JP6070664B2 - 空気電池 - Google Patents

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Description

本発明は、従来よりも高エネルギー密度の空気電池に関する。
従来の液系空気電池においては、負極活物質として鉄を用いた場合、鉄表面に酸化物や水酸化物が析出してサイクル特性が低下するという問題が生じていたため、負極活物質の微細化等が検討されていた。特許文献1には、炭素基材及び酸化鉄粒子を含み、当該酸化鉄粒子はFeを主成分とし、かつ炭素基材に担持されており、前記酸化鉄粒子のD90が50nm以下である複合電極材を負極活物質として用いた金属空気電池が開示されている。
特開2012−094509号公報
特許文献1のように炭素基材にD90が50nm以下である酸化鉄粒子を担持した負極を用いた場合、負極中には、負極活物質である酸化鉄粒子以外の炭素基材や酸化鉄粒子間の空隙等が含まれることとなり、負極中の電極活物質の充填率が低くなるため、高エネルギー密度を達成することが困難である。
本発明は、鉄を含む微粒子を負極活物質とした場合に高エネルギー密度が達成し難いという上記実状を鑑みて成し遂げられたものであり、負極活物質を微細化しなくても、従来よりも高エネルギー密度の空気電池を提供することを目的とする。
本発明の第1の空気電池は、23℃の温度条件下でpH17.3以上の水酸化カリウム溶液を含む電解液と、鉄を含む負極と、正極と、を有することを特徴とする。
本発明の第1の空気電池においては、前記水酸化カリウム溶液のpHが17.3以上18.4以下であることが好ましい。
本発明の第2の空気電池は、12.5mol/L以上の濃度の水酸化カリウム溶液を含む電解液と、鉄を含む負極と、正極と、を有することを特徴とする。
本発明の第2の空気電池においては、前記水酸化カリウム溶液の濃度が12.5mol/L以上15.1mol/L以下であることが好ましい。
本発明の第3の空気電池は、23℃の温度条件下で鉄の溶解度が263.6μg/mL以上となる水酸化カリウム溶液を含む電解液と、鉄を含む負極と、正極と、を有することを特徴とする。
本発明の第3の空気電池においては、前記水酸化カリウム溶液における鉄の溶解度が263.6μg/mL以上393.5μg/mL以下であることが好ましい。
本発明によれば、pH17.3以上という強塩基性の水酸化カリウム溶液を電解液に用いることにより、鉄の反応率を向上させることができ、その結果高エネルギー密度の空気電池を得ることができる。
鉄を含む負極と、水酸化カリウム溶液を含む電解液とを備える空気電池における、放電時の部分断面模式図である。 本発明の空気電池の層構成の一例を示す図であって、積層方向に切断した断面を模式的に示した図である。 水酸化カリウム電解液のpHと鉄の反応率(%)との関係を示したグラフである。 水酸化カリウム電解液の濃度(mol/L)と鉄の反応率(%)との関係を示したグラフである。 水酸化カリウム電解液における鉄の溶解度(μg/mL)と鉄の反応率(%)との関係を示したグラフである。 水酸化カリウム電解液のpHと水酸化カリウム電解液における鉄の溶解度(μg/mL)との関係を示したグラフである。 濃度13.4mol/Lの水酸化カリウム電解液を含む評価用セルに係る放電評価後の負極活物質のSEM画像(倍率1,000倍)である。 濃度13.4mol/Lの水酸化カリウム電解液を含む評価用セルに係る放電評価後の負極活物質のSEM画像(倍率20,000倍)である。 放電評価前の負極活物質のSEM画像(倍率1,000倍)である。 放電評価前の負極活物質のSEM画像(倍率20,000倍)である。 濃度8.0mol/Lの水酸化カリウム電解液を含む評価用セルに係る放電評価後の負極活物質のSEM画像(倍率1,000倍)である。 濃度8.0mol/Lの水酸化カリウム電解液を含む評価用セルに係る放電評価後の負極活物質のSEM画像(倍率20,000倍)である。
本発明の第1の空気電池は、23℃の温度条件下でpH17.3以上の水酸化カリウム溶液を含む電解液と、鉄を含む負極と、正極と、を有することを特徴とする。
本発明の第2の空気電池は、12.5mol/L以上の濃度の水酸化カリウム溶液を含む電解液と、鉄を含む負極と、正極と、を有することを特徴とする。
本発明の第3の空気電池は、23℃の温度条件下で鉄の溶解度が263.6μg/mL以上となる水酸化カリウム溶液を含む電解液と、鉄を含む負極と、正極と、を有することを特徴とする。
本発明の第1〜第3の空気電池は、特定の特性を有する水酸化カリウム溶液を含む電解液と、鉄を含む負極と、正極とを有する点で共通する。以下、第1、第2、及び第3の空気電池の個別の特徴(当該水酸化カリウム溶液の特性)について先に説明し、これら3つの発明の共通点についてはその後に説明する。なお以下、第1、第2、及び第3の空気電池を総称して、「本発明の空気電池」とする場合がある。
本発明の空気電池においては、電解液として、特定の特性を有する水酸化カリウム溶液を使用する点が主な特徴である。従来の鉄空気電池においては、鉄の深さ方向に反応が十分進行せず、鉄の反応率が低いという課題があった。本発明者は、(1)水酸化カリウム溶液のpH、(2)水酸化カリウム溶液の濃度、及び(3)水酸化カリウム溶液における鉄の溶解度の3つのパラメータに着目し、これらの内少なくともいずれか1つが特定の条件を満たすことにより、鉄の反応率を向上させ、高エネルギー密度の空気電池が得られることを見出した。
本発明の第1の空気電池に使用される水酸化カリウム溶液のpHは、23℃の温度条件下で17.3以上である。このように、高いpHの水酸化カリウム溶液を用いることにより、メカニズムの説明において後述する通り、負極活物質表面の化学組成及び形態・構造の変化を促進させ、放電生成物の析出を遅らせる結果、高エネルギー密度を達成することができると考えられる。これに対し、pH17.3未満の水酸化カリウム溶液を用いた場合には、負極活物質表面の化学組成及び形態・構造が十分変化しない結果、負極活物質表面が緻密な放電生成物に覆われ、反応が阻害されるため、所望のエネルギー密度を得ることができないと考えられる。
本発明の第1の空気電池においては、水酸化カリウム溶液のpHが17.3以上18.4以下であることが好ましい。水酸化カリウム溶液のpHが18.4を超えると、水酸化カリウム溶液が過飽和となり、水酸化カリウムの固体が析出するおそれがある。
水酸化カリウム溶液のpHは、計算により求めることもできるし、測定により求めることもできる。
水酸化カリウム溶液のpHを計算する場合には、まず、23℃の温度条件下において水酸化カリウム溶液の濃度を後述の方法により測定した後、下記式(1)を用いて当該濃度をpHに換算する。詳細については、Anal.Chem.1985,57,514の式14が参考になる。
pH=14.00−log(a/f±KOHKOH) 式(1)
(上記式(1)中、aは水の活量、f±KOHはKOH水溶液のモル活量係数、mKOHはKOH水溶液のモル濃度を示す。)
水酸化カリウム溶液のpHを測定により求める場合には、JISZ 8802に記載のpH測定方法に基づき行う。具体的には、JISZ 8802 7.3.2f)に記載の通り、炭酸水素ナトリウムから炭酸塩調製pH標準液を調製し、かつJISZ 8802 8.1a)及びb)に記載の試験を経たpH計を用いて、JISZ 8802 8.2に記載の測定方法に基づき、23℃の温度条件下にて水酸化カリウム溶液のpHを測定する。
本発明の第2の空気電池に使用される水酸化カリウム溶液の濃度は、12.5mol/L以上である。このように、高濃度の水酸化カリウム溶液を用いることにより、メカニズムの説明において後述する通り、負極活物質表面の化学組成及び形態・構造の変化を促進させ、放電生成物の析出を遅らせる結果、高エネルギー密度を達成することができると考えられる。これに対し、12.5mol/L未満の濃度の水酸化カリウム溶液を用いた場合には、負極活物質表面の化学組成及び形態・構造が十分変化しない結果、負極活物質表面が緻密な放電生成物に覆われ、反応が阻害されるため、所望のエネルギー密度を得ることができない。
本発明の第2の空気電池においては、前記水酸化カリウム溶液の濃度が12.5mol/L以上15.1mol/L以下であることが好ましい。水酸化カリウム溶液の濃度が15.1mol/Lを超えると、水酸化カリウム溶液が過飽和となり、水酸化カリウムの固体が析出するおそれがある。
水酸化カリウム溶液の濃度は、15℃における比重から算出できる。
本発明の第3の空気電池に使用される水酸化カリウム溶液における鉄の溶解度は、23℃の温度条件下で263.6μg/mL以上である。このように、鉄の溶解度の高い水酸化カリウム溶液を用いることにより、メカニズムの説明において後述する通り、負極活物質表面の化学組成及び形態・構造の変化を促進させ、放電生成物の析出を遅らせる結果、高エネルギー密度を達成することができると考えられる。これに対し、鉄の溶解度が263.6μg/mL未満の水酸化カリウム溶液を用いた場合には、負極活物質表面の化学組成及び形態・構造が十分変化しない結果、負極活物質表面が緻密な放電生成物に覆われ、反応が阻害されるため、所望のエネルギー密度を得ることができない。
本発明の第3の空気電池においては、水酸化カリウム溶液における鉄の溶解度が263.6μg/mL以上393.5μg/mL以下であることが好ましい。水酸化カリウム溶液における鉄の溶解度が393.5μg/mLを超えると、水酸化カリウム溶液が過飽和となり、水酸化カリウムの固体が析出するおそれがある。
水酸化カリウム溶液における鉄の溶解度は、以下の測定方法により求める。まず、水酸化カリウム溶液10mLに対し、FeS 0.06gを添加する。得られた混合物を超音波洗浄機にて30分間攪拌し、鉄飽和溶液を調製する。得られた鉄飽和溶液を遠心分雜(4,000rpm,10分間)した後、上澄み液を希硝酸で適宜希釈し、FeをICP質量分析法にて定量する。分析装置としては、例えば、ELEMENT XR(:製品名、Thermo Fisher Scientific製)等を使用することができる。
以下、本発明の空気電池に使用される水酸化カリウム溶液に共通する事項について説明する。
本発明に使用される水酸化カリウム溶液は、水系であることが好ましく、水酸化カリウム水溶液であることがより好ましい。
また、水酸化カリウム溶液を電解液として使用するに当たり、放電反応を促進させるため、添加剤を適宜添加してもよい。添加剤としては、例えば、KSが挙げられる。空気電池においては、通常、放電前にカソード電位にて還元処理を行い、主に負極表面を覆う不動態膜を除去する工程を実施する。KSを含まない電解液を用いた場合、負極表面が不動態膜により再度覆われてしまい、放電反応が進行しないおそれがある。電解液にKSを添加することにより、負極表面に硫黄を含む吸着層が形成されるため、負極表面における不動態膜の形成を抑えることができ、放電反応が速やかに進行する。
Sの濃度は、電極反応を阻害せず、かつ負極表面における不動態膜の形成を抑制できる濃度であれば特に限定されないが、例えば、0.01mol/Lが好ましい。
以下、本発明の空気電池の負極反応のメカニズムについて説明する。
下記式(2)は、鉄を含む負極と、水酸化カリウム溶液を含む電解液とを備える空気電池における負極反応の反応式である。左式から右式への矢印が放電反応を示し、右式から左式への矢印が充電反応を示す。
上記式(2)の負極反応には、下記式(2a)〜(2c)により表される3段階の素反応が関与している(J. Power Sources,155,2006,461より)。
図1は、鉄を含む負極と、水酸化カリウム溶液を含む電解液(以下、水酸化カリウム電解液と称する場合がある。)とを備える空気電池における、放電時の部分断面模式図である。以下、図1を用いて上記式(2a)〜(2c)の素反応について説明する。
図1は、鉄(Fe)を含む負極1と水酸化カリウム電解液2との固液界面を示す部分断面模式図である。まず、負極1中の鉄と水酸化カリウム電解液2中の水酸化物イオンが反応することにより、[Fe(OH)]ad(図1中の3)が生成する(上記式(2a)、図1中の矢印4)。[Fe(OH)]adは負極表面への吸着種である。次に、当該吸着種と水酸化物イオンとがさらに反応することにより、HFeO と水が生成する(上記式(2b)、図1中の矢印5)。HFeO は、[Fe(OH)]adと異なり、負極表面を離れ、水酸化カリウム電解液2中に拡散する。続いて、HFeO と水とが反応することにより、Fe(OH)(図1中の6)が生成する(上記式(2c)、図1中の矢印7)。
このように、上記式(2)の負極反応は、上記式(2b)の中間生成物であるHFeO を経て進行する。したがって、水酸化カリウム電解液における鉄の溶解度を向上させ、HFeO をより多く生成することにより、放電反応を促進できると考えられる。
後述する図6に示す通り、水酸化カリウム電解液においては、pHに比例して鉄の溶解度が上昇する。そのため、pHが十分高い場合には、固液界面(すなわち負極表面と水酸化カリウム電解液との間)でHFeO が一時的に過飽和となる結果、自然拡散等によりHFeO の分布が広がりやすい状態となる。すると、全体としてHFeO が過飽和に到達するまでの時間が遅れ、その結果、鉄(Fe)の溶出速度に対し、Fe(OH)の析出速度が遅れる。以上が、pHが一定以上高くなる(又は鉄の溶解度が一定以上高くなる)ことにより、Fe(OH)が析出しにくくなることの推定メカニズムである。
Fe(OH)の析出が阻害される理由については、上述したHFeO の自然拡散によるものの他に、Fe(OH)やFe等の鉄化合物の溶解度の向上にも起因すると考えられる。また、後述する実施例に示す通り、放電生成物の化学組成及び形態・構造の変化も、Fe(OH)の析出が阻害され、反応活性の高い鉄の表面が負極表面により多く現れる理由の1つであると考えられる。
本発明における鉄の反応率とは、鉄(II)イオン(Fe2+)での理論容量(960mAh/g)に対する、実際に測定して得られる容量の割合(%)のことである。鉄の反応率が高いほど、基材の鉄がより多く2価の鉄イオンとして水酸化カリウム電解液中に溶け出し、その結果高エネルギー密度が得られることを示している。本発明における鉄の反応率は、以下の放電評価により求められる。まず、以下に示す材料を用いて評価用セルを作製する。
・作用極:鉄を含む負極活物質
・参照極:水銀/酸化水銀電極(Hg/HgO)に、電解液と同じKOH濃度の水酸化カリウム水溶液を注入したもの
・対極:白金メッシュ
・電解液:水酸化カリウム水溶液にKSを濃度0.01mol/Lで溶解させた溶液
・セパレータ
次に、上記評価用セルを用いて、還元前処理を行う。還元前処理としては、−1.1〜−1.2V vs.Hg/HgOの電位条件下で10〜30分間電位処理を行う。
続いて、上記評価用セルを用いて、以下の条件下で放電評価を行う。
・評価装置:マルチチャンネルポテンシオ/ガルバノスタット VMP3(:製品名、BioLogic社製)
・放電電流:27mA
・カット電圧:0V vs.Hg/HgO
・温度:25℃
鉄の反応率は、以下の式(3)から求められる。
鉄の反応率=(容量A)/Fe2+での理論容量(960mAh/g) 式(3)
上記式中、容量Aとは、一段目のプラトーの容量又は‐0.76V vs. Hg/HgOでの容量のいずれかを意味する。
ここで、一段目のプラトーの容量とは、上記式(2)中の左式から右式への反応(放電反応)における容量に対応する。また、上記式(2)からさらに放電反応が進行すると、酸化反応が進み、下記式(4)及び/又は式(5)の反応が進行するとされている。
通常、放電反応においては、プラトーは2段以上確認される。しかし、プラトーが1段しか確認できない場合、すなわち、上記式(2)に係る放電反応に対応するプラトーしか確認できない場合も考えられる。そのような場合には、鉄(II)から鉄(III)への酸化反応(上記式(4))が進行する手前の‐0.76V vs. Hg/HgOでの容量より鉄の反応率を求めればよい。
本発明に使用される負極は鉄を含む。本発明において負極が「鉄を含む」とは、負極が鉄及び/又はその化合物を含むことを意味し、具体的には、負極が、鉄金属、鉄合金、及び鉄化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの材料を含むことを意味する。
負極中における鉄及び/又はその化合物の質量割合は、負極の総質量を100質量%としたとき、10質量%以上100質量%以下であることが好ましく、30質量%以上100質量%以下であることがより好ましく、50質量%以上100質量%以下であることがさらに好ましい。また、負極には、水素吸蔵合金を混合して用いてもよい。
本発明において使用できる負極活物質の形状は特に限定されず、例えば、板状、線状、及び粒状等を選択することができる。
本発明においては、高エネルギー密度の達成のため、鉄の反応率を向上させると共に、負極における鉄の充填率も向上させることが好ましい。充填率向上の観点から、負極活物質の平均径は0.1μm以上1mm以下であることが好ましく、1μm以上100μm以下であることがより好ましく、10μm以上20μm以下であることがさらに好ましい。ここでいう「負極活物質の平均径」とは、負極活物質の差渡しの平均を意味する。負極活物質の形状が板状である場合には、「負極活物質の平均径」とは負極活物質の平均厚さを意味する。負極活物質の形状が線状である場合には、「負極活物質の平均径」とは負極活物質の平均線径を意味する。負極活物質の形状が粒状である場合には、「負極活物質の平均径」とは負極活物質の平均粒径を意味する。
上記の通り負極活物質の平均径を0.1μm以上1mm以下とすることにより、負極の厚みが増えることもなく、また負極活物質を担持する担体も不要となるため、負極中の鉄の充填率を向上させることができる。
本発明に使用される正極は、好ましくは正極層を備え、通常、正極集電体、及び当該正極集電体に接続された正極リードをさらに備える。
本発明に使用される正極層は、少なくとも導電性材料を含有する。さらに、必要に応じて、触媒及び結着剤の少なくとも一方を含有していても良い。
本発明に使用される導電性材料としては、導電性を有しかつ上記電解液に安定なものであれば特に限定されるものではないが、例えば炭素材料、ペロブスカイト型導電性材料、多孔質導電性ポリマー及び金属多孔体等を挙げることができる。特に、炭素材料は、多孔質構造を有するものであっても良く、多孔質構造を有しないものであっても良いが、本発明においては、多孔質構造を有するものであることが好ましい。比表面積が大きく、多くの反応場を提供することができるからである。多孔質構造を有する炭素材料としては、具体的にはメソポーラスカーボン等を挙げることができる。一方、多孔質構造を有しない炭素材料としては、具体的にはグラファイト、アセチレンブラック、カーボンブラック、カーボンナノチューブ及びカーボンファイバー等を挙げることができる。正極層における導電性材料の含有量としては、例えば、正極層全体の質量を100質量%としたとき、10〜99質量%、中でも50〜95質量%であることが好ましい。導電性材料の含有量が少なすぎると、反応場が減少し、電池容量の低下が生じる可能性があり、導電性材料の含有量が多すぎると、相対的に触媒の含有量が減り、充分な触媒機能を発揮できない可能性があるためである。
本発明に使用される正極用の触媒としては、例えば、酸素活性触媒が挙げられる。酸素活性触媒の例としては、例えば、ニッケル、パラジウム及び白金等の白金族;コバルト、マンガン又は鉄等の遷移金属を含むペロブスカイト型酸化物;ルテニウム、イリジウム又はパラジウム等の貴金属酸化物を含む無機化合物;ポルフィリン骨格又はフタロシアニン骨格を有する金属配位有機化合物;酸化マンガン等が挙げられる。正極層における触媒の含有割合としては、特に限定されるものではないが、例えば、正極層全体の質量を100質量%としたとき、0〜90質量%、中でも1〜90質量%であることが好ましい。
電極反応がよりスムーズに行われるという観点から、上述した導電性材料に触媒が担持されていてもよい。
上記正極層は、少なくとも導電性材料を含有していれば良いが、さらに、導電性材料を固定化する結着剤を含有することが好ましい。結着剤としては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)や、スチレン・ブタジエンゴム(SBRゴム)等のゴム系樹脂等を挙げることができる。正極層における結着剤の含有割合としては、特に限定されるものではないが、例えば、正極層全体の質量を100質量%としたとき、1〜40質量%、中でも1〜10質量%であることが好ましい。
正極層の作製方法としては、例えば、上記導電性材料を含む正極層の原料等を、混合して圧延する方法や、当該原料に溶媒を加えてスラリーを調製し、後述する正極集電体に塗布する方法等が挙げられるが、必ずしもこれらの方法に限定されない。スラリーの正極集電体への塗布方法としては、例えば、スプレー法、スクリーン印刷法、ドクターブレード法、グラビア印刷法、ダイコート法等の公知の方法が挙げられる。
上記正極層の厚さは、空気電池の用途等により異なるものであるが、例えば2〜500μm、中でも30〜300μmであることが好ましい。
本発明に使用される正極集電体は、正極層の集電を行うものである。正極集電体の材料としては、導電性を有しかつ上記電解液に安定なものであれば特に限定されるものではないが、例えばニッケル、クロム、アルミニウム、ステンレス、鉄、チタン、カーボン等を挙げることができる。これらの材料は、正極集電体表面のみに使用されていてもよく、正極集電体全体に使用されていてもよい。正極集電体としては金属多孔質体が好ましく、例えば金属メッシュ、穴あけ加工された金属箔及び金属発泡体を挙げることができる。中でも、本発明においては、集電効率に優れるという観点から、正極集電体の形状がメッシュ状であることが好ましい。この場合、通常、正極層の内部にメッシュ状の正極集電体が配置される。さらに、本発明に係る空気電池は、メッシュ状の正極集電体により集電された電荷を集電する別の正極集電体(例えば箔状の集電体)を備えていても良い。また、本発明においては、後述する外装体が正極集電体の機能を兼ね備えていても良い。
正極集電体の厚さは、例えば10〜1,000μm、中でも20〜400μmであることが好ましい。
本発明の空気電池は、正極及び負極の間に、セパレータを備えていてもよい。セパレータは、アルカリ電池で一般的に使用されているものなら特に限定されない。上記セパレータとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン製の多孔膜;及びポリプロピレン等の樹脂製不織布、ガラス繊維不織布等の不織布;セルロース系セパレータ等を挙げることができる。
セパレータに使用できるこれらの材料は、上記電解液を含浸させることにより、電解液の支持材として使用することもできる。
図2は、以上説明した材料を備える本発明の空気電池の層構成の一例を示す図であって、積層方向に切断した断面を模式的に示した図である。なお、本発明の空気電池は、必ずしもこの例のみに限定されるものではない。
空気電池100は、正極層12及び正極集電体14を備える正極16と、負極活物質層13及び負極集電体15を備える負極17と、正極16及び負極17に挟持される電解液11を備える。
本発明の空気電池は、通常、上記電解液、負極、及び正極等を収納する外装体を備えることが好ましい。
外装体の材質は、上記電解液に安定な材質であれば特に限定されない。例えば、外装体の少なくとも内側面が、ニッケル、クロム、及びアルミニウムからなる群より選ばれる1種以上の金属や、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエチレン樹脂(PE)、及びアクリル樹脂からなる群より選ばれる1種以上の樹脂を含んでいてもよい。
外装体の形状としては、具体的にはコイン型、平板型、円筒型、ラミネート型等を挙げることができる。
外装体は、大気開放型の外装体であっても良く、密閉型の外装体であっても良い。大気開放型の外装体は、少なくとも正極層が十分に大気と接触可能な構造を有する外装体である。一方、密閉型外装体の場合は、密閉型外装体に、気体(空気)の導入管及び排気管が設けられることが好ましい。この場合、導入・排気する気体は、酸素濃度が高いことが好ましく、乾燥空気や純酸素であることがより好ましい。また、放電時には酸素濃度を高くし、充電時には酸素濃度を低くすることが好ましい。
外装体内には、外装体の構造に応じて、酸素透過膜や、撥水膜を設けてもよい。
撥水膜は、上記電解液が漏液せず、かつ空気が拡散可能な材料であれば特に限定されない。例えば、多孔質のフッ素樹脂シート(PTFE)や多孔質セルロースの細孔内部を撥水処理したものでも良い。
以下に、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、この実施例のみに限定されるものではない。
1.溶解度評価
まず、水酸化カリウム水溶液を準備した。当該水溶液の材料として、8.0mol/Lの水酸化カリウム水溶液(和光純薬製)、水酸化カリウムの顆粒(和光純薬製)、及び蒸留水を用意した。8.0mol/Lの水酸化カリウム水溶液はそのまま次の工程に供した。また、水酸化カリウムの顆粒(和光純薬製)及び蒸留水を用いて、10.0mol/L、11.7mol/L、12.5mol/L、13.0mol/L、13.4mol/L、及び15.1mol/L(飽和濃度)の各水酸化カリウム水溶液を調製した。これら調製した水酸化カリウム水溶液の濃度は、15℃における比重から算出した。
次に、上記各濃度の水酸化カリウム水溶液10mLに対し、FeS(Aldrich社製)0.06gをそれぞれ添加した。得られた混合物を超音波洗浄機にて30分間攪拌し、鉄飽和溶液を調製した。得られた鉄飽和溶液を遠心分雜(4,000rpm,10分間)した後、上澄み液を希硝酸で適宜希釈し、FeをICP質量分析法にて定量した。分析装置としては、ELEMENT XR(:製品名、Thermo Fisher Scientific製)を用いた。
定量したFe濃度は、各濃度の水酸化カリウム水溶液における鉄の溶解度の指標となる。すなわち、Fe濃度が高いほど、当該水酸化カリウム水溶液における鉄の溶解度が高いことを意味する。
2.放電評価
放電評価用セルに用いる作用極、参照極、対極、電解液、及びセパレータとして以下の材料を用意した。
作用極として、スチールウール(ボンスター#0000、平均線径:15μm、BET比表面積0.01m/g)を用意し、作用極の集電用にニッケルメッシュ及びニッケルリボン(いずれも株式会社ニラコ製)を用意した。まず、ニッケルメッシュを用いて30×30×5mmの直方体の箱を作製し、集電用のニッケルリボンをつけた。次に、作製した箱の中に上記スチールウール0.8gを詰めて作用極を作製した。
参照極として、水銀/酸化水銀電極(Hg/HgO、インターケミ社製)を用意し、当該電極中に、使用する電解液と同じKOH濃度の液を注入した。ただし、注入する当該液にKSは添加しなかった。
対極として、白金メッシュ(30×30mm、80mesh、株式会社ニラコ社製)を用いた。
電解液の材料として、上記各濃度の水酸化カリウム水溶液、及びKSを用意した。これら水酸化カリウム水溶液について、KSが0.01mol/Lの濃度となるように添加し、超音波洗浄機で10〜30分間攪拌して、濃度8.0mol/L、10.0mol/L、11.7mol/L、12.5mol/L、13.0mol/L、13.4mol/L、及び15.1mol/Lの水酸化カリウム電解液をそれぞれ調製した。
セパレータにはHMP4810(:製品名、三菱製紙製)を用いた。
以上の材料を用いて、以下の手順で放電評価用セルを作製した。
ビーカーセルの底から、作用極、セパレータ、対極をこの順に重ねて配置した。次に、ビーカーセルの脇に参照極を刺した。続いて、水酸化カリウム電解液(濃度8.0mol/L、10.0mol/L、11.7mol/L、12.5mol/L、13.0mol/L、13.4mol/L、又は15.1mol/L)を、ビーカーセル中に10〜20mL注入した後、当該セル内部を減圧脱泡し、作用極であるスチールウール全体に水酸化カリウム電解液が染み渡るようにした。
放電評価には、マルチチャンネルポテンシオ/ガルバノスタット VMP3(:製品名、BioLogic社製)を用いた。放電評価条件は以下の通りである。
まず、還元前処理として、濃度8.0mol/Lの水酸化カリウム電解液を用いた場合には、−1.1V vs.Hg/HgOの電位条件下で30分間電位処理を行った。また、濃度10.0〜15.1mol/Lの水酸化カリウム電解液を用いた場合には、−1.2V vs.Hg/HgOの電位条件下で10分間電位処理を行った。
次に、以下の条件下で放電評価を行った。
・放電電流:27mA
・カット電圧:0V vs.Hg/HgO
・温度:25℃
鉄の反応率は、以下の式(3)から求められる。
鉄の反応率=(容量A)/Fe2+での理論容量(960mAh/g) 式(3)
(上記式中、容量Aとは、一段目のプラトーの容量又は‐0.76V vs. Hg/HgOでの容量のいずれかを意味する。)
3.負極活物質の表面構造観察
上記放電評価前の負極活物質(すなわち作用極原料のスチールウール)、及び上記濃度8.0mol/L、又は13.4mol/Lの水酸化カリウム電解液を含む評価用セルに係る放電評価後の各負極活物質について、走査型電子顕微鏡(SEM、JEOL社製)を用いて、倍率1,000倍、及び20,000倍にて表面構造観察を行った。
4.考察
下記表1は、水酸化カリウム電解液のpH、水酸化カリウム電解液の水酸化カリウム濃度、上記溶解度評価より得られた鉄の溶解度、放電評価より得られた上記容量A、及び放電評価より得られた鉄の反応率をまとめた表である。便宜上、水酸化カリウム電解液濃度の低いものから順に1〜11の番号を付した。また、上記溶解度評価より得られた水酸化カリウム水溶液における鉄の溶解度は、対応する水酸化カリウム濃度の電解液における鉄の溶解度とみなした。なお、下記表1中のpHは、23℃の温度条件下において、使用した水酸化カリウム水溶液のモル濃度等から下記式(1)より換算した値である(Anal.Chem.1985,57,514の式14参照)。
pH=14.00−log(a/f±KOHKOH) 式(1)
(上記式(1)中、aは水の活量、f±KOHはKOH水溶液のモル活量係数、mKOHはKOH水溶液のモル濃度を示す。)
図3〜図5は、上記表1のデータに基づき作成されたグラフである。すなわち、図3は水酸化カリウム電解液のpHと鉄の反応率(%)との関係を示したグラフである。図4は、水酸化カリウム電解液の濃度(mol/L)と鉄の反応率(%)との関係を示したグラフである。図5は、水酸化カリウム電解液における鉄の溶解度(μg/mL)と鉄の反応率(%)との関係を示したグラフである。図3〜図5中の番号1〜11は、上記表1の水酸化カリウム電解液の番号と対応する。また、図3〜図5中の番号1と2、4と5、7と8、9と10は、それぞれ縦軸及び横軸の値がいずれも略等しいため、プロットが重なっている。
表1及び図3〜図5より明らかな通り、水酸化カリウム電解液番号1〜5においては鉄の反応率は20%未満であり、鉄の反応率の明確な差は認められない。しかし、水酸化カリウム電解液番号6においては鉄の反応率が20%を超えており、水酸化カリウム電解液番号7〜8においては鉄の反応率が30%を超え、アルカリ電解液番号9〜10に至っては、鉄の反応率が80%近くまで向上する。一方、水酸化カリウム電解液番号11においては、鉄の反応率は41.4%とやや減る。これは、水酸化カリウム電解液の濃度が飽和濃度(15.1mol/L)であり、放電反応の進行に伴う水の消費(水の揮発や対極側での水の分解)により水酸化カリウムの固体が他の電解液(水酸化カリウム電解液番号1〜10)よりも電極表面に析出しやすくなり、その結果放電反応が阻害されたためと考える。
なお、図6は、水酸化カリウム電解液のpHと水酸化カリウム電解液における鉄の溶解度(μg/mL)との関係を示したグラフである。図6中の番号1〜11は、上記表1の水酸化カリウム電解液の番号と対応する。図6より明らかな通り、水酸化カリウム電解液のpHと、水酸化カリウム電解液における鉄の溶解度とは比例している。
本発明者は、当初、水酸化カリウム電解液における鉄の溶解度と、鉄の反応率とは比例すると予測していた。しかし、図5から明らかな通り、実際には鉄の溶解度が200μg/mLを超えても鉄の反応率は20%を下回ったままであり、鉄の溶解度が300μg/mLまで達したとき、鉄の反応率も80%近くまで上昇する。これは、鉄の溶解度以外の他の要因も鉄の反応率の向上に関わることを示している。このように200〜300μg/mLの鉄の溶解度の範囲内で急激に鉄の反応率が向上した要因として、以下の3つが考えられる。
要因1:水酸化カリウム電解液における鉄の溶解度の上昇に伴い、固液界面(すなわち、負極活物質(スチールウール)と水酸化カリウム電解液との間)において、鉄の濃度が過飽和となる前に、溶出した鉄イオンが自然拡散により負極から遠くに広がりやすくなり、放電生成物(Fe(OH)等)の形成が遅れる結果、放電反応活性面が長時間露出された状態が維持されること。
要因2:水酸化カリウム電解液における鉄の溶解度の上昇に伴い、放電生成物(Fe(OH)等)の形成後も当該放電生成物自体の再溶解が生じる結果、放電反応活性面が露出すること。
要因3:水酸化カリウム電解液における鉄の溶解度の上昇及び/又はpHの上昇に伴い、析出放電生成物(Fe(OH)等)表面の化学組成が変化したり、当該表面の構造が微細化したりする結果、水酸化カリウム電解液が微細構造の間隙から反応活性面まで染み込むこと。
特に上記要因2及び要因3について検討するため、以下、負極活物質の表面構造観察結果について考察する。
図8A〜図8Bは、放電評価前の負極活物質のSEM画像(倍率1,000〜20,000倍)である。特に図8Bより、放電評価に供する前のスチールウール表面は比較的滑らかであることが分かる。
一方、図9A〜図9Bは、濃度8.0mol/Lの水酸化カリウム電解液を含む評価用セルに係る放電評価後の負極活物質のSEM画像(倍率1,000〜20,000倍)である。図9A〜図9Bと、上記図8A〜図8Bとを対比すると明らかな通り、アルカリ条件下において放電評価を行うことにより、負極活物質の表面に直径3〜5μm程度の粒子が析出することが分かる。
図7A〜図7Bは、濃度13.4mol/Lの水酸化カリウム電解液を含む評価用セルに係る放電評価後の負極活物質のSEM画像(倍率1,000〜20,000倍)である。図7A〜図7Bと、上記図9A〜図9Bとを対比すると、水酸化カリウム電解液の濃度により負極活物質表面の形態が異なることが分かる。すなわち、濃度8.0mol/Lの水酸化カリウム電解液を用いた場合(図9A〜図9B)には、析出した各粒子の表面は平坦であるのに対し、濃度13.4mol/Lの水酸化カリウム電解液を用いた場合(図7A〜図7B)には、析出した各粒子の表面にさらに幅数nm、長さ数十nmの微細な繊維が析出し、負極活物質の表面が当該繊維の集合体によって取り巻かれた構造となる。これら微細繊維は、負極活物質表面において溶出と析出が繰り返された結果生じたものと考えられる。このように、強塩基性条件下においては、放電生成物の形態が変化することにより、放電中の反応有効面の比率が増大すると考えられる。
以上の表面構造観察の結果から、高濃度の水酸化カリウム電解液を放電に供した場合、より低い濃度の水酸化カリウム電解液を用いた場合と異なり、放電生成物の化学組成や構造が明らかに異なることが分かる。本発明においては、高濃度の水酸化カリウム電解液を用いた場合に得られる繊維状の放電生成物の再溶解性が高いため、鉄の反応率が80%近くまで向上したと考えられる。
1 鉄(Fe)を含む負極
2 水酸化カリウム電解液
3 [Fe(OH)]ad
4 反応式(2a)に示す素反応の進行を示す矢印
5 反応式(2b)に示す素反応の進行を示す矢印
6 Fe(OH)
7 反応式(2c)に示す素反応の進行を示す矢印
11 電解質層
12 正極層
13 負極活物質層
14 正極集電体
15 負極集電体
16 正極
17 負極
100 空気電池

Claims (6)

  1. 23℃の温度条件下でpH17.3以上の水酸化カリウム溶液からなる電解液と、
    鉄を含む負極と、
    正極と、
    を有することを特徴とする、空気電池。
  2. 前記水酸化カリウム溶液のpHが17.3以上18.4以下である、請求項1に記載の空気電池。
  3. 12.5mol/L以上の濃度の水酸化カリウム溶液からなる電解液と、
    鉄を含む負極と、
    正極と、
    を有することを特徴とする、空気電池。
  4. 前記水酸化カリウム溶液の濃度が12.5mol/L以上15.1mol/L以下である、請求項3に記載の空気電池。
  5. 23℃の温度条件下で鉄の溶解度が263.6μg/mL以上となる水酸化カリウム溶液からなる電解液と、
    鉄を含む負極と、
    正極と、
    を有することを特徴とする、空気電池。
  6. 前記水酸化カリウム溶液における鉄の溶解度が263.6μg/mL以上393.5μg/mL以下である、請求項5に記載の空気電池。
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