以下、この発明の実施形態である画像処理装置について説明する。
この例にかかる画像処理装置は、乗降客が駅ホームから線路内に落ちるのを防止するために、駅ホームの側端部に沿って設置している落下防止柵と、列車と、の間の空間を検知エリアとしたものである。画像処理装置は、この検知エリア内に位置するオブジェクトを検出する。
まず、駅ホームの側端部に沿って設置している落下防止柵について簡単に説明しておく。
図1は、落下防止柵が設置されている駅ホームを示す概略図である。図1(A)は、駅ホームの俯瞰図であり、図1(B)は、線路側から駅ホームを見た平面図である。落下防止柵は、戸袋として機能する筐体1と、この筐体1に対してスライド自在に取り付けたスライドドア2を有する。図1は、スライドドア2を閉している状態を示している。スライドドア2は、設置している駅ホームに停車する列車の各ドアが対向する位置に設けている。スライドドア2は、開したときに、筐体1内(戸袋)に収納される。スライドドア2は、図1において、左右方向にスライドする。
この例にかかる画像処理装置がオブジェクトを検出する検知エリアは、スライドドア2が設けられている位置における、落下防止柵と線路との間である。
図2は、この例にかかる画像処理装置の主要部の構成を示すブロック図である。画像処理装置10は、制御部11と、画像センサ部12と、画像処理部13と、出力部14と、を備えている。この画像処理装置10は、ハードウェアとして上述の構成を有するパーソナルコンピュータ等の情報処理装置を利用することができる。ハードウェアとして利用する情報処理装置は、この発明で言うオブジェクト検出プログラムをインストールすることで、後述する処理(図5、図6、図7、図11、図12、図13および図14に示すフローチャートにかかる処理)を実行する。
制御部11は、画像処理装置10本体各部の動作を制御する。
画像センサ部12は、赤外光を検知エリアに照射し、その反射光を受光することにより検知エリアの距離画像、および受光強度画像を撮像するTOF(Time Of Flight)カメラを有する。このTOFカメラが、この発明で言う撮像装置に相当する。
TOFカメラは、検知エリア(撮像エリア)に赤外光を照射する光源、およびn×m個の受光素子をマトリクス状に配置した撮像素子(n×m画素の撮像素子)を有する。TOFカメラは、赤外光を検知エリアに照射してから、反射光を受光するまでの時間(飛行時間)を画素毎に計測する。TOFカメラは、検知エリアに照射した光と、受光した反射光と、の位相差を計測することによって、オブジェクト(光反射した対象物体の反射面)までの距離を得る。
オブジェクトまでの距離を求める既知の原理を説明すると、光源から照射される光は、発光強度が変調されたものを用いる。検知エリアからの反射光を受光する際に伝播距離に応じて変調位相がずれる。光源からの光の一部を受光素子の一部で直接受光することで照射光の位相をモニタし、反射光として受光した光の位相とのズレを求める。位相ずれを求める既知の原理は、図3(A)に示すように、照射光の変調周期Tに対してT/2期間ごとにサンプリングした受光信号(A0、A2)と、さらに図3(B)に示すように、T/4ずらしたタイミングでサンプリングした受光信号(A1,A3)と、に基づいて伝播距離によって位相のずれ量φを算出する。位相のずれ量φは、
φ=arctan{(A3−A1)/(A0−A2)}
により算出できる。
また、ここで求めた位相のずれφからオブジェクトまでの距離Dを求めることができる。オブジェクトまでの距離Dは、
D=Lmax×φ/2π
により算出できる。ここでLmaxはφ=2πとなるときの物体までの距離(測定最大距離)であり、変調周波数が20MHzであればLmaxは7.5m、10MHzであれば15mとなる。
なお、撮像素子における説明をすると、隣接する縦横それぞれ2つずつ(合計4つ)の受光素子(4ピクセル)を1組とし、これを1画素として扱う。各受光素子(ピクセル)は、T/4期間ごとずらしたサンプリングタイミングで光電変換された電荷を蓄積する。これにより、T/4期間ごとの蓄積電荷に基づいて、前述のA0,A1,A2,A3の受光信号を得ることができる。また、他の既知技術として、2つの受光素子を1画素として扱い、前述のA0〜A3の受光信号を得る方式もある。
ここでいう「画素」とは、上述したように、位相のずれまたは距離を求めてオブジェクトを検知するために画像処理を行うときの単位となる受光素子(ピクセル)のブロックであり、撮像素子の1つの受光素子(1ピクセル)であってもよいし、隣接する複数の受光素子(例えば、縦横2ずつの受光素子(2×2ピクセル))で構成されるブロックであってもよい。この発明の画像処理装置は、距離画像や受光強度画像を、ここで言う画素単位で処理する(受光素子単位で処理するとは限らない。)。
TOFカメラにおける実際の画像処理においては、前述の照射光の変調の1周期だけの受光電荷では量的に少なすぎるので、カメラの露光時間を適宜設定し、その期間に蓄積された電荷量を用いて位相のずれを算出し、オブジェクトまでの距離を求める。これで求めた画素(上述したように、画像処理をするうえで単位となるブロックの意味である。)毎の距離情報を全て集めることにより、画素毎に反射面までの距離を対応付けた距離画像を取得する。また、TOFカメラは、画素毎に所定期間分(複数周期分)の蓄積電荷を全て集めることにより、画素毎にその画素が受光した反射光の強度(反射光量)を対応付けた受光強度画像を取得する。TOFカメラは、同じ露光タイミング(露光期間)で撮像した検知エリアの距離画像、および受光強度画像を得ることができる。このTOFカメラは、例えば、1秒間に5〜10フレーム程度の距離画像、および受光強度画像の撮像が行える。
なお、上述のTOFカメラにかえて、レーザ光を照射する光源、反射光を受光する受光素子、および検知エリア内において光源から照射されたレーザ光を走査する走査部を有する構成の撮像装置を用いてもよい。画像センサ部12が有する撮像装置は、検知エリアの距離画像、および受光強度画像が同じ露光タイミング(露光期間)で撮像できる構成であればよい。
図4は、TOFカメラの取付例を示す図である。TOFカメラは、図1に示した検知エリアが撮像エリア内に収まるように、筐体1の比較的上方に取り付け、撮像方向を斜め下方に向けている。また、TOFカメラは、スライドドア2よりも線路側に取り付けている。
また、TOFカメラは、検知エリアを撮像エリア内に収めることができれば、駅ホームに立設している支柱等に取り付けてもよい。
画像処理部13は、画像センサ部12が同じタイミングで撮像した検知エリアの距離画像、および受光強度画像を、一対の検知用画像(検知用距離画像、および検知用受光強度画像)として処理する場合もあれば、一対の基準画像(基準距離画像、および基準受光強度画像)の生成に用いる場合もある。画像処理部13は、生成した一対の基準画像を記憶するメモリ(不図示)を有している。このメモリが、この発明で言う基準画像記憶部に相当する構成である。また、画像処理部13は、メモリに記憶している一対の基準画像を用いて、一対の検知用画像を処理し、検知エリア内に位置するオブジェクトを検出する。オブジェクトを検出する処理の詳細については、後述する。
出力部14は、画像処理部13におけるオブジェクトの検出結果を、接続されている落下防止柵や、警報装置に出力する。オブジェクトが検出された場合、オブジェクトの検出結果が入力された装置は、警告音による報知や、警告灯の点灯等により、その旨(オブジェクトが検出されたこと)を駅係員等に知らせる。
以下、画像処理装置10の動作について説明する。図5は、画像処理装置の動作を示すフローチャートである。
落下防止柵は、上述したように、駅ホームに列車が停車していないとき、スライドドア2を閉している。画像処理装置10は、駅ホームに列車が停車する毎に、図5に示す処理を実行する。
この例にかかる画像処理装置10は、駅ホームに列車が停車したタイミングを基準画像生成タイミングに設定している。この基準画像生成タイミング以外のタイミングは、オブジェクト検出タイミングである。
画像処理装置10は、この基準画像生成タイミングにおいて、画像センサ部12がTOFカメラで撮像した検知エリアの距離画像、および受光強度画像に基づく、基準距離画像、および基準受光強度画像(一対の基準画像)を生成し、取得する基準画像取得処理を実行する(s1)。この基準画像取得処理は、駅ホームに停車した列車のドア、および落下防止柵のスライドドア2が閉している状態で、TOFカメラが撮像した一対の撮像画像を用いる。すなわち、一対の基準画像は、検知エリア内にオブジェクトが存在していない背景画像(背景距離画像、および背景受光強度画像)として用いることができる。また、この一対の基準画像は、駅ホームに停車している列車を背景とした画像である。画像処理装置10は、取得した一対の基準画像をメモリに記憶する。
画像処理装置10が一対の基準画像を生成し、取得すると、駅ホームに停車した列車のドア、および落下防止柵のスライドドア2が開され、列車に対する乗降客の乗降が許可される。列車に対する乗降客の乗降が完了すると、駅ホームに停車している列車のドア、および落下防止柵のスライドドア2が閉される。
画像処理装置10は、駅ホームに停車している列車のドア、および落下防止柵のスライドドア2が閉された後、画像センサ部12がTOFカメラで撮像した一対の撮像画像(距離画像、および受光強度画像)を、一対の検知用画像として取得する検知用画像取得処理を実行する(s2)。
画像処理装置10は、s1で生成し、取得した一対の基準画像、およびs2で取得した一対の検知用画像を用いて、検知エリア内に位置するオブジェクトを検出するオブジェクト検出処理を行う(s3)。s3では、s1で取得した一対の基準画像に撮像されていないオブジェクトが、s2で取得した一対の検知用画像に撮像されているかどうかを検出する処理である。したがって、駅ホームに停車している列車や、駅ホームに設置されている支柱や、落下防止柵等の構造物を、s3でオブジェクトとして検出することはない。
画像処理装置10は、出力部14おいて、s3にかかるオブジェクト検出処理の検出結果を出力する(s4)。
検出結果が入力された装置は、検知エリア内に位置するオブジェクトが検出されていれば、警告報知等を行って、駅係員や、列車の運転手等にその旨を通知する。列車の運転手は、画像処理装置10におけるオブジェクト検出処理で、検知エリア内に位置するオブジェクトが検出されなければ、駅ホームから列車を発車させる。反対に、検知エリア内に位置するオブジェクトが検出されていれば、駅係員が確認を行った後に、駅ホームから列車を発車させる。
なお、列車の運行を管理している運行管理システム等が、画像処理装置10に対して、s1にかかる基準画像取得処理の開始タイミングや、s2にかかる検知用画像取得処理の開始タイミングを指示する構成とすればよい。また、これらの開始タイミングの指示は、列車の運転手や駅係員による入力操作で行う構成としてもよい。
また、画像処理装置10は、次の列車が駅ホームに停車するまでの間、s2〜s4にかかる処理を繰り返す。この間は、その時点でメモリに記憶している基準画像(基準距離画像、および基準受光強度画像)を用いて、s3にかかる処理を行う。
このように、画像処理装置10は、列車が駅ホームに停車したタイミングで図5にかかる処理を実行し、メモリに記憶している一対の基準画像を更新する。すなわち、この例では、駅ホームに列車が停車する間隔が、メモリに記憶している一対の基準画像を更新する間隔である。また、画像処理装置10は、後述するように次の列車が駅ホームに停車するまでの間においても、s3にかかるオブジェクト検出処理を実行する毎に、メモリに記憶している一対の基準画像のうち基準受光強度画像の更新を行う(基準距離画像については、更新を行わない。)。
次に、s1にかかる基準画像取得処理、s2にかかる検知用画像取得処理、およびs3にかかるオブジェクト検出処理を、詳細に説明する。
図6は、基準画像取得処理を示すフローチャートである。
画像センサ部12は、TOFカメラで一対の撮像画像(距離画像、および受光強度画像)を予め設定されているフレーム数(例えば、5フレーム)撮像する(s11)。画像処理部13は、s11で撮像したフレーム数の距離画像を用いて、基準距離画像を生成する(s12)。s12では、画素毎に、その画素に対応する各フレームの距離の平均値を対応付けた距離画像を生成し、これを基準距離画像として取得する処理である。
また、画像処理部13は、s11で撮像されたフレーム数の受光強度画像を用いて、基準受光強度画像を生成する(s13)。s13では、画素毎に、その画素に対応する各フレームの受光強度の平均値を対応付けた受光強度画像生成し、これを基準受光強度画像として取得する処理である。
s12、およびs13にかかる処理を実行する順番は、上記と逆であってもよい。
画像処理部13は、s12で生成し、取得した基準距離画像、およびs13で生成し、取得した基準受光強度画像を、一対の基準画像としてメモリ(不図示)に記憶する(s14)。
このように、この例では、基準距離画像を複数フレームの距離画像から生成し、基準受光強度画像を複数フレームの受光強度画像から生成する構成としたので、各フレームに生じているノイズの影響を抑えた基準距離画像、および基準受光強度画像を生成し、取得することができる。
なお、画像処理部13は、設定しているフレーム数を1フレームとし、画像センサ部12で撮像した距離画像、および受光強度画像を、基準距離画像、および基準受光強度画像としてメモリに記憶する構成としてもよい。
s2にかかる検知用画像取得処理は、TOFカメラで一対の撮像画像(距離画像、および受光強度画像)を撮像し、これを検知用距離画像、および検知用受光強度画像とした一対の検知用画像を取得する処理である。
このように、一対の基準画像、および一対の検知用画像は、ともにTOFカメラで検知エリアを撮像した撮像画像である。
図7は、オブジェクト検出処理を示すフローチャートである。画像処理部13は、検知用画像の画素毎に、その画素が雨滴からの反射光を受光した画素(以下、雨画素と言う。)であるかどうかを判定する雨画素判定処理を行う(s21)。
なお、前述のように、雨画素の「画素」の意味は、画像処理を行うときの単位となる受光素子(ピクセル)のブロックである。ただし、このブロックは、撮像素子の1つの受光素子(1ピクセル)であってもよいし、隣接する複数の受光素子(例えば、縦横2ずつの受光素子(2×2ピクセル))で構成されるブロックであってもよい。
s21にかかる雨画素判定処理は、以下に示す(1)〜(3)のいずれかの方法で行う。
(1)雨滴からの反射光は、比較的近い位置で反射されることに注目し、図8(A)に示すように、検知用距離画像において対応付けられている距離(図8(A)における横軸)が、予め定めた距離D1未満である画素を雨画素と判定し、予め定めた距離D1以上である画素を雨画素でないと判定する。
(2)また、雨滴の反射率を考慮してもよい。具体的には、図8(B)に示すように、距離と受光強度との一次関数で、雨画素であるかどうかを判定する判定直線を予め定めておく。そして、検知用距離画像において対応付けられている距離(図8(B)における横軸)と、検知用受光強度画像に対応付けられている受光強度(図8(B)における縦軸)と、に基づいてプロットした点が、図8(B)にハッチングで示す領域内に位置する画素を雨画素と判定し、このハッチングで示す領域内に位置しない画素を雨画素でないと判定する。
(3)さらに、雨滴の反射率は、その雨滴の後に位置する反射面の反射率によって変化することを考慮してもよい。図8(C)に示すように、距離と受光強度差(検知用受光強度画像における受光強度と、基準受光強度画像における受光強度との差の絶対値)との一次関数で、雨画素であるかどうかを判定する判定直線を予め定めておく。そして、検知用距離画像において対応付けられている距離(図8(C)における横軸)と、検知用受光強度画像における受光強度と基準受光強度画像における受光強度との差の絶対値(図8(C)における縦軸)と、に基づいてプロットした点が、図8(C)にハッチングで示す領域内に位置する画素を雨画素と判定し、このハッチングで示す領域内に位置しない画素を雨画素でないと判定する。
図8(A)、(B)、(C)に示す、雨画素と判定する領域は、検知エリアの撮像環境や、画像センサ部12の撮像特性(例えば、TOFカメラの画素密度や、撮像レンズの焦点距離)によって変化するので、画像処理装置10の設置時に調整している。
ここで言う、受光強度差は、上述したように、基準受光強度画像と、検知用受光強度画像と、において対応する画素の受光強度の差の絶対値である。絶対値を用いる理由は、基準受光強度画像の画素が雨滴からの反射光を検出した雨画素で、検知用受光強度画像の対応する画素が雨滴からの反射光を検出していない画素であった場合を考慮するためである。また、基準受光強度画像、および検知用受光強度画像の両方において、雨滴からの反射光を検出した画素については、後述する差分画像生成処理で、背景と判定される可能性が高い。
雨画素判定処理は、(1)、(2)、(3)の順番に精度が向上する。また、雨画素判定処理は、(1)、(2)、(3)の順番に計算量が増加するので、処理時間が増加する。雨画素判定処理を、上述した(1)〜(3)のいずれの方法で行うかについては、精度、および処理時間を考慮して決めればよい。
次に、画像処理部13は、検知用画像の画素毎に、その画素が撮像レンズに付着した雨滴の影響を受けた画素(以下、雨滴付着画素と言う。)であるかどうかを判定する雨滴付着画素判定処理を行う(s22)。
s22にかかる雨滴付着画素判定処理は、以下に示す(4)〜(6)のいずれかの方法で行う。
撮像レンズに付着した雨滴の影響を受けた雨滴付着画素について、距離、および受光強度の変化の傾向を実験により確認した。雨滴付着画素は、受光強度が低下することを確認した。また、雨滴付着画素の多くは、受光光量の低下量がある範囲に収まることを確認した。これは、撮像レンズに付着している雨滴の透過にともなう反射光量の減衰により生じた現象であると考えられる。
図9(A)は、撮像レンズに雨滴が付着した画素にかかる受光光量の変化量を測定した測定結果である。棒グラフは、受光強度の変化量に対する画素数を示す。また、折れ線グラフは、雨滴影響画素における、受光強度の変化量に対する画素の累計の割合(百分率)を示す。この実験では、図9(A)に示すように、雨滴付着画素の約94%が、受光強度の変化量が100以下であることが確認された。ただし、ここで言う受光強度の変化量は、発明者が本実験を実施した環境によるものであり、その数値については、環境によって異なることはいうまでもない。
また、雨滴付着画素の多くは、距離の変化がある範囲に収まることも確認した。これは、撮像レンズに付着している雨滴の透過時に反射光が屈折し、この反射光を受光する画素が、隣接する画素や近辺の画素にずれることにより生じた現象であると考えられる。
図9(B)は、撮像レンズに雨滴が付着した画素にかかる距離の変化量を測定した測定結果である。棒グラフは、距離の変化量に対する画素数を示す。また、折れ線グラフは、雨滴影響画素における、距離の変化量に対する画素の累計の割合(百分率)を示す。この実験では、図9(B)に示すように、雨滴付着画素の約73%が、距離の変化量が350mm以下であることが確認された。また、距離の変化量が150mm以下である雨滴付着画素の割合が約3%であることも確認された。ただし、ここで言う距離の変化量も、発明者が本実験を実施した環境によるものであり、その数値については、環境によって異なることはいうまでもない。
したがって、雨滴付着画素について実験により確認した、上述の距離、および受光強度の変化の傾向に基づき、撮像レンズに付着した雨滴の影響を受けた雨滴付着画素であるかどうかを判定することにより、その判定精度を確保できる。
(4)基準受光強度画像と、検知用受光強度画像において、受光強度の差の絶対値が、図(A)に示すP1(上記の実験では、例えばP1=100である。)以下である画素を、雨滴付着画素と判定し、その他の画素を雨滴付着画素でないと判定する。
(5)基準距離画像と、検知用距離画像において、距離の差の絶対値が、図10(B)に示すDminと、Dmax(上記の実験では、例えばDmin=150、Dmax=350である。)との間である画素を、雨滴付着画素と判定し、その他の画素を雨滴付着画素でないと判定する。
(6)基準受光強度画像と、検知用受光強度画像において、受光強度の差の絶対値が、図10(C)に示すP1以下であり、且つ、基準距離画像と、検知用距離画像において、距離の差の絶対値が、図10(C)に示すDminと、Dmaxとの間である画素を、雨滴付着画素と判定し、その他の画素を雨滴付着画素でないと判定する。
図10(A)、(B)、(C)に示す、雨滴付着画素と判定する領域を決定するP1、Dmin、Dmaxは、検知エリアの撮像環境や、画像センサ部12の撮像特性(例えば、TOFカメラの画素密度や、撮像レンズの焦点距離)によって変化するので、画像処理装置10の設置時に調整している。
この雨滴付着画素判定処理は、(4)、(5)、(6)の順番に精度が向上する。また、この雨滴付着画素判定処理も、上述した雨画素判定処理と同様に、対応する画素の受光強度の差の絶対値、および対応する画素の距離の差の絶対値を用いる理由は、基準受光強度画像の画素が雨滴付着画素で、検知用受光強度画像の対応する画素が雨滴付着画素でなかった場合を考慮するためである。
なお、s21にかかる処理と、s22にかかる処理とは、上記の順番に限らず、その順番を入れ替えてもよい。
画像処理部13は、s21またはs22の少なくとも一方で雨画素、または雨滴付着画素と判定した画素を雨滴影響画素、その他の画素(s21で雨画素でないと判定され、且つs22で雨滴影響画素でないと判定された画素)を非雨滴影響画素とした雨滴影響画像(2値画像)を生成する(s23)。
画像処理部13は、オブジェクト仮検出処理を行う(s24)。図11は、このオブジェクト仮検出処理を示すフローチャートである。
画像処理部13は、s12で生成し取得した基準距離画像(メモリに記憶している基準距離画像)と、s2で取得した検知用距離画像と、の差分画像を生成する(s31)。s31では、距離がほぼ同じ画素(例えば距離の差の絶対値が140mm未満)である画素を背景画素、それ以外の画素を前景画素とした差分画像(2値化画像)を生成する。s31で生成する差分画像は、距離画像にかかる背景差分画像である。
また、s31では、s2で取得した検知用受光強度画像における受光強度が予め定めた閾値以上であるかどうかを条件に加えて背景画素、または前景画素にかかる判定を行ってもよい。具体的には、距離がほぼ同じでなく(例えば距離の差の絶対値が140mm以上)、且つ、受光強度が閾値以上である画素を前景画素と判定し、その他の画素を背景画素と判定した差分画像を生成する処理としてもよい。受光強度の閾値は、予め設定しておけばよく、比較的遠い反射面からの反射光を受光した画素を背景画素と判定する条件である。具体的には、上述したように、画像処理装置10は、列車が発車した後も、s2〜s4にかかる処理を繰り返しているので、列車が発車した後に、列車で反射されず、比較的遠い反射面で反射された反射光を受光した画素を前景画素と判定しないための条件である。比較的遠い反射面は、列車の後側(列車を挟んで、TOFカメラの反対側)に位置する背景からの反射光である。
画像処理部13は、s31で生成した差分画像に対して、前景画素をグルーピングするグルーピング処理を行う(s32)。s32は、差分画像上において、周辺に位置する前景画素を1つのオブジェクトとして纏める処理である。このとき、周辺に位置する前景画素であっても、s2で取得した検知用距離画像において距離が略同じでない前景画素については、異なるグループにグルーピングする。これにより、TOFカメラの撮像方向に重なっている複数のオブジェクトにかかる前景画素を、オブジェクト毎にグルーピングできる。
画像処理部13は、s32でグルーピングした各オブジェクト(画素の集合)に識別符号を付与するラベリングを行う(s33)。ここでラベリングされたオブジェクトが、仮検出されたオブジェクトである。仮検出されたオブジェクトは、適正に検出されたオブジェクトだけでなく、雨滴影響画素により誤検出されたオブジェクトもある。
画像処理部13は、s24にかかるオブジェクト仮検出処理を完了すると、仮検出したオブジェクト(s33で識別符号を付与したオブジェクト)が、適正に検出されたオブジェクトであるか、雨滴影響画素により誤検出されたオブジェクトであるかを判定する判定処理を行う(s25)。
図12は、この判定処理を示すフローチャートである。図12では、仮検出した1つのオブジェクトに対する処理を示している。図12に示す判定処理は、s33で識別符号を付与したオブジェクト毎に(s24で仮検出したオブジェクト毎に)、この判定処理を繰り返す。
画像処理部13は、処理対象のオブジェクト(s24で仮検出したオブジェクト)にかかる画素が所定の画素数(例えば、10画素)以上であるかどうかを判定する(s41)。画像処理部13は、s41で予め設定した所定の画素数未満であると判定すると、処理対象のオブジェクト(仮検出されたオブジェクト)を、オブジェクトであると判定する(s44)。
なお、画像処理部13は、所定の画素数(例えば、10画素)未満であるオブジェクトについては、その判定精度を十分に確保することができないため、オブジェクトの見逃しを防止する観点からs44でオブジェクトであると判定している。また、画像処理部13は、下限の画素数(例えば、2画素)を設定しておき、この下限の画素数以下のオブジェクトをオブジェクトでないと判定するように構成してもよい。
画像処理部13は、s41で予め設定した画素以上であると判定すると、処理対象のオブジェクト(仮検出されたオブジェクト)にかかる画素の総数aと、この処理対象のオブジェクトにかかる画素であって、且つ雨滴影響画素の個数bとの比率(b/a×100%)が、予め定めた判定値以上であるかどうかを判定する(s42)。s42では、処理対象のオブジェクトにおいて、雨滴影響画素が占める比率が判定値以上であるかどうかを判定している。この判定値は、例えば50%である。
画像処理部13は、上記比率が予め定めた判定値未満であれば、s44で処理対象のオブジェクトを適正に検出されたオブジェクトであると判定する。一方、画像処理部13は、上記比率が予め定めた判定値以上であれば、処理対象のオブジェクトを雨滴の影響により誤検出されたオブジェクト(オブジェクトでない。)と判定する(s43)。
なお、この判定処理における上述したs42にかかる判定は、雨滴影響画素の個数が、予め設定した閾値画素数以上であるかどうかによって行う処理に置き換えてもよい。
画像処理装置10は、出力部14において、s25にかかる判定処理の結果(オブジェクトの検出結果)を上位装置に出力する。
このように、この例にかかる画像処理装置は、s25にかかる判定処理を行うことで、雨滴影響画素により誤検出されたオブジェクト(仮検出されたオブジェクト)を、オブジェクトでない(背景である。)と判定することができる。これにより、降雨時におけるオブジェクトの誤検出を抑えることができる。
さらに、画像処理部13は、メモリに記憶している基準受光強度画像を更新する基準受光強度画像更新処理を行う(s45)。
このs45にかかる基準受光強度画像更新処理は、上述したs21、およびs22における雨滴影響画素の判定精度を確保するための処理である。具体的には、上述したs1にかかる基準画像取得処理でメモリに記憶した一対の基準画像(基準距離画像、および基準受光強度画像)が、検知エリアの撮像環境の変化によって基準受光強度画像が不適正になるのを抑制する処理である。例えば、基準受光強度画像は、反射面が雨等で濡れることにより、反射面での鏡面反射が大きくなり、受光強度が低下する。また、基準受光強度画像は、反射面における太陽光の照射量が多くなるにつれて受光強度が上昇する。
図8(C)に示した雨画素であるかどうかの判定処理や、図10(A)〜(C)に示した雨滴付着画素であるかどうかの判定処理では、上述したように、各画素について、検知用受光強度画像と基準受光強度画像とにおける、受光強度の差分を用いている。したがって、メモリに記憶している基準受光強度画像が検知エリアの撮像環境の変化によって不適正になると、雨滴影響画素であるかどうかの判定精度を低下させる。
図13は、この基準受光強度画像更新処理を示すフローチャートである。画像処理部13は、s2で取得した検知用受光強度画像の画素毎に、図13に示す処理を繰り返し、メモリに記憶している基準受光強度画像を更新する。この処理では、メモリに記憶している基準距離画像については、更新を行わない。
画像処理部13は、処理対象の画素が背景画素であるかどうかを判定する(s51)。この処理対象の画素が、背景画素であるか、前景画素であるかについては、上述したs31ですでに判定している。画像処理部13は、s51で前景画素であると判定すると、この処理対象の画素に対する処理を終了する。
画像処理部13は、s51で背景画素であると判定すると、この処理対象の画素が雨滴影響画素であるかどうかを判定する(s52)。この処理対象の画素が、雨滴影響画素であるかどうかについては、上述したs21、s22ですでに判定している。画像処理部13は、s52で雨滴影響画素であると判定すると、この処理対象の画素に対する処理を終了する。
画像処理部13は、s52で雨滴影響画素でないと判定すると、この処理対象の画素の受光強度が上限値を超えているかどうかを判定する(s53)。s53では、処理対象の画素の受光強度が飽和しているかどうかを判定している。画像処理部13は、s53で上限値を超えている(受光強度が飽和している。)と判定すると、この処理対象の画素に対する処理を終了する。
画像処理部13は、s53で上限値を超えていない(受光強度が飽和していない。)と判定すると、メモリに記憶している基準受光強度画像の対応する画素の受光強度と、の差の絶対値が予め定めた受光強度差分閾値以上であるかどうかを判定する(s54)。この受光強度差分閾値は、検知エリアの環境変化により、メモリに記憶している基準受光強度画像における当該画素の受光強度が不適正な値になっているかどうかの判断に用いる値である。
画像処理部13は、s54で受光強度差分閾値未満である(基準受光強度画像における当該画素の受光強度が不適正でない。)と判定すると、この処理対象の画素に対する処理を終了する。
一方、画像処理部13は、s54で受光強度差分閾値以上である(基準受光強度画像における当該画素の受光強度が不適正である。)と判定すると、メモリに記憶している基準受光強度画像の対応する画素の受光強度を更新する(s55)。
s54は、例えば、
(a)基準受光強度画像の対応する画素の受光強度を、処理対象の画素の受光強度に置き換える処理であってもよいし、
(b)基準受光強度画像の対応する画素の受光強度を、以下に示す式で算出した受光強度に置き換える処理であってもよい。
置き換える受光強度
=k×(検知用受光強度画像の受光強度−基準受光強度画像の受光強度)
+基準受光強度画像の受光強度
ただし、kは予め定めた定数(例えば、0.5)である。
なお、上記式における(検知用受光強度画像の受光強度−基準受光強度画像の受光強度)は、絶対値ではなく、正負の値をとる。
画像処理部13は、この図11に示す処理を実行することで、メモリに記憶している基準受光強度画像において、検知エリアの環境変化により受光強度が不適正になった画素に対して、その受光強度を更新することができる。また、この図11に示す処理では、前景画素や、雨滴影響画素については、メモリに記憶している基準受光強度画像に対して受光強度を更新しないので、受光強度を不適正な値に更新することがない。
このように、画像処理部13は、メモリに記憶している基準受光強度画像を、s2で取得した検知用受光強度画像を用いて更新するので、検知エリアの環境変化によって、基準受光強度画像が不適正になるのを抑えられる。このため、上述したs21、およびs22における雨滴影響画素の判定精度の低下を抑制でき、その結果、雨滴影響画素によるオブジェクトの誤検出が抑えられる。
なお、画像処理部13は、上述のs24にかかるオブジェクト仮検出処理でラベリングされたオブジェクト(仮検出されたオブジェクト)が無ければ、メモリに記憶している基準受光強度画像を、今回s2で取得した検知用受光強度画像に置き換えるステップを図11に示す処理に追加してもよい。
このように、画像処理部13は、メモリに記憶している基準受光強度画像を、s2で取得した検知用受光強度画像を用いて更新するので、検知エリアの環境変化によって、基準受光強度画像が不適正になるのを抑えられる。このため、上述したs21、およびs22における雨滴影響画素の判定精度が低下するのを抑えられるので、その結果、雨滴影響画素によるオブジェクトの誤検出を抑えることができる。
また、s42にかかる判定で用いる判定値については降雨状態に応じて変化させる構成としてもよい。ここでは、判定値を2段階(通常値と、下限値)で切り換える例について説明する。図14は、判定値設定処理を示すフローチャートである。
画像処理装置10は、s3にかかるオブジェクト検出処理を行う毎に、当該オブジェクト検出処理において、s24で仮検出した総画素数が所定数(例えば、30画素)以上であるオブジェクトであって、且つs25で雨滴影響画素により誤検出されたオブジェクトであると判定した回数(判定回数)をカウントアップする(s61)。この判定回数は、制御部11、または画像処理部13がメモリに記憶している。
画像処理装置10は、s61でカウントアップした判定回数が、予め定めた所定回数(例えば、100)に達したかどうかを判定する(s62)。s62では、雨滴影響画素によるオブジェクトの誤検出が多くなっているかどうかを判定している。通常、降雨量が多くなるにつれて、雨滴影響画素によるオブジェクトの誤検出も多くなる。
画像処理装置10は、s62で判定回数のカウント値が定めた所定回数に達したと判定すると、s42にかかる判定で用いる判定値を下限値に変更する(s63)。s63では、判定値を小さくする。例えば、通常時50%であった判定値を、30%に設定する。これにより、降雨量が比較的多いときにおけるオブジェクトの誤検出を抑えることができるとともに、降雨量が比較的少ないときにおけるオブジェクトの見逃しが抑えられる。
また、画像処理装置10は、s62で判定回数のカウント値が予め定めた所定回数に達していないと判定すると、今回のオブジェクト検出処理で雨滴影響画素によるオブジェクトの誤検出があったかどうかを判定する(s64)。画像処理装置10は、s64で雨滴影響画素によるオブジェクトの誤検出があれば、すなわち雨滴影響画素によるオブジェクトの誤検出が発生している状況(降雨時)であれば、フレーム数のカウント値をリセットする(s65)。このフレーム数のカウント値は、制御部11、または画像処理部13がメモリに記憶している。また、このフレーム数のカウント値は、以下に示すように、s42にかかる判定で用いる判定値を下限値から通常値に戻すかどうかの判定に用いる。
画像処理装置10は、s64で雨滴影響画素によるオブジェクトの誤検出がないと判定すると、すなわち雨滴影響画素によるオブジェクトの誤検出が発生していない状況(晴天時や曇天時等)であれば、フレーム数のカウント値を1カウントアップする(s66)。画像処理装置10は、s66でカウントアップしたフレーム数のカウント値が、予め定めたフレーム上限数(所定フレーム数)に達したかどうかを判定する(s67)。
上記の説明から明らかなように、フレーム数のカウント値は、雨滴影響画素によるオブジェクトの誤検出が発生しなかったフレーム(s2で取得した検知用画像)が連続した回数である。
画像処理装置10は、s67でフレーム数のカウント値が予め定めたフレーム上限数に達していないと判定すると、本処理を終了する。
一方、画像処理装置10は、s67でフレーム数のカウント値が予め定めたフレーム上限数に達したと判定すると、s42にかかる判定で用いる判定値を通常値(例えば、50%)に設定し(s68)、このフレーム数のカウント値をリセットした後に、本処理を終了する(s69)。s68では、直前における判定値が通常値であった場合、この判定値が実際に変更されることはない。
この図14に示す判定値設定処理は、s3にかかるオブジェクト検出処理を行う毎に繰り返し実行する。この判定値設定処理を行うことで、降雨時における雨滴影響画素によるオブジェクトの誤検出を抑えるために、s42にかかる判定で用いる判定値を下限値に設定した後に、天気の回復により、雨滴影響画素によるオブジェクトの誤検出が発生しにくい状況になると、この判定値を通常値に戻すことができる。これにより、天候の回復後におけるオブジェクトの見逃しが抑えられる。
また、s69にかかる処理は、雨滴影響画素によるオブジェクトの誤検出が発生していない状況(晴天時や曇天時等)が継続しているときに、s68にかかる処理が毎回行われることによる処理負荷を抑えるものであり、特に設けなくてもよい。
また、上記の判定値設定処理では、雨滴影響画素によるオブジェクトの誤検出が発生しなかったフレームが予め定めているフレーム上限数に達したタイミングでs42にかかる判定で用いる判定値を通常値に戻すとしたが、s63で判定値を下限値に設定したタイミングから所定時間経過したときに、この判定値を通常値に戻す構成としてもよいし、他の手法で判定値を通常値に戻す構成としてもよい。
さらに、上記の例では、s42にかかる判定で用いる判定値を2段階で変化させる例を示したが、この判定値については3段階以上で変化させるようにしてもよい。この場合には、s63にかかる処理を現時点よりも1段階下(下限値側)の判定値に設定する処理とし、s68にかかる処理を現時点よりも1段階上(通常値側)の判定値に設定する処理とすればよい。
なお、上記の例では、オブジェクトを検出する検知エリアを、スライドドア2が設けられている位置における、落下防止柵と線路との間とした画像処理装置10を例にして本願発明の説明を行ったが、例えば、工場やマンション等に出入口を検知エリアとし、侵入者を検知する用途等で使用することもできる。この場合、侵入者を検知したときには、警備室や管理室に滞在している警備員にその旨を通知する構成とすればよい。