗膜及び角質層の断面観察を行う場合、前記工程(3)にて採取した試料を凍結させた後、ナイフで割断し、Cryo-SEM観察を行う。より微細な構造観察を行う場合は、試料凍結後、クライオミクロトームにて切削断面を露出(凍結切削法)させてCryo-SEM観察を行う。さらに微細な構造観察を行う場合は、クライオミクロトームにて切削断面を露出した後、100nm以下程度の厚みで超薄切片を作製し、Cryo-TEM観察を行う。
また、塗膜表面の形態観察は、凍結後にCryo-SEM観察、或いは、凍結による変形が大きい場合は、凍結を行わず低真空SEMモードで観察を行う。
元素分析を行う場合は、低真空SEMモード(例えば、真空度5Pa〜150Pa程度)を用いることが好ましい。熱による試料のダメージが懸念される場合は、試料を冷却しながら元素分析を行うことが好ましく、Cryo-SEM観察条件で低真空SEMモードを実施することも好ましい。観察用の検出器としては、2次電子用検出器、低真空用2次電子用検出器、反射電子検出器などを適宜選択することができる。
3.皮膚外用組成物の評価
得られた観察、分析データに基づいて、皮膚外用組成物の性能を評価することができる。 例えば、皮膚外用組成物の塗膜中のネットワーク構造、ラメラ構造(板状ラメラ構造、球状ラメラ構造、及びこれらのラメラの比率など)、スポンジ様構造、配合されている無機粒子の粒径分布や分散状態、水相、油相の領域判別、皮膚外用組成物の流動性、水分の保持の状態、などを評価することができる。
また、角質層の状態、例えば、角質細胞の形状、核の有無、細胞間脂質のラメラ構造又は水分の保持状態、毛穴の大きさ等、を観察することにより、皮膚外用組成物の使用による効果を評価することができる。
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の方法を開示する。
<1> 下記(1)〜(4)の工程を有する、塗膜観察方法。
(1)透孔を設けた基材と該基材の皮膚接合面側に形成された粘着部とを有する支持体を、皮膚表面に貼着する工程
(2)貼着した支持体の透孔部に、支持体の非皮膚接合面側から皮膚外用組成物を塗布する工程
(3)支持体を皮膚から剥離して、支持体とともに支持体に接合した角質層及び該角質層上に塗布された皮膚外用組成物の塗膜を採取する工程
(4)採取された角質層上の塗膜を観察する工程
<2> 生体の皮膚に用いる、<1>項記載の方法。
<3> 前記基材の開口率が10%以上、好ましくは20%以上、より好ましくは50%以上であり、90%以下、好ましくは85%以下、より好ましくは80%以下である、<1>又は<2>項記載の方法。
<4> 前記透孔の孔面積が0.8μm以上、好ましくは70μm以上、より好ましくは300μm以上、さらに好ましくは700μm以上、636200μm以下、好ましくは196400μm以下、より好ましくは49100μm以下、さらに好ましくは7900μm以下である、<1>〜<3>のいずれか1項記載の方法。
<5> 前記基材平面の面積が0.7mm以上、好ましくは4mm以上、より好ましくは7mm以上、1970mm以下、好ましくは320mm以下、より好ましくは80mm以下である、<1>〜<4>のいずれか1項記載の方法。
<6> 前記基材の厚さが1μm以上、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上、100μm以下、好ましくは50μm以下、より好ましくは20μm以下である、<1>〜<5>のいずれか1項記載の方法。
<7> 前記皮膚外用組成物が化粧料である、<1>〜<6>のいずれか1項記載の方法。
<8> 前記工程(4)において、採取された角質層及び塗膜を支持体とともに凍結割断して、塗膜の断面を観察する、<1>〜<7>のいずれか1項記載の方法。
<9> 前記工程(4)の観察をX線回折法により行う、<1>〜<8>のいずれか1項記載の方法。
<10> 前記工程(4)の観察を走査型電子顕微鏡(SEM)により行う、<1>〜<8>のいずれか1項記載の方法。
<11> 前記SEMが、低真空SEMである、<10>項記載の方法。
<12> 前記SEMが、クライオSEMである、<10>項記載の方法。
<13> 下記(1)〜(3)及び(5)の工程を有する、角質層の観察方法。
(1)透孔を設けた基材と該基材の皮膚接合面側に形成された粘着部とを有する支持体を、皮膚表面に貼着する工程
(2)貼着した支持体の透孔部に、支持体の非皮膚接合面側から皮膚外用組成物を塗布する工程
(3)支持体を皮膚から剥離して、支持体とともに支持体に接合した角質層及び該角質層上に塗布された皮膚外用組成物の塗膜を採取する工程
(5)採取された角質層を観察する工程
<14> 下記(1)〜(3)の工程を有する、塗膜観察用試料の調製方法。
(1)透孔を設けた基材と該基材の皮膚接合面側に形成された粘着部とを有する支持体を、皮膚表面に貼着する工程
(2)貼着した支持体の透孔部に、支持体の非皮膚接合面側から皮膚外用組成物を塗布する工程
(3)支持体を皮膚から剥離して、支持体とともに支持体に接合した角質層及び該角質層上に塗布された皮膚外用組成物の塗膜を採取する工程
<15> 下記(1)〜(3)の工程を有する、角質層観察用試料の調製方法。
(1)透孔を設けた基材と該基材の皮膚接合面側に形成された粘着部とを有する支持体を、皮膚表面に貼着する工程
(2)貼着した支持体の透孔部に、支持体の非皮膚接合面側から皮膚外用組成物を塗布する工程
(3)支持体を皮膚から剥離して、支持体とともに支持体に接合した角質層及び該角質層上に塗布された皮膚外用組成物の塗膜を採取する工程
<16> 請求項1〜13のいずれか1項記載の観察方法により得られた観察結果に基づいて、皮膚外用組成物の性能を評価する、皮膚外用組成物の評価方法。
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例 塗膜観察用試料の調製とその観察
1.支持体の作製
基材として透過型電子顕微鏡(TEM)観察用グリッドG600HH、G600TT、及びH400(製品名、日新EM社製)を用いた。各グリッドの形状等を表1に、透孔の形状を図6に示す。
基材の片面に接着剤を塗布して粘着部を設けた。粘着剤は、接着剤原液(アクリル酸エステル系樹脂、商品名:ポリシック5423A、三洋化成社製)を酢酸エチル(関東化学社製)で10倍希釈したものを使用した。
直径3mmの基材を、外縁領域とその内側の観察領域(直径2mm)とに分けて、下記に示すように粘着剤の塗り分けを行った。
直径4mmのシリコン板上に直径3mmの基材を載せた。基材の中心上に直径2mmのシリコン板を載せ、基材の観察領域を覆った。直径2mmのシリコン板で隠蔽されていない基材の外縁領域全体に粘着剤を均一に塗布した。酢酸エチルを揮発させた後、基材を取り出した。
次に、図7に示す手順で基材の観察領域に粘着剤を塗布した。外縁領域に粘着剤を塗布した基材3を、2枚のシリコン板10の間に挟んだ。シリコン板10は、直径4mmで、中心に直径2mmの穴があいており、基材3の外縁領域が覆われる。シリコン板10の両端をさらに2本のナイロンチューブ11及び12で挟み、シリコン板10とナイロンチューブ11、12がずれないように固定した。ナイロンチューブ12をシリンジと接続した。シリンジと接続されていないナイロンチューブ11が上となるようにチューブを垂直に立てた(図7(a))。ナイロンチューブ11の穴の上部から、粘着剤13を2μL滴下し、基材3の観察領域に粘着剤を塗布した(図7(c))。次に、シリンジを引いて基材3の下方から空気1mLを吸引することで、観察領域の透孔部に付着した粘着剤13を除いた(図7(d))。光学顕微鏡(商品名:ECLIPS600POL(NIKON製)、対物レンズ:20倍、接眼レンズ:10倍)で測定したところ、基材観察領域の孔開口率は99%であった。
2.塗膜観察用試料の調製
上記で作製した支持体を用いて、塗膜観察用試料を調製した。
被験者の前腕をハンドソープで洗浄後(ポンプ2回分、洗浄時間30秒間)、流水で1分間洗い流し、キムタオルで水分をふき取り、採取を行う部屋で15分間安静にした。
被験者の前腕内側に、支持体の粘着部形成面を貼り付けた後、反対の面から圧力500g/cmで10秒間押さえた。次いで、貼り付けた支持体の上から皮膚に2mg/cmとなるように化粧料A(ソフィーナ ジェンヌ;花王社製)を塗布した(図3(a))。その後、ピンセットで支持体を皮膚から剥がした。
3.X線回折
本発明の方法では、皮膚外用組成物を凹凸のある支持体の上から塗布するため、通常の使用態様(皮膚に直接塗布する)と比べて、支持体の構造による影響で塗膜が変形することが懸念される。また、支持体を剥離するときに受ける応力などによって、塗膜が変形することも懸念される。そこで、下記によりこの点を検証した。
上記2.で調製した塗膜観察用試料をX線回折により観察した。
皮膚から剥がした支持体をX線試料台(アルミニウム基板)に載せ、下記に示す条件でX線回折を行った(試料A)。比較のため、化粧料AをX線試料台に直接塗布(塗布量:2mg/cm)し、下記に示す条件でX線回折を行った(比較試料B)。
X線回折装置・条件
・装置:MXP21(現ブルカー・エイエックス社製)
・X線源:対向回転陰極Cu(波長1.54Å)、電圧40〜50kV、電流50〜400mA
・測定条件:X線照射面積(25mm×25mm)
・試料A:X線出力(20kW)、走査速度(0.007deg/min)、膜測定時には膜を保持するためアルミニウム基板を用いた。
・試料B:X線出力(2kW)、走査速度(0.1deg/min)
各試料のX線回折の結果を、2θ(0.5度〜3.5度)の範囲で図8に示す。
図8において、比較試料Bでは2つの回折ピークが観察され、これらは化粧料A塗膜のラメラ層の間隔を示すものである。
一方、試料Aでも、比較試料Bと同じ位置に2つの回折ピークが観察された。すなわち、支持体を介して化粧料を塗布した場合も、平らな基板上に塗布した場合と同じラメラ間隔が保たれ、ラメラ構造が維持されていることが確認された。このことは、本発明の方法が、観察結果に影響するほどの塗膜の変形を生じさせるものではないことを支持するものである。
4.クライオSEM(Cryo−SEM)観察
前記2.で調製した塗膜観察用試料の断面観察を、クライオSEMにより行った。クライオSEM装置、観察条件を下記に示す。
皮膚から剥離した支持体を、速やかに液体窒素中に浸漬させ急速凍結した。液体窒素中で片刃カミソリを冷却した後、支持体の上から片刃カミソリを当て撃力を加えて支持体を割断した。液体窒素中で支持体断面が観察できる方向に試料台に固定した。クライオSEMの試料台の温度が−120度以下になっていることを確認し、試料台をクライオSEMに挿入し、氷を昇華させた。その後、温度を低下させ試料台の温度が−100度以下になったこと確認し、観察した。
クライオSEMの観察像を図9及び10に示す。なお、図10は、図9の塗膜部分を拡大した写真である。
クライオSEM装置・条件
・クライオSEM:走査型電子顕微鏡S−4300SE/N(日立製)にクライオシステム(日立製)を装着
観察条件:加速電圧1kV、Gunブライトネス3、昇華条件:温度−80度5分間
使用検出器:2次電子用検出器
図9に示すように、試料断面には、支持体、剥離した角質層、及びその上に化粧料Aの塗膜が観察された。さらに、図9の塗膜部分を拡大した図10に示すように、塗膜には化粧料Aの特徴的な構造である球晶ラメラや油滴の構造が確認された。
1 支持体
2 透孔
3 基材
4 粘着部
5 皮膚
6 角質層
7 皮膚外用組成物
8 外縁領域
9 観察領域
10 シリコン板
11、12 ナイロンチューブ
13 粘着剤

Claims (13)

  1. 下記(1)〜(4)の工程を有する、塗膜観察方法。
    (1)透孔を設けた基材と該基材の皮膚接合面側に形成された粘着部とを有する支持体を、皮膚表面に貼着する工程
    (2)貼着した支持体の透孔部に、支持体の非皮膚接合面側から皮膚外用組成物を塗布する工程
    (3)支持体を皮膚から剥離して、支持体とともに支持体に接合した角質層及び該角質層上に塗布された皮膚外用組成物の塗膜を採取する工程
    (4)採取された角質層上の塗膜を観察する工程
  2. 生体の皮膚に用いる、請求項1記載の方法。
  3. 前記基材の開口率が10%以上である、請求項1又は2記載の方法。
  4. 前記透孔の孔面積が0.8μm以上、636200μm以下である、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
  5. 前記基材平面の面積が0.7mm以上、80mm以下である、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
  6. 前記皮膚外用組成物が化粧料である、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
  7. 前記工程(4)において、採取された角質層及び塗膜を支持体とともに凍結割断して、塗膜の断面を観察する、請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。
  8. 前記工程(4)の観察をX線回折法により行う、請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
  9. 前記工程(4)の観察を走査型電子顕微鏡(SEM)により行う、請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
  10. 下記(1)〜(3)及び(5)の工程を有する、角質層の観察方法。
    (1)透孔を設けた基材と該基材の皮膚接合面側に形成された粘着部とを有する支持体を、皮膚表面に貼着する工程
    (2)貼着した支持体の透孔部に、支持体の非皮膚接合面側から皮膚外用組成物を塗布する工程
    (3)支持体を皮膚から剥離して、支持体とともに支持体に接合した角質層及び該角質層上に塗布された皮膚外用組成物の塗膜を採取する工程
    (5)採取された角質層を観察する工程
  11. 下記(1)〜(3)の工程を有する、塗膜観察用試料の調製方法。
    (1)透孔を設けた基材と該基材の皮膚接合面側に形成された粘着部とを有する支持体を、皮膚表面に貼着する工程
    (2)貼着した支持体の透孔部に、支持体の非皮膚接合面側から皮膚外用組成物を塗布する工程
    (3)支持体を皮膚から剥離して、支持体とともに支持体に接合した角質層及び該角質層上に塗布された皮膚外用組成物の塗膜を採取する工程
  12. 下記(1)〜(3)の工程を有する、角質層観察用試料の調製方法。
    (1)透孔を設けた基材と該基材の皮膚接合面側に形成された粘着部とを有する支持体を、皮膚表面に貼着する工程
    (2)貼着した支持体の透孔部に、支持体の非皮膚接合面側から皮膚外用組成物を塗布する工程
    (3)支持体を皮膚から剥離して、支持体とともに支持体に接合した角質層及び該角質層上に塗布された皮膚外用組成物の塗膜を採取する工程
  13. 請求項1〜10のいずれか1項記載の観察方法により得られた観察結果に基づいて、皮膚外用組成物の性能を評価する、皮膚外用組成物の評価方法。
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