しかしながら、上記従来の髄内固定システムでは以下のような問題がある。すなわち、特許文献1のシステムでは、遠位側と近位側の骨ねじ(軸状部材)に与える固定力が固定スリーブ188に形成した切り込み191による弾性力に依存したり(図8)、固定スリーブ208の変形特性、並びに、近位側の開口部210と遠位側の開口部211の間の寸法に依存したりする(図9)ため、遠位側と近位側の骨ねじ(軸状部材)が共に横断孔に挿通されていないと保持力が発生しない。また、保持力を高めると骨ねじを挿入しにくくなるので、手術時の操作性が悪いとともに、骨ねじ(軸状部材)を確実に拘束するほどの保持力を与えることはできない。さらに、遠位側と近位側の骨ねじ(軸状部材)に対して異なる係合態様とすることもできない。
一方、特許文献3に記載の構造では、制御部材1の異なる箇所5aと7でそれぞれ遠位側の骨ねじ33(軸状部材)を挟圧保持するとともに近位側の骨ねじ29(軸状部材)に係合するため、いずれか一方の骨ねじ(軸状部材)のみを用いる場合でも使用することができる。しかし、この構造では制御部材1に設けた挿通路7内での締め付けにより骨ねじ33(軸状部材)を保持するため、制御部材1を大きく変形させる必要があり、骨ねじ(軸状部材)の保持固定状態を維持するための耐久性に支障が出る可能性がある。また、制御部材1の変形による締め付けを用いるため、骨ねじ33(軸状部材)の断面を角状に形成するなどの工夫はなされているものの、種々の状況に対応するのに充分なほどの保持力を得ることは難しい。
そこで、本発明は上記問題点を解決するものであり、その課題は、手術時の操作性を犠牲にすることなく、本体に設けた横断孔に挿通する軸状部材の保持力を容易に得ることのできる髄内固定システムを提供することにある。
斯かる実情に鑑み、本発明の髄内固定システムは、全体に延長形状を有するとともに、前記延長形状の少なくとも一端の側において軸線の方向に伸びる軸穴、および、前記軸線の方向と交差する方向に貫通し前記軸穴と連通する少なくとも一つの横断孔を備える髄内釘本体と、前記軸穴の内部において前記軸線の周りに回転可能若しくは前記軸線と交差する方向に移動可能に配置され、前記横断孔に連通する貫通開口部を備えた係合部材と、前記軸穴の内部において前記髄内釘本体の内面により前記軸線の周りに回転可能若しくは前記軸線の方向に移動可能に案内され、前記係合部材に係合する操作部材と、前記横断孔および前記貫通開口部に挿通される軸状部材と、を具備し、前記軸状部材が前記横断孔および前記貫通開口部に挿通された状態において、前記操作部材を前記係合部材に対して前記軸線の周りの回転方向若しくは前記軸線と交差する方向に係合させることにより前記係合部材が前記操作部材から受ける規制力により前記髄内釘本体に対して回転若しくは移動し、前記横断孔の孔内側縁と前記貫通開口部の開口内側縁との間で前記軸状部材を挟み付けることで締め付け保持可能に構成されていることを特徴とする。
本発明によれば、髄内釘本体の横断孔に軸状部材を挿入し、髄内釘本体の内部に配置された係合部材の貫通開口部を通して髄内釘本体を貫通するように挿通させてから、操作部材を操作することで、操作部材に係合させた係合部材を軸線の周りに回転させて、或いは軸線と交差する方向に移動させて、髄内釘本体の横断孔の孔内側縁と係合部材の貫通開口部の開口内側縁との間で軸状部材を挟み付けることで、軸状部材を締め付け保持、或いは、固定することができる。したがって、操作部材を係合部材が軸線の周りに僅かに回転したり軸線と直交する方向に移動したりするように操作するのみで、軸状部材を容易に髄内釘本体に保持することが可能になる。また、係合部材を髄内釘本体に対して軸線周りに回転させたり軸線方向と交差する方向に移動させたりすることで、横断孔の孔内側縁と貫通開口部の開口内側縁との間で軸状部材を挟み付けるため、係合部材自体を変形させる必要がないことから、係合部材の剛性が確保しやすくなり、しかも、耐久性を確保することも容易になる。さらに、係合部材の剛性を或る程度確保すれば、髄内釘本体との間で軸状部材を高い締め付け力で確実に固定することが可能になる。
本発明の第一の構成として、前記操作部材は、前記軸穴の内面に形成された雌ねじに螺合するとともに前記軸穴の内部において前記係合部材に対して前記一端の側に配置され、前記係合部材に対して回転方向に係合可能な係合構造を備えることが好ましい。これによれば、操作部材を雌ねじに螺合させた状態で操作部材を係合部材に対して回転方向に係合させることができるので、操作部材を回転操作することにより係合部材を軸線の周りに回転させることができる。したがって、簡易な構造で上記雌ねじと操作部材とからなる回転操作手段を構成することができる。ここで、上記係合構造は、後述の螺合限界を有する螺合構造の他に、回転方向に向けて相互に当接する面を有する切り欠き、凹凸、キーと溝などで構成することができる。
この場合において、前記操作部材は操作側螺合部を有し、前記係合部材は前記操作側螺合部に螺合する被操作側螺合部を有し、前記係合構造は、前記操作側螺合部と前記被操作側螺合部からなる螺合構造が螺合限界に達したときに前記操作部材と前記係合部材とが回転方向に係合する構造であることが望ましい。上記螺合限界は、操作側螺合部と被操作側螺合部がそれ以上相対的に回転させることができなくなる限界を言う。この螺合限界は、操作側螺合部と被操作側螺合部との螺合時において操作部材と係合部材が干渉してそれ以上のねじ込みができなくなる停止構造によって設けることができる。この停止構造は、例えば、操作側螺合部と被操作側螺合部の少なくとも一方のねじ溝が終端する箇所で構成することができ、また、螺合箇所以外の部位の間の当接構造、例えば、後述する実施形態のように操作部材の段差面と係合部材の基端部の当接構造であってもよく、さらに、操作側螺合部と被操作側螺合部からなる螺合構造(どちらか一方の螺合部)に装着されたOリングなどの停止部材であってもよい。
これによれば、操作部材を回転操作して、その操作側螺合部を係合部材の被操作側螺合部に螺合させていき、螺合限界に達したときに操作部材が係合部材にそれ以上相対的に回転させることができなくなることによって操作部材と係合部材が回転方向に係合した状態となる。また、この場合には、操作部材と係合部材は軸線方向にも一体化した状態となる。したがって、この状態でさらに操作部材を回転させると係合部材も同様に回転するため、軸状部材を横断孔の孔内側縁と貫通開口部の開口内側縁との間で挟み付けることで、締め付け保持若しくは固定することが可能になる。この場合には、係合部材が軸線周りの既定の向きに回転することで横断孔の孔内側縁と貫通開口部の開口内側縁との間で挟み付けられた軸状部材に対して、上記既定の向きとは逆向きに外力が加わったときには、当該外力は係合部材が操作部材に対してそれ以上回転しない向きに与えられるため、上記外力により操作部材と係合部材の間の回転方向の係合状態が失われることはない。また、上記外力は係合部材を介して操作部材を逆向きに回転させようとするものの、操作部材と係合部材との間に軸線方向の力を生じさせるため、操作部材の髄内釘本体に対する螺合構造が締め付け力を維持する効果をもたらす。
一方、上記とは別の観点から、本発明において、前記操作部材は、前記軸穴の内部において前記係合部材に対して前記一端の側に回転可能な状態で配置され、前記係合部材に対して回転方向に係合可能な係合構造を備え、前記操作部材は操作側螺合部を有し、前記係合部材は前記操作側螺合部に螺合する被操作側螺合部を有し、前記係合構造は、前記操作側螺合部と前記被操作側螺合部からなる螺合構造が螺合限界に達したときに前記操作部材と前記係合部材とが回転方向に係合する構造であることが望ましい。
この場合において、前記操作部材が前記軸穴の内面に形成された雌ねじに螺合するとともに前記軸穴の内部において前記係合部材に対して前記一端の側に配置されるときには、前記操作側螺合部と前記被操作側螺合部からなる螺合構造(第2の螺合構造)は、前記操作部材と前記雌ねじからなる螺合構造(第1の螺合構造)と同じ螺合の向きを有することが好ましい。このようにすると、操作部材を髄内釘本体の雌ねじに対してねじ込むことにより、操作部材の操作側螺合部が係合部材の被操作側螺合部にねじ込まれる。このため、髄内釘本体内に係合部材を予め収容しておき、操作部材を後から髄内釘本体内にねじ込んで係合部材に螺合させるといったことが可能になる。もっとも、係合部材だけでなく操作部材も予め髄内釘本体内に収容し、さらに、操作部材を係合部材と予め螺合させておくようにしておけば、操作側螺合部が被操作側螺合部に対して操作部材の雌ねじに対する螺合の向きと逆向きに螺合可能に構成されていてもよい。
次に、本発明の第二の構成として、前記操作部材は前記係合部材に向けて突出する凸部若しくは凹部からなる操作側係合部を備え、前記係合部材は前記操作側係合部に嵌合する凹部若しくは凸部からなる被操作側係合部を備え、前記操作側係合部が前記被操作側係合部に嵌入すると前記係合部材が前記操作側係合部に規制されて前記軸線及び前記横断孔の軸線と交差する方向に移動することが好ましい。この場合に、前記操作部材は前記軸穴の内面に形成された雌ねじに螺合するとともに前記軸穴の内部において前記係合部材に対して前記一端の側に配置され、前記操作側係合部が前記雌ねじに対して同軸に設けられるとともに前記被操作側係合部が前記係合部材において偏心して設けられることが望ましい。また、前記操作側係合部には操作側螺合部が設けられ、前記被操作側係合部には前記操作側螺合部と螺合する被操作側螺合部が設けられることが望ましい。なお、この第二の構成においても、上記第一の構成において記述した、操作側螺合部と被操作側螺合部に関する内容、及び、第一の螺合構造と第二の螺合構造に関する内容を同様に適用することができる。
本発明の第三の構成としては、前記髄内釘本体は前記横断孔よりも前記一端とは反対側に設けられた第2の横断孔を有し、前記係合部材は前記軸線の方向に移動可能に配置され、前記係合部材に設けられた先端係合部が前記第2の横断孔内に突出して前記第2の横断孔に挿通された第2の軸状部材に係合可能に構成されることが好ましい。
この場合において、上述の雌ねじに螺合する前記操作部材を回転操作したときに前記操作部材が軸線方向へ移動するに従って前記係合部材が軸線方向へ移動するように構成されることが望ましい。これによれば、操作部材を回転操作することにより、操作部材が雌ねじとの螺合構造により軸線方向へ移動する。ここで、前記操作部材が操作側螺合部を有し、前記係合部材が前記操作側螺合部に螺合する被操作側螺合部を有する場合には、この操作部材の移動態様と、操作側螺合部と被操作側螺合部からなる螺合構造の螺合態様とに応じて、係合部材を軸線方向に移動させることが可能になる。
また、前記操作部材は、前記軸穴の内部において前記係合部材に対して前記一端の側に回転可能な状態で配置され、前記操作部材は操作側螺合部を有し、前記係合部材は前記操作側螺合部に螺合する被操作側螺合部を有し、前記操作部材が回転操作されることで前記操作側螺合部と前記被操作側螺合部からなる螺合構造を介して前記係合部材が軸線方向に移動可能に構成されることが望ましい。
上記の操作側螺合部と被操作側螺合部を有する場合において、前記操作側螺合部と前記被操作側螺合部からなる螺合構造(第2の螺合構造)は、前記操作部材と前記雌ねじからなる螺合構造(第1の螺合構造)と同じ螺合の向きを有することが好ましい。これによれば、前述のように、操作部材を髄内釘本体の雌ねじに対してねじ込むことにより、操作部材の操作側螺合部が係合部材の被操作側螺合部にねじ込まれる。このため、髄内釘本体内に係合部材を予め収容しておき、操作部材を後から髄内釘本体内にねじ込んで係合部材に螺合させるといったことが可能になる。また、操作部材と雌ねじからなる第1の螺合構造の第1の螺合ピッチと、操作側螺合部と被操作側螺合部からなる第2の螺合構造の第2の螺合ピッチとを異ならしめ、これらの間に差を設けることにより、当該差によって操作部材の回転操作量に対する係合部材の軸線方向の移動量の割合を定めることができる。このため、それぞれの螺合ピッチをそれほど小さくしなくても、係合部材の軸線方向の位置を精密に調整することが可能になる。
この場合に、例えば、第1の螺合構造の螺合ピッチ(第1の螺合ピッチ)よりも第2の螺合構造の螺合ピッチ(第2の螺合ピッチ)を小さくすることが望ましい。これによれば、第2の螺合構造が第1の螺合構造と同じ螺合の向きを有するとともにその第1の螺合ピッチよりも小さい第2の螺合ピッチを有するため、操作部材を回転操作することで第1の螺合構造の第1の螺合ピッチで操作部材が前記一端の反対側へ移動する場合には、これに伴って係合部材が第2の螺合構造の第2の螺合ピッチで前記一端の側に移動し、また、上記のように第1の螺合ピッチよりも第2の螺合ピッチが小さいことから、係合部材は、第1の螺合ピッチと第2の螺合ピッチの差に応じて前記反対側へ移動することになる。したがって、操作部材を回転操作したときの操作部材の所定の回転量に対する操作部材の軸線の方向への移動量よりも、係合部材の軸線の方向への移動量を低減することができるため、係合部材と第2の軸状部材との当接状態の制御を容易かつ高精度に行うことができる。以上の本発明に係る第一の構成、第二の構成及び第三の構成においてそれぞれ記載した各事項は、異なる構成間の事項であっても種々の組み合わせで種々の実施例として実現することができる。
次に、本発明の別の髄内固定システムは、全体に延長形状を有するとともに、前記延長形状の少なくとも一端の側において軸線の方向に伸びる軸穴、および、前記軸線の方向と交差する方向に貫通し前記軸穴と連通する少なくとも一つの横断孔を備える髄内釘本体と、前記横断孔に挿通される軸状部材と、前記軸穴の内部において前記軸線の方向に移動可能に配置されるとともに前記横断孔に突出可能に構成された係合部材と、前記本体に対して前記係合部材を前記軸線の方向に移動させ、前記横断孔に挿通された前記軸状部材に当接させる移動操作手段と、を具備し、前記移動操作手段は、前記軸穴の内部において前記係合部材の前記一端の側に配置される操作部材と、前記髄内釘本体と前記操作部材との間に設けられ、第1の螺合ピッチを備えた第1の螺合構造と、前記係合部材と前記操作部材との間に設けられ、前記第1の螺合ピッチと異なる第2の螺合ピッチを備えた第2の螺合構造と、を有することを特徴とする。この場合に、前記第1の螺合構造と前記軸線の周りに同じ螺合の向きを有することが好ましい。特に、第2の螺合ピッチが第1の螺合ピッチより小さいことが望ましい。
本発明によれば、第1の螺合構造と第2の螺合構造を介して操作部材により係合部材の軸線方向の位置を制御することができるため、個々の螺合構造の螺合ピッチを小さくしなくても、状況に応じた種々の態様で、操作部材に対する回転操作量と係合部材の軸線方向の移動量との関係を定めることができる。特に、第1の螺合構造と第2の螺合構造とが軸線の周りに同じ螺合の向きを有する場合には、前述のように、操作部材を髄内釘本体の雌ねじに対してねじ込むことにより、操作部材が係合部材にねじ込まれる。このため、髄内釘本体内に係合部材を予め収容しておき、操作部材を後から髄内釘本体内にねじ込んで係合部材に螺合させるといったことが可能になる。また、この場合には、操作部材を回転操作することで第1の螺合構造の第1の螺合ピッチで操作部材が前記一端の反対側へ移動する際に、これに伴って係合部材が第2の螺合構造の第2の螺合ピッチで前記一端の側に移動する。このとき、上記のように第1の螺合ピッチと第2の螺合ピッチが異なると、係合部材は、第1の螺合構造と第2の螺合構造における螺合の向きの関係、並びに、第1の螺合ピッチと第2の螺合ピッチの差に応じて軸線方向へ移動することになる。したがって、操作部材を回転操作したときの操作部材の所定の回転量に対する操作部材の軸線の方向への移動量と、係合部材の軸線の方向への移動量との関係を状況に応じて適宜に設定することができるため、係合部材と第2の軸状部材との当接状態の制御の容易性や精度を容易に最適化することができる。なお、このときの係合部材の軸線周りの回転は、横断孔に骨ねじが挿通されることによって規制されるが、係合部材の軸線周りの回転をさらに確実に規制するために、髄内釘本体と係合部材との間に、前記軸線周りの回転を規制しつつ、前記軸線方向に案内する案内構造を設けることが好ましい。
以上の各発明においては、手術後における軸状部材によって保持される骨片の回転や移動等による事故を回避するために、横断孔に挿通される軸状部材の回転を防止するが軸線方向の移動を許容する態様と、同軸状部材の回転と軸線方向への移動を共に防止する態様とを確実に実現することが重要である。また、髄内釘本体が長骨の髄腔内に挿入されるために、係合部材の軸線周りの回転操作や軸線方向の移動操作を操作時の感触等により容易かつ正確に行う必要がある。したがって、回転操作手段や移動操作手段による係合部材の制御は極めて重要であり、当該制御を容易かつ確実に、或いは、容易かつ高精度に行うことは極めて効果的である。
本発明によれば、手術時の操作性を犠牲にすることなく、髄内釘本体に設けた横断孔に挿通する軸状部材の固定力を確実に得ることのできる髄内固定システムが実現されるという優れた効果を奏し得る。
次に、添付図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。最初に、図1および図2を参照して本発明に係る髄内固定システムに相当する上記の第一の構成及び第三の構成としての、髄内釘100の第1実施形態の全体構成について説明する。なお、本明細書においては、髄内釘100の大腿骨への適用時の姿勢により、髄内釘の基端部(側)を近位部(側)とし、先端部(側)又は末端部(側)を遠位部(側)と称することがある。ただし、本発明は本実施形態のような適用態様(姿勢)や適用部位に限定されるものではなく、任意の位置関係で適宜の骨部分(一般的には、大腿骨の他、脛骨、上腕骨、橈骨などの各種の長骨)に適用される髄内釘を含む髄内固定システムを広く包含するものである。
髄内釘100は、軸線100Xに沿って連続する近位部111と遠位部112を備えた延長形状を備えた髄内釘本体110を有する。図示例では、近位部111は遠位部112より太く構成され、また、近位部111と遠位部112の軸線は僅かに屈折している。髄内釘本体110は、軸線100Xに沿って延長方向に貫通する軸穴113を備えている。また、近位部111には、上記軸穴113と交差し、軸線100Xを横切るように形成された横断孔114、115が設けられている。図示例では横断孔114、115は斜めに軸線100Xを横切るように傾斜した軸線を備えている。これは、髄内釘本体110が大腿骨の近位部の髄腔内に挿入されたとき、大腿骨の骨頭内に向けて軸線10X、20Xを備えた骨ねじ10、20を斜め下方より導入するためである。なお、髄内釘本体110の遠位部112にはほぼ水平に貫通する他の横断孔116、117も形成される。
横断孔115は髄内釘本体110の近位側に形成され、横断孔114は横断孔115に対して髄内釘本体110の遠位側に形成される。横断孔114、115はいずれも近位部111において形成されている。軸穴113のうち、近位端に開口する端部開口113aから横断孔114、115に到達する部分までの範囲は他の部分と比べて開口断面積が大きく構成されている。図2に示すように、軸穴113の内部(上記の開口断面積が大きく構成された部分)には係合部材121が収容されている。なお、端部開口113aの一部に設けられた切り欠き119は、髄内釘本体110を骨内に導入する際に端部開口113aに接続される図示しない接続器具(ターゲットデバイス)の突起(キー)が嵌合する凹部(キー溝)である。
係合部材121と髄内釘本体110との間にはコイルばねよりなる弾性部材122が配置されている。係合部材121にはフランジ状に張り出した基端部121gが設けられ、この基端部121gに形成された近位側の外面段差と、軸穴113の内面に形成された遠位側の内面段差との間に上記弾性部材122が保持されている。この弾性部材122は係合部材121を常に近位側へ付勢している。
係合部材121は、軸線100Xに沿って貫通する軸穴121aと、上記横断孔114内に突出可能に構成された先端係合部121bと、上記横断孔115に連通し、横断孔115に挿通された骨ねじ20が挿通可能となるように横断孔115に対応する位置に形成された貫通開口部121cと、外側面上において軸線100Xに沿って伸びるように形成されたガイド溝121dとを備えている。貫通開口部121cは、横断孔115の軸線方向に沿って貫通するように傾斜した軸線を有する。また、貫通開口部121cは、係合部材121が図2に示す初期位置よりも軸線方向先端側(遠位側)に移動したときでも横断孔115に骨ねじ20を挿通させることができるように、軸線方向に延長された開口形状を備えている。また、先端係合部121bは、図示例では骨ねじ10に当接する部分が軸線方向に延長された形状とされる。図示例では先端係合部121bは軸穴121aの先端側開口部の両側にわたり形成されている。これにより、先端係合部121bは骨ねじ10の外周面に対してその軸線方向のより広い範囲にわたって接触するため、手術後に骨ねじ10に上下・前後方向の応力変動が加わっても骨ねじ10の軸線周りの回転(スライドフリー状態の場合)や軸線方向の位置ずれ(スライドロック状態の場合)を回避することができる。なお、先端係合部121bの形状は、骨ねじ10に係合することで骨ねじ10をその回転方向と軸線方向の少なくとも一方に保持できる形状であれば特に限定されない。
係合部材121の基端部121gに開口する上記軸穴121aのうち基端側(近位側)の開口縁寄りにある穴部分は、上記操作部材に相当する後述するエンドキャップ125の先端凸部125fを受け入れ可能な大きさの基端側案内孔部121eとされている。また、この基端側案内孔部121eの奥側(すなわち、係合部材121の先端側(遠位側))の内周には、上記被操作側螺合部に相当する雌ねじ121fが形成される。なお、係合部材121の基端部121gは軸穴121aの開口縁から周囲に向けて平坦に形成されている。上記雌ねじ121fは上記先端凸部125fの外周に形成された雄ねじ125gに螺合可能に構成されている。雌ねじ121fのねじ山は基端側案内孔部121eの内周面から徐々に立ち上がるように形成され、ねじ溝の底は基本的に上記基端側案内孔部121eと同じ内径を有している。
エンドキャップ125の雄ねじ125gと係合部材121の雌ねじ121fからなる第2の螺合構造は、エンドキャップ125を右回転させると係合部材121内にねじ込まれる右ねじである。ただし、これらの雌ねじ121fと雄ねじ125gは、後述するようにエンドキャップ125の基部125aの外周に形成された雄ねじ125bと、これに螺合する上記軸穴113の内周に形成された後述する雌ねじ118からなる第1の螺合構造(エンドキャップ125を右回転させると軸穴113内にねじ込まれる右ねじである。)と同じねじ(螺合)の向きを有するものであることが好ましい。
軸穴113内において、上記係合部材121の近位側には保持部材123が配置されている。この保持部材123は、軸線100Xに沿って貫通する軸穴123aと、外周に形成された雄ねじ123bとを備えている。この雄ねじ123bは軸穴113の内面に形成された雌ねじ118に螺合している。軸穴123aの少なくとも近位側の一部には六角穴などといった、ドライバーやレンチなどの回転工具と係合可能な工具係合構造が形成されている。保持部材123は軸穴113の内部に形成された段部113bに当接するまでねじ込まれ、その位置で係合部材121に対して基端側から当接することで、弾性部材122により基端側に付勢される係合部材121の軸線100Xの方向の位置を規制するとともに、係合部材121が軸穴113の端部開口113aから脱出することを防止している。図2に示すように、係合部材121の基端部121gが弾性部材122の弾性力により保持部材123に当接している初期位置では、係合部材121の先端係合部121bは横断孔114の内部に突出しない状態とされる。これにより、骨ねじ10をスムーズに横断孔114内に挿通させることができる。
なお、図示例では、係合部材121は、弾性部材122により付勢された状態で保持部材123に当接することによって初期位置に配置されるとともに、軸線100Xの方向の先端側に移動可能に構成されている。しかしながら、係合部材121と保持部材123との間に第2の弾性部材を介在させることにより、係合部材121が上下両側から弾性的に位置決めされる構造としてもよい。この場合には係合部材121は軸線100Xの方向に沿って、先端側だけでなく基端側にも移動可能に構成される。
係合部材121の上記ガイド溝121dには髄内釘本体110に固定された規制ピン124が軸線100Xの方向にスライド可能に嵌合している。この規制ピン124は髄内釘本体110の近位部111の壁面を貫通した状態で当該壁面に固定されている。これにより、係合部材121は髄内釘本体110に対して軸線100X周りの回転が既定の範囲内に規制されるものの、保持部材123に当接する初期位置から遠位側へ向けて軸線100Xに沿った方向には移動自在とされる。すなわち、上記ガイド溝121dと規制ピン124は、係合部材121が軸線100X周りに回転することを規制しつつ、軸線100X方向へ移動することを許容する、係合部材121に対する案内構造を構成している。
ただし、本実施形態では、係合部材121の軸線100X周りの回転規制の態様は、上記の既定の範囲内での係合部材121の回転を許容するものとなっている。上記の既定の範囲は、横断孔115に挿通された骨ねじ20が横断孔115の孔内側縁と係合部材121の貫通開口部121cの開口内側縁との間で骨ねじ20を挟み付け、締め付け保持することが可能となるように設定される。すなわち、この既定の範囲は、後述するように、少なくとも、横断孔115に挿入した骨ねじ20を支障なく貫通開口部121cに挿通できる係合部材121の軸線100X周りの角度位置と、横断孔115の孔内側縁の少なくとも係合部材121に対して一方側にある孔内側縁端(図5に示す115pと115p′の一方)と、同じ一方側において孔内側縁端(115p、115p′)とは横断孔115の軸線を挟んで反対側にある貫通開口部121cの開口内側縁端(図5に示す121iと121i′の一方)とによって骨ねじ20を挟み付けることのできる角度位置との間で、係合部材121を回転可能にすることのできるように設定される。
また、軸穴113には端部開口113aから操作部材(位置調整ねじ)である図2に示すエンドキャップ125がねじ込まれる。エンドキャップ125は、軸線方向の基端側に大径の基部125aを有し、この基部125aの外周に上記雌ねじ118に螺合する雄ねじ125bを備えている。また、基部125aの先端側(遠位側)には、先端側に向いた図示例では環状の段差面125cの内側から基部125aより小径の中間部125dが突出している。この中間部125dは上記保持部材123の軸穴123a内に挿通可能かつ回転可能に構成される。この中間部125dのさらに先端側(遠位側)には、先端側に向いた図示例では環状の段差面125eの内側から中間部125dより小径の上記先端凸部125fが突出している。また、上述のように先端凸部125fの外周には、上記操作側螺合部に相当する前述の雄ねじ125gが形成される。なお、エンドキャップ125の上記基部125aの基端側には上記と同様のドライバーやレンチ等の回転工具が適用可能な工具係合構造125hが形成されている。
エンドキャップ125は、上記段差面125cが保持部材123の基端縁に当接することで、先端側(遠位側)へのねじ込み量が制限される。また、エンドキャップ125の上記先端凸部125fは係合部材121の基端側案内孔部121eに挿入可能に構成される。ここで、先端凸部125fは、基端側案内孔部121eに挿入されることでその奥にある雌ねじ121fと同軸位置に案内されるように構成され、これによって雄ねじ125gがスムーズに雌ねじ121fに螺合するようになっている。基端側案内孔部121eは先端凸部125fを挿入可能としつつ先端凸部125fが係合部材121の軸線と実質的に同軸に案内されるように、先端凸部125fの外径(雄ねじ125gのねじ山の外径)に対して公差を持った穴径を備えた同軸孔に形成されている。また、雌ねじ121fは、係合部材121の軸線と同軸に形成されるとともに、上記基端側案内孔部121eの内周面から滑らかに立ち上がるねじ山を備えている。
図1に示すように、骨ねじ10、20は、骨に螺合させるためのスクリュー部を先端に備えるとともに、ドライバーやレンチなどの回転工具に係合可能な六角穴などの工具係合構造を基端に備えた一般的なねじ形状を備えている。ただし、図2に示すように骨ねじ10の外周面には軸線10Xの方向に伸びる凹溝11が軸線周りに複数本形成されており、いずれか一つの凹溝11に上記係合部材121の先端係合部121bが浅く係合することにより骨ねじ10の軸線10X周りの回転が規制される(スライドフリー状態)。また、係合部材121の先端係合部121bが凹溝11に深く係合して凹溝11の底11aに強く当接することにより、骨ねじ10は軸線10Xの方向にも固定される(スライドロック状態)。骨ねじ10はラグスクリューと呼ばれることがあり、骨折部を保持固定するに必要な保持力を得るための主体骨ねじを構成し、大腿骨の骨頭部のほぼ中心にねじ込まれる。
一方、骨ねじ20は、髄内釘本体110の横断孔115および係合部材121の貫通開口部121cに挿通される。骨ねじ20はエクストラスクリューと呼ばれることがあり、上記骨頭部の内部に上記骨ねじ10と或る程度の間隔を有して平行にねじ込まれる。この場合には、骨ねじ20は骨頭部が上記骨ねじ10を中心に回旋することを防止する回旋防止用骨ねじとして機能する。骨ねじ20の軸部の断面の外縁形状は図示例では円弧状(円形状)に構成されるが、当該軸部は角断面を有するものであってもよく、或いは、骨ねじ10と同様に凹溝を備えたものであってもよい。ただし、本実施形態では、横断孔115の孔内側縁と係合部材121の貫通開口部121cの開口内側縁との間で挟み付けられるようにして固定されるため、挟圧時の接触面積を十分に確保する観点から見ると、上記軸部の断面の輪郭形状は横断孔115の孔内側縁や貫通開口部121cの開口内側縁に沿った円弧状に構成されることが好ましい。なお、骨ねじ10、20は図示例のように単体で構成される場合に限らず、軸部の外周に装着されるスリーブや基端部に装着される圧縮スクリューなどとの組立体として構成されていても構わない。
上記エンドキャップ125を端部開口113aから挿入し、回転操作すると、図3に示すように、エンドキャップ125の基部125aの雄ねじ125bは雌ねじ118に螺合する。また、エンドキャップ125の中間部125dは保持部材123の軸穴123aに挿通され、先端凸部125fは係合部材121の上記基端側案内孔部121eに挿入される。エンドキャップ125が図3に示す位置にあるときには、上記段差面125cが保持部材123の基端側開口縁と離れているので、エンドキャップ125はさらに奥側(先端側)へねじ込み可能な状態とされている。なお、このときのエンドキャップ125の基端部と髄内釘本体110の基端部との距離は段差面125cと保持部材123との距離と同じで、当該距離は図示例ではP1(1+α)+δの式で示される。ここで、P1はエンドキャップ125の雄ねじ125bと軸穴113の内面の雌ねじ118からなる第1の螺合構造の螺合ピッチ(第1の螺合ピッチ)である。また、αは後述する骨ねじ20の締め付け保持(固定)のために係合部材121とエンドキャップ125とが回転方向に一体化される状態(本実施形態の場合、骨ねじ20の挟み付けに必要な係合部材121の軸線100X周りの回転角が小さいため、この状態は、横断孔115の孔内側縁と貫通開口部の開口内側縁とにより挟み付けられて髄内釘本体110に対して締め付け保持された状態と実質的に等しいので、以下、単に「締め付け保持状態」という。)に至るまでに必要なエンドキャップ125のねじ込み回転数−1を示す数である。したがって、エンドキャップ125のねじ込み開始時から上記締め付け保持状態に至るまでに必要なエンドキャップ125のねじ込み回転数は1+αとなる。さらに、δは髄内釘本体110を基準として上記締め付け保持状態におけるエンドキャップ125の軸線100X方向の位置を示す定数である。ここで、図示例のδは、締め付け保持状態におけるエンドキャップ125の基端部と髄内釘本体110の基端部との間の軸線100X方向の距離、並びに、締め付け保持状態におけるエンドキャップ125の段差面125cと保持部材123の基端部との間の軸線100X方向の距離に等しい(図5参照)。
図3に示す状態では、エンドキャップ125が図示の位置にあるときには、上記段差面125eが係合部材121の基端部121gと離れている。図示例では段差面125eと基端部121gとはP2(1+α)の間隔を有する。ここで、P2はエンドキャップ125の雄ねじ125gと係合部材121の雌ねじ121fからなる第2の螺合構造の螺合ピッチ(第2の螺合ピッチ)である。また、図示の位置では、上記先端凸部125fの雄ねじ125gと係合部材121の雌ねじ121fも螺合していない。したがって、エンドキャップ125が係合部材121を軸線方向先端側へ押し込むことがなく、係合部材121は上記の初期位置にある。このとき、前述のように先端係合部121bは横断孔114内に突出しない状態になっている。図示例では、先端係合部121bと、横断孔114内に挿通された骨ねじ10の凹溝11の底11aまでの軸線方向の間隔はd1+P3(1+α)である。ここで、d1は上記締め付け保持状態における係合部材121の先端係合部121bと、凹溝11の底11aまでの軸線方向の間隔である。また、P3は上記第1の螺合ピッチと第2の螺合ピッチの差、すなわち、P3=P1−P2である。なお、この図3に示す状態では、係合部材121の貫通開口部121cは横断孔115に連通し、骨ねじ20を横断孔115に挿通させることができる状態とされている。
このとき、図3(c)に示すように、係合部材121の軸線100X周りの姿勢は、貫通開口部121cが横断孔115の軸線115Xにほぼ沿った(平行な)軸線121cXを有する姿勢とされる。ここで、前述のように、係合部材121のガイド溝121dに規制ピン124の先端が嵌合した状態であるが係合部材121は軸線100X周りに既定の角度範囲だけ回転可能に構成されている。しかし、骨ねじ20が横断孔115と貫通開口部121cに挿通されると、貫通開口部121cの開口内側縁が骨ねじ20の軸部の外周面に抵触することで、係合部材121の軸線100X周りの回転姿勢は、上述のように貫通開口部121cの軸線121cXが横断孔115の軸線115Xとほぼ平行になるように、緩く規制される。したがって、骨ねじ20が挿通された状態では係合部材121の軸線100X周りの姿勢は骨ねじ20によって規制される。このため、本実施形態では、ガイド溝121dと規制ピン124からなる案内構造は必須のものではない。ただし、本実施形態のように、骨ねじ20を挿通するまでの間、係合部材121の軸線100X周りの初期姿勢を維持することのできる保持構造さえあれば、係合部材121が初期姿勢からの回転ずれを起こして、骨ねじ20が挿通不能になるといった事態を確実に防止することができる。
上記のエンドキャップ125を上記軸穴113内の雌ねじ118にさらにねじ込んでいくと、やがて図4に示すように、上記先端凸部125fの雄ねじ125gが係合部材121の軸穴121a内の雌ねじ121fに螺入される。なお、図4では、図3の状態からエンドキャップ125が軸線方向先端側にαP1だけ移動した状態へ移行している。これにより、上記距離はいずれもP1+δになっている。また、係合部材121は軸線方向先端側へαP3だけ移動する。このとき、上記のように、エンドキャップ125の基部125aの雄ねじ125bと髄内釘本体110の軸穴113の雌ねじ118からなる第1の螺合構造のねじの向き(図示例では右ねじ)と、先端凸部125fの雄ねじ125gと係合部材121の軸穴121a内の雌ねじ121fからなる第2の螺合構造のねじの向き(図示例では右ねじ)とが一致している。このため、係合部材121は、上記第1の螺合構造の螺合ピッチと、上記第2の螺合構造の螺合ピッチとの差に応じた割合で軸線方向に移動する。
例えば、図示例では第1の螺合構造の第1の螺合ピッチはP1、第2の螺合構造の第2の螺合ピッチはP2(このP2はP1より小さい。)とされており、これによって、エンドキャップ125を時計回りに1回転させると、係合部材は両ピッチの差P3=P1−P2だけエンドキャップ125に対して軸線方向先端側(遠位側)へ押し込まれる。例えば、図3に示す状態から図4に示す状態まで回転操作によりエンドキャップ125を髄内釘本体110に対して軸線方向先端側へαP1だけ移動させると、係合部材121はエンドキャップ125に対して軸線方向基端側へαP2だけ移動するため、係合部材121は髄内釘本体110に対して軸線方向先端側へαP3だけ移動する。また、図4に示す状態から図5に示す状態までエンドキャップ125をねじ込み、エンドキャップ125を髄内釘本体110に対して軸線方向先端側へP1だけ移動させると、係合部材121はエンドキャップ125に対して軸線方向基端側へP2だけ移動し、髄内釘本体110に対しては軸線方向先端側へP3だけ移動する。一般的には第1の螺合構造と第2の螺合構造の螺合ピッチは任意に設定でき、係合部材121を軸線方向に移動させるには第1の螺合構造の第1の螺合ピッチP1と第2の螺合構造の第2の螺合ピッチP2を異ならしめればよい。例えば、本実施形態においては、第1の螺合構造と第2の螺合構造の螺合の向きが同じであるので、係合部材121を軸線方向先端側へ移動させたい場合には第2の螺合構造の第2の螺合ピッチP2を第1の螺合構造の第1の螺合ピッチP1よりも小さくすればよい。
ここで、図示例とは異なるが、例えば、係合部材121の先端が横断孔114よりもさらに下方に突出するように構成するとともに、係合部材121に横断孔114に連通する第2の貫通開口部を設ける場合には、当該第2の貫通開口部の軸線方向先端側の開口内側縁に軸線方向基端側に突出する先端係合部を形成し、係合部材121を軸線方向基端側(近位側)に移動させて骨ねじ10の回転やスライドを規制するといったことも考えられる。このような場合には、第2の螺合構造の第2の螺合ピッチP2を第1の螺合構造の第1の螺合ピッチP1より大きくすれば、エンドキャップ125を回転させて軸線方向先端側へねじ込むと、係合部材121が軸線方向基端側へ引き上げられるように構成できる。また、いずれの場合においても、第1と第2の螺合構造の螺合ピッチ差の絶対値|P3|=|P1−P2|を小さくすれば、操作部材であるエンドキャップ125の回転操作量に対する係合部材121の軸線方向の移動量の割合を小さくすることができるので、係合部材121による骨ねじ10に対する拘束状態の制御操作を高精度に行うことができる。なお、本実施形態の場合には第1の螺合構造と第2の螺合構造の螺合の向きが同じであるため、上記第1の螺合ピッチP1と第2の螺合ピッチP2は共に正の数(同じ符号の数)であるが、両螺合構造の螺合の向きが異なる場合には両ピッチの符号が異なるものとすれば、上記と同様に考えることができる。
本実施形態においては、係合部材121は、軸線100Xの方向の所定範囲内の任意の位置において、弾性部材122の弾性力とエンドキャップ125の先端凸部125fによる押圧力とにより位置決めされる。したがって、エンドキャップ125の既定の向き(図示例では時計回り)の回転操作量に応じて、図3に示す位置から係合部材121が軸線方向先端側(遠位側)へ移動し、やがて図4に示すように先端係合部121bが横断孔114内に突出し、骨ねじ10の上記凹溝11内に進入する。このときには、骨ねじ10は、係合部材121の先端係合部121bの凹溝11内への進入により、自身の軸線10X周りの回旋が防止される。ただし、図4に示す位置では、先端係合部121bは凹溝11内の底11aに当接していないので、骨ねじ10の軸線10X方向へのスライドは可能である。このときの係合部材121の位置をスライドフリー位置(半固定位置)という。
その後、エンドキャップ125をさらに既定の向きに回転操作すると、図5に示すように、エンドキャップ125の段差面125eが係合部材121の基端面に当接する(螺合限界に達する)ので、係合部材121はエンドキャップ125に対して上記回転操作の締め付け力によって締め付け固定され、係合部材121とエンドキャップ125は第2の螺合構造を介して一体化される。このとき、エンドキャップ125の段差面125cと保持部材123の基端面との間には僅かではあるが間隔(図示例ではδ)が存在するため、エンドキャップ125をさらに既定の向きに回転操作できる状態にある。また、このときに係合部材121は、本実施形態の場合にはまだスライドフリー位置にあり、先端係合部121bは凹溝11の底11aに当接しない。
ここで、エンドキャップ125をさらに既定の向きにねじ込むと、上記の規制ピン124と係合部材121のガイド溝121dからなる案内構造の既定の回転許容角の範囲により、一体化されている係合部材121はエンドキャップ125と共に回転するため、髄内釘本体110の横断孔115および係合部材121の貫通開口部121cに挿通されている骨ねじ20は、横断孔115の一方側の孔内側縁(特に孔内側縁端115p)と、貫通開口部121cの他方側の開口内側縁(特に開口内側縁端121i)との間で挟み付けられる。その結果、骨ねじ20は、その軸線方向およびその軸線周りに上記挟み付けに起因する締め付け力に基づいて軸線方向に保持された状態となり、当該締め付け力が必要とされる値よりも大きくなれば、実質的に骨ねじ20は髄内釘本体110に固定される。
なお、上記の骨ねじ20が挟み付けられた状態になる前においても、エンドキャップ125を規定の向きにねじ込んでいく過程で係合部材121に対して既定の向きに弱い回転力が与えられるため、係合部材121は上記回転許容角の範囲内で既定の向きに回転しようとする。しかし、この回転力はエンドキャップ125の回転に基づいて第2の螺合構造の螺合抵抗により生ずる弱い連れ回り力であり、しかも、骨ねじ20が横断孔115および貫通開口部121cに挿通されているため、係合部材121は骨ねじ20の反力によって上記の挟み付けられた状態において得られる角度位置までは回転しない。骨ねじ20を挟み付けられた状態にするための十分な回転力は、第2の螺合構造がそれ以上ねじ込めなくなることによりエンドキャップ125と係合部材121の一体化が生じ、しかも、この一体化が生じた後にさらにエンドキャップ125が回転操作されることにより初めて係合部材121に与えられる。
図3(c)および図4(c)に示すように、図示例の場合には、髄内釘本体110の横断孔115の軸線115Xに対して、係合部材121の貫通開口部121cの軸線121cXが側方(図示上方)にずれている。この軸線121cXの軸線115Xに対するずれは、骨ねじ20を挟みつけるために必要な係合部材121の軸線100X周りの回転角度を小さくするための工夫である。一般的には、横断孔115に挿入した骨ねじ20が貫通開口部121cをスムーズに通過できるように構成するためには、貫通開口部121cの図3(c)および図4(c)に示す横断面上における開口幅(図示上下幅)を横断孔115の内径と同幅か、或いは、同内径よりも大きくする必要がある。そして、このときに軸線121cXが軸線115Xと一致していると、骨ねじ20を横断孔115の孔内側縁と貫通開口部121cの開口内側縁との間で挟圧するためには、貫通開口部121cの図示左右両側の回転方向にある二つの開口内側縁端121iと121i′(図4(c)参照)の双方が骨ねじ20の外周面に強く接触するとともに、横断孔115の図示左右両側の回転方向にある二つの孔内側縁端115p、115p′の双方が骨ねじ20の外周面に強く接触するまで、係合部材121を回転させなければならない。これに対して、図示例のように軸線121cXが軸線115Xに対して一側方にずれていることにより、係合部材121が基端側からみて時計回りに回転する場合には図5(c)に示すように骨ねじ20は主として図示左側にある孔内側縁端115pと開口内側縁端121iとによって挟み付けられる。したがって、貫通開口部121cの開口幅が同じであれば、骨ねじ20が挟み付けられる状態に至るまでに必要な係合部材121の軸線100X周りの回転量を小さくすることができる。
ただし、この場合であっても、図示右側にある孔内側縁端115p′と開口内側縁端121i′とによっても挟み付けられるようになっていてもよい。一方、横断孔115の軸線に対して貫通開口部121cの軸線が図示例とは逆側(図示下方)にずれていれば、骨ねじ20が主として図示右側にある孔内側縁端115p′と開口内側縁端121i′とによって挟み付けられるように構成される。また、横断孔115の軸線115Xと貫通開口部121cの軸線121cXとが軸線100Xと直交する面内において一致するように構成されている場合には、骨ねじ20が図示左右両側の孔内側縁端115p、115p′と開口内側縁端121i、121i′の双方によって挟み付けられるように構成される。いずれの場合でも、骨ねじ20が横断孔115の孔内側縁と貫通開口部121cの開口内側縁との間で挟み付けられる点は変わらない。したがって、本実施形態においては、骨ねじ20が少なくとも一方の孔内側縁端と開口内側縁端とによって挟持されるように構成されていればよい。
また、上述の貫通開口部121cの軸線121cXを横断孔115の軸線115Xに対して側方へずらした構成は、係合部材121の軸線100X周りの初期姿勢を保持する機能を高める。すなわち、この場合には貫通開口部121cの一方の開口内側縁(図示下側)が骨ねじ20に接近する方向にずれるため、骨ねじ20が上記開口内側縁に接触しやすくなるため、軸線121cXを軸線115Xに平行になるように規制しやすくなる。
上記のようにして骨ねじ20が横断孔115の孔内側縁と貫通開口部121cの開口内側縁とによって挟み付けられた状態にされると、係合部材121の先端係合部121bがさらに横断孔114内に突出する。しかし、この状態でも、図5(a)に示すように、図示例では、先端係合部121bは骨ねじ10の凹溝11の底11aには当接しないので、骨ねじ10の軸線10X周りの回転は規制されるが、骨ねじ10の軸線10Xに沿ったスライドは可能な状態に維持される。
一方、図示例とは異なり、上記の骨ねじ20が保持固定された状態において、係合部材121の先端係合部121bが骨ねじ10の凹溝11の底11aに当接するように設定し、骨ねじ10の軸線10Xに沿ったスライドが規制されるように構成することもできる。骨ねじ20が保持固定された状態において、骨ねじ10がスライドフリー状態にあるか、スライドロック状態にあるかは、エンドキャップ125の段差面125eが係合部材121の基端部121gに当接したときの係合部材121の先端係合部121bの先端位置によって定まる。したがって、例えば、段差面125eの軸線方向の位置が異なる別のエンドキャップ125を用いることによって、骨ねじ20が挟み付けられて固定されたときの先端係合部121bの軸線方向の位置が変化し、その結果、骨ねじ20に対する保持固定状態における骨ねじ10に対する規制態様を変化させることができる。また、基端部121gと先端係合部121bの間の軸線方向の距離(長さ)が異なる別の係合部材121を用いることによっても、骨ねじ20に対する保持固定状態における骨ねじ10に対する規制態様を変化させることができる。
上述の弾性部材122、保持部材123、エンドキャップ125および雌ねじ118は、ドライバーやレンチなどの回転工具を介して施される回転操作により係合部材121の軸線100Xの方向に沿った位置を調整することを可能にする操作手段(位置調整手段)を構成する。なお、本実施形態では上述のように異なる形状を有するエンドキャップ125を使い分けることで係合部材121に対する位置制御の態様を調整することができる。なお、保持部材123は本発明において必須のものではなく、エンドキャップ125を螺入させていない状態において、係合部材121の軸線100X方向の初期位置を定めたり、係合部材121の髄内釘本体110からの脱落を防止したりするためのものにすぎない。
本実施形態の係合部材121に形成された貫通開口部121cは、係合部材121が軸線100Xに沿って或る程度の範囲で移動した場合でも、横断孔115に挿入した骨ねじ20を支障なく挿通させることができるように、軸線方向に延長された開口形状を備えている。この開口形状は、楕円形状であっても長円形状であってもよい。また、上記開口形状の左右の開口内側縁のうち骨ねじ20を挟み付ける側の一方の開口内側縁(特に、開口内側縁端121i、121i′)を、上記の範囲で移動する際に横断孔115の開口位置に対応する範囲内で軸線100Xと平行な直線状に構成することによって、異なる段差面125eの位置を有する複数のエンドキャップ125を用いる場合でも、係合部材121の回転によって髄内釘本体110との間で骨ねじ20を挟み付ける際の締め付け度合の安定性、再現性を高めることができる。
なお、上記貫通開口部121cの上記開口内側縁(特に開口内側縁端121i、121i′)を軸線100Xに対して傾斜させて形成することによって、エンドキャップ125をねじ込んでいくことにより係合部材121を軸線100Xに沿って移動させたときに、横断孔115および貫通開口部121cに挿通させた骨ねじ20が少しずつ締め付けられるように構成してもよい。このようにすると、エンドキャップ125が係合部材121に一体化する前に、係合部材121を軸線方向に移動させるだけで骨ねじ20に或る程度の(弱い)締め付け力を与えることができるとともに、その締め付け力を調整することができる。また、この場合には、エンドキャップ125が係合部材121と一体化した後にさらにエンドキャップ125をねじ込むことで、上記の締め付け力を増大させ、骨ねじ20をさらに強く保持固定することが可能になる。さらに、この場合には、締め付けに必要な係合部材121の軸線100X周りの回転量をより低減することができる。
次に、本発明に係る上記の第二の構成及び第三の構成としての第2実施形態について図6及び図7を参照して説明する。本実施形態において、上記第1実施形態と同一部分には同一名称を用いて同一符号を付し、それらの説明は省略する。本実施形態では、上記髄内釘100の髄内釘本体110、弾性部材122、保持部材123、規制ピン124、エンドキャップ125は第1実施形態のそれぞれと同一であるのに対して、係合部材121′が異なる。係合部材121′は、上記第1実施形態の係合部材121とほぼ同様の基本的構成を有し、軸穴121a′、先端係合部121b′、貫通開口部121c′、ガイド溝121d′を有する。しかし、係合部材121′は軸穴113内において軸線100Xを中心とする外径が軸穴113の収容部分よりも軸線100Xと直交する少なくとも一つの方向において一回り小さく形成されることにより、軸線100Xと直交する方向に移動可能に構成されている。また、ガイド溝121d′もまた、係合部材121′が軸線100Xと直交する方向に移動可能になるように余裕を持って規制ピン124と係合している。
係合部材121′の軸穴121a′の少なくとも基端部121g′側の部分、すなわち、基端側案内孔部121e′及び雌ねじ121f′が設けられている部分は、上述の凹部として構成された被操作側係合部に相当し、係合部材121′の軸線121aX(略筒状の外形若しくは貫通開口部121c′でもよい。)に対して偏心した位置に形成されている。すなわち、基端側案内孔部121e′及び雌ねじ121f′の軸線121eXは、上記軸線121aXとずれている。また、雌ねじ121f′は上述の被操作側螺合部に相当する。ここで、図7(a)に示すように、基端側案内孔部121e′の上記基端部121g′に臨む基端開口縁121h′は基端側に開いたテーパ状に構成されている。このテーパ状の基端開口縁121h′は、先端凸部125fを基端側案内孔部121e′内にスムーズに嵌入させるための導入構造である。この導入構造としては、上記基端開口縁121h′の代わりに、或いは、上記基端開口縁121h′とともに形成された、先端凸部125fのテーパ状の先端外縁であってもよい。
一方、上記操作部材に相当するエンドキャップ125の先端には、第1実施形態と同様に構成された先端凸部125fが設けられ、この先端凸部125fは上述の凸部として構成された操作側係合部に相当する。また、先端凸部125fの外周に形成された雄ねじ125gは上述の操作側螺合部に相当する。先端凸部125f及びその外周に形成された雄ねじ125gは、エンドキャップ125の基部125a及びその外周に形成された雄ねじ125bと同軸に構成され、その結果、エンドキャップ125の雄ねじ125bが軸穴113の雌ねじ118に螺合した状態では、先端凸部125f及び雄ねじ125gは軸線100Xと同軸に構成される。
本実施形態の係合部材121′は、第1実施形態と同様に、弾性部材122と保持部材123によって軸線100Xの方向に位置決めされた状態で、軸線100Xの方向の先端側へ移動可能に保持されている。係合部材121′がエンドキャップ125と係合していないときには、係合部材121′の貫通開口部121c′が髄内釘本体110の横断孔115と一致した図6(a)及び図7(a)に示す位置に配置され得る状態にあり、この状態では軸状部材である骨ねじ20を横断孔115及び貫通開口部121c′に挿通させることができる。一方、エンドキャップ125を軸穴113内で雌ねじ118に螺合させてねじ込んでいくと、やがて先端凸部125fの先端縁が係合部材121f′の軸穴121a′の基端縁121h′に当接し、係合部材121′に対して基端側案内孔部121e′及び雌ねじ121f′の軸線121eXからエンドキャップ125の軸線及び軸線100Xに向かう方向に規制力を及ぼし、やがて先端凸部125fが基端側案内孔部121e′内に入ると、上記軸線121eXがほぼ軸線100Xに一致するように、係合部材121′は上記規制力により軸線100X及び115Xと直交する方向に移動する。その後、さらにエンドキャップ125をねじ込んでいくと、図7(b)に示すように、先端凸部125fの外周に形成された雄ねじ125gが第1実施形態と同様に係合部材121′の雌ねじ121f′と螺合する。
上記のようにして、図7(b)に示すように係合部材121′がエンドキャップ125の規制力によって軸線100Xと直交する方向に移動した状態では、貫通開口部121c′も同方向に移動していることにより、横断孔115に挿通された骨ねじ20の外周面に貫通開口部121c′の一方側(図示右側、すなわち、軸線121aXに対して軸線121eXがずれている側)の開口内側縁121j′が当接する。このとき、軸線121aXに対する軸線121eXのずれ量が充分確保されていれば、骨ねじ20は上記開口内側縁121j′と、横断孔115の反対側の孔内側縁115qとによって挟み付けられ、これによって骨ねじ20は髄内釘本体110に対して挿通方向に所定の抵抗で保持されるか、或いは、固定される。このとき、雄ねじ125gが雌ねじ121g′に螺合していれば、エンドキャップ125がねじ込まれていく過程で第1実施形態と同様に係合部材121′が軸線100Xの方向(図示例では先端側)へ移動する。
本実施形態では、係合部材121′の被操作側係合部(凹部)である基端側案内孔部121e′及び雌ねじ121f′にエンドキャップ125の操作側係合部(凸部)である先端凸部125fが嵌入するときに、軸線121eXが軸線121aXに対してずれていることによって軸線100Xと同軸の先端凸部125fから係合部材121′が軸線100X及び115Xと直交する方向(軸線121eXから軸線121aXに向かう方向)に規制力を受けて同方向に移動する。このため、貫通開口部121c′も同方向に移動することにより、骨ねじ20は貫通開口部121c′の一方側の開口内側縁121j′と横断孔115の反対側の孔内側縁115qとによって挟持される。したがって、本実施形態では、エンドキャップ125に対する回転操作量(ねじ込み量)に依存せずに、エンドキャップ125の操作側係合部と係合部材121′の被操作側係合部との間の軸線位置のずれ量によってエンドキャップ125による係合部材121′の位置規制量が定まるため、骨ねじ20に対する挟み付け状態若しくは締め付け力の設定を容易かつ高精度に行うことができる。
本実施形態では、上述のように係合部材121′の被操作側係合部に相当する軸穴121a′の開口側部分に被操作側螺合部に相当する雌ねじ121f′を形成し、これにエンドキャップ125の操作側係合部に相当する先端凸部125fに形成した雄ねじ125gが螺合するように構成しているが、雌ねじ121f′と雄ねじ125gの少なくとも一方を平滑な円筒面状に構成して、先端凸部125fが軸穴121a′内に単に嵌入するように構成してもよい。このようにしても、先端凸部125fの軸線と軸穴121a′の軸線との間が上述と同じ位置関係にあれば、係合部材121′はエンドキャップ125から規制力を受けて移動することができる。
また、本実施形態のように操作部材であるエンドキャップ125が軸線100Xの周りに回転操作されるものである場合には、操作側係合部である先端凸部125fを軸線100Xと同軸に構成し、被操作側係合部である基端側案内孔部121e′及び雌ねじ121f′を軸線121aXからずれた軸線121eXの周りに偏心させて形成する必要があるが、本発明はこのような態様に限られるものではない。例えば、操作部材が単に軸穴113内に挿入される場合には、操作部材の操作側係合部と、係合部材の被操作側係合部が相互に嵌入したときに軸線100X及び115Xと交差する方向に規制力が生じ、その結果、係合部材が軸線100X及び115Xと交差する方向に移動するように構成されていればよい。なお、本実施形態では上記規制力や係合部材121′の移動方向が軸線100X及び115Xと直交する方向とされているが、必ずしも軸線100X及び115Xに直交する方向でなくてもよく、両軸線100X及び115Xと交差する方向であればよい。
以上説明した第1及び第2実施形態では、軸穴113内に予め収容した係合部材121、121′に対してエンドキャップ125を後から挿入し、ねじ込むようにしているが、上記エンドキャップ125に相当する操作部材を予め軸穴113内に収容しておくとともに、当該操作部材を係合部材121、121′と予め螺合させておくことも可能である。この場合には、係合部材121、121′は操作部材に螺合した状態で初期位置に吊り下げられた状態とされる。このとき、初期位置で係合部材121、121′の先端係合部121b、121b′が横断孔114内に突出しないようにすれば、骨ねじ10の挿入に支障を与えることはない。この場合には、係合部材121、121′の初期位置は操作部材との螺合状態で設定されるため、上記弾性部材122や保持部材123を用いる必要はない。なお、この場合には、上記操作部材とは別の、単に髄内釘本体110の端部開口113aを閉鎖する機能のみを有するエンドキャップをさらに用いてもよい。
なお、本発明の髄内固定システムは、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記実施形態では、骨ねじ10、20を軸状部材として用いているが、軸状部材としては骨ねじに限らず、スクリュー部を備えていない骨釘を用いても構わない。また、係合部材121、121′において孔形状を有する貫通開口部121c、121c′を形成しているが、係合部材121、121′の先端側を二股状に構成して、その二股間に、先端側が開放された形状の貫通開口部を形成してもよい。
さらに、係合部材121、121′を横断孔115に挿通する骨ねじ20などの軸状部材には係合させるものの、横断孔114に挿通する骨ねじ10が存在しないときなど、骨ねじ10に対する係合が不要である場合には、係合部材121、121′を上記実施形態とは反対に軸線100X方向の基端側(近位側)に移動させていくことによって係合部材121、121′がエンドキャップ125に一体化され、エンドキャップ125とともに回転したり、或いは、エンドキャップ125から規制力を受けて移動したりすることで骨ねじ20に締め付け力を与えるように構成しても構わない。また、上記第1実施形態では係合部材121の軸線100X周りの回転により、上記第2実施形態では係合部材121′の軸線100Xと交差する方向の移動により、それぞれ骨ねじ20を締め付けるようにしているが、操作側係合部と被操作側係合部の係合構造を偏心カム構造とすることにより、係合部材が軸線100X周りに回転しながら軸線100Xと交差する方向に移動することで骨ねじ20を締め付けるように構成してもよい。